(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241210BHJP
H03K 3/356 20060101ALI20241210BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241210BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241210BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L29/78 613B
H03K3/356 A
H01L27/088 331E
H01L27/088 B
H01L27/088 E
H01L27/088 H
H01L27/088 J
H01L29/78 618B
H01L29/78 612C
H01L29/78 617N
H10B12/00 671Z
(21)【出願番号】P 2023148598
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2022159479の分割
【原出願日】2010-12-08
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2009282139
(32)【優先日】2009-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 清
(72)【発明者】
【氏名】小山 潤
【審査官】田内 幸治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-066491(JP,A)
【文献】特開平05-110392(JP,A)
【文献】特開2009-135350(JP,A)
【文献】特開平01-066899(JP,A)
【文献】米国特許第04809225(US,A)
【文献】国際公開第2009/063542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H03K 3/356
H01L 27/088
H01L 21/8234
H10B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記容量素子と電気的に接続される半導体装置であって、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域を有する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上方に配置され、かつ、前記第1のトランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層の上方に配置された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上方に配置され、かつ、前記第2のトランジスタのゲート電極としての機能を有する第2の導電層と、
前記第2の導電層と同層に配置され、かつ、前記第1の半導体層と電気的に接続される第3の導電層と、
前記第2の導電層の上方に配置され、かつ、前記第2のトランジスタのチャネル形成領域を有する第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上方に配置された第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の上方に配置され、かつ、前記第2の半導体層と電気的に接続される第4の導電層と、
前記第2の絶縁層の上方に配置された第5の導電層と、
を有し、
前記第1の半導体層は、シリコンを含み、
前記第2の半導体層は、酸化物半導体を含み、
前記第3の導電層は、前記第5の導電層と電気的に接続される半導体装置。
【請求項2】
第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記容量素子と電気的に接続される半導体装置であって、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域を有する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上方に配置され、かつ、前記第1のトランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電層と、
前記第1の導電層の上方に配置された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上方に配置され、かつ、前記第2のトランジスタのゲート電極としての機能を有する第2の導電層と、
前記第2の導電層と同層に配置され、かつ、前記第1の半導体層と電気的に接続される第3の導電層と、
前記第2の導電層の上方に配置され、かつ、前記第2のトランジスタのチャネル形成領域を有する第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上方に配置された第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の上方に配置され、かつ、前記第2の半導体層と電気的に接続される第4の導電層と、
前記第2の絶縁層の上方に配置された第5の導電層と、
を有し、
前記第1の半導体層は、シリコンを含み、
前記第2の半導体層は、酸化物半導体を含み、
前記第5の導電層は、前記第4の導電層と同層に配置され、
前記第3の導電層は、前記第5の導電層と電気的に接続される半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第4の導電層は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム又はスカンジウムのいずれか一を少なくとも含む半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
第3のトランジスタと、第2の容量素子と、を有し、
前記第3のトランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を含み、
前記第3のトランジスタのゲート電極は、前記第2のトランジスタのゲート電極と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記
第2の容量素子と電気的に接続される半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、電源を切っても記憶している論理状態が消えない不揮発性の論理回路及
びそれを用いた半導体装置に関する。特に、不揮発性のラッチ回路及びそれを用いた半導
体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源を切っても記憶が消えない「不揮発」という性質を論理回路に取り入れた不揮発性ロ
ジックを集積した集積回路が提案されている。例えば、不揮発性ロジックとして強誘電体
素子を用いた不揮発性のラッチ回路が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、強誘電体素子を用いた不揮発性のラッチ回路は、書き換え回数の信頼性や低電圧
化に課題がある。また、強誘電体素子は、素子に印加される電界によって分極し、この分
極が残ることで情報を記憶する。しかし、この残留分極が小さいと、電荷量のばらつきの
影響が大きくなったり、高精度の読み出し回路が必要になったりする。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の一形態は、新規な不揮発性のラッチ回路及びそれを用いた
半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、第1の素子の出力が第2の素子の入力に電気的に接続され、第2の素
子の出力が第1の素子の入力に電気的に接続されるループ構造を有するラッチ部と、ラッ
チ部のデータを保持するデータ保持部とを有し、このラッチ部とデータ保持部とにより不
揮発性のラッチ回路が構成されるものである。データ保持部は、チャネル形成領域を構成
する半導体材料として酸化物半導体を用いたトランジスタをスイッチング素子として用い
ている。
【0007】
またこのトランジスタのソース電極又はドレイン電極に電気的に接続された容量を有して
いる。上記トランジスタを用いて、ラッチ部に保持されているデータをデータ保持部が有
する容量に書き込むことができる。また、上記トランジスタを用いて、データ保持部が有
する容量に書き込んだデータを保持することができる。また、上記トランジスタを用いて
、データ保持部の容量に保持されているデータをラッチ部に読み出すことができる。
【0008】
すなわち、本発明の一形態は、ラッチ部と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部と
を有している。データ保持部は、トランジスタと、容量とを有し、トランジスタのチャネ
ル形成領域は、酸化物半導体層を有し、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の一
方は、容量の一方の電極に電気的に接続され、トランジスタのソース電極及びドレイン電
極の他方は、ラッチ部に電気的に接続されることにより不揮発性のラッチ回路が構成され
るものである。
【0009】
上記において、ラッチ部は、第1の素子と、第2の素子とを有し、第1の素子の出力は第
2の素子の入力に電気的に接続され、第2の素子の出力は第1の素子の入力に電気的に接
続されるループ構造を有している。また、第1の素子の入力は、入力信号が与えられる配
線に電気的に接続され、第1の素子の出力は、出力信号が与えられる配線に電気的に接続
された構造を有している。例えば、第1の素子としてインバータを用い、第2の素子とし
てインバータを用いることができる。また例えば、第1の素子としてNANDを用い、第
2の素子としてクロックドインバータを用いることができる。
【0010】
上記において、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方は、ラッチ部の第1の
素子の入力に電気的に接続されている。またトランジスタのソース電極及びドレイン電極
の他方は、入力信号が与えられる配線に電気的に接続されている。
【0011】
上記において、トランジスタは、ラッチ部に保持されているデータを、データ保持部の容
量に書き込む機能を有している。また、トランジスタは、データ保持部の容量に書き込ん
だデータを保持させる機能を有している。また、トランジスタは、データ保持部の容量に
保持されているデータをラッチ部に読み出す機能を有している。
【0012】
本発明の別の一形態は、ラッチ部と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部とを有し
、データ保持部は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第1の容量と、第2
の容量とを有している。第1、第2のトランジスタのチャネル形成領域は、酸化物半導体
層を有している。第1のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の一方は、第1の容
量の一方の電極に電気的に接続され、第1のトランジスタのソース電極及びドレイン電極
の他方は、ラッチ部に電気的に接続されている。第2のトランジスタのソース電極及びド
レイン電極の一方は、第2の容量の一方の電極に電気的に接続され、第2のトランジスタ
のソース電極及びドレイン電極の他方は、ラッチ部に電気的に接続されている。これによ
り不揮発性のラッチ回路が構成されるものである。
【0013】
上記において、ラッチ部は、第1の素子と、第2の素子とを有し、第1の素子の出力は第
2の素子の入力に電気的に接続され、第2の素子の出力は第1の素子の入力に電気的に接
続されるループ構造を有している。また、第1の素子の入力は、入力信号が与えられる配
線に電気的に接続され、第1の素子の出力は、出力信号が与えられる配線に電気的に接続
された構造を有している。例えば、第1の素子としてインバータを用い、第2の素子とし
てインバータを用いることができる。また例えば、第1の素子としてNANDを用い、第
2の素子としてクロックドインバータを用いることができる。
【0014】
上記において、第1のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方は、ラッチ部の
第1の素子の入力に電気的に接続されている。また第1のトランジスタのソース電極及び
ドレイン電極の他方は、入力信号が与えられる配線に電気的に接続されている。上記にお
いて、第2のトランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方は、ラッチ部の第1の素
子の出力に電気的に接続されている。また第2のトランジスタのソース電極及びドレイン
電極の他方は、出力信号が与えられる配線に電気的に接続されている。
【0015】
上記において、第1、第2のトランジスタは、ラッチ部に保持されているデータを、デー
タ保持部の第1、第2の容量に書き込む機能を有している。また、第1、第2のトランジ
スタは、データ保持部の第1、第2の容量に書き込んだデータを保持させる機能を有して
いる。また、第1、第2のトランジスタは、データ保持部の第1、第2の容量に保持され
ているデータをラッチ部に読み出す機能を有している。
【0016】
上記において、酸化物半導体材料により形成された酸化物半導体層をチャネル形成領域に
用いたトランジスタは、例えば、チャネル幅Wが1×104μmでチャネル長(L)が3
μmの素子であっても、室温でのオフ電流が1×10-13A以下、サブスレッショルド
スイング値(S値)が0.1V/dec.程度(ゲート絶縁膜厚100nm)の特性が得
られる。また、上記トランジスタは、ノーマリーオフ(nチャネル型の場合、しきい値電
圧が正の値となること)のトランジスタ特性を有している。
【0017】
従って、ゲートとソース電極間の電圧がほぼ0の状態におけるオフ電流、すなわちリーク
電流が、シリコンを用いたトランジスタに比べて著しく小さい。例えば、上記のW=1×
104μmのトランジスタにおいてはチャネル幅1μmあたりに換算した室温でのリーク
電流は10aA以下(以後、本明細書では、室温での単位チャネル幅リーク電流が10a
A/μm以下、と表現する)となる。
【0018】
そのため、チャネル形成領域に酸化物半導体層を用いたトランジスタをスイッチング素子
として用いることで、ラッチ回路への電源電圧の供給が停止された後も、データ保持部の
容量に蓄積された電荷をそのまま保持し続けることができる。すなわち、データ保持部に
書き込んだデータをそのまま保持し続けることができる。
【0019】
例えば、シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタを有するDRAMよりもリフ
レッシュタイム、リテンションを遙かに長時間とすることが可能であり、不揮発性メモリ
と同程度のレベルのメモリ保有性(データ保持性)を有することができる。また、ラッチ
回路への電源電圧の供給が再び開始された後には、上記トランジスタを用いることでデー
タ保持部に保持されたデータをラッチ部に読み出すことができる。これにより、電源電圧
の供給の停止前の論理状態に復元することができる。
【0020】
また、温度特性において高温でもオフ電流が十分低く、オン電流が十分高いものを得るこ
とができる。例えば、チャネル形成領域に酸化物半導体層を用いたトランジスタのVG-
ID特性は-25℃~150℃の範囲において、オン電流、移動度、S値の温度依存性が
少ないというデータが得られている。また、オフ電流は上記温度範囲において、1×10
-13A以下と極めて小さいデータが得られている。これは、酸化物半導体として、水素
濃度が十分に低減されて高純度化され、キャリア濃度が十分に低い、i型化または実質的
にi型化されたものを用いていることが一つの要因と考えられる。
【0021】
なお、本明細書では、キャリア濃度が1×1011/cm3未満の酸化物半導体を「真性
」あるいは「i型」、それ以上であるが、1×1012/cm3未満のものを、「実質的
に真性」あるいは「実質的にi型」と呼ぶ。
【0022】
このように、本発明の一形態は、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っ
ても記憶している論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路を提供するものである。
【0023】
上記において、不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を提供するこ
とができる。また、上記論理回路を用いたさまざまな半導体装置を提供することができる
。例えば、論理回路が有する複数のブロック回路のうち、使用しない一又は複数のブロッ
ク回路への電源電圧の供給を停止することができる。上記不揮発性のラッチ回路を用いる
ことで、ブロック回路への電源電圧の供給を停止した後も、ブロック回路の論理状態を記
憶しつづけることができる。また、ブロック回路への電源電圧の供給が再び開始された後
に、記憶している論理状態を読み出すことができる。これにより、電源電圧の供給の停止
前の論理状態に復元することができる。
【0024】
上記において、酸化物半導体層として、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn
-O系や、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、
In-Al-Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-A
l-Zn-O系や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al
-Zn-O系、Zn-Mg-O系、Sn-Mg-O系、In-Mg-O系や、一元系金属
酸化物であるIn-O系、Sn-O系、Zn-O系などの酸化物半導体を用いて形成する
ことができる。また、上記酸化物半導体にSiO2を含ませたものを用いても良い。
【0025】
なお、本明細書では、例えば、In-Sn-Ga-Zn-O系酸化物半導体とは、少なく
ともIn、Sn、Ga、Znを含む酸化物半導体という意味であり、それぞれの金属元素
の組成比に制限はなく、また、In、Sn、Ga、Zn以外の金属元素が含まれていても
よい。
【0026】
また、酸化物半導体層として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される材料を含
む薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた
一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、GaおよびAl、Gaおよ
びMn、GaおよびCoなどを適用することができる。
【0027】
上記において、酸化物半導体層の水素濃度は5×1019/cm3以下、望ましくは5×
1018/cm3以下、より望ましくは5×1017/cm3以下、より望ましくは1×
1016/cm3未満とすることができる。また、酸化物半導体層のキャリア濃度は1×
1014/cm3未満、望ましくは1×1012/cm3未満、より望ましくは1×10
11/cm3未満とすることができる。このような、i型、あるいは、実質的にi型の酸
化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流は1×10-17A以下、好ましくは、1×
10-18Aとすることができる。
【0028】
上記において、酸化物半導体を用いたトランジスタは、ボトムゲート型であっても良いし
、トップゲート型であっても良い。また、ボトムコンタクト型であっても良いし、トップ
コンタクト型であっても良い。ボトムゲート型トランジスタは、少なくとも絶縁表面上の
ゲート電極と、ゲート電極上のゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上においてゲート電極と重
なるチャネル形成領域となる酸化物半導体層とを有する。
【0029】
トップゲート型トランジスタは、少なくとも絶縁表面上のチャネル形成領域となる酸化物
半導体層と、酸化物半導体層上のゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上において酸化物半導体
層と重なるゲート電極とを有する。ボトムコンタクト型トランジスタは、ソース電極及び
ドレイン電極上にチャネル形成領域となる酸化物半導体層を有する。トップコンタクト型
トランジスタは、チャネル形成領域となる酸化物半導体層上にソース電極及びドレイン電
極を有する。
【0030】
なお、本明細書において「上」や「下」などの用語は、構成要素の位置関係が「直上」ま
たは「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電
極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外
しない。また、「上」「下」の用語は説明の便宜のために用いる表現に過ぎず、特に言及
する場合を除き、その上下を入れ替えたものも含む。
【0031】
また、本明細書において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定
するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、そ
の逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線
」が一体となって形成されている場合などをも含む。
【0032】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や
、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため
、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることがで
きるものとする。
【0033】
また、本明細書において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」
を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」
は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0034】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線はもちろんのこと、トラ
ンジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機
能を有する素子などが含まれる。
【0035】
また、一般に「SOI基板」は絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板を
いうが、本明細書においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設け
られた構成の基板をも含む概念として用いる。つまり、「SOI基板」が有する半導体層
は、シリコン半導体層に限定されない。
【0036】
また、「SOI基板」における基板は、シリコンウェハなどの半導体基板に限らず、ガラ
ス基板や石英基板、サファイア基板、金属基板などの非半導体基板をも含む。つまり、導
体基板や絶縁体基板上に半導体材料からなる層を有するものも、広く「SOI基板」に含
まれる。
【0037】
さらに、本明細書において、「半導体基板」は、半導体材料のみからなる基板を指すに留
まらず、半導体材料を含む基板全般を示すものとする。つまり、本明細書等においては「
SOI基板」も広く「半導体基板」に含まれる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一形態によれば、チャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を
用いたトランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いることで、温度動作
範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している論理状態が消えない不揮
発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ保持部を内蔵したラッチ
回路を実現することができる。データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって
行うことから、実質的に書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタ
のしきい値電圧程度であり、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の容量に
蓄積された電荷がそのままデータとして保持されるため、残留分極成分をデータとする場
合と比較して、データとして保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、また
データの読み出しを容易に行うことができる。
【0039】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、不揮発性のラッチ回路を用いた論理回路では、使用しないブロックの電源
をオフにすることで消費電力を低減することができる。また、電源をオフにしても論理状
態を記憶していることから、電源をオンにした時のシステム起動や、電源をオフにした時
のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】不揮発性のラッチ回路の構成の一例を示す図。
【
図2】不揮発性のラッチ回路の一部の構成の一例を示す図。
【
図3】不揮発性のラッチ回路が有する素子の断面の一例を示す図。
【
図4】不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例を示す図。
【
図5】不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例を示す図。
【
図6】不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例を示す図。
【
図7】酸化物半導体を用いたトランジスタの断面構成の一例を示す図。
【
図8】
図7のA-A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)。
【
図9】(A)ゲート(GE1)に正の電圧(V
G>0)が与えられた状態を示し、(B)ゲート(GE1)に負の電圧(V
G<0)が与えられた状態示す図。
【
図10】真空準位と金属の仕事関数(φ
M)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す図。
【
図11】シリコン(Si)において、ホットキャリア注入に要するエネルギーを示す図。
【
図12】In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体(IGZO)において、ホットキャリア注入に要するエネルギーを示す図。
【
図13】炭化シリコン(4H-SiC)において、ホットキャリア注入に要するエネルギーを示す図。
【
図14】短チャネル効果に関するデバイスシミュレーションの結果を示す図。
【
図15】短チャネル効果に関するデバイスシミュレーションの結果を示す図。
【
図16】不揮発性のラッチ回路が有する素子の断面の一例を示す図。
【
図17】不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例を示す図。
【
図18】不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例を示す図。
【
図19】不揮発性のラッチ回路の構成と動作の一例を示す図。
【
図20】不揮発性のラッチ回路の動作の一例を示す図。
【
図21】不揮発性のラッチ回路の構成の一例を示す図。
【
図22】不揮発性のラッチ回路の構成の一例を示す図。
【
図23】不揮発性のラッチ回路の構成の一例を示す図。
【
図24】不揮発性のラッチ回路の動作の一例を示す図。
【
図25】不揮発性のラッチ回路の動作の一例を示す図。
【
図26】不揮発性のラッチ回路の構成の一例を示す図。
【
図27】不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例を示す図。
【
図28】不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例を示す図。
【
図29】不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を含む電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施の形態について、図面を参照して以下に説明する。ただし、本発明は以下
の説明に限定されるものではない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくそ
の形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解されるからであ
る。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容のみに限定して解釈されるも
のではない。なお、図面を用いて本発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号
は異なる図面間でも共通して用いる。
【0042】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限
定されない。
【0043】
なお、本明細書にて用いる第1、第2、第3といった序数を用いた用語は、構成要素を識
別するために便宜上付したものであり、その数を限定するものではない。
【0044】
(実施の形態1)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路の構成、動作、不揮
発性のラッチ回路が有する素子の構成、作製方法等について、
図1、
図2、
図3、
図4乃
至
図6、
図7乃至
図10、
図11乃至
図15を参照して説明する。
【0045】
<不揮発性のラッチ回路の構成、動作>
図1は、ラッチ部411と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401とを有する
不揮発性のラッチ回路400の構成を示している。
【0046】
図1に示す不揮発性のラッチ回路400は、第1の素子(D1)412の出力が第2の素
子(D2)413の入力に電気的に接続され、第2の素子(D2)413の出力が第1の
素子(D1)412の入力に電気的に接続されるループ構造を有するラッチ部411と、
ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401とを有している。
【0047】
第1の素子(D1)412の入力は、ラッチ回路の入力信号が与えられる配線414に電
気的に接続されている。第1の素子(D1)412の出力は、ラッチ回路の出力信号が与
えられる配線415に電気的に接続されている。
【0048】
第1の素子(D1)412の入力が複数ある場合は、そのうちの一をラッチ回路の入力信
号が与えられる配線414に電気的に接続することができる。第2の素子(D2)413
の入力が複数ある場合は、そのうちの一を第1の素子(D1)412の出力に電気的に接
続することができる。
【0049】
第1の素子(D1)412は、入力された信号を反転したものが出力となる素子を用いる
ことができる。例えば、第1の素子(D1)412には、インバータ、NAND(ナンド
)、NOR(ノア)、クロックドインバータ等を用いることができる。また、第2の素子
(D2)413は、入力された信号を反転したものが出力となる素子を用いることができ
る。例えば、第2の素子(D2)413には、インバータ、NAND(ナンド)、NOR
(ノア)、クロックドインバータ等を用いることができる。
【0050】
データ保持部401は、チャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用
いたトランジスタ402をスイッチング素子として用いている。またこのトランジスタ4
02のソース電極又はドレイン電極に電気的に接続された容量404を有している。すな
わち、このトランジスタ402のソース電極及びドレイン電極の一方に容量404の電極
の一方が電気的に接続されている。トランジスタ402のソース電極及びドレイン電極の
他方は、第1の素子の入力やラッチ回路の入力信号が与えられる配線に電気的に接続され
ている。容量404の電極の他方には電位Vcが与えられる。
【0051】
またデータ保持部401は、
図1に示す構成に代えて、
図2(A)、
図2(B)に示す構
成とすることができる。
【0052】
図2(A)に示すデータ保持部401は、トランジスタ402が第1のゲート電極と第2
のゲート電極を有している。第2のゲート電極は、チャネル形成領域を構成する酸化物半
導体層を間にして第1のゲート電極と反対側に設けられている。第1のゲート電極は制御
信号が与えられる配線に電気的に接続されている。第2のゲート電極は、所定の電位が与
えられる配線に電気的に接続されている。例えば第2のゲート電極は、負の電位或いは接
地電位(GND)が与えられる配線に電気的に接続されている。
【0053】
また
図2(A)に示すデータ保持部401は、トランジスタ402のソース電極及びドレ
イン電極の一方に容量404の電極の一方が電気的に接続されている。トランジスタ40
2のソース電極及びドレイン電極の他方は、第1の素子の入力やラッチ回路の入力信号が
与えられる配線に電気的に接続されている。容量404の電極の他方には電位Vcが与え
られる。
【0054】
図2(A)に示すデータ保持部401を用いた不揮発性のラッチ回路では、
図1に示す不
揮発性のラッチ回路が有する効果に加えて、トランジスタ402の電気的特性(例えば、
しきい値電圧)の調節が容易になるという効果が得られる。例えば、トランジスタ402
の第2のゲート電極に負電位を与えることで、トランジスタ402を容易にノーマリーオ
フとすることができる。
【0055】
図2(B)に示すデータ保持部401は、トランジスタ402が第1のゲート電極と第2
のゲート電極を有している。第2のゲート電極は、チャネル形成領域を構成する酸化物半
導体層を間にして第1のゲート電極と反対側に設けられている。第2のゲート電極は、第
1のゲート電極に電気的に接続されている。また
図2(B)に示すデータ保持部401は
、トランジスタ402のソース電極及びドレイン電極の一方に容量404の電極の一方が
電気的に接続されている。トランジスタ402のソース電極及びドレイン電極の他方は、
第1の素子の入力やラッチ回路の入力信号が与えられる配線に電気的に接続されている。
容量404の電極の他方には電位Vcが与えられる。
図2(B)に示すデータ保持部40
1を用いた不揮発性のラッチ回路では、
図1に示す不揮発性のラッチ回路が有する効果に
加えて、トランジスタ402の電流量の増加という効果が得られる。
【0056】
図1、
図2に示す構成を有する不揮発性のラッチ回路では、次のように、情報の書き込み
、保持、読み出しが可能である。なお、以下では、
図1の構成を元に説明するが、他の構
成の場合も同様である。
【0057】
この酸化物半導体を用いたトランジスタ402は、ラッチ部411に保持されているデー
タを、データ保持部401の容量404に書き込む機能を有している。また、トランジス
タ402は、データ保持部401の容量404に書き込んだデータを保持させる機能を有
している。また、トランジスタ402は、データ保持部401の容量404に保持されて
いるデータをラッチ部411に読み出す機能を有している。
【0058】
ラッチ部411に保持されているデータの、データ保持部401への書き込み、保持、デ
ータ保持部401からラッチ部411へのデータの読み出し、データ保持部401のデー
タの書き換えの動作について説明する。まず、トランジスタ402のゲート電極にトラン
ジスタ402がオン状態となる電位を供給し、トランジスタ402をオン状態とする。こ
れにより、ラッチ部に保持されているデータ、すなわちラッチ部に保持されている第1の
素子(D1)412の入力の電位が容量404の一方の電極に与えられる。その結果、容
量404の一方の電極には、ラッチ部に保持されている第1の素子(D1)412の入力
の電位に応じた電荷が蓄積される(書き込み)。
【0059】
その後、トランジスタ402のゲート電極の電位をトランジスタ402がオフ状態となる
電位として、トランジスタ402をオフ状態とすることにより、容量404の一方の電極
に蓄積された電荷が保持される(保持)。また、第1の素子(D1)412の入力の電位
をフローティング状態とした後に、トランジスタ402のゲート電極にトランジスタ40
2がオン状態となる電位を供給し、トランジスタ402をオン状態とすることにより、容
量404の一方の電極と第1の素子(D1)412の入力とで電荷が分配される。その結
果、第1の素子(D1)412の入力には、容量404の一方の電極の電位に蓄積された
電荷に応じた電位が与えられる。そして、データをラッチ部に保持する。その結果、デー
タの読み出しを行うことができる(読み出し)。データの書き換えは、上記データの書き
込みおよび保持と同様に行うことができる。
【0060】
トランジスタ402が有する酸化物半導体層は、四元系金属酸化物であるIn-Sn-G
a-Zn-O系や、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn
-O系、In-Al-Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、
Sn-Al-Zn-O系や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系、Sn-Zn-O
系、Al-Zn-O系、Zn-Mg-O系、Sn-Mg-O系、In-Mg-O系や、一
元系金属酸化物であるIn-O系、Sn-O系、Zn-O系などの酸化物半導体を用いて
形成することができる。また、上記酸化物半導体にSiO2を含ませたものを用いても良
い。
【0061】
また、酸化物半導体層として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される材料を含
む薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた
一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、GaおよびAl、Gaおよ
びMn、GaおよびCoなどを適用することができる。
【0062】
酸化物半導体層は水素などの不純物が十分に除去され、酸素が供給され、高純度化されて
いるものであることが望ましい。具体的には、二次イオン質量分析法(SIMS:Sec
ondary Ion Mass Spectroscopy)で測定した酸化物半導体
層の水素濃度が5×1019/cm3以下、望ましくは5×1018/cm3以下、より
望ましくは5×1017/cm3以下、より望ましくは1×1016/cm3未満となる
ようにする。
【0063】
また、酸化物半導体層のキャリア濃度は1×1014/cm3未満、望ましくは1×10
12/cm3未満、より望ましくは1×1011/cm3未満とすることができる。また
、水素濃度が十分に低減されて酸素が供給され、高純度化された酸化物半導体層では、一
般的なシリコンウェハ(リンやボロンなどの不純物元素が微量に添加されたシリコンウェ
ハ)におけるキャリア濃度(1×1014/cm3程度)と比較して、十分に低いキャリ
ア濃度の値(例えば、1×1012/cm3未満、望ましくは、1×1011/cm3未
満)をとる。
【0064】
このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、キャリア濃度が十分に低い、i
型化または実質的にi型化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ電流特
性のトランジスタ402を得ることができる。例えば、チャネル幅Wが1×104μmで
チャネル長Lが3μmの素子であっても、ドレイン電極に印加するドレイン電圧VDが+
