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特許7601777光配向性ポリマー材料及び組成物の調製方法
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  • 特許-光配向性ポリマー材料及び組成物の調製方法 図1.1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光配向性ポリマー材料及び組成物の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20241210BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20241210BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08F265/06
C08F20/30
G02F1/1337 520
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021546895
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020052888
(87)【国際公開番号】W WO2020165000
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】19156609.0
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518163910
【氏名又は名称】ロリク・テクノロジーズ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ROLIC TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ピレシュ,デービッド
(72)【発明者】
【氏名】クライン,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,リチャード
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501831(JP,A)
【文献】特開平09-118717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0281564(US,A1)
【文献】米国特許第06107427(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08F 20/30
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光配向性ポリマー材料の製造方法であって、
前記光配向性ポリマー材料は、
- 式(I):
【化17】

で示されるモノマーを含むホモポリマー、及び
- 少なくとも1つの式(I)で示されるモノマー
を含む組成物
[式中、
は、アクリレート及びメタクリレートからなる群からの反復モノマー単位を意味し;
は、スペーサー単位であり、m及びnが0である場合、スペーサー単位はSであり、そしてm又はnの少なくとも一方が1である場合、スペーサー単位はSであり;そしてここで、S及びSは、置換又は非置換の直鎖又は分岐の、-(CH-、更には-(CH-O-、-(CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-O-、-(CH-CO-、-(CH-CO-O-、-(CH-O-CO-、-(CH-NR-、-(CH-CO-NR-、-(CH-NR-CO-、-(CH-NR-CO-O-又は-(CH-NR-CO-NR-であって、場合によりC-C24-アルキル、ヒドロキシ、フッ素、塩素、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで単置換又は多置換されており;そしてここで、1個以上の-CH-基は、連結基、脂環式又は芳香族基により置き換えられていてもよく;そしてここで、r及びsは、それぞれ1~20の整数であり(ただし、Sの場合は3≦r+s≦24であり;そしてSの場合は8≦r+s≦24である);そしてR及びRは、それぞれ独立して水素又は低級アルキルを意味し;
環Aは、非置換フェニレンはアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味し;
環Bは、非置換フェニレンはフッ素、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味し;
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであるか、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-チオフェニレン、2,5-フラニレン、1,4-又は2,6-ナフチレンであり、
は、共有単結合、-CO-O-、又は-O-OC-であり
は、-CO-O-であり、
ここ
m、nは、0~4の整数を意味し;
Zは、-O-を意味し;そして
Dは、水素であるか、又は場合により少なくとも1回ハロゲン化されているか、若しくは1個以上のシロキサン部分構造を含有する、C-C直鎖アルキル鎖である]であり、
以下の工程a~d:
a.式(II):
【化18】

[式中、
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであるか、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-チオフェニレン、2,5-フラニレン、1,4-又は2,6-ナフチレンであり
して
は、CHであり、q=1及びR=COOR”であり;ここで、R”は、水素であるか、又は場合により少なくとも1回ハロゲン化されているか、若しくは少なくとも1個のシロキサン部分構造を含有する、C -C 直鎖アルキル鎖である]で示される化合物を、
式(III):
【化19】

[式中、
は、アクリレート及びメタクリレートからなる群からの反復モノマー単位を意味し;
は、上記と同義であり;
環Aは、非置換フェニレン又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
環Bは、非置換フェニレン又はフッ素、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
は、共有単結合、-CO-O-又は-O-OC-であり;
式(III)のY は、-CO-O-又は-CO-であり、
m、nは、0~4の整数を意味する]で示される化合物と反応させる工程;
b.場合により、工程aで得られた化合物を、式(V):
【化20】

[式中、Xは、OH、F、Cl又はIであり;
Z及びZ’は、互いに独立してH又はハロゲンのいずれかであり;
q及びq’は、互いに独立して0~2の整数であり;
pは、0~10の整数であり;
r及びr’は、互いに独立して0~3の整数である]で示される化合物と反応させる工程;
c.工程a又はb下で得られた化合物を有機又は無機過酸化物により重合させる工程;
d.加熱することにより反応を停止させる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記製造された光配向性ポリマー材料の精製工程を更に行わないことを条件とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)及び(III)のそれぞれで、
は、スペーサー単位であり、ここで、m及びnが0である場合、スペーサー単位はSであり、そしてm又はnの少なくとも一方が1である場合、スペーサー単位はSであり;ここで、Sは、C 20 アルキレンであり;そしてここで、Sは、C 20 アルキレンであり;そしてアルキレンは、非置換又は置換の直鎖又は分岐のアルキレンであって、1個以上の-CH-基は、少なくとも1つの連結基、脂環式又は/及び芳香族基により置き換えられていてもよい、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
式(I)及び(III)のそれぞれで、
n=0及びm=1であり、そしてSは、-(CH-で表される直鎖アルキレン基(式中、rは、8、9、10、11、12である)、更には-(CH-O-、-(CH-CO-O-及び-(CH-O-CO-である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(I)~(III)のそれぞれで、
n=0及びm=1であり、そして
は、アクリレート及びメタクリレートからなる群からの反復モノマー単位を意味し
環Bは、非置換フェニレン又はフッ素、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
式(I)の、-CO-O-であり
式(III)のY は、-CO-C-又は-CO-であり、
は、置換又は非置換の直鎖又は分岐の、-(CH-、更には-(CH-O-、-(CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-O-、-(CH-CO-、-(CH-CO-O-、-(CH-O-CO-、-(CH-NR-、-(CH-CO-NR-、-(CH-NR-CO-、-(CH-NR-CO-O-又は-(CH-NR-CO-NR-であって、ここで接尾辞「r」は、8~20間の整数であり;そして
環Cは、非置換フェニレンであるか、又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
Zは、-O-を意味し;そして
Dは、場合により少なくとも1回ハロゲン化されているか、又は1個以上のシロキサン部分構造を含有する、C-C直鎖又は分岐のアルキル鎖である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
式(I)及び(III)のそれぞれで、S の接尾辞「r」は、8~12の間の整数である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(I)及び(III)のそれぞれで、S の接尾辞「r」は、8、9、10、11又は12である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールアクリル酸エステル基を含む光配向性ホモポリマー材料を合成するための方法、この方法によって得られる光配向組成物、非構造化及び構造化光学素子、ナノ電気素子又は電気光学素子並びに多層システムの製造のための液晶用の配向層としての前記組成物の使用、並びに前記組成物を含む非構造化及び構造化光学素子、ナノ電気素子又は電気光学素子、多層システム、及び透過率可変フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
US 6,107,427号は、アリールアクリル酸エステル及びアミドを含む光配向性ポリマー材料及び組成物、並びにそれらの合成について記載している。ただし、この合成方法では、非常に高価な抽出物を使用する必要があり、そして有毒な材料及び添加剤を使用する必要がある。更に、合成方法は煩雑であり、収率は中程度であり、そして最終生成物は単離することが非常に困難である。
【0003】
従来技術の欠点を克服するために、本発明の発明者らは、式(I):
【0004】
【化1】

[式中、
は、アクリレート、メタクリレート、2-クロロアクリレート、2-フェニルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2-クロロアクリルアミド、2-フェニル-アクリルアミド、N-低級アルキル置換アクリルアミド、N-低級アルキル置換メタクリルアミド、N-低級アルキル置換2-クロロアクリルアミド、N-低級アルキル置換2-フェニルアクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、スチレン、ジアミン、アミド、イミド、シロキサン、アミドエステル、及びアミド酸からなる群からの反復モノマー単位を意味し;
は、スペーサー単位であり;そして
環Aは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、ピペリジン-1,4-ジイル又はピペラジン-1,4-ジイルを意味し;
環Bは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、1,4-若しくは2,6-ナフチレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル又はシクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであるか、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-チオフェニレン、2,5-フラニレン、1,4-又は2,6-ナフチレンであり、
、Yは、それぞれ独立して共有単結合、-(CH-、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-OC-、-CFO-、-OCF-、-NR-、-CO-NR-、-RN-CO-、-(CHO-、-O-(CH-、-(CH-NR-又は-NR-(CH-を意味し、ここで
は、水素又は低級アルキルを意味し;
tは、1~4の整数を意味し;
uは、1~3の整数を意味し;
m、nは、0~4の整数を意味し;
Zは、-O-又はNR-を意味し、ここでRは、水素若しくは低級アルキル、又は式Dの2番目の群を意味し;そして
Dは、水素であるか、又は場合によりハロゲン若しくは少なくとも1個のシロキサン部分構造で少なくとも1回置換されている1~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン基であるか、又は場合により少なくとも1個のハロゲン、アルキル若しくはアルコキシで置換されている3~8個の環原子を有するシクロアルキル残基である]で示される反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料を合成するための新しい方法を見い出した。
【0005】
前記アリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料を調製するための方法は、以下の工程a~d:
a.式(II):
【0006】
【化2】

