(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】固液分離装置及びそれを用いた固液分離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241210BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/78 Z
B01D33/04 A
(21)【出願番号】P 2024060517
(22)【出願日】2024-04-04
【審査請求日】2024-04-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518440383
【氏名又は名称】株式会社西村ケミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100162536
【氏名又は名称】高橋 豊
(72)【発明者】
【氏名】兼重 卓爾
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-039285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05
B01D 35/10-37/04
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通液性の搬送ベルト、
前記搬送ベルト上に、固体を含む液体を供給する固液供給部、
前記搬送ベルトの搬送方向において前記固液供給部の下流に位置しており、かつ前記搬送ベルトを下側から支持するローラ、
前記ローラに支持されている部分の前記搬送ベルトに加圧ガスを供給する加圧ガス供給部、及び
前記搬送ベルトの搬送方向において前記ローラの下流に位置している、前記固体の回収部
を具備して
おり、前記固体が半導体ウェハの端材である、固液分離装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトが、金属メッシュで構成されている、請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記加圧ガス供給部が、前記搬送ベルトから10cm以内の距離に位置している、請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記加圧ガス供給部が、前記搬送ベルトの幅方向の略全体にわたって加圧ガスを供給する、請求項3に記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記加圧ガス供給部及び前記ローラの組合せを2つ以上具備している、請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトが、端部で鋭角状に折り返しており、前記回収部が、搬送ベルトの端部下部に位置している、請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項7】
前記鋭角状に折り返された搬送ベルトの裏側に、固体剥離用加圧ガス供給部を有している、請求項6に記載の固液分離装置。
【請求項8】
前記搬送ベルトの搬送方向において前記固体剥離用加圧ガス供給部の下流に、固体回収用邪魔板を有している、請求項7に記載の固液分離装置。
【請求項9】
水から半導体ウェハの端材を分離するための装置である、請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の固液分離装置を用いて、水から半導体ウェハの端材を分離することを含む、固液分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離装置及びそれを用いた固液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、半導体ウェハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚さに加工された後、ダイシング装置(切削装置)によって個々のデバイスに分割される。
【0003】
半導体ウェハは、通常円形であり、その円周部分は、デバイスがダイシングされた後、端材として廃棄される。ダイシング工程では、大量の水が使用され、半導体ウェハの端材は、その廃液とともに廃棄される。
【0004】
特許文献1は、半導体ウェハの端材の回収方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
廃液と共に回収された半導体ウェハの端材は、鋭利であるため、樹脂製配管を傷つけたり、フィルタを傷つけたりするため、取り扱いが困難である。また、半導体製造プロセスにおいて、端材は常時発生するものではなく、ダイシングの工程があるときにのみ発生する。
【0007】
