(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 11/00 20200101AFI20241210BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20241210BHJP
【FI】
B62J11/00
B62J45/00
(21)【出願番号】P 2023013384
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 勝己
(72)【発明者】
【氏名】横村 光
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-213716(JP,A)
【文献】特開平10-218057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 11/00
B62J 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(18、218)と前記ヘッドパイプ(18、218)から後方に延びるモノバックボーンフレーム(31、231)とを備える車体フレーム(11、211)と、前記車体フレーム(11、211)の前端部に取り付けられる機器(150)と、を備える鞍乗り型車両において、
前記機器(150)を支持する支持ボックス(160、360)と、前記支持ボックス(160、360)を前記車体フレーム(11、211)に接続する接続ステー(170、370)と、前記機器(150)に接続される管状部材(152、153、154)と、を備え、
前記ヘッドパイプ(18、218)の後方において、前記車体フレーム(11、211)の前端部には、前記支持ボックス(160、360)が支持される車体左右方向外側に突き出る突起部(100、200)と、前記接続ステー(170、370)が締結される締結部(188、189)と、が設けられ、
前記支持ボックス(160、360)には、前記突起部(100、200)に車体左右方向外側から差し込まれる差込部(165)と、前記接続ステー(170、370)に車体上下方向上側から差し込まれる差込凸部(166、167、367)と、が設けられ、
前記接続ステー(170、370)には、前記差込凸部(166、167、367)が差し込まれる差込凹部(171a、171b、371b)が設けられている
ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記管状部材(152、153、154)は、電気配線若しくは流体配管であり、
前記機器(150)は、電子機器である
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記機器(150)は、ABSモジュレータである
ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記差込部(165)に装着された第1ラバー(183)と、
前記差込凹部(171a、171b、371b)に装着された第2ラバー(184、185)と、を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記突起部(100、200)は、前記モノバックボーンフレーム(31、231)を車体左右方向に貫通する取付棒である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
燃料タンク側取付部(86、286)が設けられた燃料タンク(29、229)を備え、
前記突起部(100、200)には、前記支持ボックス(160、360)の前記差込部(165)よりも車体左右方向外側に、前記燃料タンク側取付部(86、286)が取り付けられる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記差込凸部(166、367)及び前記差込凹部(171a、371b)は、各々複数備え、
前記差込凸部(166、367)及び前記差込凹部(171a、371b)は、車体正面視でオフセットしている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フレームの前端部に機器を支持する鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ヘッドパイプの後方のガセットの側面にABSモジュレータを取り付ける構成が開示されている。特許文献1では、モジュレータケースを介してABSモジュレータをガセットに取り付けており、このモジュレータケースの前後が左右方向からガセットに締結された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、モジュレータケースのような支持部材は締結によって車体フレームに取り付けられる。このため、車体フレームに設けられた締結部に、モジュレータケースを位置決めした上で締結する必要があり、モジュレータケースを取り付ける作業は煩雑になり易いという課題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車体フレームの前端部に機器を精度よく容易に取り付け易くできる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両は、ヘッドパイプと前記ヘッドパイプから後方に延びるモノバックボーンフレームとを備える車体フレームと、前記車体フレームの前端部に取り付けられる機器と、を備える鞍乗り型車両において、前記機器を支持する支持ボックスと、前記支持ボックスを前記車体フレームに接続する接続ステーと、前記機器に接続される管状部材と、を備え、前記ヘッドパイプの後方において、前記車体フレームの前端部には、前記支持ボックスが支持される車体左右方向外側に突き出る突起部と、前記接続ステーが締結される締結部と、が設けられ、前記支持ボックスには、前記突起部に車体左右方向外側から差し込まれる差込部と、前記接続ステーに車体上下方向上側から差し込まれる差込凸部と、が設けられ、前記接続ステーには、前記差込凸部が差し込まれる差込凹部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
