(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】擬似移動層方式クロマト分離方法及び擬似移動層方式クロマト分離システム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/46 20060101AFI20241210BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20241210BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20241210BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241210BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
G01N30/46 A
B01D15/00 101A
C07K1/16
C12M1/00 A
C07K16/00
(21)【出願番号】P 2024509813
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2023003433
(87)【国際公開番号】W WO2023181655
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2022045536
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【氏名又は名称】後藤 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100230857
【氏名又は名称】鈴木 悠也
(72)【発明者】
【氏名】荻野 修大
(72)【発明者】
【氏名】岡田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 正樹
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205721(JP,A)
【文献】特開2020-85881(JP,A)
【文献】特開2021-37462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0044744(US,A1)
【文献】特開2014-29294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251912(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0071691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 ー 30/96
B01D 15/00
C07K 1/16 - 16/00
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離することを含む擬似移動層方式クロマト分離方法であって、下記第一プロセス及び第二プロセスからなるサイクルを繰り返し:
<第一プロセス>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給するとともに、前記遮断位置の上流側のセクションから前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出す工程を含むプロセス;
<第二プロセス>
前記原液を供給せずに前記溶離液の供給と前記循環系の遮断の制御によって、前記強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出し、かつ前記強吸着性画分の移動にあわせて前記溶離液の前記循環系に対する供給位置と、前記強吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させる工程を含むプロセス;
前記サイクル内における前記強吸着性画分の抜き出し位置の下流側への移動を2セクション分以上とし、かつ当該下流側への移動を[セクション数]と同じ分の下流側への移動としない、擬似移動層方式クロマト分離方法。
【請求項2】
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離することを含む擬似移動層方式クロマト分離方法であって、下記ステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを繰り返す擬似移動層方式クロマト分離方法:
<ステップ(A)>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給してさらに下流位置で前記弱吸着性成分が富化した弱吸着性画分を該循環系から抜き出すとともに、前記遮断位置の上流側のセクションに前記中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出すサブステップ(A1)、
前記の原液の供給に代えて前記弱吸着性成分を脱着するための溶離液を供給し、前記の弱吸着性画分の抜き出しと前記の中吸着性画分の抜き出しを継続するサブステップ(A2)、
前記遮断位置を上流側に移動し、前記の弱吸着性画分の抜き出しを継続しながら、移動した遮断位置の上流で前記強吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出すサブステップ(A3)、並びに
前記の弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分を抜き出しながら、中吸着性画分の抜き出しはせず、かつ強吸着性画分の抜き出しもしないサブステップ(A4)
をこの順に行うステップ;
<ステップ(B)>
弱吸着性画分の抜き出し位置はそのままで、原液を供給せずに溶離液の供給と遮断位置の制御によって、前記ステップ(A)で抜き出さなかった弱吸着性画分と強吸着性画分とを各別に抜き出し、次いで、前記弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分のみを抜き出す工程αを少なくとも1回行うステップ。
【請求項3】
前記循環系の前記配管には、原液供給口Fと、溶離液供給口Dと、弱吸着性画分の抜出口Aと、中吸着性画分の抜出口Bと、強吸着性画分の抜出口Cとが設けられ、
前記ステップ(A)では前記原液供給口F、前記抜出口A、前記抜出口B及び前記抜出口Cの位置を下記(a)~(c)とし:
(a)前記抜出口Aを、前記原液供給口Fの、少なくとも1つのセクションを挟んで下流側に設ける;
(b)前記抜出口Bを、前記原液供給口Fを有する配管に設ける;
(c)前記抜出口Cを、前記抜出口Bの、少なくとも1つのセクションを挟んで上流側に設ける;
前記ステップ(B)では前記抜出口A及び前記抜出口Cの位置を下記(d)とする:
(d)前記抜出口Aを、前記抜出口Cの、少なくとも2つのセクションを挟んで下流側に設ける;
請求項2に記載の擬似移動層方式クロマト分離方法。
【請求項4】
前記ステップ(B)で行う前記工程αの回数を、[セクション数-2]回、又は[セクション数]回以上とする、請求項2又は3に記載の擬似移動層方式クロマト分離方法。
【請求項5】
吸着剤が充填された4つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した4つのセクションに区切った擬似移動層方式クロマト分離方法であって、前記ステップ(A)におけるサブステップ(A1)~(A4)が下記サブステップ(A1-1)~(A4-1)であり、前記ステップ(B)において下記サブステップ(B1-1)~(B3-1)及び下記サブステップ(B1’-1)~(B3’-1)をこの順に行う、請求項2~4のいずれか1項に記載の擬似移動層方式クロマト分離方法:
<サブステップ(A1-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を原液供給口Fとして該原液供給口Fから原液を供給し、セクション4の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A2-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション4の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A3-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション1の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション4の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A4-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力と同じにする;
<サブステップ(B1-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2及び3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション2及び3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B2-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション2の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B3-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力と同じにする。
<サブステップ(B1’-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B2’-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション3の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B3’-1)>
セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力と同じにする。
【請求項6】
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した3つのセクションに区切った擬似移動層方式クロマト分離方法であって、前記ステップ(A)におけるサブステップ(A1)~(A4)が下記サブステップ(A1-2)~(A4-2)であり、前記ステップ(B)において下記サブステップ(B1-2)及び(B2-2)をこの順に行う、請求項2~4のいずれか1項に記載の擬似移動層方式クロマト分離方法:
<サブステップ(A1-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を原液供給口Fとして該原液供給口Fから原液を供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A2-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A3-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション1の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A4-2)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B1-2)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション2の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B2-2)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【請求項7】
前記中吸着性成分が生体高分子である、請求項1~6のいずれか1項に記載の擬似移動層方式クロマト分離方法。
【請求項8】
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離する擬似移動層方式クロマト分離システムであって、下記第一プロセス及び第二プロセスからなるサイクルを繰り返す手段を有し:
<第一プロセス>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給するとともに、前記遮断位置の上流側のセクションから前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出す工程を含むプロセス;
<第二プロセス>
前記原液を供給せずに前記溶離液の供給と前記循環系の遮断の制御によって、前記強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出し、かつ前記強吸着性画分の移動にあわせて前記溶離液の前記循環系に対する供給位置と、前記強吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させる工程を含むプロセス;
前記サイクル内における前記強吸着性画分の抜き出し位置の下流側への移動が2セクション分以上であり、かつ当該下流側への移動が[セクション数]と同じ分の下流側への移動ではない、擬似移動層方式クロマト分離システム。
【請求項9】
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離する擬似移動層方式クロマト分離システムであって、下記ステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを繰り返す手段を有する、擬似移動層方式クロマト分離システム:
<ステップ(A)>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給してさらに下流位置で前記弱吸着性成分が富化した弱吸着性画分を該循環系から抜き出すとともに、前記遮断位置の上流側のセクションに前記中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出すサブステップ(A1)、
