(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】熱溶融式三次元プリンタ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/329 20170101AFI20241211BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241211BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20241211BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20241211BHJP
B29B 7/58 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B29C64/329
B33Y30/00
B29C64/209
B33Y40/00
B29B7/58
(21)【出願番号】P 2021138877
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 亮平
(72)【発明者】
【氏名】富田 知幸
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-024148(JP,A)
【文献】特開平08-229948(JP,A)
【文献】実開昭48-012359(JP,U)
【文献】特開2021-160101(JP,A)
【文献】国際公開第2020/173704(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
B22F 1/00 - 12/90
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融式三次元プリンタであって、
押出機と、押込機構を備え、
前記押出機は、ホッパーと、シリンダと、ノズルを備え、
前記ホッパーは、前記シリンダに設けられた原料供給口を通じて、前記シリンダ内にペレットを供給可能に構成され、
前記押出機は、前記シリンダ内に供給されたペレットを前記シリンダ内で溶融混練して溶融樹脂を形成し、前記ノズルを通じて前記溶融樹脂を押し出してストランドを形成するように構成され、
前記押込機構は、前記ホッパーの載置面に載置されたペレットを、前記原料供給口を通じて、前記シリンダ内に押し込むように構成され
、
前記押込機構は、前記ペレットに当接するロッドと、前記ロッドを駆動する駆動機構を備え、
前記ロッドは、前記ロッドの先端が前記ペレットを前記原料供給口の方向に押圧するように駆動され、
前記押込機構は、前記ロッドの根本の上下方向の運動が、前記ロッドの先端が前記原料供給口に近づいたり離れたりする運動に変換されるように構成され、
前記ロッドの先端が前記原料供給口に近づいたり離れたりする運動は、前記上下方向とは異なる方向の運動である、三次元プリンタ。
【請求項2】
熱溶融式三次元プリンタであって、
押出機と、押込機構を備え、
前記押出機は、ホッパーと、シリンダと、ノズルを備え、
前記ホッパーは、前記シリンダに設けられた原料供給口を通じて、前記シリンダ内にペレットを供給可能に構成され、
前記押出機は、前記シリンダ内に供給されたペレットを前記シリンダ内で溶融混練して溶融樹脂を形成し、前記ノズルを通じて前記溶融樹脂を押し出してストランドを形成するように構成され、
前記押込機構は、前記ホッパーの載置面に載置されたペレットを、前記原料供給口を通じて、前記シリンダ内に押し込むように構成され、
前記押込機構は、前記ペレットに当接するロッドと、前記ロッドを駆動する駆動機構を備え、
前記ロッドは、前記ロッドの先端が前記ペレットを前記原料供給口の方向に押圧するように駆動され、
前記ロッドは、軟質部を備え、
前記ロッドは、前記ロッドが前記軟質部で湾曲した状態で、前記ロッドの先端が前記原料供給口の方向に向かって移動するように駆動される、三次元プリンタ。
【請求項3】
熱溶融式三次元プリンタであって、
押出機と、押込機構を備え、
前記押出機は、ホッパーと、シリンダと、ノズルを備え、
前記ホッパーは、前記シリンダに設けられた原料供給口を通じて、前記シリンダ内にペレットを供給可能に構成され、
前記押出機は、前記シリンダ内に供給されたペレットを前記シリンダ内で溶融混練して溶融樹脂を形成し、前記ノズルを通じて前記溶融樹脂を押し出してストランドを形成するように構成され、
前記押込機構は、前記ホッパーの載置面に載置されたペレットを、前記原料供給口を通じて、前記シリンダ内に押し込むように構成され、
前記押込機構は、前記ペレットに当接するロッドと、前記ロッドを駆動する駆動機構を備え、
前記ロッドは、前記ロッドの先端が前記ペレットを前記原料供給口の方向に押圧するように駆動され、
前記駆動機構は、前記ロッドの根本を非鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転させるように構成される、三次元プリンタ。