車体フレームの前端部に機器を精度よく容易に取り付け易くできる鞍乗り型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る車体フレームの斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る車体フレームと燃料タンクとを示す左前方からの斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る車体フレームと燃料タンクとを示す左側面図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る車体フレームと燃料タンクとを示す左後方からの斜視図である。
【
図6】車体フレームの前端部の周辺を示す正面図である。
【
図7】取付棒の軸線に沿った縦断面を示す要部斜視図である。
【
図8】第1の実施の形態に係る車体フレームの前端部の右側面図である。
【
図9】第1の実施の形態に係る機器支持構造の分解斜視図である。
【
図10】第1の実施の形態に係る機器支持構造の底面図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る車体フレームの斜視図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る車体フレームと燃料タンクとを示す左前方からの斜視図である。
【
図14】第2の実施の形態に係る車体フレームと燃料タンクとを示す左側面図である。
【
図15】第2の実施の形態に係る車体フレームと燃料タンクとを示す左後方からの斜視図である。
【
図17】第2の実施の形態に係る車体フレームの前端部の右側面図である。
【
図18】本発明の第3の実施の形態に係る機器支持構造の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
図2は、第1の実施の形態に係る車体フレーム11の斜視図である。
本実施の形態のフロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びるメインフレーム31と、メインフレーム31の後端部から下方に延びるピボットフレーム32と、ヘッドパイプ18においてメインフレーム31の前端の下方の位置から下方に延びるダウンフレーム33と、を備える。
【0016】
リアフレーム20は、メインフレーム31の後端部から後上がりに車体後端部まで延びる左右一対のシートフレーム41と、ピボットフレーム32の上下方向中間部からシートフレーム41の前後方向中間部まで延びる左右一対のリアサブフレーム42と、左右一対のシートフレーム41の前部を左右方向に接続するリア前部クロスメンバ43と、左右一対のシートフレーム41の後端部を左右方向に接続するリア後端部クロスメンバ45と、を備える。
【0017】
図1に示すように、車体フレーム11には、車体カバー50が支持される。車体カバー50は、ヘッドライトの周囲を覆うフロントカバー51と、フロントフォーク14の後方に設けられて燃料タンク29を覆うタンクカバー(外装パーツ)52と、タンクカバー52の下方に設けられて車体を左右方向外側から覆う左右一対のセンターカバー53と、センターカバー53の後方でシート17の下方を左右方向外側から覆う左右一対のリアカバー54とを備える。
【0018】
図3は、第1の実施の形態に係る車体フレーム11と燃料タンク29とを示す左前方からの斜視図である。
図4は、第1の実施の形態に係る車体フレーム11と燃料タンク29とを示す左側面図である。
図5は、第1の実施の形態に係る車体フレーム11と燃料タンク29とを示す左後方からの斜視図である。
メインフレーム31は、モノバックボーンフレームである。すなわち、メインフレーム31は、ヘッドパイプ18から後方に一本形状で延びるフレームである。本実施の形態のメインフレーム31やダウンフレーム33は、断面略角型状のプレスフレームである。具体的には、メインフレーム31とダウンフレーム33とは、プレス加工された金属板が左右に接合されて断面略角型状のプレスフレームとされている。メインフレーム31の上部には、燃料タンク29が配置される。燃料タンク29は、タンクカバー52で外部から覆われており、いわゆる、内装タンクである。すなわち、燃料タンク29の形状に関わらず、タンクカバー52で鞍乗り型車両10の意匠性を確保可能である。
【0019】
燃料タンク29は、燃料が貯蔵される燃料タンク本体80を備える。燃料タンク本体80は、上方に凹んだお椀状の上タンク体60と、下方に凹んだお椀状の下タンク体70と、を備える。上タンク体60および下タンク体70は、それぞれ、フランジ状の開口端61、71を備えており、上タンク体60の開口端61と下タンク体70の開口端71とが、例えば、シーム溶接により接合されて、中空状の燃料タンク本体80が構成される。燃料タンク本体80は、開口端61、71で構成されたシーム部(接合部)81を備える。本実施の形態では、車体フレーム11に固定された燃料タンク29のシーム部81は前端よりも後端が低い。シーム部81は車体側面視では、直線状に後ろ下がりに延びている。シーム部81は、メインフレーム31よりも車体側面視では上方に配置される。
【0020】
上タンク体60は、車体側面視において、後上がりに延びる前部62と、前部62の後端から後ろ下がりに延びる後部63とを有する。上タンク体60の前部62には、筒状の給油口82が設けられている。給油口82は、フューエルリッド83で開閉可能に閉塞されている。
【0021】
下タンク体70は、車体側面視において、後下がりに延びる前部72と、前部72の後端から後方に略水平に後方に延びる後部73と、を有する。下タンク体70の後部73には、燃料ポンプ84が配置されている。燃料ポンプ84は、メインフレーム31の後部の上方に位置する。燃料ポンプ84は、パワーユニット12に燃料を供給する。
【0022】
図6は、車体フレーム11の前端部の周辺を示す正面図である。
図7は、取付棒100の軸線に沿った縦断面を示す要部斜視図である。
燃料タンク29の底面、すなわち、下タンク体70には、上方に凹んだタンク凹部74が形成されている。タンク凹部74は正面視では略U字状に凹んでおり、前後方向に延びる。タンク凹部74には、メインフレーム31の上部が進入している。メインフレーム31はタンク凹部74に沿って延びている。
【0023】
燃料タンク29は、車体フレーム11に取り付けられる前側取付部(燃料タンク側取付部)86を有する。前側取付部86は、下タンク体70の前部に設けられる。前側取付部86は、タンク凹部74に対応して設けられる第1ステー91および第2ステー92を有する。第1ステー91および第2ステー92は、それぞれ、タンク凹部74の左右に一対設けられる。
【0024】
