(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ロボットの制御方法、ロボットの制御装置、検査システム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2019215370
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】柴田 優弥
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-028227(JP,A)
【文献】特開2019-150915(JP,A)
【文献】特開平08-187687(JP,A)
【文献】特開2019-084650(JP,A)
【文献】特開2010-137299(JP,A)
【文献】特開平03-158701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B65G 57/00-57/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成されている孔部を栓ゲージを用いて検査するロボットの制御方法であって、
前記ロボットは、手先側に
、前記ワークを前記栓ゲージの先端位置から所定の確認位置に移動させ、前記ワークを前記確認位置から前記孔部の深さに相当する所定の目標位置に到達
させるまでに1回転以上回転可能な回転速度で前記ワークを保持するものであり、手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサが設けられており、
前記栓ゲージは、前記ロボットの動作範囲内の予め定められた位置に固定されており、
前記ロボットを、
前記回転速度で前記ワークを回転させつつ、前記力覚センサで検知される外力が減少する方向に前記ワークを移動させながら前記孔部に前記栓ゲージを挿入する回転挿入工程と、
前記栓ゲージが前記孔部に挿入された状態で前記ワークが
前記目標位置に到達したか否かに基づいて前記孔部の良否を判定する判定工程と、を含めて制御するロボットの制御方法。
【請求項2】
前記孔部に前記栓ゲージの先端が挿入される接触位置まで前記ワークを移動させた段階において前記力覚センサで外力が検知された場合には、前記力覚センサで外力が検知された位置に対して前記栓ゲージの軸を挟んだ反対側に前記ワークを傾けつつ、前記力覚センサで検知される外力が減少する方向に前記ワークを移動させながら前記孔部に前記栓ゲージを挿入する探り工程を含む請求項1記載のロボットの制御方法。
【請求項3】
前記探り工程は、前記ワークを前記栓ゲージの
前記先端位置から
前記確認位置に移動させるまで行われる請求項2記載のロボットの制御方法。
【請求項4】
前記栓ゲージは、先端側に、前記孔部の最小寸法を検査するための小径部が設けられており、前記小径部の後端側に、相対的に直径が大きく前記孔部の最大寸法を検査するための大径部が設けられており、
前記判定工程では、前記孔部の最小寸法および最大寸法の双方の検査結果に基づいて前記孔部の良否を判定する請求項1から3のいずれか一項記載のロボットの制御方法。
【請求項5】
ワークに形成されている孔部を栓ゲージを用いて検査するロボットの制御装置であって、
前記ロボットは、手先側に
、前記ワークを前記栓ゲージの先端位置から所定の確認位置に移動させ、前記ワークを前記確認位置から前記孔部の深さに相当する所定の目標位置に到達
させるまでに1回転以上回転可能な回転速度で前記ワークを保持するものであり、手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサを備えており、
前記栓ゲージは、前記ロボットの動作範囲内の予め定められた位置に固定されており、
前記孔部が形成されている
前記ワークを
前記回転速度で回転させつつ、前記力覚センサで検知される外力が減少する方向に前記ワークを移動させながら前記孔部に前記栓ゲージを挿入する回転挿入動作を行うように前記ロボットを制御する制御部と、
前記栓ゲージが前記孔部に挿入された状態で前記ワークが
前記目標位置に到達したか否かに基づいて前記孔部の良否を判定する判定部と、
を備えるロボットの制御装置。
【請求項6】
ロボットの動作範囲内の予め定められた位置に固定されている栓ゲージと、
孔部が形成されているワークを、手先側に
、前記栓ゲージの先端位置から所定の確認位置に移動させ、前記ワークを前記確認位置から前記孔部の深さに相当する所定の目標位置に到達
させるまでに1回転以上回転可能な回転速度で保持するロボットと、
前記ロボットに設けられ、前記ロボットの手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサと、
前記ワークを
前記回転速度で回転させつつ、前記力覚センサで検知される外力が減少する方向に前記ワークを移動させながら前記孔部に前記栓ゲージを挿入する回転挿入動作を行うように前記ロボットを制御する制御部と、前記栓ゲージが前記孔部に挿入された状態で前記ワークが
前記目標位置に到達したか否かに基づいて前記孔部の良否を判定する判定部とを有する制御装置と、