前記の原液の供給に代えて前記弱吸着性成分を脱着するための溶離液を供給し、前記の弱吸着性画分の抜き出しと前記の中吸着性画分の抜き出しを継続するサブステップ(A2)、
前記遮断位置を上流側に移動し、前記の弱吸着性画分の抜き出しを継続しながら、移動した遮断位置の上流で前記強吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出すサブステップ(A3)、並びに
前記の弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分を抜き出しながら、中吸着性画分の抜き出しはせず、かつ強吸着性画分の抜き出しもしないサブステップ(A4)
をこの順に行うステップ;
<ステップ(B)>
弱吸着性画分の抜き出し位置はそのままで、原液を供給せずに溶離液の供給と遮断位置の制御によって、ステップ(A)で抜き出さなかった弱吸着性画分と強吸着性画分とを各別に抜き出し、次いで、前記弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分のみを抜き出す工程αを少なくとも1回行うステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似移動層方式クロマト分離方法及び擬似移動層方式クロマト分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
擬似移動層方式によるクロマト分離では、原液中に含まれる2成分以上の成分中の特定成分に対して選択的吸着能力を有する吸着剤を充填した複数の単位充填塔(以下、単に「充填塔」とも称し、「カラム」ということもある。)を、配管を介して直列に連結し、かつ、最下流部の充填塔と最上流部の充填塔を連結して無端状とした循環系を構築する。この循環系に対して原液と溶離液を供給するとともに、循環系内の移動速度が速い画分(弱吸着性画分)と、遅い画分(強吸着性画分)と、必要により移動速度が中間的な画分(中吸着性画分)とをそれぞれ異なる位置から抜き出し、次いで、原液供給位置、溶離液供給位置、弱吸着性画分の抜き出し位置、中吸着性画分の抜き出し位置、及び強吸着性画分の抜き出し位置を、一定の位置関係に保ちながら循環系の流体循環方向に向けて移動させる。この操作を繰り返すことにより、原液供給を連続的に行うことができる移動層の処理操作を擬似的に実現する。
【0003】
例えば特許文献1には、吸着剤が充填された単位充填層の多数個を用いて無端直列の循環流路を形成し、かつこの循環流路が循環、遮断可能に設けられている系であって、吸着剤に対する親和性の異なる3以上の成分を含む原料流体を前記多数個の単位充填層に通流することにより、吸着剤に対する親和力の弱い成分から強い成分に順次に分れた吸着帯域を形成している系に対し、親和力の弱い成分のうちで予め選んだ成分が形成している吸着帯域よりも上流の位置において上記系の循環を遮断しながら、この遮断の下流位置で該系に原料流体を供給すると共に、遮断位置の上流で吸着帯域を形成している成分のうちで予め定めた成分の富化した画分を該系から抜き出す第1の工程と、原料流体を供給することなく上記系を循環させながら、吸着帯域の上流から脱着剤流体を供給して上記の第1の工程で抜き出さなかった吸着帯域に分かれている各成分の富化した画分を各別に抜き出し、かつ吸着帯域の移動に合せて脱着剤流体の供給位置と、上記各画分の抜き出し位置を順次循環流の下流側に移動させる第2の工程と、の各工程を1サイクルとして繰返すことを特徴とする多成分系の分離方法が記載されている。
【0004】
擬似移動層方式のクロマト分離は、目的の精製対象物を連続的に、高純度で得ることが可能であるため、医療分野等への適用も検討されている。例えば抗体医薬の製造において、抗体を産生する培養細胞の抽出液や培養液には、目的の抗体の他、抗体が切断等されて生じた抗体として十分に機能しないフラグメントや、抗体が凝集して巨大化した凝集体が生じる。一般に、上記フラグメントは吸着剤との相互作用部位が少なく当該吸着剤に対する吸着性が弱い。逆に、凝集体は吸着剤への吸着性が強い。したがって、擬似移動層方式のクロマト分離を抗体医薬の精製に適用する場合、目的の抗体を、吸着剤に対して中間的な吸着性を示す中吸着性画分として分取する必要がある。他方、弱吸着性画分と強吸着性画分については、いずれも高い除去率で十分に取り除く必要がある。
例えば特許文献2には、吸着剤が充填された複数の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用いて、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、2種以上の溶離液を用いて分離することを含む擬似移動層方式クロマト分離方法であって、前記循環系の前記配管には、原液供給口Fと、前記2種以上の各溶離液に対応する2つ以上の溶離液供給口Dと、前記弱吸着性成分を含む弱吸着性画分の抜出口Aと、前記中吸着性成分を含む中吸着性画分の抜出口Bと、前記強吸着性成分を含む強吸着性画分の抜出口Cとが設けられ、該原液供給口F、該抜出口A、該抜出口B及び該抜出口Cの位置を特定の位置関係とする、擬似移動層方式クロマト分離方法が記載されており、原液中の精製対象成分をより少ない吸着剤の使用量で、高純度に分取できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平7-24724号公報
【文献】特開2020-085881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまで、擬似移動層方式のクロマト分離において、原液ないし溶離液の供給位置や供給のタイミング、各画分の抜き出し位置や抜き出しのタイミングを工夫して、目的成分の精製効率を高める技術がいくつか提案されている。他方、分離対象とする成分は多種多様であり、当該成分が含まれる試料中の夾雑物も多種多用である。したがって、ある原液試料において、ある成分の分離精製に有効な擬似移動層方式クロマト分離技術が、別の原液試料における特定成分の分離精製に適用したときには、当該特定成分を十分に高純度に、かつ高効率に分取できない可能性もある。したがって、擬似移動層方式クロマト分離の適用範囲を広げるために、特定の成分を高純度に精製可能な技術のバリエーションを増やしておくことが望まれる。
また、特許文献2に記載されるような従来の疑似移動層方式クロマト分離方法では、1サイクルの運転が終了した後に、原液供給口、溶離液供給口、各画分抜出口を一斉に下流側に移動していた。しかしながら、この方法では、目的とする精製対象物によっては精製対象物の分離が不十分となる場合があることもわかってきた。
【0007】
そこで本発明は、原液ないし溶離液の供給位置や供給のタイミング、各画分の抜き出し位置や抜き出しのタイミングを従来とは異なる方式としながら、原液中の精製対象成分を高純度に分取することを可能とするクロマト分離方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記クロマト分離方法の実施に好適なクロマト分離システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は下記手段により解決された。
〔1〕
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離することを含む擬似移動層方式クロマト分離方法であって、下記第一プロセス及び第二プロセスからなるサイクルを繰り返し:
<第一プロセス>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給するとともに、前記遮断位置の上流側のセクションから前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出す工程を含むプロセス;
<第二プロセス>
前記原液を供給せずに前記溶離液の供給と前記循環系の遮断の制御によって、前記強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出し、かつ前記強吸着性画分の移動にあわせて前記溶離液の前記循環系に対する供給位置と、前記強吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させる工程を含むプロセス;
前記サイクル内における前記強吸着性画分の抜き出し位置の下流側への移動を2セクション分以上とし、かつ当該下流側への移動を[セクション数]と同じ分の下流側への移動としない、擬似移動層方式クロマト分離方法。
〔2〕
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離することを含む擬似移動層方式クロマト分離方法であって、下記ステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを繰り返す擬似移動層方式クロマト分離方法:
<ステップ(A)>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給してさらに下流位置で前記弱吸着性成分が富化した弱吸着性画分を該循環系から抜き出すとともに、前記遮断位置の上流側のセクションに前記中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出すサブステップ(A1)、
前記の原液の供給に代えて前記弱吸着性成分を脱着するための溶離液を供給し、前記の弱吸着性画分の抜き出しと前記の中吸着性画分の抜き出しを継続するサブステップ(A2)、
前記遮断位置を上流側に移動し、前記の弱吸着性画分の抜き出しを継続しながら、移動した遮断位置の上流で前記強吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出すサブステップ(A3)、並びに
前記の弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分を抜き出しながら、中吸着性画分の抜き出しはせず、かつ強吸着性画分の抜き出しもしないサブステップ(A4)
をこの順に行うステップ;
<ステップ(B)>
弱吸着性画分の抜き出し位置はそのままで、原液を供給せずに溶離液の供給と遮断位置の制御によって、前記ステップ(A)で抜き出さなかった弱吸着性画分と強吸着性画分とを各別に抜き出し、次いで、前記弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分のみを抜き出す工程αを少なくとも1回行うステップ。
〔3〕
前記循環系の前記配管には、原液供給口Fと、溶離液供給口Dと、弱吸着性画分の抜出口Aと、中吸着性画分の抜出口Bと、強吸着性画分の抜出口Cとが設けられ、
前記ステップ(A)では前記原液供給口F、前記抜出口A、前記抜出口B及び前記抜出口Cの位置を下記(a)~(c)とし:
(a)前記抜出口Aを、前記原液供給口Fの、少なくとも1つのセクションを挟んで下流側に設ける;
(b)前記抜出口Bを、前記原液供給口Fを有する配管に設ける;
(c)前記抜出口Cを、前記抜出口Bの、少なくとも1つのセクションを挟んで上流側に設ける;
前記ステップ(B)では前記抜出口A及び前記抜出口Cの位置を下記(d)とする:
(d)前記抜出口Aを、前記抜出口Cの、少なくとも2つのセクションを挟んで下流側に設ける;
前記〔2〕に記載の擬似移動層方式クロマト分離方法。
〔4〕
前記ステップ(B)で行う前記工程αの回数を、[セクション数-2]回、又は[セクション数]回以上とする、前記〔2〕又は〔3〕に記載の擬似移動層方式クロマト分離方法。
〔5〕
吸着剤が充填された4つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した4つのセクションに区切った擬似移動層方式クロマト分離方法であって、前記ステップ(A)におけるサブステップ(A1)~(A4)が下記サブステップ(A1-1)~(A4-1)であり、前記ステップ(B)において下記サブステップ(B1-1)~(B3-1)及び下記サブステップ(B1’-1)~(B3’-1)をこの順に行う、前記〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の擬似移動層方式クロマト分離方法:
<サブステップ(A1-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を原液供給口Fとして該原液供給口Fから原液を供給し、セクション4の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A2-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション4の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A3-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション1の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション4の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A4-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力と同じにする;
<サブステップ(B1-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2及び3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション2及び3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B2-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション2の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B3-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力と同じにする。
