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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ツインドライブ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 3/00 20060101AFI20241210BHJP
   G05D 3/12 20060101ALI20241210BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G05D3/00 Q
G05D3/12 T
H05K13/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023508375
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012902
(87)【国際公開番号】W WO2022201499
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】城戸 隆志
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-213548(JP,A)
【文献】特開2013-115163(JP,A)
【文献】特開2013-031234(JP,A)
【文献】特開2006-313839(JP,A)
【文献】特開2006-101570(JP,A)
【文献】特開2006-034078(JP,A)
【文献】特開2002-261496(JP,A)
【文献】特開平11-145694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/00
G05D 3/12
H05K 13/04
H02P 5/00 - 5/753
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向に沿って延在するスライダと、
前記スライダの両端部のそれぞれに対応して設けられ、前記スライダをY軸方向に沿って移動させる第1及び第2軸駆動部と、
前記スライダの前記両端部のそれぞれの位置を第1及び第2検出位置として検出する第1及び第2位置検出部と、
前記第1及び第2検出位置に基づいて前記第1及び第2軸駆動部を位置決め制御する制御部と、
前記位置決め制御により前記スライダを目的位置に停止させる際の、前記第1検出位置の第1目標位置と、前記第2検出位置の第2目標位置とを設定する目標位置設定部と、を備えるツインドライブ駆動装置であって、
前記目標位置設定部は、
仮の前記第1目標位置及び前記第2目標位置に基づいて前記位置決め制御を行うことによって、前記スライダを基準位置から検査位置に停止させたときの位置検査及び時間検査を行って前記ツインドライブ駆動装置の位置決め精度検査を行う検査部と、
前記位置決め精度検査の結果が前記位置検査及び時間検査の検査基準を満たすまで、前記仮の前記第1目標位置及び前記第2目標位置の少なくとも一方を前記Y軸方向の所定方向又は前記所定方向とは逆の反対方向へ順次変更して、前記検査部に前記位置決め精度検査を繰り返し行わせる更新部と、
前記位置決め精度検査の結果が前記検査基準を満たすときの前記仮の前記第1目標位置及び前記第2目標位置を前記第1目標位置及び前記第2目標位置に決定する決定部と、を含むツインドライブ駆動装置。
【請求項2】
X軸方向に沿って延在するスライダと、
前記スライダの両端部のそれぞれに対応して設けられ、前記スライダをY軸方向に沿って移動させる第1及び第2軸駆動部と、
前記スライダの前記両端部のそれぞれの位置を第1及び第2検出位置として検出する第1及び第2位置検出部と、
前記第1及び第2検出位置に基づいて前記第1及び第2軸駆動部を位置決め制御する制御部と、
前記位置決め制御により前記スライダを目的位置に停止させる際の、前記第1検出位置の第1目標位置と、前記第2検出位置の第2目標位置とを、前記第1及び第2軸駆動部において前記Y軸方向で互いに対向する向きの推力がそれぞれ発生するように設定する目標位置設定部と、を備えるツインドライブ駆動装置であって、
前記目標位置設定部は、
仮の前記第1目標位置及び前記第2目標位置に基づいて前記位置決め制御を行うことによって、前記ツインドライブ駆動装置の位置決め精度検査を行う検査部と、
前記位置決め精度検査の結果が検査基準を満たすまで、前記仮の前記第1目標位置及び前記第2目標位置の少なくとも一方を前記Y軸方向の所定方向又は前記所定方向とは逆の反対方向へ順次変更して、前記検査部に前記位置決め精度検査を繰り返し行わせる更新部と、
前記位置決め精度検査の結果が前記検査基準を満たすときの前記仮の前記第1目標位置及び前記第2目標位置を前記第1目標位置及び前記第2目標位置に決定する決定部と、を含むツインドライブ駆動装置。
【請求項3】
