(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電力変換装置、電力変換方法、および、産業機器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241210BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P27/06
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2022013336
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 裕太
(72)【発明者】
【氏名】田口 義行
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-086347(JP,A)
【文献】特開2001-282368(JP,A)
【文献】特開2001-259860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/06
H05B 6/68
G05F 1/10
B23K 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される電源を直流に変換する直流変換部と、
前記直流変換部から出力される直流電流を平滑する平滑部と、
前記平滑部から出力される平滑電流をスイッチングする電力変換部と、
前記電力変換部を制御する制御ユニットを備える電力変換装置であって、
前記平滑部と並列接続され、前記制御ユニットの電源電圧を生成するトランス部と、
前記平滑電流が変動した場合にもアナログ一定電圧を出力する定電圧出力部と、
前記アナログ一定電圧を基準デジタル電圧としてあらかじめ記憶する記憶部と、
前記定電圧出力部から出力される前記アナログ一定電圧をデジタル一定電圧に変換する第1アナログ検出部と、
前記デジタル一定電圧と前記基準デジタル電圧とを比較し、前記制御ユニットの電源電圧を補正する補正係数を演算し、前記電源電圧を補正する補正演算部と、を備え、
前記第1アナログ検出部が変換可能なアナログ最大電圧は前記制御ユニットの前記電源電圧である電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換部から出力される電流を電圧に変換して、検出出力電圧として出力する電流検出部をさらに備え、
前記第1アナログ検出部は、アナログ電圧である前記検出出力電圧をデジタル検出出力電圧に変換する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記定電圧出力部は前記電流検出部に設けられ、前記電流検出部の前記検出出力電圧は、前記定電圧出力部の前記アナログ一定電圧を中心電圧として、検出されるべき電流が流れる方向及び検出されるべき電流の大きさに対応した電圧であり、
前記電流検出部は、前記アナログ一定電圧を前記検出出力電圧を出力する端子とは異なる端子から出力する請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記補正係数によって、前記制御ユニットの外部から入力される電圧情報及び電流情報を補正し、補正後の電圧情報及び電流情報を用いて内部演算を実行し、前記内部演算による内部演算情報を出力する請求項2または3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
内部演算情報は、FM信号情報、デジタル情報、及び、アナログ情報で出力可能である請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記補正演算部は、前記補正係数によって、前記電流検出部の前記検出出力電圧を補正し、補正された補正検出出力電圧を出力し、
前記制御ユニットは、前記補正検出出力電圧を制御情報の一つとして、前記電力変換部を制御する請求項4または5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記補正検出出力電圧が、前記電力変換部に接続される電気機器の過電流を超える電流に対応する電圧であるか否かを判定する過電流処理部をさらに備える請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電力変換部には、温度検出部が設けられ、前記温度検出部が出力するアナログ温度電圧をデジタル温度電圧に変換する第2アナログ検出部をさらに備え、
前記補正演算部は、前記第2アナログ検出部の出力する前記デジタル温度電圧を前記補正係数によって補正し、補正された補正デジタル温度電圧を出力し、
前記制御ユニットは、前記補正デジタル温度電圧を含む前記制御情報によって、前記電力変換部を制御する請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御ユニットのアナログ電源電圧をデジタル電源電圧に変換する第3アナログ検出部をさらに備え、
前記補正演算部は、前記第3アナログ検出部の出力する前記デジタル電源電圧を前記補正係数によって補正し、補正された補正デジタル電源電圧を出力し、
前記制御ユニットは、前記補正デジタル電源電圧を含む前記制御情報によって、前記電力変換部を制御する請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記外部から供給される前記電源は、三相交流電源であり、
前記電流検出部は、三相のうち少なくとも2相に取り付けられる請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項11】
外部から供給される電源を直流に変換する直流変換部と、前記直流変換部から出力される直流電流を平滑する平滑部と、前記平滑部から出力される平滑電流をスイッチングする電力変換部と、前記電力変換部を制御する制御ユニットを備える電力変換装置の電力変換方法であって、
前記平滑部と並列接続されるトランス部が、前記制御ユニットの電源電圧を生成するステップと、
定電圧出力部が、前記平滑電流が変動した場合にもアナログ一定電圧を出力するステップと、
前記制御ユニットの記憶部が、前記アナログ一定電圧をデジタル電圧値情報としてあらかじめ記憶するステップと、
