(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241211BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/14 603
B41J2/14 613
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2020111944
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨松 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】大久保 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 大記
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 貴公
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-163438(JP,A)
【文献】特開2009-083470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0091060(US,A1)
【文献】特開2013-154528(JP,A)
【文献】特開2011-161852(JP,A)
【文献】特開2016-221777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有するノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、
前記ホルダーを加熱するヒーターと、
を備え、
前記ホルダーは、平面視で前記複数の第2流路を囲む外周壁を有し、
前記ヒーターは、前記外周壁に固定されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記ヒーターは、平面視で全ての前記複数の第2流路を囲み、且つ、前記第1方向に直交する方向に見て、前記第2流路の少なくとも一部と重なることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有するノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、
前記ホルダーを加熱するヒーターと、
を備え、
前記ヒーターは、平面視で全ての前記複数の第2流路を囲み、且つ、前記第1方向に直交する方向に見て、前記第2流路の少なくとも一部と重なることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2流路は、
前記第1方向に交差する方向に延在する交差部分と、
前記第1方向に延在すると共に前記交差部分と前記ケースの前記第1流路とを連通させる連通部分と、
を有し、
前記ヒーターは、前記第1方向に直交する方向に見て、前記交差部分と前記連通部分とに亘って重なって配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記ヒーターは、可撓性を有し、平面視で前記外周壁の全周を覆うように巻き付けられて、前記外周壁に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記複数のヘッドチップは、前記第1方向に直交する第3方向に並んで配置され、
前記ヒーターは、
前記第3方向に延在する第1部分と、
前記第1方向に直交すると共に前記第3方向に交差する方向に延在する第2部分と、
を有し、
前記第1部分の単位面積当たりの発熱量は、前記第2部分の単位面積当たりの発熱量よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有するノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、
前記ホルダーを加熱するヒーターと、
を備え、
前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1方向に交差する方向に延在する交差部分を有し、
前記ヒーターは、前記第1方向に見た平面視において前記複数の交差部分と重なる位置に配置され、
前記ホルダーは、当該ホルダーの前記第1方向とは反対方向である第2方向側に設けられた上壁を有し、
前記ヒーターは、前記上壁に配置されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記上壁の前記交差部分を画定している部分における前記第1方向における最小の厚みを、前記交差部分の前記第1方向における最大の高さよりも小さくすることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第2流路は、前記第1方向に延在すると共に前記交差部分と前記ケースの前記第1流路とを連通させる連通部分を含み、
前記第1方向における前記連通部分の長さは、前記交差部分の前記第1方向における高さよりも長く、
前記交差部分は、前記ヘッドチップよりも前記上壁の近くに配置されることを特徴とする請求項7又は8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記ホルダーは、側壁を有し、
前記ヒーターは、
可撓性を有し、
前記上壁に固定された本体部と、
前記本体部に対して前記上壁の端部で折り曲げられ、前記側壁に固定された折曲部と、
を有することを特徴とする請求項7~9の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記ヒーターは、フィルムヒーターであることを特徴とする請求項5又は10に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記複数の第2流路のそれぞれは、前記ホルダーの前記上壁から前記第1方向とは反対方向である第2方向に突出する接続部分を有し、
