(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ポリアミドグラフトポリオレフィン含有熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20241211BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20241211BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L77/00
C08L53/02
(21)【出願番号】P 2021028911
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-022050(JP,A)
【文献】特開2017-105973(JP,A)
【文献】特開2019-023486(JP,A)
【文献】特開2019-099602(JP,A)
【文献】特開2019-023487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 81/00-85/00
F16L 9/00-11/26
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、およびポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物
であって、ポリアミド樹脂(B)の含有量が、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)100質量部を基準として、5~350質量部であり、ポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)の含有量が、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)100質量部を基準として、5~350質量部である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
温度150℃および引張速度500mm/minでの引張試験における最大点応力が1.0MPa以上であることを特徴とする請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数が13cm
3・mm/(m
2・24h)以下であることを特徴とする請求項
1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミド樹脂(B)がポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド610、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
温度250℃および剪断速度243/sにおける溶融粘度が1000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
空気雰囲気下、150℃で168時間静置後の温度25℃および引張速度500mm/minでの引張試験における破断伸びが100%以上であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドグラフトポリオレフィン含有熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳しくは、本発明は、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐久性およびバリア性に優れる冷媒輸送ホースの最内層を形成するのに用いられる樹脂組成物として、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、およびポリオレフィン骨格にポリアミドブロックがグラフトされた構造を有するブロック共重合体を含む樹脂組成物が知られている(特開2019-23486号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2019-23486号公報に記載された樹脂組成物は耐透湿性が充分ではない。
本発明は、良好な押出加工性を有し、かつ高温強度、耐透湿性および柔軟性のバランスに優れる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィンに、ポリアミド樹脂およびポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体を配合することにより、良好な押出加工性を有し、かつ高温強度、耐透湿性および柔軟性のバランスに優れる熱可塑性樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、およびポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0006】
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、およびポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物。
[2]ポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)の含有量が、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)100質量部を基準として、5~350質量部であることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]ポリアミド樹脂(B)の含有量が、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)100質量部を基準として、5~350質量部であることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]温度150℃および引張速度500mm/minでの引張試験における最大点応力が1.0MPa以上であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数が13cm3・mm/(m2・24h)以下であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]ポリアミド樹脂(B)がポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド610、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7]温度250℃および剪断速度243/sにおける溶融粘度が1000Pa・s以下であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8]空気雰囲気下、150℃で168時間静置後の温度25℃および引張速度500mm/minでの引張試験における破断伸びが100%以上であることを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、良好な押出加工性を有し、かつ高温強度、耐透湿性および柔軟性のバランスに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、およびポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0009】
