(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20241210BHJP
C22C 38/06 20060101ALI20241210BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20241210BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20241210BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/06
C22C38/60
C21D8/12 A
H01F1/147 175
(21)【出願番号】P 2022538103
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 KR2020018609
(87)【国際公開番号】W WO2021125855
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172471
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ヒョン ドン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イル-ナム
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュンス
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャン ス
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120403(JP,A)
【文献】特開2019-178372(JP,A)
【文献】特開2019-178373(JP,A)
【文献】特開2013-189693(JP,A)
【文献】特開2014-173099(JP,A)
【文献】特開2008-031490(JP,A)
【文献】特開2001-279402(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0077984(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/12, 9/46
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:2.2~4.5%、Mn:0.5%以下(0%を除く)、Al:0.001~0.5%、Sn:0.07~0.25%およびN:0.0010~0.0090%を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなり、
鋼板表面から内部方向に存在する表層部、および前記表層部の内部に存在する中心部を含み、
前記中心部はN:0.005重量%以下含み、前記表層部は中心部に比べてNを0.001重量%以上さらに含み、
前記表層部は平均結晶粒径が60μm以下であり、前記中心部は平均結晶粒が70~300μmであり、
前記表層部の厚さは鋼板全体厚さの10~20%であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【請求項2】
C:0.005重量%以下およびS:0.003重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
Sb:0.2重量%以下、P:0.1重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
Cu:0.015重量%以下、Ni:0.05重量%以下、Cr:0.05重量%以下、Zr:0.01重量%以下、Mo:0.01重量%以下およびV:0.01重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
前記表層部は、窒化物を含み、窒化物の平均粒径は10~100nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
前記中心部の平均結晶粒径は前記表層部の平均結晶粒径の2倍以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
前記中心部の結晶粒のうち、{100}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が30%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
前記中心部の結晶粒のうち、{001}<012>方位で15゜以下に外れた方位を有する結晶粒の分率が20%以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項9】
前記中心部は、ODF(orientation distribution function)で示した時、{001}<012>方位の強度(intensity)がランダム(random)の7倍以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項10】
前記中心部の結晶粒のうち、{111}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が25%以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項11】
B
50/B
s≧0.84を満足することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
(B
50は、5000A/mの磁場を付加した時に誘導される磁束密度の大きさ(Tesla)を示し、B
