(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】データ処理装置
(51)【国際特許分類】
G01S 5/04 20060101AFI20241210BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20241210BHJP
【FI】
G01S5/04
H04W64/00 130
(21)【出願番号】P 2022031070
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直人
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-183930(JP,A)
【文献】特開2022-015782(JP,A)
【文献】特開2019-213058(JP,A)
【文献】特開2015-060273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00- 3/74
G01S 5/00- 5/14
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の航空無線を受信した受信装置から送信される、前記航空無線の到来方向を示す方位情報を含むIPパケットに基づいて、前記航空無線の発信元である航空機の位置を推定するデータ処理装置において、
周波数毎に方位情報の収集期間を定めたタイマーを設けて方位情報の収集を開始し、前記タイマーより短い周期で各周波数の方位情報の収集状況を確認し、規定数の収集が完了した周波数の方位情報をグルーピングし、規定数の収集が完了しないまま前記タイマーが満了した周波数については、それまでに収集した方位情報をグルーピングするグルーピング処理と、
前記グルーピング処理により周波数毎にグルーピングした方位情報に基づいて、その周波数を用いて航空無線を行う航空機の位置を推定する位置推定処理とを行うことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ処理装置において、
前記グルーピング処理における前記タイマーの時間長又は前記規定数の少なくとも一方を変更可能であることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のデータ処理装置において、
各受信装置が受信可能な周波数として、セクタ毎に規定された航空無線の周波数が設定されたテーブルを用いて、前記グルーピング処理を行うことを特徴とするデータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空無線の発信元である航空機の位置を推定するデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空管制システムなどにおいて、RDF(Radio Direction Finder;無線方向探知機)システムが利用されている。
図1には、全国に配置したRDFシステムの概要を示してある。また、
図2には、RDFシステムの構成例を示してある。
【0003】
RDFシステムは、
図1や
図2に示すように、複数の受信局10と、複数のサーバー局20とを有し、これらの拠点間は広域の通信ネットワークで接続される。受信局10は、航空機の航空無線を複数の周波数で受信可能な受信装置11と、通信ネットワークを介して他局と通信するためのネットワーク装置12とを有する。サーバー局20は、通信ネットワークを介して他局と通信するためのネットワーク装置21と、受信局10から送信されるデータを処理するコンピュータであるデータ処理装置22と、データ処理装置22での処理に関わる各種のデータを記憶する外部記憶装置23とを有する。
【0004】
受信局10は、日本各地の拠点に設置される。各受信局10が有する受信装置11は、航空機の管制による音声通信を検出してその無線到来方向を推定し、推定した無線到来方向をIPパケット化してサーバー局20へ送信する。音声通信の使用周波数は、下記の(表1)、(表2)に示すように、全国をセクタ分割して形成される各領域で異なる。航空管制領域のセクタは、例えば、
図3に例示するような態様で設定される。
【0005】
【0006】
【0007】
サーバー局20が有するデータ処理装置22は、各地の受信局10から送られてきたIPパケットから、無線到来方向を示す方位情報を抽出し、この方位情報を用いて航空機の位置を推定する。データ処理装置22で推定された航空機の位置情報は、視覚化してモニタ等に表示させることで、管制官による状況認識能力のサポートに活用される。
【0008】
