(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ポンプ用軸受組立体及び軸受組立体を含むポンプ
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20241210BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20241210BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20241210BHJP
F16C 35/07 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16C33/80
F16C19/06
F16C35/07
(21)【出願番号】P 2023536514
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021084606
(87)【国際公開番号】W WO2022128636
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-09
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519286670
【氏名又は名称】エドワーズ エスエルオー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】クロメク ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ホーラー リチャード グリン
(72)【発明者】
【氏名】ルチェッタ エミリアーノ
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082767(JP,A)
【文献】国際公開第2008/035113(WO,A1)
【文献】特開平06-337016(JP,A)
【文献】特開平09-025937(JP,A)
【文献】特開2007-051747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,33/30-33/66,
33/72-33/82
F04D 1/00-13/16,17/00-19/04,
21/00-25/16,29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの回転可能なシャフトを取り付けるための軸受組立体であって、
外側リング及び内側リングを含む軸受と、
前記軸受の前記外側リングを支持するように構成された軸受支持体であって、前記外側リングの一方の端面の少なくとも一部にわたって延びる前記外側リングの外面の少なくとも一部を取り囲む、軸受支持体と、
前記軸受支持体から前記内側リングに向かって延び、これにより前記内側リングと前記外側リングとの間の環状ギャップの少なくとも一部を隠蔽するシールドと、
を備え、
前記内側リングは、前記内側リングの一端の外面に陥凹部を含み、前記シールドは、前記陥凹部内に延びるように構成されている、軸受組立体。
【請求項2】
前記軸受支持体が、コンパクトメタルスプリングダンパーを含む、請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項3】
前記シールドは、前記軸受支持体と一体化される、
請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項4】
前記シールドは、前記軸受支持体に取り付けられる、
請求項1に記載の軸受組立体。
【請求項5】
前記シールドは、前記外側リングの端面と、前記端面にわたって延びる前記軸受支持体の一部との間に取り付けられる、請求項4に記載の軸受組立体。
【請求項6】
前記外側リングの内面は、前記内面の一端に陥凹部を備え、前記軸受支持体は、前記端面にわたって前記陥凹部に向かって延び、前記シールドは、前記陥凹部内に取り付けられて前記軸受支持体の表面と接している、請求項4に記載の軸受組立体。
【請求項7】
前記シールドは、前記軸受支持体とは異なる材料で形成されている、
請求項4に記載の軸受組立体。
【請求項8】
前記シールドは、前記軸受の故障時に、軸方向及び半径方向エンドストップの少なくとも一方を提供するように構成されている、請求項1~7の何れか1項に記載の軸受組立体。
【請求項9】
前記シールドは、前記軸受の故障時に軸方向及び半径方向エンドストップの両方を提供するように構成されている、請求項1~7の何れか1項に記載の軸受組立体。
【請求項10】
前記シールドは、0.5~4mm、好ましくは0.7~3mmの厚さを有する、
請求項1~7の何れか1項に記載の軸受組立体。
【請求項11】
前記シールドの内面と前記外面がこれらの間にクリアランスギャップを形成する、
