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特許7601980移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/30 20220101AFI20241210BHJP
   G06T 5/70 20240101ALI20241210BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241210BHJP
   G05D 1/243 20240101ALI20241210BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241210BHJP
【FI】
G06V10/30
G06T5/70
G06T7/00 C
G05D1/243
G05D1/43
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023169549
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】津田 浩平
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 10/30
G06T 5/70
G06T 7/00
G05D 1/243
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識する認識部と、
前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御する制御部と、を備え、
前記認識部は、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定するノイズ判定処理を実行する、
移動体の制御装置。
【請求項2】
前記認識部は、前記ノイズ判定処理において、前記分布を表す曲線を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記曲線が有する極大点の数に基づいて判定する、
請求項1に記載の移動体の制御装置。
【請求項3】
前記認識部は、前記極大点の数に基づいて前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれると判定した場合、前記所定領域における点群から前記光源ノイズを除去する、
請求項2に記載の移動体の制御装置。
【請求項4】
前記認識部は、前記移動体の周辺を同じ大きさの単位領域の集合として認識し、前記単位領域の占有状態により前記単位領域における前記物体の存在および不在を管理するものであり、
前記単位領域ごとに前記ノイズ判定処理を実行する、
請求項1に記載の移動体の制御装置。
【請求項5】
前記認識部は、前記画像から認識された点群のクラスタリングにより前記物体の候補領域を認識し、前記候補領域のうち、所定サイズ以下のものを前記光源ノイズの候補領域として認識する、
請求項4に記載の移動体の制御装置。
【請求項6】
前記認識部は、前記光源ノイズの候補領域に含まれる単位領域ごとに、前記ノイズ判定処理を実行する、
請求項5に記載の移動体の制御装置。
【請求項7】
前記認識部は、前記曲線が有する極大点の数が2である場合に、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれると判定する、
請求項2に記載の移動体の制御装置。
【請求項8】
コンピュータが、
移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識するための認識処理と、
前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御するための制御処理と、
を実行する移動体の制御方法であって、
前記認識処理では、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定する、
移動体の制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識するための認識処理と、
前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御するための制御処理と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記認識処理は、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定するものである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LIDAR機器の出力に基づいて決定された候補障害物に対応する点(以下、対応点)を水平面の領域に投影して水平面上のグリッドに関連付け、対応点とグリッドとの関連付けの状況に基づいて候補障害物からノイズに対応する第一候補障害物セットを除去することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2023-517105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、候補障害物から光源ノイズを適切に認識できない場合があり、適切に光源ノイズを除去できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、より精度良く光源ノイズを認識または除去することができる移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る移動体の制御装置は、移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識する認識部と、前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御する制御部と、を備え、前記認識部は、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定するノイズ判定処理を実行するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記認識部は、前記ノイズ判定処理において、前記分布を表す曲線を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記曲線が有する極大点の数に基づいて判定するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記認識部は、前記極大点の数に基づいて前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれると判定した場合、前記所定領域における点群から前記光源ノイズを除去するものである。
【0009】
(4):上記(1)の態様において、前記認識部は、前記移動体の周辺を同じ大きさの単位領域の集合として認識し、前記単位領域の占有状態により前記単位領域における前記動体の存在および不在を管理するものであり、前記単位領域ごとに前記ノイズ判定処理を実行するものである。
【0010】
(5):上記(4)の態様において、前記認識部は、前記画像から認識された点群のクラスタリングにより前記動体の候補領域を認識し、前記候補領域のうち、所定サイズ以下のものを前記光源ノイズの候補領域として認識するものである。
【0011】
(6):上記(5)の態様において、前記認識部は、前記光源ノイズの候補領域に含まれる単位領域ごとに、前記ノイズ判定処理を実行するものである。
【0012】
(7):上記(2)の態様において、前記認識部は、前記曲線が有する極大点の数が2である場合に、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれると判定するものである。
【0013】
(8):本発明の他の態様に係る移動体の制御方法は、コンピュータが、移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識するための認識処理と、前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御するための制御処理と、を実行する移動体の制御方法であって、前記認識処理では、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定するものである。
【0014】
(9):本発明の他の態様に係るプログラム、コンピュータに、移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識するための認識処理と、前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御するための制御処理と、を実行させるためのプログラムであって、前記認識処理は、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定するものである。
【発明の効果】
【0015】
上記の(1)から(9)の態様によれば、より精度良く光源ノイズを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】移動体100を含む移動体システム1の構成の一例を示す図である。
図2】移動体100の利用態様の一例について説明するための図である。
図3】移動体100を示す斜視図である。
図4】移動体100の機能構成の一例を示す図である。
図5】認識部206の認識結果に含まれ得る光源ノイズの一例を示す図である。
図6】認識部206が光源ノイズを除去しながら、移動体100の周辺の動体を認識する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】物体候補領域の認識結果の一例を示す図である。
図8】光源ノイズ候補領域として抽出された物体候補領域の一例を示す図である。
図9】光源ノイズ候補領域C2から光源ノイズに対応する点群を除去する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0018】
図1は、移動体100を含む移動体システム1の構成の一例を示す図である。移動体システム1は、例えば、一以上の端末装置2と、管理装置10と、情報提供装置20と、一以上の移動体100とを含む。これらは、例えば、ネットワークNWを介して通信を行う。ネットワークNWは、例えば、LAN、WAN、インターネット回線などの任意のネットワークである。
【0019】
[端末装置]
