IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コロンバス・マッキノン・インダストリアル・プロダクツ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-レバーホイスト 図1
  • 特許-レバーホイスト 図2
  • 特許-レバーホイスト 図3
  • 特許-レバーホイスト 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】レバーホイスト
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/14 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B66D3/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023536926
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 DE2020101076
(87)【国際公開番号】W WO2022127955
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】522025145
【氏名又は名称】コロンバス・マッキノン・インダストリアル・プロダクツ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュトルック・デトレフ
(72)【発明者】
【氏名】シュネーベック・ヴォルフラム
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-178194(JP,A)
【文献】独国実用新案第202020106349(DE,U1)
【文献】実開昭59-153995(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110028005(CN,A)
【文献】米国特許第06439078(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバーホイスト(1)であって、
ハウジング(2)を備え、前記ハウジング(2)内には、ロードチェーンシーブ(15)と、前記ロードチェーンシーブ(15)を伝動機構(16)を介して駆動する駆動軸(19)とが回転自在に支承されており、レバー(11)を介して駆動モーメントが前記駆動軸(19)に伝達可能であり、ロードチェーン(9)が前記ロードチェーンシーブ(15)を介して可動であり、
ロードブレーキ(14)を備え、前記ロードブレーキ(14)は、プレッシャディスク(27)と、係止車(12)とを有し、前記プレッシャディスク(27)と、前記係止車(12)とは、前記駆動軸(19)上に配置されており、プレッシャディスク(27)と、係止車(12)との間には、係止車ディスク(23)が組み込まれており、前記係止車(12)は、雌ねじ山(38)でもって、前記駆動軸(19)の、制動ねじ山(28)を有するねじ山区間(29)上において、軸方向で変位可能であり、前記係止車(12)は、前記係止車(12)の外周部に、つめ体(17)の係合用の駆動歯列(30)を有する、
レバーホイスト(1)において、
前記係止車(12)は、前記外周部に、前記駆動歯列(30)と、前記係止車(12)の、プレッシャディスク側の端部(31)との間に、歯が切られていないレリーズ区間(32)を有し、
ダンパばね(44)が設けられており、前記ダンパばね(44)は、前記制動ねじ山(28)と、外側のストッパ(40)との間の、前記駆動軸(19)の駆動側の長さ区間(43)上に配置されている、
ことを特徴とする、レバーホイスト(1)。
【請求項2】
前記ダンパばね(44)のばね力(F1)は、前記ロードブレーキ(14)の開放動作に抗して作用することを特徴とする、請求項1に記載のレバーホイスト。
【請求項3】
前記ダンパばね(44)は、前記ダンパばね(44)の、前記制動ねじ山(28)に向けられた端部でもって、内側のストッパ(45)に支持されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレバーホイスト。
【請求項4】
