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特許7601890流動接触分解プロセスによる原油からの軽質オレフィンの製造および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】流動接触分解プロセスによる原油からの軽質オレフィンの製造および装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 51/06 20060101AFI20241210BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C10G51/06
C10G11/18
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022554834
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021022063
(87)【国際公開番号】W WO2021183854
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】62/989,507
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522005594
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】マリ, ラーマ, ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ブレッケンリッジ, ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リァン
(72)【発明者】
【氏名】ソム, マノージ
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-533075(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110540869(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0346827(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全原油の接触分解に有用なシステムであって、
前記システムは、全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離するための分離器、
それぞれが変換済みの炭化水素流出物を製造する反応器/汚染物質除去容器システムおよび槽反応器二元触媒システム、
前記反応器/汚染物質除去容器システムおよび触媒分離容器のそれぞれからの前記変換済みの炭化水素流出物を受けるための共通の分留システムであり、前記変換済みの炭化水素流出物を、2つ以上の炭化水素留分に分離するように構成され、前記2つ以上の炭化水素留分の少なくとも1つは、オレフィンを含み、前記2つ以上の炭化水素留分の少なくとも1つは、処理済みの流動接触分解原料を含有する、前記共通の分留システム、ならびに、
前記二槽反応器二元触媒システムの、第1の反応器および第2の反応器のそれぞれからの流出物を受けて、使用済みの触媒混合物と前記共通の分留システムに向けて供給される前記変換済みの炭化水素流出物に分離するように構成された、前記触媒分離容器を含み、
前記反応器/汚染物質除去容器システム応器内で前記高沸点留分を残渣流動接触分解触媒と接触させるように、および汚染された残渣流動接触分解触媒を触媒移送ラインにより移送し、汚染物質除去容器内で汚染物質捕捉添加剤と接触させるように構成されたものであり、
前記二槽反応器二元触媒システム前記共通の分留システム内で分離された前記処理済みの流動接触分解原料を、第1の触媒と第2を含む触媒の混合物と接触させるための前記第1の反応器、および
前記低沸点留分を第1の触媒および第2の触媒を含む混合と接触させるための前記第2の反応器であり、前記第1の触媒が、前記第1の反応器と比較して前記第2の反応器内では高濃度である、前記第2の反応器を含むシステム。
【請求項2】
全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離するための前記分離器が、前記高沸点留分から、約300℃から約420℃の範囲内の95%留出温度を有する低沸点留分を分離するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記反応器/汚染物質除去容器システムが、
少なくとも炭化水素原料の一部をより軽質の炭化水素に変換するための、前記残渣流動接触分解触媒を高沸点留分と接触させるための応器、
前記より軽質の炭化水素を含む炭化水素製品蒸気を使用済みの残渣流動接触分解触媒から分離するための分離器、
前記分離器から分離された使用済みの残渣流動接触分解触媒を触媒再生器へ供給するための供給ライン、
前記触媒再生器からの使用済みの残渣流動接触分解触媒の一部を前記汚染物質除去容器へ移送するための触媒移送ライン、
使用済みの残渣流動接触分解触媒を、平均粒子径または密度のうち少なくとも1つが残渣流動接触分解触媒の平均粒子径または密度よりも大きい汚染物質捕捉添加剤と接触させるための前記汚染物質除去容器、
前記汚染物質除去容器からの塔頂流を残渣流動接触分解触媒および浮揚ガスを含む第1の流れと汚染物質捕捉添加剤を含む第2の流れに分離するための第2の分離器、
前記第2の分離器で回収された汚染物質捕捉添加剤を前記汚染物質除去容器へ移送するためのリサイクルライン、
前記汚染物質除去容器から汚染物質捕捉添加剤を回収するための残油製品ライン、ならびに
前記第1の流れを前記触媒再生器へ運ぶライン
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記共通の分留システムが、前記変換済みの炭化水素流出物を3つ以上の炭化水素留分に分離するように構成されており、前記3つ以上の炭化水素留分が、1つまたは複数のオレフィン留分、前記処理済みの流動接触分解原料、および、C5留分、FCCナフサ留分、重質ナフサ留分、軽質サイクルオイル留分、またはスラリーオイル留分のうち1つ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記FCCナフサ留分を前記第2の反応器へ供給するためのフローラインをさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
C4留分および前記C5留分のうち少なくとも1つを受けるため、かつその中のオレフィンまたはパラフィンのうち少なくとも1つをエチレンまたはプロピレンのうち少なくとも1つに変換するためのオレフィン変換ユニットをさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記重質ナフサ留分を改質し、かつ1つまたは複数の芳香族製品流を回収するように構成された芳香族炭化水素コンビナートをさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記高沸点留分を中沸点留分と残渣留分に分離するための第2の分離器をさらに含み、前記残渣留分は前記高沸点留分として前記反応器/汚染物質除去容器システムへ供給され、前記中沸点留分は前記槽反応器二元触媒システムの前記第1の反応器へ供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
全原油を接触分解する方法であって、前記方法が、
全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離する工程、
反応器/汚染物質除去容器システム内の前記高沸点留分を変換して変換済みの炭化水素流出物を回収する工程、
槽反応器二元触媒システム内の前記低沸点留分を変換して変換済みの炭化水素流出物を回収する工程、