ポリアミドがグラフトされたポリオレフィン(A)は、ポリオレフィンの骨格(主鎖)にポリアミドブロックがグラフト結合したポリマーである。ポリアミドがグラフトされたポリオレフィンを、以下、「ポリアミドグラフトポリオレフィン」ともいう。ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)は、たとえば、官能基を有するポリオレフィン系(共)重合体とその官能基と反応する反応性末端基を有するポリアミドとを溶融状態で混合することにより得ることができる。
【0010】
ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)の骨格となるポリオレフィン(以下「ポリオレフィン主鎖」ともいう。)としては、本発明の効果を奏する限り限定されないが、炭素数2~30のオレフィンモノマーの単独重合体または共重合体が挙げられる。オレフィンモノマーとしては、α-オレフィン、シクロオレフィン、ジエン、ポリエン、芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-ヘキサコセン、1-オクタコセン、1-トリアコンテンなどが挙げられるが、好ましくはエチレン、プロピレンである。
シクロオレフィンとしては、炭素数3~30のシクロオレフィンが好ましく、炭素数3~20のシクロオレフィンがより好ましく、具体的には、シクロペンタン、シクロヘプタン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
ジエンまたはポリエンとしては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエンなどが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、モノまたはポリアルキルスチレン(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなど)、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、メチル安息香酸ビニル、酢酸ビニルベンジル、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、3-フェニルプロペン、4-フェニルプロペン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0011】
ポリオレフィン主鎖は、ポリアミドブロックの反応性末端基と反応し得る官能基を有する不飽和コモノマーの残基を含む。不飽和コモノマーとしては、不飽和エポキシド、不飽和カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物などが挙げられる。
不飽和エポキシドとしては、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルなどの脂肪族グリシジルエーテル;マレイン酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの脂肪族グリシジルエステル;2-シクロヘキセン-1-グリシジルエーテルなどの脂環式グリシジルエーテル;シクロヘキセン-4,5-ジカルボン酸グリシジル、シクロヘキセン-4-カルボン酸グリシジル、5-ノルボルネン-2-メチル-2-カルボン酸グリシジル、エンド-シス-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプタン-2,3-ジカルボン酸ジグリシジルなどの脂環式グリシジルエステルなどが挙げられ、好ましくはメタクリル酸グリシジルである。
不飽和カルボン酸またはその塩としては、アクリル酸、メタクリル酸など、またはそれらの塩が挙げられる。
カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アリルコハク酸無水物、シクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチレンシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,2-ジカルボン酸無水物などが挙げられ、好ましくは無水マレイン酸である。
【0012】
ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)のポリアミドブロックを構成するポリアミドとしては、本発明の効果を奏する限り限定されないが、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1012、ポリアミド1212、ポリアミドPACM12、ポリアミドBMACM10、ポリアミドBMACM12、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ポリアミド66/6T共重合体、ポリアミド6/66共重合体などが挙げられ、なかでもポリアミド6が好ましい。
【0013】
ポリアミドブロックは、ポリオレフィン系(共)重合体の官能基と反応する反応性末端基の残基を有する。反応性末端基は、アミノ基またはカルボキシル基である。反応性末端基を有するポリアミドはただ1つの反応性末端基を有することが好ましい。すなわち、反応性末端基を有するポリアミドは単官能であることが好ましい。反応性末端基を有するポリアミドを単官能にするには、ポリアミドの末端アミノ基をカルボン酸、カルボン酸無水物もしくはジカルボン酸で封止するか、またはポリアミドの末端カルボキシル基をラウリルアミンやオレイルアミンなどのアミンで封止する。
【0014】
ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)は市販されており、本発明に市販品を用いることができる。ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)の市販品としては、アルケマ社製のAPOLHYA(登録商標)が挙げられる。
【0015】
ポリアミド樹脂(B)は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド610、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0016】
ポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)としては、本発明の効果を奏する限り限定されないが、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)が挙げられるが、好ましくは、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)である。ポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体を、以下、単に「ブロック共重合体(C)」ともいう。
【0017】
熱可塑性樹脂組成物中のポリアミド樹脂(B)の含有量は、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)100質量部を基準として、好ましくは5~350質量部であり、より好ましくは10~200質量部であり、さらに好ましくは20~150質量部である。ポリアミド樹脂(B)の含有量が少なすぎると、高温強度が不充分になる虞がある。ポリアミド樹脂(B)の含有量が多すぎると、柔軟性が不充分になる虞がある。
【0018】
熱可塑性樹脂組成物中のブロック共重合体(C)の含有量は、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)100質量部を基準として、好ましくは5~350質量部であり、より好ましくは10~250質量部であり、さらに好ましくは20~200質量部である。ブロック共重合体(C)の含有量が少なすぎると、耐透湿性が不充分になる虞がある。ブロック共重合体(C)の含有量が多すぎると、高温強度が不充分になる虞がある。
【0019】
熱可塑性樹脂組成物の温度150℃および引張速度500mm/minでの引張試験における最大点応力は、好ましくは1.0MPa以上であり、より好ましくは1.2~20MPaであり、さらに好ましくは1.4~15MPaである。温度150℃および引張速度500mm/minでの引張試験における最大点応力を、以下、「150℃での最大点応力」ともいう。150℃での最大点応力が低すぎると、高温強度が劣る。150℃での最大点応力が上記数値範囲に入るようにする方法は、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、ブロック共重合体(C)の含有比の調整、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)におけるポリアミドブロックおよびポリアミド樹脂(B)の選択、フィラーの添加等が挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂組成物の温度60℃および相対湿度100%における水蒸気透過係数は、好ましくは13cm3・mm/(m2・24h)以下であり、より好ましくは0.1~11cm3・mm/(m2・24h)であり、さらに好ましくは0.5~9cm3・mm/(m2・24h)である。水蒸気透過係数が高すぎると、耐透湿性が劣る。水蒸気透過係数が上記数値範囲に入るようにする方法は、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、ブロック共重合体(C)の含有比の調整、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)におけるポリアミドブロックおよびポリアミド樹脂(B)の選択等が挙げられる。
【0021】
熱可塑性樹脂組成物の温度250℃および剪断速度243/sにおける溶融粘度は、好ましくは1000Pa・s以下であり、より好ましくは30~950Pa・sであり、さらに好ましくは50~900Pa・sである。溶融粘度が高すぎると、押出加工性が劣る。溶融粘度が上記数値範囲に入るようにする方法は、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、ブロック共重合体(C)それぞれの分子量の選択および可塑剤や金属石鹸などの加工錠剤の添加等が挙げられる。
【0022】
熱可塑性樹脂組成物の空気雰囲気下、150℃で168時間静置後の温度25℃および引張速度500mm/minでの引張試験における破断伸びは、好ましくは100%以上であり、より好ましくは130~1000%であり、さらに好ましくは160~800%である。空気雰囲気下、150℃で168時間静置後の温度25℃および引張速度500mm/minでの引張試験における破断伸びを、以下、「熱老化後の破断伸び」ともいう。熱老化後の破断伸びが低すぎると、柔軟性が劣る。熱老化後の破断伸びが上記数値範囲に入るようにする方法は、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、ブロック共重合体(C)の含有比の調整および耐熱老化防止剤の添加等が挙げられる。
【0023】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、たとえば、ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)およびブロック共重合体(C)を、溶融混錬することにより製造することができる。溶融混錬は、たとえば、最も融点の高いポリマーの融点よりも15~25℃高い温度にシリンダー温度を設定した二軸混錬押出機を用い、滞留時間4~6分の条件で実施することができる。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高温強度と耐透湿性が必要とされるホース用材料などに使用することができ、特にエアコンホースの内層または外層を作るための材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0025】
(1)原材料
以下の実施例および比較例において使用した原材料は次のとおりである。
【0026】
[ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)]
APOLHYA(登録商標)LP21H: アルケマ社製、ポリアミド6がグラフトされたポリオレフィン(ヤング率:100MPa)