【請求項4】
請求項
1又は請求項3に記載の三次元プリンタであって、
前記ロッドは、軟質部を備え、
前記ロッドは、前記ロッドが前記軟質部で湾曲した状態で、前記ロッドの先端が前記原料供給口の方向に向かって移動するように駆動される、三次元プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融式三次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱可塑性エラストマーで構成されたペレットを、スクリュー式押出機を用いて溶融してノズルから押し出すことによってストランドを形成し、このストランドを走査することによって造形物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペレットは、ホッパーを介して、押出機のシリンダ内に供給されるところ、ペレットの表面がべたついている場合には、ホッパー上でペレット同士がくっついてしまう、いわゆるブリッジ現象が発生する場合がある。ブリッジ現象が発生すると、ペレットがシリンダ内に十分に供給されなくなり、造形不良につながる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、造形不良を抑制可能な、熱溶融式三次元プリンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、熱溶融式三次元プリンタであって、押出機と、押込機構を備え、前記押出機は、ホッパーと、シリンダと、ノズルを備え、前記ホッパーは、前記シリンダに設けられた原料供給口を通じて、前記シリンダ内にペレットを供給可能に構成され、前記押出機は、前記シリンダ内に供給されたペレットを前記シリンダ内で溶融混練して溶融樹脂を形成し、前記ノズルを通じて前記溶融樹脂を押し出してストランドを形成するように構成され、前記押込機構は、前記ホッパーの載置面に載置されたペレットを、前記原料供給口を通じて、前記シリンダ内に押し込むように構成される、三次元プリンタが提供される。
【0007】
本発明の三次元プリンタは、上記構成の押込機構がペレットをシリンダ内に押し込むので、ペレットの供給不足に起因する造形不良が抑制される。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記記載の三次元プリンタであって、前記押込機構は、前記ペレットに当接するロッドと、前記ロッドを駆動する駆動機構を備え、前記ロッドは、前記ロッドの先端が前記ペレットを前記原料供給口の方向に押圧するように駆動される、三次元プリンタである。
好ましくは、前記記載の三次元プリンタであって、前記ロッドは、軟質部を備え、前記ロッドは、前記ロッドが前記軟質部で湾曲した状態で、前記ロッドの先端が前記原料供給口の方向に向かって移動するように駆動される、三次元プリンタである。
好ましくは、前記記載の三次元プリンタであって、前記駆動機構は、前記ロッドの根本を非鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転させるように構成される、三次元プリンタである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本発明の一実施形態の熱溶融式三次元プリンタ1を示す正面図(シリンダ2bは断面図)であり、
図1Bは、
図1A中の押込機構3の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態の熱溶融式三次元プリンタ1は、押出機2と、押込機構3を備える。
【0013】
<押出機2>
押出機2は、ホッパー2aと、シリンダ2bと、ノズル2cを備える。ホッパー2aは、シリンダ2bに設けられた原料供給口2b1を通じて、シリンダ2b内にペレット4を供給可能に構成されている。原料供給口2b1は、シリンダ2bの側面に設けられていることが好ましい。ホッパー2aは、シリンダ2bに装着されていることが好ましく、シリンダ2bの側面に装着されていることがさらに好ましい。
【0014】
押出機2は、シリンダ2b内に供給されたペレット4をシリンダ2b内で溶融混練して溶融樹脂4aを形成し、ノズル2cを通じて溶融樹脂4aを押し出してストランド5を形成するように構成されている。シリンダ2b内にはスクリュー2dが配置されており、モーター2eによってスクリュー2dを回転させることによって、ペレット4を溶融混練して溶融樹脂4aを形成するとともに、溶融樹脂4aをシリンダ2bの先端に向けて搬送し、ノズル2cを通じて押し出すことが可能になっている。
【0015】
スクリュー2dの直径は、例えば、5~80mmであり、10~60mmが好ましい。この直径は、具体的には例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