そのため、廃液から端材を分離回収する際には、端材が溜まった段階で人間がマニュアル操作で端材を回収しているが、端材をいつのタイミングで回収するかの判断も難しい場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、半導体ウェハの端材等の液体に含まれる固体を全自動で容易に分離回収することができる固液分離装置及びそれを用いた固液分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下の実施形態を含む本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
1つの実施形態において、本発明の固液分離装置は、
通液性の搬送ベルト、
前記搬送ベルト上に、固体を含む液体を供給する固液供給部、
前記搬送ベルトの搬送方向において前記固液供給部の下流に位置しており、かつ前記搬送ベルトを下側から支持するローラ、
前記ローラに支持されている部分の前記搬送ベルトに加圧ガスを供給する加圧ガス供給部、及び
前記搬送ベルトの搬送方向において前記ローラの下流に位置している、前記固体の回収部
を具備する。
【0011】
1つの実施形態において、本発明の固液分離装置は、前記搬送ベルトが、金属メッシュで構成されている。
【0012】
1つの実施形態において、本発明の固液分離装置は、前記加圧ガス供給部が、前記搬送ベルトから10cm以内の距離に位置している。
【0013】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離装置は、前記加圧ガス供給部が、前記搬送ベルトの幅方向の略全体にわたって加圧ガスを供給する。
【0014】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離装置は、前記加圧ガス供給部及び前記ローラの組合せを2つ以上具備している。
【0015】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離装置は、前記搬送ベルトが、端部で鋭角状に折り返しており、前記回収部が、搬送ベルトの端部下部に位置している。
【0016】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離装置は、前記鋭角状に折り返された搬送ベルトの裏側に、固体剥離用加圧ガス供給部を有している。
【0017】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離装置は、前記鋭角状に折り返された搬送ベルトの裏側に、固体剥離用加圧ガス供給部を有している。
【0018】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離装置は、前記搬送ベルトの搬送方向において前記固体剥離用加圧ガス供給部の下流に、固体回収用邪魔板を有している。
【0019】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離装置は、水から半導体ウェハの端材を分離するための装置である。
【0020】
1つの実施形態においては、本発明の固液分離方法は、前記固液分離装置を用いて、水から半導体ウェハの端材を分離する方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体ウェハの端材等の液体に含まれる固体を全自動で容易に分離回収することができる固液分離装置及びそれを用いた固液分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の装置を概略的に示している。
【
図2】
図2は、本発明の装置の1つの実施形態の加圧ガス供給部を撮影した写真である。
【
図3】
図3は、本発明の装置の1つの実施形態の搬送ベルトを下側から支持するローラを撮影した写真である。
【
図4】
図4は、本発明の装置の1つの実施形態の搬送ベルトの端部を撮影した写真である。
【
図5】
図5は、本発明の装置の1つの実施形態の搬送ベルトの裏側に存在する固体剥離用加圧ガス供給部を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を以下の実施形態を例として具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。本明細書における各装置、機構、手段等について特に詳細な言及がない場合には、これらについては当業者であれば周知の機械的装置、機構、手段等を用いることができる。各実施形態は、当業者が通常の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、各実施形態について特記していない構成については、他の実施形態と同じ構成又はその実施形態に適した構成を有することができる。
【0024】
図1に、本発明の装置の1つの実施形態を概略的に示す。
【0025】
本発明の固液分離装置100は、通液性の搬送ベルト10;搬送ベルト10上に、固体を含む液体を供給する固液供給部20;搬送ベルト10の搬送方向において固液供給部20の下流に位置しており、かつ搬送ベルト10を下側から支持するローラ30;ローラ30に支持されている部分の搬送ベルト10に加圧ガスを供給する加圧ガス供給部40;及び搬送ベルト10の搬送方向においてローラ30の下流に位置している、固体の回収部50を具備する。