Sは、飽和磁束密度値(Tesla)を示す。)
【請求項12】
W
15/50が1.94W/kg以下であり、W
10/1000が43W/kg以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
(W
15/50は、50Hz周波数で1.5Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延方向垂直方向の平均損失を示し、W
10/1000は、1000Hz周波数で1.0Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延方向垂直方向の平均損失を示す。)
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
重量%で、Si:2.2~4.5%、Mn:0.5%以下(0%を除く)、Al:0.001~0.5%、Sn:0.07~0.25%およびN:0.005%以下(0%を除く)を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含み、
前記最終焼鈍する段階で、窒化焼鈍する段階および結晶粒成長焼鈍する段階を含み、
前記冷延板を前記窒化焼鈍するために昇温する時、300℃乃至窒化焼鈍温度まで昇温速度が30℃/秒以上であり、
前記窒化焼鈍する段階で窒化量は10~80重量ppmであり、
結晶粒成長焼鈍する段階の温度は960~1200℃であ
リ、
前記冷延板を製造する段階で最終圧下率が60~88%であリ、
前記窒化焼鈍する段階の温度は700~850℃であることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記窒化焼鈍する段階は、アンモニア、窒素および水素を含む雰囲気で焼鈍することを特徴とする請求項
13に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、Si、Snを適切に添加し、窒化を通じて集合組織を改善することで、磁性を改善した無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、モータ、発電機などの回転機器と小型変圧機などの電気機器で鉄芯用材料として使用され、電気機器のエネルギー効率を決定するのに重要な役割を果たす。
電磁鋼板の特性としては、代表的に鉄損と磁束密度が挙げられるが、鉄損は小さく、磁束密度は高いほど良く、これは鉄芯に電場を印可して磁場を誘導する時、鉄損が低いほど熱により損失されるエネルギーを減らすことができ、磁束密度が高いほど同じエネルギーでより大きい磁場を誘導することができるためである。
最近の電気機器では、高効率と小型化を目的で高周波領域での使用が増加しており、特に電気自動車など環境にやさしい駆動モータは、400Hz以上の高周波領域での磁性向上が強く要求されており、速度が速くなることに伴って数~数十kHzでの鉄損も重要になる。自動車用モータの場合、高周波と低周波鉄損共に優れていれば特に良い。
【0003】
高周波鉄損の減少のために比抵抗が大きい合金元素であるSi、Al、Mnなどを添加するが、この方法は、鉄損は減少するものの、飽和磁束密度も減少する虞がある。また、Si添加量が過度に高くなれば加工性が低下して冷間圧延が困難となって生産性が落ち、Al、Mnなども多く添加されるほど圧延性も低下し、硬度が増加し、加工性も落ちるようになる問題点が発生する。
また6.5重量%以上のシリコン鋼板の場合、冷間加工性が低下して一般的な冷間圧延による生産は不可能であり、浸珪法などを使用しなければならない。また板厚さを非常に薄くして製造する方法があるが、鋼板が薄くなるほど生産費用が増加し、モータ製作時にも製作自体の困難と積層枚数の増加により生産費用が増加する。
【0004】
磁束密度と鉄損を改善するためには、集合組織を改善する方法が提示されている。冷延鋼板の表面で(100)結晶粒の選択的結晶成長が行われるように焼鈍して、焼鈍板の表面が(100)[0vw]結晶方位からなるようにする方法が提示されている。以下、結晶方位はミラー指数(Miller index)で表示する。結晶方位を{hkl}<uvw>または(hkl)[uvw]で表示する時、{hkl}は表面方位に平行な結晶面の面指数であり、<uvw>は圧延方向に平行な結晶方向を示す。h、k、l、u、v、wは整数である。この技術では結晶粒サイズが全て厚さより大きくて厚さを貫通している構造を有する。
無方向性電磁鋼板では、モータコアなどの複雑な形状をパンチング(punching)加工を通じて製造しているため、結晶粒サイズが過度に大きくなれば加工性が非常に悪くなる。
【0005】
また、金属板材面に平行な{100}面を金属板材表面に形成させるための方法が提示されている。金属板材の内部領域および表面領域のうちの少なくとも一領域の酸素を減少させたり金属板材を外部の酸素から遮断したりしながら、オーステナイト相が安定した温度下で金属板材を熱処理する熱処理段階、および熱処理された金属板材をフェライト相に相変態させる段階を含む金属板材の表面{100}面形成方法である。この方法は、外部から酸素を遮断することを要するため、工業的に実行が難しい真空熱処理が必要であり、熱処理に多くの時間を要するため、工業的に達成が非常に難しいプロセスである。
しかし、鉄損の場合、履歴損失と渦電流損失と異常渦電流損失との合計で表すことができるが、高周波特性の場合には、渦電流損失の比率が増加して履歴損失に重要な集合組織制御以外の他の方法が要求されている。
渦電流損失に大きく影響を与える因子は、比抵抗、板厚さ、結晶粒サイズがある。鋼板の比抵抗と板厚さは前述したとおりである。結晶粒サイズについてみると、結晶粒サイズが減少する時、渦電流損失は減少する。しかし、結晶粒サイズの減少により履歴損失はむしろ増加するようになる。これによって最適の結晶粒サイズを設定している。
