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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20241210BHJP
   B29C 45/47 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/47
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022561952
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2021041261
(87)【国際公開番号】W WO2022102637
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020190287
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳史
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-016016(JP,A)
【文献】特開昭61-189915(JP,A)
【文献】特開2003-305758(JP,A)
【文献】特開平09-029794(JP,A)
【文献】特開2004-154994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内で回転および進退するスクリュとを備える射出成形機の前記スクリュを順回転させながら所定の計量位置まで後退させることで前記シリンダ内の樹脂を計量する制御装置であって、
前記スクリュが前記所定の計量位置に到達した後、所定のサックバック速度で前記スクリュをサックバックさせるサックバック制御部と、
前記スクリュのサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値に基づいて前記スクリュを逆回転させる逆回転制御部と、
前記逆回転が開始されてからの前記スクリュの逆回転状態を示す逆回転状態値を計測する計測部と、
前記逆回転状態値が閾値に到達したときに、前記サックバック制御部による前記スクリュのサックバックを終了させるサックバック終了制御部と、
を備え
前記逆回転状態値は、逆回転する前記スクリュの回転速度、前記スクリュが逆回転を開始してからの回転量または経過時間である、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記閾値を設定する閾値設定部と、
前記スクリュの種類および前記樹脂の種類の少なくとも一方に対応する係数を記憶したテーブルと、
射出成形に用いる前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類を取得する取得部と、
をさらに備え、
前記閾値設定部は、前記取得部により取得された前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類に対応する前記係数と、前記所定の逆回転条件値とを乗算した値を前記閾値として設定する、制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記閾値を設定する閾値設定部と、
前記シリンダ内の前記樹脂の圧力を取得する圧力取得部と、
をさらに備え、
前記サックバック終了制御部は、前記閾値設定部が前記閾値を設定する場合には、前記樹脂の圧力が所定のサックバック終了圧力に到達するまでは、前記サックバック制御部による前記スクリュのサックバックを終了させず、
前記閾値設定部は、サックバック中の前記樹脂の圧力が前記所定のサックバック終了圧力に到達したときの前記逆回転状態値に基づいて前記閾値を設定する、制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置であって、
前記閾値設定部は、前記射出成形機が成形サイクルを所定回数実行する間に計測される前記所定回数分の前記逆回転状態値の最小値、最大値、平均値、中央値または最頻値を前記閾値として算出する、制御装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記閾値設定部が設定した前記閾値についてのオペレータによる変更指示を受け付ける変更受付部をさらに備える、制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記閾値が予め決められた範囲を逸脱している場合に、前記範囲内に収まるように前記閾値を補正する補正部をさらに備える、制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記閾値を表示部に表示させる表示制御部をさらに備える、制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記サックバック終了制御部は、前記スクリュのサックバックの終了前に前記逆回転が終了した場合には、前記スクリュのサックバックを強制終了させる、制御装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記スクリュのサックバックの終了前に前記逆回転が終了した場合に、前記スクリュのサックバックの終了前に前記逆回転が終了したことを報知する報知部をさらに備える、制御装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記所定の逆回転条件値は、前記逆回転の継続時間、目標逆回転速度、および前記逆回転を終了させる目標逆回転量のうちの少なくとも2つを含む、制御装置。
【請求項11】
シリンダと、前記シリンダ内で回転および進退するスクリュとを備える射出成形機の前記スクリュを順回転させながら所定の計量位置まで後退させることで前記シリンダ内の樹脂を計量する制御方法であって、
前記スクリュが前記所定の計量位置に到達した後、所定のサックバック速度で前記スクリュをサックバックさせるサックバック制御ステップと、
前記スクリュのサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値に基づいて前記スクリュを逆回転させる逆回転制御ステップと、
前記逆回転が開始されてからの前記スクリュの逆回転状態を示す逆回転状態値を計測する計測ステップと、
前記逆回転状態値が閾値に到達したときに、前記サックバック制御ステップによる前記スクリュのサックバックを終了させるサックバック終了ステップと、
を含み、
前記逆回転状態値は、逆回転する前記スクリュの回転速度、前記スクリュが逆回転を開始してからの回転量または経過時間である、制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法であって、
前記閾値を設定する閾値設定ステップと、
射出成形に用いる前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類を取得する取得ステップと、
をさらに含み、
前記閾値設定ステップでは、前記スクリュの種類および前記樹脂の種類の少なくとも一方に対応する係数を記憶したテーブルに基づいて、前記取得ステップにより取得された前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類に対応する前記係数と、前記所定の逆回転条件値とを乗算した値を前記閾値として設定する、制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載の制御方法であって、
前記閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記シリンダ内の前記樹脂の圧力を取得する圧力取得ステップと、
をさらに含み、
前記サックバック終了ステップでは、前記閾値設定ステップを行う場合には、前記樹脂の圧力が所定のサックバック終了圧力に到達するまでは、前記サックバック制御ステップによる前記スクリュのサックバックを終了させず、
前記閾値設定ステップでは、サックバック中の前記樹脂の圧力が前記所定のサックバック終了圧力に到達したときの前記逆回転状態値に基づいて前記閾値を設定する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機を制御する制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の成形サイクルは、計量した溶融樹脂の圧力を所定の目標圧力まで低下させる工程(減圧工程)を含む。特開平1-148526号公報には、減圧工程に関し、樹脂の圧力を監視することで、樹脂の圧力が一定値に下がった場合にサックバックを終了させることが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
