(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車輌用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/435 20180101AFI20241210BHJP
F21S 41/25 20180101ALI20241210BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20241210BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20241210BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20241210BHJP
F21V 29/65 20150101ALI20241210BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20241210BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241210BHJP
【FI】
F21S45/435
F21S41/25
F21S41/43
F21S41/147
F21S41/153
F21V29/65
F21W102:13
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2022535012
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023845
(87)【国際公開番号】W WO2022009683
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2020116346
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 一磨
(72)【発明者】
【氏名】村松 鉄平
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/435
F21S 41/25
F21S 41/43
F21S 41/147
F21S 41/153
F21V 29/65
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が搭載された回路基板と、
前面又は後面に前記回路基板が取り付けられ前記光源の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンクと、
前記回路基板及び前記ヒートシンクの上方又は下方に配置された冷却ファンとを備え、
前記冷却ファンによって発生する冷却風が前記ヒートシンクと前記光源に沿って流動され
、
前記冷却ファンに回転軸と複数の羽根とが設けられ、
前記回転軸が前後方向において前記光源より前記ヒートシンク側に位置された
車輌用灯具。
【請求項2】
光源が搭載された回路基板と、
前面又は後面に前記回路基板が取り付けられ前記光源の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンクと、
前記回路基板及び前記ヒートシンクの上方又は下方に配置された冷却ファンとを備え、
前記冷却ファンによって発生する冷却風が前記ヒートシンクと前記光源に沿って流動され、
前記光源から出射される光を反射するリフレクターが設けられ、
前記リフレクターには前記冷却ファンの下方又は上方に位置され前記冷却ファンによって発生する冷却風を取り入れる取入開口が形成され、
前記取入開口から取り入れられた冷却風が前記光源へ向けて流動される
車輌用灯具。
【請求項3】
前記リフレクターには前記取入開口から取り入れられた冷却風を誘導する誘導傾斜面が形成され、
前記誘導傾斜面が上下方向において前記冷却ファンから離隔するに従って前記光源に近付くように傾斜された
請求項2に記載の車輌用灯具。
【請求項4】
前記リフレクターが金属材料によって形成され前記ヒートシンクに取り付けられた
請求項2又は請求項3に記載の車輌用灯具。
【請求項5】
光源が搭載された回路基板と、
前面又は後面に前記回路基板が取り付けられ前記光源の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンクと、
前記回路基板及び前記ヒートシンクの上方又は下方に配置された冷却ファンとを備え、
前記冷却ファンによって発生する冷却風が前記ヒートシンクと前記光源に沿って流動され、
