(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】酸化防止特性を有する多層可動性パッケージ
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20241210BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241210BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20241210BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/18 G
C09D5/00 Z
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2023506024
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2021071347
(87)【国際公開番号】W WO2022023503
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】102020000018589
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム・リヴァ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ヴァッカ
(72)【発明者】
【氏名】カタルジーナ・フィデカ
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-514131(JP,A)
【文献】特表2018-537369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-65/46
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化防止剤粒子の分散体を含む、少なくとも一つのポリマーコーティングを含む多層
フレキシブルパッケージであって、
前記酸化防止剤粒子が、0.1~10μmに含まれる体積平均直径を有するカプセルに含有され、
-0.1~0.5Vに含まれる還元電位を有する酸化防止剤のコア、及び
-前記コアの少なくとも70%を覆う、ポリマーシェル
を含むコア-シェル構造である、多層
フレキシブルパッケージ。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、タンニン酸、没食子酸プロピル、没食子酸、カフェイン酸、アスコルビン酸、及びフェルラ酸からなる群から選択される、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記ポリマーシェルが、糖、ガム、脂質、たんぱく質、天然高分子、化石由来高分子、及びそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記ポリマーコーティングが、アクリル樹脂(acrylics)、アクリル樹脂-スチレン
、ビニル
-アル
キドコポリマー、ウレタン-アクリル樹脂、脂肪族-ウレタン、ウレタン、ポリエステル、バイオポリエステル、エポキシ、シロキサン、ポリシロキサン、ポリウレタン
、フェノール樹脂、ポリエチレン-co-(ビニルアルコール)(EVOH)、ポリ(ビニルアルコール)(PVAL)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)及びそれらのコポリマー、ポリ(ビニルアセテート)(PVAC)、水性及び水希釈性ラテックスからなる群から選択される、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記ポリマーコーティングが0.5~100μmに含まれる厚さを有する、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記酸化防止剤のカプセルが、前記ポリマーコーティングに対して、5~50質量%に含まれる量で添加される、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記シェルの質量及び前記コア-シェル系の全体の質量の比が、0.25~0.75に含まれる、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記ポリマーコーティングが、ポリマーコーティングに対して1~30質量%に含まれる量で充填剤をさらに含む、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項9】
前記ポリマーコーティングが、ポリプロピレン(PP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリアミド(PA)、二軸延伸ポリアミド(BOPA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、バイオ-延伸ポリ乳酸(PLA)