前記係止車(12)が、前記ダンパばね(44)のばね力(F1)に抗して前記駆動軸(19)上を軸方向で移動されており、かつ前記つめ体(17)が、前記駆動歯列(30)との係合からレリーズされているときに可視できる表示(47)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のレバーホイスト。
【請求項5】
前記表示(47)は、インジケータリング(48)により形成されており、前記インジケータリング(48)は、前記係止車(12)の管体区間(49)上に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のレバーホイスト。
【請求項6】
前記係止車(12)と、前記プレッシャディスク(27)との間の軸方向の間隔を拡大させるように形成されている遊転機構(22)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のレバーホイスト。
【請求項7】
前記遊転機構(22)は、ハンドホイール(21)を有し、前記ハンドホイール(21)は、前記係止車(12)に連結されており、前記係止車(12)を前記駆動軸(19)上において軸方向で変位させるために用いられることを特徴とする、請求項に記載のレバーホイスト。
【請求項8】
前記係止車(12)と、前記プレッシャディスク(27)との間に、解放切り換えばね(50)が組み込まれており、前記解放切り換えばね(50)のばね力(F2)は、前記ロードブレーキ(14)の開放動作を補助することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のレバーホイスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の特徴によるレバーホイストに関する。
【0002】
レバーホイストは、吊り手段あるいはけん引手段として鋼製ラウンドリンクチェーンを使用して、荷の上げ、下げ及びけん引のために用いられる。本発明は、手動操作式のレバーホイストであって、昇降動作は、レバーを用いた手動運転により発生される、レバーホイストに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1により、ホイスト又はチェーンホイストとも称呼されるレバー操作式の巻上機が公知である。この巻上機は、上側の取り付け要素としてのサポートフックと、下側の玉掛け要素としてのロードフックとを備えている。上側の取り付け要素と、下側の玉掛け要素とは、ハウジングを介して間接的に互いに結合されている。玉掛け要素は、けん引手段としてのロードチェーンを介してけん引手段駆動機構に結合されており、けん引手段駆動機構は、巻上機のハウジング内に存在している。ハンドレバーの揺動動作により、けん引手段駆動機構は、ハウジング内で回転され得る。このためにレバーアームは、伝動機構装置内に係合し、伝動機構装置は、他方、けん引手段駆動機構に結合されている。こうして、対象を変位させたり、引っ張ったりすることが可能である。
【0004】
けん引手段駆動機構は、切り換え可能なラチェット機構を有する駆動部の他に、ロードブレーキ、ロードチェーンシーブ及び伝動機構を有し、伝動機構は、プラネタリギヤとして形成されていることが多い。ラチェット機構のハンドレバー及び係止車は、駆動軸の一方の端部に嵌合しており、駆動軸は、ロードブレーキ及びロードチェーンシーブを貫通している。駆動軸の他方の端部には、伝動機構が存在し、伝動機構は、この場合、ロードチェーンシーブにトルクを伝達するように結合されている。
【0005】
ロードブレーキは、その外周部に切欠きあるいは歯が設けられた係止車ディスクと、係止車ディスクの両側に位置する2つの摩擦要素、大抵の場合、摩擦ディスク又は摩擦ライニングと、ハウジングに枢設される2つの係止つめとから構成され、係止つめは、係止フックばねの影響下で、係止車ディスクに押し付けられる。両摩擦要素は、一方では、係止車ディスクと、他方では、軸に固定されたプレッシャディスク、あるいは係止車と、摩擦結合式の結合をするに至る。係止車は、雌ねじ山を有し、雌ねじ山でもって、駆動軸の、雄ねじ山を有するねじ山区間上において、軸方向で変位可能である。雄ねじ山は、比較的大きなねじ山ピッチを有し、これにより係止車は、スムーズに駆動軸に対して螺動可能である。雄ねじ山は、運動ねじ山とも、又は専門用語的に、それというのもそれがロードブレーキに属するものであるため、制動ねじ山とも称呼される。以下では、制動ねじ山なる概念を使用する。