第1ステー91は、折り曲げ板状に形成される。第1ステー91は、燃料タンク29の下タンク体70に固定される第1基部91aと、第1基部91aの左右方向外端から下方に延びる第1先端部91bとを有する。
【0025】
第1ステー91の左右方向外側には、第2ステー92が配置される。第2ステー92は、折り曲げ板状である。第2ステー92は、燃料タンク29の下タンク体70に固定され左右方向中心に延びる第2基部92aと、第2基部92aの左右方向内端から下方に延びる第2先端部92bとを有する。第2先端部92bは、第1ステー91の第1先端部91bの左右方向外側面に接合される。
【0026】
第1先端部91bおよび第2先端部92bは、燃料タンク本体80よりも前下方に延びている。第1先端部91bおよび第2先端部92bには、左右方向に延びる筒部93が設けられる。筒部93の孔には、グロメット(弾性部材)94が装着される。グロメット94には、左右方向内側からフランジパイプ95が装着される。フランジパイプ95には、ナット96を介して、締結部材の一例としてのボルト97が挿通される。ボルト97は、車体フレーム11の前端部に固定された取付棒(フレーム側取付部、突起部)100に締結される。これにより、燃料タンク29の前端部が車体フレーム11の前端部に固定される。
【0027】
本実施の形態の取付棒100は、車体フレーム11の前端部であるヘッドパイプ18の後部近傍のメインフレーム31に設けられている。すなわち、メインフレーム31には、左右方向に延びる円柱状の取付棒100が貫通した状態で固定される。取付棒100はメインフレーム31の平坦な側面部分から左右方向外側に突き出るように設けられている。取付棒100の長手方向両端には、ボルト97が締結可能な雌ねじが形成される。
【0028】
取付棒100はヘッドパイプ18の上部後端よりも後方に配置される。取付棒100は、下タンク体70の前下方に配置される。よって、車体側面視において、取付棒100は燃料タンク本体80に重複しない。よって、ヘッドパイプ18と燃料タンク29との間にタンクカバー52を取り付ける十分なスペースを確保できる。また、車体側面視で燃料タンク本体80に重ならないので、車体フレーム11への燃料タンク29の取り付けがし易くなる。
【0029】
燃料タンク29は、後側取付部87を有する。後側取付部87は、燃料タンク本体80から後方に延出する。後側取付部87は、車体側面視では、シーム部81に沿って後ろ下がりに延びる。後側取付部87は、シートフレーム41の前部に設けられたリア前部クロスメンバ43に固定される。
したがって、本実施の形態の燃料タンク29は、車体側面視では、前側取付部86および後側取付部87により、燃料タンク本体80から前後に離間した位置で車体フレーム11に固定される。
【0030】
ここで、燃料タンク29は、上タンク体60と下タンク体70とが接合されて構成された上下二分割構造の燃料タンクである。一般に、上下二分割構造の燃料タンクでは、金属板がプレス加工されてお椀状の上タンク体や下タンク体が形成され、それらが接合されることにより、上下二分割構造の燃料タンクが製造される。このため、下タンク体には、お椀状の深さを確保しながら、タンク凹部を形成することになるため、そのタンク凹部は浅くなり易い。すなわち、メインフレーム31の上端から下方に離間した位置にある取付棒100には、従来の上下二分割構造の燃料タンクは取付け難かった。これに対して、本実施の形態では、燃料タンク29は第1ステー91や第2ステー92を有する前側取付部86を備えるため、取付棒100にしっかりと取り付け可能となっている。
【0031】
換言すれば、メインフレーム31の上端から下方に離間した位置に取付棒100が形成されている場合には、一般には、タンク凹部を深く形成し易い燃料タンク、すなわち、左上タンク体、右上タンク体、下タンク体による三分割構造の燃料タンクが使用される。よって、本実施の形態の燃料タンク29の構成にすることにより、三分割構造の燃料タンクが使用される車体フレームと、車体フレームを共通化し易くできる。よって、本実施の形態の燃料タンク29にすることにより、三分割構造の燃料タンクの車体フレームを流用可能であり、コスト削減が期待できる。
【0032】
図8は、第1の実施の形態に係る車体フレーム11の前端部の右側面図である。
車体フレーム11の前端部には、機器支持構造140が設けられる。機器支持構造140は、本実施の形態では、機器の一例としてのABS(Antilock Braking System)モジュレータ150を支持する構造である。機器支持構造140は、ABSモジュレータ150と、ABSモジュレータ150を支持する支持ボックス160と、支持ボックス160を車体フレーム11に接続する接続ステー170と、を有する。
【0033】
図9は、第1の実施の形態に係る機器支持構造140の分解斜視図である。
ABSモジュレータ150は、外観ブロック状のモジュレータ本体151を備える。モジュレータ本体151には、ポンプ作動用の電動モータや油圧バルブを開閉する電磁ソレノイドが内蔵されている。モジュレータ本体151には、油圧のための入力配管152と出力配管153とが接続される。入力配管152は、ハンドル21に設けられたブレーキレバーのマスターシリンダに接続される。出力配管153は、前輪13のブレーキキャリパに接続される。モジュレータ本体151には、電気ハーネス154が接続されており、ブレーキレバーの操作に応じてECU(Electronic Control Unit)により適宜に制御される。
よって、ABSモジュレータ150は、電子機器の一例でもある。ABSモジュレータ150には、管状部材としての入力配管(流体配管)152、出力配管(流体配管)153、電気ハーネス(電気配線)154が支持ボックス160の外部から接続される。
【0034】
ABSモジュレータ150は、支持ボックス160に支持される。支持ボックス160は、ABSモジュレータ150を収容する略箱状の部材である。本実施の形態では、支持ボックス160は、ABSモジュレータ150が載置される矩形板状の載置部161を有する。載置部161の左右方向内端には、上方に延びる内壁162が形成される。載置部161および内壁162の前端には、上方に延びる前壁163が形成される。載置部161および内壁162の後端には、上方に延びる後壁164が形成される。後壁164は、前壁163よりも上下方向の高さが低く形成される。後壁164を越えて電気ハーネス154がABSモジュレータ150に接続される。
【0035】