前記制御ユニットの第1アナログ検出部が、前記定電圧出力部の前記アナログ一定電圧をデジタル一定電圧に変換するステップと、
前記制御ユニットの補正演算部が、前記デジタル一定電圧と前記デジタル電圧値情報とを比較し、前記制御ユニットの電源電圧を補正する補正係数を演算して出力するステップと、を備え、
前記第1アナログ検出部が変換可能なアナログ最大電圧は前記制御ユニットの前記電源電圧である電力変換方法。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置によって制御される回転機を含む電気機器と、を備える産業機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、電力変換方法、および、産業機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導電動機に比べて高効率である永久磁石同期電動機が、冷凍機器等の産業分野へ普及している。一方で、永久磁石同期電動機は、回転子内に永久磁石を有しているため、永久磁石に一定値以上の磁界が印加されると、不可逆減磁が発生し、永久磁石の磁力が弱まることで、電動機としてのトルクが減少することがある。永久磁石に印加される磁界は電動機に流れる電流値に比例するため、永久磁石同期電動機では不可逆減磁が発生しないための電流値の上限である減磁開始電流値を定めており、この電流値未満で永久磁石同期電動機を制御する必要がある。従って、永久磁石同期電動機を駆動する際には、減磁開始電流値以上の過電流が流れないように、過電流保護回路を搭載した電力変換装置を永久磁石同期電動機に接続している。
【0003】
永久磁石同期電動機を電力変換装置で制御する場合には、主にダイオード素子を複数用いた整流ダイオードブリッジと電圧を平滑するための平滑コンデンサとにより構成された平滑回路を用いて交流電圧を直流電圧へ変換した後に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子を用いて直流電圧を交流電圧に再度変換することが一般的である。
【0004】
スイッチング素子を制御する場合には、永久磁石同期電動機に流れる三相電流を電流検出器にて検出し、永久磁石の磁極位置を電流検出器が検出した電流情報から推定するセンサレスベクトル制御を用いることが一般的である。また、電流検出器は、磁極位置の推定以外に減磁開始電流値以上の電流が流れていないかを監視し、減磁開始電流値を超える電流が流れた場合はスイッチング素子をOFFし、永久磁石同期電動機が不可逆減磁しないように動作する。各々の永久磁石同期電動機の減磁開始電流値は予め電力変換装置に設定され、定格電流以上かつ減磁開始電流未満で動作するように保護がされている。一般に永久磁石同期電動機の定格電流値と減磁開始電流値はマージンを持って設計及び設定されているため、過電流保護が動作する電流値の精度は求められていなかった。
【0005】
しかしながら、近年、永久磁石の原材料であるネオジウム等のレアアースや、電動機のコイルに使われる銅の価格高騰により永久磁石同期電動機の原材料および、コイルの巻数を変更せざるを得ないケースが多く発生している。例えば、永久磁石に採用される原材料は、ネオジウムから減磁開始電流が低い傾向にあるフェライトに変更する永久磁石のフェライト化が進んでいる。コイルに関しては、使用料削減のためにコイル巻数を削減することが進んでいる。フェライト化によって、永久磁石同期電動機の減磁開始電流値が低くなるので、定格電流値と減磁開始電流値との間の余裕が少なくなる場合がある。また、コイル巻数削減によって、インダクタンスが下がることで永久磁石同期電動機のインピーダンスが低下することになる。したがって、コイル巻数を削減する前に比べて、コイル巻数を削減した後の永久磁石同期電動機に同じ電圧を印加した場合には、大きな電流が流れやすくなる。これらの要因により、過電流保護回路の精度が低い場合に、永久磁石同期電動機に減磁開始電流値を超過する電流が流れ、永久磁石同期電動機が不可逆減磁を起こしてしまう場合が想定される。
【0006】
過電流保護回路の従来技術としては、例えば、特許文献1には抵抗の両端を測定することで電流を検出し、基準電源と比較することで過電流保護回路を構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、電流検出の際に使用している基準電圧に変動がないことが前提となっており、受電変動、負荷変動、温度変化の際に発生する制御電圧の変動によって基準電圧が変動した場合には、過電流を精度良く検出することができない場合が発生する。すなわち、永久磁石同期電動機が減磁しないように、予め制御電圧のバラつきを考慮して過電流値を設定する必要があるため、過電流値をより低く設定してしまうと、永久磁石同期電動機が出力できるトルクを最大限活用することができない場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、受電変動や負荷変動、および、温度変化により制御電圧が変動した際にも、永久磁石同期電動機の電流を精度良く検出し、当該永久磁石同期電動機を減磁させずに最大限トルクを活用できる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
