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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】A/M/X材料の製作方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 21/22 20060101AFI20241210BHJP
   H10K 71/15 20230101ALI20241210BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20241210BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241210BHJP
   C07F 7/24 20060101ALI20241210BHJP
   C07F 7/22 20060101ALI20241210BHJP
   C07F 1/08 20060101ALI20241210BHJP
   C07F 1/00 20060101ALI20241210BHJP
   C07F 9/90 20060101ALI20241210BHJP
   C07F 13/00 20060101ALI20241210BHJP
   C09K 11/75 20060101ALI20241210BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20241210BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20241210BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20241210BHJP
   H10K 30/40 20230101ALN20241210BHJP
   H10K 30/82 20230101ALN20241210BHJP
   H10K 30/86 20230101ALN20241210BHJP
   H10K 30/85 20230101ALN20241210BHJP
【FI】
C01G21/22
H10K71/15
H10K85/50
H10K85/60
C07F7/24
C07F7/22 V
C07F1/08 Z
C07F1/00 E
C07F9/90
C07F13/00 A
C09K11/75
C09K11/61
C09K11/08 A
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/82
H10K30/86
H10K30/85
【請求項の数】 39
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023142087
(22)【出願日】2023-09-01
(62)【分割の表示】P 2021524125の分割
【原出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2023171723
(43)【公開日】2023-12-05
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】1811539.4
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠弥
(72)【発明者】
【氏名】ウェンガー,バーナード
(72)【発明者】
【氏名】スネイス,ヘンリー ジェームズ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107099290(CN,A)
【文献】PARK, Joong Pill et.al,DYES AND PIGMENTS,2017年,VOL:144,PAGE(S):151 - 157,http://dx.doi.org/10.1016/j.dyepig.2017.05.025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G
H10K
C07F
C09K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質ペロブスカイトA/M/X材料を製造する方法であって、前記結晶質ペロブスカイトA/M/X材料が、式:
[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]は、(H 2 N-C(H)=NH 2 ) + 、アルカリ金属カチオン、アミン、C 1~6 アルキルアミン、イミン、C 1~6 アルキルイミン、C 1~6 アルキル、C 2~6 アルケニル、C 3~6 シクロアルキル及びC 6~12 アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、C 1~10 アルキルアンモニウム、C 2~10 アルケニルアンモニウム、C 1~10 アルキルイミニウム、C 3~10 シクロアルキルアンモニウム及びC 3~10 シクロアルキルイミニウムから選択される1種以上のAカチオンを含み、
[M]は、Pd 4+ 、W 4+ 、Re 4+ 、Os 4+ 、Ir 4+ 、Pt 4+ 、Sn 4+ 、Pb 4+ 、Ge 4+ 、Te 4+ 、Bi 3+ 、Sb 3+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、Cd 2+ 、Cu 2+ 、Ni 2+ 、Mn 2+ 、Fe 2+ 、Co 2+ 、Pd 2+ 、Ge 2+ 、Sn 2+ 、Pb 2+ 、Yb 2+ 、及びEu 2+ から選択される金属又は半金属カチオンである1種以上のMカチオンを含み、
[X]は、F - 、Cl - 、Br - 、及びI - から選択される1種以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップを含
方法が、前記結晶質ペロブスカイトA/M/X材料を含む光電子デバイスを製造するステップをさらに含み、
前記光電子デバイスが、光起電デバイスである、
方法。
【請求項2】
前記光起電デバイスが、太陽電池である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶質ペロブスカイトA/M/X材料の薄膜を調製する方法であり、
c)任意選択で、前記沈殿物を洗浄するステップ、
d)前記沈殿物を有機溶媒に溶解して、膜形成溶液を形成するステップ、及び
e)前記膜形成溶液を基材上に分散させるステップ
をさらに含
前記光電子デバイスが、前記結晶質ペロブスカイトA/M/X材料の前記薄膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶質ペロブスカイトA/M/X材料の薄膜を調製する方法であり、
c’)任意選択で、前記沈殿物を洗浄するステップ、
d’)前記沈殿物を蒸発させるステップ、及び
e’)蒸発させた前記沈殿物を基材上に堆積させるステップ
をさらに含
前記光電子デバイスが、前記結晶質ペロブスカイトA/M/X材料の前記薄膜を含む光電子デバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上のAカチオンがモノカチオンであり、前記1種以上のMカチオンがジカチオンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式[A]a[M]b[X]cの化合物が式[A][M][X]3の化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式[A]a[M]b[X]cの化合物が式[A]2[M][X]6の化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶質ペロブスカイトA/M/X材料が式[A]a[M]b[X]cの2種以上の化合物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
[A]が2種以上の異なるAカチオンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)の前に、第1のA前駆体の溶液を第2のA前駆体の溶液と組み合わせることによって前記水溶液を調製するステップを含み、
前記第1のA前駆体が第1のAカチオンを含み、
前記第2のA前駆体が第2のAカチオンを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
[X]が2種以上の異なるXアニオンを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)の前に、第1のM前駆体の溶液を第2のM前駆体の溶液と組み合わせることによって前記有機溶液を調製するステップを含み、
前記第1のM前駆体が第1のXアニオンを含み、
前記第2のM前駆体が第2のXアニオンを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶液がハロゲン化水素酸を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶液が式HX’[式中、X’はXアニオンのうち1種である]のハロゲン化水素酸を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶液と一緒にした前記水溶液中の前記1種以上のAカチオン、前記1種以上のMカチオン及び前記1種以上のXアニオンのそれぞれの相対モル量が、式[A]a[M]b[X]cの化合物中の前記1種以上のAカチオン、前記1種以上のMカチオン及び前記1種以上のXアニオンのそれぞれの相対モル量と等しい、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
それぞれのAカチオンが、アルカリ金属カチオン、アミン、C1~6アルキルアミン、イミン、C1~6アルキルイミン、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル及びC6~12アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、C1~10アルキルアンモニウム、C2~10アルケニルアンモニウム、C1~10アルキルイミニウム、C3~10シクロアルキルアンモニウム及びC3~10シクロアルキルイミニウムから選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
それぞれのAカチオンが、Cs + 、Rb + 、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム、オクチルアンモニウム、(H 2 N-C(H)=NH 2 ) + 、及びグアニジニウムのうちの1種以上から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
それぞれのA前駆体が、Aカチオン又はAカチオンのうち1種のハロゲン化物塩である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
それぞれの金属又は半金属Mカチオンが、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
それぞれの金属又は半金属Mカチオンが、Sn 2+ 、Pb 2+ 、Cu 2+ 、Ge 2+ 、及びNi 2+ から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
それぞれの金属又は半金属Mカチオンが、Pb 2+ である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
それぞれのM前駆体が、Mカチオン又はMカチオンのうち1種のハロゲン化物塩である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
それぞれのXアニオンが、Cl-又はBr-から選択される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
[A]a[M]b[X]cが、少なくとも2種の異なるAカチオン及び少なくとも2種の異なるXアニオンを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
[A]がCs+及びRb+を含み、[X]がBr-及びCl-を含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記水性溶媒が、20体積%未満の有機溶媒を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記水性溶媒が、10体積%未満の有機溶媒を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記有機溶液中の前記有機溶媒が、20体積%未満の水を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記有機溶液中の前記有機溶媒が、10体積%未満の水を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記有機溶液中の前記有機溶媒が、極性有機溶媒を含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記有機溶液中の前記有機溶媒が、水と混和性のある有機溶媒を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記有機溶液中の前記有機溶媒が、DMFを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(d)の前記有機溶媒が、極性溶媒を含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(d)の前記有機溶媒が、DMSO及び/又はDMFを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(e)が、前記基材上に前記膜形成溶液をスピンコーティングするステップを含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
f)前記基材上の前記膜形成溶液から、前記有機溶媒を除去するステップ
をさらに含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
f)前記基材上の前記膜形成溶液から、前記有機溶媒を蒸発により除去するステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
f)前記基材上の前記膜形成溶液から、前記有機溶媒を、蒸発により、15~150℃の温度で除去するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
f)前記基材上の前記膜形成溶液から、前記有機溶媒を、蒸発により、少なくとも1分間の間、除去するステップさらに含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願に至ったプロジェクトは、Marie Sklodowska-Curie助成金契約番号:706552で欧州連合のホライズン2020の研究及びイノベーションプログラムからの資金を受けている。
【0002】
本発明は、式[A]a[M]b[X]cの化合物[式中、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である]を含む結晶質A/M/X材料を製造する方法を提供する。特に本発明は、前記結晶質化合物の薄膜を製造する方法を提供する。本発明の方法により得られ得る又は得られる薄膜、及び前記薄膜を含む光電子デバイス(例えばLED又は太陽電池)もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギーを光に及びその逆に変換する光活性半導体材料に対する世界的に大きな需要がある。このような材料は広範囲の半導体デバイスにおいて有用である。例えば、発光材料は、応用、例えば、ルミネセントスクリーン及び発光ダイオード(LED)の製造において有用である。光吸収材料は、太陽電池の製造において高い需要がある。
【0004】
有機種は現在、発光材料の製作において広く使用されている。しかしながら有機種は、多くの場合可視スペクトルの青色領域において発光が弱いというデメリットを有する。例えば有機LED(OLED)は典型的には、可視発光スペクトルの赤色及び緑色領域において最大で20%の変換効率を有する。しかしながら、それらは多くの場合、可視スペクトルの青色領域において最大で10%の変換効率しか達成することができない。この1つの重要な理由は、OLEDにおける高効率の赤色及び緑色の発光が、すべての一重項及び三重項励起子の放射再結合に依拠することである。一般に有機エミッターにおけるスピン禁制である三重項-三重項電子遷移は、リン光性金属錯体の導入によって可能になる。しかしながら、このような金属錯体は、スペクトルの青色領域において利用できないか又は安定性及び効率が欠如している。
【0005】
ハロゲン化鉛ペロブスカイトは、高発光性の半導体材料であるため、光活性材料として望ましい候補である。高発光性のペロブスカイトとは、薄膜において20%以上の放射性外部量子効率を有するペロブスカイトを意味するものとする。ハロゲン化鉛ペロブスカイトは式APbX3の材料[式中、Xはハライドである]である。
【0006】
金属ハライドペロブスカイト、特にハロゲン化鉛ペロブスカイトは、このようなペロブスカイトのバンドギャップがこれらの化学組成を調節することによりチューニング可能なことが示されていることから、特に有望な半導体材料である。例えばLinaburgら(「Cs1-xRbxPbCl3 and Cs1-xRbxPbBr3 solid solutions: understanding octahedral tilting in lead halide perovskites」、Chem. Mater.、29巻、3507~3514頁、2017年)により行われた研究は、セシウム(ceasium)ハロゲン化鉛ペロブスカイト中の異なるRb含有量は、バンドギャップを有意に変えることができることを示している。チューニング可能なバンドギャップは、材料が光を吸収又は発光する波長での正確なエンジニアリングを可能にするので、光電子用途に使用されている半導体材料に対して有利である。
【0007】
ペロブスカイトのバンドギャップを正確に制御するため、固体状態の高品質ペロブスカイト材料を得て、これらの化学量論(stoichiometry)を正確に制御することが重要である。ペロブスカイト材料を製造する公知の方法には、この点に関する改善に対する余地が残されている。薄膜を合成するために使用されている典型的な湿式方法は、Poglitsch及びWeberにより「Dynamic disorder in methylammonium trihalogenplumbates (II)observed by millimetre-wave spectroscopy」、J. Chem. Phys.、87巻(11号)、6373~6378頁、1987年)に記載されている。別個の化学前駆体(この場合、CH3NH2及びPbX2[式中、Xはハライドである])をハロゲン化水素酸HXの濃縮水溶液に溶解する。次いで、溶液を冷却して、温度が急降下すると生じる溶質の過飽和により結晶の成長を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Linaburgら(「Cs1-xRbxPbCl3 and Cs1-xRbxPbBr3 solid solutions: understanding octahedral tilting in lead halide perovskites」、Chem. Mater.、29巻、3507~3514頁、2017年)
【文献】Poglitsch及びWeberにより「Dynamic disorder in methylammonium trihalogenplumbates (II)observed by millimetre-wave spectroscopy」、J. Chem. Phys.、87巻(11号)、6373~6378頁、1987年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの湿式方法には、結晶形成溶液における様々な化学前駆体の溶解度が非常に異なる可能性があるという特定の困難が伴う。したがって、特に前駆体の溶解度が温度と共に変動する場合、所望の値における結晶形成溶液中のそれぞれの前駆体の濃度を固定するという問題に遭遇する。多くの場合、前駆体を溶解するという目的に対して最適な溶媒組成は、結晶化(冷却、スピンコーティング又は他の結晶化方法による)に対して最適な溶媒組成とは異なる。したがって、多くの場合、妥協がなされなければならず、前駆体を溶解する目的及び結晶成長を推進することに対して最適ではない特性を有する溶媒を選択せざるを得ない。
【0010】
したがって、これら公知の湿式方法を使用して、正確な化学量論的制御を達成するのは非常に困難である。化学量論の不完全な制御は、乏しいバンドの定義を有する結晶質生成物及び薄膜につながる。これによって、正確な組成の制御を介してバンドギャップを制御することが極めて困難となる。加えて、乏しい化学量論の制御は、高密度の結晶欠陥、例えば空孔、格子間欠陥及びアンチサイト欠陥を有する結晶をもたらし得、これが、材料中の高密度の電子的欠陥をもたらし得る。
【0011】
さらに、前駆体の溶解度を改善するための、結晶化中に使用する温度又は溶媒についての妥協は、準最適な結晶化条件並びにこうして得られた結晶及び薄膜の品質の低下につながり得る。低品質の結晶及び薄膜は、より多くの欠陥を含有する可能性があり、光電子特性のさらなる低下につながり、劣化しやすいこともある。
【0012】
前駆体の異なる溶解度の問題は、これまでは気相堆積技術を使用して対処されてきた。しかしながら、これらの方法は遅く、複雑な装置を必要とするので不便である。
【0013】
結果的に、操作が簡単であり、しかも高品質で、正確に制御された化学量論を有する、したがって正確にチューニング可能なバンドギャップを有する結晶質生成物、特に薄膜を提供することができる方法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一般的に、結晶質A/M/X材料の製作において前駆体として使用される塩は異なる溶解度を有する。例えば無機ハロゲン化物塩(例えばCs+及びRb+のハロゲン化物塩)の溶解限度は、有機極性溶媒中の有機カチオンのハロゲン化物塩(例えばCH3NH3 +及びCH(NH2)2 +のハロゲン化物塩)の溶解度より一般的に低い。これら異なる溶解度は、特に2種以上の異なるカチオンが結晶質A/M/X生成物中に必要とされる場合、結晶質A/M/X種への合成経路を複雑にする。さらに、前駆体の溶解に対して最適な溶媒組成は、スピンコーティングプロセス中の結晶化に対して最適なものとは異なる場合が多い。これらの問題により、結晶質A/M/X生成物の化学量論を正確に制御することは一般的に困難である。
【0015】
これらの問題を克服するため、本発明者らは、1種以上のAカチオン前駆体を含む水溶液を、有機極性溶媒中のMカチオン前駆体で処理するステップを含み、有機溶媒が典型的には濃縮ハロゲン化水素酸も含有する新規合成経路を提供した。このような処理では、化学量論的結晶質A/M/X材料は沈殿する。したがって、本発明は、結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、結晶質A/M/X材料が、式:
[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]は1種以上のAカチオンを含み、
[M]は、金属又は半金属カチオンである1種以上のMカチオンを含み、
[X]は1種以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む、方法を提供する。
【0016】
上記方法は、[A]a[M]b[X]c生成物の化学量論の優れた制御を有利に可能にする。上記方法は副反応事例の驚くほどの低下に関連しているが、この副反応は望ましくないA/M/X副生成物を形成し、加工中のA、M及びX種のモル比に影響を与える。その結果、上記方法は従来技術の方法と比較して、所望しないA/M/X副生成物の混入が減少した結晶質A/M/X材料を生じる。このようして本発明の方法は、正確に制御された化学量論を有する生成物を高純度且つ良収率で生成する。
【0017】
さらに驚くことには、上記方法の生成物を採取し、この生成物を出発材料として使用して薄膜を形成することにより、生成された薄膜は非常に細かくチューニング可能な光学特性を有することが判明した。
【0018】
したがって、方法は典型的には、前記結晶質A/M/X材料の薄膜を調製する方法であり、方法は典型的には、(c)任意選択で、沈殿物を洗浄するステップ、(d)沈殿物を蒸発させる、又は沈殿物を有機溶媒に溶解して、膜形成溶液を形成するステップ、及び(e)基材上に、蒸発させた沈殿物を配置する、又は膜形成溶液を配置するステップをさらに含む。典型的にはステップ(e)は、蒸発させた沈殿物を基材上に堆積させる、又は膜形成溶液を基材上に分散させるステップを含む。
【0019】
第1の好ましい実施形態において、本発明の方法は、
c)任意選択で、沈殿物を洗浄するステップ、
d)沈殿物を有機溶媒に溶解して、膜形成溶液を形成するステップ、及び
e)膜形成溶液を基材上に分散させるステップ
をさらに含む。
【0020】
本発明の代替の好ましい実施形態において、方法は、
c’)任意選択で、沈殿物を洗浄するステップ、
d’)沈殿物を蒸発させるステップ、及び
e’)蒸発させた沈殿物を基材上に堆積させるステップ
をさらに含む。
【0021】
理論に制約されることを望まないが、ステップ(b)の直接的生成物は典型的には、沈殿物ばかりでなく、種、例えば残留する前駆体化合物又は副生成物も含有することが推測される。例えば洗浄するステップでこれら追加の成分を除去することにより、ステップ(b)で得た沈殿物から形成される薄膜は、A、M及びXなどの供給源により引き起こされるA/M/X材料の局所的化学量論的変動の影響を受けにくくなることが示唆される。
【0022】
本発明の方法は、式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む結晶質A/M/X材料を提供し、この方法は多種多様な化合物に適用可能である。いくつかの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は式[A][M][X]3の化合物である。いくつかの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は式[A]2[M][X]6の化合物である。さらに他の実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は式[A]4[M][X]6の化合物である。
【0023】
本発明の方法は、複数の種類のカチオン又はアニオンを含むA/M/X材料を製造するのに特に有益であり、このようなA/M/X材料では、従来の方法で化学量論を制御するのはさらに困難である。したがって、本発明の好ましい態様において、[A]は2種以上の異なるAカチオンを含み、及び/又は[X]は2種以上の異なるXアニオンを含む。
【0024】
本発明は、本明細書に定義される薄膜を製造する方法により得られ得る又は得られる薄膜をさらに提供する。
【0025】
本発明は、本明細書に定義される薄膜を含む光電子デバイス、例えば発光デバイス又は光起電力デバイスをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は、Cs1-xRbxPbBr3粉末(xは可変)のX線回折パターンを示すグラフである。(b)は、対応する材料の薄膜に対するX線回折パターンを示すグラフである。
図2】(a)は、Cs1-xRbxPbBr3粉末(xは可変)の吸収スペクトルを示すグラフである。(b)は、対応する材料の薄膜の吸収スペクトルを示すグラフである。
図3】(a)及び(b)は、Cs1-xRbxPbBr3粉末の定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。(c)及び(d)は、これらの対応する薄膜に対する定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。
図4】(a)は、従来法と本発明による方法(「発明の方法」)の両方から製作されたCs1-xRbxPbBr3薄膜の吸収スペクトルを示すグラフである。(b)は、従来法と本発明による方法(「発明の方法」)の両方から製作されたCs1-xRbxPbBr3薄膜の正規化された定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである((b)の挿入部は、非正規化された定常状態の光ルミネセンススペクトルを示す)。
図5】CsPb(Br1-xClx)3薄膜の(a)吸収スペクトル、(b)定常状態の光ルミネセンススペクトル、及び(c)正規化された光ルミネセンス(「PL」)スペクトルを示すグラフである。
図6】Cs1-xRbxPb(Br0.7Cl0.3)3薄膜の(a)吸収スペクトル、(b)定常状態の光ルミネセンススペクトル、及び(c)正規化された光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。
図7】異なるCs/Pb比を有するCsPb(Br0.7Cl0.3)3薄膜の(a)定常状態の光ルミネセンススペクトル、及び(b)正規化されたPLスペクトル、(c)吸収スペクトル及び(d)X線回折パターンを示すグラフである。
図8】A及びM前駆体溶液中の異なるCs/Pb比を使用して生成されたCsxPbBryの(a)粉末X線回折パターン、(b)吸収パターン及び(b)定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。
図9】異なるRb~Cs分数xを有する(Cs1-xRbx)4PbBr6の(a)粉末X線回折パターンの全範囲及び(b)2θ=12°~13.3°及び28°~30°のX線反射の部分範囲を示すグラフである。
図10】異なるRb濃度を有する(Cs1-xRbx)4PbBr6の(a)定常状態の光ルミネセンススペクトル及び(b)対応する正規化された光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。
図11】(Cs1-xFAx)4PbI3Br3の(a)粉末X線回折パターンの全範囲及び(b)2θ=12°~13°及び27°~30°のX線反射の部分範囲を示すグラフである。
図12】(Cs1-xFAx)4PbI3Br3の(a)定常状態の光ルミネセンススペクトル及び(b)対応する正規化された光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。
図13】1:1 Cs:Pb比を有する、本発明に従い調製したCsPbBr3を含む粉末のSEM画像である。暗いバックグランドはSEM試料ホルダーをコーティングしているカーボンテープである。画像の明るい領域はCsPbBr3粉末である。13Aはこの粉末を1,000倍率で示し、13Bはこの粉末を10,000倍率で示している。
図14】CsPb(Br0.7Cl0.3)3を含む粉末のSEM画像である。14Aはこの粉末を1,000倍率で示し、14Bはこの粉末を20,000倍率で示している。
図15】Cs:Pb比10:1の最初の溶液から本発明の方法を介して生成したCs4PbBr6を含む粉末を示す画像である。15Aはこの粉末を1,000倍率で示し、15Bはこの粉末を5,000倍率で示している。
図16】(a)は、異なるRb含有量を有する(Cs1-xRbx)4PbBr6粉末の正規化された定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。(b)は、模擬太陽光下(60℃で76mW・cm-2)の曝露時間の関数として、それらの粉末のPLQYを示すグラフである。
