(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】樹脂体、及び、電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20241210BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241210BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
H02G3/14
(21)【出願番号】P 2022156644
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2022112712
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】横山 椋一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 昌子
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247046(JP,A)
【文献】特開2009-189082(JP,A)
【文献】特開2013-74655(JP,A)
【文献】特開2019-88126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H02G 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線側接続部及び相手側接続部からなるL字状の端子を有する端子付き電線を保持可能に構成され、電子部品を内部に収容する筐体に組み付けられることになる樹脂体であって、
第1方向に延びる第1壁部と、
前記第1方向と交差する第2方向において離間して配置され、前記端子における前記第2方向の変位を規制可能な一対の第2壁部と、が一体に構成され、
前記一対の第2壁部の各々には、
前記相手側接続部が載置可能な載置部と、
前記端子における前記第1方向の変位を規制するように、前記載置部とともに前記相手側接続部を前記第1方向に挟み込むことになる第1規制部と、が設けられ、
前記第1壁部には、
前記端子における前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向の変位を規制するように、前記載置部とともに前記相手側接続部を前記第3方向に挟み込むことになる第2規制部と、
前記端子における前記第1方向の変位を規制するように、前記載置部とともに前記相手側接続部を前記第1方向に挟み込むことになる第3規制部と、が設けられる、
樹脂体。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂体において、
前記載置部及び前記第1規制部は、
前記相手側接続部の延び方向となる前記第3方向において、異なる位置に設けられる、
樹脂体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂体において、
前記第1壁部及び前記第2壁部によって、前記端子付き電線が収容される収容部が画成され、
前記第2壁部には、前記端子付き電線を前記第2方向に沿って前記収容部内に挿入可能な切り欠き部が設けられる、
樹脂体。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂体と、端子付き電線と、電子部品を内部に収容する筐体と、を備えた電気接続箱であって、
前記端子付き電線は、電線と、L字状の端子と、を有し、
前記端子は、
前記第1方向に延びて、前記電線と接続される電線側接続部と、
前記第3方向に延びて、前記筐体に設けられたスタッドボルトと接続される相手側接続部と、が一体に構成される、
電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂体、及び、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載され、ヒューズ、リレー、及び電子制御ユニット等の種々の電子部品を収容空間の内部に収容する電気接続箱が提案されている。例えば、従来の電気接続箱の一つは、収容空間を有する筐体と、筐体の内部空間に設けられるとともに電子部品等と導通接続されるスタッドボルトと、スタッドボルトの設置箇所にて筐体に取り付けられるサイドカバーと、を備えている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したサイドカバーは、電気接続箱の筐体に組み付けられる前に、電線及びL字状の端子を有する端子付き電線が組み付けられている。このため、端子のがたつきを抑制すべく、サイドカバーには端子を係止する係止部が設けられている。一方、端子のがたつきを抑制するため、係止部と端子とが密着するように構成されることが好ましいが、端子がL字状であるため、サイドカバーへの端子付き電線の組み付け作業の観点から、係止部と端子との間には、クリアランスが設けられている。このため、端子のがたつきを十分に抑制できないおそれがあり、これにより、スタッドボルトへの端子の位置決めが困難になるおそれがある。また、端子のがたつきを十分に抑制できないと、端子付き電線における電線を所望の方向へと引き出そうと電線を引っ張ることで、端子にがたつきが生じるおそれがあり、電線を所望の方向に引き出すことが困難になる。
