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特許7601851ピラゾリルカルボキシラート配位子を含む金属有機構造体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ピラゾリルカルボキシラート配位子を含む金属有機構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 3/06 20060101AFI20241210BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20241210BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20241210BHJP
   C07D 231/14 20060101ALI20241210BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C07F3/06 CSP
C07C9/06
C07C5/03
C07D231/14
C07B61/00 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022500847
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 US2020034811
(87)【国際公開番号】W WO2021006964
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】62/871,818
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー ジョゼフ エム
(72)【発明者】
【氏名】ジョシー ヨーゲシ ブイ
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルカリーム メアリー エス
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン サイモン シー
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0088209(KR,A)
【文献】TU, Binbin et al.,Journal of the American Chemical Society,2014年,136,p.14465-14471
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07C
C07D
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機構造体であって、
1つ以上のM4Oクラスター(Mは亜鉛である)を含む複数の金属クラスターと、
前記複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、前記多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含んでおり、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記金属有機構造体。
【請求項2】
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造がキュービックトポロジーを有する、求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項3】
前記複数の金属クラスターの少なくとも一部が、四面体構造を有する1つ以上の金属中心を含む、請求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項4】
前記複数の金属クラスターの少なくとも一部が、コバルト、ニッケル、及びマンガンより選択される二価金属を含む、求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項5】
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造がZn4Oクラスターを含む、請求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項6】
以下の特性:
・前記内部ポアが、6.0Å~40Åの範囲のポア径を有する、
・前記内部ポアが、0.4cc/g~0.64cc/gの範囲のポア容積を有する、
・前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造が、750m2/g~1300m2/gの範囲のBET表面積を有する、
の少なくとも1つを有する請求項1に記載の金属有機構造体。
【請求項7】
下記:
金属源を4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること;及び
前記金属源を前記4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスターを含み、前記複数の金属クラスターは1つ以上のM4Oクラスター(Mは亜鉛である)を含んでいる、金属有機構造体を形成すること、
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属有機構造体の調製方法であって、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記方法。
【請求項8】
前記金属源が予形成金属クラスターである、求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予形成金属クラスターがZn 4 O(2,2-ジメチルブタノアート) 6 を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記金属有機構造体が、前記複数の内部ポアの少なくとも一部の中に残留配位子、金属塩又は溶媒の少なくとも1つを含む、求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の金属クラスターが複数の金属中心を画定し、前記方法がさらに下記:
前記複数の金属中心を構成する第1の金属の少なくとも一部を第2の金属と交換すること
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の金属が亜鉛であり、前記第2の金属が、コバルト、ニッケル、又はマンガンの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
下記:
1つ以上の化学種を含む混合物を、
請求項1~6のいずれか1項に記載の金属有機構造体と接触させること;及び
前記内部ポアの少なくとも一部の中に前記1つ以上の化学種の少なくとも一部を吸収させること
を含む、方法。
【請求項14】
前記1つ以上の化学種が、水素、窒素、二酸化炭素、炭化水素、又はその混合物を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、ピラゾリルカルボキシラート配位子から形成された金属有機構造体(metal-organic framework material)(MOF)に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
MOFは、比較的新しい分類の高多孔性網状材料である。特性が純粋に無機であるゼオライトとは対照的に、MOFは、多座有機配位子によって相互に連結された金属イオン又はクラスターを含み、多座有機配位子は、金属イオン又はクラスターをまとめて広範囲の一次元、二次元、又は三次元配位網状構造(例えば、配位高分子)に架橋する「支柱」として働く。MOFは、有機成分の構造、及び比較的程度は低いが、網状トポロジーの構造をも調節及び制御する能力に起因する高度の構造的及び機能的同調性を提供する。該特徴は、他の従来の多孔性材料によっては一般的に得られない。MOFは、合成中に用いる多座有機配位子及び金属源の選択によって調節可能である低密度、高内部表面積、並びにポア及びチャネルを特徴とする。
【0003】
Zn4O(1,4-ベンゼンジカルボキシラート)3の一般式を有する、IRMOF-1としても知られるMOF-5は、MOFの原型例であり、20年近く前に開発された。この材料及びその等網目状(isoreticular)材料(すなわち、同トポロジーを有する材料)は、高ポア容積及び高表面積を示し、これらの特徴を活用する用途で使用するために模索されたきた。しかしながら、これらのMOFの周囲湿気条件下での長期性能及び安定性は確実には証明されなかった。
MOFは、とりわけガス貯蔵、ガスと液体の分離、検知、触媒作用、薬物送達、及び廃棄物浄化における用途について広範に調査された。MOFについて可能性のある豊富な用途は、MOFの合成に利用可能な多座有機配位子と金属源の無限にある組み合わせから生じる。特に、成分、官能化、又は合成後修飾の選択によってMOFの多孔度、組成、及び官能性を制御する予想される能力は、MOFを特殊用途に合わせて特別に設計される安定材料の供給に向けた有望な候補にする。
MOFのような多孔性材料の設計における課題の1つは、任意の所与の金属イオンについて可能性のある配位環境が多いことである。従って、種々の金属含有ノードに関して既知の幾何学を有するMOFを調製することが望ましい。さらに、より再現性が高く、より高い収率を特徴としながら、より可変性の合成条件をも可能にし、様々な構造挙動をもたらす合成経由でMOFを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
概要