図17】(a)は、[A](Cs+及びRb+)と[M](Pb2+)との間の異なるモル比を有する、(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末の正規化された定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。(b)は、模擬太陽光下(60℃で76mW・cm-2)の曝露時間の関数として、それらの粉末のPLQYを示すグラフである。
図18】異なる合成経路を介して得たCs4PbBr6粉末の定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。(a)は、(i)鉛前駆体に対する溶媒としてDMSOが使用された本発明の方法により、及び(ii)鉛前駆体に対する溶媒として臭化水素酸が使用された方法により得られたそのような粉末のスペクトルを示している。(b)は同じスペクトルであり、正規化されたものを示している。
図19】Cs4PbBr6粉末のX線回折パターンを示すグラフである。中央のスペクトルは、鉛前駆体に対する溶媒としてDMSOが使用された本発明の方法で得られたCs4PbBr6粉末のスペクトルであり、上側のスペクトルは、鉛前駆体に対する溶媒として臭化水素酸が使用された方法により得られたCs4PbBr6粉末のスペクトルであり、下側のスペクトルは、空間群R-3cHにおけるCs4PbBr6の計算したX線回折スペクトルである。
図20】異なる合成経路により得た(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末の定常状態の光ルミネセンススペクトルを示すグラフである。(a)は、(i)鉛前駆体に対する溶媒としてDMSOが使用された本発明の方法により、及び(ii)鉛前駆体に対する溶媒として臭化水素酸が使用された方法により得られたそのような粉末のスペクトルを示している。(b)は、同じスペクトルであり、正規化されたものを示している。
図21】(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末のX線回折パターンを示すグラフである。中央のスペクトルは、鉛前駆体に対する溶媒としてDMSOが使用された本発明の方法により得た(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末のスペクトルであり、上側のスペクトルは、鉛前駆体に対する溶媒として臭化水素酸が使用された方法により得た(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末のスペクトルであり、下側のスペクトルは、空間群R-3cHにおけるCs4PbBr6の計算したX線回折スペクトルである。
図22】Rb4PbBr6粉末のX線回折パターンを示すグラフである。上側のスペクトルは、鉛前駆体に対する溶媒としてDMSOが使用された本発明の方法により得たRb4PbBr6粉末のスペクトルであり、下側のスペクトルは、鉛前駆体に対する溶媒として臭化水素酸が使用された方法により得たRb4PbBr6粉末のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これより以下に、本発明の方法の態様、及び本発明の方法により得られ得る生成物(例えば粉末又は薄膜)の態様を記載する。本発明の方法のある態様の記載は、関連性がある限り本発明の生成物に関連するものでもあり、逆もまた同様であると理解されたい。
【0028】
定義
本明細書で使用される「結晶質」という用語は、結晶質化合物を示し、これは拡張した3D結晶構造を有する化合物である。結晶質化合物は、典型的には結晶の形態であるか、又は多結晶質化合物の場合において結晶子(すなわち、1μm以下の粒径を有する複数の結晶)である。結晶は、多くの場合一緒に層を形成する。結晶質材料の結晶は任意のサイズであり得る。結晶が1nmから最大で1000nmの範囲の1つ以上の直径を有する場合、これらはナノ結晶と記載される場合がある。
【0029】
本明細書で使用される「有機化合物」及び「有機溶媒」という用語は、当技術分野におけるそれらの典型的な意味を有し、当業者に容易に理解されるだろう。
【0030】
本明細書で使用される場合、「に配置する(disposing on)」という用語は、1つの成分を別の成分上で利用可能にすること又は別の成分上に置くことを指す。第1の成分は、第2の成分上で利用可能にされてもよく、若しくは第2の成分上に直接置かれてもよく、又はそれらは第1及び第2の成分の間に介在する第3の成分が存在してもよい。例えば、第1の層が第2の層上に配置される場合、これは、第1及び第2の層の間に介在する第3の層が存在する場合を含む。しかしながら、典型的には、「に配置する」は、1つの成分を別の成分の上に直接置くことを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「多孔質」という用語は、その中に細孔が配列された材料を指す。したがって、例えば、多孔質材料において、細孔は材料が存在しない足場内の容積である。材料中の細孔は、開いた細孔だけでなく「閉じた」細孔を含んでいてもよい。閉じた細孔は、非連結空洞である材料中の細孔、すなわち、材料内で隔絶され、任意の他の細孔と連結せず、したがって材料が曝露される流体によって到達され得ない細孔である。一方で「開いた細孔」は、このような流体によって到達可能であろう。開いた孔及び閉じた孔の概念は、J. Rouquerolら、「Recommendations for the Characterization of Porous Solids」、Pure & Appl. Chem.、66巻、8号、1739~1758頁、1994年において詳細に議論されている。したがって、開いた孔は、流体の流れが有効に起こる多孔質材料の総容積のごく一部を指す。したがって、これは閉じた細孔を除外する。「開いた孔」という用語は、「連結した孔」及び「有効な孔」という用語と互換可能であり、当技術分野において通常、単に「孔」に短縮される。したがって、本明細書で使用される場合、「開いた孔なし」という用語は、有効な孔を有さない材料を指す。本明細書で使用される「非多孔質」という用語は、任意の孔がない、すなわち、開いた孔がなく、且つ閉じた孔もない、材料を指す
【0032】
本明細書で使用される場合、「層」という用語は、実質的に薄層状の形態(例えば、実質的に2つの垂直方向に伸長しているが、第3の垂直方向へのその伸長が制限される)である任意の構造を指す。層は、層の範囲にわたって変わる厚さを有していてもよい。典型的には、層はおよそ一定の厚さを有する。本明細書で使用される場合、層の「厚さ」は層の平均厚さを指す。層の厚さは、例えば、顕微鏡法、例えば、膜の断面の電子顕微鏡法を使用することによって、又は例えば、スタイラス表面形状測定装置を使用する表面プロフィロメトリーによって、容易に測定され得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「バンドギャップ」という用語は、材料中の上位の価電子帯と下位の伝導帯との間のエネルギー差を指す。当業者は、当然ながら、過度の実験の必要なく周知の手順を使用することによって、半導体のバンドギャップ(ペロブスカイトのバンドギャップを含む)を容易に測定することが可能である。例えば、半導体のバンドギャップは、半導体から光起電力ダイオード又は太陽電池を構築し、光起電力作用スペクトルを決定することによって、推定することができる。或いは、バンドギャップは、透過分光光度法を介するか又は光熱偏向分光法によるかのいずれかで光吸収スペクトルを測定することによって推定することができる。バンドギャップは、吸収係数×光子エネルギーの積の2乗を、x軸の光子エネルギーに対してY軸にプロットし、x軸との吸収端の直線切片が半導体の光学バンドギャップを与える、Tauc、J.、Grigorovici、R.及びVancu、a. Optical Properties and Electronic Structure of Amorphous Germanium、Phys. Status Solidi、15巻、627~637頁(1966年)に記載のTaucプロットを作製することによって決定することができる。或いは、光学バンドギャップは、[Barkhouse DAR、Gunawan O、Gokmen T、Todorov TK、Mitzi DB、Device characteristics of a 10.1% hydrazineprocessed Cu2ZnSn(Se,S)4 solar cell、Progress in Photovoltaics: Research and Applications 2012年;オンラインで公開、DOI: 10.1002/pip.1160.]に記載の入射する光子と電子の変換効率の開始を取ることによって、推定され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「半導体」又は「半導体材料」という用語は、導体と誘電体との間の中間の大きさの電気伝導性を有する材料を指す。半導体は、負(n)型半導体、正(p)型半導体又は真性(i)半導体であってもよい。半導体は、0.5~3.5eV、例えば、0.5~2.5eV又は1.0~2.0eV(300Kで測定された場合)のバンドギャップを有していてもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、「n型領域」という用語は、1種以上の電子輸送性(すなわち、n型)材料の領域を指す。同様に、「n型層」という用語は、電子輸送性(すなわち、n型)材料の層を指す。電子輸送性(すなわち、n型)材料は、単一の電子輸送性の化合物若しくは元素材料(elemental material)、又は2種以上の電子輸送性の化合物若しくは元素材料の混合物である。電子輸送性の化合物又は元素材料は、ドープされていなくてもよく、又は1種以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「p型領域」という用語は、1種以上の正孔輸送性(すなわち、p型)材料の領域を指す。同様に、「p型層」という用語は、正孔輸送性(すなわち、p型)材料の層を指す。正孔輸送性(すなわち、p型)材料は、単一の正孔輸送性の化合物若しくは元素材料、又は2種以上の正孔輸送性の化合物若しくは元素材料の混合物である。正孔輸送性の化合物又は元素材料は、ドープされていなくてもよく、又は1種以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「電極材料」という用語は、電極における使用に適切な任意の材料を指す。電極材料は、高い電気伝導性を有する。本明細書で使用される「電極」という用語は、電極材料からなるか、又は本質的に電極材料からなる領域又は層を示す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「置換されていてもよい」という用語は、問題となっている基が、置換基を有していてもよく、又は有していなくてもよいことを意味し、すなわち、これは、無置換又は置換であり得る。例えば、基は、0、1、2、3つ又はそれ以上の置換基、典型的には0、1又は2つの置換基を有していてもよい。置換基は、典型的には、置換又は無置換のC1~C20アルキル、置換又は無置換のアリール(本明細書に定義される通り)、シアノ、アミノ、C1~C10アルキルアミノ、ジ(C1~C10)アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アミド、アシルアミド、ヒドロキシ、オキソ、ハロ(halo)、カルボキシ、エステル、アシル、アシルオキシ、C1~C20アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、スルホン酸、スルフヒドリル(すなわち、チオール、-SH)、C1~C10アルキルチオ、アリールチオ及びスルホニルから選択され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、アルキル基は、置換又は無置換の直鎖状又は分枝鎖状の飽和基であり得、これは、多くの場合置換又は無置換の直鎖状の飽和基であり、より多くの場合無置換の直鎖状の飽和基である。アルキル基は、典型的には1~20個の炭素原子、通常1~10個の炭素原子を含む。C1~10アルキル基は、1~10個の炭素原子を有する無置換又は置換の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基である。C1~6アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する無置換又は置換の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基である。典型的には、これは、例えばメチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-プロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、n-ブチル、ペンチル又はヘキシルである。多くの場合、アルキル基はC1~4アルキル基である。「アルキル」という用語が本明細書のどこかで炭素の数を特定する接頭語なしで使用される場合、これは一般に1~20個の炭素を有する(これは本明細書において言及される任意の他の有機基にも適用される)。
【0040】
本明細書で使用される場合、アルケニル基は、置換又は無置換の直鎖状又は分枝鎖状の不飽和基であり得、これは、多くの場合置換又は無置換の直鎖状の不飽和基であり、より多くの場合無置換の直鎖状の不飽和基である。アルケニル基は、1個以上の炭素-炭素二重結合、例えば1、2又は3個の二重結合を含み得る。典型的には、アルケニル基は1個の二重結合を含む。アルケニル基は、典型的には2~20個の炭素原子、通常2~10個の炭素原子を含む。C2~10アルケニル基は、2~10個の炭素原子を有する無置換又は置換の直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基である。C2~6アルケニル基は、2~6個の炭素原子を有する無置換又は置換の直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基である。典型的には、これは、例えば、ビニル、プロペニル、プロパ-1-エニル、プロパ-2-エニル、ブテニル、ブタ-1-エニル、ブタ-2-エニル、ブタ-4-エニル、ペンテニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-2-エニル、ペンタ-3-エニル、ペンタ-4-エニル、ヘキセニル、ヘキサ-1-エニル、ヘキサ-2-エニル、ヘキサ-3-エニル、ヘキサ-4-エニル又はヘキサ-5-エニルである。
【0041】
本明細書で使用される場合、シクロアルキル基は、置換又は無置換の環状の飽和基であり得、これは、多くの場合無置換の環状の飽和基である。シクロアルキル基は、典型的には3~20個の炭素原子を含む。C3~10シクロアルキル基は、3~10個の炭素原子を有する無置換又は置換の環状の飽和炭化水素基である。C3~6シクロアルキル基は、3~6個の炭素原子を有する無置換又は置換の環状の飽和炭化水素基である。典型的には、これは、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0042】
本明細書で使用される場合、シクロアルケニル基は、置換又は無置換の環状の不飽和基であり得、これは、多くの場合無置換の環状の不飽和基である。シクロアルケニル基は、典型的には3~20個の炭素原子を含む。シクロアルケニル基は、1個以上の二重結合を含み得る(環中に存在する炭素原子の数に依存する)。C4~10シクロアルケニル基は、4~10個の炭素原子を有する無置換又は置換の環状の不飽和炭化水素基である。C4~10シクロアルケニル基は、3~6個の炭素原子を有する無置換又は置換の環状の不飽和炭化水素基である。典型的には、これは、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル又はシクロヘキセニルである。
【0043】
本明細書で使用される場合、アルキルオキシ基は、酸素基に結合した本明細書に定義されるアルキル基を含む基である。すなわち、アルコキシ基は、式-O-アルキル[式中、アルキル基は、本明細書に定義される通りである]を有する。したがって、C1~10アルキルオキシ基は、式-O-アルキル[式中、アルキル基は、本明細書に定義されるC1~10アルキル基である]の基である。
【0044】
本明細書で使用される場合、アルケニルオキシ基は、酸素基に結合した本明細書に定義されるアルケニル基を含む基である。すなわち、アルケニルオキシ基は、式-O-アルケニル[式中、アルケニル基は、本明細書に定義される通りである]を有する。したがって、C1~10アルケニルオキシ基は、式-O-アルケニル[式中、アルケニル基は、本明細書に定義されるC1~10アルケニル基である]の基である。
【0045】
本明細書で使用される「ハライド」という用語は、周期表のVIII族中の元素の一価アニオンを示す。「ハライド」としては、フルオリド、クロリド、ブロミド、及びヨージドが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される「ハロ」という用語はハロゲン原子を示す。例示的なハロ種としては、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード種が挙げられる。
【0047】
本明細書で使用される場合、アリール基は、典型的には、環部分に、6~14個の炭素原子、多くの場合6~12個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を含有する、置換又は無置換の単環式又は二環式の芳香族基である。C6~12アリール基は、6~12個の炭素原子を含有する置換又は無置換の単環式又は二環式の芳香族基である。例としては、フェニル、ナフチル、インデニル及びインダニル基が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される場合、アミノ基は、式-NR2[式中、それぞれのRは置換基である]の基である。Rは通常、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル又はアリールから選択され、ここで、アルキル、アルケニル、シクロアルキル及びアリールのそれぞれは本明細書に定義される通りである。典型的には、それぞれのRは、水素、C1~10アルキル、C2~10アルケニル及びC3~10シクロアルキルから選択される。好ましくは、それぞれのRは、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC3~6シクロアルキルから選択される。より好ましくは、それぞれのRは、水素及びC1~6アルキルから選択される。
【0049】
典型的なアミノ基はアルキルアミノ基であり、これは式-NR2[式中、少なくとも1つのRは本明細書に定義されるアルキル基である]の基である。C1~6アルキルアミノ基は、1~6個の炭素原子を含むアルキルアミノ基である。
【0050】
本明細書で使用される場合、イミノ基は、式R2C=N-又は-C(R)=NR[式中、それぞれのRは置換基である]の基である。すなわちイミノ基は、C=N部分を含む基であり、基部分が前記C=N結合のN原子上に存在するか又はC原子に結合している。Rは、本明細書に定義される通りであり、すなわち、Rは通常、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル又はアリールから選択され、ここで、アルキル、アルケニル、シクロアルキル及びアリールのそれぞれは本明細書に定義される通りである。典型的には、それぞれのRは、水素、C1~10アルキル、C2~10アルケニル及びC3~10シクロアルキルから選択される。好ましくは、それぞれのRは、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC3~6シクロアルキルから選択される。より好ましくは、それぞれのRは、水素及びC1~6アルキルから選択される。
【0051】
典型的なイミノ基は、アルキルイミノ基であり、これは式R2C=N-又は-C(R)=NR[式中、少なくとも1つのRは本明細書に定義されるアルキル基である]の基である。C1~6アルキルイミノ基は、R置換基が1~6個の炭素原子を含むアルキルイミノ基である。
【0052】
本明細書で使用される「エステル」という用語は、式アルキル-C(=O)-O-アルキル[式中、アルキル基は、同一又は異なり、本明細書に定義される通りである]の有機化合物を示す。アルキル基は置換されていてもよい。
【0053】
本明細書で使用される「エーテル」という用語は、本明細書に定義される2個のアルキル基で置換された酸素原子を示す。アルキル基は、置換されていてもよく、同一又は異なっていてもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、第四級窒素を含む有機カチオンを示す。アンモニウムカチオンとは式R1R2R3R4N+のカチオンである。R1、R2、R3、及びR4は置換基である。R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは典型的には、独立して、水素、又は置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル及びアミノから選択され、任意選択の置換基は好ましくはアミノ又はイミノ置換基である。通常、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、水素、並びに置換されていてもよいC1~10アルキル、C2~10アルケニル、C3~10シクロアルキル、C3~10シクロアルケニル、C6~12アリール及びC1~6アミノから選択され、存在する場合、任意選択の置換基は好ましくはアミノ基であり、特に好ましくはC1~6アミノである。好ましくは、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは、独立して、水素、並びに無置換のC1~10アルキル、C2~10アルケニル、C3~10シクロアルキル、C3~10シクロアルケニル、C6~12アリール及びC1~6アミノから選択される。特に好ましい実施形態において、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素、C1~10アルキル、及びC2~10アルケニル及びC1~6アミノから選択される。さらに好ましくは、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC1~6アミノから選択される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「イミニウム」という用語は、式(R1R2C=NR3R4)+[式中、R1、R2、R3、及びR4はアンモニウムカチオンとの関連で定義されている通りである]の有機カチオンを示す。したがって、イミニウムカチオンの特に好ましい実施形態において、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素、C1~10アルキル、C2~10アルケニル及びC1~6アミノから選択される。イミニウムカチオンのさらに好ましい実施形態において、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル及びC1~6アミノから選択される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ペロブスカイト」という用語は、CaTiO3の構造に関連する三次元結晶構造を有する材料、又は層がCaTiO3の構造に関連する構造を有する材料の層を含む材料を指す。CaTiO3の構造に関連する三次元結晶構造を有する材料は、「3Dペロブスカイト構造」を有するペロブスカイトである又は「3Dペロブスカイト」であると称することができる。CaTiO3の構造は式ABX3[式中、A及びBは異なるサイズのカチオンであり、Xはアニオンである]によって表すことができる。単位格子において、Aカチオンは(0,0,0)にあり、Bカチオンは(1/2,1/2,1/2)にあり、Xアニオンは(1/2,1/2,0)にある。Aカチオンは、通常Bカチオンよりも大きい。当業者は、A、B及びXが変わると、異なるイオンサイズが、ペロブスカイト材料の構造を、CaTiO3によって採用される構造から離れて対称性の低い歪んだ構造に歪め得ることを認識する。対称性はまた、材料がCaTiO3の構造に関連する構造を有する層を含む場合、低くなる。ペロブスカイト材料の層を含む材料は周知である。例えば、K2NiF4型構造を採用する材料の構造はペロブスカイト材料の層を含む。これらは、当技術分野において、上述の3Dペロブスカイトと構造が異なる「2D層状ペロブスカイト」と称される。2D層状ペロブスカイトは、式[A]2[M][X]4[式中、[A]は少なくとも1種のカチオンであり、[M]はカチオンAと異なるサイズの少なくとも1種のカチオンであり、[X]は少なくとも1種のアニオンである]によって表すことができる。
【0057】
当業者は、3Dペロブスカイト材料が式[A][B][X]3[式中、[A]は少なくとも1種のカチオンであり、[B]は少なくとも1種のカチオンであり、[X]は少なくとも1種のアニオンである]によって表すことができることを認識する。ペロブスカイトが2種以上のAカチオンを含む場合、異なるAカチオンは、秩序的又は無秩序な方法でAの部位上に分布していてもよい。ペロブスカイトが2種以上のBカチオンを含む場合、異なるBカチオンは、秩序的又は無秩序な方法でBの部位上に分布していてもよい。ペロブスカイトが2種以上のXアニオンを含む場合、異なるXアニオンは、秩序的又は無秩序な方法でXの部位上に分布していてもよい。2種以上のAカチオン、2種以上のBカチオン又は2種以上のXカチオンを含むペロブスカイトの対称性は、CaTiO3の対称性よりも低い。
【0058】
本明細書で使用される場合、「金属ハライドペロブスカイト」という用語はペロブスカイトを指し、この式は、少なくとも1種の金属カチオン及び少なくとも1種のハライドアニオンを含有する。
【0059】
本明細書で使用される「混合ハライドペロブスカイト」という用語は、少なくとも2種類のハライドアニオンを含有するペロブスカイト又は混合ペロブスカイトを指す。
【0060】
本明細書で使用される「混合カチオンペロブスカイト」という用語は、少なくとも2種類のAカチオンを含有する混合ペロブスカイトのペロブスカイトを指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ヘキサハロメタレート(hexahalometallate)」という用語は、式[MX6]n-[式中、Mは金属原子であり、それぞれのXは独立してハライドアニオンであり、nは1~4の整数である]のアニオンを含む化合物を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「光電子デバイス」という用語は、光を調達、制御、検出又は放出するデバイスを指す。光は、任意の電磁放射線を含むと理解される。光電子デバイスの例としては、光起電力デバイス、光ダイオード、太陽電池、光検出器、光トランジスタ、光電子増倍管、フォトレジスター、発色デバイス、感光性トランジスタ、発光デバイス、発光ダイオード及び電荷注入レーザーが挙げられる。
【0063】
「本質的に~からなる」という用語は、他の成分が組成物の本質的な特徴に物質的に影響を及ぼさないという条件で、組成物を本質的に構成する成分及び他の成分を含む組成物を指す。典型的には、本質的にある成分からなる組成物は、95重量%以上のそれらの成分又は99重量%以上のそれらの成分を含む。
【0064】
方法
本発明は、結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、結晶質A/M/X材料が、式:
[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]は1種以上のAカチオンを含み、
[M]は、金属又は半金属カチオンである1種以上のMカチオンを含み、
[X]は1種以上のXアニオンを含み、これらXアニオンは典型的には1種以上のハライドアニオンであり、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む、方法を提供する。
【0065】
本発明の方法において、水溶液を有機溶液と「接触させるステップ」は、前記溶液が接触状態に置かれることを意味する。このステップがどうのように実施されるかについて特定の制限はない。例えば水溶液が有機溶液に加えられてもよいし、又は有機溶液が水溶液に加えられてもよい。例えば方法は、有機溶液を反応容器内に準備し、水溶液を反応容器に添加するステップ、又は水溶液を反応容器内に準備し、有機溶液を反応容器に添加するステップを含み得る。他の実施形態において、水溶液及び有機溶液は、例えば両方の溶液を反応容器に同時に準備することにより、互いに添加することもできる。
【0066】
接触させるステップは、急速に又はゆっくりと実施することができる。例えば接触させるステップは、水溶液を徐々に(例えば滴下)有機溶液に添加することにより、又は有機溶液を徐々に(例えば滴下)水溶液に添加することにより実施することができる。
【0067】
水溶液は典型的には、水溶液の少なくとも50重量%の水を含む。好ましくは、水溶液は、水溶液の少なくとも60重量%の水、例えば水溶液の少なくとも70重量%又は少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%の水を含む。
【0068】
水溶液はA前駆体及び水性溶媒を含む。当然、水溶液は他の種を含み得る。例えば水溶液は、溶解した化合物(典型的には溶解したイオン性化合物)、例えば不純物、安定化剤、pH制御剤などを含み得る。さらに、水溶液は追加の溶媒を含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、水溶液は有機溶媒を実質的に含まない。「有機溶媒」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を取る。例えばいくつかの実施形態において、水溶液は、水溶液の1重量%以下の有機溶媒、好ましくは水溶液の0.5重量%以下の有機溶媒、例えば水溶液の0.1重量%以下、又は0.01重量%以下の有機溶媒を含む。
【0070】
当業者であれば認識しているように、溶液という用語には、水溶液が液体であることが暗示されている。しかしながら、熟練した判読者であればやはり認識しているように、実際に水溶液は少量の固体不純物を含み得る。このような固体不純物の典型的な例としては、少量の1種以上の溶解されていないA前駆体化合物が挙げられる。しかしながら、これら固体不純物は最小限に抑えることが好ましい。したがって、水溶液は、水溶液の1重量%未満の固体、好ましくは水溶液の0.5重量%以下の固体、例えば水溶液の0.1重量%以下、又は0.01重量%以下の固体を含むことが好ましい。
【0071】
水溶液はA前駆体及び水性溶媒を含む。以下にさらに詳細に論じられているように、A前駆体は、[A]中に存在する1種以上のAカチオンを含む化合物である。[A](すなわち、式[A]a[M]b[X]cの化合物における[A])が1種のみのAカチオンを含む場合、本発明の方法では1種のみのA前駆体が必要である。
【0072】
[A]が2種以上のカチオンを含む場合、本発明の方法においていくつかの選択肢が利用可能である。例えば2種以上のAカチオンを含むA前駆体が利用可能な場合、[A]中に存在する2種以上のAカチオンを含むそのA前駆体は水溶液中に存在し得る。或いは、方法のステップ(a)は、それぞれがA前駆体及び水性溶媒を含む複数の水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップを含み得る。また別の代替では、方法のステップ(a)で利用される水溶液は複数のA前駆体を含み得る。
【0073】
わかりやすく述べると、本発明の方法において、単一の水溶液を有機溶液と接触させることが好ましいこともある。特に、本発明の方法において、単一の水溶液を単一の有機溶液と接触させることが好ましいこともある。
【0074】
