IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】共融混合物を含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20241210BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241210BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/08
A61Q19/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022511298
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2020011202
(87)【国際公開番号】W WO2021034150
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0102243
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】コ・チュル・クォン
(72)【発明者】
【氏名】テ・グン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウォク・パク
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・ソ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-531847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055079(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0282206(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第3036618(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
REGISTRY/CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリン(serine)およびアルギニン(arginine)を含有する共融混合物(eutectic mixture)を含む化粧料組成物。
【請求項2】
前記セリンおよびアルギニンは、共融混合物全体100重量部に対して合計1重量部~75重量部で含まれる、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記共融混合物は、精製水をさらに含む、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記精製水は、共融混合物全体100重量部に対して25重量部~80重量部で含まれる、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記共融混合物は、全体組成物100重量部に対して0.01重量部~50重量部で含まれる、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記化粧料組成物は、pH3.5~pH10の値を有する、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記化粧料組成物は、毛穴数減少を通した毛穴改善のためのものである、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物は、弾力増進のためのものである、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記化粧料組成物は、皮膚再生のためのものである、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記化粧料組成物は、シワ改善のためのものである、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記化粧料組成物は、角質剥離改善のためのものである、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
セリンおよびアルギニンを混合して共融混合物(eutectic mixture)を製造する段階と、
前記共融混合物を添加して化粧料組成物を製造する段階と、を含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項13】
前記共融混合物を製造する段階は、600~4000rpmおよび45~70℃の均質化条件で行う、請求項12に記載の化粧料組成物の製造方法。
【請求項14】
前記共融混合物を製造する段階は、精製水をさらに含む段階を含む、請求項12に記載の化粧料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファヒドロキシ酸、アミノ酸および精製水を含有する共融混合物を含む化粧料組成物;および第1アミノ酸および第2アミノ酸を含有する共融混合物を含む化粧料組成物に関し、より詳細には、精製水、アミノ酸およびアルファヒドロキシ酸の共融混合物、または第1アミノ酸および第2アミノ酸の共融混合物を含むことによって、皮膚に及ぼす刺激の少ないpH条件でも高い皮膚透過性を有し、角質剥離効果と低温安定性に優れ、厳しい条件でも角質剥離効果が維持される化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルファヒドロキシ酸(α-hydroxy acid、以下、AHAという)は、過角化した皮膚層を軟化したり除去するために一般的に使用される成分の一つであり、角質のターンオーバー(turnover)促進、コラーゲン合成、皮膚保湿増進、小ジワ緩和、にきびの治療および予防などの皮膚改善効果を示す(韓国ウェルネス学会誌第10冊第2号、2015、161-169)。多くのAHAは、pHの低い条件で皮膚透過性と皮膚改善効果に優れているが、低いpHによってかゆみ、ヒリヒリ感、ほてり感などの皮膚刺激と紅斑、浮腫などの多様な炎症性刺激がひどいため、高含有量を使用しにくい。また、AHAは、水に溶解する場合、イオン化して、皮膚吸収が遅くなるという短所がある。特にAHAを化粧品に剤形化する場合には、剤形のpHが低くなって、剤形安定性が低くなり、皮膚に刺激のような否定的な影響を及ぼすことができる。これを補完するために、中和剤で剤形のpHを高めると、AHAの効果が低下する問題がある。
【0003】
また、前記AHAとともに乾燥した皮膚で角質剥離作用を示すアミノ酸も、皮膚塗布用化粧料において広く使用されている(Tatsuya Ozawa et al.,The role of humectants in skin moisture retention.Skin Research 27,276-288(1985);およびKR登録特許第10-1508168号)。しかしながら、前記AHAとアミノ酸は、弱酸性または中性のpHでは皮膚透過性が顕著に減少するという点が[S.E.Wolverton,α-hydroxy acids,In Comprehensive Dermatologic Drug Therapy,3rd edition,Elsevier,570(2012)]を通じて知られており、強酸性のpHでは特に敏感な皮膚を持つ人々に皮膚刺激のような不快感を起こすことができる。
【0004】
一方、共融(eutectic)現象は、二つ以上の物質が混合することで融点が下がる現象であり、前記混合物に含まれるそれぞれの成分は、常温で固体状態を示すが、混合物に製造されると、各成分間のファン・デル・ワールス相互作用または水素結合によって結晶化されずに、室温で液体で存在する無水溶液となる。これより、前記混合物に含まれる成分の一つとしてAHAを選択すると、水が除去された状態の液相を得ることができる。無水状態ではAHAがイオン化しないので、酸(acid)の特性を示さないため、少ない刺激でAHAを使用できると共に、AHAが電荷を帯びていないため、皮膚浸透に非常に有利である。
【0005】
しかしながら、このような共融混合物は、化粧料において安定に存在しない問題点がある。共融混合物を含む組成物に水素結合が可能なプロトン性溶媒(protic solvent)が追加される場合、溶媒が共融混合物の各構成成分と相互作用(水素結合)して共融混合物の構成間の結合を妨害するので、共融混合物の特性を維持することが難しい。
また、共融混合物を含む化粧料は、無水剤形が適しているが、多くの共融混合物の比重は、水より大きいため、オイルと混合時に沈殿が起こり、低粘度オイル相に均一に分散させにくい問題点がある。従来、これを解決するために、組成物に親水性粉体を追加したが、親水性を有する共融混合物が親水性粉体の表面に吸着および凝集して均一に分散しにくい問題が発生した。
【0006】
したがって、このような背景下に、本発明者らは、共融混合物が精製水、AHAおよびアミノ酸;または2種のアミノ酸を含みながらも、低いpHによる刺激問題と剤形安定性が改善された化粧料組成物を研究、開発して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、低いpHでAHAが刺激を付与するという問題点およびAHAまたはアミノ酸を皮膚pHで適用するとき、低い皮膚透過効果を有する問題点が改善された化粧料組成物を開発するために研究した結果、化粧料組成物に精製水、AHAおよびアミノ酸;2種のアミノ酸;または精製水および2種のアミノ酸を共融混合物の形態で添加することによって、弱酸性乃至中性のpHで皮膚刺激なしでAHAまたはアミノ酸の皮膚透過率を向上させることができ、低温でもアミノ酸が析出せずに、安定的かつ均一に維持させることができ、厳しい条件(例えば、高温、高圧など)でも角質剥離効果を維持できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、精製水、AHAおよびアミノ酸;2種のアミノ酸;または精製水と2種のアミノ酸を共融混合物の形態で化粧料組成物内に含んでいて、弱酸性乃至中性の条件でも角質剥離効果に優れ、かつ、刺激が少なく、低温安定性に優れ、厳しい条件でも角質剥離効果が維持される化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明の化粧料組成物は、
精製水、アミノ酸、およびアルファヒドロキシ酸(AHA);または第1アミノ酸および第2アミノ酸を含有する共融混合物を含む化粧料組成物を提供する。
【0010】
一具体例において、本発明の化粧料組成物は、精製水;アミノ酸;およびアルファヒドロキシ酸(α-hydroxy acid、以下、AHAという)を含有する共融混合物を含む。
【0011】
本発明において、前記アルファヒドロキシ酸(AHA)とアミノ酸は、それぞれ皮膚の角質剥離促進、毛穴改善、微細なしわ改善、にきび改善または顔の肌トーンの改善のような皮膚改善効果のための用途として共融混合水内に含んでもよい。
【0012】