を備える検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成されている孔部を栓ゲージにより検査するロボットの制御方法、ロボットの制御装置、および、検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに形成されている孔部を検査する際にロボットを利用することがある。例えば特許文献1では、ロボットに力覚センサを設け、その力覚センサの検出値に基づいて検査ゲージを移動させながら検査ゲージを穴に嵌合させて寸法を検査することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットに力覚センサを設けて位置を補正できるようにしたとしても、検査のためにはゲージを正しく孔部に挿入する必要があり、予めゲージを孔部との位置関係を精度よくティーチングしておく必要があった。そして、従来では、ベテランの作業者であっても、姿勢制御用のパラメータやティーチング位置を何度も調整し直すなどの多大な時間と労力を掛けて安定した検査を行うことができる動作を実現していた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、寸法公差が小さい孔部であっても検査を迅速に行うことができるロボットの制御方法、ロボットの制御装置、および、検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のロボットの制御方法は、手先側にワークを保持可能なロボットの手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサが設けられており、栓ゲージがロボットの動作範囲内の予め定められた位置に固定されている状態において、ワークを回転させつつ、力覚センサで検知される外力が減少する方向にワークを移動させながら孔部に栓ゲージを挿入する回転挿入工程と、栓ゲージが孔部に挿入された状態でワークが所定の目標位置に到達したか否かに基づいて孔部の良否を判定する判定工程と、を含む。
【0007】
栓ゲージを用いて孔部を検査する場合、栓ゲージを孔部に挿入することが必要になる。その場合、力覚センサを用いて外力が減少する側に位置を補正することにより、栓ゲージの挿入を補助することが可能になると考えられる。しかし、単純に外力が減少する方向に移動させる制御を繰り返すと、ロボットの手先が直線上を往復する振り子のような振動的な動きをしながら、栓ゲージが孔部に挿入されることになる。
【0008】
その場合、剛性が高い材質で形成され、また、実施形態のように小径部の上端がフラットな形状となっている栓ゲージが孔部の内壁と噛み合って挿入できなくなり、検査ができなくなるおそれがある。
【0009】
そこで、ワークを回転させつつ、力覚センサで検知される外力が減少する方向にワークを移動させながら孔部に栓ゲージを挿入する回転挿入工程を含む制御方法を採用する。この場合、孔部は、その中心位置が常に外力が減少する方向、すなわち、栓ゲージの中心軸に向かって移動することになる。換言すると、ワークを回転させることにより、孔部の中心位置を栓ゲージの中心軸に徐々に近づけながら栓ゲージを挿入することが可能になる。
【0010】
これにより、寸法公差が小さい孔部と栓ゲージとが干渉してしまうおそれを低減しつつ、栓ゲージを孔部に挿入することが可能になる。また、実動作時に孔部と栓ゲージとの位置関係を補正することができることから、孔部が形成されているワークの載置位置が微妙にずれるような実際の現場においても検査を行うことができる。したがって、栓ゲージを用いて孔部の検査を迅速に行うことができる。
【0011】
請求項2記載のロボットの制御方法では、孔部に栓ゲージの先端を挿入する段階において、力覚センサで外力が検知された位置に対して栓ゲージの軸を挟んだ反対側にワークを傾けつつ、力覚センサで検知される外力が減少する方向にワークを移動させながら孔部に栓ゲージを挿入する探り工程を含む制御方法によりロボットを制御する。
【0012】
寸法公差が小さい孔部を検査対象とする場合、栓ゲージの挿入時に、栓ゲージが孔部の縁に引っ掛かる可能性が高くなる。その場合、仮に事前に厳密な位置決めをしていたとしても、ワークの載置位置が微妙にずれるような実際の現場においては、栓ゲージが孔部の縁に引っ掛かるおそれがある。
【0013】
そこで、栓ゲージの先端を挿入する際、外力が検知された位置に対して反対側にワークを傾ける。これは、栓ゲージの上端のある位置が孔部の縁に引っ掛かった場合、その位置と中心軸を挟んだ反対側の位置は、その上方が孔部の幅の範囲内にあると考えられるためである。これにより、検査の基本となる栓ゲージの孔部への挿入について、挿入ミスが起こる可能性を低減しつつ、容易に栓ゲージを孔部に挿入することができる。
【0014】
請求項3記載のロボットの制御方法では、探り工程は、ワークが、栓ゲージの先端位置から所定の確認位置に移動するまで行われる。寸法公差が小さい孔部を検査対象とする場合、栓ゲージと孔部との隙間は非常に小さいと考えられる。そのため、栓ゲージの先端側がある程度挿入できれば、すなわち、ワークが確認位置まで移動できれば、その状態のまま栓ゲージを最後まで挿入できると考えられる。これにより、栓ゲージと孔部とが干渉するおそれを低減することができる。
【0015】
請求項4記載のロボットの制御方法では、栓ゲージは、先端側に、孔部の最小寸法を検査するための小径部が設けられており、小径部の後端側に、相対的に直径が大きく孔部の最大寸法を検査するための大径部が設けられており、判定工程では、孔部の最小寸法および最大寸法の双方の検査結果に基づいて孔部の良否を判定する。これにより、1回の検査サイクルにより、孔部の最小径と最大径とを検査することができ、効率よく検査することができる。