載置部161には、上下方向に貫通する固定孔161aが形成される。固定孔161aには、下方から上下ボルト181が挿通される。上下ボルト181は、モジュレータ本体151の底面に締結される。
また、前壁163には、前後方向に貫通する固定孔163aが形成される。固定孔163aには、前後ボルト182が挿通される。前後ボルト182は、モジュレータ本体151に前方から締結される。
上下ボルト181、前後ボルト182により、ABSモジュレータ150が支持ボックス160に固定される。
【0036】
内壁162の上端には、左右方向に延びる筒状の差込部165が形成されている。差込部165には、左右方向に延びる差込孔165aが形成されている。差込孔165aには、グロメット(第1ラバー)183が装着される。
【0037】
図10は、第1の実施の形態に係る機器支持構造140の底面図である。
支持ボックス160の載置部161の底面には、下方に突出する差込凸部166、167が形成される。差込凸部166、167は、柱状である。差込凸部166、167は、複数形成される。本実施の形態では、差込凸部166、167は、前後に2つ設けられる。差込凸部166、167は、前後方向に延びる直線L11上に一列に形成される。差込凸部166、167は、接続ステー170に上方から差し込まれる。
【0038】
接続ステー170は、折り曲げ板状である。接続ステー170は、正面視で、略L字状である。詳細には、接続ステー170は、正面視で、左右方向に延びる板状の支持部171と、支持部171の車幅方向内端から上方に延びる板状の接続部172と、を有する。
【0039】
接続ステー170の支持部171には、上下方向に凹んだ形状を有する差込穴(差込凹部)171a、171bが形成される。本実施の形態の差込穴171a、171bは支持部171を厚み方向に貫通する。差込穴171a、171bは、前後方向に一対設けられる。本実施の形態では、差込穴171a、171bが、左右方向にオフセットしておらず、前後方向に一列に形成される。差込穴171a、171bには、グロメット(第2ラバー)184、185が装着される。差込穴171a、171bには、グロメット184、185を介して差込凸部166、167が差し込まれて装着される。差込穴171a、171bの右部には、肉抜き孔171cが形成されている。
【0040】
接続ステー170の接続部172には、左右方向に貫通する固定孔172a、172bが形成される。固定孔172a、172bは、接続部172の前端に形成される。固定孔172a、172bは上下に一対形成される。固定孔172a、172bは支持ボックス160よりも前側に位置する(
図8参照)。固定孔172a、172bには、締結部材の一例としてボルト186、187が挿通される。ボルト186、187は、カシメナット(締結部)188、189に締結される。カシメナット188、189は、車体フレーム11の前端部の右側側面にカシメられる。本実施の形態では、カシメナット188、189により、車体フレーム11の前端部には、ボルト186、187が締結可能な締結部が構成される。接続ステー170において固定孔172a、172bの後方には、肉抜き孔172cが形成される。
【0041】
次に、ABSモジュレータ150の取付方法の一例を説明する。
ABSモジュレータ150は、ボルト181、182により支持ボックス160に固定される。ABSモジュレータ150が固定された支持ボックス160は、差込凸部166、167が接続ステー170に差し込まれる。差込凸部166、167は接続ステー170のグロメット184、185に差し込まれる。よって、グロメット184、185を介して支持ボックス160が接続ステー170に取り付けられる。そして、支持ボックス160の差込部165が左右方向に延びる取付棒100に、車幅方向外側から差し込まれる。これにより、支持ボックス160および接続ステー170は、取付棒100にグロメット183を介して吊り下げられた状態で車体フレーム11の前端部に保持される。このとき、支持ボックス160を取付棒100の周りに回動させることにより、接続ステー170の固定孔172a、172bをカシメナット188、189の位置に合わせ易くなっている。
【0042】
固定孔172a、172bがカシメナット188、189の位置に合った状態で、固定孔172a、172bにはボルト186、187が挿通される。固定孔172a、172bは支持ボックス160と車体側面視で重複しておらず、左右方向外側から締結し易くなっている。ボルト187、186は、車体フレーム11の前端部のカシメナット188、189に締結される。
これにより、ABSモジュレータ150が車体フレーム11の前端部に支持される。ABSモジュレータ150には、支持ボックス160の前壁163や後壁164を越えて、入力配管152、出力配管153、電気ハーネス154が接続されている。
【0043】
ABSモジュレータ150が取り付けられた後に、取付棒100には、燃料タンク29の前側取付部86が取り付けられる。すなわち、前側取付部86の筒部93にはボルト97が挿通され、ボルト97が取付棒100の両端の雌ねじ部に締結される。
【0044】
本実施の形態のように、モノバックボーンフレーム構造を有する車体フレーム11では、モノバックボーンフレームに対応するメインフレーム31の左右両側にはスペースが生じやすい。本実施の形態の支持ボックス160および接続ステー170により、メインフレーム31の側部にABSモジュレータ150などの機器を取り付けることができるので、メインフレーム31の車体左右方向外側のスペースを機器搭載スペースとして有効活用でき、レイアウトの設計自由度を高めることができる。また、ABSモジュレータ150は、支持ボックス160により、車体左右方向外側、車体上下方向上側からの差し込みにより取り付けることができるので、ABSモジュレータ150の搭載の位置決めを容易にすることができる。さらに、ABSモジュレータ150を、支持ボックス160とステー170という簡素な構成により車体フレーム11に取り付けることができるため、取付部品や取付工数の削減も期待できる。
