(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20241211BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20241211BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/03 300D
B60C11/12 C
B60C11/13 B
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2023020736
(22)【出願日】2023-02-14
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋佑
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156177(JP,A)
【文献】特開2017-121919(JP,A)
【文献】特開平02-293204(JP,A)
【文献】特開2006-111216(JP,A)
【文献】特開2019-182371(JP,A)
【文献】特開平04-230404(JP,A)
【文献】特開2017-105411(JP,A)
【文献】特開2020-152268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部は複数の溝で区画された複数のブロックを備え、
前記複数の溝は、タイヤ赤道の両側に配置されタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する一対の屈曲主溝と、前記一対の屈曲主溝のそれぞれからタイヤ赤道方向に向かって延在する複数の屈曲傾斜溝と、タイヤ赤道の一方側の前記屈曲傾斜溝とタイヤ赤道の他方側の前記屈曲傾斜溝とを接続する傾斜細溝と
、前記屈曲主溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在するショルダーラグ溝とを含み、
前記屈曲傾斜溝のそれぞれは、前記一対の屈曲主溝からタイヤ赤道方向に向かってタイヤ周方向に対して傾斜して延在する第一傾斜溝部と、前記第一傾斜溝部と同方向かつ前記第一傾斜溝部よりもタイヤ周方向側に傾斜する第二傾斜溝部とで構成され、前記第一傾斜溝部は少なくとも1箇所の屈曲点を有し、前記第二傾斜溝部は
終端位置に他の溝が接続されない鋭角状の先端を有し、前記鋭角状の先端がタイヤ赤道を超え
ない位置に配置され、
前記傾斜細溝は前記屈曲傾斜溝と逆方向に傾斜し前記第二傾斜溝部の中途部どうしを接続し、
前記複数のブロックのそれぞれに少なくとも1本のサイプが形成され
、
前記第一傾斜溝部の屈曲点の個数をN1、前記第二傾斜溝部の屈曲点の個数をN2、前記傾斜細溝の屈曲点の個数をN3、前記ショルダーラグ溝の屈曲点の個数をNsとしたとき、これら屈曲点の個数がNs≦N2<N1≦N3の関係を満たすことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部は複数の溝で区画された複数のブロックを備え、
前記複数の溝は、タイヤ赤道の両側に配置されタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する一対の屈曲主溝と、前記一対の屈曲主溝のそれぞれからタイヤ赤道方向に向かって延在する複数の屈曲傾斜溝と、タイヤ赤道の一方側の前記屈曲傾斜溝とタイヤ赤道の他方側の前記屈曲傾斜溝とを接続する傾斜細溝とを含み、
前記屈曲傾斜溝のそれぞれは、前記一対の屈曲主溝からタイヤ赤道方向に向かってタイヤ周方向に対して傾斜して延在する第一傾斜溝部と、前記第一傾斜溝部と同方向かつ前記第一傾斜溝部よりもタイヤ周方向側に傾斜する第二傾斜溝部とで構成され、前記第一傾斜溝部は少なくとも1箇所の屈曲点を有し、前記第二傾斜溝部は
終端位置に他の溝が接続されない鋭角状の先端を有し、前記鋭角状の先端がタイヤ赤道を超え
ない位置に配置され、
前記第一傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1が50°~85°であり、前記第二傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2が5°~40°であり、かつ前記傾斜角度θ1,θ2の差θ1-θ2が30°以上80°以下であり、
前記傾斜細溝は前記屈曲傾斜溝と逆方向に傾斜し前記第二傾斜溝部の中途部どうしを接続し、
前記複数のブロックのそれぞれに少なくとも1本のサイプが形成されたことを特徴とするタイヤ。
【請求項3】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部は複数の溝で区画された複数のブロックを備え、
前記複数の溝は、タイヤ赤道の両側に配置されタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する一対の屈曲主溝と、前記一対の屈曲主溝のそれぞれからタイヤ赤道方向に向かって延在する複数の屈曲傾斜溝と、タイヤ赤道の一方側の前記屈曲傾斜溝とタイヤ赤道の他方側の前記屈曲傾斜溝とを接続する傾斜細溝とを含み、
前記屈曲傾斜溝のそれぞれは、前記一対の屈曲主溝からタイヤ赤道方向に向かってタイヤ周方向に対して傾斜して延在する第一傾斜溝部と、前記第一傾斜溝部と同方向かつ前記第一傾斜溝部よりもタイヤ周方向側に傾斜する第二傾斜溝部とで構成され、前記第一傾斜溝部は少なくとも1箇所の屈曲点を有し、前記第二傾斜溝部は