【0016】
請求項5記載のロボットの制御装置は、ロボットの手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサを備え、栓ゲージがロボットの動作範囲内の予め定められた位置に固定されている場合において、孔部が形成されているワークを回転させつつ、力覚センサで検知される外力が減少する方向にワークを移動させながら孔部に栓ゲージを挿入する回転挿入動作を行うようにロボットを制御する制御部と、栓ゲージが孔部に挿入された状態でワークが所定の目標位置に到達したか否かに基づいて孔部の良否を判定する判定部とを備える。
【0017】
このような構成により上記した制御方法を実施する制御装置によっても、実動作時に孔部と栓ゲージとの位置関係を補正することができることから、孔部が形成されているワークの載置位置が微妙にずれるような実際の現場においても検査を行うことができる、栓ゲージを用いて孔部の検査を迅速に行うことができるなど、制御方法と同様の効果を得ることができる。
【0018】
請求項6記載の検査システムは、ロボットと、ロボットに設けられ、ロボットの手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサと、ロボットの動作範囲内の予め定められた位置に固定されている栓ゲージと、ワークを回転させつつ、力覚センサで検知される外力が減少する方向にワークを移動させながら孔部に栓ゲージを挿入する回転挿入動作を行うようにロボットを制御する制御部と、栓ゲージが孔部に挿入された状態でワークが所定の目標位置に到達したか否かに基づいて孔部の良否を判定する判定部とを有する制御装置とを備える。
【0019】
このような検査システムによっても、実動作時に孔部と栓ゲージとの位置関係を補正することが可能となり、孔部が形成されているワークの載置位置が微妙にずれるような実際の現場においても検査を行うことができる、栓ゲージを用いて孔部の検査を迅速に行うことができるなど、上記した制御方法や制御装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】検査システム、ロボットの制御装置の構成を模式的に示す図
【
図2】ワークの孔部を栓ゲージに挿入する態様を模式的に示す図
【
図3】ロボットが振動的に動作する態様を態様を模式的に示す図
【
図6】栓ゲージと孔部とが干渉した状態を模式的に示す図
【
図8】ワークが停止位置にある状態を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の検査システム1は、ロボット2と、ロボット2を制御する制御装置3と、ロボット2の先端側に設けられている力覚センサ4と、ロボット2の動作範囲内の予め定められた位置に固定されている栓ゲージ5とを備えている。
【0022】
ロボット2は、水平多関節型のいわゆる6軸ロボットであり、設置面6に設置されるベース2aと、設置面6に垂直となる第1軸(J1)を中心に回転可能に設けられている第1アーム2bと、第1軸と垂直な第2軸(J2)を中心に回転可能に設けられている第2アーム2cと、第2軸と垂直な第3軸(J3)を中心に回転可能に設けられている第3アーム2dと、第3軸と垂直な第4軸(J4)を中心に第3アーム2dに対して同軸で回転可能に設けられている第4アーム2eと、第4軸と垂直な第5軸(J5)を中心に回転可能に設けられている第5アーム2fと、第5軸と垂直な第6軸(J6)を中心に回転可能に設けられているフランジ2gとを備えている。本実施形態の場合、フランジ2gは、その回転範囲に制限がない構成となっている。
【0023】
以下、フランジ2gが設けられている側を、ロボット2の手先と称して説明する。また、以下では、ロボット2の設置面6に対して垂直となる1軸をZ軸、そのZ軸に直交して設置面6に平行な平面を形成する2軸をX軸およびY軸と称して説明する。本実施形態の場合であれば、
図1に示すロボット2の第1軸がZ軸、図示左右方向がX軸、紙面に垂直な方向がY軸となっている。また、第1軸が設置面6と交わる点が、ロボット2の座標系における原点となる。
【0024】
制御装置3は、制御部3aおよび判定部3bを備えている。制御部3aは、図示しないマイクロコンピュータで構成されており、ロボット2が備える図示しないモータを駆動するための制御指令を生成および出力することにより、ロボット2の動作つまりはロボット2の姿勢を制御する。判定部3bは、詳細は後述するが、
図2に示すワーク7に形成されている孔部10の良否を、栓ゲージ5が孔部10に挿入された状態でワーク7が所定の目標位置に到達できたかに基づいて判定する。なお、本実施形態では、判定部3bは、制御部3aでプログラムを実行することによりソフトウェアで実現されている。
【0025】
力覚センサ4は、
図1および
図2に示すように、概ね円筒状の外形を有しており、その中心軸がロボット2の第6軸と一致する状態で、ロボット2のフランジ2gに取り付けられている。この力覚センサ4は、互いに直交する3軸方向に作用する力成分と、各軸回りに作用するトルク成分とを検知することで、ロボット2の手先に加わる外力の向きと大きさとを6方向の力成分で検知する。