前記回路基板における前記光源が搭載された面が光源搭載面として形成され、
前記回路基板は前記光源搭載面が鉛直方向に対して前記冷却ファン側を向く方向へ傾斜した状態で配置された
車輌用灯具。
【請求項6】
光源が搭載された回路基板と、
前面又は後面に前記回路基板が取り付けられ前記光源の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンクと、
前記回路基板及び前記ヒートシンクの上方又は下方に配置された冷却ファンとを備え、
前記冷却ファンによって発生する冷却風が前記ヒートシンクと前記光源に沿って流動され、
前記光源から出射される光を制御する投影レンズと前記投影レンズを介して入射される太陽光を遮蔽する遮光部を有するプロテクターとが設けられ、
前記遮光部が冷却風を前記投影レンズへ向けて案内する案内部として設けられた
車輌用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンクと冷却風を発生させる冷却ファンとを備えた車輌用灯具についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光源の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンクと冷却風を発生させる冷却ファンとが配置され、光源の温度上昇を抑制して光源の良好な駆動状態を確保する構成にされたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された車輌用灯具においては、ヒートシンクの前面に光源が搭載された回路基板が取り付けられ、ヒートシンクの後面側に冷却ファンが配置され、光源の駆動時に冷却ファンが回転される。
【0004】
冷却ファンにより冷却風が発生し、発生した冷却風は前方へ向かうと共に一部がヒートシンクの下方に形成された通気流路を通ってヒートシンクの前面側に回り込む。前方へ向かった冷却風はヒートシンクに吹き付けられ、通気流路を通ってヒートシンクの前面側に回り込んだ冷却風は上方へ向けて流動されて光源に沿って流動される。従って、ヒートシンクに吹き付けられた冷却風と光源に沿って流動された冷却風とによって、光源に対する冷却性能が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された車輌用灯具においては、冷却風の一部がヒートシンクの下面に沿って通気流路を流動された後に光源へ向けて流動されるため、通気流路を流動されるときに冷却風の温度が上昇して光源に対する十分な冷却性能が確保されないおそれがある。
【0007】
また、車輌用灯具においては、投影レンズ、レンズホルダー、回路基板、ヒートシンク等の所要の各部が前後方向(光軸方向)に並んで配置される場合も多く、前後方向の大きさが大きくなり易く、前後方向における小型化が望まれることも多い。
【0008】
そこで、本発明車輌用灯具は、前後方向における小型化を図った上で光源に対する冷却性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1に、本発明に係る車輌用灯具は、光源が搭載された回路基板と、前面又は後面に前記回路基板が取り付けられ前記光源の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンクと、前記回路基板及び前記ヒートシンクの上方又は下方に配置された冷却ファンとを備え、前記冷却ファンによって発生する冷却風が前記ヒートシンクと前記光源に沿って流動されるものである。
【0010】
これにより、回路基板及びヒートシンクの上方又は下方に配置された冷却ファンによって発生する冷却風がヒートシンクとヒートシンクの前面又は後面に取り付けられた回路基板とに沿って流動される。
【0011】
第2に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記冷却ファンに回転軸と複数の羽根とが設けられ、前記回転軸が前後方向において前記光源より前記ヒートシンク側に位置されることが望ましい。
【0012】
これにより、光源の上方又は下方に羽根が位置されるため、光源に沿って流動される冷却風の風量が多くなる。
【0013】
第3に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記光源から出射される光を反射するリフレクターが設けられ、前記リフレクターには前記冷却ファンの下方又は上方に位置され前記冷却ファンによって発生する冷却風を取り入れる取入開口が形成され、前記取入開口から取り入れられた冷却風が前記光源へ向けて流動されることが望ましい。
