(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】画像処理装置及びX線診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/50 20240101AFI20241210BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20241210BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20241210BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61B6/50 500B
A61B6/46 506Z
A61B6/12
A61B5/0215 B
A61B5/0215 Z
(21)【出願番号】P 2023144690
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2021162615の分割
【原出願日】2013-08-16
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2012180416
(32)【優先日】2012-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2012192426
(32)【優先日】2012-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章仁
(72)【発明者】
【氏名】若井 智司
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-001286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0319752(US,A1)
【文献】特開2011-36433(JP,A)
【文献】国際公開第2012/021307(WO,A2)
【文献】特開2012-125407(JP,A)
【文献】特開2011-234864(JP,A)
【文献】特開2011-156321(JP,A)
【文献】特開2010-99348(JP,A)
【文献】特開2012-081254(JP,A)
【文献】特表2003-525067(JP,A)
【文献】国際公開第2011/039673(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0063663(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101283910(CN,A)
【文献】特許第6381875(JP,B2)
【文献】特許第6651579(JP,B2)
【文献】特許第6956817(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透視画像
を取得する都度、血流に関する指標を測定するためのデバイスによ
る計測位置を特定し、前記特定し
た計測位置
に対応する造影画像
上の位置を特定する特定部と、
複数の前
記計測位置における第1の計測位置に対応する第1の血流に関する指標を前記造影画像上に表示させると共に、前記血流に関する指標
のタイムチャートを表示させる表示制御部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記造影画像上における前記第1の計測位
置に、前記第1の血流に関する指標を表示させる、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記血流に関する指標
のタイムチャートは、前記透視画像の収集時における前記デバイスの出力に
従って測定された値を示す、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は
、ユーザ
の入力操作に応じて、前記第1の血流に関する指標を、
前記造影画像上に
おける前記第1の計測位置に、吹き出しにより表示させる、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記透視画像を更に表示させる、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記透視画像上に描出された前記デバイスの先端に基づいて前記計測位置を特定する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
X線診断装置から前記透視画像を取得する画像取得部と、
指標計測装置から前記血流に関する指標を取得する指標取得部と、
前記透視画像の取得時相と、前記指標取得部により取得された血流に関する指標の取得時相とを対応付ける対応付け部と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記ユーザ
の入力操作を受け付ける入力部をさらに備える、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項9】
被検体の透視画像及び前記被検体を造影下で撮像した造影画像を収集する収集部と、
前記透視画像を収集する都度、前記透視画像上において、血流に関する指標を測定するためのデバイスによ
る計測位置を特定し、前記特定し
た計測位置
に対応する造影画像
上の位置を特定する特定部と、
複数の前
記計測位置における第1の計測位置に対応する第1の血流に関する指標を前記造影画像上に表示させると共に、前記血流に関する指標
のタイムチャートを表示させる表示制御部と、
を備える、X線診断装置。
【請求項10】
前記収集部は、前記デバイスが引き抜かれる際に、前記透視画像を収集する、請求項
9に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、画像処理装置及びX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冠動脈狭窄病変の診断は、狭窄の有無や狭窄の程度などを形態学的に評価する「解剖学的評価」、及び、心筋虚血の有無や心筋虚血の程度などを客観的に評価する「生理学的評価」の両面からなされている。また、「生理学的評価」に用いられる生理学的指標として、FFR(Fractional Flow Reserve)や、CFR(Coronary Flow Reserve)などが注目を集めている。例えば、FFRは、冠動脈の狭窄によって引き起こされる心筋虚血の程度を示す指標であり、狭窄存在下の最大冠血流量と狭窄非存.在下の最大冠血流量との比で示される。また、例えば、CFRは、心筋における酸素需要の増大に対応して冠血流量を増大させ得る能力を示す指標であり、安静時と最大反応性充血時との冠血流量の比で示される。
【0003】
従来、これらの生理学的指標は、所定の計測装置によって算出される。例えば、計測装置は、圧力センサ付ガイドワイヤ(プレッシャーワイヤ)を有し、冠動脈の内圧を計測することで、FFRを算出する。また、例えば、計測装置は、超音波探触子を先端に装着したガイドワイヤ(ドップラーワイヤ)を有し、この超音波探触子によって冠動脈の血流速度を計測することで、CFRを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-526556号公報
【文献】特表2004-528920号公報
【文献】特表2003-525067号公報
【文献】特開2011-156321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、生理学的指標の計測位置を血管画像上で把握することができる画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像処理装置は、特定部と、表示制御部とを備える。前記特定部は、血流に関する指標の取得位置を、医用画像診断装置によって収集された血管を含む画像上で特定する。前記表示制御部は、前記血管を含む画像上に前記取得位置を表示するとともに、前記取得位置に対応付けて、前記指標を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置の全体構成を示すブロック図。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るX線診断装置、計測装置、及びECG(Electrocardiogram)計測装置の構成を示す図。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における表示画像の生成を説明するための図。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における表示例を示す図。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における他の表示例を示す図。
【
図7】
図7は、第1の実施形態における他の表示例を示す図。
【
図8】
