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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ロータの製造方法及びロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20241210BHJP
   H02K 1/278 20220101ALI20241210BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/278
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023032866
(22)【出願日】2023-03-03
(65)【公開番号】P2024124892
(43)【公開日】2024-09-13
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 雅俊
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-56094(JP,A)
【文献】特開2017-89766(JP,A)
【文献】特開2009-278838(JP,A)
【文献】特開2021-29069(JP,A)
【文献】特開平10-256031(JP,A)
【文献】特開2016-92861(JP,A)
【文献】特開2020-48267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/278
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、
前記ロータコアの外周部に設けられ前記ロータコアの周方向に並列する複数の永久磁石と、
前記ロータコアと前記複数の永久磁石とからなるロータ本体の外周部を囲み前記ロータ本体に嵌合され、前記複数の永久磁石に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する円筒状のスリーブと、
を有するロータの製造方法であって、
前記スリーブは、径方向に積層される少なくとも2つ以上となる複数のスリーブ層を備え、
前記複数のスリーブ層は、前記スリーブにおいて最も径方向内方に配置され前記ロータ本体の前記外周部に嵌合される第1スリーブ層と、
前記第1スリーブ層の径方向外方に配置され前記第1スリーブ層に嵌合される第2スリーブ層と、
を有し、
前記製造方法は、
前記ロータ本体の前記外周部の外径よりも小さな第1内径を有した前記第1スリーブ層に、前記ロータ本体の前記外周部を圧入して嵌合させる第1嵌合工程と、
前記ロータ本体の前記外周部に嵌合された前記第1スリーブ層の第1外周部を、前記第1スリーブ層の第1外径よりも小さな第2内径を有した前記第2スリーブ層に圧入して嵌合させる第2嵌合工程と、
を有する、ロータの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のロータの製造方法において、
前記複数のスリーブ層は、前記第2スリーブ層の径方向外方に配置され前記第2スリーブ層の第2外周部に嵌合される第3スリーブ層を備え、
前記第1スリーブ層に嵌合された前記第2スリーブ層の前記第2外周部を、前記第2スリーブ層の第2外径よりも小さな第3内径を有した前記第3スリーブ層に圧入して嵌合させる第3嵌合工程を有する、ロータの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のロータの製造方法において、
前記複数のスリーブ層は、炭素繊維強化材料(CFRP)で形成される、ロータの製造方法。
【請求項4】
ロータコアと、
前記ロータコアの外周部に設けられ前記ロータコアの周方向に並列する複数の永久磁石と、
前記ロータコアと前記複数の永久磁石とからなるロータ本体の外周部を囲み前記ロータ本体に嵌合され、前記複数の永久磁石に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する円筒状のスリーブと、
を有するロータであって、
前記スリーブは、径方向に積層される少なくとも2つ以上となる複数のスリーブ層を備え、
前記複数のスリーブ層は、前記スリーブにおいて最も径方向内方に配置され前記ロータ本体の前記外周部に嵌合される第1スリーブ層と、
前記第1スリーブ層の径方向外方に配置され前記第1スリーブ層に嵌合される第2スリーブ層と、
を有する、ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法及びロータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転電機のロータを開示している。ロータは、ロータコアの外周面に固定される永久磁石と、ロータコアの外周部を覆うことでロータコアに与圧力を付与する円筒状のスリーブとを備える。スリーブと磁石との間の隙間に樹脂を充填して固化させている。ロータが回転したとき、スリーブ及び樹脂によって遠心力による永久磁石の径方向外方への移動を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7049285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、特許文献1に開示されたようなロータでは、スリーブのみで遠心力による永久磁石の移動を抑制することが求められると共に、スリーブの薄肉化が求められている。しかしながら、スリーブによるロータコアへの与圧力と、スリーブの薄さとを両立させることが難しいという問題がある。