【0006】
ロードブレーキは、係止車が静止しているとき、巻上機によって吊られた荷をその都度の高さあるいは位置に保持する役割を有している。このとき、係止車は、係止車ディスクと、組み込まれた摩擦要素とを介して、プレッシャディスクに押し付けられている。係止つめは、係止車ディスクの周面の切欠き内に位置している。係止車が上げ方向に回転されると、係止つめは、係止車ディスクの歯を乗り越え、係止車が静止状態に至るまで滑動する。その後、係止つめは、再び係止車ディスクの切欠き内に係止する。荷を下げるとき、係止車は、反対方向に回転され、これにより、駆動軸の制動ねじ山上において軸方向で滑動し、係止車ディスクの摩擦要素と、プレッシャディスクとの摩擦結合式の接触は、解消される。荷は、従動回転する軸が軸方向遊びを再び補償するまで、下降し得る。
【0007】
遊転装置と、自動で作用するロードブレーキとを備えるレバーホイストは、特許文献2によっても従来技術に挙げられる。
【0008】
レバーホイストの場合、荷重モーメントは、駆動軸を介してロードブレーキに伝達される。駆動軸と係止車との間の相対回動は、制動ねじ山により軸方向力へ至り、この軸方向力の結果、係止車ディスクは、プレッシャディスクと係止車との間で挟持される。ロードブレーキを解くために、ハンドレバーは、つめ体、一般的にはつめ棒により、係止車の駆動歯列内に係合している。係止車の回転により、係止車の軸方向の変位が達成される。その結果、ブレーキモーメントは、減少あるいは解消される。荷は、上記軸方向力と、結果として生じるブレーキモーメントとが再び形成されるまで、下降し得る。
【0009】
荷の自由なスライド、ひいては、ロードブレーキの連続的な閉鎖が妨げられると、危険な状況となりかねない。このことは、例えばロードチェーンがもつれ、あるいははさまってしまったことにより、又はチェーンロックによるブロック時にも生じ得る。オペレータがその後、このような抵抗に抗して下降させようとすると、係止車は、軸方向で駆動軸のエンドストッパに向かって、相対回動不能な連結が実施され、フルのトルクがエンドストッパを介して導入されるまで、変位してしまう。これにより、レバーホイストにおける破壊、特にストッパ又はそれどころか駆動軸の破壊が生じてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許発明第4105050号明細書
【文献】独国特許発明第3323110号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ従来技術から出発して、本発明の根底にある課題は、安全技術的かつ運転技術的に改良されたレバーホイストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題の解決手段は、本発明により請求項1の特徴によるレバーホイストにある。
【0013】
本発明に係るレバーホイストの有利な発展形及び構成は、従属請求項の対象である。
【0014】
レバーホイストは、ハウジングを備え、ハウジング内には、ロードチェーンシーブと、ロードチェーンシーブを伝動機構を介して駆動する駆動軸とが回転自在に支承されている。レバーを介して駆動モーメントが駆動軸に伝達可能である。ロードチェーンシーブを介してロードチェーンが可動である。レバーホイストは、ロードブレーキを備え、ロードブレーキは、プレッシャディスクと、係止車とを有し、プレッシャディスクと、係止車とは、駆動軸上に配置されている。プレッシャディスクと、係止車との間には、その外周部に歯が設けられた係止車ディスクが組み込まれている。係止車は、雌ねじ山を有し、駆動軸の、制動ねじ山を有するねじ山区間上において、軸方向で変位可能である。係止車は、係止車の外周部に、つめ体の係合用の駆動歯列を有している。
【0015】
本発明の核心にある思想は、ハンドレバーを、上述の危険な状況時、つまり、ブロック時、連結解除することにあり、その結果、トルクは、もはや伝達され得ず、レバーは、自由回転する。このことを実現すべく、ダンピングばねを、係止車と、外側のストッパとの間にポジショニングし、ダンピングばねは、駆動軸上における係止車のより大きな軸方向の移動を許可する。係止車自体は、外周部に、駆動歯列の他、プレッシャディスク側のレリーズ区間を有している。係止車のレリーズ区間は、外周部において自由回転され、歯は切られていない。