射出成形機は、シリンダと、スクリュとを備える。スクリュは、シリンダ内でサックバック(後退)可能である。シリンダ内の樹脂の圧力は、スクリュがサックバックを行うことに応じて、速やかに低下する。しかしながら、樹脂の圧力は、樹脂の粘性抵抗、またはスクリュに掛かる負荷等の影響を受けて変動する。したがって、特開平1-148526号公報では、サックバックの終了タイミングが、成形サイクル毎にばらつくという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、サックバックの終了タイミングのばらつきを低減させることを目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様は、シリンダと、前記シリンダ内で回転および進退するスクリュとを備える射出成形機の前記スクリュを順回転させながら所定の計量位置まで後退させることで前記シリンダ内の前記樹脂を計量する制御装置であって、前記スクリュが前記所定の計量位置に到達した後、所定のサックバック速度で前記スクリュをサックバックさせるサックバック制御部と、前記スクリュのサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値に基づいて前記スクリュを逆回転させる逆回転制御部と、前記逆回転が開始されてからの前記スクリュの逆回転状態を示す逆回転状態値を計測する計測部と、前記逆回転状態値が閾値に到達したときに、前記サックバック制御部による前記スクリュのサックバックを終了させるサックバック終了制御部と、を備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、シリンダと、前記シリンダ内で回転および進退するスクリュとを備える射出成形機の前記スクリュを順回転させながら所定の計量位置まで後退させることで前記シリンダ内の前記樹脂を計量する制御方法であって、前記スクリュが前記所定の計量位置に到達した後、所定のサックバック速度で前記スクリュをサックバックさせるサックバック制御ステップと、前記スクリュのサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値に基づいて前記スクリュを逆回転させる逆回転制御ステップと、前記逆回転が開始されてからの前記スクリュの逆回転状態を示す逆回転状態値を計測する計測ステップと、前記逆回転状態値が閾値に到達したときに、前記サックバック制御ステップによる前記スクリュのサックバックを終了させるサックバック終了ステップと、を含む。
【0007】
本発明の態様によれば、サックバックの終了タイミングのばらつきが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態の射出成形機の側面図である。
図2図2は、射出ユニットの概略構成図である。
図3図3は、制御装置の概略構成図である。
図4図4は、実施の形態の制御方法の流れを例示する第1のフローチャートである。
図5図5は、図4の制御方法が実行される場合のスクリュの後退速度と、スクリュの回転速度と、樹脂の圧力との時間推移を例示する第1のタイムチャートである。
図6図6は、実施の形態の制御方法の流れを例示する第2のフローチャートである。
図7図7は、図6の制御方法が実行される場合のスクリュの後退速度と、スクリュの回転速度と、樹脂の圧力の時間推移とを例示する第2のタイムチャートである。
図8図8は、変形例2の制御装置の概略構成図である。
図9図9は、変形例2の記憶部に記憶されるテーブルの構成例である。
図10図10は、変形例3の制御装置の概略構成図である。
図11図11は、変形例5の制御装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の制御装置および制御方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0010】
[実施の形態]
図1は、実施の形態の射出成形機10の側面図である。
【0011】
射出成形機10は、型締めユニット14と、射出ユニット16と、機台18と、制御装置20と、を備える。型締めユニット14は、開閉可能な金型12を有する。射出ユニット16は、型締めユニット14よりも後方向(図1参照)に設置される。機台18は、型締めユニット14と、射出ユニット16とを支持する。型締めユニット14と機台18とは、既知の技術に基づいて構成されてもよい。
【0012】
まず、以下において射出ユニット16が説明される。射出ユニット16は、制御装置20の制御対象である。
【0013】
射出ユニット16はベース22に支持される。ベース22はガイドレール24により前後に進退可能に支持される。なお、ガイドレール24は、機台18に設置される。これにより、射出ユニット16は、機台18上で前後に進退可能となる。
【0014】
図2は、射出ユニット16の概略構成図である。
【0015】
射出ユニット16は、シリンダ(加熱筒)26と、スクリュ28と、圧力センサ30と、第1駆動装置32と、第2駆動装置34と、を備える。シリンダ26は、筒状の部材である。スクリュ28は、シリンダ26内に配置される。圧力センサ30は、スクリュ28に配置される。第1駆動装置32と、第2駆動装置34とは、スクリュ28に接続される。
【0016】
図2の仮想線Lは、シリンダ26の軸線である。仮想線Lは、前後方向に平行に延在する。なお、仮想線Lは、スクリュ28の軸線でもある。シリンダ26の軸線と、スクリュ28の軸線とが重なる(同一の仮想線Lになる)方式は、「インライン(インラインスクリュ)方式」とも称される。また、インライン方式が適用された射出成形機は「インライン式射出成形機」とも称される。
【0017】
インライン式射出成形機の射出ユニット16の構造は、他方式の射出ユニットと比較してシンプルである。したがって、射出ユニット16は、他方式の射出ユニットよりもメンテナンス性に優れる。なお、他方式とは、例えばプリプラ方式である。
【0018】
シリンダ26は、ホッパ36と、ヒータ38と、ノズル40と、を備える(図2参照)。ホッパ36は、シリンダ26のうち、後方向の端部寄りに設置される。ホッパ36には、シリンダ26に成形材料の樹脂を供給するための供給口が設けられる。この供給口に供給される樹脂は、例えばペレット状を有する。ヒータ38は、シリンダ26を加熱する。ノズル40は、シリンダ26のうち、前方向の先端に設置される。ノズル40は、射出口41を有する。射出口41は、シリンダ26の内外を連通する。
【0019】
スクリュ28は、フライト部42を有する。フライト部42は、前後方向に亘って、一重らせん状に設けられる。フライト部42とシリンダ26の内壁とは、流路44を形成する。流路44は、一重らせん状である。シリンダ26内の樹脂は、スクリュ28の順回転に応じて、流路44に沿って前方向に導かれる。
【0020】
一重らせん状のフライト部42を有するスクリュ28は、「シングルフライト型」とも称される種類に分類される。ただし、スクリュ28の種類は、シングルフライト型に限定されない。例えば、スクリュ28の種類は、「ダブルフライト型」でもよい。スクリュ28の種類がダブルフライト型である場合、フライト部42は、二重らせん状に設けられる。
【0021】
スクリュ28は、スクリュヘッド46と、チェックシート48と、逆流防止リング50と、を有する。スクリュヘッド46は、スクリュ28の前方向の先端部である。チェックシート48は、スクリュヘッド46から後方向に距離をおいて配置される。逆流防止リング50は、スクリュヘッド46とチェックシート48との間で、チェックシート48に対して前後方向に相対移動可能である。
【0022】
逆流防止リング50は、チェックシート48に対して相対移動することで、流路44を開放、または閉鎖する。例えば、逆流防止リング50は、後述する計量の最中において、逆流防止リング50よりも後方に在する樹脂から前方向の圧力を受ける。逆流防止リング50は、前方向の圧力を受けることで、チェックシート48に対して前方向に相対移動する。この場合、逆流防止リング50は、流路44を徐々に開放する。その結果、逆流防止リング50よりも後方に在する樹脂は、流路44に沿ってチェックシート48よりも前方向に流動可能となる。
【0023】
また、逆流防止リング50は、例えば後述する射出の最中において、逆流防止リング50よりも前方向に在する樹脂から後方向の圧力を受ける。逆流防止リング50は、後方向の圧力を受けることで、チェックシート48に対して後方向に相対移動する。この場合、逆流防止リング50は、流路44を徐々に閉鎖する。その結果、逆流防止リング50よりも前方向に在する樹脂が流路44に沿ってチェックシート48よりも後方向に流動(逆流)することは、抑制される。特に、逆流防止リング50とチェックシート48とが接する場合において、樹脂の逆流は最も抑制される。
【0024】