したがって、水溶液が、[A]中に存在する1種以上のAカチオンのそれぞれを含むことが好ましいこともある。本明細書で論じるように、[A]が2種以上のAカチオンを含む場合、[A]中に存在するすべてのAカチオンを含む水溶液は、1種のA前駆体を含む水溶液であって、前記A前駆体が[A]中に存在する1種以上のAカチオンのそれぞれを含む水溶液により、又は複数のA前駆体を含む水溶液であって、それぞれのA前駆体が[A]中に存在する1種以上のAカチオンを含み、前記複数のA前駆体が[A]中に存在するAカチオンのすべてを含む水溶液により作り出すことができる。
【0075】
有機溶液は典型的には、有機溶液の少なくとも50重量%の有機溶媒を含む。好ましくは、有機溶液は、有機溶液の少なくとも60重量%の有機溶媒、例えば有機溶液の少なくとも70重量%又は少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%の有機溶媒を含む。
【0076】
有機溶液は、M前駆体及び有機溶媒を含む。当然、有機溶液は他の種を含み得る。例えば有機溶液は、溶解した化合物(例えば溶解したイオン性化合物又は有機化合物であってもよい)例えば不純物、安定化剤、pH制御剤などを含み得る。さらに、有機溶液は追加の溶媒を含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、有機溶液は水を実質的に含まない。例えばいくつかの実施形態において、有機溶液は、有機溶液の5重量%以下の水、好ましくは有機溶液の1重量%以下の水、例えば有機溶液の0.5重量%以下、又は0.1重量%以下の水を含む。
【0078】
熟練した判読者であれば認識しているように、溶液という用語は、有機溶液が液体であることを暗示している。しかしながら、熟練した判読者であればまた、実際に有機溶液は少量の固体不純物を含み得ることも認識している。このような固体不純物の典型的な例としては、少量の1種以上の溶解されていないM前駆体化合物が挙げられる。しかしながら、これらの固体不純物は最小限に抑えられることが好ましい。したがって、有機溶液は、有機溶液の1重量%未満の固体、好ましくは有機溶液の0.5重量%以下の有機溶液の固体、例えば有機溶液の0.1%以下、又は0.01%以下の重量の固体を含むことが好ましい。
【0079】
有機溶液はM前駆体及び有機溶媒を含む。以下にさらに詳細に論じられているように、M前駆体は[M]中に存在する1種以上のMカチオンを含む化合物である。[M](すなわち、式[A]a[M]b[X]cの化合物における[M])が1種類のみのMカチオン含む場合、本発明の方法では1種のみのM前駆体が必要である。
【0080】
[M]が2種以上のカチオンを含む場合、本発明の方法においていくつかの選択肢が利用可能である。例えば2種以上のMカチオンを含むM前駆体が利用可能な場合、[M]中に存在する2種以上のMカチオンを含むそのM前駆体は有機溶液中に存在し得る。或いは、方法のステップ(a)は、それぞれがM前駆体及び有機溶媒を含む複数の有機溶液を、A前駆体及び有機溶媒を含む水溶液と接触させるステップを含み得る。また別の代替では、方法のステップ(a)で利用される有機溶液は複数のM前駆体を含み得る。
【0081】
わかりやすく述べると、本発明の方法において、単一の有機溶液を水溶液と接触させることが好ましいこともある。特に、本発明の方法において、単一の水溶液を単一の有機溶液と接触させることが好ましいこともある。
【0082】
したがって、有機溶液が、[M]中に存在する1種以上のMカチオンのそれぞれを含むことが好ましいこともある。本明細書で論じるように、[M]が2種以上のMカチオンを含む場合、[M]中に存在するすべてのMカチオンを含む有機溶液は、1種のM前駆体を含む有機溶液であって、前記M前駆体が[M]中に存在する1種以上のMカチオンのそれぞれを含む有機溶液により、又は複数のM前駆体を含む有機溶液であって、それぞれのM前駆体が[M]中に存在する1種以上のMカチオンを含み、前記複数のM前駆体が[M]中に存在するMカチオンのすべてを含む有機溶液により作り出すことができる。したがって、好ましい実施形態において、方法は、
a)1種以上のA前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、1種以上のM前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液に接触させるステップであって、1種以上のA前駆体が[A]中に存在するすべてのカチオンを一緒に含み、1種以上のM前駆体が[M]中に存在するすべてのカチオンを一緒に含む、ステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む。
【0083】
本発明の方法におけるXアニオン源に関して、本発明の方法において別個のX前駆体を準備する必要がないこともある。これは、いくつかの実施形態において、A前駆体(又は方法が複数のA前駆体を含む場合、これらのうちの少なくとも1種)及び/又はM前駆体(又は方法が複数のM前駆体を含む場合、これらのうちの少なくとも1種)はハロゲン化物塩だからである。好ましい実施形態において、A前駆体(又は存在する場合には複数のA前駆体)及びM前駆体(又は存在する場合には複数のM前駆体)は、[X]中に存在するXカチオンのそれぞれを一緒に含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、Xアニオンを含む化合物は、本発明の方法の間に提供される。[X]が単一のXアニオンを含む場合、そのXアニオンを含む化合物が提供され得る。[X]が複数のXアニオンを含む場合、1種以上、例えば前記複数のXアニオンのすべてを含む化合物が、本発明の方法の間に提供され得る。同等に、それぞれが前記複数のXアニオンの1種以上を含む複数の化合物が本発明の方法の間に提供され得る。1種以上のXアニオンを含むが、Aカチオン又はMカチオンのいずれも含まない化合物をX前駆体と称することができる。典型的には、X前駆体はXアニオンを含むハロゲン化水素酸、すなわち、式HX'の化合物である。
【0085】
いくつかの実施形態において、X前駆体は別個の溶液で提供され得る。例えばいくつかの実施形態において、方法は、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と、さらには、さらなる溶媒及びX前駆体を含むさらなる溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液、有機溶液及びさらなる溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含み得る。
【0086】
さらなる溶媒は特に限定されない。さらなる溶媒は水性溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。さらなる溶媒が水性溶媒である場合、さらなる溶媒は、水溶液中に存在するものと同じ水性溶媒であっても、そうでなくてもよい。さらなる溶媒が有機溶媒である場合、さらなる溶媒は、有機溶液中に存在するものと同じ有機溶媒であっても、そうでなくてもよい。さらなる溶液はさらなる溶媒に加えて1種以上の溶媒を含むことができる。
【0087】
しかしながら、わかりやすく述べると、反応中に接触させる溶液の数は少ないことが好ましいこともある。したがって、本発明の方法においてX前駆体が使用される場合、前記X前駆体が水溶液及び有機溶液のうちの少なくとも1つに存在することが好ましいこともある。例えば本発明の方法は、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップであって、水溶液及び/又は有機溶液がX前駆体を含む、ステップ、並びに b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含み得る。
【0088】
典型的には、有機溶液は1種以上のX前駆体(使用される場合)を含む。したがって、好ましい実施形態において、有機溶液はX前駆体を含む。特に好ましい実施形態において、有機溶液はハロゲン化水素酸を含む。
【0089】
例えば有機溶液は、式HX'[式中、それぞれのX’はハライドアニオンX又はハライドアニオンX([X]中に存在する)のうちの1種である]の1種以上のハロゲン化水素酸を含み得る。好ましくは、有機溶液は、[X]中に存在するXアニオンのそれぞれに対応する、式HX’のハロゲン化水素酸を含む。
【0090】
したがって、本発明の方法は、
a)それぞれが1種以上のA前駆体を含む1種以上の水溶液、それぞれが1種以上のM前駆体を含む1種以上の有機溶液、及び1種以上のXアニオンを接触させるステップ、並びに
b)1種以上のA前駆体、1種以上のM前駆体及び1種以上のXアニオンが接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む。
【0091】
A、M及び(存在する場合)X前駆体が接触状態に置かれた場合、これらは一般的に、水性溶媒と有機溶媒の両方で乏しい溶解度を有する[A]a[M]b[X]c化合物を形成することができる。したがって、最初の溶液及び反応混合物中のA、M及びXイオンの相対的な量に関わらず、[A]a[M]b[X]c化合物を含む沈殿物が一般的に形成する。
【0092】
しかしながら、方法のステップ(a)において接触したA、M及びXイオンが、所望の[A]a[M]b[X]c生成物中のこれらイオンの相対的モル比をほぼ反映する、互いに相対的なモル比で存在することを確実にすることが[A]a[M]b[X]c化合物の化学量論の制御の助けとなり得る。
【0093】
したがって多くの場合、1種以上の水溶液及び1種以上の有機溶液中のモル比[A]:[M]は、生成物中の[A]:[M]比とほぼ等しい。すなわち、水溶液中のAカチオンの合計モル濃度を、有機溶液中のMカチオンの合計モル濃度で割ったものは一般的に、aをbで割ったもの[式中、a及びbは[A]a[M]b[X]c化合物の通りである]と等しい。
【0094】
好ましい実施形態において、[A]a[M]b[X]c化合物が2種以上のAカチオンを含む場合、本発明の方法において水溶液は、所望の生成物中のこれらのモル比とほぼ同等のモル比で2種以上のAカチオンを含む。2種以上の異なるAカチオンは例えばAI及びAIIで示されてもよい。したがって、例として、[A]a[M]b[X]c化合物がAI及びAIIを3:1のモル比で含む場合(すなわち、[A]a[M]b[X]c化合物は[AI 0.75AII 0.25]a[M]b[X]cであってもよい)、水溶液はAIカチオン及びAIIカチオンを約3:1のモル比で含み得る。例えば本発明は、結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、結晶質A/M/X材料が、式:
[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]は2種のカチオンAI及びAIIを含み、
[M]は、金属又は半金属カチオンである1種以上のMカチオンを含み、
[X]は、ハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、
a)AI前駆体、AII前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含み、
水溶液中のAI:AIIのモル比が式[A]a[M]b[X]cの化合物中のAI:AIIのモル比とほぼ同じである、方法を提供する。
【0095】
同様に、別の好ましい実施形態において、[A]a[M]b[X]c化合物が2種以上のMカチオンを含む場合、本発明の方法において有機溶液は、所望の生成物中のこれらのモル比とほぼ同等のモル比で2種以上のMカチオンを含む。2種以上の異なるMカチオンは、例えばMI及びMIIで示されてもよい。したがって、例として、[A]a[M]b[X]c化合物がMI及びMIIを1:1のモル比で含む場合(すなわち、[A]a[M]b[X]c化合物は[A]a[MI 0.5MII 0.5]b[X]cであってもよい)、有機溶液はMIカチオン及びMIIカチオンを約1:1のモル比で含み得る。
【0096】
また同様に、[A]a[M]b[X]c化合物が2種以上のXアニオンを含む場合、本発明の方法において、組み合わせた水溶液及び有機溶液中の2種以上のXアニオンのモル比は一般的に、所望の生成物中のXアニオンのモル比とほぼ同等である。2種以上の異なるXカチオンは、例えばXI及びXIIで示されてもよい。したがって、例として、[A]a[M]b[X]c化合物がXI及びXIIを1:4のモル比で含む場合(すなわち、[A]a[M]b[X]c化合物は[A]a[M]b[XI 0.2XII 0.8]cであってもよい)、水溶液及び有機溶液を一緒にした中のXIアニオンとXIIアニオンとのモル比は、約1:4であってもよい。
【0097】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、有機溶液と一緒にした水溶液中の前記1種以上のAカチオン、前記1種以上のMカチオン及び前記1種以上のXアニオンのそれぞれの相対モル量は、式[A]a[M]b[X]cの化合物中の前記1種以上のAカチオン、前記1種以上のMカチオン及び前記1種以上のXアニオンのそれぞれの相対モル量と等しい。本実施形態において、方法は、その又はそれぞれのA前駆体を含む1種の水溶液及びその又はそれぞれのM前駆体を含む1種の有機溶液、及び任意選択でその又はそれぞれのX前駆体を含むことが好ましい。
【0098】
この実施形態の好ましい態様において、[X]は第1のXアニオン及び第2のXアニオンを含み、第1のXアニオンと第2のXアニオンとのモル比は、
(i)水溶液、
(ii)有機溶液、及び
(iii)式[A]a[M]b[X]cの化合物
のそれぞれで同じである。
【0099】
有機溶液及び水溶液(及び必要な場合、任意の追加の溶液)を接触させるプロセスは、反応混合物を形成する。「反応混合物」は、接触しているステップ(a)の水溶液及び有機溶液を含む。反応混合物は、追加の成分、例えばX前駆体を含むさらなる溶液を含んでいてもよい。有機溶液及び水溶液が接触状態に置かれて、反応混合物を形成した直後、反応混合物は典型的にはA前駆体及びM前駆体を含む。一部の沈殿が生じた後、反応混合物は固体結晶質A/M/X材料を含む沈殿物を含むことになる。さらに、反応混合物中のA前駆体及びM前駆体の量は、水溶液と有機溶液が接触状態に置かれた時点でのこれらの量と比較して減少することになる。
【0100】
本発明の方法において、前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物が形成する。沈殿物を形成「させるステップ」は、行為を必要としない場合がある。沈殿物の形成を引き起こすには、有機溶液及び水溶液(及び必要な場合、任意の追加の溶液)を接触させることにより単に前駆体を接触状態に置くだけで一般的に十分である。しかしながら、いくつかの実施形態において、沈殿物を形成「させるステップ」は、反応混合物を撹拌するステップ、例えば水溶液及び有機溶液を混合するステップを含んでいてもよい。沈殿物を形成「させるステップ」は、反応混合物を加熱するステップを含んでいてもよい。
【0101】
したがって、本発明の方法は、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させて、前記水溶液及び前記有機溶液を含む反応混合物を形成するステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含んでいてもよく、方法は、反応混合物を撹拌するステップを含んでいてもよい。
【0102】
反応混合物を撹拌する適切な方法は、当業者には周知であり、例えば反応混合物を、例えば撹拌棒を用いて撹拌することである。
【0103】
沈殿物を形成させるステップの間、方法は反応混合物を加熱するステップを含んでいてもよい。例えばステップ(b)は、反応混合物を25℃~120℃の温度、好ましくは30℃~100℃の温度、より好ましくは40℃~80℃の温度に加熱するステップを含んでいてもよい。反応混合物を加熱することは、関与する1種以上の前駆体が乏しい溶解度を有する場合、望ましいこともある。しかしながら、反応混合物の加熱はA/M/X生成物の沈殿を妨害し得るので、いくつかの実施形態において、ステップ(b)は反応混合物を加熱するステップを含まない。
【0104】
ステップ(b)で形成された沈殿物は結晶質A/M/X材料の結晶を含む。前記結晶は典型的には極小である。例えば前記結晶は一般的に、1000nm以下、例えば100nm以下、又は10nm以下の直径を有する。「直径」とは、結晶の内側に完全にフィットする最も大きな球の直径を意味する。結晶サイズは、標準的技術、例えばSEM、TEM又はDLS(すなわち動的光散乱)で便利に測定することができる。典型的には結晶サイズはSEMで測定される。
【0105】
したがって、いくつかの実施形態において、沈殿物の結晶の少なくとも80%又は少なくとも90%は100nm以下の直径を有し、好ましくは沈殿物の結晶の少なくとも80%又は少なくとも90%は10nm以下の直径を有する。
【0106】
いくつかの実施形態において、沈殿物は、2nm~1000nm、例えば10nm~100nmの直径を有する結晶を含む。例えばいくつかの実施形態において、沈殿物の結晶の少なくとも80%又は少なくとも90%は2nm~1000nmの直径を有し、好ましくは沈殿物の結晶の少なくとも80%又は少なくとも90%は10nm~100nmの直径を有する。
【0107】
いくつかの実施形態において、方法は、沈殿物が形成された後、沈殿物のサイズを減少させるステップを含んでいてもよい。このステップは、ステップ(b)の後及び/又はステップ(c)若しくはステップ(c’)の後に実施することができる。沈殿物のサイズを減少させるための典型的な方法は、機械的方法、例えばボール粉砕である。ボール粉砕は「Mechanochemical synthesis of advanced nanomaterials for catalytic applications」、Xuら、Chem. Commun.、2015年、51巻、6698頁に記載されている。
【0108】
粉砕後、沈殿物はいくらか小さな微粒子を含んでいてもよい。例えば粉砕後、沈殿物の結晶の少なくとも80%又は少なくとも90%は典型的には、2~100nm、例えば5~50nmの直径を有する。
【0109】
沈殿物は粉末の形態であってもよい。本発明による例示的な粉末は図13、14及び15に示されている。
【0110】
沈殿物中の結晶のサイズが小さいことから、沈殿物は多くの場合粉末と称することができる。沈殿物は、平均粒径が5~50nmである場合、多くの場合、ナノ粉末と称することができる。
【0111】
水溶液及び有機溶液の調製
本発明の方法は、少なくとも1種の有機溶液及び少なくとも1種の水溶液を含む。本発明のいくつかの実施形態において、方法は水溶液を調製するステップ、又は有機溶液を調製するステップ、又は水溶液及び有機溶液を調製するステップを含む。
【0112】
水溶液は水性溶媒及びA前駆体を含む。したがって、典型的には水溶液は、前記A前駆体を前記水性溶媒に溶解することにより調製することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は2種以上のAカチオンを含む。この実施形態の好ましい態様において、方法は、必要に応じてAカチオンのそれぞれを提供するための1種以上のA前駆体を含む単一の水溶液を、本明細書に定義される有機溶液と接触させるステップを含む。
【0114】
前記2種以上のAカチオンのそれぞれを含む単一のA前駆体が利用可能な場合、本発明に使用するための水溶液は、2種以上のAカチオンのそれぞれを含むA前駆体を水性溶媒に溶解することにより調製することができる。しかしながら、このような前駆体が入手できない場合、2種以上のA前駆体を含む水溶液を調製することが必要となり得る。この調製は、複数のA前駆体を単一の溶媒(典型的には水性溶媒)に溶解することにより行うことができる。或いは、調製は、1種以上のA前駆体を2種以上の溶媒のそれぞれに溶解し、続いて生成した溶液を組み合わせることにより行うこともできる。
【0115】
したがって、[A]が2種以上の異なるAカチオンを含むいくつかの実施形態において、方法は、ステップ(a)の前に、第1のA前駆体の溶液を第2のA前駆体の溶液と組み合わせることによって水溶液を調製するステップを含み、
第1のA前駆体が第1のAカチオンを含み、
第2のA前駆体が第2のAカチオンを含む。
【0116】
第1のA前駆体は「第1のAカチオン」を含み、これは記号AIを使用して好都合に言及することもできる。したがって、第1のA前駆体又は「AI前駆体」はカチオンAIを含む。第2のA前駆体は「第2のAカチオン」を含み、これは、AIとは異なるAカチオンを示すために好都合に記号AIIを使用して言及することもできる。したがって、第2のA前駆体又は「AII前駆体」はカチオンAIIを含む。第1のA前駆体の溶液は典型的には、本明細書に定義される水溶液である。第2のA前駆体の溶液もまた典型的には、本明細書に定義される水溶液である。
【0117】
それぞれのA前駆体のそれぞれの溶液は典型的には、A前駆体を水性溶媒に溶解することにより調製する。
【0118】
したがって、本発明は、結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、結晶質A/M/X材料が、式:
[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]はAIカチオン及びAIIカチオンを含み
[M]は、金属又は半金属カチオンである1種以上のMカチオンを含み、
[X]は、ハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、AI前駆体及び第1の水性溶媒を含む第1の水溶液を、AII前駆体及び第2の水性溶媒(第1の水性溶媒と同一又は異なっていてもよい)を含む第2の水溶液と組み合わせて、水溶液を形成するステップ、並びに
a)水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む、方法を提供する。
【0119】
いくつかの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は2種以上のMカチオンを含む。本実施形態の好ましい態様において、方法は、必要に応じてMカチオンのそれぞれを提供するための1種以上のM前駆体を含む単一有機溶液を、本明細書に定義される水溶液と接触させるステップを含む。
【0120】
前記2種以上のMカチオンのそれぞれを含む単一のM前駆体が利用可能な場合、本発明に使用するための有機溶液は、2種以上のMカチオンのそれぞれを含むM前駆体を有機溶媒に溶解することにより調製することができる。しかしながら、このような前駆体が入手可能でない場合、2種以上のM前駆体を含む有機溶液を調製することが必要となり得る。この調製は、複数のM前駆体を単一の溶媒(典型的には有機溶媒)に溶解することにより行うことができる。或いは、調製は、1種以上のM前駆体を2種以上の溶媒のそれぞれに溶解し、続いて生成した溶液を組み合わせることにより行うことができる。
【0121】
したがって、[M]が2種以上の異なるMカチオンを含むいくつかの実施形態において、方法は、ステップ(a)の前に、第1のM前駆体の溶液を第2のM前駆体の溶液と組み合わせることによって有機溶液を調製するステップを含み、
第1のM前駆体は第1のMカチオンを含み、
第2のM前駆体は第2のMカチオンを含む。
【0122】
第1のM前駆体は「第1のMカチオン」を含み、これは記号MIを使用して好都合に言及することもできる。したがって、第1のM前駆体又は「MI前駆体」はカチオンMIを含む。第2のM前駆体は「第2のMカチオン」を含み、これは、MIとは異なるMカチオンを示すために好都合に記号MIIを使用して言及することもできる。したがって、第2のM前駆体又は「MII前駆体」はカチオンMIIを含む。第1のM前駆体の溶液は典型的には、本明細書に定義される有機溶液である。第2のM前駆体の溶液もまた典型的には、本明細書に定義される有機溶液である。
【0123】
それぞれのM前駆体のそれぞれの溶液は典型的には、M前駆体を有機溶媒に溶解することにより調製する。有機溶媒のそれぞれは1種以上のX前駆体を含んでいてもよい。例えば有機溶媒のそれぞれは式HX’[式中、X’は[X]中に存在するXアニオンのうち1種である]のハロゲン化水素酸を含んでいてもよい。
【0124】
したがって、本発明は、結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、結晶質A/M/X材料が、式:
[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]は1種以上のAカチオンを含み、
[M]は、両方とも金属又は半金属カチオンであるMIカチオン及びMIIカチオンを含み、
[X]は、ハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、MI前駆体、第1の有機溶媒、及び任意選択でハロゲン化水素酸を含む第1の有機溶液を、MII前駆体、第2の有機溶媒(第1の有機溶媒と同一又は異なっていてもよい)、及び任意選択でハロゲン化水素酸を含む第2の有機溶液と組み合わせて、有機溶液を形成するステップ、並びに
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、前記有機溶液と接触させるステップ、並びに b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む方法を提供する。
【0125】
一実施形態において、本発明は、結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、結晶質A/M/X材料が、式:
[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]はAIカチオン及びAIIカチオンを含み、
[M]は、両方とも金属又は半金属カチオンであるMIカチオン及びMIIカチオンを含み、
[X]は、ハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、
MI前駆体、第1の有機溶媒、及び任意選択でハロゲン化水素酸を含む第1の有機溶液を、MII前駆体、第2の有機溶媒(第1の有機溶媒と同一又は異なっていてもよい)、及び任意選択でハロゲン化水素酸を含む第2の有機溶液と組み合わせて、有機溶液を形成するステップ、
AI前駆体及び第1の水性溶媒を含む第1の水溶液を、AII前駆体及び第2の水性溶媒(第1の水性溶媒と同一又は異なっていてもよい)を含む第2の水溶液と組み合わせて、水溶液を形成するステップ、並びに
a)前記水溶液を前記有機溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む方法を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は2種以上のXアニオンを含む。本実施形態の好ましい態様において、方法は、単一の有機溶液を、関連するXアニオンを一緒に含有する単一の水溶液と接触させるステップを含む。本実施形態において、水溶液及び/又は有機溶液がそれぞれ、式[A]a[M]b[X]cの化合物中に存在する2種以上のXアニオンを含むことが場合によって好ましいこともある。これは、沈殿物の化学量論を精密に平衡に保つのを助けることができる。
【0127】
このような実施形態において、前記2種以上のXアニオンのそれぞれを含む単一のA前駆体が利用可能な場合、本発明に使用するための水溶液は、2種以上のXアニオンのそれぞれを含むそのA前駆体を水性溶媒に溶解することにより調製することができる。同様に、前記2種以上のXアニオンのそれぞれを含む単一のM前駆体が入手可能な場合、本発明に使用するための有機溶液は、2種以上のXアニオンのそれぞれを含むM前駆体を有機溶媒に溶解することにより調製することができる。しかしながら、このような前駆体が入手できない場合、2種以上のA前駆体又はM前駆体をそれぞれ含む水溶液及び/又は有機溶液を調製することが必要となり得る。水溶液の場合、この調製は、それぞれが1種以上のXアニオンを含む複数のA前駆体を、単一の溶媒(典型的には水性溶媒)に溶解することにより行うことができる。或いは、調製は、それぞれが1種以上のXアニオンを含む1種以上のA前駆体を、2種以上の溶媒のそれぞれに溶解し、続いて生成した溶液を組み合わせることにより行うこともできる。同様に、有機溶液の場合、調製は、複数のM前駆体(それぞれが1種以上のXアニオンを含む)を単一の溶媒(典型的には有機溶媒)に溶解することにより行うことができる。或いは、調製は、1種以上のM前駆体(それぞれが1種以上のXアニオンを含む)を、2種以上の溶媒のそれぞれに溶解し、続いて生成した溶液を組み合わせることにより行うこともできる。
【0128】
例えば本発明は、結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、結晶質A/M/X材料が、式:[A]a[M]b[X]c
の化合物を含み
[式中、
[A]はAカチオンを含み、
[M]は、両方とも金属又は半金属カチオンであるMカチオンを含み、
[X]は、ハライドアニオンであるXIアニオン及びXIIアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、
XIアニオンを含有するM前駆体、第1の有機溶媒、及び任意選択でハロゲン化水素酸を含む第1の有機溶液を、XIIアニオンを含有するM前駆体、第2の有機溶媒(第1の有機溶媒と同一又は異なっていてもよい)、及び任意選択でハロゲン化水素酸を含む第2の有機溶液と組み合わせて、有機溶液を形成するステップ、
A前駆体(XIアニオンを含有)及び第1の水性溶媒を含む第1の水溶液を、A前駆体(XIIアニオンを含有)及び第2の水性溶媒(第1の水性溶媒と同一又は異なっていてもよい)を含む第2の水溶液と組み合わせて、水溶液を形成するステップ、並びに
a)前記水溶液を前記有機溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ
を含む方法を提供する。
【0129】
異なるA前駆体及びM前駆体を組み合わせて、それぞれが様々なイオンを含有する水溶液及び有機溶液を生成することによって、式[A]a[M]b[X]cのあらゆる化合物を、1種のみの水溶液を1種のみの有機溶液と接触させることにより、本発明の方法において生成することができることは当業者であれば認識されよう。
【0130】
沈殿物のプロセシング
本発明の方法により生成される沈殿物は、式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む。したがって、沈殿物それ自体は結晶質A/M/X材料である。しかしながら、沈殿物は、最初に形成された時点では、水性溶媒及び有機溶媒を含む反応混合物中に存在する。反応混合物はまた、1種以上のA前駆体、M前駆体又はX前駆体を溶液中に又は固体粒子として含んでいてもよい。
【0131】
典型的には、固体沈殿物を反応混合物の液体成分から分離することが望ましい。これは、沈殿物を回収するステップと称することができる。したがって、典型的には、方法は沈殿物を回収するステップを含む。例えば、方法は沈殿物を回収するための1つ以上のさらなるステップを含んでいてもよい。
【0132】
したがって、いくつかの実施形態において、方法は、反応混合物を濾過して固体沈殿物を得るステップをさらに含んでいてもよい。他の実施形態において、方法は反応混合物を遠心分離し、遠心分離した反応混合物から液体の大部分又はすべてをデカントして、固体沈殿物を得るステップを含んでいてもよい。或いは、沈殿物は、遠心分離せずに沈降させてから、大部分又はすべての液体を固体沈殿物からデカントしてもよい。反応混合物の液体成分を固体沈殿物から除去するために、これらの技術を混合して使用することができる。
【0133】
沈殿物が反応混合物から分離されるだけの場合、その中の結晶質A/M/X材料には、溶媒の残渣、副生成物、残留するA前駆体若しくはM前駆体又は任意の他の成分の固体粒子が混入していることもある。したがって、このような混入物を沈殿物より除去してから、沈殿物を任意のダウンストリーム用途、例えば光電子デバイスの製造に使用することが好ましい。沈殿物からの混入物の除去は、沈殿物を精製するステップと称することができる。
