(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】形状評価方法及び形状評価装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20241210BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G06F3/041 422
G06F3/041 490
G06F3/044 122
(21)【出願番号】P 2022577853
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002722
(87)【国際公開番号】W WO2022162757
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】門脇 淳
【審査官】三吉 翔子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103761(JP,A)
【文献】特開2018-087984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状に設けられる1又は複数のワイヤメッシュを有するワイヤメッシュセンサの形状評価方法であって、
1又は複数のコンピュータが、
前記ワイヤメッシュセンサが有するパターン形状を示す画像データを取得する取得ステップと、
前記画像データにより特定される前記パターン形状の中心線を定め、前記中心線を基準とする前記パターン形状の線対称度が所定の範囲内にあるか否かを評価する評価ステップと、
を実行する形状評価方法。
【請求項2】
前記線対称度は、前記中心線により画定される一対のパターンのうち、一方のパターンを他方のパターンに折り返した場合における、前記画像データ中の画素値の一致率である、
請求項1に記載の形状評価方法。
【請求項3】
前記所定の範囲は、0.8以上かつ1.0未満である、
請求項2に記載の形状評価方法。
【請求項4】
前記1又は複数のコンピュータが、前記評価ステップの実行前に、前記画像データに対して前処理を施す前処理ステップをさらに実行し、
前記前処理は、一方向に延びる帯状電極を形成するパターン要素の集合体を有効要素と定義するとき、前記有効要素とは孤立した線素又は点素であるダミー要素を前記パターン形状から除去する除去処理を含む、
請求項1に記載の形状評価方法。
【請求項5】
前記1又は複数のコンピュータが、前記評価ステップを通じて得られた評価結果を出力する出力ステップをさらに実行する、
請求項1に記載の形状評価方法。
【請求項6】
前記ワイヤメッシュセンサは、アクティブペンによる指示位置の検出に用いられる、
請求項1に記載の形状評価方法。
【請求項7】
面状に設けられる1又は複数のワイヤメッシュを有するワイヤメッシュセンサの形状を評価する形状評価装置であって、
プロセッサを有し、前記プロセッサが、
前記ワイヤメッシュセンサが有するパターン形状を示す画像データを取得する取得ステップと、
前記画像データにより特定される前記パターン形状の中心線を定め、前記中心線を基準とする前記パターン形状の線対称度が所定の範囲内にあるか否かを評価する評価ステップと、
を実行する形状評価装置。
【請求項8】
前記ワイヤメッシュセンサは、アクティブペンによる指示位置の検出に用いられる、
請求項7に記載の形状評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤメッシュセンサ及び形状評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、静電容量方式タッチセンサの技術分野において、面状のワイヤメッシュを有するワイヤメッシュセンサが普及しつつある。この種のセンサを表示装置と組み合わせて用いる場合、ワイヤメッシュのパターン形状に起因するモアレを抑制して表示画面の視認性を高める工夫として、パターン形状に不規則性を付与することが想定される。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、第1導電層及び第2導電層を重ねて配置することで、平面視にて正方格子又は菱形格子が形成されるワイヤメッシュセンサが開示されている。また、特許文献1の
図4や
図8によれば、複数の線素の組み合わせによって、一方向(X方向又はY方向)に延びる帯状電極が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-026055号公報
【文献】特開2017-227983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2で開示されるセンサにおいて、帯状電極のパターン形状はその中心線に対して線対称ではなく、幅方向における配線密度が局所的に均一ではない。ところが、人間の指によるタッチを検出する場合、タッチ部位のサイズが帯状電極の幅と比べて十分に大きいので、配線密度の局所的な不均一性が緩和される。その結果、上記したパターン形状であっても、指示位置の検出精度にほとんど影響を与えない。
