(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】NC工作機械用の加工実績管理システム、サーバ装置、および加工状況監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20241210BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20241210BHJP
B23Q 41/08 20060101ALI20241210BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
G05B19/418 Z
B23Q41/08 B
B23Q17/00 E
(21)【出願番号】P 2024131799
(22)【出願日】2024-08-08
【審査請求日】2024-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591028072
【氏名又は名称】株式会社日研工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三▲角▼ 進
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-261650(JP,A)
【文献】特開昭63-056706(JP,A)
【文献】特開平06-149342(JP,A)
【文献】特開平10-161718(JP,A)
【文献】特開2000-132215(JP,A)
【文献】特開2004-013716(JP,A)
【文献】特開平5-084631(JP,A)
【文献】特開2009-082855(JP,A)
【文献】特開平11-134013(JP,A)
【文献】特開平5-345262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC工作機械ごとの加工実績を
一括管理する加工実績管理システムであって、
任意の加工指令に応じてワークの加工サイクルを実行するNC工作機械
の各々に付設されたNC装置、および、
複数の前記NC装置とネットワークを介して接続され、前記NC装置からNCプログラムの実行状況を示す
、プログラム番号を含む稼働履歴データを受信するサーバ装置を備え、
前記NC装置は、
文字情報を入力可能な文字情報入力画面を表示する表示手段と、
前記文字情報入力画面を用いて入力される、任意の加工指令に対応する文字列で表された指令番号と、前記加工指令によるワークの加工状況に応じて設定・更新される制御フラグとを含む、少なくとも1つの加工管理データを記憶する文字情報記憶手段とを含み、
前記指令番号は、加工製品および加工種類を一意に表す識別情報であり、
前記サーバ装置は、
前記NC装置の前記文字情報記憶手段に保持されている文字情報である前記加工管理データを定期的にスキャンし、前記制御フラグの値によって、前記加工指令によるワークの加工開始および加工終了を判定するスキャン手段と、
前記スキャン手段により加工終了と判定されたことに応じて、前記指令番号に対応の前記稼働履歴データと照合して、前記加工指令による加工実績を解析する解析手段と
、
前記NC工作機械の各々を特定するための設備名、前記指令番号、加工開始時刻、加工終了時刻、および実加工数を含む加工実績データを記憶する加工実績記憶手段とを含む、NC工作機械用の加工実績管理システム。
【請求項2】
前記制御フラグがとり得る変数は、加工開始を示す第1の値、および、加工終了を示す第2の値を含み、
前記スキャン手段は、前記制御フラグが前記第1の値に設定されたときの時刻を加工開始時刻として記録し、前記制御フラグが前記第1の値から前記第2の値に更新されたときの時刻を加工終了時刻として記録する、請求項1に記載のNC工作機械用の加工実績管理システム。
【請求項3】
前記解析手段は、前記スキャン手段により記録された加工開始時刻および加工終了時刻の間の期間に実行された加工メインプログラムの実行回数を、前記加工指令によるワークの実加工数として算出する、請求項2に記載のNC工作機械用の加工実績管理システム。
【請求項4】
前記加工管理データは、前記指令番号および前記制御フラグに加え、前記指令番号により特定される加工製品のコード番号、および、予定加工数の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のNC工作機械用の加工実績管理システム。
【請求項5】
前記文字情報入力画面は、前記NC工作機械の保守情報を記述した保守情報画面により構成されている、請求項1~
4のいずれかに記載のNC工作機械用の加工実績管理システム。
【請求項6】
任意の加工指令に応じてワークの加工サイクルを実行するNC工作機械に付設されたNC装置とネットワークを介して接続されたサーバ装置であって、
