(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】物流システム、物流システム制御方法、物流システム制御プログラム、及び、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B65G1/137 E
(21)【出願番号】P 2023058502
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2022196762
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 恭矢
(72)【発明者】
【氏名】土屋 匠
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-011790(JP,A)
【文献】国際公開第2022/059756(WO,A1)
【文献】特表2015-535787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ所定種類のアイテムを集品可能な複数のピッキングゾーンと、
1以上の集品対象アイテムを指示するピッキングオーダに基づいて、指示された前記集品対象アイテムを集品箱に集品するために、前記複数のピッキングゾーンのうちの前記集品対象アイテムを集品可能ないずれかに前記集品箱を搬送して集品のためのアクセスを行う複数の搬送ロボットと
を備え、
未集品の前記集品対象アイテムの集品のための前記アクセスにおいて、前記複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、前記ピッキングゾーンの数以下の複数の前記搬送ロボットが、同時に前記アクセスを行うことを特徴とする物流システム。
【請求項2】
前記複数のピッキングゾーンがそれぞれ集品可能な所定種類のアイテムは、
前記複数のピッキングゾーンの全てが共通して集品可能な共通種類アイテムと、
前記複数のうちのいずれか一部のピッキングゾーンでのみ集品可能な個別種類アイテムと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の物流システム。
【請求項3】
前記共通種類アイテムは、高頻度で集品されるアイテムとして設定され、前記個別種類アイテムは、低頻度で集品されるアイテムとして設定されることを特徴とする請求項2に記載の物流システム。
【請求項4】
前記アクセスは、事前に設定したスケジュールに従って行われることを特徴とする請求項2または3に記載の物流システム。
【請求項5】
前記スケジュールは、物流システム全体の前記ピッキングオーダによる前記個別種類アイテムを集品可能な各ピッキングゾーンへのアクセス数を参照して決定されることを特徴とする請求項4に記載の物流システム。
【請求項6】
前記スケジュールは、前記複数の各搬送ロボットが担当する前記ピッキングオーダに含まれる前記個別種類アイテムの集品に関す
るピッキング作業の数を参照して決定されることを特徴とする請求項4に記載の物流システム。
【請求項7】
それぞれ所定種類のアイテムを集品可能な複数のピッキングゾーンと、
1以上の集品対象アイテムを指示するピッキングオーダに基づいて、指示された前記集品対象アイテムを集品箱に集品するために、前記複数のピッキングゾーンのうちの前記集品対象アイテムを集品可能ないずれかに前記集品箱を搬送して集品のためのアクセスを行う複数の搬送ロボットと
を備えた物流システムに対して、
未集品の前記集品対象アイテムの集品のための前記アクセスにおいて、前記複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、前記ピッキングゾーンの数以下の複数の前記搬送ロボットが、同時に前記アクセスを行うように制御することを特徴とする物流システム制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
それぞれ所定種類のアイテムを集品可能な複数のピッキングゾーンを規定するピッキングゾーン規定手段と、
1以上の集品対象アイテムを指示するピッキングオーダに基づいて、指示された前記集品対象アイテムを集品箱に集品するために、前記複数のピッキングゾーンのうちの前記集品対象アイテムを集品可能ないずれかに前記集品箱を搬送して集品のためのアクセスを行うように複数の搬送ロボットを制御する第1の制御手段と、
未集品の前記集品対象アイテムの集品のための前記アクセスにおいて、前記複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、前記ピッキングゾーンの数以下の複数の前記搬送ロボットが、同時に前記アクセスを行うように制御する第2の制御手段と
として機能させることを特徴とする物流システム制御プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の物流システム制御プログラムが記憶された記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流システム、物流システム制御方法、物流システム制御プログラムおよび記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送ライン方式(以下「ライン型」)の物流システムでは、バイパスラインを設けない限り、ピッカー(集品作業員)の手持ち時間が発生するが、バイパスラインの新設は、膨大な設置面積や設置コストを要する。この点、搬送ロボットを用いる物流システムでは、ライン型で生じていた手待ち時間が解消でき、通い箱などの無駄が生じず、一時停止や追い越しなどの運用も自在に可能であり、また、システム全体として低コストで実現できる。