1Vまたは+10Vの場合であって、ゲート電極に印加するゲート電圧VGが-5Vから
-20Vの範囲では、室温でのオフ電流が1×10-13A以下である。また、上記トラ
ンジスタは、ノーマリーオフのトランジスタ特性を有している。従って、ゲートとソース
電極間の電圧がほぼ0の状態におけるオフ電流、すなわちリーク電流が、シリコンを用い
たトランジスタに比べて著しく小さい。例えば室温での単位チャネル幅リーク電流は10
aA/μm以下となる。
【0065】
また、温度特性において高温でもオフ電流が十分低く、オン電流が十分高いものを得るこ
とができる。例えば、トランジスタ402のVG-ID特性は-25℃~150℃の範囲
において、オン電流、移動度、S値の温度依存性が少ないというデータが得られている。
また、オフ電流は上記温度範囲において、1×10-13A以下(測定限界以下)と極め
て小さいデータが得られている。これは、酸化物半導体として、水素濃度が十分に低減さ
れて高純度化され、キャリア濃度が十分に低い、i型化または実質的にi型化されたもの
を用いていることが一つの要因と考えられる。
【0066】
このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、キャリア濃度が十分に低い、i
型化または実質的にi型化された酸化物半導体を用いたトランジスタ402をスイッチン
グ素子として用いることで、ラッチ回路400への電源電圧の供給が停止された後も、デ
ータ保持部401の容量404に蓄積された電荷を極めて長時間にわたって保持し続ける
ことができる。すなわち、データ保持部401に書き込んだデータを極めて長時間にわた
って保持し続けることができる。
【0067】
例えば、シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタを有するDRAMよりもリフ
レッシュタイム、リテンションを遙かに長時間とすることが可能であり、不揮発性メモリ
と同程度のレベルのメモリ保有性(データ保持性)を有することができる。また、データ
保持部401に保持されたデータを読み出すことにより、電源電圧の供給の停止前の論理
状態に復元することができる。このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、
キャリア濃度が十分に低い、i型化または実質的にi型化された酸化物半導体を用いたト
ランジスタ402をスイッチング素子として用いることで、温度動作範囲が広く高温でも
安定に動作し、電源を切っても記憶している論理状態が消えない新規な不揮発性のラッチ
回路を実現することができる。
【0068】
<不揮発性のラッチ回路が有する素子の構成>
不揮発性のラッチ回路400が有する素子のうち、酸化物半導体を用いたトランジスタ4
02以外の素子は、半導体材料として酸化物半導体以外の材料を用いることができる。酸
化物半導体以外の材料としては、単結晶シリコン、結晶性シリコンなどを用いることがで
きる。例えば、トランジスタ402以外の素子は、半導体材料を含む基板に設けることが
できる。半導体材料を含む基板としては、シリコンウェハ、SOI(Silicon o
n Insulator)基板、絶縁表面上のシリコン膜などを用いることができる。酸
化物半導体以外の材料を用いることにより、高速動作が可能となる。例えば、ラッチ部が
有する第1の素子(D1)412、第2の素子(D2)413を、酸化物半導体以外の材
料を用いたトランジスタで形成することができる。
【0069】
図3は、上記不揮発性のラッチ回路が有する素子の構成の一例を示す断面図である。
図3
(A)は、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に酸
化物半導体を用いたトランジスタ402を有するものである。酸化物半導体以外の材料を
用いたトランジスタ160は、ラッチ部が有する第1の素子(D1)412、第2の素子
(D2)413を構成するトランジスタ、として用いることができる。上記不揮発性のラ
ッチ回路が有する他の素子についても、トランジスタ160と同様又は類似の構成とする
ことができる。
【0070】
また、上記不揮発性のラッチ回路が有する容量404などの素子は、トランジスタ402
又はトランジスタ160を構成する導電膜、半導体膜、或いは絶縁膜等を利用して形成す
ることができる。なお、トランジスタ160およびトランジスタ402は、いずれもn型
トランジスタとして説明するが、p型トランジスタを採用しても良い。トランジスタ16
0は、p型とすることが容易である。また、
図3(B)は、トランジスタ402と下部の
電極(または配線)との接続関係が
図3(A)とは異なる場合の一例である。以下では、
主として
図3(A)の構成に関して説明する。
【0071】
トランジスタ160は、半導体材料を含む基板100に設けられたチャネル形成領域11
6と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域114および高濃度不
純物領域120(これらをあわせて単に不純物領域とも呼ぶ)と、チャネル形成領域11
6上に設けられたゲート絶縁層108aと、ゲート絶縁層108a上に設けられたゲート
電極110aと、不純物領域114と電気的に接続するソース電極またはドレイン電極1
30a、および、ソース電極またはドレイン電極130bを有する(
図3(A)参照)。
【0072】
ここで、ゲート電極110aの側面にはサイドウォール絶縁層118が設けられている。
また、基板100の、平面で見てサイドウォール絶縁層118と重ならない領域には、高
濃度不純物領域120を有し、高濃度不純物領域120と接する金属化合物領域124を
有する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106
が設けられており、トランジスタ160を覆うように、層間絶縁層126および層間絶縁
層128が設けられている。
【0073】
ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bは、層
間絶縁層126および層間絶縁層128に形成された開口を通じて、金属化合物領域12
4と電気的に接続されている。つまり、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース
電極またはドレイン電極130bは、金属化合物領域124を介して高濃度不純物領域1
20および不純物領域114と電気的に接続されている。
【0074】
トランジスタ402は、層間絶縁層128上に設けられたゲート電極136dと、ゲート
電極136d上に設けられたゲート絶縁層138と、ゲート絶縁層138上に設けられた
酸化物半導体層140と、酸化物半導体層140上に設けられ、酸化物半導体層140と
電気的に接続されているソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレ
イン電極142bと、を有する(
図3(A)参照)。
【0075】
また、トランジスタ402の上には、酸化物半導体層140の一部と接するように、保護
絶縁層144が設けられており、保護絶縁層144上には層間絶縁層146が設けられて
いる。ここで、保護絶縁層144および層間絶縁層146には、ソース電極またはドレイ
ン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口が設けられて
おり、当該開口を通じて、電極150d、電極150eが、ソース電極またはドレイン電
極142a、ソース電極またはドレイン電極142bに接して形成されている。
【0076】
また、電極150d、電極150eの形成と同時に、ゲート絶縁層138、保護絶縁層1
44、層間絶縁層146に設けられた開口を通じて、電極136a、電極136b、電極
136cに接する電極150a、電極150b、電極150cが形成されている。なおト
ランジスタ402としてボトムゲート型のトランジスタの例を示したが、これに限定され
ない。トップゲート型のトランジスタであっても良い。
【0077】
ここで、酸化物半導体層140は水素などの不純物が十分に除去され、酸素が供給され、
高純度化されたものであることが望ましい。具体的には、二次イオン質量分析法(SIM
S:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定した酸
化物半導体層140の水素濃度が5×1019/cm3以下、望ましくは5×1018/
cm3以下、より望ましくは5×1017/cm3以下、より望ましくは1×1016/
cm3未満となるようにする。
【0078】
なお、水素濃度が十分に低減され、酸素が供給され、高純度化された酸化物半導体層14
0では、一般的なシリコンウェハ(リンやボロンなどの不純物元素が微量に添加されたシ
リコンウェハ)におけるキャリア濃度(1×1014/cm3程度)と比較して、十分に
低いキャリア濃度の値(例えば、1×1012/cm3未満、望ましくは、1×1011
/cm3未満)をとる。
【0079】
このように、i型化または実質的にi型化された酸化物半導体を用いることで、極めて優
れたオフ電流特性のトランジスタ402を得ることができる。例えば、ドレイン電圧VD
が+1Vまたは+10Vの場合であって、ゲート電圧VGが-5Vから-20Vの範囲で
は、室温でのオフ電流は1×10-13A以下である。また、上記トランジスタは、ノー
マリーオフのトランジスタ特性を有している。従って、ゲートとソース電極間の電圧がほ
ぼ0の状態におけるオフ電流、すなわちリーク電流が、シリコンを用いたトランジスタに
比べて著しく小さい。例えば室温での単位チャネル幅リーク電流は10aA/μm以下と
なる。
【0080】
また、温度特性において高温でもオフ電流が十分低く、オン電流が十分高いものを得るこ
とができる。例えば、トランジスタ402のVG-ID特性は-25℃~150℃の範囲
において、オン電流、移動度、S値の温度依存性が少ないというデータが得られている。
また、オフ電流は上記温度範囲において、1×10-13Aと極めて小さいデータが得ら
れている。これは、酸化物半導体として、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、キ
ャリア濃度が十分に低い、i型化または実質的にi型化されたものを用いていることが一
つの要因と考えられる。
【0081】
このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体層140を適用し
、トランジスタ402のオフ電流を低減することにより、新たな構成の半導体装置を実現
することができる。
【0082】
また、層間絶縁層146上には絶縁層152が設けられており、当該絶縁層152に埋め
込まれるように、電極154a、電極154b、電極154c、電極154dが設けられ
ている。ここで、電極154aは電極150aと接しており、電極154bは電極150
bと接しており、電極154cは電極150cおよび電極150dと接しており、電極1
54dは電極150eと接している。
【0083】
つまり、トランジスタ402のソース電極またはドレイン電極142aは、電極130c
、電極136c、電極150c、電極154c、電極150dを介して、他の要素(酸化
物半導体以外の材料を用いたトランジスタなど)と電気的に接続されている(
図3(A)
参照)。さらに、トランジスタ402のソース電極またはドレイン電極142bは、電極
150e、電極154dを介して、他の要素に電気的に接続されている。なお、接続に係
る電極(電極130c、電極136c、電極150c、電極154c、電極150d等)
の構成は、上記に限定されず、適宜追加、省略等が可能である。
【0084】
図3(B)には、トランジスタ402のソース電極またはドレイン電極142aが、
図3
(A)とは異なる接続関係を有する場合を示す。具体的には、ソース電極またはドレイン
電極142aは、電極130c、電極136c、電極150c、電極154c、電極15
0dを介して、電極110bと電気的に接続されている。ここで、電極110bは、ゲー
ト電極110aと同様にして形成されたものである。電極110bは、トランジスタの構
成要素であっても良いし、配線等の一部であっても良い。なお、接続に係る電極(電極1
30c、電極136c、電極150c、電極154c、電極150d等)の構成は、上記
に限定されず、適宜追加、省略等が可能である。
【0085】
上記では、代表的な接続関係に係る二つの例を示したが、開示する発明の一態様はこれに
限定されない。例えば、
図3(A)に示す構成と、
図3(B)に示す構成とを併せて含ん
でいても良い。また、トランジスタ160のゲート電極110aと、トランジスタ402
のソース電極またはドレイン電極142aとが電気的に接続されていても良い。
【0086】
<不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法>
次に、上記不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例について説明する。以下
では、はじめにトランジスタ160の作製方法について
図4を参照して説明し、その後、
トランジスタ402の作製方法について
図5または
図6を参照して説明する。以下に示す
作製方法により、上記不揮発性のラッチ回路が有する素子を作製することができる。なお
、
図4では、
図3(A)におけるA1-A2に相当する断面のみを示す。また、
図5また
は
図6では、
図3(A)におけるA1-A2およびB1-B2に相当する断面を示す。
【0087】
<下部トランジスタの作製方法>
まず、半導体材料を含む基板100を用意する(
図4(A)参照)。半導体材料を含む基
板100としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板
、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができ
る。ここでは、半導体材料を含む基板100として、単結晶シリコン基板を用いる場合の
一例について示すものとする。
【0088】
なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板
をいうが、本明細書においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設
けられた構成の基板をも含む概念として用いる。つまり、「SOI基板」が有する半導体
層は、シリコン半導体層に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁
基板上に半導体層が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0089】
基板100上には、素子分離絶縁層を形成するためのマスクとなる保護層102を形成す
る(
図4(A)参照)。保護層102としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、
窒化酸化シリコンなど材料とする絶縁層を用いることができる。なお、この工程の前後に
おいて、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物
元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板100に添加してもよい。半導体がシリ
コンの場合、n型の導電性を付与する不純物としては、例えば、リンや砒素などを用いる
ことができる。また、p型の導電性を付与する不純物としては、例えば、硼素、アルミニ
ウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0090】
次に、上記の保護層102をマスクとしてエッチングを行い、保護層102に覆われてい
ない領域(露出している領域)の基板100の一部を除去する。これにより分離された半
導体領域104が形成される(
図4(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチン
グを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエ
ッチング液は、被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0091】
次に、半導体領域104を覆うように絶縁層を形成し、半導体領域104に重畳する領域
の絶縁層を選択的に除去することで、素子分離絶縁層106を形成する(
図4(B)参照
)。当該絶縁層は、酸化シリコンや窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを用いて形成さ
れる。絶縁層の除去方法としては、CMPなどの研磨処理やエッチング処理などがあるが
、そのいずれを用いても良い。なお、半導体領域104の形成後、または、素子分離絶縁
層106の形成後には、上記保護層102を除去する。
【0092】
次に、半導体領域104上に絶縁層を形成し、当該絶縁層上に導電材料を含む層を形成す
る。
【0093】
絶縁層は後のゲート絶縁層となるものであり、CVD法やスパッタリング法等を用いて得
られる酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニ
ウム、酸化タンタル等を含む膜の単層構造または積層構造とすると良い。他に、高密度プ
ラズマ処理や熱酸化処理によって、半導体領域104の表面を酸化、窒化することにより
、上記絶縁層を形成してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、X
eなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを用いて行う
ことができる。また、絶縁層の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上100n
m以下とすることができる。
【0094】
導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料
を用いて形成することができる。また、導電性を付与する不純物元素を含む多結晶シリコ
ンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定
されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用
いることができる。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形
成する場合の一例について示すものとする。
【0095】
その後、上記絶縁層および導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁層1
08a、ゲート電極110aを形成する(
図4(C)参照)。
【0096】
次に、ゲート電極110aを覆う絶縁層112を形成する(
図4(C)参照)。そして、
半導体領域104にリン(P)又はヒ素(As)などを添加して、浅い接合深さの不純物
領域114を形成する(
図4(C)参照)。なお、ここではn型トランジスタを形成する
ためにリンやヒ素を添加しているが、p型トランジスタを形成する場合には、硼素(B)
やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。
【0097】
なお、不純物領域114の形成により、半導体領域104のゲート絶縁層108a下部に
は、チャネル形成領域116が形成される(
図4(C)参照)。ここで、添加する不純物
の濃度は適宜設定することができるが、半導体素子が高度に微細化される場合には、その
濃度を高くすることが望ましい。また、ここでは、絶縁層112を形成した後に不純物領
域114を形成する工程を採用しているが、不純物領域114を形成した後に絶縁層11
2を形成する工程としても良い。
【0098】
次に、サイドウォール絶縁層118を形成する(
図4(D)参照)。サイドウォール絶縁
層118は、絶縁層112を覆うように絶縁層を形成した後に、当該絶縁層に異方性の高
いエッチング処理を適用することで、自己整合的に形成することができる。また、この際
に、絶縁層112を部分的にエッチングして、ゲート電極110aの上面と、不純物領域
114の上面を露出させると良い。
【0099】
次に、ゲート電極110a、不純物領域114、サイドウォール絶縁層118等を覆うよ
うに、絶縁層を形成する。そして、当該絶縁層が不純物領域114と接する領域に、リン
(P)やヒ素(As)などを添加して、高濃度不純物領域120を形成する。その後、上
記絶縁層を除去し、ゲート電極110a、サイドウォール絶縁層118、高濃度不純物領
域120等を覆うように金属層122を形成する(
図4(E)参照)。
【0100】
当該金属層122は、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方
法を用いて形成することができる。金属層122は、半導体領域104を構成する半導体
材料と反応して低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成することが望ましい。こ
のような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、コバ
ルト、白金等がある。
【0101】
次に、熱処理を施して、上記金属層122と半導体材料とを反応させる。これにより、高
濃度不純物領域120に接する金属化合物領域124が形成される(
図4(F)参照)。
なお、ゲート電極110aとして多結晶シリコンなどを用いる場合には、ゲート電極11
0aの金属層122と接触する部分にも、金属化合物領域が形成されることになる。
【0102】
上記熱処理としては、例えば、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることができ
る。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反応
の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理が実現できる方法を用いることが望
ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成され
るものであり、十分に導電性が高められた領域である。当該金属化合物領域を形成するこ
とで、電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。なお、金属化合物
領域124を形成した後には、金属層122は除去する。
【0103】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、層間絶縁層126、層間絶縁層
128を形成する(
図4(G)参照)。層間絶縁層126や層間絶縁層128は、酸化シ
リコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タ
ンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。また、ポリイミド、
アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、層間絶
縁層126と層間絶縁層128の二層構造としているが、層間絶縁層の構成はこれに限定
されない。層間絶縁層128の形成後には、その表面を、CMPやエッチング処理などに
よって平坦化しておくことが望ましい。
【0104】
その後、上記層間絶縁層に、金属化合物領域124にまで達する開口を形成し、当該開口
に、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bを
形成する(
図4(H)参照)。ソース電極またはドレイン電極130aやソース電極また
はドレイン電極130bは、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて
導電層を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上記導電層の一部
を除去することにより形成することができる。
【0105】
なお、上記導電層の一部を除去してソース電極またはドレイン電極130aやソース電極
またはドレイン電極130bを形成する際には、その表面が平坦になるように加工するこ
とが望ましい。例えば、開口を含む領域にチタン膜や窒化チタン膜を薄く形成した後に、
開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する場合には、その後のCMPによって、不
要なタングステン、チタン、窒化チタンなどを除去すると共に、その表面の平坦性を向上
させることができる。このように、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極
またはドレイン電極130bを含む表面を平坦化することにより、後の工程において、良
好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0106】
ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bとして
用いることができる材料について特に限定はなく、各種導電材料を用いることができる。
例えば、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネ
オジム、スカンジウムなどの導電性材料を用いることができる。また、ここでは、金属化
合物領域124と接触するソース電極またはドレイン電極130aやソース電極またはド
レイン電極130bのみを示しているが、この工程において、
図3における電極130c
などをあわせて形成することができる。
【0107】
具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法
により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成す
る方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、金属化
合物領域の表面に形成されうる酸化膜を還元し、金属化合物領域との接触抵抗を低減させ
る機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制す
るバリア機能を備える。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、
メッキ法により銅膜を形成してもよい。なお、いわゆるシングルダマシン法に限らず、デ
ュアルダマシン法を適用してもよい。
【0108】
以上により、半導体材料を含む基板100を用いたトランジスタ160が形成される。な
お、上記工程の後には、さらに電極や配線、絶縁層などを形成しても良い。配線の構造と
して、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用することにより、高
度に集積化した半導体装置を提供することができる。
【0109】
<上部トランジスタの作製方法>
次に、
図5および
図6を用いて、層間絶縁層128上にトランジスタ402を作製する工
程について説明する。なお、
図5および
図6は、層間絶縁層128上の各種電極や、トラ
ンジスタ402などの作製工程を示すものであるから、トランジスタ402の下部に存在
するトランジスタ160等については省略している。
【0110】
まず、層間絶縁層128、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはド
レイン電極130b、電極130c上に絶縁層132を形成する(
図5(A)参照)。そ
して、絶縁層132に対し、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極または
ドレイン電極130b、および、電極130cにまで達する開口を形成する。そして、当
該開口に埋め込むように導電層134を形成する(
図5(B)参照)。その後、エッチン
グ処理やCMPといった方法を用いて上記導電層134の一部を除去し、絶縁層132を
露出させて、電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136dを形成す
る(
図5(C)参照)。
【0111】
絶縁層132はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリ
コン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タン
タル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0112】
絶縁層132の開口は、マスクを用いたエッチングなどの方法で形成することができる。
当該マスクは、フォトマスクを用いた露光などの方法によって形成することが可能である
。エッチングとしてはウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良いが
、微細加工の観点からは、ドライエッチングを用いることが好適である。
【0113】
導電層134の形成は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて行うことができる。導
電層の形成に用いることができる材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル
、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料や、これ
らの合金、化合物(例えば窒化物)などが挙げられる(
図5(B)参照)。
【0114】
より具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CV
D法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形
成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、下
部電極(ここではソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電
極130b、電極130cなど)の表面に形成されうる酸化膜を還元し、下部電極との接
触抵抗を低減させる機能を有する。
【0115】
また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備
える。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅
膜を形成してもよい。なお、いわゆるシングルダマシン法に限らず、デュアルダマシン法
などを適用してもよい。
【0116】
導電層134を形成した後には、エッチング処理やCMPといった方法を用いて導電層1
34の一部を除去し、絶縁層132を露出させて、電極136a、電極136b、電極1
36c、ゲート電極136dを形成することができる(
図5(C)参照)。なお、上記導
電層134の一部を除去して電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極1
36dを形成する際には、表面が平坦になるように加工することが望ましい。このように
、絶縁層132、電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136dの表
面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層な
どを形成することが可能となる。
【0117】
次に、絶縁層132、電極136a、電極136b、電極136c、ゲート電極136d
を覆うように、ゲート絶縁層138を形成する(
図5(D)参照)。ゲート絶縁層138
は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層
138は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ア
ルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどを含むように形成するのが好適である。
なお、ゲート絶縁層138は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0118】
例えば、原料ガスとして、シラン(SiH4)、酸素、窒素を用いたプラズマCVD法に
より、酸化窒化シリコンでなるゲート絶縁層138を形成することができる。ゲート絶縁
層138の厚さは特に限定されないが、例えば、10nm以上500nm以下とすること
ができる。積層構造の場合は、例えば、膜厚50nm以上200nm以下の第1のゲート
絶縁層と、第1のゲート絶縁層上の膜厚5nm以上300nm以下の第2のゲート絶縁層
の積層とすると好適である。
【0119】
なお、ゲート絶縁層138に水素や水などが含まれると、水素の酸化物半導体層への侵入
や、水素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜きなどが生じ、トランジスタの特性が悪
化するおそれがある。よって、ゲート絶縁層138は、できるだけ水素や水を含まないよ
うに形成することが望ましい。
【0120】
例えば、スパッタリング法などを用いる場合には、処理室内の水分を除去した状態でゲー
ト絶縁層138を形成することが望ましい。また、処理室内の水分を除去するためには、
クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどの、吸着型の真空ポ
ンプを用いることが望ましい。ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いても
よい。クライオポンプなどを用いて排気した処理室は、水素や水などが十分に除去されて
いるため、ゲート絶縁層138に含まれる不純物の濃度を低減することができる。
【0121】
また、ゲート絶縁層138を形成する際には、水素や水などの不純物が、数ppm以下(
望ましくは数ppb以下)にまで低減された高純度ガスを用いることが望ましい。
【0122】
なお、不純物を除去することによりi型化または実質的にi型化された酸化物半導体(高
純度化された酸化物半導体)は、界面準位や界面電荷に対して極めて敏感であるため、こ
のような酸化物半導体を酸化物半導体層に用いる場合には、ゲート絶縁層との界面は重要
である。つまり、高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層138には、高品
質化が要求されることになる。
【0123】
例えば、μ波(周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法は、緻密で絶縁
耐圧の高い高品質なゲート絶縁層138を形成できる点で好適である。高純度化された酸
化物半導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特
性を良好なものとすることができるからである。
【0124】
もちろん、ゲート絶縁層138として良質な絶縁層を形成できるものであれば、高純度化
された酸化物半導体層を用いる場合であっても、スパッタリング法やプラズマCVD法な
ど他の方法を適用することができる。また、形成後の熱処理によって、膜質や酸化物半導
体層との界面特性が改質される絶縁層を適用しても良い。いずれにしても、ゲート絶縁層
138としての膜質が良好であると共に、酸化物半導体層との界面準位密度を低減し、良
好な界面を形成できるものを形成すれば良い。
【0125】
次いで、ゲート絶縁層138上に、酸化物半導体層を形成し、マスクを用いたエッチング
などの方法によって当該酸化物半導体層を加工して、島状の酸化物半導体層140を形成
する(
図5(E)参照)。
【0126】
上記酸化物半導体層としては、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系や
、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-A
l-Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn
-O系や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-
O系、Zn-Mg-O系、Sn-Mg-O系、In-Mg-O系や、一元系金属酸化物で
あるIn-O系、Sn-O系、Zn-O系などの酸化物半導体を用いて形成することがで
きる。また、上記酸化物半導体にSiO2を含ませたものを用いても良い。
【0127】
また、酸化物半導体層として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される材料を含
む薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた
一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、GaおよびAl、Gaおよ
びMn、GaおよびCoなどを適用することができる。
【0128】
本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn-Ga-Zn-O系の金属酸化物ターゲッ
トを用いて、非晶質の酸化物半導体層をスパッタリング法により形成することとする。な
お、非晶質の酸化物半導体層中にシリコンを添加することで、その結晶化を抑制すること
ができるから、例えば、SiO2を2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて
酸化物半導体層を形成しても良い。
【0129】
酸化物半導体層をスパッタリング法で作製するための金属酸化物ターゲットとしては、例
えば、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol比]などの組成比を有する
金属酸化物ターゲットを用いることができる。その他に、In2O3:Ga2O3:Zn
O=1:1:2[mol比]、またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[m
ol比]の組成比を有する金属酸化物ターゲットなどを用いても良い。金属酸化物ターゲ
ットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上(例えば99.9%)で
ある。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、緻密な酸化物半導体層が
形成される。
【0130】
酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、ま
たは、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具体
的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、数ppm以下(望ましく
は数ppb以下)にまで除去された高純度ガスを用いるのが好適である。
【0131】
酸化物半導体層の形成の際には、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板温
度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱
しながら酸化物半導体層を形成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物濃度を
低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、処理室
内の水分を除去しつつ水素および水が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をタ
ーゲットとして酸化物半導体層を形成する。
【0132】
処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例え
ば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることができ
る。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであっても
よい。クライオポンプを用いて排気した成膜室においては、例えば、水素原子、水(H2
O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気され
るため、当該成膜室で形成した酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0133】
