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特許7601939小型ヘッドアップディスプレイとその導波路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】小型ヘッドアップディスプレイとその導波路
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G02B27/01
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073888
(22)【出願日】2023-04-27
(65)【公開番号】P2023166991
(43)【公開日】2023-11-22
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】2206791.2
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519027213
【氏名又は名称】エンヴィシクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ラケシュ マハラジャン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー コール
(72)【発明者】
【氏名】ネイル コリンズ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー スミ―トン
(72)【発明者】
【氏名】セレドニア クラウチック
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-152643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0116996(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0294101(US,A1)
【文献】特表2021-530735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0328794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ用の瞳拡大器であって、前記ヘッドアップディスプレイは、第1の次元および第2の次元を有するアイボックスを有し、前記瞳拡大器は、
前記第1の次元における瞳を複製するように配置された一対の第1の導波路であって、前記一対の第1の導波路のそれぞれは、細長く、入力端が出力端よりも狭くなるように伸張方向に伸長すると共に先が細くなるものを備え、
前記一対の第1の導波路の入力端が互いに近接し、前記一対の第1の導波路の出力端が互いに遠ざかるように配置され
前記一対の第1の導波路は、平面的な構成で配置され、前記第2の次元における前記平面的な構成のサイズを縮小するために前記第1の次元の方向に対して傾斜している、瞳拡大器。
【請求項2】
前記一対の第1の導波路は、前記第1の次元の反対方向に瞳拡大を提供するように配置されている、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項3】
前記一対の第1の導波路のそれぞれは、同じ長さを有する、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項4】
前記平面的な構成は、前記一対の第1の導波路によって形成される瞳レプリカの伝搬平面内にある、請求項に記載の瞳拡大器。
【請求項5】
前記一対の第1の導波路は、同じ方向に先が細くなる構成で配置されている、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項6】
前記一対の第1の導波路の入力端は、前記第1の次元において部分的に重なり、任意で、前記第1の次元における前記重なりの量が、前記第1の次元におけるレプリカのサイズよりも小さい、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項7】
前記一対の第1の導波路の前記入力端が前記第2の次元でずらして配置されており、当該配置は、前記一対の第1の導波路の前記出力端が第2の次元で部分的に重なるものである、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項8】
前記一対の第1の導波路の入力ポートは、前記第2の次元において空間的に分離されている、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項9】
前記アイボックスの前記第2の次元において瞳を複製するように構成された第2の導波路をさらに備え、前記一対の第1の導波路が前記第2の導波路に光学的に結合されている、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項10】
前記一対の第1の導波路の出力光を前記第2の導波路に光学的に結合するように配置された光学素子と、任意で平面/折り返しミラーをさらに備える、請求項に記載の瞳拡大器。
【請求項11】
前記一対の第1の導波路が、前記第2の導波路の平面に平行な、平面的な構成で配置される、請求項に記載の瞳拡大器。
【請求項12】
前記第2の導波路への入力ポートが、部分透過性・部分反射性の表面と、任意で段状の部分透過性・部分反射性の表面などの部分透過性・部分反射性素子を備える、請求項に記載の瞳拡大器。
【請求項13】
各第1の導波路が、第1の実質的な反射面と第2の部分反射透過性の表面とを備え、それらの間で入力光の導波を提供するように配置された一対の平行な反射面を備える、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項14】
一の第1の導波路の前記入力端は第1の表示システム用の入力ポートを備え、他の第1の導波路の入力端は第2の表示システム用の入力ポートを備える、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項15】
前記一対の第1の導波路の少なくとも一方への入力光は、発散光、例えば発散光線束を含む回折ライトフィールドを含む、請求項1に記載の瞳拡大器。
【請求項16】
請求項1から1のいずれか一項に記載の瞳拡大器を備えたヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、瞳の拡大又は複製に関し、特に、発散光線束からなる回折ライトフィールドに対するものである。より具体的には、本開示は、導波路瞳拡大器を含むディスプレイシステム、および導波路を用いた瞳拡大方法に関する。いくつかの実施形態は、2次元の瞳拡大に関する。いくつかの実施形態は、画像形成ユニットおよびヘッドアップディスプレイ、例えば自動車用のヘッドアップディスプレイ(HUD)に関する。
【背景技術】
【0002】
物体から散乱した光は、振幅と位相の両方の情報を含む。この振幅および位相の情報は、たとえば、周知の干渉技法によって感光板上で捕捉されて、干渉縞を含むホログラフィック記録、すなわち「ホログラム」を形成することができる。ホログラムは、元の物体を表す2次元または3次元のホログラフィック復元、すなわち再生画像を形成するために、適切な光による照射によって復元されてもよい。
【0003】
コンピュータ生成ホログラフィは、干渉のプロセスを数値的にシミュレートすることができる。コンピュータ生成ホログラムは、フレネル変換またはフーリエ変換などの数学的変換に基づく技法によって計算されてもよい。これらのタイプのホログラムは、フレネル/フーリエ変換ホログラム、または単にフレネル/フーリエホログラムと呼ばれる場合がある。フーリエホログラムは、物体のフーリエ領域/平面表現または物体の周波数領域/平面表現と見なされてもよい。コンピュータ生成ホログラムはまた、たとえば、コヒーレント光線追跡または点群法によって計算されてもよい。
【0004】
コンピュータ生成ホログラムは、入射光の振幅および/または位相を変調するように構成された空間光変調器上で符号化されてもよい。光変調は、たとえば、電気的にアドレス可能な液晶、光学的にアドレス可能な液晶、またはマイクロミラーを使用して実現されてもよい。
【0005】
空間光変調器は、セルまたは素子と呼ばれる場合もある複数の個別にアドレス可能なピクセルを含んでもよい。光変調方式は、バイナリ、マルチレベル、または連続であってもよい。あるいは、デバイスは、連続(すなわち、ピクセルから構成されていない)であってよく、したがって、光変調はデバイスにわたって連続であってもよい。空間光変調器は、変調された光が反射して出力されることを意味する反射型であってもよい。空間光変調器は、同様に、変調された光が透過して出力されることを意味する透過型であってもよい。
【0006】
ホログラフィックプロジェクタは、ここに記載された技術を使用して提供されてもよい。そのようなプロジェクタは、たとえば、ヘッドアップディスプレイ「HUD」に応用されている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様は、添付の独立請求項において定義される。
【0008】
広義に、本開示は画像投影に関する。本開示は、画像投影方法およびディスプレイ装置を構成する画像投影装置に関する。また、本開示は、イメージプロジェクタと視認システムとを備え、イメージプロジェクタがディスプレイ装置からの光を視認システムへ投影又は中継する投影システムに関する。本開示は、単眼式および両眼式の視認システムに等しく適用される。視認システムは、観察者の片目または両目から構成されてもよい。視認システムは、光強度を有する光学素子(例えば、人間の目のレンズ)と、視野面(例えば、人間の目の網膜)を備える。プロジェクタは「ライトエンジン」と称されてもよい。ディスプレイ装置と、そのディスプレイ装置を用いて形成される(または知覚される)画像は、互いに空間的に分離されている。画像は、ディスプレイ平面上に形成され、又は観察者によって知覚される。いくつかの実施形態において、画像は虚像であり、ディスプレイ平面は虚像平面と称されてもよい。他の実施形態において、画像はホログラフィック復元によって形成された実画像であり、画像は視野面へ投影または中継される。画像は、ディスプレイ装置に表示された回折パターン(ホログラムなど)に光を照射することで形成される。
【0009】
ディスプレイ装置は、画素を含んで構成される。ディスプレイの画素は、光を回折させる回折パターンまたは構造を表示してもよい。回折光は、ディスプレイ装置から空間的に離れた平面で画像を形成してもよい。光学的に周知のように、最大回折角の大きさは、画素の大きさや光の波長などの他の要因によって決定される。
【0010】
実施形態において、ディスプレイ装置は、液晶オンシリコン(「LCOS」)空間光変調器(SLM)などの空間光変調器である。光は、LCOSからカメラや目などの視認体/システムに向かって、回折角の範囲(例えば、ゼロから最大回折角まで)を伝搬する。いくつかの実施形態において、利用可能な回折角度の範囲をLCOSの従来の最大回折角度を超えて拡大するために、拡大技術を用いてもよい。
【0011】
いくつかの実施例において、画像(表示されたホログラムから形成される)が目に伝搬される。例えば、ディスプレイ装置と観察者の間の自由空間またはスクリーンなどの受光面上に形成された中間ホログラフィック復元/画像を、観察者に伝搬してもよい。
【0012】
他の実施例において、ホログラム(の光)自体が目に伝搬される。例えば、ホログラムの空間変調光(ホログラフィック復元、すなわち画像にまだ完全に変換されていない)-非公式には、ホログラムで/により「符号化」されていると言える-は、観察者の目に直接伝搬される。実像又は虚像は、観察者により知覚され得る。これらの実施形態において、ディスプレイ装置と観察者との間に形成される中間ホログラフィック復元/画像は存在しない。これらの実施形態において、目のレンズがホログラムから画像への変換または変換を行うことについて述べられることもある。投影システム、またはライトエンジンは、観察者が実質的にディスプレイ装置を直視するように構成される場合がある。
【0013】
本明細書において「複素ライトフィールド」である「ライトフィールド」を参照する。「ライトフィールド」という用語は、単に、少なくとも2つの直交する空間方向、例えばxとyに有限の大きさを持つ光のパターンを示す。本明細書において「複素」という用語は、単に、ライトフィールドの各点における光が振幅値および位相値によって定義されてもよく、したがって、複素数または一組の値によって表されてもよいことを示すために使用される。ホログラム計算のために、複素ライトフィールドは複素数の2次元配列であってもよく、複素数はライトフィールド内の複数の離散的な位置における光強度と位相を定義する。
【0014】
よく知られた光学の原理に従って、ディスプレイ装置から伝搬する光の角度の範囲は、目または他の視認体/システムによって見ることができ、ディスプレイ装置と視認体との間の距離によって変化する。例えば1メートルの視距離では、LCOSからのわずかな角度の範囲のみが、目の瞳を通過して、ある目の位置で網膜に結像するように伝搬する。ディスプレイ装置から伝搬され、眼の瞳を通過して、ある目の位置で網膜に結像するように伝搬することができた光線の角度の範囲は、観察者に「見える」画像の部分を決定する。言い換えれば、視野面上の任意の1点(例えば、アイモーションボックスなどの視野窓内の任意の1つの目の位置)から、画像の全ての部分が見えるわけではない。
