(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/16 20090101AFI20241211BHJP
H04W 28/084 20230101ALI20241211BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20241211BHJP
H04W 72/541 20230101ALI20241211BHJP
H04W 72/512 20230101ALI20241211BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W28/084
H04W72/0453
H04W72/541
H04W72/512
(21)【出願番号】P 2020197390
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020034858
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 良紀
【審査官】横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200172(JP,A)
【文献】特表2018-538752(JP,A)
【文献】特表2013-511936(JP,A)
【文献】国際公開第2019/032968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局装置と、前記基地局装置と無線接続する端末装置と、前記基地局装置を制御する制御装置と、を有する通信システムにおける前記制御装置であって、
要求品質に基づいて分類された複数のスライスそれぞれの所要無線リソース量を算出し、前記複数の基地局装置ごとに、前記複数のスライスそれぞれにおける、前記基地局装置間の干渉量、前記基地局装置と前記端末装置間の干渉量、および前記端末装置間の干渉量を推定する推定部と、
前記推定した結果に基づいて、第1の基地局装置の無線リソース内に、第1スライス用の第1リソース、前記第1スライスより要求品質が高い第2スライス用の第2リソース、及び使用に制約が課される制約リソースを割り当てる割当部とを有し、
前記割当部は、前記第2リソース及び前記制約リソース以外のリソースを、前記第1リソースとして割り当て、
第2の基地局装置の前記第2スライス用の第3リソースとして使用されているリソースを、前記制約リソースとして割り当てる
制御装置。
【請求項2】
前記第1の基地局装置における前記第1スライス用のリソースの割り当ては、前記第2スライスへの干渉の影響がある第2の基地局装置において割り当てられたリソースとは異なるリソースを割り当てる
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数のスライスは、コアネットワークが構成する構成スライスを、無線環境に応じてさらに分類したスライスである
請求項1記載の制御装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記干渉量の推定において、前記基地局装置それぞれが同一チャネルを使用したときに発生する干渉を推定する
請求項1記載の制御装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記干渉量の推定において、さらに、前記基地局装置それぞれが隣接するチャネルを使用したときに発生する干渉を推定する
請求項4記載の制御装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記干渉量の推定において、前記端末装置が前記基地局装置の構成するセルの端部付近に位置したときに発生する干渉を推定する
請求項1記載の制御装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記干渉量の推定において、前記基地局装置毎のフレーム構成の違い、またはフレームタイミングのオフセット量に基づいて、前記干渉量の影響評価を行う
請求項1記載の制御装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記基地局装置及び前記端末装置間の無線品質の確率分布に基づき、前記要求品質を満たすようスライスを構築する
請求項1記載の制御装置。
【請求項9】
前記推定部は、前記スライスに割り当てる無線リソース量を、前記スライスの最低伝送可能レートと、前記スライスに多重されるトラフィックの属性情報に基づき決定する
請求項8記載の制御装置。
【請求項10】
前記属性情報は、データレート、パケットサイズ、許容遅延時間のうちのいずれか1つ
の情報または組み合わせた情報を含む
請求項9記載の制御装置。
【請求項11】
前記推定部は、前記スライスにおける前記要求品質を満たす最低伝送可能レートを、
前記スライスにおける伝送レートの分布から推定する
請求項8記載の制御装置。
【請求項12】
前記推定部は、無線品質の測定値を前記基地局装置及び前記端末装置の少なくとも一方から収集し、前記測定値に用いられた平滑化に使用した係数に応じて、前記推定した確率分布に対して補正を行う
請求項8記載の制御装置。
【請求項13】
複数の基地局装置と、前記基地局装置と無線接続する端末装置と、前記基地局装置を制御する制御装置と、を有する通信システムの前記制御装置における制御方法であって、
要求品質に基づいて分類された複数のスライスそれぞれの所要無線リソース量を算出し、前記複数の基地局装置ごとに、前記複数のスライスそれぞれにおける、前記基地局装置間の干渉量、前記基地局装置と前記端末装置間の干渉量、および前記端末装置間の干渉量を推定する推定工程と、
前記推定した結果に基づいて、第1の基地局装置の無線リソース内に、第1スライス用の第1リソース、前記第1スライスより要求品質が高い第2スライス用の第2リソース、及び使用に制約が課される制約リソースを割り当てる割当工程とを有し、
前記割当工程において、前記第2リソース及び前記制約リソース以外のリソースを、前記第1リソースとして割り当て、
第2の基地局装置の前記第2スライス用の第3リソースとして使用されているリソースを、前記制約リソースとして割り当てる