形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が100mm、圧力が0.6
Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素流量比率100%)雰囲気、
といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみ
が軽減でき、膜厚分布も小さくなるため、好ましい。酸化物半導体層の厚さは、2nm以
上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半
導体材料により適切な厚さは異なるから、その厚さは用いる材料に応じて適宜選択すれば
よい。
【0134】
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法により形成する前には、アルゴンガスを導入し
てプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層138の表面に付着しているゴ
ミを除去するのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、ス
パッタターゲットにイオンを衝突させるところ、逆に、処理表面にイオンを衝突させるこ
とによってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法と
しては、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、基板付近にプラズマを
生成する方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用
いても良い。
【0135】
上記酸化物半導体層のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれ
を用いても良い。もちろん、両方を組み合わせて用いることもできる。所望の形状にエッ
チングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスやエッチング液、エ
ッチング時間、温度等)を適宜設定する。
【0136】
ドライエッチングに用いるエッチングガスには、例えば、塩素を含むガス(塩素系ガス、
例えば塩素(Cl2)、三塩化硼素(BCl3)、四塩化珪素(SiCl4)、四塩化炭
素(CCl4)など)などがある。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗
化炭素(CF4)、六弗化硫黄(SF6)、三弗化窒素(NF3)、トリフルオロメタン
(CHF3)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O2)、これらのガスにヘリウム(H
e)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いても良い。
【0137】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etch
ing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導
結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるよ
うに、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される
電力量、基板側の電極温度等)は適宜設定する。
【0138】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、ア
ンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)などを用いることができる。ま
た、ITO07N(関東化学社製)などのエッチング液を用いてもよい。
【0139】
次いで、酸化物半導体層に第1の熱処理を行うことが望ましい。この第1の熱処理によっ
て酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の熱処理の温度は、
300℃以上800℃以下、好ましくは400℃以上700℃以下、より好ましくは45
0℃以上700℃以下、より好ましくは550℃以上700℃以下とすることができる。
【0140】
第1の熱処理の温度を350℃以上とすることにより酸化物半導体層の脱水化または脱水
素化が行え、酸化物半導体層中の水素濃度を低減することができる。また第1の熱処理の
温度を450℃以上とすることにより、酸化物半導体層中の水素濃度をさらに低減するこ
とができる。また第1の熱処理の温度を550℃以上とすることにより、酸化物半導体層
中の水素濃度をさらに低減することができる。例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に
基板を導入し、酸化物半導体層140に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の熱
処理を行う。この間、酸化物半導体層140は、大気に触れることなく、水や水素の再混
入が行われないようにする。
【0141】
なお、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または
熱輻射によって、被処理物を加熱する装置であっても良い。例えば、GRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Ann
eal)装置を用いることができる。
【0142】
LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カー
ボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(
電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを
用いて熱処理を行う装置である。気体としては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のよ
うな、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0143】
例えば、第1の熱処理として、650℃~700℃の高温に加熱した不活性ガス雰囲気中
に基板を投入し、数分間加熱した後、当該不活性ガス雰囲気から基板を取り出すGRTA
処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また
、短時間の熱処理であるため、基板の歪み点を超える温度条件であっても適用が可能とな
る。例えば、ガラス基板など、比較的耐熱性が低い基板を含むSOI基板を用いる場合、
耐熱温度(歪み点)を超える温度では基板のシュリンクが問題となるが、短時間の熱処理
の場合にはこれは問題とならない。
【0144】
なお、第1の熱処理を行う不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、
ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気
を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン
、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99
.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm
以下)とする。
【0145】
なお、処理中に、不活性ガス雰囲気を、酸素を含む雰囲気に切り替えても良い。例えば、
第1の加熱処理に電気炉を用いる場合、加熱処理の降温時に雰囲気を切り替えることがで
きる。例えば、加熱処理時(恒温時)の雰囲気は、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオ
ン、アルゴン等)などの不活性ガス雰囲気とし、降温時に酸素を含む雰囲気に切り替える
ことができる。酸素を含む雰囲気としては、酸素ガスまたは酸素ガスと窒素ガスを混合し
た気体を用いることができる。この酸素を含む雰囲気を用いる場合も、雰囲気中に、水、
水素などが含まれないことが好ましい。または、用いる酸素ガス、窒素ガスの純度を、6
N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純
物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素を含
む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因する欠陥を低減することが
できる。
【0146】
第1の熱処理の条件、または酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層が結晶化
し、微結晶または多結晶となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、または80
%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。また、第1の熱処理の条件、または
酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体層となる場
合もある。
【0147】
また、非晶質の酸化物半導体(例えば、酸化物半導体層の表面)に微結晶(粒径1nm以
上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる
場合もある。
【0148】
また、非晶質中に微結晶を配列させることで、酸化物半導体層の電気的特性を変化させる
ことも可能である。例えば、In-Ga-Zn-O系の金属酸化物ターゲットを用いて酸
化物半導体層を形成する場合には、電気的異方性を有するIn2Ga2ZnO7の結晶粒
が配向した微結晶領域を形成することで、酸化物半導体層の電気的特性を変化させること
ができる。
【0149】
例えば、In2Ga2ZnO7のc軸が酸化物半導体層の表面に垂直な方向をとるように
配向させることで、酸化物半導体層の表面に平行な方向の導電性を向上させ、酸化物半導
体層の表面に垂直な方向の絶縁性を向上させることができる。また、このような微結晶領
域は、酸化物半導体層中への水や水素などの不純物の侵入を抑制する機能を有する。
【0150】
なお、上述の微結晶領域を有する酸化物半導体層は、GRTA処理による酸化物半導体層
の表面加熱によって形成することができる。また、Znの含有量がInまたはGaの含有
量より小さいスパッタターゲットを用いることで、より好適に形成することが可能である
。
【0151】
酸化物半導体層140に対する第1の熱処理は、島状の酸化物半導体層140に加工する
前の酸化物半導体層に行うこともできる。その場合には、第1の熱処理後に、加熱装置か
ら基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行うことになる。
【0152】
なお、上記熱処理は、酸化物半導体層140に対する脱水化、脱水素化の効果があるから
、脱水化処理、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。このような脱水化処理、脱水素化
処理は、酸化物半導体層の形成後、酸化物半導体層140上にソース電極またはドレイン
電極を積層させた後、ソース電極またはドレイン電極上に保護絶縁層を形成した後、など
のタイミングにおいて行うことが可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処
理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0153】
次に、酸化物半導体層140に接するように、ソース電極またはドレイン電極142a、
ソース電極またはドレイン電極142bを形成する(
図5(F)参照)。ソース電極また
はドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bは、酸化物半導体層1
40を覆うように導電層を形成した後、当該導電層を選択的にエッチングすることにより
形成することができる。
【0154】
導電層は、スパッタリング法をはじめとするPVD(Physical Vapor D
eposition)法や、プラズマCVD法などのCVD(Chemical Vap
or Deposition)法を用いて形成することができる。また、導電層の材料と
しては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから
から選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン
、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一または複数から
選択された材料を用いてもよい。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステ
ン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を単数、または複数
組み合わせた材料を用いてもよい。
【0155】
また、導電層は、酸化物導電膜を用いて形成してもよい。酸化物導電膜としては、酸化イ
ンジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム
酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム
酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシリコン若し
くは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0156】
この場合、酸化物半導体層140に用いる材料と比較して、導電率が高いまたは抵抗率が
低い材料を酸化物導電膜に用いることが好ましい。酸化物導電膜の導電率は、キャリア濃
度を増やすことで高くすることができる。酸化物導電膜のキャリア濃度は、水素濃度を増
やすことで増やすことができる。また、酸化物導電膜のキャリア濃度は、酸素欠損を増や
すことで増やすことができる。
【0157】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリ
コンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構
造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。こ
こでは、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜の3層構造を適用することとする。
【0158】
なお、酸化物半導体層140と導電層との間には、酸化物導電体層を形成してもよい。酸
化物導電体層と導電層は、連続して形成すること(連続成膜)が可能である。このような
酸化物導電層を設けることで、ソース領域またはドレイン領域の低抵抗化を図ることがで
きるため、トランジスタの高速動作が実現される。
【0159】
次に、導電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極142a、ソー
ス電極またはドレイン電極142bを形成する(
図5(F)参照)。エッチングに用いる
マスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるのが好適で
ある。
【0160】
トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極またはドレイン電極142aの下端部と
、ソース電極またはドレイン電極142bの下端部との間隔によって決定される。なお、
チャネル長(L)が25nm未満となるような露光を行う場合には、数nm~数10nm
と極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いてマス
ク形成の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、
後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)が25nm未満となるような設計をする
ことが可能であり、即ちチャネル長(L)を10nm以上1000nm以下とすることも
可能であり、回路の動作速度を高速化できる。さらにオフ電流値が極めて小さいため、消
費電力が大きくならずに済む。
【0161】
なお、導電層のエッチングの際には、酸化物半導体層140が除去されないように、それ
ぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する。なお、材料およびエッチング条件によ
っては、当該工程において、酸化物半導体層140の一部がエッチングされ、溝部(凹部
)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0162】
また、上記マスクの使用数や工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光
マスクである多階調マスクによってレジストマスクを形成し、これを用いてエッチング工
程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは、複数の厚みを有す
る形状(階段状)となり、アッシングによりさらに変形させることができるため、異なる
パターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。つまり、一枚の多階調
マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形
成することができる。よって、露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソ
グラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が図れる。
【0163】
なお、上述の工程の後には、N2O、N2、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理
を行うのが好ましい。当該プラズマ処理によって、露出している酸化物半導体層の表面に
付着した水などが除去される。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を
行ってもよい。
【0164】
次に、大気に触れさせることなく、酸化物半導体層140の一部に接する保護絶縁層14
4を形成する(
図5(G)参照)。
【0165】
保護絶縁層144は、スパッタリング法など、保護絶縁層144に水、水素等の不純物を
混入させない方法を適宜用いて形成することができる。また、その厚さは、少なくとも1
nm以上とする。保護絶縁層144に用いることができる材料としては、酸化シリコン、
窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどがある。また、その構造は、単
層構造としても良いし、積層構造としても良い。保護絶縁層144を形成する際の基板温
度は、室温以上300℃以下とするのが好ましく、雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴ
ン)雰囲気、酸素雰囲気、または希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素の混合雰囲気とす
るのが好適である。
【0166】
保護絶縁層144に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入や、水素によ
る酸化物半導体層中の酸素の引き抜きなどが生じ、酸化物半導体層のバックチャネル側が
低抵抗化してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、保護絶縁層14
4はできるだけ水素を含まないように、形成方法においては水素を用いないことが重要で
ある。
【0167】
また、処理室内の水分を除去しつつ保護絶縁層144を形成することが好ましい。酸化物
半導体層140および保護絶縁層144に水素、水酸基を含む化合物または水分が含まれ
ないようにするためである。
【0168】
処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例え
ば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ま
しい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであって
もよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(H2O)
など水素原子を含む化合物等が除去されているため、当該成膜室で形成した保護絶縁層1
44に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0169】
保護絶縁層144を形成する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基を含む
化合物または水素化物などの不純物が、1ppm以下(望ましくは1ppb以下)にまで
除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0170】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の熱処理(好ましくは20
0℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行うのが望ましい。例えば
、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の熱処理を行う。第2の熱処理を行うと、トラ
ンジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。
【0171】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下の熱処理を行っても
よい。この熱処理は一定の加熱温度を保持して行ってもよいし、室温から、100℃以上
200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして
行ってもよい。また、この熱処理を、保護絶縁層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減
圧下で熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。なお、当該熱処理は、上記第
2の熱処理に代えて行っても良いし、第2の熱処理の前後などに行っても良い。
【0172】
次に、保護絶縁層144上に、層間絶縁層146を形成する(
図6(A)参照)。層間絶
縁層146はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコ
ン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタ
ル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。層間絶縁層146の形成
後には、その表面を、CMPやエッチングなどの方法によって平坦化しておくことが望ま
しい。
【0173】
次に、層間絶縁層146、保護絶縁層144、およびゲート絶縁層138に対し、電極1
36a、電極136b、電極136c、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース
電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むように
導電層148を形成する(
図6(B)参照)。上記開口はマスクを用いたエッチングなど
の方法で形成することができる。当該マスクは、フォトマスクを用いた露光などの方法に
よって形成することが可能である。
【0174】
エッチングとしてはウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良いが、
微細加工の観点からは、ドライエッチングを用いることが好適である。導電層148の形
成は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて行うことができる。導電層148の形成
に用いることができる材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングス
テン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料や、これらの合金、
化合物(例えば窒化物)などが挙げられる。
【0175】
具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法
により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成す
る方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、層間絶
縁層146との界面の酸化膜を還元し、下部電極(ここでは、電極136a、電極136
b、電極136c、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン
電極142b)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後に形成される窒化
チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタンや窒化チタ
ンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0176】
導電層148を形成した後には、エッチングやCMPといった方法を用いて導電層148
の一部を除去し、層間絶縁層146を露出させて、電極150a、電極150b、電極1
50c、電極150d、電極150eを形成する(
図6(C)参照)。なお、上記導電層
148の一部を除去して電極150a、電極150b、電極150c、電極150d、電
極150eを形成する際には、表面が平坦になるように加工することが望ましい。このよ
うに、層間絶縁層146、電極150a、電極150b、電極150c、電極150d、
電極150eの表面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶
縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0177】
さらに、絶縁層152を形成し、絶縁層152に、電極150a、電極150b、電極1
50c、電極150d、電極150eにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むよ
うに導電層を形成した後、エッチングやCMPなどの方法を用いて導電層の一部を除去し
、絶縁層152を露出させて、電極154a、電極154b、電極154c、電極154
dを形成する(
図6(D)参照)。当該工程は、電極150a等を形成する場合と同様で
あるから、詳細は省略する。
【0178】
上述のような方法でトランジスタ402を作製した場合、酸化物半導体層140の水素濃
度は5×1019/cm3以下となり、また、トランジスタ402の室温におけるオフ電
流は1×10-13A以下となる。また、酸化物半導体層のキャリア濃度は1×1014
/cm3未満となる。このような、水素濃度が十分に低減され、酸素が供給され、高純度
化された酸化物半導体層140を適用することで、優れた特性のトランジスタ402を得
ることができる。また、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160を有
し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ402を有するため、両者の特性を併せ持
つ優れた特性の不揮発性のラッチ回路及びそれを用いた半導体装置を作製することができ
る。
【0179】
なお、酸化物半導体層140への酸素の供給は、水素濃度を低減した直後に行う場合は、
酸化物半導体層に水素や水などが混入するおそれがないため、極めて良好な特性の酸化物
半導体層を実現することができるという点で好適である。もちろん、良好な特性の酸化物
半導体層を実現できるのであれば、水素濃度の低減処理と、酸素の供給処理は、連続的に
行われる必要はない。例えば、これらの処理の間に別の処理を含んでいても良い。また、
これらの処理を、同時に行っても良い。
【0180】
なお、酸化物半導体との比較対象たり得る半導体材料としては、炭化シリコン(例えば、
4H-SiC)がある。酸化物半導体と4H-SiCはいくつかの共通点を有している。
キャリア密度はその一例である。フェルミ・ディラック分布に従えば、酸化物半導体の少
数キャリアは1×10-7/cm3程度と見積もられるが、これは、4H-SiCにおけ
る6.7×10-11/cm3と同様、極めて低い値である。シリコンの真性キャリア密
度(1.4×1010/cm3程度)と比較すれば、その程度が並はずれていることが良
く理解できる。
【0181】
また、酸化物半導体のエネルギーバンドギャップは3.0~3.5eVであり、4H-S
iCのエネルギーバンドギャップは3.26eVであるから、ワイドギャップ半導体とい
う点においても、酸化物半導体と炭化シリコンとは共通している。
【0182】
一方で、酸化物半導体と炭化シリコンとの間には極めて大きな相違点が存在する。それは
、プロセス温度である。炭化シリコンを用いる半導体プロセスは一般に1500℃~20
00℃の熱処理を必要とするから、他の半導体材料を用いた半導体素子との積層構造は困
難である。このような高い温度では、半導体基板や半導体素子などが破壊されてしまうた
めである。他方、酸化物半導体は、300~500℃(ガラス転位温度以下、最大でも7
00℃程度)の熱処理で作製することが可能であり、他の半導体材料を用いて集積回路を
形成した上で、酸化物半導体による半導体素子を形成することが可能となる。
【0183】
また、炭化シリコンの場合と異なり、ガラス基板など、耐熱性の低い基板を用いることが
可能であるという利点を有する。さらに、高温での熱処理が不要という点で、炭化シリコ
ンと比較してエネルギーコストを十分に低くすることができるという利点を有する。
【0184】
なお、酸化物半導体において、DOS(density of state)等の物性研
究は多くなされているが、これらの研究は、局在準位そのものを十分に減らすという思想
を含まない。開示する発明の一態様では、局在準位の原因たり得る水や水素を酸化物半導
体中より除去することで、高純度化した酸化物半導体を作製する。これは、局在準位その
ものを十分に減らすという思想に立脚するものである。そして、これによって極めて優れ
た工業製品の製造を可能とするものである。
【0185】
さらに、酸素欠乏により発生する金属の不対結合手に対して酸素を供給し、酸素欠陥によ
る局在準位を減少させることにより、いっそう高純度化された(i型の)酸化物半導体と
することが可能である。たとえば、チャネル形成領域に密接して酸素過剰の酸化膜を形成
し、当該酸化膜から酸素を供給して、酸素欠陥による局在準位を減少させることが可能で
ある。
【0186】
酸化物半導体の欠陥は、過剰な水素による伝導帯下0.1~0.2eVの浅い準位や、酸
素の不足による深い準位、などに起因するものとされている。これらの欠陥を無くすため
に、水素を徹底的に除去し、酸素を十分に供給するという技術思想は正しいものであると
考えられる。
【0187】
また、酸化物半導体は一般にn型とされているが、開示する発明の一態様では、不純物、
特に水や水素を除去することによりi型化を実現する。この点、シリコンなどのように不
純物を添加してのi型化ではなく、従来にない技術思想を含むものといえる。
【0188】
また上記では、不揮発性のラッチ回路400が有する素子のうち、酸化物半導体を用いた
トランジスタ402以外の素子は、半導体材料として酸化物半導体以外の材料を用いる例
を示したが、開示する発明はこれに限定されるものではない。不揮発性のラッチ回路40
0が有する素子のうち、トランジスタ402以外の素子において、半導体材料として酸化
物半導体を用いることも可能である。
【0189】
<酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構>
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構につき、
図7乃至
図10を用いて
説明する。なお、以下の説明では、理解の容易のため理想的な状況を仮定しており、その
すべてが現実の様子を反映しているとは限らない。また、以下の説明はあくまでも一考察
に過ぎず、発明の有効性に影響を与えるものではないことを付記する。
【0190】
図7は、酸化物半導体を用いたトランジスタ(薄膜トランジスタ)の断面図である。ゲー
ト電極(GE1)上にゲート絶縁層(GI)を介して酸化物半導体層(OS)が設けられ
、その上にソース電極(S)およびドレイン電極(D)が設けられ、ソース電極(S)お
よびドレイン電極(D)を覆うように絶縁層が設けられている。
【0191】
図8には、
図7のA-A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。また、図
8中の黒丸(●)は電子を示し、白丸(○)は正孔を示し、それぞれは電荷(-q,+q
)を有している。ドレイン電極に正の電圧(V
D>0)を印加した上で、破線はゲート電
極に電圧を印加しない場合(V
G=0)、実線はゲート電極に正の電圧(V
G>0)を印
加する場合を示す。ゲート電極に電圧を印加しない場合は高いポテンシャル障壁のために
電極から酸化物半導体側へキャリア(電子)が注入されず、電流を流さないオフ状態を示
す。一方、ゲートに正の電圧を印加するとポテンシャル障壁が低下し、電流を流すオン状
態を示す。
【0192】
図9には、
図7におけるB-B’の断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。
図9(A)は、ゲート電極(GE1)に正の電圧(V
G>0)が与えられた状態であり、
ソース電極とドレイン電極との間にキャリア(電子)が流れるオン状態を示している。ま
た、
図9(B)は、ゲート電極(GE1)に負の電圧(V
G<0)が印加された状態であ
り、オフ状態(少数キャリアは流れない状態)である場合を示す。
【0193】
図10は、真空準位と金属の仕事関数(φ
M)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係
を示す。常温において金属中の電子は縮退しており、フェルミ準位は伝導帯内に位置する
。一方、従来の酸化物半導体はn型であり、そのフェルミ準位(E
F)は、バンドギャッ
プ中央に位置する真性フェルミ準位(E
i)から離れて、伝導帯寄りに位置している。な
お、酸化物半導体において水素の一部はドナーとなりn型化する要因の一つであることが
知られている。
【0194】
これに対して開示する発明の一態様に係る酸化物半導体は、n型化の要因である水素を酸
化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれな
いように高純度化することにより真性(i型)とし、または実質的に真性としたものであ
る。すなわち、不純物元素を添加してi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除
去することにより、高純度化されたi型半導体(真性半導体)またはそれに近づけること
を特徴としている。これにより、フェルミ準位(EF)は真性フェルミ準位(Ei)と同
程度とすることができる。
【0195】
酸化物半導体のバンドギャップ(Eg)は3.15eVで、電子親和力(χ)は4.3e
Vと言われている。ソース電極およびドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕事関数
は、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属-酸化物半導体界面
において、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0196】
このとき電子は、
図9(A)で示すように、ゲート絶縁層と高純度化された酸化物半導体
との界面付近(酸化物半導体のエネルギー的に安定な最低部)を移動する。
【0197】
また、
図9(B)に示すように、ゲート電極(GE1)に負の電位が与えられると、少数
キャリアであるホールの数は実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近い値とな
る。
【0198】
このように酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高純
度化することにより、真性(i型)または実質的に真性となるため、ゲート絶縁層との界
面特性が重要となる。そのため、ゲート絶縁層には、酸化物半導体と良好な界面を形成で
きるものが要求される。具体的には、例えば、VHF帯~マイクロ波帯の電源周波数で生
成される高密度プラズマを用いたCVD法で作製される絶縁層や、スパッタリング法で作
製される絶縁層などを用いることが好ましい。
【0199】
酸化物半導体を高純度化しつつ、酸化物半導体とゲート絶縁層との界面を良好なものとす
ることにより、例えば、トランジスタのチャネル幅(W)が1×104μm、チャネル長
(L)が3μmの場合には、1×10-13A以下のオフ電流、0.1V/dec.のサ
ブスレッショルドスイング値(S値)(ゲート絶縁層の厚さ:100nm)が実現され得
る。
【0200】
このように、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高
純度化することにより、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0201】
<酸化物半導体を用いたトランジスタのホットキャリア劣化耐性>
次に、酸化物半導体を用いたトランジスタのホットキャリア劣化耐性につき、
図11乃至
図13を用いて説明する。なお、以下の説明では、理解の容易のため理想的な状況を仮定
しており、そのすべてが現実の様子を反映しているとは限らない。また、以下の説明はあ
くまでも一考察に過ぎないことを付記する。
【0202】
ホットキャリア劣化の主要因としては、チャネルホットエレクトロン注入(CHE注入)
とドレインアバランシェホットキャリア注入(DAHC注入)がある。なお、以下では簡
単のため、電子のみを考慮する。
【0203】
CHE注入とは、半導体層中においてゲート絶縁層の障壁以上のエネルギーを有するよう
になった電子が、ゲート絶縁層などに注入される現象をいう。電子へのエネルギーの授与
は、電子が低電界で加速されることによって行われる。
【0204】
DAHC注入とは、高電界により加速された電子の衝突によって生じる新たな電子がゲー
ト絶縁層などに注入される現象を言う。DAHC注入とCHE注入との相違は、衝突イオ
ン化によるアバランシェ降伏を伴うか否かにある。なお、DAHC注入では、半導体のバ
ンドギャップ以上の運動エネルギーを持つ電子が必要となる。
【0205】
図11および
図12に、シリコン(Si)とIn-Ga-Zn-O系の酸化物半導体(I
GZO)のバンド構造から見積もった各種ホットキャリア注入に要するエネルギーを示す
。
図11および
図12においては、左がCHE注入、右がDAHC注入を表す。
【0206】
シリコンでは、CHE注入よりもDAHC注入による劣化が深刻となる。これは、シリコ
ン中において衝突せずに加速されるキャリア(例えば電子)はごく僅かであるのに対して
、シリコンはバンドギャップが小さく、アバランシェ降伏が生じやすいことに起因してい
る。アバランシェ降伏によりゲート絶縁層の障壁を越えられる電子(すなわちゲート絶縁
層に注入される電子)の数が急増し、劣化の原因となるのである。
【0207】
In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体では、CHE注入に必要なエネルギーはシリコン
の場合と大きく異ならず、やはりその確率は低いものである。一方で、DAHC注入に必
