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特許7602105クラスター型ネットワークを構築するための方法および通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】クラスター型ネットワークを構築するための方法および通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/20 20090101AFI20241211BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241211BHJP
   H04W 8/22 20090101ALI20241211BHJP
【FI】
H04W84/20
H04W84/10 110
H04W8/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020049381
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021057874
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019174091
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩勝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智之
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 裕希
【審査官】中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-027280(JP,A)
【文献】特開2004-129042(JP,A)
【文献】特開2003-273883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0201886(US,A1)
【文献】特開2009-164685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信デバイスを用いてクラスター型ネットワークを構築するための方法であって、
前記複数の通信デバイス間で、自身の状態に関する状態情報を含む信号を送信し合う工程と、
前記信号に含まれる前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報に基づいて、所定の親子判定条件に従って、前記複数の通信デバイスの1つを親機として、前記クラスター型ネットワークを構築する工程と、を含み、
前記クラスター型ネットワークを構築する工程は、所定の認証条件を用いて、前記複数の通信デバイス同士で認証処理を行い、前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられる複数の通信デバイスを判別する工程と、
前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された前記複数の通信デバイスのみで、前記クラスター型ネットワークを構築する工程と、を含み、
前記複数の通信デバイスのそれぞれが、前記複数の通信デバイスの他の全ての通信デバイスと通信可能な範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数の通信デバイスのそれぞれは、前記複数の通信デバイスのそれぞれが備える電池から供給される電力によって駆動し、
前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報は、前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記電池の残量を含んでおり、
前記親子判定条件は、前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記電池についての条件である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラスター型ネットワークを構築する工程は、前記複数の通信デバイスのうちの前記電池の残量が最も多い1つを前記親機として、前記クラスター型ネットワークを構築する工程を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報は、前記複数の通信デバイスのそれぞれのプロセッサーの演算処理能力を含んでおり、
前記親子判定条件は、前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記プロセッサーについての条件である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記クラスター型ネットワークを構築する工程は、前記複数の通信デバイスのうちの前記プロセッサーの前記演算処理能力が最も高い1つを前記親機として、前記クラスター型ネットワークを構築する工程を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の認証条件は、所定の機能を提供することができるか否かであり、
前記所定の機能を提供することができる複数の通信デバイスのみで、前記クラスター型ネットワークが構築される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の通信デバイスによって構成された通信システムであって、
前記複数の通信デバイスのそれぞれは、プロセッサーと、前記プロセッサーに接続されたメモリーと、を備え、
前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記メモリーは、
前記複数の通信デバイス間で、自身の状態に関する状態情報を含む信号を送信し合うための送信モジュールと、
前記信号に含まれる前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報に基づいて、所定の親子判定条件に従って、自身が親機となるべきか、子機となるべきかを判定するための親子判定モジュールと、を保存しており、
前記親子判定モジュールによる判定に従って、前記複数の通信デバイスの1つを親機として、クラスター型ネットワークが構築され、
前記クラスター型ネットワークが構築される際、所定の認証条件を用いて、前記複数の通信デバイス同士で認証処理を行い、前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられる複数の通信デバイスが判別され、
前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された前記複数の通信デバイスのみで、前記クラスター型ネットワークが構築され、
前記複数の通信デバイスのそれぞれが、前記複数の通信デバイスの他の全ての通信デバイスと通信可能な範囲にあることを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、クラスター型ネットワークを構築するための方法および通信システムに関し、より具体的には、所定の親子判定条件に従って、複数の通信デバイスの1つを親機として、クラスター型ネットワークを構築するための方法および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)と呼ばれる分野が注目されている。IoTとは、その名の通り、身の回りにある全てのデバイスがインターネットやLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークに接続されることを意味する。IoTを活用することによって、様々な情報の取得やデバイスの操作が、従来よりも低コストで実現可能となる。
【0003】
IoT分野が注目を集めている要因としては、無線通信が可能なデバイスの小型化および低消費電力化、並びに、無線通信技術の進歩が挙げられる。特に、無線通信技術の分野において、BLE(ブルートゥース(登録商標)・ロー・エナジー)と呼ばれる消費電力が極めて少ない無線通信規格が知られており、IoT分野で広く用いられている。BLE規格に従う無線通信は、通信可能距離が短く、通信速度も低速であるが、消費電力が極めて少なく、通信実行頻度にもよるが、コイン電池(ボタン電池)1つで1年以上の無線通信が可能である。そのため、膨大な数のデバイスとの通信が必要となるIoT分野において、BLE規格に従う無線通信が広く利用されている。
【0004】
BLE規格に従った親機(master unit)と複数の子機(slave units)との間の一対多(1:n)通信は、親機と複数の子機のそれぞれとの間のペアリング接続を実行し、クラスター型ネットワークを構築し、その後、親機からコマンドを受信可能な状態(スキャン状態)にある子機のそれぞれに対して、コマンドを順次送信することにより実行される(例えば、特許文献1参照)。なお、クラスター型ネットワークの中でも、特許文献1に開示されているような、複数の子機の全てが、1つの親機に接続されているタイプを、スター型ネットワークという。このようなスター型ネットワークにより、1つの親機に対する操作で、複数の子機を制御することができる。また、複数の子機の1つに対する操作を、親機を介して、他の子機に対して反映させることにより、複数の子機の1つに対する操作で他の子機を制御することができる。このように、親機に対する操作によって複数の子機を制御可能である点、および、1つの子機に対する操作を他の子機に反映させることができる点は、膨大な数のデバイスが通信可能に接続されるIoT分野において、非常に有用である。
【0005】
なお、クラスター型ネットワークとしては、上述のようなスター型ネットワークの他、1つの親機に複数の順親機(submaster units)が接続され、さらに、複数の順親機のそれぞれに複数の順親機または子機が接続された多階層クラスター型ネットワークが挙げられる。多階層クラスター型ネットワークは、典型的には、1つの親機に全ての子機を同時に接続することが、親機の処理能力やデータ通信速度等の観点から非効率または現実的ではない大規模なネットワークや、ネットワークに参加するデバイスが位置的に広範に渡って分散しており、親機の通信可能範囲の制限によって、1つの親機に全ての子機を同時に接続することが不可能なネットワーク等を構成するために用いられる。
【0006】
このようなクラスター型ネットワークを構築するためには、所望のクラスター型ネットワークを構築するように、通信デバイスのユーザーやネットワークの管理者等が、複数の通信デバイスのそれぞれを1つ1つペアリング接続する必要がある。そのため、順親機または子機とされる通信デバイスの数が多い場合には、クラスター型ネットワークを構築する作業は、多くの手間と時間を要する面倒な作業であった。
【0007】
また、BLE規格に基づくペアリング接続は、互いに接続されている2つの通信デバイスの少なくとも1つの電源がオフとされると、切断される。そのため、通信デバイスによる処理が必要とされる場合にのみ、通信デバイスの電源がオンとされるような用途では、上述のようなクラスター型ネットワークを構築する作業を、通信デバイスによる処理が必要とされるたびに実行する必要がある。そのため、簡易かつ迅速に、複数の通信デバイスを用いて、所望のクラスター型ネットワークを構築したいというニーズが存在している。
【0008】
さらに、クラスター型ネットワークでは、親機が複数の順親機および子機のそれぞれと通信を行うことから、親機が実行する通信の頻度は、複数の順親機および子機のそれぞれが実行する通信の頻度よりも高い。そのため、クラスター型ネットワークでは、親機の処理負荷や通信負荷が大きい。そのため、クラスター型ネットワークを構築する際には、性能が高い通信デバイス(例えば、プロセッサーの演算処理能力が高い通信デバイス、最新のバージョンの通信デバイス等)を親機とすることが好ましい。クラスター型ネットワークを構築する複数の通信デバイスのうち、最も性能が高い通信デバイスを親機とすることができれば、クラスター型ネットワーク全体の処理効率を向上させることができる。
【0009】
さらに、上述のように、クラスター型ネットワークにおいては、複数の順親機および子機のそれぞれの通信頻度と比較して、親機の通信頻度が高いため、親機の電池の消耗が激しい。もし、クラスター型ネットワークにおいて、親機の電池が切れてしまい、親機の電源がオフとなってしまうと、クラスター型ネットワークがシャットダウンしてしまう。このようなクラスター型ネットワークの意図せぬシャットダウンのリスクを低減するために、クラスター型ネットワークを構築する際には、電池残量が最も多い通信デバイスを親機とすることが好ましい。
【0010】
