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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】加工時間予測装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4069 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G05B19/4069
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023576083
(86)(22)【出願日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2023032794
【審査請求日】2023-12-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】井上 友貴
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-277261(JP,A)
【文献】特開2003-175439(JP,A)
【文献】特開2005-301440(JP,A)
【文献】特開昭61-184609(JP,A)
【文献】特開2016-110339(JP,A)
【文献】特開2016-031605(JP,A)
【文献】特開2020-038571(JP,A)
【文献】特開2004-227028(JP,A)
【文献】特開2019-040311(JP,A)
【文献】特開2017-167892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4069
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムのNC指令に基づき数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を算出して出力する加工時間予測装置であって、
前記加工プログラムに含まれる連続したブロックで予め決められた条件に基づいて、それぞれ連続したブロックを含む2つ以上の部分集合を設定するとともに、前記2つ以上の部分集合の順序を、それぞれの部分集合に含まれる連続したブロックを前記2つ以上の部分集合の順序に基づいて順序付けて1つのブロック集合とした場合に、当該1つのブロック集合に含まれる連続したブロック及びその順序が前記加工プログラムに含まれる連続したブロック及びその順序に一致するように設定し、前記部分集合毎に当該部分集合に含まれる各ブロックについて、前記NC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて、当該ブロック毎にブロック移動時間を算出し、前記部分集合毎に当該部分集合に含まれるすべてのブロックのブロック移動時間を合計することで、当該部分集合に係る第1のブロック移動時間を算出する簡易予測部と、
前記数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記部分集合毎に当該部分集合に含まれる各ブロックについて、少なくとも前記NC指令と前記パラメータとに基づいて、当該ブロック毎にブロック移動時間を算出し、前記部分集合毎に当該部分集合に含まれるすべてのブロックのブロック移動時間を合計することで、当該部分集合に係る第2のブロック移動時間を算出する精密予測部と、
すべての前記部分集合毎に第2のブロック移動時間が算出されている部分集合については、第1のブロック移動時間に換えて前記第2のブロック移動時間を、第2のブロック移動時間が算出されていない部分集合については、前記第1のブロック移動時間を当該部分集合のブロック移動時間として適用することで、すべての前記部分集合の前記ブロック移動時間を合計して前記加工時間を算出するブロック移動時間更新部と、
前記加工時間を出力する加工時間出力部と、を備え、
前記加工時間出力部は、前記ブロック移動時間更新部が予め決められた条件で前記部分集合に対応する前記第1のブロック移動時間を前記第2のブロック移動時間で更新して算出した前記加工時間を出力することで、簡易計算で高速に加工時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間で更新する、加工時間予測装置。
【請求項2】
前記予め決められた条件は、所定のブロック数毎、所定の時間毎、全ブロック数に対する所定の割合毎、NC指令におけるシーケンス番号が所定数進む毎、又はNC指令におけるプログラム番号、Gコード、Sコード、Tコード、Mコード、Bコードのいずれかが現れる毎、のうち少なくとも1つを含み、前記条件に含まれるブロック数毎、所定の時間毎、全ブロック数に対する所定の割合毎、NC指令におけるシーケンス番号が所定数進む毎、NC指令におけるプログラム番号、Gコード、Sコード、Tコード、Mコード、Bコードのいずれかが現れる毎に、前記部分集合が設定される、請求項1に記載の加工時間予測装置。
【請求項3】
前記数値制御工作機械が加工開始後に実際に加工を行った実績加工時間を取得する実績加工時間取得部と、
前記実績加工時間と前記ブロック移動時間更新部により算出された前記加工時間とに基づいて残り加工時間を算出する残り加工時間算出部と、を備え、
前記残り加工時間算出部は、前記加工時間から前記実績加工時間を差し引くことで前記残り加工時間を算出する、請求項1に記載の加工時間予測装置。
【請求項4】
前記精密予測部において、前記2つ以上の部分集合の順序にしたがって前記第2のブロック移動時間の演算が完了している部分集合までの前記簡易予測部における第1のブロック移動時間の演算に要した第1の実績演算時間及び前記精密予測部における第2のブロック移動時間の演算が完了している部分集合までの前記第2のブロック移動時間の演算に要した第2の実績演算時間を取得する実績演算時間取得部と、
前記第1の実績演算時間と、前記第2の実績演算時間と、前記簡易予測部におけるすべての前記部分集合の第1のブロック移動時間の演算に要した時間を合計した総演算時間と、に基づいて前記精密予測部によるNC指令の全てのブロックの演算に係る残り演算時間を算出する残り演算時間算出部と、
前記残り演算時間を出力する残り演算時間出力部と、をさらに備え、
前記残り演算時間算出部は、前記総演算時間から前記第1の実績演算時間を差し引いた値に、前記第2の実績演算時間と前記第1の実績演算時間との比率を乗算することで前記残り演算時間を算出する請求項1に記載の加工時間予測装置。
【請求項5】
加工プログラムのNC指令に基づき数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を算出して出力する加工時間予測装置であって、
前記加工プログラムに含まれる連続したブロックで予め決められた条件に基づいて、それぞれ連続したブロックを含む2つ以上の部分集合を設定するとともに、前記2つ以上の部分集合の順序を、それぞれの部分集合に含まれる連続したブロックを前記2つ以上の部分集合の順序に基づいて順序付けて1つのブロック集合とした場合に、当該1つのブロック集合に含まれる連続したブロック及びその順序が前記加工プログラムに含まれる連続したブロック及びその順序に一致するように設定し、前記部分集合毎に当該部分集合に含まれる各ブロックについて、前記NC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて、当該ブロック毎にブロック移動時間を算出し、前記部分集合毎に当該部分集合に含まれるすべてのブロックのブロック移動時間を合計することで、当該部分集合に係る第1のブロック移動時間を算出する簡易予測部と、