【0014】
これにより、冷却ファンによって発生する冷却風がリフレクターに形成された取入開口から取り入れられて光源へ向かうため、リフレクターとは別に光源へ向けて冷却風を流動させる専用の部材を設ける必要がない。
【0015】
第4に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記リフレクターには前記取入開口から取り入れられた冷却風を誘導する誘導傾斜面が形成され、前記誘導傾斜面が上下方向において前記冷却ファンから離隔するに従って前記光源に近付くように傾斜されることが望ましい。
【0016】
これにより、冷却ファンによって発生する冷却風が誘導傾斜面に誘導されて光源へ向かうため、光源に沿って集中的に冷却風が流動される。
【0017】
第5に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記リフレクターが金属材料によって形成され前記ヒートシンクに取り付けられることが望ましい。
【0018】
これにより、光源の駆動時に発生する熱がヒートシンクとリフレクターの双方に伝達される。
【0019】
第6に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記回路基板における前記光源が搭載された面が光源搭載面として形成され、前記回路基板は前記光源搭載面が鉛直方向に対して前記冷却ファン側を向く方向へ傾斜した状態で配置されることが望ましい。
【0020】
これにより、冷却ファンによって発生する冷却風が光源に沿って流動され易くなる。
【0021】
第7に、上記した本発明に係る車輌用灯具においては、前記光源から出射される光を制御する投影レンズと前記投影レンズを介して入射される太陽光を遮蔽する遮光部を有するプロテクターとが設けられ、前記遮光部が冷却風を前記投影レンズへ向けて案内する案内部として設けられることが望ましい。
【0022】
これにより、冷却風がプロテクターの遮光部によって投影レンズへ向けて案内される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、回路基板及びヒートシンクの上方又は下方に配置された冷却ファンによって発生する冷却風がヒートシンクとヒートシンクの前面又は後面に取り付けられた回路基板とに沿って流動されるため、前後方向における小型化を図った上で光源に対する冷却性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図2乃至
図5と共に本発明車輌用灯具の実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用灯具の断面図である。
【
図3】リフレクターと回路基板を示す斜視図である。
【
図4】リフレクターと回路基板を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明車輌用灯具を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0026】
車輌用灯具1は、例えば、車輌用前照灯であり、車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0027】
車輌用灯具1は前端に開口を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている(
図1参照)。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間が灯室5として形成されている。
【0028】
灯室5にはランプユニット6が配置されている。ランプユニット6はレンズホルダー7と投影レンズ8とヒートシンク9と回路基板10とリフレクター11とプロテクター12を有している(
図1及び
図2参照)。
【0029】
ランプユニット6はランプハウジング2に図示しない光軸調整機構を介して支持されている。従って、光軸調整機構を動作させることによりランプユニット6をランプハウジング2に対して上下方向又は左右方向へ傾動させて光の光軸調整(エイミング調整又はレベリング調整)を行うことが可能にされている。
【0030】
レンズホルダー7は軸方向が前後方向にされた略円筒状の保持筒部7aと保持筒部7aからそれぞれ後方に突出された脚部7b、7bとを有している。
【0031】
