(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】パラレルリンクロボットおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20241210BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20241210BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B25J11/00 D
B25J9/10 A
B25J19/00 Z
(21)【出願番号】P 2023500833
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2022005775
(87)【国際公開番号】W WO2022176819
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021024120
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ソク ヒョンチョル
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119017(JP,A)
【文献】特開平03-121792(JP,A)
【文献】特開平08-132366(JP,A)
【文献】特開昭62-199382(JP,A)
【文献】米国特許第04552502(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部と、
該基礎部の下方に配置される可動部と、
前記基礎部と前記可動部とを並列に連結する複数のアームと、
前記可動部を上下方向に延びる軸線に沿って貫通し、前記可動部に対して前記軸線回りに回転駆動される手首軸とを備え、
前記可動部の上面または該上面に露出する前記手首軸の上部の一方に、位置決め治具を着脱可能に取り付ける治具取付部が設けられ、
前記可動部または前記手首軸の他方に、前記治具取付部に取り付けられた前記位置決め治具を接触させる被接触面が設けられ、または、該被接触面を備える被接触部材を着脱可能に取り付け可能であり、
前記治具取付部に取り付けられた前記位置決め治具を前記被接触面に接触させた状態で、前記可動部に対する前記手首軸の前記軸線回りの所定の位相を前記位置決め治具により検出可能であるパラレルリンクロボット
と、
前記治具取付部に取り付けられる前記位置決め治具とを備え、
前記位置決め治具が、前記治具取付部に取り付けられ、接触により前記被接触面の位置を検出可能な検出器を備えるロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パラレルリンクロボットおよびロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可動部の上面および可動部に鉛直軸線回りに回転可能に支持された手首軸の外周面に一対の目印が設けられたパラレルリンクロボットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。可動部と手首軸との位相合わせは、作業者が、可動部に対して手首軸を回転させ、一対の目印が一致したことを目視によって確認することにより行われる。可動部の上方における位相合わせを可能とすることにより、手首軸の下部の手首フランジに取り付けたハンド等を取り外す必要がなく、位相合わせを容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の目印の一致を作業者が目視によって確認する作業は誤差が大きい。
したがって、手首軸に取り付けたハンド等を取り外すことなく、可動部と手首軸とを精度良く、かつ、容易に位相合わせすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基礎部と、該基礎部の下方に配置される可動部と、前記基礎部と前記可動部とを並列に連結する複数のアームと、前記可動部を上下方向に延びる軸線に沿って貫通し、前記可動部に対して前記軸線回りに回転駆動される手首軸とを備え、前記可動部の上面または該上面に露出する前記手首軸の上部の一方に、位置決め治具を着脱可能に取り付ける治具取付部が設けられ、前記可動部または前記手首軸の他方に、前記治具取付部に取り付けられた前記位置決め治具を接触させる被接触面が設けられ、または、該被接触面を備える被接触部材を着脱可能に取り付け可能であり、前記治具取付部に取り付けられた前記位置決め治具を前記被接触面に接触させた状態で、前記可動部に対する前記手首軸の前記軸線回りの所定の位相を前記位置決め治具により検出可能であるパラレルリンクロボットと、前記治具取付部に取り付けられる前記位置決め治具とを備え、前記位置決め治具が、前記治具取付部に取り付けられ、接触により前記被接触面の位置を検出可能な検出器を備えるロボットシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態に係るパラレルリンクロボットを示す斜視図である。