終端位置に他の溝が接続されない鋭角状の先端を有し、前記鋭角状の先端がタイヤ赤道を超え
ない位置に配置され、
前記第一傾斜溝部の長さL1と前記第二傾斜溝部の長さL2とがL2/L1≧1.7の関係を満たし、
前記傾斜細溝は前記屈曲傾斜溝と逆方向に傾斜し前記第二傾斜溝部の中途部どうしを接続し、
前記複数のブロックのそれぞれに少なくとも1本のサイプが形成されたことを特徴とするタイヤ。
【請求項4】
前記屈曲傾斜溝の溝深さが前記屈曲主溝の溝深さの50%~100%であり、前記傾斜細溝の溝深さが前記屈曲傾斜溝の溝深さの60%~100%であることを特徴とする請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の溝が、前記屈曲主溝と前記第二傾斜溝部とに連通し、前記第一傾斜溝部と同方向に傾斜する副傾斜溝を含むことを特徴とする請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数の溝が、タイヤ赤道の一方側の前記第二傾斜溝部とタイヤ赤道の他方側の前記第二傾斜溝部とを前記傾斜細溝よりも前記第二傾斜溝部の終端側で連結する横断連結溝を含むことを特徴とする請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記複数の溝が、タイヤ赤道の片側においてタイヤ周方向に隣接した前記第二傾斜溝部どうしを連結する周方向連結溝を含むことを特徴とする請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記一対の屈曲主溝の少なくとも一方の前記屈曲傾斜溝との交点に溝底から隆起した凸部を備えることを特徴とする請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未舗装路等を走行することを意図したタイヤに関し、更に詳しくは、耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することを可能にしたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
舗装路面に加えて、未舗装路(不整地、泥濘地、砂地、岩場等)を走行することを想定したタイヤ(例えば、オールテレーンタイヤ、全地形型タイヤ等)は、優れたオフロード性能を備えることが求められる。また、降雪時にも安定的な走行を可能にするためにスノー性能に優れることも求められる。特に近年、これら性能の中でもスノー性能が重視されており、極めて厳しい寒冷地のスノー路面においても十分な性能を有することが求められている。このようなタイヤとしては、エッジ成分の多いラグ溝やブロックを主体とし、溝面積が大きいトレッドパターンが採用される傾向がある(例えば特許文献1を参照)。一方で、溝面積が大きいトレッドパターンはブロックの剛性が低下しやすい傾向があり、十分な耐摩耗性を維持する対策も求められている。以上より、スノー性能および耐摩耗性を高度に両立することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することを可能にしたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、前記トレッド部は複数の溝で区画された複数のブロックを備え、前記複数の溝は、タイヤ赤道の両側に配置されタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する一対の屈曲主溝と、前記一対の屈曲主溝のそれぞれからタイヤ赤道方向に向かって延在する複数の屈曲傾斜溝と、タイヤ赤道の一方側の前記屈曲傾斜溝とタイヤ赤道の他方側の前記屈曲傾斜溝とを接続する傾斜細溝とを含み、前記屈曲傾斜溝のそれぞれは、前記一対の屈曲主溝からタイヤ赤道方向に向かってタイヤ周方向に対して傾斜して延在する第一傾斜溝部と、前記第一傾斜溝部と同方向かつ前記第一傾斜溝部よりもタイヤ周方向側に傾斜する第二傾斜溝部とで構成され、前記第一傾斜溝部は少なくとも1箇所の屈曲点を有し、前記第二傾斜溝部はタイヤ赤道を超えずに終端し、前記傾斜細溝は前記屈曲傾斜溝と逆方向に傾斜し前記第二傾斜溝部の中途部どうしを接続し、前記複数のブロックのそれぞれに少なくとも1本のサイプが形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタイヤは、一対の屈曲主溝の間に形成されるブロックおよび各溝が上述の構造を有するため、耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することができる。特に、タイヤ周方向に沿って延びる主溝(屈曲主溝)が一対(2本)であるため、主溝間(センター領域)のブロック剛性を確保して耐摩耗性を良好に維持することができる。一方で、主溝(屈曲主溝)が屈曲しているので一対(2本)であっても良好なスノー性能を発揮することができる。また、屈曲傾斜溝を備えることによってもスノー性能を向上することができる。但し、屈曲傾斜溝(第二傾斜溝部)がタイヤ赤道を超えずに終端するため、ブロック剛性を確保して耐摩耗性を良好に維持することができる。更に、傾斜細溝が屈曲傾斜溝と逆方向に傾斜して第二傾斜溝部の中途部どうしを接続することで様々な方向に傾斜溝が配置されスノー性能を向上することができる。これに加えて、各ブロックに少なくとも1本のサイプが形成されることで、サイプによるエッジ効果が確保できスノー性能を向上することができる。これらの協働により、耐摩耗性とスノー性能を高度に両立することができる。