前記NC装置から受信する、NCプログラムの実行状況を示す、プログラム番号を含む稼働履歴データを記憶する稼動履歴記憶手段と、
前記NC装置
に文字情報として保持されている、任意の加工指令に対応する文字列であって加工製品および加工種類を一意に表す識別情報である指令番号と、前記加工指令によるワークの加工状況に応じて設定・更新される制御フラグとを含む、少なくとも1つの加工管理データを定期的にスキャンし、前記制御フラグの値によって、前記加工指令によるワークの加工開始および加工終了を判定するスキャン手段と、
前記スキャン手段により加工終了と判定されたことに応じて、前記NC装置から受信した前記指令番号に対応の
前記稼働履歴データと照合して、前記加工指令による加工実績を解析する解析手段と
、
前記NC工作機械の各々を特定するための設備名、前記指令番号、加工開始時刻、加工終了時刻、および実加工数を含む加工実績データを記憶する加工実績記憶手段とを備える、サーバ装置。
【請求項7】
任意の加工指令に応じてワークの加工サイクルを実行するNC工作機械に付設されたNC装置とネットワークを介して接続されたサーバ装置が実行する加工状況監視プログラムであって、
前記NC装置から受信する、NCプログラムの実行状況を示す、プログラム番号を含む稼働履歴データを記憶するステップと、
前記NC装置に文字情報として保持されている、任意の加工指令に対応する文字列
であって加工製品および加工種類を一意に表す識別情報である指令番号と、前記加工指令によるワークの加工状況に応じて設定・更新される制御フラグとを含む、少なくとも1つの加工管理データを定期的にスキャンするステップと、
前記制御フラグの値が第1の値である場合に、前記加工指令によるワークの加工開始を判定するステップと、
前記制御フラグの値が第2の値である場合に、前記加工指令によるワークの加工終了を判定するステップと、
加工終了と判定されたことに応じて、前記NC装置から受信した前記指令番号に対応の
前記稼働履歴データと照合して、前記加工指令による加工実績を解析するステップと
、
前記NC工作機械の各々を特定するための設備名、前記指令番号、加工開始時刻、加工終了時刻、および実加工数を含む加工実績データを記憶するステップとを含む、加工状況監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NC工作機械用の加工実績管理システム、サーバ装置、および加工状況監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003-295920号公報(特許文献1)には、管理対象となる複数台の工作機械のNC(Numerical Control)装置を1台のサーバ装置(以下、単に「サーバ」という)に接続し、接続された全てのNC装置についての管理用データ及び履歴データをサーバで一括管理させ、サーバが管理している工作機械ごとのデータの表示ないし更新画面をインターネットを含むネットワーク上に公開させ、ネットワークに接続したクライアントコンピュータからその公開画面にアクセスすることで、サーバに接続された任意の工作機械の管理を可能にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、サーバ側でNC装置の加工スケジュールを管理しており、各NC工作機械は、事前に定められた加工条件(機械名、時間、予定加工数など)でワークを加工するため、サーバにおいて加工物の工程の進捗を容易に管理することができる。
【0005】
一方で、サーバ側での加工スケジュールの管理は行わず、現場の成り行きでNC工作機械を稼動することも、一般的に行われている。この場合、NC装置は、任意の加工指令に対応して作業者により選択されるNCプログラムに従って、工作機械(本体)を数値制御する。このようにして、各NC工作機械では、任意のタイミングで、任意の加工指令に応じたワークの加工(旋削、フライスなど)が行われる。サーバは、通常、NC装置からNCプログラムの実行状況を示す「稼動履歴データ」を常時受信しているが、この稼動履歴データだけでは加工実績が分からない。そのため、従来は、サーバとは別に、工程管理端末が必要となっていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、工程管理端末を用いることなくNC工作機械ごとの加工実績を管理可能とし、容易に加工物の工程管理を行うことが可能な加工実績管理システムを提供することである。
【0007】
