(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ポリエステル製輸送用カーペットおよびポリエステル製輸送用カーペットの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 27/02 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A47G27/02 101C
A47G27/02 102
(21)【出願番号】P 2022522263
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2020079237
(87)【国際公開番号】W WO2021074394
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-27
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】522148112
【氏名又は名称】ドゥ ポルテール デコ エスアー
【氏名又は名称原語表記】DE POORTERE DECO SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】ベール スクリエ
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0233040(US,A1)
【文献】特開2010-233764(JP,A)
【文献】特開2002-069829(JP,A)
【文献】国際公開第2012/076348(WO,A2)
【文献】特開2005-152159(JP,A)
【文献】特表2018-503531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送手段の内部で使用するための難燃性カーペットであって、
- 使用面としての表側と裏側とからなる最大重量650g/m
2の機械的に織られた布地であって、本質的に100%熱可塑性難燃ポリエステルの経糸および緯糸からなるものと、
- 本質的に100%熱可塑性難燃ポリエステルの最大重量220g/m
2のニードルフェルトと、
- ニードルフェルトと機械的に織られた布地の間の最大重量180g/m
2の中間層と、
を含むカーペットであり、
機械的に織られた布地の裏側の経糸の一部が、少なくとも部分的に互いに融合していることを特徴とする、
カーペット。
【請求項2】
経糸および緯糸の糸番手が1100dtexから4400dtexであることを特徴とする、請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
布地1cm当たりの経糸の本数が8から30本であることを特徴とする、請求項1または2記載のカーペット。
【請求項4】
布地1cm当たりの緯糸の本数が3から10本であることを特徴とする
、請求項1から3のいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項5】
カーペットの重量が最大950g/m
2であることを特徴とする
、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項6】
機械的に織られた布地とニードルフェルトとが、中間層の助けを借りて互いにラミネートされていることを特徴とする
、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項7】
中間層が熱可塑性難燃ポリエステル接着剤を含むことを特徴とする
、請求項1から6のいずれかに記載のカーペット。
【請求項8】
機械的に織られた布地の緯糸の一部が、経糸の一部と少なくとも部分的に融合していることを特徴とする
、請求項1から7のいずれかに記載のカーペット。
【請求項9】
輸送手段の内装に使用するための難燃性カーペットの製造方法であって、
- 使用面としての表側と裏側とからなり、本質的に100%熱可塑性難燃ポリエステルの経糸および緯糸からなる、最大重量650g/m
2の布地を機械的に織ることと、
- 実質的に100%熱可塑性難燃ポリエステルの最大重量220g/m
2のニードルフェルトを製造することと、
- 中間層によって、最大重量180g/m
2のニードルフェルトを布地にラミネートすることと、
を含む方法であり、
この方法が、ラミネーションの前に、機械的に織られた布地の裏側の経糸の一部を少なくとも部分的に一緒に溶融するために、布地の裏側を加熱面に沿って導くステップをさらに含むことを特徴とする、
方法。
【請求項10】
ラミネーションが、中間層の接着剤として熱可塑性難燃ポリエステルを使用することを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ラミネーションが、中間層で熱可逆的な共有結合相互作用を形成するために反応性分子を使用することを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
機械的に織られた布地の裏側の緯糸の一部を経糸の一部と少なくとも部分的に溶融するために、布地の裏側を加熱面に沿って導く、ラミネーションの前の追加ステップを含むことを特徴とする、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から
8いずれかに記載のカーペットの製造方法であって、請求項9から12のいずれかに記載の方法を用いる製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送手段、好ましくは航空機の内装に使用するのに適した難燃性カーペットに関するものである。
【0002】
第2の態様において、本発明は、また、輸送手段、好ましくは航空機の内装に適した難燃性カーペットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
カーペットは、航空機だけでなく、列車または船舶などの他のあらゆる輸送手段の内装の通常装備の一部である。床に加えて、航空機の内壁の一部にも、カーペットが敷かれていることが多い。航空機内のカーペットは、非常に厳しい条件が課される。特に、航空機内のカーペットは、難燃性でなければならず、火災の際に発生する有毒なガスおよび蒸気の量は、厳しい条件を超えてはならない。一般的には、それに対応する規格が法的に求められている。特に旅客機の場合、カーペットは、有毒なガスおよび蒸気の発生に関するABD 0031、燃焼性に関するFAR 25.853、繊維およびラミネート床材の静電気発生傾向に関するISO 6356などの規格を満たしたものしか使用することができない。
【0004】