【0007】
本発明においては、第一傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1が50°~85°であり、第二傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2が5°~40°であり、かつ傾斜角度θ1,θ2の差θ1-θ2が30°以上80°以下であることが好ましい。このように各部の傾斜角度を設定することで、屈曲傾斜溝の形状が良好になり、スノー性能を向上するには有利になる。
【0008】
本発明においては、屈曲傾斜溝の溝深さが屈曲主溝の溝深さの50%~100%であり、傾斜細溝の溝深さが屈曲傾斜溝の溝深さの60%~100%であることが好ましい。このように各溝の溝深さを設定することで、ブロック剛性を確保しながらスノー性能を向上するには有利になる。
【0009】
本発明においては、第一傾斜溝部の長さL1と第二傾斜溝部の長さL2とがL2/L1≧1.7の関係を満たすことが好ましい。これにより、屈曲傾斜溝によって確保される周方向溝成分と幅方向溝成分とのバランスが良好になり、スノー性能を向上するには有利になる。
【0010】
本発明においては、複数の溝が、屈曲主溝と第二傾斜溝部とに連通し、第一傾斜溝部と同方向に傾斜する副傾斜溝を含むことが好ましい。このように副傾斜溝を含むことで、溝成分が追加されるのでスノー性能を向上するには有利になる。
【0011】
本発明においては、複数の溝が、屈曲主溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在するショルダーラグ溝を含み、第一傾斜溝部の屈曲点の個数をN1、第二傾斜溝部の屈曲点の個数をN2、傾斜細溝の屈曲点の個数をN3、ショルダーラグ溝の屈曲点の個数をNsとしたとき、これら屈曲点の個数がNs≦N2<N1≦N3の関係を満たすことが好ましい。このような構成にすることで、各溝の屈曲形状が良好になり、ブロック剛性を確保(耐摩耗性の維持)およびエッジ効果の向上(スノー性能の向上)に加えて、排雪性能の改善によるスノー性能の向上を見込むことができる。
【0012】
本発明においては、複数の溝が、タイヤ赤道の一方側の前記第二傾斜溝部とタイヤ赤道の他方側の前記第二傾斜溝部とを傾斜細溝よりも第二傾斜溝部の終端側で連結する横断連結溝を含むことが好ましい。このように横断連結溝を含むことで、この溝によるエッジ効果が確保でき、スノー性能を向上するには有利になる。
【0013】
本発明においては、複数の溝が、タイヤ赤道の片側においてタイヤ周方向に隣接した前記第二傾斜溝部どうしを連結する周方向連結溝を含むことが好ましい。このように周方向連結溝を含むことで、この溝によるエッジ効果が確保でき、スノー性能を向上するには有利になる。
【0014】
本発明においては、前記一対の屈曲主溝の少なくとも一方の前記屈曲傾斜溝との交点に溝底から隆起した凸部を備えることが好ましい。このように凸部を備えることで、耐摩耗性に影響を及ぼすことなくスノー性能を向上することができる。
【0015】
本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであってもよい。空気入りタイヤの場合は、その内部に空気、窒素等の不活性ガスまたはその他の気体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態からなるタイヤの子午線断面図である。
【
図2】本発明の実施形態からなるタイヤのトレッド面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明のタイヤは、
図1に示すような空気入りタイヤである場合、路面に当接するトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。尚、
図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、
図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0019】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。カーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(
図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側には少なくとも1層(
図1では2層)のベルト補強層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。
【0020】
本発明は、後述のようにタイヤのトレッド部1の表面に形成されるトレッドパターンに関するので、タイヤの基本構造(断面構造)は上述の一般的な構造に限定されない。また、路面に当接する表面(空気入りタイヤにおけるトレッド部1の表面に相当する部位)を備えていれば、非空気式タイヤを含む各種タイヤに適用することができる。