要なエネルギーは、シリコンよりもバンドギャップが広いことから、その分だけ増加し、
アバランシェ降伏自体が起こりにくい。つまり、CHE注入もDAHC注入もその確率は
いずれも低く、シリコンと比較してホットキャリア劣化は起こりにくい。
【0208】
ところで、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体のバンドギャップは高耐圧材料として
注目される炭化シリコン(SiC)と同程度である。
図13に、4H-SiCについての
各種ホットキャリア注入に必要なエネルギーを示す。CHE注入に関しては、In-Ga
-Zn-O系の酸化物半導体の方が若干そのしきいが高く、有利といえる。
【0209】
以上、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体はシリコンと比較してホットキャリア劣化
への耐性やソース-ドレイン破壊への耐性が非常に高いということが分かる。また、炭化
シリコンと比較しても遜色のない耐圧が得られるといえる。
【0210】
<酸化物半導体を用いたトランジスタにおける短チャネル効果>
次に、酸化物半導体を用いたトランジスタにおける短チャネル効果に関し、
図14及び図
15を用いて説明する。なお、以下の説明では、理解の容易のため理想的な状況を仮定し
ており、そのすべてが現実の様子を反映しているとは限らない。また、以下の説明はあく
までも一考察に過ぎないことを付記する。
【0211】
短チャネル効果とは、トランジスタの微細化(チャネル長(L)の縮小)に伴って顕在化
する電気特性の劣化をいう。短チャネル効果は、ドレインの効果がソースにまでおよぶこ
とに起因するものである。短チャネル効果の具体例としては、しきい値電圧の低下、S値
の増大、漏れ電流の増大などがある。
【0212】
ここでは、デバイスシミュレーションを用い、短チャネル効果を抑制することができる構
造に関して検証した。具体的には、キャリア濃度および酸化物半導体層の厚さを異ならせ
た4種類のモデルを用意して、チャネル長(L)としきい値電圧(Vth)の関係を確認
した。モデルとしては、ボトムゲート構造のトランジスタを採用し、酸化物半導体のキャ
リア濃度を1.7×10-8/cm3、または1.0×1015/cm3のいずれかとし
、酸化物半導体層の厚さを1μm、または30nmのいずれかとした。なお、酸化物半導
体としてIn-Ga-Zn-O系の酸化物半導体を、ゲート絶縁層として100nmの厚
さの酸化窒化シリコン膜を採用した。酸化物半導体のバンドギャップを3.15eV、電
子親和力を4.3eV、比誘電率を15、電子移動度を10cm2/Vsと仮定した。酸
化窒化シリコン膜の比誘電率を4.0と仮定した。計算にはシルバコ社製デバイスシミュ
レーションソフト「Atlas」を使用した。
【0213】
なお、トップゲート構造とボトムゲート構造では、計算結果に大きな相違はない。計算結
果を
図14および
図15に示す。
図14は、キャリア濃度が1.7×10
-8/cm
3の
場合、
図15は、キャリア濃度が1.0×10
15/cm
3の場合である。
図14および
図15には、チャネル長(L)が10μmのトランジスタを基準とし、チャネル長(L)
を10μmから1μmまで変化させたときのしきい値電圧(Vth)の変化量(ΔVth
)を示している。
図14に示すとおり、酸化物半導体のキャリア濃度が1.7×10
-8
/cm
3であり、酸化物半導体層の厚さが1μmの場合は、しきい値電圧の変化量(ΔV
th)は-3.6Vであった。また、
図14に示すとおり、酸化物半導体のキャリア濃度
が1.7×10
-8/cm
3であり、酸化物半導体層の厚さが30nmの場合は、しきい
値電圧の変化量(ΔVth)は-0.2Vであった。また、
図15に示すとおり、酸化物
半導体のキャリア濃度が1.0×10
15/cm
3であり、酸化物半導体層の厚さが1μ
mの場合は、しきい値電圧の変化量(ΔVth)は-3.6Vであった。また、
図15に
示すとおり、酸化物半導体のキャリア濃度が1.0×10
15/cm
3であり、酸化物半
導体層の厚さが30nmの場合は、しきい値電圧の変化量(ΔVth)は-0.2Vであ
った。当該結果は、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体層の厚さ
を薄くすることで、短チャネル効果を抑制できることを示すものといえる。例えば、チャ
ネル長(L)が1μm程度の場合、キャリア濃度が十分に高い酸化物半導体層であっても
、その厚さを30nm程度とすれば、短チャネル効果を十分に抑制することができること
が理解される。
【0214】
本実施の形態に係る酸化物半導体をチャネル形成領域を構成する半導体材料として用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として不揮発性のラッチ回路に用いる
ことで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している論理状
態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ保持部
を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0215】
データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に書き換
え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であり、低
い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データとして
保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容易に行
うことができる。
【0216】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0217】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0218】
(実施の形態2)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路が有する素子の構
成、作製方法等について、
図16、
図17、
図18を参照して説明する。本実施の形態に
おいて、不揮発性のラッチ回路の構成は
図1と同様である。
【0219】
図16は、不揮発性のラッチ回路が有する素子の構成の一例を示す断面図である。
図16
は、不揮発性のラッチ回路が有する素子のうち、上部の酸化物半導体を用いたトランジス
タ402の構成が
図3とは異なる場合の一例である。すなわち
図16は、上部の酸化物半
導体を用いたトランジスタ402の構成をトップゲート型のトランジスタとした場合の一
例である。それ以外の構成(下部のトランジスタの構成等)は
図3と同様である。
【0220】
<不揮発性のラッチ回路が有する素子の構成>
図16は、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に酸
化物半導体を用いたトランジスタ402を有するものである。酸化物半導体以外の材料を
用いたトランジスタ160は、ラッチ部が有する第1の素子(D1)412、第2の素子
(D2)413を構成するトランジスタ、として用いることができる。酸化物半導体以外
の材料を用いることにより、高速動作が可能となる。上記不揮発性のラッチ回路が有する
他の素子についても、トランジスタ160と同様又は類似の構成とすることができる。
【0221】
また、上記不揮発性のラッチ回路が有する容量404などの素子は、トランジスタ402
又はトランジスタ160を構成する導電膜、半導体膜、絶縁膜等を利用して形成すること
ができる。なお、トランジスタ160およびトランジスタ402は、いずれもn型トラン
ジスタとして説明するが、p型トランジスタを採用しても良い。トランジスタ160は、
p型とすることが容易である。
【0222】
トランジスタ160は、半導体材料を含む基板100に設けられたチャネル形成領域11
6と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域114および高濃度不
純物領域120(これらをあわせて単に不純物領域とも呼ぶ)と、チャネル形成領域11
6上に設けられたゲート絶縁層108aと、ゲート絶縁層108a上に設けられたゲート
電極110aと、不純物領域114と電気的に接続するソース電極またはドレイン電極1
30a、および、ソース電極またはドレイン電極130bを有する。
【0223】
ここで、ゲート電極110aの側面にはサイドウォール絶縁層118が設けられている。
また、基板100の、平面で見てサイドウォール絶縁層118と重ならない領域には、高
濃度不純物領域120を有し、高濃度不純物領域120と接する金属化合物領域124を
有する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106
が設けられており、トランジスタ160を覆うように、層間絶縁層126および層間絶縁
層128が設けられている。
【0224】
ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130bは、層
間絶縁層126および層間絶縁層128に形成された開口を通じて、金属化合物領域12
4と電気的に接続されている。つまり、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース
電極またはドレイン電極130bは、金属化合物領域124を介して高濃度不純物領域1
20および不純物領域114と電気的に接続されている。
【0225】
トランジスタ402は、絶縁層168上に設けられた酸化物半導体層140と、酸化物半
導体層140上に設けられ、酸化物半導体層140と電気的に接続されているソース電極
またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと、酸化物半導体
層140、ソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電
極142bを覆うように設けられたゲート絶縁層166と、ゲート絶縁層166上の、酸
化物半導体層140と重畳する領域に設けられたゲート電極178と、を有する(
図16
参照)。
【0226】
ここで、酸化物半導体層140は水素などの不純物が十分に除去され、酸素が供給され、
高純度化されたものであることが望ましい。具体的には、二次イオン質量分析法(SIM
S:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定した酸
化物半導体層140の水素濃度は5×1019/cm3以下、望ましくは5×1018/
cm3以下、より望ましくは5×1017/cm3以下、より望ましくは1×1016/
cm3未満となるようにする。
【0227】
なお、水素濃度が十分に低減され、酸素が供給され、高純度化された酸化物半導体層14
0では、一般的なシリコンウェハ(リンやボロンなどの不純物元素が微量に添加されたシ
リコンウェハ)におけるキャリア濃度(1×1014/cm3程度)と比較して、十分に
小さいキャリア濃度の値(例えば、1×1012/cm3未満、望ましくは、1×101
1/cm3未満)をとる。
【0228】
このように、i型化または実質的にi型化された酸化物半導体を用いることで、極めて優
れたオフ電流特性のトランジスタ402を得ることができる。例えば、ドレイン電圧VD
が+1Vまたは+10Vの場合であって、ゲート電圧VGが-5Vから-20Vの範囲で
は、室温でのオフ電流は1×10-13A以下である。また、上記トランジスタは、ノー
マリーオフのトランジスタ特性を有している。従って、ゲートとソース電極間の電圧がほ
ぼ0の状態におけるオフ電流、すなわちリーク電流が、シリコンを用いたトランジスタに
比べて著しく小さい。例えば室温での単位チャネル幅リーク電流は10aA/μm以下と
なる。
【0229】
また、温度特性において高温でもオフ電流が十分低く、オン電流が十分高いものを得るこ
とができる。例えば、トランジスタ402のVG-ID特性は-25℃~150℃の範囲
において、オン電流、移動度、S値の温度依存性が少ないというデータが得られている。
また、オフ電流は上記温度範囲において、1×10-13A以下と極めて小さいデータが
得られている。これは、酸化物半導体として、水素濃度が十分に低減されて高純度化され
、キャリア濃度が十分に低い、i型化または実質的にi型化されたものを用いていること
が一つの要因と考えられる。
【0230】
このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体層140を適用し
、トランジスタ402のオフ電流を低減することにより、新たな構成の半導体装置を実現
することができる。
【0231】
また、トランジスタ402上には、層間絶縁層170および層間絶縁層172が設けられ
ている。ここで、ゲート絶縁層166、層間絶縁層170、および層間絶縁層172には
、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bにま
で達する開口が設けられており、当該開口を通じて、電極154d、電極154eが、そ
れぞれ、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142
bに接して形成されている。また、電極154d、電極154eと同様に、ゲート絶縁層
166、層間絶縁層170、および層間絶縁層172に設けられた開口を通じて、電極1
36a、電極136b、電極136cに接する電極154a、電極154b、電極154
cが形成されている。
【0232】
また、層間絶縁層172上には絶縁層156が設けられており、当該絶縁層156に埋め
込まれるように、電極158a、電極158b、電極158c、電極158dが設けられ
ている。ここで、電極158aは電極154aと接しており、電極158bは電極154
bと接しており、電極158cは電極154cおよび電極154dと接しており、電極1
58dは電極154eと接している。
【0233】
つまり、トランジスタ402のソース電極またはドレイン電極142aは、電極130c
、電極136c、電極154c、電極158c、電極154dを介して、他の要素(酸化
物半導体以外の材料を用いたトランジスタなど)と電気的に接続されている(
図16参照
)。さらに、トランジスタ402のソース電極またはドレイン電極142bは、電極15
4e、電極158dを介して、他の要素に電気的に接続されている。なお、接続に係る電
極(電極130c、電極136c、電極154c、電極158c、電極154d等)の構
成は、上記に限定されず、適宜追加、省略等が可能である。
【0234】
<不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法>
次に、上記不揮発性のラッチ回路が有する素子の作製方法の一例について説明する。以下
に示す作製方法により、上記不揮発性のラッチ回路が有する素子を作製することができる
。なおトランジスタ160の作製方法については
図4と同様であるので説明を省略する。
トランジスタ402の作製方法について
図17または
図18を参照して説明する。
【0235】
<上部トランジスタの作製方法>
次に、
図17または
図18を用いて、層間絶縁層128上にトランジスタ402を作製す
る工程について説明する。なお、
図17または
図18は、層間絶縁層128上の各種電極
や、トランジスタ402などの作製工程を示すものであるから、トランジスタ402の下
部に存在するトランジスタ160等については省略している。
【0236】
まず、層間絶縁層128、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはド
レイン電極130b、電極130c上に絶縁層132を形成する。そして、絶縁層132
に対し、ソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電極130
b、および、電極130cにまで達する開口を形成する。そして、当該開口に埋め込むよ
うに導電層を形成する。その後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて上記導電
層の一部を除去し、絶縁層132を露出させて、電極136a、電極136b、電極13
6cを形成する(
図17(A)参照)。
【0237】
絶縁層132はPVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリ
コン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タン
タル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0238】
絶縁層132の開口は、マスクを用いたエッチングなどの方法で形成することができる。
当該マスクは、フォトマスクを用いた露光などの方法によって形成することが可能である
。エッチングとしてはウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良いが
、微細加工の観点からは、ドライエッチングを用いることが好適である。
【0239】
導電層の形成は、PVD法やCVD法などの成膜法を用いて行うことができる。導電層の
形成に用いることができる材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タン
グステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料や、これらの合
金、化合物(例えば窒化物)などが挙げられる。
【0240】
より具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CV
D法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形
成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、下
部電極(ここではソース電極またはドレイン電極130a、ソース電極またはドレイン電
極130b、電極130cなど)の表面に形成されうる酸化膜を還元し、下部電極との接
触抵抗を低減させる機能を有する。
【0241】
また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備
える。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅
膜を形成してもよい。なお、いわゆるシングルダマシン法に限らず、デュアルダマシン法
などを適用してもよい。
【0242】
上記電極136a、電極136b、電極136cを形成する際には、CMPなどを用いて
、表面が平坦になるように加工することが望ましい。このように、絶縁層132、電極1
36a、電極136b、電極136cの表面を平坦化することにより、後の工程において
、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0243】
次に、絶縁層132、電極136a、電極136b、電極136cを覆うように、絶縁層
168を形成する。そして、絶縁層168上に酸化物半導体層を形成し、マスクを用いた
エッチングなどの方法によって当該酸化物半導体層を加工して、島状の酸化物半導体層1
40を形成する(
図17(B)参照)。
【0244】
絶縁層168は下地として機能するものであり、CVD法やスパッタリング法等を用いて
形成することができる。また、絶縁層168は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化
シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどを
含むように形成するのが好適である。なお、絶縁層168は、単層構造としても良いし、
積層構造としても良い。絶縁層168の厚さは特に限定されないが、例えば、10nm以
上500nm以下とすることができる。ここで、絶縁層168は必須の構成要素ではない
から、絶縁層168を設けない構成とすることも可能である。
【0245】
なお、絶縁層168に水素や水などが含まれると、水素の酸化物半導体層への侵入や、水
素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜きなどが生じ、トランジスタの特性が悪化する
おそれがある。よって、絶縁層168は、できるだけ水素や水を含まないように形成する
ことが望ましい。
【0246】
例えば、スパッタリング法などを用いる場合には、処理室内の水分を除去した状態で絶縁
層168を形成することが望ましい。また、処理室内の水分を除去するためには、クライ
オポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどの、吸着型の真空ポンプを
用いることが望ましい。ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。
クライオポンプなどを用いて排気した処理室は、水素や水などが十分に除去されているた
め、絶縁層168に含まれる不純物の濃度を低減することができる。
【0247】
また、絶縁層168を形成する際には、水素や水などの不純物が、数ppm以下、(望ま
しくは、10ppb以下)にまで低減された高純度ガスを用いることが望ましい。
【0248】
上記酸化物半導体層としては、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系や
、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-A
l-Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn
-O系や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-
O系、Zn-Mg-O系、Sn-Mg-O系、In-Mg-O系や、一元系金属酸化物で
あるIn-O系、Sn-O系、Zn-O系などの酸化物半導体を用いて形成することがで
きる。また、上記酸化物半導体にSiO2を含ませたものを用いても良い。
【0249】
また、酸化物半導体層として、InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される材料を含
む薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた
一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、GaおよびAl、Gaおよ
びMn、GaおよびCoなどを適用することができる。
【0250】
本実施の形態では、酸化物半導体層としてIn-Ga-Zn-O系の金属酸化物ターゲッ
トを用いて、非晶質の酸化物半導体層をスパッタリング法により形成することとする。な
お、非晶質の酸化物半導体層中にシリコンを添加することで、その結晶化を抑制すること
ができるから、例えば、SiO2を2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて
酸化物半導体層を形成しても良い。
【0251】
酸化物半導体層をスパッタリング法で作製するための金属酸化物ターゲットとしては、I
n2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol比]などの組成比を有する金属酸化
物ターゲットを用いることができる。その他、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1
:2[mol比]、またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol比]の
組成比を有する金属酸化物ターゲットなどを用いても良い。金属酸化物ターゲットの充填
率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上(例えば99.9%)である。充填
率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、緻密な酸化物半導体層が形成される
。
【0252】
酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、ま
たは、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具体
的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、1ppm以下(望ましく
は1ppb以下)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適である。
【0253】
酸化物半導体層の形成の際には、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板温
度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下に熱する。そして、
処理室内の水分を除去しつつ水素および水が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化
物をターゲットとして酸化物半導体層を形成する。基板を熱しながら酸化物半導体層を形
成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物濃度を低減することができる。また
、スパッタリングによる酸化物半導体層の損傷が軽減される。
【0254】
処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例え
ば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどを用いることが
できる。また、ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。クライオ
ポンプを用いて排気した処理室においては、水素や水などが除去されており、酸化物半導
体層中の不純物濃度を低減できる。
【0255】
酸化物半導体層の形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が100m
m、圧力が0.6Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素流量比率1
00%)雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源
を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も小さくなるため好ましい。酸化物半導体層の厚
さは、2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下とする。ただし、
適用する酸化物半導体材料や半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その
厚さは、用いる材料や用途などに応じて選択すればよい。
【0256】
なお、酸化物半導体層をスパッタリング法により形成する前には、アルゴンガスを導入し
てプラズマを発生させる逆スパッタを行い、絶縁層168の表面の付着物を除去するのが
好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、スパッタターゲット
にイオンを衝突させるところ、逆に、処理表面にイオンを衝突させることによってその表
面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては、アルゴン
雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、基板付近にプラズマを生成する方法など
がある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などによる雰囲気を適用し
てもよい。
【0257】
酸化物半導体層のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用
いても良い。もちろん、その両方を組み合わせて用いることもできる。酸化物半導体層を
所望の形状にエッチングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスや
エッチング液、エッチング時間、温度等)は適宜設定する。
【0258】
ドライエッチングとしては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etchi
ng)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結
合型プラズマ)エッチング法などを用いることができる。この場合にも、エッチング条件
(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極
温度等)は適宜設定する必要がある。
【0259】
ドライエッチングに用いることができるエッチングガスには、例えば、塩素を含むガス(
塩素系ガス、例えば塩素(Cl2)、三塩化硼素(BCl3)、四塩化珪素(SiCl4
)、四塩化炭素(CCl4)など)などがある。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス
、例えば四弗化炭素(CF4)、六弗化硫黄(SF6)、三弗化窒素(NF3)、トリフ
ルオロメタン(CHF3)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O2)、これらのガスに
ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いても良い
。
【0260】
ウェットエッチングに用いることができるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混
ぜた溶液、アンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)などがある。また
、ITO07N(関東化学社製)などのエッチング液を用いてもよい。
【0261】
次いで、酸化物半導体層に、第1の熱処理を行うことが望ましい。この第1の熱処理によ
って酸化物半導体層中の水(水酸基を含む)や水素などを除去することができる。第1の
熱処理の温度は、300℃以上800℃以下、好ましくは400℃以上700℃以下、よ
り好ましくは450℃以上700℃以下、より好ましくは550℃以上700℃以下とす
ることができる。
【0262】
第1の熱処理の温度を350℃以上とすることにより酸化物半導体層の脱水化または脱水
素化が行え、酸化物半導体層中の水素濃度を低減することができる。また第1の熱処理の
温度を450℃以上とすることにより、酸化物半導体層中の水素濃度をさらに低減するこ
とができる。また第1の熱処理の温度を550℃以上とすることにより、酸化物半導体層
中の水素濃度をさらに低減することができる。例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に
基板を導入し、酸化物半導体層140に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の熱
処理を行う。この間、酸化物半導体層140は大気に触れさせず、水や水素の混入が行わ
れないようにする。
【0263】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射
によって、被処理物を加熱する装置であっても良い。例えば、GRTA(Gas Rap
id Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid The
rmal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal
)装置を用いることができる。
【0264】
LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カー
ボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(
電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを
用いて熱処理を行う装置である。気体としては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のよ
うな、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0265】
例えば、第1の熱処理として、650℃~700℃の高温に熱した不活性ガス雰囲気中に
基板を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から基板を取り出すGRTA処理
を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、短
時間の熱処理であるため、基板の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる
。例えば、ガラス基板など、比較的耐熱性が低い基板を含むSOI基板を用いる場合、耐
熱温度(歪み点)を超える温度では基板のシュリンクが問題となるが、短時間の熱処理の
場合にはこれは問題とならない。
【0266】
なお、第1の熱処理を行う不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、
ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気
を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、ア
ルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.9
9999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下
)とする。
【0267】
なお、処理中に、不活性ガス雰囲気を、酸素を含む雰囲気に切り替えても良い。例えば、
第1の加熱処理に電気炉を用いる場合、加熱処理の降温時に雰囲気を切り替えることがで
きる。例えば、加熱処理時(恒温時)の雰囲気は、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオ
ン、アルゴン等)などの不活性ガス雰囲気とし、降温時に酸素を含む雰囲気に切り替える
ことができる。酸素を含む雰囲気としては、酸素ガスまたは酸素ガスと窒素ガスを混合し
た気体を用いることができる。
【0268】
この酸素を含む雰囲気を用いる場合も、雰囲気中に、水、水素などが含まれないことが好
ましい。または、用いる酸素ガス、窒素ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、
好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好まし
くは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理
を行うことで、酸素欠損に起因する欠陥を低減することができる。
【0269】
第1の熱処理の条件、または酸化物半導体層を構成する材料によっては、酸化物半導体層
が結晶化し、微結晶または多結晶となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、ま
たは80%以上の微結晶の酸化物半導体層となる場合もある。また、第1の熱処理の条件
、または酸化物半導体層を構成する材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物
半導体層となる場合もある。
【0270】
また、非晶質の酸化物半導体(例えば、酸化物半導体層の表面)に微結晶(粒径1nm以
上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体層となる
場合もある。このように、非晶質中に微結晶を混在させ、配列させることで、酸化物半導
体層の電気的特性を変化させることも可能である。
【0271】
例えば、In-Ga-Zn-O系の金属酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体層を形成
する場合には、電気的異方性を有するIn2Ga2ZnO7の結晶粒が配向した微結晶領
域を形成することで、酸化物半導体層の電気的特性を変化させることができる。上記微結
晶領域は、例えば、In2Ga2ZnO7結晶のc軸が酸化物半導体層の表面に垂直な方
向をとるように配向した領域とするのが好適である。
【0272】
このように結晶粒を配向させた領域を形成することで、酸化物半導体層の表面に平行な方
向の導電性を向上させ、酸化物半導体層の表面に垂直な方向の絶縁性を向上させることが
できる。また、このような微結晶領域は、酸化物半導体層中への水や水素などの不純物の
侵入を抑制する機能を有する。
【0273】
なお、上述の微結晶領域を有する酸化物半導体層は、GRTA処理による酸化物半導体層
の表面加熱によって形成することができる。また、Znの含有量がInまたはGaの含有
量より小さいスパッタターゲットを用いることで、より好適に形成することが可能である
。
【0274】
酸化物半導体層140に対する第1の熱処理は、島状の酸化物半導体層140に加工する
前の酸化物半導体層に行うこともできる。その場合には、第1の熱処理後に、加熱装置か
ら基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行うことになる。
【0275】
なお、上記第1の熱処理は、脱水化処理、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱
水化処理、脱水素化処理は、酸化物半導体層の形成後、酸化物半導体層140上にソース
電極またはドレイン電極を積層させた後、ソース電極またはドレイン電極上にゲート絶縁
層を形成した後、などのタイミングにおいて行うことが可能である。また、このような脱
水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0276】
次に、酸化物半導体層140に接するように導電層142を形成した後、導電層142上
に絶縁層164を形成する(
図17(C)参照)。なお、絶縁層164は形成しなくても
よい。
【0277】
導電層142は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などの
CVD法を用いて形成することができる。また、導電層142は、アルミニウム、クロム
、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素や、上述した
元素を成分とする合金等を用いて形成することができる。マンガン、マグネシウム、ジル
コニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一または複数を含む材料を用いてもよい
。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオ
ジム、スカンジウムから選ばれた元素を一または複数含有させた材料を用いてもよい。
【0278】
また、導電層142は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化
物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)
、酸化インジウム酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する場合がある)
、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、または、これらの金属酸化物材
料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0279】
導電層142は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば
、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された
2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられ
る。ここでは、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜の3層構造を適用することとする。