前記変換済みの炭化水素流出物を分離するように構成された共通の分留システム内の前記反応器/汚染物質除去容器システムおよび触媒分離容器のそれぞれからの前記変換済みの炭化水素流出物を、2つ以上の炭化水素留分に分離する工程であって、前記2つ以上の炭化水素留分の少なくとも1つが、オレフィンを含み、前記2つ以上の炭化水素留分の少なくとも1つが、処理済みの流動接触分解原料を含有する工程
を含み、
前記反応器/汚染物質除去容器システム内の前記高沸点留分を変換する工程が、応器内で前記高沸点留分を残渣流動接触分解触媒と接触させる工程、および汚染された残渣流動接触分解触媒を触媒移送ラインにより移送し、汚染物質除去容器内で汚染物質捕捉添加剤と接触させる工程を含み、
前記槽反応器二元触媒システム内の前記低沸点留分を変換する工程が、
前記共通の分留システム内で分離された前記処理済みの流動接触分解原料を前記二槽反応器二元触媒システムの第1の反応器内の第1の触媒および第2の触媒を含む混合物と接触させる工程、
前記低沸点留分を前記二槽反応器二元触媒システムの第2の反応器内の第1の触媒および第2の触媒を含む混合物と接触させる工程であり、前記第1の触媒が、前記第2の反応器内の方が前記第1の反応器よりも相対的に高濃度である工程、ならびに
前記二槽反応器二元触媒システムの、前記第1の反応器および前記第2の反応器のそれぞれからの流出物を前記触媒分離容器を用いて使用済みの触媒混合物と前記共通の分留システムに向けて供給される前記変換済みの炭化水素流出物に分離する工程
を含む、方法。
【請求項10】
全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離する前記工程が、前記高沸点留分から、約300℃から約420℃の範囲内の95%留出温度を有する低沸点留分を分離する工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器/汚染物質除去容器システムが、
前記応器であって、少なくとも全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離する前記工程で分離された高沸点留分の一部をより軽質の炭化水素に変換するための、前記残渣流動接触分解触媒を該高沸点留分と接触させるための応器、
前記より軽質の炭化水素を使用済みの残渣流動接触分解触媒から分離するための分離器、
前記分離器から分離された使用済みの残渣流動接触分解触媒を触媒再生器へ供給するための供給ライン、
前記触媒再生器からの使用済みの残渣流動接触分解触媒の一部を前記汚染物質除去容器へ移送する触媒移送ライン、
使用済みの残渣流動接触分解触媒を、平均粒子径または密度のうち少なくとも1つが残渣流動接触分解触媒の平均粒子径または密度よりも大きい汚染物質捕捉添加剤と接触させるための前記汚染物質除去容器、
前記汚染物質除去容器からの塔頂流を残渣流動接触分解触媒および浮揚ガスを含む第1の流れと汚染物質捕捉添加剤を含む第2の流れに分離するための第2の分離器、
前記第2の分離器で回収された汚染物質捕捉添加剤を前記汚染物質除去容器へ移送するためのリサイクルライン、
前記汚染物質除去容器から汚染物質捕捉添加剤を回収するための残油製品ライン、および、
前記第1の流れを前記触媒再生器へ運ぶライン
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記共通の分留システムが、前記変換済みの炭化水素流出物を3つ以上の炭化水素留分に分離し、前記3つ以上の炭化水素留分が、1つまたは複数のオレフィン留分、前記処理済みの流動接触分解原料、およびC4留分、C5留分、FCCナフサ留分、重質ナフサ留分、軽質サイクルオイル留分、またはスラリーオイル留分のうち1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記C4留分および前記FCCナフサ留分を前記第2の反応器へ供給する工程をさらに含み、前記FCCナフサ留分は軽質ナフサ留分、中質ナフサ留分、重質ナフサ留分、または全範囲のナフサ留分のうち1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
軽質サイクルオイル(LCO)または処理済みの流動接触分解原料またはスラリーオイルを、前記第1の反応器または前記第2の反応器のいずれかへリサイクルフィードまたは希釈剤として供給する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記C4留分および前記C5留分のうち少なくとも1つをオレフィン変換ユニットへ供給する工程、および、その中のオレフィンまたはパラフィンのうち少なくとも1つをエチレンまたはプロピレンのうち少なくとも1種に変換する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記中質ナフサ留分または前記重質ナフサ留分を芳香族炭化水素コンビナートへ供給して、前記中質ナフサ留分または前記重質ナフサ留分を改質し、かつ1つまたは複数の芳香族製品流を回収する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記高沸点留分を中沸点留分と残渣留分に分離する工程をさらに含み、前記残渣留分が前記高沸点留分として前記反応器/汚染物質除去容器システムへ供給され、前記中沸点留分が前記二槽反応器二元触媒システムの前記第1の反応器へ供給される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
炭化水素混合物の最終沸点が、例えば550℃超のように高い時、炭化水素混合物は通常、直接的に加工することができない。これらの重質炭化水素の存在は、反応器内でコークスの形成を生じさせる可能性があり、そのようなコーキングは速やかに発生し得る。全原油は通常、例えば、コンラッドソン炭素、金属類、および全原油の直接的な加工をより困難にするその他の不純物も含有する。
【0002】
さらに、タイトオイルおよびシェールオイルの出現は、豊富な石油資源を提供する。しかし、オイル特性および化学組成における違いのため、重大な加工上の課題を引き起こす。具体的には、精製所においてFCC技術を使用してタイトオイル/シェールオイルを加工するために、従来の原油を加工する場合と比較した1つの大きな課題は、従来はなかった高濃度の鉄およびカルシウム等の金属類である。
【0003】
高濃度の鉄、カルシウムおよび他の金属類は、例えば、触媒表面上に鉄およびカルシウムの堆積を生じさせる可能性がある。堆積した鉄およびカルシウムは触媒上に厚い金属シェル層を形成する可能性があり、オイル蒸気の拡散損失を引き起こす。これは、変換の損失、およびコークスおよび重油製品の増加をもたらす。触媒上の高濃度の鉄およびカルシウムの堆積は触媒特性を変化させ、触媒循環に影響を与え、加工問題および性能問題を招く可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの従来はなかった金属類の影響を最小限とするため、特にタイトオイル/シェールオイルでみられる比較的高い汚染物質濃度で、精製者は通常、触媒上の金属の堆積を軽減し、触媒循環を容易とするため、彼らの1日あたりの触媒添加を大きく増やさなければならない。しかし、これは操業費の劇的な増加を招くこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、原油の重質部分から汚染物質(CCR、ニッケル、バナジウム、窒素、ナトリウム、鉄、カルシウム等)を効率的に除去するように構成された反応器システムに関する。製品は共通の主要分留セクションに移送される。その後、汚染物質の少ない重質フィードは、炭素排除アプローチを伴う流動接触反応プラットホームを用いている包括的概念である流動接触分解(FCC)ユニット内で加工してもよい。
【0006】