また、当該加工実績管理システムに用いられるサーバ装置、および、サーバ装置が実行する加工状況監視プログラムを提供することも、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従うNC工作機械用の加工実績管理システムは、NC工作機械ごとの加工実績を管理する加工実績管理システムであって、NC工作機械に付設されたNC装置、および、NC装置とネットワークを介して接続され、NC装置からNCプログラムの実行状況を示す稼働履歴データを受信するサーバ装置を備える。NC装置は、文字情報を入力可能な文字情報入力画面を表示する表示手段と、文字情報入力画面を用いて入力される、少なくとも1つの加工管理データを記憶する文字情報記憶手段とを備える。「加工管理データ」は、任意の加工指令に対応する文字列で表された指令番号と、加工指令によるワークの加工状況に応じて設定・更新される制御フラグとを含む。サーバ装置は、NC装置の文字情報記憶手段に保持されている文字情報である加工管理データを定期的にスキャンし、制御フラグの値によって、加工指令によるワークの加工開始および加工終了を判定するスキャン手段と、スキャン手段により加工終了と判定されたことに応じて、指令番号に対応の稼働履歴データと照合して、加工指令による加工実績を解析する解析手段とを備える。
【0009】
好ましくは、制御フラグがとり得る変数は、加工開始を示す第1の値、および、加工終了を示す第2の値を含み、スキャン手段は、制御フラグが第1の値に設定されたときの時刻を加工開始時刻として記録し、制御フラグが第1の値から第2の値に更新されたときの時刻を加工終了時刻として記録する。
【0010】
より好ましくは、解析手段は、スキャン手段により記録された加工開始時刻および加工終了時刻の間の期間に実行された加工メインプログラムの実行回数を、加工指令によるワークの実加工数として算出する。
【0011】
サーバ装置は、NC工作機械の各々を特定するための設備名、指令番号、加工開始時刻、加工終了時刻、および実加工数を含む加工実績データを記憶する加工実績記憶手段をさらに含むことが望ましい。
【0012】
一実施形態において、加工管理データは、指令番号および制御フラグに加え、指令番号により特定される加工製品のコード番号、および、予定加工数の少なくとも一方を含む。
【0013】
NC装置が例えばFANUC社製のNC装置である場合、文字情報入力画面は、NC工作機械の保守情報を記述した「保守情報画面」により構成されていてもよい。
【0014】
この発明のある局面に従うサーバ装置は、NC工作機械に付設されたNC装置とネットワークを介して接続されたサーバ装置である。NC装置は、文字情報入力画面を用いて入力される、任意の加工指令に対応する文字列で表された指令番号と、加工指令によるワークの加工状況に応じて設定・更新される制御フラグとを含む、少なくとも1つの加工管理データを記憶する文字情報記憶手段を備えている。サーバ装置は、NC装置の文字情報記憶手段に保持されている文字情報である加工管理データを定期的にスキャンし、制御フラグの値によって、加工指令によるワークの加工開始および加工終了を判定するスキャン手段と、スキャン手段により加工終了と判定されたことに応じて、NC装置から受信した指令番号に対応の稼働履歴データと照合して、加工指令による加工実績を解析する解析手段とを備える。
【0015】
この発明のある局面に従う加工状況監視プログラムは、NC工作機械に付設されたNC装置とネットワークを介して接続されたサーバ装置が実行するプログラムであって、NC装置に文字情報として保持されている、任意の加工指令に対応する文字列で表された指令番号と、加工指令によるワークの加工状況に応じて設定・更新される制御フラグとを含む、少なくとも1つの加工管理データを定期的にスキャンするステップと、制御フラグの値が第1の値である場合に、加工指令によるワークの加工開始を判定するステップと、制御フラグの値が第2の値である場合に、加工指令によるワークの加工終了を判定するステップと、加工終了と判定されたことに応じて、NC装置から受信した指令番号に対応の稼働履歴データと照合して、加工指令による加工実績を解析するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、工程管理端末を用いることなく、サーバ側でNC工作機械ごとの加工実績を管理することができる。また、その結果、容易に加工物の工程管理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る加工実績管理システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る加工実績管理システムの概要を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるNC装置およびサーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態における加工管理データの内容例を示す図表である。
【