前記決定部で決定される前記第1目標位置及び前記第2目標位置又は前記第1目標位置に対する前記第2目標位置の相対位置関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部から読み出す前記第1目標位置及び前記第2目標位置又は前記相対位置関係を使用して前記位置決め制御を行う請求項1または請求項2に記載のツインドライブ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一対の軸駆動部でスライダを目的位置に停止させるツインドライブ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記ツインドライブ駆動装置に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載のXY位置決め制御装置は、X軸方向に沿って延在し、X軸方向に直交するY軸方向に沿って移動自在にさせると共に、搬送対象物をX軸方向に移動自在に支持する移動体と、当該移動体の両端部をそれぞれ第1及び第2のY軸方向に沿って案内する第1及び第2のガイド部材と、前記移動体の各端部の第1及び第2のY軸方向それぞれの位置を検出する第1及び第2の位置検出手段と、第1及び第2のY軸それぞれに沿って前記移動体を移動させる第1及び第2の駆動手段と、前記第1及び第2の位置検出手段から出力された位置情報を用いて第1及び第2の駆動手段に前記移動体をY軸方向へ移動させ、前記搬送対象物をX軸方向に移動させて位置決め制御する制御手段とを備えるXY位置決め制御装置であって、前記制御手段は、実駆動前に、前記第2の駆動手段を前記移動体がフリーランとなる状態にし、前記第1の駆動手段に、前記移動体を、少なくとも1つの第1のY軸の所定位置へ移動させ、前記移動体の前記第1のY軸の所定位置への移動後、前記第2の位置検出手段に、前記移動体の第2のY軸の所定位置情報を検出させ、実駆動時に、前記第1の駆動手段に、前記移動体を実駆動の位置である実駆動位置へ移動させ、前記第2の駆動手段に、前記移動体を、前記第1のY軸の所定位置に対する前記第2のY軸の所定位置情報の誤差を用いて補正をした実駆動位置へ移動させる、ことを特徴とする。
【0003】
下記特許文献1の記載によれば、このようなXY位置決め制御装置は、高精度な位置決めを行う全軸式位置決め制御方式において、第1のY軸側で移動体を所定位置に位置移動した際の第2のY軸の所定位置情報を検出し、実駆動時に、第1のY軸側で移動体を実駆動位置へ移動させ、第2のY軸側で、移動体を、第1のY軸の所定位置に対する検出した第2のY軸の所定位置情報の誤差を用いて補正をした実駆動位置へ移動させるので、第1のY軸側と第2のY軸側から移動体に働く外力の干渉を避けることができ、これにより、移動体の剛性を高くでき、高速で制御ゲインの高い位置決め制御を行うことができ、また、外力の干渉による、移動体の破損、第1及び第2の駆動手段の温度の上昇、並びに、余分な電力の消費を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-140749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1のY軸側と第2のY軸側から移動体に働く外力の干渉を避け過ぎると、移動体や駆動手段の剛性等によっては、移動体が実駆動位置に停止した際に発生するヨーイング振動を抑制できない虞がある。
【0006】
本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、位置決め制御によりスライダを目的位置に停止させる際の、スライダの位置決め精度を向上させることが可能なツインドライブ駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、X軸方向に沿って延在するスライダと、スライダの両端部のそれぞれに対応して設けられ、スライダをY軸方向に沿って移動させる第1及び第2軸駆動部と、スライダの両端部のそれぞれの位置を第1及び第2検出位置として検出する第1及び第2位置検出部と、第1及び第2検出位置に基づいて第1及び第2軸駆動部を位置決め制御する制御部と、位置決め制御によりスライダを目的位置に停止させる際の、第1検出位置の第1目標位置と、第2検出位置の第2目標位置とを設定する目標位置設定部と、を備えるツインドライブ駆動装置であって、目標位置設定部は、仮の第1目標位置及び第2目標位置に基づいて位置決め制御を行うことによって、スライダを基準位置から検査位置に停止させたときの位置検査及び時間検査を行ってツインドライブ駆動装置の位置決め精度検査を行う検査部と、位置決め精度検査の結果が位置検査及び時間検査の検査基準を満たすまで、仮の第1目標位置及び第2目標位置の少なくとも一方をY軸方向の所定方向又は所定方向とは逆の反対方向へ順次変更して、検査部に位置決め精度検査を繰り返し行わせる更新部と、位置決め精度検査の結果が検査基準を満たすときの仮の第1目標位置及び第2目標位置を第1目標位置及び第2目標位置に決定する決定部と、を含むツインドライブ駆動装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ツインドライブ駆動装置は、位置決め制御によりスライダを目的位置に停止させる際に、スライダの位置決め精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のツインドライブ駆動装置が模式的に表された平面図である。