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業等が5G通信技術を用いた自営無線ネットワークを独自に構築できる制度として、限定されたエリアで通信事業者以外に5G用周波数を割り当てるローカル5Gが注目されている。
【0003】
例えば、ある企業は、自社の敷地や、他の所有者から委託された敷地においてローカル5G環境を構築することがある。以下、ローカル5Gにおけるネットワーク運用単位をテナントと呼ぶこととする。各テナントでは、例えば、物を生産する工場や物流の倉庫など、様々な運用が考えられる。5G通信ネットワークでは、コアネットワークにおいて、例えば、送受信するデータの重要度や緊急度など、トラフィック毎の要求QoS(Quality of Service)に応じて、スライスを構築し、このスライスを用いて多様なトラフィックを収容する場合がある。
【0004】
5Gに関する技術としては、例えば、以下の特許文献1乃至6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-16875号公報
【文献】特開2016-77017号公報
【文献】特開2017-200172号公報
【文献】国際公開第2019/111317号
【文献】特表2018-538751号公報
【文献】特開2019-021953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば、通信事業者が運用・管理を行う公衆ネットワークとは異なり、個々の事業者が独自に運用を行うローカル5Gにおいては、コアネットワークで設定した各スライスの要求品質を無線ネットワーク側で満たすことができない場合がある。例えば、テナント間、あるいは同一テナント内のセル間において、干渉が発生する場合がある。セル間の干渉制御方法としては、相互に干渉の影響のあるセル間において異なる周波数(チャネル)を割り当てる方法が一般的であり、例えば、無線LAN(Local Area Network)で、このような方法が採用されている。このとき、例えば、ある基地局装置において、トラフィック量は小さいが要求品質が高いスライスと、要求品質が低いスライスが混在している場合に、要求品質が高いスライスの品質を確保できるように、干渉する他の基地局装置との間で異なる周波数(チャネル)を割り当てるように制御するとする。この場合、多くの周波数リソース(チャネル数)が必要となり、ネットワーク全体として無線リソースの利用効率が大幅に低下してしまうことがある。一方、これとは逆に、要求品質が低いスライスの品質を確保できるように、干渉する他の基地局装置との間で異なる周波数(チャネル)を割り当てるように制御するとする。この場合は、要求品質が高いスライスに対して許容できない干渉が存在する無線リソースが割り当てられることがあり、このスライスの要求品質を満たさないことがある。
【0007】
そこで、一開示は、同一の要求品質を有するトラフィックで構成されるスライスの要求品質を満たしつつ、周波数利用効率の低下を抑制する制御装置、及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数の基地局装置と、前記基地局装置と無線接続する端末装置と、前記基地局装置を制御する制御装置と、を有する通信システムにおける前記制御装置であって、要求品質に基づいて分類された複数のスライスそれぞれの所要無線リソース量を算出し、前記複数の基地局装置ごとに、前記複数のスライスそれぞれにおける、前記基地局装置間の干渉量、前記基地局装置と前記端末装置間の干渉量、および前記端末装置間の干渉量を推定する推定部と、前記推定した結果に基づいて、第1の基地局装置の無線リソース内に、第1スライス用の第1リソース、前記第1スライスより要求品質が高い第2スライス用の第2リソース、及び使用に制約が課される制約リソースを割り当てる割当部とを有し、前記割当部は、前記第2リソース及び前記制約リソース以外のリソースを、前記第1リソースとして割り当て、前記第2スライスへの干渉の影響がある第2の基地局装置において割り当てられているリソースを、前記制約リソースとして割り当てる。
【発明の効果】
【0009】
一開示は、同一の要求品質を有するトラフィックで構成されるスライスの要求品質を満たしつつ、周波数利用効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、通信システム10の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、NMSサーバ300の構成例を表す図である。
【
図3】
図3は、同一チャネルを使用するセル間の制御の例を示す図である。
【
図4】
図4は、無線リソースの割当の例を示す図である。
【
図5】
図5は、無線リソースの割当の例を示す図である。
【
図6】
図6は、無線リソース割当処理S1000の処理フローチャートの例を示す図である。
【
図7】
図7は、セル間干渉の測定タイミングの例を示す図である。
【
図8】
図8は、エリア最悪値評価における、端末装置の位置の例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態における、処理1の処理フローチャートの例を示す図である。
【
図13】
図13は、第2の実施の形態における、処理2の処理フローチャートの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態について説明する。
【0012】
<配信システムの構成例>
図1は、通信システム10の構成例を示す図である。通信システム10は、gNodeB200-1~3(以降、gNodeB200と呼ぶ場合がある)、NMS(Network Management System)サーバ300、コアネットワークサーバ500、及びコアネットワーク400を有する。通信システム10は、NMSサーバ300が、各gNodeB200及び図示しない端末装置100に対して、無線リソースの制御を行うシステムである。
【0013】