【0280】
なお、酸化物半導体層140と導電層142との間には、酸化物導電体層を形成してもよ
い。酸化物導電体層と導電層142は、連続して形成すること(連続成膜)が可能である
。このような酸化物導電層を設けることで、ソース領域またはドレイン領域の低抵抗化を
図ることができるため、トランジスタの高速動作が実現される。
【0281】
絶縁層164は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、
絶縁層164は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、
酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどを含むように形成するのが好適で
ある。なお、絶縁層164は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。絶縁層
164の厚さは特に限定されないが、例えば、10nm以上500nm以下とすることが
できる。
【0282】
次に、導電層142および絶縁層164を選択的にエッチングして、ソース電極またはド
レイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142b、絶縁層164a、絶縁層
164bを形成する(
図17(D)参照)。
【0283】
エッチングに用いるマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光
を用いるのが好適である。特に、チャネル長(L)が25nm未満となるような露光を行
う場合には、数nm~数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ult
raviolet)を用いてマスク形成の露光を行うのが好適である。超紫外線による露
光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル
長(L)が25nm未満となるような設計をすることが可能であり、即ちチャネル長(L
)を10nm以上1000nm以下とすることも可能である。このような方法でチャネル
長を小さくすることにより、動作速度を向上させることができる。また、上記酸化物半導
体を用いたトランジスタはオフ電流が僅かであるため、微細化による消費電力の増大を抑
制できる。
【0284】
導電層142のエッチングの際には、酸化物半導体層140が除去されないように、それ
ぞれの材料およびエッチング条件を適宜調節する。なお、材料およびエッチング条件によ
っては、当該工程において、酸化物半導体層140の一部がエッチングされ、溝部(凹部
)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0285】
また、上記マスクの使用数や工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光
マスクである多階調マスクによってレジストマスクを形成し、これを用いてエッチング工
程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは、複数の厚みを有す
る形状(階段状)となり、アッシングによりさらに変形させることができるため、複数の
エッチング工程に用いることができる。つまり、一枚の多階調マスクによって、少なくと
も二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よっ
て、露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できる
ため、工程の簡略化が図れる。
【0286】
次に、大気に触れさせることなく、酸化物半導体層140の一部に接するゲート絶縁層1
66を形成する(
図17(E)参照)。ゲート絶縁層166は、CVD法やスパッタリン
グ法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層166は、酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム
、酸化タンタルなどを含むように形成するのが好適である。なお、ゲート絶縁層166は
、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。ゲート絶縁層166の厚さは特に限
定されないが、例えば、10nm以上500nm以下とすることができる。
【0287】
なお、不純物を除去することなどによりi型化または実質的にi型化された酸化物半導体
(高純度化された酸化物半導体)は、界面準位や界面電荷に対して極めて敏感であるため
、ゲート絶縁層166には、高い品質が要求されることになる。
【0288】
例えば、マイクロ波(例えば、周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法
は、緻密で絶縁耐圧の高い高品質なゲート絶縁層166を形成できる点で好適である。高
純度化された酸化物半導体層と高品質なゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位
を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0289】
もちろん、ゲート絶縁層166として良質な絶縁層を形成できるのであれば、スパッタリ
ング法やプラズマCVD法など他の方法を適用することも可能である。また、形成後の熱
処理によって、膜質や界面特性などが改質される絶縁層を適用しても良い。いずれにして
も、ゲート絶縁層166としての膜質が良好であると共に、酸化物半導体層との界面準位
密度を低減し、良好な界面を形成できるものを設ければよい。
【0290】
このようにゲート絶縁層との界面特性を良好にするとともに、酸化物半導体の不純物、特
に水素や水などを排除することで、ゲートバイアス・熱ストレス試験(BT試験:例えば
、85℃、2×106V/cm、12時間など)に対してしきい値電圧(Vth)が変動
しない、安定なトランジスタを得ることが可能である。
【0291】
その後、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱処理を行う。熱処理の温度
は、200℃以上400℃以下、望ましくは250℃以上350℃以下である。例えば、
窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。第2の熱処理を行うと、トラン
ジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。なお、本実施の形態では、ゲー
ト絶縁層166の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理のタイミングは、
第1の熱処理の後であれば特に限定されない。
【0292】
次に、ゲート絶縁層166上の酸化物半導体層140と重畳する領域にゲート電極178
を形成する(
図18(A)参照)。ゲート電極178は、ゲート絶縁層166上に導電層
を形成した後に、当該導電層を選択的にパターニングすることによって形成することがで
きる。
【0293】
上記導電層は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのC
VD法を用いて形成することができる。また、導電層は、アルミニウム、クロム、銅、タ
ンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素や、上述した元素を成
分とする合金等を用いて形成することができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム
、ベリリウム、イットリウムのいずれか一または複数を含む材料を用いてもよい。また、
アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、ス
カンジウムから選ばれた元素を一または複数含有させた材料を用いてもよい。
【0294】
また、導電層は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物とし
ては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化
インジウム酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する場合がある)、酸化
インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシ
リコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0295】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリ
コンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構
造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。こ
こでは、チタンを含む材料を用いて導電層を形成し、ゲート電極178に加工する。
【0296】
次に、ゲート絶縁層166およびゲート電極178上に、層間絶縁層170および層間絶
縁層172を形成する(
図18(B)参照)。層間絶縁層170および層間絶縁層172
は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、窒化
酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無
機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、本実施の形態では、層間絶
縁層170と層間絶縁層172の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに
限定されない。1層としても良いし、3層以上の積層構造としても良い。
【0297】
なお、上記層間絶縁層172は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。
表面が平坦になるように層間絶縁層172を形成することで、層間絶縁層172上に、電
極や配線などを好適に形成することができるためである。
【0298】
次に、ゲート絶縁層166、層間絶縁層170、および層間絶縁層172に、電極136
a、電極136b、電極136c、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極
またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め込むように導電
層を形成する。そして、エッチングやCMPといった方法を用いて上記導電層の一部を除
去し、層間絶縁層172を露出させて、電極154a、電極154b、電極154c、電
極154d、電極154eを形成する(
図18(C)参照)。
【0299】
上記開口はマスクを用いたエッチングなどの方法で形成することができる。当該マスクは
、フォトマスクを用いた露光などの方法によって形成することが可能である。エッチング
としてはウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良いが、微細加工の
観点からは、ドライエッチングを用いることが好適である。
【0300】
導電層の形成は、PVD法やCVD法などを用いて行うことができる。導電層の形成に用
いることができる材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン
、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウムなどの導電性材料や、これらの合金、化合
物(例えば窒化物)などが挙げられる。
【0301】
具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法
により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成す
る方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、下部電
極(ここでは、電極136a、電極136b、電極136c、ソース電極またはドレイン
電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bなど)の表面に形成されうる酸化
膜を還元し、下部電極との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後に形成され
る窒化チタンは、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタンや窒化
チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。なお
、いわゆるシングルダマシン法に限らず、デュアルダマシン法を適用してもよい。
【0302】
導電層の一部を除去する際には、露出する層間絶縁層172の表面や、電極154a、電
極154b、電極154c、電極154d、電極154eの表面などが平坦になるように
加工することが望ましい。このように、表面を平坦化することで、後の工程において、良
好な電極、配線などを形成することが可能となる。
【0303】
その後、さらに絶縁層156を形成し、絶縁層156に、電極154a、電極154b、
電極154c、電極154d、電極154eにまで達する開口を形成し、当該開口に埋め
込むように導電層を形成した後、エッチングやCMPなどの方法を用いて導電層の一部を
除去し、絶縁層156を露出させて、電極158a、電極158b、電極158c、電極
158dを形成する(
図18(D)参照)。当該工程は、電極154a等を形成する場合
と同様であるから、詳細は省略する。
【0304】
上述のような方法でトランジスタ402を作製した場合、酸化物半導体層140の水素濃
度は5×1019/cm3以下となり、また、トランジスタ402のオフ電流は1×10
-13A以下となる。このように、水素濃度が十分に低減され、酸素が供給され、高純度
化された酸化物半導体層140を適用することで、優れた特性のトランジスタ402を得
ることができる。
【0305】
なお、酸化物半導体層140への酸素の供給は、水素濃度を低減した直後に行う場合は、
酸化物半導体層に水素や水などが混入するおそれがないため、極めて良好な特性の酸化物
半導体層を実現することができるという点で好適である。もちろん、良好な特性の酸化物
半導体層を実現できるのであれば、水素濃度の低減処理と、酸素の供給処理は、連続的に
行われる必要はない。例えば、これらの処理の間に別の処理を含んでいても良い。また、
これらの処理を、同時に行っても良い。
【0306】
また、下部に酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に酸化物
半導体を用いたトランジスタ402を有するため、両者の特性を併せ持つ優れた特性の不
揮発性のラッチ回路及びそれを用いた半導体装置を作製することができる。
【0307】
なお、酸化物半導体において、DOS(density of state)等の物性研
究は多くなされているが、これらの研究は、局在準位そのものを十分に減らすという思想
を含まない。開示する発明の一態様では、局在準位の原因たり得る水や水素を酸化物半導
体中より除去することで、高純度化した酸化物半導体を作製する。これは、局在準位その
ものを十分に減らすという思想に立脚するものである。そして、これによって極めて優れ
た工業製品の製造を可能とするものである。
【0308】
なお、水素や水などを除去する際には、同時に酸素が除去されてしまうことがある。この
ため、酸素欠乏により発生する金属の不対結合手に対して酸素を供給し、酸素欠陥による
局在準位を減少させることにより、酸化物半導体をさらに高純度化(i型化)するのは好
適である。たとえば、チャネル形成領域に密接して酸素過剰の酸化膜を形成し、200℃
~400℃、代表的には250℃程度の温度条件での熱処理を行うことで、当該酸化膜か
ら酸素を供給して、酸素欠陥による局在準位を減少させることが可能である。また、第2
の熱処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。第2の熱処理に続け
て、酸素雰囲気、または水素や水を十分に除去した雰囲気における降温過程を経ることで
、酸化物半導体中に酸素を供給することも可能である。
【0309】
酸化物半導体の特性を悪化させる要因は、過剰な水素による伝導帯下0.1~0.2eV
の浅い準位や、酸素欠損による深い準位、などに起因するものと考えられる。これらの欠
陥を無くすために、水素を徹底的に除去し、酸素を十分に供給するという技術思想は正し
いものであろう。
【0310】
なお、酸化物半導体は一般にn型とされているが、開示する発明の一態様では、水や水素
などの不純物を除去すると共に、酸化物半導体の構成元素である酸素を供給することでi
型化を実現する。この点、シリコンなどのように不純物を添加してのi型化ではなく、従
来にない技術思想を含むものといえる。
【0311】
本実施の形態に係るチャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いた不揮発性のラッチ回路を
用いることで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している
論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ
保持部を内蔵したラッチ回路を実現することができる。データの書き込みをトランジスタ
のスイッチングによって行うことから、実質的に書き換え回数に制限がない。また、書き
込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であり、低い電圧での動作が可能である。ま
たデータ保持部の電位を直接与えるため、データとして保持する電荷量のばらつきを小さ
く抑えることができ、またデータの読み出しを容易に行うことができる。
【0312】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0313】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0314】
(実施の形態3)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路の構成、動作につい
て、
図19を参照して説明する。
【0315】
図19(A)は、ラッチ部411と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401と
を有する不揮発性のラッチ回路400の構成を示している。
図19(B)は、不揮発性の
ラッチ回路400のタイミングチャートの例を示している。
【0316】
図19(A)は、
図1のラッチ部411の構成を具体的に示した例である。
図19(A)
は、
図1のラッチ部411の構成において、第1の素子としてインバータ412を用い、
第2の素子としてインバータ413を用いた例である。トランジスタ402の構成は、実
施の形態1又は実施の形態2と同様とすることができる。
【0317】
ラッチ部411は、インバータ412とインバータ413とを有している。インバータ4
12の出力がインバータ413の入力に電気的に接続され、インバータ413の出力がイ
ンバータ412の入力に電気的に接続されるループ構造を有している。またラッチ部41
1は、スイッチ431とスイッチ432とを有しており、スイッチ432を介してインバ
ータ413の出力がインバータ412の入力に電気的に接続されている。
【0318】
インバータ412の入力は、スイッチ431を介してラッチ回路の入力信号が与えられる
配線414に電気的に接続されている。インバータ412の出力は、ラッチ回路の出力信
号が与えられる配線415に電気的に接続されている。インバータ412の入力に接続さ
れるノードをノードPと呼ぶことにする。ノードPは、ラッチ回路の入力信号が与えられ
る配線414に電気的に接続されている。またノードPは、インバータ413の出力に電
気的に接続されているノードでもある。なお、ノードPの電位はインバータ412の入力
の電位と同電位とする。
【0319】
データ保持部401は、チャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用
いたトランジスタ402をスイッチング素子として用いている。またこのトランジスタ4
02のソース電極又はドレイン電極に電気的に接続された容量404を有している。この
トランジスタ402のソース電極及びドレイン電極の一方に容量404の電極の一方が電
気的に接続されている。トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方は、ラッチ部
のインバータ412の入力(ノードP)に電気的に接続されている。
【0320】
また、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の他方は、ラッチ回路の入力信号が与
えられる配線414にスイッチ431を介して電気的に接続されている。容量404の電
極の他方には電位Vcが与えられる。トランジスタ402と容量404が電気的に接続さ
れているノードをノードSと呼ぶことにする。
【0321】
この酸化物半導体を用いたトランジスタ402は、ラッチ部411に保持されているデー
タを、データ保持部401の容量404に書き込む機能を有している。また、トランジス
タ402は、データ保持部401の容量404に書き込んだデータを保持させる機能を有
している。また、トランジスタ402は、データ保持部401の容量404に保持されて
いるデータをラッチ部411に読み出す機能を有している。
【0322】
配線414には前段の回路から入力信号INの電位が与えられる。配線415の電位は出
力信号OUTとして後段の回路に与えられる。スイッチ431にはクロック信号φ1の電
位が与えられる。クロック信号φ1にハイレベルの電位が与えられると、スイッチ431
がオンとなる。スイッチ432にはクロック信号φ2の電位が与えられる。クロック信号
φ2にハイレベルの電位が与えられると、スイッチ432がオンとなる。トランジスタ4
02のゲートには制御信号φLSの電位が与えられる。制御信号φLSにハイレベルの電
位が与えられると、トランジスタ402がオンとなる。通常の動作期間において、クロッ
ク信号φ2はクロック信号φ1を反転した信号を有している。ここでは制御信号、クロッ
ク信号がハイレベルのときに、トランジスタ、スイッチがオンとなる例を示している。
【0323】
ラッチ部411が有するインバータ412、インバータ413にはそれぞれ、ハイレベル
の電源電圧VDD及びローレベルの電源電圧VSSが与えられている。
【0324】
次に、
図19(B)に、不揮発性のラッチ回路400が動作状態の期間(動作期間)と停
止状態の期間(非動作期間)における、入力信号IN、出力信号OUT、制御信号φ
LS
、クロック信号φ1、クロック信号φ2の電位のタイミングチャートの例を示す。またデ
ータ保持部401のノードS、ラッチ部411のノードP、ラッチ部411が有するイン
バータ412およびインバータ413の電源電圧VDD-Lの電位を併せて示す。ノード
Sは、容量404の一方の電極の電位を示している。なお容量404の他方の電極には所
定の電位Vcが与えられている。例えば接地電位が与えられている。
【0325】
図19(B)において、期間a、期間b、期間d、期間eはラッチ回路400が動作状態
の期間(動作期間)であり、期間cはラッチ回路400が停止状態の期間(非動作期間)
である。期間a、期間eはラッチ回路400の通常の動作期間であり、クロック信号φ1
、クロック信号φ2に交互にハイレベル又はローレベルの電位が与えられている。期間b
は、非動作期間の前の準備期間である。期間bを立ち下げ期間ともいう。期間dは、非動
作期間の後、電源が供給され、通常の動作期間に入るまでの準備期間である。期間dを立
ち上げ期間ともいう。
【0326】
通常の動作期間(期間a)において、クロック信号φ1にハイレベル、クロック信号φ2
にローレベルの電位が与えられると、スイッチ432がオフとなりインバータループが切
断されると共に、スイッチ431がオンとなり、入力信号の電位がインバータ412に入
力される。入力信号の電位はインバータ412で反転され、出力信号OUTとして後段の
回路に与えられる。クロック信号φ1にハイレベルの電位が与えられるときに、入力信号
の電位がハイレベルであれば、ローレベルの電位を有する出力信号が得られる。クロック
信号φ1にハイレベルの電位が与えられるときに、入力信号の電位がローレベルであれば
、ハイレベルの電位を有する出力信号が得られる。
【0327】
クロック信号φ1にローレベル、クロック信号φ2にハイレベルの電位が与えられると、
スイッチ431がオフとなると共に、スイッチ432がオンとなりインバータループが形
成され、出力信号OUTの電位が保持される(データがラッチされる。すなわちラッチ回
路の論理状態が保持される)。
【0328】
通常の動作期間において、制御信号φLSにはトランジスタ402がオフとなる電位が与
えられ、トランジスタ402がオンとなる電位は与えられない。ノードSは、以前から保
持していた電荷に応じた電位を有する。ここでは不定値とした。
【0329】
次に、非動作期間の前の準備期間(期間b)において、制御信号φLSにトランジスタ4
02がオンとなる電位が与えられると、トランジスタ402がオンとなり、ラッチ部のイ
ンバータ412の入力(ノードP)の電位がノードSに与えられる(書き込み)。ラッチ
部のインバータ412の入力(ノードP)の電位がハイレベルであれば、ノードSの電位
がハイレベルとなる。ノードSには、電位に応じた電荷が蓄積される。
【0330】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402がオフとなる電位が与えられ、トランジス
タ402がオフとなり、ノードSはフローティングの状態になる。その結果、ノードSに
蓄積された電荷はそのまま保持される(保持)。
【0331】
なお、期間bにおいて、クロック信号φ2、クロック信号φ1は期間aの終了時の電位を
保てばよい。或いは、クロック信号φ2をハイレベル、クロック信号φ1をローレベルに
固定し、期間a終了時のデータをラッチしても構わない。
【0332】
次に、非動作期間(期間c)において、電源の供給が停止され、電源電圧VDD-Lが低
下する。クロック信号φ1、クロック信号φ2、入力信号IN、出力信号OUTはVDD
-VSS間のどのような値をとっても構わない。この間、制御信号φLSの電位はトラン
ジスタ402がオフ状態となるように、ローレベルに保持される。例えば、接地電位に保
持される。非動作期間(期間c)において、トランジスタ402をオフ状態とすることに
より、ノードSに蓄積された電荷が保持される(保持)。
【0333】
次に、非動作期間の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間(期間d)において、電源
が供給され、クロック信号φ2、クロック信号φ1はローレベルに固定する。ノードP及
び出力信号OUTの電位は、電源が供給される前のノードPの電位や出力信号OUTの電
位等に依存するが、ここでは、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルであ
るとする。
【0334】
そして、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられると、トラン
ジスタ402がオンとなり、ノードSに保持されていた電位がラッチ部411に与えられ
る。具体的には、ノードSとインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配され、
インバータ412の入力(ノードP)には、ノードSに蓄積された電荷に応じた電位が与
えられる。ここでは、ノードSに蓄積された電荷がラッチ部411に分配され、インバー
タ412の入力(ノードP)の電位が上昇し、ノードSの電位は多少減少する。その結果
、インバータ412の入力(ノードP)の電位とノードSの電位は、実質的にハイレベル
の電位となる。
【0335】
そして、ラッチ部のノードPの電位がインバータ412で反転され、出力信号OUTとし
て後段の回路に与えられる。ここでは、ノードSに保持されていた電位、ラッチ部のノー
ドPに与えられる電位がハイレベルであり、ローレベルの電位を有する出力信号が得られ
る例を示している。これにより、ラッチ回路の論理状態を、非動作期間に入る前の論理状
態に戻すことができる。
【0336】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402がオフとなる電位が与えられ、トランジス
タ402がオフとなり、ノードSはフローティングの状態になる。その結果、ノードSに
蓄積された電荷はそのまま保持される(保持)。ノードSに蓄積された電荷は、次に制御
信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられるタイミングで書き換えら
れる。従って、次に制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられる
タイミングまでは、ノードSに蓄積された電荷はそのまま保持される。
【0337】
また、期間dにおいて、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えら
れた後、クロック信号φ2をハイレベルとする期間を設けても構わない。クロック信号φ
2にハイレベルの電位が与えられると、スイッチ432がオンとなりインバータループが
形成される。インバータループが形成されると、出力信号OUTおよびノードPにハイレ
ベルもしくはローレベルの電位が与えられ、保持される(データがラッチされる)。
【0338】
上述したように、ラッチ部へのデータ読みだしは、ノードSとインバータ412の入力(
ノードP)との電荷の分配によって行われる。ノードSにハイレベルの電位に応じた電荷
が蓄積されている場合は、トランジスタ402がオンとなる前のインバータ412の入力
(ノードP)の電位に依らず、ノードSとインバータ412の入力(ノードP)との電荷
の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電位が、インバータ412のしきい値
(インバータの出力が反転する入力電位)より高くなるようにする。
【0339】
また、ノードSにローレベルの電位に応じた電荷が蓄積されている場合は、トランジスタ
402がオンとなる前のインバータ412の入力(ノードP)の電位に依らず、ノードS
とインバータ412の入力(ノードP)との電荷の分配後のインバータ412の入力(ノ
ードP)の電位が、インバータ412のしきい値(インバータの出力が反転する入力電位
)より低くなるようにする。
【0340】
このようにするには、例えば、ノードSが有する容量が、ノードPが有する容量より大き
いことが好ましい。すなわち、ノードSが電気的に接続する容量404の容量値が、ノー
ドPが電気的に接続するインバータ412の入力容量(インバータが有するトランジスタ
のゲート容量)の容量値より大きいことが好ましい。また、期間dにおいて、電位Vcを
VDDとVSSの間の値とする期間を設けることも有効である。これにより読み出し動作
をより安定に行うことが可能となる。
【0341】
こうすることで、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルである場合に限ら
ず、ノードPがハイレベル、出力信号OUTがローレベルである場合についても、ラッチ
部にデータを読み出すことが可能である。また、ノードSにハイレベルの電位に応じた電
荷が蓄積された場合に限らず、ローレベルの電位に応じた電荷が蓄積された場合であって
も、ラッチ部にデータを読み出すことが可能である。
【0342】
次に、クロック信号φ1、クロック信号φ2に、交互にハイレベル、ローレベルの電位が
与えられ、通常の動作状態(期間e)となる。通常の動作期間(期間e)の開始時には、
クロック信号φ1、クロック信号φ2は、その前の通常の動作期間(期間a)の終了時と
同じ電位(同じ状態)から開始してもよいし、期間aの終了時とは反転した電位(次の状
態)から開始しても構わない。
【0343】
本実施の形態に係るチャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いた不揮発性のラッチ回路を
用いることで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している
論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ
保持部を内蔵したラッチ回路を実現することができる。データの書き込みをトランジスタ
のスイッチングによって行うことから、実質的に書き換え回数に制限がない。また、書き
込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であり、低い電圧での動作が可能である。ま
たデータ保持部の電位を直接与えるため、データとして保持する電荷量のばらつきを小さ
く抑えることができ、またデータの読み出しを容易に行うことができる。
【0344】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0345】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0346】
(実施の形態4)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路の動作について、図
20(A)を参照して説明する。不揮発性のラッチ回路の構成は
図19(A)と同じであ
り、タイミングチャートが
図19(B)とは異なる例を示している。
【0347】
図20(A)には、不揮発性のラッチ回路400が動作状態の期間(動作期間)と停止状
態の期間(非動作期間)における、入力信号IN、出力信号OUT、制御信号φ
LS、ク
ロック信号φ1、クロック信号φ2の電位のタイミングチャートの例を示す。またデータ
保持部401のノードS、ラッチ部411のノードP、電源電圧VDD-Lの電位を併せ
て示す。ノードSは、容量404の一方の電極の電位を示している。なお容量404の他
方の電極には電位Vcが与えられている。
【0348】
図20(A)において、期間a、期間b、期間d、期間eはラッチ回路400が動作状態
の期間(動作期間)であり、期間cはラッチ回路400が停止状態の期間(非動作期間)
である。期間a、期間eはラッチ回路400の通常の動作期間であり、クロック信号φ1
、クロック信号φ2に交互にハイレベル又はローレベルの電位が与えられている。期間b
は、非動作期間の前の準備期間である。期間bを立ち下げ期間ともいう。期間dは、非動
作期間の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間である。期間dを立ち上げ期間ともい
う。
【0349】
図20(A)において、期間a、期間b、期間cの動作は、
図19(B)と同様である。
次に、非動作期間の後、電源が供給され、通常の動作期間に入るまでの準備期間(期間d
)において、クロック信号φ2、クロック信号φ1はローレベルに固定する。ノードP及
び出力信号OUTの電位は、電源が供給される前のノードPの電位や出力信号OUTの電
位等に依存するが、ここでは、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルであ
るとする。
【0350】
そして、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられると、トラン
ジスタ402がオンとなり、ノードSに保持されていた電位がラッチ部411に与えられ
る。具体的には、ノードSとインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配され、
インバータ412の入力(ノードP)には、ノードSに蓄積された電荷に応じた電位が与
えられる。ここでは、ノードSに蓄積された電荷がラッチ部411に分配され、インバー
タ412の入力(ノードP)の電位が上昇し、ノードSの電位は多少減少する。
【0351】
その結果、インバータ412の入力(ノードP)の電位とノードSの電位は、実質的にハ
イレベルの電位となる。そして、ラッチ部のノードPの電位がインバータ412で反転さ
れ、出力信号OUTとして後段の回路に与えられる。ここでは、ノードSに保持されてい
た電位、ラッチ部のノードPに与えられる電位がハイレベルであり、ローレベルの電位を
有する出力信号が得られる例を示している。これにより、ラッチ回路の論理状態を、非動
作期間に入る前の論理状態に戻すことができる。
【0352】
次に、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられたままの状態で
、クロック信号φ2にハイレベルの電位が与えられる。クロック信号φ2にハイレベルの
電位が与えられると、スイッチ432がオンとなりインバータループが形成される。イン
バータループが形成されると、出力信号OUTおよびノードPにハイレベルもしくはロー
レベルの電位が与えられ、保持される(データがラッチされる)。
【0353】
特に、ノードSとインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配された結果、イン
バータ412の入力(ノードP)がハイレベルもしくはローレベルから多少ずれた電位と
なっていても、あらためてハイレベルもしくはローレベルの電位が供給される。そしてノ
ードPの電位がノードSに与えられる。これにより、ノードSがハイレベルもしくはロー
レベルから多少ずれた電位となっていても、あらためてハイレベルもしくはローレベルの
電位が供給される。その結果、ノードSの電位を変動前の状態に戻す(再書き込みとも呼
ぶ)ことができる。
【0354】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402がオフとなる電位が与えられ、トランジス
タ402がオフとなり、ノードSはフローティングの状態になる。その結果、ノードSに
蓄積された電荷はそのまま保持される(保持)。ノードSに蓄積された電荷は、次に制御
信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられるタイミングで書き換えら
れる。従って、次に制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられる
タイミングまでは、ノードSに蓄積された電荷はそのまま保持される。
【0355】
上述したように、ラッチ部へのデータ読みだしは、ノードSとインバータ412の入力(
ノードP)との電荷の分配によって行われる。ノードSにハイレベルの電位に応じた電荷
が蓄積されている場合は、トランジスタ402がオンとなる前のインバータ412の入力
(ノードP)の電位に依らず、ノードSとインバータ412の入力(ノードP)との電荷
の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電位が、インバータ412のしきい値
(インバータの出力が反転する入力電位)より高くなるようにする。
【0356】
また、ノードSにローレベルの電位に応じた電荷が蓄積されている場合は、トランジスタ
402がオンとなる前のインバータ412の入力(ノードP)の電位に依らず、ノードS
とインバータ412の入力(ノードP)との電荷の分配後のインバータ412の入力(ノ
ードP)の電位が、インバータ412のしきい値(インバータの出力が反転する入力電位
)より低くなるようにする。
【0357】
このようにするには、例えば、ノードSが有する容量が、ノードPが有する容量より大き
いことが好ましい。すなわち、ノードSが電気的に接続する容量404の容量値が、ノー
ドPが電気的に接続するインバータ412の入力容量(インバータが有するトランジスタ
のゲート容量)の容量値より大きいことが好ましい。また、期間dにおいて、電位Vcを
VDDとVSSの間の値とする期間を設けることも有効である。これにより読み出し動作
をより安定に行うことが可能となる。
【0358】
こうすることで、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルである場合に限ら