前記数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記部分集合毎に当該部分集合に含まれる各ブロックについて、少なくとも前記NC指令と前記パラメータとに基づいて、当該ブロック毎にブロック移動時間を算出し、前記部分集合毎に当該部分集合に含まれるすべてのブロックのブロック移動時間を合計することで、当該部分集合に係る第2のブロック移動時間を算出する精密予測部と、
前記精密予測部において、前記2つ以上の部分集合の順序にしたがって前記第2のブロック移動時間を算出する演算が完了している部分集合までの前記簡易予測部における第1のブロック移動時間の演算に要した第1の実績演算時間、及び前記精密予測部における第2のブロック移動時間の演算が完了している部分集合までの前記第2のブロック移動時間の演算に要した第2の実績演算時間を取得する実績演算時間取得部と、
前記第1の実績演算時間と、前記第2の実績演算時間と、前記簡易予測部におけるすべての前記部分集合の第1のブロック移動時間の演算に要した時間を合計した総演算時間と、に基づいて前記精密予測部による前記加工プログラムのNC指令のすべてのブロックの演算に係る残り演算時間を算出する残り演算時間算出部と、
前記残り演算時間を出力する残り演算時間出力部と、
を備え、
前記残り演算時間算出部は、前記総演算時間から前記第1の実績演算時間を差し引いた値に、前記第2の実績演算時間と前記第1の実績演算時間との比率を乗算することで前記残り演算時間を算出する、加工時間予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を予測する加工時間予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を見積もりたい場面は様々ある。例えば、CAMオペレータは、多少演算時間が掛かっても正確な加工時間が見積もりたいという要望がある。一方、現場作業者は、多少精度が悪くても高速に加工時間を見積もりたいという要望がある。
この点、CAMや加工シミュレーションソフトでは、加工プログラムの移動距離と送り速度から加工時間が計算する技術が知られている。例えば、特許文献1参照。
また、数値制御装置のシミュレーション処理により、正確な加工時間を見積もる技術が知られている。例えば、特許文献2、3参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-175439号公報
【文献】特開2005-301440号公報
【文献】特開2018-77778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、予め決まった演算速度、予測精度でしか加工時間及び/又は演算時間を見積もることができない。
また、従来技術では、演算が終わるまで正確な加工時間及び/又は演算時間を知ることができず、中間の予測精度、演算速度で加工時間及び/又は演算時間を見積もることができない。
【0005】
そこで、簡易計算で高速に加工時間及び/又は演算時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間及び/又は演算時間で更新することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の加工時間予測装置の一態様は、NC指令に基づき数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を算出して出力する加工時間予測装置であって、前記NC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて第1のブロック移動時間を算出する簡易予測部と、前記数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを取得するパラメータ取得部と、少なくとも前記NC指令と前記パラメータとに基づいて第2のブロック移動時間を算出する精密予測部と、前記第1のブロック移動時間を前記第2のブロック移動時間で更新して前記加工時間を算出するブロック移動時間更新部と、前記加工時間を出力する加工時間出力部と、を備え、前記加工時間出力部は、前記ブロック移動時間更新部が予め決められた条件で前記第1のブロック移動時間を前記第2のブロック移動時間で更新して算出した前記加工時間を出力する。
【0007】
本開示の加工時間予測装置の一態様は、NC指令に基づき数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を算出して出力する加工時間予測装置であって、前記NC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて第1のブロック移動時間を算出する簡易予測部と、前記数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを取得するパラメータ取得部と、少なくとも前記NC指令と前記パラメータとに基づいて第2のブロック移動時間を算出する精密予測部と、前記簡易予測部での演算に要した第1の実績演算時間及び前記精密予測部での演算に要した第2の実績演算時間を取得する実績演算時間取得部と、前記第1の実績演算時間と前記第2の実績演算時間とに基づいて残り演算時間を算出する残り演算時間算出部と、前記残り演算時間を出力する残り演算時間出力部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る加工時間予測装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図2】簡易予測の第1のブロック移動時間及び精密予測の第2のブロック移動時間と加工時間との関係の一例を示す図である。
図3】加工時間予測装置の予測処理について説明するフローチャートである。
図4】簡易予測の第1のブロック移動時間及び精密予測の第2のブロック移動時間と加工時間との関係の一例を示す図である。
図5】第2実施形態に係る加工時間予測装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図6】取得した実績加工時間と算出した残り加工時間との関係の一例を示す図である。
図7】加工時間予測装置の予測処理について説明するフローチャートである。
図8】第3実施形態に係る加工時間予測装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図9】予め決められた条件に基づいて簡易予測部における第1のブロック移動時間の第1の実績演算時間と、精密予測部における第2のブロック移動時間の第2の実績演算時間と、の一例を示す図である。
図10】加工時間予測装置の予測処理について説明するフローチャートである。
図11】第3実施形態の変形例に係る加工時間予測装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係る加工時間予測装置について、図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る加工時間予測装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図1に示すように、加工時間予測装置1は、コンピュータやタブレット端末等であり、図示しない接続インタフェースを介して図示しない数値制御装置と有線又は無線で接続される。なお、加工時間予測装置1は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して、図示しない数値制御装置と接続されて通信を行うようにしてもよい。この場合、加工時間予測装置1は、かかる接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えている。
また、加工時間予測装置1は、図示しない数値制御装置と異なる装置としたが、後述するように、加工時間予測装置1は、図示しない数値制御装置に含まれてもよい。