【0015】
いくつかの実施形態において、観察者によって知覚される画像は、ディスプレイ装置の上流に現れる虚像である-すなわち、観察者は、画像がディスプレイ装置よりも自分から遠くにあるように知覚する。したがって、概念的には、観察者は、例えば直径1cmの非常に小さく、例えば1mのように比較的大きな距離に位置する、「ディスプレイ装置サイズの窓」を通して虚像を見ていると考えることができる。また、ユーザは目の瞳を通してディスプレイサイズの窓を見ることになるが、その瞳も非常に小さい場合がある。そのため、視野が狭くなり、見える所定の角度の範囲が、その時々の目の位置に大きく依存することになる。
【0016】
瞳拡大器は、ディスプレイ装置から伝搬され、結像するように目の瞳を通過して伝搬することができた光線の角度の範囲をどのように拡大するかという問題に対処する。ディスプレイ装置は一般に(相対的に)小さく、投影距離は(相対的に)大きい。いくつかの実施形態において、投影距離は、ディスプレイ装置の入射瞳及び/又は開口の直径又は幅(すなわち、画素の配列の大きさ)よりも少なくとも1桁-例えば、少なくとも2桁-大きい。本開示の実施形態は、画像そのものではなく、画像のホログラムを人間の目に伝搬させる構成に関するものである。言い換えれば、観察者が受け取る光は、映像のホログラムに従って変調される。しかし、本開示の他の実施形態は、ホログラムではなく画像が人間の目に伝播される構成-例えば、スクリーン上(あるいは自由空間上)に形成されたホログラフィック復元や「再生画像」の光を人間の目に伝播させる、いわゆる間接視に関連してもよい。
【0017】
瞳拡大器を使用すると、視域(すなわち、ユーザーのアイボックス)を水平方向に広げ、これによりユーザが画像を見ることを可能にしつつ、眼球をある程度動かすことが可能になる。当業者であれば理解できるように、イメージングシステムにおいて、視域(ユーザのアイボックス)とは、観察者の目が画像を知覚することができる領域である。本開示は、非無限虚像距離-すなわち近接場光虚像に関するものである。
【0018】
従来、2次元瞳拡大器は、面からの出力光が、アイボックスやアイモーションボックス等の視野窓を形成する、それぞれ対向する一対の反射面を用いて形成された1次元又は1次元より大きい次元の光導波路を備えている。ディスプレイ装置から受光した光(例えば、LCOSからの空間変調光)は、少なくとも1つの次元で視野(または視域)を増加させるように、導波路又は各導波路によって複製される。特に、導波路は入射光波面の振幅を分割することで余分な光線や「レプリカ」を発生させるため、視野窓を拡大することができる。
【0019】
ディスプレイ装置は、5cm未満または2cm未満など、10cm未満であってもよい第1の寸法を有する活性領域または表示領域を有してもよい。ディスプレイ装置と視認システムの間の伝搬距離は、1.5mより大きいまたは2mより大きいなど、1mより大きいものであってもよい。導波路内の光伝搬距離は、最大1.5mまたは最大1mなど、最大2mとしてもよい。本方法は、15ms未満または10ms未満など、20ms未満で画像を受信し、十分な品質の対応するホログラムを決定することができる場合がある。
【0020】
いくつかの実施形態において本開示に従った回折ライトフィールドまたはホログラフィックライトフィールドの例によってのみ説明される-ホログラムは、複数のチャネルに光を送るように構成され、各チャネルは、画像の異なる部分(すなわちサブエリア)に対応する。ホログラムは、空間光変調器などのディスプレイ装置に表示されるなどして表現されてもよい。適切なディスプレイ装置に表示されると、ホログラムは、視認システムによって画像に変換可能な光を空間的に変調することができる。回折構造によって形成されたチャネルは、単にホログラムによって画像情報が符号化された光のチャネルであることを反映して、本明細書では「ホログラムチャネル」と呼ばれる。各チャネルの光は、画像領域や空間領域ではなく、ホログラム領域にあるといえる。いくつかの実施形態において、ホログラムは、フーリエまたはフーリエ変換ホログラムであり、したがって、ホログラム領域は、フーリエ領域または周波数領域である。ホログラムは、フレネルホログラムやフレネル変換ホログラムであってもよい。ホログラムは、単にホログラムから復元できる画像が有限の大きさを持ち、複数の画像サブエリアに任意に分割できることを反映して、複数のホログラムチャネルに光を送るものとして本明細書で説明されており、各ホログラムチャネルは各画像サブエリアに対応している。重要なことは、本実施例のホログラムは、照明されたときに画像コンテンツをどのように分配するかに特徴があることである。具体的には、ホログラムは、画像コンテンツを角度で分割する。すなわち、画像上の各点は、ホログラムが2次元であることから、光が照射された際にホログラムにより形成される空間変調光における固有の光線角度-少なくとも固有の角度の組に関連付けられる。誤解のないように言っておくと、このホログラムの挙動は従来のものとは異なる。この特殊なホログラムが形成する空間変調光は、光が照射されると、複数のホログラムチャネルに任意に分割され、各ホログラムチャネルは、光線角度の範囲(2次元)で定義されてもよい。空間的に変調された光で考えられる任意のホログラムチャネル(すなわち、光線角度のサブレンジ)は、画像のそれぞれの部分またはサブエリアに関連付けられることが、上記から理解されるであろう。すなわち、画像の一部またはサブエリアを復元するのに必要な全ての情報は、画像のホログラムから形成される空間変調光の角度のサブレンジ内に含まれている。空間的に変調された光を全体として観察した場合、必ずしも複数の離散的な光チャネルが存在することを示すものではない。しかし、いくつかの配置においては、ホログラムが計算されるターゲット画像の領域を意図的に空白または空(すなわち、画像コンテンツが存在しない)にすることにより、複数の空間的に分離したホログラムチャネルが形成される。
【0021】
しかしながら、ホログラムは依然として識別され得る。例えば、ホログラムによって形成された空間変調光の連続した部分またはサブエリアのみが復元される場合、画像のサブエリアのみが見えるはずである。空間的に変調された光の異なる連続した部分またはサブエリアを復元すると、画像の異なるサブエリアが見えるはずである。このタイプのホログラムの更なる固有の特徴は、大きさが異なる可能性はあるものの、任意のホログラムチャネルの断面形状が、少なくとも、ホログラムが計算された正しい面において、入射瞳の形状に実質的に対応する(すなわち、実質的に同じ)ことである。それぞれの光チャネル/ホログラムチャネルは、ホログラムから異なる角度または角度の範囲で伝搬する。これらは、このタイプのホログラムを特徴付ける、または識別する方法の一例であるが、他の方法を使用してもよい。要約すると、本明細書に開示されるホログラムは、画像コンテンツがホログラムによって符号化された光の中でどのように分布しているかによって特徴付けられ、識別可能である。繰り返すが、いかなる誤解もないように言っておくと、本明細書において、光を導くか、または画像を複数のホログラムチャネルに角度的に分割するように構成されたホログラムへの言及は、例示としてのみなされ、本開示は、いかなるタイプのホログラフィックライトフィールド、さらにはいかなるタイプの回折ライトフィールドの瞳拡大に同様に適用される。
【0022】
このシステムは、小型かつ合理化された物理的形態で提供されることができる。これにより、当該システムを、スペースが限られ不動産的価値が高い環境を含む、幅広い実環境への応用に対応させることが可能になる。例えば、車両や自動車用のHUDなどのヘッドアップディスプレイ(HUD)に実装することができる。
【0023】
本開示に従って、瞳拡大は、発散光線束を含みうる、回折光に対して提供される。回折光は、ホログラムなどの回折構造を表示するように配置された空間光変調器(SLM)などの画素化ディスプレイ装置などのディスプレイ装置によって出力されてもよい。回折ライトフィールドは、「光錐」によって定義されてもよい。したがって、回折ライトフィールドの大きさ(2次元平面上で定義される)は、対応する回折構造(すなわち、ディスプレイ装置)からの伝搬距離とともに増加する。
【0024】
空間光変調器は、ホログラムを表示するように配置されてもよい。回折光または発散光は、画像の光またはホログラフィック復元の光であることとは対照的に、ホログラムで/によって符号化された光を含んでもよい。このような実施形態において、したがって、観察者に届く光が、画像そのものではなく、画像のホログラムに従って空間的に変調されるということを伝えるために、瞳拡大器が、ホログラムを複製する、またはホログラムの少なくとも1つのレプリカを形成するということができる。すなわち、回折ライトフィールドが観察者に伝搬される。
【0025】
いくつかの実施形態において、2つの1次元導波路瞳拡大器が提供され、各1次元導波路瞳拡大器は、空間光変調器の射出瞳(又は射出瞳の光)の複数のレプリカ又はコピーを形成することによって、システムの射出瞳の大きさを効果的に増大させるように配置される。射出瞳は、システムによって光が出力される物理的な領域であると理解されてもよい。また、各導波路瞳拡大器は、システムの射出瞳の大きさを拡大するように配置されていると言うことができる。また、各導波路瞳拡大器は、システムが出力する光を見る/受け取るために、観察者の目が位置するアイボックスの大きさを拡大/増大させるように配置されていると言える。
【0026】
ヘッドアップディスプレイのための瞳拡大器が提供される。ヘッドアップディスプレイは、第1の次元(例えば、水平またはx寸法)および第2の次元(例えば、垂直またはy寸法)を有するアイボックスを有する。瞳拡大器は、それぞれアイボックスの第1の次元における瞳を複製するように配置された一対の第1の導波路を備える。各導波路は細長く、その第1/入力端がその第2/出力端よりも狭くなるように、長さ方向に進むにつれて先が細くなっている。導波路は、その第1/入力端が実質的に互いに近接し、それぞれの第2/出力端が互いに実質的に遠ざかるように配置される。
【0027】
一対の第1の導波路の各第1の導波路は、一対の反射面を含んでいてもよい。一対の反射面は、第1の表面を備えてもよい。第1の表面の少なくとも一部は、実質的に反射性であってもよい。第1の表面は、入力端に、または入力端に向かって、入力ポートを備えてもよい。一対の反射面は、第2の表面を備えてもよい。第2の表面の少なくとも一部は、部分的に反射透過性を有していてもよい。第2の表面は、出力ポートを備えてもよい。第2の表面の部分的に反射透過性の部分は、出力ポートを形成または備えてもよい。一対の表面は、入力光が入力ポートで受け取られるように配置されてもよい。一対の表面は、その間に入力光の導波路を提供するように配置されてもよい。第2の表面は、入力光のレプリカが第2の表面によって、例えば部分的に反射透過性の部分によって出射されるように配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の表面は、第2の表面に対して平行であってもよい。言い換えれば、その間において入力光の導波性を提供するように配置される一対の表面は、平行であってもよい。これは、有利には、第2の表面によって出射される入力光のレプリカが、互いに同じ角度で出射されることを意味し得る。
【0028】
言い換えれば、それぞれの第1の導波路は、その間において入力光の導波性を提供するように配置された、第1の実質的に反射性の表面および第2の部分的に反射透過性の表面を備える一対の反射面を備えてもよい。一対の反射面は、平行であってもよい。
【0029】
導波路瞳拡大器又はレプリケータへの入力光は、本明細書に記載されるように、例えば発散光線束を含む回折ライトフィールドを備えてもよい。結果として、ライトフィールドの大きさは、導波路を通る光の伝搬経路に沿った伝搬距離とともに増加する。光線束が発散することにより、伝搬距離に応じてライトフィールドが拡大する、または断面積が増加すると言うことができる。さらに、第1/入力端から第2/出力端まで導波路の長さに沿って伝搬距離が長くなるため、「跳ね返り」(すなわち、入射ビーム/瞳の「レプリカ」)ごとに、ライトフィールドのサイズも大きくなる。[導波路の長さに沿った伝搬距離に応じて大きくなる角度に対応して、ライトフィールドの断面積が増大すると言うことができる。]このようなライトフィールドのサイズ拡大に対応するために、本発明者らは、第1の次元における瞳拡大を提供するため単一の導波路を使用する場合、導波路の各平行反射面の幅(例えば、第2の次元の導波路「高さ」に対応)は、導波路の長さに沿って、入力端から出力端まで増加すべきであることを見出した。これにより、導波路の長さに沿ったすべての位置に形成されたレプリカが、2次元の視野要件(例えば、5度)を満たすことが保証される。しかし、これは、第2の次元の導波路のサイズ/高さ、ひいては2次元瞳拡大器の全体的なサイズ/高さを大幅に増大させることにつながり、その結果、配置が嵩張りすぎ、したがって、設置の要件として、あまりにも多くのスペースを占有することにつながるおそれがある。