【0134】
沈殿物を精製する例示的な方法はこれを洗浄することである。沈殿物を洗浄するステップは、方法の温度で、難溶性若しくは不溶性である溶媒に沈殿物を曝露し、次いで沈殿物から洗浄溶媒を除去する(例えば本明細書に記載の通り、デカント又は濾過によって)ステップを含む。
【0135】
沈殿物は、沈殿物が反応混合物から回収される前又は後に洗浄してもよい。例えば反応混合物を溶媒で希釈し、続いて沈殿物を回収してもよい。或いは又は加えて、沈殿物は、これを洗浄する前に回収してもよい。
【0136】
沈殿物を洗浄するステップは、複数回、例えば1回、2回、3回、4回又は5回繰り返すことができる。
【0137】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、
c)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させて、反応混合物を形成するステップ、
d)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ、並びに
沈殿物を反応混合物から回収し、次いで沈殿物を洗浄するステップ
を含む。
【0138】
薄膜の形成
本発明の方法により形成された沈殿物は、様々な用途にそのまま使用することができる。しかしながら、本発明の特に好ましい実施形態において、方法は、任意選択で沈殿物を精製し、結晶質A/M/X材料を含む薄膜の形成のための出発材料として沈殿物を使用するステップを含む。本発明者らは驚くことに、同じ結晶質A/M/X材料の沈殿物を含む出発材料から形成された結晶質A/M/X材料の薄膜は、精密にチューニング可能な特性、例えばピーク発光波長及び発光強度を有することを見出した。
【0139】
薄膜の生成において沈殿物を出発材料として使用することができる1つの方法は、沈殿物を有機溶媒に溶解して、膜形成溶液を形成し、次いで膜形成溶液から薄膜を調製することである。
【0140】
したがって、本発明の方法は、好ましくは前記結晶質A/M/X材料の薄膜を調製する方法であって、方法は、
c)任意選択で、沈殿物を洗浄するステップ、
d)沈殿物を有機溶媒に溶解して、膜形成溶液を形成するステップ、及び
e)膜形成溶液を基材上に分散させるステップ
をさらに含む。
【0141】
沈殿物が溶解している有機溶媒は、M前駆体を含有する有機溶液中に存在する有機溶媒と同一又は異なっていてもよい。しかしながら、通常はこれらの2種の有機溶媒は異なる。
【0142】
沈殿物を洗浄するステップは任意選択である。反応混合物から回収した沈殿物から、膜形成溶液を直接調製することは可能である。しかしながら、洗浄するステップは、痕跡量のA前駆体、M前駆体及び(存在する場合)X前駆体、並びに溶媒を除去する。これは、薄膜内の結晶質A/M/X材料の化学量論の正確な制御を確実にすることを助けることができる。したがって、薄膜を沈殿物から調製する前に、沈殿物を洗浄することが好ましい。
【0143】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、結晶質A/M/X材料の薄膜を製造する方法であり、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ、
c)沈殿物を回収及び洗浄するステップ、
d)沈殿物を有機溶媒に溶解して、膜形成溶液を形成するステップ、並びに
e)膜形成溶液を基材上に分散させるステップ
を含む。
【0144】
膜形成溶液は、任意の方法で基材上に分散又は配置することができる。膜形成溶液は、例えば基材上に注入又は滴下することができる。しかしながら、薄膜の形成のための確立した技術に従い、基材に膜形成溶液をスピンコーティングして、薄膜形成を推進するのが便利である。したがって、ステップ(e)は膜形成溶液を基材上にスピンコーティングするステップを含むことが好ましい。
【0145】
膜形成溶液を基材上に配置すると、薄い結晶質フィルムが形成される。これは、受動的に生じさせることができる。例えば基材及びその上に配置又は分散させた膜形成溶液は単に周囲条件(例えば室温)に放置してもよい。薄い結晶フィルムが一般的に徐々に形成する。ただし、薄膜を得るためには、溶媒を膜形成溶液から完全に除去し、薄膜を溶媒の非存在下に置くことが好ましい。
【0146】
したがって、好ましい実施形態において、方法は、
f)基材上の膜形成溶液から、有機溶媒を
好ましくは蒸発により、好ましくは15~150℃の温度で、また好ましくは少なくとも1分間の間、除去するステップ
をさらに含む。
【0147】
本プロセスはむしろ遅くてもよく、加熱によりプロセスを加速させることが好ましいこともある。したがって、好ましい実施形態においてステップ(f)は、少なくとも20℃、例えば少なくとも50℃の温度で実施される。例えば有機溶媒は、ステップ(f)において50℃~120℃の温度で除去することができる。
【0148】
溶媒の損失及び薄膜の形成を加速させる他の方法としては、減圧、例えば0.5~0.99atmの圧力を加えることが挙げられる。
【0149】
別の実施形態において、薄膜を生成できる膜形成溶液を調製するよりもむしろ、薄膜は蒸着方法により生成してもよい。したがって、本発明の方法のさらなる実施形態において、方法は、前記結晶質A/M/X材料の薄膜を調製する方法であって、方法は、
c’)任意選択で、沈殿物を洗浄するステップ、
d’)沈殿物を蒸発させるステップ、及び
e’)蒸発させた沈殿物を基材上に堆積させるステップ、
をさらに含む。
【0150】
上記で説明した通り、反応混合物から回収した沈殿物から直接膜形成溶液を調製することが可能であるため、沈殿物を洗浄するステップは任意選択である。しかしながら、洗浄するステップは痕跡量のA前駆体、M前駆体及び(存在する場合)X前駆体、並びに溶媒を除去する。これは、薄膜内の結晶質A/M/X材料の化学量論の正確な制御を確実にすることを助けることができる。したがって、沈殿物を洗浄し、その後それから薄膜を調製することが好ましい。
【0151】
結果的に、別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、結晶質A/M/X材料の薄膜を製造する方法であり、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップ、
c’)沈殿物を回収及び洗浄するステップ、
d’)沈殿物を蒸発させるステップ、並びに
e’)蒸発させた沈殿物を基材上に堆積させるステップ、
を含む。
【0152】
沈殿物を蒸発させ、これらを基材上に配置する方法は当技術分野で公知である。典型的には、方法は、任意選択で洗浄された沈殿物を含む真空チャンバーを加熱して蒸気を形成し、次いで蒸気を基材と接触させるステップを含む。
【0153】
式[A]a[M]b[X]cの化合物
本発明の方法は式[A]a[M]b[X]cの化合物を含む結晶質A/M/X材料を生成する。式[A]a[M]b[X]cの化合物は結晶質である。この化合物内で、[A]は1種以上のAカチオンを含み、[M]は1種以上のMカチオンを含み、[X]は1種以上のXアニオンを含み、aは1~6の数であり、bは1~6の数であり、cは1~18の数である。aは多くの場合1~4の数であり、bは多くの場合1~3の数であり、cは多くの場合1~8の数である。
【0154】
a、b及びcのそれぞれは整数であっても、そうでなくもてもよい。例えばa、b又はcは、結晶格子が完全に満たされないように化合物が空孔を有する構造を導入した場合、整数でなくてもよい。本発明の方法は生成物の化学量論に対して非常に良好な制御をもたらすので、a、b又はcが整数でない構造(例えばA、M又はX部位のうちの1つ以上に空孔を有する構造)を形成するのに好適である。したがって、いくつかの実施形態において、a、b及びcのうちの1つ以上は非整数値である。例えばa、b及びcのうちの1つは非整数値であってもよい。一実施形態において、aは非整数値である。別の実施形態において、bは非整数値である。さらに別の実施形態において、cは非整数値である。
【0155】
他の実施形態において、a、b及びcのそれぞれは整数値である。よって、いくつかの実施形態において、aは1~6の整数であり、bは1~6の整数であり、cは1~18の整数である。aは多くの場合1~4の整数であり、bは多くの場合1~3の整数であり、cは多くの場合1~8の整数である。
【0156】
式[A]a[M]b[X]cの化合物において、一般的に:
[A]は1種以上のAカチオンを含み、このAカチオンは、例えばアルカリ金属カチオン又は有機モノカチオンから選択されてもよく、
[M]は、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+、Te4+、Bi3+、Sb3+、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+、好ましくはSn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+、及びNi2+から選択され、特に好ましくはPb2+である、金属又は半金属カチオンである1種以上のMカチオンを含み、
[X]は、ハライドアニオン(例えばCl-、Br-、及びI-)、O2-、S2-、Se2-、及びTe2-から選択される1種以上のXアニオンを含み、
aは1~4の数であり、
bは1~3の数であり、
cは1~8の数である。
【0157】
好ましくは式[A]a[M]b[X]cの化合物はペロブスカイトを含む。式[A]a[M]b[X]cの化合物は多くの場合、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む。
【0158】
一般的に、前記1種以上のAカチオンはモノカチオンであり、前記1種以上のMカチオンはジカチオンである。しかしながら、以下に論じられている式[A]a[M]b[X]cの化合物の様々な例示的な実施形態から明らかなように、他のイオン電荷も適用可能である。
【0159】
典型的には、a=1、b=1及びc=3である。そのため、典型的には、結晶質A/M/X材料は式(I)のペロブスカイト:
[A][M][X]3 (I)
[式中、[A]はモノカチオンである1種以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属ジカチオンである1種以上のMカチオンを含み、[X]はハライドアニオンである1種以上のアニオンを含む]を含む。
【0160】
[A]は、有機及び/又は無機モノカチオンであり得る1種以上のAカチオンを含む。A種が有機モノカチオンである場合、Aは、典型的には、アミノ、C1~6アルキルアミノ、イミノ、C1~6アルキルイミノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル及びC6~12アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、C1~10アルキルアンモニウム、C2~10アルケニルアンモニウム、C1~10アルキルイミニウム、C3~10シクロアルキルアンモニウム及びC3~10シクロアルキルイミニウムから選択される。例えば、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+及び(H2N-C(CH3)=NH2)+から選択されてもよい。A種が無機モノカチオンである場合、Aは、典型的にはアルキル金属モノカチオン(すなわち、周期表の1族に見られる金属のモノカチオン)、例えばCs+又はRb+である。
【0161】
[A]は、通常、1、2又は3種のAモノカチオンを含む。好ましくは、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択される単一のカチオンを含む。或いは、[A]は、この群、例えばCs+及び(H2N-C(CH3)=NH2)+、又はCs+及び(H2N-C(H)=NH2)+、又は例えばCs+及びRb+から選択される2種のカチオンを含んでいてもよい。
【0162】
[M]は、金属又は半金属ジカチオンである1種以上のMカチオンを含む。例えば、[M]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるMカチオンを含んでいてもよい。[M]は、典型的には1種又は2種のMカチオンを含み、これらは、一般にCa2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から、好ましくはPb2+から選択される。
【0163】
[X]は1種以上のXアニオンを含む。例えば、[X]は、F-、Br-、Cl-及びI-から選択されるアニオンを含んでいてもよい。[X]は、典型的には1、2又は3種のXアニオンを含み、これらは、一般にBr-、Cl-及びI-から選択される。[X]は、例えば2種のXアニオン、例えばCl及びBr、又はBr及びI、又はCl及びIからなっていてもよい。
【0164】
1つの実施形態において、ペロブスカイトは式(IA)のペロブスカイト:
[AI xAII 1-x]MX3 (IA)
[式中、AI及びAIIはAに関して上記に定義された通りであり、M及びXは上記に定義された通りであり、xは0よりも大きく1よりも小さい]である。好ましい実施形態において、AI及びAIIは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、Cs+及びRb+からそれぞれ選択され、MはPb2+であり、XはBr-、Cl-及びI-から選択される。AI及びAIIは、例えば、それぞれ(H2N-C(CH3)=NH2)+及びCs+であってもよいし、又はこれらは、それぞれCs+及び(H2N-C(H)=NH2)+であってもよい。或いは、これらは、それぞれCs+及びRb+であってもよい。
【0165】
1つの実施形態において、ペロブスカイトは式(IB)のペロブスカイト化合物:
AM[XI yXII 1-y]3 (IA)
[式中、A及びMは上記に定義された通りであり、XI及びXIIはXに関して上記に定義された通りであり、yは0よりも大きく1よりも小さい]である。好ましい実施形態において、Aは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、Cs+及びRb+から選択され、MはPb2+であり、XI及びXIIはBr-、Cl-及びI-からそれぞれ選択される。
【0166】
特に好ましい実施形態において、ペロブスカイトは式(IC)のペロブスカイト:
[AI xAII 1-x]M[XI yXII 1-y]3 (IC)
[式中、AI及びAIIはAに関して上記に定義された通りであり、Mは上記に定義された通りであり、XI及びXIIはXに関して上記に定義された通りであり、x及びyは両方とも0よりも大きく1よりも小さい]である。好ましい実施形態において、AI及びAIIは、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+、(H2N-C(CH3)=NH2)+、Cs+及びRb+からそれぞれ選択され、MはPb2+であり、XI及びXIIはBr-、Cl-及びI-からそれぞれ選択される。
【0167】
一般に、上記において、xは0.01~0.99である。例えば、xは0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい。同様に、上記において、yは、一般に0.01~0.99である。例えば、yは0.05~0.95又は0.1~0.9であってもよい。例示的な実施形態において、x及びyは両方とも0.1~0.9である。
【0168】
例示的な実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、CsPbBr3、CsPbCl3、CsPbI3、CsPb(BryCl1-y)3、CsPb(BryI1-y)3、CsPb(ClyI1-y)3、(CsxRb1-x)PbBr3、(CsxRb1-x)PbCl3、(CsxRb1-x)PbI3、(CsxRb1-x)Pb(BryCl1-y)3、(CsxRb1-x)Pb(BryI1-y)3及び(CsxRb1-x)Pb(ClyI1-y)3から選択される[式中、x及びyは両方とも0よりも大きく1よりも小さい]。好ましくは、これらの実施形態において、xは0.01~0.99であり、yは0.01~0.99であり、より好ましくは、xは0.05~0.95であり、yは0.05~0.95である。
【0169】
1つの実施形態において、a=2、b=1及びc=4である。この実施形態において、結晶質A/M/X材料は、式(II)の化合物(「2D層状ペロブスカイト」):
[A]2[M][X]4 (II)
[式中、[A]はモノカチオンである1種以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属ジカチオンである1種以上のMカチオンを含み、[X]はハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含む]を含む。この実施形態において、A及びMカチオン並びにXアニオンは、式(I)のペロブスカイトに関して上記に定義された通りである。
【0170】
別の実施形態において、a=2、b=1及びc=6である。この実施形態において、この場合、結晶質A/M/X材料は、式(III)のヘキサハロメタレート:
[A]2[M][X]6 (III)
[式中、[A]はモノカチオンである1種以上のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属テトラカチオンである1種以上のMカチオンを含み、[X]はハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含む]を含み得る。
【0171】
式(III)のヘキサハロメタレートは、好ましい実施形態において、混合モノカチオンヘキサハロメタレートであってもよい。混合モノカチオンヘキサハロメタレートにおいて、[A]はモノカチオンである少なくとも2種のAカチオンを含み、[M]は金属又は半金属テトラカチオンである少なくとも1種のMカチオンを含み(典型的には、[M]は金属又は半金属テトラカチオンである単一のMカチオンを含む)、[X]はハライドアニオンである少なくとも1種のXアニオンを含む(典型的には、[X]は単一のハライドアニオン又は2種類のハライドアニオンを含む)。混合金属ヘキサハロメタレートにおいて、[A]は少なくとも1種のモノカチオンを含み(典型的には、[A]は単一のモノカチオン又は2種類のモノカチオンである)、[M]は少なくとも2種の金属又は半金属テトラカチオン(例えばGe4+及びSn4+)を含み、[X]は少なくとも1種のハライドアニオンを含む(典型的には、[X]は単一のハライドアニオン又は2種類のハライドアニオンである)。混合ハライドヘキサハロメタレートにおいて、[A]は少なくとも1種のモノカチオンを含み(典型的には、[A]は単一のモノカチオン又は2種類のモノカチオンである)、[M]は少なくとも1種の金属又は半金属テトラカチオンを含み(典型的には、[M]は単一の金属テトラカチオンである)、[X]は少なくとも2種のハライドアニオン、例えばBr-及びCl-又はBr-及びI-を含む。
【0172】
[A]は、任意の適切なモノカチオン、例えばペロブスカイトについて上記のものから選択される少なくとも1種のAモノカチオンを含んでいてもよい。ヘキサハロメタレートの場合において、それぞれのAカチオンは、典型的には、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、NH4 +及び1価の有機カチオンから選択される。1価の有機カチオンは、単一の正に帯電した有機カチオンであり、これは、例えば500g/mol以下の分子量を有していてもよい。例えば、[A]は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、NH4 +及び1価の有機カチオンから選択される単一のAカチオンであってもよい。[A]は、好ましくは、Rb+、Cs+、NH4 +及び1価の有機カチオンから選択されるモノカチオンである少なくとも1種のAカチオンを含む。例えば、[A]は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+及びNH4 +から選択される単一の無機Aモノカチオンであってもよい。別の実施形態において、[A]は少なくとも1種の一価の有機Aカチオンであってもよい。例えば、[A]は単一の一価の有機Aカチオンであってもよい。1つの実施形態において、[A]は(CH3NH3)+である。別の実施形態において、[A]は(H2N-C(H)=NH2)+である。
【0173】
好ましくは、[A]は、2種類以上のAカチオンを含む。[A]は、単一のAモノカチオンであっても、又は実に2種のAモノカチオンであってもよく、これらのそれぞれは、独立して、K+、Rb+、Cs+、NH4 +、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(CH3CH2CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(N(CH2CH3)4)+、(N(CH2CH2CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+及び(H2N-C(CH3)=NH2)+から選択される。
【0174】
[M]は、適切な金属又は半金属テトラカチオンから選択される1種以上のMカチオンを含んでいてもよい。金属としては、元素の周期表の3~12族の元素並びにGa、In、Tl、Sn、Pb、Bi及びPoが挙げられる。半金属としては、Si、Ge、As、Sb及びTeが挙げられる。例えば、[M]は、Ti4+、V4+、Mn4+、Fe4+、Co4+、Zr4+、Nb4+、Mo4+、Ru4+、Rh4+、Pd4+、Hf4+、Ta4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Po4+、Si4+、Ge4+及びTe4+から選択される金属又は半金属テトラカチオンである少なくとも1種のMカチオンを含んでいてもよい。典型的には、[M]は、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+及びTe4+から選択される少なくとも1種の金属又は半金属テトラカチオンを含む。例えば、[M]は、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+及びTe4+から選択される単一の金属又は半金属テトラカチオンであってもよい。
【0175】
典型的には、[M]は、Sn4+、Te4+、Ge4+及びRe4+から選択される金属又は半金属テトラカチオンである少なくとも1種のMカチオンを含む。1つの実施形態において、[M]は、Pb4+、Sn4+、Te4+、Ge4+及びRe4+から選択される金属又は半金属テトラカチオンである少なくとも1種のMカチオンを含む。例えば、[M]は、Pb4+、Sn4+、Te4+及びGe4+から選択される少なくとも1種の金属又は半金属テトラカチオンであるMカチオンを含んでいてもよい。好ましくは、[M]は、Sn4+、Te4+及びGe4+から選択される少なくとも1種の金属又は半金属テトラカチオンを含む。上記で議論したように、ヘキサハロメタレート化合物は、混合金属又は単一金属のヘキサハロメタレートであってもよい。好ましくは、ヘキサハロメタレート化合物は単一金属のヘキサハロメタレート化合物である。より好ましくは、[M]は、Sn4+、Te4+及びGe4+から選択される単一の金属又は半金属テトラカチオンである。例えば、[M]は、Te4+である単一の金属又は半金属テトラカチオンであってもよい。例えば、[M]は、Ge4+である単一の金属又は半金属テトラカチオンであってもよい。最も好ましくは、[M]は、Sn4+である単一の金属又は半金属テトラカチオンである。
【0176】
[X]は、ハライドアニオンである少なくとも1種のXアニオンを含んでいてもよい。したがって、[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される少なくとも1種のハライドアニオンを含む。典型的には、[X]は、Cl-、Br-及びI-から選択される少なくとも1種のハライドアニオンを含む。ヘキサハロメタレート化合物は、混合ハライドヘキサハロメタレート又は単一ハライドヘキサハロメタレートであってもよい。ヘキサハロメタレートが混合である場合、[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される2、3又は4種のハライドアニオンを含む。典型的には、混合ハライド化合物において、[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される2種のハライドアニオンを含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、[A]は単一のモノカチオンであり、[M]は単一の金属又は半金属テトラカチオンである。そのため、結晶質材料は、例えば、式(IIIA)のヘキサハロメタレート化合物
A2M[X]6 (IIIA)
[式中、Aはモノカチオンであり、Mは金属又は半金属テトラカチオンであり、[M]は少なくとも1種のハライドアニオンである]を含んでいてもよい。[X]は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択される、好ましくはCl-、Br-及びI-から選択される、1、2又は3種のハライドアニオンを含んでいてもよい。式(IIIA)において、[X]は、好ましくは、Cl-、Br-及びI-から選択される1又は2種のハライドアニオンである。
【0178】
結晶質材料は、例えば、式(IIIB)のヘキサハロメタレート化合物
A2MX6-yX'y (IIIB)
[式中、Aはモノカチオン(すなわち、第2のカチオン)であり、Mは金属又は半金属テトラカチオン(すなわち、第1のカチオン)であり、X及びX'はそれぞれ独立して、(異なる)ハライドアニオン(すなわち、2種の第2のアニオン)であり、yは0~6である]を含んでいてもよく、又はこれから本質的になっていてもよい。yが0又は6である場合、ヘキサハロメタレート化合物は、単一ハライド化合物である。yが0.01~5.99である場合、化合物は、混合ハライドヘキサハロメタレート化合物である。化合物が混合ハライド化合物である場合、yは0.05~5.95であってもよい。例えば、yは1.00~5.00であってもよい。
【0179】
ヘキサハロメタレート化合物は、例えばA2SnF6-yCly、A2SnF6-yBry、A2SnF6-yIy、A2SnCl6-yBry、A2SnCl6-yIy、A2SnBr6-yIy、A2TeF6-yCly、A2TeF6-yBry、A2TeF6-yIy、A2TeCl6-yBry、A2TeCl6-yIy、A2TeBr6-yIy、A2GeF6-yCly、A2GeF6-yBry、A2GeF6-yIy、A2GeCl6-yBry、A2GeCl6-yIy、A2GeBr6-yIy、A2ReF6-yCly、A2ReF6-yBry、A2ReF6-yIy、A2ReCl6-yBry、A2ReCl6-yIy又はA2ReBr6-yIy[式中、AはK+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+又は(H2N-C(R1)=NH2)+であり、R1はH、置換若しくは無置換のC1~20アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R2は置換又は無置換のC1~10アルキル基であり、yは0~6である]であってもよい。任意選択で、yは0.01~5.99である。ヘキサハロメタレート化合物が混合ハライド化合物である場合、yは、典型的には1.00~5.00である。Aは上記に定義された通りであり得る。例えば、Aは、Cs+、NH4 +、(CH3NH3)+、(CH3CH2NH3)+、(N(CH3)4)+、(N(CH2CH3)4)+、(H2N-C(H)=NH2)+又は(H2N-C(CH3)=NH2)+ 例えばCs+、NH4 +又は(CH3NH3)+であってもよい。
【0180】
ヘキサハロメタレート化合物は、典型的にはA2SnF6-yCly、A2SnF6-yBry、A2SnF6-yIy、A2SnCl6-yBry、A2SnCl6-yIy又はA2SnBr6-yIy[式中、AはK+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+又は(H2N-C(R1)=NH2)+であり、或いはAは本明細書に定義される通りであり、R1はH、置換若しくは無置換のC1~20アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R2は置換又は無置換のC1~10アルキル基であり、yは0~6である]であってもよい。
【0181】
別の実施形態において、ヘキサハロメタレート化合物は、A2GeF6-yCly、A2GeF6-yBry、A2GeF6-yIy、A2GeCl6-yBry、A2GeCl6-yIy又はA2GeBr6-yIy[式中、AはK+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+又は(H2N-C(R1)=NH2)+であり、或いはAは本明細書に定義される通りであり、R1はH、置換若しくは無置換のC1~20アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R2は置換又は無置換のC1~10アルキル基であり、yは0~6である]である。
【0182】
ヘキサハロメタレート化合物は、例えばA2TeF6-yCly、A2TeF6-yBry、A2TeF6-yIy、A2TeCl6-yBry、A2TeCl6-yIy又はA2TeBr6-yIy[式中、AはK+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+又は(H2N-C(R1)=NH2)+であり、或いはAは本明細書に定義される通りであり、R1はH、置換若しくは無置換のC1~20アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R2は置換又は無置換のC1~10アルキル基であり、yは0~6であるか、又はyは本明細書に定義される通りである]であり得る。
【0183】
多くの場合、yは1.50~2.50である。例えば、yは1.80~2.20であってもよい。これは、化合物が、下記で議論されるように2当量のAX'及び1当量のMX4を使用して生成される場合、起こり得る。
【0184】
いくつかの実施形態において、すべてのイオンは単一のアニオンである。そのため、結晶質材料は、式(IIIC)のヘキサハロメタレート化合物
A2MX6 (IIIC)
[式中、Aはモノカチオンであり、Mは金属又は半金属テトラカチオンであり、Xはハライドアニオンである]を含んでいてもよく、又はこれから本質的になっていてもよい。A、M及びXは本明細書に定義される通りであってもよい。
【0185】
ヘキサハロメタレート化合物は、A2SnF6、A2SnCl6、A2SnBr6、A2SnI6、A2TeF6、A2TeCl6、A2TeBr6、A2TeI6、A2GeF6、A2GeCl6、A2GeBr6、A2GeI6、A2ReF6、A2ReCl6、A2ReBr6又はA2ReI6[式中、AはK+、Rb+、Cs+、(R1NH3)+、(NR2 4)+又は(H2N-C(R1)=NH2)+であり、R1はH、置換若しくは無置換のC1~20アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であり、R2は置換又は無置換のC1~10アルキル基である]であり得る。Aは、本明細書に定義される通りであってもよい。好ましくは、ヘキサハロメタレート化合物は、Cs2SnI6、Cs2SnBr6、Cs2SnBr6-yIy、Cs2SnCl6-yIy、Cs2SnCl6-yBry、(CH3NH3)2SnI6、(CH3NH3)2SnBr6、(CH3NH3)2SnBr6-yIy、(CH3NH3)2SnCl6-yIy、(CH3NH3)2SnCl6-yBry、(H2N-C(H)=NH2)2SnI6、(H2N-C(H)=NH2)2SnBr6、(H2N-C(H)=NH2)2SnBr6-yIy、(H2N-C(H)=NH2)2SnCl6-yIy又は(H2N-C(H)=NH2)2SnCl6-yBry[式中、yは0.01~5.99である]である。例えば、ヘキサハロメタレート化合物は、(CH3NH3)2SnI6、(CH3NH3)2SnBr6、(CH3NH3)2SnCl6、(H2N-C(H)=NH2)2SnI6、(H2N-C(H)=NH2)2SnBr6又は(H2N-C(H)=NH2)2SnCl6であってもよい。ヘキサハロメタレート化合物は、Cs2SnI6、Cs2SnBr6、Cs2SnCl6-yBry、(CH3NH3)2SnI6、(CH3NH3)2SnBr6又は(H2N-C(H)=NH2)2SnI6であってもよい。