前記ヒーターは、前記複数の接続部分のそれぞれが挿通される複数の開口を有することを特徴とする請求項7~10の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有する1つのノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を夫々が有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、
前記ホルダーを加熱するヒーターと、
を備え
、
前記ホルダーは、当該ホルダーの前記第1方向とは反対方向である第2方向側に設けられた上壁を有し、
前記ヒーターは、前記上壁の略全面を覆うことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項14】
前記ヒーターは、前記複数のヘッドチップの全てを覆うことを特徴とする請求項1
3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項15】
液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有する1つのノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を夫々が有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、
前記ホルダーを加熱するヒーターと、
を備え、
前記ヒーターは、前記複数のヘッドチップの全てを覆うことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項16】
前記ホルダーは、複数の部材が前記第1方向に積層されることで構成され、
前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1方向に交差する方向に延在する交差部分を有し、
前記ヒーターは、前記第1方向に見た平面視において前記複数の交差部分と重なる位置に配置される、
ことを特徴とする請求項13~15の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項17】
液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有する1つのノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を夫々が有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、
前記ホルダーを加熱するヒーターと、
を備え、
前記ホルダーは、複数の部材が前記第1方向に積層されることで構成され、
前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1方向に交差する方向に延在する交差部分を有し、
前記ヒーターは、前記第1方向に見た平面視において前記複数の交差部分と重なる位置に配置される、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項18】
前記ヒーターは、前記ホルダーを構成するために前記第1方向に積層された前記複数の部材のうち隣り合う2つの部材の間に設けられる、
ことを特徴とする請求項
13を引用しない請求項16
又は17に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項19】
液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有する1つのノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を夫々が有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、
前記ホルダーを加熱するヒーターと、
を備え、
前記ヒーターは、前記第1方向に見て、全ての前記複数のヘッドチップと重なることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項20】
前記ヘッドチップの前記複数のノズルを露出するための開口を複数有し、金属で構成される固定板を備え、
前記ホルダーは、前記複数のヘッドチップおよび前記固定板が固定される下壁を有し、
前記下壁は、前記複数のヘッドチップのそれぞれを収容する複数の凹部を有することを特徴とする請求項1~
19の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項21】
前記ケースは樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1~
20の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項22】
前記ホルダーとの間に前記ヒーターを挟むようにして配置されたヘッド外壁を備え、
前記ヘッド外壁は、前記ホルダーよりも熱伝導率が低いことを特徴とする請求項1~
21の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項23】
請求項
22に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを保持し、金属で構成された保持部材と、
を備え、
前記保持部材の一部は、前記ヒーターとの間に前記ヘッド外壁を挟むように配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項24】