請求項1~7の何れか1項に記載の軸受組立体。
【請求項12】
前記内側リングは、前記外側リングよりも軸方向に長い、請求項11に記載の軸受組立体。
【請求項13】
前記内側リングとのクリアランスギャップの片側を形成
する前記シールドの最も内側の面は、前記シールドの大部分を形成する材料とは異なる材料を含む、
請求項1~7の何れか1項に記載の軸受組立体。
【請求項14】
ステータ内でロータを支持する少なくとも1つの回転可能シャフトを備えるポンプであって、前記少なくとも1つの回転可能シャフトが、
請求項1~7の何れか1項に記載の少なくとも1つの軸受組立体上に取り付けられている、ポンプ。
【請求項15】
前記ポンプが真空ポンプを含む、
請求項14に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ポンプ用軸受組立体及びこのような軸受組立体を含むポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
軸受からの潤滑剤の漏洩を抑制するための軸受シールドの使用が知られている。
【0003】
シールドの1つのタイプは、アウターレースにクリップ止めされて、インナーレース及びアウターレース間の環状ギャップを覆うクリップオンシールドである。このようなシールドは可撓性があり、従って、軸受の極限状態又は故障時には、座屈するか又は係脱されて、回転組立体内の動きの増加に対する保護を提供しない可能性がある。
【0004】
図1aは、軸受のアウターレース22と一体化されたシールド28を有する代替の先行技術の軸受組立体10を示す。このシールドは、軸受を軸方向に位置決めし、必要とされる剛性及び減衰を提供するのに使用される軸方向減衰リング30を支持するように構成される。この例では、軸受の内側リング24は、シャフト40に対して取り付けられ、転動要素26は、内側リング24と外側リング22の間に収容され、外側リング22が減衰リング32及び30を支持している。この軸受組立体は、一部のターボ分子ポンプで使用されているものである。軸受組立体の一体型シールドは、一般的な「クリップオン」シールよりも堅牢/高剛性である。その堅牢性の増大に起因して、軸受の故障時に、内側リング及びひいてはシャフトの半径方向の逸脱を制限するエンドストップとして機能し、これによりポンプ機構内の半径方向の接触からポンプを保護することができる。
【0005】
この軸受では、内側リング24は、外側リング26より短尺で、一体型シールド28はシャフトに面している。
【0006】
軸受が減衰リング30、32によって支持されず、むしろ異なるタイプの軸受支持体、例えば、WO2008035113に記載されているような、コンパクトメタルスプリングダンパーCMSDとしても知られる、弾性支持体によって支持される場合、シールドは、減衰リングを支持する必要はなく、クリップオンシールドを使用することができる。或いは、一体型シールドを保持し、その周囲にCMSDを取り付けることができる。これは、
図1bに示され、ここでは、シールド36が外側リング22と一体化され、コンパクトメタルスプリングダンパー36が、外側リング22及び一体型シールド28の周囲に取り付けられている。
【0007】
外側リングと一体化されたシールドは、より堅牢とすることができるが、非標準の軸受と追加のスペースを必要とし、クリップオンシールドで使用するように従来通りに設計されたポンプには容易に取り付けることができない。更に、深溝ボール軸受のように軸受組立体時にリングの傾斜を必要とする軸受では、外側リングと一体化され内側リングに面するシールドと、小さな運転クリアランスを可能にするのに必要とされる厳しい公差を有することはできない。この問題に対処し、軸受組立体を可能にしながら厳しい公差を提供するために、シールドは、シャフトに面するように構成されており、従って、このような軸受組立体には、シャフト上に機械加工された特別な座部を必要とする。
【0008】
堅牢で、組立が簡単で、場合によっては従来の軸受を使用し、安価で、過剰なスペースを占有することのないシールドを備えた軸受組立体を提供することが望ましいことになる。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様は、ポンプの回転可能なシャフトを取り付けるための軸受組立体であって、上記軸受組立体は、外側リング及び内側リングを含む軸受と、上記軸受の上記外側リングを支持するように構成された軸受支持体であって、上記外側リングの一方の端面の少なくとも一部にわたって延びる上記外側リングの外面の少なくとも一部を取り囲む軸受支持体と、上記軸受支持体から上記内側リングに向かって延び、これにより上記内側リングと上記外側リングとの間の環状ギャップの少なくとも一部を隠蔽するシールドと、を備える、軸受組立体を提供する。
【0010】
