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特許7602128乗物用ラッチ装置、乗物用シート、および、乗物用ラッチ装置の製造方法
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  • 特許-乗物用ラッチ装置、乗物用シート、および、乗物用ラッチ装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】乗物用ラッチ装置、乗物用シート、および、乗物用ラッチ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20241211BHJP
   B60N 2/015 20060101ALI20241211BHJP
   B60N 2/005 20060101ALI20241211BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20241211BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/015
B60N2/005
E05B83/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021044442
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143756
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】金田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】立川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】平尾 勇弥
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-163506(JP,A)
【文献】特開2013-011061(JP,A)
【文献】特開2008-063850(JP,A)
【文献】実開平07-029248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 2/015
B60N 2/005
E05B 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部に係合または離脱することでロックまたはロック解除する乗物用ラッチ装置であって、
前記棒状部に当接可能な緩衝部材と、
前記緩衝部材を保持する保持部材と、
筐体と、
前記筐体に締結される支持部材であって、前記筐体との間で前記緩衝部材および前記保持部材を支持する支持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記筐体と前記支持部材に係合する係合部を有し、
前記支持部材は、前記筐体に締結される前の状態において、前記保持部材を介して前記筐体に支持され
前記筐体は、前記係合部と係合可能な第1孔を有し、
前記支持部材は、前記第1孔と重なる第2孔であって、前記係合部と係合可能な第2孔を有することを特徴とする乗物用ラッチ装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記緩衝部材を保持する本体部を有し、
前記係合部は、前記本体部から突出し、
前記第2孔は、前記第1孔と前記本体部の間に配置されることを特徴とする請求項に記載の乗物用ラッチ装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記第1孔よりも大きな第1状態と、前記第1孔および前記第2孔よりも小さな第2状態に弾性変形可能であることを特徴とする請求項または請求項に記載の乗物用ラッチ装置。
【請求項4】
前記支持部材を前記筐体に締結させるための2つの締結部材をさらに備え、
前記保持部材は、2つの前記締結部材の間に配置されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗物用ラッチ装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記筐体に係合する爪部を有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗物用ラッチ装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記爪部を2つ有し、
2つの前記爪部を結んだ直線に沿った方向において、前記保持部材は、2つの前記爪部の間に配置されることを特徴とする請求項に記載の乗物用ラッチ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の乗物用ラッチ装置と、
前記乗物用ラッチ装置が固定されるフレームと、を備えたことを特徴とする乗物用シート。
【請求項8】
棒状部に当接可能な緩衝部材と、前記緩衝部材を保持する保持部材と、筐体と、前記筐体に締結される支持部材であって、前記筐体との間で前記緩衝部材および前記保持部材を支持する支持部材と、を備える乗物用ラッチ装置であって、前記保持部材が、前記筐体と前記支持部材に係合する係合部を有し、前記筐体が、前記係合部と係合可能な第1孔を有し、前記支持部材が、前記係合部と係合可能な第2孔を有する乗物用ラッチ装置の製造方法であって、