【0016】
つめ体、ひいてはハンドレバーを、ロードチェーンがブロックされたとき、係止車との係合からデカップリングすべく、係止車は、外周部に、駆動歯列と、係止車の、プレッシャディスク側の端部との間に、歯が切られていないレリーズ区間を有している。ダンパばねは、ねじ山区間と、外側のストッパとの間の、駆動軸の駆動側の区間上に配置されている。ダンパばねのばね力は、ロードブレーキの開放動作に抗して作用する。ロードチェーンがブロックされ、荷がもはや滑らかにはスライドしないとき、係止車は、つめ体が、駆動歯列から、歯が切られていないレリーズ区間内に変位される程度、ダンパばねの圧力に抗して移動される。而してトルクは、もはや伝達され得ず、レバーは、自由回転する。
【0017】
ダンパばねは、係止車あるいは制動ねじ山と、外側のストッパ(エンドストッパ)との間にポジショニングされており、係止車、ひいては駆動歯列の軸方向の移動であって、ブロック状況時に、ハンドレバーと、力を伝達するつめ体とが連結解除され得るような大きさに設定されている移動を許可し、その結果、トルク伝達は中断されている。正規の運転中、レバーのつめ体は、駆動歯列内に係合し、係止車を駆動する。荷が滑らかにはスライドしない場合、係止車は、つめ体が駆動歯列との係合からレリーズ区間の領域内へ変位される程度、ダンパばねの圧力に抗して移動される。
【0018】
ダンパばねは、ダンパばねの、制動ねじ山に向けられた端部でもって、内側のストッパに支持される。内側のストッパは、駆動軸上にポジショニングされた支持リングにより形成されていてもよい。内側のストッパは、軸方向で制動ねじ山にあるいは制動ねじ山の手前に当接している。ダンパばねは、駆動軸の平滑な長さ区間上に、外側のストッパと、内側のストッパとの間においてポジショニングされている。ダンパばねは、駆動軸の上記長さ区間上に同心に配置されている圧縮ばねである。
【0019】
係止車が、ブロック状況でダンパばねの圧力に抗して移動され、その結果、つめ体が、係合からレリーズされるとき、係止車に結合されたハンドホイールも、側方にレリーズする。係止車が、ダンパばねのばね力に抗して駆動軸上を軸方向で移動されており、かつつめ体が、駆動歯列との係合からレリーズされているとき、表示が可視となる。こうして非正常の運転状態は、シグナライズされる。
【0020】
有利な一構成によれば、表示は、インジケータリングにより形成されており、インジケータリングは、係止車の管体区間上に配置されている。インジケータリングは、その他の部材とは色で区別でき、特に信号色で構成されているか、又は信号色を有する外側のコーティングを有していることができる。色構成により、運転障害であって、このときハンドレバーが連結解除されている状況は、容易に看取可能である。
【0021】
ハンドホイールを時計回りに回転させることにより、つめ体、ひいてはレバーは、再び連結され、力の伝達経路は、再び形成され得る。
【0022】
有利には、さらに、ダンパばねは、ブロック状態が突然起こったときに発生し得るような動的な衝撃を吸収することができる。
【0023】
本発明に係るレバーホイストは、付加的に、いわゆる拘束ブレーキを備えていてもよく、拘束ブレーキは、ロードチェーンシーブの空転時、非常制動を生じさせる。このような非常制動、つまり、拘束ブレーキの起動時も、システムは、ブロックされる。ダンピングばねは、このとき、衝撃エネルギの相当部分を吸収する。このようなブロック時にも、ハンドレバーは、本発明により、係止車が、ダンパばねの圧力に抗して移動され、かつつめ体が、駆動歯列との係合からレリーズ区間内へ変位されることにより、連結解除される。このことは、表示器、特にインジケータリングにより表示される。インジケータリングの出現は、拘束ブレーキが起動されたことの信号として使用され得る。
【0024】
本発明に係るレバーホイストの実際に有利な一構成によれば、レバーホイストは、遊転機構を備え、遊転機構は、駆動軸の回転デカップリングに用いられ、係止車と、プレッシャディスクとの間の軸方向の間隔を拡大させるように形成されている。
【0025】
遊転機構には、ハンドホイールが属し、ハンドホイールは、係止車に連結されている。ハンドホイールの操作により、係止車は、軸方向で駆動軸上を変位され、遊転は、調整あるいは解消され得る。遊転位置において、駆動軸は、自由回転することができ、ロードチェーンシーブは、解放される。ロードチェーンは、両方向に引くことができる。ハンドホイールを回転させることにより、又はアウト側ストランドを引くことにより、ロードチェーンは、所望の作業位置に、プリロード状態へもたらされ得る。