圧力センサ30は、例えばロードセルである。圧力センサ30は、例えばスクリュ28の後端部に取り付けられる。スクリュ28は、流路44に沿って流動する樹脂から圧力(樹脂の圧力)Pを受ける。圧力センサ30は、樹脂の圧力Pに応じた検出信号を出力する。この検出信号は、制御装置20に入力される。
【0025】
第1駆動装置32は、シリンダ26内においてスクリュ28を回転させる装置である。第1駆動装置32は、サーボモータ52aと、駆動プーリ54aと、従動プーリ56aと、ベルト部材58aとを備える。サーボモータ52aは、回転するシャフトを備える。駆動プーリ54aは、サーボモータ52aのシャフトと一体的に回転する。従動プーリ56aは、スクリュ28と一体的に設けられる。ベルト部材58aは、サーボモータ52aのシャフトの回転力を駆動プーリ54aから従動プーリ56aに伝達する。
【0026】
サーボモータ52aのシャフトは、駆動プーリ54aと、ベルト部材58aと、従動プーリ56aとを介して、スクリュ28に回転力を伝達する。スクリュ28は、伝達された回転力に応じて回転する。なお、スクリュ28の回転方向は、サーボモータ52aのシャフトの回転方向の変更に応じて、順回転と逆回転とに切り替えることが可能である。
【0027】
サーボモータ52aには、位置速度センサ60aが設けられる。位置速度センサ60aは、サーボモータ52aのシャフトの回転位置に応じた検出信号を出力する。検出信号は制御装置20に入力される。これにより、制御装置20は、位置速度センサ60aの検出信号に基づいてスクリュ28の回転量と、回転速度とを取得することができる。制御装置20は、位置速度センサ60aの検出信号に基づいてスクリュ28の回転加速度をさらに取得してもよい。
【0028】
第2駆動装置34は、シリンダ26内のスクリュ28を進退させる装置である。なお、本実施の形態においては、特に断らない限り、スクリュ28の進退とは、シリンダ26に対するスクリュ28の前後方向に沿った相対移動のことを指す。
【0029】
第2駆動装置34は、サーボモータ52bと、駆動プーリ54bと、従動プーリ56bと、ベルト部材58bと、ボールネジ62と、ナット64とを備える。サーボモータ52bは、回転するシャフトを備える。駆動プーリ54bは、サーボモータ52bのシャフトと一体的に回転する。ベルト部材58bは、駆動プーリ54bから従動プーリ56bにサーボモータ52bのシャフトの回転力を伝達する。従動プーリ56bはボールネジ62に接続される。ボールネジ62はナット64と螺合している。ボールネジ62は、スクリュ28の進退方向(前後方向)に平行に設置される。ボールネジ62の軸線は、仮想線Lに重なる。ボールネジ62はスクリュ28に接続されている。
【0030】
サーボモータ52bのシャフトは、駆動プーリ54bと、ベルト部材58bと、従動プーリ56bとを介して、ボールネジ62に回転力を伝達する。ボールネジ62は、伝達された回転力に応じて回転する。ナット64は、ボールネジ62の回転に応じて前後移動する。これにより、スクリュ28は前後方向に沿って直動する。なお、スクリュ28の前進と後退とは、サーボモータ52bのシャフトの回転方向の変更に応じて、変更可能である。
【0031】
サーボモータ52bには、位置速度センサ60bが設けられる。位置速度センサ60bは、サーボモータ52bのシャフトの回転位置に応じた検出信号を出力する。位置速度センサ60bは、例えば位置速度センサ60aと同様のセンサである。位置速度センサ60bの検出信号は制御装置20に入力される。これにより、制御装置20は、位置速度センサ60bの検出信号に基づいてスクリュ28の後退距離と、スクリュ28の後退速度とを算出することができる。
【0032】
上記の射出ユニット16を踏まえ、射出成形機10が成形品を得るために実行する複数の工程が以下に説明される。なお、シリンダ26内のうち、チェックシート48よりも前方向の領域は、以下の説明において「計量領域」とも称される。
【0033】
射出ユニット16のスクリュ28は、所定の回転速度(計量速度)Vrfに基づいて順回転する。これにより、ホッパ36の供給口からシリンダ26に供給された樹脂は、流路44に沿って前方向に圧送される。この圧送中において、樹脂は、ヒータ38による加熱と、スクリュ28の回転力とにより、溶融(可塑化)する。溶融した樹脂は、スクリュ28の順回転により前方向に圧送されることで、計量領域に到達する。計量領域は、溶融した樹脂を溜める。
【0034】
計量領域への樹脂の圧送は、スクリュ28がシリンダ26内を前進しきった状態から開始される。すなわち、計量領域への樹脂の圧送は、計量領域の容積が最小の状態から開始される。計量領域内の樹脂が増えると、樹脂の圧力Pが上昇する。ここで、スクリュ28は、樹脂の圧力Pを低下させるために、後退する。つまり、スクリュ28が後退すると、計量領域が拡張される。これにより、樹脂の圧力Pが低下する。なお、スクリュ28は、後退開始後においても、順回転(樹脂の圧送)を継続する。また、制御装置20は、スクリュ28の後退速度を制御する。これにより、スクリュ28の後退中において、樹脂の圧力Pは、所定値(計量圧力)Pに維持される。
【0035】
樹脂の圧送は、後退するスクリュ28が所定の位置(計量位置)に到達するまで行われる。
【0036】
スクリュ28が計量位置に到達するまで樹脂を圧送する工程は、「計量工程」または「計量」と称される。射出ユニット16は、計量を行うことにより、ある程度決まった量の樹脂を計量領域に溜めることができる。
【0037】
射出ユニット16は、計量速度Vrfと、計量圧力Pとに基づいて計量を行う。オペレータは、自分で吟味した計量速度Vrfと、計量圧力Pとを適宜設定してもよい。ただし、計量圧力Pは大気圧より大きい。
【0038】
射出ユニット16は、スクリュ28が計量位置に到達した後において、樹脂の圧力Pを計量圧力Pから目標圧力Pまで低下させる。樹脂の圧力Pを計量圧力Pから目標圧力Pまで低下させる工程は、「減圧工程」または「減圧」と称される。樹脂の圧力Pが低下すると、前方向に流動しようとする樹脂の勢いが弱まる。射出ユニット16は、計量後に減圧を行うことで、計量領域の樹脂が射出口41に流動することを抑制する。これにより、ドローリング、またはコールドスラグが抑制される。
【0039】
目標圧力Pは、本実施の形態では大気圧(圧力センサ30の検出値=ゼロ)である。ただし、目標圧力Pは、計量圧力P未満の範囲内であれば、大気圧以外が設定されてもよい。
【0040】
減圧工程において樹脂の圧力Pを低下させるために、本実施の形態の射出ユニット16は、スクリュ28をサックバックまたは逆回転させる。スクリュ28は、減圧工程においてサックバックすることで、計量位置からさらに後退する。ここで、計量領域の容積は、スクリュ28の後退した距離に応じて拡大する。これにより、計量領域内の樹脂の体積は膨張する。また、計量領域内の樹脂の密度は低下する。その結果、樹脂の圧力Pは低下する。
【0041】
サックバック中において、スクリュ28は所定の速度で後退する。この所定の速度は、以下においてサックバック速度Vsbとも称される。サックバック速度Vsbは、制御装置20に設定される。オペレータは、自分で吟味したサックバック速度Vsbを制御装置20に設定してもよい。ただし、オペレータは、射出成形機10のメーカが指定するサックバック速度Vsbのデフォルト値を制御装置20に設定してもよい。
【0042】
スクリュ28の逆回転の回転方向は、計量中の回転方向(順回転方向)とは反対方向である。スクリュ28が逆回転すると、シリンダ26内において樹脂が逆流する。これにより、樹脂はシリンダ26よりも後方向へと掻き出され、シリンダ26内の樹脂全体の密度が低下する。その結果、樹脂の圧力Pが低下する。
【0043】
本実施の形態のスクリュ28は、逆回転条件値CVrbに基づいて逆回転する。逆回転条件値CVrbは、目標逆回転速度Vrbと、継続時間Trbと、目標逆回転量Rrbとのうち少なくとも2つを含む情報である。目標逆回転速度Vrbは、逆回転中におけるスクリュ28の回転速度の目標値である。スクリュ28の逆回転の回転速度は、目標逆回転速度Vrbを目標として制御される。継続時間Trbは、逆回転を継続させる時間長の目標値である。目標逆回転量Rrbは、スクリュ28の逆回転方向での回転量(回転角度)の目標値である。
【0044】
オペレータは、目標逆回転速度Vrbと、継続時間Trbと、目標逆回転量Rrbとのうちのどれを逆回転条件値CVrbに含めるかを選択してもよい。オペレータは、逆回転条件値CVrbに含まれる複数の値のうちの少なくとも1つの値を吟味して制御装置20に設定してもよい。オペレータは、逆回転条件値CVrbに含まれる複数の値のうち、少なくとも1つの値に関しては、射出成形機10のメーカが予め設定したデフォルト値を用いてもよい。例えば、逆回転条件値CVrbは、オペレータが吟味した目標逆回転速度Vrbと、デフォルトの継続時間Trbとを含んでもよい。
【0045】