【0006】
周波数に応じた鉄損を考慮してみると、一般的に高周波モータ用鋼板の最適の結晶粒サイズは、一般的な低周波数の最適の結晶粒サイズより小さいことが知られている。
また周波数が高くなると、表皮深さ(skin depth)効果により渦電流が表面に主に形成されるため、表面結晶粒の微細化または表面比抵抗の増加が必要である。高周波電流が流れると電流が導体の表面に集中するが、表面電流の1/e(36.5%)が流れる深さを表皮深さ(skin depth)という。
δ=(2ρ/μω)1/2~503.3*(ρ/μrf)1/2
δ:表皮深さ(skin depth)[m]、ρ:電気比抵抗[Ωm]、μr:相対透磁率、f:周波数
Si含有鉄の場合、おおよその表皮深さ(skin depth)は50Hzで200μmであるが、400Hzで100μm、2000Hzでは35μm程度に薄くなる。
したがって、表層部結晶粒を小さくすると渦電流損失が減少するため、高周波に表面に形成される渦電流の形成を抑制して高周波鉄損を改善することができる。また中心部結晶粒を大きくして履歴損失が減少して鉄損が減少することができ、特に低周波鉄損が向上したり少なくとも劣化を防止したりすることができる。
【0007】
高周波特性を向上させる方法として、鋼板表層部に鋼板表層からの深さ窒化物または/および内部酸化物の平均粒径および板厚さ断面内での面積率が所定範囲に規制された窒化物および/または内部酸化物含有層を形成し、および窒化物および/または内部酸化物含有層以外の領域に存在する窒化物および内部酸化物の板厚さ断面内での面積率と鋼板の平均結晶粒直径Dを所定範囲に規制する方法が知られている。しかし、この方法では窒化物および内部酸化物の生成状態やこれらの平均粒径などは焼鈍温度、焼鈍時間および焼鈍雰囲気(N2濃度、露点など)などの調整により制御したと報告された。特に内部酸化物、窒化物の粒子直径は主に焼鈍温度と焼鈍時間を変化させることにより、また内部酸化物含有層、窒化物含有層の生成深さは主に焼鈍時間と焼鈍雰囲気を変化させることにより、また板厚さ断面内での内部酸化物、窒化物の面積率は主に焼鈍雰囲気と焼鈍温度を変化させることにより、それぞれコントロールした
このように粗大な酸化物と窒化物を利用する場合、結晶粒サイズの制御のために非常に多量を含有させなければならず、短時間に効率的に制御することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することである。より詳しくは、本発明は、Si、Snを適切に添加し、窒化を通じて集合組織を改善することで、磁性を向上させた無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.2~4.5%、Mn:0.5%以下(0%を除く)、Al:0.001~0.5%、Sn:0.07~0.25%およびN:0.0010~0.0090%を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなる。
鋼板表面から内部方向に存在する表層部、および前記表層部内部に存在する中心部を含み、中心部はN:0.005重量%以下含み、前記表層部は中心部に比べてNを0.001重量%以上さらに含み、表層部は平均結晶粒径が60μm以下であり、中心部は平均結晶粒が70~300μmである。より詳しくは中心部は平均結晶粒が70~130μmである。
【0010】
本発明の無方向性電磁鋼板は、C:0.005重量%以下およびS:0.003重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
本発明の無方向性電磁鋼板は、Sb:0.2重量%以下、P:0.1重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の無方向性電磁鋼板は、Cu:0.015重量%以下、Ni:0.05重量%以下、Cr:0.05重量%以下、Zr:0.01重量%以下、Mo:0.01重量%以下およびV:0.01重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
表層部は、窒化物を含み、窒化物の平均粒径は10~100nmであり得る。
中心部の平均結晶粒径は前記表層部の平均結晶粒径の2倍以上であり得る。
【0012】
中心部の結晶粒のうち、{100}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が30%以上であり得る。
中心部の結晶粒のうち、{001}<012>方位で15゜以下に外れた方位を有する結晶粒の分率が20%以上であり得る。
中心部は、ODF(orientation distribution function)で示した時、{001}<012>方位の強度(intensity)がランダム(random)の7倍以上であり得る。
中心部の結晶粒のうち、{111}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が25%以下であり得る。
【0013】
本発明の無方向性電磁鋼板は、B50/Bs≧0.84を満足することができる。
(B50は、5000A/mの磁場を付加した時に誘導される磁束密度の大きさ(Tesla)を示し、BSは、飽和磁束密度値(Tesla)を示す。)
本発明の無方向性電磁鋼板は、W15/50が1.94W/kg以下であり、W10/1000が43W/kg以下であり得る。
(W15/50は、50Hz周波数で1.5Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延方向垂直方向の平均損失を示し、W10/1000は、1000Hz周波数で1.0Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延方向垂直方向の平均損失を示す。)
