(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2024067648
(22)【出願日】2024-04-18
【審査請求日】2024-04-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高山 雄利
(72)【発明者】
【氏名】前地 洋明
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-028333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0085183(US,A1)
【文献】国際公開第2019/167271(WO,A1)
【文献】特開2012-217319(JP,A)
【文献】特開2017-077078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子対と、第2端子対と、を備え、前記第1端子対と前記第2端子対との間での電力の移送を制御するDC-DCコンバータであって、
それぞれが、前記第1端子対の側から縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなり、当該アクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられた、複数の交直変換回路から構成された第1交直変換回路群と、
前記第1交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路の前記交流側端子対にそれぞれ接続された第1巻線と、
それぞれが、前記第2端子対の側から縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなり、当該アクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられた、少なくとも1つの交直変換回路から構成された第2交直変換回路群と、
前記第2交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路の前記交流側端子対にそれぞれ接続された第2巻線と、
コアと、
前記第1交直変換回路群および前記第2交直変換回路群に含まれるスイッチング素子を制御する制御部と、を備え、
前記第1交直変換回路群を構成する前記交直変換回路の、直流電力を入出力するための直流側端子対が、前記第1端子対間において直列に接続されており、
前記第1巻線および前記第2巻線が共通して前記コアに巻回されたトランスが構成されて
おり、
前記制御部は、
前記第1交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路のスイッチングを、同じ位相で実行し、さらに、前記第1交直変換回路群を構成する前記交直変換回路に対する、前記第2交直変換回路群を構成する前記交直変換回路のスイッチングの位相差を、前記第1端子対と前記第2端子対との間で移送する電力に応じて決定する、DC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記第2交直変換回路群は複数の前記交直変換回路から構成されており、当該交直変換回路の、直流電力を入出力するための直流側端子対が、前記第2端子対間において直列に接続されている、請求項
1に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路のスイッチングを、同じ位相で実行する、請求項
2に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項4】
前記第2交直変換回路群は複数の前記交直変換回路から構成されており、当該交直変換回路の、直流電力を入出力するための直流側端子対が、並列に前記第2端子対に接続されている、請求項
1に記載のDC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
双方向に直流電力の移送が可能なDC-DCコンバータにおいて、複数の絶縁型DC-DCコンバータユニットの入力端子および出力端子をそれぞれ直列に接続し、より高圧に対応できるようにする技術が提案されている。ここで、絶縁型DC-DCコンバータユニットは、1次側の交直変換回路と2次側の交直変換回路とがトランスを介して接続されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は各交直変換回路の回路定数または制御パラメータなどに、意図しないばらつきが生じていると、各ユニットが負担する電圧が偏り、交直変換回路における素子の破損に繋がる場合がある。そのため各ユニットの負担電圧をバランスさせるためにDC-DCコンバータの動作条件に応じた複雑な制御を行う必要があった。本開示の一態様は、電圧負担の偏りを複雑な制御を行わずとも抑制できる直列接続型のDC-DCコンバータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様は、第1端子対と、第2端子対と、を備え、前記第1端子対と前記第2端子対との間での電力の移送を制御するDC-DCコンバータであって、それぞれが、前記第1端子対の側から縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなり、当該アクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられた、複数の交直変換回路から構成された第1交直変換回路群と、前記第1交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路の前記交流側端子対にそれぞれ接続された第1巻線と、それぞれが、前記第2端子対の側から縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなり、当該アクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられた、少なくとも1つの交直変換回路から構成された第2交直変換回路群と、前記第2交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路の前記交流側端子対にそれぞれ接続された第2巻線と、コアと、前記第1交直変換回路群および前記第2交直変換回路群に含まれるスイッチング素子を制御する制御部と、を備え、前記第1交直変換回路群を構成する前記交直変換回路の、直流電力を入出力するための直流側端子対が、前記第1端子対間において直列に接続されており、前記第1巻線および前記第2巻線が共通して前記コアに巻回されたトランスが構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、電圧負担の偏りを複雑な制御を行わずとも抑制できる直列接続型のDC-DCコンバータが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態1に係るDC-DCコンバータの回路図である。
【
図2】上記DC-DCコンバータに適用されるトランスの概要を示す図である。
【
図3】上記DC-DCコンバータのトランスを含む変換部の等価回路を表す回路図である。
【
図4】電力移送が0のケースにおける、上記DC-DCコンバータの各所の電流、電圧を表した波形図である。
【
図5】比較例1のDC-DCコンバータの回路図である。
【
図6】比較例1のDC-DCコンバータにおいて、各交直変換回路の直流電圧のバランスの状況を示すためのグラフであり、スイッチング動作開始時における推移を示す。
【
図7】本開示の実施形態1に係るDC-DCコンバータにおいて、各交直変換回路の直流電圧のバランスの状況を示すためのグラフであり、スイッチング動作開始時における推移を示す。
【
図8】本開示の実施形態1に係るDC-DCコンバータにおいて、第1直流電源側の交直変換回路の間に直流電圧の差異が生じた場合に流れる補償電流の経路を説明するための図である。
【
図9】本開示の実施形態2に係るDC-DCコンバータの回路図である。
【
図10】本開示の実施形態2に係るDC-DCコンバータおよび比較例2のDC-DCコンバータを対比して、第1直流電源側の交直変換回路の直流電圧および第2直流電源側の交直変換回路の直流電流のバランスの状況を示すための図である。
【
図11】本開示の実施形態3に係るDC-DCコンバータの回路図である。
【
図12】本開示の実施形態3に係るDC-DCコンバータおよび比較例3のDC-DCコンバータを対比して、第1直流電源側の交直変換回路の直流電流および第2直流電源側の交直変換回路の直流電圧のバランスの状況を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一側面に係る実施形態が、図面に基づいて説明される。なお以下の説明において、「端子」とは電気回路内部における特定の回路要素の接続点の意味合いで用いられており、必ずしもコネクタのような外部接続用端子が設けられていることを意味するものではない。
【0009】
<DC-DCコンバータ1の構成概要>
図1は、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1の回路図である。DC-DCコンバータ1は、第1直流電圧源91と第2直流電圧源92との間での、双方向の電力移送を可能とする双方向DC-DCコンバータである。
【0010】
第1直流電圧源91はDC-DCコンバータ1の第1端子対に接続され、第2直流電圧源92はDC-DCコンバータ1の第2端子対に接続される。第1端子対は、高電位側の端子u1と低電位側の端子v1とから構成されている。第2端子対は、高電位側の端子u2と低電位側の端子v2とから構成されている。
【0011】
DC-DCコンバータ1は、第1交直変換回路群10と、第2交直変換回路群20と、変換部30と、制御装置40(制御部)と、を備える。第1交直変換回路群10は、複数の交直変換回路から構成される。第2交直変換回路群20は、少なくとも1つの交直変換回路から構成される。
【0012】
実施形態1では具体例として、第1交直変換回路群10が、第1交直変換回路11と第2交直変換回路12の2つの交直変換回路から構成されている。第1交直変換回路11および第2交直変換回路12のそれぞれは、直流電力を入出力するための直流側端子対と交流電力を入出力するための交流側端子対とを有している。
【0013】
第1交直変換回路11の直流側端子対は、高電位側の端子u11と低電位側の端子v11とから構成されている。第1交直変換回路11の交流側端子対は、端子x11と端子y11とから構成されている。第2交直変換回路12の直流側端子対は、高電位側の端子u12と低電位側の端子v12とから構成されている。第2交直変換回路12の交流側端子対は、端子x12と端子y12とから構成されている。
【0014】
第1交直変換回路群10を構成する複数の交直変換回路の直流側端子対が、第1端子対(端子u1と端子v1)間において、直列に接続されている。すなわち、第1端子対の高電位側の端子u1は、第1交直変換回路11の直流側端子対の高電位側の端子u11と電気的に共通であり、第1端子対の低電位側の端子v1は、第2交直変換回路12の直流側端子対の低電位側の端子v12と電気的に共通である。第1交直変換回路11の直流側端子対の低電位側の端子v11と、第2交直変換回路12の直流側端子対の高電位側の端子u12とは、互いに接続されている。
【0015】
したがって第1交直変換回路群10においては、第1直流電圧源91の電源電圧Vin(端子u1と端子v1間の電圧)を、第1交直変換回路11と第2交直変換回路12とで分担して負担する。つまり第1交直変換回路11の直流側端子対(端子u11と端子v11)間の直流電圧Vdc11と、第2交直変換回路12の直流側端子対(端子u12と端子v12)間の直流電圧Vdc12の和は、第1直流電圧源91の電源電圧Vinに等しい。
【0016】