本発明において、前記アルファヒドロキシ酸は、カルボン酸のα位置の炭素にアルコール基(alcohol group)またはヒドロキシ基(hydroxyl group)を添加した化合物を総称するものであり、角質細胞のイオン結合エネルギーを下げて角質を除去したり新しい細胞の形成を促進して、皮膚が老化するにつれて長くなる角化過程の周期を短くすることによって、皮膚細胞の活性を促進させて皮膚を改善する作用をする。また、AHAは、線維芽細胞(fibroblast)によるコラーゲンとエラスチンの生成を促進して、皮膚を弾力のあり、やわらかくし、真皮の重要な細胞外基質成分であるムコ多糖体(mucopolysaccharide)の生成を促進して、皮膚保湿を増進させることができる。AHAは、酸の作用により角質層において角質間の連結環を除去するのに助けになり、角質を滑らかに溶かす効果を示す。前記AHAは、腐ったミルクやトマトジュースなどに含有された乳酸(lactic acid);ミカン、オレンジなどに含有されたクエン酸(citric acid);りんごなどに含有されたリンゴ酸(malic acid);ワインなどに含有された酒石酸(tartaric acid);サトウキビなどに含有されたグリコール酸(glycolic acid)およびマンデル酸(mandelic acid)からなる群から選ばれる一つ以上でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
一具体例において、前記AHAは、乳酸(lactic acid)またはリンゴ酸(malic acid)でありうる。前記乳酸は、AHAの中でも少ない分子量により皮膚浸透が速くて、目的とするAHAの効果を迅速に具現でき、リンゴ酸(malic acid)は、共融混合物を製造するに際して、複数のカルボキシル基(carboxyl group)を保有して、さらに強い結合を誘導でき、分子構造がアミノ酸、特にセリン(serine)と類似していて、構造的に安定した二量体(dimer)あるいは複合体(multimer)形態の共融混合物を製造するのに有利なメリットを示すことができる。
【0014】
本発明の一具体例において、前記共融混合物内AHAが含有される場合、前記AHAは、共融混合物100重量部に対して1~50重量部、例えば5~40重量部、10~30重量部、15~20重量部、3~25重量部、5~20重量部、6~18重量部で含んでもよい。共融混合水内にAHAが1重量部未満で含有すると、目的とする効果を示すことができず、50重量部を超過して含有すると、皮膚に刺激感を与える問題が発生することがある。
【0015】
上記のように、共融混合物内にAHAが含有される場合、共融混合物は、前記AHAと極性分子間双極子-双極子引力、双極子-誘起双極子引力、水素結合または、ファン・デル・ワールス相互作用により結合できる成分であるアミノ酸と混合して製造することができる。この際、前記AHAは、水素結合供与体(hydrogen bond donor,HBD)として作用し、前記アミノ酸は、水素結合受容体(hydrogen bond acceptor,HBA)として作用することができる。例えば、前記アミノ酸としては、アラニン(alanine)、システイン(cysteine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、フェニルアラニン(phenylalanine)、グリシン(glycine)、ヒスチジン(histidine)、イソロイシン(isoleucine)、リシン(lysine)、ロイシン(leucine)、メチオニン(methionine)、アスパラギン(asparagine)、ピロリシン(pyrrolysine)、プロリン(proline)、グルタミン(glutamine)、アルギニン(arginine)、セリン(serine)、スレオニン(threonine)、セレノシステイン(selenocysteine)、バリン(valine)、トリプトファン(tryptophan)またはチロシン(tyrosine)を含んでもよい。
【0016】
本発明において共融混合物内アミノ酸の総含有量は、共融混合物全体100重量部を基準として、1~75重量部、5~70重量部、10~60重量部、15~50重量部、20~47重量部、10~70重量部、20~65重量部、30~60重量部、35~55重量部、40~50重量部、42~47重量部でありうるが、これらに限定されるものではない。共融混合物内にアミノ酸が1重量部未満で含有すると、目的とする効果を示すことができず、75重量部を超過して含有すると、皮膚に刺激感を与え、組成物内溶解しないため、析出する問題が発生することがある。一具体例において、共融混合物内に含まれるアミノ酸は、セリン、プロリン、スレオニン、アルギニンまたはシステインでありうる。
【0017】
本発明において、前記共融混合物は、AHAおよびアミノ酸から製造することができ、好ましくは、精製水、AHAおよびアミノ酸から製造することができる。
【0018】
本発明において、前記AHAとアミノ酸は、共融混合物内に1:0.1~1:10の重量比、例えば1:0.3~1:5の重量比、1:0.5~1:3の重量比、1:0.7~1:2の重量比、1:3~1:10の重量比、1:5~1:8の重量比で含んでもよい。
【0019】
一般的に、精製水の存在下で共融混合物内AHAはイオン化して皮膚刺激を高める問題が発生することがある。これより、従来の共融混合物の場合、蒸発、冷却または凍結乾燥のようなさらなる工程を通じて溶媒(精製水)を除去する過程を実施しなければならなかった。しかしながら、本発明による共融混合物は、AHAとアミノ酸の双極子-双極子引力、双極子-誘起双極子引力、水素結合またはファン・デル・ワールス相互作用による分子間の結合を通じて精製水の存在下でもイオン化しないので、皮膚刺激の増加のような否定的影響から安全である。
【0020】
これより、本発明による共融混合物は、精製水を含む。本発明の共融混合物は、精製水を含んでいて、精製水により0℃以下の低い融点を有することになり、組成物内アミノ酸を安定に維持させることができる。また、共融混合物内に精製水が含まれることによって、AHAとアミノ酸が過量の水分に露出して徐々に結合が解離し、これによって角質剥離促進による皮膚改善効果を示すことができる。したがって、本発明の共融混合物は、多様な環境変化においてもアミノ酸の析出なしで均一にかつ安定に液相を維持することができる。
【0021】
本発明において、前記精製水は、共融混合物全体100重量部に対して25~80の重量部で含んでもよい。前記共融混合物内に精製水の含有量が25重量部未満で含有すると、共融混合物の融点を減少させないので、アミノ酸が安定的に存在せず、80重量部を超過して含有すると、水素結合の安定性阻害によってAHAとアミノ酸の皮膚透過性が減少し、アミノ酸の含有量が低くなって、目的とする効果を具現しにくいことがある。例えば、本発明の共融混合物は、共融混合物の全体重量を基準として、精製水を30~75重量部、35~70重量部、40~65重量部、50~55重量部で含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0022】
他の具体例において、本発明の化粧料組成物は、第1アミノ酸および第2アミノ酸を含有する共融混合物を含む。
【0023】
本発明において、前記第1アミノ酸および第2アミノ酸は、アラニン(alanine)、システイン(cysteine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、フェニルアラニン(phenylalanine)、グリシン(glycine)、ヒスチジン(histidine)、イソロイシン(isoleucine)、リシン(lysine)、ロイシン(leucine)、メチオニン(methionine)、アスパラギン(asparagine)、ピロリシン(pyrrolysine)、プロリン(proline)、グルタミン(glutamine)、アルギニン(arginine)、セリン(serine)、スレオニン(threonine)、セレノシステイン(selenocysteine)、バリン(valine)、トリプトファン(tryptophan)およびチロシン(tyrosine)からなる群から選ばれる一つ以上でありうる。例えば、前記第1アミノ酸および第2アミノ酸は、セリン、アルギニンおよびグルタミン酸からなる群から選ばれる2種でありうる。
【0024】
前記具体例において、共融混合物内アミノ酸の総含有量は、共融混合物全体100重量部を基準として、1~75重量部、5~70重量部、10~60重量部、15~50重量部、20~47重量部、10~70重量部、20~65重量部、30~60重量部、35~55重量部、40~50重量部、42~47重量部でありうるが、これらに限定されるものではない。共融混合物内にアミノ酸が1重量部未満で含有すると、目的とする効果を示すことができず、75重量部を超過して含有すると、皮膚に刺激感を与え、組成物内溶解しないため、析出する問題が発生することがある。この際、第1アミノ酸は、共融混合物全体100重量部を基準として、1~50重量部で含んでもよく、第2アミノ酸は、75重量部から第1アミノ酸の重量部を除いた分だけ含まれてもよい。例えば、前記第2アミノ酸は、1~25重量部でありうる。本発明において、前記第1アミノ酸は、1~50重量部、好ましくは、5~40重量部、10~35重量部、15~30重量部でありうる。
【0025】
また、本発明の共融混合物は、精製水をさらに含んでもよい。前記精製水は、共融混合物全体100重量部を基準として、25~80重量部で含んでもよい。共融混合物内に含有される精製水は、上記で記述した内容をそのまま適用することができる。
【0026】
本発明において、前記共融混合物は、第1アミノ酸および第2アミノ酸から製造することができ、好ましくは、精製水、第1アミノ酸および第2アミノ酸から製造することができる。
【0027】
上記のように、精製水、第1アミノ酸および第2アミノ酸を含む共融混合物の場合、共融混合物全体100重量部を基準として、精製水25~80重量部、第1アミノ酸1~50重量部および第2アミノ酸1~25重量部で含んでもよい。
【0028】
下記実施例では、2種のアミノ酸からなる共融混合物が毛穴数減少、シワ改善、皮膚再生促進、コラーゲン総量増加および皮膚弾力増進効果のような皮膚改善効果を示すことを確認し、高温のような厳しい条件で保管された後にも、上記のような皮膚改善効果が維持されることを確認できた。また、AHAを含まず、2種のアミノ酸と精製水のみを含有する共融混合物が、弱酸性または中性の酸度条件下でも優れた皮膚透過性、角質剥離効果、低温安定性などを示すことを確認した。
【0029】
本発明において、「共融混合物」は、二つ以上の固体あるいは液体物質の混合物を意味し、高い融点を有する二つの成分を混合して極性分子間双極子-双極子引力、双極子-誘起双極子引力、分子間水素結合またはファン・デル・ワールス相互作用により二つの成分が複合体を形成する。上記のように形成された複合体は、各成分が結晶化しようとする能力、すなわち、固体状態に戻ろうとする能力を妨害して、各成分のうち最低融点を有する成分よりさらに低い融点を有することによって、常温で液体状態を示すことができる。本発明では、前記共融混合物が精製水を含むことによって、最低融点が零下に形成されて、多様な環境下でも安定した組成物の形態を維持することができる。
【0030】
また、前記共融混合物は、極性を有する化合物どうし結合して共融混合物を成すことができる。前記極性を有する化合物は、極性分子(polar molecule)または荷電した分子(charged molecule)でありうる。また、前記極性を有する化合物間には、極性(polarity)間に差異が存在しなければならず、同じ化合物は共融混合物を成すことができない。より具体的に、前記共融混合物を成す成分間のpKaまたはpI値は、例えば1.0以上、2.0以上、3.0 以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上または7.0以上の差異を有することができる。この際、前記共融混合物を成す成分がpKa値を複数個有する成分である場合、pKa1値を基準として選定することができる。
【0031】