しかしながら、従来のクラスター型ネットワークを構築するための方法は、通信デバイスのユーザーやネットワークの管理者等が、複数の通信デバイスのいずれか1つを親機として事前に設定していることを前提としており、複数の通信デバイスのうちの最も好ましい1つを親機とし、他の通信デバイスを順親機または子機として、クラスター型ネットワークを自動的に構築することはできなかった。また、クラスター型ネットワークを構築する際に、通信デバイスのユーザーやネットワークの管理者等が、複数の通信デバイスのそれぞれの性能や電池残量を手動でチェックし、いずれの通信デバイスを親機とすべきかを判断することは、多くの手間と時間を要する面倒な作業である。また、クラスター型ネットワークを構築するデバイスの数が多い場合、現実的に、そのような作業は、実行不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-5977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、所定の親子判定条件に基づいて、複数の通信デバイスのうちの1つを親機として、所望のクラスター型ネットワークを容易、迅速、かつ自動的に構築することができる方法および通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、以下の(1)~()の本発明により達成される。
(1)複数の通信デバイスを用いてクラスター型ネットワークを構築するための方法であって、
前記複数の通信デバイス間で、自身の状態に関する状態情報を含む信号を送信し合う工程と、
前記信号に含まれる前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報に基づいて、所定の親子判定条件に従って、前記複数の通信デバイスの1つを親機として、前記クラスター型ネットワークを構築する工程と、を含み、
前記クラスター型ネットワークを構築する工程は、所定の認証条件を用いて、前記複数の通信デバイス同士で認証処理を行い、前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられる複数の通信デバイスを判別する工程と、
前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された前記複数の通信デバイスのみで、前記クラスター型ネットワークを構築する工程と、を含み、
前記複数の通信デバイスのそれぞれが、前記複数の通信デバイスの他の全ての通信デバイスと通信可能な範囲にあることを特徴とする方法。
【0014】
(2)前記複数の通信デバイスのそれぞれは、前記複数の通信デバイスのそれぞれが備える電池から供給される電力によって駆動し、
前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報は、前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記電池の残量を含んでおり、
前記親子判定条件は、前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記電池についての条件である上記(1)に記載の方法。
【0015】
(3)前記クラスター型ネットワークを構築する工程は、前記複数の通信デバイスのうちの前記電池の残量が最も多い1つを前記親機として、前記クラスター型ネットワークを構築する工程を含む上記(2)に記載の方法。
【0016】
(4)前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報は、前記複数の通信デバイスのそれぞれのプロセッサーの演算処理能力を含んでおり、
前記親子判定条件は、前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記プロセッサーについての条件である上記(1)に記載の方法。
【0017】
(5)前記クラスター型ネットワークを構築する工程は、前記複数の通信デバイスのうちの前記プロセッサーの前記演算処理能力が最も高い1つを前記親機として、前記クラスター型ネットワークを構築する工程を含む上記(4)に記載の方法。
【0021】
)前記所定の認証条件は、所定の機能を提供することができるか否かであり、
前記所定の機能を提供することができる複数の通信デバイスのみで、前記クラスター型ネットワークが構築される上記(1)に記載の方法。
【0027】
)複数の通信デバイスによって構成された通信システムであって、
前記複数の通信デバイスのそれぞれは、プロセッサーと、前記プロセッサーに接続されたメモリーと、を備え、
前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記メモリーは、
前記複数の通信デバイス間で、自身の状態に関する状態情報を含む信号を送信し合うための送信モジュールと、
前記信号に含まれる前記複数の通信デバイスのそれぞれの前記状態情報に基づいて、所定の親子判定条件に従って、自身が親機となるべきか、子機となるべきかを判定するための親子判定モジュールと、を保存しており、
前記親子判定モジュールによる判定に従って、前記複数の通信デバイスの1つを親機として、クラスター型ネットワークが構築され、
前記クラスター型ネットワークが構築される際、所定の認証条件を用いて、前記複数の通信デバイス同士で認証処理を行い、前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられる複数の通信デバイスが判別され、
前記クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された前記複数の通信デバイスのみで、前記クラスター型ネットワークが構築され、
前記複数の通信デバイスのそれぞれが、前記複数の通信デバイスの他の全ての通信デバイスと通信可能な範囲にあることを特徴とする通信システム。
【発明の効果】
【0028】
本発明の方法および通信システムによれば、所定の親子判定条件に基づいて、複数の通信デバイスのうちの1つを親機として、所望のクラスター型ネットワークを容易、迅速、かつ自動的に構築することができる。そのため、性能が高い通信デバイスを親機とすることにより、クラスター型ネットワーク全体の処理効率を向上させたり、電池残量が最も多い通信デバイスを親機とすることにより、親機の電池切れによるクラスター型ネットワークの意図せぬシャットダウンのリスクを低減させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る方法および通信システムにおいて用いられる通信デバイスのブロック図である。
図3図2に示す通信デバイスのメモリー内に保存されている状態情報の一例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る方法を説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る方法および通信システムにおいて用いられる通信デバイスのブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る方法を説明するためのフローチャートである。
図8図7に示す方法において実行されるネットワーク構築処理を説明するためのフローチャートである。
図9】本発明の第3実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
図11】本発明の第4実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。
図12】本発明の第4実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照して、本発明の各実施形態に係る方法および通信システムを詳述する。本発明の各実施形態に係る方法および通信システムは、複数の通信デバイスを用いて所望のクラスター型ネットワークを自動的に構築するために用いられるものである。なお、本明細書において、用語「クラスター型ネットワーク」は、複数の子機(slave units)の全てが、1つの親機(master unit)に接続されているスター型ネットワークと、1つの親機に複数の順親機(submaster units)が接続され、さらに、複数の順親機のそれぞれに複数の順親機または子機が接続されている多階層クラスター型ネットワークと、を含む。
【0031】
<第1実施形態>
<<通信システム1>>
最初に、図1図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る通信システムを詳述する。図1は、本発明の第1実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る方法および通信システムにおいて用いられる通信デバイスのブロック図である。図3は、図2に示す通信デバイスのメモリー内に保存されている状態情報の一例を示す図である。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示している。図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る方法により、スター型ネットワークが構築される前の本発明の第1実施形態に係る通信システム1を示している。図1(b)は、本発明の第1実施形態に係る方法により、スター型ネットワークが構築された後の本発明の第1実施形態に係る通信システム1を示している。図1に示されているように、本発明の第1実施形態に係る方法および通信システムは、複数の通信デバイスを用いてスター型ネットワークを自動的に構築するために用いられる。
【0033】
図1(a)に示されているように、本発明の第1実施形態に係る通信システム1は、複数の通信デバイス10を含んでいる。図1(a)に示されている状態において、複数の通信デバイス10のそれぞれは、互いに無線接続されていない。また、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等は、複数の通信デバイス10のうちのいずれが親機となるかについては、事前に設定していない。
【0034】
以下に詳述する本発明の第1実施形態に係る方法によって、図1(b)に示されているように、所定の親子判別条件に従って、複数の通信デバイス10の1つが親機10A(master unit)とされ、他の通信デバイス10が子機10B(slave units)とされ、親機10Aと複数の子機10Bとの間の一対多(1:n)通信を実行するスター型ネットワークが構築される。ここでいう「スター型ネットワーク」とは、図1(b)に示されているように、1つ以上の親機10Aに対して、複数の子機10Bがそれぞれ接続されており、さらに、複数の子機10B同士が直接接続されていないネットワークトポロジーを指す。図1(b)に示された状態の通信システム1において、親機10Aと、複数の子機10Bのそれぞれとは、BLE(ブルートゥース・ロー・エナジー)規格に従ったペアリング接続によって、接続されている。
【0035】
親機10Aは、複数の子機10Bに対して、コマンドを個別に送信する。親機10Aから複数の子機10Bのそれぞれに対して送信されるコマンドは、複数の子機10Bのそれぞれが提供すべき機能(サービス)に関する指示を含んでおり、コマンドを受信した複数の子機10Bのそれぞれは、コマンドに従った処理を実行することにより、所定の機能(サービス)を提供する。そのため、親機10Aは、複数の子機10Bを統括的に制御することができる。
【0036】
従来技術の欄において述べたように、従来の技術では、図1(b)に示されているようなスター型ネットワークを構築するためには、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等が、複数の通信デバイス10のうちのいずれか1つを親機10Aとして事前設定し、その後、親機10Aと複数の子機10Bのそれぞれとの間のペアリング接続を1つ1つ実行していた。本実施形態の第1実施形態に係る方法によれば、図1(b)に示されているようなスター型ネットワークを容易、迅速、かつ自動的に構築することが可能となる。
【0037】
また、後に詳述するように、本実施形態の方法によれば、通信デバイス10の性能に関する条件および通信デバイス10の電池残量に関する条件を含む所定の条件に基づいて、複数の通信デバイス10のうちの最も好ましい1つを親機10Aとし、他の通信デバイス10を子機10Bとして、スター型ネットワークを容易、迅速、かつ自動的に構築することができる。そのため、最も性能が高い通信デバイス10を親機10Aとすることにより、スター型ネットワーク全体の処理効率を向上させたり、電池残量が最も多い通信デバイス10を親機10Aとすることにより、親機10Aの電池切れによるスター型ネットワークの意図せぬシャットダウンのリスクを低減させたりすることができる。以下、本実施形態の方法および通信システム1において用いられる通信デバイス10を詳述する。
