(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】X線検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01T1/20 E
G01T1/20 B
G01T1/20 D
G01T1/20 G
(21)【出願番号】P 2022534465
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2020084219
(87)【国際公開番号】W WO2021115865
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-01-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-05
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ステッドマン ブッカー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】リュッタン ワルター
(72)【発明者】
【氏名】サイモン マティアス
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】松川 直樹
【審判官】藤田 年彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0256538(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0140484(US,A1)
【文献】国際公開第2018/122213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T1/00-1/16
G01T1/167-7/12
G21K4/00
A61B6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のシンチレータ層を含むX線多層検出器であって、
第1のシンチレータ層、
第2のシンチレータ層、
第1のフォトダイオードアレイ、
第2のフォトダイオードアレイ、及び
1つの発光層
を含み、
前記第1のシンチレータ層が、X線パルスからのX線を吸収して、光を放出し、
前記第1のフォトダイオードアレイが、前記第1のシンチレータ層に隣接して位置づけられ、
前記第1のフォトダイオードアレイが、前記第1のシンチレータ層によって放出された光の少なくとも一部を検出し、
前記第2のシンチレータ層が、前記第1のシンチレータ層を通過した前記X線パルスからのX線を吸収して、光を放出し、
前記第2のフォトダイオードアレイが、前記第2のシンチレータ層に隣接して位置づけられ、
前記第2のフォトダイオードアレイが、前記第2のシンチレータ層によって放出された光の少なくとも一部を検出し、
前
記1つの発光層が、放射線を放出する、X線多層検出器において、
前
記1つの発光層は、放出された放射線の少なくとも一部が前記第1のフォトダイオードアレイを照射し、放出された放射線の少なくとも一部が前記第2のフォトダイオードアレイを照射するように構成されていることを特徴とする、X線多層検出器。
【請求項2】
前
記1つの発光層が、赤外波長の放射線を放出し、及び/又は前
記1つの発光層が、可視及び/又は紫外波長の放射線を放出する、請求項1に記載のX線多層検出器。
【請求項3】
前
記1つの発光層が、前記第1のフォトダイオードアレイと前記第2のフォトダイオードアレイとの間に位置づけられる、請求項1又は2に記載のX線多層検出器。
【請求項4】
前
記1つの発光層は、前記第1のシンチレータ層によって放出された光に関して前記第1のフォトダイオードアレイから前記第2のフォトダイオードアレイへの方向、及び/又は前記第2のシンチレータ層によって放出された光に関して前記第2のフォトダイオードアレイから前記第1のフォトダイオードアレイへの方向の前
記1つの発光層の透過性が、10%未満であるように構成されている、請求項3に記載のX線多層検出器。
【請求項5】
前
記1つの発光層が、少なくとも1つのガラス又はポリマープレートを含み、少なくとも1つの光源が、前
記1つの発光層によって放出される前記放射線を生成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のX線多層検出器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光源が、前
記1つの発光層の少なくとも1つの縁部に隣接して位置づけられている、請求項5に記載のX線多層検出器。
【請求項7】
前
記1つの発光層の前記少なくとも1つの縁部がミラー化されている、請求項6に記載のX線多層検出器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの縁部に対して実質的に垂直な前