【0005】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、端子付き電線における端子のがたつき抑制に優れる樹脂体、及び、電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る樹脂体は、下記を特徴としている。
【0007】
電線側接続部及び相手側接続部からなるL字状の端子を有する端子付き電線を保持可能に構成され、電子部品を内部に収容する筐体に組み付けられることになる樹脂体であって、
第1方向に延びる第1壁部と、
前記第1方向と交差する第2方向において離間して配置され、前記端子における前記第2方向の変位を規制可能な一対の第2壁部と、が一体に構成され、
前記一対の第2壁部の各々には、
前記相手側接続部が載置可能な載置部と、
前記端子における前記第1方向の変位を規制するように、前記載置部とともに前記相手側接続部を前記第1方向に挟み込むことになる第1規制部と、が設けられ、
前記第1壁部には、
前記端子における前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向の変位を規制するように、前記載置部とともに前記相手側接続部を前記第3方向に挟み込むことになる第2規制部と、
前記端子における前記第1方向の変位を規制するように、前記載置部とともに前記相手側接続部を前記第1方向に挟み込むことになる第3規制部と、が設けられる、
樹脂体であること。
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、下記を特徴としている。
【0009】
上記樹脂体と、端子付き電線と、電子部品を内部に収容する筐体と、を備えた電気接続箱であって、
前記端子付き電線は、電線と、L字状の端子と、を有し、
前記端子は、
前記第1方向に延びて、前記電線と接続される電線側接続部と、
前記第3方向に延びて、前記筐体に設けられたスタッドボルトと接続される相手側接続部と、が一体に構成される、
電気接続箱であること。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る樹脂体、及び、電気接続箱について以下に述べる。
本構成の樹脂体、及び、電気接続箱によれば、一対の第2壁部が、相手側接続部を第2方向に挟み込むことで、端子の第2方向の変位を規制する。同様に、載置部及び第1規制部、並びに、載置部及び第3規制部が、相手側接続部をそれぞれ第1方向に挟み込むことで、端子の第1方向の変位を規制する。同様に、載置部及び第2規制部が、相手側接続部を第3方向に挟み込むことで、端子の第3方向の変位を規制する。このように、本構成の樹脂体は、端子のあらゆる方向への変位を規制するため、端子のがたつきを抑制できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るサイドカバーを含む電気接続箱の要部分解後方斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すサイドカバー及び端子付き電線の前方斜視図である。
【
図8】
図8は、サイドカバーへの端子付き電線の組み付け工程を示す第1図である。
【
図9】
図9は、サイドカバーへの端子付き電線の組み付け工程を示す第2図である。
【
図11】
図11は、変形例に係るサイドカバー及び端子付き電線の前方斜視図である。
【
図16】
図16は、
図11に示すサイドカバーへの端子付き電線の組み付け工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図1等に示す本発明の実施形態に係るサイドカバー40について説明する。サイドカバー40は、電気接続箱1の側壁部11に組み付けられる樹脂成形体である。電気接続箱1は、典型的には、車両に搭載され、リレー等の電子部品やその他の部品である電子部品R(
図2~