、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、デンプン混合物、紙、積層紙(laminated paper)、リグニンセルロース混合物並びにセロファンからなる群から選択される基材と結合される、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項10】
ポリマーコーティングが、ポリエチレン、機械方向延伸ポリエチレン(MDO-PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、アクリル樹脂、アクリル樹脂-スチレン、アクリルコポリマー、シロキサン及びポリシロキサンからなる群から選択されるポリマー層で覆われる、請求項1に記載のパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア-シェル系分散体で得られる酸化防止特性によって特徴づけられる、多層可動性パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
空気-感応性材料のパッケージング及び貯蔵の分野において、達成されるべき最も重要な目標の一つが、酸化-関連分解による材料特性の損失を避けることである。例えば、酸化工程は、それらの品質及び安全性、特に食品の栄養及び感覚の質に影響を与える、腐敗性の製品及び食品の劣化の主要な原因と考えられている。
【0003】
この問題の可能な解決法の一つが、酸化反応及びその後のフリーラジカルの生成を抑制することができる酸化防止種の使用に依拠する。
【0004】
この分野において、有効なパッケージングへの前記酸化防止剤の統合は、酸化-関連分解工程の制御に対する、最も期待できる代替手段の一つである。
【0005】
主に使用される方法は、高分子化反応の前、又は組成物の二つの試薬の混合の後に、ポリウレタン接着剤の成分の一つに、酸化防止分子を添加することで酸化防止分子、具体的にはカテキンをポリウレタンマトリックスへ統合することを開示する、例えば、WO2014/170426に報告されるような高分子化工程の間の、酸化防止種の添加が代表される。
【0006】
また、US2006/0047069は、特定のpH範囲を設定して、高分子化工程の間にポリマー分散体に酸化防止剤を添加する同様の戦略を適用する。
【0007】
別の可能な方法は、ポリマー材料及び天然酸化防止剤を含む食品パッケージング材料を開示するWO2017/049364に報告されている。パッケージング材料を得るための、開示される方法は、ポリマー材料に、固体、液体、オイル、粉末又はエマルションとしての天然酸化防止剤の添加、及び続く(キャストフィルム押出及びインフレーション成形を含む)押出、成形、又は積層の工程により、食品パッケージング材料を形成することに関する。
【0008】
ポリマー材料に酸化防止剤を添加するためのさらに別の方法は、GB2237574に開示されており、ジ-、多価金属塩の水性溶液を含む架橋バスに、酸化防止剤及び水性アルギン酸ナトリウムのエマルションを噴霧することによりカプセルを調製することを示す。エマルション及び金属間の瞬間的な反応は、アルギン酸を架橋させ、隙間に酸化防止剤を含有する「スポンジ」様マトリックスを形成することを引き起こす。文中において、マトリックス粒子は、カプセルとして表され、工程はカプセル化として表されているが、この専門用語は、区別できる境界壁を有する「バルーン」型カプセルを含むものとして解釈されるべきでなく、むしろGB2237574に開示されるカプセルは、不規則な表面及び多数の孔を有する「スポンジ」のようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2014/170426
【文献】US2006/0047069
【文献】WO2017/049364
【文献】GB2237574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、開示される方法は、最終的に到達され得る層の厚さが、基本的に100~200μm未満にならないなど、パッケージングシステムでの最終使用に対していくつかの臨界点を提示しており、結果として最終解決法の可能な用途が減少することを伴う。さらなる積層は、パッケージの層への酸化防止剤種の配置によって代表されるが、結果として、容器の外側部分からの距離により、酸化防止剤活性の減少を伴う。さらに、カテキンなどのいくつか特定の分子の統合及びそれらの分布は、使用されるポリマーの特性との化学的な親和性に厳密に関連する。
【0011】