本発明の代表的な実施形態による電力変換装置は、外部から供給される電源を直流に変換する直流変換部と、直流変換部から出力される直流電流を平滑する平滑部と、平滑部から出力される平滑電流をスイッチングする電力変換部と、電力変換部を制御する制御ユニットを備える電力変換装置であって、平滑部と並列接続され、制御ユニットの電源電圧を生成するトランス部と、平滑電流が変動した場合にもアナログ一定電圧を出力する定電圧出力部と、アナログ一定電圧を基準デジタル電圧としてあらかじめ記憶する記憶部と、定電圧出力部から出力されるアナログ一定電圧をデジタル一定電圧に変換する第1アナログ検出部と、デジタル一定電圧と基準デジタル電圧とを比較し、制御ユニットの電源電圧を補正する補正係数を演算し、電源電圧を補正する補正演算部と、を備え、第1アナログ検出部が変換可能なアナログ最大電圧は制御ユニットの電源電圧である。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。本発明の代表的な実施の形態によれば、受電変動や負荷変動、および、温度変化により制御電圧が変動した際にも、永久磁石同期電動機の電流を精度良く検出し、当該永久磁石同期電動機を減磁させずに最大限トルクを活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係わる電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係わる制御回路ユニットの内部構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係わる電流検出部の検出電流Iと電流検出部出力電圧Voutの関係を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係わるCT出力電圧とマイクロコンピュータ検出電流の関係を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係わるCTとマイクロコンピュータに供給される電源電圧が異なっている場合の関係を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係わる電力変換装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係わる電力変換装置の出力機能等の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0015】
また、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明するが、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は原則として省略する。また、以降では、例えばファン、ポンプ、圧縮機などの回転機を含む電気機器に接続される電力変換装置を例として、説明する。
【0018】
<実施の形態1>
実施の形態1を
図1から
図6を用いて説明する。
【0019】
[電力変換装置の全体構成]
図1は電力変換装置の全体構成の一例を示す図である。電力変換装置100は、主回路部110と、制御回路ユニット120と、制御電源生成回路部130と、電流検出部3等とを備え、当該制御回路ユニット120に搭載しているマイクロコンピュータが電力変換装置100の動作を制御している。また、電力変換装置100は、三相交流電源1を直流電源に変換してスイッチング回路113に直流電力を供給し、前記スイッチング回路113がスイッチング動作をすることで、回転機2を運転する装置である。回転機2は、上述したように、例えばファン、ポンプ、圧縮機等の電気機器に組み込まれる。
【0020】
さらに、具体的に本電力変換装置及び本電力変換装置に接続される構成要素を説明する。
【0021】
(三相交流電源1)
三相交流電源1は、例えば発電所で発電された三相交流電源である。電源のR、SおよびTは、主回路部110に供給される。なお、主回路部110に供給される電源は三相交流電源に限定されるわけではない。例えば、電源は、単相交流電源や電池、パワーコンディショナから供給される直流電源であってもよい。ただし、電源が、単相交流電源や直流電源の場合には、主回路部110の構成も変化する。例えば、ダイオードブリッジ111が単相交流電源用に変形、又は、省略される形態があってもよい。以下の説明においては、電源が三相交流電源1である場合を例にして、主回路部110等の構成要素を説明する。
【0022】
(主回路部110)
主回路部110は、三相交流電源1に接続され、直流変換部として機能するダイオードブリッジ111と、当該ダイオードブリッジ111によって直流電力が出力される出力端に並列接続される平滑部としての平滑コンデンサ112と、電力変換部として機能する、直流電力を交流電力に変換するスイッチング回路113を備える。スイッチング回路113から出力された交流電力は、回転機2に出力され、回転機2が当該交流電力によって回転する。なお、スイッチング回路113は制御回路ユニット120に搭載されているマイクロコンピュータによって交流電力の周波数と電圧が任意の値となるように制御されている。すなわち、スイッチング回路113を構成するIGBT等のトランジスタのゲートG1、G2、G3、G4、G5、G6に印加されるスイッチング信号SG1、SG2、SG3、SG4、SG5、SG6の波形が、制御回路ユニット120に搭載されているマイクロコンピュータによって制御されている。
【0023】
(電流検出部3)
電流検出部3は、電力変換部として機能するスイッチング回路113と回転機2とを電気的に接続する導電体に具備される。電流検出部3はホールセンサ等の電流センサである。電流検出部3は少なくとも2つのホールセンサ等の電流センサを当該導電体に近接させ、回転機2に流れる電流を検出する機能を有する。例えば、ホールセンサは電流値Iが流れた際に発生する磁束を検出して電圧信号Voutをアナログ出力する素子であり、IとVoutの関係はI=Vout・G(G=ゲイン)である。ゲインはホールセンサ毎に異なるため、検出する電流値によって選定される値である。
【0024】
図3は、例えば、ホールセンサが-25A~+25Aの電流を検出した場合に、0~+5Vの電圧信号Voutを出力するホールセンサである場合の、検出電流I(A)と電圧信号Voutとの関係を示す図である。
図3の右側の縦軸はホールセンサの検出電流の大きさを示し、
図3の左側の縦軸はホールセンサの出力である電圧信号Voutの大きさを示す。
図3の横軸は、ホールセンサに入力されるサインウェーブを時間の関数として表現したものである。ホールセンサは、最大出力電圧5Vの半分である2.5Vを基準電圧とし、電流が0Aのときに基準電圧をオフセット値として出力している。したがって、ホールセンサが-25Aを検出した場合の電圧信号Voutは0Vであり、ホールセンサが+25Aを検出した場合の電圧信号Voutは5Vである。
【0025】