【0010】
加工時間予測装置1は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備えるコンピュータやタブレット端末等で構成することができる。また、加工時間予測装置1は、アプリケーションソフトウェアやOS(Operating
System)等の各種の制御用プログラムを格納したHDD等の補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった主記憶装置も備える。
【0011】
そして、加工時間予測装置1において、演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションソフトウェアやOSを読み込み、読み込んだアプリケーションソフトウェアやOSを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションソフトウェアやOSに基づいた演算処理を行なう。また、この演算結果に基づいて、加工時間予測装置1が備える各種のハードウェアを制御する。これにより、本実施形態の加工時間予測装置1が有する、簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、及び加工時間出力部14の機能ブロックは実現される。すなわち、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0012】
簡易予測部10は、例えば、図示しない数値制御装置により実行される加工プログラムのNC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて第1のブロック移動時間を算出する。
具体的には、簡易予測部10は、例えば、NC指令のブロックに軸移動指令が含まれている場合、当該軸移動指令から軸移動量(距離)と軸送り速度とを取得する。簡易予測部10は、取得した軸移動量(距離)を取得した軸送り速度で除算することにより、当該ブロックのブロック移動時間を予測する。なお、簡易予測部10は、NC指令のブロックに1ブロックの移動時間が直接指定されている場合、指定された時間を当該ブロックのブロック移動時間として予測する。また、軸送り速度は、当該ブロックに切削送り速度として指令されている場合、その値を用い、早送り指令の場合には、図示しない数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータから得られる早送り速度を用いるようにしてもよい。
簡易予測部10は、予め決められた条件に応じて算出したブロック移動時間を合計することにより、第1のブロック移動時間を算出する。例えば、簡易予測部10は、図2に示すように、NC指令のシーケンス番号N1~N1000のうち、予め決められた条件としてシーケンス番号が200進む毎にブロック移動時間を合計し、第1のブロック移動時間として算出する。
【0013】
なお、予め決められた条件として、シーケンス番号が200進む毎に、簡易予測部10は、第1のブロック移動時間を算出したが、これに限定されない。例えば、予め決められた条件として、所定のブロック数(例えば、100ブロック等)、所定の時間(例えば、5分等)、又は全ブロック数に対する所定の割合(例えば、10%等)毎に、簡易予測部10は、第1のブロック移動時間を算出するようにしてもよい。また、予め決められた条件として、NC指令におけるプログラム番号(例えば、「O0001」等)、Gコード、Sコード、Tコード、Mコード、Bコードのいずれかが現れる毎に、簡易予測部10は、第1のブロック移動時間を算出するようにしてもよい。
【0014】
精密予測部11は、少なくともNC指令と、後述するパラメータ取得部12により取得されたパラメータとに基づいて第2のブロック移動時間を算出する。
具体的には、精密予測部11は、例えば、特許文献2、3等の公知の数値制御シミュレーションの手法を用いて、図示しない数値制御装置が実行する補間アルゴリズムと同様に、NC指令と取得したパラメータとに基づいて図示しない数値制御工作機械を仮想空間で動作させる。精密予測部11は、NC指令のブロック毎のブロック移動時間を正確に算出する。精密予測部11は、予め決められた条件に応じて算出したブロック移動時間を合計することにより、第2のブロック移動時間を算出する。
図2に示すように、精密予測部11は、例えば、シーケンス番号N1~N1000のNC指令のうち、予め決められた条件としてシーケンス番号が200進む毎にブロック移動時間を合計し、第2のブロック移動時間として算出する。
【0015】
なお、予め決められた条件として、シーケンス番号が200進む毎に、精密予測部11は、第2のブロック移動時間を算出したが、これに限定されない。例えば、予め決められた条件として、所定のブロック数(例えば、100ブロック等)、所定の時間(例えば、5分等)、又は全ブロック数に対する所定の割合(例えば、10%等)毎に、精密予測部11は、第1のブロック移動時間を算出するようにしてもよい。また、予め決められた条件として、NC指令におけるプログラム番号(例えば、「O0001」等)、Gコード、Sコード、Tコード、Mコード、Bコードのいずれかが現れる毎に、精密予測部11は、第2のブロック移動時間を算出するようにしてもよい。
【0016】
パラメータ取得部12は、図示しない数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを、図示しない数値制御装置から取得する。パラメータ取得部12は、取得したパラメータを精密予測部11に出力する。
【0017】
ブロック移動時間更新部13は、例えば、簡易予測部10により算出された第1のブロック移動時間を、精密予測部11により算出された第2のブロック移動時間で更新して、NC指令による図示しない数値制御工作機械の加工時間を算出する。
具体的には、ブロック移動時間更新部13は、例えば、簡易予測部10によるブロック移動時間の演算時間が精密予測部11より短いことから、図2に示すように、NC指令のシーケンス番号「N1」から「N1000」までのシーケンス番号が200進む毎の第1のブロック移動時間を合計した時間「60分」を、図示しない数値制御工作機械による加工時間として算出する。精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」のブロックまでの第2のブロック移動時間が算出された場合、ブロック移動時間更新部13は、当該ブロックにおける簡易予測部10の第1のブロック移動時間「10分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「12分」に更新する。そして、ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「60分」から「62分」に更新する。
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N400」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N201」から「N400」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「8分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「10分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「62分」から「64分」に更新する。
【0018】