[式中、
Yは、CR’又はOのいずれかであり;そして
Yが、CR’の場合、q=1及びR=COOR”であり;ここで、R’及びR”は、互いに独立して、水素であるか、又は場合によりハロゲン若しくは少なくとも1個のシロキサン部分構造で少なくとも1回置換されている1~20個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン基であるか、又は場合により少なくとも1個のハロゲン、アルキル若しくはアルコキシで置換されている3~8個の環原子を有するシクロアルキル残基であるか;あるいは
Yが、Oの場合、q=0であり;そして
環Cは、上記と同義である]で示される化合物を、
式(III):
【0007】
【化3】

[式中、M、S、環A、Y、環B及びY、n及びmは上記と同義である]で示される化合物と、及び場合により式(IV)又は(IV’):
【0008】
【化4】

で示される化合物と反応させる工程;
b.場合により、工程aで得られた化合物を、式(V):
【0009】
【化5】

[式中、Xは、OH、F、Cl又はIであり;
Z及びZ’は、互いに独立してH又はハロゲンのいずれかであり;
q及びq’は、互いに独立して0~2の整数であり;
pは、0~10の整数であり;
r及びr’は、互いに独立して0~3の整数である]で示される化合物と反応させる工程;
c.工程a又はb下で得られた化合物を有機又は無機過酸化物により重合させる工程;
d.加熱するか、又はラジカル阻害剤若しくはラジカル捕捉剤により反応を停止させる工程
を含む。
【0010】
好ましくは、本発明のアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料の調製方法において、式(II)の化合物は、以下:
Yは、CR’であり;そして
環Cは、非置換であるか、又はアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシにより置換されている
ことによって特徴付けられおり;そして式(III)の化合物において、n=0及びm=1である。
【0011】
式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、例えば、塩基、典型的にはトリエチルアミン、及び触媒量のジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で、トルエンなどを溶媒とする溶液中で起こる。
【0012】
前記方法によって得られるポリマーは、もはや更なる精製工程を必要とせず、配合されて直接使用されることが可能である。
【0013】
したがって本発明の目的は、式(I)の反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料を合成するための新規な方法、前記方法によって得られる化合物、このような化合物を含む組成物、非構造化及び構造化光学素子、電気光学素子、多層システム及びナノ電気素子における液晶の配向用のこのような組成物の使用、並びに前記組成物を含む非構造化及び構造化光学素子又は電気光学素子、多層システム及び透過率可変フィルムを提供することである。
【0014】
上に開示されたプロセスは、加熱するといつでも停止させて有機又は無機過酸化物を分解し、それによって重合を停止させることができる。加熱は、オイルバス、サンドバス、ジャケット付き加熱システム、ダブルマントル容器、赤外線コンベヤー、マイクロ波などの当技術分野で公知の方法を介して実行することができる。重合プロセスは、例えば、ポリマーが所望の長さ又は分子量に達したときに停止させることができる。更に、ラジカル阻害剤又はラジカル捕捉剤を使用することによりプロセスを停止させることができる。
【0015】
最終生成物を更に精製する必要はない。したがって、ポリマー溶液は依然として未反応モノマーを含有するか、又はポリマー溶液は未反応モノマーを含有しない可能性もある。また、本発明の目的は、式(I)の反復構造単位含むポリマーと式(I)の未反応モノマーとを50/50の比率で、更に好ましくは75/25の比率で、更により好ましくは80/20の比率で、又は90/10、更により好ましくは>90/<10の比率で含む組成物を提供することである。
【0016】
しかしながら、露光エネルギーの変動とは無関係に、堅牢なプロセスが想定される場合、式(I)の反復構造単位を含むポリマーと式(I)の未反応モノマーとを、>90/<10の比率で、更に好ましくは90/10の比率で、更により好ましくは80/20の比率で又は75/25、更になお好ましくは50/50の比率で含む組成物を提供することも本発明の目的である。
【0017】
その上、驚くべきことに本発明において光配向組成物中のモノマー化合物の量が増加するにつれて、露光エネルギーとは無関係に、様々な傾斜角を利用できることが見い出された。
【0018】
更には、驚くべきことに本発明において光配向組成物中のモノマー化合物の量が増加するにつれて、得られた配向層及び液晶ポリマーでコーティングされた配向層が、露光エネルギーの偏差及び変動に対して更に堅牢になることが見い出された。
【0019】
本プロセスでは、1種類のモノマーを含むポリマーのみが生成されるため、このような反応の最終生成物は、ホモポリマー、又は未反応のモノマーとホモポリマーの両方を含む組成物である。
【0020】
本発明に関連して使用される「連結基」という用語は、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、下記式:
【0021】
【化6】