<サブステップ(B1’-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B2’-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション3の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B3’-1)>
セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力と同じにする。
〔6〕
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した3つのセクションに区切った擬似移動層方式クロマト分離方法であって、前記ステップ(A)におけるサブステップ(A1)~(A4)が下記サブステップ(A1-2)~(A4-2)であり、前記ステップ(B)において下記サブステップ(B1-2)及び(B2-2)をこの順に行う、前記〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の擬似移動層方式クロマト分離方法:
<サブステップ(A1-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を原液供給口Fとして該原液供給口Fから原液を供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A2-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A3-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション1の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(A4-2)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B1-2)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション2の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする;
<サブステップ(B2-2)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
〔7〕
前記中吸着性成分が生体高分子である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の擬似移動層方式クロマト分離方法。
〔8〕
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離する擬似移動層方式クロマト分離システムであって、下記第一プロセス及び第二プロセスからなるサイクルを繰り返す手段を有し:
<第一プロセス>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給するとともに、前記遮断位置の上流側のセクションから前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出す工程を含むプロセス;
<第二プロセス>
前記原液を供給せずに前記溶離液の供給と前記循環系の遮断の制御によって、前記強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出し、かつ前記強吸着性画分の移動にあわせて前記溶離液の前記循環系に対する供給位置と、前記強吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させる工程を含むプロセス;
前記サイクル内における前記強吸着性画分の抜き出し位置の下流側への移動が2セクション分以上であり、かつ当該下流側への移動が[セクション数]と同じ分の下流側への移動ではない、擬似移動層方式クロマト分離システム。
〔9〕
吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結された循環系を用い、該循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切り、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離する擬似移動層方式クロマト分離システムであって、下記ステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを繰り返す手段を有する、擬似移動層方式クロマト分離システム:
<ステップ(A)>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給してさらに下流位置で前記弱吸着性成分が富化した弱吸着性画分を該循環系から抜き出すとともに、前記遮断位置の上流側のセクションに前記中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出すサブステップ(A1)、
前記の原液の供給に代えて前記弱吸着性成分を脱着するための溶離液を供給し、前記の弱吸着性画分の抜き出しと前記の中吸着性画分の抜き出しを継続するサブステップ(A2)、
前記遮断位置を上流側に移動し、前記の弱吸着性画分の抜き出しを継続しながら、移動した遮断位置の上流で前記強吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出すサブステップ(A3)、並びに
前記の弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分を抜き出しながら、中吸着性画分の抜き出しはせず、かつ強吸着性画分の抜き出しもしないサブステップ(A4)
をこの順に行うステップ;
<ステップ(B)>
弱吸着性画分の抜き出し位置はそのままで、原液を供給せずに溶離液の供給と遮断位置の制御によって、ステップ(A)で抜き出さなかった弱吸着性画分と強吸着性画分とを各別に抜き出し、次いで、前記弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分のみを抜き出す工程αを少なくとも1回行うステップ。
【0009】
本明細書において、「上流」、「下流」との用語は、循環系内の流体の流通方向に対して用いられる。すなわち、循環系のある部位に対して「上流側」とは、当該部位に向けて流体が流通してくる側を意味し、「下流側」とは、当該部位から流体が流れ出ていく側を意味する。
本明細書において、「強吸着性成分」とは、原液中に含まれる複数成分のうち、吸着剤に対する吸着力が強い成分を意味し、「弱吸着性成分」とは、原液中に含まれる複数成分のうち、吸着剤に対する吸着力が弱い成分を意味し、「中吸着性成分」とは、上記強吸着性成分よりも吸着剤に対する吸着性が弱いが、上記弱吸着性成分よりは吸着剤に対する吸着性が強い成分を意味する。つまり「強吸着性」、「中吸着性」及び「弱吸着性」との用語は、原液中に含まれる各成分の吸着剤に対する吸着力を比較した際の、相対的な吸着力の強さを示すものである。
上記の「強吸着性成分」、「中吸着性成分」及び「弱吸着性成分」は、それぞれ、単一成分からなってもよく、複数の成分からなってもよい。また、当該複数の成分は吸着力が同じでも異なってもよい。
原液中の各成分の、「強吸着性成分」、「中吸着性成分」及び「弱吸着性成分」へのグループ分けは、目的に応じて適宜に設定することができる。原液が4種の成分を含む場合を例にとると、吸着剤に対する吸着力が強い順に2種の成分を合わせて強吸着性成分とし、吸着剤に対する吸着力が3番目に強い成分を中吸着性成分、吸着剤に対する吸着力が最も弱い成分を弱吸着性成分として位置付けることができる。また、吸着剤に対する吸着力が最も強い成分を強吸着性成分、吸着剤に対する吸着力が2番目の成分と3番目の成分を合わせて中吸着性成分、吸着剤に対する吸着力が最も弱い成分を弱吸着性成分として位置付けることもできる。また、吸着剤に対する吸着力が最も強い成分を強吸着性成分、吸着剤に対する吸着力が2番目の成分を中吸着性成分、吸着剤に対する吸着力が3番目の成分と最も弱い成分を合わせて弱吸着性成分として位置付けることもできる。原液が5種以上の成分を含む場合にも、同様に、種々のグループ分けに基づく分離、精製をすることができる。
本発明において、溶離液の「脱着力」とは、吸着剤に吸着した成分を、当該吸着剤から脱離させる作用の強さを意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の擬似移動層方式クロマト分離方法によれば、原液中の精製対象成分を高純度に分取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の擬似移動層方式クロマト分離システムの一例を示す系統図である。
【
図2】
図2は、本発明の擬似移動層方式クロマト分離方法の一実施形態において、ステップ(A)及び(B)を構成する各サブステップのフロー図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すステップ(A)及び(B)を終了後、次サイクルにおけるステップ(A)及び(B)を構成する各サブステップのフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明の擬似移動層方式クロマト分離方法の別の実施形態において、ステップ(A)及び(B)を構成する各サブステップのフロー図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すステップ(A)及び(B)を終了後、次サイクルにおけるステップ(A)及び(B)を構成する各サブステップのフロー図である。
【0012】
本発明の擬似移動層方式クロマト分離方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう。)の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
本発明の方法は、吸着剤が充填された複数の単位充填塔を、配管を介して直列かつ無端状に連結した循環系を用いて実施される。擬似移動層方式に用いられる循環系自体は公知であり、例えば、特開2009-36536号公報や特許第4606092号公報等を参照することができる。
当該循環系について図面を用いて以下に説明するが、本発明は、本発明で規定すること以外はこれらの態様に限定されるものではない。
なお、以下で言及する図面は本発明の理解を容易にするための説明図であり、各構成のサイズや相対的な大小関係は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された形状、相対的な位置関係等に限定されるものでもない。
また、本発明で規定すること以外の条件、例えば、単位充填塔の容量、配管の管内断面積や長さ、循環系に供給する液の流速等は、目的に応じて適宜に設定することができる。
【0014】
本発明の方法に用いる循環系の好ましい一実施形態を
図1に示す。
図1に示される循環系100は、吸着剤Abが充填された単位充填塔(カラム)を4本(単位充填塔10a、10b、10c、10d)備え、各単位充填塔の出口は、隣接する単位充填塔の入口へと配管1を介して連結され、全体として各単位充填塔が直列に連結されている。
そして、最後部の単位充填塔(例えば単位充填塔10d)の出口は、最前部の単位充填塔(例えば単位充填塔10a)の入口へと配管1を介して連結され、全単位充填塔は無端状に(円環状に)連結されている。かかる構成により、循環系100内に、流体を循環させることが可能となる。単位充填塔10a~10dは、内部の形、サイズ、吸着剤の充填量が互いに同一でも異なっていてもよい。単位充填塔10a~10dは、内部の形、サイズ、吸着剤の充填量がいずれも等価なもの(好ましくは同じもの)を用いることが好ましい。
【0015】
上記循環系100内には、流体を矢印方向に流通させるための循環ポンプP1を配設することができる。循環ポンプP1は定量ポンプであることが好ましい。また、循環系100内において、互いに隣接する2つの単位充填塔の間の配管1には、その下流側の単位充填塔への流体の流通を遮断可能な遮断弁R1、R2、R3、R4が設けられている。
【0016】
各遮断弁R1~R4と、その上流側に位置する各単位充填塔10a~10dの出口との間には、それぞれ、吸着剤Abに対する弱吸着性成分を多く含む画分(本明細書において「吸着剤Abに対する弱吸着性画分」又は単に「弱吸着性画分」という。)を抜き出す弱吸着性画分抜出ライン2a、2b、2c、2dが分岐配設されている。各弱吸着性画分抜出ライン2a、2b、2c、2dには、それぞれ、各弱吸着性画分抜出ラインを開閉可能な弱吸着性画分抜出弁A1、A2、A3、A4が設けられている。各弱吸着性画分抜出ライン2a、2b、2c、2dは、合流されて一つの弱吸着性画分合流管2Jにまとめられる。
【0017】
また同様に、各遮断弁R1~R4と、その上流側に位置する各単位充填塔10a~10dの出口との間には、吸着剤Abに対する中吸着性成分を多く含む画分(本明細書において「吸着剤Abに対する中吸着性画分」又は単に「中吸着性画分」という。)を抜き出す中吸着性画分抜出ライン3a、3b、3c、3dが分岐配設されている。各中吸着性画分抜出ライン3a、3b、3c、3dには、それぞれ、各中吸着性画分抜出ラインを開閉可能な中吸着性画分抜出弁B1、B2、B3、B4が設けられている。各中吸着性画分抜出ライン3a、3b、3c、3dは、合流されて一つの中吸着性画分合流管3Jにまとめられる。
【0018】
また同様に、各遮断弁R1~R4と、その上流側に位置する各単位充填塔10a~10dの出口との間には、吸着剤Abに対する強吸着性成分を多く含む画分(本明細書において「吸着剤Abに対する強吸着性画分」又は単に「強吸着性画分」という。)を抜き出す強吸着性画分抜出ライン4a、4b、4c、4dが分岐配設されている。各強吸着性画分抜出ライン4a、4b、4c、4dには、それぞれ、各強吸着性画分抜出ラインを開閉可能な強吸着性画分抜出弁C1、C2、C3、C4が設けられている。各強吸着性画分抜出ライン4a、4b、4c、4dは、合流されて一つの強吸着性画分合流管4Jにまとめられる。
【0019】
後述するプロセス及びステップの中で、弱吸着性画分抜出弁A1、A2、A3、A4のいずれかが開弁された状態となる。当該開弁された弱吸着性画分抜出弁が設置された弱吸着性画分抜出ラインと、配管1との連結部位が、後述するプロセス及びステップにおける弱吸着性画分の抜出口Aとなる。