記1つの発光層の少なくとも1つの面が粗化されている、請求項6又は7に記載のX線多層検出器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光源が、前
記1つの発光層内に統合されている、請求項5に記載のX線多層検出器。
【請求項10】
前
記1つの発光層が、少なくとも1つのOLED層を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のX線多層検出器。
【請求項11】
前記第1のフォトダイオードアレイの第1の表面が前記第1のシンチレータ層の方に向いており、前記第1のフォトダイオードアレイの第2の表面が前記第1のシンチレータ層から離れる方に向いており、前記第2のフォトダイオードアレイの第1の表面が前記第1のフォトダイオードアレイの前記第2の表面の方に向いており、第1の電極が前記第1のフォトダイオードアレイの前記第2の表面に接触し、第2の電極が前記第2のフォトダイオードアレイの前記第1の表面に接触する、請求項1から10のいずれか一項に記載のX線多層検出器。
【請求項12】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、前
記1つの発光層に接触する、請求項11に記載のX線多層検出器。
【請求項13】
X線源とともに使用するためのX線検出器システムであって、
請求項1から
12のいずれか一項に記載のX線多層検出器と、
前記X線源がX線を放出しているときに前
記1つの発光層が放射線を放出しないように前記X線検出器を制御する、処理ユニットと
を含む、X線検出器システム。
【請求項14】
X線源と、
請求項1から
12のいずれか一項に記載のX線多層検出器と
を含む、X線検出器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検出器及びX線検出器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2つ以上のシンチレータ層と、関連するフォトダイオードアレイとを含む、スペクトルエネルギーコンピュータ断層撮影及び/又はX線適用のための特殊なX線検出器は非常に高価である。例えば、有機層(OPD)又はアモルファスシリコン(a-Si)に基づく低コストのフォトダイオードは、バルク内の欠陥密度が比較的高く、電荷が欠陥サイトにトラップされ、後で解放される可能性がある。そのような問題が画像アーチファクトをもたらすので、これらの検出器は、これらの特殊な用途では有用性を見いだすことができない。
【0003】
この問題に対処する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
特殊な多層X線検出器において低コストのフォトダイオードを利用できることは有利である。本発明の目的は独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態は従属請求項に組み込まれる。本発明の以下に記載される態様及び例は、X線検出器及びX線検出器システムにも適用されることに留意されたい。
【0005】
第1の態様において、2つ以上のシンチレータ層を含むX線検出器が提供され、X線検出器は、
第1のシンチレータ層、
第2のシンチレータ層、
第1のフォトダイオードアレイ、
第2のフォトダイオードアレイ、及び
少なくとも1つの発光層
を含む。
【0006】
第1のシンチレータ層は、X線パルスからのX線を吸収し、(それに反応して)光を放出するように構成される。第1のフォトダイオードアレイは、第1のシンチレータ層に隣接して位置づけられる。第1のフォトダイオードアレイは、第1のシンチレータ層によって放出された光の少なくとも一部を検出するように構成される。第2のシンチレータ層は、第1のシンチレータ層を通過したX線パルスからのX線を吸収し、(それに反応して)光を放出するように構成される。第2のフォトダイオードアレイは、第2のシンチレータ層に隣接して位置づけられる。第2のフォトダイオードアレイは、第2のシンチレータ層によって放出された光の少なくとも一部を検出するように構成される。少なくとも1つの発光層は、放射線を放出するように構成され、その結果、放出された放射線の少なくとも一部は、第1のフォトダイオードアレイを照射し、放出された放射線の少なくとも一部は、第2のフォトダイオードアレイを照射する。
【0007】
第1のシンチレータ層を通過し、第2のシンチレータ層によって吸収されるX線パルスは、一般に、第1のシンチレータ層で吸収されるX線パルスよりも高いエネルギーを有する。このようにして、例えばコンピュータ断層撮影二重エネルギー用途のためのエネルギー弁別シンチレータ層をもつ二重層検出器は、低コストのフォトダイオード(例えば、有機層OPD又はa-Siに基づく)を利用することができる。この理由は、これらの低コストのフォトダイオードはバルクに比較的高い欠陥密度を有するが、例えば、欠陥サイトを充填するための750nm未満の可視光及び紫外線、又はバンドギャップ内のトラップを充填するための例えば750nm超の赤外放射線を放出する発光層が設けられるからである。これは、そのような低コストの検出器の実効利得(又は検出効率)の変化及び/又はステップ応答の変化などの問題が軽減されることを意味する。