【0003】
この種のシステムとしては、集品作業のための集品作業車(搬送ロボットに相当)に商品補充のための商品補充作業車を兼ねさせて、並行処理により、システム全体の作業の効率化を図ったシステム(特許文献1)や、さらには搬送車の発進前に、集品を担当する作業者(=担当するピッキングゾーン)とピッキング(集品)対象の商品(アイテム)との総当たりの組合せのそれぞれの作業時間を計算し、最短の組合せを求めてから発進させるシステム(特許文献2)などが、提案されている。
【0004】
なお、ここで、および以下の説明において「搬送ロボット」とは、例えばいわゆる自立(自律)走行搬送ロボット(Autonomous Mobile Robot )や無人搬送車(Autоmated Guided Vehicle:AGV)等を指し、以下、代表して表現する際には、「AMR」とする。なお、これには、自己位置推定による完全自律走行を行う無軌道(Natural Feature Navigation:NFN)方式のものも含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-128319号公報
【文献】特開2020ー172347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状の搬送ロボットを用いる(以下「AMR型」の)物流システムでは、AMRを使用することによる従来のライン型での欠点の解消にのみ着目していて、「一時停止、追い越しなど運用が自在に可能」とは言っても、あくまで従来のライン型の発想の延長に過ぎず、AMR型の原理的な利点を十分に利用していない。
【0007】
本発明の目的は、物流システムとして、システム構成に大きな変更を加えることなく、比較的廉価且つ簡易な構成を維持したまま、AMR型の原理的な利点を生かして、ピッキング(集品)作業の遂行に際して、作業員の無駄な待機などの所謂手待ち時間を解消する、更なる高速化を図ることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1の態様に係る物流システムは、それぞれ所定種類のアイテムを集品可能な複数のピッキングゾーンと、1以上の集品対象アイテムを指示するピッキングオーダに基づいて、指示された前記集品対象アイテムを集品箱に集品するために、前記複数のピッキングゾーンのうちの前記集品対象アイテムを集品可能ないずれかに前記集品箱を搬送して集品のためのアクセスを行う複数の搬送ロボットと、を備えた物流システムであって、未集品の前記集品対象アイテムの集品のための前記アクセスにおいて、前記複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、前記ピッキングゾーンの数以下の複数の前記搬送ロボットが、同時に前記アクセスを行う。
【0009】
また、この態様のピッキング制御方法では、それぞれ所定種類のアイテムを集品可能な複数のピッキングゾーンと、1以上の集品対象アイテムを指示するピッキングオーダに基づいて、指示された前記集品対象アイテムを集品箱に集品するために、前記複数のピッキングゾーンのうちの前記集品対象アイテムを集品可能ないずれかに前記集品箱を搬送して集品のためのアクセスを行う複数の搬送ロボットと、を備えた物流システムに対して、未集品の前記集品対象アイテムの集品のための前記アクセスにおいて、前記複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、前記ピッキングゾーンの数以下の複数の前記搬送ロボットが、同時に前記アクセスを行うように制御する。
【0010】
また、この態様のプログラムは、上述の物流システムに、上述のピッキング制御方法を実行させる。
【0011】
また、この態様のプログラム記憶媒体は、上述のプログラムを、上述の物流システムにより利用可能に記憶する。
【0012】
前述のように、現状のAMR型の物流システムでは、AMRの使用による従来のライン型での欠点の解消にのみ着目していて、あくまで従来のライン型の発想の延長に過ぎず、AMR型の原理的な利点を十分に利用していない。言い換えると、基本的に「逐次型(シリアル)処理」に捕らわれていて、AMR型なら可能な並列型(パラレル)処理に着目していない。
【0013】
この態様の物流システム若しくはピッキング制御方法では、またはこの態様のプログラム若しくはプログラム記憶媒体によれば、複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、ピッキングゾーンの数以下の複数の搬送ロボットが、同時にアクセスを行う。ここで、「複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件」なので、同時の競合アクセスを回避可能であり、その条件の下で、ピッキングゾーンの数以下の複数の搬送ロボットが、同時にアクセスを行う。
【0014】
すなわち、AMR型なら可能な並列型(パラレル)処理に着目し、同時実行可能なアクセスは全て同時に実行できるので、競合アクセス回避のための待ち状態になることなく、最大の実行速度を得られる。これにより、システム構成に大きな変更を加えることなく、比較的廉価且つ簡易な構成を維持したまま、AMR型の原理的な利点を生かして、ピッキング(集品)作業の遂行に際して、更なる高速化を図ることが可能になる。
【0015】