本発明に係る技術分野の従来技術として、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、IEEE802.11n移行の無線LANに規定された伝搬チャネル情報のフィードバックフレームから、測位対象となる第1無線局が算出した伝搬チャネル情報を第2無線局が取得し、この伝搬チャネル情報に基づいて第1無線局の位置を推定する発明が開示されている。例えば、特許文献2には、パケット交換回線と常時接続回線に接続可能な通信装置を航空機に搭載し、通常はパケット交換回線を用いて現在位置データを地上局へ送信し、目的等に対応した範囲に航空機が到達したときに、パケット交換回線を常時接続回線に切り替えて現在位置データを地上局へ送信する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2021-100169号公報
【文献】特開2012-70260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
RDFシステムの問題点としては、システム全体として複数の遅延要素が存在することにあり、例えば、
図4に示す以下の遅延要素が挙げられる。
(t1)受信装置による音声検出及び到来方向の推定に要するサンプリング時間
(t2)広域ネットワークにおける、受信装置から配信される方位情報を含むIPパケットの伝送遅延
(t3)収集した方位情報を用いて航空機の位置算出に要する処理遅延
【0011】
仮に、(t1)で100ミリ秒、(t2)で100ミリ秒、(t3)で50ミリ秒を要する場合、航空機の位置を算出するまでに、最低でも250ミリ秒を要してしまう。このとき、航空機のパイロットが音声を発して地上の管制官が音声を聞きながら航空機の位置を認識・指示する場合に、250ミリ秒に加えて更に+αの遅延が発生すると、その分だけ音声と位置表示の同期が遅れる。その結果、誤認や指示誤りに繋がり、管制をサポートするはずのRDFシステムが逆に混乱を招く恐れがある。
【0012】
但し、前述の(t1)~(t3)の遅延要素はハードウェアに起因するものの、性能を満足するために必要な遅延要素であるため、これを解決することは難しい。上記の+αの遅延としては、データ処理装置における以下の遅延要素が挙げられる。
(t4)位置算出において必要な数だけ方位情報を収集する時間
(t5)収集した方位情報をまとめる時間(グルーピング処理時間)
【0013】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、RDFシステムの処理遅延を短縮することが可能なデータ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係るデータ処理装置は、以下のように構成される。
すなわち、本発明に係るデータ処理装置は、所定の周波数の航空無線を受信した受信装置から送信される、航空無線の到来方向を示す方位情報を含むIPパケットに基づいて、航空無線の発信元である航空機の位置を推定するデータ処理装置において、周波数毎に方位情報の収集期間を定めたタイマーを設けて方位情報の収集を開始し、タイマーより短い周期で各周波数の方位情報の収集状況を確認し、規定数の収集が完了した周波数の方位情報をグルーピングし、規定数の収集が完了しないままタイマーが満了した周波数については、それまでに収集した方位情報をグルーピングするグルーピング処理と、グルーピング処理により周波数毎にグルーピングした方位情報に基づいて、その周波数を用いて航空無線を行う航空機の位置を推定する位置推定処理とを行うことを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明に係るデータ処理装置は、グルーピング処理におけるタイマーの時間長又は規定数の少なくとも一方を変更できるように構成され得る。
【0016】
また、本発明に係るデータ処理装置は、各受信装置が受信可能な周波数として、セクタ毎に規定された航空無線の周波数が設定されたテーブルを用いて、グルーピング処理を行うように構成され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、RDFシステムの処理遅延を短縮することが可能なデータ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】全国に配置したRDFシステムの概要を示す図である。
【
図4】RDFシステムの遅延要素の発生箇所を示す図である。
【
図5】受信装置が送信する方位情報を含むIPパケットの例を示す図である。
【
図6】データ処理装置における全体的な処理の流れを示す図である。