投影レンズ8はレンズホルダー7の保持筒部7aに保持されている。投影レンズ8は光が透過されるレンズ本体部8aとレンズ本体部8aの後端部から外方に張り出されたフランジ状の被取付部8bとが一体に形成されて成る。投影レンズ8は被取付部8bが保持筒部7aに前側から取り付けられてレンズホルダー7に保持されている。
【0032】
投影レンズ8は、例えば、アクリルによって射出成形により形成されている。アクリルはポリカーボネイトとともに射出成形により樹脂部品を成形するための好適な材料であり、ポリカーボネイトより透明度の高い良好な成形性を有する材料であるが、ポリカーボネイトより耐熱性は低いことが知られている。
【0033】
このような理由により、投影レンズ8は被取付部8bの下端部がゲート位置になる状態でレンズホルダー7に保持されている。残留歪みが残存するおそれのあるゲート位置を最も下側に位置させることにより、ゲート位置が上方に位置される場合に比し残留歪みが残存するおそれのある部分が熱の影響を受け難くなり、ゲート位置がある部分の変形を抑制することが可能にされている。
【0034】
ヒートシンク9は放熱部13と取付部14、14と橋渡部15が熱伝導性の高い金属材料によって形成されている。
【0035】
放熱部13は前面部16と側面部17、17と上面部18とフィン部19、19、・・・を有している。前面部16は鉛直方向に対して後下がりに傾斜され、前面16aが基板取付面として形成されている。側面部17、17は前面部16の左右両端部から後方に突出されている。上面部18は前面部16の上端部から後方に突出され、左右両端部がそれぞれ側面部17、17の上端部に連続されている。上面部18には外周部を除いた部分に流入孔18aが形成されている。フィン部19、19、・・・は前面部16から後方に突出され、側面部17、17間において左右に離隔して位置されている。
【0036】
取付部14、14は前面部16の左右両端部から側方における外方から下方に亘る位置に突出されている。取付部14、14にはそれぞれレンズホルダー7の脚部7b、7bが、例えば、ネジ止め等によって前側から取り付けられる。
【0037】
橋渡部15は取付部14、14の上端部を連結する部分として設けられている。橋渡部15によってヒートシンク9の強度が高くされている。
【0038】
回路基板10は略前後方向を向き、前面が光源搭載面10aとして形成され、前面部16の前面16aに取り付けられている。従って、回路基板10は前面部16の傾斜状態に応じて鉛直方向に対して後下がりに傾斜され、光源搭載面10aが前方に対して稍上方を向く状態で配置されている。
【0039】
回路基板10の光源搭載面10aには上端寄りの位置に光源20、20、・・・が搭載されている。光源20としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられている。光源20、20、・・・は、例えば、上下2段にそれぞれ複数が左右に配列されている。上側に配列された光源20、20、・・・は、例えば、ロービーム用であり、下側に配列された光源20、20、・・・は、例えば、ハイビーム用である。
【0040】
尚、車輌用灯具1においては、車輌の走行状態や周囲の環境等によって光源20、20、・・・が各別に点消灯される配光可変制御が行われ、対向車や先行車における運転者や歩行者等に幻惑光が生じないようにされている。
【0041】
リフレクター11は熱伝導性の高いアルミニウム等の金属材料によって形成されている。リフレクター11は、前後方向を向く横長のベース面部21と、ベース面部21の上端部における左右両端寄りの位置から前方に突出された反射用突部22、22と、反射用突部22、22の間に位置された反射部23とを有している(
図2乃至
図4参照)。
【0042】
反射用突部22、22の対向する面はそれぞれ側方反射面22a、22aとして形成されている。
【0043】
反射部23にはそれぞれ横長の第1の通過孔23aと第2の通過孔23bが上下に離隔して形成されている。反射部23のうち第1の通過孔23aを形成する上下の壁面がそれぞれ第1の反射面24、24として形成され、反射部23のうち第2の通過孔23bを形成する上側の壁面と下側の壁面及びこれに連続する傾斜面とがそれぞれ第2の反射面25、25として形成されている。
【0044】