【0045】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、ヘッドパイプ18とヘッドパイプ18から後方に延びるメインフレーム31とを備える車体フレーム11と、車体フレーム11の前端部に取り付けられるABSモジュレータ150と、を備える鞍乗り型車両10において、ABSモジュレータ150を支持する支持ボックス160と、支持ボックス160を車体フレーム11に接続する接続ステー170と、ABSモジュレータ150に接続される入力配管152、出力配管153、電気ハーネス154と、を備え、ヘッドパイプ18の後方において、車体フレーム11の前端部には、支持ボックス160が支持される車体左右方向外側に突き出る取付棒100と、接続ステー170が締結されるカシメナット188、189と、が設けられ、支持ボックス160には、取付棒100に車体左右方向外側から差し込まれる差込部165と、接続ステー170に車体上下方向上側から差し込まれる差込凸部166、167と、が設けられ、接続ステー170には、差込凸部166、167が差し込まれる差込穴171a、171bが設けられている。
この構成によれば、車体フレーム11の取付棒100を利用して支持ボックス160を位置決めできると共に、差込という簡易な作業により取付棒100や接続ステー170に支持ボックス160を取り付け易い。よって、支持ボックス160と接続ステー170とにより、車体フレーム11の前端部にABSモジュレータ150を精度よく容易に取り付け易くできる。
【0046】
本実施の形態では、管状部材は、電気ハーネス154や入力配管152、出力配管153を含んでおり、ABSモジュレータ150は、電子機器である。
この構成によれば、車体フレーム11の前端部に電子機器を容易に取り付け易くできるので、メインフレーム31の車体左右方向外側のスペースを、電子機器の搭載スペースとして有効活用でき、レイアウトの設計自由度を高めることができる。また、この構成によれば、電子機器のメンテナンスが容易にできる。
【0047】
また、本実施の形態では、機器支持構造140は、ABSモジュレータ150を支持する。
この構成によれば、車体フレーム11の前端部にABSモジュレータ150を容易に取り付け易くできるので、メインフレーム31の車体左右方向外側のスペースを、ABSモジュレータ150の搭載スペースとして有効活用でき、レイアウトの設計自由度を高めることができる。また、この構成によれば、ABSモジュレータ150のメンテナンスが容易にできる。
【0048】
また、本実施の形態では、差込部165に装着されたグロメット183と、差込穴171a、171bに装着されたグロメット184、185と、を備える。
この構成によれば、差込部165がグロメット183を介して取付棒100に接続されるので、走行時の上下方向の振動からABSモジュレータ150を保護し易くできると共に、差込凸部166、167がグロメット184、185を介して接続ステー170に接続されるので、走行時の左右方向の振動からABSモジュレータ150を保護し易くできる。よって、ABSモジュレータ150の耐久性の向上が期待できる。
【0049】
また、本実施の形態では、突起部の一例としての取付棒100は、メインフレーム31を車体左右方向に貫通する。
この構成によれば、メインフレーム31を貫通する取付棒100にABSモジュレータ150を取り付けることができるので、より強固な取り付けが可能になる。
【0050】
また、本実施の形態では、前側取付部86が設けられた燃料タンク29を備え、取付棒100には、支持ボックス160の差込部165よりも車体左右方向外側に、前側取付部86が取り付けられる。
この構成によれば、燃料タンク29の取付箇所とABSモジュレータ150の取付箇所との共通化することができるので、メインフレーム31の車体左右方向外側のスペースを有効活用し易く、レイアウトの設計自由度をさらに高めることができる。また、前側取付部86を利用して支持ボックス160を取付棒100に抜け止めできる。
【0051】
[第2の実施の形態]
本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0052】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る鞍乗り型車両210の側面図である。
図12は、第2の実施の形態に係る車体フレーム211の斜視図である。
第2の実施の形態における鞍乗り型車両210は、第1の実施の形態における鞍乗り型車両10とは車種が異なる。これに応じて、本実施の形態では、第1の実施の形態における車体フレーム11や燃料タンク29とは異なる形状の車体フレーム211や燃料タンク229を備える。
【0053】
ここで、第2の実施の形態における鞍乗り型車両210の構成に関して、第1の実施の形態における鞍乗り型車両10に対応する構成については、第1の実施の形態の符号の三桁目に「2」をつけることで、その説明を適宜に省略する。
【0054】
本実施の形態のフロントフレーム219は、ヘッドパイプ218から後下方に延びるメインフレーム231と、メインフレーム231の後端部から下方に延びる左右一対のピボットフレーム232と、ヘッドパイプ218においてメインフレーム231の前端の下方の位置から下方に延びるダウンフレーム233と、ダウンフレーム233の下端から後方に延びてピボットフレーム232の下端部に接続される左右一対のロアフレーム234と、ヘッドパイプ218とメインフレーム231とダウンフレーム233との接続部を補強するガセット235と、左右一対のピボットフレーム232の下端の間を左右方向に接続するクロスメンバ236と、を備える。
【0055】
リアフレーム220は、メインフレーム231の後端部から後上がりに車体後端部まで延びる左右一対のシートフレーム241と、左右のピボットフレーム232の上下方向中間部からシートフレーム241の前後方向中間部まで延びる左右一対のリアサブフレーム242と、左右一対のシートフレーム241の前部を左右方向に接続するリア前部クロスメンバ243と、リアサブフレーム42よりも後方で左右一対のシートフレーム241の中間部を左右方向に接続するリア中間部クロスメンバ244と、左右一対のシートフレーム41の後端部を左右方向に接続するリア後端部クロスメンバ245と、を備える。
【0056】
図11に示すように、車体フレーム211には、車体カバー250が支持される。車体カバー50は、フロントフォーク214の前部および左右を覆うフロントカバー251と、フロントカバー251の後方に設けられて燃料タンク229を覆うタンクカバー(外装パーツ)252と、タンクカバー252の下方に設けられて車体を左右方向外側から覆う左右一対のセンターカバー253と、センターカバー253の後方でシート217の下方を覆う左右一対のリアカバー254とを備える。
【0057】
図13は、第2の実施の形態に係る車体フレーム211と燃料タンク229とを示す左前方からの斜視図である。
