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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】金属回収装置の状態監視システム
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/00 20060101AFI20241210BHJP
   C25C 7/02 20060101ALI20241210BHJP
   C25C 7/06 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C25C7/00 301
C25C7/02 305
C25C7/06 301Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022557506
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038354
(87)【国際公開番号】W WO2022085610
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020176849
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】323001683
【氏名又は名称】アサヒプリテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 誠
(72)【発明者】
【氏名】阪上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 卓哉
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/46499(WO,A1)
【文献】特開平10-140386(JP,A)
【文献】特開2000-144499(JP,A)
【文献】特開昭61-223544(JP,A)
【文献】特開平9-125292(JP,A)
【文献】特開平10-237698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 7/00
C25C 7/02
C25C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属回収装置の陽極の状態を監視するシステムであって、
前記状態監視システムは、
金属回収装置と、制御装置とを備え、
前記金属回収装置は、
陰極と陽極との間の電圧を測定する電圧測定部を有し、
前記制御装置は、
前記電圧測定部から受信した電圧データを処理するデータ演算部を有し、
前記データ演算部では、前記電圧データに基づいて1階微分値、または2階微分値を特徴量として算出すると共に、
前記特徴量と所定のしきい値と比較し、前記特徴量が前記しきい値以上であるときに、前記金属回収装置を要保守状態と診断することを特徴とする陽極の状態監視システム。
【請求項3】
前記要保守状態の対象は電極触媒がコーティングされた陽極である請求項1または2に記載の陽極の状態監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属回収装置の状態を監視するシステムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
工場などから排出される処理液や廃棄物を溶解処理した溶液などの各種廃液にはAu、Ag、Pt、Ni、Cu、Coなどの有価金属が含まれている。回収対象となる金属は、例えば廃液を電気分解して回収されている。電気分解を利用した金属の回収装置としては例えば特許文献1~4に示す様な各種金属回収装置が従来から使用されている。
【0003】
金属回収装置は稼働時間が長くなると電極が劣化するなどして稼働効率が低下したり、配線や設備が劣化するためメンテナンスが必要となる。しかしながら金属回収装置のメンテナンスが必要となる時期は電解液の種類や処理条件などによって異なるため、金属回収装置のメンテナンス時期を予測することが難しかった。そのため金属回収装置の状態を定期的に確認しているが、金属回収装置の停止を伴うため金属回収効率が低下したり、多大な作業負担が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017―155343号公報
【文献】国際公開第2008/153001号公報
【文献】特開2007-002310号公報
【文献】特開昭61-104096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされた発明であって、金属回収装置の状態を監視するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得た本発明の状態監視システムは、以下の構成を有する。