また実施形態1では具体例として、第2交直変換回路群20が、第3交直変換回路21と第4交直変換回路22の2つの交直変換回路から構成されている。第3交直変換回路21および第4交直変換回路22のそれぞれは、直流電力を入出力するための直流側端子対と交流電力を入出力するための交流側端子対とを有している。
【0017】
第3交直変換回路21の直流側端子対は、高電位側の端子u21と低電位側の端子v21とから構成されている。第3交直変換回路21の交流側端子対は、端子x21と端子y21とから構成されている。第4交直変換回路22の直流側端子対は、高電位側の端子u22と低電位側の端子v22とから構成されている。第4交直変換回路22の交流側端子対は、端子x22と端子y22とから構成されている。
【0018】
第2交直変換回路群20を構成する複数の交直変換回路の直流側端子対が、第2端子対(端子u2と端子v2)間において、直列に接続されている。すなわち、第2端子対の高電位側の端子u2は、第3交直変換回路21の直流側端子対の高電位側の端子u21と電気的に共通であり、第2端子対の低電位側の端子v2は、第4交直変換回路22の直流側端子対の低電位側の端子v22と電気的に共通である。第3交直変換回路21の直流側端子対の低電位側の端子v21と、第4交直変換回路22の直流側端子対の高電位側の端子u22とは、互いに接続されている。
【0019】
したがって第2交直変換回路群20においては、第2直流電圧源92の電源電圧Vout(端子u2と端子v2間の電圧)を、第3交直変換回路21と第4交直変換回路22とで分担して負担する。つまり第3交直変換回路21の直流側端子対(端子u21と端子v21)間の直流電圧Vdc21と、第4交直変換回路22の直流側端子対(端子u22と端子v22)間の直流電圧Vdc22の和は、第2直流電圧源92の電源電圧Voutに等しい。
【0020】
なお、第1直流電圧源91の電源電圧に対し「in」の添え字を、第2直流電圧源92の電源電圧に対し「out」の添え字をつけてあることは、便宜上のものである。上述の通り、DC-DCコンバータ1は双方向の電力移送が可能であり、電力を移送する方向は第1直流電圧源91から第2直流電圧源92の一方向に限定されない。
【0021】
<交直変換回路の構成>
第1交直変換回路群10を構成する第1交直変換回路11、第2交直変換回路12はそれぞれ、第1端子対(端子u1と端子v1)の側から、縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなる。またそれぞれには、それぞれのアクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられている。
【0022】
第1交直変換回路11は、平滑回路111、アクティブブリッジ回路112、および、アクティブブリッジ回路112に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対(端子x11と端子y11)を有する。平滑回路111は直流側端子対(端子u11と端子v11)間の電圧を平滑化する回路であればよく、端子u11と端子v11間に設けられたコンデンサC11を含んで構成される。
【0023】
アクティブブリッジ回路112は、直流側端子対(端子u11と端子v11)に互いに並列に接続された2つのレグを含んで構成される。一方のレグはスイッチング素子S11とスイッチング素子S21とが直列に接続されて構成され、これらの接続点が交流側端子対の一方の端子x11である。もう一方のレグはスイッチング素子S31とスイッチング素子S41とが直列に接続されて構成され、これらの接続点が交流側端子対のもう一方の端子y11である。
【0024】
第2交直変換回路12も、第1交直変換回路11と同様の構成を備えている。第2交直変換回路12における各部は、第1交直変換回路11の相当する各部と同じ名称を持ち、各部を示す符号の最後の1を2に変えたものである。
【0025】
第2交直変換回路群20を構成する第3交直変換回路21、第4交直変換回路22はそれぞれ、第2端子対(端子u2と端子v2)の側から、縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなる。またそれぞれには、それぞれのアクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられている。
【0026】
第3交直変換回路21は、平滑回路211、アクティブブリッジ回路212、および、アクティブブリッジ回路212に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対(端子x21と端子y21)を有する。平滑回路211は直流側端子対(端子u21と端子v21)間の電圧を平滑化する回路であればよく、端子u21と端子v21間に設けられたコンデンサC21を含んで構成される。
【0027】
アクティブブリッジ回路212は、直流側端子対(端子u21と端子v21)に互いに並列に接続された2つのレグを含んで構成される。一方のレグはスイッチング素子S51とスイッチング素子S61とが直列に接続されて構成され、これらの接続点が交流側端子対の一方の端子x21である。もう一方のレグはスイッチング素子S71とスイッチング素子S81とが直列に接続されて構成され、これらの接続点が交流側端子対のもう一方の端子y21である。
【0028】
第4交直変換回路22も、第3交直変換回路21と同様の構成を備えている。第4交直変換回路22における各部は、第3交直変換回路21の相当する各部と同じ名称を持ち、各部を示す符号の最後の1を2に変えたものである。
【0029】
上述の第1交直変換回路群10および第2交直変換回路群20に含まれる各スイッチング素子は、
図1に示されるように、それぞれ還流ダイオードを備えていてもよい。これら各スイッチング素子は、制御装置40によってスイッチングが制御される。各スイッチング素子にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ)、あるいは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor field-effect transistor)が適用可能である。