軸受組立体が、円周方向外面の軸方向長さの少なくとも一部を取り囲み且つ外側リングの一方の端面の一部にわたって延びる支持体を有する場合、この延びは、シールドが外側リングから延びるのではなく、シールドが延びることができる位置を提供する。このことは、特にシールドが軸受支持体に剛性取り付けされる場合に、効果的な潤滑剤の保持だけでなく、堅牢な保護も提供するという利点がある。軸受支持体から延びるシールドを有することで、軸受組立体の製造及び組み立てが容易になり、一部の実施形態では、従来の軸受を使用することが可能となる。この点において、例えば深溝ボール軸受の内側リング及び外側リングは、取り付けの際に傾けてオフセットする必要があるため、シールドが軸受支持体に取り付けられる場合に、通常の方法で製造して、軸受支持体及び関連するシールドを後で取り付けることができる。
【0011】
軸受支持体は複数の形態を有することができるが、幾つかの実施形態では、軸受支持体はコンパクトメタルスプリングダンパーを含む。
【0012】
コンパクトメタルスプリングダンパーは、軸受を受けるための内側ハブと、少なくとも1つの弾性部材によって内側ハブと結合された同心の外側マウントとを備えることができる。これは、外側リングの外周の一部を取り囲み、外側リングの軸面の一部にわたって延びて、外側リングの軸面にわたって延びる部分が、シールドが延びることができる場所を提供する。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記シールドは、上記軸受支持体と一体化される。
【0014】
シールドを軸受支持体と一体的に設けることで、軸受に堅牢な保護を提供することができ、適切な設計により、軸受の故障時にシールドをバックアップ軸受として機能させることもできるようになる。更に、製造が簡単で、シールドは軸受リングから分離されているため、製造時、組み立て時又は使用時にこれらのリングを歪ませることがない。
【0015】
他の実施形態では、上記シールドは、上記軸受支持体に取り付けられている。
【0016】
シールドが軸受支持体と一体化されることの代替形態は、恐らくは接着又は軸受支持体との圧入によってシールドを取り付けることである。接着は、軸受の汚染に関連するリスクがあり、他方、圧入は、外側リングを歪ませて、軸受の性能を劣化せる可能性がある。
【0017】
幾つかの実施形態では、上記シールドは、上記外側リングの軸方向端面と、上記軸方向端面にわたって延びる上記軸受支持体の上記部分との間に取り付けられる。
【0018】
一実施形態では、上記シールドは、上記軸受支持体の軸受への取り付けによって所定位置に保持されるように、上記軸受支持体の上記外側リングの端面にわたって延びる部分と上記外側リングとの間に取り付けることができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、上記外側リングの内面は、上記内面の一端に陥凹部を含み、上記軸受支持体は、上記端面にわたって上記陥凹部に向かって延び、上記シールドは、上記陥凹部内に取り付けられ、上記軸受支持体の表面に接している。
【0020】
外側リング内面に陥凹部が存在することができ、シールドは、内部に取り付けられ、軸方向に延びて軸受支持体に接触し、半径方向に延びて内側リングの外面に向けて延びることができる。これは、コンパクトで効果的なシールドの提供方法であり、軸受のサイズを大きくすることなく、堅牢で効果的なシールドを提供する。しかしながら、軸受の何らかの改造が必要となる。シールドは、軸受支持体の半径方向内面に接触することができ、外側リングの端面をレースする軸受支持体の表面に接触することができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、上記シールドは、上記軸受支持体とは異なる材料で形成される。
【0022】
シールドが軸受支持体と一体化されない場合、シールドは、同じ材料で形成されてもよく、又は異なる材料で形成されてもよい。軸受支持体に必要とされる特性は、シールドに必要とされる特性とは異なるため、異なる材料で形成する上で利点とすることができる。シールドに選択される材料は、シールドに要求される特性に依存することになる。
【0023】
幾つかの実施形態では、上記シールドは、上記軸受の故障時に、軸方向及び半径方向エンドストップの少なくとも一方を提供するように構成される。
【0024】
外側リングにクリップされるシールドではなく、軸受支持体から延びるシールドを設けることで、シールドをより厚く堅牢な構成要素として形成する可能性を提供し、軸受の故障時に軸方向及び半径方向エンドストップの少なくとも一方を提供することができる。この点で、軸受の故障は希な事象であるが、故障が発生した場合、軸受が許容する半径方向及び/又は軸方向の動きにより、ポンプ内の構成部品の衝突が生じる可能性がある。シールドが使用される場合、シールドと内側リング又はシャフトとの間のクリアランスギャップは、一般に、潤滑剤の漏洩を防止するため小さい。シールドが堅牢な構成要素であり、半径方向のギャップが、ポンプ内で最小の半径方向クリアランスである場合、軸受の故障時には、半径方向の移動の結果、何れかの他の面が接触する前にシールドが内側リング又はシャフトに衝突することになる。衝撃を受けると、シールドは、それ以上の動きから保護され、半径方向バックアップ軸受を提供する。構成によっては、軸方向の動きも同様の方法で保護される。