また、後述するプロセス及びステップの中で、中吸着性画分抜出弁B1、B2、B3、B4のいずれかが開弁された状態となる。当該開弁された中吸着性画分抜出弁が設置された中吸着性画分抜出ラインと、配管1との連結部位が、後述するプロセス及びステップにおける中吸着性画分の抜出口Bとなる。
また、後述するプロセス及びステップの中で、強吸着性画分抜出弁C1、C2、C3、C4のいずれかが開弁された状態となる。当該開弁された強吸着性画分抜出弁が設置された強吸着性画分抜出ラインと、配管1との連結部位が、後述するプロセス及びステップにおける強吸着性画分の抜出口Cとなる。
【0020】
循環系100には、循環系100の圧力が上昇し過ぎるのを防ぐために、適当な部位に図示していない安全弁(又はリリーフ弁)を設けることができる。また、隣接する2つの単位充填塔の間には、逆流防止用の逆止弁T1、T2、T3、T4を設けることが好ましい。
【0021】
循環系100内は、
図1に示されるように、原液タンク6に収容された原液7が供給可能な構成となっている。また、循環系100内は、3種以上の溶離液が供給可能な構成となっている。
図1では、一例として、4種の溶離液を供給する形態を示した。
原液7は、供給流量を制御可能な原液供給ポンプP2により、原液供給ライン11を介して供給される。原液供給ポンプP2は定量ポンプであることが好ましい。原液供給ライン11は、
図1に示すように4本の原液供給分岐ライン11a、11b、11c、11dに分岐され、各原液供給分岐ライン11a、11b、11c、11dを介して、原液を、それぞれ各単位充填塔10a、10b、10c、10dの入り口へと供給可能な構成となっている。各原液供給分岐ライン11a、11b、11c、11dには、開閉可能な原液供給弁F1、F2、F3、F4が設けられ、開弁された原液供給弁を有する原液供給分岐ラインを通って、その下流に連結する単位充填塔へと原液が供給される。
後述するプロセス及びステップの中で、上記原液供給弁F1、F2、F3、F4のいずれかが開弁された状態となる。当該開弁された原液供給弁が設置された原液供給分岐ラインと、配管1との連結部位が、後述するプロセス及びステップにおける原液供給口Fとなる。
【0022】
図1は、脱着力の異なる4種の溶離液を供給する形態を示す。溶離液タンク8aに収容された溶離液9aは、供給流量を制御可能な溶離液供給ポンプP3により溶離液供給ライン12へと供給される。溶離液タンク8bに収容された溶離液9bは、供給流量を制御可能な溶離液供給ポンプP4により溶離液供給ライン13へと供給される。溶離液タンク8cに収容された溶離液9cは、供給流量を制御可能な溶離液供給ポンプP5により溶離液供給ライン14へと供給される。さらに、溶離液タンク8dに収容された溶離液9dは、供給流量を制御可能な溶離液供給ポンプP6により溶離液供給ライン15へと供給される。
溶離液供給ポンプP3~P6は定量ポンプであることが好ましい。溶離液供給ライン12は、
図1に示すように4本の溶離液供給分岐ライン12a、12b、12c、12dに分岐され、各溶離液供給分岐ライン12a、12b、12c、12dを介して、溶離液を、各単位充填塔10a、10b、10c、10dの入り口へと供給可能な構成となっている。各溶離液供給分岐ライン12a、12b、12c、12dには、開閉可能な溶離液供給弁E1a、E2a、E3a、E4aが設けられ、開弁された溶離液供給弁を有する溶離液供給分岐ラインを通って、その下流に連結する単位充填塔へと溶離液が供給される。
同様に、溶離液供給ライン13は4本の溶離液供給分岐ライン13a、13b、13c、13dに分岐され、溶離液供給ライン14は4本の溶離液供給分岐ライン14a、14b、14c、14dに分岐され、溶離液供給ライン15は4本の溶離液供給分岐ライン15a、15b、15c、15dに分岐され、各溶離液を、各単位充填塔10a、10b、10c、10dの入り口へと供給可能な構成となっている。
溶離液供給分岐ライン13a、13b、13c、13dには、それぞれ、開閉可能な溶離液供給弁E1b、E2b、E3b、E4bが設けられ、溶離液供給分岐ライン14a、14b、14c、14dには、それぞれ、開閉可能な溶離液供給弁E1c、E2c、E3c、E4cが設けられ、溶離液供給分岐ライン15a、15b、15c、15dには、それぞれ、開閉可能な溶離液供給弁E1d、E2d、E3d、E4dが設けられている。
後述するプロセス及びステップの中で、開弁された溶離液供給弁が設置された溶離液供給分岐ラインと、配管1との連結部位が、溶離液供給口Dとなる。後述するプロセス及びステップの中で、開弁される溶離液供給弁は複数ある。すなわち、後述するプロセス及びステップの中で、溶離液供給口Dは、使用する溶離液の種類に応じた数が存在することになる。
【0023】
続いて、上記循環系により本発明の方法を実施する際の、循環系の作動について説明するが、本発明は、本発明で規定すること以外は、これらの実施態様に限定されるものではない。
【0024】
本発明の方法において、前記循環系は、吸着剤が充填された3つ以上の単位充填塔が配管を介して直列かつ無端状に連結されている。また該循環系は、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した少なくとも3つのセクションに区切られている。すなわち、1つのセクションが複数の単位充填塔を有していてもよい。
本発明の方法は、後述する第一プロセス及び第二プロセスからなるサイクル、またはステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを繰り返すことにより、原液中に含まれる、前記吸着剤に対して弱吸着性成分と、強吸着性成分と、両成分の中間的な吸着性の中吸着性成分とを、溶離液を用いて分離することができる。後述する第一プロセス及び第二プロセスは、本発明に特徴的な作動を強吸着性成分の抜き出し位置の移動を中心に特定したものであり、後述するステップ(A)及びステップ(B)は、本発明に特徴的な作動を弱吸着性成分の抜き出し位置の移動を中心に特定したものである。
【0025】
本発明ないし本明細書において、「第一プロセス及び第二プロセスからなるサイクルを繰り返す」、又は「ステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを繰り返す」とは、第二プロセスないしステップ(B)の終了後(1つのサイクル終了後)、弱吸着性成分が冨化したセクションの上流の位置(好ましくは弱吸着性成分が冨化したセクションの上流側末端)を遮断位置とし、当該遮断位置の下流側のセクションに、新たに第一プロセス又はステップ(A)における原液供給を開始することでサイクルを繰り返すことを意味する。
【0026】
また本発明ないし本明細書において、「ステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを繰り返す」形態として、ステップ(B)の終了後(1つのサイクル終了後)、弱吸着性画分を抜き出す位置をそのままとして、該弱吸着性画分の抜き出し位置を基準として、原液を供給する位置、中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給する位置、及び中吸着性成分が富化した中吸着性画分を抜き出す位置を、ステップ(A)(サブステップ(A1))で規定する通りとして、次のサイクルのステップ(A)を開始することもできる。すなわち、後述のように、前サイクルのサブステップ(A1)において、弱吸着性画分の抜出口と原液供給口とが1セクション分隔てて構築されている場合、次サイクルのサブステップ(A1)でも弱吸着性画分の抜出口と原液供給口とは、その弱吸着性画分の抜出口の位置によらず、1セクション分隔てて構築される。
【0027】
また本発明の方法において、供給される原液の量と供給される溶離液の量との合計と、抜き出される弱吸着性画分の量と中吸着性画分の量と強吸着性画分の量との合計とは、一致する。すなわち、循環系内に液が供給されている状態においては、それと同じ量だけ、循環系内から液が抜き出される。
より詳細に説明すると、ある供給口(X)から液が供給され、その下流側のある抜出口(Y)から液が抜き出される場合において、Xよりも下流側でYよりも上流側から液が供給されていない場合、Yから抜き出される液の量は、Xから供給される液の量と同じである。また、Xよりも下流側でYよりも上流側から液が供給されている場合には、Yから抜き出される液の量は、Xから供給される液の量と、Xよりも下流側でYよりも上流側から供給されている液の量との合計と同じである。例えば
図2のサブステップ(A1-1)において、溶離液供給口D2から供給する溶離液の供給量と、中吸着性画分抜出口Bから抜き出す中吸着性画分の抜出量は同じである。また、同じくサブステップ(A1-1)において、原液供給口Fから供給する原液の供給量と、弱吸着性画分抜出口Aから抜き出す弱吸着性画分の量は同じである。
【0028】
本発明の方法には、互いに脱着力が異なる3種以上の溶離液を用いることが好ましく、互いに脱着力が異なる3~6種の溶離液を用いることがさらに好ましく、互いに脱着力が異なる3種又は4種の溶離液を用いることが特に好ましい。
溶離液の種類は特に制限されず、吸着剤の種類や原液中の成分の種類との関係により適宜に設定される。例えば、吸着剤としてイオン交換樹脂を用いる場合、溶離液の塩濃度を変えることにより、脱着力が異なる複数の溶離液を調製することができる。例えば、吸着剤として陽イオン交換樹脂を用いる場合には、NaCl濃度を変えた複数の溶離液を用いることができる。
【0029】
なお、本発明の方法で規定する下記第一プロセス及び第二プロセス、又は下記ステップ(A)及びステップ(B)は、第一プロセス及び第二プロセス、又はステップ(A)及びステップ(B)の最初の実施(1サイクル目)を規定するものではなく、第一プロセス及び第二プロセス、又はステップ(A)及びステップ(B)を順に少なくとも1回(好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、さらに好ましくは4回以上、さらに好ましくは5回以上)行った後の定常状態を想定している。例えば、
図2に示すフロー図のように、最初の実施(1サイクル目)ではサブステップ(A1-1)において、原液がセクション3の上流から供給されるため、セクション1及び2には中吸着性成分が存在していない。そのため、最初の実施におけるサブステップ(A1-1)では、中吸着性画分の抜出口Bからは中吸着性成分に冨化した中吸着性画分は抜き出されない。しかしながら、本発明の方法で規定する下記のステップ(A)及びステップ(B)をこの順で少なくとも1回行うことにより、次サイクル以降の実施では、サブステップ(A1-1)において、中吸着性画分の抜出口Bから中吸着性成分に富化した中吸着性画分が抜き出されるようになる。
【0030】
本発明の一実施形態において、本発明に特徴的な循環系の作動は、下記第一プロセス及び第二プロセスからなるサイクルを1つのサイクルとすることにより特定することができる。
<第一プロセス>
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置(好ましくは、前記弱吸着性成分が冨化したセクションの上流側末端)を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給するとともに、前記遮断位置の上流側のセクションから前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出す工程を含むプロセス。
<第二プロセス>
前記原液を供給せずに前記溶離液の供給と前記循環系の遮断の制御によって、前記強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出し、かつ前記強吸着性画分の移動にあわせて前記溶離液の前記循環系に対する供給位置と、前記強吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させる工程を含むプロセス。
【0031】
また本発明におけるサイクルを前記第一プロセス及び第二プロセスにより特定する場合、前記サイクル内における前記強吸着性画分の抜き出し位置の下流側への移動を2セクション分以上とし、かつ当該下流側への移動を[セクション数]と同じ分の下流側への移動としない。セクション数とは、循環系が有するセクションの総数である。例えば、本発明の方法において、循環系に用いるセクションの数が4つである場合、1つのサイクルにおいて、前記強吸着性画分の抜き出し位置の下流側への移動は、2若しくは3セクション分の移動、または5セクション分以上の移動である。
【0032】
第一プロセスにおける原液を供給する位置、中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給する位置、及び中吸着性成分が冨化した中吸着性画分を抜き出す位置は、直前のプロセスにおける弱吸着性成分が冨化したセクションの上流の位置(好ましくは弱吸着性成分が冨化したセクションの上流側末端)を遮断位置とし、当該遮断位置を基準に構築される。なお1サイクル目では、任意の位置を、遮断位置として設定することができる。
また前記第一プロセス及び第二プロセスでは、常に前記弱吸着性成分が富化したセクションから弱吸着性画分を抜き出していることが好ましい。また、弱吸着性画分の抜き出し位置については、後述するステップ(A)及びステップ(B)における弱吸着性画分の抜き出し位置についての記載を援用することもできる。
【0033】
また本発明の別の実施形態において、本発明に特徴的な循環系の作動は、下記ステップ(A)及びステップ(B)からなるサイクルを1つのサイクルとすることにより特定することもできる。
<ステップ(A)>
ステップ(A)では、次のサブステップ(A1)~(A4)をこの順に実施する。
前記弱吸着性成分が富化したセクションよりも上流の位置(好ましくは、前記着吸着性成分が冨化したセクションの上流側末端)を遮断位置として前記循環系の循環を遮断し、前記遮断位置の下流側のセクションに前記原液を供給してさらに下流位置で前記弱吸着性成分が富化した弱吸着性画分を該循環系から抜き出すとともに、前記遮断位置の上流側のセクションに前記中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で前記中吸着性成分が富化した中吸着性画分を前記循環系から抜き出すサブステップ(A1)、