第2の態様に係る物流システムとして、第1の態様において、前記複数のピッキングゾーンがそれぞれ集品可能な所定種類のアイテムは、前記複数のピッキングゾーンの全てが共通して集品可能な共通種類アイテムと、前記複数のうちのいずれか一部のピッキングゾーンでのみ集品可能な個別種類アイテムとを含むようにしてもよい。
【0016】
全てが共通種類アイテムであれば、ピッキングゾーンの数以下の複数の搬送ロボットの間で競合アクセスが生じることはない。一方、個別種類アイテムを設定すれば、同じピッキングゾーンの数の場合、全てが共通種類アイテムの場合より、多品種を扱うことが可能になる。この物流システムでは、競合アクセスが必須にならない条件の下で、ピッキングゾーンの数以下の複数の搬送ロボットが、同時にアクセスを行うことにより、高速化を図ると共に、個別種類アイテムを設定することで、多品種を扱うことが可能になる。
【0017】
第3の態様に係る物流システムとして、第2の態様において、前記共通種類アイテムは、高頻度で集品されるアイテムとして設定され、前記個別種類アイテムは、低頻度で集品されるアイテムとして設定されるようにしてもよい。
【0018】
この場合、低頻度で集品されるアイテムは、個別種類アイテムとして、特定のピッキングゾーンでのみ集品可能であり、高頻度で集品されるアイテムは、共通種類アイテムとして、多くのピッキングゾーンで集品可能となる。これにより、多品種を扱うことが可能になると同時に、ピッキングゾーンを有効活用しつつ、ピッキング(集品)作業の実効効率を維持可能になる。
【0019】
第4の態様に係る物流システムとして、第2の態様または第3の態様において、前記アクセスは、事前に設定したスケジュールに従って行われるようにしてもよい。
【0020】
個別種類アイテムについては、同一の個別種類アイテムを集品可能なピーキングゾーンの数より、その個別種類アイテムの集品指示を含むピッキングオーダを担当する搬送ロボットの数が多い場合に、競合アクセスが生じ得るが、アクセスするタイミングをずらすことができれば、同時の競合アクセスは回避可能であり、これは、「競合アクセスが必須にならない条件」を満たす。
【0021】
このため、システム全体でのアクセスのスケジュールを事前に決定する事前スケジューリング(事前アクセススケジューリング)を行い、そのスケジュールに従ってアクセス制御(ピッキング制御)を実行することにより、高確率で競合アクセスを回避して、同時並行処理の比率を向上させ、更なる高速化を図ることが可能になる。
【0022】
第5の態様に係る物流システムとして、第4の態様において、前記スケジュールは、物流システム全体の前記ピッキングオーダによる前記個別種類アイテムを集品可能な各ピッキングゾーンへのアクセス数を参照して決定されるようにしてもよい。
【0023】
システム全体でのピッキング(集品)作業の稼働時間は、単一のピッキングゾーンへのアクセス数の最大値で決定づけられるので、アクセス数が最大のピッキングゾーンへのアクセスのスケジューリングが、スケジュール上の最重要課題となる。このため、各ピッキングゾーンへのアクセス数を参照することにより、適切なスケジュールを決定できる。
【0024】
第6の態様に係る物流システムとして、第4の態様において、前記スケジュールは、前記複数の各搬送ロボットが担当する前記ピッキングオーダに含まれる前記個別種類アイテムの集品に関する前記ピッキング作業の数を参照して決定されるようにしてもよい。
【0025】
システム全体でのピッキング(集品)作業の稼働時間は、各搬送ロボットが担当するピッキングオーダに含まれるピッキング作業数によっても長期化する可能性があるので、出来る限り、ピッキング作業数が多いピッキングオーダを担当する搬送ロボットのアクセスを優先することが好ましい。
【0026】
ただし、いかにピッキング作業数が多くても、共通種類アイテムの集品であれば、どのピッキングゾーンにおいても、まとめて集品出来るので、あくまでも個別種類アイテムの集品に関するピッキング作業数に着目する必要がある。また、その集品対象の個別種類アイテムが、アクセス数が多いピッキングゾーンでのみ集品可能である場合、競合アクセスの発生可能性が高くなるので、そのピッキングゾーンへのアクセスの優先設定も需要な検討事項となる。
【0027】
すなわち、各ピッキングオーダに含まれるピッキング作業数と、その集品対象の個別種類アイテムの、アクセス数が多いピッキングゾーンへのアクセスの有無等を参照してアクセスの優先順位等を設定することにより、適切なスケジュールを決定できる。
【0028】
第7の態様に係る物流システム制御方法は、それぞれ所定種類のアイテムを集品可能な複数のピッキングゾーンと、1以上の集品対象アイテムを指示するピッキングオーダに基づいて、指示された前記集品対象アイテムを集品箱に集品するために、前記複数のピッキングゾーンのうちの前記集品対象アイテムを集品可能ないずれかに前記集品箱を搬送して集品のためのアクセスを行う複数の搬送ロボットとを備えた物流システムに対して、未集品の前記集品対象アイテムの集品のための前記アクセスにおいて、前記複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、前記ピッキングゾーンの数以下の複数の前記搬送ロボットが、同時に前記アクセスを行うように制御することを特徴とする。
【0029】