【0025】
幾つかの実施形態では、上記シールドは、上記軸受の故障時に、軸方向及び半径方向エンドストップの両方を提供するように構成される。
【0026】
幾つかの実施形態では、上記シールドは、0.4~5mmの厚さ、好ましくは0.7~3mmの厚さを有する。
【0027】
潤滑剤の漏洩を抑制することに加えて、シールドは、好ましくは、軸方向及び/又は半径方向エンドストップとして使用され、このため、軸受が故障した場合に軸受を支持するのに十分に堅牢であるべきである。シールドの厚さは0.5~4mm、好ましくは0.7~3mmで、一般的に必要な防護を提供するのに十分である。
【0028】
シールドの材料は、堅牢性を提供するために金属材料とすることができ、幾つかの実施形態では鋼合金、又はチタンである。シールドの厚さは材料に依存し、材料がより強い材料である場合、厚さは範囲の下側に向かうものとすることができる。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記シールドは、上記内側リングの外面に向かって延びるように構成され、上記シールドの内面と上記外面とはその間にクリアランスギャップを形成する。
【0030】
シールドはシャフトに向かって延びるように構成することができるが、幾つかの実施形態では、シールドの内面と内側リングの外面との間に半径方向のクリアランスギャップが存在するように、内側リングの外面に向かって延びている。この半径方向のクリアランスギャップは、軸受の故障時に、ポンプの他の部品が互いに接触する前にシールド及び内側リングが接触するような大きさに制限されるように構成することができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、上記内側リングは、上記内側リングの一端における外面に陥凹部を備え、上記シールドは、上記陥凹部内に延びるように構成される。
【0032】
場合によっては、内側リングの一端の外面に、シールドが延びることができる陥凹部が存在する。これにより、シャットと内側リングとの間に半径方向及び軸方向のクリアランスギャップが設けられ、軸受の故障時にポンプの半径方向及び軸方向の両方の保護を提供することができる。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記内側リングは、上記外側リングよりも軸方向に長い。
【0034】
シールドが内側リングの外面まで又は内側リングの外面の陥凹部まで延びる場合、内側リング及び外側リングが同じ軸方向長さを有すると、シールドは屈曲部を有する必要があり、そうでなければ内側リングの上方まで延びることになる。内側リングが外側リングよりも軸方向に長い場合は、シールドを実質的に直線にすることができ、より堅牢で製造が容易になる。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記シールドは、上記内側リングの外面を越えて延びるように構成される。
【0036】
場合によっては、シールドは内側リングを越えて延び、クリアランスギャップはシールドとシャフトとの間に存在することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、上記シールドは複数の異なる材料で形成され、上記シールドの最も内側の面は、上記ポンプの回転可能なシャフトとのクリアランスギャップの片側を形成し、又は上記内側リングは、上記シールドの大部分を形成する材料とは異なる材料を含む。
【0038】
移動する面に接触する可能性のあるシールドの表面を、シールドの残りの部分とは異なる材料で形成することが有利とすることができる。特に、これらの面は、非かじり特性又は低摩擦係数を有する材料で形成することができ、一方、シールドの残りの部分のために選択される材料は、その剛性に合わせて選択されるものとすることができる。例えば、シールドの大部分をチタンとすることができ、クリアランスギャップに隣接する面を、異なる材料で形成する又は異なる材料のコーティングを施すことができる。選択される材料は、クリアランスギャップを形成する材料に依存する。幾つかの実施形態では、軸受からオイルの漏出を抑制するために、疎油性とすることができる。
【0039】
第2の態様は、ステータ内でロータを支持する少なくとも1つの回転可能シャフトを含むポンプを提供し、上記少なくとも1つの回転可能シャフトの少なくとも1つは、第1の態様による少なくとも1つの軸受組立体上に取り付けられる。