【0026】
力覚センサ4には、フランジ2gと反対側に、ワーク7を把持するためのツール8が取り付けられている。このツールは、2つの把持部8a間の距離を変化させることにより、ワーク7を把持する。このため、力覚センサ4は、そのワーク7あるいはツール8に加わった外力の向きと大きさを、ロボット2の手先に加わる外力の向きと大きさとして検知することになる。本実施形態の場合であれば、力覚センサ4は、ロボット2の第6軸に沿った1方向とその第6軸に直交する2方向とに作用する力成分、および、それらの軸回りに作用するトルク成分を検知する。
【0027】
栓ゲージ5は、ロボット2の動作範囲内であって、本実施形態では設置面6と平行に設けられている載置面9に固定されている。この栓ゲージ5は、
図2に示すようなワーク7に形成されている孔部10の直径(D)や深さが、所定の寸法公差内であるかを検査するために用いられる。そのため、栓ゲージ5は、寸法精度を保つために剛性が高い材料で形成されている。なお、本実施形態の場合、孔部10として貫通孔を想定しているため、孔部10の深さは、その孔部10が形成されている部位の厚みに相当する。また、孔部10は、開口側にいわゆる面取りが施されておらず断面視にてフラットな形状となっている。
【0028】
さて、ワーク7に形成される孔部10には、直径の最小値と最大値とが寸法公差として設定されている。そのため、栓ゲージ5は、図示上方となる先端側に、相対的に直径が小さい棒状に形成されている小径部5aが設けられており、その小径部5aの図示下方となる後端側に、相対的に直径が大きい棒状の大径部5bが設けられている。
【0029】
そして、小径部5aは、孔部10の最小値を検査できる直径(D1)に形成されており、大径部5bは、孔部10に許容される最大値を検査できる直径(D2)に設定されている。また、栓ゲージ5は、その中心軸(JG)が載置面9に垂直なZ軸方向に沿った状態で設けられている。また、小径部5aの長(H1)は、孔部10の深さよりも長く形成されている。これにより、通り側となる小径部5aが孔部10に挿入でき、止まり側となる大径部5bが孔部10に挿入できなければ、孔部10が寸法公差の範囲内で形成されていると判定できる。また、小径部5aの上端は、いわゆる面取りが施されておらず、断面視にてフラットな形状となっている。
【0030】
また、栓ゲージ5は、その全長(H2)が固定されており、載置面9から図示上方側の先端までの距離となっている。このため、ロボット2の座標系のXY平面における栓ゲージ5の中心軸の位置を示すX座標およびY座標、ならびに、Z軸方向における栓ゲージ5の先端となる先端位置に相当する上端位置を示すZ座標は、予め把握しておくことができる。なお、栓ゲージ5の構成は一例であり、大径部5bの図示下方に取り付け構造を有するものなどを採用することもできる。
【0031】
そして、検査システム1は、ロボット2を用いてツール8でワーク7を把持し、ワーク7を栓ゲージ5の上方まで移動させ、ワーク7の孔部10に栓ゲージ5を挿入することによって孔部10を検査する。
【0032】
次に、上記した構成の作用について説明する。
栓ゲージ5を用いて孔部10を検査するためには、ロボット2に力覚センサ4を設け、力覚センサ4で検知した外力を減少させる側に位置を補正することにより、栓ゲージ5の挿入を補助することが可能になると考えられる。
【0033】
しかし、力覚センサ4を設けて位置を補正できるようにしたとしても、ゲージが正しく孔部10に挿入されるように、ベテランの作業者であっても、姿勢制御用のパラメータやティーチング位置を何度も調整し直すなどの多大な時間と労力を掛けて安定した検査を行うことができる動作を実現していた。このパラメータは、例えば検知された外力に対してどの向きにどの程度の姿勢変化をさせるかといったものである。
【0034】
さらに、寸法公差が小さい孔部10を検査対象とする場合には、以下に述べるように栓ゲージ5が挿入できなくなるという別の問題が発生するおそれがある。具体的には、例えば
図3に示すように栓ゲージ5を孔部10に挿入する際に点P1にて両者が干渉つまりは接触した場合、力覚センサ4は、矢印F1にて示す外力を検知する。このとき、外力は、栓ゲージ5の中心軸と点P1とを通る向きで検出される。
【0035】
そして、外力が検知されると、制御装置3は、外力が小さくなるようにロボット2を制御する。このとき、本実施形態であれば栓ゲージ5が固定され、孔部10つまりはワーク7が移動する構成であるため、制御装置3は、外力が小さくなるように、外力の向きに沿って矢印V1にて示す栓ゲージ5の径方向外側に向かって孔部10を移動させることになる。
【0036】
しかし、寸法公差が小さい孔部10が検査対象である場合、栓ゲージ5と孔部10との隙間が非常に小さいことが想定される。例えば孔部10の寸法公差がJIS B 0401のはめあい公差でいうH7相当であった場合、栓ゲージ5と孔部10の内壁との隙間は極めて小さくなることが想定される。なお、H7相当の許容範囲は一例であり、検査システム1の対象を限定する意図はなく、他のはめあい公差の孔部10であっても対象とすることができる。
【0037】