【0186】
結晶質A/M/X材料は、ビスマス又はアンチモンのハロゲノメタレート(halogenometallate)を含んでいてもよい。例えば、結晶質A/M/X材料は、(i)1種以上のモノカチオン([A])又は1種以上のジカチオン([B])、(ii)1種以上の金属又は半金属トリカチオン([M])、及び(iii)1種以上のハライドアニオン([X])を含むハロゲノメタレート化合物を含んでいてもよい。化合物は、式BBiX5、B2BiX7又はB3BiX9の化合物[式中、Bは(H3NCH2NH3)2+、(H3N(CH2)2NH3)2+、(H3N(CH2)3NH3)2+、(H3N(CH2)4NH3)2+、(H3N(CH2)5NH3)2+、(H3N(CH2)6NH3)2+、(H3N(CH2)7NH3)2+、(H3N(CH2)8NH3)2+又は(H3N-C6H4-NH3)2+であり、XはI-、Br-又はCl-、好ましくはI-である]であってもよい。
【0187】
またさらなる実施形態において、本発明の結晶質A/M/X材料は二重ペロブスカイトであってもよい。このような化合物は、国際公開第2017/037448号において定義されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。典型的には、化合物は式(IV)の二重ペロブスカイト化合物:
[A]2[B+][B3+][X]6 (IV)
[式中、[A]は、本明細書に定義されるモノカチオンである1種以上のAカチオンを含み、[B+]及び[B3+]は、Mがモノカチオンである1種以上のMカチオン及びトリカチオンである1種以上のMカチオンを含む[M]と同等であり、[X]はハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含む]である。
【0188】
[B+]に含まれるモノカチオンである1種以上のMカチオンは、典型的には金属及び半金属モノカチオンから選択される。好ましくは、モノカチオンである1種以上のMカチオンは、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Cu+、Ag+、Au+及びHg+から選択される。より好ましくは、モノカチオンである1種以上のMカチオンは、Cu+、Ag+及びAu+から選択される。最も好ましくは、モノカチオンである1種以上のMカチオンは、Ag+及びAu+から選択される。例えば、[B+]は、Ag+である1種のモノカチオンであってもよく、又は[B+]は、Au+である1種のモノカチオンであってもよい。
【0189】
[B3+]に含まれるトリカチオンである1種以上のMカチオンは、典型的には金属及び半金属トリカチオンから選択される。好ましくは、トリカチオンである1種以上のMカチオンは、Bi3+、Sb3+、Cr3+、Fe3+、Co3+、Ga3+、As3+、Ru3+、Rh3+、In3+、Ir3+及びAu3+から選択される。より好ましくは、トリカチオンである1種以上のMカチオンは、Bi3+及びSb3+から選択される。例えば、[B3+]は、Bi3+である1種のトリカチオンであってもよく、又は[B3+]は、Sb3+である1種のトリカチオンであってもよい。ビスマスは、重金属、例えば鉛と比較して、比較的低い毒性を有する。
【0190】
いくつかの実施形態において、([B+]中の)モノカチオンである1種以上のMカチオンは、Cu+、Ag+及びAu+から選択され、([B3+]中の)トリカチオンである1種以上のMカチオンは、Bi3+及びSb3+から選択される。
【0191】
例示的な二重ペロブスカイトはCs2BiAgBr6である。
【0192】
典型的には、化合物が二重ペロブスカイトである場合、これは、式(IVa)の化合物:
A2B+B3+[X]6 (IVa)
[式中、Aカチオンは本明細書に定義される通りであり、B+は本明細書に定義されるモノカチオンであるMカチオンであり、B3+は本明細書に定義されるトリカチオンであるMカチオンであり、[X]はハライドアニオンである1種以上のXアニオン、例えば2種以上のハライドアニオン、好ましくは単一のハライドアニオンを含む]である。
【0193】
さらに別の実施形態において、化合物は式(V)の層状二重ペロブスカイト化合物:
[A]4[B+][B3+][X]8 (V)
[式中、[A]、[B+]、[B3+]及び[X]は上で定義された通りである]であってもよい。いくつかの実施形態において、層状二重ペロブスカイト化合物は、式(Va)の二重ペロブスカイト化合物:
A4B+B3+[X]8 (Va);
[式中、Aカチオンは本明細書に定義される通りであり、B+は本明細書に定義されるモノカチオンであるMカチオンであり、B3+は本明細書に定義されるトリカチオンであるMカチオンであり、[X]はハライドアニオンである1種以上のXアニオン、例えば2種以上のハライドアニオン、好ましくは単一のハライドアニオン又は2種類のハライドアニオンを含む]である。
【0194】
さらに別の実施形態において、化合物は式(VI)の化合物:
[A]4[M][X]6 (VI);
[式中、[A]、[M]及び[X]は上で定義された通りである(例えば、式(I)又は(II)の化合物との関連)]であってもよい。しかしながら好ましくは、化合物は式(VI)の化合物ではない。化合物が式(VI)の化合物である場合、化合物は好ましくは式(VIA)の化合物
[AIAII]4[M][X]6 (VIA);
すなわち、[A]が2種類のAモノカチオンを含む化合物であってもよい。他の好ましい実施形態において、式(VI)の化合物は、式(VIB)の化合物:
[A]4[M][XIXII]6 (VIB);
すなわち、[X]が2種類のXアニオンを含む式(VI)の化合物であってもよい。また他の好ましい実施形態において、式(VI)の化合物は、式(VIC)の化合物:
[AIAII]4[M][XIXII]6 (VIC);
すなわち、[A]が2種類のAモノカチオンを含み、[X]が2種類のXアニオンを含む式(VI)の化合物であってもよい。式(VIa)、(VIb)及び(VIc)において、[A]、[M]及び[X]のそれぞれは上で定義された通りである(例えば、式(I)又は(II)の化合物との関連)。
【0195】
別の実施形態において、a=1、b=1及びc=4である。その実施形態において、結晶質A/M/X材料はその場合、式(VII)の化合物:
[A][M][X]4 (VII)
[式中、[A]はモノカチオンである1種以上のAカチオンを含み、[M]は、金属又は半金属トリカチオンである1種以上のMカチオンを含み、[X]はハライドアニオンである1種以上のXアニオンを含む]を含んでいてもよい。Aモノカチオン及びMトリカチオンは本明細書に定義された通りである。式(VII)の例示的な化合物はAgBiI4である。
【0196】
本発明はまた、関連するa、b及びc値の1種以上が非整数値である、上記の構造(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)及び(VII)の変化形を製造する方法も包含することを理解されたい。
【0197】
好ましくは、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、式[A][M][X]3の化合物、式[A]4[M][X]6の化合物又は式[A]2[M][X]6の化合物である。例えば、好ましい実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、式(IA)、(IB)、(IC)、(IIIA)、(IIIB),(IIIC)、(VIA)、(VIB)、又は(VIC)の化合物である。
【0198】
いくつかの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[A]が2種以上の異なるAカチオンを含む化合物である。例えば、[A]は2種類のカチオンを含有し得る。いくつかの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は[X]が2種以上の異なるXアニオンを含む化合物である。例えば、[X]は2種類のアニオン、例えばハライドアニオンを含有し得る。これらの実施形態のそれぞれの一態様において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、[A]が2種以上の異なるAカチオンを含み、且つ[X]が2種以上の異なるXアニオンを含む化合物である。例えば、[A]は2種類のAカチオン及び2種類のXアニオン(例えば2種類のハライドアニオン)を含有することができる。本発明の方法は、混合カチオン又は混合ハライド部位を有する化合物及び材料を調製するのに特に有用である。これは、単一の溶媒を利用する従来の方法で可能な制御よりも、丁寧に化学量論を制御することができるからである。
【0199】
好ましい一実施形態において、[A]はCs+及びRb+を含み、例えば、[A]はCs+及びRb+からなっていてもよい。別の好ましい実施形態において、[X]は2種のハライドアニオン、好ましくはBr-及びCl-を含み、例えば、[X]はBr-及びCl-からなっていてもよい。これらの実施形態の好ましい態様において、[A]はCs+及びRb+を含み、[X]は2種のハライドアニオン、好ましくはBr-及びCl-を含む。特に好ましい例では、[A]はCs+及びRb+からなり、[X]は2種のハライドアニオン、例えばBr-及びCl-からなる。この段落のそれぞれの実施形態において、式[A]a[M]b[X]cの化合物は、好ましくは式[A][M][X]3、[A]2[M][X]6及び[A]4[M][X]6の化合物である。
【0200】
典型的には、それぞれのAカチオンは、アルカリ金属カチオン、アミン、C1~6アルキルアミン、イミン、C1~6アルキルイミン、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル及びC6~12アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、C1~10アルキルアンモニウム、C2~10アルケニルアンモニウム、C1~10アルキルイミニウム、C3~10シクロアルキルアンモニウム及びC3~10シクロアルキルイミニウムから選択される。好ましくは、それぞれのAカチオンは、Cs+、Rb+、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム(pentylammoium)、ヘキシルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム(septylammonium)、オクチルアンモニウム及びグアニジニウムから選択される。典型的には、[A]は1、2又は3種のAカチオンを含み、好ましくは、[A]は1種のAカチオンである。好ましくは、それぞれのAカチオンはモノカチオンである。
【0201】
一般的にそれぞれの金属又は半金属Mカチオンは、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Cu+、Ag+、Au+、Hg+、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+、Eu2+、Bi3+、Sb3+、Cr3+、Fe3+、Co3+、Ga3+、As3+、Ru3+、Rh3+、In3+、Ir3+及びAu3+から選択される。通常、それぞれの金属又は半金属Mカチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択され、好ましくはSn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+、及びNi2+から選択され、特に好ましくはPb2+である。
【0202】
通常、それぞれのXアニオンは、F-、Cl-、Br-又はI-、好ましくはCl-又はBr-から選択される。
【0203】
A及びM前駆体
A前駆体は、[A]中に存在する1種以上のAカチオンを含む化合物である。[A]が1種類のAカチオンを含む場合、通常1種のA前駆体が本発明の方法において利用され、そのA前駆体は一般的に1種以上の対イオンと一緒のそのAカチオンからなる。[A]が2種類以上のAカチオンを含む場合、本発明の方法において1種以上のA前駆体を利用することができる。それぞれのA前駆体は、[A]中に存在する2種以上のAカチオンのうちの1種以上を含むことができる。一般的に、それぞれのA前駆体は1又は2種のAカチオンを含む。好ましくは、それぞれのA前駆体は1種類のAカチオンを含む。これは、このような前駆体は一般的に高い純度で市販されているからである。
【0204】
A前駆体は、1種以上のM前駆体並びに任意選択で1種以上の追加のA前駆体及び1種以上のX前駆体とも反応して、本明細書に定義される結晶質A/M/X材料を生成することができる。
【0205】
好ましくは、その又はそれぞれのA前駆体はAカチオン又はAカチオンのうちの1種のハロゲン化物塩である。すなわち、好ましくは、その又はそれぞれのA前駆体は、
(i)[A]中に存在するAカチオン、又は[A]が2種以上のAカチオンを含む場合には[A]中に存在するAカチオンのうちの1種以上、及び
(ii)好ましくはCl-、Br-及びI-から選択される、1種以上のハライドアニオン
を含む化合物である。
【0206】
典型的には、その又はそれぞれのA前駆体は、1又は2種のハライドアニオン、好ましくは1種のハライドアニオンを含む。
【0207】
したがって、例示的な実施形態において、それぞれのA前駆体は、本明細書に定義される1又は2種のAカチオン、並びにCl-、Br-及びI-から好ましくは選択される1又は2種のハライドアニオンを含有する。特に好ましい実施形態において、それぞれのA前駆体は、本明細書に定義される1種のAカチオン、並びにCl-、Br-及びI-から好ましくは選択される1種のハライドアニオンを含有する。
【0208】
M前駆体は、[M]中に存在する1種以上のMカチオンを含む化合物である。[M]が1種類のMカチオンを含む場合、通常1種のM前駆体が本発明の方法において利用され、そのM前駆体は一般的に1種以上の対イオンと一緒のそのMカチオンからなる。[M]が2種類以上のMカチオンを含む場合、本発明の方法において1種以上のM前駆体を利用することができる。それぞれのM前駆体は、[M]中に存在する2種以上のAカチオンのうちの1種以上を含むことができる。一般的に、それぞれのM前駆体は1又は2種のMカチオンを含む。好ましくは、それぞれのM前駆体は1種類のMカチオンを含む。これは、このような前駆体が一般的に高い純度で市販されているからである。
【0209】
M前駆体は、1種以上のA前駆体並びに任意選択で1種以上の追加のM前駆体及び1種以上のX前駆体とも反応して、本明細書に定義される結晶質A/M/X材料を生成することが可能である。
【0210】
好ましくは、その又はそれぞれのM前駆体はMカチオン又はMカチオンのうちの1種のハロゲン化物塩である。すなわち、好ましくは、その又はそれぞれのM前駆体は、
(i)[M]中に存在するMカチオン、又は[M]が2種以上のMカチオンを含む場合には[M]中に存在するMカチオンのうちの1種以上、及び
(ii)好ましくはCl-、Br-及びI-から選択される、1種以上のハライドアニオン
を含む化合物である。
【0211】
典型的には、その又はそれぞれのM前駆体は、1又は2種のハライドアニオン、好ましくは1種のハライドアニオンを含む。
【0212】
したがって、例示的な実施形態において、それぞれのM前駆体は、本明細書に定義される1又は2種のMカチオン、並びにCl-、Br-及びI-から好ましくは選択される1又は2種のハライドアニオンを含有する。特に好ましい実施形態において、それぞれのM前駆体は、本明細書に定義される1種のMカチオン、並びにCl-、Br-及びI-から好ましくは選択される1種のハライドアニオンを含有する。例示的な実施形態において、M前駆体はPbCl2、PbBr2及びPbI2から選択され得る。
【0213】
水性及び有機の溶媒及び溶液
本発明の方法は1種以上の水溶液を含む。その(又はそれぞれの)水溶液は水性溶媒及びA前駆体を含む。複数の水溶液が利用される場合、それぞれの水溶液中に存在する水性溶媒は同一又は異なっていてもよい。
【0214】
典型的には、その又はそれぞれの水溶液は、A前駆体及び水性溶媒から本質的になるか、又はこれらのみからなる。しかしながら、他の種、例えばpH調整剤、安定剤などが存在してもよい。
【0215】
水性溶媒は通常20体積%未満の有機溶媒を含み、好ましくは10体積%未満の有機溶媒を含む。水溶液は通常少なくとも80体積%の水、通常少なくとも90体積%の水を含む。好ましくは、水性溶媒は水から本質的になる。いくつかの実施形態において、水性溶媒は完全に水からなる。
【0216】
本発明の方法は1種以上の有機溶液を含む。その(又はそれぞれの)有機溶液は有機溶媒及びM前駆体を含む。複数の有機溶液が利用される場合、それぞれの有機溶液中に存在する有機溶媒は同一又は異なっていてもよい。
【0217】
典型的には、その又はそれぞれの有機溶液は、M前駆体、有機溶媒、及び任意選択で1種以上のX前駆体(好ましくは1種以上のハロゲン化水素酸)から本質的になるか、又はこれらのみからなる。しかしながら、他の種、例えばpH調整剤、安定剤などが存在してもよい。
【0218】
有機溶液は1種以上の有機溶媒を含み得る。通常、有機溶液は1種のみ有機溶媒を含有する。
【0219】
有機溶液中の有機溶媒は、20体積%未満の水、好ましくは10体積%未満の水を含む。典型的には、前記溶液中の有機溶媒は極性有機溶媒を含む。例えば、前記有機溶媒は極性有機溶媒から本質的になっていてもよい。好ましくは、有機溶媒は水と混和性のある有機溶媒、例えばすべての割合で水と混和性のある有機溶媒を含む。有機溶液に適した有機溶媒の特に好ましい例はジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0220】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本発明の方法において生成された沈殿物を溶解して、膜形成溶液を生成するために、さらなる有機溶媒を利用する。その有機溶媒は、方法のステップ(a)に記述されているいずれかの有機溶液中に存在する溶媒のいずれかと同一又は異なっていてもよい。沈殿物を溶解し、膜形成溶液を生成するために使用される有機溶媒は、「ステップ(d)の有機溶媒」と称することができる。ステップ(d)の有機溶媒は単一の有機溶媒を含有していてもよいし、有機溶媒の混合物であってもよい。ステップ(d)の有機溶媒は、極性溶媒、好ましくはDMSO及び/又はDMFを含む。ステップ(d)の有機溶媒が2種以上の溶媒の混合物を含む場合、好ましくは、それぞれの有機溶媒は極性溶媒である。
【0221】
結晶質A/M/X材料
本発明の方法は、式[A]a[M]b[X]cの1種以上の化合物を含む結晶質A/M/X材料を生成する。いくつかの実施形態において、結晶質A/M/X材料は式[A]a[M]b[X]cの2種以上の化合物を含む。例えば、結晶質A/M/X材料は、式[A]a[M]b[X]cの1、2、3、4又は5種の化合物を含み得る。典型的には、結晶質A/M/X材料は、式[A]a[M]b[X]cの1、2又は3種の化合物を含有する。好ましくは、結晶質A/M/X材料は式[A]a[M]b[X]cの1種の化合物を含有する。
【0222】
一態様において、本発明は、本発明の方法で得られる又は得られ得る結晶質A/M/X材料を提供する。結晶質A/M/Xは、例えば本発明の方法から直接得られる沈殿物としての粉末形態であってもよい。
【0223】
好ましい実施形態において、前記材料は「青色エミッター」である。これは、式[A]a[M]b[X]cの化合物(又は材料中の式[A]a[M]b[X]cの化合物のうちの1種)が、電気エネルギー又は青色光、紫色光若しくは紫外光(例えば500nm以下の波長を有する光)の照射による刺激後、青色光を放出することが可能であることを意味する。この実施形態において、その式[A]a[M]b[X]cの化合物は、450~500nm、例えば455~495nm、好ましくは460~490nmの波長を有する光を放出することが可能である。
【0224】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法により得られ得る又は得られる薄膜を提供する。
【0225】
本発明の薄膜は本明細書に定義される結晶質A/M/X材料を含む。薄膜は典型的には、結晶質又は多結晶質の層、好ましくは多結晶質の層を含む。
【0226】
薄膜は典型的には、本明細書に定義される結晶質A/M/X材料から本質的になる、又はこれから完全になる。
【0227】
薄膜は典型的には、およそ1nm~10μmの厚さを有する層である。通常、薄膜は1nm~5μmの厚さを有する層である。薄膜は標準的には少なくとも1nm、例えば少なくとも10nm又は少なくとも50nmの厚さ、又は例えば100nm以上の厚さを有する。薄膜は標準的には10μm未満、例えば1μm以下の厚さを有する。好ましくは、前記光活性材料の層は100nm~700nm、例えば200nm~500nmの厚さを有する。
【0228】
光活性材料
結晶質A/M/X材料は典型的には半導体であり、典型的には可視光(すなわち約450nm~約700nmの波長を有する光)の強力なエミッター及び安定なエミッターである。したがって、結晶質A/M/X材料は多種多様な電子デバイスにおいて非常に有用である。例示的な光電子デバイス及びそれらの製造は、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/171518号、国際公開第2013/171520号、国際公開第2014/045021号、国際公開第2017/017441号、国際公開第2017/037448号及び国際公開第2017/089819号に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0229】
光電子デバイスへの組み込みのために、結晶質A/M/X材料は、典型的には光活性材料として提供される。光活性材料は、本明細書に定義されるA/M/X材料から全体的になっていてもよく、又は他の成分を含んでいてもよい。したがって、本発明は、結晶質A/M/X材料を含む光活性材料、例えば結晶質A/M/X材料を含むルミネセンス材料を提供する。
【0230】
本明細書で使用される場合、「光活性材料」という用語は、光子を吸収及び/又は放出することができる材料を指す。光活性材料は以下のうちの1つ以上であり得る。
(i)光子を吸収し、これは次いで自由電荷キャリア、例えば電子及び正孔を生じ得る。これらの材料は光吸収材料と称する。
(ii)そのバンドギャップよりも高いエネルギーで光子を吸収し、バンドギャップのエネルギーで光子を再放出する(これらは光電子放出材料と称する)。ある種類の光電子放出材料はルミネセンス材料であり、これは光子の吸収後に発光する材料、例えばリン光又は蛍光材料である。
(iii)電子及び正孔の両方の電荷を受け入れ、これはその後再結合及び発光し得る。
【0231】
光活性材料は半導体材料の例である。本明細書で使用される半導体又は半導体材料は、導体及び誘電体の電気伝導性の間の中間の大きさの電気伝導性を有する材料を指す。半導体は、0.5~3.5eV、例えば、0.5~2.5eV又は1.0~2.0eV(300Kで測定される場合)のバンドギャップを有していてもよい。したがって、本発明は、本明細書に記載の結晶質A/M/X材料を含む半導体材料を提供する。
【0232】
本発明の光活性材料は、一般に、スペクトルの可視領域、例えば可視スペクトルの青色領域において、光子を吸収及び/又は放出することができる。したがって、光活性材料は、光電子放出材料(すなわち発光することができる材料)又は光吸収材料(すなわち光を吸収することができる材料)として記載され得る。例えば、本発明の光活性材料は、典型的には、450~700nm、例えば450~650nmの少なくとも1つの波長の光子を放出及び/又は吸収することができる。好ましい実施形態において、結晶質A/M/X材料は、450~500nm、好ましくは455~495nm、特に好ましくは460~490nmの範囲のピーク発光波長を有する。しかしながら、光子を吸収及び放出することができる光活性材料は典型的には、まったく同じ波長でのピーク吸光度及びピーク発光を示さない。
【0233】
ピーク吸光度とは、光活性材料が光子を最も効率的に吸収する波長を意味し、ピーク発光とは、光活性材料が光子を最も効率的に放出する波長を意味する。典型的には、光活性材料のピーク発光は700nm以下、例えば650nm以下である。好ましい実施形態において、本発明の結晶質A/M/X材料は、450~500nm、好ましくは455~495nm、特に好ましくは460~490nmの範囲のピーク発光波長を有する。
【0234】
光活性材料は、5重量%以上の結晶質A/M/X材料を含んでいてもよい。典型的には、光活性材料の重量の少なくとも50%は本明細書に定義される結晶質A/M/X材料からなる。光活性材料は、本明細書において議論される追加成分、例えば、足場材料、マトリックス材料又は被膜を含んでいてもよい。しかし、典型的には、光活性材料は、80重量%以上の本明細書に定義される結晶質A/M/X材料を含む。好ましくは、光活性材料は、95重量%以上の結晶質A/M/X材料、例えば99重量%以上の結晶質A/M/X材料を含む。光活性材料は、結晶質A/M/X材料からなっていてもよく、又は結晶質A/M/X材料から本質的になっていてもよい。
【0235】
光活性材料は典型的には固体である。
【0236】
光活性材料は、本明細書に定義される結晶質A/M/X材料を含んでいてもよい。したがって、1つの実施形態において、光活性材料は結晶質A/M/X材料の粉末を含む。別の実施形態において、光活性材料は結晶質A/M/X材料の薄膜を含んでいてもよい。多くの場合、結晶質A/M/X材料は多結晶質であり、したがって光活性材料は本発明の多結晶質A/M/X材料を含む。他の実施形態において、光活性材料は結晶質A/M/X材料のナノ結晶を含む。
【0237】
光活性材料は任意の形態であってもよい。典型的には、光活性材料は層の形態である。層の形態の光活性材料は、典型的には少なくとも1nm厚さである。光活性材料の層は、例えば層がデバイスの自立する成分であることが意図される場合、最大で10mm厚さであり得る。通常、光活性材料の層は、2nm~1mm厚さ、より一般的に5nm~5μm厚さである。
【0238】
光活性材料の層は、前記層内に結晶質A/M/X材料を含んでいてもよい。前記層内の前記材料の量は、層、例えば任意の被膜又はマトリックス又は足場材料中の他の成分に応じて、変わり得る。いくつかの実施形態において、光活性材料は本明細書に定義される結晶質A/M/X材料の層から本質的になっていてもよい。例えば、光活性材料は、結晶質A/M/X材料から全体的になっていてもよい。しかしながら、より典型的には、光活性材料は、少なくとも50重量%の結晶質A/M/X材料、例えば少なくとも70、80又は80重量%の結晶質A/M/X材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、光活性材料は少なくとも95重量%の結晶質A/M/X材料を含んでいてもよい。典型的には、本発明による光活性材料の層は、最大で99.9重量%の結晶質A/M/X材料を含む。
【0239】
光活性材料は複数の層を含んでいてもよい。このような層のいくつか又はすべてが結晶質A/M/X材料を含んでいてもよい。
【0240】
光活性材料が層の形態である場合、結晶質A/M/X材料は層全体にわたって均一又は不均一に分布していてもよい。例えば、光活性材料は、結晶質A/M/X材料から本質的になるか、又は結晶質A/M/X材料のみからなる層を含んでいてもよい。或いは又は加えて、光活性材料は前記基材(例えば例えば粉末形態又は薄膜形態)上に結晶質A/M/X材料を有する基材を含んでいてもよい。
【0241】
好ましい実施形態において、光活性材料は、1種以上の本発明の結晶質A/M/X材料を薄膜の形態で含むことができる。薄膜は、典型的には基材上に配置された多結晶質材料を含む。
【0242】
本発明の光活性材料は、1種以上の結晶質A/M/X材料を、表面層又は被膜のそれぞれのうちの1種以上と一緒に含むことができる。
【0243】
いくつかの実施形態において、例えば本発明の光活性材料は、1種以上の結晶質A/M/X材料を、不動態化剤と一緒に含むことができる。不動態化剤は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開出願第2015/092397号に記載されている。これらの実施形態において、光活性材料は、本発明による結晶質A/M/X材料、及び不動態化剤を含む。不動態化剤は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト構造において配位不十分な部分へのハロゲン結合又はカルコゲン金属結合を形成することができる有機種であり、これによって、結晶質A/M/X材料の結晶又は結晶子の表面上に自己集合した層をもたらすことができる。
【0244】
例示的な不動態化剤は、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、2H-ピロール、2-ピロリン、3-ピロリン、ピロールピリジン(pyrrole pyridine)、ナフタレン(napthelene)、アントラセン、フェナントレン、ピレン、フルオランテン、チオフェン、3-ヘキシルチオフェン又はテトラヒドロチオフェン及びヨードペンタフルオロベンゼンである。したがって、一実施形態において、光活性材料は、1種以上の結晶質A/M/X材料を、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、2H-ピロール、2-ピロリン、3-ピロリン、ピロールピリジン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、フルオランテン、チオフェン、3-ヘキシルチオフェン又はテトラヒドロチオフェン及びヨードペンタフルオロベンゼンのうちの1種以上から選択される不動態化剤と一緒に含む。不動態化剤は典型的には、結晶性物質の上又は表面に存在し、したがって表面種として表すことができる。
【0245】
いくつかの実施形態において、光活性材料は被膜を含み得る。典型的には、被膜は、光活性材料中の結晶質A/M/X材料を、環境因子、例えば水分及び酸素から保護する保護被膜であってもよい。
【0246】
被膜は、本発明の方法により得られる又は得られ得る粉末及び薄膜と相容性がある。例えば、粉末は被膜上又はその中に堆積されてもよい。被膜は、薄膜上の層の形態で存在してもよいし、又は薄膜を包含してもよい。
【0247】
適切な被膜としては、透明なポリマー、例えばポリエチレン(PE)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリウレタン(polyurene)(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)、酢酸セルロース(CA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリイミド(PEI)、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。好ましいポリマーはポリエチレン又はポリメチルメタクリレート(PMMA)である。他の適切な被膜としては、シリコーンが挙げられる。
【0248】
特に好ましい実施形態において、被膜は酸化物又は金属若しくは半金属カチオンを含む。好ましくは、被膜は、金属又は半金属カチオンの酸化物を含み、この酸化物は4eV以上のバンドギャップを有する。特に好ましい実施形態において、被膜は、Al、Si、Zr、Ga、Mg、Y、Ti、Ni及びZnのうちの1種以上、好ましくはAl又はSi、最も好ましくはAlの酸化物を含む。
【0249】