一部の実施形態では、本開示は、1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターと、この複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含んでいるMOFであって、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、MOFを提供する。
一部又は他の実施形態では、本開示は、1つ以上のM4O(Mは金属である)クラスターを含む複数の金属クラスターと、この複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含んでいるMOFであって、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9、及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、MOFを提供する。
【0005】
一部の実施形態では、MOFの合成方法は、金属源を4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること;及び金属源を4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートを含む多座有機配位子に配位された複数の金属クラスターを含み、複数の金属クラスターは1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含んでいるMOFを形成することを含んでよく、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9、及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
一部又は他の実施形態では、本開示の方法は、予形成金属クラスターを4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること;及び予形成金属クラスターを4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートに配位された複数の金属クラスターを含む多座有機配位子を含み、複数の金属クラスターは1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含んでいる金属有機構造体を形成することを含んでよく、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
【0006】
さらに他の実施形態では、本開示の方法は、1つ以上の化学種を含む混合物を、1つ以上のM4O(Mは金属である)クラスターを含む複数の金属クラスターと、この複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含むMOFであって、多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含み、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9、及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する金属有機構造体と接触させること;及び1つ以上の化学種の少なくとも一部を内部ポアの少なくとも一部に吸収させることを含んでよい。
さらに他の実施形態では、本開示の方法は、4-ピラゾールカルボン酸と予形成金属クラスターの反応生成物であって、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートに配位された1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターを含み、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する反応生成物を含む触媒前駆体を準備すること;この触媒前駆体を還元剤にさらして活性化触媒を形成すること;この活性化触媒をオレフィンと接触させること;及びオレフィンが活性化触媒と接触している間にオレフィンを水素化することを含んでよい。
【0007】
図面の簡単な説明
以下の図は、本開示の特定態様を説明するために含められ、排他的実施形態とみなすべきでない。開示対象は、当業者及び本開示の利益を有する者なら気づくように、形態及び機能のかなりの修正、変更、組み合わせ、及び等価物が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】例1Aで得られたMOFについてのX線粉末回折パターンを示す。
図2】例1Aで、大気水への3日間の暴露後(下段パターン)及び窒素を流しながら60分間150℃に加熱した後(上段パターン)に得られたMOFについてのX線回折パターンを示す。
図3】例1Aの生成されたまま及び乾燥後の生成物、MOF-5、及びZn4O(PyCO2)3についての比較X線粉末回折パターンを示す。
図4A】例1AのMOFについてP/P0スケールにプロットした77K(25℃)でのN2吸着等温線を示す。
図4B】例1AのMOFについてLog P/P0スケールにプロットした77K(25℃)でのN2吸着等温線を示す。
図5】例1Aの7K(-14℃)でのMOFについてのH2吸着/脱着等温線を示す。
図6】例1Aの303K(151℃)でのMOFについての炭化水素(CH4、C2H4、C2H6、C3H8、C3H6)吸着等温線を示す。
図7】例1Cでアンモニア添加を完了したが、凍結乾燥前に得られたMOFのX線粉末回折パターンを示す。
図8】例1CのMOFについて、それぞれP/P0スケール及びLog P/P0スケールにプロットした77K(25℃)でのN2吸着等温線を示す。
図9】例1Aの生成物並びに例3A、3B、及び3Cの生成物の比較X線粉末回折パターンを示す。
図10A】例3Aの生成物のエネルギー分散型X線分析を示す。
図10B】例3Bの生成物のエネルギー分散型X線分析を示す。
図10C】例3Cの生成物のエネルギー分散型X線分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本開示は、ピラゾリルカルボキシラート配位子から形成されたMOFに関する。
上記で簡単に論じたように、MOFは、多座有機配位子を適切な金属源と反応させて、複数の内部ポアを有する結晶性又は部分的に結晶性の網状構造を形成することによって合成することができる。網状構造は、場合によっては配位高分子を構成することがある。MOFの構造及び特性は、多座有機配位子及び金属又は金属源の選択によって調節可能である。高多孔性材料として、MOFは、選択的に様々なタイプのガス、分子又は他の化学エンティティーを吸着及び/又は分離することができる。そのため、MOFは、ガスの貯蔵及び分離を含めた用途の可能性がある。しかしながら、多くの従来のMOFの化学的安定性は、それらの多孔性構造を活用する能力の妨げになる。
【0010】
本開示は、容易に利用することができ、異なる結合部位を有する多座有機配位子を含むMOFを提供する。特に、本開示で利用する多座有機配位子は、第1の結合部位としてピラゾリル部分及び第2の結合部位としてカルボキシラート部分を含む。多座有機配位子のピラゾリル部分は、種々の置換基を含み得る。驚いたことに、本願に記載の多座有機配位子は、キュービックトポロジーを特徴とし、かつ溶媒和及び非溶媒和材料の対称性の変化をもたらす動的溶媒和状態を示す網状構造を有する材料を与え得る。ピラゾリルカルボキシラート配位子の組み込みは、MOF-5に比べて、水安定性、合成後修飾のための能力向上、及びクラスターをベースとする手法による合成の容易さの増題大をも与える。驚いたことに、本願の開示に従って合成されるMOFは、同ピラゾールカルボキシラート配位子を異なる合成手順で合成されるもの(Tu et al., J. Am. Chem. Soc., 2014, 136, 14465)とは顕著に異なるX線粉末回折を有し、本願で開示する金属源を用いて異なるMOF構造が形成されることを示唆している。
【0011】
特定実施形態では、本開示の多座有機配位子は、4-ピラゾールカルボキシラートを含み得る。さらに本明細書で論じるように、この多座有機配位子は、種々の金属源と反応して、有利な特性を有するMOFを形成することができる。該MOFのより具体的実施形態は、複数の亜鉛中心又は亜鉛クラスターと、少なくとも1つの結合部位を介して複数の亜鉛中心又は亜鉛クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する4-ピラゾールカルボキシラート多座有機配位子とを含み得る。
驚いたことに、4-ピラゾールカルボキシラート及び類似多座有機配位子は、使用する金属源及び反応条件(例えば、濃度、温度及び時間)によって決まる可変網状構造を有するMOFを形成し得る。場合によっては、Zn4O(2,2-ジメチルブタノアート)6(Zn4O(DMBA)6)又は類似金属カルボキシラートクラスターのような予形成金属クラスターは、前述のピラゾリルカルボキシラート配位子と反応してMOFを形成するのに特に適している可能性がある。予形成金属クラスターは、MOFの形成を促進するのに特に望ましい金属源であり得るが、動的溶媒和状態なしでMOFを形成するときには他の金属源を良好に使用することもできる。本願に記載のピラゾリルカルボキシラート配位子が安定MOFを形成する能力は、頑強な金属-配位子結合の構造強度、さらにピラゾラート及びカルボキシラート部分への金属クラスターの配位によって効率的に大きいキュービックポアを助長する結合部位の位置決めに起因すると考えられる。
【0012】
前述のことに加えて、本願に記載の多座有機配位子を用いて合成されたMOFは、他の金属との交換を経て、金属中心又は金属クラスターの金属原子の少なくとも一部を1種以上の異なる金属に置き換えることができる。任意の目的で、例えばさらなる構造安定化を与えるため又は触媒反応を促進するために1種以上の異なる金属を導入することができる。多くの場合、金属交換が行なわれると最小限の構造再編成が起こる。