そのため、外力が小さくなる方向に孔部10を移動させると、点P1とは栓ゲージ5を挟んだ反対側の点P2で孔部10が栓ゲージ5に干渉する可能性がある。そして、点P2で干渉した際に矢印F2で示す外力が生じると、その外力が減少する方向に孔部10が移動するように制御されるため、再び反対側の点P3で干渉する可能性がある。その場合、矢印F3にて示す外力が検知されることから、再びその外力が減少する方向への移動が行われることになる。
【0038】
このため、外力が減少する方向へ単純に移動させる態様の制御が繰り返されると、ロボット2の手先が振り子のように直線上を往復する振動的な動きをしながら栓ゲージ5を孔部10に挿入することになる。しかし、そのような振動的な動きが生じると、剛性が高い材質で形成され、また、小径部5aの上端がフラットな形状となっている栓ゲージ5は、孔部10の内壁に噛み合って挿入できなくなり、検査ができなくなるおそれがある。
【0039】
勿論、外力が検知された際、ロボット2を例えば最小動作単位といった微小距離で外力が検知されなくなる位置まで移動させれば、栓ゲージ5と孔部10とが干渉しない状態で挿入可能になると考えられる。しかし、その場合には、外力が検知されなくなる位置まで移動させるために時間を掛かって検査時間が長くなると予想される。そして、ロボット2が繰り返し作業を行うものであることに鑑みれば、1回の検査時間が長くなることは、最終的に大きな作業効率の低下を招くことになる。
【0040】
そこで、本実施形態の検査システム1および制御装置3では、以下に述べる制御方法を採用することにより、寸法公差が小さい孔部10の検査を迅速に行うことができるようにしている。なお、以下の処理は制御部3aおよび判定部3bによって行われるものであるが、説明の簡略化のために、制御装置3を主体にして説明する。
【0041】
制御装置3は、
図4に示す検査処理を実行しており、ステップS1において、ワーク7を栓ゲージ5の上方まで移動させる。このとき、制御装置3は、予め把握している栓ゲージ5の中心軸の位置と上端位置の座標に基づいて、
図2に示したように、ツール8で把持したワーク7を、孔部10の中心が栓ゲージ5の中心軸と一致する位置であって栓ゲージ5に接触しない所定の高さの位置まで移動させる。なお、ワーク7は、ツール8で把持される前には予め定められた載置位置に載置されており、基本的には、その載置位置でワーク7を把持することによって孔部10の中心とロボット2の第6軸とが一致した状態でツール8に把持される。
【0042】
続いて、制御装置3は、ステップS2において、ワーク7を栓ゲージ5の上端位置まで移動する。このとき、制御部3aは、
図2に示すワーク7の下面すなわち孔部10が形成されている面が、栓ゲージ5の上端位置にとなるように、ワーク7を栓ゲージ5の中心軸に沿って移動させる。そして、制御部3aは、ステップS3において、探り動作を行う。このステップS3は、探り工程に相当する。
【0043】
上記したように、載置位置に載置されているワーク7をツール8で把持すれば、基本的には孔部10の中心と第6軸とが一致した状態になると考えられる。ただし、孔部10の寸法公差が小さい場合には、ワーク7の載置位置が若干ずれると、
図5に接触状態として示すように孔部10の中心と栓ゲージ5の中心とがずれてしまい、孔部10の縁に栓ゲージ5の上端が接触するおそれがある。
【0044】
このとき、力覚センサ4は、接触位置において矢印F4にて示す外力を検知することになる。そして、力覚センサ4は上記したように外力を6方向で検知するため、孔部10の周方向におけるどの位置で接触したかを把握することができる。
【0045】
そのため、制御装置3は、ワーク7を接触位置まで移動させた際に外力が検知された場合には、
図5に傾け動作として示すように、外力が検知された位置とは反対側にワーク7を傾けながら、
図5に挿入動作として示すように、ゲージが孔部10に挿入されるようにワーク7を移動させる。これは、栓ゲージ5の上端のある位置に外力が検知された場合、その位置と反対側の位置は、その上方が孔部10の範囲内であると考えられるためである。
【0046】
そして、制御装置3は、挿入した際に新たに外力が検知された場合には、ワーク7を逆側に傾けながら挿入する探り動作を繰り返しつつ、ワーク7を栓ゲージ5の中心軸に沿って移動させることにより、孔部10に栓ゲージ5を挿入していく。このとき、制御装置3は、本実施形態ではワーク7を回転させながら傾け挿入動作を行うことにより、栓ゲージ5の周方向の全体に対して干渉が生じていないかを確認しながら栓ゲージ5を孔部10に挿入させている。これにより、栓ゲージ5の端部が引っ掛かる挿入ミスを抑制することが可能になる。
【0047】
続いて、制御装置3は、ステップS4において、ワーク7が所定の確認位置に到達できたかを判定する。換言すると、制御装置3は、栓ゲージ5の上端側が孔部10の縁に引っ掛かることなく、孔部10にある程度挿入できたかを判定する。これは、寸法公差が小さい孔部10の場合、上記したように孔部10と栓ゲージ5との隙間が小さいことから、栓ゲージ5をある程度挿入できれば、その姿勢であれば継続して挿入が可能と推測できるためである。
【0048】
一例ではあるが、孔部10の深さが例えば15mmであれば、その10~20%程度を確認位置に設定することで、栓ゲージ5の挿入が可能であるかを推測できるようになると考えられる。ただし、確認位置は、上記の数値範囲に限定されず、孔部10の深さや寸法公差に基づいて適宜設定することができる。
【0049】