【0021】
本発明のタイヤにおけるトレッド部1の表面には、
図2に示すように、複数の溝で区画された複数のブロックBが設けられる。複数のブロックBを区画する複数の溝は、後述の屈曲主溝11、屈曲傾斜溝12、傾斜細溝13の3種類の溝を必ず含む。また、複数のブロックBのそれぞれには少なくとも1本のサイプSが必ず形成される。
【0022】
屈曲主溝11は、タイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する溝であり、タイヤ赤道の両側に一対(2本)が配置される。ジグザグ形状とは、タイヤ周方向に対して一方向に傾斜する直線状の部分と他方向に傾斜する直線状の部分とがタイヤ周方向に交互に連なった形状である。屈曲主溝11においてタイヤ周方向に対して一方向に傾斜する直線状の部分と他方向に傾斜する直線状の部分とが接続する点を屈曲点という。以降の説明では、一対の屈曲主溝11の間の領域をセンター領域、各屈曲主溝11のタイヤ幅方向外側の領域をショルダー領域という場合がある。屈曲主溝11は、前述の3種類の溝のうち最も溝幅および溝深さが大きい溝である。具体的には、屈曲主溝11の溝幅は好ましくは3mm~13mm、より好ましくは5mm~11mmである。屈曲主溝11の溝深さは好ましくは8mm~16mm、より好ましくは10mm~15mmである。
【0023】
屈曲傾斜溝12は、一対の屈曲主溝11のそれぞれからタイヤ赤道CL方向に向かって延在する溝である。屈曲傾斜溝12は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数本が設けられている。特に図示の例では、各屈曲主溝11のタイヤ幅方向内側の屈曲点から屈曲傾斜溝12が延在している。屈曲傾斜溝12は、屈曲主溝11からタイヤ赤道CL方向に向かってタイヤ周方向に対して傾斜して延在する第一傾斜溝部12aと、第一傾斜溝部12aと同方向かつ第一傾斜溝部12aよりもタイヤ周方向側に傾斜する第二傾斜溝部12bとで構成される。これら第一傾斜溝部12aおよび第二傾斜溝部12bが連結することで屈曲傾斜溝12は全体として1箇所の屈曲点を有するが、これに加えて第一傾斜溝部12aが少なくとも1箇所の屈曲点を有する。第二傾斜溝部12bは一端が第一傾斜溝部12aに接続し、他端がタイヤ赤道CLを超えずに終端する。詳述すると、第二傾斜溝部12bの他端は終端に向かって溝幅が収束する先細り形状を有し、終端位置に鋭角状の先端(鋭角の頂点)を有するが、この先端(頂点)がタイヤ赤道CLの一方側(その第二傾斜溝部12bが属する屈曲傾斜溝12が設けられた側)に配置されており、第二傾斜溝部12bはタイヤ赤道CLと交差しない。屈曲傾斜溝12(第一傾斜溝部12aおよび第二傾斜溝部12b)は溝幅および溝深さが屈曲主溝と同等以下の溝である。屈曲傾斜溝12の溝幅は屈曲主溝11の溝幅の好ましくは80%~97%、より好ましくは85%~95%である。屈曲傾斜溝12の溝深さは屈曲主溝11の溝深さの好ましくは50%~100%、より好ましくは70%~100%である。
【0024】
傾斜細溝13は、タイヤ赤道CLの一方側の屈曲傾斜溝12とタイヤ赤道CLの他方側の屈曲傾斜溝12とを接続する溝である。そのため傾斜細溝13は必ずタイヤ赤道CLと交差する。傾斜細溝13は屈曲傾斜溝12と逆方向に傾斜し、第二傾斜溝部12bの中途部どうしを接続する。傾斜細溝13は屈曲していてもよい。図示の例では傾斜細溝13はZ字状に屈曲しており2箇所の屈曲点を有する。屈曲細溝13は溝幅および溝深さが屈曲傾斜溝12よりも小さい溝である。屈曲細溝13の溝幅は屈曲傾斜溝12の溝幅の好ましくは35%~75%、より好ましくは45%~65%である。屈曲細溝13の溝深さは屈曲傾斜溝12の溝深さの好ましくは50%~100%、より好ましくは70%~100%である。
【0025】
サイプSは前述のように各ブロックBに少なくとも1つが設けられる。図示の例では、各ブロックBにジグザグ状に延在するサイプSが2本ずつ設けられている。サイプSの形状は特に限定されず、図示のジグザグ状の他に、直線状など様々な形状を採用することができる。各ブロックBに設けるサイプSの本数はブロックの大きさに応じて適宜設定することができるが、好ましくは1本~4本、より好ましくは2本~3本であるとよい。尚、サイプSとは、溝幅が例えば0.5mm~2.0mm、溝深さが例えば2mm~15mmである微細な溝である。
【0026】
上述のように各種溝を設けることで、本発明のタイヤは、耐摩耗性を損なうことなくスノー性能を向上することができる。即ち、タイヤ周方向に沿って延びる主溝(屈曲主溝11)が一対(2本)であるため、主溝間(センター領域)のブロック剛性を確保して耐摩耗性を良好に維持することができる。一方で、主溝(屈曲主溝11)が屈曲しているので、その本数が2本(一対)だけであっても良好なスノー性能を発揮することができる。また、屈曲傾斜溝12を備えることによってもスノー性能を向上することができる。但し、屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)がタイヤ赤道CLを超えずに終端するため、ブロック剛性を確保して耐摩耗性を良好に維持することができる。更に、傾斜細溝13が屈曲傾斜溝12と逆方向に傾斜して第二傾斜溝部12bの中途部どうしを接続することで様々な方向に傾斜する溝が配置されスノー性能を向上することができる。これに加えて、各ブロックBに少なくとも1本のサイプSが形成されることで、サイプSによるエッジ効果が確保できスノー性能を向上することができる。これらの協働により、耐摩耗性とスノー性能を高度に両立することができる。