本発明の好ましい態様において、本発明の光活性材料は、前記薄膜のすべて又は一部の上の被膜を含む本明細書に記載の結晶質A/M/X材料の薄膜を含む。特に好ましくは、被膜はアルミナ及び/又はシリカ、特に好ましくはアルミナ(Al2O3)を含む。
【0250】
光活性材料は複数の被膜を含み得る。光活性材料に含まれる被膜は、結晶質A/M/X材料と直接接触していてもしていなくてもよい。
【0251】
いくつかの実施形態において、本発明の光活性材料はマトリックス材料を含む。すなわち、本発明の光活性材料は、1種以上の結晶質A/M/X材料を、マトリックス材料と一緒に含んでいてもよい。
【0252】
本発明の光活性材料がマトリックス材料を含む場合、光活性材料は典型的には、1種以上のマトリックス材料中に懸濁させた本発明の結晶質A/M/X材料を含む。本実施形態において、結晶質A/M/X材料は粉末形態、例えばナノ結晶の形態であってもよい。本実施形態において、結晶質A/M/X材料は、本発明の方法から直接得られる沈殿物、例えば洗浄した沈殿物であってもよい。或いは、それは、本発明の方法により得られる又は得られ得る薄膜をプロセシングすることにより得ることもできる。例えば薄膜は、基材を削り取ったものでもよく、任意選択で粉砕して、より小さなサイズの結晶を生成してから、これをマトリックス材料と組み合わせることもできる。
【0253】
適切なマトリックス材料は国際公開第2017/017441号に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。マトリックス材料は、複数のナノ粒子を懸濁し得る任意の適切な材料である。マトリックス材料は典型的には固体である。マトリックス材料は、典型的には、ナノ粒子又は発光デバイスの任意の他の部分(例えば金属成分)との化学反応を受けないという点で非反応性である。マトリックス材料は、典型的には、可視スペクトルの大部分にわたって光に対する高い透過性を有する。
【0254】
マトリックス材料は無機材料又は有機材料であり得る。マトリックス材料は、通常、150℃まで又は100℃までの温度で安定である。典型的には、マトリックス材料はポリマーマトリックス材料を含む。
【0255】
ポリマーマトリックス材料はポリマーを含むマトリックス材料である。ポリマーマトリックス材料は、典型的には、ポリアルケン(例えばポリエテン、ポリプロペン、ポリブテン、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレン)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート又はポリエチレンアジペート(polyethylene apidate))、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド(例えばポリアミド6又はポリアミド66)又はエポキシ樹脂であるポリマーを含む。好ましくは、ポリマーマトリックス材料は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド又はエポキシ樹脂から選択されるポリマーを含む。
【0256】
無機マトリックス材料は、典型的には無機酸化物、例えば金属酸化物である。無機マトリックス材料の例としては、ZnO、NiO及びSnO2が挙げられる。
【0257】
いくつかの実施形態において、マトリックス材料は半導体材料である。半導体マトリックス材料の適切な例としては、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン誘導体及びCBP(4,4'-ビス(N-カルバゾリル)-1,1'-ビフェニル)が挙げられる。
【0258】
したがって、いくつかの実施形態において、光活性材料は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ZnO、NiO及びSnO2、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン誘導体及びCBP(4,4'-ビス(N-カルバゾリル)-1,1'-ビフェニル)から選択されるマトリックス材料と一緒に本発明の1種以上の結晶質A/M/X材料のナノ粒子を含む。
【0259】
光活性材料がマトリックス材料を含む場合、光活性材料は、典型的には最大で50重量%のマトリックス材料を含む。例えば、光活性材料は、典型的には最大で40重量%、最大で30重量%又は最大で20重量%のマトリックス材料を含む。このような実施形態において、光活性材料は、典型的には少なくとも50重量%の結晶質A/M/X材料を含む。
【0260】
光活性材料がマトリックス材料を含む場合、光活性材料は典型的には層の形態で存在する。前記層の厚さは、典型的には100nm~4mm、例えば1μm~1000μm又は50μm~500μmである。いくつかの場合において、層は、例えば自立する層が構築される場合、1~4mmの厚さを有していてもよい。
【0261】
いくつかの実施形態において、光活性材料は足場材料を含む。足場材料は典型的には固体材料である。足場材料は、典型的には、1種以上の結晶質A/M/X材料が分散している固体支持体である。
【0262】
いくつかの実施形態において、本発明の光活性材料は、1種以上の結晶質A/M/X材料と一緒に多孔質足場を含む。典型的には、前記多孔質足場材料は前記1種以上の結晶質A/M/X材料と接触している。多孔質足場材料の適切な例は国際公開第2013/171518号に記載されており、その全内容は参照によって組み込まれる。
【0263】
典型的には、結晶質A/M/X材料は足場材料の表面上に配置される。典型的には、足場が多孔質足場である場合、結晶質A/M/X材料は、それが足場内の細孔の表面上で支持されるように、多孔質足場材料の表面上に配置される。このような実施形態において、結晶質A/M/X材料は、前記材料が足場材料内で分散していると言われ得るように、足場材料の内部表面又は表面上に分布される。この状況における結晶質A/M/X材料は、典型的には、光吸収性の感光性材料及び電荷輸送材料としての機能を果たす。結晶質A/M/X材料、及び足場材料、例えば多孔質足場材料を含む光活性材料は、有利には、光活性材料を通して電荷キャリアを迅速に輸送することができる。結晶質A/M/X材料は典型的には、本明細書に記載の薄膜を製造する方法により足場材料上に堆積させてもよく、この足場材料は基材上に存在する薄層である。
【0264】
足場材料は、典型的には誘電足場材料又はn型足場材料である。好ましくは、足場材料は、多孔質誘電足場材料又は多孔質n型足場材料である。
【0265】
「誘電材料」とは絶縁材料を意味する。誘電足場材料は、3.6eV以上又は4eV以上のバンドギャップを有する材料を含んでいてもよい。誘電足場材料は、多くの場合誘電酸化物である。誘電足場材料は、典型的には、アルミニウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、シリコン、イットリウム又はイッテルビウムのうちの1種以上の酸化物を含む。しかしながら、誘電足場材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート又はポリイミドのうちの1種以上を含んでいてもよい。誘電足場材料は、好ましくはアルミノケイ酸塩(aluminasilicate)、ジルコニア、アルミナ及びシリカ、例えばアルミナ(Al2O3)から選択されてもよい。
【0266】
n型足場は、本明細書に記載の任意のn型材料、例えばチタニア(TiO2)から選択されてもよい。「n型材料」とは電子輸送材料を意味する。
【0267】
適切なn型材料は典型的には無機材料である。適切なn型無機材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、ペロブスカイト、アモルファスSi、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体及びn型II-V族半導体から選択され得、これらのいずれもドープされていても、ドープされていなくてもよい。より典型的には、n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物及び金属テルル化物から選択される。n型材料は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム(neodinium)、パラジウム若しくはカドミウムの酸化物、又は2種以上の前記金属の混合物の酸化物から選択される無機材料を含んでいてもよい。例えば、n型材料は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO又はCdOを含んでいてもよい。用いられ得る他の適切なn型材料としては、カドミウム、スズ、銅又は亜鉛の硫化物が、2種以上の前記金属の混合物の硫化物を含めて挙げられる。例えば、硫化物は、FeS2、CdS、ZnS又はCu2ZnSnS4であってもよい。n型材料は、例えば、カドミウム、亜鉛、インジウム若しくはガリウムのセレン化物又は2種以上の前記金属の混合物のセレン化物、或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物又は2種以上の前記金属の混合物のテルル化物を含んでいてもよい。例えば、セレン化物はCu(In,Ga)Se2であってもよい。典型的には、テルル化物は、カドミウム、亜鉛、カドミウム又はスズのテルル化物である。例えば、テルル化物はCdTeであってもよい。n型材料は、例えば、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、カドミウムの酸化物又は2種以上の前記金属の混合物の酸化物、カドミウム、スズ、銅、亜鉛の硫化物又は2種以上の前記金属の混合物の硫化物、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムのセレン化物又は2種以上の前記金属の混合物のセレン化物、或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物又は2種以上の前記金属の混合物のテルル化物から選択される無機材料を含んでいてもよい。適切なn型材料であり得る他の半導体の例としては、例えばこれらがnドープされる場合、IV族化合物の半導体、アモルファスSi、III-V族半導体(例えばガリウムヒ素)、II-VI族半導体(例えばセレン化カドミウム)、I-VII族半導体(例えば塩化第一銅)、IV-VI族半導体(例えばセレン化鉛)、V-VI族半導体(例えばテルル化ビスマス)及びII-V族半導体(例えばヒ化カドミウム)が挙げられる。典型的には、n型材料はTiO2を含む。
【0268】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の光活性材料は、多孔質足場材料と一緒に結晶質A/M/X材料を含んでいてもよく、好ましくは誘電足場材料はアルミナ、シリカ及びチタニアのうちの1種以上から選択される。
【0269】
光活性材料が足場材料を含む場合、光活性材料は典型的には層の形態で存在する。典型的には、前記層の厚さは、200nm~1000nmであり、例えば厚さは400nm~800nmであってもよい。多くの場合、前記層の厚さは400nm~600nmである。
【0270】
本発明の光活性材料の層は、開いた孔なしであってもよい。光活性材料の層は結晶質A/M/X材料の層を含んでいてもよく、結晶質A/M/X材料の層は開いた孔がない。或いは、光活性材料の層は多孔質であってもよく、又は光活性材料の層は本明細書に記載の多孔質足場上に配置されてもよい。
【0271】
光電子デバイス
本発明は、本明細書に定義される光活性材料を含む光電子デバイスをさらに提供する。したがって、本発明は、本明細書に定義される方法により得られ得る又は得られる結晶質A/M/X材料を含む光電子デバイスを提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に定義される方法により得られ得る又は得られる結晶質A/M/X材料の薄膜を含む光電子デバイスを提供する。
【0272】
本明細書で使用される「光電子デバイス」という用語は、光を調達、制御、検出又は放出するデバイスを指す。典型的には、光は可視光、例えば約450~700nmの波長を有する光である。好ましい実施形態において、デバイスは、青色光(すなわち、約450~500nm、好ましくは約455~495nm、より好ましくは約460~490nmの波長を有する光)を放出することができる。本発明の光電子デバイスは、本発明の光活性材料を含み、したがって、
(i)光子を吸収し、これは次いで自由電荷キャリア、例えば電子及び正孔を生じる、
(ii)そのバンドギャップよりも高いエネルギーで光子を吸収し、バンドギャップのエネルギーで光子を再放出する、並びに
(iii)電子及び正孔の両方の電荷を受け入れ、これはその後再結合及び発光し得る
のうちの1つ以上が可能である。
【0273】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に定義される光活性材料を含む光起電力デバイスである光電子デバイスを提供する。「光起電力デバイス」とは、本明細書において、電気エネルギーを光、特に可視光に変換することができるデバイスを意味する。好ましい実施形態において、前記光起電力デバイスは、電気エネルギーを青色光(すなわち、約450~500nm、好ましくは約455~495nm、より好ましくは約460~490nmの波長を有する光)に変換することができる。
【0274】
別の好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に定義される光活性材料を含む発光デバイスである光電子デバイスを提供する。発光デバイスは発光ダイオード(LED)であってもよい。本発明の発光デバイスは、典型的には可視光を放出することができる。好ましい実施形態において、発光デバイスは、青色光(すなわち、約450~500nm、好ましくは約455~495nm、より好ましくは約460~490nmの波長を有する光)を放出することができる。
【0275】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の光電子デバイスは光活性材料を含み、光活性材料は層に配置される。光活性材料の層は本明細書に定義される。通常、光活性材料の前記層は少なくとも2nmの厚さを有する。しかしながら、層が自立することが意図されるいくつかの実施形態において、層はかなり厚くなり得る(例えば、最大で10mm厚さ、より一般的に最大で5mm厚さ)。
【0276】
いくつかの実施形態において、本発明の光電子デバイスは、例えば5nm~50nmの厚さを有する薄い感光層である光活性材料の層を含む。
【0277】
前記光活性材料の層がn型又はp型領域を有する平面ヘテロ接合を形成するデバイスにおいて、前記光活性材料の層は、少なくとも1nm、例えば少なくとも10nm若しくは少なくとも50nmの厚さ、又は例えば100nm以上の厚さを有していてもよい。好ましくは、前記光活性材料の層は、100nm~700nm、例えば200nm~500nmの厚さを有する。「平面ヘテロ接合」という用語は、本明細書で使用される場合、半導体材料とn型又はp型領域との間の接合を定義する表面が実質的に平面であり、低い粗さ、例えば25nm×25nmの領域にわたって20nm未満の二乗平均平方根粗さ、例えば25nm×25nmの領域にわたって10nm未満又は5nm未満の二乗平均平方根粗さを有することを意味する。
【0278】
光活性材料は、多くの場合、光電子デバイス内で光活性成分(例えば光吸収成分又は光放出成分)としての機能を果たす。他の実施形態において、半導体材料は、光電子デバイス、例えば太陽電池又はLED中でp型又はn型半導体の層を形成してもよい。
【0279】
典型的には、本発明の光電子デバイス(発光デバイス又は光起電デバイスであってもよい)は、
(a)少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
(b)少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び、n型領域とp型領域との間に配置された、
(c)光活性材料の層
を含む。
【0280】
本発明の光電子デバイス(発光デバイス又は光起電デバイスであってもよい)の好ましい例としては、LED、光ダイオード、太陽電池、光検出器又は光センサーが挙げられ、LED、光ダイオード又は太陽電池が特に好ましい。
【0281】
例えば、光電子デバイスは、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び、n型領域とp型領域との間に配置された、 本明細書に定義される結晶質A/M/X材料を含む(又は本質的にこれからなる)光活性材料の前記層
を含んでいてもよい。
【0282】
n型領域は少なくとも1つのn型層を含む。n型領域は典型的には1又は2つのn型層を含む。それぞれの層は多孔質であってもよく、又は緻密であってもよい。緻密層は、典型的には開いた孔がない(例えば任意のメソ又はマクロ孔が非存在)層である。p型領域は少なくとも1つのp型層を含む。p型領域は典型的には1又は2つのp型層を含む。それぞれの層は多孔質であってもよく、又は緻密であってもよい。緻密層は、典型的には開いた孔がない層である。これは非多孔質層であってもよい。これらの層内のn型及びp型材料は、本明細書でさらに定義される通りであってもよい。
【0283】
いくつかの場合において、光電子デバイスは、開いた孔がない前記光活性材料の層を含む。開いた孔がない前記光活性材料の層は、典型的には開いた孔がない本発明による結晶質A/M/X材料(典型的には、薄膜、好ましくはペロブスカイト)の結晶質層である。したがって、前記光活性材料の層は、95体積%以上の1種以上の結晶質A/M/X材料(したがって5体積%未満の非存在の細孔の体積)を含んでいてもよい。開いた孔がない層は、典型的にはマクロ細孔又はメソ細孔を含まない。
【0284】
光活性材料の層は、典型的には、n型領域又はp型領域を有する平面ヘテロ接合を形成する。光活性材料の層は、典型的には、n型領域を有する第1の平面ヘテロ接合及びp型領域を有する第2の平面ヘテロ接合を形成する。これは、国際公開第2014/045021号に記載の種類の平面ヘテロ接合デバイスを形成する。本明細書で使用される「平面ヘテロ接合」という用語は、1つの領域が他の領域に入り込まない2つの領域の間の接合を指す。これは、接合が完全に平滑であることを必要とせず、1つの領域が他の領域の細孔に実質的に入り込まないことのみを必要とする。
【0285】
光活性材料の層がp型領域及びn型領域の両方を有する平面ヘテロ接合を形成する場合、これは典型的には薄膜デバイスを形成する。光活性材料の層の厚さは、50nm以上であり得る。
【0286】
いくつかの実施形態において、多孔質足場材料が存在することが望ましく、多孔質足場は本明細書に定義される通りである。足場材料は、光活性材料から隣接する領域に電荷を輸送するのを助け得る。足場材料はまた、又は或いは、デバイス構築の間に光活性材料の層の形成を助け得る。したがって、いくつかの実施形態において、光電子デバイスは、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域、並びに、n型領域とp型領域との間に配置された、
(i)多孔質足場材料、及び
(ii)足場材料と接触する結晶質A/M/X材料
を含む光活性材料の層
を含む。
【0287】
このようなデバイスの構造は国際公開第2014/045021号においてより詳細に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0288】
多孔質足場材料及び結晶質A/M/X材料を含む光活性材料の層は光活性材料の増感層を形成してもよい。したがって、光電子デバイスは増感デバイスであってもよい。
【0289】
光電子デバイス、例えば太陽電池の構造及びそれらのための適切な材料のさらなる詳細は、公開された出願の国際公開第2017/037448号に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の結晶質A/M/X材料は、そこで半導体材料の代わりに使用されてもよい。
【0290】
いくつかの実施形態において、光電子デバイスは、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域、並びに、n型領域とp型領域との間に配置された、
(i)多孔質足場材料及び前記結晶質A/M/X材料を含む第1の層、並びに
(ii)前記第1の層に配置されたキャッピング層
を含み、このキャッピング層は開いた孔がない前記結晶質A/M/X材料の層であり、
キャッピング層中の結晶質A/M/X材料は第1の層中の結晶質A/M/X材料と接触している。
【0291】
第1の層は、前記多孔質足場材料、及び足場材料の表面上に配置された前記結晶質A/M/X材料を含む。本明細書で使用される「足場材料」という用語は、その機能が別の材料のための物理的支持体としての機能を果たすことを含む材料を指す。存在する場合において、足場材料は、第1の層中に存在する結晶質A/M/X材料のための支持体としての機能を果たす。結晶質A/M/X材料は、足場材料の表面上に配置されるか、又は支持される。多孔質足場材料は典型的には開いた細孔構造を有する。したがって、多孔質足場材料の「表面」は、ここで典型的には足場材料内の細孔の表面を指す。そのため、第1の層中の結晶質A/M/X材料は、典型的には、足場材料内の細孔の表面上に配置される。
【0292】
いくつかの実施形態において、足場材料は多孔質であり、第1の層中の結晶質A/M/X材料は足場材料の細孔に配置される。前記足場材料の有効な孔は、通常少なくとも50%である。例えば、有効な孔は約70%であってもよい。1つの実施形態において、有効な孔は、少なくとも60%、例えば少なくとも70%である。
【0293】
典型的には、第1の層中の結晶質A/M/X材料(又は光活性材料)はp型及びn型領域の一方と接触し、キャッピング層中の結晶質A/M/X材料はp型及びn型領域の他方と接触する。キャッピング層中の結晶質A/M/X材料は、典型的にはp型領域又はn型領域を有する平面ヘテロ接合を形成する。
【0294】
1つの実施形態において、キャッピング層中の結晶質A/M/X材料はp型領域と接触し、第1の層中の結晶質A/M/X材料はn型領域と接触する。別の実施形態において、キャッピング層中の結晶質A/M/X材料はn型領域と接触し、第1の層中の結晶質A/M/X材料はp型領域と接触する(例えば反転デバイス(inverted device)において)。
【0295】
1つの実施形態において、キャッピング層中の結晶質A/M/X材料はp型領域と接触し、第1の層中の結晶質A/M/X材料はn型領域と接触する。通常、この実施形態において、足場材料は電子輸送足場材料又は誘電足場材料のいずれかである。典型的には、キャッピング層中の結晶質A/M/X材料は、p型領域を有する平面ヘテロ接合を形成する。
【0296】
しかしながら、別の実施形態において、キャッピング層中の結晶質A/M/X材料はn型領域と接触し、第1の層中の結晶質A/M/X材料はp型領域と接触する。典型的には、この実施形態において、足場材料は正孔輸送足場材料又は誘電足場材料である。典型的には、キャッピング層中の結晶質A/M/X材料は、n型領域を有する平面ヘテロ接合を形成する。
【0297】
キャッピング層の厚さは、通常、第1の層の厚さよりも大きい。したがって、任意の光活性(例えば光吸収又は発光)の大部分は、通常、キャッピング層で起こる。キャッピング層の厚さは、典型的には10nm~100μmである。より典型的には、キャッピング層の厚さは10nm~10μmである。好ましくは、キャッピング層の厚さは、50nm~1000nm又は例えば100nm~700nmである。キャッピング層の厚さは、100nm以上であってもよい。他方で、第1の層の厚さは多くの場合5nm~1000nmである。より典型的には、これは、5nm~500nm又は例えば30nm~200nmである。
【0298】
n型領域は、典型的にはn型層である。或いは、n型領域は、n型層及びn型励起子ブロッキング層を含んでいてもよい。このようなn型励起子ブロッキング層は、典型的にはn型層と結晶質A/M/X材料を含む層との間に配置される。n型領域は50nm~1000nmの厚さを有していてもよい。例えば、n型領域は、50nm~500nm又は100nm~500nmの厚さを有していてもよい。
【0299】
好ましくは、n型領域はn型半導体の緻密層を含む。n型領域は、上記の多孔質足場材料(ここで、多孔質足場材料は電子輸送材料である)であり得るn型半導体の多孔質層をさらに含んでいてもよい。
【0300】
本発明の光電子デバイス中のn型領域は1つ以上のn型層を含む。多くの場合、n型領域は、1つのn型層、すなわち単一のn型層である。しかしながら、他の実施形態において、n型領域は、n型層及びn型励起子ブロッキング層を含んでいてもよい。n型励起子ブロッキング層が用いられる場合において、n型励起子ブロッキング層は、通常n型層と結晶質A/M/X材料を含む層との間に配置される。
【0301】
励起子ブロッキング層は、結晶質A/M/X材料よりも広いバンドギャップの材料であるが、結晶質A/M/X材料のものと密接に一致したその伝導帯又は価電子帯のいずれかを有する。励起子ブロッキング層の伝導帯(又は最低空分子軌道エネルギーレベル)は、結晶質A/M/Xの伝導帯と密接に整列しているならば、次いで電子は、結晶質A/M/X材料から、励起子ブロッキング層に及び励起子ブロッキング層を通して、又は励起子ブロッキング層を通して及び結晶質A/M/X材料に、通過することができ、本発明者らはこれをn型励起子ブロッキング層と称する。このような例は、P. Peumans、A. Yakimov及びS. R. Forrest、「Small molecular weight organic thin-film photodetectors and solar cells」、J. Appl. Phys.、93巻、3693頁(2001年)並びにMasaya Hirade及びChihaya Adachi、「Small molecular organic photovoltaic cells with exciton blocking layer at anode interface for improved device performance」、Appl. Phys. Lett.、99巻、153302頁(2011年)に記載のバソクプロインである。
【0302】
n型層は、電子輸送(すなわちn型)材料の層である。n型材料は、例えば、単一のn型化合物又は元素材料であってもよく、これはドープされていなくてもよく、又は1種以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0303】
本発明の光電子デバイスにおいて用いられるn型層は、無機又は有機のn型材料を含んでいてもよい。
【0304】
適切な無機n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、ペロブスカイト、アモルファスSi、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体及びn型II-V族半導体から選択され得、これらのいずれもドープされていても、ドープされていなくてもよい。
【0305】
n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、アモルファスSi、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体及びn型II-V族半導体から選択され得、これらのいずれもドープされていても、ドープされていなくてもよい。
【0306】
より典型的には、n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物及び金属テルル化物から選択される。
【0307】
したがって、n型層は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム若しくはカドミウムの酸化物又は2種以上の前記金属の混合物の酸化物から選択される無機材料を含んでいてもよい。例えば、n型層は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO又はCdOを含んでいてもよい。用いられ得る他の適切なn型材料としては、カドミウム、スズ、銅又は亜鉛の硫化物が、2種以上の前記金属の混合物の硫化物を含めて挙げられる。例えば、硫化物は、FeS2、CdS、ZnS、SnS、BiS、SbS又はCu2ZnSnS4であってもよい。
【0308】
n型層は、例えば、カドミウム、亜鉛、インジウム若しくはガリウムのセレン化物又は2種以上の前記金属の混合物のセレン化物、或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物又は2種以上の前記金属の混合物のテルル化物を含んでいてもよい。例えば、セレン化物はCu(In,Ga)Se2であってもよい。典型的には、テルル化物は、カドミウム、亜鉛、カドミウム又はスズのテルル化物である。例えば、テルル化物はCdTeであってもよい。
【0309】
n型層は、例えば、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、カドミウムの酸化物又は2種以上の前記金属の混合物の酸化物、カドミウム、スズ、銅、亜鉛の硫化物又は2種以上の前記金属の混合物の硫化物、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムのセレン化物又は2種以上の前記金属の混合物のセレン化物、或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物又は2種以上の前記金属の混合物のテルル化物から選択される無機材料を含んでいてもよい。適切なn型材料であり得る他の半導体の例としては、例えばこれらがnドープされる場合、IV族元素又は化合物の半導体、アモルファスSi、III-V族半導体(例えばガリウムヒ素)、II-VI族半導体(例えばセレン化カドミウム)、I-VII族半導体(例えば塩化第一銅)、IV-VI族半導体(例えばセレン化鉛)、V-VI族半導体(例えばテルル化ビスマス)及びII-V族半導体(例えばヒ化カドミウム)が挙げられる
【0310】
典型的には、n型層はTiO2を含む。
【0311】
n型層は、無機材料、例えばTiO2又は上記に列挙された任意の他の材料である場合、これは前記無機材料の緻密層であってもよい。好ましくは、n型層はTiO2の緻密層である。
【0312】
有機及びポリマー電子輸送材料並びに電解質を含む他のn型材料を用いてもよい。適切な例としては、限定されるものではないが、フラーレン若しくはフラーレン誘導体(例えばC60又はフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM))、ペリレン若しくはその誘導体を含む有機電子輸送材料、又はポリ{[N,N0-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-alt-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))が挙げられる。
【0313】
p型領域は、典型的にはp型層である。或いは、p型領域は、p型層及びp型励起子ブロッキング層を含んでいてもよい。このようなp型励起子ブロッキング層は、典型的にはp型層と結晶質A/M/X材料を含む層との間に配置される。p型領域は50nm~1000nmの厚さを有していてもよい。例えば、p型領域は、50nm~500nm又は100nm~500nmの厚さを有していてもよい。
【0314】