【0014】
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.2~4.5%、Mn:0.5%以下(0%を除く)、Al:0.001~0.5%、Sn:0.07~0.25%およびN:0.005%以下(0%を除く)を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。
最終焼鈍する段階で、窒化焼鈍する段階および結晶粒成長焼鈍する段階を含み、冷延板を前記窒化焼鈍するために昇温する時、300℃乃至窒化焼鈍温度まで昇温速度が30℃/秒以上であり、窒化焼鈍する段階で窒化量は10~80重量ppmであり、結晶粒成長焼鈍する段階の温度は960~1200℃である。
冷延板を製造する段階で最終圧下率が60~88%であり得る。
窒化焼鈍する段階の温度は700~850℃であり得る。
窒化焼鈍する段階は、アンモニア、窒素および水素を含む雰囲気で焼鈍することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鋼に添加される合金元素のうち、Si、Mn、Alと、Sn含有量および窒化により析出物を厚さ方向に異なるように制御して結晶粒サイズを制御することによって、高周波鉄損に優れると同時に、低周波鉄損にも優れた無方向性電磁鋼板を製造することができる。
また、窒化および表面結晶粒微細化により強度値にも優れた無方向性電磁鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板の断面の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは直ちに他の部分の上にあるか、またはその間に他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
【0018】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施形態で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量の分、残部である鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0019】
異なって定義していないが、ここで使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
以下、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0020】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.2~4.5%、Mn:0.5%以下(0%を除く)、Al:0.001~0.5%、Sn:0.07~0.25%およびN:0.0010~0.0090%を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなる。
以下、無方向性電磁鋼板の成分限定の理由から説明する。
【0021】
Si:2.20~4.50重量%
シリコン(Si)は、比抵抗を増加させて鉄損中の渦流損失を低める元素である。Siが過度に少なく添加されると、低鉄損特性を得ることが難しいこともある。一方、Siが過度に多く添加されると、板破断が発生することがある。したがって、Siを2.5~4.0重量%含むことができる。より詳しくは2.70~4.80重量%含むことができる。さらに詳しくは2.90~3.50重量%含むことができる。
【0022】
Mn:0.50重量%以下
マンガン(Mn)は、添加量が増加するほど飽和磁束密度が減少し、また本発明でMnは、オーステナイト形成元素であるため、固体相変態を起こさない範囲を満足するために添加されないことが好ましい。ただし、Si含有量が高くなる場合、マンガンが高くなってもオーステナイトを形成しないMn量が増加することがある。Mnは、比抵抗増加効果があって鉄損が優秀になり得るため、一部添加されることが良いことから、0%は除き、オーステナイトを形成しない範囲でMn量は0.5%以下にすることができる。より具体的にMnは、0.01~0.50重量%含むことができる。
【0023】
Al:0.001~0.500重量%
アルミニウム(Al)は、比抵抗を増加させて渦流損失を低める元素であるが、Al含有量の増加により集合組織が変化するようになる。Alが過度に少なく添加される場合、極微量のNと反応して非常に微細なAlNが形成されて磁性を劣化させることがある。反対に、Alが過度に多く添加される場合、Al酸化物は表面に分布しており、Al窒化物は磁性に良くない影響を与え、追ってコーティング密着性も劣位にさせることがある。したがって、Alを0.001~0.500重量%含むことができる。より詳しくは0.010~0.400重量%含むことができる。
【0024】
Sn:0.07~0.25重量%
スズ(Sn)は、結晶粒系偏析元素であり、結晶粒系を通じた窒素の拡散を抑制し、磁性に害になる{111}、{112}集合組織の形成を抑制し、磁性に有利な{100}および{110}集合組織を増加させて磁気的特性を向上させるために添加する元素である。Snが過度に少なく添加されると、前述した効果を十分に得ることができない。Snが過度に多く添加されると、結晶粒成長を抑制して磁性を落とし、圧延性を劣位にさせることがある。したがって、Snを0.070~0.250重量%含むことができる。より詳しくは0.100~0.230重量%含むことができる。
ただし、窒素の拡散においてSnが影響を与えるようになるため、本発明の一実施形態では窒化を行う時、このようなSnの偏析による窒化妨害を減らすためにSnが偏析する前の温度で先に窒化を行った後、結晶粒成長焼鈍を行うことができる。
【0025】
N:0.0010~0.0090重量%