そして、制御装置3は、例えば孔部10が寸法通りに形成されていないなどの理由によってワーク7が確認位置に到達できなかった場合には、ステップS4においてNOとなることから、ステップS11に移行してエラー処理を行い、今回の検査を終了する。このエラー処理では、孔部10の検査が不合格であることなどが報知あるいは検査履歴として記録される。なお、ワーク7が確認位置に到達できたか否かの判定は、ワーク7を移動させるために出力した制御指令値と実際のワーク7の位置との関係などに基づいて行うことができる。
【0050】
一方、制御装置3は、ワーク7が確認位置に到達できた場合には、ステップS4においてYESとなることから、ステップS5に移行して回転挿入動作を行う。このステップS5は、回転挿入工程に相当する。この回転挿入動作では、制御装置3は、確認位置に到達した時点でのワーク7の姿勢を保ちつつ、ワーク7を回転させながら、且つ、力覚センサ4で検知される外力が減少する方向にワーク7を移動させながら孔部10に栓ゲージ5を挿入する。換言すると、回転挿入動作は、ワーク7を回転させる回転動作と、孔部10に栓ゲージ5を挿入する挿入動作と、外力に応じてワーク7を移動させる移動動作とを組み合わせた動作である。
【0051】
例えば、
図6に確認位置状態として示すように、確認位置に到達した時点でのワーク7の姿勢が若干傾いていた場合、孔部10の深さにもよるものの、そのままの姿勢でワーク7を移動させると、干渉状態として示すように、点P4において栓ゲージ5が孔部10の内壁に干渉する可能性がある。そして、点P4で干渉した際に検知された外力に基づいて、その外力が減少する向きに単純にワーク7を移動させると、前述のように振動的な動きとなって栓ゲージ5の挿入ができなくなるおそれがある。
【0052】
そのため、制御装置3は、ステップS5において、
図7に示すように、ワーク7を矢印Rにて示すように、栓ゲージ5の中心軸に垂直となる平面視において図示時計回りで回転させつつ、栓ゲージ5を孔部10に挿入するようにワーク7を移動させている。このとき、本実施形態では、ワーク7が後述する目標位置に到達するまでの間に1回転以上する回転速度でワーク7を回転させている。
【0053】
なお、
図7に四角い黒塗りとして示すマークM1は、ワーク7が回転する態様を示す参照用として付したものである。また、ワーク7を図示時計回りに回転させるか図示反時計回りに回転させるかは任意に選択することができる。本実施形態の場合、制御装置3は、回転挿入動作ではフランジ2gを回転させることによりワーク7を回転させている。
【0054】
これにより、
図7に干渉状態として示すように点P4にて栓ゲージ5と干渉した場合には、回転移動状態Aとして示すように、ワーク7は、回転しつつ、矢印V4にて示す外力が減少する方向に移動しつつ、栓ゲージ5が挿入されることになる。このとき、ワーク7の移動量を、栓ゲージ5の直径と孔部10の直径とに想定される差分の最小値を超えない範囲に設定しておくことで、過大な力で両者が衝突するおそれを低減できる。
【0055】
そして、制御部3aは、ワーク7を回転および移動した際に仮に点P5にて栓ゲージ5と干渉し、矢印F5にて示す外力が検知された場合には、回転移動状態Bとして示すように、ワーク7を回転させつつ、矢印V5にて示す外力が減少する方向にワーク7を移動させつつ、栓ゲージ5を孔部10に挿入するようにワーク7を移動させる。
【0056】
このように、ワーク7を回転させながら栓ゲージ5を挿入することにより、孔部10の中心位置は、外力が検知された場合は常にその外力が減少する方向、すなわち、栓ゲージ5の中心軸に向かって移動することになる。換言すると、ワーク7を回転させながら栓ゲージ5を挿入することにより、孔部10の中心位置を栓ゲージ5の中心軸に近づけることが可能になる。その結果、孔部10と栓ゲージ5とが干渉するおそれを低減しつつ、栓ゲージ5を孔部10に挿入することが可能になる。
【0057】
さて、制御装置3は、回転移動状態Cや回転移動状態Dとして示すように、ワーク7が目標位置に到達するまで、回転挿入動作を継続する。この目標位置は、本実施形態であれば、孔部10の深さに相当する。そして、制御装置3は、ステップS6において、栓ゲージ5が孔部10に挿入された状態でワーク7が目標位置まで到達できたかを判定する。
【0058】
このとき、制御装置3は、制御指令と実際のワーク7の位置との関係などに基づいてワーク7が目標位置に到達できたかを判定し、例えば孔部10の不要などによってワーク7が目標位置まで到達できなかった場合には、ステップS6においてNOとなることから、ステップS11に移行してエラー処理を行い、今回の検査を終了する。
【0059】
一方、制御装置3は、ワーク7が目標位置に到達できた場合には、ステップS6においてYESとなることから、ワーク7をさらに移動させて、ステップS7においてワーク7を停止位置まで移動させる。この停止位置は、栓ゲージ5の大径部5bの上端の位置に相当する。具体的には、栓ゲージ5の上端からH1の距離を移動した位置、あるいは、載置面9の表面から(H2-H1)となる位置に相当する。なお、ステップS7および後述するステップS8は、孔部10の最大径を検査するためのステップであるため、孔の最小径を検査すればよい場合には省略することができる。
【0060】
制御装置3は、ワーク7を停止位置まで移動させると、ステップS8において、ワーク7が停止位置を超えて移動するかを判定する。この判定は、停止位置を超える位置までワーク7を移動させるための制御指令値を出力し、実際のワーク7の位置を確認することにより行うことができる。