さらなる欠点は、例えば、酸化防止剤分子の損傷を導き得る、昇温の押出工程の間に適用することに関する。確かに、この分野おいて酸化防止剤の使用は、それら独自の性質、具体的には酸素、光、高温、pH及び貯蔵時間への暴露下でのそれらの不安程度によって制限されることを指摘することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、上記の欠点を克服する多層可動性パッケージを製造することである。この目的は、0.1~10μmに含まれる粒度分布、並びに0.1~0.5Vに含まれる還元電位を有する酸化防止剤のコア、及びコアの少なくとも70%を覆うポリマーシェルを含むコア-シェル構造を有する酸化防止剤カプセルの分散体を含有する少なくとも1つのポリマーコーティングを含む多層可動性パッケージによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明によるパッケージの構造及び特性は、以下のいくつかの実施態様の詳細な説明と付属の図面を参照して、当業者には明らかであるだろう:
【
図1】本発明の第一の実施態様に使用されるフィルムの図解の断面図である。
【
図2】本発明の第二の実施態様に使用されるフィルムの、
図1と同様の図である。
【
図3A】本発明の範囲外の他の三つの解決法に対する本発明によるカプセルの実施態様で提供される酸化の遅延を比較したグラフである。
【
図3B】本発明の範囲外の他の二つの解決法に対する本発明の実施態様によって提供される酸化の遅延を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的のために、上記の粒子分布範囲は、レーザー回折法によって測定した場合に、分散されたカプセルの90%が、特許請求の範囲に記載した範囲内に含まれる平均体積直径を有することを意味する。レーザー回折法の理論と実践に関する定義と考察は、ISO13320:2020規格に由来する。酸化防止剤種の還元電位は、化合物のフリーラジカルへの水素の供与しやすさに関連し、還元電位が低いほど、酸化防止剤の水素-供与能力が高いことが判明している。したがって、0.1~0.5Vに含まれる還元電位を有する酸化防止剤種は、パッケージ内に含有される空気-感応性材料の分解を避けるそれらの酸化防止剤の効果を実行する上で、最も効果的であることが証明されている。
【0015】
特に、本発明において使用される酸化防止剤種は、タンニン酸、没食子酸プロピル、没食子酸、カフェイン酸、アスコルビン酸及びフェルラ酸からなる群から選択される。
【0016】
粒子サイズは、酸化防止剤材料の還元電位を減少させる重要なパラメーターであり、粒子径が100μmから10μmになるにつれて大きな影響を及ぼすことが分かった。さらに、粒子サイズ及び形は、パッケージング構造において酸化防止剤の統合を可能にする重要な特性である。特に、食品、化粧品、栄養補助食品及び医薬品に関するパッケージングシステムは、典型的に、0.5~100μmの範囲の厚さを有する層からなり、0.1~10μmに含まれるサイズの粒子と球形状から、例えば、酸化防止剤粒子の機能性充填剤の微細な分布が確保され得る。
【0017】
本発明による0.1~10μmのサイズを有する酸化防止剤粒子の調製は、(結果として100μm未満の粒子径を有する粉末を得ることが困難である)粉末の調製に典型的に使用される機械的工程で製造されず、湿式又は乾式で、材料の可溶化、及びそれに続く沈殿による中間工程を含んで製造される。そのような方法は、溶媒揮発、ゾル-ゲル方法、マイクロエマルション、層ごとの吸着技術、マクロエマルション化、膜-補助エマルション化、膜-補助ナノ沈殿、in situ高分子量化、液滴形成/相分離、界面高分子量化、顆粒化(prilling)、噴霧乾燥、凍結乾燥、イオンのゲル化又は流動床技術でありうる。
【0018】
酸化防止剤コアを覆うポリマーシェルの存在によって、カプセルシステムが達成され、ポリマーは、シェルの質量と全体のコアシェルシステムの質量の比が、0.25~0.75に含まれるような量で添加される。この方法において、それぞれのカプセル3は、0.1~0.5Vに含まれる還元電位を有する酸化防止剤のコア4、及びコア4を覆うポリマーシェル5を含むコア-シェル構造を有する。
【0019】
ポリマーシェル5は、本発明の第一の実施態様において、糖、ガム、脂質、たんぱく質、天然高分子、化石由来高分子及びそれらのコポリマーから選択され得、好ましい形態において、天然高分子はアルギン酸(alginates)であり、化石由来高分子及びそれらのコポリマーは、ポリエチレン-co-(ビニルアルコール)(EVOH)である。
【0020】
さらに、前記ポリマーシェル5は、少なくともコア4の70%を覆い、好ましい実施態様においては、コア4を完全に覆う。
【0021】
代替の実施態様において、ポリマーシェル5は、グルタルアルデヒド、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ゲニピン(genipin)、又は、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ及びラッカーゼなどの酵素であり得る。
【0022】
そして、上記のカプセル3は、ポリマーコーティング2に対して、5~50質量%に含まれる量でポリマーコーティング2に分散される。
【0023】