【0006】
一方、人間の指に代わって、先鋭な先端部を有する位置指示器(例えば、電子ペンや導体棒)を用いることで、より正確に位置を指示しやすくなる。ところが、先端部のサイズが帯状電極の幅よりも小さい場合、配線密度の不均一性の影響を無視することができず、指示位置の僅かな違いによって検出される信号分布の形状が変化する場合がある。その結果、信号分布が有するピーク位置の検出結果がばらつき、指示位置の検出精度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン形状の視認性を保ちつつも、先鋭な先端部を有する位置指示器による指示位置の検出精度の低下を抑制可能なワイヤメッシュセンサ及び形状評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明におけるワイヤメッシュセンサは、面状に設けられる1又は複数のワイヤメッシュを有し、各々の前記ワイヤメッシュは、複数の線素又は点素の組み合わせによって一方向に延びる帯状電極を形成する有効要素と、前記有効要素とは孤立した複数の線素又は点素であるダミー要素と、を備え、少なくとも前記有効要素は、平面視にて、前記帯状電極の延びる方向に沿った第1中心線に対して非対称なパターン形状を有し、前記第1中心線を基準とする前記パターン形状の線対称度が0.8以上である。
【0009】
第2の本発明における形状評価方法は、面状に設けられる1又は複数のワイヤメッシュを有するワイヤメッシュセンサに適用され、1又は複数のコンピュータが、前記ワイヤメッシュセンサが有するパターン形状を示す画像データを取得する取得ステップと、前記画像データにより特定される前記パターン形状の中心線を定め、前記中心線を基準とする前記パターン形状の線対称度が所定の範囲内にあるか否かを評価する評価ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0010】
第1の本発明によれば、パターン形状の視認性を保ちつつも、先鋭な先端部を有する位置指示器による指示位置の検出精度の低下を抑制することができる。第2の本発明によれば、パターン形状の視認性を保ちつつも、先鋭な先端部を有する位置指示器による指示位置の検出精度の低下を抑制可能なワイヤメッシュセンサを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における形状評価方法を行う評価システムの全体構成図である。
【
図2】
図1に示す評価用コンピュータの動作に関するフローチャートである。
【
図3】
図2のステップSP12にて前処理が施された2値画像を可視的に示す図である。
【
図4】折り返し線の位置と線対称度との関係の一例を示す図である。
【
図6】形状評価方法の第2例におけるパターン形状を示す図である。
【
図8】形状評価方法の第3例におけるパターン形状を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態におけるワイヤメッシュセンサが組み込まれる電子機器の要部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対して可能な限り同一の符号を付するとともに、重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
[評価システム10の説明]
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態における形状評価方法を行う評価システム10の全体構成図である。評価システム10は、評価対象物が有するパターン形状を評価可能に構成される。ここで、評価対象物は、例えば、ユーザによる指示位置を検出するワイヤメッシュセンサ100である。
【0014】
ワイヤメッシュセンサ100は、金属細線(ワイヤ)からなるメッシュパターンが基材の主面上に設けられる面状センサである。基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの絶縁性材料が用いられる。金属として、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの導電性が高い材料が用いられる。本図例では、二次元状のタッチ面(X-Y平面)のうち、X方向の位置を検出する導電シート12と、Y方向の位置を検出するための導電シート14と、が描画されている。
【0015】
評価システム10は、具体的には、評価用コンピュータ20と、設計用コンピュータ24と、パターン形成装置26と、カメラ28と、を含んで構成される。
【0016】