図3参照)を収容する内部空間を有するリレーボックスである。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1等に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。電気接続箱1の車両搭載時において、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、それぞれ、車両の前後方向、左右方向及び上下方向に対応している。また、上下方向は、本発明の「第1方向」に対応している。更に、左右方向は、本発明の「第2方向」に対応している。更に、前後方向は、本発明の「第3方向」に対応している。
【0015】
図1に示すように、電気接続箱1は、フレーム10と、フレーム10の下端開口を塞ぐようにフレーム10の下方に組み付けられるロアカバー20と、フレーム10の上端開口を塞ぐようにフレーム10の上方に組み付けられるアッパカバー30と、フレーム10の側壁部11に組み付けられるサイドカバー40(本発明の「樹脂体」に対応)と、により構成される。電気接続箱1を構成する上記4つの部品は全て、樹脂成形体である。
【0016】
電気接続箱1では、
図1に示すように、電気接続箱1の内部に位置する電子部品Rの一部に導通接続される電線(図示省略)が、電気接続箱1の後方左部に設けられた電線引出孔(図示省略)を介して、電気接続箱1の外部へと導出される。更に、他の電子部品Rの一部に導通接続される電線(図示省略)は、電気接続箱1の前方右部に設けられた電線引出孔(図示省略)を介して電気接続箱1の外部に導出される。
【0017】
加えて、サイドカバー40に保持された端子付き電線50が、電気接続箱1の内部空間に設けられたスタッドボルトSに接続・締結されて、サイドカバー40の収容部42を通り、電気接続箱1の外部へと導出される。
【0018】
端子付き電線50は、電線51と、電線51の端末に接続される端子52と、により構成される(
図2~
図3参照)。電線51は、一端が端子52と接続され、他端が例えばバッテリやオルタネータ等と接続される。端子52は、
図2~
図3、
図6、及び
図8~
図9に示すように、上下方向に延びて電線51と接続される電線側接続部53と、前方に延びてスタッドボルトSに接続・締結される相手側接続部54と、が一体に構成されて、略L字状に形成されている。なお、相手側接続部54には、上下方向に貫通し、スタッドボルトSが挿通される孔部が設けられている。以下、電気接続箱1を構成するフレーム10、ロアカバー20、アッパカバー30、及びサイドカバー40について順に説明する。
【0019】
まず、フレーム10について説明する。
図1に示すように、フレーム10は、上下方向に延びる略矩形筒状の側壁部11を備える。側壁部11は、電気接続箱1の側面の外観の大部分を構成する。
【0020】
側壁部11の下端部における周方向の複数箇所(本例では、8箇所)の外面には、それぞれ、上下方向に延びる貫通孔を含む被係止部12が一体に設けられている。被係止部12は、ロアカバー20をフレーム10に組み付ける機能を有する。また、側壁部11の上端部における周方向の複数箇所(本例では、3箇所)の外面には、それぞれ、被係止部13が一体に設けられている。被係止部13は、アッパカバー30をフレーム10に組み付ける機能を有する。
【0021】
側壁部11における後方左部の電線引出孔に対応する箇所には、下方に開口する半円筒状の樋状部14が、左下方向に斜めに延びるように設けられている。樋状部14は、後方左部の電線引出孔を画成する内壁の上側部分を構成する機能を有する。また、側壁部11における前方右部の電線引出孔に対応する箇所には、下方に開口する半円筒状の樋状部15が、右方に延びるように設けられている。樋状部15は、前方右部の電線引出孔を画成する内壁の上側部分を構成する機能を有する。
【0022】
側壁部11の下端部における周方向の複数箇所の外面には、それぞれ、下方に延びるステー部16が一体に設けられている。ステー部16は、その先端部を車両の搭載箇所に組み付けることで、フレーム10(即ち、電気接続箱1)を車両の搭載箇所に固定する機能を有する。
【0023】
スタッドボルトS近傍(本例では、後方)の側壁部11には、サイドカバー40が組み付けられる被組付部17が設けられている。被組付部17には、例えばサイドカバー40の係止部(図示省略)が係止される被係止部(図示省略)が設けられる。
【0024】
次いで、ロアカバー20について説明する。
図1に示すように、ロアカバー20は、電気接続箱1の下側側面の外観の大部分を構成する環状の側壁部21と、側壁部21の環状の下端開口を塞ぐとともに電気接続箱1の底面の外観の大部分を構成する底壁部22と、を一体に備える。側壁部21の環状の上端縁部は、フレーム10の側壁部11の環状の下端縁部に対応する形状を有し、側壁部11の環状の下端縁部と嵌合可能となっている。