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N600」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N401」から「N600」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「15分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「18分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「64分」から「67分」に更新する。
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N800」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N601」から「N800」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「9分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「10分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「67分」から「68分」に更新する。
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N1000」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N801」から「N1000」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「18分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「20分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「68分」から「70分」に更新する。
そうすることで、加工時間予測装置1は、簡易計算で高速に加工時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間で更新することができる。
【0019】
加工時間出力部14は、例えば、ブロック移動時間更新部13により更新(算出)された加工時間を、加工時間予測装置1や図示しない数値制御装置に含まれる液晶ディスプレイ等の表示装置(図示しない)に出力し表示する。
【0020】
<加工時間予測装置1の予測処理>
次に、図3を参照しながら、加工時間予測装置1の予測処理の流れを説明する。
図3は、加工時間予測装置1の予測処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、NC指令を受け付ける度に実行される。
【0021】
ステップS11において、簡易予測部10は、受け付けたNC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて、ブロック毎のブロック移動時間を算出する。簡易予測部10は、予め決められた条件に応じてブロック移動時間を合計し、第1のブロック移動時間を算出する。
【0022】
ステップS12において、ブロック移動時間更新部13は、第1のブロック移動時間から加工時間を算出する。
【0023】
ステップS13において、精密予測部11は、NC指令とパラメータ取得部12により取得されたパラメータとに基づいて、予め決められた条件に応じた第2のブロック移動時間を算出する。
【0024】
ステップS14において、ブロック移動時間更新部13は、第1のブロック移動時間を第2のブロック移動時間で更新して、加工時間を更新する。
【0025】
ステップS15において、加工時間出力部14は、ステップS14で更新された加工時間を出力する。
【0026】
ステップS16において、精密予測部11は、受け付けたNC指令に対する第2のブロック移動時間の算出が終了したか否かを判定する。第2のブロック移動時間の算出が終了した場合、加工時間予測装置1は予測処理を終了する。一方、第2のブロック移動時間の算出が終了していない場合、処理はステップS13に戻る。
【0027】
以上により、第1実施形態に係る加工時間予測装置1は、簡易計算で高速に加工時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間で更新することができる。
また、加工時間予測装置1は、予め決まった演算速度、予測精度以外で加工時間を見積もることができる。
また、加工時間予測装置1は、演算が終わっていなくても正確な加工時間を知ることができ、中間の予測精度、演算速度で加工時間を見積もることができる。
【0028】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態では、精密予測部11は、NC指令のシーケンス番号「N1」からブロック毎のブロック移動時間を正確に算出し、予め決められた条件に応じて算出したブロック移動時間を合計することにより、第2のブロック移動時間を算出したが、これに限定されない。例えば、精密予測部11は、NC指令のシーケンス番号「N1000」からブロック毎のブロック移動時間を正確に算出し、予め決められた条件に応じて算出したブロック移動時間を合計することにより、第2のブロック移動時間を算出するようにしてもよい。この場合、ブロック移動時間更新部13は、例えば、図4に示すように、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N801」から「N1000」のブロックまでの第2のブロック移動時間が算出された場合、当該ブロックにおける簡易予測部10の第1のブロック移動時間「18分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「20分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「60分」から「62分」に更新する。
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N601」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N601」から「N800」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「9分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「10分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「62分」から「63分」に更新する。
【0029】
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N401」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N401」から「N600」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「15分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「18分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「63分」から「66分」に更新する。
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N201」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N201」から「N400」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「8分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「10分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「66分」から「68分」に更新する。