第8の態様に係る物流システム制御プログラムは、コンピュータに、それぞれ所定種類のアイテムを集品可能な複数のピッキングゾーンを規定するピッキングゾーン規定手段と、1以上の集品対象アイテムを指示するピッキングオーダに基づいて、指示された前記集品対象アイテムを集品箱に集品するために、前記複数のピッキングゾーンのうちの前記集品対象アイテムを集品可能ないずれかに前記集品箱を搬送して集品のためのアクセスを行うように複数の搬送ロボットを制御する第1の制御手段と、未集品の前記集品対象アイテムの集品のための前記アクセスにおいて、前記複数のピッキングゾーンの全てに対して、競合アクセスが必須にならない条件を満たした場合、前記ピッキングゾーンの数以下の複数の前記搬送ロボットが、同時に前記アクセスを行うように制御する第2の制御手段として機能させることを特徴とする。
【0030】
第9の態様として、第8の態様に記載の物流システム制御プログラムが記憶された記憶媒体を特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、物流システムとして、システム構成に大きな変更を加えることなく、比較的廉価且つ簡易な構成を維持したまま、AMR型の原理的な利点を生かして、ピッキング(集品)作業の遂行に際して、更なる高速化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態による物流システムの構成図である。
【
図2】ピッキングエリアの構成を簡易化して示すピッキングエリアの模式図である。
【
図3】ピッキングエリア内のピッキング作業エリアを構成する複数のピッキングゾーンを簡略化して説明する際の、簡略化の内容を示す説明図である。
【
図4】ピッキングエリア内の複数のピッキングゾーンについて、
図3の簡略化を適用して示す説明図である。
【
図5】実施形態の物流システムの概略制御フローを簡略化して含む機能ブロック図である。
【
図6】ピッキングゾーンに準備されたアイテムの種類に対して、どのオーダを担当する搬送ロボットが、どのような順番でアクセスするかを示すための、スケジュール表のひな形の例を示す説明図である。
【
図7】各オーダでピッキングするアイテムの内訳の例を示す説明図である。
【
図8】
図7の例のオーダによる各ピッキングゾーンに対するアクセスのスケジュールを決定した結果を示す説明図である。
【
図9】全オーダについての、
図8と同様の説明図である。
【
図10】
図9のスケジュールの決定方法の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の概念は、本発明の概念の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。しかしながら、この発明の概念は、多くの異なる形態で具体化でき、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供される。同様の番号は、説明全体で同様の要素を指す。
【0034】
以下の実施するための形態では、ピッキングを主に例にとって説明している場合があるが、本技術思想はピッキングに対してのみ適用されるべきものとして限定的に解釈すべきではない。すなわち、本発明は入荷、保管、補充、集品、ピッキング、アソート、搬送、出荷を含む物流システム全体に対して適用可能なものである。
【0035】
以下、[1.システム構成例]、[2.課題解決ポイントの例示]、[3.その他の適用・応用例]について、順に説明する。
【0036】
[1.システム構成例]
図1は、本明細書に提示された実施形態による物流システムの構成図である。同図に示すように、物流システム1は、原料の入荷(入庫)から集配物の出荷(出庫)に向けて利用される順に、入荷(入庫)エリア10A、ピッキングエリア20A、出荷準備エリア40A、出荷待ちエリア50A、出荷(出庫)エリア30Aを備えている。
【0037】
入荷(入庫)エリア10Aは、原料の入荷(入庫)品を積載して入荷バースに駐車された貨物トラック等からの入荷品を荷捌きする環境温度10℃設定の入荷荷捌きエリア(図示符号無し)と、その原料を種類別に環境温度5℃設定の原料冷蔵庫(図示符号無し)および環境温度-25℃設定の原料冷凍庫(図示符号無し)に分けてケースで保管するケース自動倉庫設備(図示符号無し)と、を備え、原料ケース自動補充設備(図示符号無し)を介して、ピッキングエリア20Aに対して、ピッキング(集品)対象品を供給する。
【0038】
逆に、出荷側において、出荷(出庫)エリア30Aは、配送対象の出荷(出庫)品を貨物トラックに積載するための環境温度10℃設定の出荷バース310を有し、その前段階を担当する出荷待ちエリア50Aは、出荷品となる製品等の種類別に環境温度5℃設定の製品冷蔵庫(図示符号無し)および環境温度-25℃設定の製品冷凍庫(図示符号無し)に分けて出荷を待つように構成(制御)されている。
【0039】
さらにその前段階を担当する出荷準備エリア40Aは、さらにその前段階を担当するピッキングエリア20Aにおいてピッキング(集品)されて収容箱に収められ、搬送ロボット走行エリア60を介して搬送ロボットRにより搬送された収容箱、あるいはパーキングエリア601に一時駐車して待機していた搬送ロボットRにより搬送された収容箱、を受領し、出荷に合わせて全ての出荷対象品を揃え、荷造りやラベル貼付などの出荷前最終準備を実施するように構成(制御)されている。
【0040】
ここで、上述のパーキングエリア601には、図示上側と下側のそれぞれにグリッド状に並んだ40台分の駐車スペースがあり、それぞれに搬送ロボットRが待機中に電力供給を受け得る充電設備が備えられている。なお、駐車スペース毎ではなく、待機中の搬送ロボットRが適宜アクセスできるように、パーキングエリア601内の所定個所に充電設備を備えても良い。また、これらの場合の充電方式としては、有線式や接触式でも可能ではあるが、手間や安全性(メンテナンスフリー)の観点から非接触式(ワイヤレス)が好ましい。
【0041】