より具体的に、極性を有する化合物は、AHAまたはアミノ酸(amino acid,AA)の中から選ばれ得る。より具体的に、共融混合物を成す成分の一つがAHAである場合、他の化合物は、このAHAのpKa1値よりさらに高いpIを有するアミノ酸を選択することができる。例えば、共融混合物を成すAHAとアミノ酸間のpKa1値とpI値間の差異は、1.0以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上または7.0以上でありうる。より具体的に、共融混合物を成す成分の一つがアミノ酸である場合、他の化合物は、該アミノ酸のpI値よりさらに高いかまたは低いpIを有するアミノ酸を選択することができる。例えば、共融混合物を成す二つのアミノ酸のpI値間の差異は、1.0以上、2.0以上、3.0 以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上または7.0以上でありうる。
【0032】
より具体的に、極性を有する化合物は、極性アミノ酸(polar AA)、正電荷アミノ酸(+charged AA)および負電荷アミノ酸(-charged AA)の中から選ばれ得る。例えば、極性アミノ酸のうちいずれか一つと正電荷アミノ酸のうちいずれか一つと共融混合物を成すことができる。例えば、極性アミノ酸のうちいずれか一つと負電荷アミノ酸のうちいずれか一つと共融混合物を成すことができる。例えば、正電荷アミノ酸のうちいずれか一つと負電荷アミノ酸のうちいずれか一つと共融混合物を成すことができる。極性アミノ酸は、スレオニン、チロシン、グルタミン、セリンおよびアスパラギンのうちいずれか一つを意味する。正電荷アミノ酸は、ヒスチジン、リシンおよびアルギニンのうちいずれか一つを意味する。負電荷アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸のうちいずれか一つを意味する。
【0033】
前記共融混合物は、共融混合物を成す成分の分子が有する電荷、分子が有する官能基の種類および個数、および分子または官能基が有する極性によって当該共融混合物に必要な物質間の比率を決定できる。また、分子の大きさや類似性によって当該共融混合物に必要な物質間の比率を決定できる。例えば、アルギニンとグルタミン酸、アルギニンとアスパラギン酸、リシンとグルタミン酸、リシンとアスパラギン酸、アルギニンとアスパラギン、およびアルギニンとグルタミンは、1:1のモル比で共融混合物を形成できる。例えば、アルギニンとセリン、アルギニンとスレオニン、アルギニンとチロシン、アルギニンとアスパラギン、およびアルギニンとグルタミンは、1:2のモル比で共融混合物を形成できる。
【0034】
本発明において、前記共融混合物は、「共融溶媒(eutectic solvent)」、「共融合体」または「共融混合物水溶液」と同じ意味の用語で混用して使用することができる。
【0035】
一般的に、共融混合物の場合、高温のような厳しい条件で共融混合が破壊されて共融混合物が示す効果が減少する。本発明による共融混合物を含む化粧料組成物Aと、Aを高温条件で一定期間が経過した後の化粧料組成物Bの角質剥離効果を比較したとき、AがBより5%、好ましくは、10%、より好ましくは、12%、最も好ましくは、15%以上高いことがある。また、本発明による共融混合物を含む化粧料組成物Aと、Aを高温条件で一定期間が経過した後の化粧料組成物Bの皮膚透過性を比較したとき、AがBより5%、好ましくは、10%、より好ましくは、12%、最も好ましくは、15%以上高いことがある。この際、高温条件で一定期間経過した化粧料組成物は、50℃で6週間、または60℃で5週間以上保管されたことを意味する。
【0036】
本発明による共融混合物は、皮膚への塗布時に、皮膚刺激のような不快感を改善させるために、pH3.5~pH10の値を有するように、酸度を調節することができる。本発明による共融混合物は、構造的にアミノ酸のアミン基またはAHAのカルボキシル基がいずれも電荷を帯びている区間で製造が可能であり、これによる前記区間は、pH3.5以上でありうる。例えば、前記共融混合物は、pH4~pH9、pH5~pH8、pH6~pH7のような弱酸性乃至中性の酸度を有するように調節することができる。
【0037】
本発明の共融混合物は、精製水、AHAおよびアミノ酸;または2種のアミノ酸を含むことによって、共融混合物が有する融点降下特性によって低温では溶解度が低くなって、組成物の低温安定性を増大させることができる。また、一般的にpHが高まるにつれてAHAおよび/またはアミノ酸の皮膚透過率が急激に減少するので、従来の化粧料は、低いpHを維持してきた。しかしながら、本発明の共融混合物は、弱酸性乃至中性の酸度で発生しうる皮膚の刺激を減少させながらも、AHAおよび/またはアミノ酸の皮膚透過性は、低いpHと同様に高く維持させることができる。
【0038】
本発明による共融混合物は、当業者が通常使用する任意の方法を選択した後、前記方法に水を添加する工程を追加して製造することができ、前記共融混合物の例示的な製造方法は、次の通りである:
i)共融混合物を成す各成分のうち最低融点を有する成分を、前記成分が溶融する温度まで加熱して液相に作った後、残りの成分を前記溶融した液体に完全に溶かす方法、
ii)共融混合物を成す各成分のうち一つ以上の種が溶解する溶媒に完全に溶解させ、均質になるように、50℃以上の高温で溶解させる方法。
【0039】
この際、ii)の方法について溶媒の必要に応じて溶媒を蒸発させることができる。
【0040】
一具体例において、本発明の共融混合物は、ii)の方法で製造することができる。
【0041】
ii)の具体的な例として、加温が必要な反応槽とホモディスパー(homo-disper)に試料を準備する。反応槽の材質に限定されず、例えばガラスビーカー、またはSUS材質の反応槽を使用できる。共融混合物を製造するために、アミノ酸-アミノ酸の場合、セリンとアルギニンを2:1のモル比で準備し、アミノ酸-AHAの場合、セリンとリンゴ酸を2:1のモル比で準備する。準備したアミノ酸-アミノ酸またはアミノ酸-AHAの総重量を基準として精製水の量は、25~99重量部でありうる。好ましくは、アミノ酸-アミノ酸またはアミノ酸-AHAの総重量と同一の量、すなわち総重量に対して精製水の含有量が50重量となるように準備することが好ましい。ホモディスパーの速度は、600~4000rpmであることが好ましいが、それ以上または以下であってもよい。例えば、ホモディスパーの速度は、600~3000rpm、600~2000rpm、600~1500rpm、800~1200rpm、900~1100rpmでありうる。加温は、45~70℃の温度条件で行われてもよく、例えば45~65℃、45~60℃、45~55℃で行われてもよい。反応時間は、少なくとも15分以上が好ましく、均質性が確認されると、加温を中止し、自然冷却させることができる。
【0042】
また、上記のように得られた共融混合物の均質性を把握するための方法としては、
i)各成分の溶解度以上に溶解した過溶融溶液である共融混合物を黒色背景の前に配置し、光を照射して確認したとき、沈殿物なしで透明な混合物が形成されたかを確認する方法、および
ii)共融混合物を形成時に、各成分の融点より低い温度で単一融点を形成するので、DSC(Differential scanning calorimetry)機器を用いて融点を確認する方法がある。
【0043】
AHAおよび/またはアミノ酸が完全に溶解すると、得られた混合物は、透明かつ均質であり、冷却工程を実施しても液体状態と透明度を維持する。上記のように製造された共融混合物は、非常に低い温度、例えば0℃未満の温度でも相が分離せずに、均一に存在して、透明な液体相を維持できる。また、前記共融混合物は、凝固と融解過程を繰り返しても、その結合が破壊されずに維持される。
【0044】
本発明による化粧料組成物は、前記共融混合物を化粧料組成物の全体重量に対して0.01~50重量部、例えば0.05~40重量部、0.1~30重量部、0.5~25重量部、0.1~50重量部、1~35重量部、5~30重量部、0.5~40重量部、1~30重量部、5~28重量部、8~25重量部、1~50重量部、5~40重量部、10~35重量部、15~25重量部、18~25重量部、15~20重量部、10~20重量部、10~30重量部、10~40重量部、15~35重量部、20~30重量部で含んでもよいが、これらに限定されない。前記共融混合物の含有量は、化粧料組成物の剤形に適合するように調節することができる。
【0045】
下記実施例では、化粧料内に高含有量の前記共融混合物を含有するにも関わらず、低い皮膚刺激と高い皮膚透過性を示すことを確認した。
【0046】
上記で記述したように、本発明による共融混合物を含む化粧料組成物は、優れた角質剥離促進効果、毛穴数減少効果、弾力増進およびシワ改善効果、および皮膚再生促進効果のような皮膚改善効果を示すことができる。
【0047】
本発明による化粧料組成物は、油相成分をさらに含んでもよい。油相成分は、組成物内含まれて、共融混合物の外相に存在することによって、共融混合物が組成物内に安定に存在することができるように助ける。
【0048】
前記油相成分は、オイルまたはワックスのうち一つ以上でありうる。前記オイルおよびワックスは、当該技術分野において化粧品の成分として通常用いられるものを全部適用することができる。例えば、前記オイルとしては、シリコーン系オイル、エステル系オイル、トリグリセリド系オイル、炭化水素系オイルまたは植物性オイルを使用でき、必要に応じてこれら成分を一つ以上配合して使用することができる。
【0049】
例えば、前記シリコーン系オイルとしては、シリコーン系流動性オイルまたはオイルに分散しているシリコーン系クロスポリマーなどを使用できる。例えば、シリコーン系流動性オイルとしては、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、シクロヘプタシロキサン、シクロメチコン、シクロフェニルメチコン、シクロテトラシロキサン、シクロトリシロキサン、ジメチコン、カプリルジメチコン、カプリリルトリメチコン、カプリリルメチコン、セテアリルメチコン、ヘキサデシルメチコン、ヘキシルメチコン、ラウリルメチコン、ミリスチルメチコン、フェニルメチコン、ステアリルメチコン、ステアリルジメチコン、トリフルオロプロピルメチコン、セチルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコンまたはフェニルトリメチコンなどを使用できる。前記シリコーン系オイル成分は、単独または2種以上のオイルを混用して使用することができる。シリコーン系クロスポリマーとしては、ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンPEG-10/15クロスポリマーまたはPEG-12ジメチコン/PEG-20クロスポリマーを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