また、ロータコアの外周部に単一層構造のスリーブを取り付けたとき、スリーブの周方向に働く周方向応力が内周から外周側に向かうほど小さくなるように分布する。そのため、スリーブによってロータコアの外周部に対して与圧力を効率的に付与できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、ロータコアと、前記ロータコアの外周部に設けられ前記ロータコアの周方向に並列する複数の永久磁石と、前記ロータコアと前記複数の永久磁石とからなるロータ本体の外周部を囲み前記ロータ本体に嵌合され、前記複数の永久磁石に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する円筒状のスリーブと、を有するロータの製造方法であって、前記スリーブは、径方向に積層される少なくとも2つ以上となる複数のスリーブ層を備え、前記複数のスリーブ層は、前記スリーブにおいて最も径方向内方に配置され前記ロータ本体の前記外周部に嵌合される第1スリーブ層と、前記第1スリーブ層の径方向外方に配置され前記第1スリーブ層に嵌合される第2スリーブ層と、を有し、前記製造方法は、前記ロータ本体の前記外周部の外径よりも小さな第1内径を有した前記第1スリーブ層に、前記ロータ本体の前記外周部を圧入して嵌合させる第1嵌合工程と、前記ロータ本体の前記外周部に嵌合された前記第1スリーブ層の第1外周部を、前記第1スリーブ層の第1外径よりも小さな第2内径を有した前記第2スリーブ層に圧入して嵌合させる第2嵌合工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロータ本体の外周部に嵌合された第1スリーブ層を、第1スリーブ層の第1外径よりも小さな第2内径を有した第2スリーブ層に圧入して嵌合させることで、第2スリーブ層の周方向応力と、第1スリーブ層の周方向応力との差を抑制することができる。これにより、単一層構造のスリーブによってロータ本体に与圧力を付与する構成に比べ、径方向外方に配置された第2スリーブ層による径方向内方への与圧力を効率的に高めることができるため、スリーブの薄肉化を図ることができる。あるいは、同じ厚みの単一層構造のスリーブと比較して、ロータが回転した際の耐回転数の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係るロータの全体平面図である。
図2図2は、図1のロータにおけるスリーブ周辺の拡大断面図である。
図3図3は、ロータの製造装置の全体構成図である。
図4図4Aは、ロータの製造装置によるロータの製造方法において、第1スリーブ層を取り付ける第1嵌合工程の液体導入工程までを示す説明図である。図4Bは、第1嵌合工程における膨張工程の説明図である。
図5図5Aは、第1嵌合工程における挿入工程の説明図である。図5Bは、第1嵌合工程の固定工程の説明図である。
図6図6Aは、第2スリーブ層を取り付ける第2嵌合工程の説明図である。図6Bは、第2嵌合工程における固定工程を示す説明図である。
図7図7Aは、第3スリーブ層を取り付ける第3嵌合工程の説明図である。図7Bは、第3嵌合工程における固定工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るロータ10は、ハウジング及びステータを有した回転電機の一部を構成する。図1に示されるように、ロータ10は、ロータ本体12と、ロータ本体12の外周部121を囲むスリーブ14とを備える。ロータ本体12は、ロータコア16と、複数の永久磁石18とを備える。
【0010】
ロータコア16は、磁性体から円柱状に形成される。ロータコア16の軸方向から見たとき、ロータコア16のコア外周部161は円形状である。ロータコア16のコア外周部161は、複数の収容部20を有する。複数の収容部20は、ロータ本体12の周方向に沿って並列し、且つロータコア16のコア外周部161に対して径方向内方に窪む。複数の収容部20は、ロータコア16の周方向において互いに等間隔離間する。ロータコア16の中心は、軸方向に貫通した貫通孔162を有する。貫通孔162には、図示しない回転電機のシャフトが嵌合される。
【0011】
複数の永久磁石18は、ロータコア16の各収容部20に収容される。複数の永久磁石18は、収容部20を介してロータコア16のコア外周部161に設けられ、且つロータコア16の周方向に並列する。ロータ本体12の周方向に沿って複数の永久磁石18が配置される。複数の永久磁石18は、ロータコア16の周方向において極性が交互となるように配置される。複数の永久磁石18は、例えばロータコア16のコア外周部161に露出する。なお、複数の永久磁石18は、ロータコア16の外周部121に露出して外周面と面一に配置される場合に限定されない。複数の永久磁石18が、ロータコア16の外周面に対して径方向外方に配置されてもよいし、ロータコア16のコア外周部161に対して径方向内方に配置されてもよい。複数の永久磁石18が、ロータコア16のコア外周部161に内蔵され外周面に露出しなくてもよい。
【0012】
スリーブ14は、例えば、炭素繊維強化樹脂(CFRP)によって円筒状に形成される。スリーブ14は、補強繊維を周方向に巻き付けたフープ層のみで構成される。スリーブ14は、ロータコア16及び永久磁石18からなるロータ本体12の外周部121を囲んで外周部121を覆う。スリーブ14は、ロータ本体12の外周部121に嵌合され、複数の永久磁石18に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する。ロータ10が回転したとき、遠心力による永久磁石18のロータ本体12からの浮き上がりをスリーブ14によって防止する。ロータ本体12の外周部121に装着される前のスリーブ14の内径は、ロータ本体12の外径D(直径)よりも小さい(図2参照)。なお、スリーブ14は、炭素繊維強化樹脂によって形成される場合に限定されるものではない。スリーブ14を、例えば、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)を含むその他の繊維強化樹脂(FRP)、金属材料、樹脂材料等で形成してもよい。