前記緩衝部材を前記保持部材に取り付ける工程と、
前記第1孔に前記第2孔を重ね、前記係合部を前記第1孔と前記第2孔に係合させることで、前記支持部材を前記保持部材を介して前記筐体に支持させる工程と、
前記支持部材を前記筐体に締結する工程と、を有することを特徴とする乗物用ラッチ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部に係合または離脱することでロックまたはロック解除する乗物用ラッチ装置と、乗物用ラッチ装置を備えた乗物用シートと、乗物用ラッチ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用ラッチ装置として、ストライカの棒状部に係合可能なラッチと、ラッチを収容する筐体と、ストライカの棒状部に当接可能な緩衝部材と、筐体との間で緩衝部材を挟んだ状態で筐体に締結される支持部材とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-172113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、支持部材を筐体に締結する前の状態において、筐体と支持部材の間で緩衝部材を挟んだ状態を手で保持していなければならないので、締結作業が行いにくくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、筐体との間で緩衝部材を挟む支持部材の締結作業を行いやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る乗物用ラッチ装置は、棒状部に係合または離脱することでロックまたはロック解除する装置である。
前記乗物用ラッチ装置は、前記棒状部に当接可能な緩衝部材と、前記緩衝部材を保持する保持部材と、筐体と、前記筐体に締結される支持部材であって、前記筐体との間で前記緩衝部材および前記保持部材を支持する支持部材と、を備える。
前記保持部材は、前記筐体と前記支持部材に係合する係合部を有する。
前記支持部材は、前記筐体に締結される前の状態において、前記保持部材を介して前記筐体に支持される。
【0007】
この構成によれば、保持部材の係合部が筐体と支持部材に係合することで、支持部材が、筐体に締結される前の状態において、保持部材を介して筐体に支持されるので、支持部材の締結作業を行いやすくすることができる。
【0008】
また、前記筐体は、前記係合部と係合可能な第1孔を有し、前記支持部材は、前記第1孔と重なる第2孔であって、前記係合部と係合可能な第2孔を有していてもよい。
【0009】
この構成によれば、1つの係合部で、筐体および支持部材に保持部材を係合させることができるので、例えば2つの係合部の一方を筐体に係合させ、他方を支持部材に係合させる構造に比べ、保持部材の形状を簡易化することができる。
【0010】
また、前記保持部材は、前記緩衝部材を保持する本体部を有し、前記係合部は、前記本体部から突出し、前記第2孔は、前記第1孔と前記本体部の間に配置されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、支持部材の第2孔が形成された部分を、筐体と本体部の間で挟んで保持することができる。
【0012】
また、前記係合部は、前記第1孔よりも大きな第1状態と、前記第1孔および前記第2孔よりも小さな第2状態に弾性変形可能であってもよい。
【0013】
この構成によれば、保持部材が筐体および支持部材から外れるのを抑制することができる。
【0014】
また、前記乗物用ラッチ装置は、前記支持部材を前記筐体に締結させるための2つの締結部材をさらに備え、前記保持部材は、2つの前記締結部材の間に配置されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、保持部材および緩衝部材を、支持部材と筐体との間で強固に保持することができる。
【0016】
また、前記支持部材は、前記筐体に係合する爪部を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、保持部材の係合部を筐体および支持部材に係合させる前に、支持部材を筐体に仮止めすることができるので、係合部を筐体および支持部材に係合させる作業を行いやすくすることができる。
【0018】
また、前記支持部材は、前記爪部を2つ有し、2つの前記爪部を結んだ直線に沿った方向において、前記保持部材は、2つの前記爪部の間に配置されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、筐体に仮止めした支持部材で、保持部材を安定して保持することができる。
【0020】
また、本発明に係る乗物用シートは、前述した乗物用ラッチ装置と、前記乗物用ラッチ装置が固定されるフレームと、を備える構成とすることができる。
【0021】
また、本発明に係る乗物用ラッチ装置の製造方法は、棒状部に当接可能な緩衝部材と、前記緩衝部材を保持する保持部材と、筐体と、前記筐体に締結される支持部材であって、前記筐体との間で前記緩衝部材および前記保持部材を支持する支持部材と、を備える乗物用ラッチ装置の製造方法である。