また、ブロック移動時間更新部13は、精密予測部11によりNC指令のシーケンス番号「N1」のブロックまでのブロック移動時間が算出された場合、シーケンス番号「N1」から「N200」のブロックまでのブロック移動時間を簡易予測部10の第1のブロック移動時間「10分」から精密予測部11の第2のブロック移動時間「12分」に更新する。ブロック移動時間更新部13は、加工時間を「68分」から「70分」に更新する。
【0030】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態では加工時間予測装置1はNC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて予め決められた条件に応じて算出した第1のブロック移動時間を、NC指令とパラメータとに基づいて予め決められた条件に応じて算出した第2のブロック移動時間で更新し、加工時間を更新した。これに対し、第2実施形態では加工時間予測装置1Aは、数値制御工作機械が加工開始後に実際に加工を行った実績加工時間を取得し、取得した実績加工時間と算出した加工時間とに基づいて残り加工時間を算出する点が、第1実施形態と相違する。
これにより、第2実施形態に係る加工時間予測装置1Aは、簡易計算で高速に加工時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間で更新することができる。
以下、第2実施形態について説明する。
【0031】
図5は、第2実施形態に係る加工時間予測装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。なお、図1の加工時間予測装置1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0032】
加工時間予測装置1Aは、CPU等の演算処理装置を備えるコンピュータやタブレット端末等で構成することができる。また、加工時間予測装置1Aは、アプリケーションソフトウェアやOS等の各種の制御用プログラムを格納したHDD等の補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAMといった主記憶装置も備える。
【0033】
そして、加工時間予測装置1Aにおいて、演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションソフトウェアやOSを読み込み、読み込んだアプリケーションソフトウェアやOSを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションソフトウェアやOSに基づいた演算処理を行なう。また、この演算結果に基づいて、加工時間予測装置1Aが備える各種のハードウェアを制御する。これにより、本実施形態の加工時間予測装置1Aが有する、簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、実績加工時間取得部15、残り加工時間算出部16、及び加工時間出力部14の機能ブロックは実現される。すなわち、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、及び加工時間出力部14は、第1実施形態の簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、及び加工時間出力部14と同様の機能を有する。
【0034】
実績加工時間取得部15は、例えば、NC指令に基づいて図示しない数値制御工作機械が加工開始後に実際に加工を行った実績加工時間を、図示しない数値制御装置から取得する。
具体的には、実績加工時間取得部15は、例えば、図6に示すように、NC指令のシーケンス番号が10進む毎に、図示しない数値制御工作機械が加工開始から実際に当該シーケンス番号までの加工にかかった実績加工時間を図示しない数値制御装置から取得する。すなわち、図6の場合、実績加工時間取得部15は、NC指令のシーケンス番号「N1」から「N10」までに図示しない数値制御工作機械が実際に加工した実績加工時間「1分」を、図示しない数値制御装置から取得する。また、実績加工時間取得部15は、NC指令のシーケンス番号「N1」から「N20」までに図示しない数値制御工作機械が実際に加工した実績加工時間「1.4分」を、図示しない数値制御装置から取得する。
また、実績加工時間取得部15は、NC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」までに図示しない数値制御工作機械が実際に加工した実績加工時間「12分」を、図示しない数値制御装置から取得する。また、実績加工時間取得部15は、NC指令のシーケンス番号「N1」から「N210」までに図示しない数値制御工作機械が実際に加工した実績加工時間「12.5分」を、図示しない数値制御装置から取得する。また、実績加工時間取得部15は、NC指令のシーケンス番号「N1」から「N220」までに図示しない数値制御工作機械が実際に加工した実績加工時間「12.9分」を、図示しない数値制御装置から取得する。
【0035】
なお、実績加工時間取得部15は、NC指令のシーケンス番号が10進む毎に、図示しない数値制御工作機械の実績加工時間を取得したが、これに限定されない。例えば、実績加工時間取得部15は、NC指令のシーケンス番号が10以外の所定の数(例えば、5や20等)進む毎に、図示しない数値制御工作機械の実績加工時間を取得してもよく、所定のブロック数(例えば、10ブロック等)、所定の時間(例えば、1分等)、又は全ブロック数に対する所定の割合(例えば、1%等)毎に、図示しない数値制御工作機械の実績加工時間を取得してもよい。また、実績加工時間取得部15は、NC指令においてプログラム番号(例えば、「O0001」等)、Gコード、Sコード、Tコード、Mコード、Bコードのいずれかが現れる毎に、図示しない数値制御工作機械の実績加工時間を取得してもよい。
【0036】
残り加工時間算出部16は、実績加工時間取得部15により取得された実績加工時間とブロック移動時間更新部13により算出(更新)された加工時間とに基づいて残り加工時間を算出する。
具体的には、残り加工時間算出部16は、例えば、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N10」まで加工した場合、図6に示すように、実績加工時間取得部15により取得されたNC指令のシーケンス番号「N1」から「N10」までの実績加工時間「1分」を取得する。また、残り加工時間算出部16は、図2に示すように、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N10」まで加工した時点で、精密予測部11によるシーケンス番号「N200」までの第2のブロック移動時間が算出されていない場合、ブロック移動時間更新部13から加工時間「60分」を取得する。残り加工時間算出部16は、加工時間「60分」から実績加工時間「1分」を差し引くことで、残り加工時間「59分」を加工時間として算出する。
また、残り加工時間算出部16は、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N20」まで加工した場合、実績加工時間取得部15により取得されたNC指令のシーケンス番号「N1」から「N20」までの実績加工時間「1.4分」を取得する。また、残り加工時間算出部16は、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N20」まで加工した時点で、精密予測部11によりシーケンス番号「N200」までの第2のブロック移動時間を算出している場合、ブロック移動時間更新部13から加工時間「62分」を取得する。残り加工時間算出部16は、加工時間「62分」から実績加工時間「1.4分」を差し引くことで、残り加工時間「60.6分」を加工時間として算出する。