【
図2】
図1のパラレルリンクロボットに位置決め治具が取り付けられた本開示のロボットシステムを示す可動部材の平面図である。
【
図3】
図1の可動部材および手首軸部材を示す斜視図である。
【
図4】
図2のロボットシステムの位置決め治具の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図2のロボットシステムの第1の変形例において、パラレルリンクロボットの可動部材へのブラケットの取付方法を示す分解斜視図である。
【
図6】
図2のロボットシステムの第2の変形例における可動部材の平面図である。
【
図7】
図2のロボットシステムの第3の変形例における可動部材の平面図である。
【
図8】
図2のロボットシステムの第4の変形例における可動部材の部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係るパラレルリンクロボット1およびロボットシステム100について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボットシステム100は、
図1および
図2に示されるように、パラレルリンクロボット1と、パラレルリンクロボット1に着脱可能に取り付けられる位置決め治具10とを備えている。
【0008】
パラレルリンクロボット1は、
図1に示されるように、基礎部2と、基礎部2の下方に配置された平坦な上面を有する可動部材(可動部)3と、基礎部2と可動部材3とを並列に連結する3本のアーム4とを備えている。また、パラレルリンクロボット1は、可動部材3の中心を鉛直方向に貫通する回転軸線(軸線)A回りに回転可能に可動部材3に支持された手首軸部材(手首軸)5を備えている。
【0009】
基礎部2は、上方に配置される天井あるいは架台等の外部構造物(図示略)に固定されるハウジング21に固定され、3本のアーム4をそれぞれ駆動する3つのアーム用アクチュエータ22を備えている。3つのアーム用アクチュエータ22は、基礎部2の中心を通る鉛直軸線B回りの周方向に等間隔をあけて配置されている。
【0010】
各アーム4は、一端がいずれかのアーム用アクチュエータ22の回転駆動軸に固定された駆動リンク41と、駆動リンク41の他端に球面軸受61によって一端が接続された2本の平行な受動リンク42とを備えている。また、3本のアーム4のうちの1本には、手首用アクチュエータ70が取り付けられている。手首用アクチュエータ70と後述する手首軸部材5を回転させるギヤ71とは、ユニバーサルジョイント72を介在させてドライブシャフト73によって接続されている。
【0011】
可動部材3は、
図1から
図3に示されるように、回転軸線Aに沿って延びる中空部3hを有する環状に形成されている。また、可動部材3には、球面軸受62によって各アーム4の各受動リンク42の他端が接続されている。これにより、基礎部2に配置された3つのアーム用アクチュエータ22が同期して制御されることによって、可動部材3は水平姿勢を保ったまま3次元的に移動させられる。
【0012】
可動部材3の上面3aには、
図3に示されるように、回転軸線Aに直交する平面に沿って延びる取付座面(治具取付部)30が設けられている。取付座面30には、回転軸線Aに平行に延びる2つのネジ孔31および2つのピン孔32が設けられている。
【0013】
手首軸部材5は、中空部3h内に配置され、手首用アクチュエータ70からドライブシャフト73,ユニバーサルジョイント72およびギヤ71を経由して伝達された駆動力により、可動部材3に対して回転軸線A回りに回転させられる。手首軸部材5は、可動部材3を回転軸線Aに沿う方向に貫通して、上端を可動部材3の上方に、下端を可動部材3の下方に露出させている。
【0014】
可動部材3の上方に露出する手首軸部材5の上端には、円筒状の上端部の周方向の一部を上方に突出させた凸部50が設けられている。凸部50の周方向の一端側には、回転軸線Aを含む平面に沿って配置される被接触面51が設けられている。
手首軸部材5の下端には、ハンド等のツール(図示略)が取り付けられるフランジ52が設けられている。手首軸部材5は、回転軸線Aに沿って貫通する中央孔5hを備えている。中央孔5hを経由して、図示しないチューブあるいはケーブル等の線条体を基礎部2側からツールまで導くことができる。