エステル類オイルとしては、アスコビルパルミテート、アスコビルリノレエート、アスコビルステアレート、ジイソステアリルマレート、ベンジルベンゾアート、ベンジルラウレート、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート、ブチレングリコールジイソノナノエート、ブチレングリコールラウレート、ブチレングリコールステアレート、ブチルイソステアレート、セテアリールイソノナノエート、セテアリールノナノエート、セチルカプリレート、セチルエチルヘキサノアート、セチルイソノナノエート、エチルヘキシルカプリレート/カプレート、エチルヘキシルイソノナノエート、エチルヘキシルイソステアレート、エチルヘキシルラウレート、ヘキシルラウレート、オクチルドデシルイソステアレート、イソプロピルイソステアレート、イソステアリルイソノナノエート、イソステアリルイソステアレート、イソセチルエチルヘキサノアート、ネオペンチルグリコールジカプレート、ネオペンチルグリコールジエチルヘキサノエート、ネオペンチルグリコールジイソノナノエート、ネオペンチルグリコールジイソステアレート、ペンタエリスリチルステアレート、ペンタエリスリチルテトラエチルヘキサノアート、ジペンタエリスリチルヘキサアシッドエステル、ポリグリセリル-2ジイソステアレート、ポリグリセリル-2セスキイソステアレート、ポリグリセリル-2イソステアレート、ポリグリセリル-2テトライソステアレート、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、ポリグリセリル-3イソステアレート、ポリグリセリル-4ジイソステアレート、ポリグリセリル-4イソステアレート、ポリグリセリル-6ジイソステアレート、ポリグリセリル-6セスキイソステアレートまたはトリエチルヘキサノインなどを使用できる。
【0051】
トリグリセリド系オイルとしては、C8-C12アシッドトリグリセリド、C12-C18アシッドトリグリセリド、カプリリック/カプリク/トリグリセリド、カプリリック/カプリク/ラウリックトリグリセリド、C10-C40イソアルキルアシッドトリグリセリド、C10-C18トリグリセリド、グリセリルトリアセチルヒドロステアレート、ソイビーングリセリド、トリベヘニン、トリカプリン、トリエチルヘキサノイン、トリヘプタノイン、トリイソステアリン、トリパルミチンまたはトリステアリンを使用できる。
【0052】
炭化水素系オイルとしては、流動パラフィン(リキッドパラフィン、ミネラルオイル)、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスまたはスクアレンなどを使用できる。
【0053】
植物性オイルとしては、アボカドオイル、小麦胚芽オイル、ローズヒップオイル、シアバター、アーモンドオイル、オリーブオイル、マカダミアオイル、アルガンオイル、メドウフォームオイル、ひまわりオイル、ひまし油、椿オイル、とうもろこしオイル、紅花オイル、大豆オイル、菜の花オイル、マカダミアノッツオイル、ホホバオイル、パームオイル、パーム核オイルまたはココナッツオイルを使用できる。
【0054】
前記ワックスとしては、一般的に化粧料に使用される炭化水素系ワックス、植物性ワックスまたはシリコーンワックスなどのすべてのワックスを使用できる。例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ビーズワックス、ラノリン、オゾケライト、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロ結晶体ワックス、C30-C45アルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサン、エチレン/プロピレンコポリマーまたはポリエチレンワックスを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0055】
前記油相成分は、その含有量が特に限定されるものではなく、組成物内上記で記述した共融混合物を除いた残りの含有量で含んでもよい。
【0056】
本発明の化粧料組成物は、通常の化粧品に使用可能なすべての種類の成分、例えばグリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、メチルグルセス-20、ジグリセリン、エチルヘキシルグリセリンのような保湿剤;エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクリレン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンのような紫外線遮断剤;トリエタノールアミンのようなpH調節剤;カルボマー、キサンタンガム、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ヒアルロン酸のような増粘剤;フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベンのような防腐剤;BHT、エチルアスコビルエーテル、アスコビン酸のような酸化防止剤;ベータグルカンのような皮膚コンディショニング剤;セテアリルグルコキド、ソルビタンステアレートのような界面活性剤;香料または色素をさらに含んでもよく、その成分が限定されるものではない。
【0057】
本発明による化粧料組成物に含まれる上記した成分それぞれは、好ましくは、中国政府で定める「化粧品安全・技術規範」に規定された最大使用量を超過しない範囲内で本発明の化粧料組成物に含んでもよい。
【0058】
本発明による化粧料組成物は、当該技術分野において通常製造されるいかなる剤形にも製造することができる。例えば、前記化粧料組成物は、柔軟化粧水または栄養化粧水などのような化粧水、スプレータイプの化粧水、フェイシャルローション、ボディローションなどのような乳液、栄養クリーム、水分クリーム、アイクリームなどのようなクリーム、スティック、エッセンス、化粧軟膏、スプレー、ゲル、パック、サンスクリーン、メイクアップベース、液体タイプまたはスプレータイプなどのファンデーション、パウダー、クレンジングローション、クレンジングオイルのようなメイクアップ除去剤、クレンジング フォーム、ソープ、ボディウォッシュなどのような洗浄剤などの剤形を有することができるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
一具体例において、前記化粧料組成物の剤形は、バーム(balm)、油中水型(W/O)、水中油型(O/W)、可溶化剤形またはオイル剤形でありうる。
【0060】
本発明において、前記「可溶化剤形」は、水に少量のオイル成分が透明に溶解した剤形を意味し、オイルドロップ(drop)の直径が可視光線の波長より小さいため、散乱や反射なしに光の直進性を妨害しなくて、透明な性状を示す剤形である。前記可溶化剤形を有する化粧料組成物としては、透明なスキン、トナー、ヘアトニック、またはヘアリキッドでありうるが、種類がこれらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の化粧料組成物は、通常の使用方法によって使用でき、ユーザの皮膚状態または好みによってその使用回数を異ならせることができる。
【0062】
また、本発明は、前記化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0063】
一具体例において、前記化粧料組成物は、精製水、アミノ酸およびアルファヒドロキシ酸を混合して共融混合物を製造する段階と、
前記共融混合物を含む化粧料組成物を製造する段階と、を含む。
【0064】
前記製造方法において、精製水、アミノ酸およびアルファヒドロキシ酸、共融混合物および化粧料組成物は、上記で記述した内容をそのまま適用することができる。
【0065】
また、前記共融混合物を製造する段階は、600~4000rpmおよび45~70℃の均質化条件で行われてもよい。本発明によれば、上記のような均質化条件で共融混合物を成す成分を均一に混合して、上記のような共融混合物の皮膚改善効果、皮膚に対する低刺激性および優れた剤形安定性を具現することができる。
【0066】
他の具体例において、前記化粧料組成物は、第1アミノ酸および第2アミノ酸を混合して共融混合物を製造する段階と、
前記共融混合物を含む化粧料組成物を製造する段階と、を含む。
【0067】
また、前記共融混合物を製造する段階は、精製水をさらに含む段階を含んでもよい。
【0068】
前記製造方法において、第1アミノ酸、第2アミノ酸、精製水、共融混合物および化粧料組成物は、上記で記述した内容をそのまま適用することができる。
【0069】
また、前記共融混合物を製造する段階は、600~4000rpmおよび45~70℃の均質化条件で行われてもよい。本発明によれば、上記のような均質化条件で共融混合物を成す成分を均一に混合して、上記のような共融混合物の皮膚改善効果、皮膚に対する低刺激性および優れた剤形安定性を具現することができる。
【0070】
本発明のメリットおよび特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実験例および製造例を参照すると明確になる。しかしながら、本発明は、以下に開示される実験例および製造例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され、単に本発明の開示が完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【発明の効果】
【0071】
本発明による化粧料組成物は、アルファヒドロキシ酸(AHA)、アミノ酸および精製水;または2種のアミノ酸を共融混合物の形態で含むことによって、弱酸性乃至中性のpHで皮膚刺激なしにAHAおよび/またはアミノ酸の皮膚透過率を向上させて、優れた角質剥離効果、毛穴数減少効果、皮膚弾力増進効果および皮膚再生促進効果を示すことができ、低温でもアミノ酸の析出なしで安定かつ均一に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、共融混合物の形成による最低融点を-20℃で確認した結果であり、(A)は、高含有量のセリンが含有されたセリン水溶液(比較例1)を、(B)は、セリンとリンゴ酸の混合物(比較例2)を、(C)は、本発明の共融混合物(実施例1)を、(D)は、低含有量のセリンが含有されたセリン水溶液(比較例3)を、(E)は、本発明の共融混合物水溶液(実施例2)の結果を示す図である。
図2図2は、本発明の共融混合物の形成の有無による皮膚透過程度を確認した結果である。
図3図3のAは、セリンとアルギニンのモル比による粘度変化を示す図であり、Bは、セリンとアルギニンのモル比による伝導度(conductivity)の変化を示す図である。
図4図4aのAは、セリン(Ser)のNMR分析結果を示す図であり、Bは、アルギニン(Arg)のNMR分析結果を示す図である。図4bのCは、セリンとアルギニンからなる共融混合物のNMR分析結果を示す図であり、Dは、セリンとアルギニンからなる共融混合物にクエン酸を添加したときのNMR分析結果を示す図であり、Eは、セリンとアルギニンからなる共融混合物にクエン酸を添加し、厳しい条件(40℃)で1ヶ月間保管した後のNMR分析結果を示す図である。
図5図5のAは、セリン(Ser)のIRスペクトル分析結果を示す図であり、Bは、アルギニン(Arg)のIRスペクトル分析結果を示す図であり、Cは、セリンとアルギニンの共融混合物のIRスペクトル分析結果を示す図である。
図6図6は、セリン-アルギニンの共融混合物を含むエッセンス(エマルジョン)の処理による20~40歳代の参加者の年齢別毛穴数減少効果を確認した結果である。
図7図7は、セリン-アルギニンの共融混合物を含むエッセンス(エマルジョン)の処理による20~40歳代の参加者の毛穴数減少効果に対する官能評価(体感効果評価)結果を示す図である。
図8図8は、セリン-アルギニンの共融混合物を含むエッセンス(エマルジョン)の処理による20~40歳代の参加者の真皮緻密度を測定した結果である。
図9図9は、セリン-アルギニンの共融混合物を含むエッセンス(エマルジョン)の処理による20~40歳代の参加者の真皮緻密度増加(皮膚弾力増加)に対する官能評価(体感効果評価)結果を示す図である。
図10図10は、ヒト由来角質形成細胞の細胞株であるHaCaT細胞にアルギニン-グルタミン酸共融混合物を処理して皮膚再生促進効果を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明を下記実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0074】