【0030】
本明細書では、第1の次元における瞳拡大を提供するための一対の第1の導波路が開示される。導波路は細長く、その長さ-瞳の拡大または複製の方向に広く対応するに沿い、各導波路の第1/入力端がその第2/出力端より狭くなるように先が細くなっている(傾斜している)。導波路は、それらの第1/入力端が互いに実質的に近接し、それらの第2/出力端が互いに実質的に遠ざかるように配置される。第1の次元の瞳拡大は、単一の導波路の代わりに一対の第1の導波路によって提供されるので、各導波路の長さは、第1の次元で同じ瞳拡大を提供する単一の導波路の長さよりも短い。したがって、第2の次元の瞳拡大器のサイズ/高さを減らして、より小型化した配置を提供することができる。
【0031】
上述したように、各第1の導波路は、入力光が導波される一対の表面を備える。これらの表面は、導波面と呼ばれてもよい。導波面のそれぞれの幅は、それぞれの導波路の長さに沿い増大してもよい。上述したように、長さは、入力端から出力端までと定義してもよい。幅は、長さに対して実質的に垂直な次元であってもよい。第1の導波路の傾斜をもたらすのは、導波面の増加する幅であってよい。特に、(上記のように)一対の(導波)面が平行である場合、第1の導波路が傾斜した形状を有することをもたらすのは、導波面の増加する幅であってもよい。一対の(導波)面の幅は、入力端から出力端に至るまでに少なくとも2倍になってもよい。一対の(導波)面によって導波された入力光は、入力光が入力端から出力端に導波される際に、一対の面の各々に複数回入射してもよい。入力光は、伝搬距離とともに増加するライトフィールドを有する発散入力光であってもよい。一対の第1の導波路は、有利には、一対の(導波)面の増加する幅が、ライトフィールドのサイズが第1の導波路の長さにわたってそれぞれの(導波)面の幅を超えないことを保証するように配置されてもよい。言い換えれば、一対の(導波)面の傾斜形状/幅は、発散する入力光の増加するライトフィールドを補償することができる。
【0032】
各第1の導波路は、傾斜したブロックまたはスラブの形態であってもよい。傾斜したブロックまたはスラブは、一対の対向する平行な表面と一対の対向する非平行な表面を備えてもよい。一対の非平行な表面のそれぞれは、一対の平行な表面の表面に対して直交してもよい。一対の平行な表面の間の間隔は、第1の導波路の長さに沿って一定であってもよい。一対の非平行な表面の間の間隔は、入力ポートから出力ポートまでのそれぞれの第1の導波路の長さに沿って増大してもよい。一対の非平行な表面は、側壁であってもよい。各第1の導波路の一対の対向する側壁は、非導波性であってもよい(言い換えれば、一対の対向する側壁は、入力光をその間に導波するようには配置されていなくてもよい)。これは、一対の(導波)面の幅が、入力端から出力端まで、それぞれの第1の導波路の長さに沿って増加する結果であってもよい。対向する側壁のそれぞれの幅及び/又は長さは、実質的に一定であってもよい。
【0033】
実施形態では、一対の第1の導波路の導波路は、第1の次元の反対方向(例えば、それぞれ+xおよび-x)に瞳拡大を提供するように配置される。第1の導波路を通る光の伝搬経路は、第1の次元の反対方向であると言ってもよい。したがって、第1の導波路は、第1の次元の反対方向に瞳のレプリカ(すなわち、瞳の拡大または複製)を形成する。
【0034】
上述したように、ヘッドアップディスプレイは、アイボックスを有する。これは、単一のアイボックスであってよい。アイボックスは、ユーザの一対の眼を受けるためのものであってもよい。一対の第1の導波路はそれぞれ、アイボックスの第1の次元において瞳を複製するように配置される。言い換えれば、一対の第1の導波路はそれぞれ、アイボックスの第1の次元における(単一の)アイボックスの拡張に寄与するように配置される。一対の第1の導波路は、複数の入力光のレプリカを出射するように配置されてもよい。複数のレプリカは、第1のサブセットと第2のサブセットを備えてもよい。複数のレプリカの第1のサブセットは、一対の第1の導波路の第1の導波路によって出射されてもよい。複数のレプリカの第2のサブセットは、一対の第1の導波路の第2の第1の導波路によって出射されてもよい。一対の第1の導波路は、複数のレプリカのそれぞれがアイボックスに寄与するように配置されてもよい。
【0035】
(単一の)アイボックスは、実質的に連続したアイボックスであってもよい。本明細書で使用されるように、(単一の)アイボックスが実質的に連続的であることは、(ユーザの目の瞳などの)視認システムが、空間内に定義された平面の(単一の)連続部分内の実質的に任意の位置に配置されて、入力光の1以上のレプリカを受光し得ることを意味する。例えば、レプリカの第1のサブセットは、アイボックスの第1の(例えば左の)部分に寄与することがあり、レプリカの第2のサブセットは、アイボックスの第2の(例えば右の)部分に寄与してもよい。アイボックスの第1の部分と第2の部分とは、互いに接していてもよいし、隣接していてもよい。アイボックスの第1の部分と第2の部分とは、互いに隣接していてもよい。言い換えれば、第1の導波路はいずれも、ヘッドアップディスプレイの(単一の、連続した)アイボックスを第1の次元で拡大するように配置される。(単一の)アイボックスは、ユーザの両目を含むように配置されてもよい。
【0036】
各々が単一のアイボックスの(第1の次元における)拡大に寄与する一対の第1の導波路を設けることは、従来にないものである。本明細書で説明するように、本発明者らは、この配置により、比較的小型な瞳拡大器を維持しながら、比較的大きく拡大されたアイボックスを作成することができることを発見した。一対の第1の導波路がそれぞれ単一のアイボックスの拡大に寄与することは、異なる出力光をユーザの異なる目に向けるヘッドマウント型の装置とは異なる。このようなヘッドマウントデバイスは、ユーザの左目に光を出力するように配置された第1の導波路と、ユーザの右目に光を出力するように配置された第2の導波路を備えてもよい。これは、2つの導波路から放出される光によって形成される単一のアイボックスを生じさせるものではない。その代わりに、左目用と右目用の2つの空間的に分離された視野窓が形成されてもよい。第1の導波路の配置は、ヘッドマウントデバイスで作成される(または必要とされる)よりも比較的はるかに大きな(単一の)アイボックスを実現することができる。例えば、比較的大きなアイボックスは、ユーザ(運転者)の頭部がアイボックス内に維持されている間に、瞳拡大器に対してユーザの頭部の実質的な動きを許容することができる。これは、装置とユーザの頭部との間に実質的な相対的な動作がないヘッドマウント装置では必要のないものである。
【0037】
いくつかの実施形態では、一対の第1の導波路の各導波路は、実質的に同じ長さである。このような配置では、各導波路は、第1の次元において必要な数の約半分のレプリカを形成するように配置されてもよい。結果として、各第1の導波路の長さは、第1の次元に同じ数のレプリカを形成するように配置された単一の導波路の長さの約半分となる。いくつかの実施例では、一対の第1の導波路の導波路は、実質的に対称な構成で配置される。これにより、一の第1の導波路の向きを他の第1の導波路に対して反転させつつ、一対の第1の導波路の両方の導波路に対して同じ部品を使用することができる。いくつかの実施形態において、対称的な構成は、V字型の構成であってもよい。
【0038】
実施形態において、一対の第1の導波路の導波路は、実質的に平面的な構成で配置される。平面的な構成は、さらに、より小型の配置を提供することを容易にする。実施例では、実質的に平面的な構成は、一対の第1の導波路によって形成される瞳レプリカが伝搬する平面内にある。
【0039】
いくつかの実施形態において、一対の第1の導波路の導波路は、同じ方向に傾斜した構成で配置される。
【0040】
いくつかの配置では、一対の第1の導波路の第1/入力端は、第1の次元で部分的に重なる。したがって、一方の第1の導波路によって出力されるレプリカの配列は、他方の第1の導波路によって出力されるレプリカの配列と第1の次元で部分的に重なり合う。本発明者らは、第1の導波路によって形成されるレプリカの配列の1つ以上のレプリカが第1の次元で部分的に重なるように、第1の導波路の間に部分的な重なりを提供することが、改善された視聴体験につながることを見出した。
【0041】
一対の第1の導波路を備える瞳拡大器が提供される。各第1の導波路は、瞳を第1の次元で複製するように配置される。第1の導波路は、一の第1の導波路によって形成されるレプリカの配列が、他の第1の導波路によって形成されるレプリカの配列と第1の次元において部分的に重なるように配置される。
【0042】
いくつかの実施例では、重なりの量は、第1の次元における単一のレプリカのサイズよりも小さい。これらの配置は、本明細書で説明するように、角度コンテンツ又はチャネルを有するホログラムを含む回折ライトフィールドを拡大又は複製するために第1のレプリケータが配置される実施例において、有利に使用され得る。そのような実施例では、一対の第1の導波路の導波路は、異なる入力光(例えば、異なる範囲の角度コンテンツまたはチャネルを伝達する)を受け取ってもよい。特に、本発明者らは、一対の第1の導波路を使用して、第1の次元(すなわち、瞳拡大の次元)で部分的に重なるレプリカのそれぞれの配列を形成することも、視聴体験を改善することを予想外に発見した。
【0043】
他の実施例では、重なりの量は、第1の次元における単一のレプリカのサイズ以上である。
【0044】
いくつかの実施形態では、一対の第1の導波路の第1/入力端は、第2の次元でオフセットされる。これにより、第1/入力端が第1の次元で重なるとき、一の第1の導波路の第1/入力端が、他の第1の導波路の第1/入力端に入力される光を影で遮らない/妨害しないことを保証する。第1の導波路のそれぞれの入力ポートは、第2の次元において空間的に分離されている、または高さ方向に積み重ねられていると言うことができる。
【0045】
実施形態では、一対の第1の導波路は、アイボックスの第2の次元で瞳を拡大するように配置された第2の導波路に光学的に結合される。例えば、平面/折り返しミラーは、一対の第1の導波路によって出力されたレプリカを第2の導波路に光学的に結合することができる。
【0046】
いくつかの配置では、一対の第1の導波路の実質的に平面的な構成は、第2の導波路の平面に実質的に平行である。例えば、第2の導波路の平面は、第2の導波路の主要面(すなわち、その平行な反射面のうちの1つの面)に対応してもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、第2の導波路への入力ポートは、透過反射性の表面または表面コーティングなどの透過反射性素子を備える。任意で、透過反射性素子の反射率は、第2の次元で勾配を付けてもよい。第2の導波路に部分的に反射性/部分的に透過性の入力ポートを用いることで、入力ポートに入射する発散光線束の全ての光線(発散ライトフィールドの重複するレプリカを含む)を効率的にインカップリングしてトラップすることができる。したがって、このタイプの入力ポートは、1以上の重複するレプリカが形成されるように、第1の次元で重複する一対の第1の導波路を備える実施形態と相乗効果を有する。さらに、発散入力ライトフィールドは、単一の第1の導波路の場合よりも短い距離を、一対の第1の導波路の各導波路に沿って伝播するので、それに応じて第2の導波路への必要な入力ポートは(第2の次元、すなわち、第2の導波路の瞳拡大の次元において)短くなる。第2の導波路に短い透過反射性の入力ポートを使用することで、それに伴う光効率の低下を抑えることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2の次元における実質的に平面的な構成のサイズ/高さを低減するために、一対の第1の導波路の導波路が傾斜される。これにより、第2の導波路へのインカップリング効率をさらに改善することができる。当業者が理解するように、形成されアイボックスに伝播されるレプリカの対応する傾きは、回折ライトフィールドの画像コンテンツに補正を適用することによって、または設置場所に設置されたときのディスプレイシステムの向きに反対の傾斜を適用することによって補償することができる。
【0049】
実施形態では、各第1の導波路は、その間に導波路を設けるために、実質的に反射性である第1の表面と、部分的に反射透過性である第2の/対向面を備える。
【0050】
いくつかの実施形態では、一の第1の導波路の第1端は、第1のディスプレイシステム用の入力ポートを備え、他の第1の導波路の第1端は、第2のディスプレイシステム用の入力ポートを備える。いくつかの実施例では、一対の第1の導波路は、左目用の第1のディスプレイシステムおよび右目用の第2のディスプレイシステムを含む双眼ディスプレイシステムで使用されてもよい。いくつかの配置では、一の第1の導波路は、第1のディスプレイシステムの射出瞳を第1の次元で拡大するように配置され、他の第1の導波路は、第2のディスプレイシステムの射出瞳を第1の次元で拡大するように配置される。