これらの厳しい基準に加え、航空会社は、機内のカーペットに耐摩耗性および耐傷性を期待している。毎日、多くの乗客がカーペットの上を歩いたり、台車を持って転がしたりしている。これはカーペットが耐えなければならない重荷である。そのため、機内のマットは、定期的に交換される。
【0005】
また、航空機の燃料消費を抑えるために、単位面積あたりの重量が軽いことも求められる。航空機の中には、何平方メートルものカーペットがある。カーペットの単位面積当たりの重量を低減することは、航空会社にとって毎年大きな節約につながる。
【0006】
このような発明品が、特に、WO 2007/112608から知られており、この中で、航空機の内装のための難燃性カーペットが記載されている。このカーペットは、織物製の最上層と、最下層としてのニードルフェルトと、2つの層を一緒にラミネートするための中間層とからなる。このカーペットは、単位面積当たりの重量が軽いカーペットであり、ベルクロ(登録商標)ストリップを使用して航空機に迅速に設置することができる。
【0007】
また、WO 2015/014335の発明品も知られている。WO 2015/014335は、特に航空機の内装に使用するための繊維製床材に関するものである。このカーペットは、パイル布地、滑らかな布地またはタフテッドカーペットであってもよい上層と、下層としてのニードルフェルトと、2つの層を一緒にラミネートするための中間層とから構成されている。ニードルフェルトの下には、アクリルラテックスが塗布されている。このアクリルラテックス層は、カーペットの滑りを防止するため、ベルクロ、接着剤または両面テープなどを使用せずに航空機に設置することができるようにする。
【0008】
特開2000-308604号公報には、ダストコントロールカーペット用の基布が記載されている。
【0009】
特開2000-282347号公報には、パイルカーペットが記載されている。
【0010】
特開2005-152159号公報には、織物製カーペットが記載されている。
【0011】
WO 2005/113229は、ビニル床材とソフトパッド付きカーペットとのハイブリッドについて記載している。
【0012】
EP 3 192 906は、可溶性糸を用いた耐ほつれ性カーペットを記載している。
【0013】
WO 2012/076348は、繊維製品の製造方法および得られた繊維製品を記載している。
【0014】
EP 3 196 344には、天然糸を用いた耐ほつれ性カーペットが記載されている。
【0015】
WO 2007/112608は、最上層が軽量の布であるという欠点を有する。その結果、布地自体は、毎日の乗客および台車の重荷に対して十分な耐性を持たず、十分な寸法安定性を有していない。この布地は、布地とニードルフェルトとの間に中間層としてポリアクリレート系接着剤を塗布することで、補強されている。接着剤は、布地とニードルフェルトとをラミネートするだけでなく、伸びた経糸および緯糸の接続も一緒に維持する。そのため、接着剤の一部が経糸および緯糸と混ざり合う必要がある。中間層は、カーペットの重量を増加させる。また、中間層があると、布糸とニードルフェルトとを、中間層からほとんど分離できないため、カーペットのリサイクルが困難となる。これは、航空機のカーペットの頻繁な交換を考慮すると、大きな欠点である。
WO 2015/014335も同様の欠点がある。タフテッドカーペットまたはパイル布地を使用する場合、最上層自体の強度は、より高く、寸法安定性もより高いが、いずれも平滑な布地に比べて重くなり、その結果、不利になり得る。また、タフテッドカーペットまたはパイル布地は、台車を転がすのに不向きで、摩耗しやすいという欠点がある。滑らかな布地を使用する場合、経糸と緯糸との接続部を一緒に増やしておくことが再び必要である。WO 2015/014335では、融着ラミネーションでトップ層とニードルフェルトとを接着し、同時に経糸と緯糸を一緒に保つようにしている。これは、再び重量の増加につながり、これにより、トップ層とニードルフェルトとをリサイクルすることが困難になる。
【0016】
本発明は、これらの欠点を解決する手段を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0017】
第1の態様において、本発明は、請求項1による方案に関するものである。
【0018】
このようなカーペットの利点は、機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地の裏側の経糸の一部が、少なくとも部分的に互いに融合していることである。従って、布地自体は、既にかなりの強度を有し、寸法安定性も良好である。乗客および台車の荷重ですぐに破れてしまうようなことはない。経糸および緯糸も、互いの動きの自由度が限られているため、耐摩耗性が高くなる。
【0019】
布地はすでに融着によって補強されているので、布地を補強し、布地とニードルフェルトとをラミネートするために重い中間層を使用する必要はないのである。より軽い中間層を用いて、布地とニードルフェルトとのみをラミネートすることができる。これは、カーペットの単位面積あたりの重量を減らすことにつながる。接着剤を経糸および緯糸と部分的に混ぜる必要がないため、布地とニードルフェルトとを分離してリサイクルすることが容易になる。
【0020】
また、本発明では、布地とニードルフェルトとの両方に熱可塑性難燃ポリエステル(PES)を100%使用している。その結果、カーペットは、例えば、有毒なガスおよび蒸気の発生に関するABD 0031および、可燃性に関するFAR 25.853などの要求基準を満たす。さらなる利点は、難燃性ポリエステル(PES)のみを使用しているため、布地とニードルフェルトとのリサイクルが同時に行われることである。
【0021】
本方案の好ましい実施形態は、請求項2から9に記載されている。
【0022】
具体的な実施形態において、本発明は、請求項7に記載の方案に関するものである。中間層では、布地とニードルフェルトとをラミネートするための接着剤としてもPESが使用される。これは、リサイクルをさらに改善する。今ではもう、布地とニードルフェルトとを分離する必要さえない。中間層は、布地とニードルフェルトと一緒に加工してリサイクルすることさえも可能である。
【0023】
第2の態様において、本発明は、請求項10に記載の方法に関するものである。布地とニードルフェルトとをラミネートする前に、布地を加熱面に沿って導き、相互に機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地の裏側における経糸の一部を少なくとも部分的に溶融するので、前記方法は、特に、十分に強度があり寸法安定性を有する布地を得ることができるという利点を有する。布地は、軽い中間層でニードルフェルトにラミネートすることができ、布地およびニードルフェルトは、後に行うリサイクルのために容易に分離することができる。