【0038】
<<通信デバイス10>>
図2に示す通信デバイス10は、スター型ネットワークにおける親機10A(central unitともいう)または子機10B(peripheral unitともいう)のいずれか一方として機能する。通信デバイス10が親機10Aとして機能する場合、親機10Aは、子機10Bとして機能する複数の通信デバイス10のそれぞれに対してコマンドを送信することにより、複数の子機10Bを統括的に制御することができる。
【0039】
通信デバイス10は、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、ノートパソコン、ワークステーション、タブレット型コンピューター、携帯電話、スマートフォン、PDA、ウェアラブル端末等の演算デバイスであってもよいし、センサー、照明、カメラ、スピーカー、スイッチ、信号機等の所定の機能を提供するためのデバイスであってもよい。
【0040】
図2に示すように、通信デバイス10は、通信デバイス10の制御を実行するための1つ以上のプロセッサー11と、通信デバイス10への入力および通信デバイス10からの出力を実行するためのI/O(インプット/アウトプット)インターフェース12と、通信デバイス10を駆動する電力を提供するための電池13と、BLE規格に従う無線通信を実行するためのBLE通信ユニット14と、通信デバイス10の処理を実行するために用いられるデータ16およびモジュール17を保存している1つ以上のメモリー15と、所定の機能(サービス)を提供するためのアプリケーションユニット18と、を備えている。
【0041】
1つ以上のプロセッサー11は、1つ以上のマイクロプロセッサー、マイクロコンピューター、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサー(DSP)、中央演算処理装置(CPU)、メモリーコントロールユニット(MCU)、画像処理用演算処理装置(GPU)、状態機械、論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはこれらの組み合わせ等のコンピューター可読命令に基づいて信号操作等の演算処理を実行する演算ユニットである。特に、プロセッサー11は、メモリー15内に保存されているコンピューター可読命令(例えば、データ、プログラム、モジュール等)をフェッチし、演算、信号操作および制御を実行するよう構成されている。
【0042】
I/Oインターフェース12は、ウェブインターフェース、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)等の様々なソフトウェアインターフェースおよびハードウェアインターフェースを含む。例えば、I/Oインターフェース12は、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ、外部メモリー、プリンター、ディスプレイのような周辺デバイスのためのインターフェースである。I/Oインターフェース12は、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイのような入力デバイスを用いた通信デバイス10への入力およびディスプレイ、プリンター、外部メモリーへの通信デバイス10からの出力を可能とする。また、I/Oインターフェース12は、通信デバイス10が、インターネット等のネットワークを介して、外部に設けられたウェブサーバーやデータサーバーのような任意の外部デバイスと通信を行うことを可能としてもよい。
【0043】
電池13は、ボタン電池、乾電池、リチウムイオンバッテリー等の通信デバイス10の内部に設けられた電源である。電池13から供給される電力によって、通信デバイス10の各コンポーネントが駆動される。
【0044】
BLE通信ユニット14は、BLE規格に従う無線通信を実行するために用いられるユニットである。BLE通信ユニット14は、アンテナ、送受信回路、変復調回路等のBLE規格に従う無線通信を実行するために必要なコンポーネントを備えており、プロセッサー11からのコマンド入力に応じて、複数の通信デバイス10間のBLE規格に従う無線通信を実行する。通信デバイス10は、BLE通信ユニット14を用いることにより、他の通信デバイス10に対して、アドバタイズ信号を送信することができる。アドバタイズ信号には、コマンドや任意のデータ、情報を入れ込むことができる。そのため、通信デバイス10は、アドバタイズ信号に含まれるコマンド、データ、情報等を適宜変更することにより、独自信号を用いずとも、アドバタイズ信号をやり取りすることにより、複数の通信デバイス10間で必要とされる通信を実行することができる。
【0045】
メモリー15は、揮発性記憶媒体(例えば、RAM、SRAM、DRAM)、不揮発性記憶媒体(例えば、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリー、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク)、またはこれらの組み合わせを含むコンピューター可読媒体である。
【0046】
メモリー15は、プロセッサー11と通信可能に接続され、通信デバイス10が処理を実行するために必要なデータ16と、プロセッサー11により実行可能な複数のモジュール17と、を保存している。また、メモリー15は、複数のモジュール17の1つ以上によって受信、処理、生成されたデータや、複数のモジュール17による処理を実行するために必要なデータを一時保存する機能を備えている。
【0047】
アプリケーションユニット18は、通信デバイス10が子機10Bとして機能する場合に、親機10Aから送信されたコマンドに従った処理を実行し、所定の機能(サービス)を提供するためのユニットである。例えば、通信デバイス10がセンサーである場合には、アプリケーションユニット18は、センサーユニットであり、通信デバイス10が照明である場合には、アプリケーションユニット18は、照明ユニットである。通信デバイス10は、アプリケーションユニット18を用いることにより、親機10Aから送信されたコマンドに従って、所定の機能(サービス)を提供することができる。
【0048】
メモリー15内に保存されているデータ16は、通信デバイス10の状態に関する状態情報161と、複数の通信デバイス10同士の認証処理を実行するための認証条件162と、通信デバイス10が親機10Aとなるか子機10Bとなるかを判定するための親子判定条件163と、通信デバイス10の処理を実行するために必要な任意の数のその他データ164と、を含んでいる。
【0049】
状態情報161は、通信デバイス10の状態に関する情報である。状態情報161は、複数の通信デバイス10のうちからスター型ネットワークを構築するために用いられる通信デバイス10を判別するための認証処理と、スター型ネットワークを構築するために用いられると判別された通信デバイス10のいずれを親機10Aとするのかを判定するための親子判定処理において用いられる。
【0050】
図3には、状態情報161の一例が示されている。図3に示す例では、状態情報161は、通信デバイス10の詳細を示すデバイス情報1611と、電池13に関する電池情報1612を含んでいる。デバイス情報1611は、通信デバイス10がアプリケーションユニット18を用いて提供可能な機能を示す属性(例えば、演算、照明、センシング、撮影、音声発信、スイッチ切り替え、交通信号切り替え等)と、通信デバイス10のバージョンと、通信デバイス10のファームウェアバージョンと、通信デバイス10のプロセッサー11の演算処理能力と、通信デバイス10の稼働日と、通信デバイス10のシリアル番号と、を含んでいる。なお、状態情報161は、図3に示された情報以外の追加的な情報を含んでいてもよい。デバイス情報1611は、通信デバイス10の製造時や稼働日にメモリー15内に書き込まれる。
【0051】
電池情報1612は、電池13の詳細および状態を示す情報である。図3に示す例では、電池情報1612は、電池13の種類と、電池13の公称容量(未使用時の電池13の容量)と、電池13の残量と、を含んでいる。なお、電池情報1612は、図3に示された情報以外の追加的な情報を含んでいてもよい。電池13の残量は、通信デバイス10がアクティブ化された際、または、常時、プロセッサー11によってチェックされており、プロセッサー11によって取得された電池13の残量によって、電池情報1612中の電池13の残量が、随時更新される。
【0052】
図2に戻り、認証条件162は、複数の通信デバイス10のうちからスター型ネットワークを構築するために用いられる通信デバイス10を判別するために用いられる。例えば、認証条件162は、(a)通信デバイス10の位置的条件、(b)通信デバイス10が提供する機能についての条件、(c)通信デバイス10の性能についての条件、(d)電池13についての条件、および/または、これら条件(a)~(d)の組み合わせを含み得る。
【0053】
上述の条件(a)に関し、認証条件162は、複数の通信デバイス10同士が所定の離間距離以内に位置しているか否かであってもよい。例えば、認証条件162は、認証処理を互いに実行する2つの通信デバイス10間の離間距離が所定の離間距離以下である場合に、2つの通信デバイス10同士で実行される認証処理が成功するよう設定されていてもよい。この場合、所定の離間距離以下で互いに近接している通信デバイス10のみでスター型ネットワークが構築される。
【0054】
複数の通信デバイス10のそれぞれは、BLE規格に従った無線通信を実行することから、複数の通信デバイス10のそれぞれから発せられるアドバタイズ信号の強度は、BLE規格で規定されている。一方、認証処理を互いに実行する2つの通信デバイス10の一方から発せられ、他方で受信されたアドバタイズ信号の強度は、2つの通信デバイス10の離間距離に反比例する。そのため、アドバタイズ信号を受信した通信デバイス10は、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を参照することにより、アドバタイズ信号を送信した通信デバイス10とアドバタイズ信号を受信した通信デバイス10との間の離間距離を算出することができる。例えば、認証条件162は、認証処理を互いに実行する2つの通信デバイス10間でやり取りされるアドバタイズ信号の受信信号強度(RSSI)が、所定のしきい値(例えば、-60dB)以上である場合にのみ、2つの通信デバイス10同士の認証処理を成功させるよう設定されていてもよい。この場合、受信信号強度(RSSI)の所定のしきい値によって定まる所定の離間距離以内で互いに離間している複数の通信デバイス10のみによって、スター型ネットワークが構築される。
【0055】
また、認証条件162は、複数の通信デバイス10のうちの任意の1つから所定の離間距離以内に位置しているか否かであってもよい。複数の通信デバイス10のうちの任意の1つは、スター型ネットワークを構築するための操作が実行された通信デバイス10であってもよいし、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等によって事前に設定された通信デバイス10であってもよい。この場合、複数の通信デバイス10のうちの任意の1つを中心とした所定の範囲内に位置する複数の通信デバイス10のみによって、スター型ネットワークが構築される。
【0056】
上述の条件(b)に関し、認証条件162は、通信デバイス10の属性に関するものであってもよい。例えば、認証条件162は、通信デバイス10の状態情報161の属性を参照し、通信デバイス10が所定の機能(サービス)を提供し得る場合に、認証処理を成功させるよう設定されていてもよい。この場合、所定の機能(例えば、演算、センシング、照明等)を提供する通信デバイス10のみで、スター型ネットワークが構築される。これにより、同一の機能(サービス)を提供し得る複数の通信デバイス10のみでスター型ネットワークを構築することができる。
【0057】
上述の条件(c)に関し、認証条件162は、通信デバイス10の性能に関するものであってもよい。例えば、認証条件162は、認証対象の通信デバイス10のプロセッサー11の性能についての条件であってもよい。より具体的には、認証条件162は、認証対象の通信デバイス10のプロセッサー11の演算処理能力が所定のしきい値(例えば、1.00GHz)以上である場合に認証処理を成功させるよう設定されていてもよい。代替的に、認証条件162は、通信デバイス10のデバイスバージョンまたはファームウェアバージョンが所定のバージョンよりも新しい場合に認証処理を成功させるよう設定されていてもよい。この場合、プロセッサー11の演算処理能力やバージョン情報から規定される所定の性能要求を満たす通信デバイス10のみで、スター型ネットワークが形成される。これにより、所定の性能要求を満たさない通信デバイス10がスター型ネットワークに組み込まれ、スター型ネットワーク全体の処理性能が低下してしまうことを防止することができる。