リフレクター11には反射用突部22、22のそれぞれ後側に誘導部26、26が設けられている。誘導部26は上方及び後方に開口された形状に形成されている。誘導部26、26の内面はそれぞれ三つの面によって構成され、左右方向における中央の第1の誘導傾斜面26a、26aと左右方向における外側の第2の誘導傾斜面26b、26bと左右方向における内側の第3の誘導傾斜面26c、26cとから成る。誘導部26は上端の開口が取入開口26dとして形成されている。
【0045】
第1の誘導傾斜面26a、26aは下方へ行くに従って後方に変位するように傾斜され、第2の誘導傾斜面26b、26bは下方へ行くに従って左右方向において互いに近付くように傾斜され、第3の誘導傾斜面26c、26cも下方へ行くに従って左右方向において互いに近付くように傾斜されている。
【0046】
リフレクター11はベース面部21の左右両端部がそれぞれネジ止め等によってヒートシンク9の取付部14、14に前側から取り付けられる。リフレクター11がヒートシンク9に取り付けられた状態においては、ベース面部21と反射部23が回路基板10に前側から接近した状態にされ、第1の通過孔23aの真後ろにそれぞれロービーム用の光源20、20、・・・が位置され、第2の通過孔23bの真後ろにそれぞれハイビーム用の光源20、20、・・・が位置される。
【0047】
このようにリフレクター11はベース面部21と反射部23が回路基板10に前側から接近した状態にされ、第1の誘導傾斜面26a、26aが下方へ行くに従って光源20、20、・・・に前後方向において近付き、第2の誘導傾斜面26b、26bと第3の誘導傾斜面26c、26cがともに下方へ行くに従って光源20、20、・・・に左右方向において近付く状態にされる。
【0048】
プロテクター12は、例えば、板状の金属材料が所定の形状に折り曲げられて形成されている。プロテクター12は、前後方向を向く横長の基部12aと、基部12aの左右両端部からそれぞれ上方に突出された締結部12b、12bと、基部12aから前斜め下方に突出され基部12aに対して前方に折り曲げられた第1の遮光部12cと、締結部12b、12bの左右方向における内側の端部からそれぞれ前方に突出された第2の遮光部12d、12dとによって構成されている。プロテクター12は締結部12b、12bがヒートシンク9の取付部14、14に前側から取り付けられる。
【0049】
尚、車輌用灯具1においては、ヒートシンク9の取付部14、14に、リフレクター11のベース面部21とプロテクター12の締結部12b、12bとレンズホルダー7の脚部7b、7bとが前側から順に、例えば、ネジ止め等によって所謂共締めされることにより前側から取り付けられる。
【0050】
ヒートシンク9の放熱部13には、例えば、ネジ止め等によって冷却ファン27が取り付けられている(
図1及び
図2参照)。
【0051】
冷却ファン27は外形状が略矩形のケース部28とケース部28の内部に回転可能な状態で配置された回転駆動部29とを有している。回転駆動部29は軸方向が上下方向にされた軸部29aと軸部29aの外周面からそれぞれ突出された複数の羽根29b、29b、・・・とを有している。
【0052】
冷却ファン27はケース部28が放熱部13の上面部18に上方から取り付けられ、上面部18に取り付けられることにより橋渡部15の真後ろに位置される。冷却ファン27が放熱部13に取り付けられた状態においては、回転駆動部29がヒートシンク9の前面部16を前後で跨ぐ位置に配置され、軸部29a(回転軸29c)が回路基板10に搭載された光源20、20、・・・より後方に位置される(
図5参照)。従って、軸部29aと光源20の間には一定の間隔Sが形成される。尚、軸部29aの前端と光源20の後端とが一致されていてもよく、この場合には間隔Sが0にされる。
【0053】
また、上記したように、回路基板10は前面部16の傾斜状態に応じて鉛直方向に対して後下がりに傾斜され、光源搭載面10aが鉛直方向に対して冷却ファン27側を向く方向へ傾斜した状態で配置されている。
【0054】
上記のように構成された車輌用灯具1において、光源20、20、・・・の駆動により光が前方へ向けて出射されると、出射された光は投影レンズ8を透過されて前方へ向けて照射される。
【0055】
このとき、ロービーム用の光源20から出射された光は、反射部23の第1の通過孔23aを通過し第1の反射面24、24と側方反射面22a、22aで反射され、配光制御が行われた状態で前方へ向けて照射される。一方、ハイビーム用の光源20から出射された光は、反射部23の第2の通過孔23bを通過し第2の反射面25、25で反射され、配光制御が行われた状態で前方へ向けて照射される。
【0056】