【0025】
側壁部21の上端部における周方向の複数箇所(本例では、8箇所)の外面には、それぞれ、フレーム10の複数の被係止部12に対応して、上方に延びる係止片23が一体に設けられている。
【0026】
側壁部21における後方左部の電線引出孔に対応する箇所には、上方に開口する半円筒状の樋状部24が、左下方向に斜めに延びるように設けられている。樋状部24は、後方左部の電線引出孔を画成する内壁の下側部分を構成する機能を有する。また、側壁部21における前方右部の電線引出孔に対応する箇所には、上方に開口する半円筒状の樋状部25が、右方に延びるように設けられている。樋状部24は、前方右部の電線引出孔を画成する内壁の下側部分を構成する機能を有する。
【0027】
次いで、アッパカバー30について説明する。
図1に示すように、アッパカバー30は、電気接続箱1の上側側面の外観の大部分を構成する環状の側壁部31と、側壁部31の環状の上端開口を塞ぐと共に電気接続箱1の上面の外観の大部分を構成する上壁部32と、を一体に備える。側壁部31の環状の下端縁部は、フレーム10の側壁部11の環状の上端縁部に対応する形状を有し、側壁部11の環状の上端縁部と嵌合可能となっている。側壁部31における周方向の複数箇所(本例では、3箇所)の外面には、それぞれ、フレーム10の複数の被係止部13に対応して、係止部33が一体に設けられている。
【0028】
次いで、サイドカバー40について説明する。
図2~
図5に示すように、サイドカバー40は、上下方向に延びる第1壁部41と、左右方向において離間して配置される一対の第2壁部43と、が一体に構成されている。これにより、サイドカバー40は、前方及び上下方向に開口する端子付き電線50の収容部42が画成されている。
【0029】
本実施形態では、第2壁部43は、第1壁部41の左右両端及び左右方向略中央領域にそれぞれ設けられている。これにより、一対の収容部42が左右方向に隣接して配置されている。なお、左右方向略中央領域の第2壁部43については、上下方向下側領域が一体に構成されている。
【0030】
つまり、第1壁部41はいわゆる底壁としての機能を有し、左右方向両端の第2壁部43はいわゆる側壁としての機能を有し、左右方向略中央領域の第2壁部は、いわゆる隣接する収容部42の仕切壁としての機能を有する。また、第2壁部43は、端子付き電線50の保持状態において、端子52(特に、相手側接続部54)の左右方向の変位を規制する機能を有する(
図7参照)。
【0031】
なお、第1壁部41は、上下方向下側領域に位置する第1部分41aと、上下方向上側領域に位置する第2部分41bと、第1部分41a及び第2部分41bの間に位置する第3部分41cと、から構成されている。そして、第1部分41aは、第2部分41bよりも後方に位置している。これにより、後述するように、端子52のがたつきを抑制しつつ、サイドカバー40への端子付き電線50の組み付け作業に必要なスペースが確保される。
【0032】
各第2壁部43には、それぞれ、端子付き電線50の相手側接続部54が載置される載置部44が、対応する収容部42の内方に向けて突出するように設けられている(
図4~
図5参照)。また、各第2壁部43には、それぞれ、載置部44よりも上方且つ前方に配置される第1規制部45が、対応する収容部42の内方に向けて突出するように設けられている。第1規制部45は、端子付き電線50の保持状態において、載置部44とともに相手側接続部54を上下方向に挟み込むことで、端子52(特に、相手側接続部54)の上下方向の変位を規制する機能を有する(
図6参照)。
【0033】
第1壁部41(具体的には、第3部分41c)における各収容部42に対応する箇所には、それぞれ、収容部42の左右方向に離間して配置される一対の第2規制部46が、前方に向けて突出するように設けられている(
図4参照)。第2規制部46は、端子付き電線50の保持状態において、載置部44とともに相手側接続部54を前後方向に挟み込むことで、端子52(特に、相手側接続部54)の前後方向の変位を規制する機能を有する(
図6参照)。
【0034】
第1壁部41(具体的には、第2部分41b)における各収容部42に対応する箇所には、それぞれ、左右方向に離間して配置される一対の第3規制部47が、前方に向けて突出するように設けられている(
図2~
図3及び
図5~
図6参照)。第3規制部47は、載置部44とともに相手側接続部54を上下方向に挟み込むことで、端子52(特に、相手側接続部54)の上下方向の変位を規制する機能を有する(
図6参照)。
【0035】