【0030】
<変換部の構成>
変換部30は、主要な機能として、第1交直変換回路11と第3交直変換回路21との間、および第2交直変換回路12と第4交直変換回路22との間それぞれでの、電圧の変換と電力移送とを担う回路ブロックである。
【0031】
図1の回路図には、変圧比N:1(Nは巻線比)の理想変圧器と、当該理想変圧器に接続されたインダクタンス要素L1とを含む、第1交直変換回路11と第3交直変換回路21との間の交流電力移送を担う第1変換部31が模式的に表されている。ここで変圧比は、第1交直変換回路11の側をNとして表した。このような第1変換部31は、第1交直変換回路11の交流側端子対(端子x11と端子y11)と、第3交直変換回路21の交流側端子対(端子x21と端子y21)との間に配置されている。
【0032】
また、変圧比N:1の理想変圧器と、当該理想変圧器に接続されたインダクタンス要素L2とを含む、第2交直変換回路12と第4交直変換回路22との間の交流電力移送を担う第2変換部32が模式的に表されている。このような第2変換部32は、第2交直変換回路12の交流側端子対(端子x12と端子y12)と、第4交直変換回路22の交流側端子対(端子x22と端子y22)との間に配置されている。
【0033】
したがって、第1交直変換回路11と、第1変換部31と、第3交直変換回路21とが接続された回路、および、第2交直変換回路12と、第2変換部32と、第4交直変換回路22とが接続された回路のそれぞれは、一般的な絶縁型DC-DCコンバータユニットの機能を備えていることになる。
【0034】
しかしながら、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1においては、これら2つの仮想的な絶縁型DC-DCコンバータユニットそれぞれの絶縁トランスが独立しては構成されておらず、共通のコア39に各巻線が巻回されたトランスTrとして構成されている。コア39に巻回される複数の巻線は、第1交直変換回路群10を構成するそれぞれの交直変換回路の交流側端子対にそれぞれ接続された第1巻線と、第2交直変換回路群20を構成するそれぞれの交直変換回路の交流側端子対にそれぞれ接続された第2巻線からなる。
【0035】
そのため各交直変換回路間において電力の移送が行われ得る。
図2は、変換部30のトランスTrを示す概念図である。トランスTrは、4つの交直変換回路に対応した4つの巻線を有するトランスである。第1巻線である巻線W1は第1交直変換回路11の交流側端子対(端子x11と端子y11)に接続されている。第1巻線である巻線W2は第2交直変換回路12の交流側端子対(端子x12と端子y12)に接続されている。
【0036】
第2巻線である巻線W3は第3交直変換回路21の交流側端子対(端子x21と端子y21)に接続されている。第2巻線である巻線W4は第4交直変換回路22の交流側端子対(端子x22と端子y22)に接続されている。なおこれらの各巻線と各端子との間には変換部30のインダクタンス成分、特に
図1あるいは
図3におけるインダクタンス要素L1およびインダクタンス要素L2の一部を担う実素子としてのリアクトルが適宜介挿されていてよい。
【0037】
図3は、4つの巻線W1~W4を有する上記トランスTrを含む変換部30の等価回路を示す。
図3の等価回路は、以下に説明する回路として変換部30を等価的に表している。当該等価回路は、各交直変換回路の交流側端子対にそれぞれ接続された巻線W1~W4を一方の巻線として有する4つの理想変圧器を有している。なお、当該理想変圧器の変圧比は、第1交直変換回路11および第2交直変換回路12に接続されたそれぞれについて1:1、第3交直変換回路21および第4交直変換回路22に接続されたそれぞれについてN:1とする。
【0038】
各理想変圧器の他方の巻線(仮想巻線)それぞれの一方の端子は互いに接続されている。これらは図示されるように接地されていてもよい。当該他方の巻線の他方の端子は、第1交直変換回路11、第3交直変換回路21、第2交直変換回路12、第4交直変換回路22のそれぞれに接続された理想変圧器について、それぞれ端子A、端子B、端子C、端子Dと称される。
【0039】
図3の等価回路は、端子Aと端子Bの間に配されたインダクタンス要素L1、端子Cと端子Dの間に配されたインダクタンス要素L2を有している。これらのインダクタンス要素は、
図1にみられるインダクタンス要素L1、L2とそれぞれ等価である。また当該等価回路は、端子Aと端子C、端子Bと端子D、端子Aと端子D、端子Bと端子Cのそれぞれの間にそれぞれ配されたインダクタンス要素Lac、インダクタンス要素Lbd、インダクタンス要素Lad、インダクタンス要素Lbcを有している。なお各インダクタンス要素を表す符号は、それぞれのインダクタンス要素のインダクタンスを表す記号としても使用される。
【0040】
<各スイッチング素子のオン/オフ制御>
制御装置40は、各スイッチング素子のスイッチングの制御において、第1交直変換回路群10を構成する交直変換回路である、第1交直変換回路11のスイッチングの位相と、第2交直変換回路12のスイッチングの位相を同じにして実行する。さらに好ましくは制御装置40は、第2交直変換回路群20を構成する交直変換回路である、第3交直変換回路21のスイッチングの位相と、第4交直変換回路22のスイッチングの位相を同じにして実行する。
【0041】
ここで、例えば第1交直変換回路11のスイッチングの位相と、第2交直変換回路12のスイッチングの位相を同じにするとは、次の意味である。第1交直変換回路11におけるスイッチング素子と、第2交直変換回路12における相応するスイッチング素子の、全てについてオンおよびオフがそれぞれ同じ位相で実行される。
【0042】
各交直変換回路において、各スイッチング素子のスイッチングの制御方法には適宜の公知手法が適用され得る。以下はその一例である。