請求項
22に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを保持し、樹脂で構成された保持部材と、
を備え、
前記保持部材の一部は、前記ヒーターとの間に前記ヘッド外壁を挟むように配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項25】
請求項1~
21の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを保持し、樹脂で構成された保持部材と、
を備え、
前記保持部材の一部は、前記ホルダーとの間に前記ヒーターを挟むようにして配置されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項26】
請求項1~
22の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記ヒーターを制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項27】
請求項1~
22の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから噴射される液体を貯留する液体容器と、
を具備することを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターやプロッター等のインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置は、カートリッジやタンク等に貯留されたインクなどの液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを具備する。
【0003】
液体噴射ヘッドとしては、液体を吐出するノズルが設けられたヘッドチップと、複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を具備する。
【0004】
このような液体噴射ヘッドから吐出する液体には、液体の種類の応じて適した粘度がある。液体の粘度は、温度と相関関係にあるため、粘度が低いほど粘度が高くなり、温度が高いほど粘度が低くなる特性がある。そのため、通常使用する液体の粘度に適するように設計された液体噴射ヘッドが、低温環境に置かれた場合や、粘度の高い液体を吐出する場合などには、液体を加熱する必要がある。液体を加熱するために、液体噴射ヘッドにヒーターを設けた構成が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
具体的には、特許文献1には、複数の流路モジュールを保持するフレームに第一ヒーターを設け、液体を供給する第二タンクに第二ヒーターを設け、流路モジュールと第二タンクとを接続する接続部と、を有する構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ヘッドチップのケースの各々を加熱するヒーターを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-97568号公報
【文献】特開2019-155839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、接続部の周囲が外部に触れているため、第二ヒーターによって加熱された第二タンク内のインクを、接続部を介して流路モジュールに供給する際に、接続部から放熱されて流路モジュールに供給されるインクの温度が低下してしまう。それを補うために、第一ヒーターによってフレーム及びノズルプレートを介して流路モジュールを加熱しているが、フレーム及びノズルプレートが外気に触れているので、そこからも第一ヒーターの熱が放熱し、流路モジュール内のインクが十分に加熱されない虞があった。
【0009】
また、特許文献2のように、各ヘッドチップに対応してヒーターを設けることで、ヘッドチップ内部の加熱を行う構成も考えられるものの、ノズル近傍にヒーターを設けることで構成が複雑化してしまうという問題がある。具体的には、ヒーターがノズル近傍に配置されるほど、ヒーターに接続される配線の長さが長くなり、また、配線の引き回しも必要になり、構成が複雑になってしまう。
【0010】
なお、このような問題は、インクを噴射するインクジェット式記録ヘッドに限定されず、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、ヒーターによって十分に加熱された液体をヘッドチップに供給することができると共に、熱伝導率の高い材料で構成されたホルダーによってヘッドチップを加熱する必要がなく、構造を簡略化することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を第1方向に噴射する複数のノズルを有するノズルプレートと、前記複数のノズルの少なくとも一部と連通する1つ以上の第1流路が形成されたケースと、を有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップが固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダーであって、前記複数の第1流路の少なくとも1つに連通する第2流路を複数有するホルダーと、前記ホルダーを加熱するヒーターと、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0013】
また、本実施形態の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを保持し、金属で構成された保持部材と、を備え、前記保持部材の一部は、前記ヒーターとの間に前記ヘッド外壁を挟むように配置されていることを特徴とする液体噴射装置にある。