前記ポリマーコーティング2は、0.5~100μmに含まれる厚さで特徴づけられ、アクリル樹脂(acrylics)、アクリル樹脂-スチレン、-ビニル及びアルキッドコポリマー、ウレタン-アクリル樹脂、脂肪族-ウレタン、ウレタン、ポリエステル、バイオポリエステル、エポキシ、シロキサン及びポリシロキサン、ポリウレタン、ポリスチレン、フェノール樹脂、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)(EVOH)、ポリ(ビニルアルコール)(PVAL)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)及びそれらのコポリマー、ポリ(ビニルアセテート)(PVAC)、水性及び水希釈性ラテックスから選択され得る。
【0024】
これに関して、本発明で記載されるように、コア-シェル技術(カプセル)に基づいた酸化防止剤システムの使用は、さらなる保護成分の必要なしに、酸化防止剤の分解を防ぎ、最終構造中の活性材料の保護及び統合を改善し、それらの機能活性の制御を増進させるのに十分である。
【0025】
加えて、有効なパッケージに酸化防止剤の統合において考えられるさらなる関連する特性は、有機マトリックスに前記材料の分散に関連する。より具体的には、コア-シェル構造の使用は、先行文献に主に報告される粉末システムとは異なり、分散体の制御及び均一性を増大させ、その結果パフォーマンスが向上する。
【0026】
したがって、全体のシステムの複雑性を考慮して、本発明のコア-シェルカプセルは、上記の通り、異なる工程で調製され得、酸化防止剤の分解を回避し、同時に、ポリマーマトリックス中の前記カプセルの均一及び規則的分布を可能にする。
【0027】
パッケージのいくつかの特定の特性を向上させるために、充填材料が、ポリマーコーティング2に対して1~30質量%に含まれる量でポリマーコーティング2に、さらに添加され得る。前記充填剤は、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ジルコニウムホスフェート、ポルフィリン、グラフェン及び他の二次元結晶、グラフェンオキシド、金属有機構造体(MOF)、セルロース並びにエチレン-ビニルアルコールコポリマーのカプセルから選択され得る。
【0028】
例えば、水分バリア効果が達成されるべき場合、充填剤は、フォージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、ZSM-5及びリンデタイプA(Linde Type A)から選択されるゼオライトであり得る。さらに、さらなる実施態様において、本出願人の名前で出願されたWO2020/012396に記載されるカプセルについて報告されているように、エチレン含有量が24~38モル%に含まれる(高エチレン含有量)粒子形態の第一エチレン-ビニルアルコールコポリマー、及びエチレン含有量が15モル%未満(低エチレン含有量)の第二エチレン-ビニルアルコールコポリマーの分散体の添加で、酸素バリア効果を有することが可能である。
【0029】
好ましい実施態様において、ポリマーコーティング2が、パッケージの外周に沿った連続フレームとして、又はパッケージの表面全体を覆う連続層として、塗布される。
【0030】
図1に示されるように、コア-シェルカプセル3を含有するポリマーコーティング2が、いくつかの種類の基材1、例えばポリプロピレン(PP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレン(PE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリアミド(PA)及び二軸延伸ポリアミド(BOPA)、ポリエチレンテレフタレート(PWT)及び二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、二軸延伸ポリ乳酸(PLA)、生分解性(mater-bi)(コーンスターチベースの生分解性プラスチック)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、デンプン混合物、紙及び積層紙、リグニンセルロース混合物並びにセロファンの基材との結合に使用され得る。
【0031】
さらに、前記ポリマーコーティング2は、
図2に示すように、ポリエチレン(PE)、機械方向延伸ポリエチレン(MDO-PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、アクリル樹脂、アクリル樹脂-スチレン、アクリルコポリマー、シロキサン及びポリシロキサンから選択されるポリマー層6で覆われ得る。
【0032】
最後に、異なる空気-感応性材料の保存性においての幅広い興味を考慮して、本明細書に記載される解決法は、食品、化粧品、栄養補助食品又は医薬品のパッケージングシステムにおいて容易に採用され得る。
【実施例】
【0033】
これより、本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に説明され得る。
【0034】
本発明によるサンプルS1の調製