図14は、第2の実施の形態に係る車体フレーム211と燃料タンク229とを示す左側面図である。
図15は、第2の実施の形態に係る車体フレーム211と燃料タンク229とを示す左後方からの斜視図である。
メインフレーム231は、モノバックボーンフレームである。すなわち、メインフレーム231は、ヘッドパイプ218から後方に一本形状で延びるフレームである。本実施の形態のメインフレーム231やダウンフレーム233は、円筒状のパイプフレームである。メインフレーム231とダウンフレーム233とは、ヘッドパイプ218との接続部において、ガセット235で補強されている。メインフレーム231には、燃料タンク229が支持される。燃料タンク229は、タンクカバー252で外部から覆われており、いわゆる、内装タンクである。すなわち、燃料タンク229の形状に関わらず、タンクカバー252で鞍乗り型車両210の意匠性を確保可能である。
【0058】
図16は、
図14のXVI-XVI線断面図である。
第2の実施の形態に係る燃料タンク229でも、第1の実施の形態に係る燃料タンク29の前側取付部86や後側取付部87に対応して、前側取付部286や後側取付部287を有する。すなわち、第2の実施の形態でも、燃料タンク229は、車体側面視では、前側取付部286および後側取付部287により、燃料タンク本体280から前後に離間した位置で車体フレーム211に固定される。
【0059】
詳述すれば、燃料タンク229の底面、すなわち、下タンク体270には、上方に凹んだタンク凹部274が形成されている。タンク凹部274は正面視では略U字状に凹んでおり、前後方向に延びる。タンク凹部274には、メインフレーム231の上部が進入している。メインフレーム231はタンク凹部274に沿って延びている。
【0060】
燃料タンク229は、車体フレーム211に取り付けられる前側取付部286を有する。前側取付部286は、下タンク体270の前部に設けられる。前側取付部286は、タンク凹部274に対応して設けられる第1ステー291および第2ステー292を有する。第1ステー291および第2ステー292は、それぞれ、タンク凹部274の左右に一対設けられる。
【0061】
第1ステー291は、折り曲げ板状に形成される。第1ステー291は、燃料タンク229の下タンク体270に固定される第1基部291aと、第1基部291aの車体左右方向外端から下方に延びる第1先端部291bとを有する。
【0062】
第1ステー291の左右方向外側には、第2ステー292が配置される。第2ステー292は、折り曲げ板状である。第2ステー292は、燃料タンク229の下タンク体270に固定され左右方向中心に延びる第2基部292aと、第2基部292aの左右方向内端から下方に延びる第2先端部292bとを有する。第2先端部292bは、第1ステー291の第1先端部291bの外側面に接合される。
【0063】
ここで、第2の実施の形態では、下タンク体270の前端部には、板金状のパッチ201、202が固定される。第1パッチ201は、タンク凹部274の左右両側に一対設けられる。第1パッチ201は、正面視でクランク形状に折り曲げられた曲げ板状である。第1パッチ201は、下タンク体270の底面に当接して固定される平坦面状の左右一対の当接部(固定部)201a、201bと、当接部201a、201bの間に設けられ且つ下タンク体70から離間する離間部201cと、を有する。
【0064】
第1パッチ201では、当接部201a、201bが、スポット溶接により下タンク体270に固定される。また、離間部201cには、第1ステー291の第1基部291aが溶接される。第1パッチ201の離間部201cには溶接ビードが生じている。
【0065】
また、第1パッチ201よりも左右方向外側には、曲げ板状の第2パッチ202が固定される。第2パッチ202は、下タンク体270の底面に当接して固定される平坦面状の当接部(固定部)202aと、当接部202aから左右方向内側に延びて下タンク体270から離間する離間部202cと、を有する。
【0066】
第2パッチ202では、当接部201aが、スポット溶接により下タンク体270に固定される。また、離間部202cには、第2ステー292の第2基部292aが溶接される。第2パッチ202の離間部202cには溶接ビードが生じている。
【0067】
よって、第2の実施の形態における前側取付部286では、それぞれのパッチ201、202に、それぞれのステー291、292が溶接される点で異なるが、パッチ201、202の離間部201c、202cにステー291、292を溶接する点は第1の実施の形態と同様である。これにより、薄くなり易い下タンク体270では、ステー291、292の溶接固定による熱応力の影響を抑制できる。また、下タンク体270に対するステー291、292からの直接的な応力集中を緩和し易くなっている。
【0068】
第1先端部291bおよび第2先端部292bは、燃料タンク本体280よりも前下方に延びている。第1先端部291bおよび第2先端部292bには、左右方向に延びる筒部293が形成される。筒部293の孔には、グロメット(弾性部材)294が装着される。グロメット294には、左右方向内側からフランジパイプ295が装着される。フランジパイプ295には、ナット296を介して、締結部材の一例としてのボルト297が挿通される。ボルト297は、車体フレーム211の前端部に固定された取付棒(フレーム側取付部、突起部)200に締結される。これにより、燃料タンク229の前端部が車体フレーム211の前端部に固定される。
【0069】
本実施の形態の取付棒200は、車体フレーム211の前端部であるガセット235に設けられている。ガセット235は、左右一対の板部材235a、235bを有する。ガセット235は、左右一対の板部材235a、235bが、ヘッドパイプ218の後端、メインフレーム231の前端部の下部、および、ダウンフレーム233の上端部の後部のパイプ形状を挟むようにして設けられると共に、板部材325a、235bの後端部が接合されることにより、板部材235a、235b間が中空状に構成される。ガセット235には、左右方向に延びる円柱状の取付棒200が貫通した状態で固定される。取付棒200はガセット235の平坦な側面部分に突き出るように設けられている。取付棒200の長手方向両端には、ボルト297が締結可能な雌ねじが形成される。
【0070】
取付棒200はヘッドパイプ18の上部後端よりも後方に配置される。取付棒200は、下タンク体270の前下方に配置される。よって、車体側面視において、取付棒200は燃料タンク本体280に重複せず、車体側面視で視認可能である。