以上、電気接続箱1を構成するフレーム10、ロアカバー20、アッパカバー30、及びサイドカバー40について説明した。フレーム10、ロアカバー20、アッパカバー30、及びサイドカバー40からなる電気接続箱1を組み付けるためには、フレーム10にロアカバー20、アッパカバー30、及びサイドカバー40をそれぞれ組み付ける必要がある。
【0036】
まず、フレーム10にロアカバー20を組み付ける。フレーム10にロアカバー20を組み付けるためには、ロアカバー20の複数の係止片23(
図1参照)を、下方からフレーム10の被係止部12(
図1参照)の複数の貫通孔にそれぞれ挿入し、この状態から、ロアカバー20の側壁部21の環状の上端縁部をフレーム10の側壁部11の環状の下端縁部に嵌合させ、且つ、複数の係止片23を複数の被係止部12に係止させる。これにより、フレーム10へのロアカバー20の組み付けが完了する。
【0037】
その後、サイドカバー40に端子付き電線50を組み付ける(詳細は後述する)。その後、フレーム10にサイドカバー40を組み付ける。フレーム10にサイドカバー40を組み付けるためには、端子付き電線50をスタッドボルトSに接続・締結させ、且つ、フレーム10の被組付部17にサイドカバー40を組み付ける。
【0038】
具体的には、端子付き電線50における端子52の孔部55をスタッドボルトSに挿通させ、そしてナットNを締めることで、端子付き電線50がスタッドボルトSに接続・締結される。その後、サイドカバー40の係止部(図示省略)をフレーム10の被係止部(図示省略)に係止させる。これにより、フレーム10へのサイドカバー40の組み付けが完了する。
【0039】
その後、フレーム10にアッパカバー30を組み付ける。フレーム10にアッパカバー30を組み付けるためには、アッパカバー30の側壁部31の環状の下端縁部をフレーム10の側壁部11の環状の上端縁部に嵌合させ、且つ、アッパカバー30の複数の係止部33をフレーム10の複数の被係止部12に係止させる。これにより、フレーム10へのアッパカバー30の組み付けが完了する。
【0040】
これにより、フレーム10にロアカバー20、アッパカバー30、及びサイドカバー40がそれぞれ組み付けられて、電気接続箱1が完成される。なお、フレーム10へのロアカバー20の組み付け工程と、フレーム10へのサイドカバー40の組み付け工程と、の順番の前後は問わない。
【0041】
電気接続箱1の組付完了状態では、複数の係止片23と複数の被係止部12との係止により、ロアカバー20がフレーム10から下方へ分離することが防止される。同様に、複数の係止部33と複数の被係止部13との係止により、アッパカバー30がフレーム10から上方へ分離することが防止される。なお、サイドカバー40についても同様に、フレーム10の被係止部(図示省略)とサイドカバー40の複数の係止部(図示省略)との係止により、サイドカバー40がフレーム10から後方へ分離することが防止される。
【0042】
更に、フレーム10の被組付部17の外面とサイドカバー40の収容部42の内面とにより端子付き電線50が挿通される電線挿通路が画成される(図示省略)。同様に、フレーム10の樋状部14と、ロアカバー20の樋状部24とにより、電線(図示省略)が挿通される後方左部の電線引出孔が画成される。同様に、フレーム10の樋状部15と、ロアカバー20の樋状部25とにより、電線(図示省略)が挿通される前方右部の電線引出孔が画成される。
【0043】
次いで、サイドカバー40への端子付き電線50の組み付け方法について
図8~
図9を参照して説明する。まず、端子付き電線50の上端部を後方に倒すように傾けて、相手側接続部54を、載置部44と第2規制部46との間且つ載置部44と第3規制部47との間の隙間に挿入する(
図8参照)。
【0044】
相手側接続部54を所定位置まで挿入後、電線側接続部53及び相手側接続部54の入隅部分又は入隅部分近傍と、載置部44と、の当接箇所を中心に端子付き電線50を回動させる(
図9の矢印参照)。相手側接続部54は、回動途中において上方から下方に向けて第1規制部45を乗り越え、そして、所定位置に到達する。これにより、端子付き電線50がサイドカバー40に組み付けられる。換言すると、端子付き電線50は、サイドカバー40に保持される(
図2及び
図6~
図7参照)。
【0045】
端子付き電線50は、保持状態において、相手側接続部54が、一対の第2壁部43に左右方向に挟み込まれて、端子52の左右方向の変位が規制される(
図7参照)。同様に、端子付き電線50は、保持状態において、相手側接続部54が、載置部44及び第1規制部45、並びに、載置部44及び第3規制部47にそれぞれ上下方向に挟み込まれて、端子52の上下方向の変位が規制される(
図6参照)。同様に、端子付き電線50は、保持状態において、相手側接続部54が、載置部44及び第2規制部46に前後方向に挟み込まれて、端子52の前後方向の変位が規制される(