【0024】
本方案の好ましい実施形態は、従属請求項11から13に記載されている。
【0025】
第3の態様において、本発明は、第2の態様による方法を用いた、第1の態様によるカーペットの製造方法に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の断面を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による布地とニードルフェルトとの間の結合の分子モデルを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の方法の一実施形態による経糸の一部を互いに少なくとも部分的に融合させるのに適した装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
特に断らない限り、技術用語および科学用語を含む本発明の説明で使用されるすべての用語は、本発明の技術分野の当業者によって一般的に理解される意味で使用される。本発明の説明の判断をより良くするために、以下の用語について明示的に説明する。
【0028】
「A」、「one」および「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、本書において単数および複数の両方を指す。「セグメント(A segment)」は、例えば、1つまたは複数のセグメントを意味する。
【0029】
本書において「約(about)」または「約(approximately)」が使用される場合、測定可能な量、パラメータ、時間または瞬間などは、そのような変動が上記発明に適用される限り、引用値の±20%以下、好ましくは±10%以下、より好ましくは±5%以下、さらに好ましくは±1%以下、よりさらに好ましくは±0.1%以下の変動を意味する。ただし、「約(about)」または「約(approximately)」という用語が使用されている量の値自体は、具体的に表現されていなければならない。
【0030】
用語「含む(comprise)」、「含む(contain)」、「含む(include)」、「からなる(composed of)」、「備える(provided for)」、「含む(comprising)」、「含む(containing)」、「含む(including)」は、同義語であり、その前の文言の存在を示す包括的または開放的な用語であり、先行技術で公知であるか、または、記載されている他の成分、特徴、要素、部材、位相を除外または排除することはない。
【0031】
端点による数値間隔の引用は、これらの端点を含む、端点間のすべての整数、分数および/または実数を含む。
【0032】
「熱可塑性」という用語は、特定の温度を超える温度で曲げること、練ること、または液状化することができ、冷却後に実質的に硬化する高分子材料を指す。熱可塑性ポリマーの例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、他のビニルおよびビニリデン樹脂、並びにそれらの共重合体等のビニルを含む熱可塑性プラスチック;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよびそれらの共重合体などのポリエチレン化合物;ABS、SAN、ポリスチレンおよびその共重合体等のスチレン化合物、ポリプロピレンおよびその共重合体;飽和および不飽和ポリエステル;アクリル;ポリアミド;アセチル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、硫化樹脂およびその他の樹脂などのエンジニアリングプラスチックスなどがあるが、それらに限られない。
【0033】
「浮き」という用語は、布地の表面に現れる糸の部分を指す。浮きは、上浮きおよび/または下浮きであってもよい。「上浮き」という用語は、布地の上部に現れる糸の部分を指す。上浮きは、経糸:緯糸の結合密度が2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1以上の結合パターンで形成されている。これは、各緯糸が少なくとも2本の経糸の上、少なくとも3本の経糸の上などに浮いていることを意味する。あるいは、各経糸は、少なくとも2本の緯糸の上、少なくとも3本の緯糸の上などに浮いている。「底浮き」という用語は、布地の下に現れる糸の部分を指す。底浮きは、経糸:緯糸の結合密度が1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10以下の結合パターンで形成されている。これは、各緯糸が少なくとも2本の経糸の下、少なくとも3本の経糸の下などに浮いていることを意味する。あるいは、各経糸は、少なくとも2本の緯糸の下、少なくとも3本の緯糸の下などに浮いている。「結合」という用語は、布地を形成するために緯糸を経糸で織ることを指すのに使用される。
【0034】
「緯糸浮き」という用語は、緯糸によって形成される浮きを指す。「経糸浮き」という用語は、経糸によって形成される浮きを指す。
【0035】
糸番手とは、糸の太さのことである。測定値は、一本の糸の重量と長さとの比率で表示される。重量表示では、一定長さの糸の重量を求める。長さ表示では、一定の重さの糸の長さを求める。重量表示の例としてtexがあり、texは、1000mの糸の重量をグラムで表す。Dtxは、より頻繁に使用され、これは10,000mの糸のグラム数での重量を表す。重量表示の他の例としては、デニールであり、これは、denと表記され、9000mの糸のグラムでの重量が示される。フィラメントからなる糸の場合、デニールという重量表示もフィラメントに対して使用される。ラストパーフィラメントまたはDPFは、糸中の1本のフィラメントの重量番号を意味する。
【0036】
第1の態様において、本発明は、輸送手段、特に航空機の内部で使用するのに適した難燃性カーペットに関するものである。
【0037】
一実施形態によれば、本方案は、使用面としての表側と裏側とからなり、本質的に100%の熱可塑性難燃ポリエステル(PES)の縦糸および横糸を含み、最大650g/m2の重量の機械(machine)で織られたまたは機械的(mechanically)に織られた布地と、本質的に100%の熱可塑性難燃ポリエステル(PES)からなる最大220g/m2の重量のニードルフェルトと、ニードルフェルトと機械(machine)で織られたまたは機械的(mechanically)に織られた布地との間の最大180g/m2の重量の中間層とから構成され、機械(machine)で織られたまたは機械的(mechanically)に織られた布地の裏側の経糸の一部が少なくとも部分的に互いに融合している。