さらに詳細に本開示の種々の実施形態を記載する前に、本開示のより良い理解に役立つ用語リストを以下に示す。
本願の詳細な説明及び特許請求の範囲内の全ての数値には表示値に対して「約(about又はapproximately)」により修飾して、当業者が予測するであろう実験誤差及び変動を考慮している。特に断りのない限り、室温は約25℃である。
本開示及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数形が含まれる。
本願の「A及び/又はB」のような表現で使用する用語「及び/又は」には、「A及びB」「A又はB」、「A」、及び「B」が含まれる。
【0013】
本開示の目的では、周期表の族について新しいナンバリングスキームを使用する。前記ナンバリングスキームでは、fブロック元素(ランタニド及びアクチニド)を除いて、族(縦列)に左から右へ連続的に1~18の番号を付ける。
本開示及び特許請求の範囲で使用する場合、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、cPrはシクロプロピル、nPrはn-プロピル、iPrはイソプロピル、Buはブチル、nBuはノルマルブチル、iBuはイソブチル、sBuはsec-ブチル、tBuはtert-ブチル、Cyはシクロヘキシル、Octはオクチル、Phはフェニル、Bnはベンジルである。
【0014】
用語「炭化水素」は、炭素に結合した水素を有する化合物の分類を指し、(i)飽和炭化水素化合物、(ii)不飽和炭化水素化合物、及び(iii)異なる炭素原子数を有する炭化水素化合物の混合物を含め、炭化水素化合物(飽和及び/又は不飽和)の混合物を包含する。用語「Cn」は、1つの分子又は基当たりn個の炭素原子を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指し、nは正の整数である。該炭化水素化合物は、直鎖、分岐鎖、環式、非環式、飽和、不飽和、脂肪族、又は芳香族の1種以上であってよく、場合によっては任意的置換が存在してよい。
本願では用語「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビル基」を互換的に使用する。用語「ヒドロカルビル基」は、親化合物から除去されると少なくとも1つの空の原子価位置を有するいずれのC1-C100炭化水素基をも指す。適切な「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビル基」は、任意に置換されていてもよい。用語「1~約100個の炭素原子を有するヒドロカルビル基」は、直鎖又は分岐鎖C1-C100アルキル、C3-C100シクロアルキル、C6-C100アリール、C2-C100ヘテロアリール、C1-C100アルキルアリール、C7-C100アリールアルキル、及びその任意の組み合わせから選択される任意に置換されていてもよい部分を指す。
【0015】
用語「置換された」は、炭化水素又はヒドロカルビル基の少なくとも1個の水素原子又は炭素原子のヘテロ原子又はヘテロ原子官能基との交換を指す。ヘテロ原子としては、限定するものではないが、B、O、N、S、P、F、Cl、Br、I、Si、Pb、Ge、Sn、As、Sb、Se、及びTeを挙げることができる。置換された炭化水素又はヒドロカルビル基に存在し得るヘテロ原子官能基としては、限定するものではないが、O、S、S=O、S(=O)2、NO2、F、Cl、Br、I、NR2、OR、SeR、TeR、PR2、AsR2、SbR2、SR、BR2、SiR3、GeR3、SnR3、PbR3等の官能基が挙げられ、Rはヒドロカルビル基又はHである。適切なヒドロカルビルR基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル等を挙げるこができ、いずれも任意に置換されていてもよい。
用語「任意に置換されていてもよい」は、炭化水素又はヒドロカルビル基が置換されていなくても置換されていてもよいことを意味する。例えば、用語「任意に置換されていてもよいヒドロカルビル」は、ヒドロカルビル基の少なくとも1個の水素原子又は炭素原子のヘテロ原子又はヘテロ原子官能基との交換を指す。特に断りのない限り、本願のいずれのヒドロカルビル基も任意に置換されていてもよい。
【0016】
用語「直鎖」又は「直鎖炭化水素」は、分岐している側鎖がない連続炭素鎖を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指し、連続炭素鎖は任意に置換されていてもよい。
用語「環式」又は「環式炭化水素」は、任意に置換されていてもよい閉じた炭素環を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
用語「分岐鎖」又は「分岐鎖炭化水素」は、線状炭素鎖又は閉じた炭素環を有する炭化水素又はヒドロカルビル基であって、線状炭素鎖又は閉じた炭素環からヒドロカルビル側鎖が伸長している炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。線状炭素鎖、閉じた炭素環、及び/又はヒドロカルビル側鎖に任意的置換が存在してもよい。
用語「飽和」又は「飽和炭化水素」は、ヒドロカルビル基中の炭素原子上に存在する空の原子価位置を除き、全ての炭素原子が4個の他の原子に結合している炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
用語「不飽和」又は「不飽和炭化水素」は、1個以上の炭素原子が、炭素上に存在する空の原子価位置を除いて4個未満の他の原子に結合している炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。すなわち、用語「不飽和」は、1つ以上の二重結合及び/又は三重結合を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指し、二重結合及び/又は三重結合は、2個の炭素原子間及び/又は炭素原子とヘテロ原子の間にある。
【0017】
用語「芳香族」又は「芳香族炭化水素」は、ヒュッケル則を満たす共役π電子の環状配置を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
用語「アルキル」は、不飽和炭素-炭素結合を持たないヒドロカルビル基を指し、任意に置換されていてもよい。
本願では用語「アルケン」及び「オレフィン」を同義的に使用する。同様に、本願では用語「アルケン性」及び「オレフィン性」を同義的に使用する。特に断りのない限り、これらの用語には全ての可能な幾何異性体が包含される。
用語「アリール」は、ここで定義した用語「芳香族」と等価である。用語「アリール」は、芳香族化合物及びヘテロ芳香族化合物の両方を指し、任意に置換されていてもよい。これらの用語には単核及び多核の両芳香族化合物が包含される。
用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」は、ヘテロ原子を含有し、かつヒュッケル則を満たす芳香環を指す。
【0018】
芳香族ヒドロカルビル基の例としては、限定するものではないが、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。ヘテロアリール及び多核ヘテロアリール基としては、限定するものではないが、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリミジニル、キナゾリニル、アクリジニル、ピラジニル、キノキサリニル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、ベンゾピラゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、イミダゾリニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル及びベンゾフラニルを挙げることができる。多核アリール基としては、限定するものではないが、ナフタレニル、アントラセニル、インダニル、インデニル、及びテトラリニルを挙げることができる。
【0019】
本願で使用する場合、用語「多座」は、金属中心に配位する可能性のある2つ以上の部位を有する化合物を指す。従って、用語「多座」は、二座、三座、四座、及びより大きい座数の配位子を指す。
用語「金属中心」は、配位子が配位結合する単一の金属原子若しくは金属イオン、又は1群の金属原子及び/又は金属イオンを指す。
用語「金属クラスター」は、一緒に結合している1群の金属原子及び/又は金属イオンを指す。
【0020】
用語「二次構造単位(secondary building unit)」は、2つ以上の多座有機配位子が配位結合している金属クラスターを指す。例えば、二次構造単位は、式M4Oを有することがあり、カルボキシラート基のような多座有機配位子に配位されて、式M4O(CO2)6の多金属核カルボキシラートクラスターを有するMOFを形成することができる。カルボキシラート又はヒドラジル基を含む二座基によってクラスターM4Oが配位されてMOFを形成することもある。
用語「予形成金属クラスター」は、複数の金属原子及び/又は金属イオンと1つ以上の配位子の群を指し、この群は、MOFを形成するために別の材料と混ぜ合わせられる前に合成される。
用語「少なくとも部分的に結晶性」は、物質がX線粉末回折パターンを示すことを意味する。
用語「結合部位」は、金属-配位子結合によって金属中心に配位する能力がある化学エンティティーを指す。
用語「活性化」は、加熱及び/又は排除によって、溶媒分子又は種の平衡を保っている分子電荷を除去することを指す。
【0021】
従って、本開示のMOFは、複数の金属中心又は金属クラスターと、この複数の金属中心又は金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み得る。多座有機配位子は、4-ピラゾールカルボキシラートを含む。