端末装置2は、例えば、スマートフォンや、タブレット端末などのコンピュータ装置である。端末装置2は、例えば、利用者の操作に基づいて、管理装置10から移動体100の利用の権限の提供をリクエストしたり、利用の許可がされたことを示す情報を取得したりする。
【0020】
[管理装置]
管理装置10は、端末装置2のリクエストに応じて、移動体100の利用の権限を端末装置2のユーザに付与したり、移動体100の利用の予約を管理したりする。管理装置10は、例えば、予め登録されたユーザの識別情報と、移動体100の利用予約の日時とを対応付けたスケジュール情報を生成し管理する。
【0021】
[情報提供装置]
情報提供装置20は、移動体100が存在する位置や、移動体100が移動する領域、領域周辺の地図情報を移動体100に提供する。情報提供装置20は、移動体100のリクエストに応じて、移動体100の目的地までの経路を生成し、生成した経路を移動体100へ提供してもよい。
【0022】
[移動体]
移動体100は、以下のような利用態様でユーザに利用される。図2は、移動体100の利用態様の一例について説明するための図である。移動体100は、例えば、施設や街の所定の位置に配置されている。ユーザは、移動体100を利用したいとき、移動体100の操作部(不図示)を操作して利用を開始したり、端末装置2を操作して移動体100の利用を開始したりすることができる。例えば、ユーザが、買い物に出かけて荷物が多くなったとき、移動体100の利用を開始して、移動体100の収納部に荷物を入れる。そして、移動体100は、ユーザに自律的に追従するようにユーザと共に移動する。ユーザは、荷物を移動体100に収納した状態で買い物を続けたり、次の目的地に向かったりすることができる。例えば、移動体100は、ユーザと共に歩道や車道の横断歩道を移動しながら移動する。移動体100は、車道および歩道などの歩行者が通行可能な領域を移動可能である。例えば、移動体100は、ショッピングセンターや空港、公園、テーマパークなど屋内または屋外の施設や私有地内において利用されてもよく、歩行者が通行可能な領域を移動可能である。
【0023】
移動体100は、上記のようにユーザに追従する追従モードに加え(または代えて)、誘導モードや緊急モードなどのモードで自律的に移動可能であってもよい。
【0024】
図3は、移動体100を示す斜視図である。以下の説明では、移動体100の前方方向をプラスx方向、移動体100の後方方向をマイナスx方向、移動体100の幅方向であってプラスx方向を基準に左方向をプラスy方向、右方向をマイナスy方向、x方向およびy方向に直交する方向であって移動体100の高さ方向をプラスz方向として説明する。
【0025】
移動体100は、例えば、基体110と、基体110に設けられた扉部112と、基体110に組み付けられた車輪(第1車輪120、第2車輪130および第3車輪140)とを備える。例えば、ユーザは、扉部112を開放して、基体110に設けられた収納部に荷物を入れたり、収納部から荷物を取り出したりすることができる。第1車輪120および第2車輪130は駆動輪であり、第3車輪140は補助輪(従動輪)である。移動体100は、無限軌道などの車輪以外の構成を用いて移動可能であってもよい。
【0026】
基体110のプラスz方向の面には、プラスz方向に延在する円柱状の支持体150が設けられている。支持体150のプラスz方向の端部には、移動体100の周囲を撮像するカメラ180が設けられている。カメラ180が設けられる位置は、上記とは異なる任意の位置であってもよい。
【0027】
カメラ180は、例えば、移動体100の周辺を広角に(例えば360度で)撮像可能なカメラである。カメラ180は、複数のカメラを含んでもよい。カメラ180は、例えば、複数の120度カメラまたは複数の60度カメラが組み合わされて実現されてもよい。
【0028】
図4は、移動体100の機能構成の一例を示す図である。移動体100は、図3に示した機能構成に加え、更に、第1モータ122、第2モータ132、バッテリ134、ブレーキ装置136、ステアリング装置138、通信部190、および制御装置200を備える。第1モータ122および第2モータ132は、バッテリ134に供給される電力によって稼働する。第1モータ122は第1車輪120を駆動させ、第2モータ132は第2車輪130を駆動させる。第1モータ122は第1車輪120のホイールに設けられるインホイールモータであり、第2モータ132は第2車輪130のホイールに設けられるインホイールモータであってもよい。
【0029】
ブレーキ装置136は、制御装置200の指示に基づいてブレーキトルクを各車輪に出力する。ステアリング装置138は、電動モータを備える。電動モータは、例えば、制御装置200の指示に基づいてラックアンドピニオン機構に力を作用させて第1車輪120または第2車輪130の向きを変更して、移動体100の進路を変更する。
【0030】
通信部190は、端末装置2、管理装置10または情報提供装置20と通信するための通信インターフェースである。
【0031】
[制御装置]
制御装置200は、例えば、位置特定部202と、情報処理部204と、認識部206と、経路生成部208と、軌道生成部210と、第1制御部212と、第2制御部214と、記憶部220とを備える。位置特定部202と、情報処理部204と、認識部206と、経路生成部208と、軌道生成部210と、第1制御部212と、第2制御部214とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0032】