で示される基、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-CO-O-、-O-CO-NR-、-NR-CO-NR-、-CH=CH-、-C≡C-、-O-CO-O-、及び-Si(CH-O-Si(CH-から選択される[ここで、
は、水素原子又はC-Cアルキルを表す]が、ただし、連結基の酸素原子は、互いに直接連結されていない。
【0022】
本発明に関連して使用されるとき、「スペーサー単位」という用語は、1個以上の、好ましくは非隣接の、-C-、-CH-、-CH-基が、上記と同義の連結基により置き換えられていてもよい、環状、直鎖又は分岐の、置換又は非置換のC-C24アルキレンである。
【0023】
本発明に関連して、「アルキル」という用語は、1個以上の-CH-又は-CH基が、置き換えられていないか、あるいは少なくとも1個の上記と同義の連結基、又は/及び脂環式又は/及び芳香族基により置き換えられていてもよい、最大20個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐の飽和炭化水素残基である。
【0024】
「低級アルキル」及び同様に「低級アルコキシ」、「ヒドロキシ低級アルキル」、「フェノキシ低級アルキル」、「フェニル低級アルキル」という用語は、本明細書に前記及び後記の、1~6個、好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はi-プロピルなどの1~3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の飽和炭化水素残基を意味する。
【0025】
「アルキル」及び同様に「アルコキシ」という用語は、本明細書に前記及び後記の、最大20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の飽和炭化水素残基を意味する。
【0026】
「アルキル」又は「アルコキシ」の置換基は、ヒドロキシ、フッ素、塩素、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミド、脂環式又は芳香族基であり、ここで、それぞれにおいて1個以上の-CH-基が、少なくとも1個の連結基によって置き換えられていてもよい。
【0027】
本発明に関連して、「直鎖アルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘンイコシル、ドコシル、トリコシル又はクアトロコシル(quatrocosyl)であるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明に関連して、「脂環式基」は、例えば、置換又は非置換の非芳香族炭素環式又は複素環式基を意味し、そして例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、デカリン、アダマンタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ピロリジン、ピペリジン又はコレステロールなどのステロイド骨格のような3~30個の炭素原子を有する環系を表すが、ここで置換基は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルであり、更に好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルであり、そして最も好ましいのはメチル、エチル、プロピルである。好ましい脂環式基は、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセンであり、そして更に好ましいのは、シクロペンタン又はシクロヘキサンである。
【0029】
本発明に関連して、「芳香族基」は、好ましくは5、6、10又は14個の環原子の、例えば、フラン、ベンゼン又はフェニレン、ピリジン、ピリミジン、ナフタレンを意味し、そしてこれらは、少なくとも単一のヘテロ原子及び/又は少なくとも単一の連結基によって中断されないか又は中断されている、ビフェニレン又はトリフェニレンのような環集合体を形成してもよく;あるいはフェナントレン又はテトラリンのような縮合多環系を形成してもよい。好ましくは、芳香族基は、ベンゼン、フェニレン、ビフェニレン又はトリフェニレンである。更に好ましい芳香族基は、ベンゼン、フェニレン及びビフェニレンである。最も好ましいのはフェニレンである。
【0030】
「非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレン」という用語は、本発明の範囲において、1,2-、1,3-又は1,4-フェニレンを包含するが、特に1,3-又は1,4-フェニレンであって、非置換であるか又はフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで、好ましくはフッ素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ若しくはシアノで単置換若しくは多置換されているフェニレンを包含する。特に好ましいのは、1,4-フェニレン残基である。好ましいフェニレン残基の例は、1,3-又は1,4-フェニレン、4-又は5-メチル-1,3-フェニレン、4-又は5-メトキシ-1,3-フェニレン、4-又は5-エチル-1,3-フェニレン、4-又は5-エトキシ-1,3-フェニレン、2-又は3-メチル-1,4-フェニレン、2-又は3-エチル-1,4-フェニレン、2-又は3-プロピル-1,4-フェニレン、2-又は3-ブチル-1,4-フェニレン、2-又は3-メトキシ-1,4-フェニレン、2-又は3-エトキシ-1,4-フェニレン、2-又は3-プロポキシ-1,4-フェニレン、2-又は3-ブトキシ-1,4-フェニレン、2,3-、2,6-又は3,5-ジメチル-1,4-フェニレン、2,6-又は3,5-ジメトキシ-1,4-フェニレン、2-又は3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-、2,6-又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-又は3-クロロ-1,4-フェニレン、2,3-、2,6-又は3,5-ジクロロ-1,4-フェニレン、2-又は3-シアノ-1,4-フェニレンなどである。
【0031】
好ましい実施態様において、Sはスペーサー単位であり、ここで、m及びnが0である場合、スペーサー単位はSであり、そしてm又はnの少なくとも一方が1である場合、スペーサー単位はSであり;
ここで、S及びSは、非置換又は非置換の直鎖又は分岐の、-(CH-、更には-(CH-O-、-(CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-O-、-(CH-CO-、-(CH-CO-O-、-(CH-O-CO-、-(CH-NR-、-(CH-CO-NR-、-(CH-NR-CO-、-(CH-NR-CO-O-又は-(CH-NR-CO-NR-であって、場合によりC-C24-アルキル、ヒドロキシ、フッ素、塩素、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで単置換又は多置換されており;そして
ここで、1個以上の-CH-基は、連結基、脂環式又は芳香族基により置き換えられていてもよく;そして
ここで、r及びsは、それぞれ1~20の整数であり(ただし、Sの場合は3≦r+s≦24であり、そしてSの場合は6≦r+s≦24である);そして
及びRは、それぞれ独立して水素又は低級アルキルを意味する。
【0032】
本発明の更に好ましい実施態様において、S又はSは、置換又は非置換の直鎖又は分岐の、-(CH-、更には-(CH-O-、-(CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-O-、-(CH-CO-、-(CH-CO-O-、-(CH-O-CO-、-(CH-NR-、-(CH-CO-NR-、-(CH-NR-CO-、-(CH-NR-CO-O-又は-(CH-NR-CO-NR-であって(ここで、R及びRは、それぞれ独立して水素又は低級アルキルを意味する);好ましくは、S又はSは、場合によりC-C24-アルキル、好ましくはC-C12-アルキル、更に好ましくはC-C-アルキルで単置換又は多置換されているか(ここで、アルキルは、上記の意味及び優先傾向を有する)、あるいは、S又はSは、場合によりヒドロキシ、フッ素、塩素、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで単置換又は多置換されており;そしてここで、1個以上の-CH-基は、連結基、脂環式又は/及び芳香族基により置き換えられていてもよく;
ここで、Sの場合、単独接尾辞「r」は、4~24の間、好ましくは5~12の間、そして更に好ましくは5~8の間、特に6又は8の整数であり;そして
の場合、単独接尾辞「r」は、8~24の間、好ましくは8~12の間、そして特に8、9、10、11又は12の整数であり;そして
ここで、Sの場合、接尾辞「r及びs」の合計は、1~24の間、好ましくは2~12の間、そして更に好ましくは5~8の間の整数であり;そして
ここで、Sの場合、接尾辞「r及びs」の合計は、8~24の間、好ましくは8~12の間、そして特に8、9、10、11又は12の整数であり;そしてR及びRは、それぞれ独立して水素又は低級アルキルを意味する。
【0033】
本発明の最も好ましい実施態様において、S又はSは、非置換又は非置換の直鎖又は分岐の、-(CH-、更には-(CH-O-、-(CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-O-、-(CH-CO-、-(CH-CO-O-、-(CH-O-CO-、特に-(CH-O-、-(CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-O-、-(CH-CO-、-(CH-CO-O-、-(CH-O-CO-、更に特に-(CH-O-
であって、場合によりC-C24-アルキル、好ましくはC-C12-アルキル、更に好ましくはC-C-アルキル、又はヒドロキシ、フッ素、塩素、シアノ、エーテル、エステル、アミノ、アミドで単置換又は多置換されており;そしてここで、1個以上の-CH-基は、連結基、又は脂環式若しくは芳香族基により置き換えられていてもよく;そしてここで、単独接尾辞のr及びs並びに接尾辞のs及びrの合計は、上記の意味及び優先傾向を有しており;そしてR及びRは、それぞれ独立して水素又は低級アルキルを意味する。