gNodeB200は、端末装置100との間で無線通信を行う基地局装置である。gNodeB200は、端末装置100と無線通信が可能なエリアであるセルを構成する。gNodeB200は、接続するコアネットワーク400を介して、NMSサーバ300によって無線リソースを制御される。なお、gNodeB200は、それぞれ異なるテナントにおける基地局装置であってもよいし、同一テナントにおける基地局装置であってもよい。なお、
図1において、gNodeB200は3台であるが、2台以下であってもよいし、4台以上であってもよい。
【0014】
NMSサーバ300は、ネットワーク全体の制御を行う制御装置であり、gNodeB200の無線リソースを制御する制御装置であり、例えば、サーバマシンである。NMSサーバ300は、例えば、コアネットワークサーバ500が構成するスライスごとに無線リソースを制御する。また、NMSサーバ300は、例えば、各gNodeBの無線リソースを制御することで、gNodeB200間の干渉を制御する。また、NMSサーバ300は、例えば、コアネットワーク400の制御を行う。
【0015】
コアネットワークサーバ500は、コアネットワーク400における様々な機能を提供するサーバであり、例えば、サーバマシンである。コアネットワークサーバ500は、例えば、様々なトラフィックの要求品質に応じて、スライスを構築する。要求品質は、例えば、伝送レートや遅延量や信頼度などの指標である。例えば、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications:超高信頼低遅延)であれば、要求伝送レートはそれほど高くないが高い信頼性や低遅延が要求される。また、eMBB(enhanced Mobile Broadband)であれば、大容量通信が求められるが、信頼度及び許容遅延量がURLLCに比べて低い。
【0016】
端末装置100(図示しない)は、gNodeB200を介して無線通信を行う装置であり、例えば、スマートフォンやタブレット端末である。また、端末装置100は、工場における製造ロボットや生産ラインに取り付けられた通信モジュール等の装置であってもよい。また、端末装置100は、物流システムにおける、商品管利用のリーダ装置や在庫管理システムに取り付けられた通信モジュール等の装置などであってもよい。
【0017】
通信システム10は、NMSサーバ300が、gNodeB200の無線リソースを管理することで、近接する各gNodeB200が構成する近接セル間の無線リソースの割り当てや干渉を最適化するシステムである。
【0018】
<NMSサーバ300の構成例>
図2は、NMSサーバ300の構成例を表す図である。NMSサーバ300は、CPU(Central Processing Unit)310、ストレージ320、メモリ330、及び通信回路340を有する。
【0019】
ストレージ320は、プログラムやデータを記憶する、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置である。ストレージ320は、無線リソース割当プログラム321、及び基地局装置制御プログラム322を記憶する。
【0020】
メモリ330は、ストレージ320に記憶されているプログラムをロードする領域である。また、メモリ330は、プログラムがデータを記憶する領域として使用されてもよい。
【0021】
通信回路340は、他装置と接続し、通信を行う回路である。通信回路340は、例えば、ネットワークインターフェースカードや、通信ポートなどである。
【0022】
CPU310は、ストレージ320に記憶されているプログラムを、メモリ330にロードし、ロードしたプログラムを実行し、各部を構築し、各処理を実現するプロセッサである。
【0023】
CPU310は、無線リソース割当プログラム321を実行することで、推定部及び割当部を構築し、無線リソース割当処理を行う。無線リソース割当処理は、接続する(制御する)gNodeB200に対して、無線リソースを割り当てる処理である。NMSサーバ300は、無線リソース割当処理において、無線アクセスネットワーク(RAN(Radio Access Network))スライス構築処理、所要無線リソース量推定処理、TDDフレーム構築設定処理、セル間干渉量推定処理、干渉関係推定処理、リソース割当処理を行う。
【0024】
CPU310は、無線リソース割当プログラム321のRANスライス構築モジュール3211を実行することで、推定部及び割当部を構築し、RANスライス構築処理を行う。RANスライス構築処理は、コアネットワークで構築されたスライスを、RAN環境に応じて細分化したRANスライスを構築する処理である。なお、NMSサーバ300は、RANスライス構築処理において、コアネットワークで構築されたスライスを、そのままRANスライスとしてもよい。
【0025】
CPU310は、無線リソース割当プログラム321の所要無線リソース量推定モジュール3212を実行することで、推定部及び割当部を構築し、所要無線リソース量推定処理を行う。所要無線リソース量推定処理は、RANスライスごとに必要な無線リソース量を推定(算出)する処理である。
【0026】
CPU310は、無線リソース割当プログラム321のTDDフレーム構成設定モジュール3213を実行することで、推定部及び割当部を構築し、TDDフレーム構成設定処理を行う。TDDフレーム構成設定処理は、所要無線リソース量に基づき、TDDフレーム構成を決定し、決定したTDDフレームを設定する処理である。
【0027】
CPU310は、無線リソース割当プログラム321のセル間干渉量推定モジュール3214を実行することで、推定部及び割当部を構築し、セル間干渉量推定処理を行う。セル間干渉量推定処理は、セル間の干渉量を、RANスライスごとに推定する処理である。
【0028】
CPU310は、無線リソース割当プログラム321のセル干渉関係推定モジュール3215を実行することで、推定部及び割当部を構築し、セル干渉関係推定処理を行う。セル干渉関係推定処理は、セル間の干渉関係を、RANスライスごとに推定する処理である。
【0029】
CPU310は、無線リソース割当プログラム321のリソース割当モジュール3216を実行することで、推定部及び割当部を構築し、リソース割当処理を行う。リソース割当処理は、推定したセル間の干渉関係に基づいて、優先度の高い(要求品質の高い)RANスライスから順に、スライスの要求品質を満たすことができる無線リソースを割り当てる処理である。