窒素(N)は、微細で長いAlN析出物を形成して結晶粒の成長を抑制するため、スラブ中には添加されないことが好ましいが、製鋼工程で不可避に添加される量を考慮してスラブ中には0.005重量%以下含むことができる。より詳しくはスラブ中には0.003重量%以下含むことができる。さらに詳しくは0.002重量%以下含むことができる。製造工程と関連して後述するように、本発明の一実施形態では窒化工程を通じてN含有量を増加させる。
したがって、最終製造される無方向性電磁鋼板には、Nが0.0010~0.0090重量%含むことができる。後述するように、本発明の一実施形態で表層部および中心部のN含有量が互いに異なり得、前述したN含有量は鋼板全体での平均数値を意味する。
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、C:0.005重量%以下およびS:0.003重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0026】
C:0.005重量%以下
炭素(C)は、Ti、Nbなどと結合して炭化物を形成して磁性を劣位にさせ、最終製品で電気製品として加工後の使用時、磁気時効により鉄損が高まって電気機器の効率を減少させるため、0.005重量%以下含むことができる。より詳しくは0.003重量%以下含むことができる。
【0027】
S:0.003重量%以下
硫黄(S)は、微細な析出物であるMnSおよびCuSを形成し、結晶粒成長を抑制して磁気特性を悪化させるため、できるだけ低く添加することができる。したがって、上限を0.003重量%に制限することができる。より詳しくは0.002重量%以下含むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、Sb:0.2重量%以下、P:0.1重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
SbおよびPは、前述したSnと共に集合組織を改善する効果があり、前述した範囲で追加的に添加することができる。
【0029】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、Cu:0.015重量%以下、Ni:0.05重量%以下、Cr:0.05重量%以下、Zr:0.01重量%以下、Mo:0.01重量%以下およびV:0.01重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
Cu、Ni、Crの場合、不純物元素と反応して微細な硫化物、炭化物および窒化物を形成して磁性に有害な影響を与えるため、これら含有量をCu:0.015重量%以下、Ni:0.05重量%以下、Cr:0.05重量%以下に制限する。またZr、Mo、Vなども強力な炭窒化物形成元素であるため、できるだけ添加されないことが好ましく、Zr:0.01重量%以下、Mo:0.01重量%以下およびV:0.01重量%以下に含有されるようにする。
【0030】
残部は、Feおよび不可避な不純物からなる。不可避な不純物については、製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入される不純物であり、これは当該分野で広く知られているため、具体的な説明は省略する。本発明の一実施形態で前述した合金成分以外に元素の追加を排除するのではなく、本発明の技術思想を害しない範囲内で多様に含まれ得る。追加元素をさらに含む場合、残部であるFeを代替して含む。 不可避な不純物としては、例えば、B、Mgなどがあり得、B:0.002重量%以下、Mg:0.005重量%以下に管理されなければならない。
【0031】
図1では本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板の断面の模式図を示す。
図1に示されるように、本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板100は、鋼板表面から内部方向に存在する表層部20、および表層部20内部に存在する中心部10を含む。
【0032】
本発明の一実施形態において窒化により、中心部10および表層部20での窒素含有量を異なるようにし、表層部20に窒化物を集中させて、低周波鉄損の劣化を防止することができる。同時に表層部20窒化物により表層部20の結晶粒径は微細化されて、高周波鉄損は向上することができる。また、集合組織が改善されて、磁束密度も改善され得る。
表層部20は、鋼板全体厚さの10~20%厚さで存在する。表層部20は、鋼板両面に存在することができるため、中心部10は、鋼板全体厚さの60~80%厚さで存在する。より具体的に表層部20は、鋼板全体厚さの15%厚さで存在することができる。
【0033】
本発明の一実施形態において窒化により、中心部10および表層部20での窒素含有量が異なるように形成される。具体的に中心部10は、Nを0.005重量%以下含むことができる。これはスラブ内のN含有量と同一なものであり、窒化過程で中心部10までは窒素が実質的に浸透しないことを意味する。
表層部20は、中心部10の窒素含有量に比べて0.0010重量%以上窒素を多く含む。このように窒素含有量を異なるようにすることによって、表層部20に窒化物を集中させることができる。表層部20および中心部10で厚さ方向に窒素含有量の勾配が存在することができ、前述した窒素範囲は全体厚さでの平均を意味する。
前述したように、全体電磁鋼板100内には窒素が0.0010~0.0090重量%含まれ得る。
前述したように、表層部20に集中的に窒化されることによって、表層部20は窒化物が析出され得る。具体的に窒化物の平均粒径は10~100nmであり得る。窒化物としては(Al、Si)N、(Al、Si、Mn)NまたはAlNになることができる。
【0034】