【0027】
前述の3種類の溝のいずれかを含まない場合、また、同様の位置に溝が設けられていても屈曲形状や傾斜方向などが上述の条件を満たさない場合、各溝による上述の効果が不足するため、耐摩耗性とスノー性能とをバランスよく両立することが難しくなる。また、各溝の溝幅または溝深さがそれぞれ上述の範囲よりも小さいと溝容積が十分に確保できず、スノー性能を向上することができない。逆に、各溝の溝幅または溝深さがそれぞれ上述の範囲よりも大きいと溝容積が大きくなりブロック剛性が確保できないため、耐摩耗性を十分に維持することが難しくなる。
【0028】
本発明において、複数のブロックBを区画する複数の溝は、前述の3種類の溝の他に、後述の副傾斜溝14、横断連結溝15、周方向連結溝16を含むことが好ましい。これら溝を含むことで、様々な方向に延在する溝成分が追加されるので、各溝によるエッジ効果を確保することができ、スノー性能を向上するには有利になる。また、各溝の傾斜方向や溝幅および溝深さが後述のように設定されるので、各溝が追加されてもブロック剛性を十分に確保することができ耐摩耗性を良好に維持することができる。
【0029】
副傾斜溝14は、屈曲主溝11と第二傾斜溝部12bとに連通し、第一傾斜溝部12aと同方向に傾斜する溝である。図示の例では、各屈曲主溝11のタイヤ幅方向内側の屈曲点のうち屈曲傾斜溝12(第一傾斜溝部12a)が接続していない屈曲点から副傾斜溝14が延在している。副傾斜溝14は第一傾斜溝部12aと同様の屈曲形状を有しているとよい。副傾斜溝14は、第二傾斜溝部12bの中心からタイヤ周方向の両側に第二傾斜溝部12bの長さの10%以内の位置に接続しているとよい。副傾斜溝14は屈曲傾斜溝12と同等以下の溝幅および溝深さを有するとよい。具体的には、副傾斜溝14の溝幅は屈曲傾斜溝12の溝幅の好ましくは50%~100%、より好ましくは65%~85%であるとよい。副傾斜溝14の溝深さは屈曲傾斜溝12の溝深さの好ましくは50%~100%、より好ましくは70%~100%であるとよい。
【0030】
横断連結溝15は、タイヤ赤道Clの一方側の第二傾斜溝部12bとタイヤ赤道の他方側の第二傾斜溝部12bとを傾斜細溝13よりも第二傾斜溝部12bの終端側で連結する溝である。但し、横断連結溝15は、第二傾斜溝部12bの先端(頂点)から外れた位置に接続し、第二傾斜溝部12bの終端には必ず先端(頂点)が存在する。横断連結溝15は、傾斜細溝13とは逆方向に傾斜していると良い。横断連結溝15は屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)と同等以下の溝深さを有する。具体的には、横断連結溝15の溝深さは屈曲傾斜溝12の溝深さの好ましくは70%~100%、より好ましくは75%~100%であるとよい。一方、横断連結溝15は屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)よりも十分に小さい溝幅を有する。具体的には、横断連結溝15の溝幅は屈曲傾斜溝12bの溝幅の好ましくは20%~60%、より好ましくは30%~50%であるとよい。このように横断連結溝15の溝幅は屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)の溝幅よりも有意に小さいので第二傾斜溝部12bの終端側(先端の近傍)に横断連結溝15が接続していても、屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)は終端していると見做される。
【0031】
周方向連結溝16は、タイヤ赤道CLの片側においてタイヤ周方向に隣り合う第二傾斜溝部12bどうしを連結する溝である。図示の例では、周方向連結溝16は、1本の第二傾斜溝部12bの第一傾斜溝部12a側の端部と、その第二傾斜溝部12bに隣り合う第二傾斜溝部12bの終端側(先端の近傍)とを連結している。周方向連結溝16は、第二傾斜溝部12bと逆方向に傾斜しているとよい。尚、周方向連結溝16は、第二傾斜溝部12bの先端(頂点)から外れた位置に接続し、第二傾斜溝部12bの終端には必ず先端(頂点)が存在する。周方向連結溝16は屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)と同等以下の溝深さを有する。具体的には、周方向連結溝16の溝深さは屈曲傾斜溝12の溝深さの好ましくは80%~100%、より好ましくは90%~100%であるとよい。一方、周方向連結溝16は屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)よりも十分に小さい溝幅を有する。具体的には、周方向連結溝16の溝幅は屈曲傾斜溝12の溝幅の好ましくは40%~90%、より好ましくは55%~75%であるとよい。このように周方向結溝16の溝幅は屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)の溝幅よりも有意に小さいので第二傾斜溝部12bの終端側(先端の近傍)に周方向連結溝16が接続していても、屈曲傾斜溝12(第二傾斜溝部12b)は終端していると見做される。