1つの態様では、本開示の実施形態は、全原油の接触分解に有用なシステムに関する。上記システムは、全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離するための分離器を含むものであってもよい。上記システムは、使用済みの第1の触媒および使用済みの第2の触媒を再生するために備えられた再生器も含むものであってもよい。上記再生器は、各種実施形態では、再生済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を運ぶための第1の出口、および再生済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を運ぶための第2の出口を含むものであってもよい。ライザー反応器は、再生済みの触媒の混合物を受けるように構成されていてもよく、また、高沸点留分を触媒混合物と接触させて高沸点留分中の炭化水素をより軽質の炭化水素に変換するために使用してもよい。上記触媒混合物は、第1の触媒および第2の触媒を含むものであってもよく、第1の触媒は第2の触媒の密度よりも高い密度、第2の触媒の平均粒子径よりも大きい平均粒子径、または第2の触媒よりも高い密度および大きい平均粒子径の両方を有していてもよい。上記ライザー反応器は、再生器からの再生済みの第1の触媒および第2の触媒を含む触媒混合物を受けるための入口、ならびに変換済みの炭化水素と触媒混合物の混合物を運ぶための出口を含むものであってもよい。
【0007】
上記システムは、低沸点留分を、第1の触媒および第2の触媒を含み、第1の触媒の濃度が触媒再生器から受け取られる混合物よりも高い可能性のある濃縮された触媒混合物と接触させるための第2の反応器も含むものであってもよい。上記第2の反応器は、再生器からの再生済みの第1の触媒および第2の触媒を含む触媒混合物を受けるための入口、ならびに、変換済みの炭化水素、第1の触媒および第2の触媒の混合物を触媒分離システムへ運ぶための出口を含むものであってもよい。
【0008】
触媒分離システムは、第2の触媒と、変換済みの炭化水素を含む混合物から、第1の触媒を、触媒径または触媒密度のうち少なくとも1つをベースに分離するように構成されていてもよく、これにより、分離された第1の触媒を含む第1の流れ、および、第2の触媒および変換済みの炭化水素を含む第2の流れを生成する。触媒分離システムは、分離された上記第1の触媒を含む第1の流れを受けるための第2の反応器の入口に供給するものであってもよく、これにより第2の反応器内の第1の触媒の濃度が上昇する。
【0009】
変換済みの炭化水素から触媒を分離するための1つまたは複数の分離容器が、備えられていてもよい。上記分離容器は、(i)第2の触媒および変換済みの炭化水素を含む第2の流れおよび/または(ii)変換済みの炭化水素と触媒混合物の混合物を受けるための1つまたは複数の入口を含むものであってもよい。上記分離容器は、変換済みの炭化水素を含む第1の流出物と使用済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を含む第2の流出物を分離し回収するように構成されていてもよい。使用済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を分離容器から再生器へ運ぶためのフローラインも備えられていてもよい。
【0010】
もう一つの態様では、本開示の実施形態は、全原油を接触分解するための方法に関する。上記方法は、全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離する工程も含むものであってもよい。その後、上記高沸点留分は第1の二槽反応器二元触媒システム内で変換してもよく、変換済みの炭化水素流出物を製造する。上記低沸点留分は、第2の二槽反応器二元触媒システム内で変換してもよく、変換済みの炭化水素流出物を製造する。
【0011】
その後、第1の二槽反応器二元触媒システムおよび第2の二槽反応器二元触媒システムのそれぞれからの上記変換済みの炭化水素流出物は、変換済みの炭化水素留分を2、3、またはそれ以上の炭化水素留分に分離するように構成された共通の分留システムにおいて分離してもよい。上記炭化水素留分は、例えば、1つまたは複数のオレフィンを含む留分および処理済みの流動接触分解原料を含有するものであってもよい。
【0012】
第1の二槽反応器二元触媒システム内の高沸点留分の変換は、高沸点留分を残渣流動接触分解触媒と接触させる工程、および、汚染された残渣流動接触分解触媒を金属トラップと接触させる工程を含むものであってもよい。第2の二槽反応器二元触媒システム内の低沸点留分の変換は、処理済みの流動接触分解原料を、第1の反応器内の第1の触媒および第2の触媒を含む混合触媒システムと接触させる工程、および、低沸点留分を第2の反応器内の第1の触媒および第2の触媒を含む混合触媒システムと接触させる工程を含むものであってもよい。第2の反応器内では、第1の触媒は、第1の反応器および/または触媒再生器から受け取られるものよりも相対的に高濃度であってもよい。変換に続き、第1の反応器および第2の反応器のそれぞれからの流出物は、使用済みの触媒混合物と変換済みの炭化水素流出物に分離してもよい。その後、第1のおよび第2の二槽反応器二元触媒システムからの変換済みの炭化水素流出物は、共通の分留システムへ供給される。
【0013】
さらにもう一つの態様では、本開示の実施形態は、全原油の接触分解に有用なシステムに関する。上記システムは、全原油を低沸点留分と高沸点留分に分離するための分離器も含むものであってもよい。上記システムは、それぞれが変換済みの炭化水素流出物を製造する第1の二槽反応器二元触媒システムおよび第2の二槽反応器二元触媒システムも含むものであってもよい。共通の分留システムは、第1の二槽反応器二元触媒システムおよび第2の二槽反応器二元触媒システムのそれぞれからの変換済みの炭化水素流出物を受けるものであってもよく、上記共通の分留システムは変換済みの炭化水素留分を、留分および処理済みの流動接触分解原料を含有する1つまたは複数のオレフィンを含む2つ以上の炭化水素留分に分離するように構成されている。
【0014】
第1の二槽反応器二元触媒システムは、高沸点留分を残渣流動接触分解触媒と接触させるため、および汚染された残渣流動接触分解触媒を金属トラップと接触させるように構成されていてもよい。
【0015】
第2の二槽反応器二元触媒システムは、処理済みの流動接触分解原料を、第1の触媒および第2の触媒を含む混合触媒システムと接触させるための第1の反応器を含むものであってもよい。第2の二槽反応器二元触媒システムは、低沸点留分を第1の触媒および第2の触媒を含む混合触媒システムと接触させるための第2の反応器を含むものであってもよい。本開示の他の実施形態と同様に、第1の触媒は、第2の反応器内では、第1の反応器または触媒再生器から受け取られるものよりも相対的に高濃度であってもよい。
【0016】
上記システムは、共通の分留システムへ供給された第2の二槽反応器二元触媒システムからの第1の反応器および第2の反応器のそれぞれからの流出物を受けて、使用済みの触媒混合物と変換済みの炭化水素流出物に分離するように構成された触媒分離容器も含むものであってもよい。
【0017】
他の態様および利点は、下記明細書および添付の請求の範囲からも明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の実施形態において有用な触媒濃縮システムを示す、簡略化した流れ図である。
図2】本開示の実施形態による、全原油を変換するための方法を示す、簡略化した流れ図である。
図3】本開示の実施形態による、全原油を変換するための方法を示す、簡略化した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示で使用されているように、用語“触媒”および“粒子”等の用語は同義で使用され得る。上記で要約されているように、また以下でさらに記載されているように、本開示の実施形態は、全原油変換システムにおいて有利な効果を達成するために径および/または密度ベースで混合粒子材料を分離する。反応を容易とするために使用される粒子または粒子材料は、例えば触媒、吸収剤、および/または触媒活性のない伝熱材料を含むものであってもよい。
【0020】