【0034】
好ましくは、S、S中のアルキレンの置換基は、C-C24-アルキル、好ましくはC-C12-アルキル、更に好ましくはC-C-アルキル、ヒドロキシ、フッ素、塩素、シアノ、エーテル、エステル、アミノ又はアミドである。
【0035】
好ましい「スペーサー単位」Sの例は、1,6-ヘキシレン、1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,3-ブチレン、エチレンオキシカルボニル、エチレンオイルオキシ(ethyleneoyloxy)、プロピレンオキシ、プロピレンオキシカルボニル、プロピレンオイルオキシ(propyleneoyloxy)、ブチレンオキシ、ブチレンオキシカルボニル、ブチレンオイルオキシ(butyleneoyloxy)、プロピレンアミノ、ブチレンアミノ、ペンチレンアミノ、ヘキシレンアミノ、ヘプチレンアミノ、エチレンアミノカルボニル、プロピレンアミノカルボニル、ブチレンアミノカルボニル、エチレンカルボニルアミノ、プロピレンカルボニルアミノ、ブチレンカルボニルアミノ、ペンチレンカルボニルアミノ、ヘキシレンカルボニルアミノ、ヘプチレンカルボニルアミノ、ペンチレンアミノカルボニル、ヘキシレンアミノカルボニル、ヘプチレンアミノカルボニル、ペンチレンオキシ、ペンチレンオキシカルボニル、ペンチレンオイルオキシ(pentyleneoyloxy)、ヘキシレンオキシ、ヘキシレンオキシカルボニル、ヘキシレンオイルオキシ(hexyleneoyloxy)、ヘプチレンオキシ、ヘプチレンオキシカルボニル、ヘプチレンオイルオキシ(heptyleneoyloxy)であり、特に好ましいのはヘキシレンオキシである。
【0036】
好ましい「スペーサー単位」Sの例は、1,8-オクチレン、1,9-ノニレン、1,10-デシレン、1,11-ウンデシレン、1,12-ドデシレン、9-ノニレンオキシ、11-ウンデシレンオキシ、12-ドデシレンオキシ、11-ウンデシレンオキシカルボニル、12-ドデシレンオキシカルボニル、9-ノニレンオキシカルボニル、11-ウンデシレンオイルオキシ(undecyleneoyloxy)、12-ドデシレンオイルオキシ(dodecyleneoyloxy)、9-ノニレンオイルオキシ(nonyleneoyloxy)、11-ウンデシレンアミノ、12-ドデシレンアミノ、9-ノニレンアミノ、11-ウンデシレンアミノカルボニル、12-ドデシレンアミノカルボニル、9-ノニレンアミノカルボニル、11-ウンデシレンカルボニルアミノ、12-ドデシレンカルボニルアミノ、ノニレンカルボニルアミノなどである。
【0037】
特に好ましい「スペーサー単位」Sは、-(CH-で表される直鎖アルキレン基(式中、rは、6又は8である)、更には-(CH-O-、-(CH-CO-O-及び-(CH-O-CO-である。
【0038】
更に、特に好ましい「スペーサー単位」Sは、-(CH-で表される直鎖アルキレン基(式中、rは、8、9、10、11、12である)、更には-(CH-O-、-(CH-CO-O-及び-(CH-O-CO-である。
【0039】
本発明に関連して、「ハロゲン化」という用語は、アリールアクリル酸エステル基を含む光配向性ポリマー材料が、1個以上のハロゲン原子、好ましくは2個のハロゲン原子、更に好ましくは3個のハロゲン原子を含有することを意味する。本発明には、ハロゲン原子が全て同じ炭素原子に又は異なる炭素原子に結合していることが包含される。また、同じ分子が異なるハロゲン原子によってハロゲン化されてもよいことが包含される。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0040】
本発明に関連して、「シロキサン部分構造」は、少なくともSi-O-Si結合を有する官能基を含む任意の置換基を意味する。本発明の光配向性ポリマー材料は、1つ以上のシロキサン部分構造を含有してもよい。
【0041】
更に、好ましいのは、式(I)[式中、
は、アクリレート、メタクリレート及びスチレン誘導体であり;
環Aは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
環Bは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、1,4-若しくは2,6-ナフチレン、シクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
、Yは、それぞれ独立して共有単結合、-CHCH-、-O-、-CFO-、-OCF-、-CH-O-、-O-CH-、-CO-O-又は-O-OC-を意味し;
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシで置換されているフェニレンを意味するか、あるいはピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-フラニレン、1,4-又は2,6-ナフチレンを意味し;
Zは、-O-を意味し、そして
、D、m及びnは、上記の意味を有する]の反復構造単位を含む、アリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料の合成のための方法である。
【0042】
更に好ましいのは、式(I)[式中、
は、アクリレート、メタクリレートからなる群より選択されるモノマー単位であり;
環Aは、非置換フェニレン又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
環Bは、非置換フェニレン又はフッ素、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
、Yは、それぞれ独立して共有単結合、-CO-O-又は-O-OC-であり;
環Cは、非置換フェニレン又はアルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されているフェニレンであり;
Zは、-O-であり;そして
、D、m及びnは、上記の意味を有する]の反復構造単位を含む、アリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料の合成のための方法である。
【0043】
式(I)の反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料の調製方法は、前記のとおり工程a~dを含む。本発明の方法の工程aは、好ましくは、Y=O及びm=0の場合、式(IV)又は(IV’)の化合物の存在下で起こる。Y=Cの場合、本発明の方法の工程aにおいて、式(IV)又は(IV’)の化合物は必要とされない。
【0044】
好ましい実施態様において、式(III)の化合物は、以下によって特徴付けられる:
は、アクリレート、メタクリレートからなる群より選択されるモノマー単位であり;
環Aは、非置換フェニレン又はアルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
環Bは、非置換フェニレン又はフッ素、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンであり;
、Yは、それぞれ独立して共有単結合、-CO-O-、-O-OC-であり;
m、nは、それぞれ独立して0又は1であり;
は、上記のとおりである。
【0045】
式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、例えば、塩基、典型的にはトリエチルアミン、及び触媒量のジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で、トルエンなどを溶媒とする溶液中で起こる。
【0046】
ある実施態様において、本発明の方法の工程bは、式(I)の化合物が末端でハロゲン化されているか、又はシロキサン部分構造で置換されている場合、即ち、
Dが、少なくとも1回ハロゲン化されているか、又は1個以上のシロキサン部分構造を含有する、C-C12直鎖又は分岐のアルキレン鎖である場合に起こる。
【0047】
本発明の式(I)の反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料の合成方法の条件は、当業者には周知である。
【0048】
更なる実施態様において、本発明はまた、上記の方法によって得られる化合物、及び上記の方法によって得られる組成物に関する。更なる実施態様において、本発明は、ホモポリマーとして及び/又はモノマーとして上記の方法によって得られる式(I)の化合物を含むか、又は上記の方法によって得られる組成物、及び場合により溶媒を含む、配合物又は/及びブレンド物に関する。
【0049】
好ましくは、配合物は、特に非プロトン性又はプロトン性極性溶媒であるγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン又はN,N-ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、3-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)、アルコール類、イソプロパノール、n-ブタノール、ブタン-2-オール、特に1-メトキシプロパノール(MP)などの、更なる溶媒を含む。好ましいのは、非プロトン性極性溶媒、特にγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン又はN,N-ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、3-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸1-メトキシプロピル(MPA)である。
【0050】
式(I)のホモポリマー又は上記の方法によって得られる化合物は、分子量MWが10,000~10,000,000の間、好ましくは20,000~900,000の間、更に好ましくは50,000~500,000の間、更により好ましくは75,000~400,000の間、特に好ましくは100,000~300,000の間である。
【0051】
(M)は、下記式:
【0052】
【化7】