前記の原液の供給に代えて前記弱吸着性成分を脱着するための溶離液を供給し、前記の弱吸着性画分の抜き出しと前記の中吸着性画分の抜き出しを継続するサブステップ(A2)、
前記遮断位置を上流側に移動し、前記の弱吸着性画分の抜き出しを継続しながら、移動した遮断位置の上流で前記強吸着性成分を脱着するための溶離液を供給してその下流位置で強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出すサブステップ(A3)、並びに
前記の弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分を抜き出しながら、中吸着性画分の抜き出しはせず、かつ強吸着性画分の抜き出しもしないサブステップ(A4)。
【0034】
本発明では、上記の通りステップ(A)においてサブステップ(A1)、(A2)、(A3)及び(A4)を行う。
本発明において、「ステップ(A)においてサブステップW、X、Y及びZを行う」とは、ステップ(A)が、サブステップW、X、Y及びZを含んでいることを意味する。また、ステップ(A)は、サブステップW、X、Y及びZ以外の、他のサブステップを含んでもよい。
「ステップ(A)においてサブステップW、X、Y及びZを行う」形態として、典型的には、ステップ(A)としてサブステップW、X、Y及びZを順に行う形態が挙げられるが、本発明はこの形態に限定されない。すなわち、「ステップ(A)においてサブステップW、X、Y及びZを行う」とは、サブステップWの直後にサブステップXを行い、サブステップXの直後にサブステップYを行い、サブステップYの直後にサブステップZを行い、サブステップZの直後にステップ(B)を行い、ステップ(B)の直後にサブステップWを行う形態に限られない。例えば、上記の他のサブステップを含む形態では、サブステップWの前(ステップ(B)とサブステップWとの間)、サブステップWとXとの間、サブステップXとYとの間、サブステップYとZとの間、サブステップZとステップ(B)との間の少なくとも1つにおいて、本発明の効果を損なわない範囲で、他のサブステップ(サブステップW、X、Y及びZ以外のサブステップ)を組み込むことができる。供給流量、流速、溶離液強さ等の調整により、サブステップW、X、Y及びZ以外の付加的なサブステップを込み込んでも目的の効果が得られる場合があり、このことは本明細書に接した当業者であれば当然に理解することである。
また、このことは、ステップ(B)がサブステップを有している場合も同様である。
【0035】
<サブステップ(A1)>
前記サブステップ(A1)において、中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給している間は、その下流から、中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給量と同じ量の中吸着性画分を抜き出す。この場合、中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口からその下流の中吸着性画分抜出口までの間には、少なくとも2つのセクション(単位充填塔)が配されることが好ましい。また、当該間には他の供給口は存在しないことが好ましい。
また前記サブステップ(A1)において、原液を供給している間は、その下流から、原液の供給量と同じ量の弱吸着性画分を抜き出す形態とすることが好ましい。この場合、原液の供給口からその下流の弱吸着性画分抜出口までの間には、少なくとも1つのセクション(単位充填塔)が配される。また、当該間には他の供給口は存在しない形態とすることが好ましい。
【0036】
サブステップ(A1)における原液を供給する位置、中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給する位置、及び中吸着性成分が冨化した中吸着性画分を抜き出す位置は、直前のステップにおける弱吸着性成分が冨化したセクションの上流の位置(好ましくは、弱吸着性成分が冨化したセクションの上流側末端)を遮断位置とし、当該遮断位置を基準に構築される。また、直前のステップにおける弱吸着性画分を抜き出す位置を基準に構築することもできる。なお1サイクル目では、任意の位置を、遮断位置として設定することができる。
原液を供給する位置は、弱吸着性画分を抜き出す位置から少なくとも1セクションを挟んだ上流に設けることが好ましい。
中吸着性成分が富化した中吸着性画分を抜き出す位置は、前記原液を供給する位置(原液供給口)と同じ配管上であって、かつ原液を供給する位置よりも上流側に設けることが好ましい。すなわち、中吸着性成分が富化した中吸着性画分を抜き出す位置と、原液を供給する位置との間には単位充填塔が設けられていないことが好ましい。
中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給する位置は、前記弱吸着性画分を抜き出す位置(弱吸着性画分の抜出口)と同じ配管上であって、かつ前記弱吸着性画分を抜き出す位置よりも下流側に設けることが好ましい。すなわち、中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給する位置と、弱吸着性画分を抜き出す位置との間には単位充填塔が設けられていないことが好ましい。
【0037】
<サブステップ(A2)>
前記サブステップ(A2)において、原液に代えて弱吸着性成分を脱着するための溶離液を供給している間は、その下流から、弱吸着性成分を脱着するための溶離液の供給量と同じ量の弱吸着性画分を抜き出す形態とする。
図1に示すシステムの形態では、原液の供給口と弱吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口は、同じ配管上に設けられる異なる供給口である。弱吸着性画分の抜出口の位置は、前記サブステップ(A1)における弱吸着性画分の抜出口の位置と同一であることが好ましい。
なお、サブステップ(A2)では、サブステップ(A1)における中吸着性画分の抜き出しを継続する。すなわち、サブステップ(A2)における中吸着性画分の抜き出し条件は、サブステップ(A1)における中吸着性画分の抜き出し条件と同様とすることができる。
【0038】
<サブステップ(A3)>
前記サブステップ(A3)において、前記サブステップ(A1)及び(A2)において中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口と同じ配管上に、強吸着性成分を脱着するための溶離液を供給する供給口を設けることが好ましい。
また、移動した遮断位置の下流で中吸着性成分を脱着するための溶離液を供給することが好ましい。さらに、中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口から1セクションを挟んで下流側から、弱吸着性成分を脱着するための溶離液の供給することが好ましい。
強吸着性成分が富化した強吸着性画分を抜き出す位置は、前記中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口と同じ配管上であって、かつ該溶離液を供給する位置よりも上流側に設けることが好ましい。また、弱吸着性画分の抜出口の位置は、前記サブステップ(A2)における弱吸着性画分の抜出口の位置と同一であることが好ましい。
【0039】
<サブステップ(A4)>
前記サブステップ(A4)において、前記サブステップ(A3)における中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口、及び弱吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口はそのままに、弱吸着性画分の抜出口の位置を前記サブステップ(A3)における弱吸着性画分抜出口から1セクション分だけ下流側に移動させることが好ましい。
【0040】
<ステップ(B)>
ステップ(B)では、弱吸着性画分の抜き出し位置はそのままで、原液を供給せずに溶離液の供給と遮断位置の制御によって、ステップ(A)で抜き出さなかった弱吸着性画分と強吸着性画分とを各別に抜き出し、次いで、前記弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分のみを抜き出す工程αを少なくとも1回行う。
【0041】
前記ステップ(B)では、中吸着性画分の抜き出しは行わないことが好ましい。一方で、循環系における中吸着性成分の移動に伴い、中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口を設定することができる。すなわち、中吸着性成分が冨化したセクションの上流の位置(好ましくは、中吸着性成分が冨化したセクションの上流側末端)を、中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給位置とすることができる。
【0042】
前記工程αにおいて、強吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口は、直前のステップ又は直前の工程αの終了時における中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口と同じ配管上に設けることが好ましい。すなわち、例えば工程αを1回行う場合、ステップ(B)における強吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口は、直前のステップであるステップ(A)の終了時(サブステップ(A4))における中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口と同じ配管上に設けることが好ましい。また、例えば工程αを2回行う場合、2回目の工程αにおける強吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口は、1回目の工程α終了時の中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口と同じ配管上に設けることが好ましい。
【0043】
ステップ(B)を実施している間は、常に弱吸着性画分を抜き出していることが好ましい。したがって、ステップ(B)を複数のサブステップで構成する場合にも、当該複数のサブステップにおいて、弱吸着性画分は常に抜き出されていることが好ましい。
【0044】
工程αでは上記の通り、弱吸着性画分と強吸着性画分とを各別に抜き出し、次いで、前記弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させて弱吸着性画分のみを抜き出す。そのため、前記工程αを繰り返す場合、すなわち、前記工程αを複数回行う場合において、次回の工程α開始時における各溶離液の供給位置、及び各画分の抜き出し位置は、その前の工程α開始時における各溶離液の供給位置、及び各画分の抜き出し位置と比べて、各位置の相対的な位置関係を保ったまま、少なくとも1セクション分だけ下流側へと移行している。
すなわち、サブステップ(A4)から工程αに移行した際の当該工程α開始時において、弱吸着性画分の抜き出し位置は、前記サブステップ(A4)における弱吸着性画分の抜き出し位置と同じである。当該工程αの中で、弱吸着性画分の抜き出し位置を下流側に移動させるため、次回の工程α開始時は、その前の工程αにおいて下流側に移動した弱吸着性画分の抜き出し位置(その前の工程α終了時の弱吸着性画分の抜き出し位置)をそのまま、弱吸着性画分の抜き出し位置とする。次回の工程αにおける弱吸着性画分の抜き出し位置以外の各溶離液の供給位置や強吸着性画分の抜き出し位置は、次回の工程α開始時における弱吸着性画分の抜き出し位置を基準として、工程αの規定に沿って再構築される。そのため、工程αを繰り返すことにより、各位置は少なくとも1セクション分だけ下流側へと移行することになる。
【0045】
前記ステップ(A)及びステップ(B)の繰り返し(サイクルの繰り返し)に伴い、原液を供給する位置、溶離液を供給する位置、及び各画分を抜き出す位置は、その相対的な位置を保ったまま、前サイクルと比較して1セクション以上、上流へ移動することが好ましい。このように、前のサイクルとその後のサイクルで前記各位置がその相対的な位置を保ったまま移動することにより、常に同一の供給口から原液が供給されることを避けることができ、同一の供給口が原液によって過度に汚れることを防ぐことができる。サイクルを繰り返す時に何セクション分上流へ移動するかは、前記セクションの数と工程αの繰り返し数によって決定することができる。
【0046】
前記ステップ(A)において、前記循環系の前記配管における、原液を供給する原液供給口Fと、弱吸着性画分を抜き出す抜出口Aと、中吸着性画分を抜き出す抜出口Bと、強吸着性画分を抜き出す抜出口Cとが、下記(a)~(c)を満たす位置に設けられることが好ましい。すなわち、ステップ(A)及び(B)の繰り返しにおいて、ステップ(A)における原液供給口Fと、弱吸着性画分の抜出口Aと、中吸着性画分の抜出口Bと、強吸着性画分の抜出口Cとの、互いの相対的な位置関係が、当該(a)~(c)を常に満たしていることが好ましい。
【0047】
(a)弱吸着性画分抜出口Aを、原液供給口Fの、少なくとも1つのセクションを挟んで下流側に設ける。
【0048】
(b)中吸着性画分抜出口Bを、原液供給口Fを有する配管に設ける。
ここで、「中吸着性画分抜出口Bを、原液供給口Fを有する配管に設ける」とは、中吸着性画分抜出口Bと、原液供給口Fとの間に、単位充填塔が配されていないことを意味する。また、「中吸着性画分抜出口Bを、原液供給口Fを有する配管に設ける」場合、中吸着性画分抜出口Bの方が、原液供給口Fよりも、同じ配管の上流側に設ける。このことは、同じ配管に設けられた抜出口と供給口との関係のすべてに当てはまる。つまり、循環系において、ある抜出口と供給口が同じ配管に設けられている場合(単位充填塔を挟まずに抜出口と供給口が設けられている場合)、抜出口の方を、供給口よりも、同じ配管の上流側に配置する。これは、供給した液がその下流の単位充填塔に届く前に、当該液が抜出口から抜き出されてしまうことを防ぐためである。
【0049】
(c)強吸着性画分抜出口Cを、中吸着性画分抜出口Bの、少なくとも1つのセクションを挟んで上流側に設ける。
【0050】