本願で開示するMOFは、適切な金属源を使用する場合に4-ピラゾールカルボキシラートを組み込む以前のMOF(Tu et al., J. Am. Chem. Soc., 2014, 136, 14465参照)とは形態学的に異なり得る。特に、本願で開示するMOFは、少なくとも8.91、9.96、10.9、及び12.6(全て±5%)度2シータ(2θ)に特徴的なX線粉末回折ピークを示す少なくとも部分的に結晶性の網状構造を特徴とし得る。他の目立った特徴としては、MOFの空間群(本願で開示するMOFの場合、空間群Pa3)を挙げることができる。このMOFは、溶媒和又は脱溶媒和によって空間群間を移行することができる。
下記式1は、本開示のMOFに多座有機配位子として組み込まれることになる能力がある4-ピラゾールカルボン酸の化学構造を示す。
【0022】
【化1】
【0023】
本願で開示するMOFに存在し得る金属中心又は金属クラスターの独自性を特に限定すべきとは考えない。一部の実施形態では、複数の金属クラスターの少なくとも一部は、四面体構造を有する1つ以上の金属中心を含み得る。一部の実施形態では、複数の金属中心又は金属クラスターの少なくとも一部は、二価金属を含み得る。場合によっては三価金属を単独で又は1つ以上の二価金属と組み合わせて適宜含めてもよい。本願で開示するMOFに存在し得る適切な二価金属としては、例えば、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、鉄、クロム、マンガン、又はその任意の組み合わせが挙げられる。複数の金属中心又は金属クラスターを構成する金属は、適切な金属源を上記多座有機配位子と反応させると導入されるか、或いは金属中心又は金属クラスター中の金属の少なくとも一部は、MOFを画定する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を形成した後の交換反応によって導入され得る。特定実施形態では、金属クラスターは、1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)の形態であり得る。
【0024】
一部の実施形態では、予形成金属クラスターは、本願で開示するMOFを形成するのに適した金属源であり得る。網状構造及びその結晶性の存在の判定は、特定の網状構造が別の網状構造と関連しているかどうかの判定を含め、本明細書の他の部分に記載されるように、X線粉末回折によって達成され得る。本願に記載の多座有機配位子とのMOFの形成を促進するために使用し得る適切な予形成金属クラスターの一例は、式Zn4O(2,2-ジメチルブタン酸)6(Zn4O(DMBA)6)によって表される亜鉛クラスターである。
従って、本開示のさらにより具体的なMOFは、複数の金属クラスターと、この複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する4-ピラゾールカルボキシラートとを含んでよく、この複数の金属クラスターは、1つ以上のM4Oクラスターを含む。さらにより具体的な例では、該MOFは、複数の亜鉛クラスターと、この複数の亜鉛クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する4-ピラゾールカルボキシラートとを含み得る。該MOFは、上記特徴的X線粉末回折ピークによって明らかにすることができる。一部又は他のより具体的な実施形態では、複数の亜鉛クラスターを含む本開示のMOFは、同様に少なくとも1つの結合部位を介して4-ピラゾールカルボキシラート配位子に配位された複数のニッケル中心をさらに含み得る。ニッケル中心は、少なくとも一部の亜鉛との金属交換を経て導入され得る。
【0025】
本願の開示に従って形成されたMOF、特に多座有機配位子として4-ピラゾールカルボキシラートから形成されたMOFは、それらの内部多孔度に関して特徴づけることができる。本開示のMOFは、ミクロポア、メソポア、マクロポア及びその任意の組み合わせを含み得る。ミクロポアは、本願では約2nm以下のポアサイズを有すると定義され、メソポアは、本願では約2nm~約50nmのポアサイズを有すると定義される。ミクロポロシティー及び/又はメソポロシティーの決定は、当業者なら分かるように、77K(25℃)での窒素の吸着等温線の分析によって行なうことができる。MOFの内部ポア容積及び他の形態学的特徴は、やはり当業者なら分かるように、同様に窒素の吸着等温線から決定することができる。非限定例として、本開示に従って形成されたMOFは0.582cc/gまでのポア容積及び0.45cc/gまでのミクロポア容積を示し得る。1181m2/gのミクロポア表面積で1257m2/gの総表面積が達成可能である。これらの実施形態では、窒素吸着等温線のDFT分析によって約4.1Åのポア半径を特定することができる。一部の実施形態では、これらのミクロポアに加えて、約20Åのポア半径を有するメソポアを同定することができる。これらのメソポアによる総ポア容積の寄与は顕著なことがあり、総ポア容積の約半分をもたらす。この総計に寄与するミクロポア容積0.34cc/gで、0.64cc/gまでの総ポア容積が観察され得る。これらの非常にメソポーラスな材料では、906m2/gまでの表面積が観察される可能性があり、その717m2/gまでがミクロポア表面積である。
【0026】
本開示の金属有機構造体は、合成されたままで、Pa3空間群の消滅則(systematic absences)を有する単位立方格子(cubic unit cell)と一致するX線粉末回折パターンを示し得る。該分析条件下では、実験室ベースのX線回折技術によっては区別できない類似の対称演算子及び消滅則を有する他の空間群が存在することがあるという共通認識がある。
活性化(すなわち、加熱及び/又は排出による溶媒の除去)時に、7.73、9.95及び10.9°2θのX線粉末回折ピークは全て減弱され、完全に消滅することがある。これらのピークの消滅に加えて、約14.5及び19°2θにピークが現れる。組み合わせると、観察される粉末パターンの対称性は、より高い対称性、特にFm3m単位格子と一致する。この対称性の変化は可逆的であり、ジメチルホルムアミド又はエタノール等の溶媒の導入の結果として明白なPa3空間群の再出現となる。乾燥すると再びFm3m空間群をもたらす。構造レベルに関しては、Pa3とFm3mの間の物質の変換が、亜鉛クラスターの二次構造単位を含む4つの構造の亜鉛カチオンの1つの対称等価性の喪失をもたらす可能性がある。
【0027】
本願には本開示のMOFの合成方法についても記載する。いくつかの合成は、上述したように、金属源として予形成金属クラスターを用いて有利に行えるが、いくつかの単金属塩を含め、他の金属源を使用してもよい。有利には、関連性を有するが、わずかに異なる網状構造を有するMOFが得られるように金属源を選択することができる。そのため、本願で開示するMOFの合成に用いる金属源の選択は、特定用途との適合性を実現すべく網状構造を調整できるようにすることができる。
従って、本開示の特定方法は、金属源を4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること、及び金属源を4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属中心又は金属クラスターを含む金属有機構造体を形成することを含み得る。該MOFは、上述した特徴的X線粉末回折ピーク、特にPa3対称性の当該特徴によって定義することができる。より具体的実施形態では、金属源は予形成金属クラスター、例えば亜鉛を含む予形成金属クラスター、より詳細にはZn4O(2,2-ジメチルブタノアート)6又は類似の金属カルボキシラートクラスターであり得る。金属カルボキシラートクラスターを用いて調製されるMOFは、再現性がより高く、より高い収率の合成をもたらすように仕向けながら、より多様な合成条件をも可能にするという点で有利であり得る。金属カルボキシラートクラスターは、他の金属源を用いたときには観察し得ない異なる構造挙動を与えることもできる。
【0028】
一部の実施形態では、内部ポアに組み込まれた残留配位子、金属塩又は溶媒の、本願で開示するMOFからの除去は、MOFのX線回折パターンにおける対称性の変化として観察可能である。例えば、残留配位子、金属塩又は溶媒が除去されると、本開示のMOFは、立方m-3ラウエ結晶類(Laue class)から立方m-3mラウエ結晶類へ変化し得る。より詳細には、本願で開示するMOFの溶媒和及び/又は脱溶媒和による対称性の変化は、立方Pa3空間群から立方Fm-3m空間群への変化である。理論又は機構に束縛されるものではないが、この対称性を変える能力は、亜鉛塩の使用に起因する熱力学的生成物とは対照的に、予形成亜鉛クラスターを用いた結果としてこの対称性変化を受け得る動力学的生成物の形成に関連があると考えられれる。
【0029】
一部の実施形態では、残留配位子、例えば2,2-ジメチルブタン酸若しくはその塩、又は金属塩、又は溶媒は、複数の内部ポアから熱的に除去され得る。十分に上昇した温度は、残留配位子をそれらの沸点以上で揮発させるか又は場合によっては熱分解を促すことができる。例示実施形態では、残留配位子の熱的除去は、少なくとも約100℃、又は少なくとも約150℃、又は少なくとも約200℃、又は少なくとも約450℃の温度で行なわれる。残留配位子の熱的除去に適した温度の選択は、残留配位子の沸点、それらの熱安定性、及び/又はMOF自体の熱安定性によって決定可能である。
本開示のいくつか又は他の方法は、複数の金属中心又は金属クラスターを構成する第1の金属カチオンの少なくとも一部を第2の金属カチオンと交換することを含み得る。例えば、本開示の種々の実施形態によれば、金属クラスターを構成する亜鉛カチオンの少なくとも一部をニッケルカチオンと交換してよい。金属カチオン交換は、MOFを例えば塩溶液と接触させることによって影響を受け得る。