評価用コンピュータ20は、導電シート12,14のワイヤメッシュが有するパターン形状を定量的に評価し、得られた評価結果を出力する装置である。この評価用コンピュータ20は、プロセッサ21、メモリ22、及びディスプレイ23を含んで構成される。
【0017】
設計用コンピュータ24は、ワイヤメッシュのパターン形状を示す画像データImgを生成する装置である。生成後の画像データImgは、パターン形成装置26又は評価用コンピュータ20に供給される。
【0018】
パターン形成装置26は、基材が有する一方又は両方の主面上にメッシュパターンを形成することで、導電シート12,14を作製する装置である。メッシュパターンの形成方法として、例えば、インクジェット方式、ナノインプリントリソグラフィ方式、銀塩方式などが挙げられる。
【0019】
カメラ28は、導電シート12,14の主面上を撮像することで、ワイヤメッシュのパターン形状を示す画像データImgを取得する。取得後の画像データImgは、評価用コンピュータ20に供給される。
【0020】
ところで、ユーザが、アクティブペン104(
図10)を用いて位置を指示する際、ペン先位置の僅かな違いによって検出される信号分布の形状が変化する場合がある。その結果、信号分布が有するピーク位置の検出結果がばらつき、指示位置の検出精度が低下するという問題が生じる。そこで、パターン形状40(
図3)の視認性を保ちつつも、先鋭な先端部を有する位置指示器による指示位置の検出精度の低下を抑制可能なワイヤメッシュセンサ100を設計又は識別することが求められる。
【0021】
<評価用コンピュータ20の動作>
この実施形態における評価システム10は、以上のように構成される。続いて、
図1に示す評価用コンピュータ20の動作について、
図2のフローチャート、
図3及び
図4を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図2のステップSP10において、評価用コンピュータ20は、導電シート12,14のパターン形状を示す画像データImgを取得する。このパターン形状は、導電シート12,14の作製に用いられる設計パターンであってもよいし、現物の導電シート12,14を撮像して得られる実測パターンであってもよい。
【0023】
ステップSP12において、評価用コンピュータ20は、ステップSP10で取得された画像データImgに対して必要に応じた前処理を施す。この前処理の一例として、[1]トリム処理、[2]2値化処理、[3]ダミー要素DMの除去処理、などが挙げられる。
【0024】
トリム処理は、画像データImgが示す画像領域の中から、必要な部分領域を切り出す画像処理である。例えば、規則性を有するパターン形状の場合、繰り返し単位を示す基本パターンが抽出される。また、規則性を有さないパターン形状の場合、1本の帯状電極を含む標本パターンが抽出される。
【0025】
2値化処理は、画像データImgの階調数を3以上から2に削減する画像処理である。これにより、例えば、金属細線がある位置が「画素値=0」で、金属細線がない位置が「画素値=1」でそれぞれ表現される。2値化のための閾値は、様々な値に設定され得る。
【0026】
除去処理は、画像データImgが示すパターン形状を「有効要素EF」と「ダミー要素DM」とに画素単位で分類し、ダミー要素DMのみを除去する画像処理である。ここで、有効要素EFとは、複数の線素又は点素の組み合わせによって一方向に延びる帯状電極を形成するパターン要素の集合体である。一方、ダミー要素DMとは、有効要素EFとは孤立した複数の線素又は点素である。つまり、有効要素EFは、導体の接近に伴う静電容量の変化に寄与するパターン要素ともいえる。反対に、ダミー要素DMは。導体の接近に伴う静電容量の変化に寄与しないパターン要素ともいえる。
【0027】
図3は、
図2のステップSP12にて前処理が施された2値画像を可視的に示す図である。本図は、導電シート12(
図1)の一部を構成する帯状電極のパターン形状40を示している。このパターン形状40は、第1方向(+θ方向)に延びる第1線分41と、第2方向(-θ方向)に延びる第2線分42と、の組み合わせによって構成される。本図から理解されるように、パターン形状40は、複数の菱形が隙間なく規則的に配置されることで、部分的には線対称を有するが、全体として線対称を有さない。
【0028】
図2のステップSP14において、評価用コンピュータ20は、ステップSP12での前処理により得られた2値画像に対して評価処理を行う。この評価処理では、パターン形状40のX方向における線対称性の高さを示す指標(以下、「線対称度」という)が算出される。この線対称度は、X方向と直交するY方向に延びる第1中心線44(
図3)を基準として、左側パターン46Lを右側パターン46Rに折り返した場合(その反対に、右側パターン46Rを左側パターン46Lに折り返した場合)の画素値の一致率である。
【0029】