目標逆回転速度Vrbと、継続時間Trbと、目標逆回転量Rrbとのうち2つの値が決まると、残りの1つの値は自ずと決まる。例えば、目標逆回転速度Vrbと継続時間Trbとが決まると、目標逆回転量Rrbは、目標逆回転速度Vrbと継続時間Trbとの乗算結果として、自ずと決まる。
【0046】
減圧工程の後において、射出ユニット16は、スクリュ28を前進させる。これにより、計量領域内の樹脂は、射出口41を介してシリンダ26の外(金型12)に押し出される。この工程は「射出工程」または「射出」と称される。射出ユニット16は、射出を行うことで、金型12に樹脂を充填する。なお、射出が行われる間の金型12は、閉状態である。閉状態の金型12には、型締めユニット14が型締力を印加している。
【0047】
金型12に充填された樹脂は、冷却により固化される。この工程は「冷却工程」または「冷却」と称される。金型12内の樹脂が固化すると、型締めユニット14は、金型12を開く。金型12を開く工程は「型開き工程」または「型開き」と称される。固化した樹脂(成形品)は、開いた金型12から取り出し可能である。成形品が金型12から取り出される工程は、「取り出し工程」または「取り出し」と称される。型締めユニット14は、成形品が取り出された後の金型12を再び閉状態にする。金型12が閉じられる工程は、「型閉じ工程」または「型閉じ」と称される。
【0048】
以上で説明された複数の工程(計量、減圧、射出、冷却、型開き、取り出し、型閉じ)は、「成形サイクル」としてルーティーン化される。射出成形機10は、成形サイクルを繰り返し行うことにより、成形品を量産することができる。一回の成形サイクルを完了するのに要する時間は「サイクルタイム」とも称される。
【0049】
以下において、減圧工程がさらに説明される。減圧工程において、スクリュ28は、サックバック、または逆回転を実行する。ここで、スクリュ28がサックバックすると、計量領域の容積が速やかに拡大する。この場合、樹脂の圧力Pは速やかに低下する。その一方、スクリュ28が逆回転すると、樹脂が緩やかに逆流する。この場合、樹脂の圧力Pは緩やかに低下する。つまり、スクリュ28をサックバックさせる方が、スクリュ28を逆回転させるよりも素早く樹脂の圧力Pを低下させることができる。
【0050】
しかしながら、樹脂の圧力Pが目標圧力Pに到達することをサックバックの終了条件とした場合には、サックバックの終了タイミングが成形サイクルごとにばらつくとの問題が生じる。つまり、樹脂の圧力Pは、シリンダ26内で溶融した樹脂の粘性抵抗と、スクリュ28の噛み込み負荷とに応じて変動する。この変動を複数の成形サイクルにわたって一定化させることは、現実的にはほぼ不可能である。なぜならば、樹脂が流体性を得ているからである。以上の理由から、樹脂の圧力Pが目標圧力Pに到達することを終了条件としてサックバックを実行する場合、サックバックの終了タイミングは一定に定まらない。サックバックの終了タイミングが一定に定まらない場合、成形品を量産する際のサイクルタイムがばらつく。
【0051】
また、サックバックは、逆回転と比べると、計量工程において過剰に計量された樹脂の量を調整できないという問題を有する。つまり、スクリュ28は、順回転中において、スクリュ28の回転駆動に係るイナーシャと、樹脂の粘性抵抗との影響を受ける。これにより、スクリュ28が計量位置に到達する時点と、スクリュ28が順回転を停止する時点との間に時間差が生じる。つまり、スクリュ28は、計量位置に到達した後も、若干時間にわたって順回転を継続する。その結果、スクリュ28が計量位置に到達した後において、過剰な樹脂が計量領域に圧送される。この現象は、スクリュ28が計量位置に到達した時点で順回転が停止せずに、さらにスクリュ28の順回転が継続することから、オーバーランとも称される。オペレータにしてみると、オーバーランを防止することで、計量領域の樹脂量を適正量にすることが好ましい。しかしながら、イナーシャと樹脂の粘性抵抗との影響をスクリュ28が受けることは、現実的に回避できない物理現象である。したがって、オーバーランを完全に防止することは現実的に困難である。そこで、オーバーランを防止するのではなく、過剰な樹脂を計量領域内から計量領域外へと逆流させることで、樹脂量を適正量に近づけることが検討される。その点、サックバックは計量領域の容積を拡大させる動作であって、計量領域内から計量領域外への樹脂の逆流を促す動作ではない。したがって、スクリュ28がサックバックを行うことで計量領域内の過剰な樹脂を減らすことは、難しい。
【0052】
一方、スクリュ28の逆回転は、計量領域内から計量領域外への樹脂の逆流を引き起こす。これにより、計量領域内の樹脂量を、適正量に近づけることができる。
【0053】
ただし、スクリュ28の逆回転は、回転負荷の影響を受けてスクリュ28が損傷しないように、計量工程の順回転よりも緩やかに行う必要がある。したがって、逆回転中における樹脂の圧力Pの低下の勢いは、スクリュ28をサックバックさせた場合と比較すると緩やかになる。このような理由から、樹脂の圧力Pを速やかに低下させるとの点に関しては、スクリュ28を逆回転させるよりも、スクリュ28をサックバックさせる方が好ましい。
【0054】
本実施の形態の制御装置20は、以上の説明を踏まえて説明される。
【0055】
図3は、制御装置20の概略構成図である。
【0056】
制御装置20は、射出成形機10のうち、少なくとも射出ユニット16を制御する電子装置(コンピュータ)である。制御装置20は、本実施の形態ではCNC(Computerized Numerical Control)方式に基づいて射出ユニット16を制御する。制御装置20は、表示部66と、操作部68と、記憶部70と、演算部72とを備える。
【0057】
表示部66は、情報を表示する。表示部66は、例えば表示器である。表示部66は、表示画面を備える。この表示画面は、液晶、またはOEL(Organic Electro-Luminescence)を材料に含む。表示部66の表示画面は、例えば逆回転条件値CVrb、またはスクリュ28の逆回転状態値SVrb(後述)を表示する。
【0058】
操作部68は、制御装置20への情報入力(指示)を受け付ける。例えばオペレータは、サックバック速度Vsbと逆回転条件値CVrbとを、操作部68を介して制御装置20に入力する。操作部68は、例えばキーボードと、マウスと、タッチパネルとを含む。タッチパネルは、例えば表示部66に設置される。
【0059】
記憶部70は、情報を記憶する。記憶部70は、メモリを含む。例えば記憶部70は、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを含む。記憶部70は、制御プログラム74を記憶する。制御プログラム74は、本実施の形態の制御方法(射出成形機10の制御方法)を制御装置20に実行させるためのプログラムである。また、記憶部70は、閾値Thと、サックバック速度Vsbと、逆回転条件値CVrbとを記憶する。閾値Thは後述される。記憶部70は、制御プログラム74と、閾値Thと、サックバック速度Vsbと、逆回転条件値CVrbと以外の情報を記憶してもよい。
【0060】
演算部72は、情報を演算により処理する。演算部72は、プロセッサを含む。例えば演算部72は、CPU(Central Processing Unit)と、GPU(Graphics Processing Unit)とを含む。演算部72は、計量制御部75と、サックバック制御部76と、逆回転制御部78と、計測部80と、サックバック終了制御部82と、圧力取得部84と、閾値設定部86と、表示制御部88とを備える(図3参照)。計量制御部75と、サックバック制御部76と、逆回転制御部78と、計測部80と、サックバック終了制御部82と、圧力取得部84と、閾値設定部86と、表示制御部88とは、演算部72が制御プログラム74を実行することにより、仮想的に実現される。
【0061】
計量制御部75は、計量工程に関して射出ユニット16を制御する。より具体的に、計量制御部75は、計量工程においてサーボモータ52aを駆動させる。これにより、計量制御部75は、計量工程においてスクリュ28を所定の回転速度(計量速度)Vrfで順回転させる。また、計量制御部75は、計量工程においてサーボモータ52bを駆動させることで、スクリュ28の後退速度を制御する。これにより、樹脂の圧力Pは、所定の計量圧力Pに調整される。ここで、計量速度Vrfと、計量圧力Pとは、記憶部70に記憶される。ただし、計量速度Vrfと、計量圧力Pとの図示は省略した。また、樹脂の圧力Pは、後で説明する圧力取得部84から取得可能である。
【0062】
サックバック制御部76は、計量後において、サーボモータ52bを駆動させることにより、スクリュ28をサックバックさせる。これにより、サックバック制御部76は、樹脂の圧力Pを低下させることができる。ここで、サックバック制御部76は、所定のサックバック速度Vsbでスクリュ28をサックバックさせる。すなわち、サックバック制御部76は、スクリュ28が所定の計量位置に到達した後において、記憶部70に記憶されたサックバック速度でスクリュ28をサックバックさせる。