【0061】
栓ゲージ5の径大部は、孔部10の最大径を検査する部位であるため、孔部10の直径が寸法公差の範囲内であれば、
図8に示すように、径大部が孔部10に挿入されることはなく、且つ、停止位置を超えてワーク7が図示下方に移動することもない。換言すると、ワーク7が停止位置を超えた位置まで移動してしまう状況は、栓ゲージ5の大径部5bが孔部10に挿入された状態であり、孔部10が寸法公差を超える大きさで形成されていることを意味する。そのため、制御装置3は、ワーク7が停止位置を超えて移動する場合には、ステップS8においてYESとなることから、ステップS11に移行してエラー処理を行い、今回の検査を終了する。
【0062】
一方、制御装置3は、ワーク7が停止位置を超えて移動しない場合には、ステップS8においてNOとなることから、ステップS9において孔部10を良と判定する。すなわち、孔部10が寸法公差の範囲内に形成されていると判定する。このステップS9は、判定工程に相当する。そして、制御装置3は、ステップS10において、ワーク7を回転させながら栓ゲージ5から取り外す回転取り外し動作を行い、今回の検査を終了する。このようにして、検査システム1は、栓ゲージ5を用いてワーク7に形成されている孔部10を検査しているとともに、判定工程では、孔部10の最小寸法および最大寸法の双方の検査結果に基づいて孔部10の良否を判定する。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
ワーク7に形成されている孔部10を栓ゲージ5を用いて検査する際、ロボット2は、手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサ4が設けられており、栓ゲージ5は、ロボット2の動作範囲内の予め定められた位置に固定されている。そして、ワーク7を回転させつつ、力覚センサ4で検知される外力が減少する方向にワーク7を移動させながら孔部10に栓ゲージ5を挿入する回転挿入工程と、栓ゲージ5が孔部10に挿入された状態でワーク7が所定の目標位置に到達したか否かに基づいて孔部10の良否を判定する判定工程と、を含む制御方法によりロボット2を制御する。
【0064】
栓ゲージ5を用いて孔部10を検査する場合、栓ゲージ5を孔部10に挿入することが必要になる。その場合、力覚センサ4を用いて外力が減少する側に位置を補正することにより、栓ゲージ5の挿入を補助することが可能になると考えられる。しかし、単純に外力が減少する方向に移動させる制御を繰り返すと、ロボット2の手先が直線上を往復する振り子のような振動的な動きをしながら、栓ゲージ5が孔部10に挿入されることになる。
【0065】
その場合、剛性が高い材質で形成され、また、実施形態のように小径部5aの上端がフラットな形状となっている栓ゲージ5が孔部10の内壁と噛み合って挿入できなくなり、検査ができなくなるおそれがある。
【0066】
そこで、ワーク7を回転させつつ、力覚センサ4で検知される外力が減少する方向にワーク7を移動させながら孔部10に栓ゲージ5を挿入する回転挿入工程を含む制御方法を採用する。この場合、孔部10は、その中心位置が常に外力が減少する方向、すなわち、栓ゲージ5の中心軸に向かって移動することになる。換言すると、ワーク7を回転させることにより、孔部10の中心位置を栓ゲージ5の中心軸に徐々に近づけながら栓ゲージ5を挿入することが可能になる。
【0067】
これにより、寸法公差が小さい孔部10と栓ゲージ5とが干渉してしまうおそれを低減しつつ、栓ゲージ5を孔部10に挿入することが可能になる。また、実動作時に孔部10と栓ゲージ5との位置関係を補正することができることから、孔部10が形成されているワーク7の載置位置が微妙にずれるような実際の現場においても検査を行うことができる。したがって、栓ゲージ5を用いて孔部10の検査を迅速に行うことができる。
【0068】
また、孔部10に栓ゲージ5の先端を挿入する段階において、力覚センサ4で外力が検知された位置に対して栓ゲージ5の軸を挟んだ反対側にワーク7を傾けつつ、力覚センサ4で検知される外力が減少する方向にワーク7を移動させながら孔部10に栓ゲージ5を挿入する探り工程を含む制御方法によりロボット2を制御する。
【0069】
寸法公差が小さい孔部10を検査対象とする場合、栓ゲージ5の挿入時に、栓ゲージ5が孔部10の縁に引っ掛かる可能性が高くなる。その場合、仮に事前に厳密な位置決めをしていたとしても、ワーク7の載置位置が微妙にずれるような実際の現場においては、栓ゲージ5が孔部10の縁に引っ掛かるおそれがある。
【0070】
そこで、栓ゲージ5の先端を挿入する際、外力が検知された位置に対して反対側にワーク7を傾ける。これは、栓ゲージ5の上端のある位置が孔部10の縁に引っ掛かった場合、その位置と中心軸を挟んだ反対側の位置は、その上方が孔部10の幅の範囲内にあると考えられるためである。これにより、検査の基本となる栓ゲージ5の孔部10への挿入について、挿入ミスが起こる可能性を低減しつつ、容易に栓ゲージ5を孔部10に挿入することができる。
【0071】