【0013】
スリーブ14は、径方向に積層された複数のスリーブ層22を有する。複数のスリーブ層22は、例えば最も径方向内方に配置される第1スリーブ層221と、第1スリーブ層221の径方向外方に配置される第2スリーブ層222と、第2スリーブ層222の径方向外方に配置される第3スリーブ層223とから構成される。すなわち、スリーブ14は、第1~第3スリーブ層221、222、223から構成される3層構造である。
【0014】
なお、スリーブ14は、第1~第3スリーブ層221、222、223から構成される場合に限定されない。少なくとも2層以上のスリーブ層22を有し、ロータ本体12の外周部121において径方向に積層される構造であれば4層以上であってもよい。ロータ本体12の外周部121に対して径方向内方から径方向外方に向けて、第1スリーブ層221、第2スリーブ層222、第3スリーブ層223の順番でスリーブ14が嵌合される。
【0015】
図2に示すように、第1スリーブ層221は、径方向に第1厚みを有した円筒状に形成される。第1スリーブ層221の外周には、第2スリーブ層222が嵌合される第1外周部241を備える。第1スリーブ層221は、ロータ本体12の外周部121に嵌合される。ロータ本体12の外周部121に第1スリーブ層221が嵌合される前の嵌合前状態において、第1スリーブ層221の第1内径d1は、ロータ本体12の外周部121の外径D(直径)よりも小さい(d1<D)。ロータ本体12の外周部121が第1スリーブ層221に圧入される。ロータ本体12の外周部121の径方向外方に第1スリーブ層221が嵌合される。このとき、第1スリーブ層221は、ロータ本体12の外周部121の周方向に沿って拡張する。第1スリーブ層221には、第1スリーブ層221の周方向に沿って第1周方向応力F1(張力)が生じる。第1スリーブ層221には、径方向内方に向かう第1与圧力281f(第1締付荷重)が生じる。第1与圧力281fが、第1スリーブ層221の内面からロータ本体12の外周部121に対して径方向内方へ付与される。第1与圧力281fの付与方向は、ロータコア16の中心軸線に向かう方向である。
【0016】
第2スリーブ層222は、径方向に第2厚みを有した円筒状に形成される。第2スリーブ層222の外周には、第3スリーブ層223が嵌合される第2外周部242を備える。ロータ本体12の外周部121に嵌合した第1スリーブ層221の第1外周部241に第2スリーブ層222が嵌合される前の状態において、第2スリーブ層222の第2内径d2は、第1スリーブ層221(第1外周部241)の第1外径D1よりも小さい(d2<D1)。第2スリーブ層222の第2内径d2は、第1スリーブ層221の第1内径d1より大きい。ロータ本体12の外周部121に嵌合された第1スリーブ層221の第1外周部241が、第2スリーブ層222に圧入され嵌合される。
【0017】
このとき、第2スリーブ層222は、ロータ本体12の外周部121の周方向に沿って拡張する。第2スリーブ層222には、第2スリーブ層222の周方向に沿って第2周方向応力F2(張力)が生じる。第2スリーブ層222には、第2スリーブ層222の内面から径方向内方に向かう第2与圧力282f(第2締付荷重)が生じる。第1スリーブ層221を介して、第2与圧力282fがロータ本体12の外周部121に対して径方向内方へ付与される。第2与圧力282fの付与方向は、ロータコア16の中心軸線に向かう方向である。
【0018】
第2スリーブ層222の第2内径d2は、第2スリーブ層222に働く第2周方向応力F2と第1スリーブ層221に働く第1周方向応力F1とが略均等となるように設定される。例えば、第1周方向応力F1に対する第2周方向応力F2の割合(F2/F1)は、単一層構造のスリーブの径方向における同一部位(同一径部位)で発生する周方向応力以上となるように設定される。
【0019】
第3スリーブ層223は、径方向に第3厚みを有した円筒状に形成される。第3スリーブ層223は、第1及び第2スリーブ層221、222を介してロータ本体12の外周部121に嵌合される。第1スリーブ層221の第1外周部241に嵌合した第2スリーブ層222の第2外周部242に第3スリーブ層223が嵌合される前の状態において、第3スリーブ層223の第3内径d3は、ロータ本体12に嵌合された第2スリーブ層222の第2外径D2(直径)よりも小さい(d3<D2)。第3スリーブ層223に、第2スリーブ層222の第2外周部242が圧入されて嵌合される。
【0020】
このとき、第3スリーブ層223は、ロータ本体12の外周部121の周方向に沿って拡張する。第3スリーブ層223には、第3スリーブ層223の周方向に沿って第3周方向応力F3(張力)が働く。第3スリーブ層223には、径方向内方に向かう第3与圧力283f(第3締付荷重)が生じる。第1及び第2スリーブ層221、222を介して、第3与圧力283fが第3スリーブ層223の内面からロータ本体12の外周部121に対して径方向内方へ付与される。第3与圧力283fの付与方向は、ロータコア16の中心軸線に向かう方向である。
【0021】
第3スリーブ層223の第3内径d3は、第3スリーブ層223に働く第3周方向応力F3と第1及び第2スリーブ層221、222に働く第1及び第2周方向応力F1、F2とが略均等となるように設定される。例えば、第1及び第2周方向応力F1、F2に対する第3周方向応力F3の割合(F3/F1、F3/F2)は、単一層構造のスリーブの径方向における同一部位(同一径部位)で発生する周方向応力以上となるように設定される。