図6参照)。
【0046】
また、サイドカバー40は、前後方向に延びる相手側接続部54に対して、載置部44と第1規制部45とが前後方向に異なる位置に設けられることで、端子52のがたつき(特に、相手側接続部54の前端の浮き上がり)をより適正に抑制できる。
【0047】
このように、サイドカバー40は、端子52のあらゆる方向への変位を規制することで、端子52のがたつきを抑制できる。これにより、端子付き電線50における端子52の孔部55の位置決め精度が向上し、例えば、フレーム10へのサイドカバー40の組み付け時において、端子付き電線50をスタッドボルトSに容易に接続・締結できる。また、電線51の引っ張りによる端子52のがたつきが抑制されるため、電線51を所望の方向へと引き出すことができる。
【0048】
なお、サイドカバー40への端子付き電線50の組み付け作業は、いわゆるワンアクションで行うことができ、組み付け作業性に優れる。
【0049】
<他の形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0050】
図10に示すように、第1規制部45における相手側接続部54と対向する面(本例では、下端面)を、突出先端から突出基端に向かうにつれて相手側接続部54に近付く傾斜状に形成してもよい。一般に、係止部と係止部に係止される被係止部材との間には、クリアランスを設ける必要がある。このため、被係止部材は、クリアランスの大きさだけがたつくおそれがある。しかしながら、上記構成により、第1規制部45と相手側接続部54との間に必要なクリアランスを設けつつも、第1規制部45の突出基端においては、クリアランスを小さくできるため、端子52のがたつきをより適正に抑制できる。なお、後述する第1規制部145についても、上述したように形成されてもよい。
【0051】
<変形例>
以下、上記実施形態(サイドカバー40)の変形例に係るサイドカバー140について、
図11~
図16を参照して説明する。
【0052】
まず、サイドカバー140の具体的な構造について説明する。
図11~
図13に示すように、サイドカバー140は、上下方向に延びる第1壁部141と、左右方向において離間して配置される一対の第2壁部143と、が一体に構成されている。これにより、サイドカバー140は、前方及び上下方向に開口する端子付き電線50の収容部142が画成されている。つまり、第1壁部141はいわゆる底壁としての機能を有し、一対の第2壁部143はいわゆる側壁としての機能を有する。
【0053】
第1壁部141は、上下方向下側領域に位置する第1部分141aと、上下方向上側領域に位置する第2部分141bと、第1部分141a及び第2部分141bの間に位置する第3部分141cと、から構成されている。
【0054】
第2壁部143は、上記実施形態の第2壁部43と同様に、端子付き電線50の保持状態において、端子52(特に、相手側接続部54)の左右方向の変位を規制する機能を有する。
【0055】
収容部142内には、端子付き電線50の相手側接続部54が載置される載置部144が、一対の第2壁部143を左右方向に連結するように設けられている(
図12~
図13参照)。
【0056】
左方の第2壁部143には、収容部142内において、載置部144よりも上方且つ前方に配置される第1規制部145が、右方に向けて突出するように設けられている(
図11~
図12及び
図14~
図16参照)。第1規制部145は、端子付き電線50の保持状態において、載置部144とともに端子52を上下方向に挟み込むことで、端子52(特に、相手側接続部54)の上下方向の変位を規制する機能を有する(
図15参照)。
【0057】
第1壁部141(具体的には、第3部分141c)には、収容部142内において、左右方向に離間して配置される一対の第2規制部146が、前方に向けて突出するように設けられている(
図14参照)。第2規制部146は、端子付き電線50の保持状態において、載置部144とともに端子52を前後方向に挟み込むことで、端子52(特に、相手側接続部54)の前後方向の変位を規制する機能を有する(
図6参照)。
【0058】
第1壁部41(具体的には、第2部分41b)には、収容部142内において、左右方向に離間して配置される一対の第3規制部147が、前方に向けて突出するように設けられている。第3規制部147は、載置部144とともに相手側接続部54を上下方向に挟み込むことで、端子52(特に、相手側接続部54)の上下方向の変位を規制する機能を有する(
図15参照)。
【0059】
右方の第2壁部143には、端子付き電線50の端子52に対応する形状に切り欠かれた切り欠き部149が設けられている(