【0051】
本開示において、「レプリカ」という用語は、単に、複雑な複素ライトフィールドが複数の異なる光路に沿って向けられるように、空間変調光が分割されることを反映するために使用される。「レプリカ」という言葉は、瞳拡大器による部分的な反射透過などの複製イベント後の複素ライトフィールドの発生または実例のそれぞれを指すのに使用される。それぞれのレプリカは異なる光路を進む。本開示のいくつかの実施形態は、画像ではなくホログラムで符号化される光、すなわち、画像自体ではなく画像のホログラムで空間変調される光の伝搬に関する。ホログラフィの当業者であれば、ホログラムで符号化された光の伝搬に伴う複素ライトフィールドが、伝搬距離に応じて変化することを理解できるであろう。本明細書における「レプリカ」という用語の使用は、伝搬距離とは無関係であり、したがって、複製イベントに関連する光の2つの分岐または経路は、分岐の長さが異なっていても、複素ライトフィールドがそれぞれの経路に沿って異なる展開をするように、互いの「レプリカ」と呼ばれる。すなわち、2つの複素ライトフィールドは、異なる伝搬距離に関連していても、同じ複製イベントまたは一連の複製イベントから生じたものであることを条件として、本開示に従って「レプリカ」とみなされる。
【0052】
本開示に係る「回折ライトフィールド」は、回折によって形成されるライトフィールドである。回折ライトフィールドは、対応する回折パターンを照射することにより形成されてもよい。本開示によれば、回折パターンの一例はホログラムであり、回折ライトフィールドの一例はホログラフィックライトフィールド又は画像のホログラフィック復元を形成するライトフィールドである。ホログラフィックライトフィールドは、再生平面上に画像の(ホログラフィック)復元を形成する。ホログラムから再生平面に伝搬するホログラフィックライトフィールドは、ホログラムで符号化された光又はホログラム領域の光を含むと言うことができる。回折ライトフィールドは、回折構造の最小の特徴サイズと(回折ライトフィールドの)光の波長で決まる回折角で特徴付けられる。本開示によれば、「回折ライトフィールド」は、対応する回折構造から空間的に分離した平面上に復元を形成するライトフィールドであるとも言うことができる。回折構造から観察者に回折ライトフィールドを伝搬させるための光学系が本明細書に開示される。回折ライトフィールドは、画像を形成してもよい。
【0053】
「ホログラム」という用語は、物体に関する振幅情報もしくは位相情報、またはそれらの何らかの組合せを含む記録を指すために使用される。「ホログラフィック復元」という用語は、ホログラムを照射することによって形成される物体の光学的復元を指すために使用される。ここに開示されたシステムは、ホログラフィック復元が実像であり、ホログラムから空間的に分離されているため、「ホログラフィックプロジェクタ」として説明される。「再生フィールド」という用語は、ホログラフィック復元が形成され、完全に焦点が合う2次元領域を指すために使用される。ホログラムを画素を含む空間光変調器に表示する場合、再生フィールドは複数の回折次数で繰り返され、各回折次数は0次再生フィールドのレプリカである。0次再生フィールドは、最も明るい再生フィールドであるため、一般的に優先再生フィールドまたは第一再生フィールドに対応する。特に断りのない限り、「再生フィールド」という用語は、0次再生平面を指すと解釈されるべきである。「再生平面」という用語は、全ての再生フィールドを含む空間上の平面を指すために使用される。「画像」、「再生画像」、および「画像領域」という用語は、ホログラフィック復元を形成する光によって照射される再生フィールドのエリアを指す。いくつかの実施形態では、「画像」は、「画像スポット」、または便宜上「画像ピクセル」と呼ばれる場合がある個別のスポットを含んでもよい。
【0054】
「符号化」、「書込み」、または「アドレス指定」という用語は、SLMの複数のピクセルに、各ピクセルの変調レベルをそれぞれ決定するそれぞれの複数の制御値を提供するプロセスを記載するために使用される。SLMのピクセルは、複数の制御値の受信に応答して光変調分布を「表示」するように構成されると言える。したがって、SLMはホログラムを「表示」すると共に、ホログラムは光変調値又はレベルの配列であると考えることができる。
【0055】
許容可能な品質のホログラフィック復元は、元の物体のフーリエ変換に関連する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成され得ることが分かった。そのようなホログラフィック記録は、位相のみのホログラムと呼ばれる場合がある。実施形態は位相のみのホログラムに関するが、本開示は、振幅のみのホログラフィにも同様に適用可能である。
【0056】
本開示は、元の物体のフーリエ変換に関連する振幅情報および位相情報を使用してホログラフィック復元を形成することにも同様に適用可能である。いくつかの実施形態において、これは、元の物体に関連する振幅情報と位相情報の両方を含む、いわゆる完全複素ホログラムを使用する複素変調によって実現される。そのようなホログラムは、ホログラムの各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)が振幅成分および位相成分を有するので、完全複素ホログラムと呼ばれる場合がある。各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)は、振幅成分と位相成分の両方を有する複素数として表されてもよい。いくつかの実施形態において、完全複素コンピュータ生成ホログラムが計算される。
【0057】
「位相遅延」の略記として、コンピュータ生成ホログラムまたは空間光変調器のピクセルの位相値、位相成分、位相情報、または単に位相に対して参照が行われてもよい。すなわち、記載された任意の位相値は、実際には、そのピクセルによって提供される位相遅延の量を表す(たとえば、0~2πの範囲の)数である。たとえば、π/2の位相値を有すると記載された空間光変調器のピクセルは、π/2ラジアンだけ受信光の位相を変化させる。いくつかの実施形態において、空間光変調器の各ピクセルは、複数の可能な変調値(たとえば、位相遅延値)のうちの1つで動作可能である。「グレーレベル」という用語は、複数の利用可能な変調レベルを指すために使用されてもよい。たとえば、「グレーレベル」という用語は、異なる位相レベルが異なるグレーの濃淡を提供しない場合でも、位相のみの変調器における複数の利用可能な位相レベルを指すために、便宜上使用されてもよい。「グレーレベル」という用語はまた、複素変調器において複数の利用可能な複素変調レベルを指すために、便宜上使用されてもよい。
【0058】
したがって、ホログラムは、グレーレベルの配列、すなわち、位相遅延値や複素変調値の配列などの光変調値の配列を含む。また、ホログラムは、空間光変調器に表示し、空間光変調器の画素ピッチと同等の波長、一般的にはそれ以下の波長の光を照射すると回折を起こすパターンであるため、回折パターンであると考えられる。本明細書では、ホログラムを、レンズや回折格子として機能する回折パターンなど、他の回折パターンと組み合わせることに言及している。例えば、再生フィールドを再生平面に移動させるために回折格子として機能する回折パターンをホログラムと組み合わせたり、ホログラフィック復元を近接場光の再生平面に集中させるためにレンズとして機能する回折パターンをホログラムに組み合わせたりしてもよい。
【0059】
様々な実施形態および実施形態のグループは、以下の詳細な説明において別々に開示されてもよいが、任意の実施形態または実施形態のグループの任意の特徴は、任意の実施形態または実施形態のグループの任意の他の特徴または特徴の組合せと組み合わされてもよい。すなわち、本開示に開示された特徴のすべての可能な組合せおよび順列が想定される。
【0060】
本開示において、装置の構造ユニットに適用される場合の「実質的に」という用語は、構造ユニットが、その製造に用いられる方法として技術的に許容し得る範囲内のもので製造されることを意味すると解釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
特定の実施形態は、以下の図を参照して、ほんの一例として記載される。
図1】スクリーン上にホログラフィック復元を生成する反射型SLMを示す概略図である。
図2】V1~V8の8つの画像領域/構成要素からなる投影用の画像を示す図である。
図3】複数の離散的な領域に光を導くLCOS上に表示されたホログラムを示す図である。
図4図2および図3に示すように計算されたホログラムを表示するディスプレイ装置を含むシステムを示す図である。
図5A】光ビームを2次元的に拡大するために配置された2つのレプリケータを含むシステムの透視図である。
図5B】光ビームを2次元的に拡大するために配置された2つのレプリケータを含む他のシステムの透視図である。
図6】発散入力光を第1の次元に拡大するための細長い導波路レプリケータの側面図である。
図7】実施形態に係る、発散入力光を第1の次元で拡大するために配置された一対の細長い導波路を含むレプリケータの側面図である。
図8】他の実施形態に係る、発散入力光を第1の次元で拡大するために配置された一対の細長い導波路を含むレプリケータの側面図である。
図9図8のレプリケータの上面図である。
図10A図8の実施形態の一対の細長い導波路のそれぞれの導波路によって形成されるレプリカの一次元配列の例を示す図である。
図10B図10Aの配列の重なるレプリカを示す図である。
図11図8の実施形態の一対の細長い導波路の出力端の透視図であり、出力光が第2の次元で拡張するために第2の導波路に結合され得る方法を示す図である。
図12図11の第2の導波路によって形成されるレプリカの2次元配列を、ディスプレイシステムのアイボックスで見た例を示す図である。
【0062】
同じまたは同様の部分を指すために、図面全体を通して同じ参照番号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、以下に記載される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の全範囲に及ぶ。すなわち、本発明は、様々な形態で具現化されてよく、説明の目的で提示された、記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0064】
単数形の用語は、特に断りのない限り、複数である場合を含んでもよい。
【0065】
別の構造の上部/下部、または他の構造の上/下に形成されているように記載された構造は、構造が互いに接触する場合、および、さらにそれらの間に第3の構造が配置される場合を含むと解釈されるべきである。
【0066】
時間関係を記載する際に、たとえば、イベントの時間的順序が「後」、「後続」、「次」、「前」などと記載されるとき、本開示は、別段の指定がない限り、連続イベントおよび非連続イベントを含むと解釈されるべきである。たとえば、「ちょうど」、「即時」、または「直ちに」などの文言が使用されない限り、説明は連続的でない場合も含むと解釈されるべきである。
【0067】
「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書では様々な要素を記載するために使用される場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されない。これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。たとえば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素は第1の要素と呼ぶことができる。
【0068】
本開示において、装置の構造ユニットに適用される場合の「実質的に」という用語は、構造ユニットが、その製造に用いられる方法の技術的に許容し得る範囲内で製造されることを意味すると解釈することができる。
【0069】
様々な実施形態の特徴は、部分的または全体的に互いに結合または組み合わされてよく、互いに様々に相互運用されてもよい。いくつかの実施形態は、互いに独立して実行されてもよく、相互依存関係で一緒に実行されてもよい。
【0070】
光学的構成
図1は、コンピュータ生成ホログラムが単一の空間光変調器上で符号化される実施形態を示す。コンピュータ生成ホログラムは、復元用の物体のフーリエ変換である。したがって、ホログラムは物体のフーリエ領域表現または周波数領域表現またはスペクトル領域表現であると言える。この実施形態では、空間光変調器は、反射型液晶オンシリコン「LCOS」デバイスである。ホログラムは空間光変調器上で符号化され、ホログラフィック復元は、再生フィールド、たとえば、スクリーンまたはディフューザなどの受光面に形成される。
【0071】