【0022】
次に、ロータ本体12の外周部121をスリーブ14に圧入するためのロータ10の製造装置50について説明する。
【0023】
図3に示すように、製造装置50は、シリンダ治具52と、液体供給部54とを備える。シリンダ治具52は、ロータ本体12及びスリーブ14を保持し、ロータ本体12の外周部121にスリーブ14を取り付けるための治具である。液体供給部54は、シリンダ治具52に液体Lを供給する。
【0024】
シリンダ治具52は、支持ブロック56と、連結部58と、シリンダ部材60とを有する。支持ブロック56は、シリンダ治具52の下部に位置する。支持ブロック56は、スリーブ14を支持する支持面62と、支持面62から下方に向けて窪んだ凹部64と、凹部64に開口するポート部66とを備える。
【0025】
支持面62は、シリンダ治具52の軸線と直交する平面を有し、スリーブ14の下端部と当接する。支持面62は、スリーブ14の下端部を支持面62の延在方向に摺動可能に支持する。
【0026】
凹部64は、シリンダ治具52の軸方向から見た平面視で円形である。凹部64は、ロータ本体12の先端に取り付けられたヘッド部材68を収容可能な直径及び深さを有する。凹部64には、位置決め部材70が設けられる。位置決め部材70は、スリーブ14に向けて突出し、スリーブ14の内周面に当接することでスリーブ14を、シリンダ部材60と同心に位置決め可能である。
【0027】
ポート部66は、凹部64の中央に形成され凹部64の底部に開口する。ポート部66は、液体流路94を介して液体供給部54と接続される。
【0028】
連結部58は、支持ブロック56の上部に接続され、支持ブロック56とシリンダ部材60とを接続する。連結部58は、内部にスリーブ14を収容する収容室72を有する。収容室72は、シリンダ部材60及びスリーブ14よりも大きな内径を有し、スリーブ14の周囲にスリーブ14が膨張可能な隙間74を形成する。シリンダ治具52の軸方向における収容室72の高さは、例えばスリーブ14の高さと略同じである。連結部58の側部には複数の排出ポート76を有する。排出ポート76は、連結部58を径方向に貫通する排出流路78を有する。排出ポート76は、収容室72の液体Lを外部に排出する。
【0029】
シリンダ部材60は、本体部80と、ピストン82と、ヘッド部材68とを有する。本体部80は、当接面86と、シリンダ孔88とを有する。当接面86は、本体部80の下部に位置する。当接面86は、シリンダ部材60の軸線と直交する平面であり、スリーブ14の上端部と当接する。液圧を付与する前のスリーブ14の内周部は、ロータ本体12よりも小さな内径を有するため、シリンダ孔88よりも内方に位置する。
【0030】
当接面86は、スリーブ14の上端部との摺動を許容する。スリーブ14の膨張によって、スリーブ14の上端部は当接面86の外周側に向けて摺動する。
【0031】
本体部80は、内部にシリンダ孔88を有する。シリンダ孔88は、ロータ本体12よりわずかに大きな内径を有した断面円形の孔であり、上下方向に本体部80を貫通する。シリンダ孔88とロータ本体12との間には間隙を有する。シリンダ孔88は、上下方向(軸線方向)にロータ本体12と、ピストン82の一部とを収容可能な長さを有する。シリンダ孔88は、径方向外方に窪んだ収容溝801を有する。収容溝801にはパッキン90が収容される。パッキン90は、例えばОリングからなり、ピストン82の外周面と液密に当接する。パッキン90は、ピストン82とシリンダ孔88との隙間を通じた液体Lの流出を阻止する。
【0032】
ピストン82は、シリンダ孔88に収容される。ピストン82は、例えばプレス装置Pによって軸方向に移動可能に設けられる。ピストン82は、シリンダ孔88と摺動しつつシリンダ孔88に沿って上下方向に移動する。ピストン82の下端部821は、ロータ本体12を保持する。ピストン82は、下方に突出しロータ本体12をピストン82の中心軸に位置決めする支柱92を有する。支柱92は、ロータ本体12(ロータコア16)の貫通孔162を挿通する。
【0033】
ヘッド部材68は、支柱92の先端に連結される。ヘッド部材68は、ヘッド部材68とピストン82との間にロータ本体12を挟み込んで保持する。ヘッド部材68は、ロータ本体12の外周部121と同一の直径を有する。ヘッド部材68は、ロータ本体12がスリーブ14の内部に挿入された後、支柱92との連結が解除される(図6B参照)。ヘッド部材68と支柱92との連結が解除されると、ロータ本体12及びスリーブ14をピストン82から取り外し可能となる。
【0034】
液体供給部54は、液体流路94を介してポート部66に接続される。液体供給部54は、リリーフ弁96と、遮断弁98と、ポンプ100と、貯留タンク102とを有する。液体流路94は、貯留タンク102とポート部66を結ぶ第1流路104と、第1流路104から分岐してリリーフ弁96に接続する第2流路106とを有する。
【0035】
リリーフ弁96は、第2流路106及び第1流路104(液体流路94)を介してポート部66に接続される。リリーフ弁96は、液圧が所定値を超えると液体Lを排出する。リリーフ弁96は、スリーブ14に付与される液圧を所定値以下の範囲に維持する。
【0036】
貯留タンク102は、第1流路104を介してポート部66に接続される。貯留タンク102は、スリーブ14の内部に導入される液体Lを収容する。液体Lは、例えば、シリコンオイル、グリス、又は作動油等が用いられる。
【0037】