図6】本発明の実施の形態において加工実績記憶部に記憶される加工実績データの内容例を示す図表である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る加工実績管理システムの全体の流れを示すタイムチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態におけるサーバが実行する加工状況監視処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態におけるサーバが実行する加工開始時の処理(第1処理)および加工終了時の処理(第2処理)を示すフローチャートである。
【
図10】公知の加工実績管理システムを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
はじめに、
図1を参照して、本発明の実施の形態におけるNC工作機械1の基本構成について簡単に説明する。NC工作機械1は、サーボモータによる送り軸などの駆動系を有する工作機械本体10と、ワーク加工時に工作機械本体10の数値制御を行うNC装置2とを備えている。NC装置2はネットワークNWを介してサーバ4に接続されており、NC装置2とサーバ4との間で各種データおよびプログラムの送受信が行われる。一般的に、1台のサーバ4に対し、複数のNC工作機械1(NC装置2)が有線または無線により接続される。複数のNC工作機械1は、NC旋盤機、マシニングセンタ、およびNC研磨機などを含み得る(少なくともマシニングセンタを含む)。ネットワークNWには、現場(工場)に設置された表示装置(図示せず)が接続されており、表示装置において複数のNC工作機械1の稼動状況等を確認することができる。
【0020】
NC装置2は、サーバ4からダウンロードしたNCプログラムおよび数値制御パラメータに従って、工作機械本体10の制御を行う。なお、NCプログラムは、典型的には、メインプログラム(以下「加工メインプログラム」という)と、メインプログラムから呼び出されるサブプログラムとを含む。
【0021】
図2に、NC装置2およびサーバ4を含む加工実績管理システムの概要を示す。
図2に示すように、NC装置2は、表示部を搭載した操作盤22を有している。一般的に、操作盤22の表示画面には、実行中のプログラム情報、ワークの位置情報、保守情報などが表示される。また、操作盤22により、ワークの加工に用いる加工メインプログラムを選択したり、工作機械本体10の制御に用いられるマクロ変数やプログラムコメントを入力したりすることも可能である。
【0022】
本実施の形態の加工実績管理システムでは、サーバ4側で加工スケジュールの管理は行われておらず、各NC工作機械1は、現場の作業者に指示された任意の加工指令に従って、ワークを加工する。このように現場主導でNC工作機械1を稼動するケースを対象とした公知の加工実績管理システムを、
図10に示す。
【0023】
図10に示すように、公知の加工実績管理システムでは、現場の作業者が、紙の指令書(または、現場の工程管理端末9)で加工指令を受け、操作盤22を介して加工指令に対応する加工メインプログラムを選択して、NC工作機械1の稼動を開始する。NC装置2は、選択された加工メインプログラム(および、加工メインプログラムから呼び出されるサブプログラム)を実行することにより、加工指令に応じたワークの加工サイクルを実行する。
【0024】
NC装置2は、サーバ4に格納されている加工メインプログラム等のNCプログラムをロードしたりアンロードしたりするとともに、NCプログラムの実行状況を示す「稼働履歴データ」を、サーバ4に自動的にアップロード(送信)する機能を有している。しかしながら、稼働履歴データのみではNC工作機械1ごとの加工実績を把握できないため、従来は、各NC工作機械1においてワークの加工が完了する(任意の加工指令による加工が終了する)度に、工程管理端末9に、対応のNC工作機械1におけるワークの加工終了を都度入力することで、加工物の工程管理を可能としていた。
【0025】
加工実績は、加工指令の内容、加工指令が実行された日時(加工開始時刻および加工終了時刻)、および、実加工数により特定可能である。加工指令は、加工製品および加工種類を一意に表す「指令番号」により特定される。なお、加工製品は、「コード番号」により識別可能である。
【0026】
作業者が操作盤22を操作し、NC装置2の制御データとして用いられるマクロ変数やプログラムコメントを利用できれば、指令番号を含む加工実績の管理に必要なデータをサーバ4に自動送信することが可能になると考えられるが、指令番号は通常文字列で表される(文字を含む)ため、このような方法を採用することができない。具体的には、マクロ変数は数値しか入力できず、また、プログラムコメントは文字列を入力できる一方で、指令番号(加工製品)が異なるたびにプログラムコメントを変更する必要があり、現実的ではない。
【0027】
そこで、