【0037】
同様にして、残り加工時間算出部16は、例えば、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」まで加工した場合、図6に示すように、実績加工時間取得部15により取得されたNC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」までの実績加工時間「12分」を取得する。また、残り加工時間算出部16は、図2に示すように、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N200」まで加工した時点で、精密予測部11によりシーケンス番号「N400」までの第2のブロック移動時間を算出している場合、ブロック移動時間更新部13から加工時間「64分」を取得する。残り加工時間算出部16は、加工時間「64分」から実績加工時間「12分」を引くことにより、残り加工時間「52分」を加工時間として算出する。
また、残り加工時間算出部16は、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N210」まで加工した場合、図6に示すように、実績加工時間取得部15により取得されたNC指令のシーケンス番号「N1」から「N210」までの実績加工時間「12.5分」を取得する。また、残り加工時間算出部16は、図2に示すように、図示しない数値制御工作機械がNC指令のシーケンス番号「N210」まで加工した時点で、精密予測部11によりシーケンス番号「N600」までの第2のブロック移動時間が算出されていない場合、ブロック移動時間更新部13より加工時間「64分」を取得する。残り加工時間算出部16は、加工時間「64分」から実績加工時間「12.5分」を引くことにより、残り加工時間「51.5分」を加工時間として算出する。
また、残り加工時間算出部16は、図示しない数値制御工作機械によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N220」まで加工した場合、図6に示すように、実績加工時間取得部15により取得されたNC指令のシーケンス番号「N1」から「N220」までの実績加工時間「12.9分」を取得する。また、残り加工時間算出部16は、図2に示すように、図示しない数値制御工作機械がNC指令のシーケンス番号「N220」まで加工した時点で、精密予測部11によるシーケンス番号「N600」までの第2のブロック移動時間が算出されていない場合、ブロック移動時間更新部13より加工時間「64分」を取得する。残り加工時間算出部16は、加工時間「64分」から実績加工時間「12.9分」を引くことにより、残り加工時間「51.1分」を加工時間として算出する。
残り加工時間算出部16は、図示しない数値制御工作機械がNC指令のシーケンス番号「N1000」のブロックの実行が終了するまで、同様の処理を行う。
【0038】
<加工時間予測装置1Aの予測処理>
次に、図7を参照しながら、加工時間予測装置1Aの予測処理の流れを説明する。
図7は、加工時間予測装置1Aの予測処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、NC指令を受け付ける度に実行される。
なお、ステップS21~ステップS25、及びステップS27~ステップS28の処理は、図3のステップS11~ステップS16の処理と同様であり、説明は省略する。
【0039】
ステップS25において、実績加工時間取得部15は、NC指令に基づいて図示しない数値制御工作機械が加工開始後に実際に加工を行った実績加工時間を、図示しない数値制御装置から取得する。
【0040】
ステップS26において、残り加工時間算出部16は、ステップS25で取得された実績加工時間からステップS24で更新された加工時間を差し引いて、残り加工時間を加工時間として算出する。
【0041】
以上により、第2実施形態に係る加工時間予測装置1Aは、簡易計算で高速に加工時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間で更新することができる。
また、加工時間予測装置1Aは、予め決まった演算速度、予測精度以外で加工時間を見積もることができる。
また、加工時間予測装置1Aは、演算が終わっていなくても正確な加工時間を知ることができ、中間の予測精度、演算速度で加工時間を見積もることができる。
【0042】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第1実施形態では加工時間予測装置1はNC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて予め決められた条件に応じて算出した第1のブロック移動時間を、NC指令とパラメータとに基づいて予め決められた条件に応じて算出した第2のブロック移動時間で更新し、加工時間を更新した。第2実施形態では加工時間予測装置1Aは、数値制御工作機械が加工開始後に実際に加工を行った実績加工時間を取得し、取得した実績加工時間と算出した加工時間とに基づいて残り加工時間を算出した。これに対して、第3実施形態では加工時間予測装置1Bは、加工時間を更新するとともに、加工時間の更新が終了するまでに要する残り演算時間を算出する点が、第1実施形態及び第2実施形態と相違する。
これにより、第3実施形態に係る加工時間予測装置1Bは、簡易計算で高速に加工時間及び/又は演算時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間及び/又は演算時間で更新することができる。
以下、第3実施形態について説明する。
【0043】
図8は、第3実施形態に係る加工時間予測装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。なお、図1の加工時間予測装置1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0044】
加工時間予測装置1Bは、CPU等の演算処理装置を備えるコンピュータやタブレット端末等で構成することができる。また、加工時間予測装置1Bは、アプリケーションソフトウェアやOS等の各種の制御用プログラムを格納したHDD等の補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAMといった主記憶装置も備える。
【0045】
そして、加工時間予測装置1Bにおいて、演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションソフトウェアやOSを読み込み、読み込んだアプリケーションソフトウェアやOSを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションソフトウェアやOSに基づいた演算処理を行なう。また、この演算結果に基づいて、加工時間予測装置1Bが備える各種のハードウェアを制御する。これにより、本実施形態の加工時間予測装置1Bが有する、簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、加工時間出力部14、実績演算時間取得部17、残り演算時間算出部18、及び残り演算時間出力部19の機能ブロックは実現される。すなわち、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、及び加工時間出力部14は、第1実施形態の簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、及び加工時間出力部14と同様の機能を有する。
【0046】