【0030】
CPU310は、基地局装置制御プログラム322を実行することで、基地局装置制御処理を行う。基地局装置制御処理は、決定した無線リソースを各gNodeB200に通知し、実行させる処理である。
【0031】
<同一チャネル干渉制御>
図3は、同一チャネルを使用するセル間の制御の例を示す図である。
図3(1)に示すように、例えば、最小割当て単位を50MHzとして4.5G帯において利用可能な帯域である200MHz域を分割すると、4つのチャネルに分割することができる。
【0032】
図3(2)は、15のセル及び、各セルが使用するチャネルの割り当て例を示す図である。
図3(2)に示すように、互いに隣接するセルに対しては、同じチャネルを使用しないように各セルにチャネルを割り当てる。しかし、例えば、セルC1とセルC2のように、互いに隣接はしないものの、同じチャネル1を割り当てられたセル同士は、互いに干渉する場合がある。そこで、NMSサーバ300は、上記の最小割当て単位において、多様なQoSフロー(またはスライス)を考慮したセル間の無線リソース制御を行う。
【0033】
図4は、無線リソースの割当の例を示す図である。
図4は、異なる要求品質を持つ2種類のトラフィックが混在する環境を示している。一つは、高速大容量を要求品質とするeMBB(enhanced Mobile Broadband)通信である。もう一つのトラフィックは、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications:超高信頼低遅延)である。工場等においては、例えば、製造装置のリアルタイム制御等においてURLLCスライスが使用され、カメラによるラインの監視等にeMBBスライスが使用されることがある。この場合、製造装置のリアルタイム制御が高い信頼度で行われることが最優先となり、通信においてはeMBBスライスに対してURLLCスライスの優先度が高く設定される。以下、eMBBは、URLLCスライスに比べ、比較的優先度が低いものとする。
【0034】
NMSサーバ300は、
図4に示すように、eMBB用の無線リソースとして、セルC1及びセルC2に対して、同じ周波数帯域を割り当てる。そして、NMSサーバ300は、eMBB用の無線リソース以外のチャネルの周波数を2つに分割し、セルC1が高優先で使用する周波数帯域をC2においては制約有りの周波数帯域とし、セルC2が高優先で使用する周波数帯域をセルC1においては制約有りの周波数帯域とする。制約有りの周波数帯域における制約は、例えば、使用することを禁止された状態を示す。また、制約は、送信出力の制限や、ビーム方向の制限など、もう一方のセルに対する干渉を抑制するための制約を含む。
【0035】
図4に示すように、セルC1及びセルC2が高優先用の無線リソースを使用するとき、もう一方のセルでは当該無線リソースに使用が制限されることで、高優先の通信を相互の干渉が小さいリソース上において実施することができる。
【0036】
図5は、無線リソースの割当の例を示す図である。NMSサーバ300は、
図5に示すように、eMBB用の無線リソースとして、セルC1及びセルC2に対して、同じ周波数帯域を割り当てる。そして、NMSサーバ300は、eMBB用の無線リソース以外のチャネルの周波数を、セルC2においては高優先で使用する周波数帯域とし、セルC1においては制約有の周波数帯域とする。例えば、セルは、使用される環境によっては、高優先のデータ通信を行う必要がない場合がある。例えば、セルC1では高優先のデータ通信が不要である場合、
図5に示すような割り当て方式であってもよい。
図5の割当を行うことで、
図4と同様の効果を得ることができる場合がある。
【0037】
<無線リソース割当処理>
NMSサーバ300における無線リソース割当処理について説明する。NMSサーバ300は、無線リソースを割り当てるとき、無線リソース割当処理S1000を実行する。
【0038】
図6は、無線リソース割当処理S1000の処理フローチャートの例を示す図である。NMSサーバ300は、無線リソース割当処理S1000において、各gNodeB200におけるRANスライスを構築し(S1100)、RANスライス毎の所要無線リソース量を推定し(S1200)、TDDフレーム構成を設定し(S1300)、セル間干渉量を推定し(S1400)、RANスライス毎のセル間の干渉関係を推定し(S1500)、RANスライスへのリソース割当を行う(S1600)。NMSサーバ300は、無線リソース割当処理S1000において、処理1~処理6を繰り返す。NMSサーバ300は、例えば、定期的に無線リソース割当処理S1000を行う。以下、各処理について説明する。
【0039】
<処理1:RANスライスの構築>
処理1において、NMSサーバ300は、RAN(Radio Access Network)スライスの構築を行う。NMSサーバ300は、処理1において、コアネットワークにおいてQoSに基づいて構築されたスライスを、さらにRANの特性に基づいて細分化したRANスライスを構築する。RAN特性に基づいて細分化されるため、RANスライスに対して無線リソースを割り当てるとき、RAN特性に応じた、より適切な無線リソースに割り当てを行うことが可能となる。
【0040】
例えば、NMSサーバ300は、端末装置100のセル内におけるgNodeB200との位置関係に基づき、RANスライスを構築する。位置関係は、例えば、通信中にgNodeB200と端末装置100との距離を含む。NMSサーバ300は、同一QoSのスライスを、例えば、セル端(セルの端部付近)に位置する端末装置100のトラフィックで構成するRANスライスと、それ以外の端末装置100のトラフィックで構成するRANスライスに細分化する。これにより、NMSサーバ300は、FFR(Fractional. Frequency Reuse)における無線リソースの割当と同等な無線リソースの割当てを行うことができる。FFRとは、例えば、基地局装置から遠いセル端に位置する端末装置と、基地局装置と近いセル中心付近に位置する端末装置とで、割り当てる無線リソースの周波数帯域を分離し、部分的に周波数繰り返しを行う技術である。