図2に示すように、本実施の形態に係る加工実績管理システムは、操作盤22の表示手段に、文字情報を入力可能な文字情報入力画面を設け、この「文字情報入力画面」を利用して指令番号(文字情報)とともに、加工指令の開始タイミングと終了タイミングを入力可能にすることで、工程管理端末9を用いることなく、サーバ4側でNC工作機械1ごとの加工実績を管理できるようにしたことを、主な特徴としている。以下に、NC工作機械1用の加工実績管理システムについて、具体的に説明する。
【0028】
なお、本実施の形態におけるNC装置2は、一例としてFANUC社製のNC装置であり、本実施の形態では、「文字情報入力画面」が、FANUC社製のNC装置の操作盤に表示される「保守情報画面」により構成されている例について説明する。
【0029】
<加工実績管理システムの概略構成>
図3を参照して、加工実績管理システムの概略構成について説明する。
図3は、加工実績管理システムの概略構成を示すとともに、NC装置2およびサーバ4の機能構成を示すブロック図である。
【0030】
本実施の形態に係る加工実績管理システムは、NC工作機械1に付設されたNC装置2、および、NC装置2とネットワークNWを介して接続されたサーバ4を備えている。
【0031】
NC装置2は、各種演算処理を行うプロセッサ21、ユーザ(作業者)により操作される操作盤22、各種データおよびプログラムを記憶するメモリ23、文字情報を記憶する文字情報記憶部24、および、ネットワークNWに接続された通信インターフェイス26を含む。NC装置2のプロセッサ21は、工作機械本体10の駆動系3を制御し、通信インターフェイス26を介して所定の情報(稼動履歴データを含む)をサーバ4に送信する。
【0032】
操作盤22は、各種情報を表示する表示手段と、ユーザからの入力を受け付ける入力手段とを有している。操作盤22の表示画面には、実行中のプログラム情報、ワークの位置情報、保守情報などが表示される。保守情報が表示される「保守情報画面」には通常、各構成装置の仕様等が表示されるのみであり、一般的に、現場の作業者が保守情報画面を使用することはない。
【0033】
本実施の形態では、作業者が、文字列を入力可能な保守情報画面(文字情報入力画面)に後述の「加工管理データ」を入力することにより、サーバ4が自動処理でNC工作機械1ごとの加工実績を解析可能とする。保守情報画面を用いて入力された加工管理データは、文字情報記憶部24に記憶される。
【0034】
図4は、加工管理データの内容例を示す図表である。加工管理データは、少なくとも、任意の加工指令に対応する文字列で表された指令番号と、加工指令によるワークの加工状況(加工開始/終了)に応じて設定・更新される制御フラグとを含む。本実施の形態において、加工管理データは、指令番号により特定される加工製品のコード番号、および、予定加工数(指令数)をさらに含む。以下の説明において、加工管理データのうち、制御フラグ以外のデータ(指令番号、コード番号、予定加工数)を、「加工指令データ」と称する。
【0035】
指令番号は、典型的には数字、文字、および記号の組み合わせ(文字列)により表される。コード番号も同様に、典型的には数字、文字および記号の組み合わせ(文字列)により表される。予定加工数(指令数)は、数字により表される。
【0036】
作業者は、たとえば紙の指令書を確認しながら、指令書に記載の加工指令データ(指令番号、コード番号、指令数)を保守情報画面に入力する。制御フラグは変数(一桁の数値)であり、一例として、加工開始時に「1」(第1の値)、加工終了時に「2」(第2の値)が、設定・更新される。制御フラグは、ワークの加工状況を表し、ワークの加工期間にのみ「1」とされる。複数の加工管理データを事前に入力しておく場合、制御フラグは全て「2」に設定しておき、加工開始時に制御フラグを「1」に更新すればよい。
【0037】
図5は、文字情報入力画面である保守情報画面の具体例を示す図であり、(A)は、加工管理データ入力時の表示画面例を示し、(B)は、制御フラグ書き替え時の表示画面例を示す。
図5(A)に示すように、加工管理データは、通常の保守情報よりも上方に表示され、保守情報画面を開くと最上部に表示される。加工管理データは、1行ずつ改行して入力される。
【0038】
最終行の加工管理データの次行に、所定のキーワード(以下、「コマンド終了キーワード」という)が表示されている。後述するように、サーバ4のスキャン部51は、コマンド終了キーワードにより加工管理データの記載範囲を判別可能である。コマンド終了キーワードは、「END」などのアルファベットの文字列であってもよいし、所定の数字や記号であってもよい。
【0039】
加工管理データを構成する複数の項目の記載順序は固定であり、本実施の形態では、左から順に、制御フラグ(1または2の数値)、指令番号(文字列)、コード番号(文字列)、および指令数(数値)が記載される。項目間は、一例としてセミコロン(;)で区切られる。なお、作業者による入力ミスを低減させる目的で、項目の記載順序を示したコメント情報をコマンド終了キーワードの下方に表示してもよい。