【0014】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを保持し、樹脂で構成された保持部材と、を備え、前記保持部材の一部は、前記ヒーターとの間に前記ヘッド外壁を挟むように配置されていることを特徴とする液体噴射装置にある。
【0015】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを保持し、樹脂で構成された保持部材と、を備え、前記保持部材の一部は、前記ホルダーとの間に前記ヒーターを挟むようにして配置されることを特徴とする液体噴射装置にある。
【0016】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、前記ヒーターを制御する制御手段と、を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0017】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから噴射される液体を貯留する液体容器と、を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【
図2】実施形態1に係るヘッドチップの上面図である。
【
図3】実施形態1に係るヘッドチップの断面図である。
【
図4】実施形態1に係る記録ヘッドの上面図である。
【
図5】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図6】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図7】実施形態1に係るホルダー及びヒーターの斜視図である。
【
図8】実施形態1に係るホルダー及びヒーターの側面図である。
【
図9】実施形態1に係るホルダー及びヒーターの側面図である。
【
図10】実施形態1に係るホルダー及びヒーターの側面図である。
【
図11】実施形態1に係るホルダー及びヒーターの変形例を示す上面図である。
【
図12】実施形態1に係る記録装置の概略構成を示す図である。
【
図13】実施形態1に係る記録ヘッド及び保持部材の要部断面図である。
【
図14】実施形態1に係る記録ヘッド及び保持部材の要部断面図である。
【
図15】実施形態2に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図16】実施形態2に係るホルダー及びヒーターの斜視図である。
【
図17】実施形態2に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図18】実施形態2に係る記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【
図19】実施形態2に係るホルダー及びヒーターの変形例を示す斜視図である。
【
図20】他の実施形態に係る記録ヘッドの底面図である。
【
図21】他の実施形態に係る記録ヘッドの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、Z方向は、鉛直方向を示し、+Z方向は鉛直下向き、-Z方向は鉛直上向きを示す。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸については、±X方向、±Y方向、±Z方向として説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る「液体噴射ヘッド」の一例であるインクジェット式記録ヘッド1の分解斜視図である。
【0021】
図示するように、本実施形態の「液体噴射ヘッド」の一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)は、複数のヘッドチップ10と複数のヘッドチップ10を保持するホルダー40とを有する。本実施形態では、1つのホルダー40に4個のヘッドチップ10が+Z方向と直交する+Y方向に並んで配置されている。本実施形態において、+Z方向は「第1方向」の一例であり、+Y方向は「第3方向」の一例である。なお、ホルダー40に保持されたヘッドチップ10の数は4個に限定されるものではなく、2個以上の複数であれであればよい。また、複数のヘッドチップ10の配置についてもこれに限定されるものではない。
【0022】
ここで、ヘッドチップ10の一例について
図2~
図3を参照して説明する。なお、
図2は、+Z方向に見たヘッドチップ10の平面図であり、
図3は、
図2のA-A′線断面図である。また、本実施形態では、ヘッドチップ10の各方向について、記録ヘッド1に搭載された際の方向に基づいて説明する。
【0023】
図2及び
図3に示すように、ヘッドチップ10は、+Z方向に向かってインクを吐出する複数のノズル11が設けられたノズルプレート12と、複数のノズル11と連通する「第1流路」の一例である後述の導入口32及び導入液室31が形成されたケース13とを具備する。また、本実施形態のヘッドチップ10は、連通板14、圧力室形成基板15、振動板16、コンプライアンス基板17、圧電アクチュエーター18等をさらに具備する。これらヘッドチップ10を構成する複数の構成部材は、積層されて接着剤等によって接合されてユニット化されている。
【0024】