光源110、たとえば、レーザまたはレーザダイオードは、コリメーティングレンズ111を介してSLM140を照射するように配置される。コリメーティングレンズは、光の全体的に平坦な波面をSLMに入射させる。図1では、波面の方向は垂線から外れている(たとえば、透明層の平面に対して真の直角から2度または3度離れている)。しかしながら、他の実施形態では、全体的に平坦な波面が垂直入射に提供され、入力光路と出力光路を分離するためにビームスプリッタ配置が使用される。図1に示された実施形態では、配置は、光源からの光がSLMの鏡面仕上げの背面から反射され、光変調層と相互作用して出口波面112を形成するような配置である。出口波面112は、フーリエ変換レンズ120を含む光学系に印加され、スクリーン125にその焦点を合わせる。より具体的には、フーリエ変換レンズ120は、SLM140から変調光のビームを受け取り、周波数空間変換を実行して、スクリーン125にホログラフィック復元を生成する。
【0072】
特に、このタイプのホログラフィでは、ホログラムの各ピクセルが復元全体に寄与する。再生フィールド上の特定のポイント(または画像ピクセル)と特定の光変調素子(またはホログラムピクセル)との間に1対1の相関関係は存在しない。言い換えれば、光変調層を出る変調光は、再生フィールドにわたって分散する。
【0073】
これらの実施形態では、空間内のホログラフィック復元の位置は、フーリエ変換レンズの屈折(集束)力によって決定される。図1に示された実施形態では、フーリエ変換レンズは物理レンズである。すなわち、フーリエ変換レンズは光学フーリエ変換レンズであり、フーリエ変換は光学的に実行される。いずれのレンズもフーリエ変換レンズとして機能することができるが、レンズの性能により、それが実行するフーリエ変換の精度が制限される。当業者は、光学フーリエ変換を実行するためにレンズをどのように使用するかを理解している。
【0074】
ホログラム計算
いくつかの実施形態では、コンピュータ生成ホログラムは、フーリエ変換ホログラム、または単にフーリエホログラムもしくはフーリエベースのホログラムであり、その中で、画像は正レンズのフーリエ変換特性を利用することによって遠視野で復元される。フーリエホログラムは、再生平面内の所望の光フィールドをフーリエ変換してレンズ平面に戻すことによって計算される。コンピュータ生成フーリエホログラムは、フーリエ変換を使用して計算されてもよい。実施形態は、例として、フーリエホログラフィおよびGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムに関する。本開示は、同様の方法で計算され得るフレネルホログラフィ及びフレネルホログラムに同様に適用可能である。いくつかの実施形態において、ホログラムは、位相ホログラムまたは位相のみのホログラムである。しかし、本開示は、点群法に基づくものなど、他の手法によって算出されたホログラムにも適用可能である。参照により本明細書に組み込まれる、2021年8月26日に出願された英国特許出願GB2112213.0は、本開示と組み合わせることができる例示のホログラム計算方法を開示している。
【0075】
いくつかの実施形態では、画像データを受信し、アルゴリズムを使用してリアルタイムでホログラムを計算するように構成されたリアルタイムエンジンが提供される。いくつかの実施形態では、画像データは一連の画像フレームを含むビデオである。他の実施形態では、ホログラムは、事前に計算され、コンピュータメモリに記憶され、SLMに表示するために必要に応じて呼び出される。すなわち、いくつかの実施形態では、所定のホログラムのリポジトリが提供される。
【0076】
光変調
ディスプレイシステムは、ディスプレイシステムの射出瞳を規定するディスプレイ装置を備える。ディスプレイ装置は、空間光変調器である。空間光変調器は、位相変調器であってもよい。ディスプレイ装置は、シリコン上の液晶、「LCOS」、空間光変調器であってもよい。
【0077】
光チャネリング
ここに開示された光学系は、あらゆる回折ライトフィールドによる瞳拡大にも適用可能である。いくつかの実施形態では、回折ライトフィールドはホログラフィックライトフィールド、すなわち、画像そのものではなく、画像のホログラムに従って空間的に変調された複素ライトフィールドである。いくつかの実施形態では、ホログラムは、画像コンテンツを角度的に分割/チャネル化する特殊なタイプのホログラムである。このタイプのホログラムは、本開示に適合する回折ライトフィールドの単なる一例として本明細書でさらに説明される。他のタイプのホログラムは、本明細書に開示されたディスプレイシステムおよびライトエンジンと組み合わせて使用することができる。
【0078】
導波路瞳拡大器を備えるディスプレイシステムおよび方法について以下に説明する。当業者にはよく知られているように、導波路は、本明細書に記載の配置で使用されるような、比較的小さなSLMまたは他の画素化されたディスプレイ装置など、比較的小さな発光体が発する光を、発光体から比較的大きな距離など離れた場所にいる人間の観察者または他の観察システムによって(用いて)見ることができる領域を増やすために使用することができるため、「瞳拡大器」として構成され得る。導波路は、観察者に向けて光が出射される透過点を増やすことでこれを実現している。結果的に、光は、複数の異なる観察者の位置から見ることができると共に、例えば、観察者は、発光体からの光を見ることができる一方で、頭を動かすことができ、したがって、視線を動かすことができる。すなわち、導波路瞳拡大器によって、観察者の「アイボックス」あるいは「アイモーションボックス」を拡大することができる。これは、多くの有用な使用例を有していて、例えば、自動車用ヘッドアップディスプレイ等のヘッドアップディスプレイなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
本明細書で説明するディスプレイシステムは、回折ライトフィールドなどの光を導波路瞳拡大器を通して誘導して、少なくとも1次元、例えば2次元で瞳拡大を提供するように構成してもよい。回折ライトフィールドは、LCOS SLMなどの空間光変調器(SLM)による光出力を含むことができる。例えば、その回折ライトフィールドは、SLMにより表示されるホログラムによって符号化される光を含んでもよい。例えば、その回折ライトフィールドは、SLMにより表示されるホログラムに対応する、ホログラフィ的に復元された画像の光を含んでもよい。ホログラムは、点群ホログラム、フレネルホログラム、またはフーリエホログラムなどのコンピュータ生成ホログラム(CGH)を含むことができるが、これらに限定されるものではない。ホログラムは、「回折構造」または「変調パターン」と称されることがある。SLMまたは他のディスプレイ装置は、ホログラムと、ソフトウェアレンズまたは回折格子などの1つまたは複数の他の要素とを含む回折パターン(または、変調パターン)を、当業者によく知られている方法で表示するように構成されてもよい。
【0080】
ホログラムは、回折ライトフィールドのチャネリングを提供するように計算されることがある。これは、GB2101666.2、GB2101667.0、及びGB211213.0の各々に詳細に記載されており、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。一般論として、ホログラムは、ホログラフィックに復元される画像に対応するように計算されてもよい。ホログラムが対応するその画像は、「入力画像」又は「ターゲット画像」と称されることがある。ホログラムは、SLM上に表示され、適切に照明されたときに、空間的に変調された光の円錐からなるライトフィールド(SLMによって出力)を形成するように計算することができる。いくつかの実施形態では、円錐は、画像のそれぞれの連続領域に対応する、空間的に変調された光の複数の連続光チャネルを有している。しかし、本開示は、このタイプのホログラムに限定されない。
【0081】
本明細書では「ホログラム」または「コンピュータ生成ホログラム(CGH)」と呼ぶが、SLMは、複数の異なるホログラムを連続してまたはシーケンスに従って動的に表示するように構成されてもよいことが理解されるであろう。本明細書に記載のシステム及び方法は、複数の異なるホログラムを動的に表示する場合に適用可能である。
【0082】
図2及び図3は、本明細書に開示する瞳拡大器と組み合わせて使用することができる、SLMなどの表示装置に表示され得るホログラムのタイプの一例を示す。しかしながら、この例は、本開示に関して限定的であるとみなされるべきではない。
【0083】
図2は、V1~V8の8つの画像領域/構成要素からなる投影用の画像252を示す図である。図2は、例として8つの画像構成要素を示しているに過ぎず、画像252は任意の数の構成要素に分割することができる。図2はまた、画像252を復元することができる符号化された光パターン254(すなわち、ホログラム)を示していて、例えば、適切な視認システムのレンズによって変換された場合を示している。符号化された光パターン254は、第1~第8の画像成分/領域V1~V8に対応する第1~第8のサブホログラム又は成分H1~H8からなる。図2は、さらに、ホログラムが角度によって画像コンテンツをどのように分解することができるかを示す。したがって、ホログラムは、それが実行する光のチャネリングによって特徴付けられてもよい。これは、図3に示されている。具体的には、この実施例のホログラムは、光を複数の離散的な領域に誘導する。離散領域は、図示の例では円盤状であるが、他の形状も想定される。最適な円盤の大きさと形状は、導波路を伝搬した後、視認システムの入射瞳の大きさと形状に関係してもよい。
【0084】
図4は、図2および図3に示すように計算されたホログラムを表示するディスプレイ装置を含むシステム400を示す図である。
【0085】
システム400は、ディスプレイ装置を備え、この配置では、LCOS402を備えている。LCOS402は、ホログラムを含む変調パターン(または「回折パターン」)を表示すると共に、開口部404として機能する瞳、レンズ409、および視野面として機能する網膜(図示せず)からなる目405に向けてホログラフィックに符号化された光を投射するように配置されている。LCOS402を照明する光源(不図示)が配置されている。目405のレンズ409は、ホログラムから画像への変換を実行する。光源は、任意の適切なタイプであってよい。例えば、レーザ光源を備えていてもよい。
【0086】
視認システム400は、LCOS402と目405との間に配置された導波路408をさらに備えている。導波路408の存在により、図示するように比較的大きな投影距離であっても、LCOS402からの全ての角度コンテンツを目で受光することができる。導波路408は、よく知られている方法で瞳拡大器として作用するため、本明細書では簡単にしか説明されない。
【0087】
簡単に説明すると、図4に示す導波路408は、実質的に細長い形成物からなる。この例では、導波路408は、屈折材料の光学スラブからなるが、他のタイプの導波路もよく知られており、使用することができる。導波路408は、LCOS402から投射される光錐(すなわち、回折ライトフィールド)と、例えば、斜めの角度で交差するように配置される。この例では、導波路408の大きさ、位置、および姿勢は、光錐内の、8つの光線束のそれぞれからの光が、導波路408に入るように構成される。光錐からの光は、その第1の平面表面(LCOS402に最も近い位置にある)を介して導波路408に入り、第1の表面と実質的に反対側のその第2の平面表面(目に最も近い位置にある)を介して放射される前に、導波路408の長手方向に沿って少なくとも部分的に導かれる。よく理解されるように、第2の平面表面は、部分的に反射性であり、部分的に透過性である。言い換えれば、各光線が第1の平面表面から導波路408内を移動して第2の平面表面に当たるとき、光の一部は導波路408の外に透過し、一部は第2の平面表面で反射して第1の平面に向かって戻る。第1の平面表面は反射性であり、導波路408内から、それに当たる全ての光は、第2の平面表面の方へ反射される。したがって、光の一部は、伝送される前に導波路408の2つの平面表面の間で単に屈折することがあり、一方、その他の光は反射することがあり、そのため、伝送される前に導波路408の平面表面の間で1回以上の反射(または「跳ね返り」)を受けることがある。
【0088】
図4は、導波路408の長手方向に沿って、B0からB8までの合計9つの「跳ね返り」点を示している。図2に示すような画像の全ての点(V1~V8)に関する光は、導波路408の第2の平面表面からの各「跳ね返り」において導波路から透過するが、画像のある角度部分からの光(例えば、V1~V8のうちの1つの光)だけが、それぞれの各「跳ね返り」点、B0~B8から目405に到達できる軌跡を有している。さらに、画像の異なる角度部分からの光、V1~V8は、それぞれの「跳ね返り」点から目405に到達する。したがって、符号化された光の各角度チャネルは、図4の例では、導波路408から、1回だけ目に到達する。
【0089】
導波路408は、瞳の拡大方向に対応する、その長さに沿ったそれぞれの「跳ね返り」点B1~B8で、ホログラムの複数のレプリカを形成する。図4に示すように、複数のレプリカは、対応する複数のレプリカまたは仮想ディスプレイ装置402’に、直線的に、外挿されてもよい。これは、導波路内で光路を「展開」する工程に相当し、レプリカの光線を導波路内で内部反射させずに「仮想平面」に外挿する。したがって、拡大された射出瞳の光は、ディスプレイ装置402およびレプリカディスプレイ装置402’を備える仮想平面(本明細書では「拡張変調器」ともいう)から発せられると考えることができる。