記憶部220は、HDDやフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置により実現される。記憶部220には、第1制御部212および第2制御部214が参照する移動体100の行動を制御するための制御プログラムである制御情報222や地図情報224が記憶されている。地図情報224は、例えば、情報提供装置20により提供された移動体100が存在する位置や、移動体100が移動する領域、領域周辺などの地図情報である。地図情報には、移動体100が移動することができる領域と、移動体100が移動することができない領域(静的に配置された障害物や立ち入り禁止区域など)とが含まれ得る。
【0033】
経路生成部208と、軌道生成部210と、第1制御部212と、第2制御部214とのうち一部または全部は「制御部」の一例である。制御装置200に含まれる機能構成の一部または全部は、他の装置に含まれてもよい。例えば、他の装置と移動体100とが通信して協働して移動体100を制御してもよい。
【0034】
位置特定部202は、移動体100の位置を特定する。位置特定部202は、移動体100に内蔵されたGPS(Global Positioning System)装置(不図示)により移動体100の位置情報を取得する。位置情報とは、例えば、二次元の地図座標でもよく、緯度経度情報でもよい。
【0035】
情報処理部204は、例えば、端末装置2、管理装置10、または情報提供装置20から取得した情報を管理する。
【0036】
認識部206は、例えば、カメラ180が撮像した画像に基づいて、移動体100の周辺にある物体の位置(移動体100からの距離と移動体100に対する方向)、および速度、加速度等の状態を認識する。物体とは、交通参加者や、施設内や道路に存在する障害物などを含む。また、障害物とは、地図情報に含まれる静的障害物や、地図情報に含まれない動的障害物を含む。認識部206は、移動体100のユーザを認識し、トラッキングする。例えば、ユーザが移動体100を利用する際に登録したユーザが撮像された画像(例えばユーザの顔画像)や、端末装置2または管理装置10により提供されたユーザの顔画像(またはユーザ顔画像から得られた特徴量)に基づいて、認識部206は、ユーザをトラッキングする。認識部206は、ユーザが行ったジェスチャを認識する。なお、移動体100にはレーダ装置やLIDARなどカメラとは異なる検出部が設けられていてもよい。この場合、認識部206は、画像に代えて(または加えて)、レーダ装置やLIDARの検出結果を用いて移動体Mの周辺の状況を認識する。
【0037】
経路生成部208は、ユーザが指定した目的地までの経路を生成する。目的地とは、商品の場所や、施設の場所であってもよい。この場合、ユーザは、商品や施設を指定することで、移動体100は、指定された商品や施設の場所を目的地として設定する。経路は、目的地に合理的に到達することができる経路である。例えば、目的地までの距離や、目的地に到達するまでの時間、経路の通行のしやすさなどをスコア化して、各スコアおよび各スコアを統合したスコアが閾値以上である経路が導出される。
【0038】
軌道生成部210は、例えば、ユーザのジェスチャや、ユーザにより設定された目的地、周辺の物体、ユーザの位置等に基づいて、移動体100が将来走行すべき軌道を生成する。軌道生成部210は、目標地点まで移動体100が滑らかに移動できるような軌道を生成する。軌道生成部210は、例えば、予め定められたジェスチャと行動との対応関係に基づいて移動体100の行動に応じた軌道を生成したり、周辺の物体を避けながら目的地に向かうための軌道を生成したりする。また、軌道生成部210は、例えば、トラッキングしているユーザに追従するための軌道またはユーザを先導するための軌道を生成する。軌道生成部210は、例えば、予め設定されたモードに基づく行動に応じた軌道を生成する。軌道生成部210は、移動体100の行動に応じた複数の軌道を生成し、軌道ごとのリスクを求め、求めたリスクの合計値や、各軌道点のリスクが、予め設定された基準を満たす場合(例えば合計値が閾値Th1以下であり、且つ各軌道点のリスクが閾値Th2以下である場合)、基準を満たす軌道を移動体100が移動する軌道として採用する。リスクは、例えば、軌道(軌道の軌道点)に対して障害物との距離が小さければ小さいほど高く、軌道に対して障害物との距離が大きければ大きいほど小さい傾向である。
【0039】
第1制御部212は、予め設定された基準を満たす軌道に沿って、移動体100が走行するようにモータ(第1モータ122、第2モータ132)や、ブレーキ装置136、ステアリング装置138を制御する。
【0040】
第2制御部214は、認識部206の認識結果に基づいて、移動体100が周辺の物体と接触することなく、且つ、ユーザと移動体100との距離が所定距離範囲内となるように移動体100を制御する。所定距離範囲とは、予め設定された最短距離Dminと最長距離Dmaxとの間の距離範囲である。最短距離Dminと最長距離Dmaxは、例えば、動作制御の種類(追従制御、誘導制御等)や周辺状況(移動路の形状、人混み度合)等に応じた可変距離でもよく、固定距離でもよい。
【0041】
[光源ノイズ]