図8は、第2の実施形態における表示画像の生成を説明するための図。
【
図9】
図9は、第3の実施形態における表示画像の生成を説明するための図。
【
図11】
図11は、第3の実施形態における他の表示例を示す図。
【
図12】
図12は、本実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図。
【
図14】
図14は、本実施形態のDA画像収集からガイドワイヤ引き抜き完了までの一連の動作を概略的に示す図。
【
図23】
図23は、
図22の表示画面においてマーク列に代えてFFR値の数値を参照画像上に重ねる表示画面例を示す図。
【
図24】
図24は、
図22の表示画面から切り替えられた、マーク列が透視画像上に重ねられる表示画面例を示す図。
【
図25】
図25は、
図22の表示画面においてマーク列に代えてFFR値の数値を透視画像上に重ねる表示画面例を示す図。
【
図27】
図27は、第4の実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図。
【
図29】
図29は、第5の実施形態に係るX線診断装置、計測装置、及びECG計測装置の構成を示す図。
【
図30】
図30は、第5の実施形態における心筋虚血改善予測を説明するための図。
【
図32】
図32は、その他の実施形態における表示画像の生成及び表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る画像処理装置、医用画像診断装置及び血圧モニタを説明する。なお、第1~第5の実施形態においては、X線診断装置100の実施形態を説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の概要を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態においては、X線診断装置100によって被検体Pの血管を含む画像を収集しながら、計測装置200によるFFRや、CFR、iFR(instant wave-Free Ratio)、IMR(Index of Microcirculatory Resistance)などの計測が行われる。例えば、操作者は、X線診断装置100によって収集された血管を含む画像を見ながら計測装置200の圧力センサ付ガイドワイヤを被検体Pの冠動脈内に挿入し、血管内圧の計測を行う。また、操作者は、圧力センサ付ガイドワイヤを適宜移動させながら、冠動脈内の複数の位置で血管内圧の計測を行う。なお、血管を含む画像(以下、血管画像と記す)とは、冠動脈などの血管を対象として撮影された画像のことであり、造影下で収集されたX線画像及び非造影下で収集されたX線画像を含む。また、例えば、X線診断装置100によって造影下で収集された場合には、造影X線画像を意味し、X線診断装置100によって非造影下で収集された場合には、非造影X線画像を意味する。
【0010】
図1に示すように、X線診断装置100は、血管内圧の計測中に収集された時系列の血管画像群を記憶部に記憶する。一方、計測装置200は、血管内圧の計測データに基づきFFRやCFRなどを算出する。そして、X線診断装置100は、血管内圧の計測中に収集された時系列の血管画像群と、計測装置200によって計測された計測データとを関連付ける。
【0011】
具体的には、X線診断装置100によって収集された時系列の血管画像群には、各血管画像が撮影された時刻情報が含まれる。一方、血管内圧の計測データにも、各計測データが計測された時刻情報が含まれる。そこで、X線診断装置100は、この時刻情報を用いて血管画像群と計測データとを関連付け、血管画像群から、計測データが計測された時相に対応する血管画像を抽出する。そして、X線診断装置100は、抽出した血管画像の画像解析によりガイドワイヤの先端を特定することで、各計測データの計測位置を特定し、血管画像上で特定された計測位置に対応付けて、計測データから算出された指標を表示する。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置100の全体構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係るX線診断装置100は、血管造影をしながら、カテーテルなどを用いた血管内治療を支援する医用画像診断装置であり、撮影処理を担う機能は、既存の公知技術を用いて実現できる。
図2に示すように、X線診断装置100は、架台部10と、計算機システム20とを備える。また、
図2に示すように、架台部10は、寝台11と、架台12と、Cアーム13と、X線源14と、X線検出器15と、表示部16とを備える。
【0013】
寝台11は、垂直方向及び水平方向に移動可能であり、被検体Pが載置される。架台12は、Cアーム13を支持する。Cアーム13は、Z軸を中心に矢印R方向に回転可能であり、X線源14及びX線検出器15を対向して保持する。X線源14は、X線を照射するX線管球と、コリメータとを有する。X線検出器15は、X線源14から照射され、被検体Pを透過したX線を検出する。表示部16は、計算機システム20によって生成されたX線画像などを表示する。
【0014】
計算機システム20は、入力部21と、X線画像記憶部22と、制御部23と、X線画像撮影部24と、Cアーム制御部25と、X線画像生成部26とを備える。
【0015】
入力部21は、コントロールパネル、フットスイッチなどであり、X線診断装置100に対する各種操作の入力を操作者から受け付ける。X線画像記憶部22は、X線画像データを記憶する。制御部23は、X線診断装置100の全体制御を行う。X線画像撮影部24は、X線源14、X線検出器15、及びCアーム制御部25を制御し、X線画像を収集する。また、X線画像撮影部24は、収集したX線画像を、X線画像生成部26に送る。Cアーム制御部25は、X線画像撮影部24による制御の下、Cアーム13の回転などを制御する。X線画像生成部26は、X線画像を生成する。
【0016】
図3は、第1の実施形態に係るX線診断装置100、計測装置200、及びECG計測装置300の構成を示す図である。なお、
図3は、
図2に示すX線診断装置100の一部構成(計測データやX線画像を解析し、画像や文字列を表示する構成)を詳細に示すものであり、同一の部には同一の符号を付して説明を省略する。また、
図3においてX線診断装置100が備える各部のうち、表示部16、入力部21、X線画像記憶部22、及びX線画像撮影部24以外の各部は、
図2に示した制御部23などに備えられればよい。
【0017】
計測装置200及びECG計測装置300は、既存の公知技術を用いて実現できる。まず、計測装置200は、血管内圧などを計測し、計測により得られた計測データに基づきFFRやCFRを算出し、算出したFFRやCFRを、その都度、X線診断装置100に送信する。具体的には、血管内圧計測部210は、血管内圧などを計測し、計測データを生理学的指標算出部211に送る。生理学的指標算出部211は、計測データに基づきFFRやCFRを算出し、算出したFFRやCFRを生理学的指標送信部212に送る。生理学的指標送信部212は、FFRやCFRをX線診断装置100に送信する。なお、生理学的指標送信部212は、FFRやCFRの他に、血管内圧計測部210によって計測された計測データ自体をX線診断装置100に送信してもよい。
【0018】
また、ECG計測装置300は、ECGを計測し、計測したECGを、その都度、X線診断装置100に送信する。具体的には、ECG計測部310は、ECGを計測し、計測したECGをECG送信部311に送る。ECG送信部311は、ECGをX線診断装置100に送信する。
【0019】
X線診断装置100は、計測データの計測中に撮影された時系列のX線画像群と、計測データとを関連付けて、計測データの計測位置をX線画像上で特定し、計測位置を示すX線画像を表示部16に表示する。
【0020】
具体的には、生理学的指標受信部110は、計測装置200からFFRやCFRを受信し、生理学的指標記憶部111に格納する。また、ECG受信部112は、ECG計測装置300からECGを受信し、ECG記憶部113に格納する。また、時刻管理部114は、X線診断装置100における正しい時刻を管理しており、計測装置200やECG計測装置300との間で通信を行う都度、また、X線画像撮影部24がX線画像を撮影する都度、その通信時刻や撮影時刻を通信・撮影時刻記憶部115に格納する。
【0021】
なお、第1の実施形態においては、X線診断装置100と計測装置200とECG計測装置300とが、それぞれ正しく時刻設定されている状態であると想定する。このため、X線診断装置100は、時刻管理部114によって管理される時刻に従い、計測装置200やECG計測装置300から受信した各種情報と、X線診断装置100にて撮影したX線画像との間で、時間的な同期をとる。もっとも、実施形態はこれに限られるものではなく、例えば、X線診断装置100が時間的な同期信号を計測装置200やECG計測装置300に送信することによって、時間的な同期をとってもよい。