【0026】
固液分離装置100の搬送ベルト10上に固体を含む液体を供給して、固体を回収しようとすると、固体と搬送ベルト10との界面に液体が存在することによって、固体が搬送ベルト10から剥離しにくくなり、固体の回収が困難になることがある。特に、半導体ウェハの端材は、半導体ウェハがCMP工程を経ているために極めて平坦性が高く、搬送ベルト10に強く付着し、剥離が極めて難しくなる場合があった。
【0027】
それに対して、本発明者らは、固液分離装置100の搬送ベルト10上に高温の熱風を吹き込んで液体の乾燥を試みたり、高圧でエアーを吹き込んで液体の脱離を試みたりしたが、通液性の搬送ベルト10の内部に液体が浸透したりすることで、液体を搬送ベルト10から排出させることが極めて困難であった。しかし、本発明者がさらに鋭意検討を進めたところ、本発明者らは、搬送ベルト10を下側からローラ30で支持した上で、そのローラ30で支持した場所に上側から加圧ガスを供給すると、搬送ベルト10上に存在する液体がローラ30側に移動して、搬送ベルト10上から液体が大量に排出されることを見出した。そして、このような固液分離装置100によれば、実質的に固体のみが搬送ベルト10上に残るため、半導体ウェハの端材のような回収が困難な固体であったとしても、容易に固体のみを回収することができることが分かった。
【0028】
なお、本明細書において、上又は下は、重力方向を下として、一般的な意味で解釈すればよい。例えば、上側及び表側とは、固液供給部20から固体を含む液体が供給される、搬送ベルト10上の面をいう。また、下側又は裏側とは、搬送ベルト10の上側及び表側とは反対側の面をいう。
【0029】
搬送ベルト10は、通液性であれば特に限定されないが、例えば多孔性のベルトであることができ、特にメッシュ状のベルトであることができる。また、搬送ベルト10の材料は、ベルトコンベアで用いられる通常の搬送ベルト用の材料であれば特に限定されないが、例えば金属製であってもよく、特にステンレス製であることができる。
図2に示すように、搬送ベルト10は、金属製メッシュで構成することができる。搬送ベルト10は、連続的に搬送できるように、ベルトコンベアのように周回して連続的に運転させることができる。
【0030】
固液供給部20は、固体を含む液体を供給することができれば特に限定されない。固体としては、搬送ベルト10にくっつきやすい板状体であってもよく、例えば半導体ウェハの端材である。液体については特に限定されず、水であってもよい。
【0031】
図1及び
図2に示されるように、固液供給部20は、固液供給部20から供給される固体及び液体が搬送ベルト10から飛散しないようにするためのカバー21をさらに有することができる。また、搬送ベルト10に落下する固体の位置を、カバー21を用いて搬送ベルト10の幅の一部に制限させることによって、その幅に対してのみ、加圧ガス供給部から加圧ガスを供給するように構成することができる。
【0032】
ローラ30は、搬送ベルト10を下側か支持し、これにより加圧ガスが供給されたときに、ローラ30側に水が移動できるようにする。ローラ30及び加圧ガス供給部40は、複数組で固液分離装置100に具備させることができ、これにより搬送ベルト10上の液を確実にローラ30側に排出させることができる。
【0033】
なお、ローラ30側に排出された液体は装置100の下部に位置する廃液回収部80によって回収することができる。廃液回収部80は、固液供給部20の下部にも渡って位置することで、排出された液体を広く回収することができる。
【0034】
図3は、固液分離装置100を実際に稼働させている際の、ローラ30の写真である。ローラ30の右側にある搬送ベルト10には、水が大量に含まれていることが写真からも明らかであるが、ローラ30の左側にある搬送ベルト10には水が実質的に含まれておらず、ローラ30には水が付着していることが分かる。ローラ30だけでは、このような現象は起こらず、また加圧ガス供給部40のみでもこのような現象は起きなかったため、ローラ30と加圧ガス供給部40との組合せが重要であることが分かった。
【0035】
ローラ30は、
図3の写真のように金属表面を有するローラであってもよいが、樹脂表面を有するローラであってもよい。
【0036】
加圧ガス供給部40は、ローラ30に支持されている搬送ベルト10の部分に、上側から強い風を当てることによって、通液性の搬送ベルト10に含まれている水分を搬送ベルト10の裏側に移動させる。これにより、搬送ベルト10に含まれている水が、ローラ30を通じて排出される。
【0037】
加圧ガス供給部40は、通液性の搬送ベルト10に含まれている水分を搬送ベルト10の裏側に移動させることができれば、ガスの強さは限定されないが、例えば0.1~1.0MPa、0.2~0.8MPa、又は0.3~0.7MPaの吐出圧で気体を吹き出すことができる。
【0038】