【
図8】起動時に読み込む受信局テーブルの例を示す図である。
【
図9】受信局テーブルから生成されるバッファテーブルの例を示す図である。
【
図10】データ処理装置が方位情報を含むIPパケットを受信装置から受信した際の処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。RDFシステムの概略的な構成は、
図2に示した通りである。本例のRDFシステムは、全国で100局前後の数だけ配置される受信局10と、2局が配置されるサーバー局20とを有し、これらの拠点間は広域の通信ネットワークで接続される。
【0020】
受信局10は、8波のVHF航空無線をアンテナで同時に受信することができ、8波同時に入力された航空無線を信号処理できる受信装置11を備える。受信装置11は、8波の受信周波数を設定可能であるため、あるセクタ(例えば、(表1)、(表2)を参照)に配置された場合に、その位置を中心とした受信覆域のセクタ内で使用されるVHF航空無線を最大8周波数分だけ受信可能である。受信装置11は、広域ネットワークとの出入口となるネットワーク装置12(例えば、ルーターやスイッチ等のネットワーク機器)とEthernet接続される。
【0021】
サーバー局20は、コンピュータ装置であるデータ処理装置22を備える。データ処理装置22は、各地の受信局10から送られてきたIPパケットから方位情報を抽出し、この方位情報を用いて航空機の位置を推定する。データ処理装置22は、広域ネットワークとの出入口となるネットワーク装置21(例えば、ルーターやスイッチ等のネットワーク機器)とEthernet接続される。データ処理装置22は、各地の受信局10から収集した方位情報や、算出した航空機の位置情報や、その算出処理に関連する動作パラメータ等を保存した外部記憶装置23を備える。
【0022】
受信装置11は、航空機からのVHF航空無線(音声無線)をアンテナで受信し、公知の方法で音声サンプリング及び無線到来方向の推定を行い、その結果をIPパケットデータ化して、ネットワーク装置12及び広域ネットワークを介してサーバー局20側に送信する。
【0023】
図5には、受信装置11が送信するIPパケットの例を示してある。受信装置11が送信するIPパケットには、受信局番号、受信周波数、方位情報、受信レベル、方位精度、・・・、無線受信時刻、パケット送信時刻などのデータが格納される。受信周波数、方位情報、受信レベル、方位精度、・・・、無線受信時刻については、受信装置11が同時処理できる8波分のデータを格納することができる。
【0024】
データ処理装置22は、ネットワーク装置21を介して各地の受信装置11から収集したIPパケットを用いて、
図6に示すような手順で所定の処理を行う。すなわち、データ処理装置22はまず、収集したパケットから方位情報を抽出し、(表1)、(表2)に示した各セクタで使用される周波数毎にまとめる処理(以下、「グルーピング」と称する)を行う。次に、データ処理装置22は、グルーピングした方位情報のデータに基づいて、航空機の位置を算出する処理を行う。航空機の位置は、例えば、グルーピングした方位情報のデータを、装置内部のPCI-Expressで接続されているボード上に実装されたFPGA(Field Programmable Gate Array)のロジック回路に入力することで算出される。データ処理装置22は、算出した航空機の位置データをIPパケットで送信することで、これを受信した装置(送信先30)は、航空機の位置を表示することができる。
【0025】
次に、従来のRDFシステムの問題点として挙げた+αの遅延時間を削減する方法について、
図7を参照して説明する。
[方法1]方位情報を収集する時間(t4)の削減方法
例えば、データ処理装置22において、ある固定の時間であるXミリ秒だけ区間を設け、その間に受信局10から受信したIPパケットから方位情報を抽出して、グルーピング処理に引き渡す方法が考えられる。このとき、タイマーXは一律で固定であるため、タイマーXが満了する前のaミリ秒の時点で、グルーピングの規定数分(例えば、“4”)の方位情報の収集が完了した場合には、タイマーXが満了するまで残りの(X-a)ミリ秒の待機が必要となる。また、次のXミリ秒の区間において、bミリ秒の時点でグルーピングの規定数分の方位情報の収集が完了した場合にも、タイマーXが満了するまで残りの(X-b)ミリ秒の待機が必要となる。
【0026】
図7(A)を参照して、より具体的に説明する。