図2は、ピッキングエリア20Aの構成を、理解の容易化のため模式的に簡易化して示すピッキングエリアの模式図である。
図1も参照しつつ
図2に示すように、ピッキングエリア20Aは、ピッキング(集品)対象品を供給するための原料ケース自動補充設備(図示符号無し)と、ピッキング(フロー)ラック200と、複数の作業台(作業テーブル)Tと、その手前側で搬送ロボットRが自由軌道(平面走行自在)で走行するための搬送ロボット走行エリア60と、を備えている。
【0042】
ピッキング(フロー)ラック200は、原料ケース自動補充設備側(背面側)からピックアップ用の間口側(前面側)にかけて下がっていて、いわゆるフローラック(flow rack)構成のピッキングラックであり、環境温度-15℃に設定されている。このピッキング(フロー)ラック200の間口から集品可能な各種アイテムを、集品を担当する複数の作業員Mが、それぞれが担当する作業台(作業テーブル)Tにおいて、それぞれが担当する収容箱Bにピッキング(集品)を行う。
【0043】
ここで、アイテムとは、入荷した入荷品をそれぞれ1種類以上含む作業対象の単位を指し、前述のケース自動倉庫設備ではケース単位で作業処理の対象単位とされ、前述の原料ケース自動補充設備を介して、そのアイテム毎に対応して定められたピッキング(フロー)ラック200の間口に対して、ケース単位、すなわちアイテム単位で供給(補充)される。
【0044】
図3は、ピッキングエリア20A内で、ピッキング作業エリア210を構成する複数のピッキングゾーンを、理解の容易化のため簡略化して説明する際の、簡略化の内容を示す説明図である。
【0045】
図2で前述のピッキング(フロー)ラック200は、実際には、各作業員が担当する作業台Tと対応して区分けされていて、その区分けされた作業領域であるピッキングゾーンZにおいて、
図3に示すように、各担当の作業員Mによって、アイテム対応の所定の間口から集品対象の各アイテムが取り出される。
【0046】
以下の説明では、主に、
図3(a)内左側に示す、アイテム毎に間口に区分けされたピッキング(フロー)ラック200を、先入れ先出し(FIFO)のフローラック構成の奥行方向(アイテムの取出し順に区分けされた方向)を水平断面のイメージで簡略化して、同図内右側のように示す。
【0047】
また、
図1の詳細部分を拡大すると判明するが、
図3(b)内左側に示すように、実際の作業台Tは、作業員Mに対して左右対称の2台の作業台で構成され、作業箱Bを搭載した搬送ロボットRは、左右両端に到着(アクセス)して、左右それぞれアクセスした作業台Tに作業箱Bを供給し、それらの作業箱Bが作業台Tの作動で、作業員Mがいる中央部に運ばれ、作業員Mは、中央部に運ばれてきた作業箱Bに対して、必要な集品作業を行う。
【0048】
しかし、以下の説明では、主に、同図内右側に示すように、作業台Tを1台に簡略化する。すなわち、収容箱を搭載(搬送)して来た搬送ロボットRは、図示右端に到着(アクセス)して作業台Tに収容箱を供給し、その収容箱が作業台Tの作動で作業員Mがいる中央部に運ばれ、作業員Mは、中央部に運ばれてきた収容箱に対して、必要な集品作業を行う。目的の集品を終了した収容箱は、図示左端にアクセスしている搬送ロボットRに引き渡され、次のアクセス先まで搬送される。
【0049】
図4は、ピッキングエリア20A内の複数のピッキングゾーンZ1、Z2について、
図3の簡略化を適用して示す説明図である。同図に示すように、ピッキングゾーンZ1では、ピッキング(フロー)ラック201の間口から集品可能な各種アイテムについて、担当の作業員Mが、作業台Tにおいて、担当する収容箱に集品を行う。同様に、ピッキングゾーンZ2では、ピッキング(フロー)ラック202の間口から集品可能な各種アイテムについて、担当の作業員Mが、作業台Tにおいて、担当する収容箱に集品を行う。なお、前述の
図2の作業員Mと作業台Tも、この簡略化されたイメージで示してある。
【0050】
図5は、実施形態の物流システム1の概略制御フローを簡略化して含む機能ブロック図である。同図において、太幅2重線構成の点線矢印は、物(アイテム等)の流れ方向を示し、単線の点線矢印は、制御の流れ方向を示す。
【0051】
同図に示すように、物流システム1は、集品の対象となる入荷品を複数種類入荷する入荷部10(入荷(入庫)エリア10Aに対応)と、集品を行うための集品部20(ピッキングエリア20Aに対応)と、配送のために出荷対象となる出荷品を出荷する出荷部30(出荷準備エリア40A+出荷待ちエリア50A+出荷(出庫)エリア30Aに対応)と、入荷部10、集品部20および出荷部30を制御する制御部Cと、を備えている。
【0052】
制御部Cは、上記の入荷部10、集品部20および出荷部30に対応して、入荷部10を制御する入荷制御(入荷制御工程)10C、集品部20を制御する集品制御(集品制御工程)20C、および、出荷部30を制御する出荷制御(出荷制御工程)30Cを行う。
【0053】
ここで、および以下の説明において、「~部を制御する」とは、「~部をデータベース管理下とする」と言うことを指し、「~部において作業・処理対象となるアイテムのそれぞれについて、そのアイテムのID(以下「アイテムID」)に関連付けて、そのアイテムの各時点での状況を把握して更新し(データベースに記憶して状況に合わせて更新し)、後工程のための参照データとすること」を最小要件とする。ここでの「状況」には、各アイテムがどの工程まで作業・処理対象となったか等の情報が含まれる。この場合、この最小要件を満足すれば、少なくとも「参照データを得る」と言う点において、「自然法則の利用」に該当することになる。
【0054】