図5に示すように、コメント情報は、入力順に表記された複数の項目名(文字列)と、制御フラグがとり得る値ごとの定義(文字列)を含む。
【0040】
再び
図3を参照して、サーバ4は、各種演算処理を行うプロセッサ41、各種データおよびプログラムを記憶するメモリ42、稼動履歴データを記憶する稼動履歴記憶部43、および、加工実績データを記憶する加工実績記憶部44を含む。
【0041】
サーバ4は、その機能構成として、各NC装置2の文字情報記憶部24に保持(記憶)されている加工管理データを定期的にスキャンし、制御フラグの値によって(対応の指令番号による)ワークの加工開始および加工終了を判定するスキャン部51と、スキャン部51により加工終了と判定されたことに応じて、当該NC工作機械1による加工実績を解析する解析部52とを含む。スキャン部51および解析部52の具体的な処理については後述する。
【0042】
スキャン部51および解析部52は、プロセッサ41が、メモリ42に記憶されたアプリケーションプログラムである加工状況監視プログラム(スキャンプログラムおよび解析プログラムを含む)を実行することにより実現される。加工状況監視プログラムは、クラウド上に記憶されたものであってもよい。
【0043】
稼動履歴記憶部43は、ネットワークNWを介して接続された各NC装置2から受信した稼動履歴データを記憶する。稼動履歴データは、加工メインプログラム(NCプログラム)を識別するプログラム番号(Oxxxx)と、加工メインプログラムにより指令された時系列のコード情報とを含む。また、加工メインプログラムから呼び出されたサブプログラムを識別するプログラム番号(Oxxxx)と、サブプログラムにより指令された時系列のコード情報とを含む。
【0044】
加工実績記憶部44は、解析部52の解析結果に基づく加工実績データを記憶する。
図6は、加工実績記憶部44に記憶される加工実績データの内容例を示す図表である。
図6に示すように、加工実績データは、NC工作機械1の各々を特定するための設備名、文字情報(加工指令データ)、加工開始時刻(日時)、加工終了時刻(日時)、および実加工数(実績数)を含む。なお、加工実績記憶部44に記憶される文字情報は、少なくとも指令番号を含んでいればよい。加工実績記憶部44に、複数の加工実績データが記憶される。
【0045】
<加工実績管理システムの動作>
図2、
図7および
図8を参照して、加工実績管理システムの動作について説明する。
図7は、本実施の形態に係る加工実績管理システムの全体の流れを示すタイムチャートである。
図8は、サーバ4が実行する加工状況監視処理を示すフローチャートである。なお、ここでは、加工状況監視処理の開始前に、制御フラグを「2」とした加工管理データが、複数入力されている(文字情報記憶部24に記憶されている)ものとする。
【0046】
図2および
図8を参照して、サーバ4のスキャン部51は、NC装置2の文字情報記憶部24に記憶された加工管理データ(文字情報)を、定期的に(たとえば5秒ごとに)スキャンする(ステップS1)。そして、各加工管理データについて、制御フラグの変化の有無を検出する(ステップS3)。
【0047】
たとえば
図7の保守情報画面に表示されている2行目の指令番号による加工を開始すると仮定すると、作業者は、操作盤22を介して2行目の制御フラグを「2」から「1」に変更する。制御フラグの変更は、実際に加工が開始される前(加工メインプログラムの選択およびワークをセットする前)に行われることが望ましい。
【0048】
制御フラグの値が「2」から「1」に変化した場合、スキャン部51は、当該NC工作機械1でのワークの加工が開始されたと判定し(ステップS5)、第1処理を実行する(ステップS7)。第1処理については、
図9(A)に示す。なお、加工管理データの入力時に制御フラグを「1」に設定してもよく、この場合には、制御フラグが「1」に設定された時点で、加工開始と判定する。
【0049】
図9(A)に示すように、スキャン部51は、「1」の制御フラグに対応付けられた加工指令データ(指令番号を含むデータ)を、対象のNC工作機械1を識別可能な「設備名」とともに、保持データとして内部メモリ等に一時記録する(ステップS21)。設備名は、たとえば文字列で表される。また、保持データに、加工開始時刻として現在時刻を追加(記録)する(ステップS23)。ステップS21とS23の処理順序は逆であってもよく、また、これらの処理が同時に行われてもよい。
【0050】
この時点において、保持データは、設備名、加工指令データ、および加工開始時刻を含む。つまり、ワークの加工を開始した設備名に対応付けて、指令番号および加工開始時刻が記録される。スキャン部51は、ネットワークを介して接続されている複数のNC装置2をスキャン対象としているため、複数の保持データを同時に保持し得る。
【0051】