遮断弁98及びポンプ100は、第1流路104に配置される。遮断弁98は、第1流路104と第2流路106との分岐よりも貯留タンク102に近い位置の第1流路104に配置される。遮断弁98は、第1流路104を閉塞し、ポンプ100及び貯留タンク102への液圧の伝搬を防止する。
【0038】
ポンプ100は、貯留タンク102と遮断弁98との間に配置される。ポンプ100は、貯留タンク102の液体Lをポート部66に送り込む。
【0039】
次に、製造装置50によって、ロータ本体12の外周部121にスリーブ14を取り付けるロータ10の製造方法について説明する。
【0040】
先ず、スリーブ14の最内層を構成する第1スリーブ層221をロータ本体12の外周部121に取り付ける第1嵌合工程を行う。ロータ本体12に嵌合する前の第1スリーブ層221の第1内径d1は、ロータ本体12の外周部121の外径Dよりも小さい(図2参照)。第1嵌合工程では、第1スリーブ層221を取り付けるための第1製造装置501が用いられる。
【0041】
図4Aに示されるように、第1スリーブ層221が第1製造装置501の収容室72に配置される。第1スリーブ層221の下端部が支持ブロック56の支持面62と当接し、第1スリーブ層221の上端部はシリンダ部材60の本体部80の当接面86と当接する。これにより、第1スリーブ層221が、シリンダ治具52の軸方向に沿って配置され、且つ第1スリーブ層221の内面が、シリンダ孔88と同軸となるように配置される。
【0042】
次に、第1嵌合工程の液体導入工程において、ポート部66及び凹部64を通じて第1スリーブ層221の内部に液体Lが導入される。液体Lは、図3の貯留タンク102及びポンプ100を介して供給される。図4Aに示されるように、液体Lの導入は、ヘッド部材68の下側のシリンダ孔88が液体Lで満たされるまで継続される。液体Lの導入が完了すると、図3のポンプ100が停止し、遮断弁98が第1流路104を閉塞する。
【0043】
次に、図4Bに示される膨張工程が行われる。膨張工程では、プレス装置Pによってピストン82が押し下げられて、ピストン82の下方への移動に伴って、ヘッド部材68によって液体Lが押し下げられる。シリンダ孔88の内部の液体Lがスリーブ14の内部に向けて流動する。これにより、第1スリーブ層221の内部の液圧が上昇する。このとき、液体Lの一部は、第1スリーブ層221の上端部とシリンダ部材60(当接面86)との隙間74及び第1スリーブ層221の下端部と支持ブロック56(支持面62)との隙間74から流出する。
【0044】
第1スリーブ層221の内部において液圧が増大することで、所定の液圧が第1スリーブ層221に対して付与される。液圧の付与により、第1スリーブ層221が径方向外方に押されて膨張する。これにより、第1スリーブ層221の第1内径d1´は、ロータ本体12の外径Dよりも大きくなる(d1´>D)。
【0045】
図5Aに示すように、ピストン82がさらに下降し、第1スリーブ層221の内部にロータ本体12が挿入される挿入工程が行われる。挿入工程では、第1スリーブ層221の第1内径d1´がロータ本体12の外径Dよりも大きいため、ロータ本体12は第1スリーブ層221と接触することなく、第1スリーブ層221の内部に挿入される。ヘッド部材68の下側に位置する液体Lの一部は、ロータ本体12とスリーブ14の内周面との隙間74を流れてスリーブ14の外部に流出する。このとき、ロータ本体12と第1スリーブ層221の内面との隙間74が狭くなり流路長が増大することで、液体Lの外部への流出が困難になるため、第1スリーブ層221の内部の液圧が増大する。
【0046】
挿入工程において、第1スリーブ層221の内部の液圧が所定圧を上回ると、リリーフ弁96(図3参照)が開く。リリーフ弁96は、第1スリーブ層221の内部の液体Lを放出することで、スリーブ14の内部の液圧を所定値に維持する。リリーフ弁96は、スリーブ14の内部で過剰な液圧が発生するのを防止して第1スリーブ層221の破損を防止する。
【0047】
図5Bに示される固定工程において、第1スリーブ層221の内部にロータ本体12が完全に挿入されると、ヘッド部材68が凹部64の底に当接して、ピストン82の下降が停止する。その後、第1スリーブ層221の内部への液体Lの流入が停止し、第1スリーブ層221の内部の液圧が低下する。第1スリーブ層221の内部の液圧の低下によって、第1スリーブ層221に対する径方向外方への押圧力がなくなり第1スリーブ層221が径方向内方に収縮する。第1スリーブ層221の径方向内方への収縮に伴って、第1スリーブ層221が、ロータ本体12の外周部121に嵌合されて固定される。このとき、第1スリーブ層221は、初期状態に対してロータ本体12の外周部121の周方向に沿って拡張している。
【0048】
図2に示すように、初期状態(嵌合前状態)における第1スリーブ層221の第1内径d1とロータ本体12の外径Dとの差に応じた第1周方向応力F1が第1スリーブ層221に生じる。第1スリーブ層221には、第1スリーブ層221の第1内径d1とロータ本体12の外径Dとの差に応じた第1与圧力281f(第1締付荷重)が径方向内方に向けて生じ、第1与圧力281fがロータ本体12の外周部121に付与される。第1与圧力281fを付与した状態で、第1スリーブ層221がロータ本体12の外周部121に固定される。すなわち、第1嵌合工程は、液体Lの液圧を利用して第1スリーブ層221を拡張させてロータ本体12の外周部121を第1スリーブ層221に圧入可能な液圧拡張圧入方法である。
【0049】