【0008】
第1のシンチレータ層に隣接して位置づけられる第1のフォトダイオードアレイは、第1のフォトダイオードアレイと第1のシンチレータ層との間に存在するX線検出器の別の要素を排除しない。
【0009】
第2のシンチレータ層に隣接して位置づけられる第2のフォトダイオードアレイは、第2のフォトダイオードアレイと第2のシンチレータ層との間に存在するX線検出器の別の要素を排除しない。
【0010】
一例では、少なくとも1つの発光層は、赤外波長の放射線を放出するように構成され、及び/又は少なくとも1つの発光層は、可視の放射線を放出するように構成され、及び/又は少なくとも1つの発光層は、紫外波長の放射線を放出するように構成される。
【0011】
一例では、少なくとも1つの発光層は、第1のフォトダイオードアレイと第2のフォトダイオードアレイとの間に位置づけられる。
【0012】
このようにして、第1のフォトダイオードに送出するために1つの方向に放射線を放出し、第2のフォトダイオードアレイに送出するために反対方向に放射線を放出する1つの発光層のみが必要とされる。
【0013】
第1のフォトダイオードアレイと第2のフォトダイオードアレイとの間に位置づけられる少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つの発光層と第1のフォトダイオードアレイとの間に存在するX線検出器の別の要素を排除しない。
【0014】
第1のフォトダイオードアレイと第2のフォトダイオードアレイとの間に位置づけられる少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つの発光層と第2のフォトダイオードアレイとの間に存在するX線検出器の別の要素を排除しない。
【0015】
一例では、少なくとも1つの発光層は、第1のシンチレータ層によって放出される光に関して第1のフォトダイオードアレイから第2のフォトダイオードアレイへの方向、及び/又は第2のシンチレータ層によって放出された光に関して第2のフォトダイオードアレイから第1のフォトダイオードアレイへの方向の少なくとも1つの発光層の透過性が、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満となるように構成される。
【0016】
これは、あるシンチレータ層によって放出された放射線が、発光層を横断し、他のシンチレータ層に関連するフォトダイオードアレイによって収集されない(又は少なくとも放射線の大多数が収集されない)ので、あるシンチレータ層から他のシンチレータ層へのクロストークが最小化されることを意味する。
【0017】
一例では、第1の発光層は、第1のフォトダイオードアレイの下に位置づけられ、第2の発光層は、第2のフォトダイオードアレイの下に位置づけられる。
【0018】
ここで、「の下に」とは、X線源から離れている第1のフォトダイオードアレイの側を意味する。
【0019】
このようにして、1つの発光層が2つのシンチレータ層間に位置づけられ、その発光層の下面が、例えば反射器、又は放射線遮断物として製作されるので、クロストークは完全に除去される。この反射器又は放射線遮断物は、一方のシンチレータ層からの放射線が、他方のシンチレータ層に関連するフォトダイオードアレイによって検出されるのを阻止する。2つの反射器が使用される場合、これらは、両方の層で使用され、そのシンチレータ層に対して、関連するフォトダイオードアレイの方向に放出される放射線の量を最大化する。
【0020】
第1のフォトダイオードアレイの下に位置づけられた第1の発光層は、第1の発光層と第1のフォトダイオードアレイとの間に存在するX線検出器の別の要素を排除しない。
【0021】
第2のフォトダイオードアレイの下に位置づけられた第2の発光層は、第2の発光層と第2のフォトダイオードアレイとの間に存在するX線検出器の別の要素を排除しない。
【0022】
一例では、少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つのガラス又はポリマープレートを含む。少なくとも1つの光源は、少なくとも1つの発光層によって放出される放射線を生成するように構成される。
【0023】
一例では、少なくとも1つの光源は、少なくとも1つのLEDである。
【0024】
一例では、少なくとも1つの光源は、少なくとも1つの発光層の少なくとも1つの縁部に隣接して位置づけられる。
【0025】
これは、X線経路にLEDなどの光源なしに、X線が両方のシンチレータ層と相互作用することを意味する。
【0026】
一例では、少なくとも1つの発光層の少なくとも1つの縁部はミラー化される。