APOLHYA(登録商標)LP2: アルケマ社製、ポリアミド6がグラフトされたポリオレフィン(ヤング率:65MPa)
APOLHYA(登録商標)LP3: アルケマ社製、ポリアミド6がグラフトされたポリオレフィン(ヤング率:30MPa)
【0027】
[ポリアミド樹脂(B)]
PA6: 宇部興産株式会社製ポリアミド6「UBEナイロン」(登録商標)1013B
PA6/66: 宇部興産株式会社製ポリアミド6/66共重合体「UBEナイロン」(登録商標)5023B
PA6/12: 宇部興産株式会社製ポリアミド6/12共重合体「UBEナイロン」(登録商標)7023B
PA610: 東レ株式会社製ポリアミド610「アミラン」(登録商標)CM2001
PA1010: ダイセル・エボニック株式会社製ポリアミド1010「ベスタミド」(登録商標)DS16
【0028】
[ポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含むブロック共重合体(C)]
SIBS-1: 株式会社カネカ製スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体「SIBSTAR」(登録商標)102T(硬度:A25、破断強度(JIS K6251、ダンベル状3号形、23℃):15MPa)
SIBS-2: 株式会社カネカ製スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体「SIBSTAR」(登録商標)103T(硬度:A46、破断強度:18MPa)
SIBS-3: 株式会社カネカ製スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体「SIBSTAR」(登録商標)072T(硬度:A33、破断強度:13MPa)
【0029】
[ポリスチレンブロックとポリイソブチレンブロックを含まないエラストマー]
Mah-EB: 三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体「タフマー」(登録商標)MH7010
Br-IPMS: エクソンモービル・ケミカル社製臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体「EXXPRO」(登録商標)3745
【0030】
(2)熱可塑性樹脂組成物の調製
ポリアミドグラフトポリオレフィン(A)、ポリアミド樹脂(B)、ブロック共重合体(C)または他のエラストマーを、表1~表3に示す配合で、最も融点の高いポリマーの融点+20℃にシリンダー温度を設定した二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に導入し、滞留時間約5分で溶融混練し、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイスからストランド状に押出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0031】
(3)熱可塑性樹脂組成物の評価
上記(2)で調製した熱可塑性樹脂組成物について、押出加工性、150℃での最大点応力、水蒸気透過係数、溶融粘度および熱老化後の破断伸びを評価した。評価結果を表1~表3に示す。なお、各評価項目の評価方法は、以下のとおりである。
【0032】
(4)評価用の熱可塑性樹脂組成物のシートの作製
上記(2)で調製したペレット状の熱可塑性樹脂組成物を200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を熱可塑性樹脂組成物中の最も融点の高いポリマーの融点+20℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚み0.2mmのシートに成形した。
【0033】
(5)押出加工性の評価
上記(4)でシートを溶融押出する際に、押出開始から30分時点におけるシートを、押出方向の長さ100cm切り取り、押出方向および幅方向の厚みのばらつきを測定し、比較例1の厚みのばらつきを100とした指数で表示した。
指数が95未満の場合、比較例1に比べ厚みのばらつきが小さく、押出加工性が優れ、「優」と判定した。
指数が95以上105未満の場合、比較例1と同等の押出加工性で、「良」と判定した。
指数が105以上115以下の場合、比較例1に比べ厚みのばらつきが大きいものの、使用する上で問題ないレベルであり、「可」と判定した。
指数が115を超える場合、厚みのばらつきが大きく、使用する上で問題となるおそれがあり、「不可」と判定した。
【0034】
(6)150℃での最大点応力の測定
上記(4)で作製した熱可塑性樹脂組成物のシートをJIS 3号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K6301「加硫ゴム物理試験方法」に準拠して、温度150℃および引張速度500mm/minで引張試験を行った。得られた応力ひずみ曲線から最大点応力(MPa)を求めた。150℃での最大点応力は、高温強度の尺度であり、150℃での最大点応力が大きいほど、高温強度が高いことを意味する。
【0035】
(7)水蒸気透過係数の測定
上記(4)で作製した熱可塑性樹脂組成物のシートを切り出し、GTRテック(株)製水蒸気透過試験機を用いて、温度60℃および相対湿度100%で、水蒸気透過係数(cm3・mm/(m2・24h))を測定した。
【0036】
(8)溶融粘度の測定
上記(2)で調製したペレット状の熱可塑性樹脂組成物を80℃で8時間乾燥させた後、キャピラリー・レオメーターにて、温度250℃、ならびにピストンスピード5mm/min、キャピラリー長さ10mmおよびキャピラリー内径1mmの条件(すなわちせん断速度243/s)で荷重を検出することにより、溶融粘度(Pa・s)を測定した。
【0037】
(9)熱老化後の破断伸びの測定
上記(4)で作製した熱可塑性樹脂組成物のシートを空気雰囲気で150℃に設定されたオーブンに168時間静置し、熱老化処理を行った。熱老化処理後のシートをJIS3号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K6301「加硫ゴム物理試験方法」に準拠して、温度25℃および引張速度500mm/minで引張試験を行った。得られた応力ひずみ曲線から破断伸び(%)を求めた。
【0038】
【0039】
【0040】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高温強度と耐透湿性が必要とされるホース用材料に好適に利用することができる。