次に、ロータ本体12の外周部121に嵌合された第1スリーブ層221の第1外周部241に対し、第2スリーブ層222を取り付ける第2嵌合工程を行う。第1スリーブ層221に嵌合する前の第2スリーブ層222の第2内径d2は、ロータ本体12に嵌合された第1スリーブ層221の第1外径D1よりも小さい。第2スリーブ層222の第2内径d2は、第1スリーブ層221の第1周方向応力F1と略均等な第2周方向応力F2を発生可能に設定される。
【0050】
図6Aに示すように、第2嵌合工程では、第2スリーブ層222を取り付けるための第2製造装置502が用いられる。第2製造装置502は、第1スリーブ層221の第1外径D1に対応したピストン82、ヘッド部材68及びシリンダ孔88を備える。すなわち、第1製造装置501のピストン82、ヘッド部材68及びシリンダ孔88に対し、第1スリーブ層221の厚みの分だけ、第1スリーブ層221の第1外径D1に対応して第2製造装置502のピストン82、ヘッド部材68及びシリンダ孔88の各々が大径で形成される。
【0051】
先ず、第2スリーブ層222が第2製造装置502の収容室72に配置される。第1スリーブ層221が固定されたロータ本体12は、シリンダ部材60のシリンダ孔88に収容される。その後、第2スリーブ層222の内部及びシリンダ部材60のシリンダ孔88の内部に液体Lを導入する液体導入工程が行われる。
【0052】
次に、膨張工程において、ピストン82が下方に押し下げられ、第2スリーブ層222の内部に液圧が付与されることで第2スリーブ層222が径方向外方に向けて膨張する。第2スリーブ層222の第2内径d2´が、第1スリーブ層221の第1外径D1よりも大きくなる(d2´>D1)。その後、膨張した第2スリーブ層222の内部に第1スリーブ層221の固定されたロータ本体12が挿入される。図6Bに示すように、固定工程において、液圧が取り除かれて第2スリーブ層222が径方向内方に収縮する。第2スリーブ層222の径方向内方への収縮に伴って、第1スリーブ層221の第1外周部241が第2スリーブ層222に圧入されて嵌合される。このとき、第2スリーブ層222は、初期状態に対してロータ本体12の外周部121の周方向に沿って拡張している。
【0053】
図2に示すように、初期状態(嵌合前状態)における第2スリーブ層222の第2内径d2と第1スリーブ層221の第1外径D1との差に応じた第2周方向応力F2が第2スリーブ層222に生じる。例えば、第1スリーブ層221の第1周方向応力F1に対する第2周方向応力F2の割合が、単一層構造のスリーブの径方向における同一部位(同一径部位)で発生する周方向応力以上に設定される。第2スリーブ層222には、第2スリーブ層222の第2内径d2と第1スリーブ層221の第1外径D1との差に応じた第2与圧力282f(第2締付荷重)が径方向内方に向けて生じ、第2与圧力282fが第1スリーブ層221を介してロータ本体12の外周部121に付与される。第2与圧力282fを付与した状態で、第2スリーブ層222が第1スリーブ層221の第1外周部241に固定される。すなわち、第2嵌合工程は、液体Lの液圧を利用して第2スリーブ層222を拡張させ、第2スリーブ層222に第1スリーブ層221の第1外周部241を圧入可能な液圧拡張圧入方法である。
【0054】
次に、ロータ本体12の外周部121に嵌合された第2スリーブ層222の第2外周部242に対し、第3スリーブ層223を取り付ける第3嵌合工程を行う。第3スリーブ層223の第3内径d3は、第1スリーブ層221に嵌合した第2スリーブ層222の第2外径D2よりも小さい。第3スリーブ層223の第3内径d3は、第1及び第2スリーブ層221、222の第1及び第2周方向応力F1、F2と略均等な第3周方向応力F3を発生可能に設定される。
【0055】
図7Aに示すように、第3嵌合工程では、第3スリーブ層223を取り付けるための第3製造装置503が用いられる。第3製造装置503は、第2スリーブ層222の第2外径D2に対応したピストン82、ヘッド部材68及びシリンダ孔88を備える。すなわち、第2製造装置502のピストン82、ヘッド部材68及びシリンダ孔88に対し、第2スリーブ層222の厚みの分だけ、第2スリーブ層222の第2外径D2に対応して第3製造装置503のピストン82、ヘッド部材68及びシリンダ孔88の各々が大径で形成される。
【0056】
先ず、第3スリーブ層223が第3製造装置503の収容室72に配置される。第1及び第2スリーブ層221、222が固定されたロータ本体12は、シリンダ部材60のシリンダ孔88に収容される。その後、第3スリーブ層223の内部及びシリンダ部材60のシリンダ孔88の内部に液体Lを導入する液体導入工程が行われる。
【0057】
次に、膨張工程において、ピストン82が下方に押し下げられ、第3スリーブ層223の内部に液圧が付与されることで、第3スリーブ層223が径方向外方に向けて膨張する。その後、膨張した第3スリーブ層223の内部に第1及び第2スリーブ層221、222、222の固定されたロータ本体12が挿入される。図7Bに示すように、固定工程において、液圧が取り除かれて第3スリーブ層223が径方向内方に収縮する。第3スリーブ層223の径方向内方への収縮に伴って、第2スリーブ層222の第2外周部242が第3スリーブ層223に圧入されて嵌合される。このとき、第3スリーブ層223は、初期状態に対してロータ本体12の外周部121の周方向に沿って拡張している。
【0058】