【0043】
第1交直変換回路11の各レグにおいて、直列接続されたスイッチング素子、例えばスイッチング素子S11とスイッチング素子S21とは、同時に導通することが無いように、オンデューティ50%でオン/オフが反転するように制御される。あるいは、これらのスイッチング素子において、スイッチングの位相差が180°の状態で、オンデューティが50%未満になるように制御されてもよい。また、いわゆるデッドタイムを考慮したオン/オフのタイミング調整が行われてもよい。
【0044】
一般的には、スイッチング素子S11(一方のレグのアッパーアーム)とスイッチング素子S41(他方のレグのロワーアーム)とが同一位相でオン/オフし、スイッチング素子S21とスイッチング素子S31についても同様とする。この状態をレグ間位相差0とするが、制御装置40は、レグ間位相差を0とするこのような制御を行ってもよいし、さらにレグ間位相差を0以外に適宜調整する制御を行ってもよい。他の交直変換回路についても、第1交直変換回路11における制御と同様にスイッチングの制御がされる。
【0045】
また、制御装置40は、第1交直変換回路群10を構成する交直変換回路と第2交直変換回路群20を構成する交直変換回路との間のスイッチングの位相差であるブリッジ間位相差を、第1直流電圧源と前記第2直流電圧源との間で移送する電力に応じて決定する。ブリッジ間位相差が0であれば電力移送は行われず、ブリッジ間位相差が生じる場合には、その正負により電力の移送の向きが決定され、またその大きさに応じた電力の移送が実行される。よって、制御装置40は移送電力に応じて、ブリッジ間位相差を制御する。
【0046】
このように実施形態1によれば、負担電圧のアンバランスのフィードバックにより交直変換回路毎の位相を制御するような、複雑な制御は必要ない。また実施形態1によれば、負担電圧をバランスさせるために、例えば特定の交直変換回路における損失を意図的に増加させるようにスイッチングを制御することもない。
【0047】
<動作例の概要>
実施形態1に係るDC-DCコンバータ1の動作例を、比較例1のDC-DCコンバータ1Rと対比しつつ示す。
図4は本動作例の実行時の、DC-DCコンバータ1の各部における電圧、電流の波形を示す図である。なお
図4に示される電流が生じる理由については、後述される。
【0048】
交流電圧Vac11、Vac12、Vac21、Vac22はそれぞれ、第1交直変換回路11、第2交直変換回路12、第3交直変換回路21、第4交直変換回路22の交流側端子対間の電圧である。交流電流Iac11、Iac12、Iac21、Iac22はそれぞれ、第1交直変換回路11、第2交直変換回路12、第3交直変換回路21、第4交直変換回路22の交流側端子対の入出力電流である。インダクタ電流Iab、Iac、Iad、Ibc、Ibd、Icdはそれぞれ、
図3の変換部30の等価回路におけるインダクタンス要素L1、Lac、Lad、Lbc、Lbd、L2を流れる電流である。
【0049】
本動作例において、制御装置40によるスイッチング動作の制御は以下の条件で行われる。第1交直変換回路11のスイッチングの位相と、第2交直変換回路12のスイッチングの位相は同じであり、第3交直変換回路21のスイッチングの位相と、第4交直変換回路22のスイッチングの位相は同じである。また、第1直流電圧源91と第2直流電圧源92との間での電力移送が0となるように、ブリッジ間位相差を0としている。各交直変換回路においてレグ間位相差は0である。なお変圧比Nは1.25とした。
【0050】
<比較例1のDC-DCコンバータの構成>
図5は、DC-DCコンバータ1に関する比較例である比較例1のDC-DCコンバータ1Rの回路構成を示す図である。比較例1のDC-DCコンバータ1Rは、絶縁型DC-DCコンバータユニット1R1と絶縁型DC-DCコンバータユニット1R2とが互いに独立した絶縁型DC-DCコンバータユニットとして構成された、従来技術に類似する構成である。
【0051】
比較例1における絶縁型DC-DCコンバータユニット1R1のトランスTr1と、絶縁型DC-DCコンバータユニット1R2のトランスTr2とは、別体のトランスであり、実施形態1のようにコアを共通とすることは無い。比較例1のDC-DCコンバータ1Rにおける制御装置1R4は、各スイッチング素子を、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1の相応するスイッチング素子に対する制御と同様にスイッチングの制御を行う。
【0052】
なお比較例1において、絶縁型DC-DCコンバータユニット1R1と絶縁型DC-DCコンバータユニット1R2との間で、トランスの鉄損にばらつきがあり、また、平滑回路のコンデンサの特性にもばらつきがある状態を想定した。実施形態1に係るDC-DCコンバータ1においても同じばらつきを想定した。
【0053】
<動作例の対比>
図6は、比較例1のDC-DCコンバータ1Rの動作時の各交直変換回路の直流電圧を示すグラフであり、時刻0において制御装置40の制御による各スイッチング素子のスイッチングが開始された前後の状況が表されている。横軸は時刻であり、任意単位である。
図7は、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1Rの動作時の各交直変換回路の直流電圧を示す同様のグラフである。
【0054】
図6および
図7において、スイッチング開始前の、直流電圧Vdc11と直流電圧Vdc12との差異、および、直流電圧Vdc21と直流電圧Vdc22との差異は、それぞれ各交直変換回路の平滑回路のコンデンサの特性のばらつきに起因するものである。
【0055】
スイッチング動作が開始された後、しばらくして各直流電圧が一定値となるが、第1直流電圧源91側(第1端子側)、第2直流電圧源92側(第2端子側)のそれぞれにおいて、比較例1のDC-DCコンバータ1Rでは、直流電圧がばらつき、電圧の負担が偏っている。一方、実施形態1に係るDC-DCコンバータ1では、第1直流電圧源91側(第1端子側)、第2直流電圧源92側(第2端子側)のそれぞれにおいて、各交直変換回路の電圧の負担が均一になるように動作することが判明した。