【0030】
本開示の特定の金属有機構造体は、それら自体で又は適切な活性化物質の存在下での活性化後に触媒特性を有する可能性がある。触媒的な金属有機構造体の1つの特定例は、4-ピラゾールカルボン酸と予形成亜鉛クラスター、特にZn4O(2,2-ジメチルブタン酸)6の反応生成物を含んでよく、この反応生成物においては金属クラスターの少なくとも一部が、亜鉛を含む1つ以上の金属中心を含み、かつ亜鉛の少なくとも一部が、ニッケルのような触媒として活性な金属と交換されている。
そのため、本開示の触媒系は、該金属有機構造体を含む触媒前駆体を含んでよく、分子水素のような還元剤による化学的処理を介して活性化され得る。この活性化触媒を用いて、エチレン等の有機オレフィン化合物を還元して飽和生成物を与えることができる。
従って、本開示の一部の方法は、1つ以上の化学種を含む混合物を、1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属中心又は金属クラスターと、この複数の金属中心又は金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、この多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含んでいる金属有機構造体と接触させること、及び1つ以上の化学種の少なくとも一部を複数の内部ポアの少なくとも一部の中に吸収させることを含み得る。少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、上述した特徴的回折ピークを含み、及び/又はPa3対称性と一致するX線粉末回折パターンを有する。
【0031】
同様に、本開示のいくつか又は他の方法は、4-ピラゾールカルボン酸と予形成金属クラスターの反応生成物であって、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボン酸に配位した1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターを含む金属有機構造体である反応生成物を含む触媒前駆体を準備すること;この触媒前駆体を還元剤にさらして活性化触媒を形成すること;この活性化触媒をオレフィンと接触させること;及びオレフィンが活性化触媒と接触している間にオレフィンを水素化することを含み得る。少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、上述した特徴的なX線粉末回折ピークを含み、及び/又はPa3対称性と一致するX線粉末回折パターンを有する。
【0032】
本願で開示する実施形態としては以下のものが挙げられる。
A. 4-ピラゾールカルボキシラート配位子を有するMOF。このMOFは、1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターと、この複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、この多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含み、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
B. 4-ピラゾールカルボキシラート配位子を有し、かつ特徴的回折ピークを含むMOF。このMOFは、1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターと、複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、この多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含み、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
【0033】
C. 4-ピラゾールカルボキシラート配位子を有するMOFの製造方法。この方法は、予形成金属クラスターを4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること、及び予形成金属クラスターを4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートに配位した複数の金属クラスターを含み、この複数の金属クラスターは1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含んでいる金属有機構造体を形成することを含み、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
D. 4-ピラゾールカルボキシラート配位子を有し、かつ特徴的回折ピークを含むMOFの製造方法。この方法は、金属源を4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること、及び金属源を4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスターを含み、この複数の金属クラスターは1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含んでいる金属有機構造体を形成することを含み、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
【0034】
E. 触媒法。この方法は、4-ピラゾールカルボン酸と予形成金属クラスターの反応生成物であって、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートに配位した1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターを含む金属有機構造体であり、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する反応生成物を含む触媒前駆体を準備すること、この触媒前駆体を還元剤にさらして活性化触媒を形成すること、活性化触媒をオレフィンと接触させること、及びオレフィンが活性化触媒と接触している間にオレフィンを水素化することを含む。
F. 分離法。この方法は、1つ以上の化学種を含む混合物を、1つ以上のM4Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターと、この複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、この多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含み、少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する金属有機構造体と接触させること、及び1つ以上の化学種の少なくとも一部を内部ポアの少なくとも一部の中に吸収させることを含む。
【0035】
実施形態A~Fは、下記追加要素の1つ以上を任意の組み合わせで有してよい。
要素1:少なくとも部分的に結晶性の網状構造はキュービックトポロジーを有する。
要素2:少なくとも部分的に結晶性の網状構造はPa3対称性を有する。
要素3:複数の金属クラスターの少なくとも一部は、四面体構造を有する1つ以上の金属中心を含む。
要素4:複数の金属クラスターの少なくとも一部は二価金属を含む。
要素5:複数の金属クラスターの少なくとも一部は、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、鉄、クロム、マンガン、又はその任意の組み合わせを含む。
要素6:複数の金属クラスターの少なくとも一部は亜鉛を含む。
要素7:少なくとも部分的に結晶性の網状構造はZn4Oクラスターを含む。
要素8:金属有機構造体は、予形成金属クラスターと4-ピラゾールカルボキシラートの反応生成物である。
要素9:予形成金属クラスターはZn4O(2,2-ジメチルブタノアート)6を含む。
要素10:内部ポアは、約6.0Å~約40Åの範囲のポア径を有する。
要素11:内部ポアは、約0.4cc/g~約0.64cc/gの範囲のポア容積を有する。
要素12:少なくとも部分的に結晶性の網状構造は約750m2/g~約1300m2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0036】
要素13:金属源は予形成金属クラスターである。
要素14:予形成金属クラスターは亜鉛を含む。
要素15:金属有機構造体は、複数の内部ポアの少なくとも一部に残留配位子、金属塩又は溶媒の少なくとも1つを含む。
要素16:方法は、残留配位子、金属塩、溶媒、又はその任意の組み合わせを複数の内部ポアから熱的に除去することをさらに含む。
要素17:金属有機構造体の対称性は、残留配位子、金属塩、溶媒、又はその任意の組み合わせを除去すると変化する。
要素18:複数の金属クラスターは複数の金属中心を画定し、方法は、複数の金属中心を成す第1の金属の少なくとも一部を第2の金属と交換することをさらに含む。
要素19:第1の金属は亜鉛であり、第2の金属は、コバルト、ニッケル、又はマンガンの少なくとも1つを含む。
要素20:1つ以上の化学種は、水素、窒素、炭化水素、又はその混合物を含む。
要素21:金属クラスターの少なくとも一部は亜鉛を含み、かつ亜鉛の少なくとも一部は触媒として活性な金属と交換される。
要素22:触媒として活性な金属はNi(II)を含む。
要素23:還元剤は分子水素を含む。
【0037】