[1]金属回収装置の状態を監視するシステムであって、
前記状態監視システムは、
金属回収装置と、制御装置とを備え、
前記金属回収装置は、
陰極と陽極との間の電圧を測定する電圧測定部を有し、
前記制御装置は、
前記電圧測定部から受信した電圧データを処理するデータ演算部を有し、
前記データ演算部では、前記電圧データに基づいて1階微分値、または2階微分値を特徴量として算出すると共に、
前記特徴量と所定のしきい値と比較し、前記特徴量が前記しきい値以上であるときに、前記金属回収装置を要保守状態と診断する。
【0007】
[2]前記制御装置は、しきい値と比較して得られた診断結果を、電気通信回線を通じて管理用端末に通知することも好ましい実施態様である。
【0008】
[3]前記要保守状態の対象は電極触媒がコーティングされた陽極であることも好ましい実施態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば金属回収装置の状態を監視するシステムを提供できる。特に本発明のシステムでは金属回収装置の電圧を監視することで金属回収装置の状態を把握し、適切な時期に金属回収装置をメンテナンスすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の金属回収装置の監視システムの全体構成の概略構成図である。
図2図2は、金属回収装置の概略構成図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る監視システムの構成を示すブロック図である。
図4図4は、データベースの構成の例示である。
図5図5は、データ処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、電圧データに基づいて1階微分した値をプロットしたグラフである。
図7図7は、電圧データに基づいて2階微分した値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[監視システムの全体構成]
図1は、本発明の金属回収装置の状態監視システム(以下、状態監視システムという)の全体構成の一例を示す概略構成図である。
本発明の状態監視システムは金属回収装置1で使用されている電圧状態を監視する。状態監視システムは、金属回収装置1、制御装置20とを備える。
金属回収装置1は陽極と、該陽極と陰極との間の電圧を測定する電圧測定部10を有する。
制御装置20は電圧測定部10から受信した電圧データを処理するデータ演算部を有する。
制御装置20としては、CPUなどに代表される中央演算処理装置であるデータ演算部、各種データの記憶部、データ入出力部を備えており、例えばCPUなどのプロセッサ、ROMなどのメモリ、HDDなどの記憶媒体、データの送受信を行なう通信機能を備える汎用コンピューター、パーソナルコンピューターやサーバーなどの電子計算機である。
制御装置20は金属回収装置1に設けた電圧測定部10の出力部と有線、または無線で接続され、金属回収装置の稼働時に電圧データを取得できるように構成されている。
更に状態監視システムは任意に管理用端末40を備えていてもよい。制御装置20のデータ処理部で電圧データを処理した結果を必要に応じて電気通信回線を通じて管理用端末40に通知してもよい。
【0012】
[金属回収装置の構成]
図2は金属回収装置1の一例を示す概略構成図である。図2に基づいて金属回収装置1の概要を説明するが、本発明は図示例に限られず、電気分解を利用して廃液から金属を回収する各種公知の金属回収装置に本発明のシステムを適用可能である。
本発明の状態監視システムは、既存の金属回収装置の構成を変更することなく利用可能である。
金属回収装置1は金属イオンを含む廃液6(以下、金属イオン含有溶液という)を収容する電解槽2、電気分解に必要な陽極3、陰極4を有する。
電解槽2は、目的に応じて、大きさ、形状、材料を適宜選択できる。
陽極3は不溶性材料である。陽極3には各種公知の電極基材を使用でき、例えばチタン、ニオブ、ジルコニウム、及びこれらを母材とする各種合金などの耐食性を有する金属が好ましい。また本発明の対象とする金属回収装置は電極基材を電極触媒で被覆した陽極を使用することも好ましい。陽極基材を被覆する電極触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、イリジウムなどの白金族の酸化物などが例示される。
本発明は、既存の金属回収装置の陽極に適用できるため、陽極の大きさ、形状、数、材料を変更することなく、適用可能である。
【0013】
陰極4は、金属イオン含有溶液6の種類、回収対象金属に応じて材質を適宜選択でき、例えば鉄、ニッケル、ステンレス、アルミ、チタン、これらを母材とする合金などである。