コア-シェルカプセル3を、200rpmの撹拌下、室温に保たれた0.1MのHCl溶液に対して1質量%の、ポリマーシェル5の前駆体としての、キトサンが加えられることによって、調整した。可溶化の後、酸化防止剤材料として、タンニン酸が、キトサン溶液に対して2質量%で加えられ、同じ条件で撹拌が維持された。その可溶化の後、得られた処方を、噴霧乾燥し、少なくとも90%の粒子が10μm未満の粒径(直径)を有する単分散のカプセルの形態で存在するコア-シェルカプセル3を得た。
【0035】
比較サンプルC1の調製
シェルのない、酸化防止剤粒子を、200rpmの撹拌下、室温に保たれた水溶液に対して4質量%でタンニン酸を加えることによって調製した。その可溶化の後、得られた処方を噴霧乾燥し、粒子の少なくとも90%が10μm未満の粒径(直径)を有する単分散の粒子の形態で存在する粒子を得た。
【0036】
以下の表1は、サンプル調製の間に採用された噴霧乾燥のパラメーターを報告する:
【0037】
【0038】
比較サンプルC2の記載
Sigma Aldrichから購入したタンニン酸を、粒子への変換工程にそれを供することのない比較サンプルとして選択した。サンプルC2は、少なくとも90%の粒子が100μm未満の粒径(直径)を有する粉末の形態で存在した。
【0039】
コーティング調製
本発明にしたがって、低い膜厚のコーティングを得るために、上記のサンプルS1、C1及びC2を、その後二種類のポリマーマトリックスに分散させた。
【0040】
A)サンプルS1、C1及びC2を、光開始剤として1%のヒドロキシケトン-ベースの系を含む、ポリエチレングリコールジメタクリレート無溶剤ポリマー樹脂にポリマーコーティングに対して10質量%の量で分散させた。低い膜厚値によって特徴づけられるポリマーコーティングの調製のため、得られた分散体を、PET上に、4μmの公称厚みを有するスパイラルバーを用いて塗布し(bladed)、得られたコーティングをUV硬化工程(15秒、100mW/cm2)に供した。サンプルS1は、そのサイズによって、低い膜厚のポリマー層に酸化防止剤材料の規則的な分散を保証できないサンプルC2より、ポリマー層に、カプセルが規則的で均一に分布することによって特徴づけられた。サンプルS1とC1を比較した場合、ポリマーシェルの存在は、ポリマーバインダーへの酸化防止剤の反応性を保護し、その均一分散及び機能性を確かにした。
【0041】
B)サンプルS1、C1及びC2を、ポリマーコーティングに対して10質量%の量でポリシロキサン無溶剤ポリマー樹脂に分散した。低い膜厚値によって特徴づけられるポリマーコーティングの調製のため、得られた分散体を、PET上に、4μmの公称厚みを有するスパイラルバーを用いて塗布し、得られたコーティングを80℃45分間の熱硬化工程に供した。サンプルS1は、そのサイズによって、低い膜厚のポリマー層に酸化防止剤材料の規則的な分散を保証できないサンプルC2より、ポリマー層に、カプセルが規則的で均一に分布することによって特徴づけられた。サンプルS1とC1を比較した場合、ポリマーシェルの存在は、下記段落で説明するように、反応種への酸化防止剤の反応性を保護した。
【0042】
微小熱量測定法による粒子の機能性
サンプルS1、C1及びC2の酸化防止能を、酸化反応の阻害を測定するために、微小熱量測定法によって試験して、標準参照としての亜麻仁油(LO)単独、並びにサンプルS1、C1及びC2と混合したLOを比較した。定温モードにおいて、温度自動調節器中のオイルは、30℃の温度に維持され、生成した熱を経時的に連続測定した。
【0043】
図3Aのグラフは、サンプルS1、C1及びC2の活性の結果、標準亜麻仁油(LO)の、酸化の観点での遅延の比較を示す。明らかなことだが、サンプルS1は、サンプルC1の粒子及びサンプルC2の粉末と比較して、亜麻仁油の、酸化の観点でのきわめて長い予防時間を保証した。特に、100μm未満の粒径(直径)を有する粉末形態のサンプルC2については、試験条件において、関連する酸化防止能が観察されなかった。
【0044】
微小熱量測定法によるコーティングの機能性
サンプルS1及びC1を含むコーティングの酸化防止能を、酸化反応の阻害を測定するために、微小熱量測定法によって試験して、標準参照としての亜麻仁油(LO)単独、並びにサンプルS1及びC1を含むコーティングと混合されたLOを比較した。定温モードにおいて、温度自動調節器中のオイルは、30℃の温度に維持され、生成した熱を、経時的に連続測定した。
【0045】
図3Bのグラフは、サンプルS1及びC1の活性の結果、標準亜麻仁油(LO)の、酸化の観点での遅延の比較を示す。それぞれのコーティングを、方法A、すなわちポリエチレングリコールジメタクリレート無溶剤ポリマー樹脂中に前記サンプルを分散させることによって、調整した。
【0046】
したがって、サンプルS1を含むコーティングが、亜麻仁油の、酸化の観点での20時間以上の保護を確かにする一方、サンプルC1を含むコーティングの使用では、保護シェルが存在しないため、酸化防止剤粒子が直ちに反応し、結果として、保存期間の短縮をもたらすことが証明された。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・基材
2 ・・・ポリマーコーティング
3 ・・・カプセル
4 ・・・コア
5 ・・・ポリマーシェル
6 ・・・ポリマー層