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  • 特許-走行用バッテリ車両床 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】走行用バッテリ車両床
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241210BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20241210BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/249
H01M50/244 Z
H01M10/44 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023022984
(22)【出願日】2023-02-17
(65)【公開番号】P2023124828
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】10 2022 104 569.2
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】イェンス クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ アウグストドルファー
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ブローダーセン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル モリツキー
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第03345779(EP,B1)
【文献】特開2005-231549(JP,A)
【文献】特開2020-068102(JP,A)
【文献】特開2016-062705(JP,A)
【文献】特開2018-006313(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113540635(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0184194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/249
H01M 50/244
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向平面(X、Y)内に配設された複数の自己支持型のバッテリモジュール(25、251、252)を有する走行用バッテリ車両床(20)であって、
前記バッテリモジュール(25、251、252)が、車両床の2つの側方長手方向支持体(21、22)に支持様態で直接締結され、
前方及び/又は最後方の前記バッテリモジュール(251、252)に隣接して、バッテリ制御電子システム(35)が内側に封入された自己支持型のバッテリ制御モジュールハウジング(33、33’)を有する電気バッテリ制御モジュール(32)が、前記バッテリモジュールの水平方向平面(X、Y)に配設されており、
前記バッテリ制御モジュールハウジング(33、33’)の2つの横断方向端部(37R、37L)が、各々、支持様態で前記対応する長手方向支持体(21、22)に構造的に接続されている、走行用バッテリ車両床(20)。
【請求項2】
前記バッテリ制御モジュールハウジング(33)の前記横断方向端部(37R、37L)の各々において、横断方向コンソール(341、342、341’、342’)が接続され、各々が前記それぞれの車両床の長手方向支持体(21、22)と前記バッテリ制御モジュールハウジング(33)との間の前記構造接続を形成する、請求項1に記載の走行用バッテリ車両床(20)。
【請求項3】
前記2つの横断方向コンソール(341、342、341’、342’)が、トラス構造を備える、請求項2に記載の走行用バッテリ車両床(20)。
【請求項4】
前記バッテリ制御モジュールハウジング(33’)及び前記2つの横断方向コンソール(341’、342’)が、実質的に互いに一体的に形成される、請求項2又は3に記載の走行用バッテリ車両床(20)。
【請求項5】
前記バッテリ制御モジュールハウジング(33)及び前記2つの横断方向コンソール(341、342)が、複数の部品で形成される、請求項2又は3に記載の走行用バッテリ車両床(20)。
【請求項6】
前方又は後方バッテリ制御モジュールハウジング垂直方向壁(39)及び隣接して対向する後方又は前方バッテリモジュール垂直方向壁(29)が、互いに相補的になるように形状付けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の走行用バッテリ車両床(20)。
【請求項7】
互いに対向する前記前方又は後方のバッテリ制御モジュールハウジング垂直方向壁(39)と前記後方又は前方のバッテリモジュール垂直方向壁(29)、少なくとも10mmの距離(A)において非衝突状態で互いに離間されている、請求項6に記載の走行用バッテリ車両床(20)。
【請求項8】
前記バッテリモジュール(25、251、252)が、形態的に細長く、長手方向延在部を車両横断方向(Y)に整列させ、車両長手方向(X)に延在する2つの列(23、24)に配設されており、2つの列の各々が、少なくとも3つのバッテリモジュール(25、251、252)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の走行用バッテリ車両床(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両床に一体化された走行用バッテリを有する車両床に関する。
【背景技術】
【0002】