本実施形態の圧力室形成基板15は、ノズルプレート12に形成された複数のノズル11のそれぞれに連通する複数の圧力室19を有する。圧電アクチュエーター18は、各圧力室19に対応して複数設けられている。圧電アクチュエーター18は、対応する圧力室19内のインクに圧力変動、即ち、当該圧力室19と連通するノズル11からのインクの噴射に必要なエネルギーを生じさせるエネルギー発生素子であり、圧力発生素子でもある。圧力室19と圧電アクチュエーター18との間には、振動板16が設けられており、この振動板16によって圧力室19の-Z方向側の開口が封止されて当該圧力室19の一部が区画されている。なお、圧力室形成基板15と振動板16とが一体形成されていてもよい。そして、この振動板16上における各圧力室19に対応する領域に圧電アクチュエーター18がそれぞれ積層されている。本実施形態の圧電アクチュエーター18は、振動板16上に、第1電極20、圧電体層21及び第2電極22が順次積層されてなる。このように構成された圧電アクチュエーター18は、第1電極20と第2電極22との間に両電極の電位差に応じた電界が付与されると撓み変形する。
【0025】
また、圧電アクチュエーター18には、可撓性を有する配線基板23が接続されている。本実施形態では、圧電アクチュエーター18から振動板16上まで引き出された引き出し配線24を介して圧電アクチュエーター18の各電極と配線基板23とが接続されている。配線基板23には、圧電アクチュエーター18を駆動するためのトランスミッションゲート等のスイッチング素子を有する回路基板や半導体集積回路(IC)等の駆動回路25が実装されている。このような配線基板23は、圧力室形成基板15の-Z方向に引き出されている。
【0026】
圧力室形成基板15の+Z方向側の面には、+Z方向に見た平面視において圧力室形成基板15よりも広い面積を有する連通板14が接合されている。本実施形態の連通板14には、圧力室19とノズル11とを連通するノズル連通口26と、各圧力室19に共通して設けられた共通液室27と、この共通液室27と圧力室19とを連通する個別連通口28と、が形成されている。共通液室27は、ノズル11が並設された方向である±X方向に沿って延在する空間である。本実施形態においては、ノズルプレート12に設けられた2つのノズル11の列にそれぞれ対応して2つの共通液室27が形成されている。個別連通口28は、各圧力室19にそれぞれ対応してノズル列方向である±X方向に沿って複数形成されている。この個別連通口28は、圧力室19のノズル連通口26と連通する部分とは反対側の端部と連通する。
【0027】
連通板14の+Z方向側の面の略中央部分には、複数のノズル11が形成されたノズルプレート12が接合される。本実施形態におけるノズルプレート12は、-Z方向にみた平面視で連通板14よりも小さい外形の板材である。このノズルプレート12は、連通板14の+Z方向側の面において、共通液室27の開口から外れた位置であって、ノズル連通口26が開口した領域に、これらのノズル連通口26と複数のノズル11とがそれぞれ連通する状態で接着剤等により接合される。本実施形態におけるノズルプレート12には、複数のノズル11が前述のノズル列方向である+X方向に並設されてなる不図示のノズル列が合計2つ形成されている。2つのノズル列は、+Y方向に並設されている。
【0028】
また、連通板14の+Z方向側の面において、ノズルプレート12から外れた位置にコンプライアンス基板17が接合される。このコンプライアンス基板17は、連通板14の+Z方向側の面に位置決めされて接合された状態で、連通板14の+Z方向側の面における共通液室27の開口を封止している。
【0029】
コンプライアンス基板17は、本実施形態では、樹脂等の可撓性を有する薄膜からなる封止膜17aと、ステンレス鋼などの金属等の硬質の材料からなる固定基板17bと、を具備する。固定基板17bの共通液室27に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された固定基板用開口部17cとなっているため、共通液室27の一方面は可撓性を有する封止膜17aのみで封止された可撓部であるコンプライアンス部17dとなっている。このコンプライアンス部17dが可撓変形することで、インク流路内、特に共通液室27内の圧力変動を緩和する機能を有する。
【0030】
また、圧力室形成基板15の-Z方向には、圧力室形成基板15と略同じ大きさを有する保護基板29が接合されている。保護基板29は、圧電アクチュエーター18を保護するための空間である保持部30を有する。
【0031】
圧力室形成基板15、保護基板29及び連通板14は、ケース13に固定されている。このケース13の内部において、圧力室形成基板15を間に挟んだ両側には、連通板14の共通液室27と連通する導入液室31が形成されている。また、ケース13の-Z方向側の面には、各導入液室31と連通する導入口32がそれぞれ開設されている。導入口32は、詳しくは後述するホルダー40に設けられた第2流路50と連通する。このため、ホルダー40から送られたインクは、導入口32、導入液室31、及び共通液室27へと導入され、共通液室27から個別連通口28を通じて各圧力室19に供給される。本実施形態では、ケース13に設けられた導入口32及び導入液室31が、特許請求の範囲に記載の「第1流路」に相当する。また、保護基板29及びケース13には、配線基板23を挿通する配線挿通孔33が設けられている。圧力室形成基板15から-Z方向に引き出された配線基板23は、保護基板29及びケース13の配線挿通孔33を挿通して、ケース13の-Z方向側に引き出されている。
【0032】
