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  • 特許-組合せ玉軸受の支持構造 図1
  • 特許-組合せ玉軸受の支持構造 図2
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  • 特許-組合せ玉軸受の支持構造 図5
  • 特許-組合せ玉軸受の支持構造 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】組合せ玉軸受の支持構造
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/077 20060101AFI20241211BHJP
   F16C 33/60 20060101ALI20241211BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F16C35/077
F16C33/60
F16C19/18
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021007699
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112067
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝一
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-097183(JP,U)
【文献】実開昭57-006823(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,21/00-27/08,
33/30-33/66,35/00-39/06,
43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の端部を組合せ軸受で支持する組合せ玉軸受の支持構造において、
前記軸の端部に形成された雄ねじ部と、
前記組合せ軸受の外輪の外周に形成された雄ねじ部と、
前記軸の端部の雄ねじ部に取り付けられて内輪を保持する第1ナットと、
前記外輪の雄ねじ部に取り付けられる第2ナットと、
を含み、
前記第2ナットによって装置本体のフレームに対して前記外輪を引くことにより、前記軸に予張力を付与することを特徴とする組合せ玉軸受の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸の端部を組合せ軸受で支持する組合せ玉軸受の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等に用いられるベアリングとして、従来から複数のアンギュラ玉軸受を組み合わせた組合せ玉軸受が知られている。例えば特許文献1では、背面組合せ形(DB)の軸受が開示されているが、この他にも正面組合せ形(DF)や並列組合せ形(DT)など、軸受の組合せには様々な種類がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-169804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
玉軸受においては、玉と外輪および内輪との間に、転動体である玉が回転するための隙間を形成する必要がある。しかしながら、その隙間が広すぎると、玉の動き幅が大きくなってしまうので、玉軸受には予圧がかけられることがある。そして、例えば送り装置である精密ボールねじのような高い位置精度が要求される軸を支持する場合には、支持軸受の予圧の他に、軸そのものに予張力をかけることもある。
【0005】
図6は、従来の組合せ玉軸受の支持構造について説明する図である。例えば図6では、軸12の一方側を背面組合せ形(DB)の軸受10で支持すると共に、軸12に予張力をかける場合を例示している。内輪14と外輪16との間には、玉15が配置されている。軸受10は軸ナット26と軸の肩12aとの間で締められて予圧が加えられている。このような背面組合せ形(DB)の場合には、予張力負荷を目的としたボルト18によってフレーム22に対して突っ張ることにより軸12に予張力を掛ける。その後、軸ナット26を外し、フレーム22および軸受10を抜き取り、装置本体のハウジング24とフレーム22のフランジとの間にシム20を嵌め込んだ後に、あらためてフレーム22をハウジング24に対して締結する。このような分解、再組立てが必要な理由は、シム20の厚みを決めるためには、ハウジング24とフレーム22のフランジ部のスキマを測定する時点で、狙いとする予張力負荷状態を作り出しておかねばならないからである。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、軸に予張力をかける工程に要する工程数を減らすことで作業者の負担を大幅に軽減することが可能な組合せ玉軸受の支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる組合せ玉軸受の支持構造の代表的な構成は、軸の端部を組合せ軸受で支持する組合せ玉軸受の支持構造において、軸の端部に形成された雄ねじ部と、組合せ軸受の外輪の外周に形成された雄ねじ部と、軸の端部の雄ねじ部に取り付けられて内輪を保持する第1ナットと、外輪の雄ねじ部に取り付けられる第2ナットと、を含み、第2ナットによって装置本体のフレームに対して外輪を引くことにより、軸に予張力を付与することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1ナットによって軸に対して軸受の内輪が固定される。そして、第2ナットによって装置本体のフレームに対して外輪を引くことにより、軸に予張力が付与される。このとき、予張力を付与した後に、シムやカラー等のスペーサを嵌め込む必要がない。したがって、予張力を調整した後に軸受やフレームを解体し、再度組み直す作業を行わなくて済む。このため、軸に予張力をかける工程に要する工程数を減らし、作業者の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0009】