ず、ノードPがハイレベル、出力信号OUTがローレベルである場合についても、ラッチ
部にデータを読み出すことが可能である。また、ノードSにハイレベルの電位に応じた電
荷が蓄積された場合に限らず、ローレベルの電位に応じた電荷が蓄積された場合であって
も、ラッチ部にデータを読み出すことが可能である。
【0359】
次に、クロック信号φ1、クロック信号φ2に、交互にハイレベル、ローレベルの電位が
与えられ、通常の動作状態(期間e)となる。通常の動作期間(期間e)の開始時には、
クロック信号φ1、クロック信号φ2は、その前の通常の動作期間(期間a)の終了時と
同じ電位(同じ状態)から開始してもよいし、期間aの終了時とは反転した電位(次の状
態)から開始しても構わない。
【0360】
本実施の形態に係るチャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いた不揮発性のラッチ回路を
用いることで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している
論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ
保持部を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0361】
また、データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に
書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であ
り、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データ
として保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容
易に行うことができる。
【0362】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0363】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0364】
(実施の形態5)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路の動作について、図
20(B)を参照して説明する。不揮発性のラッチ回路の構成は
図19(A)と同じであ
り、タイミングチャートが
図19(B)、
図20(A)とは異なる例を示している。
【0365】
図20(B)には、不揮発性のラッチ回路400が動作状態の期間(動作期間)と停止状
態の期間(非動作期間)における、入力信号IN、出力信号OUT、制御信号φ
LS、ク
ロック信号φ1、クロック信号φ2の電位のタイミングチャートの例を示す。またデータ
保持部401のノードS、ラッチ部411のノードP、電源電圧VDD-Lの電位、容量
404の他方の電極の電位Vcを併せて示す。ノードSは、容量404の一方の電極の電
位を示している。
【0366】
図20(B)において、期間a、期間b、期間d、期間eはラッチ回路400が動作状態
の期間(動作期間)であり、期間cはラッチ回路400が停止状態の期間(非動作期間)
である。期間a、期間eはラッチ回路400の通常の動作期間であり、クロック信号φ1
、クロック信号φ2に交互にハイレベル又はローレベルの電位が与えられている。期間b
は、非動作期間の前の準備期間である。期間bを立ち下げ期間ともいう。期間dは、非動
作期間の後、電源が供給され、通常の動作期間に入るまでの準備期間である。期間dを立
ち上げ期間ともいう。
【0367】
図20(B)において、期間a、期間b、期間cの動作は、
図19(B)と同様である。
次に、非動作期間の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間(期間d)において、電源
が供給され、クロック信号φ2、クロック信号φ1はローレベルに固定する。ノードP及
び出力信号OUTの電位は、電源が供給される前のノードPの電位や出力信号OUTの電
位等に依存するが、ここでは、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルであ
るとする。
【0368】
そして、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられると、トラン
ジスタ402がオンとなり、ノードSに保持されていた電位がラッチ部411に与えられ
る。具体的には、ノードSとインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配される
。そして、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられるタイミン
グで、容量の他方の電極の電位Vcに所定の電位を与える。電位Vcは、ローレベルの電
位から上昇させ、ローレベルとハイレベルの間の電位にする。
【0369】
これにより、インバータ412の入力(ノードP)には、ノードSとの電荷の分配によっ
て決まる電位に、容量の他方の電極の電位Vcの増分を加味した電位が与えられる。ここ
では、ノードSに蓄積された電荷がラッチ部411に分配されるとともに、電位Vcに所
定の電位が与えられることで、インバータ412の入力(ノードP)の電位が上昇し、ノ
ードSの電位は多少減少する。その結果、インバータ412の入力(ノードP)の電位と
ノードSの電位は、実質的にハイレベルの電位となる。
【0370】
そして、ラッチ部のノードPの電位がインバータ412で反転され、出力信号OUTとし
て後段の回路に与えられる。これにより、ラッチ回路の論理状態を、非動作期間に入る前
の論理状態に戻すことができる。その後、容量の他方の電極の電位Vcを戻し、ローレベ
ルの電位にする。
【0371】
次に、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられたままの状態で
、クロック信号φ2にハイレベルの電位が与えられる。クロック信号φ2にハイレベルの
電位が与えられると、スイッチ432がオンとなりインバータループが形成される。イン
バータループが形成されると出力信号OUTおよびノードPにハイレベルもしくはローレ
ベルの電位が与えられ、保持される(データがラッチされる)。
【0372】
特に、ノードSとインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配された結果、イン
バータ412の入力(ノードP)がハイレベルもしくはローレベルから多少ずれた電位と
なっていても、あらためてハイレベルもしくはローレベルの電位が供給される。そしてノ
ードPの電位がノードSに与えられる。これにより、ノードSがハイレベルもしくはロー
レベルから多少ずれた電位となっていても、あらためてハイレベルもしくはローレベルの
電位が供給される。その結果、ノードSの電位を変動前の状態に戻す(再書き込みとも呼
ぶ)ことができる。
【0373】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402がオフとなる電位が与えられ、トランジス
タ402がオフとなり、ノードSはフローティングの状態になる。その結果、ノードSに
蓄積された電荷はそのまま保持される(保持)。ノードSに蓄積された電荷は、次に制御
信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられるタイミングで書き換えら
れる。従って、次に制御信号φLSにトランジスタ402がオンとなる電位が与えられる
タイミングまでは、ノードSに蓄積された電荷はそのまま保持される。
【0374】
上述したように、ラッチ部へのデータ読みだしは、ノードSとインバータ412の入力(
ノードP)との電荷の分配と電位Vcの制御によって行われる。ノードSにハイレベルの
電位に応じた電荷が蓄積されている場合は、トランジスタ402がオンとなる前のインバ
ータ412の入力(ノードP)の電位に依らず、ノードSとインバータ412の入力(ノ
ードP)との電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電位が、インバータ
412のしきい値(インバータの出力が反転する入力電位)より高くなるようにする。
【0375】
また、ノードSにローレベルの電位に応じた電荷が蓄積されている場合は、トランジスタ
402がオンとなる前のインバータ412の入力(ノードP)の電位に依らず、ノードS
とインバータ412の入力(ノードP)との電荷の分配後のインバータ412の入力(ノ
ードP)の電位が、インバータ412のしきい値(インバータの出力が反転する入力電位
)より低くなるようにする。
【0376】
このようにするには、例えば、ノードSが有する容量が、ノードPが有する容量より大き
いことが好ましい。すなわち、ノードSが電気的に接続する容量404の容量値が、ノー
ドPが電気的に接続するインバータ412の入力容量(インバータが有するトランジスタ
のゲート容量)の容量値より大きいことが好ましい。また、期間dにおいて、電位Vcを
VDDとVSSの間の値とする期間を設けることも有効である。これにより読み出し動作
をより安定に行うことが可能となる。
【0377】
こうすることで、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルである場合に限ら
ず、ノードPがハイレベル、出力信号OUTがローレベルである場合についても、ラッチ
部にデータを読み出すことが可能である。また、ノードSにハイレベルの電位に応じた電
荷が蓄積された場合に限らず、ローレベルの電位に応じた電荷が蓄積された場合であって
も、ラッチ部にデータを読み出すことが可能である。
【0378】
特に、本実施の形態で説明したように、制御信号φLSにトランジスタ402がオンとな
る電位が与えられるタイミングで、容量の他方の電極の電位Vcに所定の電位を与えるこ
とにより、読み出しをより安定に行うことが可能となる。
【0379】
例えば、容量404の容量値が小さい場合や、電源供給を停止する期間が長い場合におい
て、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電位と、インバータ412の
しきい値(インバータの出力が反転する入力電位)との大小関係を保つことが難しくなり
、読み出しの安定性が低下する可能性がある。
【0380】
そのような場合であっても、容量の他方の電極の電位Vcに所定の電位を与えることで、
上述した電位の大小関係を保ち、また、その電位差をなるべく大きく保つように制御する
ことができる。その結果、安定した読み出しを行うことが可能である。つまり、より小さ
い容量値の容量に対しても動作が可能となり、小型化が可能である。あるいは、データ保
持期間をより長くすることが可能である。
【0381】
なお、容量の他方の電極の電位Vcを戻し、ローレベルの電位にするタイミングは、クロ
ック信号φ2にハイレベルの電位が与えられた後でも構わない。制御信号φLSにトラン
ジスタ402がオフとなる電位が与えられる前にローレベルの電位に戻せばよい。
【0382】
次に、クロック信号φ1、クロック信号φ2に、交互にハイレベル、ローレベルの電位が
与えられ、通常の動作状態(期間e)となる。通常の動作期間(期間e)の開始時には、
クロック信号φ1、クロック信号φ2は、その前の通常の動作期間(期間a)の終了時と
同じ電位(同じ状態)から開始してもよいし、期間aの終了時とは反転した電位(次の状
態)から開始しても構わない。
【0383】
本実施の形態に係るチャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いた不揮発性のラッチ回路を
用いることで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している
論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ
保持部を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0384】
また、データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に
書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であ
り、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データ
として保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容
易に行うことができる。また、データ保持部の容量をより小さい容量値にすることが可能
となり、小型化が可能である。
【0385】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0386】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0387】
(実施の形態6)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路を複数有する論理回
路の構成について、
図21を参照して説明する。
【0388】
図21は、ラッチ部411と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401とを有す
る不揮発性のラッチ回路400を二つ有する論理回路の構成を示している。この論理回路
はD-FFと呼ばれ、例えば、CPUや各種論理回路内でレジスタとして使用される。
【0389】
データ保持部401の構成は、
図1と同様である。ラッチ部411の構成は、
図1のラッ
チ部411の構成において、第1の素子としてNANDを用い、第2の素子としてクロッ
クドインバータを用いた例である。
【0390】
ラッチ部411は、NAND412とクロックドインバータ413とを有している。NA
ND412の出力がクロックドインバータ413の入力に電気的に接続され、クロックド
インバータ413の出力がNAND412の入力に電気的に接続されるループ構造を有し
ている。またラッチ部411は、アナログスイッチ431を有している。
【0391】
NAND412の入力の一つは、アナログスイッチ431を介してラッチ回路400の入
力信号が与えられる配線414に電気的に接続されている。NAND412の出力は、ラ
ッチ回路400の出力信号が与えられる配線415に電気的に接続されている。NAND
412の入力の他の一つは、信号RSTBが与えられる配線に電気的に接続されている。
アナログスイッチ431にはクロック信号とクロック信号の反転信号が与えられる。クロ
ックドインバータ413にはクロック信号とクロック信号の反転信号が与えられる。
【0392】
図21に示す論理回路は、上記の不揮発性のラッチ回路400として、不揮発性のラッチ
回路400aと不揮発性のラッチ回路400bとを有している。不揮発性のラッチ回路4
00aは、前段の回路から入力信号の電位が与えられる配線414に電気的に接続してい
る。不揮発性のラッチ回路400aの出力信号の電位が与えられる配線415は、不揮発
性のラッチ回路400bの入力信号の電位が与えられる配線414に電気的に接続してい
る。不揮発性のラッチ回路400bは、後段の回路に不揮発性のラッチ回路400bの出
力信号の電位を与える配線415に電気的に接続している。
【0393】
不揮発性のラッチ回路400aが有するアナログスイッチ431にはクロック信号φ1と
クロック信号の反転信号φ1bが与えられ、クロックドインバータ413にはクロック信
号φ2とクロック信号の反転信号φ2bが与えられる。また、不揮発性のラッチ回路40
0bが有するアナログスイッチ431にはクロック信号φ2とクロック信号の反転信号φ
2bが与えられ、クロックドインバータ413にはクロック信号φ1とクロック信号の反
転信号φ1bが与えられる。
【0394】
本実施の形態に係る酸化物半導体をチャネル形成領域を構成する半導体材料として用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として不揮発性のラッチ回路に用いる
ことで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している論理状
態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ保持部
を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0395】
また、データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に
書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であ
り、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データ
として保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容
易に行うことができる。
【0396】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0397】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0398】
(実施の形態7)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路の構成について、図
22を参照して説明する。
図22は、
図1とは異なる例を示している。
図22は、ラッチ
部411と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401とを有する不揮発性のラッ
チ回路400の構成を示している。
【0399】
図22に示す不揮発性のラッチ回路400は、第1の素子(D1)412の出力が第2の
素子(D2)413の入力に電気的に接続され、第2の素子(D2)413の出力が第1
の素子(D1)412の入力に電気的に接続されるループ構造を有するラッチ部411と
、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401とを有している。
【0400】
第1の素子(D1)412の入力は、ラッチ回路の入力信号が与えられる配線414に電
気的に接続されている。第1の素子(D1)412の出力は、ラッチ回路の出力信号が与
えられる配線415に電気的に接続されている。
【0401】
第1の素子(D1)412の入力が複数ある場合は、そのうちの一をラッチ回路の入力信
号が与えられる配線414に電気的に接続することができる。第2の素子(D2)413
の入力が複数ある場合は、そのうちの一を第1の素子(D1)412の出力に電気的に接
続することができる。
【0402】
第1の素子(D1)412は、入力された信号を反転したものが出力となる素子を用いる
ことができる。例えば、第1の素子(D1)412には、インバータ、NAND(ナンド
)、NOR(ノア)、クロックドインバータ等を用いることができる。また、第2の素子
(D2)413は、入力された信号を反転したものが出力となる素子を用いることができ
る。例えば、第2の素子(D2)413には、インバータ、NAND(ナンド)、NOR
(ノア)、クロックドインバータ等を用いることができる。
【0403】
データ保持部401は、チャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用
いたトランジスタ402a、トランジスタ402bをスイッチング素子として用いている
。またこのトランジスタ402aのソース電極又はドレイン電極に電気的に接続された容
量404a、及びトランジスタ402bのソース電極又はドレイン電極に電気的に接続さ
れた容量404bを有している。
【0404】
このトランジスタ402aのソース電極及びドレイン電極の一方に容量404aの電極の
一方が電気的に接続され、トランジスタ402bのソース電極及びドレイン電極の一方に
容量404bの電極の一方が電気的に接続されている。トランジスタ402aのソース電
極及びドレイン電極の他方は、第1の素子(D1)412の入力やラッチ回路の入力信号
が与えられる配線414に電気的に接続されている。トランジスタ402bのソース電極
及びドレイン電極の他方は、第1の素子(D1)412の出力やラッチ回路の出力信号が
与えられる配線415に電気的に接続されている。容量404aの電極の他方、及び容量
404bの電極の他方には電位Vcが与えられる。
【0405】
この酸化物半導体を用いたトランジスタ402a、トランジスタ402bは、ラッチ部4
11に保持されているデータを、データ保持部401の容量404a、容量404bに書
き込む機能を有している。また、トランジスタ402a、トランジスタ402bは、デー
タ保持部401の容量404a、容量404bに書き込んだデータを保持させる機能を有
している。また、トランジスタ402a、トランジスタ402bは、データ保持部401
の容量404a、容量404bに保持されているデータをラッチ部411に読み出す機能
を有している。
【0406】
ラッチ部411に保持されているデータの、データ保持部401への書き込み、保持、デ
ータ保持部401からラッチ部411へのデータの読み出し、データの書き換えの動作に
ついて説明する。まず、トランジスタ402a、トランジスタ402bのゲート電極にそ
れぞれのトランジスタがオン状態となる電位を供給し、トランジスタ402a、トランジ
スタ402bをオン状態とする。
【0407】
これにより、ラッチ部に保持されているデータ、すなわちラッチ部に保持されている第1
の素子(D1)412の入力の電位が容量404aの一方の電極に与えられ、ラッチ部に
保持されている第1の素子(D1)412の出力の電位が容量404bの一方の電極に与
えられる。その結果、容量404aの一方の電極には、第1の素子(D1)412の入力
の電位に応じた電荷が蓄積され、容量404bの一方の電極には、第1の素子(D1)4
12の出力の電位に応じた電荷が蓄積される(書き込み)。
【0408】
その後、トランジスタ402a、トランジスタ402bのゲート電極の電位をそれぞれの
トランジスタがオフ状態となる電位として、トランジスタ402a、トランジスタ402
bをオフ状態とすることにより、容量404a、容量404bの一方の電極に蓄積された
電荷が保持される(保持)。
【0409】
また、トランジスタ402a、トランジスタ402bのゲート電極にそれぞれのトランジ
スタがオン状態となる電位を供給し、トランジスタ402a、トランジスタ402bをオ
ン状態とすることにより、容量404aの一方の電極と第1の素子(D1)412の入力
とで電荷が分配されると共に、容量404bの一方の電極と第1の素子(D1)412の
出力とで電荷が分配される。その結果、第1の素子(D1)412の入力および出力には
、容量404a、容量404bの一方の電極に蓄積された電荷に応じた電位が与えられる
。その結果、データの読み出しを行うことができる(読み出し)。データの書き換えは、
上記データの書き込みおよび保持と同様に行うことができる。
【0410】
本実施の形態に係る酸化物半導体をチャネル形成領域を構成する半導体材料として用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として不揮発性のラッチ回路に用いる
ことで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している論理状
態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ保持部
を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0411】
また、データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に
書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であ
り、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データ
として保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容
易に行うことができる。
【0412】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0413】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0414】
(実施の形態8)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路の構成、動作につい
て、
図23、
図24を参照して説明する。
【0415】
図23は、ラッチ部411と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401とを有す
る不揮発性のラッチ回路400の構成を示している。
図24は、不揮発性のラッチ回路4
00のタイミングチャートの例を示している。
【0416】
図23は、
図22のラッチ部411の構成を具体的に示した例である。
図23は、
図22
のラッチ部411の構成において、第1の素子としてインバータ412を用い、第2の素
子としてインバータ413を用いた例である。トランジスタ402a、トランジスタ40
2bの構成は、実施の形態1又は実施の形態2と同様とすることができる。
【0417】
ラッチ部411は、インバータ412とインバータ413とを有している。インバータ4
12の出力がインバータ413の入力に電気的に接続され、インバータ413の出力がイ
ンバータ412の入力に電気的に接続されるループ構造を有している。またラッチ部41
1は、スイッチ431とスイッチ432とを有しており、スイッチ432を介してインバ
ータ413の出力がインバータ412の入力に電気的に接続されている。
【0418】
インバータ412の入力は、スイッチ431を介してラッチ回路の入力信号が与えられる
配線414に電気的に接続されている。インバータ412の出力は、ラッチ回路の出力信
号が与えられる配線415に電気的に接続されている。インバータ412の入力に接続さ
れるノードをノードPと呼ぶことにする。ノードPは、ラッチ回路の入力信号が与えられ
る配線414に電気的に接続されている。またノードPは、インバータ413の出力に電
気的に接続されているノードでもある。なお、ノードPの電位はインバータ412の入力
の電位と同電位とする。
【0419】
データ保持部401は、チャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用
いたトランジスタ402a、トランジスタ402bをスイッチング素子として用いている
。またこのトランジスタ402aのソース電極又はドレイン電極に電気的に接続された容
量404a、及びトランジスタ402bのソース電極又はドレイン電極に電気的に接続さ
れた容量404bを有している。
【0420】
このトランジスタ402aのソース電極及びドレイン電極の一方に容量404aの電極の
一方が電気的に接続され、トランジスタ402bのソース電極及びドレイン電極の一方に
容量404bの電極の一方が電気的に接続されている。トランジスタ402aのソース電
極及びドレイン電極の他方は、ラッチ回路の入力信号が与えられる配線414やラッチ部
のインバータ412の入力(ノードP)に電気的に接続されている。
【0421】
トランジスタ402bのソース電極及びドレイン電極の他方は、ラッチ回路の出力信号が
与えられる配線415やラッチ部のインバータ412の出力に電気的に接続されている。
容量404aの電極の他方、及び容量404bの電極の他方には電位Vcが与えられる。
トランジスタ402aと容量404a、トランジスタ402bと容量404bがそれぞれ
電気的に接続されているノードをノードS1、ノードS2と呼ぶことにする。
【0422】
この酸化物半導体を用いたトランジスタ402a、トランジスタ402bは、ラッチ部4
11に保持されているデータを、データ保持部401の容量404a、容量404bに書
き込む機能を有している。また、トランジスタ402a、トランジスタ402bは、デー
タ保持部401の容量404a、容量404bに書き込んだデータを保持させる機能を有
している。また、トランジスタ402a、トランジスタ402bは、データ保持部401
の容量404a、容量404bに保持されているデータをラッチ部411に読み出す機能
を有している。
【0423】
配線414には前段の回路から入力信号INの電位が与えられる。配線415の電位は出
力信号OUTとして後段の回路に与えられる。スイッチ431にはクロック信号φ1の電
位が与えられる。クロック信号φ1にハイレベルの電位が与えられると、スイッチ431
がオンとなる。スイッチ432にはクロック信号φ2の電位が与えられる。クロック信号
φ2にハイレベルの電位が与えられると、スイッチ432がオンとなる。トランジスタ4
02a、トランジスタ402bのゲートにはそれぞれ制御信号φLSの電位が与えられる
。
【0424】
制御信号φLSにハイレベルの電位が与えられると、それぞれのトランジスタがオンとな
る。通常の動作期間において、クロック信号φ2はクロック信号φ1を反転した信号を有
している。ここでは制御信号、クロック信号がハイレベルのときに、トランジスタ、スイ
ッチがオンとなる例を示している。
【0425】
ラッチ部411が有するインバータ412、インバータ413にはそれぞれ、ハイレベル
の電源電圧VDD及びローレベルの電源電圧VSSが与えられている。
【0426】
次に、
図24(A)、
図24(B)に、不揮発性のラッチ回路400が動作状態の期間(
動作期間)と停止状態の期間(非動作期間)における、入力信号IN、出力信号OUT、
制御信号φ
LS、クロック信号φ1、クロック信号φ2の電位のタイミングチャートの例
を示す。またデータ保持部401のノードS1、ノードS2、ラッチ部411のノードP
、ラッチ部411が有するインバータ412、インバータ413の電源電圧VDD-Lの
電位を併せて示す。
【0427】
ノードS1は、容量404aの一方の電極の電位を示している。ノードS2は、容量40
4bの一方の電極の電位を示している。なお容量404a、容量404bの他方の電極に
はそれぞれ所定の電位Vcが与えられている。例えば接地電位が与えられている。
【0428】
先ず
図24(A)について説明する。
図24(A)において、期間a、期間b、期間d、
期間eはラッチ回路400が動作状態の期間(動作期間)であり、期間cはラッチ回路4
00が停止状態の期間(非動作期間)である。期間a、期間eはラッチ回路400の通常
の動作期間であり、クロック信号φ1、クロック信号φ2に交互にハイレベル又はローレ
ベルの電位が与えられている。期間bは、非動作期間の前の準備期間である。期間bを立
ち下げ期間ともいう。期間dは、非動作期間の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間
である。期間dを立ち上げ期間ともいう。
【0429】
通常の動作期間(期間a)において、クロック信号φ1にハイレベル、クロック信号φ2
にローレベルの電位が与えられると、スイッチ432がオフとなりインバータループが切
断されると共に、スイッチ431がオンとなり、入力信号の電位がインバータ412に入
力される。入力信号の電位はインバータ412で反転され、出力信号OUTとして後段の
回路に与えられる。クロック信号φ1にハイレベルの電位が与えられるときに、入力信号
の電位がハイレベルであれば、ローレベルの電位を有する出力信号が得られる。クロック
信号φ1にハイレベルの電位が与えられるときに、入力信号の電位がローレベルであれば
、ハイレベルの電位を有する出力信号が得られる。
【0430】
クロック信号φ1にローレベル、クロック信号φ2にハイレベルの電位が与えられると、
スイッチ431がオフとなると共に、スイッチ432がオンとなりインバータループが形
成され、出力信号OUTの電位が保持される(データがラッチされる。すなわちラッチ回
路の論理状態が保持される。)。
【0431】
通常の動作期間において、制御信号φLSにはトランジスタ402a、トランジスタ40
2bがオフとなる電位が与えられ、トランジスタ402a、トランジスタ402bがオン
となる電位は与えられない。ノードS1、ノードS2は、以前から保持していた電荷に応
じた電位を有する。ここでは不定値とした。
【0432】
次に、非動作期間の前の準備期間(期間b)において、制御信号φLSにトランジスタ4
02a、トランジスタ402bがオンとなる電位が与えられると、トランジスタ402a
、トランジスタ402bがオンとなる。これにより、ラッチ部のインバータ412の入力
(ノードP)の電位が容量404aの一方の電極(ノードS1)に与えられ、ラッチ部の
インバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位が容量404
bの一方の電極(ノードS2)に与えられる。
【0433】
その結果、容量404aには、ラッチ部のインバータ412の入力(ノードP)の電位に
応じた電荷が蓄積され、容量404bには、ラッチ部のインバータ412の出力(或いは
出力信号が与えられる配線415)の電位に応じた電荷が蓄積される(書き込み)。例え
ば、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオンとなる電位が
与えられるタイミングで、ラッチ部のインバータ412の入力(ノードP)の電位がハイ
レベルであればノードS1の電位がハイレベルとなる。またラッチ部のインバータ412
の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位がローレベルであればノードS
2の電位がローレベルとなる。
【0434】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオフとなる電
位が与えられ、それぞれのトランジスタがオフとなり、ノードS1、ノードS2はフロー
ティングの状態になる。その結果、ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷はそのまま
保持される(保持)。
【0435】
なお、期間bにおいて、クロック信号φ2、クロック信号φ1は期間aの終了時の電位を
保てばよい。或いは、クロック信号φ2をハイレベル、クロック信号φ1をローレベルに
固定し、期間a終了時のデータをラッチしても構わない。
【0436】
次に、非動作期間(期間c)において、電源の供給が停止され、ラッチ部411が有する
インバータ412、インバータ413の電源電圧VDD-Lが低下する。クロック信号φ
1、クロック信号φ2、入力信号IN、出力信号OUT、ノードPの電位はVDD-VS
S間のどのような値をとっても構わない。この間、制御信号φLSの電位は、トランジス
タ402a,402bがオフ状態となるように、ローレベルに保持される。例えば、接地
電位に保持される。非動作期間(期間c)において、トランジスタ402a,402bを
オフ状態とすることにより、ノードS1、S2に蓄積された電荷が保持される(保持)。
【0437】
次に、非動作期間の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間(期間d)に入る。
図24
(A)には、制御信号φ
LSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオンとな
る電位が与えられるタイミングでノードP、出力信号OUTの電位がローレベルである場
合の例を示す。
【0438】
期間dにおいて、ラッチ部411が有するインバータ412、インバータ413に電源が
供給される前に、クロック信号φ2がハイレベル、クロック信号φ1がローレベルに固定
される。この状態で、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bが
オンとなる電位が与えられると、それぞれのトランジスタがオンとなり、ノードS1、ノ
ードS2に保持されていた電位がそれぞれラッチ部411に与えられる。
【0439】
具体的には、ノードS1とインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配され、イ
ンバータ412の入力(ノードP)には、ノードS1に蓄積された電荷に応じた電位が与
えられる。ここでは、インバータ412の入力(ノードP)の電位が上昇し、ノードS1
の電位は多少減少する。
【0440】
また、ノードS2とインバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)
とで電荷が分配され、インバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415
)には、ノードS2に蓄積された電荷に応じた電位が与えられる。ここでは、インバータ
412の入力(ノードP)の電位もノードS2の電位もローレベルのままとなる。
【0441】
この状態でインバータ412、インバータ413に電源が供給されると、インバータ41
2、インバータ413それぞれの入力と出力との間の電位差によって、ラッチ部のインバ
ータ412の入力(ノードP)はハイレベル、インバータ412の出力(或いは出力信号
が与えられる配線415)はローレベルとなる。
【0442】
これにより、データ保持部のデータがラッチ部に読み出され、ラッチ回路の論理状態を、
非動作期間に入る前の論理状態に戻すことができる。このように電源が供給される前に、
インバータ412、インバータ413それぞれの入力と出力との間に電位差を生じさせる
ことで、ラッチ回路を差動増幅器として用いることができる。その結果、
図19(B)と
比べてより安定した読み出しが可能となる。
【0443】
また、電源が供給され、インバータループが形成されると、ノードPおよび出力信号OU
Tの電位にハイレベルもしくはローレベルの電位が与えられ、保持される(データがラッ
チされる)。そしてノードPおよび出力信号OUTの電位がノードS1およびS2にそれ
ぞれ与えられる。これにより、ノードS1およびS2にあらためてハイレベルもしくはロ
ーレベルの電位が供給される。その結果、ノードS1およびS2の電位を変動前の状態に
戻す(再書き込みとも呼ぶ)ことができる。
【0444】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオフとなる電
位が与えられ、それぞれのトランジスタがオフとなり、ノードS1、ノードS2はフロー
ティングの状態になる。その結果、ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷はそのまま
保持される(保持)。ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷は、次に制御信号φLS
にトランジスタ402a、トランジスタ402bがオンとなる電位が与えられるタイミン
グで書き換えられる。従って、次に制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジス
タ402bがオンとなる電位が与えられるタイミングまでは、ノードS1、ノードS2に
蓄積された電荷はそのまま保持される。
【0445】
上述したように、ラッチ部へのデータ読みだしは、ノードS1とインバータ412の入力
(ノードP)との電荷の分配、およびノードS2とインバータ412の出力(或いは出力
信号が与えられる配線415)との電荷の分配、によって行われる。ノードS1にハイレ
ベルの電位に応じた電荷が蓄積され、ノードS2にローレベルの電位に応じた電荷が蓄積
されている場合は、トランジスタ402a,402bがオンとなる前のインバータ412
の入力(ノードP)および出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位に依ら
ず、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電位が、電荷の分配後のイン
バータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位より高くなるよう
にする。
【0446】
また、ノードS1にローレベルの電位に応じた電荷が蓄積され、ノードS2にハイレベル
の電位に応じた電荷が蓄積されている場合は、トランジスタ402a,402bがオンと
なる前のインバータ412の入力(ノードP)および出力(或いは出力信号が与えられる
配線415)の電位に依らず、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電