図11~
図13及び
図16参照)。切り欠き部149は、端子付き電線50の電線側接続部53に対応するように切り欠かれた第1切り欠き部149aと、端子付き電線50の相手側接続部54に対応するように切り欠かれた第2切り欠き部149bと、から構成され、第1切り欠き部149a及び第2切り欠き部149bが互いに連通している。切り欠き部149は、端子付き電線50を収容部142に収容する際の挿入口としての機能を有する。
【0060】
なお、本例では、収容部142が一つの場合におけるサイドカバー140について説明したが、上記実施形態の収容部42のように、複数の収容部142が左右方向に並設されていてもよい。例えば、収容部142が二つの場合には、切り欠き部149が、右方の第2壁部143及び左方の第2壁部143にそれぞれ設けられる。
【0061】
次いで、サイドカバー140への端子付き電線50の組み付け方法について説明する。はじめに、端子付き電線50をサイドカバー140の右方に配置した後、端子付き電線50の上端部を後方に倒すように傾けて、サイドカバー140に端子付き電線50を近付ける(
図16参照)。
【0062】
そして、端子付き電線50を切り欠き部149から収容部142に挿入する。端子付き電線50が収容部142に挿入された後、電線側接続部53及び相手側接続部54の入隅部分又は入隅部分近傍と、載置部144と、の当接箇所を中心に端子付き電線50を回動させる。相手側接続部54は、回動途中において上方から下方に向けて第1規制部145を乗り越え、そして、所定位置に到達する。これにより、端子付き電線50がサイドカバー140に組み付けられる。換言すると、端子付き電線50は、サイドカバー140に保持される(
図11及び
図15参照)。なお、上記回動は、端子付き電線50の傾きを戻す向きに行われる。
【0063】
端子付き電線50は、保持状態において、相手側接続部54が、一対の第2壁部143に左右方向に挟み込まれて、端子52の左右方向の変位が規制される(
図11参照)。同様に、端子付き電線50は、保持状態において、相手側接続部54が、載置部144及び第1規制部145、並びに、載置部144及び第3規制部147にそれぞれ上下方向に挟み込まれて、端子52の上下方向の変位が規制される(
図15参照)。同様に、端子付き電線50は、保持状態において、相手側接続部54が、載置部144及び第2規制部146に前後方向に挟み込まれて、端子52の前後方向の変位が規制される(
図15参照)。
【0064】
また、サイドカバー140は、前後方向に延びる相手側接続部54に対して、載置部144と第1規制部145とが前後方向に異なる位置に設けられることで、端子52のがたつき(特に、相手側接続部54の前端の浮き上がり)をより適正に抑制できる。
【0065】
このように、サイドカバー140は、端子52のあらゆる方向への変位を規制することで、端子52のがたつきを抑制できる。これにより、端子付き電線50における端子52の孔部55の位置決め精度が向上し、例えば、フレーム10へのサイドカバー140の組み付け時において、端子付き電線50をスタッドボルトSに容易に接続・締結できる。また、電線51の引っ張りによる端子52のがたつきが抑制されるため、電線51を所望の方向へと引き出すことができる。
【0066】
なお、サイドカバー140への端子付き電線50の組み付け作業は、いわゆるワンアクションで行うことができ、組み付け作業性に優れる。
【0067】
また、端子付き電線50が左右方向に沿ってサイドカバー140の収容部142に挿入されるため、上記実施形態に比べて、第1部分141aと第2部分141bとの前後方向の距離を近付けることができる。つまり、サイドカバー140においては、小型化を図ることができる。更に、第2壁部143に切り欠き部149が設けられることで、収容部142への端子付き電線50の収容が容易になる。
【0068】
ここで、上述した本発明に係る樹脂体、及び、電気接続箱の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線側接続部(53)及び相手側接続部(54)からなるL字状の端子(52)を有する端子付き電線(50)を保持可能に構成され、電子部品(R)を内部に収容する筐体(フレーム10,ロアカバー20、アッパカバー30)に組み付けられることになる樹脂体(サイドカバー40,140)であって、
第1方向に延びる第1壁部(41,141)と、
前記第1方向と交差する第2方向において離間して配置され、前記端子(52)における前記第2方向の変位を規制可能な一対の第2壁部(43,143)と、が一体に構成され、
前記一対の第2壁部(43,143)の各々には、
前記相手側接続部(54)が載置可能な載置部(44,144)と、