図示例では筒状の陰極4を使用しているが、本発明は既存の金属回収装置に適用できるため、陰極の材料、大きさ、形状、構造等を変更することなく、適用可能である。
陰極4には駆動部5が設けられており、該駆動部5により陰極4が回転するように構成されている。陰極4は駆動部5の作動により軸14を中心にして周方向に回転する。駆動部5としてはモーターなどの動力源が例示されるが、これに限定されない。
【0014】
陽極3と陰極4は整流器と交流電源を有する電源ユニット7に接続され、電解槽2内で陽極3と陰極4との間に電位が発生するように構成されている。
電源ユニット7は交流電源を整流し、所定の直流電流を電極3、4に供給する。電力が供給されると電解槽2内で金属イオン含有溶液6の電気分解が行われ、陰極4に有価金属が析出する。
本発明では電極に供給される電流の電圧を測定するために、電圧測定部10を金属回収装置1に設置する。電圧測定部10は電圧計などの電圧測定センサ8、電圧測定端子9、及び測定値出力部11とを有する。電圧測定端子9は電極の電圧を測定できるように電源ユニット7と陽極3との間、電源ユニット7と陰極4との間の任意の位置に接続されている。
【0015】
金属イオン含有溶液6は、有価金属を含有する液であれば特に限定されない。金属イオン含有溶液6としては例えば、めっき剥離液、めっき液、めっき品の洗浄液などのめっき廃液、あるいはプリント基板などの有価金属を含む材料を酸性溶液で溶解した溶解液などである。
有価金属としては金、銀、銅、ニッケル、白金族元素などが例示されるが、これに限定されず、回収対象となる任意の金属である。
【0016】
金属イオン含有溶液6は例えば必要に応じて設けた供給槽12などを介して工場などの排出源から電解槽2に設けた供給口から電解槽2にバッチ式、あるいは連続式に供給される。金属イオン含有溶液6の供給には必要に応じてポンプ13などの送液手段を用いてもよい。電気分解条件などの金属回収装置の操業条件は金属回収装置1の処理量や金属イオン含有溶液6の供給量に応じて適宜設定される。本発明は既存の金属回収装置1の操業条件を採用できる。
電解槽2で処理された後の処理済液は任意の処理工程に送液される。図示例では電解槽2から排出された処理済液を供給槽12に返送して電解槽2に再度供給されるように構成されている。本発明では処理済液の処理工程は特に限定されず、公知の工程を採用できる。例えば処理済液は電気分解以外の他の任意の処理工程に送液してもよい。
【0017】
本明細書では陽極にコーティングした電極触媒の減耗によって電圧が変動した場合を例に説明するが、本発明の状態監視システムは陽極に基づく電圧変動に限定されない。本発明の状態監視システムは、各種故障に基づいて生じる加速度的な電圧変動も対象に含めることができる。例えば電極と電源ニットとを接続する配線が劣化した場合など、金属回収装置に異常が生じると電圧が加速度的に変動することがある。このような場合も特徴量がしきい値以上になれば管理用端末40に通知がされる。該通知により金属回収装置が要保守状態であることがわかる。該通知に基づいて確認した陽極の状態が正常であれば、例えば配線など他の部分に問題があると判断できる。したがって通知に基づいて金属回収装置が要保守状態にあることがわかる。
【0018】
[電圧変化と陽極の劣化との関係]
金属回収装置は、例えば電極基材に貴金属などの電極触媒をコーティングした陽極を用いた場合、電解処理期間が長くなると陽極の性能が劣化し、電解効率が低下するため陽極のメンテナンスが必要になる。
本発明者らの検討の結果、電極に供給される電流の電圧を測定し、その測定値から算出される特徴量と陽極の劣化状態を判断するしきい値(以下、しきい値という)とを比較することで陽極の適切なメンテナンス時期を判断できることを見出した。
本発明者らが検討を重ねたところ、電解処理に伴って陽極にコーティングした電極触媒の減耗が進んでコーティングした電極触媒の面積が減少すると残存する電極触媒部分に電流が集中して電極触媒の減耗が加速すると共に、この際の電圧が急激に上昇することがわかった。
電解処理時の電圧を測定し、その値をグラフにプロットすると、陽極の電極触媒の減耗が進んで陽極が劣化しだすと電圧が上昇するため、電圧曲線が変化する変曲点が現れる。もっとも単位時間あたりの電圧の変化量を観察しても電圧は被処理溶液の種類や金属イオン濃度などの処理条件によっても変化するため、電圧の変化を検知対象とすると検知誤差が多く、メンテナンスの要否を判断できない。
【0019】
そこで検知誤差低減について更に検討した結果、電圧の測定結果を1階微分、または2階微分してプロットすると図6図7に示す様に電圧曲線が0から正に急峻に変化する変曲点が現れ(図中矢印部分)、この1階微分値、または2階微分値が所定のしきい値以上の場合に陽極のメンテナンスが必要と判断できることを見出した。