【0026】
有利には、係止車と、プレッシャディスクとの間に、解放切り換えばねが組み込まれており、解放切り換えばねのばね力は、ロードブレーキの開放動作を補助する。
【0027】
本発明について以下に図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】レバーホイストの側面図である。
図2】レバーホイストの部材の分解立体図である。
図3】レバーホイストの縦断面図である。
図4】ハンドホイールと係止車とがレリーズされたポジションにあるレバーホイストの、図3の図示に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1ないし4は、本発明に係る手動操作式のレバーホイスト1を示している。ハウジング2は、レバーホイスト1の構成部材であり、複数のハウジング部分3、4並びに側板5及びスペーサフレーム6から構成される。レバーホイスト1は、上側の取り付け要素としてのサポートフック7と、下側の玉掛け要素としてのロードフック8とを備えている。サポートフック7と、ロードフック8とは、ハウジング2を介して間接的に互いに結合されている。ロードフック8は、ロードチェーン9の一方の端部に留められている。ロードチェーン9の他方の端部には、チェーンエンドピース10が設けられている。けん引手段駆動機構を介して、ロードチェーン9は可動である。けん引手段駆動機構は、主として、ハンドレバー11、係止車12及び切り換え可能なラチェット機構13を有する駆動部と、ロードブレーキ14と、ロードチェーンシーブ15と、伝動機構16とを有している。ハンドレバー11内には、つめ棒の形態のつめ体17が、ばね付勢され、かつ長手方向摺動自在に支承されている。つめ体17を有するハンドレバー11と、係止車12とは、駆動軸19の一方の端部区間18に嵌合しており、駆動軸19は、ロードブレーキ14と、ロードチェーンシーブ15とを貫通している。駆動軸19の他方の端部区間20には、伝動機構16が存在し、伝動機構16は、ロードチェーンシーブ15にトルクを伝達するように結合されている。ハンドホイール21は、レバーホイスト1の遊転機構22を操作すべく、係止車12を駆動軸19上において軸方向で変位させるために用いられる。
【0030】
ロードブレーキ14は、その外周部に歯が設けられた係止車ディスク23を有している。係止車ディスク23の両側には、摩擦ライニングの形態の摩擦要素24が設けられている。さらにロードブレーキ14は、ハウジング2内で側板5に揺動自在に支承される2つの係止つめ25を有し、係止つめ25は、係止フックばね26の影響下で、係止車ディスク23に押し付けられる。さらにロードブレーキ14には、プレッシャディスク27が属し、プレッシャディスク27上には、係止車ディスク23が支承されている。係止車12は、駆動軸19の、制動ねじ山28を有するねじ山区間29上において、軸方向で変位可能である。
【0031】
ロードブレーキ14は、係止車12が静止しているとき、レバーホイスト1によって吊られた荷を保持する役割を有している。このとき、係止車12は、係止車ディスク23と、組み込まれた摩擦要素24とを介して、プレッシャディスク27に押し付けられている。係止つめ25は、係止車ディスク23の周面の切欠き内に位置している。係止車12が上げ方向に回転されると、係止つめ25は、係止車ディスク23の歯を乗り越え、係止車12が静止状態に至るまで滑動する。その後、係止つめ25は、再び係止車ディスク23の切欠き内に係止する。荷を下げるとき、係止車12は、反対方向に回転され、これにより、駆動軸19の制動ねじ山28上において軸方向で滑動し、係止車ディスク23の摩擦要素24と、プレッシャディスク27との摩擦結合式の接触は、解消される。荷は、その後、従動回転する駆動軸19が軸方向遊びを再び補償するまで、下降し得る。
【0032】