また、車輌においては、車輌用灯具1に対する太陽の位置によっては太陽光が投影レンズ8を透過されてランプユニット6の内部に入射されるおそれがあるが、入射された太陽光はプロテクター12の第1の遮光部12cと第2の遮光部12d、12dによって遮蔽される。従って、太陽光の入射によるランプユニット6の各部品、特に、樹脂材料によって形成された部品の溶融が防止される。特に、第1の遮光部12cは基部12aに対して投影レンズ8側に折り曲げられることにより、投影レンズ8に近付いて位置されているため、投影レンズ8を透過されてランプユニット6の内部に入射される太陽光の高い遮蔽性を有している。
【0057】
上記した光源20、20、・・・の駆動時には、光源20、20、・・・や回路基板10の電子部品及び各回路パターン等から熱が発生する。光源20等に発生した熱は一部を除きヒートシンク9に伝達され、ヒートシンク9の各部、特に、フィン部19、19、・・・から放出される。
【0058】
このとき冷却ファン27が駆動状態にされて回転駆動部29が回転されており、回転駆動部29の回転によって発生する冷却風が放熱部13の流入孔18aを通りフィン部19、19、・・・に沿って第1の経路P1において下方へ向けて流動される(
図5参照)。従って、放熱部13、特に、フィン部19、19、・・・に冷却風が吹き付けられ、ヒートシンク9からの高い放熱性が確保される。
【0059】
一方、光源20等に発生した熱の一部は、光源搭載面10aの前方側において灯室5の空間に放出され又は熱伝導性の高い金属材料によって形成されたリフレクター11に伝達されてリフレクター11から放出される。
【0060】
このとき冷却ファン27が駆動状態にされて回転駆動部29が回転されており、回転駆動部29の回転によって発生する冷却風が取入開口26dからリフレクター11と回路基板10の隙間を通り光源20、20、・・・に吹き付けられて第2の経路P2において下方へ向けて流動される。従って、光源搭載面10aの前方側において灯室5の空間に放出された熱が光源20、20、・・・に沿って流動される冷却風によって下方へ移動され、光源20等から前方側において灯室5の空間に放出される熱に関する高い放熱性が確保される。
【0061】
上記したように、回転駆動部29の回転によって発生する冷却風は取入開口26dから取り入れられて光源20、20、・・・へ向けて流動される。
【0062】
従って、冷却ファン27によって発生する冷却風がリフレクター11に形成された取入開口26dから取り入れられて光源20、20、・・・へ向かうため、リフレクター11とは別に光源20、20、・・・へ向けて冷却風を流動させる専用の部材を設ける必要がなく、部品点数の削減及び構造の簡素化を図った上で光源20、20、・・・の温度上昇を確実に抑制することができる。
【0063】
また、リフレクター11には取入開口26dから取り入れられた冷却風を誘導する第1の誘導傾斜面26a、26aと第2の誘導傾斜面26b、26bと第3の誘導傾斜面26c、26cが形成され、第1の誘導傾斜面26a、26aと第2の誘導傾斜面26b、26bと第3の誘導傾斜面26c、26cが上下方向において冷却ファン27から離隔するに従って光源20、20、・・・に近付くように傾斜されている。
【0064】
従って、光源20、20、・・・に沿って集中的に冷却風が流動され、光源20、20、・・・に対する冷却効率の向上を図ることができる。
【0065】
さらに、回路基板10は前面部16の傾斜状態に応じて鉛直方向に対して後下がりに傾斜され、光源搭載面10aが鉛直方向に対して冷却ファン27側を向く方向へ傾斜した状態で配置されている。
【0066】
従って、冷却ファン27によって発生する冷却風が光源20、20、・・・に沿って流動され易くなり、光源20、20、・・・に対するより一層の冷却効率の向上を図ることができる。
【0067】
また、光源20、20、・・・の駆動時には、回転駆動部29の回転によって発生する冷却風がリフレクター11と回路基板10の隙間を通り第2の経路P2において下方へ向けて流動されると共にリフレクター11の前面側を通り第3の経路P3において下方へ向けて流動される。従って、冷却風がリフレクター11の前後両面に吹き付けられるため、リフレクター11からの高い放熱性が確保される。
【0068】
尚、第3の経路P3において下方へ向けて流動される冷却風は、リフレクター11の前面側からプロテクター12の第1の遮光部12cに沿って流動される。このとき第1の遮光部12cが基部12aに対して前方に折り曲げられて下方へ行くに従って投影レンズ8の下端部に近付く方向へ傾斜されている。従って、第3の経路P3において第1の遮光部12cに沿って流動される冷却風が、投影レンズ8における被取付部8bの下端部へ向けて流動される。