【0022】
続いて、特定部120及び表示制御部130を、
図4を参照しながら説明する。
図4は、第1の実施形態における表示画像の生成を説明するための図である。
【0023】
特定部120は、血流に関する指標の取得位置を、医用画像診断装置によって収集された血管を含む画像上で特定する。具体的には、特定部120は、計測データの計測位置を、X線診断装置100によって収集されたX線画像上で特定する。より具体的には、計測時刻画像抽出部121は、X線画像撮影部24によって撮影され、X線画像記憶部22に格納された時系列のX線画像群から、計測データが計測された時相に対応するX線画像(計測時刻画像)を抽出する。例えば、計測時刻画像抽出部121は、計測装置200から受信したFFRやCFRに対応する時刻情報、ECG計測装置300から受信したECGに対応する時刻情報、及びX線画像に対応する時刻情報を用いて、任意の時刻に収集されたこれらの情報同士を関連付ける。これによって、異なる装置によって収集された情報同士の時間的な同期ができる。そして、計測時刻画像抽出部121は、FFRやCFRに対応する時刻情報と略同一の時刻情報を有するX線画像を、計測データが計測された時相に対応するX線画像として抽出し、抽出したX線画像を血管内圧計測位置特定部122に送る。
【0024】
血管内圧計測位置特定部122は、計測データの計測位置を、計測時刻画像抽出部121によって抽出されたX線画像(計測時刻画像)上で特定する。例えば、血管内圧計測位置特定部122は、計測時刻画像抽出部121によって抽出されたX線画像を画像解析し、計測に用いられたガイドワイヤの先端を特定することで、計測位置を特定する。
【0025】
ガイドワイヤの先端の特定は、既存の公知技術を用いて実現できる。例えば、血管内圧計測位置特定部122は、X線画像に対して強調処理を行うことで、ガイドワイヤの像を明瞭にする。例えば、血管内圧計測位置特定部122は、非線形輝度変換を行ってX線画像の濃度ムラを低減させてから、空間周波数の高い成分を抽出する画像フィルタ処理を施す。この画像フィルタ処理は、大域的で滑らかなグラデーションを除去し、局所的で細かな変動成分のみを残すものである。次に、血管内圧計測位置特定部122は、X線画像に対してパターン抽出処理を施すことで、ガイドワイヤの像を特定する。例えば、血管内圧計測位置特定部122は、画素値の閾値処理や空間フィルタ処理などを施す。そして、血管内圧計測位置特定部122は、X線画像からガイドワイヤの像を抽出し、X線画像におけるガイドワイヤの像の形状を示す2次元曲線を求め、2次元曲線の各点の座標値に基づいて、2次元曲線の端部に位置付けられるガイドワイヤの先端座標を抽出する。
【0026】
表示制御部130は、血管を含む画像上に取得位置を表示するとともに、取得位置に対応付けて、指標を表示部に表示させる。例えば、表示制御部130は、X線画像上に計測位置を表示するとともに、計測位置に対応付けてFFRやCFRを表示する。まず、周期画像処理部140の心拍1周期造影画像群抽出部141は、
図4に示すように、X線画像記憶部22に格納された時系列のX線画像群から、冠動脈全体が良く造影された心拍1周期分の造影画像群(静止画像群)を抽出する。なお、例えば、心拍1周期造影画像群抽出部141は、各X線画像の輝度値分布を比較し、輝度値が低いX線画像群を、冠動脈が良く造影された造影画像群と判定する。
【0027】
冠動脈枝特定部142は、
図4に示すように、心拍1周期造影画像群抽出部141によって抽出された造影画像群の各造影画像から冠動脈領域を抽出し、冠動脈枝を特定する。例えば、冠動脈枝特定部142は、Cアーム13の角度などの撮影条件や画素の輝度値、その連続性、血管形状、隣り合う時相の造影画像間の変化量などに基づいて、各造影画像から冠動脈領域を抽出し、冠動脈枝を特定する。なお、冠動脈枝の特定は、既存の公知技術を用いて実現できる。
【0028】
狭窄部位特定部143は、冠動脈枝特定部142によって抽出された冠動脈領域内で、狭窄部位を特定する。例えば、狭窄部位特定部143は、血管構造の連続性、特に、血管径の変化に基づいて、狭窄部位を特定する。なお、狭窄部位の特定は、既存の公知技術を用いて実現できる。
【0029】
時相間冠動脈枝・狭窄部位Mapping部144は、心拍1周期分の造影画像群の各造影画像において特定された狭窄部位を、異なる時相間で関連付ける。これによって、狭窄部位の時系列的な変位をX線画像上で追跡できる。例えば、時相間冠動脈枝・狭窄部位Mapping部144は、造影画像間のWarpFieldを算出する。WarpFieldとは、非線形位置合わせを行う公知の画像処理技術である。例えば、時相間冠動脈枝・狭窄部位Mapping部144は、各造影画像から特徴量を抽出し、抽出した特徴量を異なる時相間で関連付けることで、画素の移動量を示す3次元ベクトルの集合体を算出する。
【0030】
計測データ・狭窄部位Mapping部145は、
図4に示すように、血管内圧計測位置特定部122によってX線画像(計測時刻画像)上に特定された計測位置に基づき、計測データと、造影画像(周期画像)上に特定された狭窄部位とを関連付ける。例えば、計測データ・狭窄部位Mapping部145は、ECGを用いて、心拍1周期分の造影画像群のうち、計測時刻画像と時相が一致する造影画像(周期画像)を特定する。そして、計測データ・狭窄部位Mapping部145は、X線画像(計測時刻画像)上に特定された計測位置に基づき、この計測位置で計測された計測データから算出されたFFRやCFRと、この計測位置に近接する造影画像(周期画像)上の狭窄部位とを関連付ける。これによって、時系列のX線画像群に含まれる各X線画像上に、FFRやCFRを表示できる。
【0031】
一方、表示画像処理部150の心拍周期対応画像特定部151は、ECGを用いて、表示画像選択部116によって選択された表示画像が、心拍1周期におけるどの時相に対応するかを特定する。なお、表示画像選択部116は、例えば、入力部21を介して操作者の指示を受け付けることで、X線画像記憶部22に記憶された時系列のX線画像群の中から、適宜、表示画像を選択すればよい。例えば、第1の実施形態において、表示画像選択部116は、X線画像記憶部22に記憶されたX線画像の選択メニュー(例えば、「患者リスト」、「検査リスト」)を表示し、入力部21を介して操作者の指示を受け付け、表示画像として、単一の造影画像(静止画)を選択する。
【0032】
冠動脈枝特定部152は、心拍1周期造影画像群抽出部141によって抽出された造影画像群のうち、心拍周期対応画像特定部151によって特定された時相の造影画像から、冠動脈枝特定部142と同様の手法により、冠動脈領域を抽出し、冠動脈枝を特定する。狭窄部位特定部153は、狭窄部位特定部143と同様の手法により、冠動脈枝特定部152によって抽出された冠動脈領域内で、狭窄部位を特定する。
【0033】
表示画像Mapping部154は、
図4に示すように、造影画像(周期画像)上に特定された計測位置を、表示画像に関連付ける。例えば、表示画像Mapping部154は、時相間冠動脈枝・狭窄部位Mapping部144によって算出されたWarpFieldを用いて、造影画像(周期画像)上に特定された計測位置が、表示画像の時相においてどの位置に移動したかを3次元ベクトルにより特定する(位置合わせする)。そして、表示画像Mapping部154は、異なる時相の造影画像上で特定された複数の計測位置を、1つの表示画像上で特定する。すなわち、表示画像Mapping部154は、各計測位置が表示画像の時相においてどの位置に移動したかをWarpFieldにより特定することで、表示画像として選択された単一の造影画像と、各計測位置が特定された各造影画像とのずれが補正される。
【0034】
表示画像生成部155は、表示画像を生成し、表示部16に表示する。
図5は、第1の実施形態における表示例を示す図である。
図5に示すように、第1の実施形態において、表示画像生成部155は、所定の時相のX線画像(静止画像)上に計測データの計測位置を表示するとともに、計測位置に対応付けて、計測データから算出された生理学的評価指標(例えば、FFRやCFRなど)を表示する。また、表示画像生成部155は、個々の狭窄部位に対応付けて更に狭窄率を表示することで、解剖学的評価指標と生理学的評価指標とを同一のX線画像上に表示する。また、表示画像生成部155は、
図5に示すように、更に治療の要否に関する情報(例えば、治療不要、要治療)を表示する。なお、狭窄部位を示すマーク(
図5において、白抜きの円)は、例えば、治療の要否や、狭窄率などに応じて、色を変えて表示してもよい。また、文字列や文字列を囲む枠も、例えば、治療の要否や、FFRやCFRの値に応じて、色を変えて表示してもよい。例えば、注意を喚起すべき場合に、『赤色』で表示するなどしてもよい。
【0035】
治療要否基準設定部117は、治療要否を判定するための基準を設定する。例えば、治療要否基準設定部117は、「FFR<0.75、又は、CFR≦2.00、又は、狭窄率≧50%のいずれかの条件を満たす場合に、『要治療』と判定する」という基準を設定する。治療要否判定部118は、治療要否基準設定部117によって設定された基準に基づいて、治療要否を判定する。なお、治療要否判定部118による判定結果は、表示画像生成部155に送られる。