実施例1および2.AHAとアミノ酸を含む共融混合物水溶液の製造
共融混合物水溶液は、次のような方法で製造した。
【0075】
実施例1の共融混合物は、共融混合物100重量部を基準として約130℃の融点を有するリンゴ酸(DL-malic acid,FUSO,Japan)18重量部を準備し、前記リンゴ酸を融点まで加温して液相に製造した。前記液相リンゴ酸に20重量部のセリン(L-serine,EVONIK,Germany)を添加した後、温度を維持しつつ、1,300rpmで30分間撹拌して、完全に融解させた。完全に融解した液相は、NaOHを用いてpHが6.5になるように中和させた。以後、常温で自然冷却させ、Karl Fischer滴定法を用いて全体共融混合物内水分含有量が53重量部になるまで水を添加して撹拌して、最終セリン含有量が20重量部、リンゴ酸含有量が18重量部になるように製造した。
【0076】
実施例2の共融混合物は、全体共融混合物100重量部を基準として、上記で製造した実施例1の共融混合物25重量部を精製水に添加して製造した。この際、前記水溶液内セリンは5重量部、リンゴ酸は4.5重量部で含まれた。
【0077】
【表1】
【0078】
比較例1.高含有量のセリンを含むセリン水溶液の製造
全体水溶液100重量部を基準として、セリン(L-Serine,EVONIK,Germany)が20重量部で含まれるように精製水に混合して、セリン水溶液を製造した。
【0079】
比較例2.高含有量のセリンとリンゴ酸を含むセリンおよびリンゴ酸の水溶液の製造
精製水にセリンとリンゴ酸を混合し、NaOHを用いてpHが6.5になるように調整した。最終混合物水溶液は、全体混合物100重量部を基準として、セリン(L-Serine,EVONIK,Germany)が20重量部、リンゴ酸(DL-Malic acid,FUSO,Japan)が18重量部で含まれるように製造した。
【0080】
比較例3.低含有量のセリンを含むセリン水溶液の製造
全体水溶液100重量部を基準として、セリン(L-Serine,EVONIK,Germany)が5重量部で含まれるように精製水に混合して、セリン水溶液を製造した。
【0081】
比較例4.低含有量のセリンとリンゴ酸を含むセリンおよびリンゴ酸の水溶液の製造
精製水にセリンおよびリンゴ酸を混合し、NaOHを用いてpHが6.5になるように調整した。最終混合物水溶液は、全体混合物100重量部を基準として、セリン(L-Serine,EVONIK,Germany)が5重量部、リンゴ酸(DL-Malic acid,FUSO,Japan)が4.5重量部で含まれるように精製水に混合して、セリンおよびリンゴ酸の水溶液を製造した。
【0082】
比較例5.リンゴ酸水溶液の製造
全体水溶液100重量部を基準として、リンゴ酸(DL-Malic acid,FUSO,Japan)が4.5重量部で含まれるように精製水に混合して、リンゴ酸水溶液を製造した。
【0083】
実施例3および4.2種のアミノ酸を含む共融混合物水溶液の製造
2種のアミノ酸からなる共融混合物水溶液は、次のような方法で製造した。
【0084】
実施例3の共融混合物は、共融混合物100重量部を基準として約220℃の融点を有するアルギニン(L-arginine、大象、Republic of Korea)21重量部を準備し、そこへ26重量部のセリン(L-serine,EVONIK,Germany)を添加した後、10重量部の精製水を添加して、90℃温度を維持しつつ、1,300rpmで30分間撹拌して、完全に融解させて製造した。実施例4の共融混合物は、実施例3の共融混合物にpH調節のための含水クエン酸(Citric acid,CIBA SPECIALITY CHEMICALS,Switzerland)6重量部を添加して、90℃温度を維持しつつ、1,300rpmで30分間撹拌して、完全に融解させて製造した。以後、常温で自然冷却させ、実施例3と4の共融混合物にKarl Fischer滴定法を用いて全体共融混合物内水分含有量が50~55重量部になるまで水を添加して撹拌した。前記実施例3および4のpHは、それぞれ8.7および6.5の値を示した。
【0085】
【表2】
【0086】
実験例1.共融混合物水溶液の融点、低温安定性および安定度の確認
1)融点の確認
前記実施例1で製造した共融混合物水溶液、比較例1のセリン水溶液、および比較例2のセリンおよびリンゴ酸の水溶液の融点降下による性状を比較した。前記実験は、実施例1,比較例1および2の溶液を-20℃で静置して、相の変化を確認することによって、融点を測定した。その結果を図1に示した。図1で、A、BおよびCは、それぞれ順に比較例1、比較例2および実施例1を意味する。
【0087】
図1から明らかなように、実施例1のように、セリン、リンゴ酸および精製水で形成された共融混合物の場合、-20℃以下で融点を形成して-20℃で液相を維持することを確認した。実施例3と4で製造した共融混合物水溶液も、共融混合物の形成による融点降下が起こり、0℃の融点を有する水より低い-20℃付近あるいはそれ以下で融点を有することが確認された。
【0088】
2)低温安定性の確認
共融混合物を添加した水溶液の低温安定性を確認するために、前記比較例3および実施例2の水溶液を低温(-20℃)で冷凍保管して完全に凝固させてから、常温(25℃)で融解する過程を7回繰り返して、目視で安定性を確認した。その結果を図1に示し、図1のDは、比較例3の水溶液を、Eは、実施例2の水溶液の結果を示す図である。
【0089】
図1のDおよびEから明らかなように、比較例3のセリン水溶液の場合、低温で溶解度の減少によってセリンが析出し、融解した後に析出したセリンが沈殿することを確認したが、実施例2のように共融混合物を含む水溶液では析出が進められないことを確認できた。これを通じて、共融混合物が含まれた水溶液では、-20℃のような低温でも安定性を維持できることが分かる。
【0090】
また、実施例3および4で製造した共融混合物水溶液は、析出が進められないか、または常温で静置させた後に軽い撹拌を通じて再溶融することを確認した。これを通じて、2種のアミノ酸が含有された共融混合物を含む実施例3および4でも、-20℃のような低温で安定性が維持されることが分かる。
【0091】
3)安定度の確認
共融混合物水溶液の安定度を確認するために、50mlのテストチューブに実施例1と同じセリン含有量の比較例1のセリン水溶液と実施例1、3および4の共融混合物水溶液を常温(25℃)および-20℃でそれぞれ12時間ずつ4週間静置した。前記溶液の安定度は、試料内析出の有無から確認し、その結果を下記表3に示した。
【0092】
【表3】
【0093】
前記表3から明らかなように、常温と-20℃で繰り返して静置したにも関わらず、本発明による実施例1、3、4の共融混合物水溶液では、試料が析出せずに、水溶液相を維持することを確認することによって、多様な環境変化にも安定性が維持できることを確認した。その一方で、実施例1と同じ濃度のセリン水溶液である比較例1の場合、-20℃で試料が析出する結果を示した。
【0094】
実験例2.共融混合物水溶液の角質剥離効果
前記実施例2のセリン濃度による共融混合物水溶液の角質剥離効果を確認するために、ブタの背中の皮膚に前記水溶液を処理した。具体的に、厚さ1mmのブタの背中の皮膚から生検(biopsy)ツールを用いて直径6mmのサンプルを取った。これを96ウェルプレートに載置し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄した後、前記実施例2の共融混合物水溶液を100μl添加した。この際、角質剥離効果の比較のために、同じ方法でブタの背中の皮膚に比較例4のセリン-リンゴ酸混合物を100μl添加した。それぞれの水溶液を処理したブタの背中の皮膚サンプルは、37℃の温度、50%の湿度の条件で16時間保管した後、離脱した角質の数をセルカウンターで測定して、角質剥離効果を確認した。この際、陰性対照群としては、精製水を添加したものを、1次陽性対照群としては、角質剥離成分の一つであるpH4の10%グルコノラクトン(polyhydroxy acid、pHA)を添加したものを、2次陽性対照群としては、pH6の10%グルコノラクトンを添加したものを使用した。2次陽性対照群の場合、1次陽性対照群と比較して15~20%の効能が出る条件を基準として角質剥離効果を評価した。ここで、1次陽性対照群は、実際実験例間の値を比較するための基準として適用され、角質剥離の相対値(%)は、[(サンプルの結果値)/(1次陽性対照群の値)×100]で計算して記載した。その結果を表4に示した。
【0095】
【表4】
【0096】
前記表4から明らかなように、セリン水溶液と比較して本発明の共融混合物水溶液を使用した実施例2の結果から、高い角質剥離効果が現れることを確認できた。また、pH4の角質剥離成分である10%のグルコノラクトン(PHA)(1次陽性対照群)と比較したとき、本発明の実施例2の水溶液においてさらに高いpH値を有するにも関わらず(pH6.5)、類似したレベルの角質剥離効果を示すことを確認した。すなわち、本発明の実施例2の水溶液は、刺激の少ない弱酸性または中性のpH条件下でも、低いpHを有する従来の角質剥離成分と類似したレベル乃至優れた角質剥離効果を具現することができる。また、リンゴ酸水溶液とセリン-リンゴ酸の単純混合液と比較して本発明の共融混合物水溶液において角質剥離効能が増加することを通じて、精製水を含有する共融混合物がさらに優れた角質剥離効能を有することを確認した。
【0097】
実験例3.弱酸性条件で共融混合物水溶液の皮膚透過性の確認
弱酸性条件(pH6.5)で共融混合物水溶液の皮膚透過性を確認した。比較例1、2および実施例1の水溶液をそれぞれ10μgずつ準備して、均一な面積のブタの皮膚に塗布した。6ウェルプレートにリン酸緩衝食塩水(PBS)で濡らしたティッシュを載置し、ティッシュ上にブタの皮膚を配置した状態で37℃の温度、50%の湿度の条件で12時間保管した。以後、綿棒および角質採取テープで皮膚に浸透しない試料を除去し、ブタの皮膚の重さを測定した。ホモジナイザーでブタの皮膚を破砕した後、水1mlを添加して、試料中のアミノ酸と共融混合物を十分に溶解させた後、12,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液0.5mlを分離して、本実験で使用した標準試料の液体クロマトグラフィー法を用いて皮膚に透過した試料(セリン)の濃度を定量した後、ブタの皮膚の重さで割って、g組織当たり試料(セリン)の質量を初期投入したセリンの質量と比較して透過率を求めた。前記皮膚透過性の結果を図2に図式化した。
【0098】
図2から明らかなように、pH6.5条件下で、セリン水溶液(図2のL-セリン)と比較して本発明の共融混合物水溶液を使用した実施例2(図2の共融合体)の結果においてさらに高い豚皮膚透過率が現れることを確認できた。また、図2および参考文献と同様に、AHAの一種である乳酸(lactic acid;参考文献1)とベータヒドロキシ酸(β-hydroxy acid、以下、BHAという)の一種であるサリチル酸(参考文献2)と比較して、実施例2は、優れた皮膚透過効能を示すことを確認できた。それだけでなく、セリン-リンゴ酸の単純混合液(図2のセリン-リンゴ酸)と比較するとき、精製水を含有する本発明の共融混合物において高い豚皮膚透過性を示した。すなわち、本発明による共融混合物が有する高い皮膚透過性から上記で実験例2で確認したような優れた角質剥離効果を示すことが分かる。
【0099】
[参考文献]
1.SE Wolverton,α-Hydroxy acids.In Comprehensive Dermatologic Drug Therapy,3rd et.,Elsevier,2012,570.