本開示の実施形態は、全体的に全原油および他の広い沸点範囲を有する炭化水素混合物の加工性を高めるためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、混合触媒システムおよび/または混合触媒/吸着剤システムを使用した、流動接触分解による全原油および他の広い沸点範囲を有する炭化水素混合物の加工の生産性および/または柔軟性に関する。本開示で開示されている方法および装置は、いくつかの実施形態では、全原油および他の広い沸点範囲を有する炭化水素混合物の、プロピレンおよびエチレン、および芳香族、ならびに高オクタン価を有するガソリンおよび/または軽油等の軽質オレフィンへの非常に高収率での全変換に有利となり得る。
【0021】
本開示の実施形態は、共通の再生器を含むものであってもよい反応システムまたは状態調節システムを含む。上記共通の再生器は、例えば、2つ以上の触媒の混合物、触媒と汚染物質捕捉添加剤の混合物、汚染物質捕捉添加剤を含む2つ以上の触媒の混合物、汚染物質捕捉添加剤と伝熱粒子の混合物、および他の触媒、汚染物質捕捉添加剤、および/または不活性粒子の可能な組み合わせを含み得る、粒子の混合物を再生するために使用してもよい。
【0022】
本開示の実施形態は、触媒濃縮システムまたは容器、および/または汚染物質捕捉添加剤濃縮システムまたは容器も含むものであってもよい。共通の再生器から粒子の混合物が提供され得るため、触媒/捕捉添加剤濃縮システムは、反応器内または処理器内での使用のため、所望の触媒または捕捉添加剤の濃度を高めるために備えられていてもよい。いくつかの実施形態では、触媒または捕捉添加剤は、再生器から受け取られるものより3から4倍高い濃度に濃縮されてもよい。その後、上記濃縮された触媒または添加剤は、混合粒子システムよりも好ましい変換または処理を提供するものであってもよい。
【0023】
例えば、同様の符号は同様の部分を表すが、図1Aおよび1Bで図示されているように、分離システム2において、触媒の濃縮も実施することができる。蒸気および触媒を含む混合物は、固形物分離機器6へフローライン4を経由して供給することができる。図1Aで図示されているように、フローライン4は、いくつかの実施形態における変換済みの炭化水素と触媒粒子の混合物を運ぶ移動式または流動床反応器7から、または移動式/流動床汚染物質除去容器7からの流出ラインであってもよい。他の実施形態では、図1Bで図示されているように、フローライン4は、1つまたは複数の炭化水素原料8、10を触媒再生器(図示せず)から等のフローライン12を経由して受け取られる触媒の混合物と接触させるためのライザー反応器であってもよい。蒸気と触媒の混合物は、例えば、変換済みの炭化水素、第1の触媒および第2の触媒、例えば炭化水素を触媒作用により変換するためのライザー反応器または移動式流動床反応器から受け取られ得るものを含むものであってもよい。他の実施形態では、固形物分離器6へ供給される混合物は、例えば、汚染物質除去容器7から受け取られ得る等の浮揚ガス、触媒、および金属トラップの混合物を含むものであってもよい。
【0024】
固形物分離機器6へ供給された混合物中の粒子は、第1の粒子型(残渣分解または金属トラップに用いられる第1の触媒等)および第2の粒子型(第2の触媒等)を含むものであってもよく、上記第1の粒子型は、第2の粒子型よりも大きい直径または高い密度のうち少なくとも1つを有するものであってもよい。固形物分離機器6内では、蒸気と混合粒子を分離することができ、大きくおよび/または高密度である第1の粒子型を含む固形物流20、および浮揚ガス/変換済みの炭化水素および第2の粒子型を含む混合流出物流22を回収する。
【0025】
いくつかの実施形態では、図1Aで図示されているように、流出物22を下流ユニット(図示せず)へ送ってもよい。例えば、流出物22は、炭化水素蒸気から第2の触媒を分離するために分離容器(図示せず)へ供給してもよい。もう一つの例として、流出物22は触媒から浮揚ガスを分離するための触媒再生器(図示せず)へ供給してもよい。フローライン20を経由して回収された粒子は、反応器7へ戻すことができ、これにより反応器7内の粒子(金属トラップまたは第1の触媒)が濃縮される。
【0026】
他の実施形態では、図1Bで図示されているように、流出物22は、フローライン28を経由して回収された触媒からフローライン26を経由して回収された流出物蒸気を分離するために、サイクロン分離器24等の分離器へ供給することができる。その後、フローライン28を経由して回収された上記粒子は、触媒再生器(図示せず)へ戻すことができ、フローライン20を経由して回収された粒子はライザー反応器4へ戻すことができ、これによりライザー反応器4内で第2の触媒が濃縮される。
【0027】
いくつかの実施形態では、全原油の接触分解に有用なシステムは、本開示では二槽反応器二元触媒システムとも呼ばれる、単一再生器二元反応器システムを含むものであってもよい。上記システムは、全原油の加工のための移動式または流動床反応器およびライザー反応器、複数のライザー反応器、または複数の移動式または流動床反応器等、少なくとも2つの反応器を含むものであってもよい。各反応容器は、単一再生器から触媒が受けるものであってもよい。
【0028】
図2を参照すると、同様の符号は同様の部分を表すが、全原油を加工するための反応器システムが図示されている。上記システムは全原油32、例えば脱塩された全原油を低沸点留分34と高沸点留分36に分離するための分離器30を含むものであってもよい。いくつかの実施形態において、全原油の低沸点留分と高沸点留分への分離は、高沸点留分由来の、約300℃から約420℃の範囲内の最終沸騰温度が95%である低沸点留分の分離を含むものであってもよい。しかし、分離のための実際のカットポイントは、加工されている特定の原油に基づくものであってもよい。
【0029】
上記システムは、使用済みの第1の触媒および使用済みの第2の触媒を再生するための再生器38も含むものであってもよい。上記触媒混合物は、第1の触媒と第2の触媒を含むものであってもよく、第1の触媒は第2の触媒の密度よりも高い密度、第2の触媒の粒子径よりも大きい粒子径、または第2の触媒よりも高い密度および大きい粒子径の両方を有する。
【0030】
再生器38は、再生済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を運ぶための第1の出口12、および、同様に再生器からの再生済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を運ぶための第2の出口25を含むものであってもよい。出口25は、触媒をライザー反応器3の入口28へ供給するものであってもよく、上記ライザー反応器へ供給される触媒混合物は、再生器からの第1の触媒と第2の触媒の混合物を含むものであってもよい。流動ガス1aは、例えば、触媒を反応器3へ運ぶために使用してもよい。ライザー反応器3内では、高沸点留分36は触媒混合物と接触する可能性があり、高沸点留分中の炭化水素がより軽質の炭化水素へ変換される。その後、ライザー反応器からの出口40は、反応器流出物、変換済みの炭化水素と触媒混合物の混合物を分離容器42へ運ぶことができる。
【0031】
出口12は、低沸点留分34を第1の触媒および第2の触媒を含む濃縮された触媒混合物と接触させるため、再生済みの第1の触媒および第2の触媒を第2の反応器7へ供給するものであってもよい。図1Aおよび1Bに関して既に記載したように、第1の触媒は、触媒/固形物分離システム6を使用して、触媒濃縮分離システム2を経由して第2の反応器7内で濃縮することができる。上記第2の反応器は、再生器からの再生済みの第1の触媒および第2の触媒を含む触媒混合物を受けるための入口を含むものであってもよい。図1Aに関して記載したように、上記第2の反応器は、変換済みの炭化水素、第1の触媒および第2の触媒の混合物を触媒/固形物分離システム6へ運ぶための出口4も含んでいてもよく、上記触媒分離システムは、第2の触媒と、変換済みの炭化水素を含む混合物から、第1の触媒を、触媒径または触媒密度のうち少なくとも1つをベースに分離するものであってもよい。分離された第1の触媒を含む第1の流れ20および第2の触媒および変換済みの炭化水素を含む第2の流れ22は、触媒分離システム6から回収してもよい。その後、上記第1の触媒流20は、反応器7の入口へ供給してもよく、これにより第2の反応器内で第1の触媒の濃度が上昇する。