図7では、各受信局から送信されるパケットを、受信順に「受信局1パケット」、「受信局2パケット」のように表している。また、そのパケットから抽出される方位情報を「方位1」、「方位2」のように表している。なお、「方位n」は、n番目の周波数の無線到来方向を示す方位情報である。
図7(A)では、データ処理装置22は、タイマーXのスタート後、aミリ秒が経過した時点で「方位2」及び「方位3」がグルーピングの規定数(=4)に到達しているが、タイマーXが満了するまで残りの(X-a)ミリ秒待機し、その後、「方位2」のグルーピング及び「方位3」のグルーピングを行う。このように、上記の方法では、方位情報の収集が完了した後も待機する必要があるため、遅延が大きい。
【0027】
そこで、下記の方法をもって、データ処理装置22が方位情報を収集する時間を短縮する。
(1)周波数毎に方位情報の収集期間を定めたタイマーXを設ける。
(2)周波数毎に集める方位情報の数を定めた規定数(例えば、“4”)を設ける。
(3)周波数毎に最初の方位情報の受信を起点にタイマーXをスタートする。
(4)タイマーXよりも十分に短い周期Yで周波数毎の方位情報の収集状況を確認し、規定数に到達した方位情報をグルーピング処理に引き渡す。
(5)方位情報の収集数が規定数に到達しないまま周波数毎のタイマーXがタイムアウトした場合、その時点までに収集した方位情報をグルーピング処理に引き渡す。
【0028】
図7(B)を参照して、より具体的に説明する。
図7(B)では、データ処理装置22は、「受信局1パケット」から「方位1」、「方位2」、「方位3」が抽出されたため、その時点で、「方位1」、「方位2」、「方位3」の各々のタイマーXをスタートする。また、「受信局2パケット」から新たに「方位4」が抽出されたことで、その時点で「方位4」のタイマーXをスタートする。同様に、「受信局3パケット」から新たに「方位5」が抽出されたことで、その時点で「方位5」のタイマーXをスタートする。その後、「受信局4パケット」の時点で「方位2」及び「方位3」がグルーピングの規定数(=4)に到達したため、「方位2」のグルーピング及び「方位3」のグルーピングを行う。また、「受信局6パケット」の時点で「方位1」がグルーピングの規定数に到達したため、「方位1」のグルーピングを行う。一方、「方位4」は収集数が規定数に到達しないまま周波数毎のタイマーXがタイムアウトしたため、その時点までに収集した3つの「方位4」についてグルーピングを行う。
【0029】
このように、[方法1]では、データ処理装置22が、周波数毎に方位情報の収集期間を定めたタイマーを設けて方位情報の収集を開始し、タイマーより短い周期で各周波数の方位情報の収集状況を確認し、規定数の収集が完了した周波数の方位情報をグルーピングし、規定数の収集が完了しないままタイマーが満了した周波数については、それまでに収集した方位情報をグルーピングするグルーピング処理を行い、周波数毎にグルーピングした方位情報に基づいて、その周波数を用いて航空無線を行う航空機の位置を推定する位置推定処理を行うように構成されている。これにより、例えば、
図7(A)の方式では、Xミリ秒の期間内で「方位2」、「方位3」のグルーピング処理のみが行われるのに対し、
図7(B)の方式では、「方位1」、「方位2」、「方位3」、「方位4」のグルーピング処理を行うことが可能である。更に、「方位2」、「方位3」については、
図7(A)の方式よりも早いタイミングでグルーピング処理を行うことが可能である。
【0030】
なお、例えば、収集した方位情報の数では航空機の位置の算出精度が足りない場合には、方位情報の収集期間を定めるタイマーの時間を拡大し、及び/又は、グルーピングに必要な方位情報の規定数を増やすようにすればよい。このように、タイマーの時間の拡大や方位情報の規定数の増加を行うことで、より多くの方位情報を収集してグルーピングできるため、位置算出の精度を重視する動作に切り替えることが可能である。また、航空機の位置の算出精度よりも算出速度の方が重要視される場合には、上記とは逆に、タイマーの時間を短縮し、及び/又は、方位情報の規定数を減らすようにしてもよい。これにより、より短い時間で方位情報の収集を終えてグルーピングできるため、位置算出の速度を重視する動作に切り替えることが可能である。
【0031】
[方法2]方位情報をまとめるグルーピング処理時間(t5)の削減方法
前述の通り、受信装置11は、最大8つの周波数の航空無線を受信可能である。例えば、(表2)のセクタF08(南九州東)付近に設置されている受信局10の受信装置11がセクタF01,F02,F03,F04,F06,F06,F07の覆域に入っている場合には、これらセクタ(F01~F08)の主VHF周波数を受信装置11に受信周波数として設定することで、受信装置11は上記8つのセクタの周波数の航空無線を受信することができる。