2.S.E.Wolverton,α-hydroxy acids,In Comprehensive Dermatologic Drug Therapy,3rd edition,Elsevier,570(2012)
【0100】
実施例5~7.共融混合物水溶液の製造
下記の表5のような組成および含有量で実施例5~7の共融混合物水溶液を製造した。
まず、130℃で融点を有するリンゴ酸(DL-Malic acid,FUSO,Japan)を準備し、融点まで加温して液相に製造した。製造した液相リンゴ酸にそれぞれプロリン(L-Proline,Sigma Aldrich,USA)、スレオニン(L-Threonine,Sigma Aldrich,USA)およびシステイン(L-cystein,Sigma Aldrich,USA)を添加し、温度を維持しつつ、1,300rpmで30分間撹拌して、完全に溶解させた。前記溶液が完全に溶解すると、NaOHを用いてpH6.5に中和させた後、常温で自然冷却させ、Karl Fischer滴定法を用いて全体共融混合物内水分含有量を測定し、共融混合物の形成の有無、4週間保管後の試料の析出の有無を確認した。その結果を下記表6に示した。この際、プロリンを添加した共融混合物水溶液を実施例5に、スレオニンを添加した共融混合物水溶液を実施例6に、システインを添加した共融混合物水溶液を実施例7に記載した。
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
製造例1.バーム(balm)剤形の化粧料組成物の製造
下記表7の組成で前記共融混合物水溶液を含むバーム剤形の化粧料組成物を製造した。具体的に、下記成分のうち水相部(精製水、1,2-ヘキサンジオール、実施例1の組成物)は、常温で均一に溶解させ、全成分のうち水相部を除いた油相部は、90℃で均一に溶解させた後、水相部を混合し、常温で冷却凝固させて、バーム剤形の化粧料組成物を製造した。
【0104】
【表7】
【0105】
実施例8および比較例6、7.水中油型(Oil in Water)剤形におけるセリン化粧料組成物の製造
下記表8の組成で共融混合物またはセリン水溶液を含む水中油型(O/W)剤形の化粧料組成物を製造した。具体的に、下記成分のうち水相部は、常温で均一に溶解させ、油相部は、90℃で均一に溶解させた。以後、溶解した水相部に油相部を混合し、冷却して、水中油型剤形の化粧料組成物を製造した。
【0106】
【表8】
【0107】
実験例4.皮膚透過効果の確認
前記水中油型剤形の化粧料組成物である実施例8、比較例6および比較例7を用いて次のような方法で皮膚透過効果を確認した。
【0108】
実施例8および比較例6、7をそれぞれ10μgずつ準備して、均一な面積のブタの皮膚に塗布した。6ウェルプレートにリン酸緩衝食塩水(PBS)で濡らしたティッシュを載置し、ティッシュ上にブタの皮膚を配置した状態で37℃の温度、50%の湿度の条件で12時間保管した。以後、綿棒および角質採取テープで皮膚に浸透しない試料を除去し、ブタの皮膚の重さを測定した。ホモジナイザーでブタの皮膚を破砕した後、水1mlを追加して、試料中のアミノ酸と共融混合物を十分に溶解させた後、12,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液0.5mlを分離して、本実験で使用した標準時料の液体クロマトグラフィー法を用いて皮膚に透過した試料(セリン)の濃度を定量した後、ブタの皮膚の重さで割って、g組織当たり試料(セリン)の質量を初期投入したセリンの質量と比較して透過率を求めた。その結果を表9に示した。
【0109】
【表9】
【0110】
前記表9から確認できるように、実施例8の場合、同一量のセリンを含有する比較例6に比べて皮膚透過性が約77%向上した。
【0111】
製造例2.油中水型(Water in Oil)剤形の化粧料組成物の製造
下記表10の組成で共融混合物水溶液を含む油中水型(W/O)剤形の化粧料組成物を製造した。具体的に、下記成分のうち水相部は、常温で均一に溶解させ、油相部は、90℃で均一に溶解させた。以後、溶解した油相部に水相部を混合し、冷却して、油中水型剤形の化粧料組成物を製造した。
【0112】
【表10】
【0113】
実施例9および比較例8.水中油型(Oil in Water)剤形の化粧料組成物の製造
下記表11の組成で共融混合物水溶液を含む水中油型(O/W)剤形の化粧料組成物を製造した。具体的に、下記成分のうち水相および油相部は、それぞれ常温で均一に溶解させ、以後、溶解した水相部に油相部を混合して、水中油型剤形の化粧料組成物を製造した。
【0114】
【表11】
【0115】
実施例10および比較例9.可溶化剤形の化粧料組成物の製造
下記表12の組成で共融混合物水溶液を含む可溶化剤形の化粧料組成物を製造した。具体的に、下記成分のうち水相および少量の油相部は、それぞれ常温で均一に溶解させ、以後、溶解した水相部に少量の油相部を混合して、可溶化剤形の化粧料組成物を製造した。
【0116】
【表12】
【0117】
実施例11および比較例10.オイル剤形の化粧料組成物の製造
下記表13の組成で共融混合物水溶液を含むオイル剤形の化粧料組成物を製造した。具体的に、下記成分のうち少量の水相および油相部は、それぞれ常温で均一に溶解させ、以後、溶解した少量の水相部を油相部に混合して、オイル剤形の化粧料組成物を製造した。
【0118】
【表13】
【0119】
実験例5.皮膚改善効果の確認
上記のように製造した実施例9と比較例8の化粧料組成物を皮膚に9週間塗布して、皮膚改善効果(肌トーン、肌のきめ、毛穴数およびブラックヘッド数)を評価した。被験者の顔を鼻をすぎる仮想の線で半分に分けて、それぞれ右側の皮膚に実施例9の化粧料組成物を、被験者の左側の皮膚に比較例8の化粧料組成物を塗布した。以後、3週目および9週目に鏡を見て右側と左側の皮膚改善効果を比較し、5点尺度を用いて官能評価した。その結果を表14に示した。下記表14で、0週目の場合、5点尺度を用いて各該当項目に対する悩みの点数を示した。季節、個別的な身体状態、気分など時間による外部要因を排除するために、各週ごとの満足度の変化は評価せず、各時点で右側、左側の状態のみを比較することで、共融混合物の効能を評価した。
【0120】
[皮膚改善効果の評価基準]
<0週目>
5点:該当項目に対する皮膚状態が非常に優秀で、悩みが全くなし
4点:該当項目に対する皮膚状態が比較的良好で、悩みがあまりない
3点:該当項目に対して普通の皮膚状態であり、悩みが若干ある
2点:該当項目に対する皮膚状態が良くなくて、悩みを持っている
1点:該当項目に対する皮膚状態が非常に良くなくて、とても大きい悩みを持っている
<3週目および9週目>
5点:左側に比べて右側の皮膚改善効果が非常に優秀
4点:左側に比べて右側の皮膚改善効果が優秀
3点:右側と左側の皮膚改善効果を体感しにくい
2点:右側に比べて左側の皮膚改善効果が優秀
1点:右側に比べて左側の皮膚改善効果が非常に優秀
【0121】
【表14】
【0122】
3週目および9週目の場合、3点を平均として点数値が大きくなるほど消費者が共融混合物を塗布した右側の皮膚改善体感効果を感じると解釈することができる。これより、前記表14から明らかなように、本発明の化粧料を9週間塗布する場合、皮膚改善効果を体感することを確認でき、特にブラックヘッド、毛穴数および黒い毛穴などのように消費者が悩みに比べて体感効能を得ることが難しい皮膚の悩みが劇的に改善されることを確認できる。
【0123】
実験例6.ウォッシュオフ(wash-off)タイプで体感効果増進の確認
上記のように製造した実施例10および11と比較例9および10の化粧料組成物を皮膚に塗布後、微温水で洗い、wash-offタイプで短期的塗布による体感改善効果を評価した。被験者に1日目には、実施例10または比較例9のうち無作為に選ばれた一つの製品を使用するようにし、2日目には、実施例10または比較例9のうち1日目に選択されなかった他の一つの製品を使用するようにし、実験1日目と2日目にそれぞれ製品の塗布前と製品を微温水で洗った後の体感効果の変化をブラインドテスト後に5点尺度で官能評価した。該当評価において実験実行者である発明者は、被験者が選択した製品がどんな製品なのか知っており、被験者は、アンケート調査を終えるまでブラインドテストで進行された。実施例11または比較例10についても、上記のような方式で同一に評価した。前記実験を通じて、互いに異なる二つの剤形である可溶化剤形(実施例10および比較例9)およびオイル剤形(実施例11および比較例9)において消費者が共融混合物の有無による短期効能を体感するかを確認した。その結果をそれぞれ表15および表16に示した。
【0124】
[皮膚改善効果の評価基準]
○:体感の皮膚改善効果が優秀
△:普通の体感皮膚改善効果
×:体感の皮膚改善効果がなし
【0125】
【表15】
【0126】
【表16】
【0127】
前記表15および表16から明らかなように、本発明の化粧料組成物の場合、使用後に全般的な体感の皮膚改善効果が増加することを官能評価によって確認できた。
【0128】
実施例12.セリンとアルギニンを含む共融混合物の製造
共融混合物を成す成分としてセリン:アルギニンをモル比2:1で準備し、総重量と同じ量の精製水を準備した。すなわち、精製水の量は、総重量に対して精製水の含有量が50wt%になるようにした。ホモディスパーの速度が1000rpm、温度が50℃に維持されるように加温した。20分間反応させた後、均質性が確認されると、加温を中止し、自然冷却した。
【0129】
実験例7.セリンとアルギニンを含む共融混合物の特性の確認
1)共融混合物の物性の確認
前記実施例12の共融混合物の製造時、セリンとアルギニンのモル比による組成物の特性および長期安定性を比較した。具体的なモル比と特性および長期安定性は、下記表17に示した。
【0130】
【表17】
【0131】
前記表17から明らかなように、セリンとアルギニンが2:1のモル比で混合されたとき、安定し、保管2月後にも析出しないことを確認できた。これを通じて、セリンとアルギニンは、2:1のモル比で含まれたとき、共融混合物を成すことが分かる。
【0132】
2)共融混合物の粘度および伝導度の確認