【0063】
逆回転制御部78は、スクリュ28のサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値CVrbに基づいてスクリュ28を逆回転させる。これにより、逆回転制御部78は、樹脂の圧力Pを低下させることができる。本実施の形態の場合、逆回転制御部78は、サーボモータ52aを駆動させることにより、スクリュ28を逆回転させることができる。逆回転制御部78は、サックバックの開始と同時にスクリュ28の逆回転を開始してもよい。逆回転制御部78は、所定の逆回転条件値CVrbに基づいてスクリュ28を逆回転させる。これを実現させるため、逆回転制御部78は、スクリュ28の回転速度と、回転時間とを監視しつつ、スクリュ28を制御してもよい。なお、スクリュ28の回転速度と、回転時間とは、計測部80(後述)により計測される。
【0064】
所定の逆回転条件値CVrbは、計量工程におけるスクリュ28の順回転よりも緩やかにスクリュ28を逆回転させる条件であると、好ましい。これにより、スクリュ28は、逆回転中において、イナーシャと樹脂の粘性抵抗との影響が小さくなる。その結果、スクリュ28が過剰に逆回転することが抑制される。
【0065】
スクリュ28のサックバックと、スクリュ28の逆回転とは、重複実行されてもよい。これにより、スクリュ28のサックバックによる計量領域の容積拡大と、スクリュ28の逆回転による樹脂の逆流とが重複して引き起こされる。その結果、樹脂の圧力Pは速やかに低下する。また、サックバックと逆回転とを重複実行することで、サイクルタイムを短縮することもできる。なお、サックバックと逆回転とが重複実行される場合、樹脂のみならずスクリュ28も後方向に移動する。この場合、計量領域に溜められた樹脂が射出口41から流出することは抑制される。
【0066】
計測部80は、逆回転状態値SVrbを計測する。逆回転状態値SVrbは、スクリュ28の逆回転状態を示す。逆回転状態値SVrbは、逆回転するスクリュ28の回転速度、スクリュ28の回転量、または経過時間である。本実施の形態の場合、逆回転するスクリュ28の回転速度と回転量とは、位置速度センサ60aの検出信号に基づいて計測される。また、経過時間は、例えば演算部72によりタイマ機能を実現することで計測される。
【0067】
計測部80は、スクリュ28の逆回転中の回転速度と、スクリュ28の逆回転中の回転量と、スクリュ28の逆回転開始からの経過時間との、少なくとも2つを計測してもよい。ここで、逆回転状態値SVrbのうち、計測部80が計測する値の種類と、逆回転条件値CVrbのうち、計測部80が計測する値の種類とは、異なってもよい。例えば、逆回転条件値CVrbに目標逆回転量Rrbが含まれない場合において、計測部80は逆回転状態値SVrbとして回転量を計測してもよい。
【0068】
サックバック終了制御部82は、逆回転の開始以降において、逆回転状態値SVrbが閾値Thに到達した場合に、サックバック制御部76によるスクリュ28のサックバックを終了させる。つまり、本実施の形態のサックバック終了制御部82は、スクリュ28の逆回転状態を示す逆回転状態値SVrbと閾値Thとの比較に基づいて、サックバックを終了させるか否かを判定する。この場合、サックバック終了制御部82が樹脂の圧力Pを監視することは不要である。
【0069】
サックバックの終了タイミングを逆回転状態値SVrbに基づいて判定する場合、サックバックの終了タイミングは安定化しやすい。理由は次の通りである。スクリュ28の逆回転は、逆回転制御部78が逆回転条件値CVrbに基づいて行うモータ制御により再現性よく実行される。そのため、逆回転状態値SVrbが閾値Thに到達するタイミングは、複数の成形サイクルにわたって良好な再現性を有する。ここで、スクリュ28のサックバックは、逆回転状態値SVrbが閾値Thに到達することで終了する。これにより、スクリュ28のサックバックの終了タイミングは、複数の成形サイクルにわたって良好な再現性を有する。
【0070】
また、サックバックの終了タイミングを、あえて逆回転状態値SVrbに基づいて判定することで、サックバックと逆回転との連動性が良好になる。
【0071】
閾値Thは、計測部80が計測する逆回転状態値SVrbに対応して記憶部70に記憶(設定)される。例えば、計測部80が逆回転状態値SVrbとしてスクリュ28の回転速度(逆回転速度)を計測する場合、スクリュ28の逆回転速度についての閾値Thが設定される。また、例えば計測部80が逆回転状態値SVrbとしてスクリュ28の逆回転中の回転量を計測する場合、逆回転量についての閾値Thが設定される。計測部80が逆回転状態値SVrbとしてスクリュ28の逆回転開始からの経過時間を計測する場合、その経過時間についての閾値Thが設定される。
【0072】
閾値Thは、樹脂の圧力Pが目標圧力Pに到達する前にサックバックが終了するように設定されると、好ましい。これにより、サックバックの終了後において、樹脂の圧力Pは、サックバックと逆回転とのうち、逆回転のみを行うことで目標圧力Pに到達する。ここで、スクリュ28が後退することなく逆回転することにより、計量領域から樹脂が流出する。その結果、計量領域内の樹脂量は、適正量に近づく。オペレータは、閾値Thを考慮して所定の逆回転条件値CVrbを設定することで、樹脂の圧力Pを精度よく目標圧力Pに調整することができる。
【0073】
圧力取得部84は、樹脂の圧力Pを取得する。圧力取得部84は、圧力センサ30の検出信号に基づいて樹脂の圧力Pを取得する。閾値設定部86は、閾値Thを設定する。閾値Thの設定は、設定済の閾値Thが変更されることを含む。
【0074】
閾値設定部86は、樹脂の圧力Pが所定のサックバック終了圧力Pに到達した場合、その到達時点における逆回転状態値SVrbを、閾値Thとして記憶部70に記憶させる。これにより、閾値Thが制御装置20に設定される。これに関連し、サックバック終了制御部82は、閾値設定部86に閾値Thを設定させるために、例外的に、樹脂の圧力Pが所定のサックバック終了圧力Pに到達することをサックバックの終了条件としてもよい。
【0075】
所定のサックバック終了圧力Pは、計量圧力P未満、且つ目標圧力P以上の範囲(P>P≧P)内で予め決められる。所定のサックバック終了圧力Pは、記憶部70に予め記憶されることで閾値設定部86により参照される。
【0076】
サックバックと逆回転との重複実行後に逆回転のみを行う場合、所定のサックバック終了圧力Pは、P>P>Pの範囲内で設定されると好ましい。これにより、閾値設定部86は、樹脂の圧力Pが目標圧力Pに到達する前にサックバックと逆回転とのうちサックバックを先に終了させる閾値Thを設定することができる。また、所定のサックバック終了圧力Pは、できるだけ目標圧力Pの近傍であると、より好ましい。これにより、樹脂の圧力Pが目標圧力Pまで速やかに低下する。
【0077】
なお、閾値Thがスクリュ28の逆回転速度について設定される場合、所定のサックバック終了圧力Pは、スクリュ28の逆回転速度が目標逆回転速度Vrbに到達する以前に樹脂の圧力Pが到達可能な範囲内である。オペレータは、サックバック速度Vsbを調整することで、当該範囲内に所定のサックバック終了圧力Pを収めることが可能である。
【0078】
表示制御部88は、表示部66を制御する。例えば表示制御部88は、閾値Thを表示部66に表示させる。表示制御部88は、閾値設定部86が設定した閾値Thを表示部66に表示させると好ましい。これにより、オペレータは、閾値Thが自動的に設定されたことと、その閾値Thの具体値とを知ることができる。
【0079】
表示制御部88は、閾値Th以外の情報を表示部66に表示させてもよい。例えば表示制御部88は、逆回転条件値CVrbと、逆回転状態値SVrbと、サックバック速度Vsbと、樹脂の圧力Pとを、表示部66に表示させてもよい。
【0080】
制御装置20の構成は上記に限定されない。例えば制御装置20は、射出工程において射出ユニット16を制御する要素をさらに備えてもよい。また、制御装置20は、型締めユニット14を制御する要素をさらに備えてもよい。なお、射出ユニット16を制御する要素と、型締めユニット14を制御する要素とは、既知の技術に基づいて実現されてもよい。制御装置20の説明は以上である。
【0081】
図4は、実施の形態の制御方法の流れを例示する第1のフローチャートである。図5は、図4の制御方法が実行される場合のスクリュ28の後退速度と、スクリュ28の回転速度と、樹脂の圧力Pの時間推移とを例示する第1のタイムチャートである。
【0082】
本実施の形態の制御方法が以下において説明される。この制御方法は、制御装置20により実行される。本実施の形態の制御方法は、計量ステップS1と、サックバック制御ステップS2と、逆回転制御ステップS3と、計測ステップS4と、サックバック終了ステップS5と、を含む(図4参照)。なお、以下に説明される例において、記憶部70は、スクリュ28の逆回転の継続時間に関する閾値Thを予め記憶している。サックバック制御ステップS2~サックバック終了ステップS5は、減圧工程に含まれる。