表層部20窒化物により表層部20の結晶粒径は微細化される反面、中心部10結晶粒は微細化されず、これらの平均結晶粒径が互いに異なり得る。
具体的に表層部20は平均結晶粒径が60μm以下であり、中心部10は平均結晶粒が70~300μmである。このように結晶粒径を互いに異なるように制御することによって、低周波鉄損および高周波鉄損を向上させることができる。焼鈍温度が過度に高くて中心部結晶粒が正常でない粒子が成長するようになると、意図しない結晶粒が成長して鉄損が悪くなり得る。したがって、中心部結晶粒は300μm以下に制御する。より具体的に中心部は、平均結晶粒が70~130μmであり得る。さらに具体的に表層部20は、平均結晶粒径が20~55μmであり、中心部10は平均結晶粒が70~120μmであり得る。結晶粒径は結晶粒と同一な面積の仮想の円を仮定してその円の直径を意味する。測定は、圧延面(ND面)と平行な面を基準として測定することができる。
【0035】
中心部10の平均結晶粒径は、表層部20の平均結晶粒径の2倍以上であり得る。
一方、中心部10は集合組織が改善されることで、磁束密度も改善され得る。
中心部10の結晶粒のうち、{100}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が30%以上であり得る。
本発明の一実施形態では、Sn添加と共に窒化処理を実施することによってこの値を30%以上に上昇させることができる。そのために、磁束密度の画期的改善がなされ得る。より具体的に{100}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が30~50%であり得る。
中心部10の結晶粒のうち、{001}<012>方位で15゜以下に外れた方位を有する結晶粒の分率が20%以上であり得る。
中心部10は、ODF(orientation distribution function)で示した時、{001}<012>方位の強度(intensity)がランダム(random)の7倍以上であり得る。
このように{001}<012>方位の集合組織が発達することによって、円周特性が非常に良くなり得る。より具体的に中心部10の結晶粒のうち、{001}<012>方位で15゜以下に外れた方位を有する結晶粒の分率が20~40%であり得る。
中心部の結晶粒のうち、{111}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が25%以下であり得る。
【0036】
RD方向を基準とする時、磁性に最も良い方位は<100>方位であり、次に<110>、最後に<111>が最も悪い。
無方向性電磁鋼板は、鋼板の表面方向に<100>が均一に配置される場合、理想的な磁性値を有するようになるが、面方向に<112>方位が強く発達すれば磁性が非常に悪くなる。また相変態がない高いSi含有量を含む無方向性電磁鋼板で{112}面が圧延面となす角度が15°以下である結晶粒の体積分率を考慮すると、{111}方位よりさらに多く存在する。このような方位も圧延面方向に磁性に悪い方位が多く存在するようになる原因になるため、このような方位の分率を低める必要がある。より具体的に{111}面が圧延面となす角度が15゜以下である結晶粒の分率が10~25%であり得る。
【0037】
このように結晶粒径を互いに異なるように制御し、集合組織を改善することによって磁性を向上させることができる。Si含有量により磁束密度をこの飽和磁束密度値で割ってこそ工程改善による磁性に有利な集合組織形成程度を評価することができる。つまり、シリコン含有量が低い状態で高磁束密度を得ることができるとしても、鉄損が非常に良くない特性を有するため、鉄損も低く、磁束密度も高い優れた磁性を有する集合組織形成程度はB50/Bs値で評価しなければならない。具体的に本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、B50/Bs≧0.84を満足することができる。
(B50は、5000A/mの磁場を付加した時に誘導される磁束密度の大きさ(Tesla)を示し、BSは、飽和磁束密度値(Tesla)を示す。)
Bsは、下記により計算され得る。
Bs=2.1561-0.0413×[Si]-0.0198×[Mn]-0.0604×[Al]
[Si]、[Mn]、[Al]は、それぞれ鋼板内のSi、Mn、Alの含有量(重量%)を示す。
【0038】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、W15/50が1.94W/kg以下であり、W10/1000が43W/kg以下であり得る。
(W15/50は、50Hz周波数で1.5Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延方向垂直方向の平均損失を示し、W10/1000は、1000Hz周波数で1.0Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延方向垂直方向の平均損失を示す。)
【0039】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.2~4.5%、Mn:0.5%以下(0%を除く)、Al:0.001~0.5%、Sn:0.07~0.25%およびN:0.005%以下(0%を除く)を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなるスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。
以下、各段階別に具体的に説明する。
【0040】
まず、スラブを熱間圧延する。