係止車12は、外周部に駆動歯列30を有している。駆動歯列30は、軸方向で長手方向に延在する歯を、歯間に配置される溝を伴って有している。駆動歯列30を有する領域は、係止車12の、ハンドホイール21から見て前側の第1の長さ区間にわたって延在している。駆動歯列30と、係止車12の、プレッシャディスク側の端部31との間には、歯が切られておらず自由回転されるレリーズ区間32が設けられている。歯が切られておらず自由回転されるレリーズ区間32は、駆動歯列30から出発して、係止車12の後側の第2の長さ区間にわたって延在している。係止車12は、端部31に、レリーズ区間32の直径に対して拡径された半径方向つばを有している。
【0033】
係止車12は、中空円柱状に構成されており、中空室33を有している。係止車12の環囲する外壁34の端面には、ハンドホイール21が、取り付けねじ35により固定されている。係止車12の底部36内には、中央の通し開口37が存在し、通し開口37は、雌ねじ山38を有している。この雌ねじ山38により、係止車12は、駆動軸19の制動ねじ山28上を動く。
【0034】
駆動軸19は、係止車12を貫通し、かつ駆動軸19の端部区間18でもって係止車12を貫き、ハンドホイール21内に設けられた中央の空所39内まで、突入する。駆動軸19の自由端部には、外側のストッパ40が設けられている。外側のストッパ40は、エンドストッパとして機能し、リテーニングナット41と、リテーニングナット41の手前に駆動軸19の端部上に配置されるディスク42とにより形成されている。リテーニングナット41は、駆動軸19の端部に設けられたねじ山区間上に螺合されている。制動ねじ山28と、外側のストッパ40との間の、駆動軸19の長さ区間43は、平滑に構成されている。
【0035】
長さ区間43上には、ダンパばね44が配置されている。ダンパばね44は、圧縮ばねであって、駆動軸19の長さ区間43周りに同心に、外側のストッパ40と、内側のストッパ45との間を延在する圧縮ばねである。ダンパばね44は、ダンパばね44の、制動ねじ山28に向けられた端部でもって、内側のストッパ45に支持される。内側のストッパ45は、支持リング46により形成されており、支持リング46は、駆動軸19上において制動ねじ山28の手前に配置されている。
【0036】
ダンパばね44のばね力F1は、ロードブレーキ14の開放動作に抗して作用する。ばね力F1は、ロードブレーキ14を閉じる方向に押圧する。
【0037】
通常運転中あるいは障害のない運転中、ラチェット機構13のつめ体17は、駆動歯列30の歯間の溝内に係合している。この運転状態は、図3に示してある。通常運転中、荷重モーメントは、駆動軸19を介してロードブレーキ14に伝達される。駆動軸19と係止車12との間の相対回動は、制動ねじ山28により軸方向力へ至り、この軸方向力は、係止車ディスク23がプレッシャディスク27と係止車12との間で挟持されることを引き起こす。
【0038】
ロードブレーキ14を解くために、ハンドレバー11は、つめ体17により係止車12の駆動歯列30内に係合している。係止車12の回転により、係止車12の軸方向の変位が引き起こされる。その結果、ブレーキモーメントは、減少あるいは解消される。荷は、上記軸方向力と、結果として生じるブレーキモーメントとが再び形成されるまで、下降し得る。
【0039】
例えばロードチェーン9がもつれ、又ははさまってしまったとき、荷の自由なスライド、ひいては、ロードブレーキ14の連続的な閉鎖が妨げられると、危険な状況となりかねない。それは、特にユーザが状況を認識せず、荷を抵抗に抗して下げようとするときである。
【0040】
係止車12は、軸方向で駆動軸19の外側のストッパ40に向かって変位される。しかし、外側のストッパ40における係止車12のねじり剛性的な連結であって、そこではフルのトルクがエンドストッパを介して導入されるかもしれない連結がなされてしまう前に、ハンドレバー11は、連結解除される。
【0041】
このためにダンパばね44が、係止車12と、外側のエンドストッパ40との間にポジショニングされている。ダンパばね44は、係止車12が、制動ねじ山28上でプレッシャディスク27から離間する、より大きな軸方向の移動を許可する。このとき、ダンパばね44は収縮する。
【0042】
係止車12は、つめ体17が駆動歯列30との係合から外され、かつレリーズ区間32の領域内に変位される程度、ダンパばね44の圧力に抗して移動される。力の伝達経路は、この位置では、中断されている。この運転状態は、図4の図示に示してある。
【0043】
係止車12は、そしてこの係止車12とともに、ハンドホイール21は、図平面内で左方にレリーズされている。ダンパばね44は、圧縮されている。この位置では、トルクは、もはや伝達され得ず、ハンドレバー11は、自由回転する。