当該組合せ玉軸受の支持構造は、外輪の外周に形成された凹面と、第2ナットの回転を固定するカラーとを備え、カラーの内周には外輪の外周の凹面に対応する凸部を有するとよい。かかる構成のようにカラーを設けることにより、軸に対して予張力を付与する際の外輪の回転を防ぐことができる。これにより、装置本体のフレームに対する外輪およびカラーの回転を好適に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる転がり軸受は、軸に予張力をかける工程に要する工程数を減らすことで作業者の負担を大幅に軽減することが可能な組合せ玉軸受の支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態にかかる組合せ玉軸受の支持構造の説明をする図である。
図2】支持構造の分解斜視図である。
図3】支持構造の組立工程を説明する図である。
図4】支持構造の組立工程を説明する図である。
図5】本実施形態の支持構造を適用可能な組合せ玉軸受の他の構成を例示する図である。
図6】従来の組合せ玉軸受について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる組合せ玉軸受の支持構造(以下、単に支持構造100と称する)の説明をする図である。図2は、支持構造100の分解斜視図である。図3および図4は、支持構造100の組立工程を説明する図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の100によって支持する組合せ玉軸受110では、外輪102と内輪104の間に、転動体である玉108が複数配置されている。本実施形態において組合せ玉軸受110は背面組合せ形(DB)のアンギュラ玉軸受である。外輪102は2列が一体に成型されていて、内輪104は2列が分離型になっている。
【0015】
本実施形態において軸106はボールねじのように軸方向に高い位置精度が要求される軸である。軸106の端部には細径部106aが形成されていて、この細径部106aに組合せ玉軸受110の内輪104が嵌め込まれる。また図2に示すように、軸106の端部には雄ねじ部106bと軸溝106cが形成されている。
【0016】
図3(a)に示すように、軸106の端部の雄ねじ部106bには、内輪104を保持する菊座金140と第1ナット120(いわゆる軸ナット)が取り付けられる。
【0017】
菊座金140には内周に1本の爪142が形成されていて、外周に多数の歯144が形成されている。爪142は、軸106の軸溝106cに挿入される。これにより、軸106に対する菊座金140の回転止めをすることができる。
【0018】
第1ナット120を雄ねじ部106bに螺合することで、2つの内輪104は軸の肩106dと第1ナット120に挟まれて固定され、予圧がかけられる。所定の予圧になったところで、図3(b)に示すように菊座金の歯144を折り曲げて第1ナット120の外周のナット溝122に挿入する。これにより、菊座金140に対する第1ナット120の回転止め、ひいては軸106に対する第1ナット120の回転止めを行うことができる。
【0019】
一方、組合せ玉軸受110の外輪102の外周には雄ねじ部102aが形成されている。そして図4(a)に示すように、フレーム109にカラー150が取り付けられ、その上から雄ねじ部102aに第2ナット130(軸ナットと同様の構造の大径のナット)が取り付けられる。
【0020】
カラー150はボルト穴154にボルト160を挿通してフレーム109に締結する。これにより第2ナット130の回転が固定される。カラー150の外周には複数(本実施形態では2本)の歯152が設けられている。
【0021】
第2ナット130を外輪102の外周に形成された雄ねじ部106bに締め込むと、フレーム109に対してカラーを介して外輪102が引かれた状態となる。外輪102が引かれると、組合せ玉軸受110を介して軸106に予張力が付与される。所定の予張力になったところで、図4(b)に示すようにカラー150の歯152を折り曲げて第2ナット130の外周のナット溝132に挿入する。これにより、第2ナット130の回転止めを行い、予張力が保持される。
【0022】
上記構成によれば、軸106に予張力を付与した後に、シムやカラー等のスペーサを嵌め込む必要がない。したがって、予張力を調整した後に組合せ玉軸受110を解体して再度組み直す作業を行わなくてよい。このため、軸106に予張力をかける工程に要する工程数を減らし、作業者の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0023】
なお、他の構成としては、例えば外輪102の外周に凹面を形成し、これに対応する凸部をカラー150の内周に形成してもよい。かかる構成によれば、カラー150によって外輪102の回転を止めることができるため、第2ナット130を締め込む際に外輪102の回転を防ぐことができる。
【0024】
図5は、本実施形態の支持構造100を適用可能な組合せ玉軸受の他の構成を例示する図である。本実施形態の支持構造100は、例えば図5(a)に示すように3列の組合せ玉軸受210にも適用することができる。また例えば図5(b)に示すように、最大で4列の組合せ玉軸受310までは本実施形態の支持構造100を適用することが可能である。このように軸受の列数を増やすことにより、軸受の耐荷重及び剛性を向上させることができる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、軸の端部を組合せ軸受で支持する組合せ玉軸受の支持構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…軸受、12…軸、12a…軸の肩、14…内輪、15…玉、16…外輪、18…ボルト、20…シム、22…フレーム、24…ハウジング、26…軸ナット、30…軸受、100…支持構造、102…外輪、102a…雄ねじ部、104…内輪、106…軸、106a…細径部、106b…雄ねじ部、106c…軸溝、108…玉、109…フレーム、110…組合せ玉軸受、120…第1ナット、122…ナット溝、130…第2ナット、132…ナット溝、140…菊座金、142…爪、144…歯、150…カラー、152…歯、154…ボルト穴、210…組合せ玉軸受、310…組合せ玉軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6