【0032】
尚、ショルダー領域の構造は特に限定されないが、屈曲主溝11からタイヤ幅方向外側に向かって延在するショルダーラグ溝17を設けることが好ましい。ショルダーラグ溝17は、タイヤ周方向に間隔をおいて複数本を設けるとよい。図示の例では、ショルダーラグ溝17は、各屈曲主溝11のタイヤ幅方向外側の屈曲点に接続している。ショルダーラグ溝17の溝幅は屈曲主溝11の溝幅の好ましくは70%~98%、より好ましくは80%~95%であるとよい。ショルダーラグ溝17の溝深さは屈曲主溝の溝深さの好ましくは75%~100%より好ましくは80%~98%であるとよい。
【0033】
前述のように、本発明では複数のブロックBを区画する複数の溝は、屈曲傾斜溝12(第一傾斜溝部12aおよび第二傾斜溝部12b)および傾斜細溝13を必ず含む。そして、これら溝(溝部)のうち、少なくとも第一傾斜溝部12aおよび傾斜細溝13は必ず屈曲し、第二傾斜溝部12bも任意で屈曲することができる。このとき、第一傾斜溝部12aの屈曲点の個数をN1、第二傾斜溝部12bの屈曲点の個数をN2、傾斜細溝13の屈曲点の個数をN3とすると、これら屈曲点の個数がN2<N1≦N3の関係を満たすことが好ましい。例えば、図示の例では、第一傾斜溝部12aの屈曲点の個数N1が2、第二傾斜溝部12bの屈曲点の個数N2が0、傾斜細溝13の屈曲点の個数をN3が2であるため、上述の大小関係を満たしている。このような構成にすることで、各溝の屈曲形状が良好になり、ブロック剛性を確保(耐摩耗性の維持)およびエッジ効果の向上(スノー性能の向上)に加えて、排雪性能の改善によるスノー性能の向上を見込むことができる。尚、ショルダーラグ溝17を備える場合、ショルダーラグ溝17の屈曲点の個数をNsとすると、屈曲点の個数はNs≦N2<N1≦N3の関係を満たすことが好ましい。各溝の屈曲点の具体的な個数は特に限定されないが、第一傾斜溝部12aの屈曲点の個数N1=2~3、第二傾斜溝部12bの屈曲点の個数N2=0~2、傾斜細溝13の屈曲点の個数N3=2~4、ショルダーラグ溝17の屈曲点の個数Ns=0~1であるとよい。
【0034】
前述の各種溝はいずれもタイヤ周方向に対して傾斜しているが、それぞれのタイヤ周方向に対する傾斜角度は以下に述べるように設定することが好ましい。尚、各溝の傾斜角度は、
図3に示すように、各溝の中心線に基づいて測定するものとする。また、溝が屈曲している場合は、その溝の端部における溝幅中心どうしを結んだ直線がタイヤ周方向に対して成す角度を傾斜角度とする。
図3は、
図2の一部を抽出して示すものであり、サイプSや切欠き、後述の凸部18は省略し、主要な溝(屈曲主溝11、屈曲傾斜溝12、傾斜細溝13、副傾斜溝14、横断連結溝15、周方向連結溝16、ショルダーラグ溝17)を抜き出して示すものである。
【0035】
第一傾斜溝部12aのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1は好ましくは50°~85°、より好ましくは60°~80°であるとよい。これにより、タイヤ幅方向に延びる溝成分を確保できるため雪上路面におけるトラクション性能を向上するには有利になる。傾斜角度θ1が50°未満であるとエッジ効果が低下する。傾斜角度θ1が85°を超えると雪上路面における操縦安定性が低下する。第二傾斜溝部12bのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2は好ましくは5°~40°、より好ましくは8°~30°であるとよい。これにより、タイヤ周方向に延びる溝成分を確保できるため雪上路面における操縦安定性を向上するには有利になる。傾斜角度θ2が5°未満であるとエッジ効果が低下する。傾斜角度θ2が40°を超えると雪上路面における操縦安定性が低下する。これら傾斜角度θ1,θ2の差θ1-θ2は好ましくは30°以上80°以下、より好ましくは40°以上70°以下であるとよい。このように傾斜角度の差を設定することで屈曲傾斜溝12全体の屈曲形状が良好になり、前述の雪上路面におけるトラクション性や操縦安定性のバランスが良好になり、スノー性能を効果的に高めることができる。傾斜角度の差θ1-θ2が30°未満であるとエッジ効果が低下する。傾斜角度の差θ1-θ2が80°を超えるとエッジ効果が低下する。
【0036】
傾斜細溝13のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ3は好ましくは90°~135°、より好ましくは110°~130°であるとよい。これにより、スノー性能と耐摩耗性(ブロック剛性)をバランスよく向上するには有利になる。傾斜角度θ3が135°を超えるとエッジ効果が低下する。傾斜角度θ3が90°未満であると耐摩耗性(ブロック剛性)が低下する。他の溝の傾斜角度は特に限定されないが、副傾斜溝14のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ4は例えば60°~80°、横断連結溝15のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ5は例えば50°~75°、周方向連結溝16のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ6は例えば110°~130°に設定することができる。また、ショルダーラグ溝17を設ける場合、そのタイヤ周方向に対する傾斜角度θsは例えば90°~120°に設定することができる。