【0083】
計量ステップS1は、計量工程を実施するステップである。計量ステップS1では、計量制御部75が、スクリュ28を順回転させつつ後退させることで、樹脂の計量を行う。これにより、計量領域に樹脂が溜まると共に、樹脂の圧力Pが所定の計量圧力Pへと調整される。
【0084】
サックバック制御ステップS2では、サックバック制御部76が、スクリュ28が所定の計量位置に到達した後、所定のサックバック速度Vsbでスクリュ28をサックバックさせる。
【0085】
図5の点tは、サックバック制御ステップS2の開始時点を示す。点tは計量工程の終了時点でもある。また、点tは、減圧工程の開始時点でもある。樹脂の圧力Pは、点tにおいて所定の計量圧力Pに到達している。点tにおいて、サックバック制御部76がスクリュ28をサックバックさせる。サックバック制御部76は、点t以降において、スクリュ28の後退速度を所定のサックバック速度Vsbに調整する(図5参照)。また、サックバックの開始により、樹脂の圧力Pが計量圧力Pから低下し始める。
【0086】
逆回転制御ステップS3では、逆回転制御部78が、スクリュ28のサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値CVrbに基づいてスクリュ28を逆回転させる。
【0087】
図5の点tは、逆回転制御ステップS3の開始時点を示す。すなわち、点tは、スクリュ28の逆回転の開始時点を示す。図5のスクリュ28の回転速度に係るタイムチャートにおいて、「+」はスクリュ28の順回転方向を示す。図5のスクリュ28の回転速度に係るタイムチャートにおいて、「-」はスクリュ28の逆回転方向を示す。点t~点tの時間帯において、スクリュ28の回転方向は、順回転方向である。点t~点tの時間帯において、スクリュ28の回転速度は、徐々に減速する。なお、点t~点tの時間帯において、スクリュ28はオーバーランしてもよい。スクリュ28がオーバーランすると、過剰量の樹脂が計量領域に圧送される。点t以降において、スクリュ28は、逆回転条件値CVrbに基づいて逆回転方向に所定の加速度で加速する。これにより、スクリュ28の回転速度は、目標逆回転速度Vrbに到達する。また、点t以降において、スクリュ28は、サックバックと逆回転とを重複実行する。これにより、点t以降において、樹脂の圧力Pは点t~点tの時間帯よりも速やかに低下する。
【0088】
計測ステップS4では、計測部80が、逆回転が開始されてからのスクリュ28の逆回転状態を示す逆回転状態値SVrbを計測する。
【0089】
計測ステップS4の開始時点は、点tである。つまり、計測ステップS4は、逆回転制御ステップS3と同時に開始される。閾値Thは、逆回転の継続時間を示す。したがって、計測部80は逆回転の継続時間を逆回転状態値SVrbとして計測する。
【0090】
サックバック終了ステップS5では、逆回転状態値SVrbが閾値Thに到達した場合に、サックバック終了制御部82がスクリュ28のサックバックを終了させる。
【0091】
図5の点tは、逆回転状態値SVrbが閾値Thに到達する時点を示す。スクリュ28は、点tにおいてサックバックを終了する。ただし、スクリュ28は、逆回転条件値CVrbが充足されるまでは点t以降も逆回転を継続する。したがって、点t以降は、スクリュ28の逆回転に応じて、樹脂の圧力Pが低下する。これにより、樹脂の圧力Pは目標圧力Pに到達する。また、スクリュ28がサックバックなしで逆回転することで、計量領域の樹脂が逆流する。これにより、点t以降は、計量工程中のオーバーランに応じて過剰になった計量領域の樹脂量が適正量に近づけられる。
【0092】
以上が、制御装置20による射出成形機10の制御方法の流れの一例である。なお、図5の例は、サックバックの開始後に逆回転が開始される例を示すが、サックバックと逆回転とを同時に開始させてもよい。その場合は、スクリュ28の回転速度が逆回転に転じる時点(図5でいう点t)まで、スクリュ28にサックバックの開始を待たせる。これにより、計量工程の終了(図5でいう点t)後にスクリュ28の後退速度が一旦ゼロになる。その結果、スクリュ28はサックバックと逆回転とを同時に開始することができる。
【0093】
続いて、閾値設定部86が閾値Thを設定する場合における制御方法の流れが説明される。
【0094】
図6は、実施の形態の制御方法の流れを例示する第2のフローチャートである。図7は、図6の制御方法が実行される場合のスクリュ28の後退速度と、スクリュ28の回転速度と、樹脂の圧力Pの時間推移とを例示する第2のタイムチャートである。
【0095】
図6の制御方法は、計量ステップS1と、サックバック制御ステップS2と、逆回転制御ステップS3と、計測ステップS4と、圧力取得ステップS6と、サックバック終了ステップS7と、閾値設定ステップS8とを含む。計量ステップS1と、サックバック制御ステップS2と、逆回転制御ステップS3と、計測ステップS4との説明は、図4に示した同名同符号のステップの説明と重複するため、以下において適宜省略される。
【0096】
圧力取得ステップS6では、圧力取得部84が、シリンダ26内の樹脂の圧力Pを取得する。樹脂の圧力Pの取得は、サックバック制御ステップS2と共に開始され、後で説明するサックバック終了ステップS7まで継続して行われる。
【0097】
圧力取得ステップS6の開始時点は、図7の例では点tである。点tは減圧工程(サックバック制御ステップS2)の開始時点である。点tは計量工程の終了時点でもある。点t以降では、サックバックの開始により、樹脂の圧力Pが所定の計量圧力Pから低下し始める。圧力取得部84は、低下する樹脂の圧力Pを取得し続ける。
【0098】
また、点t以降では、図5の例と同様にして、逆回転制御ステップS3と、計測ステップS4とが実行される。図7に、図5と同様の点tを示す。点tは逆回転制御ステップS3と計測ステップS4との開始時点を示す。
【0099】
サックバック終了ステップS7では、樹脂の圧力Pが所定のサックバック終了圧力Pに到達した場合に、サックバック終了制御部82がサックバックを終了させる。つまり、サックバック終了制御部82は、樹脂の圧力Pと所定のサックバック終了圧力Pとの比較に基づいてサックバックの終了タイミングを判定する。
【0100】
図7の点tは、樹脂の圧力Pが所定のサックバック終了圧力Pに到達する時点を示す。サックバックは点tで終了する。スクリュ28の逆回転は、点t以降であっても、逆回転条件値CVrbを充足するまでは継続される。したがって、点t以降は、スクリュ28の逆回転に応じて、樹脂の圧力Pが目標圧力Pに到達する。
【0101】
閾値設定ステップS8では、閾値設定部86が、サックバック中の樹脂の圧力Pが所定のサックバック終了圧力Pに到達した時点(点t)の逆回転状態値SVrbに基づいて閾値Thを設定する。閾値設定部86は、例えば計測ステップS4にて計測された逆回転の継続時間を、閾値Thとして制御装置20に設定する。これにより、逆回転の継続時間に関する閾値Thが設定される。制御装置20は、次回以降の成形サイクルにおいて、閾値設定ステップS8にて設定された閾値Thに基づいて図4の制御方法を実行する。その場合、図7に示した点tは、図5における点tを示す(図7の点t図5の点tである)。
【0102】
閾値設定部86が閾値Thを設定する場合における射出成形機10の制御方法の説明は以上である。図4に例示した制御方法は、制御装置20に閾値Thが設定済である場合に実行される。制御装置20は、図4の制御方法を実行することで、サックバックの終了タイミングのばらつきを好適に低減する。一方、制御装置20は、閾値Thが未設定である場合、図6の制御方法を実行する。具体的に、制御装置20は、例えば射出成形機10の試運転の段階において図6の制御方法を実行する。ただし、制御装置20は、閾値Thが設定されている場合であっても、例えばオペレータが閾値Thの再設定を所望する場合には図6の制御方法を実行してもよい。制御装置20は、例えば操作部68を介して、図4の制御方法と図6の制御方法とのいずれを実行するかの指示を受け付けてもよい。また、表示制御部88は、図4図6との各々に例示された各ステップに並行して、表示部66に情報を適宜表示してもよい(表示ステップ)。
【0103】
以上の通り、本実施の形態の制御装置20と、制御方法とによれば、射出成形機10の制御に関してサックバックの終了タイミングのばらつきが低減される。これにより、成形サイクル毎の動作のばらつきが低減され、成形品を製造するサイクルタイムが安定する。また、本実施の形態のスクリュ28は、サックバックと逆回転とを重複実行する。これにより、樹脂の圧力Pが速やかに低下する。その結果、減圧工程に要する時間が短縮され、生産効率が向上する。さらに、本実施の形態のスクリュ28は、サックバックの終了後にも逆回転を継続する。これにより、計量領域内に過剰に溜められた樹脂量が適正量に近づく。その結果、成形品の質量(形状)がばらつくおそれが低減される。