前記製造方法は、前記緩衝部材を前記保持部材に取り付ける工程と、前記筐体および前記支持部材に、前記緩衝部材が取り付けられた保持部材を係合させることで、前記支持部材を前記保持部材を介して前記筐体に支持させる工程と、前記支持部材を前記筐体に締結する工程と、を有する。
【0022】
この製造方法によれば、保持部材の係合部を筐体と支持部材に係合させることで、支持部材を保持部材を介して筐体に支持させるので、支持部材の締結作業を行いやすくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、筐体との間で緩衝部材を挟む支持部材の締結作業を行いやすくすることができる。
【0024】
また、筐体の第1孔と支持部材の第2孔に係合部を係合させる構成とすることで、1つの係合部で、筐体および支持部材に保持部材を係合させることができるので、例えば2つの係合部の一方を筐体に係合させ、他方を支持部材に係合させる構造に比べ、保持部材の形状を簡易化することができる。
【0025】
また、第2孔が第1孔と本体部の間に配置される構成とすることで、支持部材の第2孔が形成された部分を、筐体と本体部の間で挟んで保持することができる。
【0026】
また、係合部が、第1孔よりも大きな第1状態と、第1孔および第2孔よりも小さな第2状態に弾性変形可能となる構成とすることで、保持部材が筐体および支持部材から外れるのを抑制することができる。
【0027】
また、保持部材が2つの締結部材の間に配置される構成とすることで、保持部材および緩衝部材を、支持部材と筐体との間で強固に保持することができる。
【0028】
また、支持部材が、筐体に係合する爪部を有することで、保持部材の係合部を筐体および支持部材に係合させる前に、支持部材を筐体に仮止めすることができるので、係合部を筐体および支持部材に係合させる作業を行いやすくすることができる。
【0029】
また、保持部材が2つの爪部の間に配置される構成とすることで、筐体に仮止めした支持部材で、保持部材を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】乗物用ラッチ装置が設けられた乗物用シートのフレームの側面図である。
図2】乗物用ラッチ装置を示す斜視図である。
図3】乗物用ラッチ装置を分解して示す斜視図である。
図4】保持部材を後ろから見た斜視図(a)と、緩衝部材を後ろから見た斜視図(b)である。
図5】乗物用ラッチ装置を前から見た側面図である。
図6図5のI-I断面図である。
図7】乗物用ラッチ装置の製造方法を示す図(a)~(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、乗物用ラッチ装置1は、例えば、自動車などの乗物用シートのフレームSのうち、背もたれを構成するサイドフレームS1などに固定される。一例として、サイドフレームS1は、板金からなるブラケットS2が溶接されており、乗物用ラッチ装置1は、このブラケットS2にボルト等の締結部材60(図2参照)により固定されている。
【0032】
乗物用ラッチ装置1は、車体BDに固定されたストライカSTの棒状部ST1に係合または離脱することで、サイドフレームS1を車体BDに対して、ロックまたはロック解除する装置である。乗物用ラッチ装置1は、筐体10にラッチ20などの機構部品が収納されて構成されている。図2に示すように、筐体10には、ストライカSTに向けて開口する進入溝10Aが形成されており、ラッチ20は、鉤状部21が、この進入溝10Aに進出または退避することで、閉状態または開状態となる。乗物用ラッチ装置1は、ラッチ20がストライカSTの棒状部ST1に係合することで、ロックできるようになっている。また、乗物用ラッチ装置1は、図示せぬロッドを引っ張ることで、ラッチ20を閉状態から開状態へ操作してロック解除することができるようになっている。
【0033】
乗物用ラッチ装置1は、筐体10と、ラッチ20と、緩衝部材30と、緩衝部材30を保持する保持部材40と、筐体10との間で緩衝部材30および保持部材40を挟んで支持する支持部材50と、支持部材50を筐体10に締結させるための2つの締結部材60とを主に備えている。なお、以下の乗物用ラッチ装置1の構成の説明において、便宜上、上下、左右、前後は、図2に矢印で示した上下、左右、前後の方向を用いるが、乗物用ラッチ装置1を任意の姿勢で使用できることは言うまでもない。
【0034】
ここで、以下の説明で使用する前後方向は、ラッチ20の回動軸に沿った方向であって、乗物用ラッチ装置1が固定されるフレームS側を「後側」とする。また、上下方向は、前後方向に直交し、かつ、棒状部ST1が進入溝10Aに進入する方向であって、進入溝10Aの開口側を「下側」とする。また、左右方向は、前後方向および上下方向に直交する方向とする。
【0035】
筐体10は、金属などからなり、ベース壁11と、ベース壁11の上端から前に延びる上壁12と、上壁12の前端から上に延びる前壁13とを有している。図3に示すように、ベース壁11は、進入溝10Aと、締結部材60が通る2つの取付孔HAと、支持部材50の後述する爪部54と係合する2つの係合孔HBとを有している。
【0036】