【0041】
また、NMSサーバ300は、端末装置100毎にRANスライスを構築してもよい。これにより、端末装置100毎のRAN特性に応じた無線リソースの割当が可能となる。
【0042】
なお、NMSサーバ300は、上述したRANスライス構築のため、端末装置100の位置情報や無線状態などを収集してもよい。
【0043】
さらに、NMSサーバ300は、コアネットワークで構築されたスライスを、細分化せず、そのままRANスライスとしてもよい。例えば、コアネットワーク側で十分に細分化されたスライスが構築されている場合、コアネットワークで構築されたスライスと一意に対応づけてRANスライスを構築する。
【0044】
<処理2:RANスライス毎の所要無線リソース量の推定>
処理2において、NMSサーバ300は、各gNodeB200におけるRANスライス毎の所要無線リソース量を推定(算出)する。
【0045】
NMSサーバ300は、スライス毎の所要パケットサイズを算出する。NMSサーバ300は、例えば、コアネットワーク側のスライス構築時に設定(指定)されるGFBR(Guaranteed Flow Bit Rate)、MFBR(Maximum Flow Bit Rate)、PDB(Packet Delay Budget)、Averaging Window、TTI(Transmission Time Interval)長など(参考文献:3GPP TS.23.501)に基づいて算出する。例えば、以下の式(1)で算出する。
【0046】
パケットサイズ=MFBR(又はGFBR)×TTI長・・・式(1)
(TTI<PDB, 1スロット/TTI)
なお、式(1)は、例えば、再送を考慮しない式である。式(1)を用い、上り/下りのパケットサイズを算出する。
【0047】
次に、NMSサーバ300は、パケット伝送に必要な無線リソース量を算出する。NMSサーバ300は、あらかじめ作成した伝搬環境マップに基づき、MCS(Modulation and Coding Scheme)を決定する。伝搬環境マップは、例えば、過去の測定結果やシミュレーション結果などから生成される。また、MCSの決定において、干渉がないことを想定してもよいし、許容されるレベルの干渉があることを想定してもよい。
【0048】
NMSサーバ300は、決定したMCSに基づき、推定した上記の所要パケットサイズの伝送に必要な上り/下りのリソースブロック数を算出する。なお、NMSサーバ300は、干渉がないことを前提としたMCSでリソースブロック数を算出すると、実際の環境では容量不足になる場合があるため、所定量のマージンを加算したリソースブロック数を算出してもよい。
【0049】
NMSサーバ300は、gNodeB200毎に、必要なリソースブロック数を算出する。NMSサーバ300は、例えば、gNodeB200に無線接続する端末装置100が必要とするリソースブロック数の合計値を、当該gNodeB200が必要なリソースブロック数として算出する。
【0050】
<処理3:TDDフレーム構成の設定>
処理3において、NMSサーバ300は、TDD(Time Division Duplex)フレームの構成を設定する。NMSサーバ300は、処理2において推定(算出)した所要リソース量に基づいて決定する。
【0051】
NMSサーバ300は、例えば、同一テナント内のgNodeB200間で同一のフレーム構成である場合、そのテナントにおける平均負荷や、クリティカルセル(例えば、最も通信量も多いセル、最も優先度の高いトラフィックの伝送を行うセルなど)の負荷バランスに応じて、TDDフレームの構成を決定する。
【0052】
なお、NMSサーバ300は、TDDフレーム構成が固定で設定されている(TDDフレーム構成を変更できない)場合、当該処理3を行わなくてもよい。
【0053】
<処理4:セル間干渉量推定>
処理4において、NMSサーバ300は、2セル間(gNodeB200間、gNodeBと端末装置間、および端末装置間)の干渉量をスロット毎に推定する。スロットは、処理3において決定したTDDフレーム構成に従う。NMSサーバ300は、他セルのgNodeB200及び端末装置と、自セルのgNodeB200及び端末装置との間の干渉について推定及び測定を行う。な環境モデルを使用し、干渉量の推定を行う。環境モデルは、セル(gNodeB200、端末装置)やテナントの配置関係や伝搬環境をモデル化したもので、敷地や建物のレイアウト情報等から作成される。環境モデルは、例えば、端末装置の位置、送受信に適用するアンテナビームパターン、送信電力などが含まれる。なお、無線リソース割当処理の繰り返し実行にともない、処理4も繰り返し実行される。このとき、使用する環境モデルも逐次更新する。これにより、常に最新の環境モデルを使用することができ、より実環境に近い推定結果が得られる。
【0054】
NMSサーバ300は、干渉量の推定において、基地局装置毎のフレーム構成の違いに基づいて干渉量の影響を評価する。またNMSサーバ300は、フレームタイミングのオフセット量(フレーム構成の差異や、送信タイミングの差異など)に基づいて、干渉量の影響評価を行う。これにより、NMSサーバ300は、例えば、基地局装置ごとにフレームの送信タイミングやフレーム長などが異なり、上り下りの信号の送信タイミングが重複する場合を考慮した干渉量の評価を行うことができる。
【0055】
図7は、セル間干渉の測定タイミングの例を示す図である。
図7は、セル1、セル2それぞれの1スロットにおける上り(UL)及び下り(DL)の送信区間の例を示す。なお、
図7は、セル1及びセル2でフレーム同期が行われている場合の図であるが、フレーム同期はとれていない場合でも、測定区間の考え方は同様である。
【0056】
なお、処理4では、同一チャネルでの干渉量に加え、隣接チャネルでの干渉量も推定してもよい。隣接チャネルの干渉量の推定においては、例えば、隣接チャネルからの漏洩電力を考慮する。また、例えば、セル間でシンボル同期しており、サブキャリア間隔が同一である場合、隣接キャリアによる影響は少ない(限定的)であると判断し、隣接キャリア干渉の推定を行わなくてもよい。
【0057】