図2】同ツインドライブ駆動装置の制御構成を説明するためのブロック図である。
図3】オフセット量算出方法を説明するためのフローチャートである。
図4】オフセット量再利用方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。但し、図1では、構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。更に、図1において、符号D1は、左右方向であるX軸方向を示している。符号D2は、前後方向であるY軸方向を示している。従って、X軸方向D1及びY軸方向D2は、互いに直交する水平方向である。
【0011】
図1に表されるように、本実施形態のツインドライブ駆動装置10は、左側リニアモータ12L、右側リニアモータ12R、スライダ14、左側リニアエンコーダ16L、及び右側リニアエンコーダ16R等を備えている。左側リニアモータ12Lは、左側固定子18L及び左側可動子20L等を備えている。右側リニアモータ12Rは、右側固定子18R及び右側可動子20R等を備えている。左側固定子18L及び右側固定子18Rは、レール状であって、X軸方向D1で一定間隔を空けながら、Y軸方向D2に沿って設けられている。左側可動子20Lは、左側固定子18Lによって、Y軸方向D2にスライド可能に装着されている。同様にして、右側可動子20Rは、右側固定子18Rによって、Y軸方向D2にスライド可能に装着されている。
【0012】
スライダ14は、ビーム状であって、X軸方向D1に延在するように、左側固定子18L及び右側固定子18Rの間に架け渡されている。スライダ14の左側端部22Lは、左側可動子20Lに固定されている。同様にして、スライダ14の右側端部22Rは、右側可動子20Rに固定されている。これにより、左側リニアモータ12L及び右側リニアモータ12Rは、スライダ14を、Y軸方向D2に沿って移動させることが可能である。
【0013】
左側リニアエンコーダ16Lは、左側スケール24L及び左側検出ヘッド26L等を備えている。左側スケール24Lは、その長手方向がY軸方向D2に沿うようにして、左側固定子18Lに固定されている。左側検出ヘッド26Lは、スライダ14の左側端部22Lにおいて、左側スケール24Lを検出可能な位置に固定されている。これにより、左側リニアエンコーダ16Lは、スライダ14の左側端部22Lの位置を、左側検出位置38L(後述する図2参照)として検出することが可能である。尚、左側検出ヘッド26Lは、左側可動子20Lにおいて、左側スケール24Lを検出可能な位置に固定されてもよい。
【0014】
同様にして、右側リニアエンコーダ16Rは、右側スケール24R及び右側検出ヘッド26R等を備えている。右側スケール24Rは、その長手方向がY軸方向D2に沿うようにして、右側固定子18Rに固定されている。右側検出ヘッド26Rは、スライダ14の右側端部22Rにおいて、右側スケール24Rを検出可能な位置に固定されている。これにより、右側リニアエンコーダ16Rは、スライダ14の右側端部22Rの位置を、右側検出位置38R(後述する図2参照)として検出することが可能である。尚、右側検出ヘッド26Rは、右側可動子20Rにおいて、右側スケール24Rを検出可能な位置に固定されてもよい。
【0015】
図2に表されるように、ツインドライブ駆動装置10は、上記した構成に加えて、コントローラ28、左側サーボアンプ30L、及び右側サーボアンプ30R等を備えている。コントローラ28は、コンピュータを主体として構成され、CPUなどの演算回路、RAM、ROM等を備えており、ツインドライブ駆動装置10の全体を制御する。尚、コントローラ28のROMには、後述する各制御プログラム、及びそれらの制御プログラムで使用される各種のデータ等が記憶されている。
【0016】
コントローラ28は、左側サーボアンプ30L及び右側サーボアンプ30Rに接続されている。左側サーボアンプ30Lは、左側リニアモータ12L及び左側リニアエンコーダ16Lに接続されている。同様にして、右側サーボアンプ30Rは、右側リニアモータ12R及び右側リニアエンコーダ16Rに接続されている。このようにして、ツインドライブ駆動装置10では、フィードバック制御のサーボ機構が構成されることによって、多軸制御が行われる。
【0017】
コントローラ28は、制御部32、目標位置設定部34、及び記憶部36を備えている。制御部32は、フィードバック制御のコントローラを担うものであって、左側リニアエンコーダ16Lで検出された上記の左側検出位置38Lと、右側リニアエンコーダ16Rで検出された上記の右側検出位置38Rとに基づいて、左側リニアモータ12L及び右側リニアモータ12Rの位置決め制御を行う。
【0018】
目標位置設定部34は、左側目標位置40L及び右側目標位置40Rを設定する。左側目標位置40Lは、左側検出位置38Lに対するフィードバック制御の目標値である。右側目標位置40Rは、右側検出位置38Rに対するフィードバック制御の目標値である。