本発明の光電子デバイス中のp型領域は1つ以上のp型層を含む。多くの場合、p型領域は、1つのp型層、すなわち単一のp型層である。しかしながら、他の実施形態において、p型領域は、p型層及びp型励起子ブロッキング層を含んでいてもよい。p型励起子ブロッキング層が用いられる場合において、p型励起子ブロッキング層は、通常p型層と結晶質A/M/X材料を含む層との間に配置される。励起子ブロッキング層の価電子帯(又は最高被占分子軌道エネルギーレベル)は、結晶質A/M/X材料の価電子帯と密接に整列しているならば、次いで正孔は、結晶質A/M/X材料から励起子ブロッキング層に及び励起子ブロッキング層を通して、又は励起子ブロッキング層を通して及び結晶質A/M/X材料に通過することができ、本発明者らはこれをp型励起子ブロッキング層と称する。この例は、Masaya Hirade及びChihaya Adachi、「Small molecular organic photovoltaic cells with exciton blocking layer at anode interface for improved device performance」、Appl. Phys. Lett.、99巻、153302頁(2011年)に記載のトリス[4-(5-フェニルチオフェン-2-イル)フェニル]アミンである。
【0315】
p型層は、正孔輸送(すなわち、p型)材料の層である。p型材料は、単一のp型の化合物若しくは元素材料、又は2種以上のp型の化合物若しくは元素材料の混合物であってもよく、これはドープされていなくてもよく、又は1種以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0316】
本発明の光電子デバイスにおいて用いられるp型層は、無機又は有機のp型材料を含んでいてもよい。典型的には、p型領域は有機p型材料の層を含む。
【0317】
適切なp型材料はポリマー又は分子正孔輸送体から選択されてもよい。本発明の光電子デバイスにおいて用いられるp型層は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b']ジチオフェン-2,6-ジイル]])、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))、HTM-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li-TFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)又はtBP(tert-ブチルピリジン)を含んでいてもよい。p型領域はカーボンナノチューブを含んでいてもよい。通常、p型材料は、スピロ-OMeTAD、P3HT、PCPDTBT及びPVKから選択される。好ましくは、本発明の光電子デバイスにおいて用いられるp型層はスピロ-OMeTADを含む。
【0318】
p型層は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9'-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b']ジチオフェン-2,6-ジイル]])又はPVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))を含んでいてもよい。
【0319】
適切なp型材料としては、分子正孔輸送体、ポリマー正孔輸送体及びコポリマー正孔輸送体も挙げられる。p型材料は、例えば、分子正孔輸送材料、以下の部分:チオフェニル、フェネレニル(phenelenyl)、ジチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ジケトピロロピロリル(diketopyrrolopyrrolyl)、エトキシジチオフェニル、アミノ、トリフェニルアミノ、カルボゾイル(carbozolyl)、エチレンジオキシチオフェニル、ジオキシチオフェニル又はフルオレニルのうちの1種以上を含むポリマー又はコポリマーであってもよい。したがって、本発明の光電子デバイスにおいて用いられるp型層は、例えば、前述の分子正孔輸送材料、ポリマー又はコポリマーのいずれかを含んでいてもよい。
【0320】
適切なp型材料としては、m-MTDATA(4,4',4''-トリス(メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、MeOTPD(N,N,N',N'-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン)、BP2T(5,5'-ジ(ビフェニル-4-イル)-2,2'-ビチオフェン)、ジ-NPB(N,N'-ジ-[(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニル]-1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン)、α-NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン)、TNATA(4,4',4"-トリス-(N-(ナフチレン-2-イル)-N-フェニルアミン)トリフェニルアミン)、BPAPF(9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン)、スピロ-NPB(N2,N7-ジ-1-ナフタレニル-N2,N7-ジフェニル-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン)、4P-TPD(4,4-ビス-(N,N-ジフェニルアミノ)-テトラフェニル)、PEDOT:PSS及びスピロ-OMeTADも挙げられる。
【0321】
p型層は、例えばtert-ブチルピリジン(tertbutyl pyridine)及びLiTFSIでドープされていてもよい。p型層は正孔密度を増加させるためにドープされていてもよい。p型層は、正孔密度を増加させるために、例えばNOBF4(ニトロソニウムテトラフルオロボレート)でドープされていてもよい。
【0322】
他の実施形態において、p型層は無機正孔輸送体を含んでいてもよい。例えば、p型層は、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS、ペロブスカイト、アモルファスSi、p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体及びp型II-V族半導体を含む無機正孔輸送体を含んでいてもよく、この無機材料はドープされていても、ドープされていなくてもよい。p型層は前記無機正孔輸送体の緻密層であってもよい。
【0323】
p型層は、例えば、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS、アモルファスSi、p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体及びp型II-V族半導体を含む無機正孔輸送体を含んでいてもよく、この無機材料はドープされていても、ドープされていなくてもよい。p型層は、例えば、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO及びCISから選択される無機正孔輸送体を含んでいてもよい。p型層は前記無機正孔輸送体の緻密層であってもよい。
【0324】
典型的には、p型層はポリマー又は分子正孔輸送体を含み、n型層は無機n型材料を含む。p型ポリマー又は分子正孔輸送体は、任意の適切なポリマー又は分子正孔輸送体、例えば上記に列挙されたもののいずれかであってもよい。同様に、無機n型材料は、任意の適切なn型無機物、例えば上記に列挙されたもののいずれかであってもよい。1つの実施形態において、例えば、p型層はスピロ-OMeTADを含み、n型層はTiO2を含む。典型的には、この実施形態において、TiO2を含むn型層はTiO2の緻密層である。
【0325】
他の実施形態において、n型層及びp型層は両方とも無機材料を含む。したがって、n型層は無機n型材料を含んでいてもよく、p型層は無機p型材料を含んでいてもよい。無機p型材料は、任意の適切なp型無機物、例えば上記に列挙されたもののいずれかであってもよい。同様に、無機n型材料は、任意の適切なn型無機物、例えば上記に列挙されたもののいずれかであってもよい。他の実施形態において、p型層は無機p型材料(すなわち無機正孔輸送体)を含み、n型層はポリマー又は分子正孔輸送体を含む。無機p型材料は、任意の適切なp型無機物、例えば上記に列挙されたもののいずれかであってもよい。同様に、n型ポリマー又は分子正孔輸送体は、任意の適切なn型ポリマー又は分子正孔輸送体、例えば上記に列挙されたもののいずれかであってもよい。
【0326】
例えば、p型層は無機正孔輸送体を含んでいてもよく、n型層は電子輸送材料を含んでいてもよく、電子輸送材料はフラーレン若しくはフラーレン誘導体、電解質、又は有機電子輸送材料を含み、好ましくは有機電子輸送材料はペリレン若しくはその誘導体又はポリ{[N,N0-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-alt-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))を含む。無機正孔輸送体は、例えば、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS、ペロブスカイト、アモルファスSi、p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体及びp型II-V族半導体を含んでいてもよく、この無機材料はドープされていても、ドープされていなくてもよい。より典型的には、無機正孔輸送体は、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS、p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体及びp型II-V族半導体を含み、この無機材料はドープされていても、ドープされていなくてもよい。したがって、無機正孔輸送体は、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCISを含んでいてもよい。
【0327】
光電子デバイスは、典型的には1つ以上の第1の電極及び1つ以上の第2の電極をさらに含む。1つ以上の第1の電極は、典型的には、n型領域が存在する場合、n型領域と接触している。1つ以上の第2の電極は、典型的には、p型領域が存在する場合、p型領域と接触している。典型的には、1つ以上の第1の電極はn型領域と接触しており、1つ以上の第2の電極はp型電極と接触しており、又は1つ以上の第1の電極はp型領域と接触しており、1つ以上の第2の電極はn型領域と接触している。第1及び第2の電極は任意の適切な導電性材料を含んでいてもよい。第1の電極は典型的には透明導電酸化物を含む。第2の電極は典型的には1種以上の金属を含む。典型的には、第1の電極は透明導電酸化物を含み、第2の電極は典型的には1種以上の金属を含む。
【0328】
透明導電酸化物は、上記に定義された通りであり得、多くの場合FTO、ITO又はAZO、典型的にはITOである。金属は任意の金属であってもよい。一般に、第2の電極は、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム又はタングステンから選択される金属を含む。電極は、単一層を形成してもよく、又はパターン化されていてもよい。
【0329】
本発明による光電子デバイス、例えば発光デバイス又は光起電デバイスは、以下の層を以下の順序で含んでいてもよい:
I.本明細書に定義される1つ以上の第1の電極、
II.任意選択で、本明細書に定義される緻密n型層、
III.本明細書に定義されるn型材料の多孔質層、
IV.前記結晶質A/M/X材料の層(例えば増感剤として)、好ましくは前記結晶質A/M/X材料の薄膜、
V.本明細書に定義されるp型領域、
VI.任意選択で、本明細書に定義されるさらなる緻密p型層、及び
VII.本明細書に定義される1つ以上の第2の電極。
【0330】
本発明による光電子デバイス、例えば発光デバイス又は光起電デバイスは、以下の層を以下の順序で含んでいてもよい:
I.本明細書に定義される1つ以上の第1の電極、
II.本明細書に定義される少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.本明細書に定義される結晶質A/M/X材料を含む材料(好ましくは結晶質A/M/X材料の薄膜)の層、
IV.本明細書に定義される少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.本明細書に定義される1つ以上の第2の電極。
【0331】
本発明による光電子デバイスは、以下の層を以下の順序で含んでいてもよい:
I.透明導電酸化物、好ましくはFTOを含む1つ以上の第1の電極、
II.本明細書に定義される少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.本明細書に定義される結晶質A/M/X材料の層(好ましくは結晶質A/M/X材料の薄膜を含む層)、
IV.本明細書に定義される少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.金属、好ましくは銀又は金を含む1つ以上の第2の電極。
【0332】
本発明による光電子デバイス(例えば反転デバイス)は、以下の層を以下の順序で含んでいてもよい:
I.本明細書に定義される1つ以上の第2の電極、
II.本明細書に定義される少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.本明細書に定義される結晶質A/M/X材料の層(好ましくは結晶質A/M/X材料の薄膜を含む層)、
IV.本明細書に定義される少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.本明細書に定義される1つ以上の第1の電極。
【0333】
本発明による光電子デバイス、例えば発光デバイス又は光起電デバイスは、以下の層を以下の順序で含むことができる:
I.金属を含む1つ以上の第2の電極、
II.本明細書に定義される少なくとも1つのメソ多孔性n型層を含むn型領域、
III.本明細書に定義される結晶質A/M/X材料の増感層(好ましくは結晶質A/M/X材料の薄膜を含む増感層)、
IV.本明細書に定義される少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.透明導電酸化物を含む1つ以上の第1の電極。
【0334】
1つ以上の第1の電極は、100nm~700nm、例えば100nm~400nmの厚さを有していてもよい。1つ以上の第2の電極は、10nm~500nm、例えば50nm~200nm又は10nm~50nmの厚さを有していてもよい。n型領域は50nm~500nmの厚さを有していてもよい。p型領域は50nm~500nmの厚さを有していてもよい。
【0335】
上記の光電子デバイスの多くは、デバイス中の先の層(例えば半導体材料の層、n型半導体の層、p型半導体の層、足場材料など)上に配置された結晶質A/M/X材料の層(好ましくは、結晶質A/M/X材料の薄膜を含む層)を含む。これらの場合において、デバイス中の結晶質A/M/X材料の層は、本明細書に記載の通り調製され得る。光電子デバイスはまた、結晶質A/M/X材料の層上に配置された後続の層をさらに含んでいてもよい。結晶質A/M/X材料の層上に配置された後続の層は、国際公開第2017/037448号に記載の通り調製されてもよい。
【0336】
他の実施形態において、光活性材料は光電子デバイス中でリン光体として機能する。このような実施形態において、光電子デバイスは、典型的には光源及び本明細書に記載の光活性材料を含む。典型的には、光活性材料は、本発明の方法により形成された沈殿物から直接得られ得る、又は本明細書に定義される方法により生成された薄膜から得られ得る、本明細書に定義される結晶質A/M/X材料のナノ結晶を含む。また典型的には、光活性材料は本明細書に定義されるマトリックス材料を含む。
【0337】
「リン光体として機能する」とは、光活性材料が、第1の波長の光を吸収し、その後異なるより長い波長の光を再放出することによって機能することを意味する。
【0338】
光源は、典型的には白色、青色又はUVの光源である。すなわち、光源は、典型的には500nm以下、より一般には480nm以下の波長で放出する電磁放射線源である。例えば、光源は、典型的には、400~480nmの波長を有する電磁放射線を放出する。
【0339】
光活性材料がリン光体として機能する光電子デバイスの例としては、ディスプレイスクリーン、例えばLEDディスプレイスクリーン、及び固体状態の照明デバイスが挙げられる。このようなデバイスは本発明のさらなる態様を表す。
【0340】
使用
さらなる態様において、本発明は、本発明の結晶質A/M/X材料及び前記化合物を含む本発明の光活性材料の使用を提供する。
【0341】
第1の実施形態において、本発明は、光エミッター、好ましくは光、好ましくは可視光(すなわち450~700nmの領域の波長を有する光)を放出する光エミッターとしての本明細書に定義される結晶質A/M/X材料又は光活性材料の使用を提供する。好ましい実施形態において、光エミッターは、青色光、すなわち450~500nm、より好ましくは455~495nm、さらに好ましくは460~490nmの範囲の波長の光を放出する。
【0342】
第2の実施形態において、本発明は、光電子デバイスの製造における本明細書に定義される結晶質A/M/X材料又は光活性材料の使用を提供し、好ましくは前記光電子デバイスが光、好ましくは可視光を放出し、より好ましくは前記光電子デバイスが450~500nm、より好ましくは455~495nm、さらに好ましくは460~490nmの範囲の波長の青色光を放出する。
【0343】
第3の実施形態において、本発明は、リン光体としての本明細書に定義される結晶質A/M/X材料又は光活性材料の使用を提供する。例えば、本発明は、スクリーン、特にLEDスクリーン、又は固体状態の照明デバイスの製造における本明細書に定義される光活性材料の使用を提供する。
【0344】
第4の実施形態において、本発明は、光、好ましくは可視光を発生する方法における、より好ましくは450~500nm、より好ましくは455~495nm、さらに好ましくは460~490nmの範囲の波長の光を発生する方法における、本明細書に定義される結晶質A/M/X材料又は光電子デバイスの使用をさらに提供する。例えば、本発明は、光源を用いて本明細書に定義される結晶質A/M/X材料又は光活性材料を放射するステップを含む光を発生する方法、したがって、450~500nm、より好ましくは455~495nm、さらに好ましくは460~490nmの範囲の波長で前記光活性材料からの光の放出を発生する方法を提供する。
【実施例
【0345】
一部の具体例を参照して、本発明の利点をこれより以下に記載する。
【0346】
1.実施例で使用した材料
CsBr(99.9%)、CsCl(99.9%)、RbBr(99.9%)、RbCl(99.9%)、ホルムアミジン酢酸塩(FAAc:99%)、PbBr2(≧98%)、PbCl2(≧98%)、酢酸Pb(Pb(Ac)2:≧99.99%)、臭化水素酸(HBr:水中48wt%、又は示されている場合水中47%)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF:無水99.8%)、ジメチルスルホキシド(DMSO:無水99.9%)、エタノール(実験用試薬、96%)、メタノール(無水、99.8%)、イソプロパノール(無水99.5%)トルエン(無水99.8%)、酢酸メチル(無水99.5%)、酢酸(≧99%)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA:平均Mw97,000(典型)、平均Mn46,000(典型))はSigma-Aldrichから購入した。Cs2CO3(99%)及びヨウ化水素酸(HI:57%w/w水溶液、1.5%次亜リン酸で安定化(stab with 1.5% hypophosphorous acid))はAlfa Aesarから購入した。塩酸(HCl:H2O中32%)はFisher Scientificから購入した。
【0347】
2.Cs1-xRbxPbBr3結晶質粉末の製作
Cs1-xRbxPbBr3は、CsBr及びRbBr(モル比を変えて)を混合し、PbBr2と化学量論的量で組み合わせることにより調製した。例えばCs0.5Rb0.5PbBr3は、1.064g(5mmol)のCsBr及び0.827g(5mmol)のRbBrを用い、これを5mLの脱イオン化(DI)水に溶解し、溶液を透明な溶液になるまでボルテックスミキサーによって室温で混合して調製した。3.670g(10mmol)のPbBr2を12.6mLのDMF及び2.4mLのHBrに溶解し、磁気撹拌棒を用いて、100℃で10分間溶液を混合した。
【0348】
Cs0.5Rb0.5Br水溶液を、磁気撹拌棒を用いて室温(19~21℃)で撹拌しながら、PbBr2溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、オレンジ色-黄色の沈殿物が溶液中に現れる。任意選択で、10mLのエタノールを、沈殿物を保持する溶液に加え、ボルテックスミキサーで10~20秒間混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に収集し、エタノールで数回洗浄した。次いで、これを真空オーブン内で、70℃で10時間乾燥させた。
【0349】
3.Cs1-xRbxPbBr3前駆体溶液の調製(従来の方法)
CsPbBr3及びRbPbBr3前駆体溶液を混合することによりCs1-xRbxPbBr3を調製した。CsPbBr3溶液はCsBr及びPbBr2から調製した。RbPbBr3溶液はRbBr及びPbBr2から調製した。前記CsPbBr3溶液を作製するために、上述のハロゲン化物塩(CsBr及びPbBr2)を、DMFとDMSOの体積比1:9の溶媒混合物に溶解して、ハロゲン化鉛濃度0.1Mの所望の組成を有するペロブスカイト溶液を得た。溶液を、磁気撹拌棒を用いて40℃で30分より長く混合した。溶液をPTFE(細孔サイズ0.45μm)で濾過した。RbPbBr3溶液を対応する方法で作製した。
【0350】
混合カチオンペロブスカイトCs1-xRbxPbBr3を生成するため、CsPbBr3及びRbPbBr3前駆体溶液を混合して、Cs1-xRbxPbBr3混合溶液[式中、x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8及び0.9]を調製した。
【0351】
4.CsPb(Br1-xClx)3結晶質粉末の製作
CsPb(Br1-xClx)3は、CsBr及びCsCl(Aldrich99.9%)を様々なモル比で混合し、同じモル比のPbBr2及びPbCl2と化学量論的量で組み合わせることにより調製した。例えば、CsPb(Br0.7Cl0.3)3は、5mLのDI水中に溶解し、この溶液を透明になるまでボルテックスミキサーで混合した、1.490g(7mmol)のCsBr及び0.504g(3mmol)のCsClを用いて調製した。2.569g(7mmol)のPbBr2及び0.834g(3mmol)のPbCl2を、8.82mLのDMF及び1.68mLのHBr並びに3.15mLのDMF及び1.35mLのHClにそれぞれ溶解した。PbBr2溶液及びPbCl2溶液を、磁気撹拌棒を用いて100℃で10分間及び5分間それぞれ混合し、次いで2種の溶液を組み合わせ、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で5分間混合した。
【0352】
CsBr0.7Cl0.3水溶液を、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で撹拌しながら、Pb(Br0.7Cl0.3)2溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、明るい黄色沈殿物が溶液中に現れる。10mLのエタノールを、沈殿物を保持する溶液に加え、ボルテックスミキサーで10~20秒混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に取り出し、エタノールで数回洗浄し、次いでそれを真空オーブン中、70℃で10時間乾燥させた。
【0353】
5.Cs1-xRbxPb(Br1-xClx)3結晶質粉末の製作
Cs1-xRbxPb(Br1-xClx)3は、様々なモル比のCsBr、RbBr、CsCl及びRbClを混合し、同じモル比のPbBr2及びPbCl2と化学量論的量で組み合わせることによって調製した。Cs0.6Rb0.4Pb(Br0.7Cl0.3)3の合成のため、0.745g(3.5mmol)のCsBr、0.579g(3.5mmol)のRbBr、0.252g(1.5mmol)のCsCl及び0.181g(1.5mmol)のRbClを5mLのDI水に溶解し、透明になるまで溶液をボルテックスミキサーで混合した。2.569g(7mmol)のPbBr2及び0.834g(3mmol)のPbCl2を、6.3mLのDMF及び1.2mLのHBr並びに5.25mLのDMF及び2.25mLのHClにそれぞれ溶解した。PbBr2溶液及びPbCl2溶液を、磁気撹拌棒を用いて100℃で10分間及び5分間それぞれ混合し、次いで2種の溶液を組み合わせ、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で5分間混合した。
【0354】
CsBr0.5Cl0.5水溶液を、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で撹拌しながら、PbBrCl溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、明るい黄色沈殿物が溶液中に現れる。10mLのエタノールを、沈殿物を保持する溶液に加え、ボルテックスミキサーで10~20秒混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に取り出し、エタノールで数回洗浄し、次いでこれを真空オーブン内、70℃で10時間乾燥させた。
【0355】
6.過剰のCsカチオンを有するCsPb(Br0.7Cl0.3)3結晶質粉末の製作
過剰のセシウムハロゲン化物を有するCsPb(Br0.7Cl0.3)3は、セシウムハロゲン化物及びハロゲン化鉛のモル比を変えて調製した。モル比2:1のCs:Pb中のCsPb(Br0.7Cl0.3)3は、5mLのDI水に溶解し、透明になるまでボルテックスミキサーで混合した、2.8g(14mmol)のCsBr及び1.008g(6mmol)のCsClを用いて調製した。2.569g(7mmol)のPbBr2及び0.834g(3mmol)のPbCl2を、8.82mLのDMF及び1.68mLのHBr並びに3.15mLのDMF及び1.35mLのHClにそれぞれ溶解した。PbBr2溶液及びPbCl2溶液を、磁気撹拌棒を用いて100℃で10分間及び5分間それぞれ混合し、次いで組み合わせ、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で5分間混合した。
【0356】
CsBr0.7Cl0.3水溶液を、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で撹拌しながら、Pb(Br0.7Cl0.3)2溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、明るい黄色沈殿物が溶液中に現れる。10mLのエタノールを、沈殿物を保持する溶液に加え、ボルテックスミキサーで10~20秒混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に取り出し、エタノールで数回洗浄し、次いでこれを真空オーブン内で、70℃で10時間乾燥させた。
【0357】
7.(Cs1-xRbx)4PbBr6結晶質粉末の製作
(Cs1-xRbx)4PbBr6は、CsBr及びRbBrのモル比を変えて、Cs1-xRbx:Pbに関してモル比10:1でPbBr2と組み合わせて調製した。例えば(Cs0.9Rb0.1)4PbBr6は、600μLのDI水及び300μLのHBrに溶解した、383mg(1.8mmol)のCsBr及び33.1mg(0.2mmol)のRbBrを用いて調製した。透明になるまで、この塩をボルテックスミキサーで溶解した。73.4mg(0.2mmol)のPbBr2を1mLのDMSOに溶解した。PbBr2溶液を、磁気撹拌棒を用いて100℃で数分間混合した。
【0358】
Cs1-xRbxBr水溶液を、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で撹拌しながら、PbBr2溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、明るい黄色沈殿物が溶液中に現れる。全部のCs1-xRbxBr溶液をPbBr2溶液に添加後、溶液を撹拌ホットプレートに移して、100℃で15分間の反応を完了した。次いで、2mLのエタノールを、沈殿物を保持する溶液に加え、ボルテックスミキサーで10~20秒間混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に取り出し、エタノールで数回洗浄し、次いでこれを真空オーブン内で、70℃で10時間乾燥させた。
【0359】
比較目的のため、ある場合には(Cs1-xRbx)4PbBr6はまた、M前駆体(Pb)を含む溶液中溶媒として、有機溶媒ではなく水性溶媒を使用して合成した。これらの実験において、PbBr2は、DMSOに溶解するのではなく、水中の47wt%HBrに溶解した。したがって、(Cs1-xRbx)4PbBr6は、CsBr及びRbBrのモル比を変えて、PbBr2に対する溶媒として水中又はDMSO中のいずれかのHBr47%を使用して、Cs1-xRbx:Pbに関するモル比4:1でPbBr2と組み合わせて調製した。例えば、(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6は、400μLのDI水及び50μLのHBrに溶解した、93mg(0.44mmol)のCsBr及び59mg(0.36mmol)のRbBrを用いて調製した。透明になるまで、この塩をボルテックスミキサーで溶解した。HBr経路に対しては、73.4mg(0.2mmol)のPbBr2を1mLのHBrに溶解した。PbBr2溶液を、磁気撹拌棒を用いて20℃で数分間混合した。DMSO経路に対しては、73.4mg(0.2mmol)のPbBr2を1mLのDMSOに溶解した。PbBr2溶液を、磁気撹拌棒を用いて100℃で数分間混合した。
【0360】
Cs1-xRbxBr水溶液を、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で撹拌しながら、PbBr2溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、黄色沈殿物が溶液中に現れる。次いで、2mLのイソ-プロパノールを、沈殿物を保持する溶液に加え、ボルテックスミキサーで10~20秒間混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に取り出し、イソ-プロパノールで数回洗浄し、次いでこれを真空オーブン内で、70℃で10時間乾燥させた。
【0361】
Cs4PbBr6及びRb4PbBr6粉末[式中、x=0又は1]はまた、「A」(Cs又はRb)及び「M」(Pb)をモル比4:1で提供することでも調製した。Cs+又はRb+を含有する水溶液及びPb2+を含有する有機溶液が提供された。Pb2+を含む前駆体溶液中に存在する有機溶媒はDMSOであった。比較目的のため、ある場合には、Pb2+を含む前駆体溶液に対する溶媒として、47wt%HBrを使用した。
【0362】
例えばRb4PbBr6は、水中又はDMSO中のいずれかのHBr47%をPbBr2に対する溶媒として使用して、Rb:Pbに関してモル比4:1でPbBr2と組み合わせたRbBrから調製した。Rb4PbBr6は、400μLのDI水及び50μLのHBrに溶解した、132mg(0.8mmol)のRbBrを用いて調製した。透明になるまで、この塩をボルテックスミキサーで溶解した。HBr経路に対しては、73.4mg(0.2mmol)のPbBr2を1mLのHBrに溶解した。PbBr2溶液を、磁気撹拌棒を用いて20℃で数分間混合した。DMSO経路に対しては、73.4mg(0.2mmol)のPbBr2を1mLのDMSOに溶解した。PbBr2溶液を、磁気撹拌棒を用いて100℃で数分間混合した。