で示されるようなアクリレート、下記式:
【0053】
【化8】

で示されるようなアクリルアミド、下記式:
【0054】
【化9】

で示されるようなビニルエーテル及びビニルエステル、下記式:
【0055】
【化10】

で示されるようなスチレン誘導体、下記式:
【0056】
【化11】

で示されるようなシロキサンであり、ここで、
は、水素又は低級アルキルを意味する。
【0057】
(M)の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、2-クロロアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2-クロロ-アクリルアミド、スチレン誘導体及びシロキサンである。
【0058】
アクリレート、メタクリレート、スチレン誘導体及びシロキサンが特に好ましい(M)である。
【0059】
特に大いに好ましい(M)は、アクリレート、メタクリレート及びスチレン誘導体である。
【0060】
特に好ましいのは、n=0及びm=1である、式(I)の反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料を含むホモポリマー材料であり、ここで、
は、アクリレート、メタクリレート及びスチレン誘導体であり;
環Bは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
は、共有単結合、-CO-O-又は-O-OC-を意味し;
は、置換又は非置換の直鎖又は分岐の、-(CH-、更には-(CH-O-、-(CH-O-(CH-、-(CH-O-(CH-O-、-(CH-CO-、-(CH-CO-O-、-(CH-O-CO-、-(CH-NR-、-(CH-CO-NR-、-(CH-NR-CO-、-(CH-NR-CO-O-又は-(CH-NR-CO-NR-であって、ここで接尾辞「r」は、8~24の間、好ましくは8~12の間、特に8、9、10、11又は12の整数であり;そして
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシで置換されているフェニレンを意味するか、又は1,4-若しくは2,6-ナフチレンを意味し;
Zは、-O-を意味し;そして
Dは、場合により少なくとも1回ハロゲン化されているか、又は1個以上のシロキサン部分構造を含有する、C-C直鎖又は分岐のアルキレン鎖である。
【0061】
別に好ましいのは、式(I)の化合物を含む組成物であり、ここで、M、S、m及びnは、上記と同義であり;そして
環Aは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
環Bは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、1,4-若しくは2,6-ナフチレン又はシクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
、Yは、それぞれ独立して共有単結合、-CHCH-、-O-、-CH-O-、-O-CH-、-OCF-、-CFO-、-CO-O-又は-O-OC-を意味し;
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシで置換されているフェニレンを意味するか、又はピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-フラニレン、又は1,4-若しくは2,6-ナフチレンを意味し;
Zは、-O-を意味し;そして
Dは、場合により少なくとも1回ハロゲン化されているか、又は1個以上のシロキサン部分構造を含有する、C-C直鎖又は分岐のアルキレン鎖である。
【0062】
本発明に関連して、上記の方法は、式(I)の反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料を含むホモポリマー材料の合成に使用され、ここで:
、S及びm、nは、上記と同義であり;そして
環Aは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
環Bは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、1,4-若しくは2,6-ナフチレン又はシクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
、Yは、それぞれ独立して共有単結合、-CHCH-、-O-、-CH-O-、-O-CH-、-CO-O-、-O-OC-、-CF-O-又は-O-CF-を意味し;
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシで置換されているフェニレンを意味するか、又はピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、2,5-フラニレン、又は1,4-若しくは2,6-ナフチレンを意味し;
Zは、-O-を意味し;そして
Dは、場合により少なくとも1回ハロゲン化されているか、又は場合により1個以上のシロキサン部分構造を含有する、C-C直鎖又は分岐のアルキレン鎖である。
【0063】
特に好ましいのは、式(I)の反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料を含むホモポリマー材料であり、ここで、nは、0を意味し;そして
及びSは、上記と同義であり;そして
環Bは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシで置換されているフェニレンを意味するか、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル又はシクロヘキサン-1,4-ジイルを意味し;
は、共有単結合、-CO-O-又は-O-OC-を意味し;
mは、0又は1を意味し;
環Cは、非置換であるか又は場合によりフッ素、塩素、シアノ、アルキル若しくはアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシで置換されているフェニレンを意味するか、又は1,4-若しくは2,6-ナフチレンを意味し;
Zは、-O-を意味し;そして
Dは、場合により少なくとも1回ハロゲン化されているか、又は場合により1個以上のシロキサン部分構造を含有する、C-C直鎖又は分岐のアルキレン鎖であり、好ましくはDは、メチル、エチル又はプロピルである。
【0064】
重合には、反復構造単位は、上記のとおり個々の成分とは別に最初に調製される。続いてポリマーの形成は、紫外線又は熱の影響下で、あるいは好ましくはラジカル開始剤又は無機若しくは有機過酸化物又はイオン開始剤の作用によって、それ自体公知のやり方で行われる。ラジカル開始剤は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスメチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(AAPH)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(ACHN)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(ACVA)及び類似化合物などのアゾ系開始剤であることができる。無機過酸化物の例は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムである。有機過酸化物の例は、tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウリルペルオキシド又はペルオキシカルボナートである。市販の過酸化物の例は、Luperox(登録商標)LP(ジラウリルペルオキシド)、Luperox(登録商標)DI(ジ-tert-ブチルペルオキシド)又はPerkadox(登録商標)IPP(ジイソプロピルペルオキシジカルボナート)であるが、これらに限定されない。イオン開始剤は、フェニルリチウム若しくはナフチルナトリウムなどのアルカリ有機化合物、又はBF、AlCl、SnCl若しくはTiClなどのルイス酸である。これらのリストは網羅的ではなく、他の開始剤も本発明に関連して想定される。モノマーは、溶液、懸濁液、乳濁液中で、又は沈殿によって重合させることができるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明のポリマーの調製に使用される溶媒は、上記と同じである。
【0066】
本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物は、他の光配向性又は非光配向性のポリマー、コポリマー、オリゴマー又はモノマーと更に混合することができる。
【0067】
本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物は、溶媒及び/又は添加剤であって、
-シラン含有化合物又は/及び
-エポキシ含有架橋剤又は/及び
-チオール含有化合物又は/及び
-光増感剤若しくは光ラジカル発生剤などの光活性添加剤、又は/及び
-カチオン性光開始剤、又は/及び
-界面活性剤、又は/及び
-乳化剤、又は/及び
-抗酸化剤、又は/及び
-レベリング剤、又は/及び
-重合性液晶、又は/及び
-官能性(メタ)アクリレート、又は/及び
-硬化性化合物
などを更に含有してもよい。
【0068】
適切なシラン含有添加剤は、Plast. Eng. 36 (1996), (Polyimides, fundamentals and applications), Marcel Dekker, Inc.に記載されている。
【0069】
適切なエポキシ含有架橋添加剤は、4,4’-メチレン-ビス-(N,N-ジグリシジルアニリン)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸1,2,4,5-N,N’-ジグリシジルジイミド、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルシクロヘキシルアミンなどを包含する。
【0070】
適切なチオール含有化合物は、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチラート)、1,2-プロピレングリコール(3-メルカプトブチラート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチラート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトイソブチラート)、1,2-プロピレングリコールビス(2-メルカプトイソブチラート)又はトリメチロールプロパントリス(2-メルカプトイソブチラート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトブチラート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ビスフェノールAビス(3-メルカプトブチラート)及びトリフェノールメタントリス(3-メルカプトブチラート)を包含し、有用な高官能基化ポリチオールは、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)(PETMP)、及びトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)(TMPTMP)などを包含する。
【0071】
適切な光活性添加剤は、2,2-ジメトキシフェニルエタノン、ジフェニルメタノンとN,N-ジメチルベンゼンアミン又は4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチルとの混合物、キサントン、チオキサントン、Irgacure(登録商標)184、369、500、651及び907(BASF)、ミヒラーケトン、トリアリールスルホニウム塩などを包含する。
【0072】
官能性(メタ)アクリレートは、当業者には周知の特定のデバイスで使用することができる。このような官能性(メタ)アクリレートは単官能性であってよく、そしてシアノフェニル又はシアノベンジル含有(メタ)アクリレートに属し得る。例は、シアノフェニル-ベンゾアート-アクリレート、シアノビフェニル-アクリレート又は4-(6-プロパ-2-エノイルオキシヘキソキシ)安息香酸(4-シアノフェニル)である。
【0073】
硬化性化合物は、有機化合物と無機化合物の両方であり、これらは光配向性部分構造を含まない。硬化性化合物は、表面の不均一性を低減するため、表面又は担体をより硬くするため、スクラッチに対する耐性を高めるため、あるいは機械的又は化学的摩耗に対する耐性を高めるために、表面又は担体を平坦化するのに使用される。このような硬化性化合物は、ポリマー、デンドリマー、オリゴマー、プレポリマー及びモノマーを包含するが、これらは、放射線又は熱のいずれかによって重合されてもよい。適切なポリマーの種類の例は、ポリアルキレン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリシクロオレフィンCOP/COC、ポリブタジエン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロリド、セルロース、及び三酢酸セルロースなどのセルロース誘導体であるが、これらに限定されない。適切な種類のモノマーの例は、単官能性及び多官能性(メタ)アクリレート、エポキシ、イソシアナート、アリル誘導体及びビニルエーテルである。
【0074】
硬化性化合物は、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物に添加してもよいことが本発明に包含される。また、硬化性化合物は、本発明の配向層の下又は上に層として添加してもよいことが包含される。
【0075】
本発明はまた、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物の、液晶用の配向層を調製するための使用に関する。
【0076】
更に本発明は、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物を配向光で照射することを含む、液晶用の配向層の調製方法に関する。
【0077】
好ましくは、この方法は以下を含む:
-本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物を担体に適用すること、
-そして、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物を配向光で照射すること。
【0078】
特に好ましいのは、2つの照射プロセスが、一方は配向光を用いて、他方は等方性光などの配向光を用いるか又は用いずに行われる方法である。
【0079】