【0037】
屈曲主溝11は、前述のようにタイヤ周方向に対して一方向に傾斜する直線状の部分と他方向に傾斜する直線状の部分とがタイヤ周方向に交互に連なった形状を有する。つまり、屈曲主溝11は、屈曲傾斜溝12と同方向に傾斜する直線部(以下、第一直線部11aという)と、屈曲傾斜溝12と逆方向に傾斜する直線部(以下、第二直線部11bという)で構成される。第一直線部11aのタイヤ周方向に対する傾斜角度をα1、第二直線部11bのタイヤ周方向に対する傾斜角度をα2としたとき、傾斜角度α1は例えば10°~60°、傾斜角度θ2は例えば85°~145°に設定することができる。
【0038】
第一傾斜溝部12aおよび第二傾斜溝部12bによって屈曲傾斜溝12を構成するにあたって、第二傾斜溝部12bの長さを第一傾斜溝部12aに対して十分に大きくすることで、タイヤ周方向に延びる溝成分を確保できるため雪上路面における操縦安定性を向上するには有利になる。特に、第一傾斜溝部12aの長さL1と第二傾斜溝部12bの長さL2とが好ましくはL2/L1≧1.7、より好ましくは2.0≦L2/L1≦3.0の関係を満たすことが好ましい。L2/L1<1.7の関係であると第二傾斜溝部12bの長さが十分に確保できず、雪上路面における操縦安定性を向上する効果が十分に見込めなくなる。尚、
図3に示すように、長さL1はタイヤ幅方向に沿って測定した長さであり、長さL2はタイヤ周方向に沿って測定した長さである。
【0039】
一対の屈曲主溝11の少なくとも一方の屈曲傾斜溝12との交点に溝底から隆起した凸部18を設けることもできる。このように凸部18を備えることで、耐摩耗性に影響を及ぼすことなく雪上エッジ効果を高め、スノー性能を向上することができる。凸部18の溝底からの隆起高さは屈曲主溝11の溝深さの好ましくは2%~20%、より好ましくは5%~15%であるとよい。また、凸部18は、屈曲主溝11の溝底の全幅が隆起するものではなく、一部が隆起する形状であるとよい。特に、凸部18の幅は屈曲主溝11の溝幅の好ましくは10%~50%、より好ましくは10%~30%であるとよい。尚、凸部18を設ける場合、屈曲主溝11からショルダーラグ溝17へ向かう排雪効果を妨げないように、ショルダーラグ溝17が屈曲主溝11に接続する点から外れた位置に凸部18を設けることが好ましい。
【0040】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
タイヤサイズがLT265/70R17 121/118Sであり、
図1に例示する基本構造(断面構造)を有し、
図2のトレッドパターンをもとに、主溝の形状、屈曲傾斜溝の有無、第一傾斜溝の屈曲点の個数、第二傾斜溝部の終端位置、傾斜細溝の傾斜方向、サイプの有無、第一傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1、第二傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2、これら傾斜角度の差θ1-θ2、屈曲傾斜溝の溝深さ、傾斜細溝の溝深さ、第一傾斜溝部と第二傾斜溝部との長さの比L2/L1、屈曲回数N1~N3およびNsの関係、凸部の有無を、それぞれ表1のように設定した従来例1、比較例1~2、実施例1~15の13種類の空気入りタイヤを作製した。
【0042】
表1において、「主溝の形状」の欄については、主溝が直線状に延在する場合を「直線」、ジグザグ状に延在する場合を「屈曲」と表示した。「第二傾斜溝部の終端位置」の欄については、第二傾斜溝部がタイヤ赤道に到達せずに終端する場合を「赤道に未到達」、タイヤ赤道に到達する場合およいタイヤ赤道を超えて延在する場合を「赤道に到達」と表示した。「傾斜細溝の傾斜方向」の欄については、傾斜細溝が屈曲傾斜溝と同方向に傾斜する場合を「同方向」、逆方向に傾斜する場合を「逆方向」と表示した。「屈曲傾斜溝の溝深さ」の欄については、屈曲主溝の溝深さに対する屈曲傾斜溝の溝深さの割合〔単位:%〕の値を表示した。「傾斜細溝の溝深さ」の欄については、屈曲傾斜溝の溝深さに対する傾斜細溝の溝深さの割合〔単位:%〕の値を表示した。「屈曲回数の関係」の欄については、第一傾斜溝部の屈曲点の個数N1、第二傾斜溝部の屈曲点の個数N2、傾斜細溝の屈曲点の個数N3、ショルダーラグ溝の屈曲点の個数NsがNs≦N2<N1≦N3の関係を満たす場合を「適合」、満たさない場合を「否」と表示した。
【0043】
これら空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、スノー性能および耐摩耗性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0044】
スノー性能
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、フロントタイヤの空気圧を450kPa、リアタイヤの空気圧を550kPaとして試験車両(トラクション試験車)に装着し、雪上路面からなるテストコースにおいてトラクション性(発進性)についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどスノー性能に優れることを意味する。尚、この指数値が「110」未満では、十分なスノー性能が得られなかったことを意味する。