【0027】
このようにして、少なくとも1つの発光層の1つ又は複数の側面から漏れる光が最小化され、それによって、フォトダイオードアレイに向かって放出される光が最大化される。
【0028】
ここで、「ミラー化」とは、少なくとも1つの縁部に反射コーティングが備えられるか、又は鏡面仕上げが施されることを意味する。
【0029】
一例では、少なくとも1つの縁部に対して実質的に垂直な少なくとも1つの発光層の少なくとも1つの面が粗化される。
【0030】
このようにして、少なくとも1つの発光層の1つ又は複数の表面からフォトダイオードアレイに向かう光結合が強化される。
【0031】
一例では、少なくとも1つのLEDが、少なくとも1つの発光層内に統合される。
【0032】
一例では、少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つのOLED層を含む。
【0033】
一例では、第1のフォトダイオードアレイの第1の表面は第1のシンチレータ層の方に向いており、第1のフォトダイオードアレイの第2の表面は第1のシンチレータ層から離れる方に向いており、第2のフォトダイオードアレイの第1の表面は第1のフォトダイオードアレイの第2の表面の方に向いている。第1の電極は第1のフォトダイオードアレイの第2の表面に接触し、第2の電極は第2のフォトダイオードアレイの第1の表面に接触する。
【0034】
このようにして、フォトダイオードアレイのバイアス電位部の一部として使用される電極は、少なくとも1つの発光層に関連するLEDなどの発光手段のための電源の一部としても使用される。
【0035】
一例では、第1の電極及び第2の電極は、少なくとも1つの発光層に接触する。
【0036】
第2の態様では、第1の態様によるX線検出器と、X線源がX線を放出しているときに少なくとも1つの発光層が放射線を放出しないようにX線検出器を制御するように構成された処理ユニットとを含むX線検出器システムが提供される。
【0037】
第3の態様では、X線源と、第1の態様によるX線検出器とを含むX線検出器システムが提供される。オプションとして、X線検出器システムは、X線源がX線を放出しているときに少なくとも1つの発光層が放射線を放出しないようにX線検出器を制御するように構成された処理ユニットをさらに含む。
【0038】
したがって、発光層は連続的に動作することができるが、フォトダイオードアレイは、X線源動作時にオフセット電流を生成し、それがノイズ源と見なされることがある。しかしながら、ここでは、X線源が動作していないときのみ、発光層が動作して、欠陥の影響が軽減される。言い換えれば、発光層は、X線放射の間フォトダイオードアレイに照明を供給せず、他の場合にはいつまでもオンにする。
【0039】
有利には、上述の態様のいずれかによっても提供される利点は、他の態様のすべてに等しく適用され、逆も同様である。
【0040】
上述の態様及び例は、以下に記載する実施形態から明らかになり、以下に記載する実施形態を参照して解明される。
【0041】
例示的な実施形態が、以下の図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】X線検出器の一例の概略のセットアップを示す図である。
【
図2】X線検出器システムの一例の概略のセットアップを示す図である。
【
図3】X線検出器の一例の概略のセットアップを示す図である。
【
図4】X線検出器の一例の概略のセットアップを示す図である。
【
図5】X線検出器の一例の発光層の一例の概略のセットアップを示す図である。
【
図6】X線検出器の一例の発光層の一例の概略のセットアップを示す図である。
【
図7】X線検出器の一例の概略のセットアップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、X線検出器10の一例を示す。X線検出器は、第1のシンチレータ層20、第2のシンチレータ層30、第1のフォトダイオードアレイ40、第2のフォトダイオードアレイ50、及び少なくとも1つの発光層60を含む。第1のシンチレータ層は、X線パルスからのX線を吸収し、光を放出するように構成される。第1のフォトダイオードアレイは、第1のシンチレータ層に隣接して位置づけられる。第1のフォトダイオードアレイは、第1のシンチレータ層によって放出された光の少なくとも一部を検出するように構成される。第2のシンチレータ層は、第1のシンチレータ層を通過したX線パルスからのX線を吸収し、光を放出するように構成される。第2のフォトダイオードアレイは、第2のシンチレータ層に隣接して位置づけられる。第2のフォトダイオードアレイは、第2のシンチレータ層によって放出された光の少なくとも一部を検出するように構成される。少なくとも1つの発光層は、放射線を放出するように構成される。少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つの発光層からの放出された放射線の少なくとも一部が第1のフォトダイオードアレイを照射し、少なくとも1つの発光層からの放出された放射線の少なくとも一部が第2のフォトダイオードアレイを照射するように構成される。