スラブの合金成分については、前述した無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したため、重複する説明は省略する。無方向性電磁鋼板の製造過程で合金成分が実質的に変動しないため、無方向性電磁鋼板とスラブの合金成分は実質的に同一である。
具体的にスラブは、重量%で、Si:2.2~4.5%、Mn:0.5%以下(0%を除く)、Al:0.001~0.5%、Sn:0.07~0.25%およびN:0.005%以下(0%を除く)を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなることができる。
スラブは、固体状態前の温度領域でオーステナイト相を形成しない成分を有することができる。
その他の追加元素については、無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したため、重複する説明は省略する。
【0041】
スラブを熱間圧延する前に加熱することができる。スラブの加熱温度は、制限されないが、スラブを1050~1200℃で加熱することができる。スラブ加熱温度が過度に高ければ、スラブ内に存在する窒化物、炭化物、硫化物などの析出物が再固溶された後、熱間圧延および焼鈍時に微細析出されて結晶粒成長を抑制し、磁性を低下させることがある。
【0042】
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱延板厚さは2.0~2.3mmであり得る。熱延板を製造する段階で仕上げ圧延温度は800℃以上であり得る。具体的に800~1000℃であり得る。熱延板は700℃以下の温度で巻き取られ得る。
熱延板を製造する段階の後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。この時、熱延板焼鈍温度は900~1150℃であり得る。熱延板焼鈍温度が過度に低ければ、素鋼にSnが過量含有されて結晶粒成長が少なくなることがある。焼鈍温度が過度に高ければ、表面欠陥が発生することがある。熱延板焼鈍は必要に応じて磁性に有利な方位を増加させるために行われるものであり、省略も可能である。焼鈍された熱延板を酸洗することができる。
【0043】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延は0.10mm~0.35mmの厚さに最終圧延する。必要時、冷間圧延する段階は、1回の冷間圧延段階または中間焼鈍を間に置いた2回以上の冷間圧延段階を含むことができる。この時、中間焼鈍温度は850~1150℃であり得る。
冷間圧延する段階で最終圧下率を60%~88%に調節することができる。冷間圧下率は過度に低ければGoss方位が発達し、過度に高ければ{111}<112>方位の発達が強くなるため、前述した範囲に調節することができる。1回の冷間圧延段階を含む場合、1回の冷間圧延段階の圧下率が最終圧下率であり、2回以上冷間圧延する場合、最後の冷間圧延での圧下率が最終圧下率である。
【0044】
次に、冷延板を最終焼鈍する。前述したように、本発明の一実施形態で窒化工程を導入することによって磁性を向上させることができる。
具体的に最終焼鈍する段階で、窒化焼鈍する段階および結晶粒成長焼鈍する段階を含む。
冷延板を窒化焼鈍するために昇温する時、300℃乃至窒化焼鈍温度まで昇温速度が30℃/秒以上であり得る。{111}方位と{112}方位の形成を抑制し、Goss方位よりは{100}方位を成長させるためには、Snの適切な含有量と適切な冷間圧下率と昇温速度が非常に重要である。昇温速度を高めると{111}や{112}方位の成長を抑制し、{100}方位の成長が有利になるためである。また回復および再結晶が起こる温度である300~850℃を含む領域での昇温速度が特に一層重要であるが、この時、昇温速度が30℃/秒以上である時、このような{100}方位の成長が現れる。より具体的を100℃/秒以上であり得る。
窒化焼鈍する段階の温度は700~850℃であり得る。窒化処理温度は過度に高ければSnが偏析したり酸化層形成により窒化が良好に行われないこともある。過度に低ければ拡散量が過度に少なくなることがある。より具体的に750~800℃であり得る。
窒化焼鈍する段階は、アンモニア、窒素および水素を含む雰囲気で焼鈍することができる。
窒化焼鈍を通じて窒化量を10~80重量ppm増やすことができる。窒化温度が低くて大部分表層部に窒化物が存在するが、窒化量が過度に大きくなると低周波鉄損が悪くなることがある。窒化量が過度に小さいと表層部の結晶粒微細化の効果がないこともある。より具体的に窒化量は15~50重量ppmであり得る。窒化量は表層部20および中心部10を含む全体電磁鋼板100の厚さを基準として計算する。
【0045】
結晶粒成長焼鈍する段階は960~1200℃で行うことができる。Snの含有量が高くて結晶粒成長が抑制されている状態であるため、前述した範囲に最終焼鈍することができる。
結晶粒成長焼鈍時間は65秒~900秒であり得る。焼鈍時間が過度に短い場合、Snの含有量が高いため、結晶粒系偏析により結晶粒成長を妨害して結晶粒のサイズが小さくなることがある。焼鈍時間が過度に長い場合、連続焼鈍が難しくなることがある。また焼鈍時間が短くなれば経済性が高まるため、経済性を高める観点で結晶粒成長焼鈍時間は65秒~330秒であり得る。
結晶粒成長焼鈍時の雰囲気の水素を含み、酸化度(PH2O/PH2)は0.015以下であることが好ましい(ここでPH2は水素の分圧を、PH2Oは水蒸気の分圧を意味する。)。
また結晶粒成長焼鈍時、窒素および水素雰囲気で行うことができ、水素を51vol%以上含むことができる。
【0046】
最終焼鈍後、絶縁被膜を形成することができる。絶縁被膜は、有機質、無機質および有機-無機複合被膜で処理され得、その他の絶縁が可能な被膜剤で処理することも可能である。
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されない。