【0045】
耐摩耗性
各試験タイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組み付けて、フロントタイヤの空気圧を450kPa、リアタイヤの空気圧を550kPaとして試験車両(四輪駆動のSUV)に装着し、テストコースにてテストドライバーによる試験走行を実施し、8000km走行後の摩耗量から推定摩耗寿命を算出した。評価結果は、従来例1の値を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど全摩耗までの走行距離が長く、耐摩耗性に優れることを意味する。
【0046】
【0047】
表1から明らかなように、実施例1~15の空気入りタイヤは、従来例1と比較してスノー性能および耐摩耗性能を向上し、これら性能をバランスよく両立した。一方、比較例1は、第二傾斜溝部が赤道を超えて延在するため耐摩耗性が低下し、また十分なスノー性能が得られなかったた。比較例2は、傾斜細溝が屈曲傾斜溝と同方向に傾斜しているため、エッジ効果が低下し、十分なスノー性能が得られなかった。
【0048】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部を備えたタイヤにおいて、
前記トレッド部は複数の溝で区画された複数のブロックを備え、
前記複数の溝は、タイヤ赤道の両側に配置されタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延在する一対の屈曲主溝と、前記一対の屈曲主溝のそれぞれからタイヤ赤道方向に向かって延在する複数の屈曲傾斜溝と、タイヤ赤道の一方側の前記屈曲傾斜溝とタイヤ赤道の他方側の前記屈曲傾斜溝とを接続する傾斜細溝とを含み、
前記屈曲傾斜溝のそれぞれは、前記一対の屈曲主溝からタイヤ赤道方向に向かってタイヤ周方向に対して傾斜して延在する第一傾斜溝部と、前記第一傾斜溝部と同方向かつ前記第一傾斜溝部よりもタイヤ周方向側に傾斜する第二傾斜溝部とで構成され、前記第一傾斜溝部は少なくとも1箇所の屈曲点を有し、前記第二傾斜溝部はタイヤ赤道を超えずに終端し、
前記傾斜細溝は前記屈曲傾斜溝と逆方向に傾斜し前記第二傾斜溝部の中途部どうしを接続し、
前記複数のブロックのそれぞれに少なくとも1本のサイプが形成されたことを特徴とするタイヤ。
発明[2] 前記第一傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1が50°~85°であり、前記第二傾斜溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2が5°~40°であり、かつ前記傾斜角度θ1,θ2の差θ1-θ2が30°以上80°以下であることを特徴とする発明[1]に記載のタイヤ。
発明[3] 前記屈曲傾斜溝の溝深さが前記屈曲主溝の溝深さの50%~100%であり、前記傾斜細溝の溝深さが前記屈曲傾斜溝の溝深さの60%~100%であることを特徴とする発明[1]または[2]に記載のタイヤ。
発明[4] 前記第一傾斜溝部の長さL1と前記第二傾斜溝部の長さL2とがL2/L1≧1.7の関係を満たすことを特徴とする発明[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[5] 前記複数の溝が、前記屈曲主溝と前記第二傾斜溝部とに連通し、前記第一傾斜溝部と同方向に傾斜する副傾斜溝を含むことを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[6] 前記複数の溝が、前記屈曲主溝からタイヤ幅方向外側に向かって延在するショルダーラグ溝を含み、
前記第一傾斜溝部の屈曲点の個数をN1、前記第二傾斜溝部の屈曲点の個数をN2、前記傾斜細溝の屈曲点の個数をN3、前記ショルダーラグ溝の屈曲点の個数をNsとしたとき、これら屈曲点の個数がNs≦N2<N1≦N3の関係を満たすことを特徴とする発明[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[7] 前記複数の溝が、タイヤ赤道の一方側の前記第二傾斜溝部とタイヤ赤道の他方側の前記第二傾斜溝部とを前記傾斜細溝よりも前記第二傾斜溝部の終端側で連結する横断連結溝を含むことを特徴とする発明[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[8] 前記複数の溝が、タイヤ赤道の片側においてタイヤ周方向に隣接した前記第二傾斜溝部どうしを連結する周方向連結溝を含むことを特徴とする発明[1]~[7]のいずれかに記載のタイヤ。
発明[9] 前記一対の屈曲主溝の少なくとも一方の前記屈曲傾斜溝との交点に溝底から隆起した凸部を備えることを特徴とする発明[1]~[8]のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0049】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
11 屈曲主溝
12 屈曲傾斜溝
12a 第一傾斜溝部
12b 第二傾斜溝部
13 傾斜細溝
14 副傾斜溝
15 横断連結溝
16 周方向連結溝
17 ショルダーラグ溝
18 凸部
CL タイヤ赤道
B ブロック
S サイプ