また前記ステップ(B)において、前記循環系の前記配管における、弱吸着性画分を抜き出す抜出口Aと、強吸着性画分を抜き出す抜出口Cとが、下記(d)を満たす位置に設けられることが好ましい。すなわち、ステップ(A)及び(B)の繰り返しにおいて、ステップ(B)における弱吸着性画分の抜出口Aと、強吸着性画分の抜出口Cとの、互いの相対的な位置関係が、当該(d)を常に満たしていることが好ましい。
【0051】
(d)弱吸着性画分抜出口Aを、強吸着性画分抜出口Cの、少なくとも2つのセクションを挟んで下流側に設ける。
【0052】
また前記ステップ(B)において、強吸着性画分抜出口Cは、中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口を有する配管に設けられることが好ましい。すなわち、強吸着性画分抜出口Cを、中吸着性成分を脱着するための溶離液の供給口よりも、同じ配管の上流側に設けることが好ましい。
【0053】
前記ステップ(B)で行う前記工程αの回数を、[セクション数-2]回、又は[セクション数]回以上とすることが好ましい。セクション数とは、循環系が有するセクションの総数である。例えば、
図2及び
図3で示す実施形態ではセクション数が4つであるため、前記工程αの回数を2回とする態様が記載されており、
図4及び
図5で示す実施形態ではセクション数が3つであるため、前記工程αの回数を1回とする態様が記載されている。
【0054】
上記ステップ(A)及び(B)におけるサブステップの組み合わせの好ましい実施形態について、以下に説明する。これらの形態の実施は、
図1のシステムを用いたり、
図1のシステムに準じる、目的の形態を実施可能なシステムを用いたりして行うことができる。また、下記の実施形態は本発明の一例であり、例えば、相対的な脱着力の観点から、下記の溶離液d-Iとして位置付けられる2種以上の溶離液を用意し、溶離液d-Iを供給するサブステップ間において、使用する溶離液d-Iの種類を変えることもできる。このことは、溶離液d-II~d-IVについても同様である。
すなわち本発明では、ある実施形態において「溶離液d-I」という場合、この実施形態において、異なるサブステップで「溶離液d-I」を使用する場合には、異なるサブステップで使用する「溶離液d-I」は互いに同じでもよいし、異なってもよい。このことは、溶離液d-II~d-IVについても同様である。
【0055】
-実施形態1-
実施形態1では、単位充填塔を4つ以上有する循環系を用いる。そして、この循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した4つのセクション1~4に区切ったものを想定する。また、溶離液として、脱着力が制御された4種の溶離液d-I~d-IVを用いる。
この実施形態1においては、ステップ(A)において下記サブステップ(A1-1)、(A2-1)、(A3-1)及び(A4-1)を行う。
【0056】
<サブステップ(A1-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を前記原液供給口Fとして該原液供給口Fから原液を供給し、セクション4の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
サブステップ(A1-1)では、上記の各液の供給と、弱吸着性画分の抜き出しが、連続的に行われる(すなわち、サブステップ(A1-1)では常に、上記の各液の供給と、弱吸着性画分の抜き出しのすべてが絶え間なく行われている。)。このことは、以降に説明する各サブステップにおいても同様である。
また、本発明ないし本明細書において、各サブステップで説明する溶離液の脱着力の強弱の説明は、当該サブステップ内における溶離液の脱着力の強弱であり、異なるサブステップにおける溶離液の脱着力の強弱を説明するものではない。例えば、ステップ(A)を構成する一のサブステップにおいてセクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くすることが説明され、当該ステップ(A)を構成する別のサブステップにおいてもセクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くすることが説明されている場合、当該一のサブステップにおいてセクション1を流通する溶離液の脱着力と、当該別のサブステップにおいてセクション1を流通する溶離液の脱着力とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
<サブステップ(A2-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション4の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
このサブステップ(A2-1)における溶離液供給口D-IVは、上記サブステップ(A1-1)における原液供給口Fと同じ配管に設けられている。
【0058】
<サブステップ(A3-1)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション1の下流側末端を前記抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション4の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0059】
<サブステップ(A4-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力と同じにする。
【0060】
上記サブステップ(A1-1)の一例として、下記サブステップ(A1-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A1-1)はサブステップ(A1-1ex)に限定されるものではない。
なお、下記例では溶離液d3より溶離液d4の方が脱着力が弱いものとして記載するが、溶離液d3と溶離液d4の脱着力は同じであってもよい。以下の例でも同様である。
<サブステップ(A1-1ex)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして、該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、
セクション3の上流側末端を原液供給口Fとして、該原液供給口Fから原液を供給し、
セクション4の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
【0061】
上記サブステップ(A2-1)の一例として、下記サブステップ(A2-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A2-1)はサブステップ(A2-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(A2-1ex)>
前記溶離液供給口D2から前記溶離液d2を供給し、
前記中吸着性画分抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D4として、該溶離液供給口D4から4種の溶離液のうち脱着力が最も弱い溶離液d4を供給し、
前記弱吸着性画分抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(A2-1ex)における溶離液供給口D4は、上記サブステップ(A1-1ex)における原液供給口Fと同じ配管に設けられている。また、このサブステップ(A2-1ex)における溶離液供給口D2は、上記サブステップ(A1-1ex)における溶離液供給口D2と同じである。
【0062】
上記サブステップ(A3-1)の一例として、下記サブステップ(A3-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A3-1)はサブステップ(A3-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(A3-1ex)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D1として、該溶離液供給口D1から4種の溶離液のうち脱着力が最も強い溶離液d1を供給し、
セクション1の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして、該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D3として、該溶離液供給口D3から4種の溶離液のうち脱着力が3番目に強い溶離液d3を供給し、
セクション4の上流側末端を溶離液供給口D4として、該溶離液供給口D4から4種の溶離液のうち脱着力が最も弱い溶離液d4を供給し、
前記弱吸着性画分抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(A3-1ex)における溶離液供給口D1は、上記サブステップ(A2-1ex)における溶離液供給口D2と同じ配管に設けられている。またこのサブステップ(A3-1ex)における溶離液供給口D3は、上記サブステップ(A2-1ex)における溶離液供給口D4と同じ配管に設けられている。
【0063】
上記サブステップ(A4-1)の一例として、下記サブステップ(A4-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A4-1)はサブステップ(A4-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(A4-1ex)>
前記溶離液供給口D2から前記溶離液d2を供給し、
前記溶離液供給口D3から前記溶離液d3を供給し、
前記溶離液供給口D4から前記溶離液d4を供給し、
セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(A4-1ex)における溶離液供給口D2、D3及びD4は、上記サブステップ(A3-1ex)における溶離液供給口D2、D3及びD4と同じである。
【0064】
上記ステップ(A)が上記サブステップ(A1-1ex)、(A2-1ex)、(A3-1ex)及び(A4-1ex)を順に行う場合のフロー図を
図2に示す。
図2中、四角の囲いはセクション1つ分を示し、当該囲いの中の数字はセクションの番号(左から順に付番した)を示す。
【0065】
この実施形態1においては、ステップ(B)において下記サブステップ(B1-1)、(B2-1)及び(B3-1)をひとセットとし、これを2回行う。本実施形態において、2回目の各サブステップを、それぞれ(B1’-1)、(B2’-1)及び(B3’-1)と表記する。すなわち、ステップ(B)において、下記サブステップ(B1-1)~(B3-1)及び下記サブステップ(B1’-1)~(B3’-1)を行う。
【0066】
<サブステップ(B1-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2及び3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション2及び3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0067】
<サブステップ(B2-1)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0068】
<サブステップ(B3-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力と同じにする。
【0069】
<サブステップ(B1’-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3及び4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0070】
<サブステップ(B2’-1)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション3の下流側末端を前記抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0071】
<サブステップ(B3’-1)>
セクション4の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション3の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション4を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション4を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力と同じにする。
【0072】
上記サブステップ(B1-1)の一例として、下記サブステップ(B1-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B1-1)はサブステップ(B1-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B1-1ex)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
セクション4の上流側末端を溶離液供給口D3として、該溶離液供給口D3から4種の溶離液のうち脱着力が3番目に強い溶離液d3を供給し、
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D4として、該溶離液供給口D4から4種の溶離液のうち脱着力が最も弱い溶離液d4を供給し、
セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B1-1ex)における溶離液供給口D2は、上記サブステップ(A4-1ex)における溶離液供給口D2と同じである。また、このサブステップ(B1-1ex)における溶離液供給口D3は、上記サブステップ(A4-1ex)における溶離液供給口D4と同じ配管に設けられている。
【0073】