【0032】
この設定で、受信装置11がF01の主VHF周波数132.5MHzの航空無線を受信した場合、132.5MHzの周波数情報とその方位情報がデータ処理装置22に送信される。ここで、データ処理装置22が132.5MHzを使用した区域を判別する方法としては、(表1)、(表2)に示した周波数表をテーブルに持ち、先頭セクタS01の周波数から順にサーチしていき、一致した周波数のセクタを、132.5MHzを使用した区域として判別する方法が考えられる。
【0033】
しかしながら、上記の方法では、データ処理装置22は最大で全49セクタを順にサーチする必要がある。また、受信装置11が最大8周波数を同時に受信した場合には、8波分の周波数情報と方位情報が含まれるIPパケットがデータ処理装置22に送信されるため、VHF周波数のみの場合でも、データ処理装置22はIPパケットを1つ受信する毎に、最大で8×49×3(主/副/緊急)のループ処理でサーチする必要がある。更に、(表1)、(表2)では、133.3MHz周波数はセクタS01とセクタF08の2つで使用されているが、このように2つ以上のセクタで使用される周波数も存在するため、その周波数がどのセクタで使用されたものかは、単純に一度のループ処理だけでは判断できないため、処理時間のインパクトも大きい。
【0034】
そこで、下記の方法をもって、方位情報をまとめるグルーピング処理時間を削減する。
(1)データ処理装置22に、各受信装置11が設置された位置と、その受信装置11が受信できる全8波の周波数及びその周波数の収集グループ番号とを対応付けて、
図8に例示するようなJSON形式のファイル(以下、「受信局テーブル」と称する)で用意しておく。
(2)データ処理装置22の起動時に、受信局テーブルを読み込みメモリ上に展開する。これは、ハッシュテーブルとして作用する。
(3)メモリ上に展開した受信局テーブルから、周波数と収集グループ番号の組をキー(key)とし、そのキーに係る方位情報の収集用バッファ(のアドレス)を値(value)としたハッシュテーブル(以下、「バッファテーブル」と称する)を作成する。
図9に、バッファテーブルの例を示してある。
(4)受信装置22からIPパケットを受信した際に、IPパケットに含まれている受信局番号と各周波数を上記の受信局テーブル(
図8)と照らし合わせて、周波数とそのグループを抽出する。
(5)抽出した周波数とグループの組を検索キーとしてバッファテーブル(
図9)を参照することで収集用バッファを特定し、航空機の位置算出に必要な方位情報等を収集用バッファにバッファリングする。
【0035】
図10には、上記(4)、(5)に係る処理の流れを示してある。すなわち、受信装置11からIPパケットを受信したデータ処理装置22は、まず、IPパケットに含まれている受信局番号と各周波数に基づいて、バッファテーブルの検索キーとなる周波数と収集グループ番号の組を抽出する(ステップS1~S4)。次に、抽出した周波数と収集グループ番号の組を検索キーとしてバッファテーブルを参照し、方位情報の保存先となる収集用バッファ(のアドレス)を抽出し(ステップS5)、航空機の位置の算出に必要な情報を収集用バッファにバッファリングする(ステップS6)。以上の処理を、IPパケットに含まれる最大8波分のデータについて繰り返す。
【0036】
このように、[方法2]では、データ処理装置22が、あるセクタにおいて使用される航空無線の周波数が、各受信装置11が受信可能な周波数として設定された受信局テーブルを用いて、グルーピング処理を行うように構成されている。これにより、データ処理装置22は、IPパケットの受信毎に、最大でも僅か8ループ程度で方位情報のグルーピング(バッファリング)を行えるようになる。その結果、複数の航空機の位置算出を高速に実施することが可能となる。
【0037】
なお、上記の説明では、[方法1]と[方法2]の両方をデータ処理装置22で実施しているが、これらの片方だけをデータ処理装置22で実施しても、RDFシステムの処理遅延を短縮することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0039】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、航空無線の発信元である航空機の位置を推定するデータ処理装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
10:受信局、 11:受信装置、 12:ネットワーク装置、 20:サーバー局、 21:ネットワーク装置、 22:データ処理装置、 23:外部記憶装置