本発明に関連して使用されるとき「担体」という用語は、好ましくは透明又は非透明の、複屈折又は非複屈折の、好ましくはガラス又はプラスチック基板、ポリマーフィルム(ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリプロピレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンコポリマー(COP)など)、又はシリコンウェーハであるが、これらに限定されない。担体は、剛性又は柔軟性があり、任意の形態又は任意の形状(凹面又は凸面など)のものであってよい。担体は、有機層、絶縁層又は金属層などの追加の層を有してもよい。層は様々な機能を有することができ、例えば、有機層は、支持体でコーティングされる材料の相溶性を高めるプライマー層としてコーティングすることができる。金属層(酸化インジウムスズ(ITO)など)は、例えば、ディスプレイなどの電気光学デバイスに使用されるとき、電極として使用されてもよく、又は反射板として機能する場合がある。担体はまた、例えば、薄膜トランジスタ、電極、又はカラーフィルターを含むかもしれない、LCD用の基板などの特定の機能を有する光学素子又はデバイスであってもよい。別の例では、担体は、OLED層構造を含むデバイスである。担体はまた、位相差フィルム、偏光フィルム又はシート偏光子などの偏光子、市販のVikuiti(商標)DBEFフィルムなどの反射偏光子であってもよいが、これらに限定されない。
【0080】
一般に、本発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物は、当技術分野において公知の一般的なコーティング及び印刷方法によって適用される。コーティング方法は、例えば、スピンコーティング、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスロールコーティング、キャストコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダイコーティング、ディッピング、ブラッシング、バーによるキャスティング、ローラーコーティング、フローコーティング、ワイヤーコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ワーラーコーティング(whirler-coating)、カスケードコーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティング、ギャップコーティング、ロータリースクリーン、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、メータリングロッド(マイヤー(Meyer)バー)コーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ホットメルトコーティング、ローラーコーティング、フレキソコーティング、電着コーティングである。
【0081】
印刷方法は、例えば、シルクスクリーン印刷、フレキソグラフィック印刷などのレリーフ印刷、インクジェット印刷、直接グラビア印刷若しくはオフセットグラビア印刷などのインタリオ印刷、オフセット印刷などのリソグラフィー印刷、又はスクリーン印刷などのステンシル印刷である。
【0082】
担体は、光配向性ポリマー材料の、あるいは本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物、及び/又は光配向可能な材料の蒸着中に移動し得る。例えば、生産が連続的なロールツーロール法で行われる場合。
【0083】
本発明に関連して、「配向光」という用語は、光配向可能な材料に異方性を誘導することができ、そして部分的に直線偏光若しくは楕円偏光であることができるか又は非偏光であることができ、かつ/又は任意の方向から配向層の表面に入射する光を意味するものとする。配向光の波長、強度及びエネルギーは、光配向可能な材料及び光配向基の感光性に応じて選択される。典型的には、波長はUV-A、UV-B及び/又はUV-Cの範囲内、あるいは可視範囲にある。好ましくは、配向光は、450nm未満の波長の光を含む。更に好ましいのは、配向光が420nm未満の波長の光を含むことである。
【0084】
UV光は、好ましくは、光配向基の吸光によって選択される、即ち、フィルムの吸光は、LP-UV照射に使用されるランプの発光スペクトルと、更に好ましくは直線偏光UV光と重なるはずである。使用される強度及びエネルギーは、材料の感光性に、及び対象となる配向性能に応じて選択される。ほとんどの場合に、非常に低いエネルギー(数mJ/cm)でも既に高い配向品質につながる。
【0085】
配向光が偏光されている場合、少なくとも部分的に直線偏光、楕円偏光(例えば、円偏光など)されていることができる。配向光はまた非偏光であることができる。配向光は、垂直又は斜めに露光することができる。
【0086】
配向光が直線偏光されている場合、配向光の偏光面とは、配向光の伝搬方向及び偏光方向によって定義される平面を意味するものである。配向光が楕円偏光されている場合、偏光面は、光の伝搬方向によって、及び偏光楕円の長軸によって定義される平面を意味するものである。
【0087】
よって、面積によって選択的に制限される領域に配向層を製造するために、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物を適用することができる。例えば、最初に製造され、スピンコーティング装置で、場合により電極でコーティングされた担体(例えば、酸化インジウムスズ(ITO)でコーティングされたガラス板)上に、0.05~50μm厚さの均一な層が得られるように回転させることができる。次いで、配向させる領域を、例えば、構造を形成するために偏光子及び場合によりマスクを使用した、水銀高圧ランプ、キセノンランプ又はパルスUVレーザーに露光することができる。露光時間は、個々のランプの出力に依存し、数分から数時間まで変化させることができる。ただし、光反応はまた、例えば、光反応に適した放射線のみを通過させるフィルターを使用して均一な層を照射することによっても達成できる。
【0088】
本発明の好ましい方法は、時間が重要なパラメーターであり、特に照射時間が重要なパラメーターである、特にロールツーロール法などの配向層を調製するための方法に関する。
【0089】
本発明はまた、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物を含む配向層に関する。
【0090】
本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマー含む組成物の、液晶用の配向層としての使用、更には特にハイブリッド層素子の製造のための、非構造化及び構造化光学素子、電気光学素子及びナノ電気素子におけるその使用もまた、本発明の目的である。更に、これらは透過率可変フィルムにおいて使用することができる。
【0091】
「構造化」という用語は、偏光された配向光の方向を局所的に変化させることによって誘導される、方位配向の変化のことをいう。
【0092】
更に、本発明は、本発明による組成物を含む光学素子、電気光学素子又はナノ電気素子に関する。
【0093】
このような光学素子、電気光学素子又はナノ電気素子は、光配向可能な物体とも呼ばれる。このような光配向可能な物体は、未公開出願EP 16182085.7及び公開出願WO 2015/024810に記載されており、これらは引用例として本明細書に取り込まれる。
【0094】
更に、本発明は、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物の、有機化合物又は無機化合物を配向させるための、特に液晶及び液晶ポリマーを配向させるための配向層としての使用に関する。
【0095】
配向層は、当業者には周知の手段によって識別又は検出することができる未反応のモノマーを依然として含有することができる。
【0096】
本発明はまた、光学的、電気光学的又はナノ電気的部品及びシステム、特に多層システムの、あるいはディスプレイ導波管、セキュリティ又はブランド保護素子、バーコード、光学格子、フィルター、3D位相差フィルムなどの位相差フィルム、補正フィルム、反射型偏光フィルム、吸収型偏光フィルム、異方性散乱フィルム、補正及び位相差フィルム、ねじれ位相差フィルム、コレステリック液晶フィルム、ゲストホスト液晶フィルム、モノマーコルゲートフィルム、スメクチック液晶フィルム、偏光子、圧電セル、非線形光学特性を示す薄膜、装飾的光学素子、輝度向上フィルム、波長帯選択補正用部品、マルチドメイン補正用部品、マルチビュー液晶ディスプレイの部品、アクロマティックリターダ、偏光状態修正/調整フィルム、光学的又は電気光学的センサーの部品、輝度向上フィルムの部品、光通信機器用の部品、異方性吸収体を有するG/H偏光子、反射型円偏光子、反射型直線偏光子、MC(モノマーコルゲートフィルム)、液晶ディスプレイ、特にねじれネマチック(TN)液晶ディスプレイ、ハイブリッド配向ネマチック(HAN)液晶ディスプレイ、電気制御複屈折(ECB)液晶ディスプレイ、超ねじれネマチック(STN)液晶ディスプレイ、光学補正複屈折(OCB)液晶ディスプレイ、pi-セル液晶ディスプレイ、インプレーンスイッチング(in-plane switching)(IPS)液晶ディスプレイ、フリンジ電界スイッチング(FFS)液晶ディスプレイ、垂直配向(VA)液晶ディスプレイの製造における本発明の配向層の使用に関する;全ての上記ディスプレイ型は、透過又は反射又は半透過モードのいずれかで適用される。
【0097】
光学的、電気光学的又はナノ電気的部品及びシステム、特に多層システム及びデバイスは、パターニングされることができるか又はパターニングされないことができる。
【0098】
パターニングという用語は、好ましくは、複屈折パターニング及び/又は層厚パターニング及び/又は光軸配向のパターニング、及び/又は重合度のパターニングを意味する。複屈折とは、異常光と常光の屈折率の差を意味する。
【0099】
よって、本発明は更に、本方法の発明の方法によって得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物を含む、光学的、電気光学的又はナノ電気的な素子、システム及びデバイスに関する。
【0100】
好ましいのは、本発明の配向層、及び液晶層又は液晶ポリマー層などの少なくとも1つの配向可能な層を含む、光学的、電気光学的又はナノ電気的な素子、システム及びデバイスである。
【0101】
光学的な部品、システム又はデバイスは、電磁放射線を作り出すか、操作するか、又は測定する。
【0102】
電気光学的な部品、システム又はデバイスは、電界によって材料の光学特性を変更することによって作動する。よって、材料の電磁的(光学的)状態と電気的(電子的)状態の間の相互作用に関係する。
【0103】
配向層は、例えば、ネマチック液晶などの液晶のようなスレーブ材料を、それらの長軸を好ましい方向に沿って配向させる能力を有する。
【0104】
本発明はまた、スレーブ材料を配向させるための、本発明の配向層の使用に関する。「スレーブ材料」とは、光配向した材料との接触時に異方性を確立する能力を有する任意の材料のことをいうものである。光配向した材料の異方性とスレーブ材料の異方性の性質は、互いに異なる場合がある。スレーブ材料の例は液晶である。このようなスレーブ材料は、配向層の上に適用される。スレーブ材料は、溶媒の有無にかかわらずコーティング及び/又は印刷によって適用されてもよく、そして全配向層又はその一部のみに適用されてもよい。スレーブ材料は、熱処理又は化学線への曝露によって重合させてもよい。重合は、窒素などの不活性雰囲気下、又は真空下で実施してもよい。スレーブ材料は、等方性又は異方性の色素及び/又は蛍光色素を更に含有してもよい。
【0105】
スレーブ材料は、重合性及び/又は非重合性化合物を含んでもよい。本発明に関連して、「重合性」及び「重合(した)」という用語は、それぞれ「架橋可能な」及び「架橋(した)」という意味を包含するものとする。同様に、「重合」は「架橋」という意味を包含するものとする。
【0106】
本出願に関連して使用される液晶ポリマー(LCP)材料は、液晶モノマー及び/又は液晶オリゴマー及び/又は液晶ポリマー及び/又は架橋液晶を含む、液晶材料を意味するものとする。液晶材料が液晶モノマーを含む場合、そのようなモノマーは、典型的には、本発明の光配向性ポリマー材料を含む組成物の光配向性ポリマー材料との接触により、LCP材料に異方性が生じた後に重合されてもよい。重合は、熱処理によって、又はUV光を好ましくは含む化学線への曝露によって開始してもよい。LCP材料は、単一型の液晶化合物からなっていてもよいが、異なる重合性及び/又は非重合性化合物の組成物であってもよく、そしてそこで全ての化合物が液晶化合物である必要はない。更に、LCP材料は、添加剤、例えば、光開始剤、又は等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光色素を含有してもよい。
【0107】
「異方性」又は「異方性の」という用語は、方向に依存する性質のことをいう。異方性のあるものは、異なる方向において異なって見えたり、異なる特性を持っていたりする場合がある。これらの用語は、例えば、光吸収、複屈折、電気伝導率、分子配向、他の材料の配向のための性質(例えば、液晶)、又は弾性率などの機械的性質のことをいう。本出願に関連して、「配向方向」という用語は、異方性の対称軸のことをいうものとする。
【0108】
隣接する液晶層の平面配向、傾斜又は垂直配向の誘導のための使用が好ましい;更に好ましいのは、隣接する液晶層における平面配向又は垂直配向の誘導のための使用である。
【0109】
驚くべきことに、本発明において、工程a~dを含む、式(I)の反復構造単位を含むアリールアクリル酸エステル光配向性ポリマー材料の合成方法が、先行技術に開示された方法に対する経済的改善を示すことが見い出された。更には、前記方法は、収率も改善されている。更に、重合は有毒なラジカル開始剤の使用を必要とせず、重合工程は容易に制御可能で信頼性が高い。得られるホモポリマーは高純度である。本発明の方法により得られる式(I)の化合物を含む組成物、又は式(I)の反復構造単位を含むホモポリマー及び少なくとも1つの式(I)のモノマーを含む組成物は、当業者には公知の方法によってホモポリマーとモノマー量との比率を容易に制御することができる。これらの方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を包含するが、これに限定されない。前記組成物は、それらを光配向組成物として直接使用することができること、並びに更なる単離及び/又は精製工程を必要としないことという利点を有する。
【0110】
その上、驚くべきことに本発明において光配向組成物中のモノマー化合物の量が増加するにつれて、露光エネルギーとは無関係に、様々な傾斜角が利用できることが見い出された。
【0111】
更に、驚くべきことに本発明において光配向組成物中のモノマー化合物の量が増加するにつれて、得られた配向層及び液晶ポリマーでコーティングされた配向層が、露光エネルギーの偏差及び変動に対して更に堅牢になることが見い出された。
【図面の簡単な説明】
【0112】
本発明は、添付の図面によって更に説明される。種々の特徴が必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことが強調される。
図1.1】図1は、配向層の様々な露光エネルギーに対する2つの界面(液晶ポリマー層と空気との界面及び液晶と配向層との界面)での液晶配向の特性の例を描く(ここで、傾斜角は、液晶分子の主軸と基板表面との間の角度に相当する)。実線は、液晶と配向層との界面での傾斜角を表す。点線は、液晶ポリマー層と空気との界面での傾斜角を表す。様々な記号は、ポリマー1とそのモノマー化合物2との様々な比率に対応する。
【0113】
本発明のポリマーは、以下の実施例によって更に詳細に説明される。
【実施例
【0114】
[実施例1]
4-[8-(2-メチルプロパ-2-エノイルオキシ)オクトキシ]安息香酸[2-メトキシ-4-[(E)-3-メトキシ-3-オキソ-プロパ-1-エニル]フェニル]化合物2の調製
【0115】
【化12】