なお、このオフセット値である2.5Vは、Voutとは別のポートVrefからも常時出力されており、ホールセンサの基準電圧を外部から監視できる構成となっている。また、ポートVrefから出力される基準電圧である2.5Vは、電流検出部3の電源電圧が変化した場合であっても変化することはない。ただし、電流検出部3の電源電圧が約2.5Vを下回った場合には、基準電圧も2.5Vの出力を維持することはできない。なお、このオフセット値である2.5Vは、他の定電圧素子から出力される構成であってもよい。定電圧素子の一例には、定電圧ダイオードが挙げられる。
【0026】
(直流電圧検出部4)
直流電圧検出部4は、分圧抵抗等の回路構成により平滑コンデンサ112の両端にかかる電圧を降圧し、制御回路ユニット120の入力可能な範囲の電圧によって、平滑コンデンサ112の両端にかかる電圧の変化を出力する。例えば、平滑コンデンサ112の両端にかかり得る最大の電圧を+5Vとすれば、0~+5Vの範囲の電圧を電圧信号Vedcとして、制御回路ユニット120に出力する。すなわち、直流電圧検出部4は、入力電圧がダイオードブリッジ111及び平滑コンデンサ112によって直流にされた直流電圧の変動を制御回路ユニット120が監視できるように機能している。
【0027】
(温度検出部5)
温度検出部5は、スイッチング回路113に内蔵されているサーミスタが温度の変化に対して抵抗値も変化する特性を利用した温度情報を電圧信号で出力する機能を有する。例えば、サーミスタと直列に抵抗器を接続し、サーミスタ又は当該抵抗器の一端に5Vを印加し、他端に0Vを印加する。この構成において、サーミスタの抵抗値が変化するとサーミスタと当該抵抗器の分圧比が変わる。したがって、当該抵抗器のいずれかのポイントの電圧を検出すると、当該ポイントの電圧は、サーミスタの抵抗値の変化に対応して変化する。サーミスタの温度と、当該ポイントの電圧を対応付けて、後述するマイクロコンピュータの内蔵メモリにあらかじめ記憶すれば、当該ポイントの電圧からサーミスタの温度を換算可能になる。なお、サーミスタはスイッチング回路113に内蔵されていなくとも外付け部品として実装されていてもよい。例えば、スイッチング回路113に直付けされていてもよい。
【0028】
(外部インタフェース部6)
外部インタフェース部6は後述する外部機器7と有線または無線によって、情報を送受信することが可能な回路部として構成されることが可能である。例えば、外部インタフェース部6は、外部機器7から回転機2に対するインストラクションを受信し、回転機2の始動、回転機2の回転の減速及び加速、回転機2の停止等を後述する制御回路ユニット120を介して実行することが可能である。また、外部インタフェース部6は、外部機器7からプログラムを受信し、制御回路ユニット120の図示しない記憶部に記憶させることが可能である。制御回路ユニット120は当該プログラムに基づいて、回転機2を制御することが可能である。さらに、電流検出部3、直流電圧検出部4、及び、温度検出部5のあらたな特性情報を外部機器7から入力することも可能である。例えば、あらたな特性情報は、バージョンアップ情報や、電流検出部3、直流電圧検出部4、温度検出部5のすくなくともいずれか一つの交換に伴う係数等の情報である場合がある。
【0029】
また、外部インタフェース部6は、外部機器7に回転機2の運転状態、故障状態等の情報を出力することも可能である。例えば、回転機2に過電流が流れた場合には電流検出部3にて過電流を検出し、回転機2を停止し、過電流を検出して回転機2を停止したという情報を外部機器7に出力することが可能である。外部機器7に異常発報ブザーが含まれる場合には、異常発報ブザーが発報する。また、外部機器7に表示ランプ、操作パネルが含まれる場合には、回転機2の異常情報を表示ランプに表示し、操作パネルに出力することが可能である。なお、過電流を検出する過電流処理部129は、実施の形態3における構成によって実現されることが可能である。
【0030】
(外部機器7)
外部機器7は、電力変換装置100と情報を送受信する機器である。外部機器7には、操作パネル、表示ランプ、通信機器、異常発報ブザーなどを挙げることができる。外部機器7は、電力変換装置100へのインストラクションや回転機2の運転状態の監視を実行することが可能である。また、通信機器は中継装置として機能し、外部または離れた場所にある、運転監視センター等に情報を中継することも可能である。運転監視センターは各所情報を収集し、中央管理する場所であってもよい。
【0031】
(制御電源生成回路部130)
制御電源生成回路部130は平滑コンデンサ112によって平滑された直流電圧からトランス部131およびスイッチング回路132により、トランス部131の2次側に制御電圧(電源電圧)を生成する。スイッチングICはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などで構成されており、制御電源調整部133によって制御される。制御電源調整部133はトランス部131の2次側巻き線の電圧をフィードバックし、一定電圧になるように制御する。しかしながら、2次側巻き線が複数ある場合は、フィードバック制御していない巻き線の電圧が1次側巻き線の電圧、2次側巻き線の負荷によって変動する。また、平滑された直流電圧が変動する場合には、2次側巻き線の電圧が変動する。
【0032】
(制御回路ユニット120)
図1及び
図2を用いて制御回路ユニット120の構成及び動作について説明する。
図2に示すように、制御回路ユニット120は、PWM出力部121、第1アナログ検出部123、第2アナログ検出部122、第3アナログ検出部124、外部インタフェース処理部125、及び、制御部126を具備する。なお、制御部126の一例には、マイクロコンピュータが挙げられる。したがって、制御部126をマイクロコンピュータと読み替えることも可能である。また、制御回路ユニット120は、補正演算部140及び記憶部150をさらに具備する。
【0033】
制御回路ユニット120は外部インタフェース部6から設定された条件に対応して回転機2を駆動する。回転機2の駆動は、外部インタフェース部6から入力されるインストラクションに基づいて、都度、回転機2を制御することが可能である。また、外部インタフェース部6から入力されるプログラムを記憶部150に記憶し、当該プログラムによって、回転機2を制御することも可能である。
【0034】