【0363】
RbBr水溶液を、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で撹拌しながら、PbBr2溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、白色沈殿物が溶液中に現れる。次いで、2mLのイソ-プロパノールを、沈殿物を保持する溶液に加え、ボルテックスミキサーで10~20秒混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に取り出し、イソ-プロパノールで数回洗浄し、次いでこれを真空オーブン内で、70℃で10時間乾燥させた。
【0364】
8.(Cs1-xFAx)4PbI3Br3結晶質粉末の製作
(Cs1-xFAx)4PbI3Br3は、Cs2CO3及びホルムアミジン酢酸(FAAC)のモル比を変えて、Cs1-xRbx:Pbに関してモル比10:1で酢酸鉛(PbAC)と組み合わせて調製した。例えば(FA0.5Cs0.5)4PbI3Br3は、1mLのメタノール及び100μLの酢酸に溶解した、81.5mg(250mmol)のCs2CO3、52.1mg(500mmol)のFAAC及び40.7mg(125mmol)のPbACで調製した。透明になるまで、この塩を、磁気撹拌棒を用いて19~21℃で5分よりも長い間混合した。
【0365】
HI/HBr(1:1モル比)水溶液を、磁気撹拌棒を用いて18~20℃で撹拌しながら、塩溶液にゆっくりと加えた。ある時点で、明るい黄色沈殿物が溶液中に現れ、次いで、HI/HBrの量を増加させると、沈殿物の色が黄色から赤色-オレンジ色に変わった。すべてのHI/HBr溶液の添加後、3mLのイソ-プロパノールを、沈殿物を保持する混合溶液に直ちに加え、ボルテックスミキサーで5~10秒混合した。沈殿物をアルファ-セルロース濾紙(Advantec)上に取り出し、イソ-プロパノールで数回洗浄し、次いでこれを真空オーブン内で、70℃で10時間乾燥させた。
【0366】
9.化学量論的ペロブスカイト材料を用いたペロブスカイト薄膜の製作
ペロブスカイト結晶をDMFとDMSOの体積比1:9の混合溶媒に溶解して、所望の組成及びモル濃度0.125~0.3Mを有するペロブスカイト溶液を得た。正常な実験室雰囲気(18~20℃、湿度40~60%)内で、3000rpm(加速500rpm)で50秒間スピンコーティングすることにより、ペロブスカイト前駆体溶液をガラス基材にコーティングし、次いで、同じ雰囲気内でペロブスカイト膜を100℃で5分間乾燥させた。
【0367】
10.過剰のA部位ペロブスカイトを有する、ポリマーマトリックスに分散させた多結晶質ペロブスカイトの薄膜の製作
結晶を乳鉢内で5分間粉砕し、ポリ(メチルメタクリレート)溶液(PMMA、トルエン中200mg/mL)へと加えて、ペロブスカイト結晶分散液を得た。ドクターブレード法を使用して、混合したペロブスカイト/ポリマー溶液をガラス基材上にコーティングした。膜をホットプレート上で、70℃で数分間乾燥させた。
【0368】
11.特性評価
UV-可視吸収スペクトルを市販の分光光度計(Varian Cary 300 UV-Vis)によって測定した。光ルミネセンス(PL)スペクトルを、市販の蛍光分光計(Horiba、Fluorolog)において365~405nmの励起波長及び1~3mmのスリット幅を使用して記録した。積分球(Oriel Instruments 70682NS)において試料を照射する405nm CWレーザー(RLTMDL-405、Roithner Lasertechnik GmbH)を使用して、レーザー散乱させ、ファイバー結合検出器(Ocean Optics MayaPro)を使用してPLを収集して、光ルミネセンス量子収率(PLQY)値を決定した。PLQY計算を確立された技法を使用して行った。レーザー強度を、減光フィルターを使用して調節した。Panalytical X’pert粉末回折計(Cu-Kα1放射線;λ=154.05pm)を室温で用いて、粉末X線反射回折(PXRD)パターンを得た。
【0369】
12.結果及び考察
Cs1-xRbxPbBr3(x=0~x=1)の薄膜を項(2)及び(9)の通り製作した。この種類の混合型カチオンハロゲン化鉛ペロブスカイトは青色及び緑色光エミッターに対して有効である。図1(a)及び(b)において、合成した粉末及び薄膜に対するCs1-xRbxPbBr3のX線回折(XRD)パターンがそれぞれ示されている。合成されたCs1-xRbxPbBr3粉末はx=0.3まで、斜方晶構造(空間群:pnma)における純粋CsPbBr3よりも類似のピーク位置を示すことが観察された。Cs1-xRbxPbBr3においてRb濃度をさらに増加させると、約11.8度において回折ピークが現れるが、これは非ペロブスカイトNH4CdCl3様構造に関係するものである。しかしながら、Cs1-xRbxPbBr3薄膜において、極めて秩序化したペロブスカイト相がx=0.9まで観察された。Csに対してRbのイオン半径がより小さいことに起因する格子サイズの減少から予想される通り、CsPbBr3組成物上の15.2°及び30.7°でのピーク位置は、Rb濃度の増加と共により高い角度へとシフトする。
【0370】
これは、本発明の方法に従い薄膜を製作することにより得ることができる化学量論的制御(x=0.9まで)の改善を例示している。
【0371】
同様に、図2(a)及び2(b)は、合成した粉末及び薄膜に対するCs1-xRbxPbBr3のUV-可視吸収スペクトルをそれぞれ示している。粉末に対して、Cs1-xRbxPbBr3の吸収開始は、xが0(黒の四角)から0.6(右向きの三角形)へと変動するにつれて、550nmに向けてわずかな開始シフトを示している。これは、本発明の方法に従い異なる生成物を製作することにより達成される光学特性における変化を例示している。しかしながら、図2(b)の薄膜に対するデータにはさらにより顕著なシフトが示されている。xが0から増加するにつれて、Cs1-xRbxPbBr3の吸収開始は青色へ向けて有意なシフトを実証している。吸収波長のシフトは、xが0.3まで低い場合目視可能である。吸収開始における安定したシフトの観察は、ペロブスカイト臭化鉛構造におけるカチオンの化学量論的混合物の形成と一致する。安定したシフトはまた、精密にチューニング可能な光学特性を有する材料が本発明の方法により得られ得ることを例示している。
【0372】
図3(a)及び(b)は、合成した結晶質粉末に対するCs1-xRbxPbBr3の定常状態の光ルミネセンス(SSPL)スペクトル及び正規化された光ルミネセンス(PL)スペクトルをそれぞれ示している。xが0.2~0.7の範囲にある場合、PL強度はかなりの増加を示し、正規化されたPL発光ピークは、図2(a)の吸収スペクトルと同様に明確に移動する(ただし、増加するRb含有量に伴う明白な傾向はない)。図3(c)及び(d)には、Cs1-xRbxPbBr3薄膜のSSPLスペクトル及び正規化されたPLスペクトルがそれぞれ示されている。薄膜のPL強度は、純粋CsPbBr3へのRbの組込みと共に有意に増強され、最も大きなPL強度にx=0.6で到達する(図3(c))。薄膜に対する光ルミネセンス量子収率(PLQY)は、x=0及びx=0.6に対して、それぞれ3.1%及び18.3%であると判明している。図3(d)では、Cs1-xRbxPbBr3のPLピーク位置はx=0.3まで著しいシフトを実証せず、これは図2(b)に示されている吸収端のシフトと一致する。Rb濃度のさらなる増加と共に、より短い波長に向かって明白なシフトが観察される。
【0373】
図1~3に示されている混合Cs1-xRbxPbBr3薄膜の構造特性及び光学特性は、発明の方法が秩序化した及び均一に混合した臭化鉛ペロブスカイトの合成に対して有益であることを実証している。本発明の方法の利点をさらに評価するため、従来の方法を使用してCs1-xRbxPbBr3薄膜を調製した。両方の方法から得た薄膜の光学特性を比較した(図4を参照されたい)。
【0374】
x=0及びx=0.7に対して(図4(a))、従来の方法でキャストした(すなわちCsBr/RbBr及びPbBr2をDMF:DMSOに溶解した)膜の吸収開始は、本発明の方法で得た膜(「発明の方法」、すなわち、2種の溶液から製作され、薄膜を形成するためにDMSOに再び溶解した粉末からの薄膜の形成)と比較してより低い波長に位置することが観察された。高いRb含有量(x=0.7)に対して、従来の方法で得た膜は、吸収開始と、約525nmに中心があるPLピークとの間の大きなシフトを示す。対照的に、発明の方法で製作されたx=0.7薄膜のPLピーク位置は約500nmであり、Stokesシフトがほとんどない。加えて、発明の方法で得た薄膜のPL強度は、従来の方法で得た薄膜のPL強度よりもずっと高い。従来の方法で得た膜における吸収開始とPLピークとの間の大きなシフトは、ペロブスカイト構造におけるカチオンの不均質な混合に起因する。525nmにおけるPL発光は、ほぼ純粋なセシウム臭化鉛領域の存在を示し、これは乏しい混合を示す。対照的に、本発明の方法で得た膜のPL発光は、均質な材料である、単相と一致する。
【0375】
本発明の方法が化学量論的に均一な混合ハロゲン化物及び混合カチオンペロブスカイトの製作に特に有益であることもまた本明細書で実証されている。図5及び6において、それぞれ塩化物及びルビジウムの添加と共に、半導体バンドギャップが増加することが示されている。塩化物イオン、臭化物ベースのペロブスカイトの添加と共に、PL強度の低減が観察された。x=0及びx=0.3において膜のPLQYはそれぞれ3~4%及び<1%であると決定されている。
【0376】
図6は、所与のBr/Cl比(CsPb(Br0.7Cl0.3)3)に対して、ルビジウムイオンの添加と共にPL強度が増加することを示している。x=0及びx=0.3の膜のPLQYは、それぞれ<1%及び1~2%であると決定されている。
【0377】
別の例では、本発明の方法を使用して、過剰のAカチオンを有する(すなわち、Cs:Pb比が1より大きいペロブスカイト)高発光性の臭化鉛ペロブスカイトを生じさせた。図7は、CsPb(Br0.7Cl0.3)3組成物におけるCs:Pbのモル比の増加の作用を示している。Cs含有量の増加と共にPL強度が著しく増強することが観察される。PLピーク位置がわずかに変動することは、エミッターバンドギャップの変化よりむしろ光学的作用に起因する(例えば再吸収)。2:1組成物のPLQYは6.6±0.8%と決定されている。1:1を有する膜内の励起子吸収ピークは、Cs含有量の増加と共に消滅する(図7(c))。図7(d)に示す粉末X線回折(PXRD)データは、2:1薄膜が1:1組成物と比較して、薄膜上の異なる方向性を示すことを示している。
【0378】
これらの実験から、過剰のCs(すなわち、ペロブスカイト構造の「A」部位)は光学特性をプラスに変化させ、また結晶特性も改変すると結論づけられる。図8は、開始溶液(x及びyはCsBr含有量に依存する)中の、異なるCs:Pbモル比を有するCsxPbBry結晶のPXRDを示している。高いCs:Pb比(8:1)では、PXRDパターンの2シータ=12.7°において、K4CdCl6様構造を有する低次元ペロブスカイト(ゼロ次元又は0D構造)に対応する独特な回折ピークの存在を明確に観察している[Saidaminovら、ACS Energy Letters、2016年、1巻(4号)、840~845頁]。図8(b)は、過剰なCs含有量が310nm周辺での光吸収を増加させること示し、これは0-D Cs4PbBr6の形成に関係しているが[Yangら、Chem. Mater. 2017年、29巻、8978~8982頁]、ただし、三次元(3-D)CsPbBr3構造に関する吸収開始は依然として存在する。一方、過剰のCs含有量は520nmにおいて光ルミネセンス強度を劇的に増強し、8:1及び10:1 Cs:Pb比の粉末のPLQYは、それぞれ19.5±1.18%及び24.6±1.21%と決定されている(図8(c))。これらの結果は、過剰のCs組成物が0-D Cs4PbBr6マトリックス中の小さな3-D CsPbBr3領域を含有することを示している[Quanら、Adv. Mater. 2017年、29巻、1605945頁]。
【0379】
本発明の方法を使用して、一般的な組成(Cs1-xRbx)4PbBr6を有する高発光性のペロブスカイト結晶質粉末を合成した。図9は、低いRb含有量(x=0.05~x=0.2)を有する(Cs1-xRbx)4PbBr6のPXRDを示している。RbをCs4PbBr6結晶に組み込むことにより、XRDパターンは、Csと比較して、Rbのイオン半径がより小さいことに起因して、より高い2シータ角度へと移動することが認められる。これらの粉末を薄膜内に分散し(10に記載されている通り)、これらの光学特性を試験した。図10は、PMMAマトリックスに分散した(Cs1-xRbx)4PbBr6粉末のPL発光スペクトルを示している。Rb含有量の増加と共にPL強度の増加が観察されるが、PLピーク位置の有意なシフトはない。x=0、0.05、0.1、及び0.2の分散した膜のPLQYは、それぞれ78.0±4.19%、77.6±4.88%、92.3±4.65%及び94.3±4.88%であると決定された。したがって、Rbの存在は分散した膜のPLQYを有意に増加させる。
【0380】
最初の光ルミネセンススペクトルにおいて光ルミネセンスピークの著しいシフトは観察されないが、光ルミネセンスピーク位置の小さなシフトは、定常状態の光ルミネセンススペクトルにおいてRb含有量を変えて観察することができる。図16のグラフ(a)は、異なるRb含有量を有する(Cs1-xRbx)4PbBr6粉末の正規化された定常状態の光ルミネセンススペクトルを示している。xが0から0.5へと増加すると、わずかな青色シフトが観察される。
【0381】
(Cs1-xRbx)4PbBr6粉末の光安定性及びPLQYもまた試験した。図16、グラフ(b)は、模擬太陽光(60℃で76mW・cm-2)下での600時間までの曝露に対する曝露時間の関数として、(Cs1-xRbx)4PbBr6粉末のPLQYを示している。この図から、Rbを組み込むと生成された粉末のPLQYが劇的に増強されることが明白である。x=0.1の場合、最初のPLQYは30%周辺で(x=0)から40%周辺に増加する。さらに、x=0.4又は0.5の場合、PLQYは約65%に増加し、600時間を超えるとこれらの同様の減衰からわかるように、光安定性における劇的な差異はこれらの粉末に対して観察されない。しかしながら、ルビジウム含有粉末の増強されたPLQYは非常に長期間安定していることは明白である。例えば500時間後、x=0.4及びx=0.5粉末のPLQYは依然として30%を超えているようであり、これはルビジウムの非存在下で観察されたいかなるPLQYよりも良い。
【0382】
(Cs1-xRbx)4PbBr6粉末における「A」と「M」との比の変化の作用もまた試験した。図17、グラフ(a)は、[A](すなわち、Cs+及びRb+)と[M](すなわち、Pb2+)との間のモル比を変化させた場合の、(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末の正規化された定常状態の光ルミネセンススペクトルを示している。過剰の(Cs0.55Rb0.45)(ペロブスカイト構造の「A」部位を占める)の存在は、光ルミネセンスピーク位置を青色、すなわちより高いエネルギー波長へとシフトさせることが観察されている。
【0383】
照射下のこれらの構造の光安定性もまた試験した。図17、グラフ(b)は、140時間までの曝露に対して、模擬太陽光(60℃で76mW・cm-2)下での曝露時間の関数として、[A]と[M]との間で異なるモル比を有する(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末のPLQYを示している。[A]:[M]比10:1を有する粉末が最も高いPLQY(約70%)を示している。これは非常に高い。さらに、式(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6の粉末はすべて、模擬太陽光への曝露下で非常に良好な安定性を有する。すべての試験した粉末は、模擬太陽光への120時間の曝露後でも約40%を上回るPLQYを有する。粉末は、[A]:[M]比が変化すると共に、光安定性に著しい差異を示さなかった。
【0384】
別の例では、本発明の方法を使用して、混合ヨウ化/臭化鉛ペロブスカイトを調製した。これらは発光デバイスと光起電デバイスの両方に対して有望な半導体材料である。(Cs1-xFAx)4PbI3Br3組成物(FAはホルムアミジニウムCH2(NH2)2 +である)をこの事例で製作した。これらの材料は、可視スペクトルの赤色領域においてバンドギャップを提示する。図11は(Cs1-xFAx)4PbI3Br3のPXRDパターンを示している。Cs4PbBr6と同様に、ヨウ化物含有組成物もまたK4CdCl6様構造を有する空孔秩序化型ペロブスカイトを形成することが観察された。FAのCs4PbI3Br3への組込みにより、より低い角度へのPXRDパターンシフトにおけるシフトが観察されたが、これは、均一な材料を形成するためのより大きなイオン半径カチオン(すなわちFA)の格子への組込みと一致する。
【0385】
図12は、PMMAマトリックスに分散した(Cs1-xFAx)4PbI3Br3結晶質粉末のPL発光スペクトルを示している。FAを組み込むと、PL強度を増加させ、結晶格子の増加に関係するバンドギャップの低減と一致するPLピーク位置において赤色シフトを誘発する。
【0386】
本発明の方法は、生成物の化学量論に対する優れた制御を有する式[A]a[M]b[X]cの結晶質A/M/X材料を生成することができる。したがって、この方法は、より少ない副生成物を製造し、したがってより純粋な生成物を製造するという利点を有する。これを例示するため、式[A]4[M][X]6の様々な生成物が本発明の方法により、さらにM前駆体が有機溶媒よりむしろ水性溶媒中に提供される、相当する方法により生成された。生成した生成物を分析及び比較した。
【0387】
図18(グラフ(a))は、本発明の方法を介して及び上述されている代替法により得たCs4PbBr6粉末の定常状態の光ルミネセンススペクトルを示している。図18(グラフ(b))は、同じスペクトルで、正規化されたものを示している。本発明の方法がずっと高い光ルミネセンス強度を有する生成物をもたらすことは図18(a)から明白である。代替法で合成したCs4PbBr6粉末の正規化されたスペクトルは、代替法で生成された生成物のスペクトルが実際に分割ピークを提示することを示している。1つの最大ピークが510nmにおいて認められ、別の最大ピークが540nmにおいて認められる。対照的に、本発明の方法で合成したCs4PbBr6粉末はシングルピークを示している。したがって、本発明の方法は生成物の化学量論に対してより微細な制御を可能とし、したがって改善された光学特性を有する生成物を可能にすることは明白である。
【0388】
図19に示されている通り、異なる合成の生成物もまたX線回折で分析した。最も上のトレースは代替法で合成したCs4PbBr6粉末のX線回折パターンを示し、この方法ではM前駆体は水性臭化水素酸中に最初に提供された。中央のトレースは、本発明の方法で生成した生成物のX線回折を示し、この方法ではM前駆体は有機溶媒、DMSO中に提供された。下側のトレースは、空間群R-3cHにおいてCs4PbBr6に対して計算されたトレースである。それぞれのトレースにおいて、丸は斜方晶構造におけるCsPbBr3のX線回折ピーク位置を表す一方、四角はCsBrのX線回折ピーク位置を表す。
【0389】
両方の合成経路はCs4PbBr6を生じさせる。しかしながら、本発明の方法で合成した粉末は主にCs4PbBr6を含有するが、CsPbBr3に割り当てることができる小さなピークが存在する。他方では、鉛を含有する臭化水素酸溶液を使用して合成したCs4PbBr6粉末は、CsBr及びCsPbBr3に割り当てることができるX線回折ピークを追加的に含有する。特に、代替法で合成された粉末生成物に観察されたCsPbBr3に関係するピーク強度及びピーク数は、本発明の方法で合成されたものと比較して大きく増加している。
【0390】
RbとCs A種の両方を含有する式[A]4[M][X]6の粉末もまた、本発明の方法及びDMSOの代わりに臭化水素酸溶媒を使用する代替法で合成した。生成物、(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末の定常状態の光ルミネセンススペクトルが図20に示されている。図20(b)のスペクトルは正規化されたもので、図20(a)のスペクトルは正規化されたものではない。本発明の方法は、代替法で生成された生成物と比較して、生成物の光ルミネセンス強度の実質的な増加をもたらすことが図20(a)から明白である。代替法で合成された(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末の正規化された定常状態の光ルミネセンススペクトルは、510nm及び540nmにおいて最高点を有する分割ピークを提示しているのに対して、本発明の方法で合成されたCs4PbBr6粉末は515nmにおいてシングルピークを提示している。
【0391】
本発明の方法及び代替法を使用して合成した(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末のX線回折パターンもまた得た。これらは図21に示されている。本発明の方法で生成された粉末は中央のスペクトルに現れ、鉛種に対して水性臭化水素酸溶媒を使用した代替法により生成された粉末は上側のスペクトルに示されている。また、下側のスペクトルに記されているのは、空間群R-3cHにおけるCs4PbBr6に対して計算したX線回折パターン(下側)である。また、黒丸の印の付いた、斜方晶構造のCsPbBr3のX線回折ピーク位置も記されている。
【0392】
図21の2つの実験的スペクトルの比較により、両方の合成経路が(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6を生じさせることは明白である。本発明の方法(DMSOをM前駆体の溶媒として用いた)で合成された(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末は、Cs4PbBr6のみに起因する回折パターンを示し、これは、生成物が非常に少ない副反応及び副生成物と共に生成されたことを示している。他方では、代替法で合成された(Cs0.55Rb0.45)4PbBr6粉末はCsPbBr3に割り当てることができる回折ピークを含有する。とりわけ、「過剰の」A部位(低次元ペロブスカイト)に対する回折ピークは、代替法で合成された粉末には存在しない。
【0393】
式Rb4PbBr6を含有する粉末もまた、本発明の方法及びDMSOの代わりに臭化水素酸溶媒を使用する代替法により合成した。それぞれの方法で合成された粉末のX線回折パターンが図22に示されている。本発明の方法で生成された粉末のX線回折パターンは、Rb4PbBr6に起因することができる。代替法の生成物のX線回折パターンはフィットできなかった。しかしながら、それは本発明の方法の生成物に観察されたRb4PbBr6パターンからは有意に異なる。
【0394】
本発明者らは、本発明の方法で生成されたA/M/X材料の化学量論は、最初に供給された[A]、[M]及び[X]のモル比に依存し得るばかりでなく、[M]前駆体の溶媒の選択によっても影響を受け得ることを認識した。これは、図19及び21において例示されており、本発明の方法で使用された溶媒が生成された特定のA/M/X結晶質材料に対して作用を有し得ることを示している。例えば、Rb及び/又はCsを[A]として含有するハロゲン化鉛ペロブスカイトの形成においてM前駆体に対する有機溶媒としてDMFが使用された場合、[A][M][X]3が容易に形成することは上記から明白である。しかしながら、DMSOが使用され、適切な[A]:[M]のモル比が提供される場合、本発明の方法は[A]4[M][X]6構造を支持する。これは図19及び21の「DMSO」トレースから明白であり、これらは[A][M][X]3がほとんど存在せず、[A]4[M][X]6が主要生成物であることを示している。したがって、本発明の方法で生成されたA/M/X材料の化学量論は、溶媒の選択によりチューニングすることができる。当業者は、化学量論をチューニングする目的で異なる溶媒を選択すること、及び本明細書で提示された情報を考慮して特定の所望のA/M/X材料を製造することが容易にできる。
本発明は、以下の態様を含む。
[項1]
結晶質A/M/X材料を製造する方法であって、前記結晶質A/M/X材料が、式:
[A] a [M] b [X] c
の化合物を含み
[式中、
[A]は1種以上のAカチオンを含み、
[M]は、金属又は半金属カチオンである1種以上のMカチオンを含み、
[X]は1種以上のXアニオンを含み、
aは1~6の数であり、
bは1~6の数であり、
cは1~18の数である]、
方法が、
a)A前駆体及び水性溶媒を含む水溶液を、M前駆体及び有機溶媒を含む有機溶液と接触させるステップ、並びに
b)前記水溶液と有機溶液が接触したときに沈殿物を形成させるステップを含む、
方法。
[項2]
前記結晶質A/M/X材料の薄膜を調製する方法であり、
c)任意選択で、前記沈殿物を洗浄するステップ、
d)前記沈殿物を有機溶媒に溶解して、膜形成溶液を形成するステップ、及び
e)前記膜形成溶液を基材上に分散させるステップ
をさらに含む、項1に記載の方法。
[項3]
前記結晶質A/M/X材料の薄膜を調製する方法であり、
c’)任意選択で、前記沈殿物を洗浄するステップ、
d’)前記沈殿物を蒸発させるステップ、及び
e’)蒸発させた前記沈殿物を基材上に堆積させるステップ
をさらに含む、項1に記載の方法。
[項4]
前記1種以上のAカチオンがモノカチオンであり、前記1種以上のMカチオンがジカチオンである、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
式[A] a [M] b [X] c の化合物が式[A][M][X] 3 の化合物である、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
式[A] a [M] b [X] c の化合物が式[A] 2 [M][X] 6 の化合物である、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
前記結晶質A/M/X材料が式[A] a [M] b [X] c の2種以上の化合物を含む、項1から6のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
[A]が2種以上の異なるAカチオンを含む、項1から7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
ステップ(a)の前に、第1のA前駆体の溶液を第2のA前駆体の溶液と組み合わせることによって前記水溶液を調製するステップを含み、
前記第1のA前駆体が第1のAカチオンを含み、
前記第2のA前駆体が第2のAカチオンを含む、
項8に記載の方法。
[項10]
[X]が2種以上の異なるXアニオンを含む、項1から9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
ステップ(a)の前に、第1のM前駆体の溶液を第2のM前駆体の溶液と組み合わせることによって前記有機溶液を調製するステップを含み、
前記第1のM前駆体が第1のXアニオンを含み、
前記第2のM前駆体が第2のXアニオンを含む、
項10に記載の方法。
[項12]
前記有機溶液がハロゲン化水素酸を含む、項1から11のいずれか一項に記載の方法。
[項13]
前記有機溶液が式HX’[式中、X’はXアニオンのうち1種である]のハロゲン化水素酸を含む、項1から12のいずれか一項に記載の方法。
[項14]
前記有機溶液と一緒にした前記水溶液中の前記1種以上のAカチオン、前記1種以上のMカチオン及び前記1種以上のXアニオンのそれぞれの相対モル量が、式[A] a [M] b [X] c の化合物中の前記1種以上のAカチオン、前記1種以上のMカチオン及び前記1種以上のXアニオンのそれぞれの相対モル量と等しい、項1から13のいずれか一項に記載の方法。
[項15]
それぞれのAカチオンが、アルカリ金属カチオン、アミン、C 1~6 アルキルアミン、イミン、C 1~6 アルキルイミン、C 1~6 アルキル、C 2~6 アルケニル、C 3~6 シクロアルキル及びC 6~12 アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、C 1~10 アルキルアンモニウム、C 2~10 アルケニルアンモニウム、C 1~10 アルキルイミニウム、C 3~10 シクロアルキルアンモニウム及びC 3~10 シクロアルキルイミニウムから選択され、好ましくはCs + 、Rb + 、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム、オクチルアンモニウム、及びグアニジニウムのうちの1種以上である、項1から14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
それぞれのA前駆体が、Aカチオン又はAカチオンのうち1種のハロゲン化物塩である、項1から15のいずれか一項に記載の方法。
[項17]
それぞれの金属又は半金属Mカチオンが、Ca 2+ 、Sr 2+ 、Cd 2+ 、Cu 2+ 、Ni 2+ 、Mn 2+ 、Fe 2+ 、Co 2+ 、Pd 2+ 、Ge 2+ 、Sn 2+ 、Pb 2+ 、Yb 2+ 及びEu 2+ から選択され、好ましくはSn 2+ 、Pb 2+ 、Cu 2+ 、Ge 2+ 、及びNi 2+ から選択され、特に好ましくはPb 2+ である、項1から16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
それぞれのM前駆体が、Mカチオン又はMカチオンのうち1種のハロゲン化物塩である、項1から17のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
それぞれのXアニオンが、F - 、Cl - 、Br - 又はI - から選択され、好ましくはCl - 又はBr - から選択される、項1から18のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
[A] a [M] b [X] c が、少なくとも2種の異なるAカチオン及び少なくとも2種の異なるXアニオンを含む、項1から19のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
[A]がCs + 及びRb + を含み、[X]がBr - 及びCl - を含む、項1から20のいずれか一項に記載の方法。
[項22]
前記水性溶媒が、20体積%未満の有機溶媒、好ましくは10体積%未満の有機溶媒を含む、項1から21のいずれか一項に記載の方法。
[項23]
前記有機溶液中の前記有機溶媒が、20体積%未満の水、好ましくは10体積%未満の水を含む、項1から22のいずれか一項に記載の方法。
[項24]
前記有機溶液中の前記有機溶媒が、極性有機溶媒、好ましくは水と混和性のある有機溶媒、さらに好ましくはDMFを含む、項1から23のいずれか一項に記載の方法。
[項25]
ステップ(d)の前記有機溶媒が、極性溶媒、好ましくはDMSO及び/又はDMFを含む、項1から24のいずれか一項に記載の方法。
[項26]
ステップ(e)が、前記基材上に前記膜形成溶液をスピンコーティングするステップを含む、項1から25のいずれか一項に記載の方法。
[項27]
f)前記基材上の前記膜形成溶液から、前記有機溶媒を
好ましくは蒸発により、好ましくは15~150℃の温度で、また好ましくは少なくとも1分間の間、除去するステップ
をさらに含む、項1から26のいずれか一項に記載の方法。
[項28]
項2から27のいずれか一項に記載の方法によって得られ得る又は得られる、薄膜。
[項29]
項28に記載の薄膜を含む、光電子デバイス、好ましくは発光デバイス又は光起電デバイス。
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