このようなケース13は、本実施形態では、樹脂で構成されている。ケース13を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m-PPE)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリアミド樹脂(PA)、PPS、PP、LCP、ABS樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、これらの混合物が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、ベークライト等のフェノール系樹脂やエポキシガラス等のエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エステル系樹脂等が挙げられる。なお、ケース13には、温度安定性、耐液性、高剛性に優れた熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。このようにケース13を樹脂で構成することにより、金属等に比べて熱伝導率を低くすることができる。したがって、ケース13に設けられた第1流路である導入口32及び導入液室31を流れるインクの温度が低下するのを抑制することができ、温度低下を抑制したインクをノズル11まで導くことができる。また、ケース13を樹脂で構成することによって、ケース13を金属やセラミックスで構成する場合に比べてコストを低減することができる。特に、1つの記録ヘッド1には、複数のヘッドチップ10が設けられているため、ケース13を樹脂で構成することで、ヘッドチップ10に用いられる金属部品又はセラミックス部品の部品点数を低減して、コストを比較的大きく低減することができる。もちろん、ケース13は、樹脂以外の材料、例えば、金属やセラミックスで構成されていてもよい。
【0033】
そして、上記構成のヘッドチップ10では、導入液室31から共通液室27及び圧力室19を通ってノズル11に至るまでの流路内がインクで満たされた状態で、圧電アクチュエーター18が駆動されることにより、圧力室19内のインクに圧力変動が生じ、この圧力変動によって所定のノズル11からインクが噴射される。
【0034】
なお、本実施形態のヘッドチップ10のケース13は、2つの「第1流路」を有し、本実施形態のノズルプレート12は、2つのノズル列を構成する複数のノズル11を有し、そして、一方のノズル列を構成する複数のノズル11は一方の「第1流路」と連通し、他方のノズル列を構成する複数のノズル11は他方の「第1流路」と連通しているが、この態様に限定されない。ヘッドチップ10のケース13は、1つ以上の「第1流路」を有していればよく、また、「第1流路」は、ノズルプレート12に設けられた複数のノズル11の少なくとも一部と連通していればよい。「第1流路」がノズルプレート12に設けられた複数のノズル11の少なくとも一部と連通しているとは、「第1流路」が、ノズルプレート12に設けられた複数のノズル11の全てと連通している構成を含んでよいし、ノズルプレート12に設けられた複数のノズル11のうち2つ以上のノズル11と連通している構成も含む。
【0035】
図1に示されるように、本実施形態では、4つのヘッドチップ10は、ノズル列方向を+X方向に沿わせた姿勢で、且つ+X方向における位置を同じ位置とした状態で+Y方向に沿って所定の間隔でホルダー40に保持されている。なお、+Y方向は、「第3方向」の一例である。
【0036】
ホルダー40は、複数、本実施形態では、4つのヘッドチップ10が+Z方向の面に固定されるものであり、内部にヘッドチップ10のケース13に設けられた「第1流路」である導入口32及び導入液室31に連通する第2流路50が設けられたものである。
【0037】
ここで、ホルダー40について、さらに
図4~
図10を参照して説明する。なお、
図4は、記録ヘッド1の上面図である。
図5は、
図4のB-B′線断面図である。
図6は、
図4のC-C′線断面図である。
図7は、ホルダー40及びヒーター70の斜視図であり、1つのヘッドチップ10に対する2つの第2流路50のみを点線で示した図である。
図8~
図10は、ホルダー40及びヒーター70の側面図である。
【0038】
図示するように、本実施形態のホルダー40は、第1部材41と第2部材42と第3部材43とがこの順に+Z方向に積層されて互いに接着剤等によって接合されている。なお、ホルダー40を構成する各部材の固定方法は、接着剤による接合に限定されず、ねじやボルト等によって締結するようにしてもよい。なお、ホルダー40を構成する各部材の間には、第2流路50からインクの漏出を抑制するためのシール材等を設けるようにしてもよい。
【0039】
ホルダー40は、金属またはセラミックスを含んで構成されている。ここで、ホルダー40が金属またはセラミックスを含んで構成されているとは、ホルダー40を構成する複数の部材のうちの少なくとも1つの部材が、金属またはセラミックスで構成されていることを含む。つまり、ホルダー40を構成する複数の部材のうちの少なくとも1つの部材が、金属またはセラミックスで構成されていれば、その他の部材は、金属及びセラミックス以外の材料、例えば、樹脂等で構成されていてもよい。
【0040】
また、ホルダー40が金属またはセラミックスを含んで構成されているとは、ホルダーを構成する部材のうちの少なくとも一部が、金属またはセラミックスで構成されていることを含む。すなわち、ホルダー40を構成する複数の部材のうちの1つの部材の全てまたは一部が金属またはセラミックスで構成されていることを含む。つまり、ホルダー40を構成する複数の部材のうちの1つの部材の少なくとも一部が金属またはセラミックスで構成されていれば、その他の部分が金属及びセラミックス以外の材料、例えば、樹脂等で構成されていてもよい。なお、金属またはセラミックスとそれ以外の樹脂等の材料とで構成された部材は、例えば、インサート成形等によって一体的に製造することができる。
【0041】
また、ホルダー40が金属またはセラミックスを含んで構成されているとは、ホルダー40の体積のうち80%以上が金属またはセラミックスで構成されていることを含む。
【0042】
さらに、ホルダー40が金属またはセラミックスを含んで構成されているとは、詳しくは後述するヒーター70が設けられる外周壁46の少なくとも一部から第2流路50の内壁面の少なくとも一部を形成する部分までが金属またはセラミックスで形成されていることを含む。このように、ホルダー40のヒーター70が設けられる外周壁46の少なくとも一部から第2流路50の内壁面の少なくとも一部までを金属またはセラミックスで形成することで、ヒーター70の熱を、第2流路50内を流れるインクに効率よく伝えることができる。