上記した一致率は、(画素値が一致する画素数)/(画像を構成する全画素数)で計算される。この定義によれば、線対称度は、[0,1]の範囲内のいずれかの値をとる。完全な線対称である場合には線対称度は1となる一方、線対称性が低くなるにつれて線対称度の値が小さくなる。ここでは、計算誤差などを考慮して、線対称度が0.98以上である場合に「対称である」と定義するとともに、線対称度が0.98未満である場合に「対称でない(非対称である)」と定義する。
【0030】
図4は、折り返し線の位置と線対称度との関係の一例を示す図である。グラフの横軸は折り返し線のX位置(単位:mm)を示すとともに、グラフの縦軸はパターン形状40の線対称度(単位:無次元)を示している。このグラフから理解されるように、折り返し線のX位置が第1中心線44(X=Xc)と一致する場合、線対称度が最大値をとる。一方、折り返し線が第1中心線44から遠ざかるにつれて線対称度が徐々に減少していく。この特徴を利用することで、パターン形状40に適した第1中心線44の位置を特定することができる。つまり、折り返し線の位置を徐々に変更させながら
図4に示すグラフを作成することで、パターン形状40の線対称度が求められる。
【0031】
そして、評価用コンピュータ20は、算出された線対称度が許容範囲内にあるか否かを判定する。この許容範囲は、具体的には、0.8以上1.0未満に設定される。なお、範囲の下限値は、0.8に限られず、0.8より大きい値(例えば、0.85など)、あるいは0.8より小さい値(例えば、0.75)に設定されてもよい。また、範囲の上限値は、1.0に限られず、1.0より小さい値(例えば、0.95、0.90など)に設定されてもよい。
【0032】
図2のステップSP16において、評価用コンピュータ20は、ステップSP14で得られた評価結果を出力する。例えば、評価用コンピュータ20は、ディスプレイ23の表示領域内に、パターン形状40、線対称度、判定の合否などを表示させる。
【0033】
ステップSP18において、作業者は、ステップSP16の出力内容に基づいて、パターン形状40の線対称度が許容範囲内にあるか否か、具体的には、0.8以上かつ1.0未満であるか否かを確認する。線対称度が許容範囲内にある場合(ステップSP18:YES)、
図2のフローチャートの実行を終了する。一方、線対称度が許容範囲外にある場合(ステップSP18:NO)、次のステップSP20に進む。
【0034】
ステップSP20において、作業者は、ステップSP18にて許容範囲外であると判定された評価対象物に対して必要な対処を行う。この対処には、[1]パターン形状40の設計変更、[2]不良品である導電シート12,14の除外、などが挙げられる。
【0035】
以下、ステップSP10に戻って、ステップSP10~SP20を順次繰り返す。このようにして、評価用コンピュータ20は、ワイヤメッシュセンサ100の形状評価(つまり、視認性及び検出性の評価)を行う。
【0036】
<形状評価方法による効果>
以上のように、この形状評価方法は、面状に設けられる1又は複数のワイヤメッシュを有するワイヤメッシュセンサ100に適用される。この方法によれば、1又は複数のコンピュータ(例えば、評価用コンピュータ20)が、ワイヤメッシュセンサ100が有するパターン形状40を示す画像データImgを取得する取得ステップ(
図2のSP10)と、画像データImgにより特定されるパターン形状40の第1中心線44を定め、第1中心線44を基準とするパターン形状40の線対称度が所定の範囲内にあるか否かを評価する評価ステップ(
図2のSP14)と、を実行する。
【0037】
このように構成したので、先鋭な先端部を有する位置指示器を用いる場合であっても、指示位置の検出精度の低下を抑制可能なワイヤメッシュセンサ100を識別することができる。
【0038】
各々のワイヤメッシュは、複数の線素又は点素の組み合わせによって一方向に延びる帯状電極を形成する有効要素EFと、有効要素EFとは孤立した複数の線素又は点素であるダミー要素DMと、を備える。少なくとも有効要素EFは、平面視にて、帯状電極の延びる方向に沿った第1中心線44に対して非対称なパターン形状を有する。第1中心線44を基準とするパターン形状40の線対称度が0.8以上である。
【0039】
このように構成したので、パターン形状40の視認性を保ちつつも、先鋭な先端部を有するアクティブペン104(
図10)による指示位置(ここでは、X位置)の検出精度の低下を抑制することができる。
【0040】
また、有効要素EFを含む一方、ダミー要素DMを含まないパターン形状40が評価対象として設定されてもよい。これにより、検出精度に比重をおいた定量評価を行うことができる。
【0041】
[形状評価方法の別例]
続いて、ワイヤメッシュセンサ100の形状評価方法の別例(第1~第3例)について、
図5~
図9を参照しながら説明する。
【0042】
<第1例>
図5は、形状評価方法の第1例を示す図である。本図は、