したがって本発明では測定した電圧データ(生データ)をそのまま使用するのではなく、1階微分、または2階微分した値(以下、まとめて微分値ということがある)を特徴量とし、この特徴量としきい値とを比較して、陽極のメンテナンスの要否を判断する。
なお、1階微分の方法は、例えば電圧の変化量を時間で割ることが挙げられるが、これに限定されない。2階微分の方法も、例えば1階微分値の変化量を時間で割ることが挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
しきい値は、電解する液種、電圧、電流などの電解条件、過去のデータ、類似の装置のデータなどから陽極のメンテナンスが必要となったときの値を参考にして決定することができる。
しきい値として任意の電圧を設定し、特徴量が該しきい値に達成した場合を要メンテナンス状態と判断してもよいが、稼働開始後は電圧が大きく変動することがあり、誤検出することがある。稼働開始初期に生じる誤検出率を低減する観点からは、例えば(1)電解開始後、所定時間経過してから微分値の平均値を算出し、該平均値の2倍をしきい値として設定し、所定の間隔で採取した微分値と、該しきい値とを比較し、該微分値が1回、または2回以上の任意の回数を連続でしきい値以上となったとき、要メンテナンス状態と判断してもよい。
あるいは(2)電解開始後、所定時間経過してから算出した微分値と、各微分値の移動平均値とを比較し、該移動平均値が該しきい値以上となったとき、要メンテナンス状態と判断してもよい。
微分値の算出を所定時間の経過後とするのは、電解開始直後は電圧が増減しやすいため、例えば電解開始後30時間経過後など、電圧が安定した後、データを採取することが望ましいからである。
また微分値としきい値との対比は、一定の間隔で行なうことが望ましく、例えば電解装置を24時間連続稼働する場合は、12時間毎、或いは24時間毎など一定の間隔、あるいは任意の間隔(以下、あわせて所定の間隔という)で対比してもよい。電解装置の稼働が24時間未満の場合も稼働中の所定の間隔で対比すればよい。
移動平均値も任意の一定区間毎の平均値を求めればよく、例えば100時間毎など適宜設定すればよい。
【0021】
また(3)しきい値は下記のように設定することも好ましい実施態様である。
取得した電圧データから特徴量を算出すると共に、該特徴量の平均値と標準偏差(1σ)を求め、平均値+nσ(nは任意に設定した値)をしきい値として設定する。このしきい値と特徴量を比較し、特徴量がしきい値以上となった場合を要メンテナンス状態と判断する。
例えば表1では以下の様にしきい値を設定して陽極の状態を監視できる。なお、表1は図7に対応するデータである。
【0022】
【表1】
【0023】
表1では平均値+3σをしきい値として設定しており、特徴量がしきい値を超えた積算時間129時間において要メンテナンス状態と判断できる。
【0024】
[状態監視システムの構成]
図3は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの構成を示すブロック図である。
制御装置20は、データ取得部22、記憶部23、データ演算部24、出力部25とを有する。制御装置20は更に電圧測定部10で取得した電圧データをデジタルデータに変換するA/Dコンバーター21を有することも好ましい。
【0025】
図5は制御システム20のデータ演算部24の処理例を示したフローチャートである。
【0026】
電圧測定部10は金属回収装置1の稼働中、電極に供給する電流の電圧を電圧測定センサ8で測定する。電圧測定センサ8での測定間隔は任意に設定でき、例えば一定の間隔、或いは連続的に電圧を測定するように設定してもよい。得られた電圧データ(電圧測定値)は測定値出力部11を介して制御装置20に送信する。電圧データは好ましくはA/Dコンバーター21に送信する。測定値出力部11と制御装置20は有線LAN、無線LAN、WiFi、電話通信回線などの電気通信回線、あるいはデータ転送ケーブルなどの任意の通信手段で接続され、電圧データの送信ができるように構成されている。
【0027】
A/Dコンバーター21は、電圧測定部10から受信したアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0028】
データ取得部22は電圧測定部10、またはA/Dコンバーター21から電圧データを受信する。受信した電圧データは記憶部23に記憶させると共にデータ演算部24に送信する。受信した電圧データはデータ取得部22から直接データ演算部24に送信してもよいし、あるいはデータ取得部22から記憶部23に記憶させた後、該記憶部23から読みだしてデータ演算部24に送信してもよい。電圧データは取得時刻情報と紐付けて保存することが好ましい。
【0029】
データ演算部24では取得した電圧データから特徴量(1階微分、および/または2階微分した値)を計算する。得られた微分値を特徴量として記憶部23に記憶させる。
【0030】