【0043】
本実施形態では、ホルダー40を構成する第1部材41と第2部材42と第3部材43とは、全て同じ金属またはセラミックスで形成されている。ここで、ホルダー40を構成する金属としては、耐液性が高い材料、例えば、ステンレス鋼、チタンなどが挙げられる。また、ホルダー40を構成するセラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素などの熱伝導率が良好なセラミックスが挙げられる。なお、セラミックスの熱伝導率は、窒化アルミニウムが150W/m・k、炭化ケイ素が60W/m・k、アルミナが32W/m・k、窒化ケイ素20W/m・kである。このため、ホルダー40を、上述したセラミックスで構成することで、金属に比べて熱伝導率を高くして、詳しくは後述するヒーター70の熱を第2流路50内のインクに伝導し易くすることができる。また、ホルダー40を金属で構成することで、セラミックスに比べて熱伝導率は低くなるものの、樹脂に比べて熱伝導率を高くすることができると共に、比較的加工がし易く、剛性を高めることができる。なお、第1部材41と第2部材42と第3部材43とは、線膨張係数が同等の材料を用いるのが好ましい。このように第1部材41と第2部材42と第3部材43とに同じ材料を用いることで、線膨張係数の違いによる反りによる剥離やクラック等の破壊を抑制することができる。特に、ホルダー40は、詳しくは後述するヒーター70によって加熱されるため、ホルダー40を構成する各部材の線膨張係数の違いによって反りによる剥離やクラック等の破壊が生じ易い。ホルダー40を構成する各部材に同じ材料を用いることで、ホルダー40がヒーター70によって加熱されても線膨張係数の違いによる反りによる剥離やクラック等の破壊を抑制することができる。
【0044】
なお、第1部材41及び第2部材42は、+Z方向に見た平面視で、略同じ外形形状を有する。本実施形態では、第1部材41及び第2部材42は、+Z方向に見た平面視で、略矩形状を有する。なお、第1部材41及び第2部材42の+Z方向に見た平面視における形状は、矩形状に限定されるものではなく、多角形状であってもよく円形状や楕円形状等であってもよい。
【0045】
また、第3部材43は、+Z方向に見た平面視で、+Z方向側が第1部材41及び第2部材42と略同じ大きさの外形で形成されている。また、第3部材43の+Z方向側には、+Z方向に見た平面視で第1部材41及び第2部材42よりも外側、すなわち、±Xおよび±Y方向に突出して設けられた凸部43aが設けられている。このように凸部43aを設けることで、詳しくは後述するヒーター70を凸部43aの-Z方向側の面に当接させて位置決めすることができるため、ヒーター70のホルダー40に対する±Z方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0046】
ここで、本実施形態では、ホルダー40の+Z方向とは反対方向である-Z方向の面を有する外壁を上壁44、「第1方向」である+Z方向の面を有する外壁を下壁45、上壁44と下壁45との間をつなぐ側面、すなわち、±Z方向に沿った側面であって、±X方向及び±Y方向の何れかと±Z方向とを含む側面有する外壁を外周壁46と称する。なお、-Z方向は、「第2方向」の一例である。
【0047】
第3部材43の下壁45は、ヘッドチップ10のそれぞれを収容する複数の凹部47を有する。凹部47は、下壁45に開口して、すなわち、ホルダー40の+Z方向の面に開口して、-Z方向に向かって略同じ開口面積となるように形成されている。また、本実施形態では、ヘッドチップ10のそれぞれを収容する凹部47を設けたため、+Y方向で互いに隣り合うヘッドチップ10の間には、第3部材43の一部で構成された隔壁48が設けられている。このように、ホルダー40に、ヘッドチップ10のそれぞれを収容する凹部47を設けることで、ホルダー40の剛性を向上することができ、各ヘッドチップ10から吐出されるインク滴の着弾位置ズレ等を抑制することができる。各ヘッドチップ10は、ホルダー40の各凹部47の内周面に隙間を空けるようにして、各凹部47の底面に接着剤等で固定される。なお、凹部47の底面とは、凹部47の-Z方向側の面を指す。また、詳しくは後述するが、複数のヘッドチップ10のノズルプレート12側には、共通する固定板60が固定される。この固定板60の一部は、互いに隣り合う凹部47の間の隔壁48に固定される。このように隔壁48によって固定板60を固定することで、固定板60の剛性をさらに向上することができ、固定板60の変形による複数のヘッドチップ10の相対位置ズレが生じるのを抑制することができる。もちろん、ホルダー40のヘッドチップ10を収容する凹部47は、これに限定されず、1つの凹部47に2以上の複数のヘッドチップ10が収容されるものであってもよい。
【0048】
また、ホルダー40の隔壁48を含む下壁45には、固定板60が固定されている。固定板60は、ステンレス鋼やチタンなど金属からなる。この固定板60には、ヘッドチップ10のノズルプレート12を露出するための露出開口部61が複数設けられている。本実施形態の露出開口部61は、ノズルプレート12よりも若干大きく、コンプライアンス基板17の外形よりも小さな大きさを有する。このため、露出開口部61は、ノズルプレート12毎に独立して設けられている。また、固定板60は、ヘッドチップ10のコンプライアンス基板17にも接合されている。もちろん、露出開口部61は、2以上の複数のノズルプレート12を露出する大きさで設けられていてもよい。
【0049】