【0040】
幾つかの実施形態では、上記回転可能シャフトは、外面に陥凹部を備え、上記軸受及びシールドは、上記陥凹部内に延びる。
【0041】
幾つかの実施形態では、軸受及びシールドは、シャフトの陥凹部内に延びることができる。これは、ストレートシャフトよりも製造が複雑になる可能性があるが、軸方向の両方向に軸方向の保護を提供し、適切に構成されている場合には半径方向の保護も提供することができる。また、軸受組立体の製造及び組み立てを容易にすることができる。この点で、シールドは、軸受内の陥凹部、又はシャフト内の陥凹部、及び/又は軸受によって部分的に形成され及びシャフトによって部分的に形成された陥凹部に延びることができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、ポンプは真空ポンプを含む。真空ポンプは、高速で回転する高価な機械であり、使用される用途は、潤滑剤による汚染に敏感とすることができる。従って、潤滑剤の漏洩から保護するシールドの使用は有利であり、シールドがバックアップ機能も提供できる場合、これは特に有利である。
【0043】
更なる特定の好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、適宜、独立請求項の特徴と組み合わせることができ、特許請求の範囲に明示的に記載されている以外の組み合わせで組み合わせてもよい。
【0044】
装置の特徴が機能を提供するよう動作可能と記載された場合、この記載は、当該機能を提供し、又は当該機能を提供するように適応又は構成された装置の特徴を含むことを理解されたい。
【0045】
次に、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1a】従来技術による軸受組立体を示す図である。
【
図1b】従来技術による軸受組立体の異なる例を示す図である。
【
図2】軸受支持体の一部としてシールドを備え、シャフトとのクリアランスギャップを有する軸受組立体を示す図である。
【
図3】軸受支持体の一部としてシールドを備え、内側リングとのクリアランスギャップを有する軸受組立体を示す図である。
【
図4】軸受支持体の一部としてシールドを備え、内側リングとの間に半径方向及び軸方向のクリアランスギャップを有する軸受組立体を示す図である。
【
図5】軸受支持体から延び且つ内側リングとのクリアランスギャップを有するシールドを備えた軸受組立体の代替の実施形態を示す図である。
【
図6】シールド及び軸受支持体が別体である軸受組立体の一実施形態を示す図である。
【
図7】シールドと軸受支持体が別体である軸受組立体の更なる実施例を示す図である。
【
図8】軸受及びシールドがシャフト内の陥凹部内に取り付けられている代替の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
実施形態について更に詳細に説明する前に、最初に概要を説明する。
【0048】
軸受支持体、例えばCMSDと一体化された保護軸受シールドが開示されている。一体型シールドは、軸受からポンプへのオイル損失に対するシールを提供し、また、軸受故障の場合に内側リング及びシャフトの外側リング及びステータに対する半径方向及び/又は軸方向の移動を制限するエンドストップとして機能する。
【0049】
実施形態では、軸受ではなく軸受支持体と一体化されたシールドを提供する。これにより、シールド及び支持体が軸受組立体へ取り付けられる前に軸受を組み立てることができるのでより標準的な軸受設計を使用することが可能となり、シールドが軸受の組み立てに影響を与えないようにする。
【0050】
図2は、軸受シールド28が軸受支持体36(この実施形態ではCMSDの形態である)と一体化された実施形態を示している。この軸受組立体では、標準的な軸受を使用することができ、軸受は、外側レース22、内側レース24及び転動要素26を備える。シールド28の半径方向内面はシャフト40に面しており、シャフトとこの面との間にはクリアランスギャップがある。万が一、軸受が故障した場合には、シールドは、クリアランスギャップの幅を超えるシャフトの半径方向の動きを制限する半径方向ストップとして機能し、また一方向の軸方向の動きを制限する軸方向ストップとしても機能する。シャフトと共にクリアランスギャップを形成することで、クリアランスギャップを正確に設定することが難しくなり、シール効率を低下し、軸受がバックアップ軸受機能を提供する場合、ポンプの他の部分の公差が大きくなる。
【0051】
図3は、この場合もシールドが軸受支持体と一体化された代替の実施形態を示すが、この実施形態では、シールド28の半径方向内面は、シャフト40ではなく軸受内側リング24に面している。これにより、クリアランスギャップをより正確に設定することが可能となり、これまでクリップオンシールドが使用されていたポンプにおいて接近した運転クリアランス及び使用が可能となる。このクリアランスギャップは、万が一、軸受が故障した場合の半径方向の動きを制限する。この実施形態では、標準軸受を使用してもよい。