【0019】
目標位置設定部34は、左側リニアモータ12L及び右側リニアモータ12Rの位置決め制御が行われる場合に、左側目標位置40L及び右側目標位置40Rを設定する。その際、左側目標位置40L及び右側目標位置40Rは、例えば、上記の図1に表されるように、位置決め制御でスライダ14を第1指令位置42Aに停止させる場合、左側可動子20L及び右側可動子20RにY軸方向D2で互いに対向する向きの推力44がそれぞれ発生するような位置に設定される。その設定については、後述する。
【0020】
尚、推力44は、左側可動子20Lで発生するものが前方を向き、右側可動子20Rで発生するものが後方を向いている。もっとも、左側目標位置40L及び右側目標位置40Rは、左側可動子20Lで発生する推力44が後方を向き、右側可動子20Rで発生する推力44が前方を向くように設定されてもよい。
【0021】
図2に戻って、記憶部36は、EEPROM等の不揮発性メモリであって、オフセット量46が記憶される。オフセット量46とは、Y軸方向D2における左側目標位置40L又は右側目標位置40Rからの距離をいい、オフセット量算出方法48(後述する図3参照)で求められる。オフセット量46の方向には、上記の図1に表されるように、所定方向D3と反対方向D4とがある。オフセット量46の所定方向D3とは、左側目標位置40L又は右側目標位置40RからY軸方向D2の前方へ向かう方向をいう。オフセット量46の反対方向D4とは、左側目標位置40L又は右側目標位置40RからY軸方向D2の後方へ向かう方向をいう。従って、オフセット量46の反対方向D4は、オフセット量46の所定方向D3とは逆である。
【0022】
ツインドライブ駆動装置10では、その出荷検査時において、例えば、図3のフローチャートで表されるオフセット量算出方法48の制御プログラムが、目標位置設定部34で実行されることによって、オフセット量46が求められる。以下、オフセット量算出方法48のフローチャートを説明する。
【0023】
初期設定処理S10では、スライダ14が治具等で基準位置に置かれた際の左側検出位置38L及び右側検出位置38Rが、左側リニアエンコーダ16L及び右側リニアエンコーダ16Rの基準点に設定される。また、オフセット量46には、初期値として、0が代入される。なお、その際、左側リニアモータ12L及び右側リニアモータ12Rは推力を発生させておらず、スライダ14はY軸方向D2に変形するような外力を受けていない状態とされる。
【0024】
精度検査処理S12では、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が行われる。ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査では、位置決め制御でスライダ14を基準位置から検査位置に停止させたときの位置検査及び時間検査が行われる。
【0025】
このような位置決め制御を具体的に説明すると、例えば、上記の図1に表される第1指令位置42Aが基準位置とされ、第1指令位置42AからY軸方向D2の前方へ離れた第2指令位置42Bが検査位置とされる。更に、左側目標位置40L及び右側目標位置40Rには、第2指令位置42Bを示す値が使用される。
【0026】
判定処理S14では、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が合格であるかが判定される。この判定では、位置検査の結果及び時間検査の結果がそれぞれの検査基準を満たす場合に、合格とされる。位置検査では、スライダ14の停止位置と検査位置との差が所定距離内にあれば、位置検査の結果が検査基準を満たすとされる。時間検査では、スライダ14が基準位置から検査位置に停止するまでの時間が所定時間内にあれば、時間検査の結果が検査基準を満たすとされる。
【0027】
ここで、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が合格である場合(S14:YES)、合格処理S16が行われる。合格処理S16では、オフセット量46が記憶部36に記憶される。この場合、オフセット量は、0である。その後、オフセット量算出方法48は、終了する。これに対して、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が不合格である場合(S14:NO)、所定方向増加処理S18が行われる。
【0028】
所定方向増加処理S18では、オフセット量46が所定方向D3で増えるように、オフセット量46に一定量が加えられる。一定量は、固定値であるが、例えば、位置検査の検査基準で使用される所定距離に係数を乗ずることによって求められる値等が使用されてもよい。
【0029】
精度検査処理S20では、上記の精度検査処理S12と同様にして、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が行われる。つまり、位置決め制御でスライダ14を基準位置から検査位置に停止させたときの位置検査及び時間検査が行われる。但し、位置決め制御で使用される左側目標位置40L及び右側目標位置40Rのうち、左側目標位置40Lには、仮の左側目標位置40Lが使用される。仮の左側目標位置40Lは、左側目標位置40Lから所定方向D3へオフセット量46離れた位置を示す値である。