すなわち、後工程における制御のための参照データを得ることが最小要件なので、実際の作業・処理対象となるアイテムのそれぞれについて、その作業・処理を例えばプログラム制御により全自動で実施する場合はもちろんのこと、その作業・処理の一部または全部を作業員等の人手で実施したとしても、(自然法則に基づいて)参照データを得てシステム全体が作動するので、システム全体として、「自然法則の利用」に該当することになる。
【0055】
なお、上記のアイテムIDは、例えば入荷時点でデータベースに登録され、あるいは事前に登録済みの情報を示すものであり、例えば入荷品に付される所定の番号の他に、品種名を含む種類、数量、産地、消費期限、賞味期限等の特性を示す。このデータベースへの登録は、例えば入荷品に付されたバーコードの読み取り、入荷品の箱に内蔵されたIC内の情報の読み取り、その他、各種タグ、各種貼付、付帯品からの情報取得によって行われる。
【0056】
図5の説明に戻り、同図に示すように、入荷部10は、入荷品を入荷する作業を行う入荷作業部11(入荷荷捌きエリアに対応)と、入荷した入荷品をそれぞれ1種類以上含むアイテムを複数種類保管するアイテム保管部12(ケース自動倉庫設備に対応)と、集品部20での集品に必要になる複数種類のアイテムを、集品部20に補充するアイテム補充部13(原料ケース自動補充設備に対応)と、を有する。
【0057】
これに対して、制御部Cでは、入荷部10を制御する入荷制御(入荷制御工程)10Cとして、入荷作業部11(入荷荷捌きエリアに対応)を制御する入荷作業制御(入荷作業制御工程)11Cと、アイテム保管部12(ケース自動倉庫設備に対応)を制御するアイテム保管制御(アイテム保管制御工程)12Cと、アイテム補充部13(原料ケース自動補充設備に対応)を制御するアイテム補充制御(アイテム補充制御工程)13Cと、を行う。
【0058】
集品部20は、アイテム補充部13により補充されたアイテムを集品のために一時保管する集品準備部21(ピッキング(フロー)ラック200に対応)と、集品担当の作業員が集品準備部21のアイテムを収容箱に集品する集品作業を行って、出荷品となるアイテムを集品した収容箱の準備を進める集品作業部22(ピッキング作業エリア210に対応)と、集品作業に供する収容箱を搬送するために、搬送ロボットRが自由軌道(平面走行自在)で走行し、出荷部30のパーキングエリア601(
図1参照)まで延びて存在(延在)する搬送走行部23(搬送ロボット走行エリア60に対応)と、を有する。
【0059】
これに対して、制御部Cでは、集品部20を制御する集品制御(集品制御工程)20Cとして、集品準備部21(ピッキング(フロー)ラック200に対応)を制御する集品準備制御(集品準備制御工程)21Cと、集品作業部22(ピッキング作業エリア210に対応)を制御する集品作業制御(集品作業制御工程)22Cと、搬送走行部23(搬送ロボット走行エリア60に対応)を制御する搬送走行制御(搬送走行制御工程)23Cと、を行う。
【0060】
出荷部30は、集品部20で集品された収容箱を受領して、配送対象となる出荷品となる出荷態様に纏める出荷準備部31(出荷準備エリア40Aに対応)と、出荷態様の出荷品に含まれるアイテムの種類別特性に合わせて保管する出荷品保管部32(出荷待ちエリア50Aに対応)と、配送等のために出荷品を揃える作業を行う出荷作業部33(出荷(出庫)エリア30Aに対応)と、を有する。
【0061】
これに対して、制御部Cでは、出荷部30を制御する出荷制御(出荷制御工程)30Cとして、出荷準備部31(出荷準備エリア40Aに対応)を制御する出荷準備制御(出荷準備制御工程)31Cと、出荷品保管部32(出荷待ちエリア50Aに対応)を制御する出荷品保管制御(出荷品保管制御工程)32Cと、出荷作業部33(出荷(出庫)エリア30Aに対応)を制御する出荷作業制御(出荷作業制御工程)33Cと、を行う。
【0062】
[2.課題解決ポイントの例示]
なお、以下の説明において、対応図面上では見易さを重視して使用しているオーダNo.の丸囲み数字は、以下の文章内では、丸1は[01]、丸2は[02]、丸3は[03]、・・・のように、半角[]内の半角数字を用いて説明する(
図7~
図19等)。一方、時系列の該当するステップNo.については、図内でも文章内でも、1stを(1)、2ndを(2)、3rdを(3)、・・・のように、半角()内の半角数字を用いて説明する(
図10~
図19等)。
【0063】
図6は、ピッキングゾーンNo.とそこに準備されたアイテムの種類に対して、どのオーダを担当する搬送ロボットが、どのような順番でアクセスするかを示すための、スケジュール表のひな形の例を示す説明図である。
【0064】
ここでは、一例として、8つのピッキングゾーンNo.1~8に共通する集品対象の共通種類アイテムとして、A、B、Cの3種が準備(用意)され、個別種類アイテムとして、順に、D、E、F、G,H、K,L、Mが準備(用意)されている。
【0065】
図7は、オーダNo.と、各オーダでピッキング(集品)するアイテムの内訳の例を示す説明図である。この例では、本来は集品される頻度が低い(低頻度の)アイテムであるはずの個別種類アイテムFが、オーダNo.[01]~[10]のうちの8つのオーダで、共通種類アイテムA、B、C並みにアクセス(集品)される例になっている。
【0066】
この例では、例えばオーダNo.[01]では、共通種類の3つのアイテムA、B、Cの他に、個別種類の5つのアイテムD、E、F,G、Kを加えた、計8つのアイテムを集品する。
【0067】
各オーダによる各ピッキングゾーンに対するアクセスのスケジュールの決め方についての詳細は、後述するが、