【0052】
図4は、シールド28が軸受支持体36と一体化されており、クリアランスギャップがシールド28の半径方向内壁と内側リング24との間にある別の実施形態を示す。この実施形態では、シールド28は、内側リング24の軸方向内側端面の陥凹部に延びており、内側リングとシールド28との間に軸方向クリアランスギャップと半径方向クリアランスギャップが存在するようになる。軸受が故障した場合、軸方向及び半径方向の移動は、これらのクリアランスギャップのサイズによって制限されるため、この軸受は、ポンプの少なくとも一方向の軸方向及び半径方向のバックアップ軸受の両方を提供することができる。
【0053】
図5は、シールド28が軸受支持体36と一体化されている同様の設計を示しているが、この場合、非標準軸受が使用されている。この軸受は、外側リング22よりも短い内側リング24を有し、これにより、シールドを直線状とし、更に内側リング24まで延びて、シールド28の半径方向内面と内側リングとの間にクリアランスギャップを形成できるようになる。この配置は、適合される内側リング又は外側リングを備えた特殊な軸受を必要とするという欠点を有するが、シールド及び軸受支持体を、外側リングの周囲でシールドを曲げる必要のないより簡単な方法で製造及び組み立てすることが可能になる。この実施形態では、内側リング24の外面に陥凹部がないが、他の実施形態では、軸方向及び半径方向の保護がシールドによって提供されるように、このような陥凹部があってもよい。
【0054】
図6は、軸受シールド28が軸受支持体36とは別個の要素である代替の実施形態を示す。これにより、シールド28を、異なる材料で形成することができ、材料は、必要な特性に応じて選択することができる。この実施形態では、シールド28は軸受支持体と軸受の外側リング22との間に取り付けられている。この場合、軸受は標準的な軸受ではなく、シールドを収容して内側リング24に面することを可能にするように、短い又は長い外側リングを有する。
【0055】
シールドが軸受支持体とは異なる材料で形成されることに加えて、シールドの異なる部分が異なる材料で形成することができる。例えば、内側リング24の半径方向外面に面するシールドの表面は、非かじり性又は低摩擦係数の材料でコーティングすることにより、接触が生じた場合にシールド及び内側リング24の外面を保護することができる。
【0056】
図7は、
図6の実施形態に類似した代替の実施形態を示すが、外側リング22の半径方向内面の軸方向端部に陥凹部がある。シールド28はこの陥凹部内に取り付けられ、適切なラジアル剛性を提供する軸受支持体36に接触するように軸方向に延び、シールドはまた、内側リング24に向かって半径方向に延び、潤滑剤が軸受から漏洩るのを抑制すると同時に、軸受が故障した場合の半径方向の動きを制限する。
【0057】
図7及び他の図の軸受組立体は、組立体の半分を通る断面であり、ポンプのシャフト40を支持し、その半分が42として概略的に示されている。シャフト40は、ステータ内で回転するように構成されたポンプ内のロータを支持し、それにより流体をポンプ送給する。ポンプ42は、真空をオイル漏洩から保護することが重要な真空ポンプとすることができる。実施形態のポンプでは、1つの軸受組立体で1つのシャフト40がある場合もあれば、各々が軸受組立体により支持された2つのシャフトが存在する場合もある。
【0058】
図8は、軸受組立体がシャフト40の陥凹部内に取り付けられている更なる実施形態である。この実施形態では、シールド28は、内側リング部分の上方に延び、内側リング24の外面に面するような輪郭に形成されている。従って、シールド、シャフト及び内側リングの間には、軸方向及び半径方向のクリアランスギャップがあり、これにより、軸受が故障した場合の両方向の軸方向の動き及び半径方向の動きを制限する。クリアランスギャップは、潤滑剤の漏洩を抑制するため、及び軸受が故障した場合に最初に互いに接触する面がクリアランスギャップを形成する面となるようなバックアップ軸受機能を提供するために、低く選択される。
【0059】
本明細書では、添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態を詳細に開示したが、本発明は正確な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な変更及び修正が可能であることが理解される。
【符号の説明】
【0060】
10 軸受組立体
22 外側リング
24 内側リング
24a 陥凹部
23 サークリップ
26 転動要素
28 シールド
30、32 減衰リング
36 軸受支持体
40 シャフト
42 ポンプ