【0038】
この布地は、表側と裏側とから構成されている。表側は、乗客が台車および荷物を持って歩いたり、台車および荷物を転がしたりする使用面である。設置後は、カーペットの目に見える部分となる。
【0039】
布地は、タフテッドカーペットと比較して、布地またはニードルフェルトなどのベースが不要であり、それによってパイル糸を貫通させるという利点を持っている。布地は、ベースがない分、タフテッドカーペットに比べて軽量化することができる。また、タフテッドマットは、ロングパイルであることが多いため、台車およびスーツケースを転がすことが困難である。さらに、そのようなロングパイルマットは、より早く磨耗する。
【0040】
布地は、好ましくは滑らかであるべきである。パイル地は、台車およびスーツケースを使用する際に、ロングパイルタフトカーペットと同じ欠点がある。パイル地は、より早く磨耗する。パイル地の第二の欠点は、パイルを形成するのに使われるパイル糸に加えて、パイルを束ねるための追加の糸も経糸に含まれていることである。その結果、布地は、滑らかな布地と比較して重くなる。
【0041】
布地は、好ましくは、滑らかな結合を有する。滑らかな結合では、各緯糸は、経糸の上と下に交互に延び、各経糸は、緯糸の上と下に交互に延びる。これがあり得る最もシンプルで強固な結合である。乗客および台車による日々の重い負荷が、経糸と緯糸とを引き離し、寸法安定性を低下させ得る。これに対抗するためには、強力な結合が有利である。また、強靭な結合は、乗客および台車の負荷の影響で、経糸および緯糸が互いに動きにくくなるため、糸同士の摩擦が少なくなり、摩耗が少なくなる。これは、例えば乗客の靴および台車の車輪との摩擦によるワイヤの摩耗には影響しない。
【0042】
別の実施形態では、布地における結合は、緯糸である。各緯糸は、並置された2本の経糸の上と下に交互に延び、各経糸は緯糸の上と下に交互に延びている。このため、滑らかな結合とは異なる視覚効果が得られる。緯糸は、緯糸ループの中で並置された2本の経糸の上または下を走るのみなので、これは依然として強力な結合である。
【0043】
布地は、好ましくは、上部および下部の両方の限られた数の浮きを有する。浮きを異なる色の糸と組み合わせて使用することで、布地に模様、紋章、または表示などを織り込むことができる。浮きを使用することの欠点は、滑らかな結合からの逸脱を導入し、これにより布地の結合が局所的に弱くなることである。浮きは、好ましくは7:1以下かつ1:7以上の結合密度を有し、より好ましくは5:1以下かつ1:5以上の結合密度を有し、さらに好ましくは2:1以下かつ1:2以上の結合密度を有する。
【0044】
一実施形態では、布地は、ジャカード織である。ジャカード織は、織機で枠を使って織ることができない複雑な模様および/または紋章からなる。枠付き織物とは、一つの枠に通される全ての経糸が、織物中の各緯糸に、全て片側に位置するか、全て緯糸の反対側に位置することを意味する。ジャカード織は、ジャカード織機を使って織られる。ジャカードでは、個々の経糸が他の経糸の位置とは無関係に、緯糸の片側または反対側に位置することができる。
【0045】
布地は、実質的に100%熱可塑性難燃ポリエステル(PES)の経糸と緯糸とで構成されている。PESは、非常に強く、剛性があり、寸法安定性がよく、クリープが少ない。そのため、高荷重下での使用に適している。この糸は、カビおよびバクテリアに侵されることがない。航空機内では液体および食べ物がこぼれることがあり、これによってカビおよびバクテリアが発生し得るので、この点は有利である。PESは、液体をほとんど吸収しない。酸、酸化剤、および希釈したアルカリ性洗剤にもよく耐える。蒸気による殺菌も可能である。これらの特性により、布地は、効率的で迅速なクリーニングに適しており、これは、航空機内のカーペットにも有利である。
【0046】
難燃性PESは、耐熱性に優れている。難燃性PESは、燃えにくく、炎を消すことができるので、煙の発生も少ない。これらの特性により、有毒なガスおよび蒸気の発生に関するABD 0031および可燃性に関するFAR 25.853に準拠することが可能である。
【0047】
また、このカーペットには、実質的に100%熱可塑性難燃ポリエステル(PES)のニードルフェルトが含まれている。したがって、ニードルフェルトは、有毒なガスおよび蒸気の発生に関するABD 0031規格と、可燃性に関するFAR 25.853規格とに適合している。ニードルフェルトは、不織布の一種である。ニードルフェルトは、0.5mmから4mm、好ましくは0.5mmから3mm、より好ましくは0.5mmから2mm、さらに好ましくは0.5mmから1mmの厚さを有している。
【0048】
ニードルフェルトは、中間層の助けを借りて布地の裏側に取り付けられる。ニードルフェルトは、布地を機械的に補強するのに好適である。カーペットの鋭角部に剛性を与え、カーペットに高い寸法安定性を与え、カーペット上での歩行快適性を高め、遮音性を向上させ、ひいては航空機内の音響を改善するのに適している。
【0049】
ニードルフェルトは、不織布であるため、カーペットは、航空機内への迅速な設置および交換に適している。カーペットは、ベルクロストリップで航空機の床に固定される。ベルクロストリップは、航空機の床に接着される。ベルクロストリップのフックをニードルフェルトの糸に引っ掛けることで、カーペットが固定される。カーペットをベルクロストリップから引き剥がすことで、簡単にカーペットを取り外すことができる。ベルクロストリップは、再利用可能であり、航空機の床に付着したままである。本発明による新規のカーペットは、この新規のカーペットが固定されるように、既存のベルクロストリップに新しいカーペットを付着させることによって、容易に設置することができる。
【0050】
ベルクロテープは、難燃性材料で作られており、可燃性に関するFAR 25.853 (a)(1)(ii)基準に適合している。適切な材料の非限定的な利点は、ポリアミドPA6である。重量は、好ましくは0.60kg/m2未満、より好ましくは0.55kg/m2未満、さらに好ましくは0.45kg/m2未満である。ベルクロストリップは、ストリップの一方の側に、糸を引っ掛けるように構成されたフック、および反対の側に、接着剤を含んでいる。接着剤は、アルミニウムに対して少なくとも10.0N/cm、好ましくはアルミニウムに対して少なくとも12.0N/cm、さらに好ましくはアルミニウムに対して少なくとも13.0N/cmの接着強度を有している。カーペットをベルクロテープのフックから引き剥がすのに必要な力は、少なくとも0.60N/cm、好ましくは少なくとも0.70N/cm、さらに好ましくは少なくとも0.80N/cmである。ベルクロテープの剪断力は、少なくとも20N/cm2、好ましくは少なくとも25N/cm2、さらに好ましくは少なくとも29N/cm2である。ループ張力は、少なくとも5N/cm2、好ましくは少なくとも7N/cm2、さらに好ましくは少なくとも8N/cm2である。好適なベルクロテープの非限定的な例は、ベルクロ社のHTH 577である。