該当のNC工作機械1では、指令番号(コード番号)で特定される加工製品の加工が、指令数分、連続的に実行される。NC工作機械1での連続運転が停止し、加工が終了すると、作業者は、ワークを取り出した後、操作盤22を介して2行目の制御フラグを「1」から「2」に変更する。
【0052】
制御フラグの値が「1」から「2」に変化した場合、スキャン部51は、当該NC工作機械1でのワークの加工が終了したと判定し(ステップS9)、第2処理を実行する(ステップS9)。第2処理については、
図9(B)に示す。
【0053】
図9(B)に示すように、スキャン部51は、いくつか保持した保持データのうち、制御フラグが「2」となった加工指令データと一致する保持データを検索する(ステップS31)。そして、該当する保持データに、加工終了時刻として現在時刻を追加(記録)する(ステップS33)。加工終了時刻の記録が終わると、スキャン部51は、ワークの加工を行った設備名、指令番号、加工開始時刻、および加工終了時刻を含む保持データを、解析部52に出力する。
【0054】
解析部52は、スキャン部51から得た保持データに基づき、実加工数を計算する(ステップS35)。すなわち、解析部52は、稼動履歴記憶部43に記憶された、当該指令番号に対応の稼動履歴データと照合して、実加工数を計算する。稼動履歴データから、加工メインプログラムの終了(ワークの加工完了)を示すMコード(M02またはM30)の指令時刻が分かるため、解析部52は、当該保持データに記録された加工開始時刻および加工終了時刻の間の期間に実行された加工メインプログラムの実行回数を、当該加工指令による実加工数として計算することができる。
【0055】
実加工数の計算が終わると、解析部52は、加工実績記憶部44に、実加工数を含む保持データをCSV出力する(ステップS37)。これにより、保持データが、加工実績データとして加工実績記憶部44に記憶される。加工実績データは、
図6に示したように、加工を行った設備名、指令番号を含む加工指令データ、加工開始時刻、加工終了時刻、および実加工数を含む。
【0056】
このようにして、加工実績記憶部44に複数の加工実績データが蓄積される。これにより、何時、どのNC工作機械1で、どの加工指令による加工が、何個実行されたかを、サーバ4側で管理することが可能となる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態によれば、NC装置2の操作盤22に、指令番号とともに、加工指令の開始タイミングと終了タイミングを入力可能な「文字情報入力画面」を設けることで、サーバ4が加工実績の管理に必要な情報をNC装置2から自動的に収集および解析することができる(
図2参照)。したがって、本実施の形態に係る加工実績管理システムによれば、工程管理端末9(
図10)を用いることなく、サーバ4側でNC工作機械1ごとの加工実績を一括管理することができる。
【0058】
また、工場に設置された複数のNC工作機械1は、ワークの旋削工程に用いられるNC旋盤機、ワークのフライス工程に用いられるマシニングセンタ、および、ワークの研磨工程に用いられるNC研磨機を含むため、加工実績記憶部44に記憶された複数の加工実績データに基づいて、一つの加工物が出来上がるまでの工程の進捗管理を行うことが可能である。
【0059】
なお、サーバ4が実行する加工状況監視方法を、アプリケーションプログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0060】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0061】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 NC工作機械、2 NC装置、4 サーバ、22 操作盤(表示手段)、24 文字情報記憶部、43 稼動履歴記憶部、44 加工実績記憶部、51 スキャン部、52 解析部。
【要約】
【課題】工程管理端末を用いることなくNC工作機械ごとの加工実績を管理可能とすること。
【解決手段】NC工作機械に付設されたNC装置は、文字情報を入力可能な文字情報入力画面を表示する表示手段と、文字情報入力画面を用いて入力される、任意の加工指令に対応する文字列で表された指令番号と、加工指令によるワークの加工状況に応じて設定・更新される制御フラグとを含む、少なくとも1つの加工管理データを記憶する文字情報記憶手段とを含む。サーバ装置は、NC装置の文字情報記憶手段に保持されている文字情報である加工管理データを定期的にスキャンし、制御フラグの値によって加工指令によるワークの加工開始および加工終了を判定するスキャン手段と、スキャン手段により加工終了と判定されたことに応じて、指令番号に対応の稼働履歴データと照合して、加工指令による加工実績を解析する解析手段とを含む。
【選択図】
図3