ストランド5は、線状であり、その直径は、例えば0.5~6.0mmであり、1.0~4.0mmが好ましい。この直径は、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
ペレット4は、ホッパー2aの載置面2a1に載置される。載置面2a1は、水平面に対する角度が0~80度であることが好ましく、15~60度であることがさらに好ましい。この角度は、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
原料供給口2b1の幅(
図1Aの奥行き方向の長さ)及び高さは、それぞれ、例えば、1~10cmであり、2~8cmが好ましい。この幅及び高さは、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
押出機2は、不図示の駆動機構によって、三次元移動(XYZ方向へ移動)可能になっている。ノズル2cからストランド5を吐出しながら押出機2を二次元走査することによって単層構造体を形成することができ、単層構造体を積層することによって、所望の造形物を形成することができる。
【0020】
<押込機構3>
押込機構3は、ホッパー2aの載置面2a1に載置されたペレット4を、原料供給口2b1を通じて、シリンダ2b内に押し込むように構成される。載置面2a1は、通常、原料供給口2b1に向かって低くなる傾斜面となっており、ペレット4は自重によってシリンダ2b内に供給されることが期待されるが、ペレット4の表面がべたついている場合には、ホッパー2a上でペレット4同士がくっついてしまう、いわゆるブリッジ現象が発生する場合があり、ブリッジ現象が発生すると、ペレット4が自重によってシリンダ2b内に供給されにくくなる結果、ペレット4の供給が不十分となり、造形不良につながる。一方、本実施形態では、押込機構3が、ペレット4をシリンダ2b内に押し込むので、これによって、ペレット4の表面がべたついている場合でも、ペレット4をシリンダ2b内に十分に供給することが可能になり、ペレット4の供給不足に起因する造形不良が抑制される。
【0021】
本実施形態では、押込機構3は、ペレット4に当接するロッド3aと、ロッド3aを駆動する駆動機構3bを備える。押込機構3は、押出機2に装着されることが好ましく、押出機2の上部に装着されることがさらに好ましい。
【0022】
ロッド3aは、ロッド3aの先端3a1がペレット4を原料供給口2b1の方向に押圧するように駆動される。ペレット4のブリッジ現象を解消させるためには、上下方向に運動するピストンでペレット4のブリッジを崩すことが考えられるが、このような構成では、ブリッジは崩されるものの、ペレット4が別のペレットとくっついてしまって、ペレット4の供給不足が十分に解消されない場合がある。一方、本実施形態の押込機構3では、ロッド3aの先端3a1は、単に上下方向に運動するのではなく、
図1~
図3に示すように、ペレット4を原料供給口2b1の方向に押圧するように駆動される。このような構成によれば、先端3a1による押圧によってペレット4のブリッジを崩すとともに、ペレット4を原料供給口2b1の方向に移動させるので、先端3a1を上下方向に運動させる場合に比べて、シリンダ2b内へのペレット4の供給が促進される。
【0023】
ロッド3aの先端3a1の直径は、例えば1~20mmであり、3~15mmが好ましい。この直径は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
ロッド3aは、軟質部3a2を備えることが好ましい。軟質部3a2とは、ロッド3aを載置面2a1に押し付けたときに湾曲される部位であり、ゴムなどの軟質材料で構成される。軟質部3a2の曲げ弾性率は、例えば70~700MPaであることが好ましい。この曲げ弾性率は、具体的には例えば、70、80、90、100、250、400、550、700MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ロッド3aは、軟質部3a2のみで構成されてもよく、軟質部3a2と、これよりも曲げ弾性率が高い材料で構成された硬質部3a3で構成されることが好ましい。硬質部3a3は、軟質部3a2よりも、先端3a1から離れた位置に配置されることが好ましい。また、先端3a1は、軟質部3a2に設けられていることが好ましい。曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定可能である。
【0025】
軟質部3a2の長さ(軟質部3a2を直線状にしたときの長手方向の長さ)は、2cm以上が好ましく、3cm以上がさらに好ましい。軟質部3a2の長さは、例えば、2~30cmであり、具体的には例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。軟質部3a2は、全長に渡って断面形状が一定であってもよく、例えば、先端3a1に向かって先細りになっていてもよい。
【0026】