低重心、相対的に良好な衝突安全性、及び保守、修理、及び交換に対する相対的に良好なアクセス性に起因して、バッテリ電気車両の走行用バッテリは、多くの場合、車両床においてプレート状の形態で収容される。走行用バッテリは、いくつかの同一のブロック状バッテリモジュールから構成されており、それらの各々は、20V~200Vのモジュール電圧を有することができる。全てのバッテリモジュールは、水平方向平面に配設し、一緒に集め、単一の全体ハウジング内に収容することができる。
【0003】
代替的に、バッテリモジュールは、好適なフレーム構造によって水平方向平面に一緒に集められて、シャーシに接続することができる。特許文献1から、長方形の閉じたフレームを有する衝突剛性のフレーム構造が既知であり、ここでは、複数のバッテリモジュール、更には電子バッテリコントローラが、耐衝突性様態でフレーム化され、かつ構造的に集められている。
【0004】
床側走行用バッテリに対する他の構造概念は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6から既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第3345779号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015216225号明細書
【文献】欧州特許第3267508号明細書
【文献】米国特許第10811645号明細書
【文献】中国特許出願公開第20674989号明細書
【文献】中国特許出願公開第103538457号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によって対処される課題は、良好な衝突特性を有するシンプルに構築された走行用バッテリ車両床を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する走行用バッテリ車両床による本発明に従って解決される。
【0008】
本発明による走行用バッテリ車両床は、単一の水平方向平面に配設された複数の自己支持バッテリモジュールを備える。バッテリモジュールは、各々、実質的に流体密封となるように構成することができる、衝突安定性のバッテリモジュールハウジングを備える。モジュールハウジングは、冷却液体によって灌流可能に構成することができ、したがって、アクティブ冷却回路の一部とすることができる。代替的又は追加的に、バッテリモジュールは、バッテリモジュールの下及び/又は上の能動的に冷却された冷却プレートによって冷却され得る。いずれの事例においても、バッテリモジュールハウジングは、衝突事故での、車両長手方向、及び特に車両横断方向において、関連する変形に対してバッテリモジュールハウジングを保護する剛性及び強度を有する。
【0009】
バッテリモジュールは、自己支持体構造の構造部分を形成する車両床の2つの側方長手方向支持体に支持様態で直接締結される。バッテリモジュールは、横断方向支持体に直接締結されていない。特に、横断方向支持体は、走行用バッテリの長手方向延在部の中心には提供されない。横断方向における走行用バッテリの要求される衝突強度は、実質的に又はおよそ、バッテリモジュール自体又はバッテリモジュールハウジングによってのみ生成される。
【0010】
更に、バッテリモジュール水平方向平面の最前方及び又は最後方のバッテリモジュールに隣接して配設される、バー状の電気バッテリ制御モジュールが提供される。バッテリ制御モジュールはまた、その2つの横断方向端部の各々において対応する長手方向支持体に支持様態で構造的に接続されている、自己支持及び衝突安定性のバッテリ制御モジュールハウジングを備える。したがって、バッテリ制御モジュールハウジングは、バッテリモジュール、バッテリ制御モジュール、及び2つの長手方向支持体からなる走行用バッテリネットワーク全体の構造強化に寄与する。
【0011】
好ましくは、バッテリモジュール又はバッテリモジュールのハウジングは各々、同一で、細長い立方体として構成されており、長手方向延在部を、車両横断方向に整列させ、車両長手方向に延在する2つの列に配設されており、2つの列の各々が、少なくとも3つのバッテリモジュールを有する。したがって、所与のバッテリモジュールハウジングの最小の側壁は、垂直長手方向平面にあり、その結果、車両長手方向において見たとき、バッテリモジュールネットワーク全体が相対的に多数の垂直方向ハウジング側壁を有し、それら全てが垂直横断方向平面にあり、バッテリ制御モジュールハウジングと併せて、走行用バッテリネットワークの高構造横断方向剛性をもたらす。
【0012】
側方車両衝突の場合、バッテリモジュール列の2つのバッテリモジュールが、互いに直接ぶつかることなく、互いに向かって移動することができるように、対向部が車両において中央に位置決めされ、互いに対向するバッテリモジュールの前面の間にギャップが形成され得る。
【0013】
好ましくは、バッテリ制御モジュールハウジングの横断方向の端部の各々に、横断方向コンソールが接続され、各々が、それぞれの車両床の長手方向支持体とバッテリ制御モジュールハウジングとの間の構造接続を形成する。典型的には、総走行用バッテリ横断方向延在部は、バッテリコントローラを収容するために必要とされない。したがって、バッテリ制御モジュールハウジングは、走行用バッテリの総横断方向延在部よりも横断方向延在部において実質的に小さくすることができる。それぞれの長手方向支持体と中央に配置されたバッテリ制御モジュールハウジングとの間の得られたギャップは、2つの横断方向コンソールによって構造的に閉じられている。
【0014】
モジュールハウジング及び2つの横断方向コンソールは、互いに実質的に一体型となるように構成することができ、特に好ましくは、単一のアルミニウムダイカスト部分から形成することができる。
【0015】
代替的に、2つの横断方向コンソール及びバッテリ制御モジュールハウジングは、複数の部品で形成することができ、製造後まで組み立てられない。例えば、バッテリ制御モジュールのハウジングは、実質的にアルミニウムダイカスト部分とすることができる。特に好ましくは、各横断方向コンソールは、機械切断押出成形プロファイル本体からなり、これは、製造が安価である。好ましくは、2つの横断方向コンソールは、実質的に互いにミラー対称となるように構成されている。
【0016】