前記表17のセリンとアルギニンのモル比による組成物の粘度および伝導度を確認し、図3に示した。
【0133】
まず、粘度を確認した図3のAをみると、共融混合物を形成した2:1のモル比で粘度が最も高く現れることを確認できた。これは、共融混合物において溶解度以上の溶解がなされて、過溶解状態になって粘度が増加したのである。また、伝導度の結果(図3のB)をみると、表面電荷の安定化(すなわち、肌質親和度の向上)によってセリンとアルギニンが2:1のモル比を有する場合、共融混合物が形成されて伝導度が減少することを確認できる。
【0134】
3)NMR分析
共融混合物のNMR分析のために、セリンとアルギニンそれぞれのNMR分析(図4aのAおよびB)を行った。また、セリンとアルギニン共融混合物のNMR分析(図4bのC)、剤形内結合に影響を与える強い表面電荷を有し、化粧品剤形が弱酸性を呈するようにすることができるpH調節剤としてクエン酸(citric acid)を添加したセリン-アルギニンの共融混合物のNMR分析(図4bのD)および共融混合物にクエン酸を添加して厳しい条件(40℃)で1ヶ月間保管した後のNMR分析結果(図4bのE)を図4aおよび図4bに示した。
【0135】
その結果、アルギニンのNMR分析結果(図4aのB)で観察された単一ピーク(single peak)が、セリン-アルギニンの共融混合物に形成されることで、2個のピークにスプリット(split)されることを確認できた。すなわち、セリン-アルギニンの共融混合物において分子間結合を通じてアルギニンのグアニジンと最も近い主鎖(main chain)の水素ピークのスプリット(split)が観察されたが、これは、主鎖の回転運動が阻害されて、分子間結合したと解釈することができる。また、セリン-アルギニンの共融混合物にクエン酸を添加してNMR分析を行った結果(図4bのD)、クエン酸の添加によって共融混合物が破壊され得る条件であるにも関わらず、セリン-アルギニンの共融混合物のピークが同一に観察され、これを厳しい条件(40℃)で1ヶ月間保管した後にも分析結果が同一に現れた(図4bのE)。これを通じて、本発明のセリン-アルギニンの共融混合物が厳しい条件でも安定的に維持できることを立証した。
【0136】
4)IRスペクトル分析
セリンとアルギニンそれぞれ(図5のAおよびB)およびセリン-アルギニンの共融混合物のIRスペクトルを分析した(図5)。その結果、セリンとアルギニンが共融混合物を成すことになることによって、IRスペクトル上で特異なred shift(赤方偏移)が確認された。これは、アルギニンのグアニジンとセリンのカルボキシルグループがred-shiftされることを示すものであり、分子間結合によって分子内結合がゆるんだ状態になって(すなわち、結合長さが増加して)red-shiftされることが分かる。したがって、前記構造分析の結果を通じて、共融混合物の分子間結合を確認し、構造的に安定していることを確認できた。
【0137】
実験例8.皮膚改善効果の確認
1)毛穴数減少効果の確認
20~40歳代の被験者60人に、前記実施例12で製造したセリンとアルギニンの共融混合物を含むエッセンス(エマルジョン)を皮膚に塗布するようにした後、6週間毛穴個数を測定して、毛穴数減少効果を確認した。この際、毛穴数減少効果は、機器が認識する毛穴数であって、単一毛穴のサイズ、色、目立つことが減って機器が毛穴と認識しなければ、毛穴数が減少したと判断した。使用された機器は、Antera 3D(登録商標)CS skin analyzing camera(Miravex)を用いて同じ評価者が恒温恒湿環境で20分間被験者の皮膚適応を通じて同じ皮膚条件を達成した後、左右の頬の同じ地点に測定して評価した。すなわち、毛穴数減少効果は、拡張された毛穴改善効果を意味する。その結果を各年齢層別に分けて、それぞれ図6および下記表18に示した。
【0138】
【表18】
【0139】
前記表18および図6から明らかなようにすべての年齢層の実験参加者においてセリン-アルギニンの共融混合物を含むエッセンス(エマルジョン)を処理した皮膚において毛穴数減少効果が持続的に現れたことが分かる。
【0140】
2)毛穴数減少に対する官能評価
また、前記実施例12のセリンとアルギニンの共融混合物を含むエッセンスの使用による毛穴数減少に対する官能評価を実施した。その結果を下記図7に示した。
【0141】
1)の結果と同様に、セリンとアルギニンの共融混合物を含むエッセンス処理群において優れた毛穴数減少効果を示すという参加者がさらに多く現れることを確認できた。
【0142】
3)弾力改善効果の確認-真皮緻密度の確認
1)と同じ方法で、20~40歳代の参加者の年齢層別の真皮緻密度の改善効果を確認し、図8に示した。
【0143】
図8から明らかなように、すべての年齢層においてセリンとアルギニンの共融混合物を含むエッセンスを処理した実験群において真皮緻密度が高いことを確認できた。すなわち、これを通じて、前記セリン-アルギニンの共融混合物の処理によって真皮緻密度の増加による弾力改善効果を示すことができることが分かる。
【0144】
4)弾力改善に対する官能評価
また、前記実施例12のセリンとアルギニンの共融混合物を含むエッセンスの使用による真皮緻密度の増加に対する官能評価を実施した。その結果を図9に示した。
【0145】
3)の結果と同様に、セリンとアルギニンの共融混合物を含むエッセンスを処理した実験群において優れた真皮緻密度増加効果を示すという参加者がさらに多く現れることを確認できた。
【0146】
比較例11.セリンとアルギニンの単純混合物の製造
混合物100重量部に対して、セリン5重量部とアルギニン4.1重量部を精製水90.5重量部に追加して、ホモディスポを用いて沈殿物がないまで単純混合した。単純混合というのは、別途の加温工程がない室温混合を意味する。
【0147】
実験例9.共融混合物の角質剥離効果
前記実施例12のセリン-アルギニンの共融混合物と比較例11のセリンおよびアルギニンの単純混合物の角質剥離効果を確認するために、ブタの背中の皮膚に前記共融混合物および単純混合物を処理した。具体的な実験方法は、実験例2.と同じ方法で行った。その結果を下記表19に示した。
【0148】
【表19】
【0149】
前記表19から明らかなように、セリンとアルギニンの単純混合物に比べて本発明のセリン-アルギニンの共融混合物においてさらに高い角質剥離効果が現れることを確認できた。1次陽性対照群と比較したとき、実験例2と同様に、本発明の共融混合物においてさらに高いpH値を有するにも関わらず(pH9.1)、PHAと類似したレベルの角質剥離効果を示すことを確認した。また、クエン酸でpHを6.0に調整した実験群においても、調整前の共融混合物と類似したレベルの角質剥離効果を示すことを確認した。
【0150】
実験例10.皮膚透過性の確認
実施例12で製造した共融混合物の皮膚透過性を確認した。具体的な実験方法は、実験例3.と同じ方法で行った。実施例12に対する結果を表20に記載した。
【0151】
【表20】
【0152】
本発明による共融混合物にクエン酸を添加してpHを6.0に調整した場合を100に換算したとき、本発明による実施例12の共融混合物は、pHを調整しないpH9.1の条件でも、皮膚透過性に優れていた。その一方で、セリンとアルギニンの単純混合物では、実施例12より顕著に低い皮膚透過性を示し、pHを6.0に調整したときにも、本発明による共融混合物に比べて低い結果を示した。
【0153】
実施例13.アルギニンとグルタミン酸を含む共融混合物の製造
共融混合物を成す成分としてアルギニン:グルタミン酸をモル比1:1で準備し、総重量と同じ量の精製水を準備した。すなわち、精製水の量は、総重量に対して精製水の含有量が50wt%になるようにした。ホモディスパーの速度が1000rpm、温度が50℃に維持されるように加温した。20分間反応させた後、均質性が確認されると、加温を中止し、自然冷却して、前記実施例12と同じ方法で共融混合物を製造した。
【0154】
実験例11.アルギニンとグルタミン酸を含む共融混合物の特性の確認
アルギニンとグルタミン酸の共融混合物形成の巨視的評価を行った。グルタミン酸とアルギニン/グルタミン酸の単純混合物およびアルギニン-グルタミン酸の共融混合物の水に対する溶解度を確認して、1%以上溶解の可否に対して下記表21に示した。
【0155】
【表21】
【0156】
その結果、前記表21に示されたように、グルタミン酸およびアルギニン/グルタミン酸の単純混合物の場合、水に対する溶解度が0.5%未満と非常に低くて、オイルおよび水相など実際剤形内で0.5%以上溶解しにくかった。その一方で、アルギニン-グルタミン酸の共融混合物の場合、水に対する溶解度が15.2%であって、水溶液相で存在可能であり、共融結合を通じてさらなる溶解が可能であることを確認した。
【0157】
実験例12.皮膚再生促進効果の確認
ヒト由来角質形成細胞(keratinocyte)の細胞株であるHaCaT細胞を10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum,Gibco,Waltham,MA,USA)、100mg/mlのペニシリンおよび100mg/mlのストレプトマイシンを添加したDMEM培地(ADDEXBIO TECHNOLOGIES,SanDiego,CA,USA)を用いて37℃、5%COの条件で培養した。培養した細胞を各ウェル当たり2.0×10個になるように24ウェルプレートにシーディング(seeding)した後、24時間培養した後、PBSで細胞を1回洗浄し、200μlピペットチップ(pipet tip)で細胞を掻き取って、中間に垂直線形態のスクラッチを作った。脱離した細胞残余物(cell debris)を除去するために、PBSで2回洗浄し、各試験物質が含まれたPBS-free DMEMに培地を交替した。写真撮影時、常に同じ部分をとるために、ウェルの中央を微細なマーカーで表示し、実験開始(0時間)と同時に表示した部分の細胞写真を撮った。同様に、2、4および24時間後の細胞写真も撮影した。0時間と24時間後の写真をイメージ分析プログラム(Image J)を用いて単一層細胞の上に作られたスクラッチ面積を測定した後、次の一般式1によってスクラッチ面積が満たされた領域を創傷治癒率(Wound healing percentage,%)で示した。その結果を下記表22および図10に示した。この際、Arg/Glu(10:1)単純混合物の濃度は、アルギニンの濃度を基準とする。