区間(a)は、セル1の下り通信とセル2の下り通信が重なる区間である。これは、セル1において、セル1で下り信号(電波)の受信を行う端末装置における、隣接するセル2のgNodeB200が送信する電波による干渉度合いを測定する区間である。また、セル2において、セル2で下り信号の受信を行う端末装置における、隣接するセル1のgNodeB200が送信する電波による干渉度合いを測定する区間である。
【0058】
区間(b)は、セル1の上り通信とセル2の上り通信が重なる区間である。これは、セル1において、セル1のgNodeB200の受信における、隣接するセル2で通信を行う端末装置が送信する電波による干渉度合いを測定する区間である。また、セル2において、セル2のgNodeB200の受信における、隣接するセル1で通信を行う端末装置が送信する電波による干渉度合いを測定する区間である。
【0059】
区間(c)は、セル1において、セル1の下り通信とセル2の上り通信が重なる区間である。これは、セル1で下り信号の受信を行う端末装置における、隣接するセル2で通信を行う端末装置が送信する電波による干渉度合いを測定する区間である。 区間(d)は、セル2において、セル1の下り通信とセル2の上り通信が重なる区間である。これは、セル2のgNodeBの受信における、隣接するセル1のgNodeB200が送信する電波による干渉度合いを測定する区間である。なお、上記の2セル間でTDDフレーム構成が同一の場合は、区間(c)および(d)が無いため、これら干渉量の推定を行う必要はない。
【0060】
なお、上記のセル間干渉量の推定は、エリアにおける最悪値を用いて評価を行ってもよい。これは、例えば、各セルのセル端に位置する端末装置、あるいは、各セルのセル端に端末装置が位置すると仮定し、セル間干渉を推定または測定する処理である。
【0061】
図8は、エリア最悪値評価における、端末装置の位置の例を示す図である。
【0062】
パターン1は、gNodeB200-1が端末装置100-1に信号を送信するタイミングにおける測定パターンの例を示す図である。gNodeB200-1は、端末装置100-1と通信中であり、端末装置100-1に下りの信号S1を送信している。端末装置100-1は、例えば、gNodeB200-1のセル端であり、隣接するgNodeB200-2及びgNodeB200-2と通信する端末装置100-2と近傍する位置に存在する。これにより、端末装置100-1は、自セルのgNodeB200-1からの信号の受信強度が弱く、他セルのgNodeB200-2及び他セルと通信中の端末装置100-2からの信号の受信強度が強い、劣悪な環境に位置することとなる。
【0063】
端末装置100-1が信号S1を受信するタイミングで、gNodeB200-2が送信する下り信号を測定することで、タイミング(a)における干渉を測定(推定)する。また、端末装置100-1が信号S1を受信するタイミングで、端末装置100-2が送信する上り信号を測定することで、タイミング(c)における干渉を測定(推定)する。
【0064】
パターン2は、端末装置100-1がgNodeB200-1に信号を送信するタイミングにおける測定パターンの例を示す図である。端末装置100-1は、gNodeB200-1に、上りの信号S2を送信している。端末装置100-1は、例えば、gNodeB200-1のセル端に位置する。また、隣接セルの端末装置100-2は、gNodeB200-1の近傍に位置する。これにより、gNodeB200-1は、自セルの端末装置100-1の信号の受信強度が弱く、他セルの端末装置100-2からの信号の受信強度が強い、劣悪な環境に位置することとなる。なお、gNodeB200-1及びgNodeB200-2の位置は、固定されているものとする。
【0065】
gNodeB200-1が信号S2を受信するタイミングで、端末装置100-2が送信する上り信号を測定することで、タイミング(b)における干渉を測定(推定)する。また、gNodeB200-1が信号S2を受信するタイミングで、gNodeB200-2が送信する下り信号を測定することで、タイミング(d)における干渉を測定(推定)する。
【0066】
<処理5:RANスライス毎の干渉関係推定>
処理5において、NMSサーバ300は、RANスライス毎のセル間干渉関係を推定する。NMSサーバ300は、セル毎、RANスライス毎に、与干渉セルを特定し、影響が大きいセルを決定する。
【0067】
NMSサーバ300は、セル毎、RANスライス毎に、与干渉セルを、以下の優先順位(Tier)で決定する。
【0068】
Tier1:処理4で算出した、1つの他セルからの同一チャネル干渉量(a)~(d)から実効的な下りリンク干渉および上りリンク干渉の推定を行い、推定した両者のうち、1つでもスライス毎に設定した許容値を超えるセルを、そのスライスにおける与干渉セルと判定する。実効的な下りリンク干渉は、両セルが同一のTDDフレーム構成であれば(a)の干渉量と同一であり、異なるTDDフレーム構成であれば、区間(a)と(c)の比率に応じて区間(a)、(c)の干渉量をもとに計算を行う。実効的な上りリンク干渉は、両セルが同一のTDDフレーム構成であれば(b)の干渉量と同一であり、異なるTDDフレーム構成であれば、区間(b)と(d)の比率に応じて区間(b)、(d)の干渉量をもとに計算を行う。隣接チャネル干渉(同一周波数ではないが、隣接する周波数帯域の電波による干渉)についても、同様の判定を行い、干渉がある場合、隣接チャネル干渉ありのセルとして記憶する。
【0069】
Tier2:Tier1の与干渉セルを除き、2セルからの同一チャネルの干渉の和が許容値を超える場合、この2セルのうち、干渉レベルが高いほうのセルを、与干渉セルと判定する。隣接チャネル干渉についても、同様の判定を行う。
【0070】
Tier3:Tier1、2の与干渉セルを除き、3セルからの同一チャネルの干渉の和が許容値を超える場合、この3セルのうち、干渉レベルが最大のセルを、与干渉セルと判定する。隣接チャネル干渉についても、同様の判定を行う。
【0071】
なお、Tier4以降の優先順位を用意し、セル数を増やし、同様の処理を行ってもよい。
【0072】
<処理6:RANスライスへのリソース割当>