上述のとおり、認識部206はカメラ180が撮像した画像に基づいて移動体100の周辺の物体を認識するものであるが、移動体100の周辺に照明や窓などの光源が存在する場合、移動体100の位置や向きによっては、カメラ180が撮像する画像に、いわゆる白飛びなどの光源ノイズが含まれる場合がある。図5は、認識部206の認識結果に含まれ得る光源ノイズの一例を示す図である。認識部206は、移動体100の周辺領域を所定サイズの格子の集合として管理するとともに、各格子の状態によって物体の有無を管理する。例えば、図5の例は、占有状態の格子によって物体の存在を表し、非占有状態の格子によって物体の不在を表したものである。図5は、或る時点の移動体100の周辺領域R1を高さ方向から俯瞰して見た格子平面(以下「占有格子図」という。)を表している。ここで、占有格子図の各格子(または各格子に対応する領域)は「単位領域」の一例である。
【0042】
なお、占有格子図による障害物有無の管理において、移動体100の走行路面は、各格子の占有状態を左右し得る物体として扱われない。すなわち、認識部206は、カメラ180が撮像した画像や地図情報224などに基づき、移動体100の周辺で移動体100が走行可能な路面(以下「走行路面」という。)を認識し、走行路面を除く物体の有無により、各格子の占有状態を認識するものである。例えば、認識部206は、カメラ180が撮像した画像や地図情報224などに基づいて周辺に存在する物体に対応する点群を三次元で認識し、点群の高さ方向の位置に基づいて走行路面に対応する点群を認識することができる。
【0043】
図5は、領域R1において障害物B1、B2、B3が認識された状況を表している。これらの障害物のうち、障害物B1およびB3は正しく認識された障害物を表し、障害物B2は障害物として誤認識された光源ノイズを表している。このような光源ノイズによる障害物の誤認識が発生してしまうと、本来は移動体100の走行経路として使用できるはずの領域が通行不可領域となってしまい、適切な走行経路を設定できなくなってしまう。例えば、図5の例では、障害物B2の誤認識がなければ走行経路として直線経路RT1を設定できたのに対し、障害物B2が誤認識されたことで、走行経路が迂回経路RT2に設定されてしまう。このように光源ノイズは、移動体100に対して適切な走行経路を決定することを阻害する可能性がある。このため、本実施形態の認識部206は、移動体100の周辺の物体の認識結果に対して光源ノイズを除去するフィルタリング処理を実施するように構成されるものである。
【0044】
[光源ノイズのフィルタリング処理]
図6は、認識部206が光源ノイズを除去しながら、移動体100の周辺の物体を認識する処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、認識部206は、画像に基づいて認識された占有格子図について、占有状態の格子をクラスタリングすることにより各物体候補領域を認識する(S101)。クラスタリングの方法は任意であるが、例えば最短距離法を用いることができる。図7は、物体候補領域の認識結果の一例を示す図である。図7は、図5の障害物B1、B2、B3と同様の配置の物体候補領域C1、C2、C3が認識された場合を表している。
【0045】
続いて、認識部206は、物体候補領域のうち、格子数が少ない(閾値以下である)ものを光源ノイズ候補領域として抽出し(S102)、抽出した光源ノイズ候補領域ごとに、光源ノイズ候補領域に含まれる点群について高さ方向(Z軸方向)における密度曲線を作成する(S103)。この密度曲線は、光源ノイズ候補領域内に存在する点群の数を高さごとに合算したものである。この意味で、密度曲線は、高さ方向おける点群のヒストグラムということができる。認識部206は、作成した密度曲線についてヒストグラム検定を行って極大点を認識し(S104)、認識された極大点の分布に基づいて、対象の格子に含まれる光源ノイズを除去する(S105)。より具体的には、認識部206は、物体に対応する第1の点群と、第1の点群から空中(高さ方向)に離間して第2の点群が存在する場合に、第2の点群を光源ノイズとして除去する。例えば、認識部206は、密度曲線が有する極大点のうち所定の高度以上に存在するものを光源ノイズ起因とみなし、当該極大点の高度に位置する点群を光源ノイズとして除去してもよい。これは、光源ノイズが空中に存在するためである。以下、認識された点群が光源ノイズか否かを判定する処理をノイズ判定処理という。
【0046】
図8は、光源ノイズ候補領域として抽出された物体候補領域C2の一例を示す図である。図8は、図7における物体候補領域C1、C2、C3について、光源ノイズ候補領域を抽出する際の格子数の閾値を2以上5以下とした場合の例である。この場合、物体候補領域C1、C2、C3の格子数はそれぞれ9、2、6であるので、閾値が2以上5以下である場合、物体候補領域C2が光源ノイズ候補領域として抽出される。以下、物体候補領域C2を光源ノイズ候補領域C2という場合がある。図8は、光源ノイズ候補領域C2において、走行路面に対応する点群P1が高さ方向の低い位置(例えばZ=z1付近)に存在し、所定高度付近の空中(例えばZ=z2付近)に光源ノイズに対応する点群P2が存在する場合を表している。
【0047】