また、探り工程は、ワーク7が、栓ゲージ5の先端位置から所定の確認位置に移動するまで行われる。寸法公差が小さい孔部10を検査対象とする場合、栓ゲージ5と孔部10との隙間は非常に小さいと考えられる。そのため、栓ゲージ5の先端側がある程度挿入できれば、すなわち、ワーク7が確認位置まで移動できれば、その状態のまま栓ゲージ5を最後まで挿入できると考えられる。これにより、栓ゲージ5と孔部10とが干渉するおそれを低減することができる。
【0072】
栓ゲージ5は、先端側に、孔部10の最小寸法を検査するための小径部5aが設けられており、小径部5aの後端側に、相対的に直径が大きく孔部10の最大寸法を検査するための大径部5bが設けられており、回転挿入工程では、小径部5aを孔部10に挿入した後、大径部5bまでワーク7を移動させる。これにより、1回の検査サイクルにより、孔部10の最小径と最大径とを検査することができ、効率よく検査することができる。
【0073】
また、ロボット2の手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサ4を備え、栓ゲージ5がロボット2の動作範囲内の予め定められた位置に固定されている場合において、孔部10が形成されているワーク7を回転させつつ、力覚センサ4で検知される外力が減少する方向にワーク7を移動させながら孔部10に栓ゲージ5を挿入する回転挿入動作を行うようにロボット2を制御する制御部3aと、栓ゲージ5が孔部10に挿入された状態でワーク7が所定の目標位置に到達したか否かに基づいて孔部10の良否を判定する判定部3bとを備え、上記した制御方法を実施可能な制御装置3によっても、実動作時に孔部10と栓ゲージ5との位置関係を補正することができることから、孔部10が形成されているワーク7の載置位置が微妙にずれるような実際の現場においても検査を行うことができる、栓ゲージ5を用いて孔部10の検査を迅速に行うことができるなど、制御方法と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、ロボット2と、ロボット2に設けられ、ロボット2の手先に加わる外力の向きと大きさとを検知する力覚センサ4と、ロボット2の動作範囲内の予め定められた位置に固定されている栓ゲージ5と、ワーク7を回転させつつ、力覚センサ4で検知される外力が減少する方向にワーク7を移動させながら孔部10に栓ゲージ5を挿入する回転挿入動作を行うようにロボット2を制御する制御部3a、および、栓ゲージ5が孔部10に挿入された状態でワーク7が所定の目標位置に到達したか否かに基づいて孔部10の良否を判定する判定部3bを有する制御装置3と、を備える検査システム1によっても、実動作時に孔部10と栓ゲージ5との位置関係を補正することができることから、孔部10が形成されているワーク7の載置位置が微妙にずれるような実際の現場においても検査を行うことができる、栓ゲージ5を用いて孔部10の検査を迅速に行うことができるなど、上記した制御方法や制御装置3と同様の効果を得ることができる。
【0075】
本発明は上記した、あるいは、図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変形又は拡張することができる。
例えば、実施形態では貫通孔の孔部10を検査する構成を例示したが、
図9に非貫通孔として示すように、貫通していない孔部10を検査することもできる。この場合、
図4に示す検査処理において、ステップS8の停止位置を、孔部10の深さの最大長に設定すればよい。
【0076】
あるいは、
図9に多段孔として示すように、小孔10aと大孔10bとが同心で形成されているような孔部10を検査することができる。この場合、小孔10a側を接触位置とすることで実施形態と同様の検査を行うことができる。また、小孔10aを検査するための小径部5aと大径部5b、ならびに、大孔10bを検査するための小径部5aと大径部5bを備える栓ゲージ5を用いれば、1回の検査により小孔10aおよび大孔10bを検査することができる。なお、多段孔については、3段以上のものを検査対象とすることもできる。
【0077】
また、実施形態ではいわゆる6軸ロボットを用いる構成を例示したが、自由度が1つ多いいわゆる7軸ロボットや、水平多関節型のいわゆる4軸ロボットを採用する構成とすることができる。
また、実施形態ではロボット2のフランジ2gを回転させることにより回転挿入動作を行う例を示したが、ツール8を回転させることで回転挿入動作を行う構成とすることができる。
また、実施形態ではワーク7が目標位置に到達するまでの間に1回転以上する回転速度でワーク7を回転させる例を示したが、ワーク7が回転していれば、1回転未満になる回転速度とすることもできる。
【0078】
また、実施形態ではワーク7を回転させながら取り外す例を示したが、取り外す際には必ずしも回転動作を組み合わせる必要はない。ただし、例えばフランジ2gの回転範囲に制限がある構成の場合において、回転挿入動作時にフランジ2gを回転させているのであれば、回転挿入動作時とは逆回りに回転させながらワーク7を取り外すことにより、ワーク7を取り外す動作とフランジ2gを元の回転位置に戻す動作とを同時に実行でき、検査サイクルの短縮に繋げることができる。
【符号の説明】
【0079】
図面中、1は検査システム、2はロボット、3は制御装置、3aは制御部、3bは判定部、4は力覚センサ、5は栓ゲージ、5aは小径部、5bは大径部、7はワーク、10は孔部、S3は探り工程、S5は回転挿入工程、S9は判定工程を示す。