【0051】
布地は、最大650g/m2の重量を有する。ニードルフェルトは、最大220g/m2の重量を有する。中間層の重量は、最大180g/m2である。したがって、カーペットの総重量は、最大1050g/m2となる。標準的なカーペットは、2000g/m2、さらには3000g/m2までの重量を持つことができる。このため、本発明によるカーペットは、重量の減少が燃料消費量の減少につながる航空機への適用に特に適している。
【0052】
機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地の経糸の一部は、裏側で少なくとも部分的に一緒に溶融している。経糸は、並置された経糸の長さの少なくとも10%超、より好ましくはその長さの少なくとも20%超、さらに好ましくは少なくとも30%超、さらにより好ましくは少なくとも50%超にわたって溶融していることが望ましい。経糸の一部が互いに融着しているため、経糸は、限られた範囲で互いに相対的に移動可能である。これにより、寸法安定性が増し、糸同士の摩擦が減少し、摩耗が少なくなる。これにより、布地およびカーペットが強化される。現時点での技術水準に従ったカーペットの場合、布地の結び目に付着する接着剤または融合コーティングの層を用いることによって、布地を補強する。その後、接着剤または融合コーティングは、布地の糸の間に浸透しなければならないので、布地をニードルフェルトに単に付着させるよりも多くの接着剤または融合コーティングが必要とされる。したがって、本発明によるカーペットの場合、技術水準と比較して、さらなる重量減少がある。さらなる利点は、接着剤または融合コーティングが糸の間に浸透する必要がないので、布地の糸およびニードルフェルトをリサイクルすることがより容易であることである。
【0053】
一実施形態によれば、経糸および緯糸の糸番手は、1100dtexから4400dtexである。
【0054】
糸番手が高いことは、より重く、より太い糸であることを意味する。高い糸番手は、寸法安定性が高く、重くて丈夫な布地であることを示す。低い糸番手は、軽くて柔らかい布地であることを示す。輸送用カーペットは、軽くて丈夫で、乗客および台車などの日常的な負荷に耐えられる形状であることが望ましい。糸番手は、1100dtexから4400dtex、好ましくは1500dtexから3700dtex、さらに好ましくは1800dtexから3100dtexが輸送用カーペットに適している。そうすると、ベルトは、十分な軽さと強度とを有する。
【0055】
緯糸および経糸は、フィラメントからなる。軽量な布地を得るためには、軽量なフィラメントが必要である。フィラメントは、2DPFから20DPF、好ましくは2DPFから15DPF、より好ましくは2DPFから10DPF、さらに好ましくは2DPFから5DPFの重量番号を有する。
【0056】
別の実施形態では、十分な寸法安定性を得るために、布地をより強くすることが必要である。この場合、わずかに強いフィラメントが必要である。フィラメントは、2DPFから20DPF、好ましくは5DPFから20DPF、より好ましくは8DPFから20DPF、更に好ましくは10DPFから20DPFの重量番号を有する。
【0057】
一実施形態によれば、緯糸および経糸は、いわゆる連続フィラメント糸であり、糸は、連続フィラメントからなる。
【0058】
一実施形態によれば、緯糸および経糸は、いわゆる連続フィラメント糸であり、糸は連続フィラメントからなり、糸の風合いは、空気噴射によって修正され、その中に小さなループが形成される。これにより、更なる断熱性と強度とが得られる。
【0059】
一実施形態では、布地1cmあたりの経糸の本数は8から30本である。
【0060】
また、布地1cmあたりの経糸の本数で布地の密度が決まる。密度がより高い布地は、強度がより高く、寸法安定性もより高いが、その分より重くなる。布地1cmあたりの経糸の本数がより少ないと、より軽くてより柔らかい布になるが、強度がより弱く、寸法安定性がより低くなる。布地1cmあたりの経糸の本数は、8から30本、好ましくは13から25本、さらに好ましくは15から20本である。そうすると、カーペットは、十分に軽くて丈夫なものとなる。
【0061】
一実施形態では、布地1cm当たりの緯糸の本数は、3から10本である。
【0062】
布地1cmあたりの緯糸の本数は、布地の密度も決定する。密度がより高い布地は、より強く、より寸法安定性が高いが、より重くなる。布地1cmあたりの緯糸数がより少ない場合、布地はより軽く、より柔らかくなるが、強度がより弱く、より寸法安定性が低くなる。布地1cm当たりの緯糸数は、3から10本、好ましくは3から8本、さらに好ましくは3から7本である。そうすると、カーペットは、十分に軽くて丈夫なものとなる。
【0063】
一実施形態において、カーペットの単位面積当たりの重量は、最大950g/m2である。
【0064】
カーペットの重量は、布地、中間層およびニードルフェルトの重量によって決定される。カーペットの重量は、布地、中間層およびニードルフェルトを慎重に選択することによって最適化することができる。より重い布地は、本質的により強く、寸法安定性を高めるためには、より薄いニードルフェルトが必要である。機械的に織られた布地の経糸の一部は、少なくとも部分的に裏側で互いに融着しているので、中間層は最小である。中間層は、布地とニードルフェルトとのつなぎ目である。より軽い布地は、寸法安定性をよくするために、少し厚めのニードルフェルトが必要である。中間層は、常に最小限でよい。糸番手、布地1cm当たりの経糸の数および布地1cm当たりの緯糸の数によって決まる布地の厚さの良い選択と、適切なニードルフェルトとによって、カーペットの重量は、最大950g/cm2、好ましくは最大925g/cm2、さらに好ましくは最大900g/cm2、さらにより好ましくは875g/cm2である。
【0065】
一実施形態では、機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地とニードルフェルトとは、中間層の助けによって互いにラミネートされる。
【0066】
機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地とニードルフェルトとは、互いに接着される。ニードルフェルトが布地に接着しているため、ニードルフェルトによって寸法安定性が提供され、布地が強化される。布地およびニードルフェルトは、中間層の助けによって互いにラミネートされる。