進入溝10Aは、ベース壁11の下端に形成されている。進入溝10Aは、左右方向において、2つの取付孔HAの間に配置されている。進入溝10Aは、左右方向において、2つの係合孔HBの間に配置されている。
【0037】
取付孔HAは、円形の孔である。取付孔HAには、図示せぬ円筒状の筒状部材が設けられている。左側の取付孔HAに設けられる筒状部材は、ラッチ20を回動可能に支持している。また、締結部材60は、筒状部材を通って、ブラケットS2に締結される。
【0038】
係合孔HBは、左右方向に延びる長孔である。右側の係合孔HBは、左側の係合孔HBよりも、上下方向の寸法が大きい。
【0039】
上壁12は、保持部材40の後述する係合部42と係合可能な第1孔H1を有している。第1孔H1は、左右方向において、進入溝10Aの範囲内に位置する。
【0040】
図2に示すように、前壁13は、締結部材60よりも前に位置している。
【0041】
図3に示すように、緩衝部材30は、ゴムなどの弾性体からなる部材であり、ベース部31と、突起32とを有する。ベース部31は、上端の幅(左右方向の長さ)が、下端の幅よりも小さい、略台形の形状を有する。ベース部31の下端には、棒状部ST1に当接可能な当接面31Aが形成されている(図5参照)。乗物用ラッチ装置1がロック状態であるときに、当接面31Aは、ラッチ20との間で棒状部ST1を挟んでいる。当接面31Aは、上に向けて凹む曲面となっている。当接面31Aの曲率半径は、棒状部ST1の半径よりも大きい。ベース部31の左右の側面31Bは、ベース部31の左右の中心に向けて凹む曲面となっている。
【0042】
突起32は、ベース部31の上面から突出するとともに、ベース部31の後面から突出している(図4(b)参照)。つまり、突起32は、ベース部31の上面から後面にわたって、L字状に延びている。
【0043】
保持部材40は、樹脂などからなり、緩衝部材30を保持する本体部41と、本体部41の上面から突出する係合部42とを有する。本体部41は、ベース部31の後面と接触する第1部位41Aと、ベース部31の上面と接触する第2部位41Bと、係合溝41Cとを有する。
【0044】
第1部位41Aの左右の側面は、ベース部31の左右の側面31Bに倣った円弧状に形成されている。第1部位41Aの下端部は、左右方向の両端部P1が、左右方向の中央部P2よりも下に突出している。図6に示すように、第1部位41Aの中央部P2は、進入溝10Aの底よりも下に位置する。図5に示すように、緩衝部材30の当接面31Aは、第1部位41Aの中央部P2よりも下に位置する。第1部位41Aの両端部P1は、当接面31Aよりも下に位置するとともに、進入溝10Aの左右方向外側に位置する。これにより、緩衝部材30のうち中央部P2よりも下に位置する部分が上下に弾性変形可能となるとともに、第1部位41Aの両端部P1によって緩衝部材30の下端まで保持することが可能となっている。
【0045】
図4(a)に示すように、第1部位41Aの後面には、フック43が設けられている。フック43は、第1部位41Aの下端部の中央部P2の後面に配置され、第1部位41Aの後面から後ろに突出した後、上に突出している。フック43は、筐体10の進入溝10Aの底に係合する(図3および図6参照)。
【0046】
図3に示すように、第2部位41Bは、第1部位41Aの上端部から前に突出している。係合溝41Cは、緩衝部材30の突起32と係合するL字状の溝である。係合溝41Cは、第1部位41Aから第2部位41Bにわたって形成されている。
【0047】
係合部42は、筐体10の第1孔H1と、支持部材50の後述する第2孔H2とに係合する突起である。図4(a)に示すように、係合部42は、本体部41の上面から突出する台座部42Aと、台座部42Aの上面から突出する突出部42Bと、突出部42Bの上端から右斜め下に延びる第1延出部42Cと、突出部42Bの上端から左斜め下に延びる第2延出部42Dとを有する。
【0048】
第1延出部42Cおよび第2延出部42Dは、左右方向に弾性変形可能となっている。これにより、係合部42は、左右方向の寸法が、第1孔H1よりも大きな第1状態と、第1孔H1および第2孔H2よりも小さな第2状態に弾性変形可能となっている。
【0049】
図3に示すように、支持部材50は、金属などからなり、緩衝部材30および保持部材40を支持する断面視U字状の支持部51と、支持部51の上端に設けられる上壁部52と、支持部51の左右両側に設けられる2つの取付部53と、各取付部53の下端に設けられる爪部54とを有している。
【0050】
支持部51は、前壁51Aと、前壁51Aの左右の両端から後ろに延びる2つの側壁51Bとを有する。左右の側壁51Bは、緩衝部材30の左右の側面31Bおよび保持部材40の左右の側面に倣った形状となっている。左右の側壁51Bは、緩衝部材30および保持部材40を左右方向で挟んでいる。
【0051】
上壁部52は、前壁51Aの上端から後ろに延びている。上壁部52は、保持部材40の係合部42と係合可能な第2孔H2を有している。第2孔H2は、支持部材50が筐体10に仮止めされたときに、筐体10の第1孔H1と重なる(図6参照)。本実施形態では、図6に示すように、第2孔H2の前後方向の寸法は、第1孔H1の前後方向の寸法よりも大きい。第2孔H2は、上下方向において、第1孔H1と本体部41の間に配置されている。言い換えると、上壁部52は、上下方向において、筐体10の上壁12と、本体部41の第2部位41Bとの間で挟まれている。