図8は、
図7の例のオーダNo.[01]によるピッキング(集品)による各ピッキングゾーンNo.1~8に対するアクセスの順を示す説明図であり、
図9は、同様にして、オーダNo.[01]~[10]について、まとめて示した説明図である。
【0068】
図8のオーダNo.[01]の例で説明すると、最初に(1stステップ(1)で)、ピッキングゾーンNo.3をアクセスして、アイテムA、B、C、Fをピッキング(集品)し、次に(2ndステップ(2)で)、ピッキングゾーンNo.2をアクセスして、アイテムEを集品し、同様に続いて、3rdステップ(3)で、ピッキングゾーンNo.6をアクセスして、アイテムKを、4thステップ(4)で、ピッキングゾーンNo.4をアクセスして、アイテムGを、5thステップ(5)で、ピッキングゾーンNo.1をアクセスして、アイテムDを集品して、集品する8つのアイテムが揃ったので、6thステップ(6)では、出荷準備待ち状態となる(後述の
図19のオーダNo.[01]を参照)。
【0069】
図9は、
図8のオーダNo.[01]の例と同様にして、オーダNo.[01]~[10]のアクセスのスケジュールを決定した結果を示す説明図であり、このスケジュールの決定方法の例を、
図10~
図19を参照して、以下に説明する。
【0070】
まず、8つの個別種類アイテムのうち、最もアクセス数が大きい(最大値の)8になっている個別種類アイテムFへのアクセス順を設定する。なお、最大アクセス数のアイテムが複数ある場合には、オーダの早い順や単にアイテムの名称順など、スケジュールの設定ルールを予め決めておけば良い。
【0071】
図10に示すように、オーダNo.[01]~[10]のうち、集品(アクセス)する個別種類アイテム数は、オーダNo.[03]の6が最大値だが、オーダNo.[03]では、アイテムFをアクセスしないので、個別種類アイテムFをアクセスし、個別種類アイテム数が5のオーダNo.[01]、[04]、[09]、[10]の中で、個別種類アイテムFへのアクセス順を設定する。
【0072】
オーダNo.[01]、[04]、[09]、[10]のうちのオーダNo.[04]と[09]は、共通種類アイテム数を含めたアクセス数が7なので、アクセス数が8のオーダNo.[01]と[10]とを比較して、オーダ順に、オーダNo.[01]をアクセス順(1)、オーダNo.[10]をアクセス順(2)に決定する。なお、この例のようにアクセス数が同じ場合のアクセス順についても、スケジュールの設定ルールを予め決めておけば良い。
【0073】
以下、同様にして、
図11に示すように、個別種類アイテムFへのアクセス順を、個別種類アイテム数が5のオーダNo.[04]、[09]のアクセス順を、オーダ順にアクセス順(3)、(4)とし、個別種類アイテム数が4のオーダNo.[02]、[05]、[07]、[08]のアクセス順を、オーダ順にアクセス順(5)、(6)、(7)、(8)として、個別種類アイテムFへのアクセス順を全て決定する。
【0074】
次に、残りの7つの個別種類アイテムのうち、アクセス数が7の個別種類アイテムEと個別種類アイテムGについても、どちらを先に決定するかは、スケジュールの設定ルールを予め決めておけば良いが、ここでは、単にアイテムの名称順として、個別種類アイテムEについて決定する。
【0075】
図10~
図11で上述の個別種類アイテムFへのアクセス順と同様にして、個別種類アイテムEについてアクセス順を決めていくと、オーダNo.[03]、[01]、[06]、[10]、[04]、[09]、[07]のアクセス順となるが、
図12に示すように、オーダNo.[07]では、7thステップ(7)で、個別種類アイテムFをアクセスすることになっているので、重複する。
【0076】
このような場合、例えば個別種類アイテムFへのアクセス順を、オーダNo.[08]と交換してアクセス順(8)としても良いが、ここでは、個別種類アイテムEについてのアクセス順が直前の(6)であるオーダNo.[09]と交換して、
図13に示すように、オーダNo.[07]をアクセス順(6)、オーダNo.[09]をアクセス順(7)とする。
【0077】
次に、残りの6つの個別種類アイテムのうち、アクセス数が7の個別種類アイテムGについても、
図14に示すように、アクセス順を決定する。
【0078】
次に、残りの5つの個別種類アイテムのうち、アクセス数が6の個別種類アイテムHについても、
図15に示すように、アクセス順を決定する。
【0079】
次に、残りの4つの個別種類アイテムのうち、アクセス数が6の個別種類アイテムKについても、
図16に示すように、アクセス順を決定する。
【0080】
次に、残りの3つの個別種類アイテムのうち、アクセス数が5の個別種類アイテムMについても、
図17に示すように、アクセス順を決定する。
【0081】
次に、残りの2つの個別種類アイテムの、アクセス数が4の個別種類アイテムDや個別種類アイテムLについても、
図18に示すように、アクセス順を決定する。
【0082】
そして、3つの共通種類アイテムについては、各オーダでの最初の個別種類アイテムへのアクセスのときに、その個別種類アイテムと一緒にアクセスするので、
図19に示すように、オーダNo.[02]とオーダNo.[07]では、2ndステップ(2)で、その他のオーダでは、1stステップ(1)でのアクセスとなる。
【0083】
上述のように、本実施形態では、競合アクセスが生じないように、アクセスをスケジューリングして、ピッキングゾーンの数以下の複数の搬送ロボットが、同時にアクセスを行う。また、アクセスが集中しないので、手待ち時間などを解消する。
【0084】