【0067】
一実施形態では、中間層は、PES接着剤を含む。
【0068】
接着剤としてのPESの使用により、輸送用カーペットは、容易にリサイクルすることができる。布地、ニードルフェルトおよび中間層の接着剤は、いずれもPESを含むので、カーペット全体を一緒にリサイクルすることができる。布地とニードルフェルトとを分離する必要がない。PES接着剤は、例えば、PES融着接着フィルム、PES融着粉末または他の適切な手段である。
【0069】
一実施形態では、カーペットは、層間において熱可逆的な共有結合相互作用を形成するための反応性分子を含む。
【0070】
このようにして、カーペットを加熱することにより、共有結合相互作用を逆転させることができる。これにより、カーペットの簡易的なリサイクルに寄与する。反応性分子間の反応を逆転させることで、布地とニードルフェルトとを結合している中間層の元の結合構造が、より小さな分子に分解される。これらの小分子は、従来の接着剤または融着塗料よりも簡単に布地およびニードルフェルトから取り除くことができる。例えば、残った小分子を弱溶剤に溶かし、溶剤からこれらの分子を回収することが可能である。もう一つの可能性は、例えば、分子を布地および/またはニードルフェルトのフィラメントの糸と混合することによって、布地および/またはニードルフェルトとともに分子をリサイクルすることである。
【0071】
熱可逆的な共有結合反応は、化学ではすでに知られている。非網羅的に例を挙げると、マイケル反応、ニトロソ二量化反応、エステル化合物が合成される環状無水物反応、ウレタン生成反応、脂肪族イオン生成反応、フェノール-アズラクトン付加体生成反応などが挙げられる。
【0072】
別の実施形態によれば、共役ジエン基からなる第1の分子と、ジエノフィル基からなる第2の分子との間の反応である。このような共役ジエン基とジエノフィル基との間の反応は、ディールス-アルダー反応と呼ばれる。ディールス-アルダー反応の利点は、比較的低温で熱可逆性が生じることである。このため、布地およびニードルフェルトに物理的および化学的なダメージを与えることを防ぐことができる。
【0073】
共役ジエンは、1つの単化合物で分離した2つの水素-水素二重化合物を含む分子構造を持つ非環状水素である。共役ジエン基は、炭素および水素以外の原子からなる分子の一部であってもよい。ジエノフィルは、アルケンとジエンとの反応によるアルケン成分(炭素の二重化合物)である。ジエノフィル基は、炭素および水素以外の原子を含む分子の一部であり得る。
【0074】
別の実施形態によれば、ジエン基は、フラン(フルフリルなど)、アントラセン、チオフェン、またはピロールである。ジエノフィル基は、マレイミド、フマラート、マレアート、またはアルキレンである。これらの基は、本発明で使用するのに適している。明らかに、この実施形態は、他のジエン基および/またはジエノフィル基の使用を排除するものではない。
【0075】
一実施形態では、機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地の裏側の緯糸の一部は、経糸の一部と少なくとも部分的に合体している。
【0076】
緯糸の一部が経糸と合体しているため、緯糸および経糸は、限られた範囲で互いに相対的に移動することができる。そのため、緯糸と経糸との一部の節は固定されている。これにより、寸法安定性が増し、糸同士の摩擦が減り、摩耗が少なくなる。これにより、布地およびカーペットが強化される。現時点での技術水準に従ったカーペットの場合、布地は、布地の結び目に付着する接着剤または融合コーティングの層を用いることによって補強される。その後、接着剤または融合コーティングは、布地の糸の間に浸透しなければならないので、布地をニードルフェルトに単に付着させるよりも多くの接着剤または融合コーティングが必要とされる。本発明によるカーペットの場合、したがって、現時点での技術水準と比較して、さらなる重量減少がある。さらなる利点は、接着剤または融合コーティングが糸の間に浸透する必要がないため、布地の糸およびニードルフェルトをリサイクルすることがより容易であることである。
【0077】
第2の態様において、本発明は、輸送手段、特に航空機の内装に適した難燃性カーペットを製造するための方法に関するものである。
【0078】
一実施形態によれば、この方法は、実質的に100%の熱可塑性難燃ポリエステル(PES)の経糸および緯糸からなる、使用面としての表側および裏側を含む布地を機械織するステップと、実質的に100%の熱可塑性難燃ポリエステル(PES)のニードルフェルトを作るステップと、ニードルフェルトを中間層の助けを借りて布地にラミネートするステップとを含み、この方法は、ラミネートの前に、布地の裏側を加熱表面に沿って導き、機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地の裏側の経糸の一部を少なくとも部分的に溶融させる追加のステップを含む。
【0079】
布地は、好ましくは、最大重量が650g/m2である。ニードルフェルトは、最大重量が220g/m2である。中間層は、最大重量が180g/m2である。
【0080】
織機を使用した織物の機械織り(machine weaving)または機械的な織り(mechanical weaving)は、当該技術分野において知られている。
【0081】
フィラメントからニードルフェルトを形成することは、当該技術分野において既知である。これは、連続的な方法と不連続的な方法との2つの方法で行うことができる。連続的な方法の場合、フィラメントは、粒からの押し出しによって中断されないプロセスで直接形成され、ニードルフェルトが形成され、フィラメントがニードルフェルトに結合される。不連続的な方法の場合、フィラメント糸は、スプールからニードルフェルト機に供給される。そこで、フィラメント糸を開繊し、所望の形状のニードルフェルトに成形し、その後、結束する。好ましくは、フィラメントをニードルフェルトに結合するために、機械的な方法が使用される。例えば、バーブを有する針でニードルフェルトをニードリングする方法が挙げられる。ニードリングにより、フィラメントは、混合されるが、フィラメントの端またはループの緩みも多く残り、航空機の床に貼り付ける際にベルクロテープのフックに引っかかる可能性がある。ニードルフェルトの化学的補強は、ニードルフェルトのリサイクルに影響を与える可能性があるため、あまり好まれない。ニードルフェルトを熱で補強すると、ベルクロテープのフックに引っかかるループまたは緩いフィラメントエンドの数を減らすことができる。
【0082】