図9は、光源ノイズ候補領域C2から光源ノイズに対応する点群を除去する方法を説明する図である。図9は、光源ノイズ候補領域C2について作成された密度曲線L1を表すグラフである。この場合、密度曲線の極大点はZ=z1付近とZ=z2付近に現れるので、例えば、高さの閾値zth以上の点群をフィルタリングすることにより光源ノイズ候補領域C2内の光源ノイズを除去することができる。認識部206は、光源ノイズを除去した後の点群の分布に基づいて占有格子図を更新する(S106)。この結果、光源ノイズ候補領域C2を構成する格子群の占有状態が占有から非占有に変更され、当該格子群が走行可能領域として認識されることになる。
【0048】
なお、光源ノイズ候補領域を抽出する際に使用する格子数の閾値や、光源ノイズ起因の極大点を検出する際に使用する高さの閾値は、移動体100が走行する環境に応じて適宜調整されてよい。また、実際の障害物に対応する点群が光源ノイズとして誤って除去されることを抑制するために、高さの閾値に加えて、光源ノイズに対応する点群の分布の特徴に基づいてフィルタリング条件を追加してもよい。例えば、上述のとおり、光源ノイズは比較的小規模な範囲で空中に発生するので、光源ノイズ起因の極大点を形成するピークについて形状に関連する判定条件が追加されてもよい。例えば、以下のような判定条件が設定されてもよい。
・ピーク幅が閾値以下である(すなわちピークが鋭く、分布範囲が小規模である)
・ピーク前後の極小点が度数0付近である(すなわち中空である)
【0049】
なお、障害物によってはその形状(たとえば凸凹など)によって極大点や極小点が形成される場合もあるので、密度曲線をより大きな範囲で離散化(高さ方向)するようにしてもよい。そうすることで、密度曲線は、所定幅(高さ方向)ごとの度数(点数)を表すヒストグラムに近いものとなっていくので、障害物の形状によって生じる細かいピークが均され、光源ノイズ起因として誤認識されにくくすることができる。
【0050】
また、簡易的なフィルタリングを行う場合には、光源ノイズか否かの判定を極大点の数に基づいて行うようにしてもよい。例えば、走行路面上に障害物が存在せず、高さ方向に中空であり、且つ光源ノイズが無い領域では走行路面に対応する点群のみが検出される(すなわち走行路面に対応する極大点のみが検出される)ので、検出される極大点の数は1となる。また、走行路面上に障害物が存在し、その障害物の上方が中空であり、且つ光源ノイズが無い領域でも、走行路面および障害物に対応する点群が比較的近い範囲で検出されることになるので、この場合も検出される極大点の数は1となる可能性が高い。このため、空中に光源ノイズが存在する場合、極大点の数は2となる可能性が高い。そこで、認識部206は、密度曲線(ヒストグラムでもよい)の極大点の数を数え、極大点の数が2である場合に光源ノイズ有りと判定し、高さが高い方の極大点に対応する点群を光源ノイズとしてフィルタリングするように構成されてもよい。
【0051】
また、上記の説明では、光源ノイズ候補領域について密度曲線を作成し、作成した密度曲線に基づいて光源ノイズ候補領域内の光源ノイズを除去する場合について説明したが、密度曲線の作成および光源ノイズの除去は、光源ノイズ候補領域を構成する格子ごとに行われてもよい。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、移動体100の周辺が撮像された画像から認識された占有格子図について、より精度良く光源ノイズを認識または除去することができる。
【0053】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識するための認識処理と、
前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御するための制御処理と、
を実行し、
前記認識処理では、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定する、
移動体。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 移動体システム
2 端末装置
10 管理装置
20 情報提供装置
100 移動体
110 基体
112 扉部
120 第1車輪
122 第1モータ
130 第2車輪
132 第2モータ
134 バッテリ
136 ブレーキ装置
138 ステアリング装置
140 第3車輪
150 支持体
180 カメラ
190 通信部
200 制御装置
202 位置特定部
204 情報処理部
206 認識部
208 経路生成部
210 軌道生成部
212 第1制御部
214 第2制御部
220 記憶部
222 制御情報
224 地図情報
【要約】
【課題】より精度良く光源ノイズを認識または除去することができる移動体の制御装置、移動体の制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】移動体の周辺の状況が撮像された画像に基づいて前記移動体の周辺に存在する物体に対応する点群を認識する認識部と、前記周辺の状況に基づいて前記移動体の移動経路を決定し、決定した前記移動経路を移動するように前記移動体を制御する制御部と、を備え、前記認識部は、前記移動体の周辺の所定領域において、前記物体の候補として認識された点群の高さ方向の分布を求め、前記所定領域における点群に光源ノイズが含まれるか否かを、前記分布に基づいて判定するノイズ判定処理を実行する、移動体の制御装置。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9