ステー291、292と筒部293とパッチ201,202などにより、本実施の形態の前側取付部286が構成されている。
【0071】
燃料タンク229は、後側取付部287を有する。後側取付部287は、燃料タンク本体280から後方に延出する。後側取付部287は、車体側面視では、シーム部281に沿って後ろ下がりに延びる(
図14参照)。後側取付部287は、シートフレーム241の前部に設けられたリア前部クロスメンバ243に固定される。
【0072】
よって、本実施の形態でも、燃料タンク229は第1ステー291や第2ステー292を有する前側取付部286を備えるため、取付棒200にしっかりと取り付け可能となっている。また、本実施の形態の燃料タンク229にすることにより、三分割構造の燃料タンクの車体フレームを流用可能であり、コスト削減が期待できる。
【0073】
図17は、第2の実施の形態に係る車体フレーム211の前端部の右側面図である。
車体フレーム211の前端部には、ABSモジュレータ150を支持する機器支持構造140が設けられる。
本実施の形態では、ガセット235の右側面部にカシメナット188、189がカシメられることにより、車体フレーム211の前端部にボルト186、187の締結部が構成される。よって、機器支持構造140では、支持ボックス160の差込部165が取付棒200に差し込んで取付けられ、接続ステー170がボルト186、187によりカシメナット188、189に締結される。これにより、車体フレーム211の前端部にABSモジュレータ150が支持される。
【0074】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施の形態によれば、ヘッドパイプ218とヘッドパイプ218から後方に延びるメインフレーム231とを備える車体フレーム211と、車体フレーム211の前端部に取り付けられるABSモジュレータ150と、を備える鞍乗り型車両210において、ABSモジュレータ150を支持する支持ボックス160と、支持ボックス160を車体フレーム211に接続する接続ステー170と、ABSモジュレータ150に接続される入力配管152、出力配管153、電気ハーネス154と、を備え、ヘッドパイプ218の後方において、車体フレーム211の前端部には、支持ボックス160が支持される車体左右方向外側に突き出る取付棒200と、接続ステー170が締結されるカシメナット188、189と、が設けられ、支持ボックス160には、取付棒200に車体左右方向外側から差し込まれる差込部165と、接続ステー170に車体上下方向上側から差し込まれる差込凸部166、167と、が設けられ、接続ステー170には、差込凸部166、167が差し込まれる差込穴171a、171bが設けられている。
この構成によれば、車体フレーム211の取付棒200を利用して支持ボックス160を位置決めできると共に、差込という簡易な作業により取付棒200や接続ステー170に支持ボックス160を取り付け易い。よって、支持ボックス160と接続ステー170とにより、車体フレーム211の前端部にABSモジュレータ150を精度よく容易に取り付け易くできる。
【0075】
[第3の実施の形態]
本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第1および第2の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
【0076】
図18は、本発明の第3の実施の形態に係る機器支持構造340の底面図である。
第3の実施の形態に係る機器支持構造340は、第3の実施の形態に係る支持ボックス160および接続ステー170に代えて、支持ボックス360および接続ステー370を有する。支持ボックス360および接続ステー370では、前後に設けられた差込凸部166、367および差込穴171a、371bが、左右方向にオフセットしている点で、支持ボックス160および接続ステー170とは異なっている。
【0077】
すなわち、本実施の形態では、いわば、第1の実施の形態に係る後側の差込凸部167および差込穴171bが、左右方向内側にオフセットした形状である。
これにより、支持ボックス360および接続ステー370では、前後に設けられた差込凸部167、368および差込穴171a、371bのそれぞれの距離が広がると共に、左右方向にもオフセットされるので、左右方向の振動に対する安定性が向上する。
【0078】
以上説明したように、本発明を適用した第3の実施の形態によれば、差込凸部166、367及び差込穴171a、371bは、各々複数備え、差込凸部166、367及び差込穴171a、371bは、車体正面視でオフセットしている。
この構成によれば、差込凸部166、367及び差込穴171a、371bをそれぞれ複数設けたので、より車体左右方向の機器搭載の位置決めが容易になる。また、複数の差込凸部166、367及び差込穴171a、371bが車体正面視でオフセットすることにより、複数の差込凸部166、367及び差込穴171a、371bを離間させ易いため、車体左右方向の振動から影響を受け難くできる。よって、ABSモジュレータ150の耐久性の向上が期待できる。
【0079】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0080】
上記実施の形態では、機器支持構造140が支持する機器の一例として、電子機器であるABSモジュレータ150を例示し、ABSモジュレータ150が車体フレーム11の前端部に支持される構成を説明した。しかしながら、機器支持構造140が支持する電子機器は、ABSモジュレータ150に限定されない。例えば、機器支持構造140が支持する電子機器としては、油圧の管状部材を有しない電子機器でも良い。具体的には、スターターマグネット、ヒューズ、バンクアングルセンサー、ECUなどを、それらのために構成された支持ボックスと接続ステーとにより、取付棒100、200および車体フレーム11、211の前端部の締結部に支持する構成でもよい。このとき、グロメット183、184、185により、簡易な構成で振動を抑制しながら支持できて、電子機器に対する振動の影響を好適に抑制できる。
【0081】