上記サブステップ(B2-1)の一例として、下記サブステップ(B2-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B2-1)はサブステップ(B2-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B2-1ex)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D1として、該溶離液供給口D1から4種の溶離液のうち脱着力が最も強い溶離液d1を供給し、
セクション2の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして、該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
前記溶離液供給口D3から前記溶離液d3を供給し、
前記溶離液供給口D4から前記溶離液d4を供給し、
前記弱吸着性画分抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B2-1ex)における溶離液供給口D1は、上記サブステップ(B1-1ex)における溶離液供給口D2と同じ配管に設けられている。また、このサブステップ(B2-1ex)における溶離液供給口D3及びD4は、上記サブステップ(B1-1ex)における溶離液供給口D3及びD4と同じである。
【0074】
上記サブステップ(B3-1)の一例として、下記サブステップ(B3-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B3-1)はサブステップ(B3-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B3-1ex)>
前記溶離液供給口D2から前記溶離液d2を供給し、
前記溶離液供給口D3から前記溶離液d3を供給し、
前記溶離液供給口D4から前記溶離液d4を供給し、
セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B3-1ex)における溶離液供給口D2、D3及びD4は、上記サブステップ(B2-1ex)における溶離液供給口D2、D3及びD4と同じである。
【0075】
上記サブステップ(B1’-1)の一例として、下記サブステップ(B1’-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B1’-1)はサブステップ(B1’-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B1’-1ex)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D3として、該溶離液供給口D3から4種の溶離液のうち脱着力が3番目に強い溶離液d3を供給し、
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D4として、該溶離液供給口D4から4種の溶離液のうち脱着力が最も弱い溶離液d4を供給し、
セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B1’-1ex)における溶離液供給口D2は、上記サブステップ(B3-1ex)における溶離液供給口D2と同じである。また、このサブステップ(B1’-1ex)における溶離液供給口D3は、上記サブステップ(B3-1ex)における溶離液供給口D4と同じ配管に設けられている。
【0076】
上記サブステップ(B2’-1)の一例として、下記サブステップ(B2’-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B2’-1)はサブステップ(B2’-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B2’-1ex)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D1として、該溶離液供給口D1から4種の溶離液のうち脱着力が最も強い溶離液d1を供給し、
セクション3の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして、該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、
セクション4の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
前記溶離液供給口D3から前記溶離液d3を供給し、
前記溶離液供給口D4から前記溶離液d4を供給し、
前記弱吸着性画分抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B2’-1ex)における溶離液供給口D1は、上記サブステップ(B1’-1ex)における溶離液供給口D2と同じ配管に設けられている。また、このサブステップ(B2’-1ex)における溶離液供給口D3及びD4は、上記サブステップ(B1’-1ex)における溶離液供給口D3及びD4と同じである。
【0077】
上記サブステップ(B3’-1)の一例として、下記サブステップ(B3’-1ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B3’-1)はサブステップ(B3’-1ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B3’-1ex)>
前記溶離液供給口D2から前記溶離液d2を供給し、
前記溶離液供給口D3から前記溶離液d3を供給し、
前記溶離液供給口D4から前記溶離液d4を供給し、
セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B3’-1ex)における溶離液供給口D2、D3及びD4は、上記サブステップ(B2’-1ex)における溶離液供給口D2、D3及びD4と同じである。
【0078】
上記ステップ(B)が上記サブステップ(B1-1ex)、(B2-1ex)、(B3-1ex)、(B1’-1ex)、(B2’-1ex)及び(B3’-1ex)を順に行う場合のフロー図を
図2に示す。
図2中、四角の囲いはセクション1つ分を示し、当該囲いの中の数字はセクションの番号(左から順に付番した)を示す。
【0079】
上記サブステップ(B1-1ex)、(B2-1ex)、(B3-1ex)、(B1’-1ex)、(B2’-1ex)及び(B3’-1ex)を順に行うステップ(B)の終了後、サブステップ(B3’-1ex)の弱吸着性画分抜出口Aの位置をそのままに、弱吸着性画分抜出口Aの位置を基準として、各位置の相対的な位置関係を保ったまま、溶離液供給口D2、中吸着性画分抜出口B、原液供給口Fを構築し、次サイクルのサブステップ(A1-1ex)を行う。次サイクルにおけるステップ(A)及びステップ(B)のフロー図を
図3に示す。
図2に示すサイクルと比べて、
図3に示す次サイクルでは全ての供給口及び抜出口が、その相対的な位置関係を保ったまま1セクション分上流側(3セクション分下流側)に移動している。
【0080】
-実施形態2-
実施形態2は、単位充填塔を3つ以上有する循環系を用いる。そして、この循環系を、各セクションが少なくとも1つの単位充填塔を有するように上流側から下流側に向けて円環状に連続した3つのセクション1~3に区切ったものを想定する。また、溶離液として、脱着力が制御された4種の溶離液d-I~d-IVを用いる。
この実施形態2においては、ステップ(A)として下記サブステップ(A1-2)、(A2-2)、(A3-2)及び(A4-2)を順に行う。
【0081】
<サブステップ(A1-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を前記原液供給口Fとして該原液供給口Fから原液を供給し、セクション3の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0082】
<サブステップ(A2-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Bとして該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション3の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション1及び2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
このサブステップ(A2-2)における溶離液供給口D-IVは、上記サブステップ(A1-2)における原液供給口Fと同じ配管に設けられている。
【0083】
<サブステップ(A3-2)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション1の下流側末端を前記抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション3の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0084】
<サブステップ(A4-2)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IVとして該溶離液供給口D-IVから溶離液d-IVを供給し、セクション1の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0085】
上記サブステップ(A1-2)の一例として、下記サブステップ(A1-2ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A1-2)はサブステップ(A1-2ex)に限定されるものではない。
なお、下記例では溶離液d3より溶離液d4の方が脱着力が弱いものとして記載するが、溶離液d3と溶離液d4の脱着力は同じであってもよい。以下の例でも同様である。
<サブステップ(A1-2ex)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D1から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
セクション2の下流側末端を中吸着性画分抜出口Bとして、該抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、
セクション3の上流側末端を原液供給口Fとして、該原液供給口Fから原液を供給し、
セクション3の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
【0086】
上記サブステップ(A2-2)の一例として、下記サブステップ(A2-2ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A2-2)はサブステップ(A2-2ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(A2-2ex)>
前記溶離液供給口D2から前記溶離液d2を供給し、
前記中吸着性画分抜出口Bから中吸着性画分を抜き出し、
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D4として、該溶離液供給口D4から4種の溶離液のうち脱着力が最も弱い溶離液d4を供給し、
前記弱吸着性画分抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(A2-2ex)における溶離液供給口D4は、上記サブステップ(A1-2ex)における原液供給口Fと同じ配管に設けられている。また、このサブステップ(A2-2ex)における溶離液供給口D2は、上記サブステップ(A1-2ex)における溶離液供給口D2と同じである。
【0087】
上記サブステップ(A3-2)の一例として、下記サブステップ(A3-2ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A3-2)はサブステップ(A3-2ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(A3-2ex)>
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D1として、該溶離液供給口D1から4種の溶離液のうち脱着力が最も強い溶離液d1を供給し、
セクション1の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして、該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D3として、該溶離液供給口D3から4種の溶離液のうち脱着力が3番目に強い溶離液d3を供給し、
前記弱吸着性画分抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(A3-2ex)における溶離液供給口D1は、上記サブステップ(A2-2ex)における溶離液供給口D2と同じ配管に設けられている。またこのサブステップ(A3-2ex)における溶離液供給口D3は、上記サブステップ(A2-2ex)における溶離液供給口D4と同じ配管に設けられている。
【0088】
上記サブステップ(A4-2)の一例として、下記サブステップ(A4-2ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(A4-2)はサブステップ(A4-2ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(A4-2ex)>
前記溶離液供給口D2から前記溶離液d2を供給し、
前記溶離液供給口D3から前記溶離液d3を供給し、
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D4として、該溶離液供給口D4から4種の溶離液のうち脱着力が最も弱い溶離液d4を供給し、
セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(A4-2ex)における溶離液供給口D2及びD3は、上記サブステップ(A3-2ex)における溶離液供給口D2及びD3と同じである。
【0089】
上記ステップ(A)が上記サブステップ(A1-2ex)、(A2-2ex)、(A3-2ex)及び(A4-2ex)を順に行う場合のフロー図を
図4に示す。