【0044】
同時に、係止車12に結合されたハンドホイール21は、側方にレリーズし、インジケータリング48の形態の表示器47が可視となる。インジケータリング48は、係止車12の管体区間49上の外側に配置されている。レリーズされたポジションにおいて、インジケータリング48は、ハンドレバー11の、係止車12を囲繞するハウジング部分から突出する。特にその彩色の構成により、インジケータリング48は、力の伝達経路が、中断され、かつハンドレバー11が、正規の運転位置からレリーズされ、連結解除されていることを可視化する。
【0045】
ハンドホイール21を時計回りに回転させることにより、ハンドレバー11は、再び連結され得る。係止車12は、再びプレッシャディスク27に向かって、つめ体17が再び駆動歯列30との係合に至るまで、変位され、その結果、レバーホイスト1は、通常の運転状態にセットされる。
【0046】
遊転機構22を操作するためにも、係止車12とプレッシャディスク27との間の軸方向の間隔は、ハンドホイール21の回転により拡大されることができ、その結果、つめ体17は、駆動歯列30との係合から外れるに至る。係止車12と、プレッシャディスク27との間には、解放切り換えばね50が組み込まれている。解放切り換えばね50のばね力F2は、外向きに駆動軸19の端部18あるいはハンドホイール21に向かって作用し、ロードブレーキ14の開放動作を補助する。
【0047】
標準のロードブレーキ14に加えて、レバーホイスト1は、拘束ブレーキ51を備えている。拘束ブレーキ51は、ロードブレーキ14が慣性に起因してもはや効かないほど高い駆動軸19の回転数が生じることがある極限状況において、非常制動を実施する役割を有している。
【0048】
拘束ブレーキ51は、係止歯を有する係止ディスク52と、制御カムを有する制御ディスク53と、拘束フック54とを有している。拘束フック54は、揺動自在にレバーホイスト1の側板5に配置されている。係止ディスク52と、制御ディスク53とは、互いに相対回動可能である。レバーホイスト1の通常運転中、拘束フック54は、制御ディスク53の制御カムを介して、拘束フック54のつめ輪郭が係止ディスク52内に係合しないように案内されている。過昇された所定の回転数の上回り時、拘束フック54は、質量慣性と、作用する加速力との結果、制御ディスク53から浮き上がり、係止ディスク52の係止歯内に係合する。これにより、係止ディスク52は止められ、係止ディスク52とともに形状結合式の結合により、駆動軸19も止められる。ロードチェーンシーブ15のさらなる空転は、阻止される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
レバーホイスト(1)であって、
ハウジング(2)を備え、前記ハウジング(2)内には、ロードチェーンシーブ(15)と、前記ロードチェーンシーブ(15)を伝動機構(16)を介して駆動する駆動軸(19)とが回転自在に支承されており、レバー(11)を介して駆動モーメントが前記駆動軸(19)に伝達可能であり、ロードチェーン(9)が前記ロードチェーンシーブ(15)を介して可動であり、
ロードブレーキ(14)を備え、前記ロードブレーキ(14)は、プレッシャディスク(27)と、係止車(12)とを有し、前記プレッシャディスク(27)と、前記係止車(12)とは、前記駆動軸(19)上に配置されており、プレッシャディスク(27)と、係止車(12)との間には、係止車ディスク(23)が組み込まれており、前記係止車(12)は、雌ねじ山(38)でもって、前記駆動軸(19)の、制動ねじ山(28)を有するねじ山区間(29)上において、軸方向で変位可能であり、前記係止車(12)は、前記係止車(12)の外周部に、つめ体(17)の係合用の駆動歯列(30)を有する、
レバーホイスト(1)において、
前記係止車(12)は、前記外周部に、前記駆動歯列(30)と、前記係止車(12)の、プレッシャディスク側の端部(31)との間に、歯が切られていないレリーズ区間(32)を有し、
ダンパばね(44)が設けられており、前記ダンパばね(44)は、前記制動ねじ山(28)と、外側のストッパ(40)との間の、前記駆動軸(19)の駆動側の長さ区間(43)上に配置されている、
ことを特徴とする、レバーホイスト(1)。
2.