またデータ演算部24では特徴量としきい値とを比較することで、陽極の状態を判断する。判断結果は記憶部23に記憶させる。判断結果は、記号、数値、文字などの情報の付加情報を付加して記憶部23に記憶させてもよい。付加情報として該しきい値以上と該しきい値未満とを区別する情報や、特徴量と該しきい値との差分値が例示される。
【0031】
データ演算部24は判断結果に応じて通知などのイベントの要否を判断し、必要応じて出力部25から管理用端末40に判断結果を送信する。例えば判断結果がしきい値以上など、必要条件を満たした場合をイベント実行のトリガーとして、出力部25から電気通信回線を介して管理用端末40へ通知する。通知内容は所定の判断結果や各種取得データ、定型文など適宜設定した情報とすることができる。例えば記憶部23に予め用意されている定型文と、上記判断結果や電圧データなどを加えて通知情報を生成してもよい。
【0032】
出力部25は、通信回線を介して、管理用端末40と通信する。例えば出力部25はデータ演算部24から判断結果を受け取った場合、該情報を管理用端末40へ送信する。なお、管理用端末40に送信した情報、日時を記憶部23に記憶させてもよい。
【0033】
データ取得部22、記憶部23、データ演算部24、出力部25など制御装置20の各処理部での各種処理は、各処理に対応したプログラムをCPUなどのプロセッサが実行することにより実現される。また各プログラムはROMなどのメモリに予め格納されており、プロセッサはメモリからプログラムを読み出して実行することにより、各処理部において必要な処理を実行し、動作する。
必要に応じてデータを一時的に記憶するRAMなどの記録媒体を備えていてもよい。RAMにデータを一時的に保存することでプロセッサがHDDなどの記憶媒体からデータを取得する時間を短縮できる。
【0034】
記憶部23はHDD、SSDなどの備付型の記憶媒体、SDカードやUSBメモリなどの可搬型の記憶媒体であってもよい。
本発明では記憶部23にデータベース(DBMS:データベース管理システム)領域を設けて、記憶部23で受信した各データをデータベースの適切なレコードに入力して記憶させることが望ましい。例えば図4のデータベースでは一意に決まる固有の主キー、測定日レコード(Day)、測定時間レコード(Time)、積算時間レコード、電流データレコード、電圧データレコード、2階微分レコード、平均値レコード、標準偏差レコード、しきい値レコード、判定結果レコードなど上記処理で生成されたデータを格納するレコードを作成し、同一の電圧データから派生する各データを同一の主キーに紐づけて各レコードに入力して保存することが望ましい。データベースには必要に応じて上記データが示すステータス、あるいは上記データをトリガーとするイベント、アクションなど任意の情報を保有するレコードを設けてもよい。
【0035】
出力部25は、制御装置20と外部の管理用端末40との通信を行なう機能部であり、例えばLTE回線やインターネットなどの電気通信回線に接続可能な通信モジュール、或いは有線LANなどに接続可能な通信モジュールにより構成されている。
【0036】
通知する管理用端末40は1または2以上であってもよい。管理用端末40は制御装置20と通信可能な端末であり、例えばスマートフォン、タブレット、PDA、携帯電話などのモバイル情報端末、モバイルコンピューター、デスクトップコンピュータなどの各種通信モジュールを備えた端末が例示される。
【0037】
管理者は管理用端末40で受信した通知により、陽極3の状態を把握し、陽極の交換など適切な保守、管理ができる。
また管理者は電気通信回線を通じて制御装置20にアクセス、あるいは制御装置20に任意に接続されたパーソナルコンピューターなどの端末などを介して、記憶部23に格納したデータを確認できる。この際、データベースから任意のレコード、あるいはデータを抽出、加工するプログラムを使用することで容易に陽極の状態を確認できる。例えば電圧情報を利用してグラフ化して経時的な電圧の変化をモニタできるようにしてもよい。
【0038】
本願は、2020年10月21日に出願された日本国特許出願第2020-176849号に基づく優先権の利益を主張するものである。2020年10月21日に出願された日本国特許出願第2020-176849号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0039】
1 金属回収装置
2 電解槽
3 陽極
4 陰極
5 駆動部
6 金属イオン含有溶液
7 電源ユニット
8 電圧測定センサ
9 電圧測定端子
10 電圧測定部
11 測定値出力部
12 供給槽
13 ポンプ
14 軸
20 制御装置
21 A/Dコンバーター
22 データ取得部
23 記憶部
24 データ演算部
25 出力部
40 管理用端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7