PWM出力部121は、回転機2を回転させるための駆動パルスを出力するスイッチング回路113を構成するIGBT等のトランジスタのゲートG1、G2、G3、G4、G5、G6に印加されるPWM信号であるスイッチング信号SG1、SG2、SG3、SG4、SG5、SG6等の信号を出力する。PWM信号と回転機2の回転状態との関係情報は制御部126の記憶部150に記憶させておくことが可能である。
【0035】
制御回路ユニット120は複数のアナログ検出部を有しており、電流検出部3、直流電圧検出部4、及び、温度検出部5において検出されたアナログ値をデジタル値に変換して制御部126の一例であるマイクロコンピュータに伝達する。この際、マイクロコンピュータでは各アナログ検出部から入力されるアナログ値の電圧に対してマイクロコンピュータの記憶部150に予め設定した換算ゲインにて換算処理を含む演算処理を実行する。マイクロコンピュータは演算処理した情報を用いて、回転機2をベクトル制御やV/F制御等の制御方法で制御する。また、換算処理をした電流値、電圧値、温度が異常値の場合には、制御回路ユニット120は回転機2の停止や制限運転等の保護処理動作を実行することが可能に構成されている。
【0036】
例えば、第1アナログ検出部123は、回転機2に流れる電流値および位相等の情報を検出し、検出された情報を制御部126に出力する。制御部126は、検出された情報を用いて、回転機2の磁極位置の推定を行い、フィードバック制御を実行する。また、回転機2にかかる負荷が大きくなり、電流値が増加することを認識した場合には、回転機2の回転数を下げる制御、または、回転機2を停止する制御を実行する。
【0037】
第3アナログ検出部124は、直流変換部であるダイオードブリッジ111の出力電圧値が不足電圧や過電圧等を示す電圧異常値を検出した場合には、制御部126に電圧異常情報を出力し、電圧異常情報を受信した制御部126は回転機2の停止処理を実行する。なお、三相交流電源1の電圧が変動した場合に電圧異常が発生する場合がある。また、ダイオードブリッジ111の回路に異常が発生した場合に電圧異常が発生する場合がある。さらに、回転機2の急減速により発生する回生電圧によって上昇する過電圧によって電圧異常が発生する場合がある。第3アナログ検出部124は上記電圧異常値を検出できるので、制御部126は電力変換装置100を保護することが可能となる。例えば、制御部126は平滑コンデンサ112の耐圧よりも高い異常電圧を検出すると、電力変換装置100を保護するように回転機2を制御する。また、直流電圧情報は回転機2のベクトル制御やV/F制御に使用される。制御部126は、直流電圧値に応じてスイッチング回路113のスイッチング間隔をコントロールすることで回転機への出力電圧を調整する。
【0038】
第2アナログ検出部122は、温度検出部5において検出した温度を監視し、低温時、例えば、氷点下になった場合に回転機2を備えるポンプの水が凍結しないように、制御部126は回転機2を低速で運転を続けるように凍結防止運転を実行することが可能である。また、高温時には、部品が故障することや、部品の寿命が短くならないように、部品を保護するために制御部126は回転機2の回転数を下げる制御、または、停止させる制御を実行することも可能である。
【0039】
なお、本明細書において、第1アナログ検出部123、第2アナログ検出部122、及び、第3アナログ検出部124を総称して、アナログ検出部と称する場合がある。
【0040】
外部インタフェース処理部125は、外部インタフェース部6を介して入出力される情報を変換する機能を有する。例えば、無線信号を制御部126が認識できる信号に変換し、制御部126が認識できる信号を無線信号に変換することも可能である。また、外部インタフェース部6を介して入力される情報がアナログ信号である場合に、AD変換し、制御部126が認識できるデジタル信号に変換することも可能である。なお、外部インタフェース処理部125から出力される信号に関しては、後述する
図7の記載においてさらに説明する。
【0041】
記憶部150は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり得る。例えば、記憶部150は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の少なくとも1つで構成されてもよい。また、記憶部150は、ROM、RAMに加え、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の少なくとも1つで構成されてもよい。記憶部150は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。記憶部150は、本開示の一実施形態に係る処理を実施するために実行可能なプログラム、ソフトウェアモジュールなどを保存することも可能である。
【0042】
また、記憶部150は、制御部126に入力された情報を記憶し、制御部126内の補正演算部140との間で情報を入出力し、入出力する情報を記憶することが可能である。さらに、記憶部150は、制御部126の中の図示しない各機能ブロック間の情報を記憶することも可能である。さらに、記憶部150は、制御部126から出力されるべき情報を記憶することも可能である。
【0043】
さらに記憶部150は、第1アナログ検出部123が入力する基準電圧が2.5Vであるというデジタル情報を、基準デジタル電圧として記憶することが可能である。したがって、第1アナログ検出部123の出力するデジタル一定電圧がどのようなデジタル値になっても、基準デジタル電圧からずれているか否かを制御部126は認識することが可能になる。
【0044】
補正演算部140は、アナログ検出部に供給される電源電圧が変動した場合に、アナログ検出部の出力電圧は誤差を含むため、当該誤差を補正する機能を有する。詳細は以下に順を追って説明する。
【0045】
<<誤差補正の原理説明>>
図4に電流検出部3の一例であるCT(Current Transformer)の出力電圧と制御部126の一例であるマイクロコンピュータの検出電流の関係を示す。CTとマイクロコンピュータにはそれぞれ異なる電源が制御電源生成回路部130から提供され、提供された電源の電圧値がCTの最大出力電圧値およびマイクロコンピュータの最大検出電圧値となる。すなわち、CT及びマイクロコンピュータは供給された電圧以上の信号電圧を情報として処理することはできない。