【0032】
ライザー反応器3および第2の反応器7からの流出物は、両方とも分離容器42へ供給してもよい。したがって、分離容器42は、(i)第2の触媒および変換済みの炭化水素を含む流れ22、および(ii)変換済みの炭化水素と触媒混合物を組み合わせた流れを含む反応器3からの流出物流40を受けるための1つまたは複数の入口40を含むものであってもよい。上記分離容器42は、変換済みの炭化水素を含む第1の流出物44と使用済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を含む第2の流出物46を分離し回収するように構成されていてもよい。使用済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を再生器へ運ぶためのフローライン48および流動ガス50が備えられていてもよい。
【0033】
図1Bで図示されているような、統合反応器/分離システムを使用する他の実施形態では、第2の触媒は、下流プロセスのため、75を経由して再生器へ供給してもよく、変換済みの炭化水素流26は図2の流れ44と合流させてもよい。そのような下流プロセスは、例えば、ナフサ、軽質ナフサ、またはガソリン留分の分離を含むものであってもよく、それらは変換のため、低沸点留分34と共にフローライン43を経由して第2の反応器7へ供給してもよい。他の実施形態では、下流流出物の分離は軽質サイクルオイル留分を生じる可能性があり、それはクエンチ媒体55として使用できる。下流プロセスを経由して回収された他の各種炭化水素流は、いくつかの実施形態では、ライザー反応器3へ供給できる。
【0034】
図3を参照すると、同様の符号は同様の部分を表すが、本開示の他の実施態様による、全原油を接触分解するためのシステムを簡略化したプロセス流れ図が図示されている。全原油を接触分解するためのシステムは、全原油32を低沸点留分34と高沸点留分36に分離するための分離システム30を含むものであってもよい。いくつかの実施形態において、全原油の低沸点留分と高沸点留分への分離は、高沸点留分由来の、約300℃から約420℃の範囲内の最終沸騰温度が95%である低沸点留分の分離を含むものであってもよい。しかし、分離のための実際のカットポイントは、加工されている特定の原油に基づくものであってもよい。
【0035】
高沸点留分36は、第1の二槽反応器二元触媒システム60へ供給してもよい。第1の二槽反応器二元触媒システム60は、例えば、ライザー反応器および汚染物質トラップ濃縮容器(図示せず)を含むものであってもよい。汚染物質トラップ濃縮容器は図1Aまたは1Bにおいて図示されたものと類似のものであってもよく、容器内で金属トラップの濃度を高めるために使用してもよい。第1の二槽反応器二元触媒システム60内での反応に続き、変換済みの炭化水素流出物62を回収してもよい。いくつかの実施形態では、第1の二槽反応器二元触媒システム60内の触媒は、残渣流動接触分解触媒を含むものであってもよい。
【0036】
低沸点留分34は、第2の二槽反応器二元触媒システム64へ供給してもよい。第2の二槽反応器二元触媒システム64は、ライザー反応器および第2の反応器、例えば、図2において図示されているような、変換済みの炭化水素流出物66を製造するものと同様のものを含むものであってもよい。
【0037】
第1の二槽反応器二元触媒システム60および第2の二槽反応器二元触媒システム64のそれぞれから変換済みの炭化水素流出物62、66を分離するための分留システム70が備えられていてもよい。共通の分画システム70における変換済みの炭化水素留分の分離は、結果的に2、3、またはそれ以上の炭化水素留分を製造し得る。各種実施形態では、2つ以上の炭化水素留分は、エチレン留分72、プロピレン留分74、ブテン類またはC4類留分76、ならびにC5留分78、軽質ナフサ留分80、中質ナフサ留分または重質ナフサ留分82、軽質サイクルオイル84、スラリーオイル86、および処理済みのFCC原料88等の留分を含む1つまたは複数のオレフィンを含むものであってもよい。処理済みの原料88は、図2に図示されたシステム64またはいかなる反応器のいずれかにおいて、例えば、流動接触分解システムへ供給するために好適であり得る高沸点留分由来の処理済みの炭化水素を含むものであってもよい。軽質ナフサ留分80およびC4留分76は、図2に図示されたシステム64またはいかなる反応器のいずれかにおいて、流動接触分解システムへの部分的にまたは完全にリサイクル可能な優れたフィードともなり得る。軽質サイクルオイルは、上述のように、反応後のクエンチ、希釈剤、または原料のいずれかとして、反応システム60、64のうちの1つまたはその両方へ供給してもよい。
【0038】
第2の二槽反応器二元触媒システム64は、低沸点留分および処理済みのFCC原料を加工するために使用してもよい。処理済みのFCC原料88は第2の二槽反応器二元触媒システムのライザー反応器へ供給してもよく、低沸点留分は触媒濃縮反応器へ供給してもよい。所望の場合、重ナフサ留分82は、フィードまたは希釈剤としての要求に応じて、反応器システム60または64のいずれかへ供給してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、中ナフサまたは重ナフサ82は芳香族炭化水素コンビナートへ供給してもよい。上記芳香族炭化水素コンビナートは例えば、重ナフサ炭化水素を芳香族炭化水素に変換するための改質反応器、および、ベンゼン、トルエン、およびキシレン等の各種芳香族炭化水素留分を変換、回収、および/または分離するための他の関連設備を含むものであってもよい。
【0040】
本開示の実施形態で有用な触媒システムは、1つまたはそれ以上の分解触媒を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、触媒システムは、それぞれが異なる炭化水素フィードの種類に有利に作用する二種類の触媒を利用することができる。第1の分解触媒は、接触分解および耐金属性FCCまたはRFCC触媒または金属類トラップまたは当技術分野で公知である他の同様の触媒または残油分解用添加剤等の重質炭化水素原料由来の汚染物質の除去に有用となり得る。第2の分解触媒は、C4類またはナフサ範囲の炭化水素を分解するのに有用な触媒、また軽質オレフィンを選択的に製造するZSM-5またはZSM-11型触媒等とY型ゼオライト触媒との組み合わせ、または技術的に公知である他の同様の触媒であってもよい。本開示で開示されているいくつかの実施形態における反応器スキームおよび加工を容易とするため、第1の分解触媒は第1の平均粒子径および密度を有してもよく、触媒を密度および/または径ベースで(例えば、終端速度または触媒粒子の他の特徴ベースで)分離してもよい等、第2の分解触媒のそれらよりも大きくおよび/または高密度であってもよい。本出願は、原油の重質炭化水素留分の処理、および、さらに原油の全ての留分の軽質オレフィンおよび芳香族への接触分解の同時実施を主な目的としている。これらの触媒システムは、サワー原油もしくは中質原油または重質原油の加工中に用いることができる。
【0041】
他の実施形態では、触媒システムは、それぞれが異なる種類の炭化水素フィードに有利に作用する二種類の触媒を利用することができる。第1の触媒は、C4類またはナフサ範囲または処理済みの重質炭化水素を分解するのに有用な触媒、また軽質オレフィンを選択的に製造するZSM-5またはZSM-11型触媒等とY型ゼオライト触媒との組み合わせ、または技術的に公知である他の同様の触媒または添加剤であってもよい。第2の分解触媒は、耐金属性FCCまたはRFCC触媒または金属類トラップまたは技術的に公知である他の同様の触媒または残油分解用添加剤等の重質炭化水素原料の分解に有利となり得る。本開示で開示されているいくつかの他の実施形態における反応器スキームおよび加工を容易とするため、第1の分解触媒は第1の平均粒子径および密度を有してもよく、触媒を密度および/または径ベースで(例えば、終端速度または触媒粒子の他の特徴ベースで)分離してもよい等、第2の分解触媒のそれらよりも大きくおよび/または高密度であってもよい。本出願は、原油の重質炭化水素留分の中間留分または軽質留分への変換、および、その後の原油の全ての留分の軽質オレフィンおよび芳香族への接触分解を最大限にすることを主な目的としている(全原油の分解から、これらの石油化学成分の最高製品収率、選択性を達成するため)。