【0056】
<作用>
実施形態1に係るDC-DCコンバータ1の回路構成によって、このように各交直変換回路の負担する電圧のバランスが実現される理由について、以下に説明する。例として、コンデンサC11に印加されている直流電圧Vdc11が他のコンデンサに印加されている直流電圧より高くなった場合、以下の順序で動作して電圧差が抑制される。なおここで、コンデンサ間の直流電圧の大小は、変換部30のトランスTrの変圧比を考慮した換算電圧で、比較されるものとする。
【0057】
コンデンサC11の直流電圧Vdc11と他のコンデンサの直流電圧Vdc21、Vdc12、Vdc22との間に電圧差ができると、コンデンサC11と他のコンデンサ間を充放電する循環電流が発生する。すると、スイッチング素子の導通損やトランスTrの銅損などの損失が発生する。この損失分の電流はコンデンサC11から放電されて、他の低圧側のコンデンサに充電される。
【0058】
循環電流によってコンデンサC11の直流電圧Vdc11と他のコンデンサの直流電圧Vdc21、Vdc12、Vdc22との間の電圧差が縮まり、経時的に循環電流は減少する。こうして第1直流電圧源91側において、コンデンサC11の直流電圧Vdc11とコンデンサC12の直流電圧Vdc12の差が抑制される。また、第2直流電圧源92側において、コンデンサC21の直流電圧Vdc21とコンデンサC22の直流電圧Vdc22の差が抑制される。
【0059】
例えば、第1交直変換回路11の交流側端子対(端子x11と端子y11)を入出力する交流電流Iac11は、電流が0となる前後4分の1周期内の時刻tにおいては、次式で表される。Iac11=Iab+Iac+Iad=(Vac11-N・Vac21)t/L1+(Vac11-Vac12)t/Lac+(Vac11-N・Vac22)t/Lad。
【0060】
なお、インダクタンス要素Lac、Lad、Lbc、Lbdは、これらのインダクタンスが小さいほど循環電流が大きくなって電圧差を抑制する効果が高くなる。インダクタンス要素L1、L2のインダクタンスは、定格電力を考慮して決定される。また、各交直変換回路群において、直列に接続される交直変換回路の数が多いほど、循環電流の経路が多くなって電圧差を抑制する効果が高くなる。
【0061】
図8は、DC-DCコンバータ1において第1直流電圧源91側(第1端子側)の直流電圧Vdc11と直流電圧Vdc12の2つに着目して、直流電圧Vdc11の側の電圧が高いアンバランスが生じたとした場合に生じる還流電流を矢印で示した回路図である。
図8では、制御装置40の表示は省略されており、変換部30は
図3の等価回路で表されている。
【0062】
また
図8は、第1交直変換回路11においてスイッチング素子S11とスイッチング素子S41とがオンであり、スイッチング素子S21とスイッチング素子S31とがオフであるタイミングにおける状況を示している。なお上述のように、第2交直変換回路12のスイッチングの位相は、第1交直変換回路11と同じである。
【0063】
DC-DCコンバータ1の回路構成においては、第1交直変換回路11のコンデンサC11と第2交直変換回路12のコンデンサC12とは、等価回路におけるインダクタンス要素Lacを通る図の矢印の還流電流の経路で接続されていることになる。そのため、例えばコンデンサC11に印加される電圧である直流電圧Vdc11がコンデンサC12に印加される電圧である直流電圧Vdc12よりも大きい場合、コンデンサC11がコンデンサC12をチャージするように電荷を移動させる矢印の向きの還流電流が、電圧の差異を補償する補償電流として流れることになる。
【0064】
なおスイッチング素子のオン/オフが
図8の状態から反転しているタイミングにおいては、変換部30に流れる電流の増減が反転する。
図8に示される還流電流の経路における変換部30の等価回路の理想変圧器およびインダクタンス要素Lacを流れる電流の向きは交互となり、これらの回路要素には補償電流は交流として流れる。コンデンサC11およびコンデンサC12においては、時間平均するとコンデンサC11がコンデンサC12をチャージするような電流が補償電流として流れる。
【0065】
DC-DCコンバータ1の回路構成においては、第1交直変換回路群10を構成する交直変換回路同士が、トランスTrによって変換部30において電磁的に結合しており独立していないため、このような補償電流が流れることができる。したがって、実施形態1のDC-DCコンバータ1によれば、
図7の結果のように、第1直流電圧源91側(第1端子側)、第2直流電圧源92側(第2端子側)のそれぞれにおいて各交直変換回路が負担する電圧が良好にバランスするようになる。
【0066】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0067】
図9は実施形態2に係るDC-DCコンバータ2の構成を示す回路図である。DC-DCコンバータ2では、第3交直変換回路21の直流側端子対(端子u21と端子v21)と、第4交直変換回路22の直流側端子対(端子u22と端子v22)とが、並列にそれぞれ第2端子対(端子u2と端子v2)に接続されている。その他の構成は実施形態1に係るDC-DCコンバータ1と同様である。
【0068】
このようにDC-DCコンバータ2では、第3交直変換回路21と第4交直変換回路22とが、第2直流電圧源92に対して並列に接続されている。そのため、第2交直変換回路群20において、第3交直変換回路21と第4交直変換回路22とで第2直流電圧源92に対する入出力電流を分担することで、電力の負担が分散されている。
【0069】