【0058】
上述の条件(d)に関し、認証条件162は、通信デバイス10の電池13に関するものであってもよい。認証条件162は、認証対象の通信デバイス10の電池13の種類が所定の種類である場合に認証処理を成功させるよう設定されていてもよいし、認証対象の通信デバイス10の電池13の公称容量が所定のしきい値以上である場合に認証処理を成功させるよう設定されていてもよいし、認証対象の通信デバイス10の電池13の残量が所定のしきい値以上である場合に認証処理を成功させるよう設定されていてもよい。この場合、所定の電池13に関する要件(種類、公称容量、残量)を満たす通信デバイス10のみで、スター型ネットワークが形成される。これにより、スター型ネットワークを構築する複数の通信デバイス10の電池13の性能や残量を均一化させることができる。
【0059】
また、認証条件162は、上述した条件(a)~(d)を組み合わせたものであってもよい。上述した条件(a)~(d)を適宜組み合わせた認証条件162を用いることにより、所定の特性を有する通信デバイス10のみを用いて、スター型ネットワークを構築することができる。すなわち、認証条件162を適宜設定することにより、スター型ネットワークを構築するために用いられる複数の通信デバイス10の絞り込みを実行することができる。IoT分野においては、数多くの様々な種類の通信デバイス10が、必要に応じて様々な場所に設置されるため、スター型ネットワークを構築するために利用可能な通信デバイス10の状態や性能は、必ずしも一致しない。そのため、単に通信可能な範囲に存在する通信デバイス10の全てを用いてスター型ネットワークを構築すると、スター型ネットワークの規模が必要以上に大きくなってしまったり、不必要な機能を提供する通信デバイス10がスター型ネットワークに組み込まれてしまったり、電池切れがすぐに発生しそうな通信デバイス10がスター型ネットワークに組み込まれてしまったりといった好ましくない状況が発生し得る。一方、本実施形態においては、認証条件162を適宜設定することにより、所望の特性(性能、電池特性等)を有する通信デバイス10のみでスター型ネットワークを構築することが可能となる。そのため、スター型ネットワークの利便性および信頼性を向上させることができる。
【0060】
なお、上述した認証条件162は、あくまでも例示に過ぎず、複数の通信デバイス10の通信条件や複数の通信デバイス10間で送信し合う状態情報161から導出可能な任意の条件を、認証条件162として用いてもよい。このような認証条件162は、通信デバイス10の製造時または稼働時、または、任意のタイミングで、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等によって、任意に設定可能である。
【0061】
親子判定条件163は、上述の認証条件162を用いた認証処理においてスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10が、自身が親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定処理において用いられる。親子判定条件163は、特に限定されないが、例えば、通信デバイス10の性能に関する条件と、通信デバイス10の電池13に関する条件と、これらの組み合わせを含み得る。
【0062】
通信デバイス10の性能に関する条件に関し、親子判定条件163は、上述の認証条件162を用いた認証処理においてスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のうち、プロセッサー11の演算処理能力が最も高い1つを親機10Aとするよう設定されていてもよい。この場合、スター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のうち、最も高い演算処理能力を有するプロセッサー11を備える通信デバイス10が親機10Aとされ、他の通信デバイス10が子機10Bとされて、スター型ネットワークが構築される。これにより、最も高い演算処理能力を有するプロセッサー11を備える通信デバイス10が最も処理負荷がかかる親機10Aとなるので、スター型ネットワーク全体の処理効率を向上させることができる。代替的に、親子判定条件163は、スター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のうち、デバイスバージョンおよび/またはファームウェアバージョンが最も新しい1つを親機10Aとするよう設定されていてもよい。デバイスバージョンおよび/またはファームウェアバージョンが新しいものほど、通信デバイス10の演算処理能力は高い場合が多いので、この場合でも、スター型ネットワーク全体の処理効率を向上させることができる。
【0063】
通信デバイス10の電池13に関する条件に関し、親子判定条件163は、上述の認証条件162を用いた認証処理においてスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のうち、電池13の残量が最も多い1つを親機10Aとするよう設定されていてもよい。この場合、スター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のうち、電池13の残量が最も多い通信デバイス10が親機10Aとされ、他の通信デバイス10が子機10Bとされて、スター型ネットワークが構築される。従来技術の欄において述べたように、スター型ネットワークにおいては、複数の子機10Bのそれぞれの通信頻度と比較して、親機10Aの通信頻度が高いため、親機10Aの電池13の消耗が激しく、親機10Aの電池切れによってスター型ネットワークが意図せずシャットダウンするリスクが高い。電池13の残量が最も多い通信デバイス10を親機10Aとしてスター型ネットワークを構築することにより、親機10Aの電池切れによってスター型ネットワークが意図せずシャットダウンするリスクを低減することができる。
【0064】
また、親子判定条件163は、通信デバイス10の性能に関する条件と、通信デバイス10の電池13に関する条件とを組み合わせたものであってもよい。通信デバイス10の性能に関する条件と、通信デバイス10の電池13に関する条件とを適宜組み合わせた親子判定条件163とを用いることにより、所定の特性を有する通信デバイス10を親機10Aとしたスター型ネットワークを構築することができる。なお、上述した親子判定条件163は、あくまでも例示に過ぎず、複数の通信デバイス10の通信条件や複数の通信デバイス10間で送信し合う状態情報161から導出可能な任意の条件を、親子判定条件163として用いてもよい。このような親子判定条件163は、通信デバイス10の製造時または稼働時、または、任意のタイミングで、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等によって、任意に設定可能である。
【0065】
メモリー15内に保存されているモジュール17は、ルーティーン、アプリケーション、プログラム、アルゴリズム、ライブラリー、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、またはこれらの組み合わせ等のプロセッサー11により実行可能なコンピューター可読命令である。
【0066】
モジュール17は、複数の通信デバイス10間で自身の状態情報161を含むアドバタイズ信号を送信し合うための情報送信モジュール171と、複数の通信デバイス10のうちからスター型ネットワークを構築するために用いられる通信デバイス10を判別するための認証処理を実行するための認証モジュール172と、自身が親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定モジュール173と、スター型ネットワークを構築するためのペアリング接続を実行するためのネットワーク構築モジュール174と、通信デバイス10が提供する機能を補うための任意の数のその他モジュール175と、を含んでいる。
【0067】
情報送信モジュール171は、複数の通信デバイス10間で自身のメモリー15内に保存されている状態情報161を含むアドバタイズ信号を送信し合うために用いられる。情報送信モジュール171は、図1(a)に示す状態の通信システム1において、複数の通信デバイス10の任意の1つに対して、スター型ネットワークを構築するための所定の操作が実行されると、自身のメモリー15内に保存されている状態情報161を含むアドバタイズ信号を生成し、複数の通信デバイス10間で自身の状態情報161を含むアドバタイズ信号を送信し合う。
【0068】
図2に戻り、認証モジュール172は、他の通信デバイス10から状態情報161を受信した際に、メモリー15内に保存されている認証条件162を用いて、複数の通信デバイス10のうちからスター型ネットワークを構築するために用いられる通信デバイス10を判別するための認証処理を実行するために用いられる。認証モジュール172は、他の通信デバイス10から状態情報161を受信した際に、メモリー15内に保存されている認証条件162を用いて、他の通信デバイス10の認証処理を実行する。
【0069】
他の通信デバイス10による自身に対する認証処理の結果がメモリー15内に一時保存される。本実施形態の方法では、他の通信デバイス10の全てによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみが、スター型ネットワークを構築するために用いられると判別されてもよいし、他の通信デバイス10の少なくとも1つによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみがスター型ネットワークを構築するために用いられると判別されてもよい。他の通信デバイス10の全てによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみをスター型ネットワークを構築するために用いるか、または、他の通信デバイス10の少なくとも1つによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみをスター型ネットワークを構築するために用いるかは、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等によって、任意に設定可能である。
【0070】
親子判定モジュール173は、メモリー15内に保存されている親子判定条件163に従って、自身が親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定処理を実行するために用いられる。親子判定モジュール173は、認証モジュール172による認証処理の結果、スター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のそれぞれから送信された状態情報161に基づいて、メモリー15内に保存されている親子判定条件163に従って、自身が親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定処理を実行する。親子判定モジュール173による親子判定処理の結果は、メモリー15内に一時保存される。
【0071】
スター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のそれぞれの親子判定モジュール173による親子判定処理の結果、スター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のいずれか1つが親機10Aとされ、他の通信デバイス10が子機10Bとされる。なお、親子判定モジュール173による親子判定処理の結果、2つ以上の通信デバイス10が親機10Aとなり得ると判定されるケースがある。このようなケースとしては、例えば、親子判定条件163が、複数の通信デバイス10のうちの電池13の残量が最も多い1つを親機10Aとするよう設定されており、複数の通信デバイス10の電池13の残量が100%であるような場合に発生し得る。このような場合、状態情報161の通信デバイス10のシリアル番号がより若い方が親機10Aとなる等の任意の追加的な条件が用いられてもよい。
【0072】
ネットワーク構築モジュール174は、親子判定モジュール173によって親機10Aとされた通信デバイス10と、親子判定モジュール173によって子機10Bとされた複数の通信デバイス10のそれぞれとの間のペアリング接続を実行するために用いられる。親機10Aとされた通信デバイス10のネットワーク構築モジュール174は、子機10Bとされた複数の通信デバイス10のそれぞれとアドバタイズ信号(アドバタイズパケット)のやり取りを行い、子機10Bとされた複数の通信デバイス10のそれぞれとペアリング接続を確立し、スター型ネットワークを構築する。上述した複数の通信デバイス10を含む通信システム1において、本実施形態の方法が実行される。以下、図4を参照して、本実施形態の方法を詳述する。
【0073】
<<方法S100>>
図4は、本発明の第1実施形態に係る方法を説明するためのフローチャートである。図4に示す本発明の第1実施形態に係る方法S100は、上述した複数の通信デバイス10を含む第1実施形態に係る通信システム1において実行される。
【0074】
方法S100は、通信システム1が図1(a)に示す状態、すなわち、複数の通信デバイス10のそれぞれが互いにペアリング接続されておらず、スター型ネットワークが構築されていない状態において開始される。最初に、工程S110において、複数の通信デバイス10の任意の1つ(通信デバイスa)に対して、スター型ネットワークを構築するための所定の操作が実行され、通信デバイスaがアクティブ化される。
【0075】
工程S120において、通信デバイスaは、BLE通信ユニット14を用いて、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)のそれぞれに対してウェークアップ用のアドバタイズ信号を無線送信する。なお、図4では、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)のそれぞれに対するウェークアップ用のアドバタイズ信号の送信は同時に実行されているものとして示されているが、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)のそれぞれに対するウェークアップ用のアドバタイズ信号の送信が順次実行されていてもよい。工程S120において通信デバイスaから他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)に送信されるウェークアップ用のアドバタイズ信号には、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)をアクティブ化するために必要なコマンド、データ、情報等が含まれている。
【0076】
工程S130において、通信デバイスaからウェークアップ用のアドバタイズ信号を受信した複数の通信デバイス10のそれぞれが、アクティブ化される。その後、工程S140において、アクティブ化された複数の通信デバイス10(通信デバイスa~z)のそれぞれは、情報送信モジュール171を用いて、自身のメモリー15内に保存されている状態情報161を含むアドバタイズ信号を生成し、互いに送信し合う。工程S150において、他の通信デバイス10の状態情報161を含む信号を受信した通信デバイス10は、認証モジュール172を用いて、自身のメモリー15内に保存されている認証条件162に基づいて、状態情報161を含むアドバタイズ信号を送信した他の通信デバイス10に対する認証処理を実行する。他の通信デバイス10による自身に対する認証処理の結果は、通信デバイス10のメモリー15内に一時保存される。
【0077】
工程S150において、他の通信デバイス10の全てによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみ、または、他の通信デバイス10の少なくとも1つによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみが、スター型ネットワークを構築するために用いられるものと判別される。なお、他の通信デバイス10の全てによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみをスター型ネットワークを構築するために用いるか、または、他の通信デバイス10の少なくとも1つによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみをスター型ネットワークを構築するために用いるかは、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等によって、任意に設定可能である。このように、工程S150において、認証条件162に従って、複数の通信デバイス10同士で認証処理を行い、スター型ネットワークの構築に用いられる通信デバイス10が判別される。
【0078】
工程S160において、工程S150でスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のそれぞれは、親子判定モジュール173を用いて、メモリー15内に保存されている親子判定条件163に従って、自身がスター型ネットワークの親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定処理を実行する。工程S160において、1つの通信デバイス10が親機10Aとなるべきと判定されると、方法S100は、工程S170に移行する。
【0079】
工程S170において、工程S160において親機10Aとなるべきと判定された通信デバイス10は、ネットワーク構築モジュール174を用いて、工程S160において子機10Bとなるべきと判定された複数の通信デバイス10のそれぞれとアドバタイズ信号のやり取りを行い、子機10Bとされた複数の通信デバイス10のそれぞれとペアリング接続を確立し、スター型ネットワークを構築する。工程S170において、親機10Aおよび複数の子機10Bによってスター型ネットワークが構築され、通信システム1が図1(b)に示す状態に移行すると、方法S100は、終了する。
【0080】
このように、本実施形態の方法S100および通信システム1では、複数の通信デバイス10のそれぞれのメモリー15内に保存されている認証条件162を用いて、複数の通信デバイス10同士で認証処理を実行することにより、所定の特性を有する通信デバイス10のみを用いて、スター型ネットワークを迅速、容易、かつ自動的に構築することができる。
【0081】
また、本実施形態の方法S100および通信システム1では、複数の通信デバイス10のそれぞれのメモリー15内に保存されている親子判定条件163を用いて親子判定処理を実行することにより、所定の特性を有する通信デバイス10を親機10Aとしたスター型ネットワークを構築することができる。そのため、本実施形態の方法S100および通信システム1によれば、性能が高い通信デバイス10を親機10Aとすることにより、スター型ネットワーク全体の処理効率を向上させたり、電池残量が最も多い通信デバイス10を親機10Aとすることにより、親機10Aの電池切れによるスター型ネットワークの意図せぬシャットダウンのリスクを低減させたりすることができる。
【0082】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る方法および通信システムを詳述する。最初に、図5図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る通信システムを詳述する。図5は、本発明の第2実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。図6は、本発明の第2実施形態に係る方法および通信システムにおいて用いられる通信デバイスのブロック図である。
【0083】
以下、第2実施形態の方法および通信システムについて、第1実施形態の方法および通信システムとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。第2実施形態の方法および通信システムは、複数の通信デバイスを用いて多階層クラスター型ネットワークを自動的に構築するために用いられる。
【0084】
第1実施形態と同様、図5(a)に示されているように、本発明の第2実施形態に係る通信システム1は、複数の通信デバイス10を含んでいる。図5(a)に示されている状態において、複数の通信デバイス10のそれぞれは、互いに無線接続されていない。また、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等は、複数の通信デバイス10のうちのいずれが親機10Aとなるかについては、事前に設定していない。
【0085】
以下に詳述する本発明の第2実施形態に係る方法によって、図5(b)に示されているように、所定の親子判別条件に従って、複数の通信デバイス10の1つが親機10Aとされ、多階層クラスター型ネットワークが構築される。ここでいう「多階層クラスター型ネットワーク」とは、図5(b)に示されているように、1つの親機10Aに複数の順親機10Cが接続され、さらに、複数の順親機10Cのそれぞれに複数の順親機10Cまたは子機10Bが接続されたネットワークトポロジーを指す。さらに、多階層クラスター型ネットワークにおいては、同じ階層に属する複数の順親機10C同士および複数の子機10B同士が直接接続されていない。図5(b)に示された状態の通信システム1において、親機10Aと複数の順親機10Cのそれぞれとは、BLE規格に従ったペアリング接続によって、接続されている。同様に、複数の順親機10Cのそれぞれと、複数の子機10Bのそれぞれ、または、1つ下の階層の複数の順親機10Cのそれぞれとは、BLE規格に従ったペアリング接続によって、接続されている。
【0086】
なお、図5(b)に示されているような多階層クラスター型ネットワークにおいて、親機10Aが1次階層を形成し、親機10Aにペアリング接続されている複数の順親機10Cが2次階層を形成し、さらに、2次階層の順親機10Cにペアリング接続されている順親機10Cまたは子機10Bが3次階層を形成している。このように、多階層クラスター型ネットワークにおいて、親機10Aを1次階層とし、親機10Aに到達するまでの中継(順親機10C)の数に応じて、順親機10Cまたは子機10Bがどの階層に属するのかが決まる。このような多階層クラスター型ネットワークの各階層に属する順親機10Cまたは子機10Bは、親機10Aから、1つ以上のペアリング接続を介して、データの授受を実行する。
【0087】
親機10Aは、複数の順親機10Cおよび複数の子機10Bに対して、コマンドを個別に送信する。親機10Aから複数の順親機10Cおよび子機10Bのそれぞれに対して送信されるコマンドは、複数の順親機10Cおよび子機10Bのそれぞれが提供すべき機能(サービス)に関する指示を含んでおり、コマンドを受信した複数の順親機10Cおよび子機10Bのそれぞれは、コマンドに従った処理を実行することにより、所定の機能(サービス)を提供する。そのため、親機10Aは、複数の順親機10Cおよび複数の子機10Bを統括的に制御することができる。
【0088】
<<通信デバイス10>>
図6に示す本実施形態の通信デバイス10は、多階層クラスター型ネットワークにおける親機10A、順親機10C(submaster unitともいう)または子機10Bのいずれか1つとして機能する。通信デバイス10が親機10Aとして機能する場合、親機10Aは、順親機10Cまたは子機10Bとして機能する複数の通信デバイス10のそれぞれに対して、1つ以上のペアリング接続を介してコマンドを送信することにより、複数の順親機10Cおよび子機10Bを統括的に制御することができる。
【0089】
通信デバイス10が順親機10Cとして機能する場合、順親機10Cは、親機10Aから、自身を対象としたコマンドを受信した場合には、コマンドに従って処理を実行することにより所定の機能(サービス)を提供する。一方、順親機10Cは、親機10Aから、自身よりも下の階層に属する順親機10Cまたは子機10Bに対するコマンドを受信した場合には、適切な順親機10Cまたは子機10Bに、親機10Aからのコマンドを中継する中継器として機能する。通信デバイス10が子機10Bとして機能する場合、子機10Bは、1つのペアリング接続を介して、親機10Aから自身を対象としたコマンドを受信し、コマンドに従って処理を実行することにより所定の機能(サービス)を提供する。
【0090】
図6に示す本実施形態の通信デバイス10は、メモリー15内に最大接続数165および優先接続条件166がさらに保存されており、さらに、自身に同時にペアリング接続されている他の通信デバイス10の数が所定の最大接続数を超えないように構成されている点を除き、第1実施形態の通信デバイス10と同様である。第1実施形態の通信デバイス10と同様の要素については、説明を省略する。
【0091】
メモリー15内に保存されている最大接続数165は、通信デバイス10と同時にペアリング接続可能な他の通信デバイス10の数に対応する2以上の任意の整数パラメーターである。すなわち、本実施形態において、通信デバイス10は、自身に同時にペアリング接続されている他の通信デバイス10が、自身の最大接続数165を超えないよう、構成されている。最大接続数165は、通信デバイス10の製造または出荷時にメモリー15に書き換え不能に書き込まれてもよいし、I/Oインターフェース12を介して通信デバイス10に入力された信号に応じて書き換え可能であってもよい。
【0092】
メモリー15内に保存されている優先接続条件166は、通信デバイス10とのペアリング接続を確立することが可能な他の通信デバイス10が複数存在する場合に、他の通信デバイス10のそれぞれに、自身とのペアリング接続のための優先度を付すために用いられる。上述のように、本実施形態において、通信デバイス10と同時にペアリング接続可能な他の通信デバイス10の数の上限は、最大接続数165である。そのため、通信デバイス10とペアリング接続可能な他の通信デバイス10の数が、通信デバイス10の最大接続数165を超える場合、通信デバイス10は、複数の他の通信デバイス10のうちのいずれとのペアリング接続を確立するかを判断しなければならない。そのため、通信デバイス10は、優先接続条件166を用いて、通信デバイス10とペアリング接続可能な他の通信デバイス10のそれぞれに優先度を付し、付された優先度に従って、他の通信デバイス10とのペアリング接続を確立する。
【0093】
優先接続条件166は、通信デバイス10とペアリング接続可能な他の通信デバイス10のそれぞれの優先度を決定することができれば特に限られないが、(a)他の通信デバイス10の位置的条件、(b)他の通信デバイス10が提供する機能についての条件、(c)他の通信デバイス10の性能についての条件、(d)他の通信デバイス10の電池13についての条件、および/または、これら条件(a)~(d)の組み合わせを含み得る。
【0094】
例えば、優先接続条件166として、(a)他の通信デバイス10の位置的条件が設定されている場合、他の通信デバイス10から受信したアドバタイズ信号の受信信号強度(RSSI)に基づいて、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。この場合、アドバタイズ信号の受信信号強度が強い順、すなわち、通信デバイス10から近い順に、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。したがって、通信デバイス10との離間距離が短い順に、通信デバイス10と他の通信デバイス10とのペアリング接続が確立される。
【0095】
また、優先接続条件166として、(b)他の通信デバイス10が提供する機能についての条件が設定されている場合、他の通信デバイス10が提供する機能に基づいて、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。例えば、特定の機能を提供可能な他の通信デバイス10に高い優先度が付され、該特定の機能を提供不可能な他の通信デバイス10には低い優先度が付される。この場合、特定の機能を提供可能な他の通信デバイス10から優先的に、通信デバイス10にペアリング接続される。
【0096】
また、優先接続条件166として、(c)他の通信デバイス10の性能についての条件が設定されている場合、他の通信デバイス10から受信したアドバタイズ信号に含まれる状態情報161から導出される他の通信デバイス10の性能(例えば、プロセッサー11の演算能力、デバイスバージョンまたはファームウェアバージョン)に基づいて、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。例えば、プロセッサー11の演算能力が優先接続条件166として設定されている場合、プロセッサー11の演算能力が高い順に、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。したがって、プロセッサー11の演算能力の高い順に、通信デバイス10と他の通信デバイス10とのペアリング接続が確立される。また、デバイスバージョンまたはファームウェアバージョンが優先接続条件166として設定されている場合、デバイスバージョンまたはファームウェアバージョンが新しい順に、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。したがって、デバイスバージョンまたはファームウェアバージョンが新しい順に、通信デバイス10と他の通信デバイス10とのペアリング接続が確立される。
【0097】
また、優先接続条件166として、(d)他の通信デバイス10の電池13についての条件が設定されている場合、他の通信デバイス10から受信したアドバタイズ信号に含まれる状態情報161から導出される他の通信デバイス10の電池13の残量に基づいて、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。この場合、電池13の残量が多い順に、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。したがって、電池13の残量が多い順に、通信デバイス10と他の通信デバイス10とのペアリング接続が確立される。
【0098】
また、優先接続条件166は、上述した条件(a)~(d)を組み合わせたものであってもよい。この場合、上述した条件(a)~(d)に基づいて優先スコアを算出する所定の計算式が用いられ、算出された優先スコアの高い順に、複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度が付される。優先接続条件166は、通信デバイス10の製造または出荷時にメモリー15に書き換え不能に書き込まれてもよいし、I/Oインターフェース12を介して通信デバイス10に入力された信号に応じて書き換え可能であってもよい。
【0099】
このように、本実施形態では、通信デバイス10は、自身の優先接続条件166に基づいて、自身とペアリング接続可能な複数の他の通信デバイス10のそれぞれに優先度を付し、付された優先度の順に、他の通信デバイス10とのペアリング接続を確立する。そのため、通信デバイス10とペアリング接続可能な他の通信デバイス10の数が、通信デバイス10の最大接続数165を超える場合であっても、通信デバイス10は、複数の他の通信デバイス10のいずれとのペアリング接続を確立するかを判断することができる。上述した通信デバイス10を複数含む通信システム1において、本実施形態の方法が実行される。以下、図7図8を参照して、本実施形態の方法を詳述する。
【0100】
<<方法S200>>
図7は、本発明の第2実施形態に係る方法を説明するためのフローチャートである。図8は、図7に示す方法において実行されるネットワーク構築処理を説明するためのフローチャートである。図7に示す本発明の第2実施形態に係る方法S200は、上述した通信デバイス10を複数含む、第2実施形態に係る通信システム1において実行される。
【0101】
方法S200は、通信システム1が図5(a)に示す状態、すなわち、複数の通信デバイス10のそれぞれが互いにペアリング接続されておらず、多階層クラスター型ネットワークが構築されていない状態において開始される。最初に、工程S210において、複数の通信デバイス10の任意の1つ(通信デバイスa)に対して、多階層クラスター型ネットワークを構築するための所定の操作が実行され、通信デバイスaがアクティブ化される。
【0102】
工程S220において、通信デバイスaは、BLE通信ユニット14を用いて、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)のそれぞれに対してウェークアップ用のアドバタイズ信号を無線送信する。なお、図7では、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)のそれぞれに対するウェークアップ用のアドバタイズ信号の送信は同時に実行されているものとして示されているが、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)のそれぞれに対するウェークアップ用のアドバタイズ信号の送信が順次実行されていてもよい。工程S220において通信デバイスaから他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)に送信されるウェークアップ用のアドバタイズ信号には、他の通信デバイス10(通信デバイスb~z)をアクティブ化するために必要なコマンド、データ、情報等が含まれている。
【0103】
工程S230において、通信デバイスaからウェークアップ用のアドバタイズ信号を受信した複数の通信デバイス10のそれぞれが、アクティブ化される。その後、工程S240において、アクティブ化された複数の通信デバイス10(通信デバイスa~z)のそれぞれは、情報送信モジュール171を用いて、自身のメモリー15内に保存されている状態情報161を含むアドバタイズ信号を生成し、互いに送信し合う。工程S250において、他の通信デバイス10の状態情報161を含む信号を受信した通信デバイス10は、認証モジュール172を用いて、自身のメモリー15内に保存されている認証条件162に基づいて、状態情報161を含むアドバタイズ信号を送信した他の通信デバイス10に対する認証処理を実行する。他の通信デバイス10による自身に対する認証処理の結果は、通信デバイス10のメモリー15内に一時保存される。
【0104】
工程S250において、他の通信デバイス10の全てによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみ、または、他の通信デバイス10の少なくとも1つによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみが、多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられるものと判別される。なお、他の通信デバイス10の全てによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみを多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いるか、または、他の通信デバイス10の少なくとも1つによる自身に対する認証処理が成功した通信デバイス10のみを多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いるかは、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等によって、任意に設定可能である。このように、工程S250において、認証条件162に従って、複数の通信デバイス10同士で認証処理を行い、多階層クラスター型ネットワークの構築に用いられる通信デバイス10が判別される。
【0105】
工程S260において、工程S250で多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の通信デバイス10のそれぞれは、親子判定モジュール173を用いて、メモリー15内に保存されている親子判定条件163に従って、自身が多階層クラスター型ネットワークの親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定処理を実行する。工程S260において、1つの通信デバイス10が親機10Aとなるべきと判定されると、処理は、工程S270に移行する。
【0106】
工程S260において親機10Aとなるべきと判定された通信デバイス10(以下、親機10Aという)は、工程S270において、図8に示すネットワーク構築処理S300を実行する。以下、図8を参照して、ネットワーク構築処理S300を詳述する。
【0107】
工程S310において、ネットワーク構築処理S300を実行する通信デバイス10(以下、ネットワーク構築処理S300に対する説明において、ネットワーク構築処理S300を実行する通信デバイス10を、単に「通信デバイス10」と称する。)は、ネットワーク構築モジュール174を用いて、多階層クラスター型ネットワークに接続されていない他の通信デバイス10をスキャンにより発見する。その後、通信デバイス10は、情報送信モジュール171を用いて、スキャンにより発見された複数の未接続の通信デバイス10と、自身の状態情報161を含むアドバタイズ信号のやり取りを実行する。
【0108】
工程S320において、通信デバイス10は、自身のメモリー15内に保存されている認証条件162に基づいて、工程S310においてアドバタイズ信号をやり取りした複数の未接続の通信デバイス10に対する認証処理を実行する。工程S320において、通信デバイス10による認証処理が成功した未接続の通信デバイス10のみが、多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられるものと判別される。その後、工程S330において、通信デバイス10は、自身のメモリー15内に保存されている優先接続条件166に基づいて、工程S320で多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された複数の未接続の通信デバイス10のアドバタイズ信号に含まれる状態情報161から、複数の未接続の通信デバイス10のそれぞれの優先度を算出する。その後、通信デバイス10は、算出した優先度を、複数の未接続の通信デバイス10のそれぞれに付す。
【0109】
工程S340において、通信デバイス10は、ネットワーク構築モジュール174を用いて、工程S330において付された優先度の高い順に、未接続の通信デバイス10との間のペアリング接続を確立する。通信デバイス10との間のペアリング接続が確立された他の通信デバイス10は、通信デバイス10より1つ下の階層に属することになる。なお、工程S340における未接続の通信デバイス10との間のペアリング接続の構築は、通信デバイス10に同時にペアリング接続されている他の通信デバイス10の数が、通信デバイス10のメモリー15内に保存されている最大接続数165に到達するか、工程S330において優先度が付された他の通信デバイス10の全てとの間のペアリング接続が確立された場合に、終了する。その後、処理は、工程S350に移行する。
【0110】
工程S350において、通信デバイス10は、自身に同時にペアリング接続されている他の通信デバイス10の数が、メモリー15内に保存されている自身の最大接続数165に到達しているか否かを判別する。通信デバイス10に同時にペアリング接続されている他の通信デバイス10の数が、通信デバイス10の最大接続数165に到達していない場合には、処理は、工程S360に移行する。工程S360において、通信デバイス10は、ネットワーク構築処理S300が開始されてから、所定の時間が経過したか否かを判別する。ネットワーク構築処理S300が開始されてから、所定の時間が経過していない場合には、処理は工程S310に戻り、工程S310~S350が繰り返し実行される。一方、工程S360において、ネットワーク構築処理S300が開始されてから、所定の時間が経過している場合には、ネットワーク構築処理S300は終了する。なお、工程S360における判断において用いられる所定の時間は、通信デバイス10のユーザーまたは通信システム1の管理者等によって、任意に設定可能である。
【0111】
工程S350において、通信デバイス10に同時にペアリング接続されている他の通信デバイス10の数が、通信デバイス10の最大接続数165に到達している場合には、処理は、工程S370に移行する。工程S370において、通信デバイス10は、自身に同時にペアリング接続されており、1つ下の階層に属する他の通信デバイス10のそれぞれに対して、1つ下の階層の順親機10Cとなるよう指示する。工程S370において、通信デバイス10に同時にペアリング接続されている1つ下の階層の他の通信デバイス10のそれぞれが、1つ下の階層の順親機10Cとなると、工程S370の処理は終了し、ネットワーク構築処理S300が終了する。
【0112】
図7に戻り、工程S270において、親機10Aは、図8を参照して詳述したネットワーク構築処理S300を実行する。親機10Aがネットワーク構築処理S300を実行すると、通信システム1は、親機10Aに、親機10Aの最大接続数165と等しい数の順親機10Cがペアリング接続されている状態か、親機10Aに、親機10Aの最大接続数165よりも少ない数の他の通信デバイス10(この場合、親機10Aにペアリングされている他の通信デバイス10は、子機10Bとなる)が接続されている状態のいずれか一方を取る。
【0113】
通信システム1が、親機10Aの最大接続数165と等しい数の順親機10Cが、親機10Aにペアリング接続されている状態を取っている場合、工程S280において、親機10Aにペアリング接続されている複数の順親機10Cのそれぞれが、図8を参照して詳述したネットワーク構築処理S300を実行する。なお、通信システム1が、親機10Aの最大接続数165よりも少ない数の子機10Bが、親機10Aにペアリング接続されている状態を取っている場合、すなわち、工程S270において親機10Aがネットワーク構築処理S300を実行した際に、工程S370が実行されておらず、親機10Aにペアリング接続されている子機10Bのいずれも、1つ下の階層の順親機10Cとなるよう指示されていない場合には、通信システム1に順親機10Cが存在しないので、工程S280は、実行されない。この場合、通信システム1は、親機10Aと、親機10Aに直接ペアリング接続された複数の子機10Bとから構成されているので、実質的に、スター型ネットワークと等しい。
【0114】
工程S280において、親機10Aにぶら下がるようペアリング接続されている複数の順親機10Cのそれぞれが、ネットワーク構築処理S300を実行する。さらに、工程S280において複数の順親機10Cのそれぞれによって、ネットワーク構築処理S300の工程S370が実行されると、ネットワーク構築処理S300の工程S370を実行した順親機10Cに、さらに1つ下の階層に属する複数の順親機10Cが、ぶら下がるようにペアリング接続される。順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続された、さらに1つ下の階層に属する複数の順親機10Cのそれぞれも、工程S280において、同様に、ネットワーク構築処理S300を実行する。したがって、1つ下の階層に属する新たな複数の順親機10Cが、ネットワーク構築処理S300を実行した順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続される毎に、新たにペアリング接続された複数の順親機10Cのそれぞれによって、ネットワーク構築処理S300が実行される。
【0115】
そのため、工程S280における順親機10Cによるネットワーク構築処理S300の実行は、全ての順親機10Cがネットワーク構築処理S300を実行し、かつ、新たな複数の順親機10Cがペアリング接続されないようになるまで、複数の順親機10Cのそれぞれによって実行される。換言すれば、認証条件162に基づいて多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別される通信デバイス10の全てが、親機10Aまたは複数の順親機10Cのいずれかにペアリング接続されるまで、複数の順親機10Cのそれぞれによって、ネットワーク構築処理S300が実行される。
【0116】
この結果、多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別された通信デバイス10の数に応じて、多階層クラスター型ネットワークの階層数が自動的に増加することになる。したがって、本実施形態の方法S200によって構築される多階層クラスター型ネットワークの階層数は、多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別される通信デバイス10の数に応じて、動的に変化することになる。なお、多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられると判別される通信デバイス10の数は、認証条件162の設定方法に応じて変化する。したがって、本発明の通信システム1および方法S200のユーザーは、多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられる通信デバイス10の数を考慮して多階層クラスター型ネットワークの階層数を指定する必要がない。このように、本発明の通信システム1および方法S200によれば、多階層クラスター型ネットワークを構築するために用いられる通信デバイス10の数を考慮して多階層クラスター型ネットワークの階層数を指定せずとも、各通信デバイス10の認証条件162の設定方法に応じた適切な階層数の多階層クラスター型ネットワークを自動的に構築することができる。
【0117】
複数の順親機10Cのそれぞれにペアリング接続された他の通信デバイス10の数が、複数の順親機10Cのそれぞれの最大接続数165よりも小さくなり、多階層クラスター型ネットワークの階層数が増加しなくなると、工程S280における多階層クラスターネットワークの構築が完了し、方法S200は、終了する。
【0118】
このように、本実施形態の方法S200および通信システム1では、複数の通信デバイス10のそれぞれのメモリー15内に保存されている親子判定条件163を用いて親子判定処理を実行することにより、所定の特性を有する通信デバイス10を親機10Aとした多階層クラスター型ネットワークを構築することができる。そのため、本実施形態の方法S200および通信システム1によれば、性能が高い通信デバイス10を親機10Aとすることにより、多階層クラスター型ネットワーク全体の処理効率を向上させたり、電池残量が最も多い通信デバイス10を親機10Aとすることにより、親機10Aの電池切れによる多階層クラスター型ネットワークの意図せぬシャットダウンのリスクを低減させたりすることができる。
【0119】
<第3実施形態>
次に、図9図10を参照して、本発明の第3実施形態に係る方法および通信システムを詳述する。図9は、本発明の第3実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。図10は、本発明の第3実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
【0120】
以下、第3実施形態の方法および通信システムについて、第2実施形態の方法および通信システムとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。第3実施形態の方法および通信システムは、多階層クラスター型ネットワークにおいて、親機10Aが電池13の容量切れによりパワーダウンした等の理由によって、多階層クラスター型ネットワークに通信障害が発生した際に、多階層クラスター型ネットワークを再構築するために用いられる。
【0121】
図9(a)に示されているように、本発明の第3実施形態に係る通信システム1は、多階層クラスター型ネットワークを形成するようペアリング接続された複数の通信デバイス10を含んでいる。本実施形態の通信システム1に含まれる複数の通信デバイス10のそれぞれは、上述した第2実施形態の通信デバイス10と同じ構成を有している。
【0122】
図9(a)に示されているように、多階層クラスター型ネットワークの親機10Aが、電池13の容量切れによりパワーダウンした等の理由によって通信不能となり、多階層クラスター型ネットワークに通信障害が発生した状況を想定する。この状況において、本発明の第3実施形態に係る方法によって、通信障害の原因となった親機10Aを除外して、多階層クラスター型ネットワークが再構築される。
【0123】
多階層クラスター型ネットワークの親機10Aが、電池13の容量切れによりパワーダウンした等の理由によって、多階層クラスター型ネットワークに通信障害が発生すると、本実施形態の方法S400が開始される。以下、図10を参照して、本実施形態の方法S400を詳述する。
【0124】
図10には、方法S400のフローチャートが示されている。方法S400が開始されると、工程S410において、最初に、通信障害が発生した多階層クラスター型ネットワークを構築していた全ての通信デバイス10間のペアリング接続が解除される。その後、通信障害が発生した多階層クラスター型ネットワークにおいて親機10Aの直下の階層(すなわち、2次階層)に属していた複数の順親機10Cは、情報送信モジュール171を用いて、自身のメモリー15内に保存されている状態情報161を含むアドバタイズ信号を生成し、互いに送信し合う。
【0125】
工程S420において、工程S410でアドバタイズ信号を送信し合った、複数の順親機10Cのそれぞれは、親子判定モジュール173を用いて、メモリー15内に保存されている親子判定条件163に従って、自身が多階層クラスター型ネットワークの新たな親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定処理を実行する。その後、工程S420において新たな親機10Aとなるべきと判定された通信デバイス10(以下、親機10Aという)は、図8を参照して詳述したネットワーク構築処理S300を実行する。ネットワーク構築処理S300は、第2実施形態の方法S200についての説明において詳述したので、ここでは説明を省略する。その後、第2実施形態の方法S200の工程S280と同様に、工程S440において、工程S430において実行されたネットワーク構築処理S300の工程S370において順親機10Cとなるよう指示された複数の通信デバイス10のそれぞれが、ネットワーク構築処理S300を実行する。このような方法S400により、図9(b)に示されているように、通信障害の原因となった旧親機10Aを除外した新たな多階層クラスター型ネットワークを構築することができる。
【0126】
本実施形態の方法S400では、新たな親機10Aの候補が、通信障害が発生した多階層クラスター型ネットワークにおいて親機10Aの1つ下の階層(すなわち、2次階層)に属していた複数の順親機10Cに限定されるので、迅速に新たな親機10Aとなるべき通信デバイス10(順親機10C)を判別するために実行されるデータ通信のデータトラフィック量およびデータ処理量を減少させることができる。これにより、多階層クラスター型ネットワークを迅速に再構築することができる。
【0127】
<第4実施形態>
次に、図11図12を参照して、本発明の第4実施形態に係る方法および通信システムを詳述する。図11は、本発明の第4実施形態に係る方法のコンセプトを概略的に示す図である。図12は、本発明の第4実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
【0128】
以下、第4実施形態の方法および通信システムについて、第2実施形態の方法および通信システムとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。第4実施形態の方法および通信システムは、多階層クラスター型ネットワークにおいて、いずれかの階層に属する順親機10Cが電池13の容量切れによりパワーダウンした等の理由によって、多階層クラスター型ネットワークに通信障害が発生した際に、多階層クラスター型ネットワークを再構築するために用いられる。
【0129】
図11(a)に示されているように、本発明の第4実施形態に係る通信システム1は、多階層クラスター型ネットワークを形成するようペアリング接続された複数の通信デバイス10を含んでいる。本実施形態の通信システム1に含まれる複数の通信デバイス10のそれぞれは、上述した第2実施形態の通信デバイス10と同じ構成を有している。
【0130】
図11(a)に示されているように、多階層クラスター型ネットワークのいずれかの階層に属する順親機10Cが、電池13の容量切れによりパワーダウンした等の理由によって通信不能となり、多階層クラスター型ネットワークに通信障害が発生した状況を想定する。なお、図11(a)に示されている多階層クラスター型ネットワークを、以下、「初期状態の多階層クラスター型ネットワーク」という。この状況において、本発明の第4実施形態に係る方法によって、通信障害の原因となった順親機10Cが除外された新たな多階層クラスター型ネットワークが再構築される。
【0131】
多階層クラスター型ネットワークのいずれかの階層に属する順親機10Cが、電池13の容量切れによりパワーダウンした等の理由によって、多階層クラスター型ネットワークに通信障害が発生すると、本実施形態の方法S500が開始される。以下、図12を参照して、本実施形態の方法S500を詳述する。
【0132】
図12には、方法S500のフローチャートが示されている。方法S500が開始されると、工程S510において、最初に、通信障害が発生した多階層クラスター型ネットワークにおいて、通信不能となった順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていた全ての順親機10Cおよび子機10B間の接続が解除される。一方、初期状態の多階層クラスター型ネットワークにおいて、通信不能となった順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていない親機10A、複数の順親機10C、および複数の子機10B間の接続は維持されている。これにより、最初に、初期状態の多階層クラスター型ネットワークから、通信不能となった順親機10C、並びに、該順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていた全ての順親機10Cおよび子機10Bが除外され、第1の多階層クラスター型ネットワークが得られる。その後、通信不能となった順親機10Cを除く、通信不能となった順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていた全ての順親機10Cおよび子機10Bは、自身のメモリー15内に保存されている状態情報161を含むアドバタイズ信号を生成し、互いに送信し合う。
【0133】
工程S520において、工程S510でアドバタイズ信号を送信し合った、複数の順親機10Cおよび子機10Bのそれぞれは、親子判定モジュール173を用いて、メモリー15内に保存されている親子判定条件163に従って、自身が新たな多階層クラスター型ネットワーク(「第2の多階層クラスター型ネットワーク」という)の親機10Aとなるべきか、子機10Bとなるべきかを判定するための親子判定処理を実行する。その後、工程S520において第2の多階層クラスター型ネットワークの親機10Aとなるべきと判定された通信デバイス10は、工程S530において、図8を参照して詳述したネットワーク構築処理S300を実行する。ネットワーク構築処理S300は、第2実施形態の方法S200についての説明において詳述したので、ここでは説明を省略する。その後、工程S540において、第2実施形態の方法S200の工程S280と同様に、工程S530において実行されたネットワーク構築処理S300の工程S370において順親機10Cとなるよう指示された複数の通信デバイス10のそれぞれが、ネットワーク構築処理S300を実行する。
【0134】
これにより、通信障害が発生した多階層クラスター型ネットワークにおいて、通信不能となった順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていた複数の順親機10Cおよび子機10Bによって、第2の多階層クラスター型ネットワークが構築される。この状態において、通信システム1は、第1の多階層クラスター型ネットワーク(すなわち、初期状態の多階層クラスター型ネットワークから、通信不能となった順親機10C、並びに、該順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていた複数の順親機10Cおよび子機10Bが除外された多階層クラスター型ネットワーク)と、第2の多階層クラスター型ネットワーク(すなわち、通信不能となった順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていた複数の順親機10Cおよび子機10Bによって構築された多階層クラスター型ネットワーク)と、を含んでいる。
【0135】
次に、工程S550において、第1の多階層クラスター型ネットワークの親機10Aに、第2の多階層クラスター型ネットワークの親機10Aが、順親機10Cとして接続される。これにより、第1の多階層クラスター型ネットワークの親機10Aの下に第2の多階層クラスター型ネットワークがぶら下がる形で、第1の多階層クラスター型ネットワークと第2の多階層クラスター型ネットワークとが統合され、新たな多階層クラスター型ネットワークが得られる。この結果、図11(b)に示されているように、通信障害の原因となった旧順親機10Cを除外した新たな多階層クラスター型ネットワークを再構築することができる。
【0136】
本実施形態の方法S500によれば、通信不能となった順親機10Cにぶら下がるようにペアリング接続されていた複数の順親機10Cおよび子機10Bのみによって、第2の多階層クラスター型ネットワークが構築される一方、第1の多階層クラスター型ネットワークを構築する通信デバイス10間のペアリング接続は維持される。そのため、新たな多階層クラスター型ネットワークを再構築するためのデータ通信のデータトラフィック量およびデータ処理量を減少させることができる。さらに、第1の多階層クラスター型ネットワークの親機10Aに、第2の多階層クラスター型ネットワークの親機10Aを、順親機10Cとして接続するだけで、第1の多階層クラスター型ネットワークと、第2の多階層クラスター型ネットワークとを統合することができるため、通信不能となった順親機10Cを除外した新たな多階層クラスター型ネットワークを迅速に再構築することができる。
【0137】
このように、本発明の方法および通信システムによれば、複数の通信デバイスのそれぞれのメモリー内に保存されている親子判定条件に基づいて、複数の通信デバイスのうちの所定の特性を有する1つを親機として、所望のクラスター型ネットワークを容易、迅速、かつ自動的に構築することができる。そのため、本発明の方法および通信システムは、例えば、スーパーマーケット等の小売店の商品棚に取り付けられ、各商品の値段を表示する電子ペーパーや液晶ディスプレイ等の表示手段をそれぞれ備える多数の電子棚札を、無線通信により統括的に制御するための電子棚札無線ネットワークシステム、ベッドに取り付けられた複数のセンサーと管理装置から構成される医療分野におけるベッドセンサー監視システム、工場の各プロセスを監視するための多数のセンサーと管理装置から構成される工場プロセス監視システムのようなセンサーシステム、複数のLED照明を統括的に制御するためのLED照明システム、様々なデバイスを統括的に制御する必要があるゲーム機や玩具、複数のデバイスを統括的にオン/オフするための無線スイッチシステム、身体に取り付けられた複数のウェアラブルデバイスや生体センサーを統括的に制御するためのウェアラブルデバイスシステム等に有効に活用することができる。
【0138】
以上、本発明の方法および通信システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明の各コンポーネントの構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0139】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の方法および通信システムの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する方法および通信システムもまた、本発明の範囲内である。
【0140】
例えば、図1図3図5図6図9、および図11に示された通信システムのコンポーネントの数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意のコンポーネントが追加若しくは組み合わされ、または任意のコンポーネントが削除された態様も、本発明の範囲内である。また、通信システムの各コンポーネントは、ハードウェア的に実現されていてもよいし、ソフトウェア的に実現されていてもよいし、これらの組み合わせによって実現されていてもよい。
【0141】
また、図4図7図8図10、および図12に示された方法の工程の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の工程が、任意の目的で追加若しくは組み合わされ、または、任意の工程が削除される態様も、本発明の範囲内である。
【0142】
また、上述の説明は、BLE規格に基づくペアリング接続によって、親機とされた通信デバイスと、順親機とされた複数の通信デバイス(多階層クラスター型ネットワークにのみ存在)と、子機とされた複数の通信デバイスのそれぞれとの間が接続されるものとしているが、本発明はこれに限られない。BLE規格に基づくペアリング接続と同様の接続によって、親機とされた通信デバイスと、順親機とされた複数の通信デバイス(多階層クラスター型ネットワークにのみ存在)と、子機とされた複数の通信デバイスのそれぞれとの間が接続される態様も、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0143】
1…通信システム 10…通信デバイス 10A…親機 10B…子機 10C…順親機 11…プロセッサー 12…I/Oインターフェース 13…電池 14…BLE通信ユニット 15…メモリー 16…データ 161…状態情報 1611…デバイス情報 1612…電池情報 162…認証条件 163…親子判定条件 164…その他データ 165…最大接続数 166…優先接続条件 17…モジュール 171…情報送信モジュール 172…認証モジュール 173…親子判定モジュール 174…ネットワーク構築モジュール 175…その他モジュール 18…アプリケーションユニット S100…方法 S110、S120、S130、S140、S150、S160、S170…工程 S200…方法 S210、S220、S230、S240、S250、S260、S270、S280…工程 S300…ネットワーク構築処理 S310、S320、S330、S340、S350、S360、S370…工程 S400…方法 S410、S420、S430、S440…工程 S500…方法 S510、S520、S530、S540、S550…工程
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