4-((8-ヒドロキシオクチル)オキシ)安息香酸(Angeneから)10.0g、ヒドロキノン 1.20g、p-トルエンスルホン酸一水和物 1.30g及びメタクリル酸 30.0gをトルエン 100.0gに懸濁する。得られた混合物を、窒素雰囲気下で、ディーンスターク分離器を介して生成した水を除去しながら加熱還流する。4時間の還流後、トルエンの2/3を真空下で留去する。エタノール 100mLを反応混合物に加え、次に室温まで冷却する。水 100gをゆっくりと加えて「白色の沈殿物」を生成させる。固体を濾別し、水で3回洗浄して、化合物1 6.35gを、HPLC純度>93%の白色固体として得る。この化合物1は4-[8-(2-メチルプロパ-2-エノイルオキシ)オクトキシ]安息香酸である。
化合物1のDMSO-d中の1H NMR(300MHz):12.59 (s, 1H), 7.87 (d, 2H), 6.98 (d, 2H), 6.01 (s, 1H), 5.65 (s, 1H), 4.08 (m, 4H), 1.86 (s, 3H), 1.71 (m, 4H), 1.32 (m, 8H).
化合物1 4.5g及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.03gをトルエン 100gに溶解する。反応混合物を70℃に加熱し、塩化チオニル 1.22mLを反応混合物に滴下する。添加後、混合物を70℃で4時間撹拌する。過剰の塩化チオニルを真空下で反応混合物から留去する。反応混合物を10℃に冷却し、トルエン 40g中の(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)プロパ-2-エン酸メチル 2.8g、ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.16g及びトリメチルアミン 2.2mLの溶液を滴下して、白色の混濁溶液を生成させる。反応混合物を室温で30分間撹拌する。メタノール 100gを10℃で反応混合物に加えて白色の沈殿物を生成させ、これを濾別し、メタノール及び水で洗浄して、化合物2 3.1gを、HPLC純度>95%の白色固体として得る。
化合物2のDMSO-d中の1H NMR(300MHz):8.05 (d, 2H), 7.68 (d, 1H), 7.57 (s, 1H), 7,37 (d, 1H), 7.25 (d, 1H), 7.11 (d, 2H), 6.98 (d, 1H), 6.01 (s, 1H), 5.66 (s, 1H), 4.09 (m, 4H), 3.81 (m, 6H), 1.88 (s, 3H), 1.72 (m, 4H), 1.34 (m, 8H).
【0116】
[実施例2]
重合方法 ポリ4-[8-(2-メチルプロパ-2-エノイルオキシ)オクトキシ]安息香酸[2-メトキシ-4-[(E)-3-メトキシ-3-オキソ-プロパ-1-エニル]フェニル]の調製(ポリマー1)。
化合物2 14gをシクロヘキサノン(CHN)52.50gと一緒に混合し、完全に溶解するまで窒素下で撹拌する。反応混合物を窒素下で75℃まで加熱する。Luperox(登録商標)LP(Sigmaからの過酸化ジラウリル)0.22gを一度に加える。反応混合物を75℃で5時間維持し、次に温度を100℃に上昇させる。100℃で1時間後、反応混合物を室温に冷却し、濾過して、CHN溶液中のポリマーを得る。得られたポリマー溶液は、光配向組成物1と呼ばれる。
【0117】
【化13】