前記端子(52)における前記第1方向の変位を規制するように、前記載置部(44,144)とともに前記相手側接続部(54)を前記第1方向に挟み込むことになる第1規制部(45,145)と、が設けられ、
前記第1壁部(41,141)には、
前記端子(52)における前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向の変位を規制するように、前記載置部(44,144)とともに前記相手側接続部(54)を前記第3方向に挟み込むことになる第2規制部(46,146)と、
前記端子(52)における前記第1方向の変位を規制するように、前記載置部(44,144)とともに前記相手側接続部(54)を前記第1方向に挟み込むことになる第3規制部(47,147)と、が設けられる、
樹脂体(サイドカバー40,140)。
[2]
上記[1]に記載の樹脂体(サイドカバー40,140)において、
前記載置部(44,144)及び前記第1規制部(45,145)は、
前記相手側接続部(54)の延び方向となる前記第3方向において、異なる位置に設けられる、
樹脂体(サイドカバー40,140)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の樹脂体(サイドカバー140)において、
前記第1壁部(141)及び前記第2壁部(143)によって、前記端子付き電線(50)が収容される収容部(142)が画成され、
前記第2壁部(143)には、前記端子付き電線(50)を前記第2方向に沿って前記収容部(142)内に挿入可能な切り欠き部(149)が設けられる、
樹脂体(サイドカバー140)。
[4]
上記[1]から上記[3]の何れか一つに記載の樹脂体(サイドカバー40,140)と、端子付き電線(50)と、電子部品(R)を内部に収容する筐体(フレーム10,ロアカバー20,アッパカバー30)と、を備えた電気接続箱(1)であって、
前記端子付き電線(50)は、電線(51)と、L字状の端子(52)と、を有し、
前記端子(52)は、
前記第1方向に延びて、前記電線(51)と接続される電線側接続部(53)と、
前記第3方向に延びて、前記筐体に設けられたスタッドボルト(S)と接続される相手側接続部(54)と、が一体に構成される、
電気接続箱(1)。
【0069】
上記[1]の構成の樹脂体によれば、一対の第2壁部が、相手側接続部を第2方向に挟み込むことで、端子の第2方向の変位を規制する。同様に、載置部及び第1規制部、並びに、載置部及び第3規制部が、相手側接続部をそれぞれ第1方向に挟み込むことで、端子の第1方向の変位を規制する。同様に、載置部及び第2規制部が、相手側接続部を第3方向に挟み込むことで、端子の第3方向の変位を規制する。このように、本構成の樹脂体は、端子のあらゆる方向への変位を規制するため、端子のがたつきを抑制できる。
【0070】
上記[2]の構成の樹脂体によれば、第3方向に延びる相手側接続部に対して、載置部と第1規制部とが第3方向に異なる位置に設けられることで、端子のがたつきをより適正に抑制できる。
【0071】
上記[3]の構成の樹脂体によれば、第2壁部に端子付き電線を第2方向に沿って収容部内に挿入可能な切り欠き部が設けられることで、樹脂体への端子付き電線の収容が容易になる。
【0072】
上記[4]の構成の電気接続箱によれば、一対の第2壁部が、相手側接続部を第2方向に挟み込むことで、端子の第2方向の変位を規制する。同様に、載置部及び第1規制部、並びに、載置部及び第3規制部が、相手側接続部をそれぞれ第1方向に挟み込むことで、端子の第1方向の変位を規制する。同様に、載置部及び第2規制部が、相手側接続部を第3方向に挟み込むことで、端子の第3方向の変位を規制する。このように、本構成の樹脂体は、端子のあらゆる方向への変位を規制するため、端子のがたつきを抑制できる。
【符号の説明】
【0073】
1 電気接続箱
10 フレーム
11,21,31 側壁部
12,13 被係止部
14,15,24,25 樋状部
16 ステー部
17 被組付部
20 ロアカバー
22 底壁部
23 係止片
30 アッパカバー
32 上壁部
33 係止部
40,140 サイドカバー(樹脂体)
41,141 第1壁部
41a,141a 第1部分
41b,141b 第2部分
41c,141c 第3部分
42,142 収容部
43,143 第2壁部
44,144 載置部
45,145 第1規制部
46,146 第2規制部
47,147 第3規制部
149 切り欠き部
149a 第1切り欠き部
149b 第2切り欠き部
50 端子付き電線
51 電線
52 端子
53 電線側接続部
54 相手側接続部
55 孔部
N ナット
R 電子部品
S スタッドボルト