すなわち、AMR型なら可能な並列型(パラレル)処理に着目し、同時実行可能なアクセスは全て同時に実行できるので、競合アクセス回避のための待ち状態になることなく、最大の実行速度を得られる。これにより、システム構成に大きな変更を加えることなく、比較的廉価且つ簡易な構成を維持したまま、AMR型の原理的な利点を生かして、ピッキング(集品)作業の遂行に際して、更なる高速化を図ることが可能になる。
【0085】
また、各ピッキングゾーンに固有の個別種類アイテムが設定されているので、同じピッキングゾーン数であれば、全てが共通種類アイテムの場合より、多品種を扱うことが可能になる。すなわち、この物流システムでは、競合アクセスが生じない条件の下で、ピッキングゾーン数以下の複数の搬送ロボットが、同時にアクセスを行うことにより、高速化を図ると共に、個別種類アイテムを設定することで、多品種を扱うことができる。
【0086】
また、低頻度で集品されるアイテムを個別種類アイテムとして、特定のピッキングゾーンでのみ集品可能とし、高頻度で集品されるアイテムを共通種類アイテムとして、多くのピッキングゾーンで集品可能とすることにより、多品種を扱うことが可能になると同時に、ピッキングゾーンを有効活用しつつ、ピッキング(集品)作業の実効効率を維持可能になる。
【0087】
また、システム全体でのアクセスのスケジュールを事前に決定する事前スケジューリング(事前アクセススケジューリング)を行い、そのスケジュールに従ってアクセス制御(ピッキング制御)を実行することにより、高確率で競合アクセスを回避して、同時並行処理の比率を向上させ、更なる高速化を図ることが可能になる。
【0088】
この場合、システム全体でのピッキング(集品)作業の稼働時間は、単一のピッキングゾーンへのアクセス数の最大値で決定づけられるので、各ピッキングゾーンへのアクセス数を参照することにより、適切なスケジュールを決定できる。
【0089】
また、システム全体でのピッキング(集品)作業の稼働時間は、各搬送ロボットが担当するピッキングオーダに含まれるピッキング作業数によっても長期化する可能性があるので、出来る限り、ピッキング作業数が多いピッキングオーダを担当する搬送ロボットのアクセスを優先し、さらには、集品対象の個別種類アイテムが、アクセス数が多いピッキングゾーンでのみ集品可能である場合、競合アクセスの発生可能性が高くなるので、そのピッキングゾーンへのアクセスを優先してスケジュールすることにより、適切なスケジュールを決定でき、高確率で競合アクセスを回避して、同時並行処理の比率を向上させ、更なる高速化を図ることが可能になる。
【0090】
[3.その他の適用・応用例]
なお。上述の例では、各ピッキングゾーンに個別種類アイテムが1種ずつであったが、複数種類であっても良い。例えば、ピッキングゾーンNo.1の個別種類アイテムとして、個別種類アイテムD(
図6参照)の他に、個別種類アイテムNが含まれていても良い。
【0091】
この場合、例えば、個別種類アイテムDへのアクセス数が4(
図7参照)で、個別種類アイテムNへのアクセス数が3であれば、合計7のアクセス数として扱うことができる。ただし、1つのオーダで個別種類アイテムDと個別種類アイテムNにアクセス(両方を集品)するオーダがあれば、1アクセスで同時に集品できるので、そのアクセス数を1として扱うこともできる。
【0092】
上述のように、本発明によれば、物流システムとして、システム構成に大きな変更を加えることなく、比較的廉価且つ簡易な構成を維持したまま、AMR型の原理的な利点を生かして、ピッキング(集品)作業の遂行に際して、更なる高速化を図ることが可能になる。
【0093】
本発明の概念は、主に、いくつかの実施形態を参照して説明してきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上述のもの以外の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の各態様に係る物流システムおよび各種制御は、入荷・集品・出荷・搬送の対象となるアイテムをデータベース管理するシステムについてのものであり、その意味で自然法則を利用しており、プログラム制御でハードウェアを作動させる点で工業的価値を有し、また、搬送の行為(役務)やアイテム自体は商取引の対象である点で経済的価値を有しており、これらの技術分野において、幅広い産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0095】
1 物流システム
10 入荷部
10A 入荷(入庫)エリア
10C 入荷制御(工程)
11 入荷作業部
11C 入荷作業制御(工程)
12 アイテム保管部
12C アイテム保管制御(工程)
13 アイテム補充部
13C アイテム補充制御(工程)
20 集品部
20A ピッキングエリア
20C 集品制御(工程)
21 集品準備部
21C 集品準備制御(工程)
22 集品作業部
22C 集品作業制御(工程)
23 搬送走行部
23C 搬送走行制御(工程)
30 出荷部
30A 出荷(出庫)エリア
30C 出荷制御(工程)
31 出荷準備部
31C 出荷準備制御(工程)
32 出荷品保管部
32C 出荷品保管制御(工程)
33 出荷作業部
33C 出荷作業制御(工程)
40A 出荷準備エリア
50A 出荷待ちエリア
60 搬送ロボット走行エリア
200、201、202 ピッキング(フロー)ラック
210 ピッキング作業エリア
310 出荷バース
601 パーキングエリア
B 収容箱
C 制御部
M 作業員
R 搬送ロボット
T 作業台(作業テーブル)
Z、Z1、Z2 ピッキングゾーン