【0042】
本開示の実施形態で有用な吸着剤または汚染物質捕捉添加剤は、汚染物質除去容器内の条件にある触媒よりも汚染物質に対する高い親和性を有する化合物および構造を含むものであってもよい。したがって、上記汚染物質は優先的に吸収、または汚染物質捕捉添加剤上に保持され得る。本開示のいくつかの実施形態において、プロセススキームを容易とするため、触媒からの汚染物質捕捉添加剤の分離であるが、上記汚染物質捕捉添加剤は、密度および/または径をベースに1つまたは複数の触媒から上記汚染物質捕捉添加剤を分離できるように、触媒よりも大きい平均粒子径および/または触媒よりも高い密度を有してもよい。
【0043】
各種炭化水素原料と接触し得る汚染物質は、なかでも、鉄、銅、カルシウム、リン、バナジウム、ニッケル、塩素、およびナトリウムのうち1つ以上が含まれていてもよい。そのような汚染物質は、より重質の炭化水素からより軽質の炭化水素に変換するために使用されるFCC触媒を含む分解触媒等の触媒に対し、有害作用を有する可能性がある。各種汚染物質は分解触媒に害を及ぼし、その活性を落とす可能性がある。上記汚染物質はまた、空孔を閉塞させ、または触媒空孔を通じた拡散率を低減し、触媒の効率を阻害し、またはプロセス設備の機械的な損傷または比較的高いコストをもたらすおそれがある。
【0044】
上記のように、上記汚染物質捕捉添加剤は、触媒よりも汚染物質との親和性が高くあるべきである。したがって、使用される汚染物質捕捉添加剤の特定の種類は、対象とされる特定の汚染物質に依存し得る。本開示で開示されているいくつかの実施形態において有用な汚染物質捕捉添加剤は、FCC触媒販売者により製造されている市販のバナジウム/ニッケル/鉄トラップ(添加剤)を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、上記金属類捕捉添加剤は、炭化水素原料中に含有され得る鉄、銅、リン、バナジウム、ニッケル、ナトリウム、カルシウム、塩素、または他の汚染物質となる金属類の効果的な捕捉のためのカルシウム、スズ、セシウム、または他の金属促進性を有する、マグネシウム酸化物および/またはアルミナベースの支持体を含むものであってもよい。FCC触媒(主に接触分解を担う)からのこれらの汚染物質の効率的な除去は、ライザー反応器内でのそれらの有害作用を抑えることができる。
【0045】
固形物分離効率を改良するため、汚染物質捕捉添加剤は、分解触媒よりも大きい平均粒子径および/または高い密度を有していてもよい。例えば、商業FCCユニットにおいて従来から使用されているY型ゼオライトベースのFCC分解触媒等の分解触媒は、約20ミクロンから約200ミクロンの範囲内の通常の平均粒子径を有してもよく、また約0.60g/ccから約1.1g/ccの範囲内の見掛けのかさ密度を有していてもよい。本開示の実施形態によるFCCおよび各種関連の分解プロセスで使用されているこれらの触媒/添加剤は、単一種類の触媒または触媒の混合物を含むものであってもよい。他の実施形態では、これらの触媒/添加剤の特性は、用途、目的および図1A、1B、2および3に記載されている最終的なプロセススキームに応じて逆になる。
【0046】
本開示の実施形態で有用な汚染物質捕捉添加剤は、粒子径が約20ミクロンから約350ミクロンの範囲内である等、使用される分解触媒/添加剤よりも大きい粒子径を有していてもよい。さらに、またはそれに代えて、上記汚染物質捕捉添加剤は、触媒のかさ密度よりも大きいかさ密度、例えば約0.7g/ccから約1.2g/ccの範囲内の密度を有していてもよい。
【0047】
汚染物質捕捉添加剤と触媒との間の径および/または密度の差は、固形物分離器内での分離を容易とすることができる。本開示の実施形態は、触媒から汚染物質捕捉添加剤を分離するための分級器/分離器を使用してもよい。この機器は既存のFCC剥離機または再生器容器のいずれかに取り付けることができる。
【0048】
本開示の実施形態により加工できる炭化水素混合物は、525℃、550℃、または575℃超等、混合物の最終沸点が500℃超であり得る沸点範囲を有する各種炭化水素の混合物を含むものであってもよい。550℃超で沸騰する炭化水素等の高沸点の炭化水素の量は、たったの0.1wt%、1wt%または2wt%であってもよいが、10wt%、25wt%、50wt%に達するかそれを超えてもよい。本明細書は全原油等の原油に関して説明されているが、いかなる沸騰終点の高い炭化水素混合物を使用することができる。しかし、本開示に開示されている方法は、原油、コンデンセートおよび500℃を超える広い沸点カーブおよび終点を有する炭化水素に適用することができる。そのような炭化水素混合物としては、なかでも全原油、バージン原油、水素化処理された原油、ガスオイル、真空ガスオイル、灯油、ジェット燃料、軽油、ケロシン、ガソリン、合成ナフサ、ラフィネート改質油、フィッシャー・トロプシュ液体、フィッシャー・トロプシュガス、天然ガソリン、蒸留物、バージンナフサ、天然ガスコンデンセート、常圧管式加熱炉残油、残油を含む真空管式加熱炉流、広い沸点範囲を有するナフサからガスオイルコンデンセート、廃プラスチック由来オイル、精製所からの重質ノンバージン炭化水素流、真空ガスオイル、重質ガスオイル、常圧残油、水素化分解ワックス、およびフィッシャー・トロプシュワックスが含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、炭化水素混合物は、ナフサの範囲またはそれより軽いものから、真空ガスオイルの範囲またはそれより重い炭化水素の沸騰物を含むものであってもよい。本開示の実施形態に従って全原油を加工する時、本開示の方法およびシステムは、例えば脱塩器を含み得るフィード調製セクションを含むものであってもよい。
【0049】
原油は、ブタン類からVGOに分類される化合物および残部(550℃超の材料沸騰物)を含む。全原油等の広い沸点範囲を有する材料は、流動接触分解可能なフィードはエチレン、プロピレン、ブテン類、およびベンゼン、トルエン、およびキシレン等の芳香族、ならびに他の分解済みの製品等の石油化学品に分解可能なフィードの変換のため、ライザー反応器等の下流反応器へ送ることができるように、本開示の実施形態に従って調整し、加工できる。
【0050】
上記のように、原油中の高沸点化合物は、それらが流動接触分解装置に送られる場合、
コークスを形成し、触媒上に不純物を堆積させる傾向があるため、重大な操作上の問題を引き起こす可能性がある。したがって、高沸点化合物は、通常、軽い留分を接触分解装置、または流動接触分解装置または芳香族炭化水素コンビナート等の他の石油化学品ユニットへ送る前に除去される。除去された高沸点化合物は低価値燃料としてのみ販売可能であるため、上記除去プロセスは、全体のプロセスの資本コストを上昇させ、収益性を低減させる。
【0051】
本開示で記載されている実施形態による、全原油の変換および広い沸点範囲を有する炭化水素混合物のためのシステムおよび方法の構成は、石油化学変換を最大限にし、流動接触分解装置でのコーキング傾向を低く維持しながら残渣変換を効率的に扱うことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、全原油を分離するために使用される分離システムは、全原油を軽質留分と重質留分に分離するための二段階HOPS等の高温オイル加工システム(HOPS)であってもよい。他の実施形態では、参照により本開示に組み込まれており、遠心力とサイクロン効果との組み合わせに基づいて比較的高沸点の液状の留分から低沸点留分を分離できる米国特許出願公開第20130197283号で開示されているように、分離は統合分離機器(ISD)において実施することができる。