【0036】
図6は、第1の実施形態における他の表示例を示す図である。
図6に示すように、第1の実施形態において、表示画像生成部155は、狭窄部周辺に各種指標を表示するのみならず(
図6においては各種指標の表示は図示を省略)、血管内圧などの計測値に応じて、血管自体をカラー表示や濃淡表示してもよい。
図6においては、便宜上、色の濃淡で示しているが、例えば、計測値に応じて、『赤色』と『黄色』との濃淡などで表示してもよい。
【0037】
図7は、第1の実施形態における他の表示例を示す図である。
図7に示すように、第1の実施形態において、表示画像生成部155は、自動処理の結果を手動で調整するためのツールを表示してもよい。すなわち、上述したように、第1の実施形態においては、狭窄部位や、計測データの計測位置などが、X線画像上で自動的に特定され、表示されるが、必ずしも期待通りの結果を表示しないおそれもある。このような場合のために、表示画像生成部155は、
図7に示すようなUI(User Interface)を表示する。このUIは、例えば、冠動脈枝特定部142によって特定された冠動脈枝から血管芯線を抽出し、抽出した血管芯線を表示する。表示画像生成部155は、この血管芯線上において、計測位置を示すバーaや狭窄部位を示すマークbのスライド操作を受け付ける。すなわち、計測位置も狭窄部位も、血管芯線上に存在するはずであるので(血管径内における芯線からのずれは無視する)、表示画像生成部155は、血管芯線上のみをスライド可能なUIを提供してもよい。
【0038】
上述したように、第1の実施形態によれば、計測データの計測位置を血管画像上に表示するので、生理学的指標の計測位置を血管画像上で把握できる。このように、第1の実施形態によれば、生理学的評価結果が解剖学的評価結果と関連付けて表示される。この結果、操作者は、例えば、冠動脈のどの位置で生理学的評価指標が得られたのかを容易に把握でき、通常の病変の場合のみならず連続病変や多枝病変の場合などに有効である。
【0039】
このように、第1の実施形態によれば、PCI(Percutaneous Coronary Intervention)中にリアルタイムに撮影されるX線画像や、ワークステーションなどに保存された過去画像の狭窄の位置とリンクした生理学的評価指標を表示できる。また、生理学的評価指標を算出するために計測された血管内圧や血流速度の値も、計測された位置に表示できる。この結果、冠動脈狭窄の心筋虚血誘発性を、単一画像上で解剖学的且つ生理学的な両方の観点から評価でき、また、治療の要否や治療状態をPCI中に表示しながらの手技が可能となる。また、過去の検査画像上に生理学的評価値を表示した場合には、現在の状態と生理学的な観点から定量的に比較できる。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においては、表示画像として、リアルタイムに撮影された時系列のX線画像群(動画像)を想定する。
図8は、第2の実施形態における表示画像の生成を説明するための図である。この場合、表示制御部130は、ECGを用いて、造影画像(周期画像)群と表示画像群との時間的な同期をとり、造影画像(周期画像)上で特定された狭窄部位や、FFRやCFRなどの指標を、表示画像上の正しい位置に表示する。
【0041】
具体的には、表示画像処理部150の心拍周期対応画像特定部151は、ECGを用いて、時系列の表示画像群に含まれる各表示画像が心拍1周期におけるどの時相に対応するかを特定する。また、表示画像Mapping部154は、
図8に示すように、造影画像(周期画像)上に特定された計測位置を、時系列の表示画像群に含まれる各表示画像に関連付ける。例えば、表示画像Mapping部154は、時相間冠動脈枝・狭窄部位Mapping部144によって算出されたWarpFieldを用いて、造影画像(周期画像)上に特定された計測位置が、各表示画像の時相においてどの位置に移動したかを3次元ベクトルにより特定する(位置合わせする)。そして、表示画像Mapping部154は、異なる時相の造影画像上で特定された複数の計測位置を、それぞれの表示画像上で特定する。なお、計測データを計測しながら順次表示画像の表示を行う場合には、表示制御部130は、表示画像上に、最初は1つの計測位置を表示し、徐々に、2つの計測位置、3つの計測位置を表示すればよい。
【0042】
(第3の実施形態)
第3の実施形態においては、表示画像として、リアルタイムに撮影された時系列のX線画像(動画像)であり、且つ、非造影画像を想定する。
図9は、第3の実施形態における表示画像の生成を説明するための図である。この場合、表示画像が非造影画像であるので、表示画像上に冠動脈の血管構造は表示されない。このため、表示制御部130は、造影画像(周期画像)群から血管輪郭などの構造情報を抽出し、抽出した構造情報を、非造影画像である表示画像群に重畳表示する。なお、表示制御部130は、ECGを用いて、造影画像(周期画像)群と表示画像群との時間的な同期をとるので、構造情報と表示画像との時間的な同期をとることもでき、構造情報にも、血管の変位や変形が反映される。
【0043】
図10は、第3の実施形態における表示例を示す図である。
図10に示すように、第3の実施形態において、表示制御部130は、血管輪郭などの構造情報が重畳表示された非造影の表示画像上で、計測データの計測位置に対応付けて、生理学的評価指標や、狭窄率、治療の要否などを表示する。
【0044】
また、
図11は、第3の実施形態における他の表示例を示す図である。
図11に示すように、第3の実施形態において、表示制御部130は、非造影の表示画像上で、狭窄部周辺に各種指標を表示するのみならず(
図11においては各種指標の表示は図示を省略)、血管内圧などの計測値に応じて、血管自体をリアルタイムにカラー表示や濃淡表示してもよい。
【0045】
ここで、本願に係る医用画像診断装置としてのX線診断装置100の1ユースケースについて説明する。上述したように、血流に関する指標として、種々の指標が用いられているが、これらの指標は、例えば、心筋梗塞の原因となる心筋部位の血管狭窄部の早期発見などに用いられる。一例を挙げると、血管狭窄部の有無は、狭窄部位が及ぼす血流量低下の評価から判断され、FFRの値(以下、FFR値と記す)が基準値以下であった場合に、その位置が狭窄部であると判断される。
【0046】
これまで、血管狭窄部の有無の判断は、操作者(オペレータ)は、X線診断装置にて収集される血管内に圧力センサ付きガイドワイヤが挿入された被検体に関するX線画像(例えば、X線透視画像)をリアルタイムに表示したディスプレイを見ながらガイドワイヤを操作し、並行して圧力センサで測定される被検体の圧力値から計算されるFFR値を表示したディスプレイを見て行われていた。しかし、FFR値とFFR値の計算に用いられる圧力が測定された血管箇所が関連付けされていないため、操作者がFFR値から狭窄部と判断しても、それが血管のどの位置であるかが直感的には分かりにくかった。
【0047】
そこで、このようなケースに本願の技術を適用することで、血管狭窄診断に有用な指標の空間的視認性を向上させる。以下、
図12~
図26を参照しながら本ユースケースに係るX線診断装置100を説明する。なお、血管狭窄診断に有用な指標としては血流量を表す指標であり、ここではFFR値を具体例として説明する。FFR値は、大動脈内地点における圧力(血流圧力)に対する診断対象血管内の任意地点における圧力の比として与えられる。圧力は、ガイドワイヤの先端付近に取り付けられた圧力センサ210aにより測定される。ここで、本ユースケースにおいては、ガイドワイヤは非造影の透視画像下で血管内に挿入される。透視画像は透視X線条件(比較的低線量)による連続X線のもとで1/30sec等の一定周期で繰り返し収集される。その透視下で操作者トリガのもとで撮影X線条件(比較的高線量)によるパルスX線により撮影されるX線画像を撮影画像という。造影剤により血管を強調しながら収集される撮影画像は、上述した造影画像であり、例えば、DA画像(ディジタルアンギオ画像)や、造影剤注入前後のDA画像の差分をとり、血管をより明瞭にするDSA(Digital Subtraction Angiography)画像を含む。
【0048】
図12に示されるように、X線診断装置100aは、架台部10aと計算機システム20aとを備える。架台部10aは、
図13に示すように、架台12aに支持されるCアーム13aを有する。その他に架台部10aは、Cアーム制御部25aと、X線源14aと、X線検出器15aと、高電圧発生部17aとを有する。なお、架台部10aは、ガントリ部とも呼ばれる。また、計算機システム20aは、システム本体とも呼ばれる。また、架台12aは、C形アーム支持機構とも呼ばれる。また、Cアーム13aは、C形アームとも呼ばれる。また、Cアーム制御部25aは、回転駆動部とも呼ばれる。X線源14aは、X線管装置とも呼ばれる。また、X線検出器15aは、X線検出部とも呼ばれる。