非限定例として、Aに適用できる典型的組み合わせとしては、4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;4及び9;4, 9及び10;4及び11;4及び12;5及び6;5及び7;5及び8;5及び9;5、9及び10;5及び11;5及び12;6及び7;6及び8;6及び9;6. 9及び10;6及び11;6及び12;7及び8;7及び9;7、9及び10;7及び11;7及び12;8及び9;8、9及び10;8及び11;8及び12;9及び10;9及び11;9及び12;9、10及び11;9、10及び12;11及び12が挙げられる。
Bに適用できる典型的組み合わせとしては、1及び2;1及び3;1及び4;1及び5;1及び6;1及び7;1及び8;1、8及び9;1及び10;1及び11;1及び12;2及び3;2及び4;2及び5;2及び6;2及び7;2及び8;2、8及び9;2及び10;2及び11;2及び12;3及び4;3及び5;3及び6;3及び8;3、8及び9;3及び10;3及び11;3及び12;4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;4、8及び9;4及び10;4及び11;4及び12;5及び6;5及び7;5及び8;5、8及び9;5及び10;5及び11;5及び12;6及び7;6及び8;6、8及び9;6及び10;6及び11;6及び12;7及び8;7、8及び9;7及び10;7及び11;7及び12;8及び9;8及び10;8及び11;8及び12;8、9及び10;8、9及び11;8、9及び12;10及び11;10及び12;11及び12が挙げられる。
【0038】
Cに適用できる典型的組み合わせとしては、9及び14;9及び15;9、15及び16;9、15及び17;9、16及び17;9及び18;9及び19;14及び15;14、15及び16;14、15及び17;14、16及び17;14及び18;14及び19;15及び16;15、16及び17;15及び18;15及び19;18及び19が挙げられる。
Dに適用できる典型的組み合わせとしては、3及び13;3、13及び14;3、9及び13;3及び15;3及び16;3、16及び17;3及び18;3及び19;13及び14;9及び13、13及び15;13、15及び16;13及び17;13及び18;13及び19;9及び14;14及び15;14、15及び16;14及び17;14及び18;14及び19;15及び16;15、16及び17;15及び18;15及び19;15、16及び18;15、16及び19;17及び18;17及び19;18及び19が挙げられる。
Eに適用できる典型的組み合わせとしては、21及び22;21及び23;22及び23が挙げられる。
本願に記載の実施形態のより良い理解を促すため、種々の代表的な実施形態の例を以下に与える。下記例は、決して本開示の範囲を限定するか、又は規定するものと解釈すべきでない。
【実施例
【0039】

下記例のX線粉末回折パターンは、Cu-Kα線を用いて得た。
下記例のBET表面積は、77K(25℃)で得たN2吸着等温線から決定した。N2吸着等温線は、Autosorb IQ3分析装置(Quantachrome)を77K(25℃)で用いて測定した。測定前に、サンプルを180℃で10-5トルの一定圧力まで12時間脱気した。次にサンプルの表面に吸着したN2の量によって表面積を測定した。その後で等温線をもたらすデータに回帰分析を適用した。等温線をさらに分析してミクロポア容積その他の量を計算した。
【0040】
例1A:金属有機構造体合成。4-ピラゾールカルボン酸(1.7g)をエタノール中20vol.%の水溶液400mLに溶かした。この溶液を60℃まで加熱し、5.74gのZn4O(2,2-ジメチルブタノアート)6(2,2-ジメチルブタノアート=DMBA)を固体として加えた。Zn4O(DMBA)6の合成は、M.R. Gordon, et al., “Preparation and properties of tetrazinc μ4-oxohexa-μ-carboxylates (basic zinc carboxylates),” Can. J. Chem., 1983, pp. 1218-1221, 61に記載の文献方法により達成した。反応が始まると即座に固体が生じた。反応を60℃で一晩撹拌した。次に固体を遠心分離により単離し、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した。単離固体をDMFに再懸濁させて60℃まで加熱し、さらに4時間撹拌した。固体を遠心分離により単離してから、トルエン及びシクロヘキサンで順次洗浄した。シクロヘキサン-湿潤固体を室温で乾燥させるか、又はシクロヘキサン中のMOFの懸濁液を凍結させるのに十分低い温度の浴内で固体を凍結させてから、真空にして昇華によりシクロヘキサンを除去すること(凍結乾燥)によって乾燥粉末を単離した。
【0041】
例1B:金属有機構造体合成。エタノール/水溶媒を70/30体積比のN,N-ジメチルホルムアミドと水に代えたこと以外は例1Aの合成と同一の合成を行なった。次に固体を遠心分離により単離し、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した。単離固体をDMFに再懸濁させて60℃まで加熱し、さらに4時間撹拌した。固体を遠心分離により単離してからエタノール及びシクロヘキサンで順次洗浄した。シクロヘキサン-湿潤固体を室温で乾燥させるか、又はシクロヘキサン中のMOFの懸濁液を凍結させるのに十分低い温度の浴内で固体を凍結させてから、真空にして昇華によりシクロヘキサンを除去すること(凍結乾燥)によって乾燥粉末を単離した。
【0042】
例1C:メソポア含有金属有機構造体合成:4-ピラゾールカルボン酸(3.4g)をエタノール中20vol.%の水溶液800mLに溶かした。この溶液を60℃まで加熱し、11.4gのZn4O(2,2-ジメチルブタノアート)6(2,2-ジメチルブタノアート=DMBA)を固体として加えた。反応が始まると即座に固体が生じた。反応を70℃で一晩撹拌した。混合物を次に480mLの水で希釈した。次にこれらの固体を濾過し、200mLの50/50体積のエタノールと水の混合物に懸濁させた。少量(約0.1mL)のアンモニア水溶液を加えて混合物を5分間撹拌した。図7に見られる粉末パターンが観察されるまで固体をX線回折によって分析した。次に固体を遠心分離により単離してからエタノール、次いでシクロヘキサンで洗浄した。シクロヘキサン-湿潤固体を室温で乾燥させるか、又はシクロヘキサン中のMOFの懸濁液を凍結させるのに十分低い温度の浴内で固体を凍結させてから、真空にして昇華によりシクロヘキサンを除去すること(凍結乾燥)によって乾燥粉末を単離した。
【0043】
例2:生成物の特徴づけ。図1は、例1Aで得られた生成物のBruker Endeavor D8X線粉末回折計で収集されたX線粉末回折パターンを示す。表1は、例1Aで得られた生成物のX線粉末回折ピークの2シータ値(°)、d値(面間距離(d-spacing))(Å)及び相対強度H(%)を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表2は、例1Cで得られた生成物のX線粉末回折ピーク(図7)の2シータ値(°)、d値(Å)、及び相対強度H(%)を示す。
【0046】
【表2】
【0047】
図2は、例1Aで大気水への3日間の暴露後(下段パターン)及び窒素を流しながら150℃に60分間加熱した後(上段パターン)に得られた生成物の比較X線粉末回折パターンを示す。示されるように、ピーク強度の減少は対称性増大の特徴である。その特徴的なPa3対称性を有する下段パターンは、窒素下での活性化後、Fm-3m対称性を有する上段パターンに変換する。
図3は、生成されたまま及び乾燥後の例1Aの生成物、MOF-5、及びZn4O(PyCO2)3(Tu et al., J. Am. Chem. Soc., 2014, 136, 14465に化合物1として記載されているMOF)についての比較X線粉末回折パターンを示す。TuらのZn4O(PyCO2)3の合成されたままのパターンは、本開示の例1Aで得られた生成物とは明らかに異なる。TuらのZn4O(PyCO2)3の合成されたままのパターンを、例1Aで得られた生成物のパターン(図1及び2)と比較すると、金属カルボキシラートクラスターを用いて得られた合成されたままの生成物は、9°2θの親ピークの両側のピークによって示されるPa3対称性を示すことが分かる。Tuらの合成されたままのZn4O(PyCO2)3のパターンは、例1Aで得られた生成物が約15°2θに単一ピーク並びに12°2θ未満に4ピークのみを示すという点で、例1Aの合成されたままの生成物の実験パターンと異なる。これは約15°2θに二重線のピークと12°2θ未満に2ピークのみを有するTuらの合成されたままのZn4O(PyCO2)3のパターンと異なる。
【0048】
図4A及び4Bは、例1Aの生成物について、それぞれP/P0スケール及びLog P/P0スケールにプロットした77K(25℃)でのN2吸着等温線を示す。BET表面積の計算値は1257.7m2/gだった。外面積は76.4m2/gだった。ミクロポア容積は0.448cm3/gだった。対応する総ポア容積は0.565cm3/gだった。ミクロポア表面積は1181.269m2/gだった。
図5は、例1Aの生成物について77K(25℃)でのH2吸着/脱着等温線を示し、左軸に対してmmol/gの吸着、右軸に対して重量%の吸着をプロットしてある。図5には黒丸で吸着を表し、白丸で脱着を表している。この物質の1バールでの能力は、重量測定ベースではMOF-5の能力に匹敵し、容積測定ベースでは75%高い。
図6は、例1Aの生成物について種々の炭化水素の303K(151℃)での炭化水素吸着等温線を示す。
図7は、例1Cの生成物のアンモニア添加完了後であるが凍結乾燥前のX線粉末回折パターンを示す。
図8は、例1Cの生成物についてそれぞれP/P0及びLog P/P0スケールにプロットした77K(25℃)でのN2吸着等温線を示す。BET表面積の計算値は908m2/gだった。外面積は189m2/gだった。ミクロポア容積は0.34cm3/gだった。対応する総ポア容積は0.64cm3/gだった。ミクロポア表面積は715m2/gだった。