【0069】
被取付部8bの下端部は、上記したように、射出成形時のゲート位置に相当するため、残留歪みが残存している可能性があり、熱による変形を生じ易い部分にされているおそれがあるが、上記した第3の経路P3において第1の遮光部12cに沿って流動される冷却風が被取付部8bの下端部に吹き付けられる。
【0070】
従って、被取付部8bの下端部が冷却風によって冷却されるため、被取付部8bの下端部に残留歪みが残存し熱による変形を生じ易い部分にされている場合においても、被取付部8bの下端部の変形を防止することができる。
【0071】
上記のように、プロテクター12の第1の遮光部12cが冷却風を投影レンズ8へ向けて案内する案内部として設けられているため、冷却風がプロテクター12の第1の遮光部12cによって投影レンズ8へ向けて案内され、プロテクター12の機能性の向上を図った上で投影レンズ8の熱による変形を防止することができる。
【0072】
以上に記載した通り車輌用灯具1にあっては、光源20が搭載された回路基板10と、前面16aに光源20が取り付けられ光源20の駆動時に発生する熱を放出するヒートシンク9と、回路基板10及びヒートシンク9の上方に配置された冷却ファン27とを備え、冷却ファン27によって発生する冷却風がヒートシンク9と光源20に沿って流動される。
【0073】
従って、回路基板10及びヒートシンク9の上方に配置された冷却ファン27によって発生する冷却風がヒートシンク9とヒートシンク9の前面16aに取り付けられた回路基板10とに沿って流動されるため、前後方向における小型化を図った上で光源20に対する冷却性能の向上を図ることができる。
【0074】
尚、上記には、冷却ファン27が回路基板10及びヒートシンク9の上方に配置され、冷却ファン27によって冷却風が上方から下方へ流動される例を示したが、逆に、回転駆動部29の回転によって冷却ファン27において空気が下方から吸い込まれ上方へ吹き出される構成にされ、冷却風が下方から上方へヒートシンク9と光源20に沿って流動される構成にされていてもよい。
【0075】
また、冷却ファン27が回路基板10及びヒートシンク9の下方に配置され、冷却風がヒートシンク9と光源20に沿って流動される構成にされていてもよい。この場合に、冷却ファン27によって冷却風が下方から上方へ流動されてもよく、冷却ファン27によって冷却風が上方から下方へ流動されてもよい。
【0076】
但し、冷却ファン27が回路基板10及びヒートシンク9の下方に配置される場合には、冷却風が光源20、20、・・・に沿って流動され易くするために、回路基板10が鉛直方向に対して前下がりに傾斜された状態で配置されることが望ましい。
【0077】
さらに、車輌用灯具1においては、冷却ファン27に軸部29aと複数の羽根29bとが設けられ、軸部29aが前後方向において光源20よりヒートシンク9側に位置されている。
【0078】
従って、光源20の上方又は下方に羽根29bが位置されるため、光源20に沿って流動される冷却風の風量が多くなり、光源20の駆動時に発生する熱に関する冷却性能の向上を図ることができる。
【0079】
さらにまた、リフレクター11が金属材料によって形成されヒートシンク9に取り付けられている。
【0080】
従って、光源20、20、・・・の駆動時に発生する熱がヒートシンク9とリフレクター11の双方に伝達されるため、ヒートシンク9に加えてリフレクター11からの放熱により冷却効率の一層の向上を図ることができる。
【0081】
尚、上記には、車輌用灯具1が車輌用前照灯である例を示したが、車輌用灯具1は車輌用前照灯以外の他の車輌用灯具であってもよく、光が前方へ向けて照射される他、光が後方へ向けて照射される車輌用灯具であってもよい。
【0082】
光が後方へ向けて照射される車輌用灯具の場合には、ヒートシンク9の後面に回路基板10が取り付けられ、回路基板10及びヒートシンク9の上方又は下方に冷却ファン27が配置され、冷却ファン27によって発生する冷却風がヒートシンク9と光源20に沿って流動される。
【符号の説明】
【0083】
1…車輌用灯具、9…ヒートシンク、10…回路基板、11…リフレクター、12…プロテクター、12c…第1の遮光部、16a…前面、20…光源、26a…第1の誘導傾斜面、26b…第2の誘導傾斜面、26c…第3の誘導傾斜面、26d…取入開口、27…冷却ファン、29a…軸部、29b…羽根