【0049】
計算機システム20aは、入力部21aと、制御部23aと、X線画像撮影部24aと、X線画像生成部26aと、画像処理装置30とを有する。なお、入力部21aは、操作部とも呼ばれる。また、制御部23aは、システム制御部とも呼ばれる。また、X線画像撮影部24aは、撮影制御部とも呼ばれる。また、X線画像生成部26aは、画像発生部とも呼ばれる。画像処理装置30は、X線画像記憶部22aと、FFR値記憶部111aと、FFR値入力部110aと、画像処理制御部31と、位置特定部120aと、FFR値選択部32と、マーク発生部33と、表示制御部130aと、表示部16aとを有する。また、FFR値入力部110aを介して、計算機システム20aに外部のFFR値計測装置200aが接続されている。
【0050】
なお、FFR値記憶部111aは、上述した生理学的指標記憶部111の一例である。また、FFR値入力部110aは、上述した生理学的指標受信部110の一例である。また、位置特定部120aは、上述した特定部120の一例である。
【0051】
制御部23aは、装置全体の動作、例えば撮像動作、画像処理動作を統括的に制御する。X線画像撮影部24aは、入力部21aを介して入力された操作者の指示に従った撮影動作を実行するために、高電圧発生部17aと、X線検出器15aと、X線画像生成部26aと、Cアーム制御部25aとを制御する。
【0052】
入力部21aは、操作者がX線診断装置100aに対して指示を入力するためのマンマシンインターフェースとして機能する。例えば、入力部21aは、操作者からの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件、撮影(透視)条件設定指示等を装置本体に取り込むためのトラックボール、各種スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、フットペダル、タッチパネルなどを有している。また、入力部21aは、操作者が遠隔地からも操作できるように無線受信部及び無線処理部を備えてもよい。
【0053】
架台12aは、Cアーム13aを直交3軸に関して独立して回転自在に支持する。Cアーム制御部25aは、X線画像撮影部24aの制御に基づいて、Cアーム13aを回転させるための動力を発生する。Cアーム13aは、その一端に、X線源14aを搭載する。X線源14aは、高電圧発生部17aから高電圧の印加を受けてX線を発生するX線管と、X線管のX線照射窓に取り付けられたX線照射野を限定するためのX線絞りとからなる。Cアーム13aは、その他端にX線検出器15aを搭載する。X線検出器15aはX線源14aに対峙する向きで取り付けられる。X線検出器15aは、被検体を透過したX線を検出する2次元の典型的にはFPD(Flat Panel Ditector)などである。
【0054】
X線画像生成部26aは、X線検出器15aからの出力に基づいて、透過X線の強度に関する2次元空間分布、つまり2次元のX線画像を生成する。画像処理制御部31は、制御部23aから制御信号を受け、特に当該X線診断装置100aの画像処理動作に係る構成要素を制御する。X線画像記憶部22aは、X線画像生成部26aで生成されたX線画像を記憶する。例えば、X線画像生成部26aは、透視画像のデータ及び造影画像(例えば、DA画像など)のデータを記憶する。以下、造影画像の一例としてDA画像を例に挙げて説明する。ここで、透視画像のデータ及びDA画像のデータは、当該データに対応するX線発生時刻コード及びそのX線発生時の心拍位相コードを関連付けられて記憶される。そして、操作者によって、X線画像記憶部22aに記憶されている複数のDA画像から特定のDA画像が参照画像として選択される。
【0055】
位置特定部120aは、参照画像撮像時の被検体の心拍位相(基準位相)と同じ心拍位相のライブ画像を処理対象として選択し、当該選択したライブ画像上のセンサ位置から、参照画像(DA画像)上のセンサ位置を特定する。ライブ画像には現在のガイドワイヤの先端領域が特徴的な輝度で表されている。まず、位置特定部120aは、ライブ画像上でのガイドワイヤの先端領域を、閾値処理により抽出する。そして、位置特定部120aは、抽出した先端領域の形状的特徴又は移動方向からその先端位置を特定する。さらに、位置特定部120aは、ガイドワイヤに固有の距離、つまりガイドワイヤの先端位置からガイドワイヤの圧力センサ210aの装着位置までの距離L(
図26参照)だけ、ガイドワイヤの先端位置から後方にシフトさせることにより、ライブ画像上のセンサ位置を特定する。
【0056】
次に、位置特定部120aは、現フレームのライブ画像上のセンサ位置に対応する参照画像上のセンサ位置を特定する。まず、位置特定部120aは、直前フレームのライブ画像で特定したセンサ位置を基準として、その位置に対する現フレームのライブ画像で特定したセンサ位置の方向と距離とを計算する。そして、位置特定部120aは、計算された方向と距離を用いて、参照画像上の直前のセンサ位置を、当該計算された距離だけ、当該計算された方向に従って変位させることにより、現フレームのライブ画像上のセンサ位置に対応する参照画像上のセンサ位置を特定する。参照画像上の初期的なセンサ位置は、参照画像上への操作者指定により設定される。2番目以降の参照画像上のセンサ位置は、直前の参照画像上のセンサ位置から、ライブ画像上でのセンサ位置の変位(方向と距離)に従って特定し、それを順番に繰り返していくことで、参照画像上でのセンサ位置の移動軌跡を同定する。
【0057】
FFR値入力部110aは、外部のFFR値計測装置200aに対するインターフェースとして機能する。FFR値計測装置200aは、血流量を表す指標としてFFR値(心筋部分血流予備量)を測定する。FFR値の程度に応じて、治療必要、必要性要判断、治療不要との3区分に分類される。FFR値計測装置200aは、圧力センサ210aと、FFR値算出部211aとからなる。FFR値は、基準となる大動脈の圧力に対する血管内各位置での圧力測定値の比により計算される。血管内各位置での圧力測定値は、ガイドワイヤに装着された圧力センサ210aにより測定される。FFR値算出部211aは、圧力センサ210aにより測定された血管内各位置での圧力測定値を、圧力センサ210aにより測定された大動脈の圧力測定値で除算することによりFFR値を算出する。FFR値のデータは、圧力センサ210aによる血管内各位置での圧力測定値の測定時刻を表すコードが関連付けられて出力される。
【0058】
FFR値記憶部111aは、FFR値入力部110aを介して入力された複数のFFR値のデータを記憶する。複数のFFR値のデータには、圧力センサ210aによる血管内各位置での圧力測定値の測定時刻を表すコードが関連付けられる。FFR値選択部32は、基準位相の生起タイミングと同時刻又は最も近い時刻のFFR値を測定時刻コードを参照して選択する。
【0059】
マーク発生部33は、FFR値選択部32で選択されたFFR値に対応したカラーを有するマークを決定する。マークは、対象血管の標準的な血管径に応じた幅を有する略矩形の形状を有する。表示制御部130aは、X線画像記憶部22aに記憶されている参照画像に、マーク発生部33で発生されたマークを累積的に重ねる。表示部16aは、表示制御部130aで発生された、マークを累積的に重ねられた参照画像を表示する。
【0060】
図14は、本実施形態の透視手順をガイドワイヤ及び造影剤注入の手順とともに示す図である。本実施形態に係る一連の動作の概略的な順番としては、(1)被検体血管に挿入されたカテーテルから造影剤を注入した状態で血管動画像を収集する。この際のX線撮影テクニックとしては典型的にはディジタルアンギオ(DA)が用いられる。(2)(1)にて繰り返し収集されたDA画像の中から、被検体のFFR対象領域が最も良好に造影されているフレームが静止画(参照画像)として参照モニタ上に表示される。(3)操作者指示に従って参照画像上でFFR測定対象領域が指定される。(4)圧力センサ付きのガイドワイヤをFFR測定対象領域内の目的部位まで挿入する。(5)ガイドワイヤを引き抜きながら、圧力センサを介して圧力(FFR値)の計測が繰り替えされる。(6)計測されたFFR値を閾値に従って参照画像上で色分けしてスーパーインポーズ表示される。
【0061】
上記(5)の引き抜き期間では、FFR値計測装置200aによりFFR値が繰り返し測定される。通常、FFR値の測定周期は、X線透視時のフレーム周期よりも短期間である。なお、留置期間と引き抜き期間とは、連続的でも良いし、X線透視の中断を伴って時間的に分離していても良い。
【0062】
図15は、カテーテル挿入からDA画像撮影終了までの手順を示したフローチャートである。まず、入力部21aを介した操作者からの指示により、架台部10aが所望の被検体の血管領域が観察できる位置に移動され、X線透視条件及び画像収集条件が決定される。次に、入力部21aのマウスやボタンなどの操作者による操作を契機に、制御部23aの制御のもとでX線透視動作が開始され、透視画像が収集される(S11)。X線透視条件は、例えばマスク画像やコントラスト画像の収集のためのX線撮影よりX線量は低い。透視画像は即時的に表示部16aに表示される。