位が、電荷の分配後のインバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415
)の電位より低くなるようにする。また、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノー
ドP)および出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位の両方があまり低く
ならないようにする。例えば、インバータを構成するトランジスタのしきい値電圧より低
くならないようにする。
【0447】
このようにするには、ノードS1が有する容量が、ノードPが有する容量より大きいこと
が好ましい。すなわち、ノードS1が電気的に接続する容量404aの容量値が、ノード
Pが電気的に接続するインバータ412の入力容量(インバータが有するトランジスタの
ゲート容量)の容量値より大きいことが好ましい。また、期間dにおいて、電位VcをV
DDとVSSの間の値とする期間を設けることも有効である。これにより読み出し動作を
より安定に行うことが可能となる。
【0448】
こうすることで、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルである場合に限ら
ず、ノードPがハイレベル、出力信号OUTがローレベルである場合についても、ラッチ
部にデータを読み出すことが可能である。また、ノードS1にハイレベルの電位に応じた
電荷が蓄積された場合に限らず、ローレベルの電位に応じた電荷が蓄積された場合であっ
ても、ラッチ部にデータを読み出すことが可能である。
【0449】
次に、クロック信号φ1、クロック信号φ2に、交互にハイレベル、ローレベルの電位が
与えられ、通常の動作状態(期間e)となる。通常の動作期間(期間e)の開始時には、
クロック信号φ1、クロック信号φ2は、その前の通常の動作期間(期間a)の終了時と
同じ電位(同じ状態)から開始してもよいし、期間aの終了時とは反転した電位(次の状
態)から開始しても構わない。
【0450】
次に
図24(B)について説明する。
図24(B)において、期間a、期間b、期間cの
動作は
図24(A)と同様である。
【0451】
次に、非動作期間の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間(期間d)に入る。
図24
(B)には、制御信号φ
LSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオンとな
る電位が与えられるタイミングでノードP、出力信号OUTの電位がハイレベルである場
合の例を示す。
【0452】
期間dにおいて、ラッチ部411が有するインバータ412、インバータ413に電源が
供給される前に、クロック信号φ2がハイレベル、クロック信号φ1がローレベルに固定
される。この状態で、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bが
オンとなる電位が与えられると、それぞれのトランジスタがオンとなり、ノードS1、ノ
ードS2に保持されていた電位がそれぞれラッチ部411に与えられる。
【0453】
具体的には、ノードS1とインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配され、イ
ンバータ412の入力(ノードP)には、ノードS1に蓄積された電荷に応じた電位が与
えられる。ここでは、インバータ412の入力(ノードP)の電位もノードS1の電位も
ハイレベルのままとなる。
【0454】
また、ノードS2とインバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)
とで電荷が分配され、インバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415
)には、ノードS2に蓄積された電荷に応じた電位が与えられる。ここでは、インバータ
412の出力(出力信号OUT)の電位が減少し、ノードS2の電位は多少上昇する。
【0455】
この状態でインバータ412、インバータ413に電源が供給されると、インバータ41
2、インバータ413それぞれの入力と出力との間の電位差によって、ラッチ部のインバ
ータ412の入力(ノードP)はハイレベル、インバータ412の出力(或いは出力信号
が与えられる配線415)はローレベルとなる。
【0456】
これにより、データ保持部のデータがラッチ部に読み出され、ラッチ回路の論理状態を、
非動作期間に入る前の論理状態に戻すことができる。このように電源が供給される前に、
インバータ412、インバータ413それぞれの入力と出力との間に電位差を生じさせる
ことで、ラッチ回路を差動増幅器として用いることができる。その結果、
図19(B)と
比べてより安定した読み出しが可能となる。
【0457】
また、電源が供給され、インバータループが形成されると、ノードPおよび出力信号OU
Tの電位にハイレベルもしくはローレベルの電位が与えられ、保持される(データがラッ
チされる)。そしてノードPおよび出力信号OUTの電位がノードS1およびS2にそれ
ぞれ与えられる。これにより、ノードS1およびS2にあらためてハイレベルもしくはロ
ーレベルの電位が供給される。その結果、ノードS1およびS2の電位を変動前の状態に
戻す(再書き込みとも呼ぶ)ことができる。
【0458】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオフとなる電
位が与えられ、それぞれのトランジスタがオフとなり、ノードS1、ノードS2はフロー
ティングの状態になる。その結果、ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷はそのまま
保持される(保持)。ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷は、次に制御信号φLS
にトランジスタ402a、トランジスタ402bがオンとなる電位が与えられるタイミン
グで書き換えられる。従って、次に制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジス
タ402bがオンとなる電位が与えられるタイミングまでは、ノードS1、ノードS2に
蓄積された電荷はそのまま保持される。
【0459】
次に、クロック信号φ1、クロック信号φ2に、交互にハイレベル、ローレベルの電位が
与えられ、通常の動作状態(期間e)となる。通常の動作期間(期間e)の開始時には、
クロック信号φ1、クロック信号φ2は、その前の通常の動作期間(期間a)の終了時と
同じ電位(同じ状態)から開始してもよいし、期間aの終了時とは反転した電位(次の状
態)から開始しても構わない。
【0460】
なお、ここでは電源が供給される前に、インバータ412、インバータ413それぞれの
入力と出力との間に電位差を生じさせる例を示したが、本実施の形態に示す不揮発性のラ
ッチ回路の構成(
図23)において、
図19(B)と同様のタイミングチャートを用いて
動作させることも可能である。
【0461】
なお、期間dにおいて、電位VcをVDDとVSSの間の値とする期間を設けることも有
効である。これにより読み出し動作をより安定に行うことが可能となる。
【0462】
本実施の形態に係るチャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いた不揮発性のラッチ回路を
用いることで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している
論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ
保持部を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0463】
また、データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に
書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であ
り、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データ
として保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容
易に行うことができる。またラッチ回路を差動増幅器として用いる場合により安定した読
み出しが可能となる。
【0464】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0465】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0466】
(実施の形態9)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路の動作について、図
25を参照して説明する。不揮発性のラッチ回路の構成は
図23と同じであり、タイミン
グチャートが
図24(A)、
図24(B)とは異なる例を示している。
【0467】
図25には、不揮発性のラッチ回路400が動作状態の期間(動作期間)と停止状態の期
間(非動作期間)における、入力信号IN、出力信号OUT、制御信号φ
LS、クロック
信号φ1、クロック信号φ2の電位のタイミングチャートの例を示す。またデータ保持部
401のノードS1、ノードS2、ラッチ部411のノードP、ラッチ部411が有する
インバータ412、インバータ413の電源電圧VDD-Lの電位、容量404a、容量
404bの他方の電極の電位Vcを併せて示す。ノードS1は、容量404aの一方の電
極の電位を示している。ノードS2は、容量404bの一方の電極の電位を示している。
【0468】
図25において、期間a、期間b、期間d、期間eはラッチ回路400が動作状態の期間
(動作期間)であり、期間cはラッチ回路400が停止状態の期間(非動作期間)である
。期間a、期間eはラッチ回路400の通常の動作期間であり、クロック信号φ1、クロ
ック信号φ2に交互にハイレベル又はローレベルの電位が与えられている。期間bは、非
動作期間の前の準備期間である。期間bを立ち下げ期間ともいう。期間dは、非動作期間
の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間である。期間dを立ち上げ期間ともいう。
【0469】
図25において、期間a、期間bの動作は、
図24と同様である。次に、非動作期間(期
間c)において、電源の供給が停止され、ラッチ部411が有するインバータ412、イ
ンバータ413の電源電圧VDD-Lが低下する。クロック信号φ1、クロック信号φ2
、入力信号INはVDD-VSS間のどのような値をとっても構わない。この間、制御信
号φ
LSの電位は、トランジスタ402a,402bがオフ状態となるように、ローレベ
ルに保持される。例えば、接地電位に保持される。
【0470】
非動作期間(期間c)において、トランジスタ402a,402bをオフ状態とすること
により、ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷が保持される(保持)。また、出力信
号OUTは、ローレベルに保持される。またノードPの電位は、徐々に低下する。
【0471】
次に、非動作期間の後、通常の動作期間に入るまでの準備期間(期間d)に入る。期間d
において、ラッチ部411が有するインバータ412、インバータ413に電源が供給さ
れる前に、クロック信号φ2がハイレベル、クロック信号φ1がローレベルに固定される
。この状態で、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオンと
なる電位が与えられると、それぞれのトランジスタがオンとなり、ノードS1、ノードS
2に保持されていた電位がそれぞれラッチ部411に与えられる。
【0472】
具体的には、ノードS1とインバータ412の入力(ノードP)とで電荷が分配される。
そして、制御信号φLSにトランジスタ402aがオンとなる電位が与えられるタイミン
グで、容量404aの他方の電極の電位Vcに所定の電位を与える。電位Vcは、ローレ
ベルの電位から上昇させ、ローレベルとハイレベルの間の電位にする。これにより、イン
バータ412の入力(ノードP)には、ノードS1との電荷の分配によって決まる電位に
、容量404aの他方の電極の電位Vcの増分を加味した電位が与えられる。ここでは、
インバータ412の入力(ノードP)の電位が上昇し、ノードS1の電位は多少減少する
。
【0473】
また、ノードS2とインバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)
とで電荷が分配される。そして、制御信号φLSにトランジスタ402bがオンとなる電
位が与えられるタイミングで、容量404bの他方の電極の電位Vcに所定の電位を与え
る。電位Vcは、ローレベルの電位から上昇させ、ローレベルとハイレベルの間の電位に
する。
【0474】
これにより、インバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)には、
ノードS2との電荷の分配によって決まる電位に、容量404bの他方の電極の電位Vc
の増分を加味した電位が与えられる。ここでは、インバータ412の出力(或いは出力信
号が与えられる配線415)とノードS2は、容量404bの他方の電極の電位Vcの増
加により多少電位が上昇する。
【0475】
この状態でインバータ412、インバータ413に電源が供給されると、インバータ41
2、インバータ413それぞれの入力と出力との間の電位差によって、ラッチ部のインバ
ータ412の入力(ノードP)はハイレベル、インバータ412の出力(或いは出力信号
が与えられる配線415)はローレベルとなる。
【0476】
これにより、データ保持部のデータがラッチ部に読み出され、ラッチ回路の論理状態を、
非動作期間に入る前の論理状態に戻すことができる。このように電源が供給される前に、
インバータ412、インバータ413それぞれの入力と出力との間に電位差を生じさせる
ことで、ラッチ回路を差動増幅器として用いることができる。その結果、
図19(B)と
比べてより安定した読み出しが可能となる。
【0477】
また、電源が供給され、インバータループが形成されると、ノードPおよび出力信号OU
Tの電位にハイレベルもしくはローレベルの電位が与えられ、保持される(データがラッ
チされる)。そしてノードPおよび出力信号OUTの電位がノードS1およびS2にそれ
ぞれ与えられる。これにより、ノードS1およびS2にあらためてハイレベルもしくはロ
ーレベルの電位が供給される。その結果、ノードS1およびS2の電位を変動前の状態に
戻す(再書き込みとも呼ぶ)ことができる。
【0478】
その後、容量の他方の電極の電位Vcを戻し、ローレベルの電位にする。
【0479】
その後、制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオフとなる電
位が与えられ、それぞれのトランジスタがオフとなり、ノードS1、ノードS2はフロー
ティングの状態になる。その結果、ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷はそのまま
保持される(保持)。
【0480】
ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷は、次に制御信号φLSにトランジスタ402
a、トランジスタ402bがオンとなる電位が与えられるタイミングで書き換えられる。
従って、次に制御信号φLSにトランジスタ402a、トランジスタ402bがオンとな
る電位が与えられるタイミングまでは、ノードS1、ノードS2に蓄積された電荷はその
まま保持される。
【0481】
上述したように、ラッチ部へのデータ読みだしは、ノードS1とインバータ412の入力
(ノードP)との電荷の分配、およびノードS2とインバータ412の出力(或いは出力
信号が与えられる配線415)との電荷の分配、によって行われる。ノードS1にハイレ
ベルの電位に応じた電荷が蓄積され、ノードS2にローレベルの電位に応じた電荷が蓄積
されている場合は、トランジスタ402a,402bがオンとなる前のインバータ412
の入力(ノードP)および出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位に依ら
ず、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電位が、電荷の分配後のイン
バータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位より高くなるよう
にする。
【0482】
また、ノードS1にローレベルの電位に応じた電荷が蓄積され、ノードS2にハイレベル
の電位に応じた電荷が蓄積されている場合は、トランジスタ402a,402bがオンと
なる前のインバータ412の入力(ノードP)および出力(或いは出力信号が与えられる
配線415)の電位に依らず、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)の電
位が、電荷の分配後のインバータ412の出力(或いは出力信号が与えられる配線415
)の電位より低くなるようにする。また、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノー
ドP)および出力(或いは出力信号が与えられる配線415)の電位の両方があまり低く
ならないようにする。例えば、インバータを構成するトランジスタのしきい値電圧より低
くならないようにする。
【0483】
このようにするには、ノードS1が有する容量が、ノードPが有する容量より大きいこと
が好ましい。すなわち、ノードS1が電気的に接続する容量404aの容量値が、ノード
Pが電気的に接続するインバータ412の入力容量(インバータが有するトランジスタの
ゲート容量)の容量値より大きいことが好ましい。また、期間dにおいて、電位VcをV
DDとVSSの間の値とする期間を設けることも有効である。これにより読み出し動作を
より安定に行うことが可能となる。
【0484】
こうすることで、ノードPがローレベル、出力信号OUTがハイレベルである場合に限ら
ず、ノードPがハイレベル、出力信号OUTがローレベルである場合についても、ラッチ
部にデータを読み出すことが可能である。また、ノードS1にハイレベルの電位に応じた
電荷が蓄積された場合に限らず、ローレベルの電位に応じた電荷が蓄積された場合であっ
ても、ラッチ部にデータを読み出すことが可能である。
【0485】
特に、本実施の形態で説明したように、制御信号φLSにトランジスタ402a、402
bがオンとなる電位が与えられるタイミングで、容量の他方の電極の電位Vcに所定の電
位を与えることにより、読み出しをより安定に行うことが可能となる。
【0486】
例えば、容量404a、404bの容量値が小さい場合や、電源供給を停止する期間が長
い場合において、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)と出力(或いは出
力信号が与えられる配線415)の電位差を保つことが難しくなったり、電荷の分配後の
インバータ412の入力(ノードP)と出力(或いは出力信号が与えられる配線415)
の電位が低くなり、読み出しの安定性が低下する可能性がある。
【0487】
そのような場合であっても、容量404a、容量404bの他方の電極の電位Vcに所定
の電位を与えることで、電荷の分配後のインバータ412の入力(ノードP)と出力(或
いは出力信号が与えられる配線415)の電位を適切な電位に制御することができる。そ
の結果、安定した読み出しを行うことが可能となる。つまり、より小さい容量値の容量に
対しても動作が可能となり、小型化が可能である。あるいは、データ保持期間をより長く
することが可能である。
【0488】
次に、クロック信号φ1、クロック信号φ2に、交互にハイレベル、ローレベルの電位が
与えられ、通常の動作状態(期間e)となる。通常の動作期間(期間e)の開始時には、
クロック信号φ1、クロック信号φ2は、その前の通常の動作期間(期間a)の終了時と
同じ電位(同じ状態)から開始してもよいし、期間aの終了時とは反転した電位(次の状
態)から開始しても構わない。
【0489】
なお、ここでは電源が供給される前に、インバータ412、インバータ413それぞれの
入力と出力との間に電位差を生じさせる例を示したが、本実施の形態に示す不揮発性のラ
ッチ回路の構成(
図23)において、
図19(B)と同様のタイミングチャートを用いて
動作させることも可能である。
【0490】
本実施の形態に係るチャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いた不揮発性のラッチ回路を
用いることで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している
論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ
保持部を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0491】
また、データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に
書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であ
り、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データ
として保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容
易に行うことができる。また、データ保持部の容量をより小さい容量値にすることが可能
となり、小型化が可能である。
【0492】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0493】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0494】
(実施の形態10)
本実施の形態は、開示する発明の一態様である不揮発性のラッチ回路を複数有する論理回
路の構成について、
図26を参照して説明する。
【0495】
図26は、ラッチ部411と、ラッチ部のデータを保持するデータ保持部401とを有す
る不揮発性のラッチ回路400を二つ有する論理回路の構成を示している。この論理回路
はD-FFと呼ばれ、例えば、CPUや各種論理回路内でレジスタとして使用される。
【0496】
データ保持部401の構成は、
図22に示すものと同様である。ラッチ部411の構成は
、
図22のラッチ部411の構成において、第1の素子としてNANDを用い、第2の素
子としてクロックドインバータを用いた例である。
【0497】
ラッチ部411は、NAND412とクロックドインバータ413とを有している。NA
ND412の出力がクロックドインバータ413の入力に電気的に接続され、クロックド
インバータ413の出力がNAND412の入力に電気的に接続されるループ構造を有し
ている。またラッチ部411は、アナログスイッチ431を有している。
【0498】
NAND412の入力の一つは、アナログスイッチ431を介してラッチ回路400の入
力信号が与えられる配線414に電気的に接続されている。NAND412の出力は、ラ
ッチ回路400の出力信号が与えられる配線415に電気的に接続されている。NAND
412の入力の他の一つには、信号RSTBが与えられる配線に電気的に接続されている
。アナログスイッチ431にはクロック信号とクロック信号の反転信号が与えられる。ク
ロックドインバータ413にはクロック信号とクロック信号の反転信号が与えられる。
【0499】
図26に示す論理回路は、上記の不揮発性のラッチ回路400として、不揮発性のラッチ
回路400aと不揮発性のラッチ回路400bとを有している。不揮発性のラッチ回路4
00aは、前段の回路から入力信号の電位が与えられる配線414に電気的に接続してい
る。不揮発性のラッチ回路400aの出力信号の電位が与えられる配線415は、不揮発
性のラッチ回路400bの入力信号の電位が与えられる配線414に電気的に接続してい
る。不揮発性のラッチ回路400bは、後段の回路に不揮発性のラッチ回路400bの出
力信号の電位を与える配線415に電気的に接続している。
【0500】
不揮発性のラッチ回路400aが有するアナログスイッチ431にはクロック信号φ1と
クロック信号の反転信号φ1bが与えられ、クロックドインバータ413にはクロック信
号φ2とクロック信号の反転信号φ2bが与えられる。また、不揮発性のラッチ回路40
0bが有するアナログスイッチ431にはクロック信号φ2とクロック信号の反転信号φ
2bが与えられ、クロックドインバータ413にはクロック信号φ1とクロック信号の反
転信号φ1bが与えられる。
【0501】
本実施の形態に係るチャネル形成領域を構成する半導体材料として酸化物半導体を用いた
トランジスタを、データ保持部のスイッチング素子として用いた不揮発性のラッチ回路を
用いることで、温度動作範囲が広く高温でも安定に動作し、電源を切っても記憶している
論理状態が消えない不揮発性のラッチ回路あるいはリフレッシュ期間が十分に長いデータ
保持部を内蔵したラッチ回路を実現することができる。
【0502】
また、データの書き込みをトランジスタのスイッチングによって行うことから、実質的に
書き換え回数に制限がない。また、書き込み電圧はトランジスタのしきい値電圧程度であ
り、低い電圧での動作が可能である。またデータ保持部の電位を直接与えるため、データ
として保持する電荷量のばらつきを小さく抑えることができ、またデータの読み出しを容
易に行うことができる。
【0503】
上記不揮発性のラッチ回路を用いることで、さまざまな論理回路を実現することが可能で
ある。例えば、使用しないブロックの電源をオフにすることで消費電力を低減することが
できる。また、電源をオフにしても論理状態を記憶していることから、電源をオンにした
時のシステム起動や、電源をオフにした時のシステム終了を高速に、かつ低電力で行うこ
とが可能である。
【0504】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0505】
(実施の形態11)
次に、先の実施の形態(実施の形態1、実施の形態2など)におけるトランジスタ402
として用いることができる、酸化物半導体を用いたトランジスタの作製方法の別の一例に
ついて、
図27を参照して説明する。本実施の形態では、高純度化された酸化物半導体(
特に非晶質構造)を用いる場合について、詳細に説明する。なお、以下では、トップゲー
ト型のトランジスタを例に挙げて説明するが、トランジスタの構成をトップゲート型に限
る必要はない。
【0506】
まず、下層基板200上に絶縁層202を形成する。それから、絶縁層202上に酸化物
半導体層206を形成する(
図27(A)参照)。
【0507】
ここで、下層基板200は、先の実施の形態における、下部のトランジスタ160などが
形成された基板に相当する。その詳細については、先の実施の形態を参酌することができ
る。なお、下層基板200の表面は可能な限り平坦であることが好ましく、そのために化
学的機械的研磨法(CMP法)等によって、表面の高低差を、5nm以下、好ましくは1
nm以下、あるいは、表面荒さの二乗和平方根(RMS)を2nm以下、好ましくは、0
.4nm以下とするとよい。
【0508】
絶縁層202は下地として機能するものであり、先の実施の形態における絶縁層168や
保護絶縁層144などと同様に形成することができる。詳細については、先の実施の形態
を参酌すればよい。なお、絶縁層202は、できるだけ水素や水を含まないように形成す
ることが望ましい。
【0509】
酸化物半導体層206は、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系や、三
元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系、In-Sn-Zn-O系、In-Al-
Zn-O系、Sn-Ga-Zn-O系、Al-Ga-Zn-O系、Sn-Al-Zn-O
系や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系、Sn-Zn-O系、Al-Zn-O系
、Zn-Mg-O系、Sn-Mg-O系、In-Mg-O系や、一元系金属酸化物である
In-O系、Sn-O系、Zn-O系などの酸化物半導体を用いて形成することができる
。
【0510】
中でも、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体材料は、無電界時の抵抗が十分に高くオ
フ電流を十分に小さくすることが可能であり、また、電界効果移動度も高いため、半導体
装置に用いる半導体材料としては好適である。
【0511】
In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体材料の代表例としては、InGaO3(ZnO)
m(m>0)で表記されるものがある。また、Gaに代えてMを用い、InMO3(Zn
O)m(m>0)のように表記される酸化物半導体材料がある。ここで、Mは、ガリウム
(Ga)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、
コバルト(Co)などから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。例えば、
Mとしては、Ga、GaおよびAl、GaおよびFe、GaおよびNi、GaおよびMn
、GaおよびCoなどを適用することができる。なお、上述の組成は結晶構造から導き出
されるものであり、あくまでも一例に過ぎないことを付記する。
【0512】
本実施の形態では、非晶質構造の酸化物半導体層206を、In-Ga-Zn-O系の金
属酸化物ターゲットを用いるスパッタリング法により形成することとする。
【0513】
酸化物半導体層206をスパッタリング法で作製するための金属酸化物ターゲットとして
は、例えば、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:1[mol比])の組成比を有
する金属酸化物ターゲットなどを用いても良い。また、In2O3:Ga2O3:ZnO
=1:1:2[mol比]の組成比を有する金属酸化物ターゲットや、In2O3:Ga
2O3:ZnO=1:1:4[mol比]の組成比を有する金属酸化物ターゲットを用い
ることもできる。
【0514】
金属酸化物ターゲット中の酸化物半導体の相対密度は80%以上、好ましくは95%以上
、さらに好ましくは99.9%以上である。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用い
ることにより、緻密な構造の酸化物半導体層206を形成すること可能である。
【0515】
酸化物半導体層206の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲
気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である
。具体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、濃度数ppm程度
(望ましくは濃度数ppb程度)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適で
ある。
【0516】
酸化物半導体層206の形成の際には、例えば、減圧状態に保持された処理室内に基板を
保持し、基板の温度が100℃以上550℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下
となるように基板を熱する。そして、処理室内の水分を除去しつつ、水素や水などが除去
されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体層206を形成する
。基板を熱しながら酸化物半導体層206を形成することにより、酸化物半導体層206
に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷を軽減
することができる。処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いるこ
とが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプ
などを用いることができる。また、ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用い
てもよい。クライオポンプを用いて排気することで、処理室から水素や水などが除去され
るため、酸化物半導体層206中の不純物濃度を低減できる。
【0517】
酸化物半導体層206の形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が1
70mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素流量
比率100%)雰囲気、またはアルゴン(アルゴン流量比率100%)雰囲気、または酸
素とアルゴンの混合雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(
DC)電源を用いると、ごみ(成膜時に形成される粉状の物質など)を低減でき、膜厚分
布も小さくなるため好ましい。酸化物半導体層206の厚さは、2nm以上200nm以
下、好ましくは5nm以上30nm以下とする。ただし、適用する酸化物半導体材料や、
半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途な
どに応じて選択すればよい。
【0518】
なお、酸化物半導体層206をスパッタリング法により形成する前には、アルゴンガスを
導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、絶縁層202の表面の付着物を除去す
るのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、スパッタター
ゲットにイオンを衝突させるところ、逆に、処理表面にイオンを衝突させることによって
その表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては、ア
ルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、基板付近にプラズマを生成する方
法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などによる雰囲気を
適用してもよい。
【0519】
次に、マスクを用いたエッチングなどの方法によって酸化物半導体層206を加工して、
島状の酸化物半導体層206aを形成する。
【0520】
酸化物半導体層206のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいず
れを用いても良い。もちろん、その両方を組み合わせて用いることもできる。酸化物半導
体層を所望の形状にエッチングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチング
ガスやエッチング液、エッチング時間、温度等)は適宜設定する。詳細については、先の
実施の形態を参酌することができる。酸化物半導体層206のエッチングは、先の実施の
形態における酸化物半導体層のエッチングと同様に行うことができる。詳細については、
先の実施の形態を参酌すればよい。
【0521】
その後、酸化物半導体層206aに対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望まし
い。この第1の熱処理によって酸化物半導体層206a中の、過剰な水素(水や水酸基を
含む)を除去し、酸化物半導体層206aの構造を整え、酸化物半導体層206a中の欠
陥を低減することができる。第1の熱処理の温度は、例えば、300℃以上550℃以下
、または400℃以上550℃以下とする。
【0522】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に下層基板200を導入し、窒素雰囲
気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体層206aは
大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0523】
熱処理装置は電気炉に限る必要はなく、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または
熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Ann
eal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライド
ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水
銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置で
ある。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、ア
ルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性
気体が用いられる。
【0524】
例えば、第1の熱処理として、不活性ガス雰囲気中に基板を投入し、数分間熱した後、当
該不活性ガス雰囲気から基板を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用
いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、短時間の熱処理であるため、基板の耐
熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。
【0525】
なお、処理中に、不活性ガス雰囲気を、酸素を含む雰囲気に切り替えても良い。酸素を含
む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因する欠陥を低減することが
できるためである。
【0526】
例えば、第1の加熱処理に電気炉を用いる場合、加熱処理の降温時に雰囲気を切り替える
ことができる。例えば、加熱処理時(恒温時)の雰囲気は、窒素、または希ガス(ヘリウ
ム、ネオン、アルゴン等)などの不活性ガス雰囲気とし、降温時に酸素を含む雰囲気に切
り替えることができる。酸素を含む雰囲気としては、酸素ガスまたは酸素ガスと窒素ガス
を混合した気体を用いることができる。
【0527】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等
)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ま
しい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの
純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(
すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0528】
いずれにしても、第1の熱処理によって不純物を低減し、i型化または実質的にi型化さ
れた酸化物半導体層206aを形成することで、極めて優れた特性のトランジスタを実現
することができる。
【0529】
なお、第1の熱処理は、島状の酸化物半導体層206aに加工する前の酸化物半導体層2
06に行うこともできる。その場合には、第1の熱処理後に、加熱装置から下層基板20
0を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行うことになる。
【0530】
第1の熱処理には水素や水を除去する効果があるから、第1の熱処理を、脱水化処理、脱
水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理、脱水素化処理は、酸化物半導体層
の形成後、酸化物半導体層206a上にソース電極またはドレイン電極を積層させた後、
などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素
化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0531】
次に、酸化物半導体層206aに接するように導電層を形成する。そして、導電層を選択