【0052】
図3に示すように、各取付部53は、各側壁51Bの後端から左右方向外側に延びている。各取付部53は、締結部材60が通る円形の取付孔53Aを有する。取付孔53Aの直径は、締結部材60の頭部61の直径よりも小さい。
【0053】
爪部54は、左右の取付部53のそれぞれに設けられている。爪部54は、取付部53の下端から下に延びた後、後ろに延び、その後、下に延びるように屈曲した形状となっている。爪部54は、筐体10の係合孔HBに係合可能となっている。
【0054】
図2に示すように、緩衝部材30および保持部材40は、左右方向において、2つの締結部材60の間に配置されている。緩衝部材30および保持部材40は、2つの爪部54を結んだ直線に沿った方向、つまり左右方向において、2つの爪部54の間に配置されている。
【0055】
次に、乗物用ラッチ装置1の製造方法について説明する。具体的には、筐体10にラッチ20などの機構部品を組み付けた後の製造方法について説明する。
【0056】
図7(a),(b)に示すように、作業者は、まず、緩衝部材30の突起32を保持部材40の係合溝41Cに嵌め込むようにして、緩衝部材30を保持部材40に取り付ける(第1工程)。次いで、作業者は、支持部材50の左右の爪部54を筐体10の左右の係合孔HBに係合させることで、支持部材50を筐体10に仮止めする(第2工程)。なお、第1工程と第2工程の順序は、逆であってもよい。
【0057】
その後、作業者は、筐体10の第1孔H1と支持部材50の第2孔H2に、緩衝部材30が取り付けられた保持部材40の係合部42を挿し込んで係合させることで、図7(c)に示すように、支持部材50を保持部材40を介して筐体10に支持させる(第3工程)。これにより、支持部材50は、筐体10に締結される前の状態において、保持部材40を介して筐体10に支持される。最後に、作業者は、図3に示すように、2つの締結部材60を、支持部材50および筐体10の左右の取付孔53A,HAに通して、図1に示すブラケットS2の図示せぬナットにねじ込むことで、支持部材50を筐体10とともにブラケットS2に締結させる(第4工程)。
【0058】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
保持部材40の係合部42が筐体10と支持部材50に係合することで、支持部材50が、筐体10に締結される前の状態において、保持部材40を介して筐体10に支持されるので、支持部材50の締結作業を行いやすくすることができる。
【0059】
保持部材40に設けた1つの係合部42を、重なって配置される筐体10の第1孔H1および支持部材50の第2孔H2に係合させるので、例えば2つの係合部の一方を筐体に係合させ、他方を支持部材に係合させる構造に比べ、保持部材40の形状を簡易化することができる。
【0060】
第2孔H2が第1孔H1と本体部41の間に配置されるので、支持部材50の第2孔H2が形成された上壁部52を、筐体10と本体部41の間で挟んで保持することができる。
【0061】
係合部42が、第1孔H1よりも大きな第1状態と、第1孔H1および第2孔H2よりも小さな第2状態に弾性変形可能であるので、保持部材40が筐体10および支持部材50から外れるのを抑制することができる。
【0062】
保持部材40が2つの締結部材60の間に配置されるので、緩衝部材30および保持部材40を、支持部材50と筐体10との間で強固に保持することができる。
【0063】
支持部材50が筐体10に係合する爪部54を有することで、保持部材40の係合部42を筐体10および支持部材50に係合させる前に、支持部材50を筐体10に仮止めすることができるので、係合部42を筐体10および支持部材50に係合させる作業を行いやすくすることができる。
【0064】
保持部材40が2つの爪部54の間に配置されるので、筐体10に仮止めした支持部材50で、保持部材40を安定して保持することができる。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、支持部材に爪部を設けたが、本発明はこれに限定されず、支持部材に爪部を設けなくてもよい。
【0066】
係合部の形状は、前記実施形態に限定されず、円柱状やフック形状など、どのような形状であってもよい。
【0067】
また、乗物用ラッチ装置1は、車両などの乗物用シートの背もたれに使用される場合だけでなく、乗物用シートの着座部や脚に設けられていてもよく、車両のトランクなどの開閉部分をロックする装置として使用することもできる。また、乗物用シートも、車両以外の船舶や飛行機のシートであってもよい。また、乗物用シートにストライカが設けられる場合には、ラッチ装置は、車体に設けられていてもよい。
【0068】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 乗物用ラッチ装置
10 筐体
30 緩衝部材
40 保持部材
42 係合部
50 支持部材
ST1 棒状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7