【0104】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明された。上記実施の形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、その様な変更または改良を加えた形態が本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
以下には、実施形態に係る変形例が記載される。ただし、実施形態と重複する説明は、可能な限り省略される。実施形態で説明済の構成要素の参照符号は、特に断らない限り、実施形態から流用される。
【0106】
(変形例1)
閾値設定部86は、射出成形機10が成形サイクルを所定回数実行する間に計測される所定回数分の逆回転状態値SVrbの最小値、最大値、平均値、中央値または最頻値を閾値Thとして設定してもよい。例えば、成形サイクルが複数回実行されることで、複数の逆回転状態値SVrbが取得される。閾値設定部86は、その複数の逆回転状態値SVrbの平均値を閾値Thとして設定してもよい。また、複数の逆回転状態値SVrbに、複数の逆回転状態値SVrbの平均値から大きく外れた値(外れ値)が含まれる場合がある。外れ値は、例えば平均値を基準とする所定の範囲から逸脱しているか否かに基づいて判定される。この場合、閾値設定部86は、複数の逆回転状態値SVrbの中央値、または最頻値を閾値Thとして設定してもよい。中央値と最頻値とは、平均値よりも外れ値の影響を受け難い。また、制御装置20は、表示部66に逆回転状態値SVrbの散布状態を表示させてもよい。これにより、オペレータは、逆回転状態値SVrbの散布状態を目視確認できる。また、オペレータは、逆回転状態値SVrbの散布状態を考慮して、閾値Thの種類を選択することができる。
【0107】
本変形例によれば、閾値Thは、例えば、ある成形サイクルにおいて計測された逆回転状態値SVrbに含まれるノイズ成分の影響を受け難くなる。したがって、本変形例によれば、より信頼性の良好な閾値Thを設定することが可能である。
【0108】
(変形例2)
閾値Thの設定方法は、実施の形態または変形例1で説明された方法に限定されない。
【0109】
図8は、変形例2の制御装置20の概略構成図である。
【0110】
本変形例の制御装置20は、実施の形態の制御装置20(図3参照)と次の点で相違する(図8も参照)。本変形例の記憶部70は、テーブル90を記憶する。また、本変形例の演算部72は、取得部92を備える。本変形例の演算部72は、圧力取得部84を備えない。
【0111】
図9は、変形例2の記憶部70に記憶されるテーブル90の構成例である。
【0112】
テーブル90は、スクリュ28の種類と樹脂の種類との少なくとも一方と、係数Aとの対応関係を示す。例えば、図9のテーブル90は、スクリュ28の種類「シングルフライトスクリュ」と、樹脂の種類「PA(ポリアミド樹脂)」との組み合わせに対応する係数A「0.71」を示す。また、図9のテーブル90は、スクリュ28の種類「高可塑化スクリュ」に対応する係数A「0.51」を示す。
【0113】
なお、図9には例示していないが、テーブル90は、樹脂の種類に対応せず「シングルフライトスクリュ」または「ダブルフライトスクリュ」に対応する係数Aを含んでもよい。また、テーブル90は、スクリュ28の種類に対応せず樹脂の種類に対応する係数Aを含んでもよい。さらに、テーブル90は、図9に例示されていないスクリュ28の種類、または樹脂の種類を含んでもよい。
【0114】
取得部92は、射出成形に用いるスクリュ28の種類と、樹脂の種類とを取得する。取得部92は、例えば操作部68を介してオペレータが入力したスクリュ28の種類と、樹脂の種類とを取得する。
【0115】
本変形例の閾値設定部86は、取得部92が取得したスクリュ28の種類と、樹脂の種類とに基づいてテーブル90を参照することで、係数Aを取得する。また、本変形例の閾値設定部86は、係数Aと、所定の逆回転条件値CVrbとの積を、閾値Thとして設定する。例えば、取得されたスクリュ28の種類が「ダブルフライトスクリュ」であった。また、取得された樹脂の種類が「PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)」であった。この場合の係数Aは「0.62」である(図9参照)。したがって、閾値設定部86は、逆回転条件値CVrb(例えば、継続時間Trb)と「0.62」との積を閾値Thとする。算出される閾値Thの値は、係数Aが大きいほど大きい。したがって、係数Aが大きいほどサックバックの実行時間は長くなり、係数Aが小さいほどサックバックの実行時間は短くなる。
【0116】
係数Aの範囲は、0<A≦1、より好ましくは0<A<1である。0<A<1の範囲内の係数Aに基づいて閾値Thが算出される場合、サックバック終了制御部82は、逆回転の終了よりも先にサックバックを終了させることができる。つまり、サックバック終了制御部82は、サックバックと逆回転との重複実行後に逆回転を行うことで、計量領域の樹脂量を調整する時間帯を確保することができる。
【0117】
スクリュ28の種類ごとに係数Aを決めることが好ましい理由は、樹脂の逆流を引き起こす能力がスクリュ28の種類に応じて異なるからである。例えばシングルフライトスクリュが樹脂の逆流を引き起こす能力は、ダブルフライトスクリュまたは高可塑化スクリュと比較すると、相対的に低めである。この場合、シングルフライトスクリュに対応付く係数Aは、ダブルフライトスクリュまたは高可塑化スクリュに対応付く係数Aよりも大きいと好ましい。これにより、スクリュ28の種類がシングルフライトスクリュである場合において、サックバックの実行時間が長くなる。つまり、樹脂の圧力Pをできるだけ速やかに低下させることができる。
【0118】
樹脂の種類ごとに係数Aを決めることが好ましい理由は、逆回転した場合の逆流の引き起こし易さが樹脂の種類に応じて異なるからである。例えば粘度が高い樹脂は、逆流しにくい。つまり、粘性が高い樹脂の圧力Pは、スクリュ28の逆回転に応じて低下し難い。したがって、粘度が高い樹脂には、その分大きな係数Aを対応付けることが好ましい。これにより、サックバックの実行時間が長くなる。その結果、粘度が高い樹脂が射出成形に用いられている場合であっても、樹脂の圧力Pを速やかに低下させることができる。
【0119】
本変形例によれば、オペレータは、自身が使用する射出成形機10のスクリュ28の種類と樹脂の種類とを操作部68を介して指定すれば、閾値設定部86は閾値Thを設定することができる。ただし、本変形例では、逆回転条件値CVrbに乗算することで閾値Thを導く係数Aを、スクリュ28の種類と樹脂の種類とに応じて予め求めておかなければならない。これに関しては、例えば射出成形機10のメーカが実験に基づいて構成したテーブル90をオペレータに提供することが好ましい。これにより、テーブル90の構築に関してオペレータの負担が軽減される。
【0120】
なお、記憶部70は、複数のテーブル90を記憶してもよい。例えば記憶部70は、目標逆回転速度Vrbに関する係数Aを示すテーブル90と、継続時間Trbに関する係数Aを示すテーブル90と、目標逆回転量Rrbに関する係数Aを示すテーブル90とを記憶してもよい。また、スクリュ28の種類と、樹脂の種類とのうち一方のみに基づいて係数Aを特定可能である場合、取得部92は、残りの他方を取得しなくてもよい。
【0121】
(変形例3)
図10は、変形例3の制御装置20の概略構成図である。
【0122】
制御装置20は、変更受付部94と、補正部96とをさらに備えてもよい(図10参照)。変更受付部94は、閾値設定部86が設定した閾値Thを変更するためのオペレータの指示(変更指示)を受け付ける。変更指示は、例えば操作部68を介して変更受付部94に入力される。
【0123】
閾値設定部86は、閾値Thを自動的に設定する(実施の形態参照)。しかしながら、オペレータにしてみると、閾値設定部86が設定した閾値Thを、自身が吟味した値に調節したい場合が有り得る。変更受付部94によれば、そのようなオペレータの便宜を図ることが可能である。
【0124】
補正部96は、閾値Thが予め決められた範囲を逸脱している場合に、該範囲内に収まるように閾値Thを補正する。閾値Thの範囲は、例えば射出成形機10のメーカが行った実験に基づいて、予め求められる。閾値Thの範囲は、記憶部70に記憶される。補正部96は、例えばメーカが想定していない閾値Thが設定されることを防止する。補正部96は、オペレータが変更した閾値Thのみならず、閾値設定部86が自動的に設定した閾値Thを補正してもよい。
【0125】
(変形例4)