【0053】
既に記載したように、本開示の実施形態によるシステムは、第1の二槽反応器二元触媒システムおよび第2の二槽反応器二元触媒システムの両方が含むものを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、二槽反応器二元触媒システムは、再生器、分離容器、ライザー反応器、および触媒濃縮反応器を含むものであってもよい。
【0054】
使用済みの第1の触媒および使用済みの第2の触媒を再生するための再生器が備えられていてもよく、再生器は、再生器からの再生済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を第1の反応器へ運ぶための第1の出口、ならびに、再生済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を触媒濃縮反応器へ運ぶための第2の出口を含むものであってもよい。上記第1の触媒は、第2の触媒の密度よりも高い密度、第2の触媒の粒子径よりも大きい粒子径、または第2の触媒よりも高い密度および大きい粒子径の両方を有している。
【0055】
ライザー反応器であってもよい第1の反応器は、高沸点留分中の炭化水素の一部をより軽質の炭化水素に変換するため、高沸点留分を再生済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物と接触させるために使用してもよい。上記ライザー反応器は、再生器からの再生済みの第1の触媒および第2の触媒を含む触媒混合物を受けるための入口、および変換済みの炭化水素と触媒混合物の混合物を運ぶための出口を含むものであってもよい。
【0056】
触媒濃縮反応器であってもよい第2の反応器は、低沸点留分を第1の触媒および第2の触媒を含む濃縮された触媒混合物と接触させるための移動式または流動床反応器であってもよい。第2の反応器は、再生器からの再生済みの第1の触媒および第2の触媒を含む触媒混合物を受けるための入口、および、変換済みの炭化水素、第1の触媒および第2の触媒の混合物を、触媒分離システムへ運ぶための出口を含むものであってもよい。
【0057】
触媒分離システムは、固形物およびガスが共通の入口に導入され、脱気、慣性力および向心力により、蒸気出口へ同伴する小さな粒子を優先して粒子が径および/または密度ベースで分離され、一方でより大きい粒子のほとんどは回収されて濃密相配水塔またはディプレグを経由して触媒濃縮反応器へ戻ることができる、サイクロンまたは他の容器であってもよい。したがって、上記触媒分離システムは、第2の触媒と、変換済みの炭化水素を含む混合物から、第1の触媒を、触媒径または触媒密度のうち少なくとも1つをベースに分離するように構成されていてもよく、これにより、分離された第1の触媒を含む第1の流れ、および、第2の触媒および変換済みの炭化水素を含む第2の流れを生成する。触媒濃縮反応器は、分離された上記第1の触媒を含む第1の流れを受けるための入口を含むものであってもよく、これにより第2の反応器内の第1の触媒の相対濃度が上昇する。
【0058】
上記分離容器は、(i)粒子分離システムからの第2の触媒および変換済みの炭化水素を含む第2の流れおよび/または(ii)ライザー反応器からの変換済みの炭化水素と触媒混合物の混合物を受けるための1つまたは複数の入口を含むものであってもよい。上記分離容器は、例えば、変換済みの炭化水素を含む第1の流出物と、使用済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を含む第2の流出物を分離し、回収するように構成されたサイクロンを含むものであってもよい。分離容器は、触媒粒子から炭化水素を完全に除去または剥離するため、水蒸気または不活性ガスの注入も含むものであってもよい。その後、フローラインは剥離された使用済みの第1の触媒と第2の触媒の混合物を再生器へ運ぶために使用することができる。
【0059】
第1の二槽反応器二元触媒システムは、残渣流動接触分解触媒、または全原油の高沸点部分中の重質成分を変換するのに好適な他の触媒を接触させるための第1の反応器を含むものであってもよい。上記残渣流動接触分解触媒は、少なくとも炭化水素原料の一部をより軽質の炭化水素に変換するため、炭化水素原料と接触させてもよい。
【0060】
使用済みの残渣流動接触分解触媒からより軽質の炭化水素を分離するための分離器が備えられていてもよく、分離器から触媒再生器へ分離された使用済みの分解触媒を供給するための供給ラインが備えられていてもよい。触媒移送ラインは、使用済みの分解触媒の一部を触媒再生器から汚染物質除去容器へと移送するために使用することができる。汚染物質除去容器においては、使用済みの触媒を汚染物質捕捉添加剤と接触させることができ、汚染物質捕捉添加剤(金属トラップ)は、平均粒子径または密度のうち少なくとも1つが残渣流動接触分解触媒の平均粒子径または密度よりも大きくてもよい。汚染物質除去容器からの塔頂流を、残渣流動接触分解触媒および浮揚ガスを含む第1の流れと汚染物質捕捉添加剤を含む第2の流れに分離するための第2の分離器が備えられていてもよい。第2の分離器に回収された汚染物質捕捉添加剤を汚染物質除去容器へ移送し、これにより汚染物質除去容器内で金属トラップを濃縮するためのリサイクルラインが備えられていてもよい。汚染物質除去容器から汚染物質捕捉添加剤を回収するための残油製品ラインが備えられていてもよく、低減された汚染物質濃度を有する触媒を含む上記第1の流れを触媒再生器へ移送するためのもう一つの出口が備えられていてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、低沸点留分は、原油中にブタン類および他のC4類、ペンタン類および他のC5類、およびナフサ等のより軽質の炭化水素、重ナフサ、または軽油範囲の炭化水素を含むものであってもよい。例えば、上記軽質留分は、約90℃まで(例えば、90℃留分)、約100℃まで、約110℃まで、約120℃まで、約130℃まで、約140℃まで、約150℃まで、約160℃まで、約170℃まで、約180℃まで、約190℃まで、約200℃まで、約210℃まで、約220℃まで、約230℃まで、約240℃まで、約250℃まで(例えば、250℃留分)、約300℃まで、約320℃まで、約340℃まで、約360℃まで、約380℃まで、または約400℃までの沸点を有する炭化水素を含むものであってもよい。本開示の実施形態は、前述の範囲の中間にある温度までの沸点を有する炭化水素である軽質留分も意図している。
【0062】
全原油の所望の重質留分および軽質留分への分離に続き、上記留分は、その後、反応器セクション中で加工してもよい。本開示の実施形態による反応器セクションは二元反応器システムを含むものであってもよい。触媒作用によってナフサ、中間蒸留物および軽質オレフィンに分解され得る重質炭化水素留分の変換のための第1の反応器が備えられていてもよい。いくつかの実施形態では、第1の反応器は、空気流並流型反応器(触媒および炭化水素が通って流れ、流出物として共に反応器から回収される)であるライザー反応器であってもよい。
【0063】
C4およびナフサ範囲の炭化水素等のより軽質の炭化水素の変換のための第2の反応器が備えられていてもよい。上記第2の反応器は、いくつかの実施形態において、ライザー反応器であってもよい。他の実施形態においては、上記第2の反応器は、さらに以下で記載されているように、触媒濃縮反応器システムであってもよい。
【0064】
本開示の実施形態への反応器セクションは二元反応器状態調節システムも含むものであってもよい。汚染物質の除去のための第1の状態調節反応器が備えられていてもよい。いくつかの実施形態では、上記第1の状態調節反応器は、さらに以下で記載されているように、汚染物質捕捉添加剤濃縮システムであってもよい。炭化水素原料の部分的な変換のための第2の状態調節反応器が備えられていてもよい。例えば、既に記載したように、第1の反応器内のまたは第2の反応器内のいずれかにおいて、上記第2の状態調節反応器は全原油に含有される重質炭化水素を、加工に好適なより軽質の炭化水素に変換できる。