【0090】
上述した方法および配置は、様々な異なるアプリケーションおよび視認システムで実装することができる。例えば、それらは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、または拡張現実(AR)HMDなどの頭部またはヘルメットマウントデバイス(HMD)において実装されてもよい。
【0091】
本明細書では、知覚される画像を形成するために、目が受光した変調光を変換する必要がある虚像について一般的に議論されてきたが、本明細書に記載された方法及び配置は、実画像に適用することができる。
【0092】
2次元瞳拡大
図4に示す配置は、1次元の瞳拡大を提供する単一の導波路を含むが、瞳拡大は1次元以上、例えば2次元で提供することができる。さらに、図4の例では、それぞれが画像の異なる部分に対応する光のチャネルを形成するように計算されたホログラムを使用しているが、本開示および以下に説明するシステムは、このようなホログラムタイプに限定されるものではない。
【0093】
図5Aは、光ビーム502を2次元的に拡大するために配置された2つのレプリケータ504、506を備えるシステム500の透視図である。
【0094】
図5Aのシステム500において、第1のレプリケータ504は、互いに平行に積層された第1の一対の表面からなり、図4の導波路408と同様の方法で複製または瞳拡大を提供するように配置される。第1の一対の表面は、互いに同様(場合によっては同一)の大きさ及び形状であり、実質的に一方向に細長い形状である。コリメートされた光ビーム502は、第1のレプリケータ504に入射するように向けられる。当業者によく知られているように、2つの表面間の内部反射、および表面のうちの1つ(図5Aに示すように上面)の複数の出力点のそれぞれからの光の部分透過のプロセスにより、光ビーム502の光は、第1のレプリケータ504の長手方向沿って、第1の方向で複製される。このように、第1のレプリカ光ビーム508は、第1のレプリケータ504から、第2のレプリケータ506に向かって照射される。
【0095】
第2のレプリケータ506は、互いに平行に積層された第2の一対の表面からなり、第1の複数の光ビーム508のコリメートされた光ビームのそれぞれを受けるように配置され、さらに、それらの光ビームのそれぞれを第1の方向と実質的に直交する第2の方向に拡大することによって複製、または瞳拡大を提供するように配置される。第1の一対の表面は、互いに同様(場合によっては同一)の大きさ及び形状を有し、実質的に矩形である。矩形形状は、第1の複数の光ビーム508を受光するために、第1の方向に沿った長さを有し、その第2の方向に複製を提供するために、第2の直交する方向に沿った長さを有するように、第2のレプリケータに対して施される。2つの表面間の内部反射、および表面のうちの1つ(図5Aに示すように、上面)の複数の出力点のそれぞれからの光の部分的な透過のプロセスにより、第1の複数の光ビーム508の中の各光ビームの光は、第2の方向へ複製される。このように、第2のレプリケータ506から第2の複数の光ビーム510が出射され、第2の複数の光ビーム510は、第1の方向および第2の方向のそれぞれに沿い入射する光ビーム502のレプリカを含んでいる。したがって、第2の複数の光ビーム510は、レプリカ光ビームの2次元グリッド、または配列を構成するとみなすことができる。
【0096】
したがって、図5Aの第1および第2のレプリケータ504、506が組み合わされて、2次元レプリケーター(または、「2次元瞳拡大器」)が提供されるといえる。したがって、レプリカ光ビーム510は、ヘッドアップディスプレイなどの表示システムの拡張アイボックスへの光路に沿って放出され得る。
【0097】
図5Aのシステムにおいて、第1のレプリケータ504は、互いに平行に積層された一対の細長い矩形の反射面を備える導波路であり、同様に、第2のレプリケータ506は、互いに平行に積層された一対の矩形の反射面を備える導波路である。他のシステムでは、第1のレプリケータは、中実の細長い矩形状の導波路であってもよく、第2のレプリケータは、中実の平面矩形状の導波路であってもよく、各導波路は、ガラスなどの光学的に透明な中実材料を含んでいる。この場合、一対の平行な反射面は、当業者に知られている、それぞれの反射性および反射透過性の表面コーティングを任意に含む一対の対向する主要な側壁によって形成される。
【0098】
図5Bは、光ビーム522を2次元で複製するために配置された2つのレプリケータ520、540を含むシステム500の透視図であり、第1のレプリケータは中実の細長い導波路520であり、第2のレプリケータは中実の平面状の導波路540である。
【0099】
図5Bのシステムでは、第1のレプリケータ/導波路520は、その一対の細長い平行反射面524a、524bが第2のレプリケータ/導波路540の平面に対して垂直となるように配置される。したがって、システムは、第1のレプリケータ520の出力ポートからの光を第2のレプリケータ540の入力ポートに結合するように配置された光カプラを備える。図示の配置では、光カプラは、第1のレプリケータから第2のレプリケータへの必要な光結合を達成するために、光の光路を折り曲げたり回転させたりするように配置された平面/折り返しミラー530である。図5Bに示すように、ミラー530は、第1の次元に延びるレプリカの1次元配列を備え、第1のレプリケータ/導波路520の出力ポート/反射透過面524aからの光を受けるように配置される。ミラー530は、第2の次元の長さに沿って、導波とレプリカ形成を提供する角度で、第2のレプリケータ540の(完全)反射面における入力ポートへの光路に受光した光を向けるようにして傾斜されている。ミラー530は、示された方法で光を方向転換することができる光学素子の一例であり、このタスクを実行するために、1以上の他の素子が代わりに使用され得ることが理解されるであろう。
【0100】
図示の配置では、第1のレプリケータ520の(部分的な)反射透過面524aは、第1の次元におけるその長さに沿って、導波およびレプリカ形成を提供するための角度で入力ビーム522を受信する第1のレプリケータ/導波路520の入力ポートに隣接する。したがって、第1のレプリケータ/導波路520の入力ポートは、その入力端において、反射透過面524aと同じ面に配置される。当業者は、第1のレプリケータ/導波路520の入力ポートは、他の任意の適切な位置に配置し得ることを理解するであろう。
【0101】
したがって、図5Bの配置は、第1のレプリケータ520及びミラー530を、第1及び第3の次元(x-z平面として図示)の平面における第1の比較的薄い層の一部として提供することができる。特に、第2の次元(y次元として図示)の第1の平面層-第1のレプリケータ520が配置される-のサイズまたは「高さ」が低減される。ミラー530は、光を、第1のレプリケータ520が位置する第1の層/面(すなわち「第1の平面層」)から遠ざけ、第2のレプリケータ540が位置し、第1の層/面の上に位置して第1の層/面と実質的に平行な第2の層/面(すなわち「第2の平面層」)に向けるように構成される。したがって、第1および第3次元(x-z平面として図示)に積層された第1および第2の平面層に位置する第1および第2のレプリケータ520、540およびミラー530を備えるシステムの第2の次元(y次元として図示)全体のサイズまたは「高さ」は小型である。当業者は、本開示を実施するための図5Bの配置は多くの変形が可能であり、企図されていることを理解するであろう。
【0102】
発散光の1次元における瞳拡大
いくつかの実施態様では、第1のレプリケータへの入力光は発散している。例えば、本明細書で説明するように、入力光は、発散する光線束からなる回折ライトフィールド-例えば、ホログラムに対応する-を含んでもよい。したがって、光が導波路の長さに沿って伝搬するにつれて、ライトフィールドの大きさは、距離とともに増加する。
【0103】
図6は、出力ポートを形成する部分反射透過性の表面など、その一対の平行反射面の一方の形状を示す、第1のレプリケータを形成する導波路600の一例の側面図である。当業者であれば、導波路600の他の反射面も同じ形状であることを理解するであろう。導波路600の例では、第2の次元(y次元として図示)の反射面の幅は、瞳拡張の第1の次元(x次元として図示)に延びる導波路600の長さ/伸長方向に沿って変化する。特に、反射面の幅は、矢印610で示すように、導波路600の長さに沿って(y次元として図示される第2の次元で)発散ライトフィールドのサイズの増大に対応するために、第1/入力端601から第2/出力端602まで増大する。図示された例では、導波路600は、その第1/入力端601がその第2/出力端602より狭くなるように、その長さに沿って傾斜している。導波路の幅は、その入力端601からその出力端602まで、その長さに沿って外側に傾斜していると言ってもよい。したがって、導波路600が中実の細長い導波路である実施態様においては、一対の対向する非反射/非導波性の側壁間の間隔は、その第1/入力端における最小サイズ/厚さから、その第2/出力端602における第2の次元(y次元として図示)の最大サイズ/厚さ620に傾斜するようにして、導波路600の長さに沿って増加する。
【0104】
いくつかの実施においては、第1のレプリケータに必要な瞳拡大/複製量によって、伸長方向(すなわち瞳拡大の第1の次元)において比較的長い導波路が必要となる。当業者であれば理解できるように、第1のレプリケータ(および出力レプリカの各々)への入力光は、第1および第2の次元に直交する第3の方向に実質的に伝播する。いくつかの構成では、第1のレプリケータは、その一対の平行な反射面間の導波とレプリカ形成のために鋭角に配置される。例えば、図5Aに示す構成では、第1のレプリケータ504は、第1および第3の次元において第2のレプリケータ506の平面に対して鋭角に傾斜しており、比較的長い導波路が、傾斜していない構成と比較して第2の次元において著しく多くの空間を占有する可能性がある。その結果、導波路の長さが長くなるにつれて、導波路に必要なスペースが増加する。さらに、いくつかの配置では、発散する入力光を伝播するための平行反射面の傾斜した形状は、さらに、第2の次元における導波路に必要な空間を増加させ、全体的な占有体積をさらに増加させる可能性がある。したがって、いくつかの実施においては、レプリケータがかさばりすぎて、自動車用ヘッドアップディスプレイへの実施における自動車のダッシュボードの下など、ディスプレイシステムに利用可能なスペース内に収容することができなくなる場合がある。
【0105】
図7は、実施形態に係る、一対の第1の導波路700、700’を備える第1の次元における瞳拡大を提供するために配置された第1のレプリケータの側面図である。図6の側面図と同様に、図7は、導波路700、700’のそれぞれの、出力ポートを形成する(部分的に)反射透過面などの、一対の平行反射面の一方の形状を示す図である。導波路700、700’は、上述したように、中実な細長い導波路であってもよい。
【0106】
図6の導波路600と同様に、平行反射面は、発散する入力光を伝播させるための傾斜した形状を有する。したがって、図7に示すように、各第1の導波路700、700’は細長く、その第1入力端701、701’がその第2/出力端702、702’より狭くなるようにその長さに沿い傾斜している。導波路700、700’は、それらの第1入力端701、701’が実質的に互いに近接(または隣接)するように、すなわち配置の中心にあるように、そしてそれらの第2/出力端702、702’が互いに実質的に遠位(または遠隔)するように配置されている。各第1の導波路700、700’は、その入力/近位端701、701’から出力/遠位端702、702’までその長さに沿ってレプリカを形成することによって、第1の次元(x次元として図示)において入力ビームの瞳拡大/複製を提供するように配置される。したがって、第1の導波路700、700’は、矢印710、710’で示すように、第1の次元の反対方向に入力光ビームを伝播させ、したがって瞳拡大/複製を提供するように配置される。両方の導波路700、700’の入力/近位端701、701’が中心にあるので、図示の配置は、導波路700、700’の出力端702、702’における任意の残留光を、レプリケータの端部で除去することができるという利点を有する。例えば、ディスプレイシステムの視野に入る可能性のある迷光の望ましくない反射を避けるために、レプリケータの端にあるハウジングを、光を吸収するように配置することができる。
【0107】
図示の例では、各第1の導波路700、700’は実質的に同じ長さを有し、したがって、第1の次元において必要な数のレプリカの約半分を形成する(すなわち、瞳の拡大/複製の量の半分を提供する)ように配置される。当業者は、異なる長さの導波路を備える他の配置が可能であり、企図されていることを理解するであろう。
【0108】