【実施例1】
【0047】
重量%で、C:0.0025%、Mn:0.07%、Al:0.028%Si、3.4%、S:0.0015%、N:0.0005%および残部はFeおよびその他不可避な不純物からなり、表1のSn含有量を含むスラブを準備した。スラブを1150℃で再加熱した後、2.0mmに熱間圧延して熱延鋼板を製造した。このように熱間圧延された鋼板を1100℃で100秒間熱延板焼鈍を施した後、750℃まで徐冷後に空冷した。その後、鋼板を酸洗した後、0.27mmに冷間圧延を施した。
最終焼鈍は、窒化焼鈍後に結晶粒成長焼鈍を行い、窒化焼鈍温度および窒化量は下記のとおりである。結晶粒成長温度も表1のように変更した。結晶粒成長時間は300秒間最終焼鈍を施して電磁鋼板を製造した。この時、窒化処理温度まで昇温速度は表1のようにした。
【0048】
このように製造した電磁鋼板に対して磁性を測定し、鋼板の磁性測定は60X60mm2サイズの単板測定器を利用して圧延方向と圧延直角方向に測定した後、これを平均値で示した。集合組織はEBSD測定を通じて方位分率を計算し、その結果を下記表2に示した。
表層部は両表面から15%厚さまでであり、中心部は表層部の内部の部分である。
【0049】
【0050】
【0051】
表1および表2に示すとおり、昇温率が高く維持され、窒化を通じて結晶粒径を表層部と中心部を異なるように制御した時、低周波鉄損と高周波鉄損が共に改善されることを確認できる。また強度も改善されることを確認できる。
これは集合組織の制御による低周波鉄損の制御および中心部の結晶粒サイズの成長による低周波鉄損の劣化防止および表層部の結晶粒サイズの減少による高周波鉄損の改善をもたらし、表層部の結晶粒サイズの減少および窒化による析出物は引張強度の増加を通じたモータ効率の増加に寄与することができる。
【0052】
反面、比較材1~3は、窒化焼鈍しないため、表層部および中心部の結晶粒サイズが適切に調節されず、磁性が劣位であることを確認できる。
比較材4は、昇温速度が過度に低くて中心部の結晶粒径が小さく、磁性が劣位であることを確認できる。
比較材5は、窒化量が少ないため、表層部の結晶粒径が大きく、高周波鉄損が劣位であり、強度が劣位であることを確認できる。
比較材6は、窒化量が過度に高いため、中心部の結晶粒径が小さく、磁性が劣位であることを確認できる。
比較材7は、結晶成長焼鈍温度が過度に高いため、中心部の結晶粒径が過度に大きく、磁性および強度が劣位であることを確認できる。
【実施例2】
【0053】
重量%で、C:0.002%、Mn:0.3%、Al:0.04%N:0.0005%および、表3のようにSi、Snの含有量を変化させ、残部はFeおよびその他不可避な不純物からなるスラブを準備した。
スラブを1150℃で再加熱した後、1.6mmに熱間圧延して熱延鋼板を製造した。熱間圧延された鋼板を1100℃で100秒間熱延板焼鈍を施した後、750℃まで徐冷後に空冷した。その後、鋼板を酸洗した後、0.27mmに冷間圧延を施した。最終焼鈍で下記の3つの比較例は窒化せず、残りは780℃で30ppm窒化をした後に水素95%、窒素5%、露点-25℃である雰囲気下(この時、酸化度PH20/PH2値は0.00076である。)、1150℃で300秒間最終焼鈍を施して電磁鋼板を製造した。この時、300℃から780℃まで昇温速度は表3のとおりにした。
密着性は15mmΦ曲げ試験で評価した。剥離が発生しない場合は良好、剥離が発生する場合は不良と表示した。
【0054】
【0055】
【0056】
表3および表4に示すとおり、Si、Snが適切に含まれ、窒化量が適切な時、{111}が減少し、{100}方位が増加し、特に{100}<012>値が増加して磁束密度が改善されることを確認できる。
比較例8、9、10は、Si、Snを適切に含んでおらず、窒化焼鈍しないため、集合組織が改善されず、磁性が劣位であることを確認できる。
比較例11は、Snを適切に含んでおらず、集合組織が改善されず、磁性が劣位であることを確認できる。また密着性が劣位であることを確認できる。
比較例12は、昇温速度が過度に低いため、集合組織が改善されず、磁性が劣位であることを確認できる。
【実施例3】
【0057】
重量%で、C:0.002%、Si:3.35%、Al:0.035%、Sn:0.13%、Mn:0.3%、N:0.001%、S:0.0009%、Cu:0.007%および残部はFeおよびその他不可避な不純物からなるスラブを準備した。
このスラブを1150℃で再加熱し、続いて2.0mmに熱間圧延して熱延鋼板を製造した。この鋼板を下記表5の厚さまで冷間圧延した鋼板と冷延していない鋼板を焼鈍した。焼鈍条件は1100℃で施した後、750℃まで徐冷後に空冷した。その後、鋼板を酸洗した後、このような鋼板を0.27mmに冷間圧延を施し、冷間圧延された鋼板を最終焼鈍した。
冷延鋼板の最終焼鈍で昇温率は40℃/sに昇温して780℃で35ppm窒化量で窒化焼鈍をした後、表5の温度で300秒間結晶粒成長焼鈍を施した。
【0058】
【0059】
【0060】
表5および表6に示すとおり、結晶粒成長焼鈍温度を適切に調節する場合、{111}が減少し、{100}方位が増加し、磁性が改善されることを確認できる。
反面、比較例13は、結晶粒成長焼鈍温度が過度に低いため、集合組織が改善されず、磁性が劣位であることを確認できる。
比較例14は、結晶粒成長焼鈍温度が過度に高いため、集合組織が改善されず、磁性が劣位であることを確認できる。
【0061】
本発明は、実施形態に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施形態は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0062】
10:中心部
20:表層部
100:無方向性電磁鋼板