的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイ
ン電極208bを形成する(
図27(B)参照)。当該工程は、先の実施の形態のソース
電極またはドレイン電極142aなどに関する工程と同様である。詳細については、先の
実施の形態を参酌することができる。
【0532】
次に、酸化物半導体層206aの一部に接するゲート絶縁層212を形成する。(
図27
(C)参照)。詳細については、先の実施の形態のゲート絶縁層に関する記載を参酌する
ことができる。
【0533】
ゲート絶縁層212の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱
処理を行うのが望ましい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは25
0℃以上350℃以下である。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行え
ばよい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減
することができる。また、ゲート絶縁層212が酸素を含む場合、酸化物半導体層206
aに酸素を供給し、該酸化物半導体層206aの酸素欠損を低減して、i型(真性半導体
)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層を形成することもできる。
【0534】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層212の形成直後に第2の熱処理を行っているが
、第2の熱処理のタイミングはこれに特に限定されない。
【0535】
次に、ゲート絶縁層212上の酸化物半導体層206aと重畳する領域にゲート電極21
4を形成する(
図27(D)参照)。ゲート電極214は、ゲート絶縁層212上に導電
層を形成した後に、当該導電層を選択的にパターニングすることによって形成することが
できる。詳細については、先の実施の形態のゲート電極に関する記載を参酌することがで
きる。
【0536】
次に、ゲート絶縁層212およびゲート電極214上に、層間絶縁層216および層間絶
縁層218を形成する(
図27(E)参照)。層間絶縁層216および層間絶縁層218
は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒
化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機
絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、本実施の形態では、層間絶縁
層216と層間絶縁層218の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限
定されない。1層としても良いし、3層以上の積層構造としても良い。
【0537】
なお、上記層間絶縁層218は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。
表面が平坦になるように層間絶縁層218を形成することで、層間絶縁層218上に、電
極や配線などを好適に形成することができるためである。
【0538】
以上により、高純度化された酸化物半導体層206aを用いたトランジスタ250が完成
する。
【0539】
図27(E)に示すトランジスタ250は、下層基板200上に絶縁層202を介して設
けられた酸化物半導体層206aと、酸化物半導体層206aと電気的に接続するソース
電極またはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイン電極208bと、酸化物半
導体層206a、ソース電極またはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイン電
極208bを覆うゲート絶縁層212と、ゲート絶縁層212上のゲート電極214と、
ゲート絶縁層212及びゲート電極214上の層間絶縁層216と、層間絶縁層216上
の層間絶縁層218とを有する。
【0540】
本実施の形態において示すトランジスタ250では、酸化物半導体層206aが高純度化
されているため、その水素濃度は、5×1019/cm3以下、望ましくは5×1018
/cm3以下、より望ましくは5×1017/cm3以下、より望ましくは1×1016
/cm3未満となる。また、酸化物半導体層206aのキャリア密度は、一般的なシリコ
ンウェハにおけるキャリア密度(1×1014/cm3程度)と比較して、十分に低い値
(例えば、1×1012/cm3未満、望ましくは、1×1011/cm3未満)をとる
。そして、これにより、オフ電流が十分に小さくなる。例えば、ドレイン電圧VDが+1
Vまたは+10Vの場合であって、ゲート電圧VGが-5Vから-20Vの範囲では、室
温でのオフ電流は1×10-13A以下である。また、上記トランジスタは、ノーマリー
オフのトランジスタ特性を有している。従って、ゲートとソース電極間の電圧がほぼ0の
状態におけるオフ電流、すなわちリーク電流が、シリコンを用いたトランジスタに比べて
著しく小さい。例えば室温での単位チャネル幅リーク電流は10aA/μm以下となる。
【0541】
このように高純度化され、真性化された酸化物半導体層206aを用いることで、トラン
ジスタのオフ電流を十分に低減することができる。
【0542】
なお、本実施の形態では、先の実施の形態に示すトランジスタ402として、トランジス
タ250を用いる場合を説明したが、開示する発明をこれに限定して解釈する必要はない
。例えば、酸化物半導体の電気特性を十分に高めることで、集積回路を構成するトランジ
スタを含むすべてのトランジスタに酸化物半導体を用いることも可能である。そして、こ
のような場合には、先の実施の形態に示すように積層構造である必要もない。この場合、
例えば、ガラス基板などの基板を用いて半導体装置を形成することが可能である。
【0543】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0544】
(実施の形態12)
次に、先の実施の形態(実施の形態1、実施の形態2など)におけるトランジスタ402
として用いることが可能な、酸化物半導体を用いたトランジスタの作製方法の別の一例に
ついて、
図28を参照して説明する。本実施の形態では、酸化物半導体層として、結晶領
域を有する第1の酸化物半導体層と、第1の酸化物半導体層の結晶領域から結晶成長させ
た第2の酸化物半導体層を用いる場合について、詳細に説明する。なお、以下では、トッ
プゲート型のトランジスタを例に挙げて説明するが、トランジスタの構成をトップゲート
型に限る必要はない。
【0545】
まず、下層基板300上に絶縁層302を形成する。それから、絶縁層302上に第1の
酸化物半導体層を成膜し、第1の熱処理によって少なくとも第1の酸化物半導体層の表面
を含む領域を結晶化させて、第1の酸化物半導体層304を形成する(
図28(A)参照
)。
【0546】
ここで、下層基板300は、先の実施の形態における、下部のトランジスタ160などが
形成された基板を指す。その詳細については、先の実施の形態を参酌することができる。
なお、下層基板300の表面の平坦性に関しては、本実施の形態では、特に重要視すべき
である。表面の平坦性は、結晶成長を均質におこなうために不可欠な要素であるためであ
る。好ましい結晶性の酸化物半導体層を得るには、表面の高低差を、1nm以下、好まし
くは0.2nm以下、あるいは、表面荒さの二乗和平方根(RMS)を0.5nm以下、
好ましくは、0.1nm以下とするとよい。
【0547】
絶縁層302は下地として機能するものであり、先の実施の形態における絶縁層168や
保護絶縁層144などと同様に形成することができる。詳細については、先の実施の形態
を参酌すればよい。なお、絶縁層302は、できるだけ水素や水を含まないように形成す
ることが望ましい。
【0548】
第1の酸化物半導体層304は、先の実施の形態における酸化物半導体層206と同様に
形成することができる。第1の酸化物半導体層304及びその成膜方法の詳細については
、先の実施の形態を参酌すればよい。ただし、本実施の形態では、第1の熱処理によって
第1の酸化物半導体層を意図的に結晶化させるため、結晶化が生じやすい金属酸化物ター
ゲットを用いて第1の酸化物半導体層304を形成することが望ましい。例えば、ZnO
が挙げられる。また、In-Ga-Zn-O系酸化物であっても、例えば、Znの濃度の
高いものは結晶化しやすく、Znの金属元素(In、Ga、Zn)に占める割合が60%
以上のものは、この目的に用いるには好ましい。また、第1の酸化物半導体層304の厚
さは、3nm以上15nm以下とするのが望ましい。本実施の形態では一例として5nm
の厚さとする。ただし、適用する酸化物半導体材料や半導体装置の用途などにより適切な
厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途などに応じて選択すればよい。
【0549】
第1の熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上750℃以
下とする。また、熱処理の時間は、1分以上24時間以下とすることが望ましい。温度や
時間は酸化物半導体の種類や組成比によって異なる。また、第1の熱処理の雰囲気は、水
素や水などを含まない雰囲気とすることが望ましい。例えば、水が十分に除去された、窒
素、酸素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)雰囲気とすることができる。
【0550】
熱処理装置は、電気炉の他、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によ
って、被処理物を加熱する装置を用いることができる。例えば、GRTA(Gas Ra
pid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Th
ermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Annea
l)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドラン
プ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ラ
ンプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である
。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴ
ンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体
が用いられる。
【0551】
上述の第1の熱処理によって、少なくとも第1の酸化物半導体層の表面を含む領域が結晶
化する。当該結晶領域は、第1の酸化物半導体層表面から、第1の酸化物半導体層内部に
向かって結晶成長が進行することにより形成される領域である。なお、当該結晶領域は、
平均厚さが2nm以上10nm以下の板状結晶を含む場合がある。また、当該結晶領域は
、酸化物半導体層の表面に略平行なa-b面を有し、該表面に対して略垂直な方向にc軸
が配向する結晶を含む場合がある。ここで、略平行とは、平行方向から±10°以内の状
態をいうものとし、略垂直とは、垂直方向から±10°以内の状態を言うものとする。
【0552】
また、第1の熱処理によって結晶領域を形成すると共に、第1の酸化物半導体層中の水素
(水や水酸基を含む)などを除去することが望ましい。水素などの除去を行う場合には、
純度が、6N(99.9999%)以上(即ち不純物の濃度が1ppm以下)の窒素、酸
素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)雰囲気において第1の熱処理を行うと良い
。より望ましくは、純度が7N(99.99999%)以上(即ち不純物の濃度が0.1
ppm以下)の雰囲気である。また、H2Oが20ppm以下の超乾燥空気中で、好まし
くは、H2Oが1ppm以下の超乾燥空気中で、第1の熱処理を行っても良い。
【0553】
また、第1の熱処理により結晶領域を形成すると共に、第1の酸化物半導体層に酸素を供
給することが望ましい。例えば、熱処理の雰囲気を酸素雰囲気などに変更することで、第
1の酸化物半導体層に酸素を供給することができる。
【0554】
本実施の形態では、第1の熱処理として、窒素雰囲気下で700℃、1時間の熱処理を行
って酸化物半導体層から水素などを除去した後、雰囲気を酸素雰囲気に切り替えることで
、第1の酸化物半導体層内部に酸素を供給する。なお、第1の熱処理の主たる目的は結晶
領域の形成にあるから、水素などの除去や、酸素の供給を目的とする処理は別に行うこと
もできる。例えば、水素などを除去するための熱処理や、酸素を供給する処理を行った後
に、結晶化のための熱処理を行うことが可能である。
【0555】
このような第1の熱処理によって、結晶領域を有し、水素(水や水酸基を含む)などが除
去され、酸素が供給された第1の酸化物半導体層304が得られる。
【0556】
次に、少なくとも表面を含む領域に結晶領域を有する第1の酸化物半導体層304上に、
第2の酸化物半導体層305を形成する(
図28(B)参照)。
【0557】
第2の酸化物半導体層305は、先の実施の形態における酸化物半導体層206と同様に
形成することができる。第2の酸化物半導体層305及びその成膜方法の詳細については
、先の実施の形態を参酌すればよい。ただし、第2の酸化物半導体層305は、第1の酸
化物半導体層304より厚く形成することが望ましい。また、第1の酸化物半導体層30
4と第2の酸化物半導体層305の厚さの和が3nm以上50nm以下となるように、第
2の酸化物半導体層305を形成することが望ましい。なお、適用する酸化物半導体材料
や、半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用
途などに応じて選択すればよい。
【0558】
第2の酸化物半導体層305には、第1の酸化物半導体層304と同一主成分の材料で、
さらに結晶化後の格子定数が近接した材料(格子定数のミスマッチが1%以下)を用いる
ことが望ましい。同一主成分の材料を用いる場合には、第2の酸化物半導体層305の結
晶化において、第1の酸化物半導体層304の結晶領域を種とする結晶成長が進行しやす
いためである。さらに、同一主成分材料である場合には、界面物性や電気的特性も良好に
なる。
【0559】
なお、結晶化によって所望の膜質が得られる場合には、第1の酸化物半導体層304の材
料とは異なる主成分の材料を用いて第2の酸化物半導体層305を形成しても良い。
【0560】
次に、第2の酸化物半導体層305に第2の熱処理を行い、第1の酸化物半導体層304
の結晶領域を種として結晶成長させて、第2の酸化物半導体層306を形成する(
図28
(C))参照)。
【0561】
第2の熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以
下とする。第2の熱処理の加熱時間は1分以上100時間以下とし、好ましくは5時間以
上20時間以下とし、代表的には10時間とする。なお、第2の熱処理においても、熱処
理の雰囲気には、水素や水などが含まれないことが望ましい。
【0562】
雰囲気の詳細および第2の熱処理による効果は、第1の熱処理と同様である。また、用い
ることができる熱処理装置も、第1の熱処理の場合と同様である。例えば、第2の熱処理
の昇温時には炉の内部を窒素雰囲気とし、冷却時には炉の内部を酸素雰囲気とすることで
、窒素雰囲気で水素などの除去を、酸素雰囲気で酸素の供給を行うことができる。
【0563】
上述のような第2の熱処理を行うことにより、第1の酸化物半導体層304に形成された
結晶領域から第2の酸化物半導体層305全体に結晶成長を進行させて、第2の酸化物半
導体層306を形成することができる。また、水素(水や水酸基を含む)などが除去され
、酸素が供給された第2の酸化物半導体層306を形成することができる。また、第2の
熱処理によって、第1の酸化物半導体層304の結晶領域の配向性を高めることが可能で
ある。
【0564】
例えば、In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体材料を第2の酸化物半導体層306に用
いる場合、第2の酸化物半導体層306は、InGaO3(ZnO)m(m>0、且つ自
然数でない)で表される結晶や、In2Ga2ZnO7(In:Ga:Zn:O=2:2
:1:7)で表される結晶などを含み得る。このような結晶は、第2の熱処理によって、
そのc軸が、第2の酸化物半導体層306の表面と略垂直な方向をとるように配向する。
【0565】
ここで、上述の結晶は、In、Ga、Znのいずれかを含有し、a軸(a-axis)お
よびb軸(b-axis)に平行な複数のレイヤーの積層構造として捉えることができる
。具体的には、上述の結晶は、Inを含有するレイヤーと、Inを含有しないレイヤー(
GaまたはZnを含有するレイヤー)が、c軸方向に積層された構造を有する。
【0566】
In-Ga-Zn-O系の酸化物半導体結晶では、Inを含有するレイヤー、すなわちa
軸およびb軸に平行な方向に関する導電性は良好である。これは、In-Ga-Zn-O
系の酸化物半導体結晶では電気伝導が主としてInによって制御されること、および、一
のInの5s軌道が、隣接するInの5s軌道と重なりを有することにより、キャリアパ
スが形成されることによる。
【0567】
また、第1の酸化物半導体層304が絶縁層302との界面に非晶質領域を有するような
構造の場合、第2の熱処理を行うことにより、第1の酸化物半導体層304の表面に形成
されている結晶領域から第1の酸化物半導体層の下方に向かって結晶成長が進行し、該非
晶質領域が結晶化される場合もある。なお、絶縁層302を構成する材料や、熱処理の条
件などによっては、該非晶質領域が残存する場合もある。
【0568】
第1の酸化物半導体層304と第2の酸化物半導体層305とに同一主成分の酸化物半導
体材料を用いる場合、
図28(C)に示すように、第1の酸化物半導体層304と、第2
の酸化物半導体層306とが、同一の結晶構造を有する場合がある。このため、
図28(
C)では点線で示したが、第1の酸化物半導体層304と第2の酸化物半導体層306の
境界が判別できなくなり、第1の酸化物半導体層304と第2の酸化物半導体層306を
同一の層と見なせる場合もある。
【0569】
次に、マスクを用いたエッチングなどの方法によって第1の酸化物半導体層304及び第
2の酸化物半導体層306を加工して、島状の第1の酸化物半導体層304a及び第2の
酸化物半導体層306aを形成する(
図28(D)参照)。
【0570】
第1の酸化物半導体層304及び第2の酸化物半導体層306のエッチングには、ドライ
エッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。もちろん、その両方を組み合
わせて用いることもできる。酸化物半導体層を所望の形状にエッチングできるよう、材料
に合わせてエッチング条件(エッチングガスやエッチング液、エッチング時間、温度等)
は適宜設定する。第1の酸化物半導体層304及び第2の酸化物半導体層306のエッチ
ングは、先の実施の形態における酸化物半導体層のエッチングと同様に行うことができる
。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0571】
なお、酸化物半導体層のうち、チャネル形成領域となる領域は、平坦な表面を有している
ことが望ましい。例えば、第2の酸化物半導体層表面の高低差は、ゲート電極と重畳する
領域(チャネル形成領域)において、1nm以下(好ましくは0.2nm以下)であると
好適である。
【0572】
次に、第2の酸化物半導体層306aに接するように導電層を形成する。それから、該導
電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極308a、ソース電極ま
たはドレイン電極308bを形成する(
図28(D)参照)。ソース電極またはドレイン
電極308a、ソース電極またはドレイン電極308bは、先の実施の形態におけるソー
ス電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bと同様に形
成することができる。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0573】
また、
図28(D)に示す工程で、第1の酸化物半導体層304aおよび第2の酸化物半
導体層306aの側面において、ソース電極またはドレイン電極308a、ソース電極ま
たはドレイン電極308bと接する結晶層が非晶質状態となることもある。
【0574】
次に、第2の酸化物半導体層306aの一部に接するゲート絶縁層312を形成する。ゲ
ート絶縁層312は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。そ
の後、ゲート絶縁層312上の、第1の酸化物半導体層304a及び第2の酸化物半導体
層306aと重畳する領域にゲート電極314を形成する。そして、ゲート絶縁層312
およびゲート電極314上に、層間絶縁層316および層間絶縁層318を形成する(図
28(E)参照)。ゲート絶縁層312、ゲート電極314、層間絶縁層316および層
間絶縁層318は、先の実施の形態におけるゲート絶縁層などと同様に形成することがで
きる。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0575】
ゲート絶縁層312の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第3の熱
処理を行うのが望ましい。第3の熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましく
は250℃以上350℃以下である。例えば、酸素を含む雰囲気下で250℃、1時間の
熱処理を行えばよい。第3の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のば
らつきを軽減することができる。また、ゲート絶縁層312が酸素を含む絶縁層である場
合、第2の酸化物半導体層306aに酸素を供給し、第2の酸化物半導体層306aの酸
素欠損を低減して、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層を形成
することもできる。
【0576】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層312の形成後に第3の熱処理を行っているが、
第3の熱処理のタイミングはこれに限定されない。また、第2の熱処理など、他の処理に
よって第2の酸化物半導体層に酸素を供給している場合には、第3の熱処理は省略しても
良い。
【0577】
ゲート電極314は、ゲート絶縁層312上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択
的にパターニングすることによって形成することができる。詳細については、先の実施の
形態のゲート電極に関する記載を参酌することができる。
【0578】
層間絶縁層316および層間絶縁層318は、PVD法やCVD法などを用いて形成する
ことができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、
酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することがで
きる。なお、本実施の形態では、層間絶縁層316と層間絶縁層318の積層構造として
いるが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。1層としても良いし、3層以上の
積層構造としても良い。
【0579】
なお、上記層間絶縁層318は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。
表面が平坦になるように層間絶縁層318を形成することで、層間絶縁層318上に、電
極や配線などを好適に形成することができるためである。
【0580】
以上により、第1の酸化物半導体層304a、および、第1の酸化物半導体層304aの
結晶領域から結晶成長させた第2の酸化物半導体層306aを用いたトランジスタ350
が完成する。
【0581】
図28(E)に示すトランジスタ350は、下層基板300上に絶縁層302を介して設
けられた第1の酸化物半導体層304aと、第1の酸化物半導体層304a上に設けられ
た第2の酸化物半導体層306aと、第2の酸化物半導体層306aと電気的に接続する
ソース電極またはドレイン電極308a、ソース電極またはドレイン電極308bと、第
2の酸化物半導体層306a、ソース電極またはドレイン電極308a、ソース電極また
はドレイン電極308bを覆うゲート絶縁層312と、ゲート絶縁層312上のゲート電
極314と、ゲート絶縁層312及びゲート電極314上に層間絶縁層316と、層間絶
縁層316上に層間絶縁層318とを有する。
【0582】
本実施の形態において示すトランジスタ350では、第1の酸化物半導体層304aおよ
び第2の酸化物半導体層306aが高純度化されているため、その水素濃度は、5×10
19/cm3以下、望ましくは5×1018/cm3以下、より望ましくは5×1017
/cm3以下、より望ましくは1×1016/cm3未満となる。また、酸化物半導体層
のキャリア密度は、一般的なシリコンウェハにおけるキャリア密度(1×1014/cm
3程度)と比較して、十分に低い値(例えば、1×1012/cm3未満、望ましくは、
1×1011/cm3未満)をとる。そして、これにより、オフ電流が十分に小さくなる
。例えば、ドレイン電圧VDが+1Vまたは+10Vの場合であって、ゲート電圧VGが
-5Vから-20Vの範囲では、室温でのオフ電流は1×10-13A以下である。また
、上記トランジスタは、ノーマリーオフのトランジスタ特性を有している。従って、ゲー
トとソース電極間の電圧がほぼ0の状態におけるオフ電流、すなわちリーク電流が、シリ
コンを用いたトランジスタに比べて著しく小さい。例えば室温での単位チャネル幅リーク
電流は10aA/μm以下となる。
【0583】
このように高純度化され、真性化された第1の酸化物半導体層304aおよび第2の酸化
物半導体層306aを用いることで、トランジスタのオフ電流を十分に低減することがで
きる。
【0584】
さらに、本実施の形態では、酸化物半導体層として、結晶領域を有する第1の酸化物半導
体層304aと、第1の酸化物半導体層304aの結晶領域から結晶成長させた第2の酸
化物半導体層306aを用いているため、電界効果移動度を向上させ、良好な電気特性を
有するトランジスタを実現することができる。
【0585】
なお、本実施の形態では、先の実施の形態に示すトランジスタ402として、トランジス
タ350を用いる場合を説明したが、開示する発明をこれに限定して解釈する必要はない
。例えば、本実施の形態に示すトランジスタ350は、結晶領域を有する第1の酸化物半
導体層304a、および第1の酸化物半導体層304aの結晶領域から結晶成長させた第
2の酸化物半導体層306aを用いており、良好な電界効果移動度を有するので、集積回
路を構成するトランジスタを含むすべてのトランジスタに酸化物半導体を用いることが可
能である。そして、このような場合には、先の実施の形態に示すように積層構造である必
要もない。この場合、例えば、ガラス基板などの基板を用いて半導体装置を形成すること
が可能である。
【0586】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0587】
(実施の形態13)
本実施の形態では、先の実施の形態で得られる不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置
を搭載した電子機器の例について
図29を用いて説明する。先の実施の形態で得られる不
揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を搭載した電子機器は、従来にない優れた特性を
有するものである。このため、当該不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を用いて新
たな構成の電子機器を提供することが可能である。なお、先の実施の形態に係る不揮発性
のラッチ回路を用いた半導体装置は、集積化されて回路基板などに実装され、各電子機器
の内部に搭載されることになる。
【0588】
図29(A)は、先の実施の形態に係る不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を含む
ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体1301、筐体1302、表示部130
3、キーボード1304などによって構成されている。開示する発明に係る半導体装置を
ノート型のパーソナルコンピュータに適用することで、優れた性能のノート型のパーソナ
ルコンピュータを提供することができる。
【0589】
図29(B)は、先の実施の形態に係る不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を含む
携帯情報端末(PDA)であり、本体1311には表示部1313と、外部インターフェ
イス1315と、操作ボタン1314等が設けられている。また操作用の付属品としてス
タイラス1312がある。開示する発明に係る半導体装置を携帯情報端末(PDA)に適
用することで、優れた性能の携帯情報端末(PDA)を提供することができる。
【0590】
図29(C)には、先の実施の形態に係る不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を含
む電子ペーパーの一例として、電子書籍1320を示す。電子書籍1320は、筐体13
21および筐体1323の2つの筐体で構成されている。筐体1321および筐体132
3は、軸部1337により一体とされており、該軸部1337を軸として開閉動作を行う
ことができる。このような構成により、電子書籍1320は、紙の書籍のように用いるこ
とが可能である。
【0591】
筐体1321には表示部1325が組み込まれ、筐体1323には表示部1327が組み
込まれている。表示部1325および表示部1327は、続き画面を表示する構成として
もよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とするこ
とで、例えば右側の表示部(
図29(C)では表示部1325)に文章を表示し、左側の
表示部(
図29(C)では表示部1327)に画像を表示することができる。
【0592】
また、
図29(C)では、筐体1321に操作部などを備えた例を示している。例えば、
筐体1321は、電源1331、操作キー1333、スピーカー1335などを備えてい
る。操作キー1333により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキ
ーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や
側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSB
ケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成
としてもよい。さらに、電子書籍1320は、電子辞書としての機能を持たせた構成とし
てもよい。
【0593】
また、電子書籍1320は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、
電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすること
も可能である。
【0594】
なお、電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野に適用することが可能
である。例えば、電子書籍以外にも、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジッ
トカード等の各種カードにおける表示などに適用することができる。開示する発明に係る
半導体装置を電子ペーパーに適用することで、優れた性能の電子ペーパーを提供すること
ができる。
【0595】
図29(D)は、先の実施の形態に係る不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を含む
携帯電話機である。当該携帯電話機は、筐体1340および筐体1341の二つの筐体で
構成されている。筐体1341は、表示パネル1342、スピーカー1343、マイクロ
フォン1344、ポインティングデバイス1346、カメラ用レンズ1347、外部接続
端子1348などを備えている。また、筐体1340は、当該携帯電話機の充電を行う太
陽電池セル1349、外部メモリスロット1350などを備えている。また、アンテナは
筐体1341内部に内蔵されている。
【0596】
表示パネル1342はタッチパネル機能を備えており、
図29(D)には映像表示されて
いる複数の操作キー1345を点線で示している。なお、当該携帯電話は、太陽電池セル
1349で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路を実装してい
る。また、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置などを内蔵した構成とす
ることもできる。
【0597】
表示パネル1342は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル
1342と同一面上にカメラ用レンズ1347を備えているため、テレビ電話が可能であ
る。スピーカー1343およびマイクロフォン1344は音声通話に限らず、テレビ電話
、録音、再生などが可能である。さらに、筐体1340と筐体1341はスライドし、図
29(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適
した小型化が可能である。
【0598】
外部接続端子1348はACアダプタやUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能で
あり、充電やデータ通信が可能になっている。また、外部メモリスロット1350に記録
媒体を挿入し、より大量のデータの保存および移動に対応できる。また、上記機能に加え
て、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。開示する発明に
係る半導体装置を携帯電話機に適用することで、優れた性能の携帯電話機を提供すること
ができる。
【0599】
図29(E)は、先の実施の形態に係る不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を含む
デジタルカメラである。当該デジタルカメラは、本体1361、表示部(A)1367、
接眼部1363、操作スイッチ1364、表示部(B)1365、バッテリー1366な
どによって構成されている。開示する発明に係る半導体装置をデジタルカメラに適用する
ことで、優れた性能のデジタルカメラを提供することができる。
【0600】
図29(F)は、先の実施の形態に係る不揮発性のラッチ回路を用いた半導体装置を含む
テレビジョン装置である。テレビジョン装置1370では、筐体1371に表示部137
3が組み込まれている。表示部1373により、映像を表示することが可能である。なお
、ここでは、スタンド1375により筐体1371を支持した構成を示している。
【0601】
テレビジョン装置1370の操作は、筐体1371が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機1380により行うことができる。リモコン操作機1380が備える操作キー
1379により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部1373に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機1380に、当該リモコン操作機
1380から出力する情報を表示する表示部1377を設ける構成としてもよい。
【0602】
なお、テレビジョン装置1370は、受信機やモデムなどを備えた構成とするのが好適で
ある。受信機により、一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介し
て有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受
信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行う
ことが可能である。開示する発明に係る半導体装置をテレビジョン装置に適用することで
、優れた性能のテレビジョン装置を提供することができる。
【0603】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる
【符号の説明】
【0604】
100 基板
102 保護層
104 半導体領域
106 素子分離絶縁層
108a ゲート絶縁層
110a ゲート電極
110b 電極
112 絶縁層
114 不純物領域
116 チャネル形成領域
118 サイドウォール絶縁層
120 高濃度不純物領域
122 金属層
124 金属化合物領域
126 層間絶縁層
128 層間絶縁層
130a ソース電極またはドレイン電極
130b ソース電極またはドレイン電極
130c 電極
132 絶縁層
134 導電層
136a 電極
136b 電極
136c 電極
136d ゲート電極
138 ゲート絶縁層
140 酸化物半導体層
142 導電層
142a ソース電極またはドレイン電極
142b ソース電極またはドレイン電極
144 保護絶縁層
146 層間絶縁層
148 導電層
150a 電極
150b 電極
150c 電極
150d 電極
150e 電極
152 絶縁層
154a 電極
154b 電極
154c 電極
154d 電極
154e 電極
156 絶縁層
158a 電極
158b 電極
158c 電極
158d 電極
160 トランジスタ
164 絶縁層
164a 絶縁層
164b 絶縁層
166 ゲート絶縁層
168 絶縁層
170 層間絶縁層
172 層間絶縁層
178 ゲート電極
200 下層基板
202 絶縁層
206 酸化物半導体層
206a 酸化物半導体層
208a ソース電極またはドレイン電極
208b ソース電極またはドレイン電極
212 ゲート絶縁層
214 ゲート電極
216 層間絶縁層
218 層間絶縁層
250 トランジスタ
300 下層基板
302 絶縁層
304 酸化物半導体層
304a 酸化物半導体層
305 酸化物半導体層
306 酸化物半導体層
306a 酸化物半導体層
308a ソース電極またはドレイン電極
308b ソース電極またはドレイン電極
312 ゲート絶縁層
314 ゲート電極
316 層間絶縁層
318 層間絶縁層
350 トランジスタ
400 ラッチ回路
400a ラッチ回路
400b ラッチ回路
401 データ保持部
402 トランジスタ
402a トランジスタ
402b トランジスタ
404 容量
404a 容量
404b 容量
411 ラッチ部
412 第1の素子
413 第2の素子
414 配線
415 配線
431 スイッチ
432 スイッチ
1301 本体
1302 筐体
1303 表示部
1304 キーボード
1311 本体
1312 スタイラス
1313 表示部
1314 操作ボタン
1315 外部インターフェイス
1320 電子書籍
1321 筐体
1323 筐体
1325 表示部
1327 表示部
1331 電源
1333 操作キー
1335 スピーカー
1337 軸部
1340 筐体
1341 筐体
1342 表示パネル
1343 スピーカー
1344 マイクロフォン
1345 操作キー
1346 ポインティングデバイス
1347 カメラ用レンズ
1348 外部接続端子
1349 太陽電池セル
1350 外部メモリスロット
1361 本体
1363 接眼部
1364 操作スイッチ
1365 表示部(B)
1366 バッテリー
1367 表示部(A)
1370 テレビジョン装置
1371 筐体
1373 表示部
1375 スタンド
1377 表示部
1379 操作キー
1380 リモコン操作機