【0049】
例3A:CoCl2を用いた亜鉛交換。例1Aの生成物100mgを10mLのDMFに溶かし、50~200mgのCoCl2を加えた。この溶液を次に60℃で18時間撹拌した。固体を遠心分離により単離し、DMF(3×10mL)で洗浄した。洗浄固体を次に10mLのDMFに再懸濁させて撹拌しながら60℃まで4時間加熱した。この物質を次に遠心分離により単離し、トルエン(3×10mL)、次いでシクロヘキサンで洗浄してから空気乾燥させた。
例3B:NiCl2を用いた亜鉛交換。例3Bは、CoCl2の代わりにNiCl2を用いたことを除き、例3Aと同様に繰り返した。
例3C:MnCl2を用いた亜鉛交換。例3Cは、CoCl2の代わりにMnCl2を用いたことを除き、例3Aと同様に繰り返した。
図9は、例1Aの生成物並びに例3A、3B、及び3Cの生成物の比較X線粉末回折パターンを示す。各生成物(例3A、3B、及び3C)についてのX線粉末回折パターンの3つのトレースは、昇順に、50、100及び150wt.%の金属塩化物塩による処理後に得られたパターンに相当する。示されるように、コバルト、ニッケル、及びマンガン交換後の生成物の結晶性及び構造の変化は最小限だった。
図10A~10Cは、それぞれ、例3A、3B、及び3Cの生成物のエネルギー分散型X線分析を示す。
示されるように、図10Aの生成物はコバルトと亜鉛を両方含有した。これは亜鉛中心の一部のコバルトとの交換を示唆している。表3は、例3Aの生成物のEDXデータを示す。
【0050】
【表3】
【0051】
観察されたピーク面積に基づくと、Co:Znのモル比は約1:1であり、一部の亜鉛がコバルトに交換されたことを示唆している。
図10Bの生成物はニッケルと亜鉛を両方含有した。これは亜鉛中心の一部のニッケルとの交換を示唆している。表4は、例3Bの生成物のEDXデータを示す。
【0052】
【表4】
【0053】
観察されたピーク面積に基づくと、Ni:Znのモル比は約2:1であり、一部の亜鉛がニッケルに交換されたことを示唆している。
図10Cの生成物はマンガンと亜鉛を両方含有した。これは亜鉛中心の一部のマンガンとの交換を示唆している。表5は、例3Cの生成物のEDXデータを示す。
【0054】
【表5】
【0055】
観察されたピーク面積に基づくと、Mn:Znのモル比は約1:3であり、一部の亜鉛がマンガンに交換されたことを示唆している。
例4A:Co(NO3)2を用いた亜鉛交換。例1の生成物100mgを10mLのDMFに懸濁させて、50~200mgのCo(NO3)2を加えた。この溶液を次に60℃で72時間撹拌した。固体を遠心分離により単離し、DMF(3×10mL)で洗浄した。洗浄固体を次に10mLのDMFに再懸濁させ、撹拌しながら60℃まで4時間加熱した。この物質を次に遠心分離により単離し、トルエン(3×10mL)、次いでシクロヘキサンで洗浄してから空気乾燥させた。
例4B:Ni(NO3)2を用いた亜鉛交換。Co(NO3)2の代わりにNi(NO3)2を用いたことを除き、例4Aを同様に繰り返した。
例4C:Mn(NO3)2を用いた亜鉛交換。Co(NO3)2の代わりにMn(NO3)2を用いたことを除き、例4Aを同様に繰り返した。
【0056】
動的真空下150℃での活性化後にニッケル交換されたZn4-xNixO(PyCO2)3は、金属交換を促進するために用いたニッケル源に応じて特定の視覚的差異を示した。交換のためにNi(NO3)2を用いたサンプル(例4B)及びNiCl2を用いたサンプル(例3B)は同形(isostructural)であるが、X線粉末回折によっては検出できない金属中心の化学的環境の視覚的差異を示した。NiCl2交換サンプルはピンク色を示したが、Ni(NO3)2交換サンプルは活性化後にオフホワイトだった。硝酸ニッケルで得られた生成物では、金属は四面体構造をとり、結果として生成物がピンク色になると推測される。
【0057】
例5:4Bの生成物を用いたエチレンの水素化。
エチレンの水素化を利用して、例4Bの生成物に関して触媒活性について試験した。生成物粉末を垂直ステンレス鋼管型反応器に充填し、抵抗加熱炉を用いて加熱した。マスフローコントローラーを用いて、エチレン、H2、及び不活性ガス(He)の流量を制御した。ガスクロマトグラフィーでAgilent 7890B機器及びGasProカラムを用いて生成物の濃度を定量化した。例4BのMOF、15mgを反応器に充填し、1.7psi(1.2×104Pa)のエチレン及び10psi(6.9×104Pa)のH2を与えるようにガス流量を設定した。炉の温度を上昇させ、ガス組成を分析してエチレンの水素化の証拠を探した。MOFは、250℃未満ではごくわずかな水素化活性を有した。280℃で、エチレンのエタンへの変換が急速に増え、約80%の転化率到達を果たした。280℃を超えるとエチレン変換は着実に増加し、数時間の活性にわたって不活化の兆候なしで最終的にほとんど100%の転化率に達した。他の生成物(例えば、メタン)は検出されなかった。これはMOFが選択的な水素化触媒であり、望ましくない水素化分解反応を触媒しないことを示唆している。
【0058】
本明細書に記載の全ての文書は、いずれの優先権書類及び/又は試験手順を含め、参照することにより該プラクティスが許容される全ての管轄権の目的でそれらが本テキストと矛盾しない程度まで本明細書に組み込まれる。前述の一般的記述及び具体的実施形態から明らかなように、本開示の形態を説明及び記載したが、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく種々の変更を加えることができる。従って、本開示をそれらによって限定する意図ではない。例えば、本明細書に記載の組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていないいずれの成分、又は組成も無くてよい。いずれの方法も本明細書に明示的に列挙又は開示されていないいずれのステップを欠いてもよい。同様に、用語「含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義とみなされる。方法、組成物、要素又は要素の群が伝統的表現「含む(comprising)」で先行される場合はいつでも、我々は、組成物、要素、又は複数要素の列挙に先行する伝統的表現「から本質的に成る」、「から成る」「から成る群より選択される」、又は「である」を有する同一の組成物又は要素の群をも企図するものと了解され、その逆も同様である。
【0059】
特に指示のない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する成分の量、例えば分子量、反応条件等のような特性の量を表す全ての数は、全ての場合に用語「約」で修飾されているものと理解すべきである。従って、反対の指示が無い限り、下記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメーターは、本発明の実施形態によって得られるよう求めれる望ましい特性に応じて異なり得る近似値である。少なくとも、かつ特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、報告された有効桁の数を考慮して、通常の丸め術を適用することによって解釈すべきである。
下限及び上限のある数値範囲が開示されているときはいつでも、該範囲に入るいずれの数値及びいずれの包含範囲をも明確に開示されている。特に、本願に開示されるあらゆる範囲(形式「約a~約b」、又は同様に、「約a~b」、又は同様に、「約a-b」の)の値は、値のより広い範囲に包含されるあらゆる数値及び範囲を明記しているものと理解すべきである。また、請求項中の用語は、特許権所有者が明示的かつ明白に別段の定義をしていない限り、それらの単純な通常の意味を有する。さらに、請求項に用いられる不定冠詞「a」又は「an」は、本願ではそれが導入する1つ又は複数の要素を意味するのと規定する。
【0060】
本明細書には1つ以上の例示実施形態を提示している。分かりやすくするため、本出願では物理的実装の全ての特徴を記載するか又は示しているわけではない。本開示の物理的実施形態の開発においては、数値実装時固有決定(numerous implementation-specific decisions)を行なって、実装によって及び時々変わるシステム関連、ビジネス関連、政府関連及び他の制約を伴うコンプライアンスのような開発者の目標を達成しなければならないことが分かる。開発者の努力は時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、該努力は、当業者及び本開示の利益を有する者に代わって引き受けるルーチンであろう。
従って、本開示は、記載された目標及び利益のみならず、それらに内在する目標及び利益をも達成するためによく適応している。本開示は、異なるが当業者及び本願の教示の利益を有する者に明白な同等の様式で修正及び実施可能なので、上記特定の実施形態は例示でしかない。さらに、下記特許請求の範囲に記載のもの以外は、本明細書に示した構成又は設計の詳細に限定する意図でない。従って、上記特定の例示実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正が可能であり、全てのこのようなバリエーションは本開示の範囲及び精神に内であるとみなされる。本明細書で例として開示した実施形態は、本明細書で具体的に開示していないいずれの要素及び/又は本明細書で開示しているいずれの任意的要素の非存在下でも適切に実施することができる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕金属有機構造体であって、
1つ以上のM 4 Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターと、