図4中、四角の囲いはセクション1つ分を示し、当該囲いの中の数字はセクションの番号(左から順に付番した)を示す。
【0090】
この実施形態2においては、ステップ(B)において下記サブステップ(B1-2)及び(B2-2)を行う。
【0091】
<サブステップ(B1-2)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D-Iとして該溶離液供給口D-Iから溶離液d-Iを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Cとして該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション1の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を、セクション2を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0092】
<サブステップ(B2-2)>
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D-IIとして該溶離液供給口D-IIから溶離液d-IIを供給し、セクション1の上流側末端を溶離液供給口D-IIIとして該溶離液供給口D-IIIから溶離液d-IIIを供給し、セクション2の下流側末端を前記抜出口Aとして該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出すことにより、
セクション3を流通する溶離液の脱着力を最も強くし、
セクション1を流通する溶離液の脱着力を、セクション3を流通する溶離液の脱着力よりも弱くし、
セクション2を流通する溶離液の脱着力を、セクション1を流通する溶離液の脱着力よりも弱くする。
【0093】
上記サブステップ(B1-2)の一例として、下記サブステップ(B1-2ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B1-2)はサブステップ(B1-2ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B1-2ex)>
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D1として、該溶離液供給口D1から4種の溶離液のうち脱着力が最も強い溶離液d1を供給し、
セクション2の下流側末端を強吸着性画分抜出口Cとして、該抜出口Cから強吸着性画分を抜き出し、
セクション3の上流側末端を溶離液供給口D2として、該溶離液供給口D2から4種の溶離液のうち脱着力が2番目に強い溶離液d2を供給し、
セクション1の上流側末端を溶離液供給口D3として、該溶離液供給口D3から4種の溶離液のうち脱着力が3番目に強い溶離液d3を供給し、
セクション1の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B1-2ex)における溶離液供給口D1、D2及びD3は、それぞれ上記サブステップ(A4-2ex)における溶離液供給口D2、D3及びD4と同じ配管に設けられている。
【0094】
上記サブステップ(B2-2)の一例として、下記サブステップ(B2-2ex)を実施するサブステップが挙げられるが、上記サブステップ(B2-2)はサブステップ(B2-2ex)に限定されるものではない。
<サブステップ(B2-2ex)>
前記溶離液供給口D2から前記溶離液d2を供給し、
前記溶離液供給口D3から前記溶離液d3を供給し、
セクション2の上流側末端を溶離液供給口D4として、該溶離液供給口D4から4種の溶離液のうち脱着力が最も弱い溶離液d4を供給し、
セクション2の下流側末端を弱吸着性画分抜出口Aとして、該抜出口Aから弱吸着性画分を抜き出す。
このサブステップ(B2-2ex)における溶離液供給口D2及びD3は、上記サブステップ(B1-2ex)における溶離液供給口D2及びD3と同じである。
【0095】
上記ステップ(B)が上記サブステップ(B1-2ex)及び(B2-2ex)を順に行う場合のフロー図を
図4に示す。
図4中、四角の囲いはセクション1つ分を示し、当該囲いの中の数字はセクションの番号(左から順に付番した)を示す。
【0096】
上記サブステップ(B1-2ex)及び(B2-2ex)を順に行うステップ(B)の終了後、サブステップ(B2-2ex)の弱吸着性画分抜出口Aの位置をそのままに、弱吸着性画分抜出口Aの位置を基準として、各位置の相対的な位置関係を保ったまま、溶離液供給口D2、中吸着性画分抜出口B、原液供給口Fを構築し、次サイクルのサブステップ(A1-2ex)を行う。次サイクルにおけるステップ(A)及びステップ(B)のフロー図を
図5に示す。
図4に示すサイクルと比べて、
図5に示す次サイクルでは全ての供給口及び抜出口が、その相対的な位置関係を保ったまま1セクション分上流側(2セクション分下流側)に移動している。
【0097】
本発明の方法において、目的の液を目的の場所に供給したり、目的の液を目的の場所から抜き出したりするのは、循環系に設けた各所のポンプの作動、各所の弁の開閉を適宜に調整して行うことができる。すなわち、循環系における目的の流体の供給や目的の画分の抜き出しの方法それ自体は公知である。また、各液の供給流量や抜き出しの流量も、処理効率等の目的に応じて適宜に設定することができる。
【0098】
本発明の方法において、精製対象成分は強吸着性成分、中吸着性成分、弱吸着性成分のいずれであってもよいが、なかでも中吸着性成分を精製するのに好適な方法である。本発明の方法は、例えば、タンパク質の精製に好適に用いることができる。本発明の方法により中吸着性成分を高純度に得ることができるため、目的のタンパク質の他にその分解物や凝集体を含む原液から、目的のタンパク質を高純度に得るために好適な方法である。
上記タンパク質に特に制限はなく、例えば、抗体、ペプチド、核酸、融合蛋白質等の生体高分子を精製対象成分とすることができる。本発明の方法は、抗体の精製に用いることが好ましい。「抗体」という用語は、インタクトな抗体、または特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその結合断片を指す。結合断片には、限定されないが、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、および一本鎖抗体が含まれる。
本発明において「抗体」とは、天然に存在する抗体でもよく、キメラ抗体であってもよく、酵素等によりフラグメント化された抗体であってもよい(例えば、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント)。また、単鎖抗体やその2量体(ダイアボディー)もしくは3量体(トリアボディー)、又はミニボディーも含まれる。また、シングルドメイン抗体であってもよい。なお、これらは一例であり、抗原に対して特異的な結合能を有するタンパク質ないしその誘導体はすべて、本発明における抗体の概念に含まれるものとする。
本発明の方法で高純度化した抗体は、抗体医薬としての適用も可能である。すなわち、本発明の方法を適用して原液中に含まれる抗体を分取することにより、抗体医薬の製造方法を提供することができる。より具体的には、本発明の方法により、抗体産生細胞の培養液及び/又は抗体産生細胞の抽出液を原液とし、その中に含まれる抗体を分取することにより、抗体医薬を得ることができる。本発明において「抗体産生細胞の培養液」や「抗体産生細胞の抽出液」は、抗体産生細胞の培養液や抗体産生細胞の抽出液を、遠心分離処理やクロマト分離処理等の各種処理に付して、ある程度分画ないし精製等された状態としたものを包含する意味である。
【0099】
本発明の方法において、単位充填塔に充填される吸着剤は、精製対象成分に応じて適宜に選択されるものであり、種々の吸着剤を採用することができる。例えば、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂、合成吸着剤、ゼオライト、シリカゲル、及び官能基修飾されたシリカゲル(好ましくはオクタデシルシリル修飾シリカゲル)、また、その他のゲルろ過クロマトグラフィー材、アフィニティ―吸着材を吸着剤として用いることができる。
精製対象成分がタンパク質の場合、吸着剤はイオン交換樹脂が好ましい。なかでも陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。
【0100】
本発明の擬似移動層方式クロマト分離システムは、本発明の方法を実施するためのシステムである。すなわち、本発明の擬似移動層方式クロマト分離システムは、上述した循環系の構成を有し、当該循環系が、上述した第一プロセスの作動と第二プロセスの作動、またはステップ(A)の作動とステップ(B)の作動を順に繰り返すことができるシステムである。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0102】
[原液の調製]
ヒトのイムノグロブリンG1(IgG1)を産生する細胞を培養し、その培養液の上澄みのpHと導電率を調整したものを原液とした。この上澄み中に含まれる抗体と、不純物の含有量は下記表1に記載の通りである。下表中、抗体は分子量150000付近をピークとする分子量が50000以上300000未満の画分に含まれるタンパク質とし、分子量50000未満の画分に含まれるものをLMWとし、300000以上の画分に含まれるものをHMWとした。さらにLMWのうち、分子量の大きい画分をLMW-1、小さい画分をLMW-2とした。同様にHMWのうち、分子量の大きい画分をHMW-1、小さい画分をHMW-2とした。下記成分組成は、分析カラム(東ソーTSKgel G3000SWXL)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定した。
【0103】
【0104】
[単位充填塔(カラム)に用いる吸着剤]
吸着剤として陽イオン交換樹脂(商品名:POROS(登録商標)XS Resin、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いた。
【0105】
[溶離液]
下記A液及びB液を用いて下記表2に記載の導電率となるように溶離液d1~d4を調製した。なお、原液(F)の導電率は5.0mS/cmであり、pHは6.0であった。
<A液>
50mM MESバッファー pH6.0
<B液>
NaClを2.0M(117g/L)の濃度で含有する50mM MESバッファー pH6.0
【0106】
【0107】
-実施例1-
<運転条件>
下記表3に記載の工程1~10を順に行った。工程1~10のフロー図を
図2に示す。
図2中、下記工程1~10はそれぞれサブステップ(A1-1)~(B3’-1)に対応する。なお、下記表3中、原液供給口Fからは原液(F)を、溶離液供給口D1~D4からは溶離液d1~d4を供給した。
【0108】
【0109】
<結果>
-回収率-
5サイクル目において回収した中吸着性画分中の抗体の抗体濃度、抗体量、純度、及び回収率を下記表4に示す。抗体濃度は分析カラム(商品名:TSKgel G3000SWXL、東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により抗体量毎の検量線を作成し、HPLCの抗体の面積値により算出した。また抗体量は、前記算出により得られた抗体濃度と回収した液量との積により算出した。抗体の回収率は、100×[画分中の抗体量]/[原液中の抗体量]により算出した。また、抗体の純度は分析カラム(商品名:TSKgel G3000SWXL、東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の抗体における面積値/全成分の面積値により算出した。
【0110】
【0111】
表4より明らかなように、高純度に精製した抗体を高効率に回収できることが示された。
【0112】
-実施例2-
図4に示すサブステップの組み合わせを採用し、擬似移動層方式により原液のクロマト分離を試みた。すなわち、単位充填塔を3本とし、上記工程1~4、6及び7(ただし、当該工程3及び6において溶離液供給口D4から溶離液d4の供給を行わなかった)を順に行う条件とした。なお、上記工程1~4、6及び7(ただし、工程3及び6で溶離液d4の供給は行わない)は、それぞれ
図4に示すサブステップ(A1-2)~(B2-2)に対応する。各液の流速と供給時間を調整(最適化)してクロマト分離を行った結果、本実施形態においても、実施例1と同様に高純度(純度98%以上)に精製した抗体を高効率(回収率96%以上)に回収できることがわかった。
【0113】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0114】
本願は、2022年3月22日に日本国で特許出願された特願2022-045536に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0115】
100 循環系
10a、10b、10c、10d 単位充填塔(カラム)
Ab 吸着剤
R1、R2、R3、R4 遮断弁
2a、2b、2c、2d 弱吸着性画分抜出ライン
A1、A2、A3、A4 弱吸着性画分抜出弁
3a、3b、3c、3d 中吸着性画分抜出ライン
B1、B2、B3、B4 中吸着性画分抜出弁
4a、4b、4c、4d 強吸着性画分抜出ライン
C1、C2、C3、C4 強吸着性画分抜出弁
T1、T2、T3、T4 逆止弁
1 配管
2J 弱吸着性画分合流管
3J 中吸着性画分合流管
4J 強吸着性画分合流管
6 原液タンク
7 原液
8a、8b、8c、8d 溶離液タンク
9a、9b、9c、9d 溶離液
11 原液供給ライン
11a、11b、11c、11d 原液供給分岐ライン
F1、F2、F3、F4 原液供給弁
12、13、14、15 溶離液供給ライン
12a、12b、12c、12d 溶離液供給分岐ライン
13a、13b、13c、13d 溶離液供給分岐ライン
14a、14b、14c、14d 溶離液供給分岐ライン
15a、15b、15c、15d 溶離液供給分岐ライン
E1a、E2a、E3a、E4a 溶離液供給弁
E1b、E2b、E3b、E4b 溶離液供給弁
E1c、E2c、E3c、E4c 溶離液供給弁
E1d、E2d、E3d、E4d 溶離液供給弁
P1 循環ポンプ
P2 原液供給ポンプ
P3、P4、P5、P6 溶離液供給ポンプ