第1の導波路700、700’は、その中心で第3の次元に延びる対称軸780を中心に、すなわちそれぞれの入力端701、701’の間で、対称的な構成で配置される。実施においては、一対の第1の導波路700、700’は、上述したように、中実な細長い導波路を備えてもよい。したがって、実際には、第1の導波路700、700’は同じであってもよく、したがって、各導波路700、700’は、同じ形状、サイズおよび材料の忠実な細長い導波路などの、同じ特注のまたは既製の光学部品を備えてもよいが、互いに対して(例えば対称軸780について)1つの向きが反転して配置されている。各導波路700、700’は、図6の単一の導波路と比較して長さが減少しているので、その出力端702、702’における第2の次元(y次元として図示)の最大サイズ/厚さは、同様に減少する。
【0109】
第1の導波路700、700’の第1/入力端701、701’は、第1の次元(x次元として図示)において互いに重なり、これにより、図10Aおよび10Bを参照してさらに後述するように、形成されるそれぞれのレプリカの1次元配列が互いに部分的に重なる。したがって、別々の入力光ビームがそれぞれの第1/入力端701、701’で入力ポートを介して受光されることを可能にするために、第1の導波路700、700’は、それらの第1/入力端701、701’で第2の次元(y次元として図示)の方向に互いにずらして配置されている。入力端701、701’は、第2の次元において(「高さ」において)積み重ねられると言うことができる。このずらした配置または積層は、第2の次元における第1のレプリケータの最大サイズ/高さ720が、導波路700、700’の出力端702、702’の最大サイズ/厚さよりも大きいことを意味する。注目すべきことは、第1の導波路700、700’は、第2の次元において変化するサイズ/厚さが最小となる、それらの近位の第1/入力端701、701’において、互いにずらして配置されていることである。しかしながら、それらの遠位の第2/出力端702、702’では対応するずらした配置が必要とされないので、第1の導波路700、700’は、第1のレプリケータの最大サイズ/高さ720が減少するように、傾斜(すなわち、第2の次元におけるサイズ/厚さの増加)により第2の次元で部分的に重なり合っている。
【0110】
図示された実施形態において、第1のレプリケータの一対の第1の導波路700、700’は、実質的に平面状に配置される。特に、一対の第1の導波路700、700’の各導波路は、矢印710、710'で示すように、それぞれの第1の導波路700、700’による瞳拡大方向が正確に第1の次元にあるように、第1および第3の次元(xおよびz次元として図示)において平面内にある。したがって、第2の次元における第1のレプリケータの最大サイズ/高さ720(y次元として図示)は、第1のレプリケータの実質的に平面的な構成の「高さ」-図7の点線の間-を表し、これは、さらに後述するように、第2の次元における2次元瞳拡大器の全体の「高さ」に寄与する。実質的に平面状の構成は、上述したように、第1の平面層を占める(またはその中に位置する)ことができ、第1の平面層は、第1および第3の次元(xおよびz次元として図示)に延び、第2の次元(y次元として図示)に高さまたは厚さを有する。注目すべきは、対称構成の内側面785-対称軸780を通過する第1および第3の次元の仮想平面(x-z平面として図示)-の一対の第1の導波路700、700’は、第2の次元の最大サイズ/高さ720の半分の位置にある。
【0111】
図8は、別の実施形態による、一対の第1の導波路800、800’を備える第1の次元における瞳拡大を提供するために配置された第1のレプリケータの側面図である。第1の導波路800、800’は、図7の実施形態の一対の第1の導波路700、700’と実質的に同じであり、矢印810、810’で示すように、第1の次元(x次元として図示)の反対方向への瞳拡大を提供するように同様に配置される。したがって、図8の配置は、本明細書では詳細に説明されない。しかし、図7の実施形態とは対照的に、一対の第1の導波路800、800’は、第2の次元(y次元として図示)において第1のレプリケータの最大サイズ/高さ820をさらに縮小するように傾斜される。特に、内側面885-一対の第1の導波路800、800’の対称構成の対称軸を通る仮想平面-は、第1の次元に対して鋭角に傾いている。特に、図7に示す対称的な構成-図7に点線で示すように、第2の次元で最大サイズ/高さ720を有する-は、図8に示す位置-図8に点線で示すように、第2の次元においてより小さい最大サイズ/高さ820を有する-まで、その対称軸880-第3の次元に延びる中心軸-についてグローバルチルト角θだけ時計回りに傾いている。
【0112】
注目すべきは、一対の第1の導波路800、800’に適用されるグローバルチルト角θ-第1および第3の次元の平面(x-z平面として図示)から外れる-は、一対の第1の導波路800、800’の各導波路による瞳拡大方向が、矢印810、810’で示すように第1の次元に関して同じグローバルチルト角θで(対称軸880に関して異なる方向に)傾斜していることである。結果として、図8の一対の第1の導波路800、800’の概ね平面的な配置は、(元の)第1及び第2の次元x、yに対してグローバルチルト角θだけ傾斜している、変更された第1及び第2の寸法x’、y’を有する傾斜座標系で定義されてもよい。傾斜座標系の第3の次元z’は、(元の)第3の次元zと同一である。
【0113】
図9は、図8の実施形態の第1のレプリケータの上面図である。当業者は、図7の実施形態の第1のレプリケータの上面図が同じであることを理解するであろう。したがって、図9は、図面の平面における第1のレプリケータの(第1および第3の次元の平面における)実質的に平面的な構成を示す。実質的に平面的な構成は、入力光および第1のレプリケータによって形成される瞳レプリカの両方の伝搬平面に広く存在する。図示された配置では、一対の第1の細長い導波路800、800’は、第1および第3の次元の平面内で実質的にV字形の構成で配置される。入力光ビームは、第3の次元(z次元として図示)に平行な方向に入射される。したがって、各導波路800、800’について、導波及びレプリカ形成のための平行な反射面において、入力光ビームが斜めに入射するように、V字形状の構成の角度が選択される。さらに、一対の導波路800、800’を、実質的に第1および第2の次元における平面内で互いに対して角度をつけて配置し、実質的に平面V字形状の構成とし、第3の次元に平行に入力光ビームを供給することにより、第1のレプリケータは、第1の次元においてより小型になる。図8を参照して上述したように、一対の第1の導波路800、800’の第1/入力端-第1のレプリケータの中心にある-は、第2の次元においてずらして配置または重ねて配置される。したがって、一対の第1の導波路800、800’の第1/入力端、およびそれらのそれぞれの入力ポートのいずれも、第1の次元において重なるために、他方の影になることはない。図示された配置では、第1の導波路800、800’の入力端は、平行反射面のそれぞれの対の他の完全反射面において、それぞれの入力ポートを介して別々の入力ビーム950、950’を受け取るように配置される。各入力ビーム950、950’は、第3の次元(zまたはz’次元として図示)に平行な光路を有する。したがって、一対の第1の導波路800、800’の一方の導波路800は、その入力/近位端で第1の入力光ビーム950を受け取り、導波路800の長さに沿って一対の平行反射面の(部分的な)反射透過性の表面を備える出力ポートから出力/遠位端に第3の次元(zまたはz’次元として図示)で出力される第1の次元(xまたはx’次元)の第1の方向に伸びる複製物R1~Rnの配列を形成する。同様に、一対の第1の導波路800、800’の他方の導波路800’は、その入力/近位端で第2の入力光ビーム950’を受け取り、導波路800’の長さに沿って出力ポートから出力/遠位端に第3の次元で出力される第1の次元の第2の方向に延びる複製物R1’~Rn’の配列を形成する。当業者であれば理解できるように、第1のレプリケータのそれぞれの第1の導波路800、800’によって形成されるレプリカの一対の配列R1~Rn、R1’~Rn’は、入力ビーム950、950’の光路と同じ方向にある(ただし第2の次元でずらして配置されている)平行光路を有し、入力ビーム950、950’を与える(または各)表示デバイスまたはシステムの出射瞳は第1の次元に拡大されている。
【0114】
さらに、図8を参照して上述したように、一対の第1の導波路800、800’の第1/入力端は、第1の次元において(部分的に)重なる。結果として、図9に示すように、一対の第1の導波路800、800’のそれぞれのものによって形成されるレプリカR1、R1’も、第1の次元において(部分的に)重なる。
【0115】
図10Aは、図8の実施形態による、第1のレプリケータの一対の第1の導波路800、800’によって形成されるレプリカR1~Rn、R1’~Rn’の一対の一次元配列の一例を示す。図10Bは、図10Aのレプリカの部分的な重なりをより詳細に示す図である。
【0116】
図10Aに示すように、一対の第1の導波路800、800’のそれぞれの導波路によって形成されるレプリカR1~Rn、R1’~Rn’の各配列は、修正された/傾斜した第1の次元(x’次元として図示)、したがって実質的に第1の次元(x次元として図示)で延びる。いくつかの実施形態では、各レプリカは、実質的にディスプレイ装置に表示されるホログラムのレプリカである。当業者であれば理解できるように、いくつかの実施形態では、各レプリカは、ディスプレイデバイスの瞳を複製している。前述したように、第1のレプリケータへの入力光ビームは、投影距離に比べて比較的小さなディスプレイ装置(例えばLCoS)によって提供され、したがって、非常に小さな瞳を有する。図10Aに示す各レプリカは、長方形の領域-図10Bに示すように長さaと幅bを有する-であり、実施形態では、ディスプレイ装置の寸法に対応する。
【0117】
一対の第1の導波路800、800’の第1/入力端801、801’は、第2の次元(y’次元として図示)においてずらして配置または積層されているので、第1のレプリケータによって形成されるレプリカのそれぞれの配列R1~Rn、R1’~Rn’は、第2の次元において互いにずらして配置される。これは、図10Bにおいて、第2の次元におけるレプリカR1、R1’間のずれた配置/変位Δy’として示されている。いくつかの実施形態では、Δy’はゼロである。さらに、図8の実施形態における第1の導波路800、800’の組のグローバルチルト角θに起因して、レプリカR1~Rn、R1’~Rn’の配列も、第1の次元((オリジナル/非修正)座標系のx次元として図示)に対してグローバルチルト角θで傾斜する。その結果、レプリカの1次元配列がアイボックスに伝搬すると、観察者には第1の次元(例えば水平方向)に対して傾いているように見える場合がある。したがって、当業者が理解するように、傾きは、レプリカの配列R1~Rn、R1’~Rn’がアイボックスで第1の次元に延びるように、傾きを補正するように入力光ビームの画像内容を調整する、又は、設置場所に設置したときにディスプレイシステム全体に反対の傾斜を提供するなど、既知の技術を使用して補正されてもよい。
【0118】
一対の第1の導波路800、800’の第1/入力端は第1の次元(x’次元として図示)で重なるので、形成される2つのレプリカの配列も第1の次元で重なり合う。特に、図10Bに示すように、第1のレプリカR1、R1’は、第1の次元において変位Δx’だけ重なる。他の例では、重なり/変位Δx’は、第1のレプリカR1、R1’が第1の次元で完全に重なるように、単一のレプリカの全長aを含んでもよい。さらなる実施例では、重なり/変位Δx’は、レプリカの配列の第2のレプリカR2、R2’および任意に第3のレプリカR3、R3’にわたって拡張するように、1つのレプリカよりも大きくてもよい(すなわち、2aと3aの間など、Δx’>a)。
【0119】
本発明者らは、驚くべきことに、特に、限定的ではないが、入力ビームが角度コンテンツ/チャネルを有するホログラムを運ぶ(または符号化される)場合に、レプリカの2つの配列を重ねることがアイボックスでの視聴体験を改善することを発見した。特に、視聴者の眼がアイボックス内で配列が重なる位置にある場合、知覚される画像の品質が改善される。
【0120】
実施形態に係る第1のレプリケータは、例えば図5A又は図5Bを参照して上述したように、入力光ビームを2次元的に拡大/複製するために配置された2つのレプリケータを含むシステムで実施することができる。特に、実質的に長方形(例えば正方形)の一対の平行な反射面を有する導波路を備える第2のレプリケータは、第1のレプリケータからのレプリカの1次元配列を入力光ビームとして受け取るように配置されてもよい。例えば、第2のレプリケータは、図5Bのシステムにおけるように、中実の平面状の矩形の導波路540を備えてもよい。第2のレプリケータは、第1の方向と実質的に直交する第2の方向にレプリカ/光ビームの1次元配列の瞳拡大を提供するように配置される。したがって、第2のレプリケータは、ディスプレイシステムのアイボックスに伝播される、レプリカの2次元配列を形成する。
【0121】