図2に示すように、初期状態(嵌合前状態)における第3スリーブ層223の第3内径d3と第2スリーブ層222の第2外径D2との差に応じた第3周方向応力F3が第3スリーブ層223に生じる。例えば、第1スリーブ層221の第1周方向応力F1に対する第3周方向応力F3の割合が単一層構造のスリーブの径方向における同一部位(同一径部位)で発生する周方向応力以上に設定される。第3スリーブ層223には、第3スリーブ層223の第3内径d3と第2スリーブ層222の第2外径D2との差に応じた第3与圧力283f(第3締付荷重)が径方向内方に向けて生じ、第3与圧力283fが第1及び第2スリーブ層221、222を介してロータ本体12の外周部121に付与される。第3与圧力283fを付与した状態で、第3スリーブ層223が第2スリーブ層222の第2外周部242に固定される。すなわち、第2嵌合工程は、液体Lの液圧を利用して第3スリーブ層223を拡張させ、第3スリーブ層223に第2スリーブ層222の第2外周部242を圧入可能な液圧拡張圧入方法である。
【0059】
以上のロータ10の製造工程により、ロータ本体12の外周部121に第1~第3スリーブ層221、222、223が順次径方向に積層され取り付けが完了する。
【0060】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0061】
図1に示すように、ロータ10は、ロータコア16と複数の永久磁石18とからなるロータ本体12の外周部121を囲みロータ本体12に嵌合され、複数の永久磁石18に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する円筒状のスリーブ14とを有する。スリーブ14は、径方向に積層される少なくとも2つ以上となる複数のスリーブ層22を備え、複数のスリーブ層22は、スリーブ14において最も径方向内方に配置されロータ本体12の外周部121に嵌合される第1スリーブ層221と、第1スリーブ層221の径方向外方に配置され第1スリーブ層221に嵌合される第2スリーブ層222とを有する。ロータ10の製造方法は、ロータ本体12の外周部121の外径Dよりも小さな第1内径d1を有した第1スリーブ層221に、ロータ本体12の外周部121を圧入して嵌合させる第1嵌合工程と、ロータ本体12の外周部121に嵌合された第1スリーブ層221の第1外周部241を、第1スリーブ層221の第1外径D1よりも小さな第2内径d2を有した第2スリーブ層222に圧入して嵌合させる第2嵌合工程とを有している。
【0062】
この製造方法によれば、ロータ本体12の外周部121に嵌合された第1スリーブ層221を、第1スリーブ層221の第1外径D1よりも小さな第2内径d2を有した第2スリーブ層222に嵌合させることで、第2スリーブ層222の第2周方向応力F2(張力)と、第1スリーブ層221の第1周方向応力F1(張力)との差を抑制することができる。換言すれば、スリーブ14の径方向における周方向応力を平準化することができる。これにより、単一層構造のスリーブによってロータ本体に与圧力を付与する構成に比べ、径方向外方に配置された第2スリーブ層222による径方向内方への第2与圧力282fを効率的に高めることができるため、スリーブ14の径方向の薄肉化を図ることができる。あるいは、同じ厚みの単一層構造のスリーブと比較した場合、ロータ10が回転した際の耐回転数の向上を図ることができる。換言すれば、単一層構造のスリーブと比較して、ロータ10をより高回転化させることが可能となる。この場合、スリーブ14の厚みは、第1スリーブ層221の厚み、第2スリーブ層222の厚み、第3スリーブ層223の第みを合算した値である。
【0063】
これにより、第1スリーブ層221の第1周方向応力F1と第2スリーブ層222の第2周方向応力F2とを平準化することで、第1及び第2スリーブ層221、222によってロータ本体12の外周部121に対して略均等に与圧力を付与することが可能となる。
【0064】
複数のスリーブ層22は、第2スリーブ層222の径方向外方に配置され第2スリーブ層222の第2外周部242に嵌合される第3スリーブ層223を備え、第1スリーブ層221に嵌合された第2スリーブ層222の第2外周部242を、第2スリーブ層222の第2外径D2よりも小さな第3内径d3を有した第3スリーブ層223に圧入して嵌合させる第3嵌合工程を有する。
【0065】
これにより、第2スリーブ層222の径方向外方に配置される第3スリーブ層223の第3周方向応力F3(張力)を効果的に高めることができる。第1~第3スリーブ層221、222、223によって、スリーブ14内の周方向応力の一層の平準化が図られる。
【0066】
複数のスリーブ層22は、炭素繊維強化材料(CFRP)で形成されるため、ロータ本体12の外周部121に複数のスリーブ層22を嵌合させることで、各スリーブ層22の周方向応力を生じさせ、径方向内方に向かう与圧力を効果的に生じさせることができる。
【0067】
図1に示すように、ロータ10が、ロータコア16と複数の永久磁石18とからなるロータ本体12の外周部121を囲みロータ本体12に嵌合され、複数の永久磁石18に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する円筒状のスリーブ14を備える。スリーブ14は、径方向に積層される少なくとも2つ以上となる複数のスリーブ層22を備え、複数のスリーブ層22は、スリーブ14において最も径方向内方に配置されロータ本体12の外周部121に嵌合される第1スリーブ層221と、第1スリーブ層221の径方向外方に配置され第1スリーブ層221に嵌合される第2スリーブ層222とを有する。
【0068】
この構成によれば、ロータ本体12の外周部121に対して、第1スリーブ層221、第1スリーブ層221の径方向外方となる第2スリーブ層222を順番に嵌合することで、第2スリーブ層222の第2周方向応力F2と、第1スリーブ層221の第1周方向応力F1との差を抑制して平準化することができる。これにより、単一層構造のスリーブによってロータ本体に与圧力を付与する構成に比べ、径方向外方に配置される第2スリーブ層222から付与される与圧力を効率的に高めることができるため、スリーブ14の薄肉化を図ることができる。あるいは、同じ厚みの単一層構造のスリーブと比較して、ロータ10が回転した際の耐回転数の向上を図ることができる。