【0015】
位置決め治具10は、
図2から
図4に示されるように、可動部材3の取付座面30に取り付けられるブラケット11と、ブラケット11に位置決め状態に固定されるダイヤルゲージ(検出器)15とを備えている。
ブラケット11は、取付座面30に密着させられる平板状の取付部12と、取付部12に接続されダイヤルゲージ15を取り付ける平板状の壁部13とを備えている。
【0016】
取付部12には、板厚方向に貫通する2つの貫通孔12aおよび2つのピン孔12bが設けられている。また、壁部13には、板厚方向に貫通しダイヤルゲージ15のステム15aを貫通させる貫通孔13aと、壁部13の外部から貫通孔13aの内面に貫通し押しネジ13bが締結されるネジ孔(図示略)とが設けられている。
【0017】
ダイヤルゲージ15は、壁部13の貫通孔13aを貫通したステム15aをネジ孔に締結された押しネジ13bによって押すことにより、ステム15aの長手軸を壁部13の基準面13cに直交する方向に配置して壁部13に固定される。この状態で、ステム15aの先端に位置する測定子15bの壁部13からの突出量が所定量となったときに、ダイヤルゲージ15の読みがゼロ点となるように調整される。
【0018】
位置決め治具10を可動部材3に取り付けるには、ダイヤルゲージ15を取り付けたブラケット11の取付部12を取付座面30に密着させ、2本のピン(図示略)を取付部12のピン孔12bおよび取付座面30のピン孔32にそれぞれ嵌合させる。そして、取付部12の2つの貫通孔12aを貫通させた2本のボルト(図示略)を取付座面30のネジ孔31に締結することにより、ブラケット11が取付座面30に位置決め状態に固定される。
【0019】
この状態で、壁部13の基準面13cは、可動部材3に対する手首軸部材5の回転軸線A回りの位相が所定の位相に合わせられたときの被接触面51に対して、所定の間隔をあけて平行となる位置に配置される。そして、この状態で、ダイヤルゲージ15のステム15aの先端側に配置される測定子15bは、被接触面51の回転軸線A回りの回転軌道上に配置される。
【0020】
このように構成された本実施形態に係るパラレルリンクロボット1およびロボットシステム100の作用について以下に説明する。
パラレルリンクロボット1の可動部材3と手首軸部材5との回転軸線A回りの位相合わせを行う場合には、可動部材3の上面3aに設けられた取付座面30に位置決め治具10を2本のピンとボルトとによって取り付ける。
【0021】
2本のピンによって、ダイヤルゲージ15の取付座面30に沿う方向の位置が一義的に決定される。すなわち、ダイヤルゲージ15のステム15aの長手軸が、手首軸部材5に設けられた凸部50の回転軌道上に、その回転軌道の接線に沿って配置される。
【0022】
この状態で、可動部材3に対して手首軸部材5を回転軸線A回りに回転させ、凸部50に設けられた被接触面51をダイヤルゲージ15の測定子15bに接触させる。そして、ダイヤルゲージ15の読みがゼロ点となった位置で手首軸部材5の回転を停止することにより、可動部材3に対する手首軸部材5の位相を所定の位相に精度よく合わせることができる。
【0023】
そして、この状態で、パラレルリンクロボット1を制御する制御装置(図示略)に対して、可動部材3に対する手首軸部材5の回転軸線A回りの位相を0°に設定することにより、可動部材3と手首軸部材5との位相合わせが完了する。
この場合において、本実施形態によれば、可動部材3の上面3aに固定した位置決め治具10によって、可動部材3と手首軸部材5との位相合わせを実施することができる。したがって、作業者は、フランジ52に取り付けられたツールを取り外す必要がなく、位相合わせを容易に行うことができるとともに、位置決め治具10を用いて精度よく行うことができるという利点がある。
【0024】
なお、本実施形態においては、取付座面30に対して位置決め治具10を2本のボルトで固定したが、1本のボルトで固定してもよい。
また、本実施形態においては、取付座面30に対する位置決め治具10の位置決めには2本のピンを用いた。これに代えて、ブラケット11を取付座面30に沿う方向の1方向に突き当てる1つの突き当て面と1本のピンまたは、取付座面30に沿う方向の2方向に突き当てる2つの突き当て面によって位置決めしてもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、取付座面30を回転軸線Aに直交する平面に沿って配置したが、これに代えて、
図5に示されるように、回転軸線Aを含む平面に平行な取付座面30を採用してもよい。この場合、ブラケット11は、単純な平板状に構成することができ、かつ位置決め用のピンあるいは突き当て面をなくすことができる。