処理6において、処理5で決定した与干渉セル毎に、干渉制御(無線リソースの割当)を行う。
【0073】
NMSサーバ300は、例えば、2つのセルが相互に干渉している場合(相互に相手側セルを与干渉セルと判定した場合)、与干渉側セルに割り当てるリソースとは重ならないリソースを被干渉側のセルに割り当て、与干渉側セルに割り当てるリソースは、被干渉側セルでは制約付きリソースとして設定することで、互いの干渉が抑制され、干渉度合いを所定の値以下とすることが可能となる。制約付きリソースは、例えば、スケジューリング時に制約のあるリソース(例えば、スケジューリングの禁止など)である。
【0074】
NMSサーバ300は、Tier1で決定した与干渉セルを最も優先度が高い干渉セルとみなし、最も干渉を抑制できる割り当て方法を行う。一方、NMSサーバ300は、Tier2以下で決定した与干渉セルについては、上位のTierで割り当てた以外のリソースを使用し、干渉を抑制する。以下、リソース割当について説明する。
【0075】
図9は、リソース割当の例を示す図である。例えば、セル1とセル2は、フレーム同期しており、サブキャリア間隔(SCS(Sub Carrier Spacing))が60kHz、スロット長が0.25ms、1サブフレームは4スロットで構成されるものとする。なお、
図9は、セル1及びセル2が同一のスロットフォーマットを使用する例を示す図である。
【0076】
NMSサーバ300は、セル1のBWP(Bandwidth part:周波数帯域幅)1を、優先度が高いRANスライス(高要求スライス:例えば、URLLC)用リソースとして割り当てる。そして、NMSサーバ300は、セル1のBWP2を、使用しない制約(Retricted)リソースとして割り当てる。
【0077】
一方、NMSサーバ300は、セル2のBWP1を、使用しない制約リソースとして割り当てる。
【0078】
そして、NMSサーバ300は、セル2のBWP2を、優先度が高いRANスライス用として割り当てる。
【0079】
さらに、NMSサーバ300は、セル1及び2のBWP3を、優先度が低いRANスライス(例えば、eMBB)用として割り当てる。
【0080】
図9において、セル1は高優先度のRANスライス用としてBWP1を使用し、セル2はBWP1を使用しない(あるいは制約リソースとする。以下同様)。また、
図9において、セル2は高優先度のRANスライス用としてBWP2を使用し、セル1はBWP2を使用しない。このように、所定の周波数帯域を、セル毎に高優先度のRANスライス用のリソースとして割り当てることで、セル間における優先度の高いRANスライスに対する干渉を抑制することができる。
【0081】
図10は、リソース割当の例を示す図である。
図10は、各スライスに割り当てされるBWPが
図9と同等であるが、セル1とセル2とでは、スロットフォーマットが異なる。隣接チャネル干渉を適切に制御可能であれば、セル間で異なるスロットフォーマットを使用してもよい。
【0082】
図11は、リソース割当の例を示す図である。
図11に示すように、NMSサーバ300は、BWP1を、セル1では高優先度のRANスライス用リソースとし、セル2では未使用リソースとすることで、干渉を抑制している。このように、一方のセル(この場合セル2)が高優先度のRANスライスを使用しない場合、一方のセルには高優先度のRANスライス用のリソースを割り当てなくてもよい。また、このように、周波数帯域を分別することでRANスライス用のリソースを割り当てる場合、
図11に示すように、スロット長がセル毎に異なってもよい。
【0083】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態において、無線リソース割当処理S1000における処理1(RANスライスの構築)及び処理2(RANスライス毎の所要無線リソース量推定)について説明する。
【0084】
NMSサーバ300は、ユーザ毎に異なる無線伝送路の品質や要求品質を持つトラフィックに対して、適切なRANスライスを用意し、各RANスライスに適切な無線リソースを割り当てること必要がある。要求品質の指標は、例えば、BLER(BLock Error Rate)などのエラーレート、許容遅延時間、及び所定空間における要求を満たす空間量の割合を示す場所率などを含む。
【0085】
要求品質が高いユーザに対して適切なRANスライスを割り当てるために、品質の高いRANスライスを用意する必要がある。しかし、このRANスライスに対して、必要以上にマージンを取った無線リソースを割り当てると、リソース利用効率が低下する場合がある。
【0086】
第2の実施の形態では、要求品質が高いユーザに適用し、かつリソース利用効率の低下を抑制する処理1及び処理2を提供する。
【0087】
<処理1:RANスライスの構築>
RANスライス構築において、例えば、ユーザ毎の平均無線品質(例えば平均SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio))を、RANスライス毎に定められたしきい値と比較することによりRANスライスを選択する方式がある。この方式では、発生頻度は低いものの、無線品質が平均値よりも大きく劣悪である場合、当該ユーザの要求品質が確保できない場合がある。
【0088】
第2の実施の形態のRANスライス構築において、ユーザ毎の無線品質の確率分布を推定し、この分布の形状を参照することにより、あるトラフィックの極めて高い所要品質(稀にしか発生しない品質劣化も許容しない品質)を満たせるRANスライスを構築し、選択する。無線品質は、例えば、基地局装置と端末装置間の無線品質や、基地局装置間、端末装置間の無線品質を含む。
【0089】
図12は、第2の実施の形態における処理1の処理フローチャートの例を示す図である。NMSサーバ300は、各Qosフローの5QIに基づいて、マッピングするRANスライス候補を決定する(S1100-1)。5QIは、例えば、プライオリティレベル、パケット遅延バジェット、パケットエラーレート、平均ウィンドウサイズ、最大データバースト量などのQos特性に関連する指標を含む。
【0090】