【0063】
このX線透視のもと、操作者によってカテーテルが目的位置まで挿入される(S12)。次に、DA撮影テクニックが選択され、DA撮影が実施される。この際、X線診断装置100aと同期したインジェクターからは造影剤が注入され、造影画像が繰り返し収集され、FFRの測定を実施すべき領域が指定される(S13)。DA画像は高線量のパルスX線により得られるもので、通常任意のタイミングで数回繰り返される。各DA画像のデータは、DA画像撮影時刻を表すコード及び撮影時の被検体の心拍位相のデータが関連付けられてX線画像記憶部22aに記憶される。なお、心拍位相のデータはX線診断装置100aに接続された図示しない外部の心電計から供給される。
【0064】
複数枚のDA画像は表示制御部130aの制御により表示部16aに一覧で表示され、操作者の指示に従って狭窄診断に好適な任意の一枚が参照画像として選択される(S14)。
図16に例示するように参照画像が対応する心拍位相は、”AA%”として説明する。参照画像は、例えば、ノイズが低い画像や血管領域が画像の中央である画像などの操作者の基準で選択されてもよいし、画像の輝度やノイズなどを計算する機能をX線診断装置100aが有し、当該装置により自動的に選択されてもよい。
【0065】
次に圧力センサ付きガイドワイヤを操作してガイドワイヤの先端に装備された圧力センサ210aを血管内の目的位置(DA画像上で操作者が判断した位置)まで移動し、留置する。
【0066】
表示部16aに拡大表示された参照画像上への操作者によるマウス操作により圧力センサ210aの位置(初期的位置)が指定され、その参照画像上のセンサ初期位置が登録される(S15)。登録された初期的なセンサ位置のデータは参照画像のデータとともにX線画像記憶部22aに記憶される。なお、登録位置は、X線診断装置100aにより当該位置が画像や参照画像上の任意の点を基準とした座標として記憶されていればよく、登録位置は参照画像上に表示されていても、表示されていなくてもよい。
【0067】
図17は、
図14のガイドワイヤの引き抜き期間における処理手順を示す流れ図である。当該引き抜き期間も挿入期間に引き続いて制御部23aによりX線透視が実行される(S31)。X線透視の実行により、透視画像(ライブ画像)が一定周期で繰り返し発生される。ライブ画像のデータは、画像発生時刻を表すコード及び画像発生時の被検体の心拍位相のデータが関連付けられてX線画像記憶部22aに記憶される。引き抜き期間では圧力センサ210aは留置位置を起点として、ガイドワイヤの引き抜き動作に従って移動する。操作者の操作によりガイドワイヤが少しずつ引き抜かれ、その間、圧力センサ210aの出力に従ってFFR値計測装置200aによりFFR値が繰り返し測定される(S32)。FFR値のデータは、計測時刻を表すコード及び計測時の被検体の心拍位相のデータが関連付けられてFFR値記憶部111aに記憶される。
【0068】
工程S33において、画像処理制御部31により、ライブ画像が発生される都度、その心拍位相が、参照画像の心拍位相(AA%)に一致する、又は当該心拍位相(AA%)を中心として前後5%の範囲内であるか否かが判定される。ここでは便宜上前者で説明する。参照画像の心拍位相(AA%)に一致するタイミングで発生されたライブ画像のデータは、画像処理制御部31により、X線画像記憶部22aから読み出され、位置特定部120aに供給される。位置特定部120aでは、供給されたライブ画像から閾値処理によりガイドワイヤの先端領域が抽出される(S34)。抽出された先端領域からセンサ位置が特定される(S35)。圧力センサ210aはガイドワイヤの先端から後方にガイドワイヤに固有の距離Lだけ離れた位置に装着される。例えば、抽出されたガイドワイヤの先端領域からガイドワイヤの中心軸に沿って上記距離Lを補正することでセンサ位置が特定される。
【0069】
図18、
図19に示すように、位置特定部120aにより、前回の心拍位相(AA%)のライブ画像PIn-1上で特定されたセンサ位置An-1に対する今回の心拍位相(AA%)のライブ画像PIn上で特定されたセンサ位置Anの方向と距離とが計算される(S36)。
【0070】
次に、計算された方向と距離、さらに前回の参照画像上のセンサ位置に基づいて、今回の参照画像上のセンサ位置が特定される(S37)。つまり、
図20に示すように、前回の参照画像上のセンサ位置Bn-1が、計算された方向と距離に従って変位した位置が今回の参照画像上のセンサ位置Bnとして特定される。なお、参照画像上の最初のセンサ位置B1は、操作者により手動で指定される。
【0071】
このように参照画像上のセンサ位置を、前回特定された参照画像上のセンサ位置から、ライブ画像上で特定された前回と今回のセンサ位置から計算された方向と距離に従って連続的に特定していくことにより、参照画像上のセンサ位置とライブ画像上のセンサ位置とのずれの拡大を抑制することができる。このずれが生じる主な原因としては、参照画像撮影とライブ画像発生との時間的な分離による被検体自体の体動、さらに心拍位相が同一であっても心拍周期の変動による同一部位の解剖学上の位置が変化することにある。
【0072】
次に、参照画像に、今回処理されたライブ画像の発生時刻に一致する又は最も近い時刻に測定されたFFR値に応じたカラーを有するマークが、S37で特定されたセンサ位置に重ねられる(S38)。FFR値は圧力測定値と大動脈の圧力値の比から計算される値であるため、一般的に0から1までの値で与えられる。FFR値0から1までを複数区間に分割して、各区間ごとに色相が予め割り当てられている。
【0073】
工程S31-S38は、工程S39を経由して透視終了まで繰り返され、この間、次々と発生されるマークは、参照画像に累積的に重ねられる。
【0074】
図21には、この工程S31-S38の繰り返しを示すタイムチャートを示している。引き抜き期間において、参照画像DArefが定常表示され、心拍周期の繰り返しに従って参照画像DArefに同一位相AA%のFFR値k1、k2、k3…に応じたカラーでマークM1、M2、M3…が、それぞれのセンサ位置B1、B2、B3…に累積的に重ねられていく。
図22に示すように、参照画像は同一画面に透視画像(ライブ画像)及びFFR値のタイムチャートとともに表示される。
【0075】
以上の通り、本ユースケースによれば、血管狭窄診断に有用なFFR値等の指標の測定位置を参照画像上で確認することができ、FFR値の空間的視認性を向上して、有用性を高めることができる。つまり、本実施形態により、圧力センサ210aを備えるガイドワイヤを挿入された被検体に関するX線画像上に、FFR値がマークとしてFFR値の計算に用いられる圧力が測定された血管箇所に重ねて表示可能なため、血管上のFFR値が直感的に確認できるようになり、操作者による血管狭窄部測定精度の向上が期待できる。さらに本実施形態では、参照画像上のセンサ位置を、前回特定された参照画像上のセンサ位置から、ライブ画像上で特定された前回と今回のセンサ位置から計算された方向と距離に従って連続的に特定していくことにより、実際のFFR測定位置であるライブ画像上のセンサ位置と、表示される参照画像上のセンサ位置とのずれの拡大を抑制することができる。
【0076】
なお、参照画像上へのFFR値の表示態様としては様々に変形されることができる。例えば、
図23に示すように、FFR値測定中において操作者が任意のタイミングで入力部21aを特定操作した時、その時のFFR値をその時の参照画像上のセンサ位置に吹き出しにより数値表示させるようにしてもよい。また
図24に示すようにマークを重畳表示する対象を参照画像からライブ画像(透視画像)に切り替えることを可能にしてもよい。さらに、
図25に示すように、FFR値の数値表示を参照画像からライブ画像(透視画像)に切り替えて重畳表示することを可能にしてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、透視画像が連続X線のもとで1/30sec等の一定周期で繰り返し収集される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、一定の時間間隔でX線が照射され、透視画像が収集される場合であってもよい。かかる場合には、操作者の操作によってガイドワイヤが少しずつ引き抜かれている間、一定の時間間隔で透視画像が収集される。そして、表示制御部130aは、参照画像、或いは、透視画像上における、透視画像が収集された時点のセンサ位置にマークを表示させる。なお、FFR値の計測は、圧力センサ210aの出力に従ってFFR値計測装置200aにより繰り返し実行される場合であってもよく、或いは、透視画像のタイミングに合わせて実行される場合であってもよい。これにより、被検体の被爆量を低減させることができる。
【0078】
(第4の実施形態)
第4の実施形態においては、治療状態を更に表示する。
図27は、第4の実施形態に係るX線診断装置100の構成を示すブロック図である。