前記複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、前記多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含んでおり、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記金属有機構造体。
〔2〕金属有機構造体であって、
1つ以上のM 4 Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターと、
前記複数の金属クラスターに配位して、複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含み、前記多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含んでおり、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記金属有機構造体。
〔3〕前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造がキュービックトポロジーを有する、前記〔2〕に記載の金属有機構造体。
〔4〕前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造がPa3対称性を有する、前記〔2〕又は前記〔3〕に記載の金属有機構造体。
〔5〕前記複数の金属クラスターの少なくとも一部が、四面体構造を有する1つ以上の金属中心を含む、前記〔2〕~〔4〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔6〕前記複数の金属クラスターの少なくとも一部が二価金属を含む、前記〔2〕~〔5〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔7〕前記複数の金属クラスターの少なくとも一部が、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、鉄、クロム、マンガン、又はその任意の組み合わせを含む、前記〔2〕~〔6〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔8〕前記複数の金属クラスターの少なくとも一部が亜鉛を含む、前記〔2〕~〔7〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔9〕前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造がZn 4 Oクラスターを含む、前記〔2〕~〔8〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔10〕前記金属有機構造体が、予形成金属クラスターと前記4-ピラゾールカルボキシラートの反応生物である、前記〔2〕~〔9〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔11〕前記予形成金属クラスターがZn 4 O(2,2-ジメチルブタノアート) 6 を含む、前記〔10〕に記載の金属有機構造体。
〔12〕前記内部ポアが、約6.0Å~約40Åの範囲のポア径を有する、前記〔2〕~〔11〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔13〕前記内部ポアが、約0.4cc/g~約0.64cc/gの範囲のポア容積を有する、前記〔2〕~〔12〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔14〕前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造が、約750m 2 /g~約1300m 2 /gの範囲のBET表面積を有する、前記〔2〕~〔13〕のいずれか1項に記載の金属有機構造体。
〔15〕下記:
金属源を4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること;及び
前記金属源を前記4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートを含む多座有機配位子に配位した複数の金属クラスターを含み、前記複数の金属クラスターは1つ以上のM 4 Oクラスター(Mは金属である)を含んでいる、金属有機構造体を形成すること、
を含む方法であって、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記方法。
〔16〕前記複数の金属クラスターの少なくとも一部が、四面体構造を有する1つ以上の金属中心を含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記金属源が予形成金属クラスターである、前記〔15〕~〔16〕のいずれか1項に記載の方法。
〔18〕前記予形成金属クラスターが亜鉛を含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記予形成金属クラスターがZn 4 O(2,2-ジメチルブタノアート) 6 を含む、前記〔17〕又は前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記金属有機構造体が、前記複数の内部ポアの少なくとも一部の中に残留配位子、金属塩又は溶媒の少なくとも1つを含む、前記〔15〕~〔19〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21〕さらに下記:
前記残留配位子、金属塩、溶媒、又はその任意の組み合わせを前記複数の内部ポアから熱的に除去すること
を含む、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記金属有機構造体の対称性が、前記残留配位子、金属塩、溶媒、又はその任意の組み合わせを除去すると変化する、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記複数の金属クラスターが複数の金属中心を画定し、前記方法がさらに下記:
前記複数の金属中心を構成する第1の金属の少なくとも一部を第2の金属と交換すること
を含む、前記〔15〕~〔22〕のいずれか1項に記載の方法。
〔24〕前記第1の金属が亜鉛であり、前記第2の金属が、コバルト、ニッケル、又はマンガンの少なくとも1つを含む、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕下記:
予形成金属クラスターを4-ピラゾールカルボン酸と混ぜ合わせること;及び
前記予形成金属クラスターを前記4-ピラゾールカルボン酸と反応させて、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ前記4-ピラゾールカルボキシラートに配位した複数の金属クラスターを含み、前記複数の金属クラスターは1つ以上のM 4 Oクラスター(Mは金属である)を含んでいる、金属有機構造体を形成すること、
を含む、方法であって、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記方法。
〔26〕下記:
1つ以上の化学種を含む混合物を、
金属有機構造体であって、
1つ以上のM 4 Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターと、前記複数の金属クラスターに配位して複数の内部ポアを有する少なくとも部分的に結晶性の網状構造を画定する複数の多座有機配位子とを含む前記金属有機構造体と接触させること;及び
前記内部ポアの少なくとも一部の中に前記1つ以上の化学種の少なくとも一部を吸収させること
を含む、方法であって、
前記多座有機配位子は4-ピラゾールカルボキシラートを含んでおり、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、少なくとも8.91、9.96、10.9及び12.6(全て±5%)度2シータ(°2θ)の特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記方法。
〔27〕前記1つ以上の化学種が、水素、窒素、二酸化炭素、炭化水素、又はその混合物を含む、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕下記:
4-ピラゾールカルボン酸と予形成金属クラスターの反応生成物を含む触媒前駆体を準備すること;
前記触媒前駆体を還元剤にさらして活性化触媒を形成すること;
前記活性化触媒をオレフィンと接触させること;及び
前記オレフィンが前記活性化触媒と接触している間に前記オレフィンを水素化すること
を含む、方法であって、
前記反応生成物は、その中に複数の内部ポアが画定された少なくとも部分的に結晶性の網状構造を有し、かつ4-ピラゾールカルボキシラートに配位したM 4 Oクラスター(Mは金属である)を含む複数の金属クラスターを含む金属有機構造体であり、
前記少なくとも部分的に結晶性の網状構造は、Pa3対称性と一致する特徴的回折ピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記方法。
〔29〕前記金属クラスターの少なくとも一部が亜鉛を含み、前記亜鉛の少なくとも一部が、触媒として活性な金属と交換される、前記〔28〕に記載の方法。
〔30〕前記触媒として活性な金属がNi(II)を含む、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕前記還元剤が分子水素を含む、前記〔28〕~〔30〕のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C