図11は、図8の実施形態の第1のレプリケータと、図5Bのシステムに従った配置の第2のレプリケータ840を備える例示的なシステムを示す。第1のレプリケータは、上述のように、瞳孔を第1の次元で拡大するための実質的に平面的な構成で配置された、一対の中実な細長い導波路800、800’を備えている。図11は、図示を容易にするために、一対の第1の導波路800、800’の出力端のみを示している。システムは、瞳を第2の次元で拡大するための第2の導波路840をさらに備える。第2の導波路は、中実で実質的に平面的な矩形の導波路840を備え、主要な対向面-導波路の一対の平行反射面を形成する-は第1のレプリケータの平面と平行であり、したがって、第1および第3の次元の平面(x-z平面として図示)にある。上述したように、一対の第1の導波路800、800’によって形成されるレプリカR1~Rn、R1’~Rn’は、第1のレプリケータによって第3の次元の方向(z次元として図示)に出力される。したがって、システムは、レプリカの1次元配列を含む出力光の光路を、例示的な破線で示すように、折り曲げたり回転させたりして、レプリカ/光ビームの配列を導波路840の入力ポートに第2の次元における導波とレプリカ形成のための角度で光学的に結合するように配置された、平面/折り返しミラー830として図示した光学素子をさらに備えている。
【0122】
したがって、例示的なシステムは、第1および第3の次元において実質的に平面内に延び、第2の次元において高さを有する概ね平面的な配置を有する。本明細書で説明するように、システムは、積層された第1および第2の平面層を占有する、またはその中に位置していると言ってもよい。高さが最小化されることにより-2次元の第1のレプリケータの最大サイズ/高さが減少することにより-視野とアイボックスのサイズ要件を満たすために、従来の配置よりも少ないスペースで収容できる、同程度の2次元瞳拡大を提供する、より小型の配置が提供される。注目すべきは、ミラー平面/折り返し830は、第1のレプリケータの入力ビームおよびレプリカビームを、例えば図5Aのシステムのように実質的に直交するのではなく、第2のレプリケータの平面に対して実質的に平行に伝搬させることを可能にすることによって、システム全体の小型化に寄与する。
【0123】
図12は、図11のシステムの第2のレプリケータ840の出力ポートで形成されたレプリカの2次元配列を示し、これは、ディスプレイシステムのアイボックスに伝搬されて見ることができる。注目すべきは、第1のレプリケータは、アイボックスの水平な次元に射出瞳を拡大し、第2のレプリケータは、垂直方向に射出瞳を拡大する。したがって、第1のレプリケータのそれぞれの導波路800、800’によって形成される2つの1次元のレプリカの配列R1~Rn、R1’~Rn’は、アイボックスの水平な次元に延びる。図示の実施例では、第1のレプリケータによって形成されたレプリカR1~Rn、R1’~Rn’の、第2の次元における2つの配列間のずれた配置/変位Δy’は、第2のレプリケータ840によって形成されたレプリカ間の第2の次元における間隔(例えば、レプリカの幅bに対応する)に実質的に相当する。このように、レプリカのパターン(場合によっては、実質的に継ぎ目のないパターン)が、第2の次元(すなわち、アイボックス内の異なる垂直位置)に形成される。
【0124】
図12に示すように、一方の第1の導波路800によって形成されたレプリカR1~Rnの配列は、アイボックスの右側で(片目または両目で)見ることができ、他方の第1の導波路800’によって形成されたレプリカR1’~Rn’の配列は、アイボックスの左側で(片目または両目で)見ることができる。レプリカR1~Rn、R1’~Rn’の両方の配列は、アイボックスの中心から(それぞれの左目と右目で)見ることができる。レプリカR1~Rn、R1’~Rn’の2つの配列の間の分割境界は、上述したように、一対の第1の導波路800、800’の入力端の重なりにより、千鳥状または段状になる。当業者であれば理解できるように、この段差のある境界は、第1の次元の重なり量と方向を変えることで、設置の要件に基づいて、アイボックスの左半分または右半分に移動してもよい。
【0125】
実施形態に係る第1のレプリケータを備えるシステムは、本明細書で説明するように、ホログラフィックヘッドアップディスプレイで使用してもよい。いくつかの配置では、図2~4を参照して上述したような角度チャネル/コンテンツからなるホログラムなどのホログラムで符号化された光、または画像が、2次元瞳拡大/複製を提供するためにレプリケータシステムに入力されることがある。いくつかの実施形態では、一対の第1の導波路800、800’への入力光ビームは、同じであってもよい(例えば、同じディスプレイ装置またはシステムによって提供されてもよい)。したがって、角度チャネル/コンテンツを含むホログラムを使用する例では、両方の第1の導波路800、800’への入力ビームは、水平方向および垂直方向のすべての角度チャネル/コンテンツを運んでもよい。他の実施形態では、一対の第1の導波路800、800’への入力光ビームは、異なっていてもよい(例えば、それぞれの/異なるディスプレイ装置またはシステムによって提供されてもよい)。したがって、実施例では、入力ビーム950、950’は、異なる画像コンテンツを運んでもよい。例えば、一方の第1の導波路800への入力ビーム950は、右目用のホログラムまたは画像を運び、他方の第1の導波路800’への入力ビーム950’は、左目用のホログラムまたは画像を運んでもよい。したがって、一方の第1の導波路800への入力ビーム950は、第1/右目ディスプレイシステムから受光され、他方の第1の導波路800’への入力ビーム950’は、第2/左目ディスプレイシステムから受光されてもよい。
【0126】
角度チャネル/コンテンツを含むホログラムを使用する例では、一方の第1の導波路800への入力ビーム950は、水平方向の視野の右側(例えば、水平方向の視野の0°~+5°)に角度チャネル/コンテンツを含む第1ホログラムを運んでもよく、他の第1の導波路800’の入力ビーム950’は、水平方向の視野の左側(例えば、水平方向の視野の0°~-5°)に角度チャネル/コンテンツを含む第2のホログラムを運んでもよい。注目すべきは、そのような例では、水平方向の全角度コンテンツは、視聴者によって全視野(例えば、-5°~+5°)がアイボックスで片目を使用して見られることがあるように、アイボックスの中心の周りの領域から(水平方向に)見ることができることである。特に、アイボックスの極めて中心(すなわち0度)にある片目は、全視野(すなわち両方のホログラム)に対する光線を受け取ってもよい。したがって、中心付近のアイボックス位置(すなわち、水平方向に0度)については、一方の目は、第1の導波路のうちの1つ(例えば、視野の左側の角度チャネルに対応する)によって形成されたレプリカの配列から第1のホログラムの光線を受光し、他方の目は、第1の導波路のうちの他の1つ(例えば、視野の右側の角度チャネルに対応する)によって形成されたレプリカの配列から第2のホログラムの光線を受光してもよい。当業者であれば理解できるように、この効果は、観察者が、両目が同じレプリカの配列から、したがって同じ第1の導波路からしか光線を受け取ることができない中心(0度)から非常に遠いアイボックス位置に移動して、両目が同じホログラムの光線を受け取るようになるまで保持される。したがって、第1の次元(例えば水平の次元)におけるレプリカの配列R1~RnおよびR1’~Rn’の重なりの量は、アイボックスにおける視聴体験を最適化するように、設置条件に従って選択してもよい。
【0127】
他の配置では、ホログラムのホログラフィック復元(または「再生画像」)が形成されてもよく、ホログラフィック復元または画像の光がレプリカシステムに入力されて2次元瞳拡大を提供してもよい。一対の第1の導波路800、800’への入力光ビーム950、950’は、上述したように、同じであっても異なっていてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、少なくとも第2の導波路840、および任意に一対の第1の導波路800、800’の入力ポート(または「入口開口」)は、完全に透過的である代わりに(部分的に)透過反射性素子を備える。特に、入力ポートは、それぞれの導波路840の一対の平行な反射面のうちの1つ、例えばその完全な反射面に形成される。入力ポートの透過反射性素子は、入力光を受光して部分的に透過させ、導波路内で光を部分的に反射させるように配置されている。導波路の入力ポートに適した透過反射性素子の例は、2021年12月21日の同時係属中の英国特許出願2118613.5に記載されており、これは参照によりここに組み込まれる。
【0129】
同時係属中の英国特許出願2118613.5に記載されているように、導波路の部分透過性-部分反射性の入力ポートを使用することで、入力ポートに入射する発散光線束の全ての光線をインカップリングしてトラップすることができる。したがって、複数の角度チャネルを有するホログラムを備える実装においては、全ての異なる角度成分を表す光を導波路に結合し、その内部に閉じ込めることができる。英国特許出願2118613.5に記載されているように、透過反射性素子は、より多くの角度コンテンツを保持するために、瞳の拡大方向において段状になっていてもよい。しかしながら、実施形態に係る第1のレプリケータを形成する一対の第1の導波路800、800’の(第2の次元における)減少した「高さ」のために、レプリカの一次元アレイR1~Rn、R1’~Rn’を第2の導波路840に結合するために必要な入力ポート窓は減少する。したがって、第2の導波路840には、単一の導波路に必要とされるよりも小さい(すなわち、第2の次元において短い)入力ポートが必要とされ、第2の導波路への光インカップリング効率の改善をもたらす。したがって、英国特許出願2118613.5と本開示との間には、相乗効果がある。
【0130】
例えば、ヘッドアップディスプレイによる自動車産業への適用など、回折光を用いて画像を形成し、実世界での適用に適したアイボックスの大きさと視野を提供するシステムが本明細書に開示される。回折光は、例えばフーリエホログラムやフレネルホログラムのようなホログラムなど、回折構造から画像のホログラフィック復元を形成する光である。回析や回折構造を利用すると、非常に小さな(例えば1マイクロメートルの)画素を高密度に持つディスプレイ装置が必要となり、これは実際には小さな(例えば1センチメートルの)ディスプレイ装置を意味する。本発明者らは、例えば発散する(コリメートされない)光線束を含む回折光である回折ライトフィールドを用いた2D瞳拡大をどのように提供するのかという問題に取り組んだ。
【0131】
多様な場面で、ディスプレイシステムは、例えば空間光変調器(SLM)または液晶温シリコン(LCoS)SLMなど、画素化ディスプレイ装置のように、回折光または発散光を提供または形成するように配置されたディスプレイ装置を備えている。このような場面では、空間光変調器(SLM)の開口部は、システムの開口絞りになっている。すなわち、空間光変調器の開口部、より具体的には、SLM内に形成された光変調画素の配列を区切る領域の大きさが、システムから出射することのできる光線束の大きさ(例えば、空間的広がり)を規定する。本開示によれば、システムの射出瞳(光の回折のためのピクセルサイズを有する小型ディスプレイ装置によって制限される)が、少なくとも1つの瞳拡大器を使用することで空間的に拡大され、より大きくなることを反映するために、システムの射出瞳が拡大されることが記載されている。
【0132】
付加的な特徴
本明細書に記載された方法およびプロセスは、コンピュータ可読媒体上で具現化されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリ、およびキャッシュメモリなどの、一時的または永続的にデータを記憶するように構成された媒体を含む。「コンピュータ可読媒体」という用語はまた、命令が1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、全体的または部分的に本明細書に記載された方法のいずれか1つまたは複数をマシンに実行させるような、マシンによる実行のための命令を記憶することが可能な任意の媒体または複数の媒体の組合せを含むと解釈されるべきである。
【0133】
「コンピュータ可読媒体」という用語は、クラウドベースのストレージシステムも包含する。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ソリッドステートメモリチップ、光ディスク、磁気ディスク、またはそれらの任意の適切な組合せの例示的な形態の1つまたは複数の有形で非一時的なデータリポジトリ(たとえば、データボリューム)を含むが、それらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態では、実行のための命令はキャリア媒体によって伝達されてもよい。そのようなキャリア媒体の例には、一時的な媒体(たとえば、命令を伝達する伝搬信号)が含まれる。
【0134】
添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態および変形形態が作成され得ることは、当業者には明らかであろう。本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内のすべての修正形態および変形形態を網羅する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12