ロッド3aは、ロッド3aが軟質部3a2で湾曲した状態で、ロッド3aの先端3a1が原料供給口2b1の方向に向かって移動するように駆動されることが好ましい。このような構成であれば、ロッド3aの根本3a4を下方向に移動させると、ロッドの先端3a1が原料供給口2b1の方向に向かって移動し、ロッド3aの根本3a4を上方向に移動させると、ロッドの先端3a1が原料供給口2b1から離れる方向に向かって移動する。つまり、ロッド3aの根本3a4の上下方向の運動が、ロッド3aの先端3a1が原料供給口2b1に近づいたり離れたりする運動に変換される。
【0027】
駆動機構3bとしては、ロッド3aを上述したように動作させることができる任意の機構が採用可能であり、例えば、シリンダ機構や回転機構などが挙げられる。シリンダ機構としては、ロッド3aの根本3a4を上下方向に往復運動させる機構が挙げられる。回転機構としては、回転運動をロッド3aの根本3a4の上下方向の往復運動に変換可能な機構が挙げられる。
【0028】
本実施形態の駆動機構3bは、回転機構であり、モーター3b1と、モーター軸3b2と、ディスク3b3と、ブラケット3b4を備える。
【0029】
モーター軸3b2は、モーター3b1に駆動されて回転する。モーター軸3b2の回転方向は、例えば、
図1Bに示すように、ディスク3b3側から見て反時計周りである。ディスク3b3は、モーター軸3b2に固定されており、ブラケット3b4は、ディスク3b3に固定されている。ブラケット3b4には、ロッド3aの根本3a4が固定されている。このため、
図2~
図3に示すように、モーター軸3b2の回転に伴って、ディスク3b3、ブラケット3b4及び根本3a4も回転する。モーター軸3b2の方向は、モーター軸3b2の回転に伴って回転する部材の回転軸と一致する。
【0030】
モーター軸3b2は、非鉛直方向を向いているので、根本3a4が回転する際にその上下方向の位置が周期的に変動する。従って、モーター軸3b2を回転させることによって、根本3a4を上下方向に往復運動させることができる。モーター軸3b2は、水平面との間の角度が45度以下であることが好ましく、30度以下であることがさらに好ましい。この角度は、例えば、0~45度であり、具体的には例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。
【0031】
なお、モーター軸3b2の回転に伴って、根本3a4は、上下方向に往復運動するだけではなく、
図1Bの左右方向(鉛直方向とモーター軸3b2の回転軸方向の両方に垂直な方向)にも往復運動する。根本3a4が左右方向に往復運動すると、先端3a1及びその近傍部分も左右方向に往復運動するので、ブリッジがより一層崩れやすくなる。
【0032】
往復運動での先端3a1の振幅(原料供給口2b1に最も近い位置と、原料供給口2b1からもっとも離れた位置の間の長さ)は、例えば、0.5cm以上であり、1cm以上が好ましい。この振幅は、例えば、0.5~10cmであり、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0033】
往復運動の際に、先端3a1はシリンダ2bの外周面よりも内側に入り込んでもよく、入り込まなくてもよい。先端3a1がシリンダ2bに最近接したときの、先端3a1からシリンダ2bの外周面までの距離は、10cm以下が好ましく、5cm以下がさらに好ましい。この距離は、例えば、-2cm~10cmであり、具体的には例えば、-2、-1、-0.5、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。負の値は、先端3a1がシリンダ2bの外周面よりも内側に入り込んだ距離を意味する。
【0034】
<ペレット4>
ペレット4は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0035】
ペレット4は、押出機2に投入可能な粒状の形態である。ペレット4の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、長球状などである。ペレット4の最長部の長さ(長球の場合、長軸方向の長さ)をLとし、最長部に対して垂直な面での直径(長球の場合、短軸方向の長さ)をDとすると、L/Dは、例えば1~10であり、1~5が好ましい。Lは、例えば0.5~10mmであり、2~8mmが好ましい。L/Dは、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Lは、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー等が挙げられる。この熱可塑性エラストマーは、スチレン系エラストマーを含むことが好ましい。スチレン系エラストマーは柔軟性が高いので、熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーを含むことによって、熱可塑性エラストマーの柔軟性が高くなる。熱可塑性エラストマー中のスチレン系エラストマーの割合は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