【0046】
例えばCTおよびマイクロコンピュータに5Vの同一電圧が供給されている場合には、CTとマイクロコンピュータにおける信号電圧値は同じ意味を持つ値として扱うことができる。すなわち、CTに流れた電流に対応してCTにおいて発生した電圧値とマイクロコンピュータがCTの出力から検出する電圧値は同一になる。しかしながら、CTとマイクロコンピュータに電源電圧として供給される電圧が異なる場合には、CTとマイクロコンピュータにおける信号電圧値が同じであっても、当該信号電圧値は同じ意味を持つ値として扱うことはできない。すなわち、CTが出力する信号電圧値は、マイクロコンピュータに供給される電源電圧によって、同じ値として認識されないようになる。すなわち、CTとマイクロコンピュータの電源電圧が異なればCTが出力する信号電圧値が、マイクロコンピュータにとっては異なる電圧値として検出されることになる。以下に、CTとマイクロコンピュータに供給される電源電圧が異なる場合について説明する。なお、本実施形態においては、アナログ検出部に供給される電源電圧とマイクロコンピュータに供給される電源電圧は同一である場合を想定している。また、アナログ検出部のADコンバータの参照電圧(Vref)は電源電圧である場合を想定している。ただし、アナログ検出部のADコンバータの参照電圧(Vref)は当該電源電圧の変動に線形に変動する電圧であってもよい。例えば、当該電源電圧を分圧した電圧であってもよい。
【0047】
図5にCTとマイクロコンピュータに供給される電源電圧が異なっている場合の相関関係を示す。
図5ではCTに供給される電源電圧が5V、マイクロコンピュータに供給される電源電圧が4Vの場合を示している。CTは5Vが最大出力電圧値であり、検出する電流の方向によって正負を表現するために中間の2.5Vを基準電圧値としてCTに流れた電流に応じた電圧を出力する。一方、マイクロコンピュータに供給される電源電圧は4Vであるためマイクロコンピュータは4Vを検出可能な最大電圧値として電圧を検出し、4V以上はすべて最大電圧値として認識する。また、マイクロコンピュータでは4Vの半分の2Vを基準電圧値として認識する。なぜなら、マイクロコンピュータは検出可能な最大電圧値の半分を基準電圧値として認識するからである。
【0048】
基準電圧値等の認識の差により生じるのが検出誤差(
図5参照)である。しかし、CTは、供給電圧に影響を受けないアナログ一定電圧を出力する端子を有するので、マイクロコンピュータは、当該アナログ一定電圧によって、CTに流れる電流の変化に対応してCTから出力される信号電圧値を補正し、検出誤差を解消することが可能になる。なお、
図5において、当該アナログ一定電圧の値は基準電圧の値であり、当該値は2.5Vである。
図5において、マイクロコンピュータは、検出可能な最大電圧値である4Vの半分の2Vを基準電圧値として認識するが、CTから出力される基準電圧値は2.5Vであるので、検出誤差が発生する。なお、供給電圧に影響されずに一定電圧値を出力するレギュレータやツェナーダイオード等の定電圧出力素子によっても、マイクロコンピュータは、当該検出誤差の補正は可能である。
【0049】
検出誤差補正は、マイクロコンピュータ等の制御部126の内部に構成される補正演算部140で実行されるように構成することが可能である。具体的な検出誤差の補正方法の一例は、マイクロコンピュータが記憶する基準デジタル電圧と、CTからマイクロコンピュータに出力される基準電圧としての電圧との比率を正負を考慮して演算し、検出誤差を演算する方法である。一例として、上述したように、CTが出力する基準電圧値は、CTに供給される電源電圧が所定の電圧以上であれば2.5Vのアナログ一定電圧であるため、マイクロコンピュータがCTから出力される当該基準電圧値を検出し、式(1)または式(2)の演算を実行する。
誤差[比]=1-CTの基準電圧端子の出力検出値[V]÷設定値2.5[V] ―(1)
誤差[%]=誤差[比]×100 ―(2)
【0050】
(CTの基準電圧端子の出力検出値[V])はマイクロコンピュータがCTの基準電圧端子から出力される電圧値をAD変換して、認識した電圧値である。具体的には、電流検出部3に含まれる定電圧出力部から出力されるアナログ一定電圧を、第1アナログ検出部123が変換したデジタル一定電圧を示す。
図5の例では、CTの基準電圧端子から出力される電圧値は2.5Vであり、マイクロコンピュータでは、CTの基準電圧端子から出力される当該電圧値を2Vとして検出するので、出力検出値であるデジタル一定電圧は2Vとなる。
【0051】
(設定値2.5[V])は、マイクロコンピュータの記憶部150に記憶されている基準デジタル電圧であり、CTの基準電圧端子から出力される電圧値をデジタル化した値である。基準電圧端子から出力される電圧値は使用するCTによって定められる値である。したがって、設定値は2.5Vに限定される固定値ではないが、本実施形態の電流検出部3に使用されるCTの基準電圧端子から出力される電圧値が2.5Vの場合について説明している。したがって、例えば3V一定値を出力するツェナーダイオードを基準に、検出誤差の補正を実行する場合には設定値は3Vとすればよいことになる。
【0052】
式(1)の(CTの基準電圧端子の出力検出値[V]÷設定値[V])を補正係数と称する場合がある。マイクロコンピュータは補正係数を用いて、マイクロコンピュータで検出された電圧値を演算することによって、検出誤差の補正処理を実行することが可能になる。具体的には、式(1)の補正係数でマイクロコンピュータで検出された電圧値を除算した除算値を、マイクロコンピュータで検出された電圧値とみなすことによって、CTが出力している電圧値を正確に検出することが可能になる。
図5の場合において、CTの基準電圧端子は2.5Vを出力し、マイクロコンピュータは当該2.5Vを2.0Vとして検出する。したがって、誤差[比]は数式(1)から0.2となり、誤差[%]は20%となる。また、補正係数は0.8となる。すなわち、マイクロコンピュータは、マイクロコンピュータの検出電圧が、CTが出力している実際の電圧よりも20%小さい電圧であることを演算によって認識することが可能になる。