加圧ガス供給部40は、搬送ベルト10に可能な限り近づけて加圧ガスを供給できるように構成されていることが好ましい。例えば、加圧ガス供給部40は、搬送ベルト10から10cm以内の距離に位置していることが好ましく、この距離が近ければ近いほど、搬送ベルト10上の水分を搬送ベルト10の裏側に移動させることができるため、この距離は、5cm以内、3cm以内、又は1cm以内であることが好ましい。ここで、搬送ベルト10とか加圧ガス供給部40との距離は、搬送ベルト10上の表面から、加圧ガス供給部40の加圧ガスの出口からの平均距離をいう。
【0039】
加圧ガス供給部40は、搬送ベルト10の進行方向と直角をなす幅方向の略全体にわたって、加圧ガスを供給できるように構成されていることが好ましい。ここで、幅方向の略全体とは、固液供給部20から供給される固体及び液体が搬送ベルト10上に載る範囲の幅と実質的に同じであってよく、カバー21が存在する場合には、カバー21の幅方向(搬送ベルト10の幅方向と同一の報告)の寸法と実質的に同じであってよい。
【0040】
加圧ガス供給部40から供給される加圧ガスは、搬送ベルト10に上側から真下の方向に向けて送出されることが好ましい。搬送ベルト10の搬送方向と、加圧ガスが送出される方向とは、60度~120度又は80度~100度であることが好ましく、約90度で略直角の関係を有していることが最も好ましい。
【0041】
ローラ30と加圧ガス供給部40との組合せは、この装置100に2つ以上具備されることが好ましい。これにより、ローラ30と加圧ガス供給部40との組合せが1つだけの場合と比較して、搬送ベルト10上の水分をより多く排出させることができる。例えば、ローラ30と加圧ガス供給部40との組合せは、
図1に示すように3つ又はそれ以上具備させることができる。
【0042】
回収部50は、搬送ベルト10の搬送方向においてローラ30及び加圧ガス供給部40の下流に位置している。回収部50の付近では、搬送ベルト10には水分が排出されているため、固体を搬送ベルト10から回収することが容易になっている。
【0043】
回収部50は、コンベア式の搬送ベルト10の端部に位置しており、搬送ベルト10から落下してくる固体を回収できるようになっていてもよい。
【0044】
この場合において、
図1に示すように、搬送ベルト10は、端部で鋭角上に折り返されていることが好ましい。この場合、回収部50は、
図1に示すように、搬送ベルト10の端部の下部に位置していることができる。
【0045】
図4は、搬送ベルト10の端部まで搬送されてきた半導体ウェハの端材の写真であり、この段階では、搬送ベルト10には水が大幅に排出されているため、半導体ウェハの端材は、そのまま落下して、回収部50で回収することができる。
【0046】
しかし、これでも半導体ウェハの端材の一部は、搬送ベルト10に付着し続ける場合がある。そのため、本発明の装置100では、搬送ベルト10の裏側に、固体剥離用加圧ガス供給部60をさらに有することができる。これにより、固体が搬送ベルト10から剥離しない場合に加圧ガスを供給して固体を搬送ベルト10から剥離させることができる。
図5は、搬送ベルト10の裏側に存在する固体剥離用加圧ガス供給部60を撮影した写真である。
【0047】
同様に、この装置100は、搬送ベルト10の表側から加圧ガスを供給する第2の固体剥離用加圧ガス供給部61をさらに有することができる。
【0048】
なお、これらの固体剥離用加圧ガス供給部60及び第2の固体剥離用加圧ガス供給部61は、加圧ガス供給部40と同様に、搬送ベルトとの距離、ガスの吐出圧等を有することができる。
【0049】
さらに、この装置100は、固体剥離用加圧ガス供給部60の下流に、固体回収用邪魔板70を有することができる。これにより、搬送ベルト10に最後まで付着している固体を回収することができる。これらの対応をすることによって、半導体ウェハの端材のような極めて回収が困難な固体であったとして、搬送ベルト10上に排出された固体の95%以上、特に98%以上を回収することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…搬送ベルト
20…固液供給部
21…カバー
30…ローラ
40…加圧ガス供給部
50…回収部
60…固体剥離用加圧ガス供給部
61…第2の固体剥離用加圧ガス供給部
70…固体回収用邪魔板
80…廃液回収部
100…固液分離装置
【要約】
【課題】 本発明は、半導体ウェハの端材等の液体に含まれる固体を全自動で容易に分離回収することができる固液分離装置を提供する。
【解決手段】 本発明の固液分離装置100は、通液性の搬送ベルト10;搬送ベルト10上に、固体を含む液体を供給する固液供給部20;搬送ベルト10の搬送方向において固液供給部20の下流に位置しており、かつ搬送ベルト10を下側から支持するローラ30;ローラ30に支持されている部分の搬送ベルト10に加圧ガスを供給する加圧ガス供給部40;及び搬送ベルト10の搬送方向においてローラ30の下流に位置している、固体の回収部50を具備する。
【選択図】
図1