【0158】
【数1】
【0159】
【表22】
【0160】
前記表22および図10のように、FBS-free DMEM培地を陰性対照群とし、細胞株の最適成長条件に該当する10% FBS-DMEMを陽性対照群として、アルギニン-グルタミン酸の共融混合物(Arg-Glu共融混合物)とそれぞれの単一アミノ酸アルギニンおよびグルタミン酸、二つのアミノ酸の単純混合物を比較した結果、Arg-Glu共融混合物1ppm処理群は、FBS10%処理群(陽性対照群)より創傷治癒率が良好に現れることを確認できた。またArg-Glu共融混合物10ppm(アルギニンの濃度基準)の創傷治癒率は92.2%であり、顕微鏡イメージ上でも、スクラッチによって空いていた空間が大部分細胞で覆われていることを確認できた。Arg-Glu共融混合物10ppmのこのような効果は、二つのアミノ酸の単純混合物であるアルギニン10ppm/グルタミン酸1ppm(製造可能なグルタミン酸最大濃度が1ppm)の処理群およびアルギニン1ppmの処理群より優れていて、これを通じて、Arg-Glu共融混合物は、それぞれを単独適用したとき、または単純混合したときに比べて、細胞再生を促進して、皮膚再生を助けることができることを確認した。
【0161】
実験例13.コラーゲン総量増加効果の確認
前記実施例13の共融混合物のコラーゲン総量増加効果を確認するために、ヒト線維芽細胞にアルギニン-グルタミン酸の共融混合物を処理した後、ヒト線維芽細胞で生産されるコラーゲンの総量を測定した。具体的に、ヒト線維芽細胞の培養液に、アルギニン-グルタミン酸の共融混合物(Arg-Glu共融混合物)、アルギニン(Arg)、グルタミン酸(Glu)およびアルギニン-グルタミン酸の単純混合物(Arg/Glu単純混合物)を添加して、細胞レベルでのコラーゲン総量増加程度を確認した。コラーゲン総量は、PICP EIAキット(Procollagen Type I C-Peptide Enzyme ImmunoAssay KIT)を用いて定量化した。実験前、ヒト由来線維芽細胞を対象としてArg-Glu共融混合物は濃度(μg/ml)を異ならせて細胞毒性を評価し、細胞毒性のない濃度(100μg/ml)を選定して、コラーゲン総量の増加程度を評価した。
【0162】
具体的に、それぞれの試料をヒト線維芽細胞の培養培地に添加して1日間培養した後、培養液を取ってPICP EIAキットで各濃度におけるコラーゲンの総量増加程度を分光光度計を用いて450nmで測定した。効果の比較のために、何も添加しない線維芽細胞の培養培地(陰性対照群)とTGF-βfmf最終濃度10mg/mlになるように添加した試料(陽性対照群)に対して同じ方法でコラーゲン総量の増加程度を確認した。コラーゲンの総量は、UV吸光度として測定し、コラーゲン総量の増加率は、対照群に対する相対的なコラーゲン総量の割合で計算し、その結果を下記表23に示した。この際、Arg-Glu共融混合物およびArg/Glu(1:10)単純混合物の濃度は、アルギニンの濃度を基準とした。
【0163】
【表23】
【0164】
前記表23から明らかなように、Arg-Glu共融混合物は、濃度依存的にコラーゲン合成を促進してコラーゲンの総量を増加させる効果を示し、1ppm以上の濃度で同一濃度のArg/Glu(1:10)単純混合物よりコラーゲン増加率が良好に現れた。また、Arg-Glu共融混合物は、単一アミノ酸であるArgおよびGluに比べてコラーゲン増加率も良好に現れることを確認できた。
【0165】
実験例14.皮膚弾力増進効果の確認
前記実施例13の共融混合物の実際ヒト皮膚での弾力増進効果を確認するために、下記表24の組成でAとBをクリーム剤形に製造して、実験を行った。本実験は、アルギニン-グルタミン酸の共融混合物(Arg-Glu共融混合物)を使用した。具体的に、25~45歳の女性20人を朝夕毎日2回ずつ顔面に塗布するようにして、皮膚弾力測定器(Cutometer SEM 575,C+K Electronic Co.,Germany)を用いて皮膚弾力改善効果を測定した。その結果を下記表25に示した。結果値は、皮膚弾力測定器の皮膚点弾性(viscoelasticity)を意味する。
【0166】
【表24】
【0167】
【表25】
【0168】
前記表25から明らかなように、アルギニン-グルタミン酸の共融混合物を処理した実験群において皮膚弾力が増加することを確認できた。これを通じて、前記アルギニン-グルタミン酸の共融混合物は、優れた皮膚弾力増進効果を示すことが分かる。
【0169】
実験例15.共融混合物の分離条件の確認
一般的に、特定溶媒で共融混合物を形成する場合、共融混合物は、各成分種の溶解度以上に過溶融している状態に置かれることになる。本発明において、溶媒として水を用いて共融混合物を形成する過溶融溶液の場合、例えば次のような条件で非可逆的沈殿物の発生の有無を通じて共融混合物の結合が解離することを確認できる:
i)50℃の温度条件で6週間以上、または8週間以上、または10週間以上、または12週間以上で保管する場合;
ii)60℃の温度条件で4週間以上、または5週間以上、または6週間以上、または8週間以上で保管する場合;および/または
iii)80℃の温度条件で10日以上、または15日以上、または20日以上、または30日以上で保管する場合。
【0170】
すなわち、前記i)~iii)条件で非可逆的沈殿物の発生の有無を通じて共融混合物内共融物質間の結合を破壊することができ、破壊されたことを確認できる。また、共融混合物の解離の有無は、共融物質間の結合を破壊することができる物質、例えばEDTA、プロトン性溶媒(protic solvent)、高濃度のウレア(urea)、またはグアニジルHClのような物質を用いて確認できる。
【0171】
この際、可逆的沈殿とは、共融混合物の沈殿物が観察された後、約10~20回の単純な混合(ハンドシェイキング)により透明な(均質な)溶液状態に戻る沈殿を意味し、前記i)~iii)の解離条件でない低温(-20℃)で静置させる場合、一時的に沈殿が発生することを確認したが、単純な混合を通じて均質化することを確認した。非可逆的沈殿とは、上記の過程を実施する場合、均質化しない沈殿を意味する。
【0172】
しかも、前記共融混合物の分離条件で静置させた実施例12の共融混合物を含む化粧料(エッセンス)の目視で性状観察(表27)、DSC(Differential scanning calorimetry)の測定を通した融点変化(表28)および角質剥離効果(表29)を確認して、共融混合物の解離の有無を確認した。この際、前記共融混合物を含むエッセンスは、下記表26の組成で製造されたエッセンスに共融混合物を添加したことを意味し、角質剥離効果は、前記実験例2に記載された内容と同じ方法で行った。
この際、前記融点の測定は、Perkin Elmer Diamond DSC(Differential Scanning Calorimeter;Perkin Elmer,Waltham,MA,USA)を用いて融点を測定した。融点は、DSC内試料に対する熱流で示され、その正確度が0.01℃であることが知られている。融点の測定は、純粋な窒素雰囲気で行われ、窒素雰囲気を維持するために20cc/minの速度で測定チャンバー内に供給され、チャンバーの温度は1分当たり10℃増加するように設定された。測定試料の質量は、DSC内試料を装入するためのパン(pan)の重さを全体試料を含む重さから差し引くことによって確認した。パンをDSC内部に静置させ、温度を-50℃から90℃まで設定して加温することによって、熱流を測定した。以後、結果は、DSCに連結されたデータ分析プログラムを通じて確認した。
【0173】
【表26】
【0174】
【表27】
【0175】
前記表27から明らかなように、50℃の温度条件で6週間以上または60℃の温度条件で5週間以上静置させた場合に、非可逆的沈殿物が発生したことを通じて、共融混合物が解離したことを確認できた。共融混合物が解離した場合、融点降下および皮膚透過効能改善の効果を期待できないので、下記表28と表29を通じて共融混合物が形成または解離したときの特徴を確認した。
【0176】
【表28】
【0177】
その結果、共融混合物を形成しない単純混合物を含む化粧料の融点は、水の融点である0℃で確認されるが、共融混合物を含む化粧料は、融点降下現象によって融点が-3.83℃で確認された。表27の解離条件(50℃で6週間)で保管された、共融混合物を含む化粧料の場合には、融点が0℃で観察されて、共融混合物が解離して単純混合物の形態になったことを確認できる。
【0178】
【表29】
【0179】
前記表28から確認した共融混合物が解離して単純混合物になった場合、角質剥離効果のレベルが単純混合物と類似しているかを前記表29を通じて確認した。共融混合物が含まれたエッセンスの角質剥離効果を100にして相対比較したとき、単純混合物または共融混合物の解離物が含まれたエッセンスが全部類似したレベルで効果が出ることを確認した。この際、[実施例12]の共融混合物を含むエッセンスは、[実施例12]の共融混合物を含むエッセンスを50℃で6週間(厳しい条件)保管した後のエッセンス(共融混合物の解離物含む)に比べて約20%以上高い角質剥離効果が現れた。
【0180】
前記表28および表29から明らかなように、共融混合物が含まれたエッセンスと共融混合物の解離物が含まれたエッセンスの融点および角質剥離効果を比較してみると、共融混合物の解離物は、単純混合物が含まれたエッセンスと類似した融点および角質剥離効果が現れることを確認できた。すなわち、前記結果を通じて、共融混合物の解離の有無を確認できることを立証した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3(A)】
図3(B)】
図4a
図4b
図5(A)】
図5(B)】
図5(C)】
図6
図7
図8
図9
図10