上記実施の形態では、機器支持構造140が支持する機器としては、電子機器であるABSモジュレータ150を例示したが、機器支持構造140が支持する機器は電子機器に限定されない。例えば、機器支持構造140が支持する機器としては、燃料タンク29、229から延びるブリーザホースなどが接続されるキャニスターでもよい。この構成によれば、キャニスターを車体フレーム11、211の前端部に配置することができるため、燃料タンク29、229の近傍にキャニスターを配置することができ、キャニスターから延びるホースの長さを短くし易い。また、グロメット183~185により、振動の伝わりを抑制でき、キャニスター内の活性炭を保護できる。
【0082】
上記実施の形態では、鞍乗り型車両10として前輪13と後輪15とを有する自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両や4輪以上を備えた鞍乗り型車両に適用可能である。
【0083】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0084】
(構成1)ヘッドパイプと前記ヘッドパイプから後方に延びるモノバックボーンフレームとを備える車体フレームと、前記車体フレームの前端部に取り付けられる機器と、を備える鞍乗り型車両において、前記機器を支持する支持ボックスと、前記支持ボックスを前記車体フレームに接続する接続ステーと、前記機器に接続される管状部材と、を備え、前記ヘッドパイプの後方において、前記車体フレームの前端部には、前記支持ボックスが支持される車体左右方向外側に突き出る突起部と、前記接続ステーが締結される締結部と、が設けられ、前記支持ボックスには、前記突起部に車体左右方向外側から差し込まれる差込部と、前記接続ステーに車体上下方向上側から差し込まれる差込凸部と、が設けられ、前記接続ステーには、前記差込凸部が差し込まれる差込凹部が設けられていることを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、車体フレームの突起部を利用して支持ボックスを位置決めできると共に、差込という簡易な作業により突起部や接続ステーに支持ボックスを取り付け易い。よって、支持ボックスと接続ステーとにより、車体フレームの前端部に機器を精度よく容易に取り付け易くできる。
【0085】
(構成2)前記管状部材は、電気配線若しくは流体配管であり、前記機器は、電子機器であることを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、車体フレームの前端部に電子機器を容易に取り付け易くできるので、モノバックボーンフレームの車体左右方向外側のスペースを、電子機器の搭載スペースとして有効活用でき、レイアウトの設計自由度を高めることができる。
また、この構成によれば、電子機器のメンテナンスが容易にできる。
【0086】
(構成3)前記機器は、ABSモジュレータであることを特徴とする構成2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、車体フレームの前端部にABSモジュレータを容易に取り付け易くできるので、モノバックボーンフレームの車体左右方向外側のスペースを、ABSモジュレータの搭載スペースとして有効活用でき、レイアウトの設計自由度を高めることができる。
また、この構成によれば、ABSモジュレータのメンテナンスが容易にできる。
【0087】
(構成4)前記差込部に装着された第1ラバーと、前記差込凹部に装着された第2ラバーと、を備えることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、差込部が第1ラバーを介して突起部に接続されるので、走行時の上下方向の振動から機器を保護し易くできると共に、差込凸部が第2ラバーを介して接続ステーに接続されるので、走行時の左右方向の振動から機器を保護し易くできる。よって、機器の耐久性の向上が期待できる。
【0088】
(構成5)前記突起部は、前記モノバックボーンフレームを車体左右方向に貫通する取付棒であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、モノバックボーンフレームを貫通する取付棒としての突起部に機器を取り付けることができるので、より強固な取り付けが可能になる。
【0089】
(構成6)燃料タンク側取付部が設けられた燃料タンクを備え、前記突起部には、前記支持ボックスの前記差込部よりも車体左右方向外側に、前記燃料タンク側取付部が取り付けられることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、燃料タンクの取付箇所と機器の取付箇所との共通化することができるので、モノバックボーンフレームの車体左右方向外側のスペースを有効活用し易く、レイアウトの設計自由度をさらに高めることができる。
【0090】
(構成7)前記差込凸部及び前記差込凹部は、各々複数備え、前記差込凸部及び前記差込凹部は、車体正面視でオフセットしていることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、差込凸部及び差込凹部をそれぞれ複数設けたので、より車体左右方向の機器搭載の位置決めが容易になる。また、複数の差込凸部及び差込凹部が車体正面視でオフセットすることにより、複数の差込凸部及び差込凹部を離間させ易いため、車体左右方向の振動から影響を受け難くできる。よって、機器の耐久性の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0091】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム
18 ヘッドパイプ
29 燃料タンク
31 メインフレーム(モノバックボーンフレーム)
86 前側取付部(燃料タンク側取付部)
100 取付棒(突起部)
150 ABSモジュレータ(電子機器、機器)
160 支持ボックス
165 差込部
166 差込凸部
167 差込凸部
170 接続ステー
171a 差込穴(差込凹部)
171b 差込穴(差込凹部)
183 グロメット(第1ラバー)
184 グロメット(第2ラバー)
185 グロメット(第2ラバー)
188 カシメナット(締結部)
189 カシメナット(締結部)
152 入力配管(管状部材、流体配管)
153 出力配管(管状部材、流体配管)
154 電気ハーネス(管状部材、電気配線)
200 取付棒(突起部)
210 鞍乗り型車両
211 車体フレーム
218 ヘッドパイプ
229 燃料タンク
231 メインフレーム(モノバックボーンフレーム)
286 前側取付部(燃料タンク側取付部)
360 支持ボックス
367 差込凸部
370 接続ステー
371b 差込穴(差込凹部)