ニードルフェルトは、布地にラミネートされる。ラミネートの段階では、加熱面を介して布地の裏側を導き、経糸の一部を少なくとも部分的に互いに溶かす。布地は、一連の支持ローラを介して導かれる。2つの支持ローラの間には、加熱面がある。加熱面は、布地の裏側に押しつけられる。加熱面は、布地の裏側に対してより多く、またはより少なく押し付けることができるように、調節可能であることが好ましい。ここでいう裏側とは、布地の一側面のことであり、布地に対する加熱面の位置のことではない。加熱面は、水平または垂直に、上、下、左または右に、布地の前または下に位置させることができる。加熱面が布地の裏側を押すように、支持ローラの配置および布の向きをどのように適合させなければならないかは、当業者には明らかである。
【0083】
一実施形態では、加熱面は、ホットプレート、ホットローラ、先端を有する金属シート、別の適切な表面、または上記の組み合わせである。
【0084】
布地は、加熱面を介してその裏側が導かれるため、経糸の一部は少なくとも部分的に互いに溶融する。加熱面を経糸に対してより多くまたはより少なく押し付けることによって、経糸の溶融の程度を変えることができる。他の影響するパラメータは、加熱面の温度と、布地が加熱体を通して導かれる速度と、である。
【0085】
布地は、経糸の一部が融着した所望の程度に応じて、1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多くの加熱体を介して方向付けることができる。
【0086】
一実施形態では、布地の他方の側で、加熱体に面して、追加の支持ローラを配置することができる。この支持ローラは、加熱体が布地の裏側を押している間、布地を支持する。加熱体に対向する支持ローラを用いることにより、布地が破れることなく、加熱面を布地に対してより強く押し付けることができる。
【0087】
一実施形態において、ラミネートは、中間層の接着剤としてPESを使用することからなる。
【0088】
一実施形態では、ラミネートの際に、PES溶融接着フィルムが使用される。布地は第1のロールから、PES融着自己接着フィルムは第2のロールから、ニードルフェルトは第3のロールから巻き出される。布地、自己接着フィルム、およびニードルフェルトを、自己接着フィルムが布地とニードルフェルトとの裏側に接するように接合する。全体を加熱し、PES溶融接着フィルムに粘着性を持たせ、2本のローラで挟み込む。冷却後、布地およびニードルフェルトは、自己接着フィルムで接合される。自己接着性フィルムは、中間層を形成する。
【0089】
一実施形態では、ラミネーションの際にPES溶融粉末が使用される。布地は第1のロールから、ニードルフェルトは第2のロールから巻き出される。PES溶融粉末は、布地の裏側またはニードルフェルトの片側のいずれか、または布地の裏側とニードルフェルトの片側の至る所に、適切なディスペンサーによって吐出される。布地とニードルフェルトとを接合し、布地の裏側がニードルフェルトに面し、PES溶融粉末が布地とニードルフェルトとの間にある状態にする。これを加熱してPES溶融粉末が粘着性を持つようにし、2本のローラで挟んで圧着させる。冷却後、布地とニードルフェルトとをPES溶融粉末で接合する。PES溶融粉末は、中間層を形成する。
【0090】
一実施形態において、ラミネーションは、中間層に熱可逆的な共有結合相互作用を形成するために反応性分子を使用することからなる。
【0091】
一実施形態によれば、反応性分子Aを含む組成物が、布地の裏側に塗布される。ニードルフェルトの面には、反応性分子Bからなる組成物が塗布される。布地およびニードルフェルトは、組み立てられ、布地の裏側とその上に組成物を有するニードルフェルトの面とが互いに接触し、分子AとBとが反応し、結果として熱可逆的共有結合相互作用を形成するような状況である。布地とニードルフェルトとを接続する薄い中間層が形成される。
【0092】
別の実施形態によれば、反応性分子Bを含む組成物が布地の裏側に塗布される。ニードルフェルトの片側にも、反応性分子Bを含む組成物が塗布される。布地およびニードルフェルトは組み立てられ、布地の裏側とニードルフェルトのその上に組成物がある面とは、互いに対して配向される。布地とニードルフェルトとの間に、反応性分子Aからなる薄い中間層が塗布される。分子Aと分子Bとが反応し、結果として熱可逆的な共有結合相互作用を形成するような状況である。薄い中間層は、布地とニードルフェルトとを接続する。
【0093】
一実施形態では、本方法は、機械で織られた(machine-woven)または機械織りされた(mechanically woven)布地の裏側で、または経糸の一部で、少なくとも部分的に緯糸の一部を溶かすために、布地の裏側を加熱された表面に沿って導く、ラミネーションの前のさらなるステップを含む。
【0094】
少なくとも1つの加熱面の温度を上げることによって、または布地を加熱面に沿って導く速度の結果として、または例えば加熱面を布地の裏側に押し付ける圧力の結果として、経糸の一部を少なくとも部分的に溶かすことが可能であるだけでなく、経糸に緯糸の一部を少なくとも部分的に溶かすことが可能である。これにより、緯糸と経糸とが互いに対して動きにくく、寸法安定性が向上し、相互摩擦、ひいては摩耗が低減された、さらにより強度の高い布地が提供される。
【0095】
第3の態様において、本発明は、第2の態様による方法を用いた、第1の態様によるカーペットの製造に関するものである。
【0096】
本発明によるカーペットは、航空機での使用のみならず、例えば列車および船舶のような、軽量であること、耐摩耗性が高いこと、およびほとんど燃焼しないことが求められる他の輸送手段での使用にも適していることは、当業者にとって明らかであろう。
【0097】
次に、本発明を、非限定的な実施例または図を参照してより詳細に説明する。
【0098】
(図の説明)
図1は、本発明の一実施形態の断面を示す。
【0099】
ポリエステル製の輸送用カーペットは、ニードルフェルト1を含み、このニードルフェルト1は、中間層2によって平滑な布地6にラミネートされている。中間層2は、PES接着剤または反応性分子からなり、熱可逆的な共有結合相互作用を形成する。平滑な布地6は、第1の経糸群3と第2の経糸群4とから構成されている。経糸3および4は、布地の長手方向に交互に並置されている。平滑な布地6は、緯糸5を含む。緯糸5は、経糸3および4の方向に対して横向きに存在する。第一の緯糸5は、経糸3の下方にあり、経糸4の上方にある。そして、次の緯糸5は、経糸3の上方で、経糸4の下方に位置する。このように布地を作り上げていく。その結果、結合は、フラットボンドとなる。2本の経糸3の群と2本の経糸4の群とを布地の長手方向に交互に並べると、同様の方法で緯糸の繰り返しが得られる。経糸3および4の一部は、平滑な布地6の裏側において、少なくとも部分的に互いに融着している。この様子を
図1に示す。好ましくは、経糸3、4の一部は、平滑な布地6の裏側において、緯糸5の一部と少なくとも部分的に融着している。