図3と同一のパターン形状40を示している。ここで、評価用コンピュータ20は、X方向の線対称性のみならず、Y方向の線対称性をも併せて評価する。この場合、第1線対称度は、Y方向に延びる第1中心線44を基準として、左側パターン46Lを右側パターン46Rに折り返した場合の画素値の一致率である。一方、第2線対称度は、X方向に延びる第2中心線48を基準として、上側パターン50Tを下側パターン50Bに折り返した場合(その反対に、下側パターン50Bを上側パターン50Tに折り返した場合)の画素値の一致率である。
【0043】
このように、評価用コンピュータ20が、
図2のステップSP14において、第1中心線44と直交する第2中心線48を定め、第2中心線48を基準とするパターン形状40の線対称度が所定の範囲内にあるか否かをさらに評価してもよい。
【0044】
そして、少なくとも有効要素EFが、平面視にて、第2中心線48に対して非対称なパターン形状40を有する場合、第2中心線48を基準とするパターン形状40の線対称度が0.8以上であってもよい。このように構成したので、パターン形状40の視認性を保ちつつも、アクティブペン104(
図10)による指示位置(ここでは、X位置)の検出精度の低下を抑制することができる。
【0045】
<第2例>
図6は、形状評価方法の第2例におけるパターン形状60Aを示す図である。評価対象の一例として、特開2018-026055号公報中の
図8に記載されたパターン形状60Aを示している。このパターン形状60Aは、第1方向(+θ方向)に延びる複数本の第1線分61と、第2方向(-θ方向)に延びる複数本の第2線分62と、の組み合わせによって構成される。本図から理解されるように、パターン形状60Aは、有効要素EF及びダミー要素DMが混在してなる。ここで、有効要素EF及びダミー要素DMの両方を含むパターン形状60Aが評価対象として設定されてもよい。これにより、指示位置の検出精度のみならず、パターン形状60Aの視認性を併せて考慮した定量評価を行うことができる。
【0046】
図7は、形状評価方法の第2例を示す図である。本図は、
図6のパターン形状60Aからダミー要素DMの一部を除去した後のパターン形状60Bを示している。具体的には、パターン形状60Bは、有効要素EFがなす砂時計状の領域内にあるダミー要素DMのみが残されている。ここで、有効要素EF及びダミー要素DMの両方を含むパターン形状60Bが評価対象として設定されてもよい。これにより、有効要素EFがなす領域内にて視認性を併せて考慮した定量評価を行うことができる。
【0047】
<第3例>
図8は、形状評価方法の第3例におけるパターン形状80Aを示す図である。評価対象の一例として、特開2017-227983号公報中の
図16に記載されたパターン形状80Aを示している。このパターン形状80Aは、第1方向(+θ1方向)に延びる複数本の第1線分81と、第2方向(-θ2方向)に延びる複数本の第2線分82と、の組み合わせによって構成される。ここで、θ1≠θ2であり、かつθ1+θ2=90度の関係を満たす場合、第1線分81及び第2線分82によって正方格子が形成される。
【0048】
また、2本の境界線83,84の外側には、正方格子の各辺を2等分する隙間85が複数箇所に設けられる。これらの隙間85により、有効要素EFの外側には、十字形状を有する複数のダミー要素DMが形成される。
【0049】
図9は、形状評価方法の第3例を示す図である。本図は、
図8のパターン形状80Aからダミー要素DMを除去した後のパターン形状80Bを示している。ここで、X方向及びY方向とは異なる第1中心線86を設定した上で、パターン形状80Bの線対称度が算出されてもよい。本図の例では、第1中心線86とY軸のなす角は、(θ1-45)度=(45-θ2)度である。この線対称度は、第1中心線86を基準として、左側パターン88Lを右側パターン88Rに折り返した場合(その反対に、右側パターン88Rを左側パターン88Lに折り返した場合)の画素値の一致率である。
【0050】
このように、少なくとも有効要素EFが、平面視にて非対称なパターン形状80Bを有する場合、X方向及びY方向の両方に対して傾斜する第1中心線86を基準とするパターン形状80Bの線対称度が0.8以上であってもよい。このように構成したので、パターン形状80Bの視認性を保ちつつも、アクティブペン104(
図10)による指示位置(ここでは、X位置)の検出精度の低下を抑制することができる。
【0051】
[ワイヤメッシュセンサ100の実装例]
続いて、上記した導電シート12,14(
図1)を含むワイヤメッシュセンサ100の実装例について、
図10を参照しながら説明する。
【0052】
図10は、本発明の一実施形態におけるワイヤメッシュセンサ100が組み込まれる電子機器102の要部を示す構成図である。電子機器102は、例えばタブレット型のコンピュータであり、アクティブ静電結合(AES)方式のスタイラス(以下、アクティブペン104という)とともに用いられる。この電子機器102は、具体的には、上記したワイヤメッシュセンサ100の他、ホストコントローラ106と、表示パネル108と、センサコントローラ110と、を含んで構成される。