スチレン系エラストマーとは、スチレン単位を有する熱可塑性エラストマーであり、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-エチレン-スチレンブロック共重合体(SES)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等)、水素添加スチレン系共重合体(例えば、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブチレン・ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、水素添加スチレン-ブタジエンゴム(HSBR)等)等から選ばれた一種又は二種以上をブレンドしたものを挙げることができる。
【0038】
熱可塑性エラストマーのショアA硬度は、0~10が好ましく、0~2がさらに好ましい。このような物性を有するペレット4は、表面がべたつきやすいので、本実施形態の三次元プリンタ1を用いて造形を行う技術的意義が顕著である。ショアA硬度は、具体的には例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ショアA硬度がこの範囲内である場合に、柔軟性に優れた造形物が得られる。ショアA硬度は、JIS K6253に基づいて測定する。
【0039】
熱可塑性エラストマーのメルトフローレイト(以下、「MFR」)は、10~200g/10分であることが好ましく、60~140g/10分がさらに好ましい。この場合に、造形精度を高くしやすい。MFRは、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200g/10分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。MFRは、JIS K-7210に準じて、測定温度150℃、試験荷重2.16kgにて測定する。
【0040】
ペレット4の安息角は、35度以上であることが好ましい。このようなペレット4では、ブリッジ現象が起こりやすいので、本実施形態の三次元プリンタ1を用いて造形を行う技術的意義が顕著である。この安息角は、例えば35~80度であり、具体的には例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、50、55、60、65、70、75、80度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。安息角は、以下の方法で測定することができる。
(1)まず、水平な測定台(直径10.5cm)上にペレット4を垂直方向から注入してペレット4の山を形成する。ペレット4は、ペレット4が測定台からあふれるまで注入する。
(2)次に、測定台の上面の縁において、ペレット4の山の、水平面からの傾斜角度を分度器で測り、得られた測定値を安息角とする。
【実施例】
【0041】
1.実施例1
図1に示す三次元プリンタ1を用いて造形物を造形した。軟質部3a2としては、直径0.6cm、長さ4cm、曲げ弾性率300MPaのものを用いた。ロッド3aは、ロッド3aの根本3a4が直径2.4cmの円運動をするように駆動した。円運動周期は、3秒とした。これによって、ロッド3aの先端3a1が原料供給口2b1に近づく方向と離れる方向で往復運動した。
【0042】
上記構成の三次元プリンタ1のホッパー2aにペレット4(スチレン系エラストマー、AR-SC-0、アロン化成株式会社製、長球状、長軸方向の長さが約4.5mm、短軸方向の長さが約2.5mm、安息角40度、ショアA硬度:0、150℃でのMFR:127.52g/10分)を供給し、押込機構3を動作させながら、150℃で押出機2を動作させて造形を行った。造形が進むにつれて、ペレット4は、シリンダ2b内に押し込まれ、所望の形状の造形物が得られた。
【0043】
2.比較例1
押込機構3を設けない以外は、実施例1と同様に造形を行った。ペレット4にブリッジ現象が発生して、ペレット4がシリンダ2b内に十分に供給されず、造形不良が発生した。
【0044】
3.比較例2
押込機構3の代わりに、上下方向に往復運動するシリンダ機構を用いた以外は、実施例1と同様に造形を行った。シリンダ機構によってペレット4のブリッジは崩されたものの、ペレット4がシリンダ2b内に十分に供給されず、造形不良が発生した。
【符号の説明】
【0045】
1 :熱溶融式三次元プリンタ
2 :押出機
2a :ホッパー
2a1 :載置面
2b :シリンダ
2b1 :原料供給口
2c :ノズル
2d :スクリュー
2e :モーター
3 :押込機構
3a :ロッド
3a1 :先端
3a2 :軟質部
3a3 :硬質部
3a4 :根本
3b :駆動機構
3b1 :モーター
3b2 :モーター軸
3b3 :ディスク
3b4 :ブラケット
4 :ペレット
4a :溶融樹脂
5 :ストランド