前記ダンパばね(44)のばね力(F1)は、前記ロードブレーキ(14)の開放動作に抗して作用することを特徴とする、上記1のレバーホイスト。
3.
前記ダンパばね(44)は、前記ダンパばね(44)の、前記制動ねじ山(28)に向けられた端部でもって、内側のストッパ(45)に支持されることを特徴とする、上記1又は2のレバーホイスト。
4.
前記係止車(12)が、前記ダンパばね(44)のばね力(F1)に抗して前記駆動軸(19)上を軸方向で移動されており、かつ前記つめ体(17)が、前記駆動歯列(30)との係合からレリーズされているときに可視できる表示(47)を備えることを特徴とする、上記1から3のいずれか一つのレバーホイスト。
5.
前記表示(47)は、インジケータリング(48)により形成されており、前記インジケータリング(48)は、前記係止車(12)の管体区間(49)上に配置されていることを特徴とする、上記4のレバーホイスト。
6.
前記係止車(12)と、前記プレッシャディスク(27)との間の軸方向の間隔を拡大させるように形成されている遊転機構(22)を備えることを特徴とする、上記1から5のいずれか一つのレバーホイスト。
7.
前記遊転機構(22)は、ハンドホイール(21)を有し、前記ハンドホイール(21)は、前記係止車(12)に連結されており、前記係止車(12)を前記駆動軸(19)上において軸方向で変位させるために用いられることを特徴とする、上記1から6のいずれか一つのレバーホイスト。
8.
前記係止車(12)と、前記プレッシャディスク(27)との間に、解放切り換えばね(50)が組み込まれており、前記解放切り換えばね(50)のばね力(F2)は、前記ロードブレーキ(14)の開放動作を補助することを特徴とする、上記1から7のいずれか一つのレバーホイスト。
【符号の説明】
【0049】
1 レバーホイスト
2 ハウジング
3 ハウジング部分
4 ハウジング部分
5 側板
6 スペーサフレーム
7 サポートフック
8 ロードフック
9 ロードチェーン
10 チェーンエンドピース
11 ハンドレバー
12 係止車
13 ラチェット機構
14 ロードブレーキ
15 ロードチェーンシーブ
16 伝動機構
17 つめ体
18 19の端部区間
19 駆動軸
20 19の端部区間
21 ハンドホイール
22 遊転機構
23 係止車ディスク
24 摩擦要素
25 係止つめ
26 係止フックばね
27 プレッシャディスク
28 制動ねじ山
29 ねじ山区間
30 駆動歯列
31 12の端部
32 レリーズ区間
33 中空室
34 12の外壁
35 取り付けねじ
36 12の底部
37 通し開口
38 12の雌ねじ山
39 21内の空所
40 外側のストッパ
41 リテーニングナット
42 ディスク
43 19の長さ区間
44 ダンパばね
45 内側のストッパ
46 支持リング
47 表示器
48 インジケータリング
49 管体区間
50 解放切り換えばね
51 拘束ブレーキ
52 係止ディスク
53 制御ディスク
54 拘束フック
F1 44のばね力
F2 50ばね力
図1
図2
図3
図4