【0100】
図2は、本発明の一実施形態による布地とニードルフェルトとの間の結合の分子モデルを模式的に示す図である。
【0101】
反応性分子Bを含む組成物が、布地6の裏側およびニードルフェルト1の片面に塗布される。布地6の裏側とニードルフェルト1の反応性分子Bからなる組成物が塗布された面とを合わせ、これらの面の間に反応性分子Aを有する中間層を設ける。分子Aと分子Bとの間の反応が起こった後、布地6とニードルフェルト1との間に結合7が形成される。この結合7は、分子Aと分子Bとの間の共有結合の相互作用を利用するものである。
【0102】
図3は、本発明の方法の一実施形態による経糸の一部を少なくとも部分的に互いに融着させるのに適した装置を示す。
【0103】
布地50´は、支持ロール41および42を介して方向づけられる。その方向は、支持ローラ41から支持ローラ42の方向である。2つの支持ローラ41、42の間には、加熱面30がある。加熱面は、布地50´の裏側に対して点33で押し付ける。布地50´の裏側では、経糸の一部が少なくとも部分的に融け合っている。融けた経糸は、加熱面30の先端部33を介した動きによって、本質的に平らな表面に分配される。その後、それらは冷却され、布地50´よりも強く、寸法的により安定し、耐摩耗性のより高い布地50を形成する。
【0104】
加熱面30は、距離dにわたって移動させることが出来る。この距離dは、例えば、0mmから50mmである。距離dを0mmより大きくとることで、加熱面30の先端部33が布地の裏側に押し当てられる。必要な距離dは、経糸の一部の少なくとも部分的な溶融という所望の結果によって、加熱面30およびその先端部33の温度、布地50´が先端部33を介して導かれる速度、および布地50´自体と共に決定される。布地50´が大きな距離dに対して耐性がない場合、所望の結果を得るために、パラメータ速度、距離d、ならびに加熱面30およびその先端部33の温度の他のバリエーションが可能である。
【実施例】
【0105】
次に、本発明を、以下の実施例を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
【0106】
本実施例は、本発明によるポリエステル製の輸送用カーペット、より詳細には航空機用カーペットの一実施形態に関するものである。航空機用カーペットは、平滑な布地と、中間層と、ニードルフェルトとからなる。
【0107】
平滑な布地およびニードルフェルトの両方は、100%難燃性のPESからなる。中間層は、PES接着剤を含む。そのため、航空機用カーペットは、新しい航空機用カーペットに交換した後、簡単な方法で100%リサイクルすることができる。
【0108】
ニードルフェルトは不織布の一種である。HTH577タイプのベルクロストリップは、航空機の床に接着されている。ニードルフェルト中の多くの緩いフィラメントの端またはループが、ベルクロテープのフックに引っかかる。その結果、航空機のカーペットを素早く設置することができ、また素早く交換することができる。航空機用カーペットは、ベルクロストリップから引き剥がし、新しい航空機用カーペットをベルクロストリップに貼り付けるだけでよいのである。航空機の床から取り除く必要のある接着剤の残りがない。ニードルフェルトにも接着剤の残りがなく、リサイクルを容易にする。
【0109】
布地は、経糸および緯糸で構成され、その糸番手は、2200dtexである。この糸は、ISO 2062に基づく試験で、平均破断伸度30%、最低引張強度3g/denを有している。糸の平均沸騰収縮率は、ISO 12590によると、1.5%である。経糸は、布地1cmあたり17本、緯糸は、布地1cmあたり5本である。その結果、丈夫でありながら、軽い布地となる。布地の重量は、570g/m2に制限される。
【0110】
経糸および緯糸の一部は、布地の裏側で少なくとも部分的に互いに融合している。これにより、布地が強化され、寸法安定性が向上する。経糸および緯糸の相互の動きがより少ないため、経糸および緯糸の摩擦がより少なく、結果として乗客および台車を毎日乗せる際の摩耗および損傷も少なくなる。経糸および緯糸が少なくとも部分的に溶融する結果、布地はより強く、より大きな寸法安定性を有するので、経糸および緯糸の間の結び目を固定するために接着剤を使用する必要はない。したがって、接着剤からなる中間層は、より軽量である。中間層の重量は、130g/m2に制限される。
【0111】
ニードルフェルトは、航空機用カーペットに必要な寸法安定性を付与するのに適している。ニードルフェルトは、航空機用カーペット上での乗客の歩きやすさを向上させ、遮音性を高めるのに適している。経糸および緯糸の少なくとも一部が溶融することで布地の強度が増すため、布地は、既に一定の寸法安定性を有している。そのため、航空機用カーペットには、より薄いニードルフェルトを使用することが可能である。ニードルフェルトは、最大重量150g/m2を有する。したがって、カーペットの総重量は、850g/m2となる。
【0112】
航空機用カーペットは、燃焼性に関してFAR25.853に基づいて試験され、特にFAR25.853(A)-App.f Part I para (a)(1)(ii)航空機用材料の燃焼性測定に準拠して試験された。試験は、連邦試験法基準191、方法5903.2に基づき、ドラフトフリーのキャビネット内で行われた。75mm×305mmの航空機用カーペットサンプル3枚を、少なくとも843℃のブンゼンバーナー炎に60秒間さらした。サンプルは、ブンゼンバーナーの先端から20mm上方で、その長手方向に垂直に吊るした。ブンゼンバーナーの炎の高さは、バーナーの先端から測って40mmである。その後、航空機用カーペットは、縦横80mm未満の範囲で最大平均2秒間燃焼させた。航空機用カーペットの燃焼部分の落下はなかった。したがって、この航空機用カーペットは、炎を除去した後、カーペットが最大15秒間燃焼し続けること、カーペットが最大152mmの長さで燃焼すること、カーペットの燃焼部分が最大5秒間燃焼することを要求する規格を満たしている。
【0113】
航空機用カーペットに、ベッターマン試験とリッソン試験とを実施した。ベッターマン試験は、実験室の条件下で摩耗をシミュレートするものである。リッソン試験は、航空機用カーペットに四輪車による所定の回数のダブルパスを行った後、質量の低下と繊維または糸の結合とを測定する試験である。どちらの試験でも、航空機用カーペットは、重荷重に適したカーペットであることを意味する最高分類の33を達成しました。この航空機用カーペットは、乗客および台車による毎日の重負荷に適している。
【0114】
航空機用カーペットは、繊維およびラミネート床材の静電気傾向に関するISO 6356規格に適合している。