好ましくは、2つの横断方向コンソールは各々、低重量で高い構造剛性を提供するトラス構造を備える。
【0017】
好ましくは、前方又は後方のバッテリ制御モジュールハウジングの垂直方向壁及び隣接する対向する後方又は前方のバッテリモジュール垂直方向壁は、衝突時に2つの垂直方向壁が接触した際に、特別な圧力点を形成することなく、2つの垂直方向壁の大きい表面積又はほぼ全表面積が互いに隣接するように、互いに相補的になるように構成されている。衝突の場合、2つの垂直方向壁は、したがって、画定された均一な様態で互いに当接し、その結果、バッテリモジュール及びバッテリ制御モジュールのハウジングの変形は、概して、大部分において防止される。
【0018】
特に好ましくは、2つの垂直方向壁は、形態的に、実質的に平面状である。特に好ましくは、非衝突状態で互いに対向する2つの垂直方向壁は、少なくとも10mmの距離で互いに離間されており、その結果、軽微な衝突の場合、垂直方向壁は互いに接触しない。
【0019】
本発明の2つの実施形態例は、図面を参照して以下で更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】バッテリ制御モジュールの第1の実施形態例を有する走行用バッテリ車両床の概略上面図を示す。
図2図1の走行用バッテリ車両床のバッテリ制御モジュールの車両中央長手方向セクションII-IIを示す。
図3図2のバッテリ制御モジュールの斜視図を示す。
図4】バッテリ制御モジュールの第2の実施形態例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1では、上面図は、バッテリ電気乗用車10の走行用バッテリ250を有する走行用バッテリ車両床20を概略的に示す。乗用車10は、電気走行用モータ12及び、走行用バッテリ250によって電気エネルギーが供給されるエンジンコントローラ14を備える。走行用バッテリ車両床20は、水平方向平面に横たわるプレート状の様態で構成されており、乗用車10の前方軸と後方軸との間の車両長手方向Xに配設される。
【0022】
本事例では、走行用バッテリ車両床20は、2つの列23、24を備え、各々が6つの同一のバッテリモジュール25、251、252を有し、その結果、2つの同一のバッテリモジュール25、251、252を有する6つの列が、この様態で形成されている。全てのバッテリモジュール25、251、252は、単一の水平方向平面X-Yに配設される。本事例では、全てのバッテリモジュール25、251、252は、互いに直列に電気的に接続されている。各バッテリモジュール25、251、252は、例えば、70Vのモジュール電圧を有する。しかしながら、代替的に、バッテリモジュールは、互いに並列に2つの電気ストランドに電気的に接続され得、例えば、各々150Vのモジュール電圧を有し得る。
【0023】
バッテリモジュール25、251、252は各々、形態的に細長い立方体であり、長手方向延在部を、車両横断方向Yに配向させて配設される。それら遠位の小面積の前面又は端部で、バッテリモジュール25、251、252は各々、締結され、例えば、支持様態で車両床の側方長手方向支持体21、22にねじ止めされる。バッテリモジュール25、251、252は各々、流体密封及び衝突剛性のバッテリモジュールハウジング25’を備える。細長いバッテリモジュール25、251、252の近位前面又は端部は、互いから数cmの横断方向Yに離間されており、長手方向パネル(図示せず)によって機械的に接合されている。最後方バッテリモジュール列を形成する2つの最後方のバッテリモジュール251、252は、車両-中央バッテリ制御モジュール32、32’を有する同じ水平方向平面X、Yで、バッテリ制御バー30に接続され、バッテリ制御バー30は、バッテリモジュール25、251、252を監視及び制御するために、バッテリ制御電子システム35を、自己支持及び衝突安定性のバッテリ制御モジュールハウジング33、33’の内側に封入する。
【0024】
図1~3に示す第1の実施形態例では、バッテリ制御モジュールハウジング33は、パン及びねじ込みリッドによって形成される別個のアルミニウムダイキャスト部品である。ハウジング33の2つの横断方向端部37R、37Lの各々に、トラス構造を有する、当接及び隣接する横断方向コンソール341、342がある。各横断方向コンソール341、342は、機械切断押出成形プロファイル本体34からなる。
【0025】
各横断方向コンソール341、342はそれぞれ、例えば、ボルト401、402を用いてボルト固定されるか、又は代替的に溶接されて、その1つの横断方向端部でバッテリ制御モジュールハウジング33に、及びそれぞれの車両床の長手方向支持体21、22にその他の横断方向端部でそれぞれ構造的に接続される。このようにして、バッテリ制御バー30は、この領域において、横断方向における本体側の追加的な剛直化の大部分が不要となるように、走行用バッテリ車両床20の横断方向剛性を生成する。
【0026】
図2において見ることができるように、バッテリ制御モジュールハウジング33の前方垂直方向壁39及び隣接するバッテリモジュール251、252の隣接して対向する後方バッテリモジュール垂直方向壁29は、各々、形態的に完全に平面状であり、約15mmの距離Aで互いに離間されている。したがって、重度の後方衝突の場合において、バッテリ制御バー30の軽微な変形は、隣接するバッテリモジュール251、252の変形を引き起こさない。バッテリ制御バー30の重度の変形の場合でも、2つの対向する垂直方向壁29、39の滑らかな表面に起因して、バッテリモジュール垂直方向壁29に選択的な力は印加されない。
【0027】
図2に示されるように、能動的に液体冷却された冷却プレート21は、バッテリモジュール25、251、252及びバッテリ制御モジュール32の底側に配設される。
【0028】
図4は、バッテリ制御バー30’の第2の実施形態例を示しており、バッテリ制御モジュールハウジング33’及び2つの横断方向コンソール341’、342’は、互いに実質的に一体であるように構成されており、一体的に接続されたアルミニウムダイカスト部分33’、34’によって形成される。
図1
図2
図3
図4