光配向組成物1は、ポリマー1(Mw=264690及びMn=60031)及びそのモノマー化合物2を90:10の比率(GPCで測定)で含有する。
【0118】
[実施例3]
架橋可能な液晶化合物1(LCC1)は、2,5-ビス[[4-(6-プロパ-2-エノイルオキシヘキソキシ)ベンゾイル]オキシ]安息香酸ペンチルであり、以下の分子構造を有する。
【0119】
【化14】

架橋可能な液晶化合物2(LCC2)は、2,5-ビス[[4-(6-プロパ-2-エノイルオキシヘキソキシ)ベンゾイル]オキシ]安息香酸3-シアノプロピルであり、以下の分子構造を有する。
【0120】
【化15】

架橋可能なモノマー化合物3は、4-(6-プロパ-2-エノイルオキシヘキソキシ)安息香酸(4-シアノフェニル)であり、以下の分子構造を有する。
【0121】
【化16】

溶液S-LCP1は、35重量%の
98.525% LCC1
1.00% Irgacure 907(BASF)
0.20% Tinuvin 123(BASF)
0.25% Tegoflow 300(Evonik)
0.025% BHT(Sigma Aldrich)
の成分を、80%酢酸n-ブチルと20% CNHとの65重量%の溶媒混合物に溶解して、混合物を室温で30分間撹拌することにより調製される。
溶液S-LCP2は、25重量%の
48.45% LCC2
48.45% 化合物3
3.0% Irgacure 369(IGM Resins)
0.1% BHT(Sigma Aldrich)
の成分を、80%メチルエチルケトン(MEK)と20%シクロヘキサノン(CHN)との75重量%の溶媒混合物に溶解して、混合物を室温で30分間撹拌することにより調製される。
溶液S-LCP3は、35重量%の
49.45% LCC1
49.45% LCC2
1.0% Irgacure 907(BASF)
0.1% BHT(Sigma Aldrich)
の成分を、60%酢酸ブチル(BA)と40%シクロヘキサノン(CHN)との65重量%の溶媒混合物に溶解して、混合物を室温で30分間撹拌することにより調製される。
【0122】
[実施例4]:光配向溶液(PAS1)の調製
溶液PAS1は、85重量%のシクロペンタノン(CP)に15重量%の光配向組成物1を加えて、混合物を室温で30分間撹拌することにより調製される。
【0123】
応用実施例
[実施例1]:プライマーコーティングされた基板の調製
三酢酸セルロース(TAC)ホイルを、Kbarコーター(バーサイズ1)を使用して、プライマー溶液(80%酢酸ブチル中の固形分20重量% DYMAX OC-4021)でコーティングした。湿ったフィルムを80℃で30秒間乾燥させた;得られた乾燥フィルムの厚さは約2μmであった。次に乾燥フィルムをUV光(1500mJ、窒素雰囲気下)に露光した。
【0124】
[実施例2]:PAS1を使用した配向層の調製
実施例1のプライマーコーティングされたTAC基板を、PAS1でKbarコーティングした(バーサイズ0)。湿ったフィルムを80℃で30秒間乾燥させた;乾燥フィルムの厚さは約100nmであった。次に乾燥フィルムを、10~100mJ/cmの種々の露光エネルギーを有するコリメートな直線偏光されたUV(LPUV)光(280~320nm)である配向光に露光した。偏光面は、TAC基板上の基準縁に対して0°であった。
【0125】
[実施例3]:配向層によって配向されたLCP1層の調製
LCP1層は、Kbarコーティング(バーサイズ1)溶液S-LCP1によって、実施例2の配向層の上に調製される。湿った層を50℃で60秒間乾燥させ、続いて液晶を30mW/cmのUV-A露光により50秒間窒素雰囲気下で室温で架橋させる。
【0126】
[実施例4]:配向の評価
効率的な製造過程のためには、配向層によって配向されたLCP層において良好な可視で均一な(目に見える欠陥のない)コントラストを達成するために、光配向層がどれだけの露光エネルギーを必要とするかを知ることは関心がある。製造されたフィルムは、交差した偏光子間で分析された。
配向の品質は以下のとおりランク付けされている:
・ ▲▲ 非常に良好なアライメント均一な配向
・ ▲ 良好な配向(ディスクリネーションライン(DL)面積<コーティング面積の1%)
・ ○ わずかなDL(コーティング面積の1<<5%)
・ × DLが見える(コーティング面積の>5%)
・ ×× 不均一な配向又は配向なし
光学デバイスは、以下の順序で製造されており、プライマーコーティングされた基板(応用実施例1で製造されたもの)は、PAS1(応用実施例2で説明されたもの)を使用し、LCP層(応用実施例3に示されたもの)を配向して、配向層によってコーティングされている。種々の露光エネルギーを使用して光配向材料を配向させている。
結果の要約を以下の表に示す:
【0127】
【表1】

PAS1は、目に見える欠陥のない非常に優れたアライメント品質を得るのに非常に低いLPUV線量しか必要としない。
【0128】
[実施例5]:PAS1を使用する配向層の調製
COP基板を、Corona(0.75kW、20rpm、2回)で前処理した。前処理された基板を、PAS1でKbarコーティングした(バーサイズ0)。湿ったフィルムを80℃で30秒間乾燥させた。乾燥フィルムの厚さは約100nmであった。乾燥フィルムを、120mJ/cmの露光エネルギーを有する非偏光UV光(広帯域Fusion Hバルブ型)に露光した。
【0129】
[実施例6]:配向層によって配向されたLCP2層の調製
LCP2層は、Kbarコーティング(バーサイズ2)溶液S-LCP2によって実施例5の配向層の上に調製される。湿った層を50℃で120秒間乾燥させ、続いて液晶を窒素雰囲気下、室温で30mW/cmのUV-A露光により50秒間架橋させて、液晶組成物の硬化層を形成する。液晶はホメオトロピックに配向した。位相差層の特性を図1に示す。
点線は、種々の視野角でのCOP基板の位相差の変化を表す。
実線は、異なる視野角での実施例6のLCP2層の位相差測定を表す。液晶層は正のCプレートとして挙動する。ホメオトロピック配向は、偏光なしで配向された光配向溶液PAS1によって誘導される。
【0130】
[実施例7]:光配向溶液PAS2の調製
光配向溶液PAS2は、97重量%のシクロペンタノンに又は50%シクロペンタノン(CP)と50%シクロヘキサノン(CHN)との混合物に、3重量%の97:3、90:10、85:15、80:20及び50:50の比率のポリマー1とそのモノマー化合物2の混合物を加えて、混合物を室温で30分間撹拌することによって調製される。
【0131】
[実施例8]:PAS2を使用する配向層の調製
D263ガラス(ホウケイ酸ガラス)基板を洗浄し、様々な比率のポリマー1及びそのモノマー化合物2を含む種々のPAS2により1,700rpmで30秒間スピンコートした。湿ったフィルムを、180℃で10分間乾燥させた。乾燥フィルムの厚さは約100nmであった。乾燥フィルムを、10、20、30、40、50、60、70、80及び90mJ/cmの露光エネルギーを有する偏光UV光(高圧水銀ランプ)に、表面の法線から50°の斜め入射角で露光した。偏光面は、D263ガラス基板上の基準縁に対して0°であった。
【0132】
[実施例9]:配向層PAS2によって配向されたLCP3層の調製
LCP3層は、溶液S-LCP3を2,500rpmで40秒間スピンコーティングすることによって実施例8の配向層の上に調製される。湿った層を60.5℃で60秒間乾燥させ、続いて液晶を窒素雰囲気下、室温で30mW/cmのUV-A露光により50秒間架橋させて、液晶組成物の硬化層を形成する。液晶はハイブリッド配向を示したが、ここで、PAS2-LCP3界面での液晶の傾斜角は一般にLCP3-空気界面での液晶の傾斜角とは異なっている。フィルムの大部分では、傾斜角は界面の傾斜角間で直線的に変化すると考えられる。PAS2の様々な露光エネルギーに対する界面での液晶配向の特性を図1に示すが、ここで、傾斜角は液晶分子の主軸と基板表面の間の角度に相当する。
実線は、PAS2-LCP3界面での傾斜角を表す。点線は、LCP3-空気界面での傾斜角を表す。様々な記号は、ポリマー1とそのモノマー化合物2との様々な比率に相当する。
図1.1】