図27に示すように、第4の実施形態に係るX線診断装置100は、リアルタイムに治療状態を表示・更新するための各部を更に備える。
【0079】
ガイドワイヤ先端位置トラッキング部161は、リアルタイムに撮影したX線画像内において、リアルタイムにガイドワイヤの先端位置を特定する。ガイドワイヤの先端位置の特定は、血管内圧計測位置特定部122と同様、既存の公知技術を用いることができる。
【0080】
狭窄部位ステント検出部162は、X線画像内において、ステントやバルーンなど、狭窄部位に対応する治療器具を抽出する。例えば、狭窄部位ステント検出部162は、ガイドワイヤ先端位置トラッキング部161によって特定されたガイドワイヤの先端位置に基づき画像解析を行い、治療器具を抽出する。この治療器具の抽出も、血管内圧計測位置特定部122と同様、既存の公知技術を用いることができるが、治療器具の形状を認識した上で、画像から抽出する必要がある。
【0081】
治療状態判定部163は、画像上の狭窄部位に治療器具が留置されたか否かによって、治療状態を判定する。例えば、治療状態判定部163は、狭窄部位ステント検出部162による検出の結果、治療器具が留置されたと判定した場合には、治療済みであると判定する。一方、治療状態判定部163は、治療器具が留置されていないと判定した場合には、未治療であると判定する。
【0082】
図28は、第4の実施形態における表示例を示す図である。第4の実施形態において、表示制御部130は、
図28に示すように、治療状態判定部163による判定結果に応じて、治療状態を示す情報(「治療済」、「未治療」など)を更に表示する。
【0083】
(第5の実施形態)
第5の実施形態においては、治療に伴う心筋虚血改善予測の情報を更に表示する。
図29は、第5の実施形態に係るX線診断装置100、計測装置200、及びECG計測装置300の構成を示す図である。
図29に示すように、第5の実施形態に係るX線診断装置100は、狭窄部位の治療に伴い、心筋虚血の改善をリアルタイムに予測し、その予想結果を表示するための各部を更に備える。
【0084】
虚血解析画像記憶部164は、心筋パフュージョンなどの虚血解析結果画像を記憶する。例えば、虚血解析結果画像は、CT(Computed Tomography)画像や、CT画像及びSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像の組み合わせ画像などであり、X線CT装置やSPECT装置などによって撮影された画像である。なお、第5の実施形態において、X線診断装置100によって撮影されたX線画像と、虚血解析画像記憶部164に記憶された虚血解析結果画像との間は、既に位置合わせが完了していると想定する。この位置合わせは、既存の公知技術を用いて実現でき、例えば、Cアーム13の角度などの撮影条件や、Ray-Sum画像(総和値投影像)の輝度分布、心臓及び冠動脈の形状などの情報に基づいて、実現できる。
【0085】
虚血誘発性推定部165は、狭窄によって虚血が誘発される度合いを示す虚血誘発性を推定する。例えば、どの冠動脈がどの心筋領域を支配しているかの関係は解剖学的に既知である。そこで、虚血誘発性推定部165は、ある心筋領域を支配する冠動脈上の狭窄のFFRと、その心筋領域における虚血の範囲及び程度との関係に基づいて、虚血誘発性(例えば、誘発率)を、虚血心筋内の位置毎に算出する。
【0086】
FFRは、計測装置200から受信される情報であり、虚血の範囲及び程度は、虚血解析結果画像から得られる情報である。例えば、虚血誘発性推定部165は、1本の冠動脈に複数の狭窄部位が存在する場合、複数のFFRを重み付けて、誘発率を算出すればよい。なお、虚血誘発性推定部165は、FFRと虚血の範囲及び程度との関係から虚血誘発性を算出するアルゴリズムを予め学習し、このアルゴリズムにこれらの情報を入力することで、虚血誘発性を算出する。
【0087】
虚血改善予測部166は、虚血誘発性推定部165によって推定される虚血誘発性を用いて、狭窄部位の治療に伴う心筋虚血の改善をリアルタイムに予測する。多枝病変や複数病変の場合、虚血誘発性の高い狭窄部位から順次治療が行われるが、治療結果が、期待する虚血の改善まで至らない場合がある。この治療結果を治療中に評価するために、第5の実施形態においては、狭窄部位の治療の都度、FFRを計測し、虚血誘発性推定部165が、再計測されたFFRを用いて、再び虚血誘発性を算出する。
【0088】
虚血改善予測部166は、治療前に算出された虚血誘発性と、治療後に算出された虚血誘発性との差分を、虚血心筋内の位置毎に求め、虚血心筋内の各位置で、心筋虚血の改善を予測する。また、表示制御部130は、X線画像とともに虚血解析結果画像を更に表示し、また、虚血解析結果画像上に、予測結果(すなわち、予測した改善の程度)を表示する。
【0089】
図30は、第5の実施形態における心筋虚血改善予測を説明するための図である。
図30に示される信号値のグラフは、心筋パフュージョンなどの虚血解析結果の信号値を示すものである。この信号値は、例えば、造影剤到達ピーク時間(TTP(Time To Peak))、心筋血液量(MBV(Myocardial Blood Volume))、平均通過時間(MTT(Mean Transit Time))などのパラメータから解析されたものである。表示制御部130は、例えば、
図30に示すように、狭窄1の治療によってFFRが『0.50』から『0.90』に変化したことに伴い虚血改善される割合を示す等高線を表示する。
【0090】
図31は、第5の実施形態における表示例を示す図である。第5の実施形態においては、
図31に示すように、計測データなどが重畳表示されたX線画像の他に、虚血解析結果画像も表示部16に表示される。そして、表示制御部130は、例えば、
図31に示すように、治療前の虚血解析結果画像上に、等高線cを表示する。なお、第5の実施形態において、等高線cは、治療前後の差分の大きさに応じて区分けされた線を引いたものである。また、例えば、表示制御部130は、治療前後の差分が大きい場合に、濃い色を割り当て、治療前後の差分が小さい場合に、薄い色を割り当てて表示すればよい。また、必ずしも実施形態は等高線に限られるものではなく、例えば、画素単位で色を変更して表示してもよい。
【0091】
このように、改善の予測を虚血解析結果画像上で表示することによって、治療に携わる者は、虚血改善の範囲及び程度を視覚的に確認できる。カテーテル手技中に複雑な画面操作は困難なため、効率的な評価が可能である。例えば、狭窄部位の治療に伴いFFRが高い値になると、その狭窄部位が関連している心筋の虚血の範囲及び程度が改善されることが示される。
【0092】
(その他の実施形態)
なお、実施形態は、上述した実施形態に限られるものではなく、他の異なる種々の形態にて実施することができる。
【0093】
上述した実施形態においては、血流に関する指標として、実測した指標を用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、CT-FFRなどのシミュレーションの指標を用いる場合であってもよい。
図32は、その他の実施形態における表示画像の生成及び表示例を示す図である。例えば、X線診断装置100における制御部23は、
図32に示すように、最初の診断時に、CTボリュームデータに基づいて、3次元の血管モデルを生成する。そして、制御部23は、生成した3次元の血管モデルにおける各位置のFFRの値を算出する。なお、3次元の血管モデルにおける各位置のFFRの値の算出は、既存の公知技術を用いて実現できる。
【0094】
そして、表示制御部130は、
図32に示すように、CTボリュームデータが収集された同一被検体のX線画像(造影画像、又は、非造影画像)上に、制御部23によって算出されたFFR値の算出位置を表示するとともに、算出位置に対応付けて、算出されたFFR値(図中、CT-FFR:0.7)を表示する。ここで、本願におけるX線診断装置では、4Dデータを対象に処理を行なうことが可能である。すなわち、制御部23は、経時的に収集されたCTボリュームデータそれぞれから3次元の血管モデルを生成して、各位置のFFRの値を算出する。
【0095】
そして、表示制御部130は、連続して収集された一連のX線画像(造影画像、又は、非造影画像)の各X線画像の時相に対応するボリュームデータをECGを用いて特定し、特定したボリュームデータを用いて算出されたFFR値を、X線画像上の算出位置に対応付けて表示する。これにより、複数のX線画像それぞれの時相における各位置のFFRの値を、実測する前に把握させることを可能にする。さらに、
図32に示すように、表示制御部130は、治療に際して、実際に種々の指標を計測した場合に、実測値「FFR:0.8、CFR:4.00」に加えて、診断時のシミュレーションの結果「CT-FFR:0.7」を同時に表示させる。これにより、シミュレーションの値と実測値との比較を容易に行なうことができ、以後の診断を効率よく行なわせることを可能にする。
【0096】