【0026】
また、本実施形態
の参考例においては、ダイヤルゲージ15を備える位置決め治具10を例示したが、これに代えて、
図6に示されるように、被接触面51に直接突き当てられるブロック20によって位置決め治具10を構成してもよい。
ブロック20は、ブロック20を可動部材3の上面3aの取付座面30に位置決め状態に固定するための取付部20aを備えている。また、ブロック20は、取付座面30に固定された状態で、可動部材3に対して手首軸部材5が回転軸線A回りの所定の位相に配置されたときに、被接触面51と突き当たる突き当て面(突き当て部材)20bを備えている。
【0027】
ブロック20を取付座面30に位置決め状態に固定した状態で、手首軸部材5を可動部材3に対して回転軸線A回りに回転させることにより、被接触面51をブロック20の突き当て面20bに近接させる。そして、突き当て面20bが被接触面51に突き当たった時点で、手首軸部材5が可動部材3に対して所定の位相に位相合わせされる。作業者は、被接触面51と突き当て面20bとの接触により、位相合わせが行われたことを直感的に確認することができる。
【0028】
図6には、L字状に形成されたブロック20を例示したが、これに限定されるものではなく、ブロック20は、上記と同様の取付部20aおよび突き当て面20bを備えていれば、任意の形状でよい。
【0029】
また、本実施形態においては、手首軸部材5の上端から上方に突き出した凸部50に被接触面51を設けた。これに代えて、
図7に示されるように、手首軸部材5の上端に、着脱可能にかつ位置決め状態に取り付けられる被接触部材55に、被接触面51を設けてもよい。被接触部材55としては、手首軸部材5の上端の外周面よりも径方向外方に向かって片持ち梁状に突出する形状を有していてもよい。
【0030】
これにより、位置決め治具10のダイヤルゲージ15あるいは突き当て面20bを、手首軸部材5の外面よりも径方向外方に離れた位置において被接触面51に接触させることができる。被接触面51と位置決め治具10との接触位置を回転軸線Aから遠ざけることにより、回転角度に対する被接触面51の移動量を増大させることができ、位相合わせの精度を向上することができる。
【0031】
また、この場合においては、手首軸部材5の上端に取り付けられた部材を被接触部材55とし、可動部材3の上面3aに取り付けられた部材を位置決め治具10としたが、被接触部材55と位置決め治具10との機能を入れ替えてもよい。すなわち、手首軸部材5の上端に取り付けられた径方向外方に向かって片持ち梁状に突出した形状の部材を位置決め治具10とし、可動部材3の上面に取り付けられた部材を被接触部材55としてもよい。この場合、位置決め治具10を取り付けるための取付座面30は、手首軸部材5の上面に配置される。
【0032】
また、
本実施形態の参考例としては、図8に示されるように、手首軸部材5の外周面(壁部)56の径方向外方に微小隙間をあけて隣接する壁部36を可動部材3に設け、手首軸部材5および壁部36に、径方向に貫通し所定の位相において同軸に配置されるピン孔57,37をそれぞれ設けてもよい。そして、位置決め治具10として、ピン孔57,37に軸方向に移動可能に嵌合するピンを採用してもよい。
【0033】
この場合には、例えば、壁部36のピン孔37に位置決め治具10を嵌合させておき、手首軸部材5を可動部材3に対して回転させ、手首軸部材5のピン孔57にも位置決め治具10が嵌合できた時点で、手首軸部材5と可動部材3とを所定の位相に合わせられる。そして、この場合には、手首軸部材5のピン孔57の内周面が、位置決め治具10であるピンを接触させる被接触面として機能する。
作業者は、両ピン孔37,57に位置決め治具10が同時に嵌合された時点で位相合わせが完了したことを容易に確認することができる。
【0034】
壁部36は回転軸線A回りの周方向の一部に設けられていてもよいし、全周にわたって設けられていてもよい。また、
図3と同様に、可動部材3に設けた取付座面30にピン孔を有する壁部36を構成するブラケット11を位置決め状態に取り付けることにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 パラレルリンクロボット
10 位置決め治具
15 ダイヤルゲージ(検出器)
100 ロボットシステム
2 基礎部
20b 突き当て面(突き当て部材)
3 可動部材(可動部)
3a 上面
30 取付座面(治具取付部)
36 壁部
37 ピン孔
4 アーム
5 手首軸部材(手首軸)
51 被接触面
55 被接触部材
56 外周面(壁部)
57 ピン孔
A 回転軸線(軸線)