【0044】
一例では、少なくとも1つの発光層は、0.5mm以下の厚さを有する。
【0045】
一例では、少なくとも1つの発光層は、0.3mm以下の厚さを有する。
【0046】
一例では、少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つの光プレートを含む。
【0047】
一例によれば、少なくとも1つの発光層は、赤外波長の放射線を放出するように構成され、及び/又は少なくとも1つの発光層は、可視の放射線を放出するように構成され、及び/又は少なくとも1つの発光層は、紫外波長の放射線を放出するように構成される。
【0048】
一例では、可視光及び/又は紫外線の放射線は、750nm未満である。
【0049】
一例では、赤外放射線は、750nm超である。
【0050】
当業者は、これらの数値が、単に代表的なものであり、したがって、例えば、可視光及び紫外線は、場合によっては、800nm未満であると考えられ、赤外線は、場合によっては、800nm超又は実際は900nm超であると考えられることを認識するであろう。
【0051】
一例によれば、少なくとも1つの発光層は、第1のフォトダイオードアレイと第2のフォトダイオードアレイとの間に位置づけられる。
【0052】
一例によれば、少なくとも1つの発光層は、第1のシンチレータ層によって放出される光に関して第1のフォトダイオードアレイから第2のフォトダイオードアレイへの方向の少なくとも1つの発光層の透過性が、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満となるように構成される。
【0053】
一例によれば、少なくとも1つの発光層は、第2のシンチレータ層によって放出される光に関して第2のフォトダイオードアレイから第1のフォトダイオードアレイへの方向の少なくとも1つの発光層の透過性が、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満となるように構成される。
【0054】
一例によれば、少なくとも1つの発光層の第1の層62は、第1のフォトダイオードアレイの下に位置づけられ、少なくとも1つの発光層の第2の層64は、第2のフォトダイオードアレイの下に位置づけられる。以下で説明する
図7は、この例の可能な実施形態を示す。
【0055】
一例によれば、少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つのガラス又はポリマープレートを含み、少なくとも1つの光源90は、少なくとも1つの発光層によって放出される放射線を生成するように構成される。
【0056】
少なくとも1つの光源は、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)である。
【0057】
一例によれば、少なくとも1つの光源は、少なくとも1つの発光層の少なくとも1つの縁部に隣接して位置づけられる。
【0058】
1つ又は複数のLEDなどの少なくとも1つの光源は、層の外にあり、光を層内に送出するか、又は層の縁部の近くの層内に埋め込まれる。
【0059】
一例によれば、光源(例えば、LED)は、発光層内にあり、少なくとも1つの発光層の少なくとも1つの縁部は、ミラー化される(100)。
【0060】
しかしながら、光源(例えば、LED)は、層の外にあり、ミラー化されていない縁部で層に光を注入する。しかし一方、層の他の縁部はミラー化されている。
【0061】
一例によれば、少なくとも1つの縁部に対して実質的に垂直な少なくとも1つの発光層の少なくとも1つの面が粗化される。
【0062】
一例によれば、少なくとも1つのLEDなどの少なくとも1つの光源は、少なくとも1つの発光層内に統合される。
【0063】
一例によれば、少なくとも1つの発光層は、少なくとも1つの有機発光ダイオード(OLED)層を含む。
【0064】
一例によれば、第1のフォトダイオードアレイの第1の表面は第1のシンチレータ層の方に向いており、第1のフォトダイオードアレイの第2の表面は第1のシンチレータ層から離れる方に向いており、第2のフォトダイオードアレイの第1の表面は第1のフォトダイオードアレイの第2の表面の方に向いており、第1の電極(70)は第1のフォトダイオードアレイの第2の表面に接触し、第2の電極(80)は第2のフォトダイオードアレイの第1の表面に接触する。
【0065】
一例によれば、第1の電極及び第2の電極は、少なくとも1つの発光層に接触する。
【0066】
図2は、X線検出器システム200の一例を示す。X線検出器システムは、X線源210と、
図1に関して上述したX線検出器10とを含む。
【0067】