NMSサーバ300は、UEの受信SIR値の測定をRANノード(例えばgNodeB、端末装置など)に指示し、測定結果を取得する(S1100-2)。
【0091】
そして、NMSサーバ300は、UE(端末装置)毎のSIRの分布を推定する(S1100-3)。推定方法としては、例えば、測定値が十分に得られる場合、ヒストグラム(確率分布)を算出する。また、推定方法としては、例えば、測定値が十分に得られない場合、ベイズ推定を適用し、ヒストグラムを算出する。
【0092】
NMSサーバ300は、ヒストグラムから分布の裾部分を、高精度で推定することは困難であるため、尤度分布を正規分布としたベイズ推論の分散(分散値)の推定や、ベイズ予測区間の推定を行う。UE毎の分布は、単一の対数正規分布で近似可能であり、解析的に求めることができる。NMSサーバ300は、UEから報告された測定値はL3フィルタリングが適用されているため、推定した分散値に対してフィルタ係数に応じた補正を行う。すなわち、NMSサーバ300は、測定値に用いられた平滑化処理において使用した係数(フィルタ係数)に応じて、推定した分散値を補正する。L3フィルタリングは、例えば、端末装置における測定結果に対して実施されるフィルタリングである。NMSサーバ300は、フィルタリングに使用された係数を考慮して確率分布を補正することで、より正確な確率分布を作成することができる。
【0093】
NMSサーバ300は、UEのSIR分布予測区間とRANスライス毎の所要SIRしきい値との比較により、QoSフロー毎のRANスライスを決定し(S1100-4)、処理を終了する。
【0094】
<処理2:RANスライス毎の所要無線リソース量の推定>
NMSサーバ300は、各RANスライスに実際に割り当てる無線リソース量は、上述したトラフィックの要求品質を満たせるように決定(推定)する。
【0095】
第1の実施の形態における式(1)で示した所要パケットサイズは、1ユーザの伝送に必要なサイズである。スライスには複数ユーザのパケットが多重されるため、スライスの所要サイズを決定するために、多重化後のスライス所要伝送レートを決定する。
【0096】
この方法として、一つのスライスに属する全てのユーザについて、所要パケットサイズを算出し、算出結果を加算した値をスライス所要伝送レートとする方法がある。この方法では、全てのユーザがMFBRで規定される最大レートで、かつ全てのユーザが同時に多重された場合の見積もりとなるため、過剰な無線リソース割り当てとなる場合がある。
【0097】
そこで、第2の実施の形態において、NMSサーバ300は、各トラフィックの特性(例えば、パケット到着間隔、到着パケットサイズ、許容最大遅延など)や、多重するユーザ数等を考慮し、各トラフィックの要求品質を満たす必要最低限のスライス伝送レートを決定する。NMSサーバ300は、例えば、SINR確率密度分布の形状を参照し、極めて高い要求品質を満足する最低SINR値を抽出し、最低SINR値に基づき、収容トラフィックの所要遅延特性を満たす無線リソース量を決定する。
【0098】
NMSサーバ300は、RANスライスに割り当てる無線リソース量を、例えば、RANスライスの最低伝送可能レートと、RANスライスに多重されるトラフィック(UE)の属性情報に基づき決定する。属性情報は、例えば、パケットサイズである。また、属性情報は、データレートや許容遅延時間なども含む。
【0099】
図13は、第2の実施の形態における処理2の処理フローチャートの例を示す図である。NMSサーバ300は、各RANスライスのトラフィック情報と所要QoS(許容遅延量)に基づき、所要伝送レートをSNC(Stochastic Network Calculus)により算出する(S1200-1)。
【0100】
NMSサーバ300は、各RANスライスの所要RB数(初期値)を、最小MCS=MCS0(初期値)と想定して算出する(S1200-2)。なお、処理S1200-2は、要求される信頼度が高くない場合(所定値より低い場合)や、事前にSIR/MCS分布に関する十分な情報が得られる場合は、実行されなくてもよい。
【0101】
NMSサーバ300は、各RANスライスの最新のSIR/MCS分布に基づき、ベイズ予測区間を推定し、RANスライス毎の最小MCS(MCSmin)を推定する(S1200-3)。推定方法としては、MCMCや粒子フィルタを用いる方法もあるが、RANスライスのSIR分布が混合モデルとなるため計算負荷が大きい。そこで、NMSサーバ300は、スライス構成UEの個別SIR分布から、推定を行う。
【0102】
NMSサーバ300は、各RANスライスの所要RB数(更新値)を、上記で推定した最小MCS(MCSmin)と想定して計算(データ同化)し(S1200-4)、処理を終了する。
【0103】
第2の実施の形態では、確率分布から最低伝送可能レートを推定(算出)することで、必要以上にマージンを取った過剰な無線リソースの割当を防止しつつ、無線品質が平均値よりも大きく劣悪である場合でも、ユーザの要求品質が確保できる。
【0104】
[その他の実施の形態]
第1及び第2の実施の形態で示した無線リソースの割当は、一例である。よって、例えば、スロットの構成や、サブフレームの構成は、変更されてもよい。また、第1及び第2の実施の形態において示した無線リソースの割当パターンは、それぞれ組み合わせてもよい。
【0105】
また、上り/下りの割当の配分等は、変更されてもよい。また、無線リソース割当処理において、一部の処理は行われなくてもよい場合がある。例えば、TDDフレーム構成が固定である場合、処理3は行われなくてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10 :通信システム
100 :端末装置
300 :NMSサーバ
310 :CPU
320 :ストレージ
321 :無線リソース割当プログラム
3211 :RANスライス構築モジュール
3212 :所要無線リソース量推定モジュール
3213 :TDDフレーム構成設定モジュール
3214 :セル間干渉量推定モジュール
3215 :セル干渉関係推定モジュール
3216 :リソース割当モジュール
322 :基地局装置制御プログラム
330 :メモリ
340 :通信回路
400 :コアネットワーク
500 :コアネットワークサーバ