【0053】
また、マイクロコンピュータは当該補正係数の逆数を換算ゲインとして演算し、当該換算ゲインを他のアナログ検出量に対して乗算して、アナログ検出量の補正演算を正確かつ高速に実行することが可能になる。例えば、
図2の第2アナログ検出部122の出力値に換算ゲインを乗算すれば、
図1の温度検出部5が検出する電力変換部であるスイッチング回路113の温度を正確かつ高速に補正できる。また、第1アナログ検出部123の出力値に換算ゲインを乗算すれば、
図2の第3アナログ検出部124の出力値に換算ゲインを乗算すれば、
図1の直流変換部であるダイオードブリッジ111および平滑コンデンサ112を介した直流電圧値を正確かつ高速に補正できる。このように換算ゲインを使い、マイクロコンピュータが検出したアナログ値(電圧)に対して補正を実行することによって、供給電圧が異なっている回路間でも検出部の出力電圧を正確に検出することが可能になる。
【0054】
[電力変換装置の補正処理の一例]
図6は、電力変換装置100の補正処理を実行する手順の一例を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS601において、第1アナログ検出部123は、電流検出部3が検出した電流を電圧に変換したアナログ電圧を入力し、デジタル値に変換する。また、第1アナログ検出部123は、電流検出部3に内蔵される、又は、電流検出部3の外部に設けられる図示しない定電圧出力部から出力されるアナログ一定電圧を入力し、デジタル値に変換する。
【0056】
ステップS602において、補正演算部140は、記憶部150に記憶された基準デジタル電圧を記憶部150から入力する。
なお、ステップS601とステップS602は実行順番が逆になってもよい。例えば、ステップS601において、補正演算部140は、記憶部150に記憶された基準デジタル電圧を記憶部150から入力することが可能である。そして、ステップS602において、第1アナログ検出部123は、電流検出部3が検出した電流を電圧に変換したアナログ電圧を入力し、デジタル値に変換することが可能である。また、第1アナログ検出部123は、電流検出部3に内蔵される、又は、電流検出部3の外部に設けられる図示しない定電圧出力部から出力されるアナログ一定電圧を入力し、デジタル値に変換することが可能である。
【0057】
ステップS603において、補正演算部140は、式(1)を用いて誤差[比]を演算する。または、補正演算部140は、デジタル一定電圧を基準デジタル電圧で除算した補正係数を演算する。補正演算部140が補正係数を演算した場合には、補正係数の逆数を演算し、換算ゲインを演算する。
【0058】
ステップS604において、補正演算部140は、第1アナログ検出部123、第2アナログ検出部122、第3アナログ検出部124がAD変換した電圧値に換算ゲインを乗算し、補正された電圧値を演算する。
【0059】
ステップS605において、制御部126は補正された電圧値を用いて、電力変換装置100が制御する回転機2、又は、回転機2を含むポンプ、コンプレッサー等の電気機器の制御を実行する。また、制御部126は外部インタフェース部6に補正された電圧値を表示することも可能である。
【0060】
ステップS606において、制御部126は、回転機2、又は、回転機2を含む電気機器の制御動作が終了したか否か判定する。制御動作が終了した場合(ステップS606:YES)の場合には、電力変換装置100は処理を終了する。制御動作が終了していない場合(ステップS606:NO)の場合には、電力変換装置100はステップS601に戻る。
【0061】
なお、上述した補正演算をリアルタイムで実行することによって、マイクロコンピュータの電源に供給される供給電圧が変動する場合でも、正確にアナログ電圧値を検出することが可能になる。
【0062】
例えば大電力を使用する工場において、普段は安定した電圧が電力変換装置に供給されているが、昼休みや夜間になると、他の機器が電力を使わなくなるため受電電圧が上昇する。この場合に補正処理がないと、昼休みと夜間のアナログ検出値に誤差が生じる。例えば回転機2をベクトル制御している電流値に影響し、回転機2の運転効率が低下する場合がある。また温度検出や電圧検出についても受電電圧が上昇したタイミングで検出誤差が発生するため、異常検出の誤検出や、値をモニタしている場合は、モニタ値に影響が発生する。これらをリアルタイム補正することで安定したアナログ検出を行うことができる。さらに送電設備が十分に整備されていない新興国や、ソーラー発電や水力発電などから供給される不安定な電源であっても本補正により安定したアナログ検出が可能となる。
【0063】
すなわち、上記実施の形態1による構成によれば、受電変動や負荷変動、および、温度変化により制御電圧が変動した際にも、永久磁石同期電動機の電流を精度良く検出し、当該永久磁石同期電動機を減磁させずに最大限トルクを活用できる電力変換装置を提供することが可能になる。また、上記実施の形態1による構成によれば、受電変動や負荷変動、および、温度変化により制御電圧が変動した際にも、入力されるアナログ電圧および電流の値をリアルタイムで補正処理することによって、電力変換装置は制御対象となる電気機器を正確に制御することが可能になる。
【0064】
<実施の形態2>
実施の形態2の構成及び動作について
図7を用いて説明する。
【0065】
第1の実施形態ではマイクロコンピュータの検出について説明したが、実施の形態2では第1の実施形態において補正を実行した正しい補正値を用いたマイクロコンピュータの制御について説明する。具体的には、制御部126の一例であるマイクロコンピュータから出力される補正値をアナログ情報として出力するアナログ出力部128、及び、疑似的にアナログ情報を作り出すFM出力部127について主に説明する。アナログ出力部128、及び、FM出力部127は制御回路ユニット120に含まれ、マイクロコンピュータから出力される補正値を変換した情報を出力する。
【0066】
すなわち、電力変換装置100の出力機能を