一例によれば、X線検出器システム200は、処理ユニット220を含む。処理ユニットは、X線源がX線を放出しているときに少なくとも1つの発光層が放射線を放出しないようにX線検出器を制御するように構成される。
【0068】
したがって、例えば、少なくとも1つの発光層によって放出される光を作り出すLEDは、X線源がX線を放出しているときに光を放出しないように制御される。
【0069】
次に、X線検出器及びX線検出器システムが、特定の実施形態に関してさらに詳細に説明され、
図3~
図7が参照される。
【0070】
ここに記載される特別なX線検出器構成によって、低コストの(有機層(OPD)又はa-Siに基づく)フォトダイオードが、今では、CTの高価なフォトダイオードに取って代わるために使用することができる。したがって、OPDは、今では、次世代の二層フラットX線検出器にも考慮される。今まで、これらのタイプのフォトダイオードアレイ(PDA)は、費用効率の高さにもかかわらず、アーチファクトが多いという難点があった。そのため、そのフォトダイオードアレイ(PDA)の応用、特にCTへの応用における採用が妨げられてきた。
【0071】
現在のX線検出器構成で対処される問題に関する状況を説明するために、以下は、低コストのフォトダイオードアレイに関連する問題に関するさらなる詳細を提供する。最も関連性のある理想的でない挙動は、PDAの時間的特性に関連する。実効利得(又は検出効率)及びステップ応答は、活性領域における電荷トラップに起因して、経時的に変化するように見える。これらのフォトダイオードは、バルクに比較的高い欠陥密度を有するので、電荷は、欠陥サイトにトラップされ、かなり超長時間スケールでしか解放されない。これは、ゴースティングのようなアーチファクトを引き起こすが、さらに、画像アーチファクト、例えば、CTにおけるバンドアーチファクトを引き起こす。電荷トラップに起因する時間的アーチファクトを抑制する方法が、知られており、例えば、バイアスをスイッチオフすること、又は順バイアスインターバルを短くすることである。しかしながら、バイアス光/背面照明を伴う二重層検出器利用への解決策は今まで欠けている。
【0072】
上述で論じ、以下でさらに詳細を提供するように、本検出器は、シンチレータ層から放出された放射線を検出するために使用される低コストのフォトダイオードアレイの「背面照明」で使用される検出器構成内の1つ又は複数の発光層をもつ層の特別な構成によりこれに対処する。そのような低コストのフォトダイオードアレイは、OPD又はa-Siに基づく。
【0073】
発明者らは、材料バンドギャップを超えるエネルギーをもつ光波長(すなわち、800nm未満の赤色光)を使用することによって、X線検出器内で使用されるフォトダイオードアレイの欠陥サイトがX線照明の前に充填されることに気付いた。トラップを充填した後、これは、さらなるトラップが発生せず、検出効率の変化がX線照明中に感知されないことを意味する。その上、すべてのX線走査の前にそうすることによって、すべての画像タスクで同じ初期条件が満たされることが保証される。その上、発明者らは、バンドギャップ内のトラップを充填するために、赤外サブバンド(例えば、IR>900nm)の照明も使用できることに気付いた。
【0074】
しかしながら、新しい検出器内の発光のそのようなパルス動作は必須ではなく、連続的な背面光照明を考慮することができることに留意されたい。ここで、赤色及び/又は赤外照明は常にオンのままである。しかしながら、これはまた、フォトダイオードが光への感受性に対応するオフセット電流を生成し、それがノイズ源とみなされることを意味する。この場合、照明が、X線照射の間オフに切り換えられ、他の場合にはいつまでもオンである、上述で論じたようなパルス化背面光照明が有用である。
【0075】
図3は、新しいタイプのX線検出器10の一例を示す。X線検出器は上部層シンチレータ20を有し、低コストのフォトダイオードアレイ40が、X線の吸収に由来してシンチレータから放出された放射線を検出するために上部層シンチレータに隣接して位置づけられる。X線検出器は下部層シンチレータ30をさらに有し、別の低コストのフォトダイオードアレイ50が、X線の吸収に由来してシンチレータから放出された放射線を検出するために下部層シンチレータに隣接して位置づけられる。ガラスプレート60が、両方のフォトダイオードアレイ間に導入され、発光層60として機能する。プレートは、統合されたLED90を有し、2つのPDAが均質に照明され、それによって、上述で論じたように、LEDの発光の波長に応じて欠陥サイトの充填及び/又はトラップの充填が行われるように拡散プレートとして機能する。ガラスに代わる他の材料が、例えば、厚いポリマー、PMMAなどが使用されてもよい。したがって、ガラスプレート60は、機械的支持体として、及び赤外及び/又は赤色光の拡散ベース発光層として機能する。
【0076】
図3において、電極70及び80は、IRの大部分がフォトダイオードアレイを照明するように十分に透明であるフレックスフォイル電極(ベース基材材料)である。