第2端子対に対する各端子の接続を詳細に説明すると以下の通りである。第2端子対の高電位側の端子u2は、第3交直変換回路21の直流側端子対の高電位側の端子u21および第4交直変換回路22の直流側端子対の高電位側の端子u22と電気的に共通である。第2端子対の低電位側の端子v2は、第3交直変換回路21の直流側端子対の低電位側の端子v21および第4交直変換回路22の直流側端子対の低電位側の端子v22と電気的に共通である。
【0070】
図10は、実施形態2に係るDC-DCコンバータ2、および、比較例2のDC-DCコンバータの動作例を対比して示す図である。ここで比較例1のDC-DCコンバータ1Rから、第3交直変換回路21の直流側端子対、第4交直変換回路22の直流側端子対、第2端子対の相互接続を、DC-DCコンバータ2と同様に変更した他は、同様の構成のDC-DCコンバータを比較例2とした。
【0071】
図10のDC-DCコンバータの動作においてはブリッジ間位相を設けて第1直流電圧源91から第2直流電圧源92へと電力の移送が行われるようにした他は、実施形態1の場合と同様に各スイッチング素子のスイッチング制御が行われた。なお、各グラフの左端の時点で、各スイッチング素子のスイッチング制御が開始された。
【0072】
このように
図10には、入力側において交直変換回路が直列接続され、出力側において交直変換回路が並列接続されている場合の力行動作の結果が示されている。
図10には、入力側の電圧のバランスを表すため、直流電圧Vdc11、Vdc12が示されている。また、出力側の電流のバランスを表すため、第3交直変換回路21の直流側端子対の端子電流である直流電流Idc21と、第4交直変換回路22の直流側端子対の端子電流である直流電流Idc22とが示されている。
【0073】
図10によれば、実施形態2に係るDC-DCコンバータ2では、比較例2と比べて、直流電圧Vdc11と直流電圧Vdc12とがバランスするように動作することが明らかである。これは、実施形態1の説明と同様に、第1交直変換回路群10において各交直変換回路の電圧をバランスさせる作用が働くためである。
【0074】
またその結果、第1交直変換回路群10の各交直変換回路が分担する移送電力がバランスするから、第2交直変換回路群20の各交直変換回路が分担する移送電力もまたバランスする。こうして、第2交直変換回路群20における交直変換回路毎の入出力電流のばらつきも比較例2と比べると低減される。なお
図10の結果は、入力側において交直変換回路が並列接続され、出力側において交直変換回路が直列接続されている場合の回生動作の結果と同義といえる。
【0075】
〔実施形態3〕
図11は実施形態3に係るDC-DCコンバータ3の構成を示す回路図である。DC-DCコンバータ3では、第1交直変換回路11の直流側端子対(端子u11と端子v11)と、第2交直変換回路12の直流側端子対(端子u12と端子v12)とが、並列にそれぞれ第1端子対(端子u2と端子v2)に接続されている。その他の構成は実施形態1に係るDC-DCコンバータ1と同様である。
【0076】
このようにDC-DCコンバータ3では、第1交直変換回路11と第2交直変換回路12とが、第1直流電圧源91に対して並列に接続されている。そのため、第1交直変換回路群10において、第1交直変換回路11と第2交直変換回路12とで第1直流電圧源91に対する入出力電流を分担することで、電力の負担が分散されている。
【0077】
第1端子対に対する各端子の接続を詳細に説明すると以下の通りである。第1端子対の高電位側の端子u1は、第1交直変換回路11の直流側端子対の高電位側の端子u11および第2交直変換回路12の直流側端子対の高電位側の端子u12と電気的に共通である。第1端子対の低電位側の端子v1は、第1交直変換回路11の直流側端子対の低電位側の端子v11および第2交直変換回路12の直流側端子対の低電位側の端子v12と電気的に共通である。
【0078】
図12は、実施形態3に係るDC-DCコンバータ3、および、比較例3のDC-DCコンバータの動作例を対比して示す図である。ここで比較例1のDC-DCコンバータ1Rから、第1交直変換回路11の直流側端子対、第2交直変換回路12の直流側端子対、第1端子対の相互の接続を、DC-DCコンバータ3と同様に変更した他は、同様の構成のDC-DCコンバータを比較例3とした。
【0079】
図12のDC-DCコンバータの動作においてはブリッジ間位相を設けて第1直流電圧源91から第2直流電圧源92へと電力の移送が行われるようにした他は、実施形態1の場合と同様に各スイッチング素子のスイッチング制御が行われた。なお、各グラフの左端の時点で、各スイッチング素子のスイッチング制御が開始された。
【0080】
このように
図12には、入力側において交直変換回路が並列接続され、出力側において交直変換回路が直列接続されている場合の力行動作の結果が示されている。
図12には、出力側の電圧のバランスを表すため、直流電圧Vdc21、Vdc22が示されている。また、入力側の電流のバランスを表すため、第1交直変換回路11の直流側端子対の端子電流である直流電流Idc11と、第2交直変換回路12の直流側端子対の端子電流である直流電流Idc12とが示されている。
【0081】
図12によれば、実施形態3に係るDC-DCコンバータ3では、比較例3と比べて、直流電圧Vdc21と直流電圧Vdc22とがバランスするように動作することが明らかである。これは、実施形態1の説明と同様に、第2交直変換回路群20において補償電流により各交直変換回路の電圧をバランスさせる作用が働くためである。
【0082】
またその結果、第2交直変換回路群20の各交直変換回路が分担する移送電力がバランスするから、第1交直変換回路群10の各交直変換回路が分担する移送電力もまたバランスする。こうして、第1交直変換回路群10における交直変換回路毎の入出力電流のばらつきも比較例3と比べると低減される。なお
図12の結果は、入力側において交直変換回路が直列接続され、出力側において交直変換回路が並列接続されている場合の回生動作の結果と同義といえる。
【0083】
〔まとめ〕