実績演算時間取得部17は、簡易予測部10での第1のブロック移動時間の演算に要した第1の実績演算時間及び精密予測部11での第2のブロック移動時間の演算に要した第2の実績演算時間を取得する。
具体的には、実績演算時間取得部17は、例えば、図9に示すように、予め決められた条件(例えば、シーケンス番号が200進む等)に基づいて、第1のブロック移動時間の演算に要した第1の実績演算時間を簡易予測部10から取得する。また、実績演算時間取得部17は、予め決められた条件に基づいて、第2のブロック移動時間の演算に要した第2の実績演算時間を精密予測部11から取得する。
なお、図9は、予め決められた条件に基づいて簡易予測部10における第1のブロック移動時間の第1の実績演算時間と、精密予測部11における第2のブロック移動時間の第2の実績演算時間と、の一例を示す図である。図9では、簡易予測部10が「5秒」でNC指令のシーケンス番号「N1」から星印で示す「N1000」まで演算する場合に、精密予測部11は、NC指令のシーケンス番号「N1」から星印で示す「N200」までを演算する場合を例示する。ただし、図9では、NC指令のシーケンス番号「N201」から「N400」、「N401」から「N600」、「N601」から「N800」それぞれまでの精密予測部11による第2の実績演算時間を「2秒」、「3秒」、「6秒」と括弧書きで示す。
【0047】
残り演算時間算出部18は、例えば、第1の実績演算時間と第2の実績演算時間とに基づいて精密予測部11によるNC指令の全てのブロックの演算にかかる残り演算時間を算出する。
例えば、図9の場合、簡易予測部10によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」までの第1の実績加工時間は「1秒」であり、精密予測部11によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」までの第2の実績加工時間は「5秒」である。すなわち、第2の実績加工時間は、第1の実績加工時間の5倍かかっていることを示す。
そこで、残り演算時間算出部18は、精密予測部11によるNC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」までの第2の実績加工時間を取得した場合、式1を用いて、精密予測部11によるNC指令のシーケンス番号「N1000」までの演算にかかる残り演算時間を算出する。
= (S - Cen) × α (式1)
ここで、Tは、残り演算時間を示す。Sは、簡易予測の総演算時間を示す。Cenは、簡易予測のNC指令のシーケンス番号kまでの累積演算時間を示す。Canは、精密予測のシーケンス番号kまでの累積演算時間を示す。αは、倍率を示し、α=Can/C である。kは、例えば、シーケンス番号「N200」、「N400」、「N600」、「N800」等の予め決められた条件を示す。
【0048】
図9に示すように、例えば、精密予測部11がNC指令のシーケンス番号「N1」から「N200」まで精密予測が終了した場合、簡易予測の総演算時間Sは「5秒」であり、簡易予測のシーケンス番号「N200」までの累積演算時間Cenは「1秒」であり、精密予測のシーケンス番号「N200」までの累積演算時間Canは「5秒」であり、倍率αは「5倍」である。これにより、残り演算時間算出部18は、式1から残り演算時間Tを「20秒」と算出する。
また、精密予測部11がNC指令のシーケンス番号「N1」から「N400」まで精密予測が終了した場合、簡易予測の総演算時間Sは「5秒」であり、簡易予測のシーケンス番号「N400」までの累積演算時間Cenは「1.5秒」であり、精密予測のシーケンス番号「N400」までの累積演算時間Canは「7秒」であり、倍率αは「4.67倍」である。これにより、残り演算時間算出部18は、式1から残り演算時間Tを「16.35秒」と算出する。
また、精密予測部11がNC指令のシーケンス番号「N1」から「N600」まで精密予測が終了した場合、簡易予測の総演算時間Sは「5秒」であり、簡易予測のシーケンス番号「N600」までの累積演算時間Cenは「2秒」であり、精密予測のシーケンス番号「N600」までの累積演算時間Canは「10秒」であり、倍率αは「5倍」である。これにより、残り演算時間算出部18は、式1から残り演算時間Tを「15秒」と算出する。
また、精密予測部11がNC指令のシーケンス番号「N1」から「N800」まで精密予測が終了した場合、簡易予測の総演算時間Sは「5秒」であり、簡易予測のシーケンス番号「N800」までの累積演算時間Cenは「4秒」であり、精密予測のシーケンス番号「N800」までの累積演算時間Canは「16秒」であり、倍率αは「4倍」である。これにより、残り演算時間算出部18は、式1から残り演算時間Tを「4秒」と算出する。
【0049】
残り演算時間出力部19は、残り演算時間算出部18により算出された残り演算時間を加工時間予測装置1Bや図示しない数値制御装置に含まれる液晶ディスプレイ等の表示装置(図示しない)に出力し表示する。
【0050】
<加工時間予測装置1Bの予測処理>
次に、図10を参照しながら、加工時間予測装置1Bの予測処理の流れを説明する。
図10は、加工時間予測装置1Bの予測処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、NC指令を受け付ける度に実行される。
なお、ステップS31~ステップS32、ステップS34~ステップS35、ステップS39の処理は、図3のステップS11~ステップS14、ステップS16の処理と同様であり、説明は省略する。
【0051】
ステップS33において、実績演算時間取得部17は、簡易予測部10での第1のブロック移動時間の演算に要した第1の実績演算時間を取得する。
【0052】
ステップS36において、実績演算時間取得部17は、精密予測部11での第2のブロック移動時間の演算に要した第2の実績演算時間を取得する。
【0053】
ステップS37において、残り演算時間算出部18は、第1の実績演算時間と第2の実績演算時間とに基づいて精密予測部11によるNC指令の全てのブロックの演算にかかる残り演算時間を、式(1)を用いて算出する。
【0054】
ステップS38において、加工時間出力部14は、ステップS35で更新された加工時間を出力し、残り演算時間出力部19は、ステップS37で算出された残り演算時間を出力する。
【0055】
以上により、第3実施形態に係る加工時間予測装置1Bは、簡易計算で高速に加工時間及び/又は演算時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間及び/又は演算時間で更新することができる。
また、加工時間予測装置1Bは、予め決まった演算速度、予測精度以外で加工時間及び/又は演算時間を見積もることができる。
また、加工時間予測装置1Bは、演算が終わっていなくても正確な加工時間及び/又は演算時間を知ることができ、中間の予測精度、演算速度で加工時間及び/又は演算時間を見積もることができる。
【0056】
<第3実施形態の変形例>
第3実施形態では、加工時間予測装置1Bは、ブロック移動時間更新部13により更新された加工時間とともに、残り演算時間算出部18により算出された残り演算時間を出力したが、これに限定されない。例えば、加工時間予測装置1Bは、図11に示すように、簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、実績演算時間取得部17、残り演算時間算出部18、及び残り演算時間出力部19の機能ブロックを有し、残り演算時間算出部18により算出された残り演算時間のみを出力するようにしてもよい。
簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、実績演算時間取得部17、残り演算時間算出部18、及び残り演算時間出力部19は、第3実施形態の簡易予測部10、精密予測部11、パラメータ取得部12、ブロック移動時間更新部13、実績演算時間取得部17、残り演算時間算出部18、及び残り演算時間出力部19と同様の機能を有する。
これにより、第3実施形態の変形例に係る加工時間予測装置1Bは、簡易計算で高速に演算時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い演算時間で更新することができる。
また、加工時間予測装置1Bは、予め決まった演算速度、予測精度以外で演算時間を見積もることができる。
また、加工時間予測装置1Bは、演算が終わっていなくても正確な演算時間を知ることができ、中間の予測精度、演算速度で演算時間を見積もることができる。
【0057】
以上により、第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態、第3実施形態、及び第3実施形態の変形例に係る加工時間予測装置1、1A、1Bは、簡易計算で高速に加工時間及び/又は演算時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間及び/又は演算時間で更新することができる。
【0058】
<変形例>
第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態、第3実施形態、及び第3実施形態の変形例では、加工時間予測装置1、1A、1Bは、図示しない数値制御装置と異なる装置としたが、これに限定されない。
例えば、加工時間予測装置1、1A、1Bは、図示しない数値制御装置に含まれてもよい。
【0059】
なお、第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態、第3実施形態、及び第3実施形態の変形例における、加工時間予測装置1、1A、1Bに含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0060】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0061】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。また、前記プログラムを記述するステップはクラウドコンピューティングで実施してもよい。
【0062】
本開示について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、又は、特許請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除等が可能である。また、これらの実施形態は、組み合わせて実施することもできる。例えば、上述した実施形態において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。また、上述した実施形態の説明に数値又は数式が用いられている場合も同様である。
【0063】
上記実施形態及び変形例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
加工時間予測装置(1)は、NC指令に基づき数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を算出して出力する加工時間予測装置であって、NC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて第1のブロック移動時間を算出する簡易予測部(10)と、数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを取得するパラメータ取得部(12)と、少なくともNC指令とパラメータとに基づいて第2のブロック移動時間を算出する精密予測部(11)と、第1のブロック移動時間を第2のブロック移動時間で更新して加工時間を算出するブロック移動時間更新部(13)と、加工時間を出力する加工時間出力部(14)と、を備え、加工時間出力部(14)は、ブロック移動時間更新部(13)が予め決められた条件で第1のブロック移動時間を第2のブロック移動時間で更新して算出した加工時間を出力する。
(付記2)
付記1の加工時間予測装置(1)において、予め決められた条件は、所定のブロック数、所定の時間、全ブロック数に対する所定の割合、プログラム番号、シーケンス番号、Gコード、Sコード、Tコード、Mコード、Bコードのうち少なくとも1つを含む。
(付記3)
付記1の加工時間予測装置(1A)において、数値制御工作機械が加工開始後に実際に加工を行った実績加工時間を取得する実績加工時間取得部(15)と、実績加工時間とブロック移動時間更新部(13)により算出された加工時間とに基づいて残り加工時間を算出する残り加工時間算出部(16)と、を備え、残り加工時間算出部(16)は、加工時間から実績加工時間を差し引くことで残り加工時間を算出し該残り加工時間を加工時間とする。
(付記4)
付記1の加工時間予測装置(1B)において、簡易予測部(10)での演算に要した第1の実績演算時間及び精密予測部(11)での演算に要した第2の実績演算時間を取得する実績演算時間取得部(17)と、第1の実績演算時間と第2の実績演算時間とに基づいて残り演算時間を算出する残り演算時間算出部(18)と、残り演算時間を出力する残り演算時間出力部(19)と、をさらに備える。
(付記5)
加工時間予測装置(1B)は、NC指令に基づき数値制御工作機械を駆動制御して実施される加工に要する加工時間を算出して出力する加工時間予測装置であって、NC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて第1のブロック移動時間を算出する簡易予測部(10)と、数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを取得するパラメータ取得部(12)と、少なくともNC指令とパラメータとに基づいて第2のブロック移動時間を算出する精密予測部(11)と、簡易予測部(10)での演算に要した第1の実績演算時間及び精密予測部(11)での演算に要した第2の実績演算時間を取得する実績演算時間取得部(17)と、第1の実績演算時間と第2の実績演算時間とに基づいて残り演算時間を算出する残り演算時間算出部(18)と、残り演算時間を出力する残り演算時間出力部(19)と、を備える。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B 加工時間予測装置
10 簡易予測部
11 精密予測部
12 パラメータ取得部
13 ブロック移動時間更新部
14 加工時間出力部
15 実績加工時間取得部
16 残り加工時間算出部
17 実績演算時間取得部
18 残り演算時間算出部
19 残り演算時間出力部
【要約】
簡易計算で高速に加工時間及び/又は演算時間を見積もりつつ、演算時間を要するが精度の高い加工時間及び/又は演算時間で更新すること。
加工時間予測装置(1)は、NC指令を読込み解釈し少なくともブロック毎の距離と送り速度又は時間に基づいて第1のブロック移動時間を算出する簡易予測部(10)と、数値制御工作機械を駆動制御する際に使用するパラメータを取得するパラメータ取得部(12)と、少なくともNC指令とパラメータとに基づいて第2のブロック移動時間を算出する精密予測部(11)と、第1のブロック移動時間を第2のブロック移動時間で更新して加工時間を算出するブロック移動時間更新部(13)と、加工時間を出力する加工時間出力部(14)と、を備え、加工時間出力部(14)は、ブロック移動時間更新部(13)が予め決められた条件で第1のブロック移動時間を第2のブロック移動時間で更新して算出した加工時間を出力する。
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