【0030】
判定処理S22では、上記の判定処理S14と同様にして、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が合格であるかが判定される。ここで、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が合格である場合(S22:YES)、上記の合格処理S16が行われ、オフセット量46が記憶部36に記憶される。その際、記憶部36には、オフセット量46が増えた方向が、オフセット量46の方向として記憶される。その後、オフセット量算出方法48は、終了する。これに対して、ツインドライブ駆動装置10の位置決め精度検査が不合格である場合(S22:NO)、判定処理S24が行われる。
【0031】
判定処理S24では、今回の位置検査の結果が前回のものよりも向上したかが判定される。ここで、今回の位置検査の結果が前回のものと同等又は前回のものよりも低下した場合(S24:NO)、反対方向増加処理S26が行われる。反対方向増加処理S26では、オフセット量46に対して、初期値の0が代入される。更に、オフセット量46が反対方向D4で増えるように、オフセット量46に一定量が加えられる。尚、一定量は、上記の所定方向増加処理S18で使用されたものが使用される。
【0032】
これに対して、今回の位置検査の結果が前回のものよりも向上した場合(S24:YES)、同一方向増加処理S28が行われる。同一方向増加処理S28では、例えば、本処理が行われる直前のオフセット量46が、所定方向D3で増えるように一定量が加えられたものである場合、更に、オフセット量46が所定方向D3で増えるように、オフセット量46に一定量が加えられる。
【0033】
一方、本処理が行われる直前のオフセット量46が、反対方向D4で増えるように一定量が加えられたものである場合、更に、オフセット量46が反対方向D4で増えるように、オフセット量46に一定量が加えられる。尚、上記の反対方向増加処理S26が行われた後に、後述するようにして繰り返される上記の判定処理S24において、今回の位置検査の結果が前回のものよりも向上したと判定される場合は(S24:YES)、本処理が行われる直前のオフセット量46は、反対方向D4で増えるように一定量が加えられたものである。
【0034】
上記の反対方向増加処理S26又は上記の同一方向増加処理S28が行われた後は、判定処理S30が行われる。判定処理S30では、オフセット量46が制限量を超過したかが判定される。ここで、オフセット量46が制限量よりも少ない場合(S30:NO)、上記の精度検査処理S20以降の処理が繰り返し行われる。尚、上記の精度検査処理S20が上記の反対方向増加処理S26の実行後に繰り返される場合、上記の精度検査処理S20の位置決め制御で使用される仮の左側目標位置40Lは、左側目標位置40Lから反対方向D4へオフセット量46離れた位置を示す値である。
【0035】
これに対して、オフセット量46が制限量を超過した場合(S30:YES)、不合格処理S32が行われる。不合格処理S32では、オフセット量46が制限量を超過した旨等の情報が記憶部36に記憶される。その後、オフセット量算出方法48は、終了する。
【0036】
このようにして、記憶部36には、オフセット量算出方法48で算出されたオフセット量46とその方向が、ツインドライブ駆動装置10の固有値として記憶される(S16)。更に、記憶部36に記憶されたオフセット量46とその方向は、ツインドライブ駆動装置10の制御部32が行う位置決め制御で使用される。
【0037】
そのため、ツインドライブ駆動装置10では、制御部32が位置決め制御を行う際において、例えば、図4のフローチャートで表されるオフセット量再利用方法50の制御プログラムが、コントローラ28で実行される。以下、オフセット量再利用方法50を説明する。
【0038】
読出処理S50では、オフセット量46とその方向が記憶部36から読み出される。
設定処理S52では、位置決め制御で使用される左側目標位置40L及び右側目標位置40Rのうち、左側目標位置40Lが、目標位置設定部34によって、左側目標位置40Lからオフセット量46の方向(所定方向D3又は反対方向D4)へオフセット量46離れた位置を示す値に設定される。
【0039】
フィードバック制御処理S54では、位置決め制御が、制御部32によって行われる。その際、左側目標位置40Lには、上記の設定処理S52で設定されたものが使用される。これにより、オフセット量再利用方法50が終了する。
【0040】