サックバック終了制御部82は、スクリュ28のサックバックの終了前にスクリュ28の逆回転が終了した場合、スクリュ28のサックバックを強制終了させてもよい。例えばスクリュ28の逆回転が終了した後もサックバックが継続するほど大きな閾値Thが設定された場合、サックバック終了制御部82は、スクリュ28の逆回転が終了したタイミングでサックバックを強制終了させてもよい。これにより、サックバック終了制御部82は、射出成形機10のメーカが意図しないサックバック動作を最低限に抑えることができる。
【0126】
(変形例5)
図11は、変形例5の制御装置20の概略構成図である。
【0127】
制御装置20は、報知部98をさらに備えてもよい(図11参照)。報知部98は、スクリュ28のサックバックの終了前に逆回転が終了した場合に、スクリュ28のサックバックの終了前に逆回転が終了したことを報知する。これにより、オペレータは、サックバックが正常に終了しなかったことを認識できる。
【0128】
報知部98は、例えばサックバックの終了前に逆回転が終了した旨を示すメッセージを表示部66に表示させることで、オペレータへの報知を行う。ただし、本変形例はこれに限定されない。例えば報知部98は、射出成形機10に設けられる報知灯(ランプ)を点灯させてもよい。また、報知部98は、射出成形機10に設けられるスピーカから音を発してもよい。
【0129】
(変形例6)
制御装置20が適用される射出成形機10は、インライン方式の射出成形機に限定されない。射出成形機10は、例えばプリプラ方式の射出成形機でもよい。
【0130】
(変形例7)
前述の各変形例は、矛盾の生じない範囲内で適宜組み合わされてもよい。
【0131】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0132】
<第1の発明>
シリンダ(26)と、前記シリンダ内で回転および進退するスクリュ(28)とを備える射出成形機(10)の前記スクリュを順回転させながら所定の計量位置まで後退させることで前記シリンダ内の樹脂を計量する制御装置(20)であって、前記スクリュが前記所定の計量位置に到達した後、所定のサックバック速度(Vsb)で前記スクリュをサックバックさせるサックバック制御部(76)と、前記スクリュのサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値(CVrb)に基づいて前記スクリュを逆回転させる逆回転制御部(78)と、前記逆回転が開始されてからの前記スクリュの逆回転状態を示す逆回転状態値(SVrb)を計測する計測部(80)と、前記逆回転状態値が閾値(Th)に到達したときに、前記サックバック制御部による前記スクリュのサックバックを終了させるサックバック終了制御部(82)と、を備える。
【0133】
これにより、サックバックの終了タイミングのばらつきを低減させる制御装置が提供される。
【0134】
第1の発明は、前記閾値を設定する閾値設定部(86)と、前記スクリュの種類および前記樹脂の種類の少なくとも一方に対応する係数(A)を記憶したテーブル(90)と、射出成形に用いる前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類を取得する取得部(92)と、をさらに備え、前記閾値設定部は、前記取得部により取得された前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類に対応する前記係数と、前記所定の逆回転条件値とを乗算した値を前記閾値として設定してもよい。これにより、例えば、閾値を容易に設定することができる。
【0135】
第1の発明は、前記閾値を設定する閾値設定部(86)と、前記シリンダ内の前記樹脂の圧力(P)を取得する圧力取得部(84)と、をさらに備え、前記サックバック終了制御部は、前記閾値設定部が前記閾値を設定する場合には、前記樹脂の圧力(P)が所定のサックバック終了圧力(P)に到達するまでは、前記サックバック制御部(76)による前記スクリュのサックバックを終了させず、前記閾値設定部は、サックバック中の前記樹脂の圧力(P)が前記所定のサックバック終了圧力(P)に到達したときの前記逆回転状態値に基づいて前記閾値を設定してもよい。これにより、例えば、閾値を好適に設定することができる。
【0136】
前記閾値設定部は、前記射出成形機が成形サイクルを所定回数実行する間に計測される前記所定回数分の前記逆回転状態値の最小値、最大値、平均値、中央値または最頻値を前記閾値として算出してもよい。これにより、閾値をより好適に設定することができる。
【0137】
第1の発明は、前記閾値設定部が設定した前記閾値についてのオペレータによる変更指示を受け付ける変更受付部(94)をさらに備えてもよい。これにより、閾値設定部が設定した閾値を、自身が吟味した値に変更したいといったオペレータの便宜を図ることが可能である。
【0138】
第1の発明は、前記閾値が予め決められた範囲を逸脱している場合に、前記範囲内に収まるように前記閾値を補正する補正部(96)をさらに備えてもよい。これにより、閾値として異常な値が設定された場合であっても、その異常な値に基づいて射出成形が実行される事態を防止することができる。
【0139】
第1の発明は、前記閾値を表示部(66)に表示させる表示制御部(88)をさらに備えてもよい。これにより、オペレータに対して閾値が設定されたこと、およびその閾値の具体値を報知することができる。
【0140】
前記サックバック終了制御部は、前記スクリュのサックバックの終了前に前記逆回転が終了した場合には、前記スクリュのサックバックを強制終了させてもよい。これにより、射出成形機がオペレータの意図しないサックバック動作をすることがあっても、その動作を最低限に抑えることができる。
【0141】
第1の発明は、前記スクリュのサックバックの終了前に前記逆回転が終了した場合に、前記スクリュのサックバックの終了前に前記逆回転が終了したことを報知する報知部(98)をさらに備えてもよい。これにより、サックバックが正常に終了しなかったことをオペレータに認識させることができる。
【0142】
前記所定の逆回転条件値は、前記逆回転の継続時間(Trb)、目標逆回転速度(Vrb)、および前記逆回転を終了させる目標逆回転量(Rrb)のうちの少なくとも2つを含んでもよい。
【0143】
前記逆回転状態値は、逆回転する前記スクリュの回転速度、前記スクリュが逆回転を開始してからの回転量または経過時間であってもよい。
【0144】
<第2の発明>
シリンダ(26)と、前記シリンダ内で回転および進退するスクリュ(28)とを備える射出成形機(10)の前記スクリュを順回転させながら所定の計量位置まで後退させることで前記シリンダ内の樹脂を計量する制御方法であって、前記スクリュが前記所定の計量位置に到達した後、所定のサックバック速度(Vsb)で前記スクリュをサックバックさせるサックバック制御ステップ(S2)と、前記スクリュのサックバックの開始以降において、所定の逆回転条件値(CVrb)に基づいて前記スクリュを逆回転させる逆回転制御ステップ(S3)と、前記逆回転が開始されてからの前記スクリュの逆回転状態を示す逆回転状態値(SVrb)を計測する計測ステップ(S4)と、前記逆回転状態値が閾値(Th)に到達したときに、前記サックバック制御ステップによる前記スクリュのサックバックを終了させるサックバック終了ステップ(S5)と、を含む。
【0145】
これにより、サックバックの終了タイミングのばらつきを低減させる制御方法が提供される。
【0146】
第2の発明は、前記閾値を設定する閾値設定ステップ(S8)と、射出成形に用いる前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類を取得する取得ステップと、をさらに含み、前記閾値設定ステップでは、前記スクリュの種類および前記樹脂の種類の少なくとも一方に対応する係数(A)を記憶したテーブル(90)に基づいて、前記取得ステップにより取得された前記スクリュおよび前記樹脂の少なくとも一方の種類に対応する前記係数と、前記所定の逆回転条件値とを乗算した値を前記閾値として設定してもよい。これにより、例えば、閾値を容易に設定することができる。
【0147】
前記閾値を設定する閾値設定ステップ(S8)と、前記シリンダ内の前記樹脂の圧力(P)を取得する圧力取得ステップ(S6)と、をさらに含み、前記サックバック終了ステップでは、前記閾値設定ステップ(S8)を行う場合には、前記樹脂の圧力(P)が所定のサックバック終了圧力(P)に到達するまでは、前記サックバック制御ステップによる前記スクリュのサックバックを終了させず、前記閾値設定ステップでは、サックバック中の前記樹脂の圧力(P)が前記所定のサックバック終了圧力(P)に到達したときの前記逆回転状態値に基づいて前記閾値を設定してもよい。これにより、例えば、閾値を好適に設定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11