上述した実施形態においては、医用画像診断装置としてX線診断装置100を例に説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。超音波診断装置、磁気共鳴イメージング装置、核医学イメージング装置などの他の医用画像診断装置にも、同様に適用できる。また、医用画像診断装置とは異なる画像処理装置に適用してもよい。この場合、例えば、画像処理装置は、計測装置や医用画像診断装置から各種情報を受信し、あるいは、操作者による入力を受け付け、これら各種情報を用いて、上述した特定部120や表示制御部130と同様の処理を行う。ここで、画像処理装置とは、例えば、ワークステーション、PACS(Picture Archiving and Communication System)の画像サーバやビューワ、電子カルテシステムの各種装置などである。また、医用画像診断装置及び画像処理装置とは異なる計測装置(血圧モニタ)に適用してもよい。かかる場合、例えば、計測装置は、画像表示用のモニタを有する。そして、計測装置は、医用画像診断装置から各種情報を受信し、或いは、操作者による入力を受け付け、これらの情報を用いて、上述した特定部120や表示制御部130と同様の処理を行なう。ここで、血圧モニタとしては、例えば、中心抹消静脈血圧モニタなどである。
【0097】
また、上述した実施形態に限られず、以下各種形態を適宜組み合わせることができる。まず、表示画像の撮影との連動は、リアルタイムに連動(撮影中の画像上に計測位置を表示)、又はオフラインで連動(予め収集された画像上に計測位置を表示)の他、他の装置(例えば、ワークステーション)に記憶された画像と連動する形態がある。また、表示画像としては、2D画像、又は時系列の2D画像の他、3D画像、4D画像の形態がある。また、表示画像としては、造影画像、非造影画像の他、造影中の画像(完全に造影されていない画像を含む)の形態がある。また、処理の対象画像としては、X線画像の他、CT画像やSPECT画像、その他の医用画像診断装置によって収集された画像の形態がある。また、治療状態を判定する手法としては、上述した画像解析の他、血管内圧の変化を検知する手法や、治療状態を操作者に入力させる手法がある。また、計測装置200等から受信した各種情報とX線画像との間の時間的な同期を採る手法には、単純に各々の時刻で同期を採る手法と、データが保存されている時刻全体を同期対象とするのではなく、狭窄周辺の内圧を計測した時刻周辺のみを抽出して同期を採る手法等がある。
【0098】
また、上述した実施形態においては、血流に関する指標として、FFR及びCFRを例に説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、これらをカスタマイズした他の指標などを対象としてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態においては、Cアームの撮影方向が固定である場合を想定したが、実施形態はこれに限られるものではない。Cアームの撮影方向の変化に応じて、上述した各種処理を再度行えばよい。
【0100】
また、上述した実施形態においては、冠動脈を想定したが、実施形態はこれに限られるものではなく、他の血管にも同様に適用できる。
【0101】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の画像処理装置、医用画像診断装置及び血圧モニタによれば、生理学的指標の計測位置を血管画像上で把握することができる。
(付記1)血流に関する指標の取得位置を、医用画像診断装置によって収集された血管を含む画像上で特定する特定部と、
前記血管を含む画像上に前記取得位置を表示するとともに、前記取得位置に対応付けて、前記指標を表示部に表示させる表示制御部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
(付記2)前記特定部は、異なる時相で順次取得された複数の指標の取得位置それぞれを、取得時の時相に対応する血管を含む画像上でそれぞれ特定し、
前記表示制御部は、取得時の時相に対応する血管を含む画像上でそれぞれ特定された各取得位置について、所定の時相の血管を含む画像上における対応する位置を更に特定し、特定した各位置に対応付けて、各指標それぞれを表示することを特徴とする付記1に記載の画像処理装置。
(付記3)前記表示制御部は、異なる時相の画像間における画素の移動量を算出し、算出した移動量を用いることで、前記各取得位置について、所定の時相の血管を含む画像上における対応する位置を更に特定することを特徴とする付記2に記載の画像処理装置。
(付記4)前記特定部は、前記医用画像診断装置によって収集された時系列の血管を含む画像群から、取得時の時相に対応する血管を含む画像を抽出し、抽出した血管を含む画像の画像解析により前記取得に用いられた器具の先端を特定することで、前記取得位置を特定することを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
(付記5)前記表示制御部は、医用画像診断装置によって予め収集された血管を含む画像上で特定された取得位置、又は、医用画像診断装置によってリアルタイムに収集された血管を含む画像上で特定された取得位置に対応付けて、前記指標を前記表示部に表示させることを特徴とする付記1~4のいずれか一つに記載の画像処理装置。
(付記6)前記表示制御部は、非造影の血管を含む画像上に前記取得位置を表示する場合、造影の血管を含む画像から抽出された構造情報を、前記非造影の血管を含む画像に重畳表示させることを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載の画像処理装置。
(付記7)前記血流に関する指標に基づき、狭窄部位の治療の要否を判定する治療要否判定部を更に備え、
前記表示制御部は、前記取得位置に対応付けて、前記治療の要否の判定結果を更に前記表示部に表示させることを特徴とする付記1~6のいずれか一つに記載の画像処理装置。
(付記8)前記血管を含む画像を解析することにより、治療状態を判定する治療状態判定部を更に備え、
前記表示制御部は、前記取得位置に対応付けて、前記治療状態の判定結果を更に前記表示部に表示させることを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載の画像処理装置。
(付記9)前記血流に関する指標に基づき、治療に伴う虚血改善の予測を行う予測部を更に備え、
前記表示制御部は、前記血管を含む画像とともに虚血の程度を示す画像を更に前記表示部に表示させ、前記虚血の程度を示す画像上に、予測結果を更に表示させることを特徴とする付記1~8のいずれか一つに記載の画像処理装置。
(付記10)前記特定部は、被検体に対する一連の透視画像から選択された複数の透視画像各々から閾値処理を用いて前記被検体にガイドワイヤを経由して挿入されている圧力センサの位置を特定するとともに、前記特定された圧力センサの位置に対応する前記被検体の撮影画像上の位置を、前記透視画像上での前記圧力センサの位置の変位に基づいて特定し、
前記表示制御部は、前記撮影画像上に前記圧力センサの出力に由来する指標を表すマークを前記特定された撮影画像上の位置に従って重ねて前記表示部に表示させることを特徴とする付記1に記載の画像処理装置。
(付記11)前記一連の透視画像から前記圧力センサの位置の特定に用いる透視画像を選択する選択部をさらに備える、付記10に記載の画像処理装置。
(付記12)前記選択部は、前記撮影画像の撮影時の心拍位相に基づいて、前記一連の透視画像から前記圧力センサの位置の特定に用いる透視画像を選択する、付記11に記載の画像処理装置。
(付記13)前記選択部は、前記撮影画像の撮影時の心拍位相と実質的に同じ心拍位相のタイミングで発生された透視画像を、前記圧力センサの位置の特定に用いる透視画像として選択する、付記12に記載の画像処理装置。
(付記14)前記マークは、前記指標に応じたカラーを有する、付記10に記載の画像処理装置。
(付記15)前記マークは、前記撮影画像に累積的に重ねられる、付記10に記載の画像処理装置。
(付記16)被検体を撮影し、血管を含む画像を収集する撮影部と、
血流に関する指標の取得位置を、前記血管を含む画像上で特定する特定部と、
前記血管を含む画像上に前記取得位置を表示するとともに、前記取得位置に対応付けて、前記指標を表示部に表示させる表示制御部と
を備えたことを特徴とする医用画像診断装置。
(付記17)血流に関する指標を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された指標の取得位置を、医用画像診断装置によって収集された血管を含む画像上で特定する特定部と、
前記血管を含む画像上に前記取得位置を表示するとともに、前記取得位置に対応付けて、前記指標を表示部に表示させる表示制御部と
を備えたことを特徴とする血圧モニタ。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0103】
100 X線診断装置
120 特定部
130 表示制御部