このようなオフセット量を設定した位置決め制御では、スライダ14を、その右側端部22Rの位置を基準として目的位置(例えば、第1指令位置42A又は第2指令位置42B)に停止させる場合、スライダ14の左側端部22Lが、その目的位置からオフセット量46の方向(所定方向D3又は反対方向D4)へオフセット量46離れた位置で停止する。そのため、スライダ14は、Y軸方向D2に変形するような外力を受けていることになる。すなわち、上記の図1に表されるように、スライダ14が停止すると、左側リニアモータ12Lの左側可動子20L及び右側リニアモータ12Rの右側可動子20Rは、Y軸方向D2で互いに対向する向きの推力44をそれぞれ発生させている。この場合、スライダ14、左側リニアモータ12L、及び右側リニアモータ12Rの剛性等によっては、スライダ14の停止時に左側リニアモータ12Lの左側可動子20L及び右側リニアモータ12Rの右側可動子20Rにおいて、Y軸方向D2で互いに対向する向きの推力44がそれぞれ発生することで、互いに対向する向きの推力44がそれぞれ発生しない場合よりも、スライダ14のヨーイング振動が抑制される。
【0041】
以上詳細に説明したように、本実施形態のツインドライブ駆動装置10では、位置決め制御によりスライダ14を目的位置に停止させる際に、左側リニアモータ12Lの左側可動子20L及び右側リニアモータ12Rの右側可動子20Rにおいて、スライダ14、左側リニアモータ12L、及び右側リニアモータ12Rの剛性等に応じてオフセット量46を設定することで、スライダ14の位置決め精度を向上させることができる。
【0042】
ちなみに、本実施形態において、左側リニアモータ12Lは、第1軸駆動部の一例である。右側リニアモータ12Rは、第2軸駆動部の一例である。スライダの左側端部22L及びスライダの右側端部22Rは、スライダの両端部の一例である。左側リニアエンコーダ16Lは、第1位置検出部の一例である。右側リニアエンコーダ16Rは、第2位置検出部の一例である。左側検出位置38Lは、第1検出位置の一例である。右側検出位置38Rは、第2検出位置の一例である。
【0043】
左側目標位置40Lは、第1目標位置の一例である。右側目標位置40Rは、第2目標位置の一例である。第1指令位置42A又は第2指令位置42Bは、目的位置の一例である。オフセット量46は、第1目標位置に対する第2目標位置の相対位置関係の一例である。精度検査処理S20は、検査部の一例である。所定方向増加処理S18、反対方向増加処理S26、及び同一方向増加処理S28は、更新部の一例である。設定処理S52は、決定処理の一例である。
【0044】
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0045】
例えば、精度検査処理S20で行われる位置決め制御では、仮の左側目標位置40Lに代えて、仮の右側目標位置40Rが使用されてもよい。そのような場合、設定処理S52では、右側目標位置40Rが、目標位置設定部34によって、右側目標位置40Rからオフセット量46の方向(所定方向D3又は反対方向D4)へオフセット量46離れた位置を示す値に設定される。更に、フィードバック制御処理S54では、制御部32によって行われる位置決め制御において、右側目標位置40Rとして、上記の設定処理S52で設定されたものが使用される。
【0046】
また、合格処理S16では、オフセット量46に代えて、仮の左側目標位置40L又は仮の右側目標位置40Rが記憶部36に記憶されてもよい。そのような場合、フィードバック制御処理S54において、制御部32が、精度検査処理S12及び精度検査処理S20で使用した検査位置と同じ位置にスライダ14を停止させる位置決め制御を行う場合には、記憶部36に記憶されている仮の左側目標位置40L又は仮の右側目標位置40Rが、左側目標位置40L又は右側目標位置40Rとして使用される。
【0047】
また、精度検査処理S12、精度検査処理S20、及びフィードバック制御処理S54で行われる位置決め制御では、左側検出位置38L又は右側検出位置38Rとして、左側検出位置38L又は右側検出位置38Rからオフセット量46の方向(所定方向D3又は反対方向D4)へオフセット量46離れた位置を示す値が使用されてもよい。そのような場合、左側目標位置40L及び右側目標位置40Rは、変更されない。
【0048】
また、左側リニアエンコーダ16L及び右側リニアエンコーダ16Rに代えて、回転型サーボモータ、ボールねじ、タイミングベルト、又はガイドレール等の組合せによって、第1軸駆動部及び第2軸駆動部が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10:ツインドライブ駆動装置、12L:左側リニアモータ、12R:右側リニアモータ、14:スライダ、16L:左側リニアエンコーダ、16R:右側リニアエンコーダ、22L:スライダの左側端部、22R:スライダの右側端部、32:制御部、34:目標位置設定部、36:記憶部、38L:左側検出位置、38R:右側検出位置、40L:左側目標位置、40R:右側目標位置、42A:第1指令位置、42B:第2指令位置、44:推力、46:オフセット量、D1:X軸方向、D2:Y軸方向、D3:所定方向、D4:反対方向、S18:所定方向増加処理、S20:精度検査処理、S26:反対方向増加処理、S28:同一方向増加処理、S52:設定処理、S54:フィードバック制御処理。
図1
図2
図3
図4