【0053】
ワイヤメッシュセンサ100は、表示パネル108に重畳配置されて使用される装置であり、センサコントローラ110に接続される。ワイヤメッシュセンサ100は、例えば、
図1に示す評価システム10による評価処理を通じて検査された2枚の導電シート12,14を積層して構成される。
【0054】
一方の導電シート12は、複数の帯状電極121を含む面状のワイヤメッシュを有する。複数の帯状電極121は、それぞれY方向に延びるように、かつX方向に沿って略等間隔に配置される。各々の帯状電極121は、互いに異なる配線123及び接続端子125を介して、センサコントローラ110に接続される。
【0055】
他方の導電シート14は、複数の帯状電極122を含む面状のワイヤメッシュを有する。複数の帯状電極121は、それぞれX方向に延びるように、かつY方向に沿って略等間隔に配置される。各々の帯状電極122は、互いに異なる配線124及び接続端子125を介して、センサコントローラ110に接続される。
【0056】
ホストコントローラ106は、プロセッサ及びメモリ(不図示)を有するコンピュータであり、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、電子機器102の各部の制御、描画用を含む各種のアプリの実行などの各種処理を行う。メモリには、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメインメモリと、フラッシュメモリなどの補助記憶装置とが含まれる。
【0057】
表示パネル108は、図示しない駆動回路を通じて駆動することで、アクティブエリア内に画像又は映像を表示する。表示パネル108の具体的な例としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなどが挙げられる。
【0058】
センサコントローラ110は、少なくとも表示パネル108のアクティブエリア内において、アクティブペン104又はユーザの指(不図示)の位置を検出する集積回路(IC)である。センサコントローラ110は、機能的には、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、タッチ面上におけるアクティブペン104及びユーザの指による指示位置を検出するとともに、アクティブペン104が送信したデータ信号を受信可能に構成される。
【0059】
アクティブ静電結合方式は、アクティブペン104が送信したペン信号をワイヤメッシュセンサ100により受信し、その結果に基づいてアクティブペン104の指示位置を検出する方式である。ペン信号には、無変調のバースト信号である位置信号と、アクティブペン104に関連する各種データを示すデータ信号とが含まれる。各種データには、アクティブペン104のペン先にかかる圧力を示す筆圧データなどが含まれる。なお、アクティブペン104は、センサコントローラ110が複数の帯状電極121,122を介して送信したアップリンク信号を受信したことに応じてペン信号の送信を行ってもよい。この場合、アクティブペン104は、データ信号により送信するデータの具体的な内容を、アップリンク信号に含まれるコマンドに応じて決定することが好ましい。
【0060】
指示位置の検出を行う場合、センサコントローラ110は、複数の帯状電極121,122のそれぞれで位置信号を受信し、その結果に基づいてアクティブペン104の指示位置を検出する。また、センサコントローラ110は、複数の帯状電極121,122のうち検出した指示位置に最も近い電極を用いて、アクティブペン104が送出したデータ信号の検出を行う。
【0061】
[変形例]
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0062】
上記した実施形態では、菱形メッシュ(
図3及び
図5)、多角形メッシュ(
図6及び
図7)や正方形メッシュ(
図8及び
図9)を有するパターン形状について説明したが、メッシュ形状はこれらに限られない。メッシュ形状は、例えば、長方形、平行四辺形などの四角形であってもよいし、三角形、六角形などの多角形であってもよい。また、パターン形状は、規則的なパターンであってもよいし、ランダムなパターンであってもよい。
【0063】
上記した実施形態では、2枚の導電シート12,14を積層したワイヤメッシュセンサ100について説明したが、ワイヤメッシュセンサの構造はこれに限られない。例えば、1枚の基材のうち、一方の主面上に第1ワイヤメッシュを、他方の主面上に第2ワイヤメッシュをそれぞれ設けた構成であってもよい。
【0064】
[符号の説明]
10…評価システム、20…評価用コンピュータ、40,60A,60B,80A,80B…パターン形状、44,64,86…第1中心線、48…第2中心線、100…ワイヤメッシュセンサ、DM…ダミー要素、EF…有効要素