【0069】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0070】
上記の実施形態は、ロータコア(16)と、前記ロータコアの外周部(121)に設けられ前記ロータコアの周方向に並列する複数の永久磁石(18)と、前記ロータコアと前記複数の永久磁石とからなるロータ本体(12)の外周部を囲み前記ロータ本体に嵌合され、前記複数の永久磁石に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する円筒状のスリーブ(14)と、を有するロータ(10)の製造方法であって、前記スリーブは、径方向に積層される少なくとも2つ以上となる複数のスリーブ層(22)を備え、前記複数のスリーブ層は、前記スリーブにおいて最も径方向内方に配置され前記ロータ本体の前記外周部に嵌合される第1スリーブ層(221)と、前記第1スリーブ層の径方向外方に配置され前記第1スリーブ層に嵌合される第2スリーブ層(222)と、を有し、前記製造方法は、前記ロータ本体の前記外周部の外径(D)よりも小さな第1内径(d1)を有した前記第1スリーブ層に、前記ロータ本体の前記外周部を圧入して嵌合させる第1嵌合工程と、前記ロータ本体の前記外周部に嵌合された前記第1スリーブ層の第1外周部(241)を、前記第1スリーブ層の第1外径(D1)よりも小さな第2内径(d2)を有した前記第2スリーブ層に圧入して嵌合させる第2嵌合工程と、を有する。
【0071】
この製造方法によれば、ロータ本体の外周部に嵌合された第1スリーブ層を、第1スリーブ層の第1外径よりも小さな第2内径を有した第2スリーブ層に圧入して嵌合させることで、第2スリーブ層の周方向応力(張力)と、第1スリーブ層の周方向応力(張力)との差を抑制することができる。これにより、単一層構造のスリーブによってロータ本体に与圧力を付与する構成に比べ、径方向外方に配置された第2スリーブ層による径方向内方への与圧力を効率的に高めることができるため、スリーブの薄肉化を図ることができる。あるいは、同じ厚みの単一層構造のスリーブと比較して、ロータが回転した際の耐回転数の向上を図ることができる。
【0072】
この製造方法によれば、第1スリーブ層の第1周方向応力と第2スリーブ層の第2周方向応力とを平準化することで、第1及び第2スリーブ層によってロータ本体の外周部に対して略均等に与圧力を付与することが可能となる。
【0073】
前記複数のスリーブ層は、前記第2スリーブ層の径方向外方に配置され前記第2スリーブ層の第2外周部(242)に嵌合される第3スリーブ層(223)を備え、前記第1スリーブ層に嵌合された前記第2スリーブ層の前記第2外周部を、前記第2スリーブ層の第2外径(D2)よりも小さな第3内径(d3)を有した前記第3スリーブ層に圧入して嵌合させる第3嵌合工程を有する。
【0074】
この製造方法によれば、第2スリーブ層の径方向外方に配置される第3スリーブ層の第3周方向応力(張力)を効果的に高めることができる。第1~第3スリーブ層によって、スリーブ内の周方向応力の一層の平準化が図られる。
【0075】
前記複数のスリーブ層は、炭素繊維強化材料(CFRP)で形成される。
【0076】
この製造方法によれば、ロータ本体の外周部に複数のスリーブ層を嵌合させることで、各スリーブ層の周方向応力を生じさせ、径方向内方に向かう与圧力を効果的に生じさせることができる。
【0077】
ロータコアと、前記ロータコアの外周部に設けられ前記ロータコアの周方向に並列する複数の永久磁石と、前記ロータコアと前記複数の永久磁石とからなるロータ本体の外周部を囲み前記ロータ本体に嵌合され、前記複数の永久磁石に対して径方向内方に向けた与圧力を付与する円筒状のスリーブと、を有するロータであって、前記スリーブは、径方向に積層される少なくとも2つ以上となる複数のスリーブ層を備え、前記複数のスリーブ層は、前記スリーブにおいて最も径方向内方に配置され前記ロータ本体の前記外周部に嵌合される第1スリーブ層と、前記第1スリーブ層の径方向外方に配置され前記第1スリーブ層に嵌合される第2スリーブ層と、を有する。
【0078】
この構成によれば、ロータ本体の外周部に対して、第1スリーブ層、第1スリーブ層の径方向外方となる第2スリーブ層を順番に嵌合することで、第2スリーブ層の周方向応力(張力)と、第1スリーブ層の周方向応力(張力)との差を抑制して平準化することができる。これにより、単一層構造のスリーブによってロータ本体に与圧力を付与する構成に比べ、径方向外方に配置される第2スリーブ層から付与される与圧力を効率的に高めることができるため、スリーブの薄肉化を図ることができる。あるいは、同じ厚みの単一層構造のスリーブと比較して、ロータが回転した際の耐回転数の向上を図ることができる。
【0079】
この構成によれば、第1スリーブ層の第1周方向応力と第2スリーブ層の第2周方向応力とを平準化することで、第1及び第2スリーブ層、によってロータ本体の外周部に対して略均等に与圧力を付与することが可能となる。
【0080】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0081】
10…ロータ
12…ロータ本体
14…スリーブ
16…ロータコア
18…永久磁石
22…スリーブ層
121…外周部
221…第1スリーブ層
222…第2スリーブ層
223…第3スリーブ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7