図7に示す。外部インタフェース部6は、外部機器7から速度指令を入力し、回転機2の運転状態を外部機器7に出力する。制御部126は、外部の上位電子機器に電力変換装置100の運転状態、例えば、運転周波数の情報、各種の電流及び電圧の情報、並びに、サーミスタの温度情報等を出力する。この場合に、第1の実施形態で補正した補正値を使用することで、アナログ値をアナログ出力部128を介して精度良く出力することが可能となる。アナログ出力部128は、マイクロコンピュータが出力するデジタルの補正値をアナログの補正値に変換する機能を有する。また、マイクロコンピュータはON/OFF動作を行い、当該ON/OFF動作の周波数を変更することにより、デジタルの補正値を周波数に変換する。FM出力部127は、アナログ出力と同じように、電力変換装置の状態をFM出力として出力することが可能である。外部機器7の入力がパルスカウンタなどの場合には、FM出力部127が出力する周波数をカウントし、外部機器7は電力変換装置の状態を検出することが可能になる。マイクロコンピュータの補正値には、マイクロコンピュータ内部情報である運転状態、故障状態、検出電流値、検出電圧値、検出温度値、運転時間等の情報が含まれ得る。なお、外部機器7からの運転指令はアナログ値で入力する場合がある。例えば、電力変換装置100が圧縮機を制御する際には、外部に圧力センサを取付け、その圧力が一定になるようにPI制御処理を実行する。この場合に、圧力センサの出力であるアナログ値を外部インタフェース部6は入力する。
【0067】
上述した実施の形態2の構成及び動作によれば、補正演算をリアルタイムで実行することによって、マイクロコンピュータの電源に供給される供給電圧が変動する場合でも、正確にアナログ電圧値を検出し、外部に出力することが可能になる。
【0068】
<実施の形態3>
実施の形態3の構成及び動作についても
図7を用いて説明する。実施の形態3は、
図7の過電流処理部129の構成及び動作に関する実施形態である。
【0069】
図7に示される過電流処理部129には、補正された電圧値であって過電流と判断されるべき当該電圧値、及び、第1アナログ検出部123の出力電圧値が補正されたアナログ電圧値が入力される。過電流処理部129には図示しない比較器が含まれ、補正されたアナログ電圧値が、過電流と判断されるべき電圧値を超えると比較器の出力信号が反転するように構成される。制御部126の一例であるマイクロコンピュータは、当該反転エッジを検出すると、スイッチング回路113から出力される電流値が小さくなるように、スイッチング回路113を制御する。過電流と判断されるべき電圧値は、回転機2の特性によって異なるが、外部機器7から制御部126の記憶部150にあらかじめ記憶しておくことが可能である。また、過電流と判断されるべき電圧値は周囲温度によって変化するが、周囲温度はサーミスタの温度によって推定することができる。したがって、推定された周囲温度によって、制御部126は過電流と判断されるべき電圧値を決定することが可能である。周囲温度から過電流を推定する方法は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0070】
実施の形態3の構成及び動作によれば、電力変換装置100が回転機2を駆動する際に例えば、電流値を監視して、当該電流値が任意のレベルより大きくなった場合に回転機2が減磁しないように保護をかける過電流処理を実行可能になる。過電流レベルはマイクロコンピュータからアナログ出力し制御する。過電流レベルは接続される回転機2の特性、および周囲温度によって補正値を変化させることによって過電流保護を精度良く実行することが可能になる。
【0071】
また、実施の形態1乃至3の構成及び動作によれば、以下の効果を奏することがさらに可能になる。
【0072】
アナログ検出部を搭載した製品にはアナログ検出部の個体ごとの電気特性のバラつきをなくすために出荷試験時に、例えば、アナログ検出のゲイン調整を実施する。具体的な一例として、アナログ検出器に外部機器(例えば、試験装置)から任意の異なる電圧値を2個印加する。例えば任意の異なる電圧値として1Vと4Vをアナログ検出部に印加すると、マイクロコンピュータは1Vと4Vに対して得られたアナログ値を記憶部に記憶する。1Vのときにマイクロコンピュータの内部の値が819digit、4Vのときに3276digitが得られたとする(12bitアナログ検出器では4095digitが最大の内部の値とする)。電圧(V)を縦軸とし、digitを横軸として、上記値を用いて2点を通る1次関数を導出する。(x,y)=(1,819),(4,3276)
【0073】
上記1次関数の傾きa=ゲイン、切片b=オフセットとなる。当該a及びbはアナログ検出部を搭載した製品の出荷時にマイクロコンピュータの記憶部に記憶される。
【0074】
しかし、実施の形態1乃至3の構成及び動作によれば、リアルタイムでゲイン調整を実行するので、上述した出荷試験のゲイン調整が不要になる。また、実施の形態の補正演算部140から出力される値が0ではない場合に、回路に異常があることを発見できる場合がある。
【0075】
以上、本発明者によってなされた開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0076】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に記憶することができる。
【0077】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…三相交流電源
2…回転機
3…電流検出部(定電圧出力部を含む)
4…直流電圧検出部
5…温度検出部
6…外部インタフェース部
7…外部機器
100…電力変換装置
110…主回路部
111…ダイオードブリッジ(直流変換部)
112…平滑コンデンサ(平滑部)
113…スイッチング回路(電力変換部)
120…制御回路ユニット(制御ユニット)
121…PWM出力部
122…第2アナログ検出部
123…第1アナログ検出部
124…第3アナログ検出部
125…外部インタフェース処理部
126…制御部
127…FM出力部
128…アナログ出力部
129…過電流処理部
130…制御電源生成回路部
131…トランス部
132…スイッチング回路
133…制御電源調整部
140…補正演算部
150…記憶部