図3に示される構成において、PDAは、発光層60によって「背面」照明される(シンチレータ層から進む光に対して)ように講じられる。代替として、フレックスフォイルは、PDAの上にあってもよく(前面照明タイプ)、光学的に透明であることしか必要としない(例えば、ITOルーティング)。この代替の構成(
図4を参照)では、ガラスプレートはPDAに直接接触する。
【0077】
図3に示された実施形態の利点は、フレックス基材(フレックスフォイル電極)が、バイアス電圧をPDAに供給するだけでなくガラスプレートのLEDにも供給電圧を伝えることである。ガラスプレートは2つのフレックスフォイルの間に「挟まれる」ので、各フォイルは、給電、例えば、共通カソード上部及び共通アノード下部、又はその逆の一方を保持することができる。
【0078】
ガラスは、望ましくないX線吸収を引き起こす。それゆえに、ガラス基板をできるだけ薄く保つことは有利である。理想的には、それは、0.5mmよりも厚くすべきでなく、好ましくは、0.3mmよりも薄い。
【0079】
図3及び
図4に示された実施形態に関して、PDA(特に、OPD)のほぼ透明な性質のために、光クロストークが両方のシンチレータ層にわたって発生し、それが、二重層検出器のエネルギー分離を悪化させる。これに対処するために、ガラス表面が、界面の全域で、例えば、わずか10%の透過性を有するように処理される。残りの光は、反射及び/又は吸収される。各ガラス表面/界面の透過性が10%の場合、1つのシンチレータ層から他のシンチレータ層のフォトダイオードアレイまで進もうとする光は、10%の透過性をもつ2つの連続する界面を横切らなければならないので、両方の層を横切ったクロストークは、1%を十分に下回るように抑制される。ガラス発光層に放射線を供給するLEDアレイは、そのような状況では、ガラス層の出口表面の透過性の不足を補償するためにより多くの光を供給する必要がある。
図4に示されるようなフレックスフォイル電極は、ここでは、フォトダイオードアレイとシンチレータ層との間に位置づけられる。
【0080】
図5及び
図6は、例示的なガラスプレートの例を示す。好ましくは、ガラスプレートの縁部側のすべて又は大部分は、上面及び下面の両方によって放出される光が最大になるように反射材料でクラッドされる。したがって、ガラスプレートは、反射性又はミラー化縁部100、例えば、ミラー又はTiO
2(内側からの)を有する。
【0081】
図5に示される実施形態では、LEDダイオード90は、ガラスプレート内に統合される。この実施形態では、電極70、80は、下部/上部の一様な電極であるが、しかしながら、各LEDは、両側に「ドット」接触部を有し、個別に接触される。
【0082】
図6に示された実施形態では、LEDダイオード90は、縁部ミラー有効範囲を最大にするためにガラスプレートの側面にのみ配置される、すなわち、縁部での反射光は、ガラスボリューム内のLEDアレイによって吸収されない。この場合、LEDはまた、下層検出器のX線経路に存在しない。ガラス層の上面及び下面を粗化して、LEDからの光の外部結合を散乱を介して強化する。表面の粗化は、
図5に示される実施形態にも適用される。
【0083】
フラット検出器では、既存のガラスプレートが、側面からの光を結合させるために使用される。プレートの下面は、光散乱を増加させ、均質な光分布を検出器の全域に作り出すように処理される。
【0084】
上述の実施形態では、ガラスプレートは、両方のフォトダイオード層の中間に配置され、両方のフォトダイオード層に役立つ。代替として、各フォトダイオードアレイは、それ自体の発光層又はプレートを有することができる。この場合、スタックが若干複雑になるが、層間のクロストークが、最小にされるか、又は完全に除去される。
図7は、この実施態様の一例を示す。しかしながら、フラットパネル適用では、下部背面照明が既に利用可能であることに留意すべきである。この場合、スタックは、再び、両方の層の間に挟まれた単一のガラスプレートから構成されるが、しかしながら、上部層にのみ役立つ。
図7において見て分かるように、今では、内部ガラスプレートは、下部側に、光の使用を最大化し、層間の光クロストークを防止するのを支援する反射器110を備え付けている。しかしながら、この層は、ミラーではなく、単に、UV放射線/可視光/赤外線に対する放射線阻止層であり、一方、X線に対する過度の減衰はない。
図7に示された実施形態は、いくつかの可能な構成のうちの単なる1つであることに留意されたい。例えば、上部層は、背面照明BIP PDAであり、下部層は前面照明FIPである。しかしながら、上部層がFIPであり、下部層がBIPであってもよい。しかしながら、両方の層がBIPであってもよく、又は両方の層がFIPであってもよい。さらに、
図7に関して上述で論じられた層の構成のいずれも、X線が図の上から来るのではなく、X線が下から来ることがあるという点で、逆にすることができる。
【0085】
上述で論じたように、