本開示の態様1は、第1端子対と、第2端子対と、を備え、前記第1端子対と前記第2端子対との間での電力の移送を制御するDC-DCコンバータであって、それぞれが、前記第1端子対の側から縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなり、当該アクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられた、複数の交直変換回路から構成された第1交直変換回路群と、前記第1交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路の前記交流側端子対にそれぞれ接続された第1巻線と、それぞれが、前記第2端子対の側から縦続接続された平滑回路およびアクティブブリッジ回路からなり、当該アクティブブリッジ回路に接続された交流電力を入出力するための交流側端子対が設けられた、少なくとも1つの交直変換回路から構成された第2交直変換回路群と、前記第2交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路の前記交流側端子対にそれぞれ接続された第2巻線と、コアと、前記第1交直変換回路群および前記第2交直変換回路群に含まれるスイッチング素子を制御する制御部と、を備え、前記第1交直変換回路群を構成する前記交直変換回路の、直流電力を入出力するための直流側端子対が、前記第1端子対間において直列に接続されており、前記第1巻線および前記第2巻線が共通して前記コアに巻回されたトランスが構成されている、DC-DCコンバータ。
【0084】
本開示の態様2のDC-DCコンバータは、上記態様1において、前記制御部は、前記第1交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路のスイッチングを、同じ位相で実行する構成を備えている。
【0085】
本開示の態様3のDC-DCコンバータは、上記態様2において、前記制御部は、前記第1交直変換回路群を構成する前記交直変換回路に対する、前記第2交直変換回路群を構成する前記交直変換回路のスイッチングの位相差を、前記第1端子対と前記第2端子対との間で移送する電力に応じて決定する構成を備えている。
【0086】
本開示の態様4のDC-DCコンバータは、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記第2交直変換回路群は複数の前記交直変換回路から構成されており、当該交直変換回路の、直流電力を入出力するための直流側端子対が、前記第2端子対間において直列に接続されている構成を備えている。
【0087】
本開示の態様5のDC-DCコンバータは、上記態様4において、前記制御部は、前記第2交直変換回路群を構成するそれぞれの前記交直変換回路のスイッチングを、同じ位相で実行する構成を備えている。
【0088】
本開示の態様6のDC-DCコンバータは、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記第2交直変換回路群は複数の前記交直変換回路から構成されており、当該交直変換回路の、直流電力を入出力するための直流側端子対が、並列に前記第2端子対に接続されている。
【0089】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置40(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0090】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータが読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。また、上記装置の機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記装置として機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。
【0091】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0092】
例えば、実施形態1においては、第2直流電圧源92側において、2つの交直変換回路が直列に接続されている構成が例示されたが、3つ以上の交直変換回路が直列に接続されていてもよい。あるいは第2直流電圧源92に接続される交直変換回路は1つであってもよい。実施形態2においては、第2直流電圧源92側において、2つの交直変換回路が並列に接続されている構成が例示されたが、3つ以上の交直変換回路が並列に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1、2、3 DC-DCコンバータ
(u1、v1) 第1端子対
(u2、v2) 第2端子対
10 第1交直変換回路群
11 第1交直変換回路
12 第2交直変換回路
(u11、v11)、(u12、v12) 直流側端子対
(x11、y11)、(x12、y12) 交流側端子対
20 第2交直変換回路群
21 第3交直変換回路
22 第4交直変換回路
(u21、v21)、(u22、v22) 直流側端子対
(x21、y21)、(x22、y22) 交流側端子対
111、121、211、221 平滑回路
112、122、212、222 アクティブブリッジ回路
30 変換部
31 第1変換部
32 第2変換部
Tr トランス
39 コア
W1、W2 巻線(第1巻線)
W3、W4 巻線(第2巻線)
40 制御装置(制御部)
91 第1直流電圧源
92 第2直流電圧源
【要約】
【課題】電圧負担の偏りを抑制する。
【解決手段】DC-DCコンバータ(1)は、第1交直変換回路群(10)を構成する複数の交直変換回路(11、12)の交流側端子対にそれぞれ接続された第1巻線と、第2交直変換回路群(20)を構成する交直変換回路(21、22)の交流側端子対にそれぞれ接続された第2巻線とが共通してコアに巻回されたトランス(Tr)が構成され、第1交直変換回路群を構成する交直変換回路の直流電力を入出力するための直流側端子対が直列に接続される。
【選択図】
図1