【0065】
本開示のシステムの他の実施形態は、汚染物質濃縮システムおよび触媒濃縮システムを含むものであってもよい。上記汚染物質濃縮システムおよび触媒濃縮システムは、例えば、各種反応器内での濃縮のために、触媒と金属トラップを分離するための1つまたは複数の分離工程を含み得る粒子分離システムおよび固形物分離システムを含むものであってもよい。
【0066】
上記濃縮システムは、流動接触分解システム内での全原油を効果的に変換するために使用してもよい。例えば、図2および3に関して既に記載したように、共通の触媒再生器は、軽沸点留分の変換のためのライザー反応器および触媒濃縮反応器システムを含む二元反応器システムを共に備える。そして、図3に関して記載したように、本開示の実施形態は、ライザー反応器および触媒濃縮反応器システムを含む両方の二元反応器システム、ならびにライザー反応器および汚染物質捕捉添加剤濃縮反応器システムと共に共通の再生器を含む第2の反応器システムを含むものであってもよい。
【0067】
さらに他の意図された実施形態においては、全原油を加工するためのシステムは、ライザー反応器等の重質炭化水素を分解するための反応器、より軽質の炭化水素を分解するための反応器、および炭化水素を処理および/または状態調節するための汚染物質捕捉反応器のそれぞれを含む単一再生器のみを含むものであってもよい。
【0068】
本開示の実施形態は、フィード汚染物質が多くない軽質原油およびスイート原油に加工するために使用することができる(シナリオ1)。このスキームは図2と対応し得るが、より軽質の炭化水素留分とより重質の炭化水素留分を分離するため、図3のHOPSまたは設備30を有する。重質留分は第2の触媒(RFCC、低濃度のZSM-5)と共にFCCライザーへ送られ、一方でより軽質の流れはZSM-5を濃縮するための固形物分離機器6を備える第2の反応器内(図1B)で加工されて、より高収率の軽質オレフィンおよび芳香族を製造する。ZSM-5は、ここではより大きくかつより高密度の粒子である一方でRFCC触媒はより小さくかつより軽い。第2の反応器は、ZSM-5濃縮のための(図1Aまたは1B)単一反応器二元触媒(SRDC)型である。
【0069】
本開示の実施形態は、サワー原油および重質原油(すなわち、比較的高濃度の汚染物質/不純物を有する)(シナリオ2)を加工するために使用してもよい。このスキームは図3に対応し得る。スキームは、より軽質の炭化水素留分と重質炭化水素留分を分離するために、図3の設備30としてHOPSを含むものであってもよい。重質留分は、設備/プロセス60内で汚染物質除去触媒(RFCC触媒、金属類トラップ、添加剤、等)と共に、単一反応器二元触媒(SRDC)型反応器に送られる。スキームのパート1は、従来のFCCスキームにおける金属トラップまたは汚染物質除去添加剤のみを使用できる。スキームのパート2は、(FCC触媒+ZSM-5および少量の金属トラップ)を用いて第1のライザー内の中質原油留分(HVGO範囲)を分解するため、FCCライザーを含むものであってもよい。原油の最も重い留分は、オイルから汚染物質が除去される単一反応器二元触媒(SRDC)反応器へ送られ、さらに固形物分離機器が金属トラップまたは汚染物質除去添加剤の濃縮を補助する。金属トラップ粒子は大きくかつ高密度である一方で、FCC触媒およびZSM-5は同一となるが金属トラップと比較すると小さくかつ軽い。これは図1A図2との組み合わせのスキームを参照する。設備30からの軽質原油留分および分留器70からのリサイクル流の大部分が、図1Aまたは1Bおよび図2におけるスキームの組み合わせに対応している設備/プロセス64において加工される。さらに、上記プロセス64は、軽質オレフィンおよび芳香族をより高収率で製造するためのZSM-5を濃縮するという点でFCC/RFCC触媒およびZSM-5を使用するシナリオ1と同様である。プロセス64においてZSM-5はここではより大きくかつより高密度の粒子である一方でFCC/RFCC触媒はより小さくかつより軽い。
【0070】
設備30からの軽質原油留分および分留器70からのリサイクル流の大部分が、図1Aまたは1Bおよび図2におけるスキームの組み合わせに対応している設備/プロセス64において加工される。さらに、上記プロセス64は、軽質オレフィンおよび芳香族をより高収率で製造するためのZSM-5を濃縮するという点でFCC/RFCC触媒およびZSM-5を使用するシナリオ1と同様である。プロセス64においてZSM-5はここではより大きくかつより高密度の粒子である一方で、FCC/RFCC触媒はより小さくかつより軽い。
【0071】
既に記載したように、本開示の実施形態は、原油の重質部分から汚染物質(CCR、ニッケル、バナジウム、窒素、ナトリウム、鉄、カルシウム、等)を除去するためFCC/RFCCユニットに用いられる反応器システムを備えることもできる。上記製品は、共通の主要な分留セクションに送ってもよい。その後、汚染物質の少ない重質フィードは、FCCユニットにおいて加工できる。本ユニット内の上記添加剤は金属トラップを伴うFCCユニットの使用済みの触媒であってもよい。この概念は、炭素排除アプローチを伴う流動接触反応プラットホームを用いるものである。
【0072】
通常のガスプラントからリサイクルされた接触ナフサと共に原油分離物(例えばHOPS上部)由来の新鮮なナフサおよびガスオイルは、FCCユニット再生器に取り付けられたもう一つの単一再生器二元触媒反応器システムにリサイクルし戻すこともできる。FCC/RFCCユニットに用いた追加の反応器は、軽質オレフィン、高オクタンガソリンおよび芳香族の製品を最大限にするために、反応器内で加工するナフサおよび/またはC4類から好適な触媒を使用してそれらの生産性を高めるために使用できる。ビルトインの固形物分離器(SSD)を使用した単一再生器二元触媒(SRDC)技術は、いくつかの実施形態では、FCCU/RFCCUシステム内でFCC/RFCC触媒から分離することにより、添加剤(ZSM-5または金属トラップ等)の濃度を上昇させるために利用してもよい。SSDを使用すると、3-4X等の1.5-5X添加剤濃度、全残留量の増加は、FCC触媒と添加剤(FCC/RFCC触媒と比べて高密度かつ大きい粒子である金属トラップまたはZSM-5粒子)の混合物から達成することができる。したがって、本開示の実施形態による方法は、全原油の加工、原油から軽質オレフィンへの優れた変換の達成、および、触媒寿命および活性を改善する改良されたフィード汚染物の除去にも関する上記の問題を解決できる。
【0073】
既に記載したように、本開示の実施形態は、原油中の汚染物質の除去と同時に実施される、各種源から軽質オレフィンへの原油の接触変換に関する。本開示の方法は、上で記載したようなスタンドアローンプロセスであってもよい。あるいは、上記汚染物質の除去工程は、LC-Fining、LC-MAX、ARDS、または他の原油の残渣または他の高沸点留分を取り扱うのに好適なシステムと統合または置き換えることもできる。本開示の実施形態の反応器および触媒特性は、軽質オレフィンまたは原油からの化学品経路を最大限とすることを目的とした高過酷度FCCプロセスの一部とみなすこともできる。LummusINDMAX FCC設計/構成は、FCCの範囲内である本開示の実施形態の望まれるハードウェア機能を導入するための大きな代替手段を提供する。加えて、本開示の実施形態は、軽質オレフィンを最大限とするため、本開示に記載されているように、例えばFCCから製造されたナフサを高密度再循環ライザーに送ることにより、ガソリンまたは中間蒸留物を製造することを目的とする従来のFCCプロセスと統合することもできる。本開示の実施形態は、他のオレフィンのうち、エチレンおよびブテン類を、プロピレンに高収率で変換するためにLummusオレフィン変換技術(OCT)とも統合することができる。
【0074】
本開示では実施形態の数が限定されているが、本開示の利益を享受する当業者らは、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態を導き出すことができることを当然に理解できる。
図1
図2
図3