図3の実施形態に示され、実際に
図7に示された実施形態で示されたフレックスフォイル電極70、80は、ガラスプレートのLEDに供給電圧を伝え、並びに電圧をフォトダイオードアレイに供給する。次に、
図4に示されたX線検出器のフレックスフォイル電極は、フォトダイオードアレイとシンチレータ層との間に位置づけられ、そのため、発光ガラスプレートにバイアスをかけるために異なる技法が必要とされる。これを成し遂げるいくつかの仕組みがある。
【0086】
フォトダイオードアレイは、上部に基板(バルクとも呼ばれる)接触部を有する。すなわち、フォトダイオードアレイの基板(下部側)は、上部接触部から特定の電位にバイアスをかけられる。次いで、他のフォトダイオードアレイが、ガラスプレートに関連したLEDを駆動するのに十分な異なる電位にバイアスをかけられる。すなわち、フォトダイオードアレイの下部側が、バイアスを供給する。
【0087】
フォトダイオードアレイは、専用のバイアス電圧を上から下にもたらし(
図4では反映されている)、ガラスプレートへのアクセスを可能にするTSV(シリコン貫通バイア)接触部を有する。この場合、1つのアレイのみが両方の電位をプレートに供給することで十分であり、それは、プレートが1つの側にのみ接触部を有する場合、特に適している。(埋込みLEDの場合、接触部が両側にある。)フォトダイオードアレイは一般に非常に薄いので、TSVは適合性がある。
【0088】
フレックスフォイル(上部層)は、プレートの側面に接触する。これは、特にLEDがガラスプレートの側面に配置されている場合に適するが、それは、この実施形態に制限されない。
【0089】
ガラスプレートは、第3の側(又は2つの側)から出て来る専用のフレックスフォイルを有することができる。
【0090】
X線検出器の一実施形態は、事実上、原理的に可能である
図3及び
図4に示された実施形態の組合せとすることができることにも留意されたい。この組合せの実施形態では、上部層は、背面照明され、一方の側からのみフレックスフォイルを通してプレートにバイアスを供給する。そのとき、下部層は、プレートに接触する必要のない任意のタイプのフォトダイオードアレイである。
【0091】
それゆえに、上述で論じた実施形態では、フレックスフォイルは、フォトダイオードアレイ電極への相互接続として機能し、バイアスを発光ガラスプレートにも供給する。これは、X線検出器がCT用途に使用される場合に適用され、検出器全体がタイルからなり、すなわち、検出器が、互いに隣接するように配列された小さい要素から構成され、大面積の検出器がもたらされる。しかしながら、これは、他のX線用途のためのX線検出器にも適用される。後者の場合、大面積デバイスは有用であり、「フレックスフォイル」は、フロントエンド読出しをフォトダイオードアレイにさらに提供するTFTパネル(薄膜トランジスタ、フレックスなど)の形態のものである。次いで、TFTは、1つ又は複数の側のライン増幅器及びADCに接続する。
【0092】
上述の議論において、LEDを備えたガラスプレートの形態の発光層が説明され、ガラスよりはむしろポリマーが利用されることが述べられた。しかしながら、発光層は、有機発光ダイオードOLED層などの薄いエレクトロルミネセンス層の形態のものとすることができる。
【0093】
本発明の実施形態が様々な主題を参照して説明されていることに留意すべきである。特に、ある実施形態は方法タイプの請求項を参照して説明され、一方、他の実施形態はデバイスタイプの請求項を参照して説明されている。しかしながら、当業者は、上述の説明及び以下の説明から、特に断らない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組合せに加えて、さらに、異なる主題に関する特徴の間の任意の組合せが本出願により開示されていると見なされることが分かるであろう。しかしながら、すべての特徴を組合わせて、特徴の簡単な総和を超える相乗効果を提供することができる。
【0094】
本発明が、図面及び前述の説明で詳細に図示及び説明されたが、そのような図及び説明は、例証又は例示であり、限定でないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態への他の変形は、請求される発明を実践する際に、図面、開示、及び従属請求項の検討から当業者によって理解され達成される。
【0095】
特許請求の範囲において、「備えている、含んでいる、有している」という単語は、他の要素又はステップを排除せず、単数形は複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に列挙されるいくつかのアイテムの機能を遂行することができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示していない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきでない。