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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】検査用ソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 33/76 20060101AFI20241211BHJP
   H01R 13/24 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01R33/76 505A
H01R13/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020190863
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079959
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中島 康貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝己
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113753(JP,A)
【文献】特開2001-326048(JP,A)
【文献】米国特許第06046597(US,A)
【文献】特開2010-129505(JP,A)
【文献】特開2017-076587(JP,A)
【文献】特開2006-286613(JP,A)
【文献】特開2019-178947(JP,A)
【文献】特開2008-175700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 33/76
H01R 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在する筒状体からなり該筒状体の外周面が半径方向に張り出したフランジ部が設けられたバレルと、基端が前記バレルの一端側に収容されるとともに先端が検査デバイスに接触するデバイス側端子と、基端が前記バレルの他端側に収容されるとともに先端がテスト基板に接触するテスト基板側端子と、前記バレル内において前記テスト基板側端子及び前記デバイス側端子に接触するバネと、を有しているコンタクト端子と、
前記軸線方向に沿って前記コンタクト端子が挿通されるとともに前記軸線方向において前記フランジ部に当接する段部が形成された段付孔を有しているハウジングと、
前記ハウジングに対して近接離間可能に設けられ、前記バレルから突出した前記デバイス側端子の先端側が挿通されるとともに前記検査デバイスの電極が収容される収容孔を有している可動台座と、
を備え、
前記可動台座の前記収容孔には、前記デバイス側端子の前記バレルから突出した部分の外径と略同径とされ、かつ、前記検査デバイスの前記電極のサイズに依存しない内径を有するガイド部が形成されている検査用ソケット。
【請求項2】
前記可動台座の前記収容孔には、前記ハウジングから突出した前記バレルが収容されるザグリ部が形成されている請求項1に記載の検査用ソケット。
【請求項3】
前記ザグリ部は、隣り合う他の前記ザグリ部と一体的かつ連続的に形成されている請求項2に記載の検査用ソケット。
【請求項4】
前記可動台座は、前記軸線方向において分割されている請求項1から3のいずれか1項に記載の検査用ソケット。
【請求項5】
前記デバイス側端子には、先端に前記バレルと略同径とされた拡径端子部が設けられている請求項3又は4に記載の検査用ソケット。
【請求項6】
前記デバイス側端子及び前記テスト基板側端子には、先端に前記バレルと略同径とされた拡径端子部が設けられている請求項3又は4に記載の検査用ソケット。
【請求項7】
前記デバイス側端子は、検査時において前記拡径端子部が前記バレルの前記一端に接触する長さ寸法に設定されている請求項5又は6に記載の検査用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器などに実装されるICパッケージ等の電子デバイスは、一般に、配線基板に実装される前の段階でその潜在的欠陥を除去するための試験が検査用ソケットを用いて行われる。検査用ソケットは、テストボード又は実装基板とされたプリント配線基板に装着される。
【0003】
上記のようなソケットとして、例えば特許文献1には、可動台座付きソケットが開示されている。特許文献1に開示されている可動台座付きソケットは、可動台座(第4ベース)に形成された貫通孔でパッケージの半田ボールとプローブの端子とが接触する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-326048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成においては、プローブの端子が第4ベースに形成された貫通孔内で傾く可能性があり、半田ボールとの接触不良や端子の損傷が生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、検査デバイスに接触する端子の傾きを補正して、端子と電極との接触を安定化させることができる検査用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の検査用ソケットは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様に係る検査用ソケットは、軸線方向に沿って延在する筒状体からなり該筒状体の外周面が半径方向に張り出したフランジ部が設けられたバレルと、基端が前記バレルの一端側に収容されるとともに先端が検査デバイスに接触するデバイス側端子と、基端が前記バレルの他端側に収容されるとともに先端がテスト基板に接触するテスト基板側端子と、前記バレル内において前記テスト基板側端子及び前記デバイス側端子に接触するバネと、を有しているコンタクト端子と、前記軸線方向に沿って前記コンタクト端子が挿通されるとともに前記軸線方向において前記フランジ部に当接する段部が形成された段付孔を有しているハウジングと、前記ハウジングに対して近接離間可能に設けられ、前記バレルから突出した前記デバイス側端子の先端側が挿通されるとともに前記検査デバイスの電極が収容される収容孔を有している可動台座と、を備え、前記可動台座の前記収容孔には、前記デバイス側端子の前記バレルから突出した部分の外径と略同径とされ、かつ、前記検査デバイスの前記電極のサイズに依存しない内径を有するガイド部が形成されている。
【0008】
本態様に係る検査用ソケットによれば、フランジ部が設けられたバレルとデバイス側端子とテスト基板側端子とバネとを有するいわゆる両可動型のコンタクト端子と、コンタクト端子が挿通されるとともに軸線方向においてフランジ部に当接する段部が形成された段付孔を有しているハウジングと、ハウジングに対して近接離間可能に設けられ、バレルから突出したデバイス側端子の先端側が挿通されるとともに検査デバイスの電極が収容される収容孔を有している可動台座と、を備えているので、ハウジングに形成された段付孔によってフランジ部ごとバレルを押し下げることでテスト基板にプリロードを負荷することができる。このとき、段付孔の段部の位置はバレルの長さ寸法に依存しないので、段部の位置を任意に調整することで、フランジ部を押さえ込む部分のハウジングの厚さ寸法(軸線方向に沿った寸法)を大きくすることができる。これにより、プリロードの反力によってハウジングが変形することを抑制できる。また、段付孔の段部の位置は、フランジ部の位置と対応するものでありバレルの長さ寸法に依存しないので、ハウジングを薄くして、その分、可動台座を厚くすることもできる。これによって、下記のガイド部を形成するに十分な厚さ寸法を可動台座に確保できる。
ここで、可動台座の収容孔には、デバイス側端子のバレルから突出した部分の外径と略同径とされた内径を有するガイド部が形成されているので、デバイス側端子の傾きを補正することができる。これによって、収容孔におけるデバイス側端子と電極(例えば半田ボール)との接触を安定化させることができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記可動台座の前記収容孔には、前記ハウジングから突出した前記バレルが収容されるザグリ部が形成されている。
【0010】
本態様に係る検査用ソケットによれば、可動台座の収容孔には、ハウジングから突出したバレルが収容されるザグリ部が形成されているので、可動台座がハウジングに近接した際に生じ得るバレルと可動台座との干渉を回避できる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記ザグリ部は、隣り合う他の前記ザグリ部と一体的かつ連続的に形成されている。
【0012】
本態様に係る検査用ソケットによれば、ザグリ部は、隣り合う他のザグリ部と一体的かつ連続的に形成されているので、複数のザグリ部をまとめて形成することができる。これによって、効率的にザグリ部を形成することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記可動台座は、前記軸線方向において分割されている。
【0014】
本態様に係る検査用ソケットによれば、可動台座は、軸線方向において分割されているので、1つの可動台座を構成する1部品に対して両面から穴あけ等の加工をせずとも、例えば、表面から加工した2部品の裏面同士を組み合わせて1つの可動台座とすることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記デバイス側端子には、先端に前記バレルと略同径とされた拡径端子部が設けられている。
【0016】
本態様に係る検査用ソケットによれば、デバイス側端子には、先端にバレルと略同径とされた拡径端子部が設けられているので、収容孔に形成されたガイド部とザグリ部とを兼用することができる。また、検査時においては、全体として略一定径のコンタクト端子となりインピーダンスの不整合を除去することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記デバイス側端子及び前記テスト基板側端子には、先端に前記バレルと略同径とされた拡径端子部が設けられている。
【0018】
本態様に係る検査用ソケットによれば、デバイス側端子には、先端にバレルと略同径とされた拡径端子部が設けられているので、収容孔に形成されたガイド部とザグリ部とを兼用することができる。また、検査時においては、全体として略一定径のコンタクト端子となりインピーダンスの不整合を除去することができる。
また、テスト基板側端子にも、先端に前記バレルと略同径とされた拡径端子部が設けられているので、検査時においては、インピーダンスの不整合を除去することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記デバイス側端子は、検査時において前記拡径端子部が前記バレルの前記一端に接触する長さ寸法に設定されている。
【0020】
本態様に係る検査用ソケットによれば、デバイス側端子は、検査時において、拡径端子部がバレルの一端に当接する長さ寸法に設定されているので、検査時において、拡径端子部がバレルの端部に対して安定的に接触する。これによって、デバイス側端子とバレルとの接触抵抗を安定化させることができる。なお、拡径端子部がバレルの端部に当接したうでバレルを更に押し込んだとしても、コンタクト端子はいわゆる両可動型とされているので、押し込みによる変位をテスト基板側端子側で吸収できる。
また、この構成によれば、デバイス側端子の拡径端子部を除いた部分は、検査時において、全てバレルに収容される(外見上で隠れる)ことになる。このため、検査時においては、全体として略一定径のコンタクト端子となりインピーダンスの不整合をより除去することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検査デバイスに接触する端子の傾きを補正して、端子と電極との接触を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る検査用ソケットの正面図及び縦断面図である。
図2】第1実施形態に係るコンタクトプローブの正面図である。
図3】第1実施形態に係るコンタクトプローブの縦断面図である。
図4】第1実施形態に係るコンタクトプローブの平面図である。
図5】第1実施形態に係るコンタクトプローブの平面図である。
図6図1に示すA部の部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装する前の状態を示した図である。
図7図1に示すA部の部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装し、かつ、ICパッケージを可動台座に載置する前の状態を示した図である。
図8図1に示すA部の部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装し、かつ、ICパッケージを可動台座に載置した状態を示した図である。
図9図1に示すA部の部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装し、かつ、ICパッケージを可動台座に装着した状態を示した図である。
図10】第1実施形態に係るザグリ部を示す可動台座の底面図である。
図11】他のザグリ部を示す可動台座の底面図である。
図12】他のザグリ部を示す可動台座の底面図である。
図13図1に示すA部の変形例1に係る部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装し、かつ、ICパッケージを可動台座に載置する前の状態を示した図である。
図14】第2実施形態に係るコンタクトプローブの縦断面図である。
図15図1に示すA部の第2実施形態に係る部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装し、かつ、ICパッケージを可動台座に装着した状態を示した図である。
図16】変形例2に係るコンタクトプローブの縦断面図である。
図17図1に示すA部の変形例2に係る部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装し、かつ、ICパッケージを可動台座に装着した状態を示した図である。
図18図1に示すA部の第3実施形態に係る部分拡大図であって、ソケットをプリント配線基板に実装し、かつ、ICパッケージを可動台座に装着した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態に係る検査用ソケットについて、図面を参照して説明する。
【0024】
[ソケットの概要]
図1には、検査用ソケット10(以下、単に「ソケット10」という。)の正面図及び縦断面図が示されている。
ソケット10は、ICパッケージ30の試験において、プリント配線基板20とICパッケージ30とを導通させる部品である。ソケット10は、例えばテスト基板としてのプリント配線基板20の上面に実装される。また、プリント配線基板20に実装されたソケット10の凹所320には、例えば検査デバイスとしてのICパッケージ30が装着される。
ICパッケージ30としては、BGA(Ball Grid Array)型のものが例示される。また、LGA(Land Grid Array)型やQFP(Quad Flat Package)型のものでもよい。
【0025】
ソケット10は、コンタクトプローブ(コンタクト端子)100Aと、ハウジング200と、可動台座300と、を備えている。ソケット10において、ハウジング200はプリント配線基板20側に配置されており、その上に積層されるように可動台座300が配置されている。
【0026】
ハウジング200と可動台座300との間には台座用バネ401が介設されており、両部材を互いに離間する方向に付勢している。これによって、可動台座300は、ハウジング200に対して弾性的に近接及び離間可能となる。
詳細には、無負荷とすることで可動台座300はハウジング200から離間して、可動台座300をハウジング200側に押し込むことで可動台座300はハウジング200に近接する。
【0027】
このようにして構成されたハウジング200と可動台座300との間には、多数のコンタクトプローブ100Aが立設されて収容されている。
このコンタクトプローブ100Aによって、ソケット10に装着されたICパッケージ30とソケット10が実装されたプリント配線基板20との導通を行う。
【0028】
[コンタクトプローブの詳細]
図2及び図3に示すように、コンタクトプローブ100Aは、バレル110と、上部プランジャ(デバイス側端子)120と、下部プランジャ(テスト基板側端子)130と、バネ140と、を有した、いわゆる両可動型のプローブとされている。
コンタクトプローブ100Aは、無負荷時において、例えばプローブ長が3mm程度とされている。
【0029】
バレル110は、軸線X方向に延在する薄肉の筒状体とされており、上部プランジャ120の基端121、下部プランジャ130の基端131及びバネ140を収容する空間が内部に形成されている。
バレル110の上端(一端)111及び下端(他端)112には、半径方向内側に向かって縮小したカシメが形成されている。
なお、ここでいう「半径方向」とは、軸線Xに対するものである。
【0030】
図2から図5に示すように、バレル110の上端111と下端112との間には、筒状体の外周面から半径方向外側に向かって張り出したフランジ部114が形成されている。フランジ部114の位置は、後述する段付孔210に形成された段部211の位置に対応している。
【0031】
フランジ部114は、図4に示すように、円周方向の全範囲(360°)に亘って形成されていてもよいし、図5に示すように、円周方向の一部範囲にだけ形成されてもよい。また、フランジ部114は、後述する段付孔210に形成された段部211に当接するために形成された部分なので、この機能が発揮されれば図4及び図5に示す形態以外のものであってもよい。
なお、ここでいう「円周方向」とは、軸線Xに対するものである。
【0032】
図3に示すように、上部プランジャ120は、基端121及び先端122を有する略円柱状の端子である。
基端121側は、バレル110の内径と略同径(正確には僅かに小径)とされ、バレル110に収容されている。一方、先端122側は、基端121よりも小径とされ、無負荷時においてバレル110の上端111から突出している。先端122は、いわゆるクラウンカットとされ、ICパッケージ30の半田ボール(電極)31が接触する。
【0033】
上部プランジャ120において、基端121側の部分と先端122側の部分との境界(外径が変化している部分)がバレル110の上端111にあるカシメに当接することで、バレル110に対して進退する上部プランジャ120がバレル110から脱落しないようになっている。
【0034】
下部プランジャ130は、基端131及び先端132を有する略円柱状の端子である。
基端131側は、バレル110の内径と略同径(正確には僅かに小径)とされ、バレル110に収容されている。一方、先端132側は、基端131よりも小径とされ、無負荷時においてバレル110の下端112から突出している。プリント配線基板20に接触する先端132は、丸みを帯びた形状とされている。
【0035】
下部プランジャ130において、基端131側の部分と先端132側の部分との境界(外径が変化している部分)がバレル110の下端112にあるカシメに当接することで、バレル110に対して進退する下部プランジャ130がバレル110から脱落しないようになっている。
【0036】
バネ140は、バレル110の内部に収容されている。
バネ140は、上部プランジャ120の基端121と下部プランジャ130の基端131との間に介設され、軸線Xの方向において両部材を互いに離間する方向に付勢している。これにより、無負荷時において、上部プランジャ120がバレル110の上端111にあるカシメに当接して、下部プランジャ130がバレル110の下端112にあるカシメに当接することになる。
また、上部プランジャ120及び/又は下部プランジャ130を互いに近接する方向に押し込むことで、上部プランジャ120と下部プランジャ130との間には、バネ140の弾性力に起因した反発力が作用することになる。
【0037】
[ハウジングの詳細]
図6に示すように、ハウジング200は、軸線Xの方向において上部ハウジング201及び下部ハウジング202の2部品に分割されており、コンタクトプローブ100Aが軸線Xの方向に沿って挿通される段付孔210が上部ハウジング201及び下部ハウジング202の両部品に亘って連続するように形成されている。
【0038】
上部ハウジング201に穿設された段付孔210には、段部211が形成されている。
段付孔210において、段部211よりも上方の段付孔210の内径は、段部211よりも下方の段付孔210の内径よりも小径とされている。
詳細には、段部211よりも上方の段付孔210の内径は、バレル110に形成されたフランジ部114の外径よりも小径、かつ、バレル110のフランジ部114以外の部分の外径よりも大径とされている。これに対して、段部211よりも下方の段付孔210の内径は、バレル110に形成されたフランジ部114の外径よりも大径とされている。これによって、フランジ部114が段部211に当接するようにしている(図7参照)。
【0039】
図7に示すように、段部211は、プリロードの負荷時において、コンタクトプローブ100A(バレル110)をプリント配線基板20側に押し込む部分である。つまり、段部211よりも上方のハウジング200(上部ハウジング201)にはプリロードの反力が作用する。このため、段部211よりも上方にあるハウジング200の厚さ寸法を適切に確保することで、プリロードの反力に起因した反り(変形)を抑制できる。換言すれば、ハウジング200の強度が確保されるように段部211の位置(軸線Xの方向に沿った位置、厚さ方向の位置)を設定することができる。
また、段部211の位置によってハウジング200(上部ハウジング201)の厚さ寸法を調整することもできる。このため、強度を確保した上でハウジング200を可能な限り薄くして、その分、可動台座300を厚くすることもできる。これにより、後述するガイド部311を形成するに十分な厚さ寸法を可動台座300に確保することができる。
【0040】
図6に示すように、下部ハウジング202に穿設された段付孔210には、縮径部212が形成されている。
縮径部212の内径は、バレル110の外径よりも小径、かつ、下部プランジャ130のバレル110から突出した部分と略同径(正確には僅かに大径)とされている。これによって、コンタクトプローブ100Aが段付孔210から脱落しないようになっている。
【0041】
以上の構成によって、ハウジング200は、コンタクトプローブ100Aを段付孔210で収容・保持するように構成されたことになる。
なお、ハウジング200は、三分割以上で構成されてもよい。
【0042】
[可動台座の詳細]
図1に示すように、可動台座300には、ICパッケージ30が載置・装着される凹所320が形成されている。
図6に示すように、可動台座300には、凹所320において、軸線Xの方向に沿って収容孔310が形成されている。
収容孔310には、上部プランジャ120の先端122側が挿通されるとともに可動台座300に載置されたICパッケージ30の半田ボール31が収容される(図8及び図9参照)。そして、半田ボール31は、収容孔310によって位置決めされる。
【0043】
図6に示すように、可動台座300に穿設された収容孔310には、ガイド部311及びザグリ部312が形成されている。
【0044】
ガイド部311は、収容孔310の上部と下部との間に形成された部分であり、その内径が、上部プランジャ120のバレル110から突出した部分のうち最も太い部分と略同径(正確には僅かに大径)とされている。これによって、上部プランジャ120のバレル110から突出した部分をガイドすることができる。ガイド部311の内径は、半田ボール31のサイズに依存しない。
【0045】
ザグリ部312は、収容孔310の下部に形成された部分であり、上部ハウジング201から突出したバレル110を収容する部分とされている(図9参照)。
図10に示すように、ザグリ部312は、可動台座300の底面に対して円形状に形成されている。この場合、ザグリ部312は、1つの収容孔310に対して1つ形成されている。
なお、ザグリ部312は、必ずしも収容孔310に対して1対1の関係である必要はなく、隣り合うザグリ部312同士が一体的かつ連続的に形成されていてもよい。例えば、図11に示すように、全ての収容孔310に対して1つだけ形成された凹所でもよいし、図12に示すように、複数列に亘って形成された細長いスリット状でもよい。
【0046】
[ソケットの使用について]
以上のように構成されたソケット10は、次のように使用される。
すなわち、図6及び図7に示すように、まず、ソケット10をプリント配線基板20上に実装する。実装前(図6)において、下部プランジャ130の先端132は、下部ハウジング202から突出している(突出量をp1とする)。また、フランジ部114と段部211との間には隙間c1が設けられている。そして、p1>c1となるように、下部プランジャ130の長さ寸法、段部211の位置、フランジ部114の位置が設定されている。
【0047】
実装前(図6)において下部ハウジング202から突出していた下部プランジャ130の先端132は、実装後(図7)においてプリント配線基板20に接触する。これと同時に、コンタクトプローブ100Aは、上方に持ち上げられる。コンタクトプローブ100Aがc1だけ持ち上げられたとき、フランジ部114の上面は段部211に当接する。
このとき、p1>c1とされているため、下部ハウジング202の下面とプリント配線基板20の上面とが接触したとき、p1-c1だけ下部プランジャ130がバレル110内に押し込まれることになる。ここで、下部プランジャ130はバネ140によって付勢されており、これによって、プリント配線基板20にプリロードが負荷される。また、プリロードの反力は、上部ハウジング201の段部211よりも上方の部分(厚さt1で表示)によって押さえ込まれる。
【0048】
図8に示すように、ソケット10をプリント配線基板20上に実装したら、可動台座300に形成された凹所320の底面にICパッケージ30を載置する。このとき、ICパッケージ30の半田ボール31は、可動台座300に形成された収容孔310に収容される。ただし、半田ボール31は、上部プランジャ120の先端122にまだ接触しない。
【0049】
図9に示すように、ICパッケージ30が載置された可動台座300をハウジング200側に押し込む。このとき、半田ボール31は上部プランジャ120の先端122に接触して、更に、上部プランジャ120をバレル110内に押し込む。ここで、上部プランジャ120はバネ140によって付勢されており、これによって、半田ボール31に対して適切な接触力が付与された状態でICパッケージ30がソケット10に装着される。
【0050】
可動台座300をハウジング200側に押し込むに際して、上部プランジャ120は、収容孔310に形成されたガイド部311によってガイドされるので、収容孔310や半田ボール31に対して傾きがあればその傾きが補正される。
【0051】
以上のようにして、ソケット10がプリント配線基板20上に実装され、ソケット10にICパッケージ30が装着された後に、ICパッケージ30の検査が実施される。
【0052】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
フランジ部114が設けられたバレル110と上部プランジャ120と下部プランジャ130とバネ140とを有するいわゆる両可動型のコンタクトプローブ100Aと、コンタクトプローブ100Aが挿通されるとともに軸線Xの方向においてフランジ部114に当接する段部211が形成された段付孔210を有しているハウジング200と、ハウジング200に対して近接離間可能に設けられ、バレル110から突出した上部プランジャ120の先端122側が挿通されるとともにICパッケージ30の半田ボール31が収容される収容孔310を有している可動台座300と、を備えているので、ハウジング200に形成された段付孔210によってフランジ部114ごとバレル110を押し下げることでプリント配線基板20にプリロードを負荷することができる。このとき、段付孔210の段部211の位置はバレル110の長さ寸法に依存しないので、段部211の位置を任意に調整することで、フランジ部114を押さえ込む部分のハウジング200の厚さ寸法を大きくすることができる。これにより、プリロードの反力によってハウジング200が変形することを抑制できる。また、段付孔210の段部211の位置は、フランジ部114の位置と対応するものでありバレル110の長さ寸法に依存しないので、ハウジング200を薄くして、その分、可動台座300を厚くすることもできる。これによって、ガイド部311を形成するに十分な厚さ寸法を可動台座300に確保できる。
【0053】
また、可動台座300の収容孔310には、上部プランジャ120のバレル110から突出した部分の外径と略同径とされた内径を有するガイド部311が形成されているので、上部プランジャ120の傾きを補正することができる。これによって、収容孔310における上部プランジャ120と半田ボール31との接触を安定化させることができる。
【0054】
また、可動台座300の収容孔310には、ハウジング200から突出したバレル110が収容されるザグリ部312が形成されているので、可動台座300がハウジング200に近接した際に生じ得るバレル110と可動台座300との干渉を回避できる。
【0055】
また、ザグリ部312は、隣り合う他のザグリ部312と一体的かつ連続的に形成されていてもよく、複数のザグリ部312をまとめて形成することができる。これによって、効率的にザグリ部312を形成することができる。
【0056】
[変形例1]
図13に示すように、可動台座300を、軸線Xの方向において上部台座301及び下部台座302の2部品に分割してもよい。この場合、収容孔310は、上部台座301及び下部台座302の両部品に亘って連続するように形成され、ガイド部311及びザグリ部312は下部台座302に形成される。
【0057】
この構成によれば、1つの可動台座300を構成する1部品に対して両面から穴あけ等の加工をせずとも、例えば、表面から加工した上部台座301及び下部台座302の裏面同士を組み合わせて1つの可動台座300とすることができる。これによって、加工の効率を向上させることができる。
【0058】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態に係る検査用ソケットについて、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態に係る検査用ソケットは、第1実施形態に係る検査用ソケットに対して上部プランジャの形状及び収容孔の形状が異なり、その他の構成は同一である。このため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図14に示すように、コンタクトプローブ100Bは、いわゆるビッグヘッド方のプローブとされており、上部プランジャ120の先端122には、拡径端子部123が設けられている。
【0060】
拡径端子部123の外径は、バレル110のフランジ部114以外の部分の外径と略同径とされている。これによって、図15に示すように、収容孔310に形成されたガイド部311とザグリ部312とを異径とする必要ながなくなり、ガイド部311とザグリ部312とを兼用できる。
【0061】
拡径端子部123が設けられた上部プランジャ120は、検査時において半田ボール31によってバレル110内に押し込まれたとき、拡径端子部123の下面がバレル110の上端111に敢えて当接するような長さ寸法に設定されてる。これによって、上部プランジャ120がバレル110に対してガタつくこと抑制し、良好な接触状態を保つことができる。また、上部プランジャ120の拡径端子部123よりも下方の部分を全てバレル110内に隠すことができ、インピーダンスの不整合を除去することができる。
【0062】
このように構成された上部プランジャ120において、バレル110に形成されたフランジ部114の下面側にはハウジング200との間に隙間c2が設けられている。これによって、バレル110を更に下方に押し込むことができる余裕を確保しておき、バレル110の機械的拘束を回避している。
【0063】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
上部プランジャ120には、先端122にバレル110と略同径とされた拡径端子部123が設けられているので、収容孔310に形成されたガイド部311とザグリ部312とを兼用することができる。
【0064】
また、上部プランジャ120は、検査時において、拡径端子部123がバレル110の上端111に当接する長さ寸法に設定されているので、検査時において、拡径端子部123がバレル110の上端111に対して安定的に接触する。これによって、上部プランジャ120とバレル110との接触抵抗を安定化させることができる。
【0065】
更に、この構成によれば、上部プランジャ120の拡径端子部123を除いた部分は、検査時において、全てバレル110に収容される(外見上で隠れる)ことになる。このため、検査時においては、全体として略一定径のコンタクトプローブ100Bとなりインピーダンスの不整合をより除去することができる。
【0066】
[変形例2]
図16に示すように、下部プランジャ130の先端132にも、拡径端子部133を設けてもよい。
【0067】
この構成によれば、コンタクトプローブ100Bを全体として略一定径に近付けることができて、上部プランジャ120と同様に、検査時において、インピーダンスの不整合を除去することができる。
【0068】
[第3実施形態]
以下に、本発明の第3実施形態に係る検査用ソケットについて、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態に係る検査用ソケットは、第1実施形態に係る検査用ソケットに対して収容孔の形状が異なり、その他の構成は同一である。このため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
図18に示すように、可動台座700には、軸線Xの方向に沿って収容孔710が形成されている。
収容孔710には、上部プランジャ120の先端122側が挿通されるとともに可動台座700に載置されたICパッケージ30の半田ボール31が収容される(図8及び図9参照)。そして、半田ボール31は、収容孔710によって位置決めされる。
【0070】
可動台座700に穿設された収容孔710には、ガイド部711が形成されている。
【0071】
ガイド部711は、収容孔710の下部に形成された部分であり、その内径が、バレル110のフランジ部114以外の部分の外径と略同径(正確には僅かに大径)とされている。これによって、バレル110の上部ハウジング201から突出した部分をガイドすることができる。
【0072】
上部プランジャ120は、検査時において半田ボール31によってバレル110内に押し込まれたとき、先端122がバレル110内に収容されるような長さ寸法に設定されてる。これによって、上部プランジャ120を全てバレル110内に隠すことができる。
【0073】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
上部プランジャ120は、検査時において、全てバレル110に収容される(外見上で隠れる)ことになる。このため、検査時においては、全体として略一定径のコンタクトプローブ500となりインピーダンスの不整合を除去することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 ソケット(検査用ソケット)
20 プリント配線基板(テスト基板)
30 ICパッケージ(検査デバイス)
31 半田ボール(電極)
100A,100B コンタクトプローブ(コンタクト端子)
110 バレル
111 上端(一端)
112 下端(他端)
114 フランジ部
120 上部プランジャ(デバイス側端子)
121 基端
122 先端
123 拡径端子部
130 下部プランジャ(テスト基板側端子)
131 基端
132 先端
133 拡径端子部
140 バネ
200 ハウジング
201 上部ハウジング
202 下部ハウジング
210 段付孔
211 段部
212 縮径部
300 可動台座
301 上部台座
302 下部台座
310 収容孔
311 ガイド部
312 ザグリ部
320 凹所
401 台座用バネ
500 コンタクトプローブ(コンタクト端子)
700 可動台座
710 収容孔
711 ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18