このような金属で構成される固定板60は、下壁45に固定されているため、ホルダー40に固定されたヒーター70の熱を下壁45、固定板60及びコンプライアンス基板17を介してヘッドチップ10内の「第1流路」に伝えることができる。さらに、本実施形態では、上述のように+Y方向に隣り合うヘッドチップ10の間に隔壁48を有するので、ヒーター70から離れて配置されたヘッドチップ10に対しても、隔壁48、固定板60及びコンプライアンス基板17を介してヘッドチップ10内の「第1流路」にヒーター70の熱を伝えることができる。したがって、ヒーター70によって固定板60を介して複数のヘッドチップ10を効率よく加熱することができる。また、固定板60を隔壁48に固定することで、ヒーター70の熱を、下壁45、固定板60及び隔壁48を介してホルダー40の±X方向及び±Y方向を含む面内の中央部側まで伝えることができ、ヒーター70によってホルダー40全体を、偏りを低減して加熱することができ、複数の第2流路50を通過するインクの加熱温度にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0050】
このようなホルダー40には、ヘッドチップ10のケース13に設けられた「第1流路」である導入口32及び導入液室31の各々に連通する第2流路50が設けられている。本実施形態では、ホルダー40に2つの独立した「第1流路」が設けられたヘッドチップ10が4個固定されるため、ホルダー40には、合計8個の第2流路50が設けられている。第2流路50は、一端がホルダー40の+Z方向の面、本実施形態では、凹部47の底面に開口し、他端がホルダー40の-Z方向の面に開口して設けられている。第2流路50の凹部47の底面に開口する一端と、ヘッドチップ10のケース13に設けられた「第1流路」の一部である導入口32とが接続されている。
【0051】
ここで、本実施形態の各第2流路50は、第1部分51と第2部分52と第3部分53とを具備する。第1部分51は、第1部材41をZ方向に貫通して設けられている。第1部分51の-Z方向の端部は、ホルダー40の上壁44よりもさらに-Z方向に突出する突起部41a内に設けられている。つまり、第2流路50の-Z方向の端部は、上壁44よりも-Z方向に突出して設けられている。本実施形態では、第1部分51の上壁44よりも-Z方向に突出する突起部41a内に設けられた部分を接続部分51aと称する。なお、突起部41aは、本実施形態では、第1部材41と一体的に連続して設けられている。もちろん、突起部41aは、第1部材41と別体として第1部材41に固定するようにしてもよい。
【0052】
第2部分52は、第1部材41と第2部材42との間に、+Z方向に交差する方向、本実施形態では、+Z方向に直交する±X方向及び±Y方向を含む面に沿って設けられている。すなわち、本実施形態ではこの第2部分52が、「第1方向」である+Z方向に交差する方向に延在する「交差部分」となっている。第2部分52は、一端部が第1部分51の+Z方向の端部に連通し、他端が第3部分53の-Z方向の端部に連通するように±X方向及び±Y方向を含む面内に沿って引き回されて配置されている。また、本実施形態の第2部分52は、第1部材41の+Z方向の面に凹部を設け、この凹部の開口を第2部材42で蓋をすることで形成されている。もちろん、第2部分52は、第2部材42の-Z方向の面に凹部を設け、第1部材41によって第2部材42の凹部の開口に蓋をすることで形成してもよく、第1部材41と第2部材42との両方に凹部を設け2つの凹部の開口同士を合わせることで形成してもよい。また、本実施形態では、「交差部分」である第2部分52は、第1部材41と第2部材42との間に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第2部材42と第3部材43との間に「交差部分」を設けるようにしてもよい。
【0053】
第3部分53は、第2部材42及び第3部材43を+Z方向に亘って貫通して設けられている。この第3部分53は、-Z方向の端部が第2部分52の端部に連通するように設けられている。また、第3部分53の+Z方向の端部は、ホルダー40の+Z方向の面、すなわち、凹部47の底面に開口して設けられている。本実施形態では、この第3部分53が、ヘッドチップ10のケース13に設けられた「第1流路」である導入口32と連通する「連通部分」となっている。
【0054】
すなわち、本実施形態の第2流路50を構成する第1部分51と第3部分53とは、「第1方向」である+Z方向に沿って延在し、第2流路50を構成する第2部分52は、+Z方向と交差する方向、本実施形態では、+Z方向と直交する±X方向及び±Y方向を含む面内に沿って延在している。このように第2流路50に「交差部分」である第2部分52を設けることで、第2流路50を+Z方向に交差する方向に引き回すことができ、ホルダー40内で複数の第2流路50が互いに干渉するのを抑制することができると共に、第2流路50が他の開口や他の部材等と干渉するのを抑制することができる。そして第2流路50の干渉を抑制することで、ホルダー40の大型化を抑制することができる。
【0055】
このような第2流路50が複数、本実施形態では、8個設けられたホルダー40には、複数の第2流路50内を流れるインクを加熱するヒーター70が設けられている。ここで、ヒーター70は、特に限定されないが、本実施形態では、可撓性を有するフィルムヒーターからなる。フィルムヒーターからなるヒーター70は、
図8に示すように、発熱部71と、発熱部71を覆うフィルム部材72とを有する。具体的には、フィルム部材72は、基材となるベースフィルムと絶縁体としての保護フィルムとを有し、フィルムヒーターは、ベースフィルムと、発熱部71と、保護フィルムとがこの順に積層されて構成される。ヒーター70の発熱部71は、例えば、ステンレス、銅、タングステン、ニッケル合金、アルミ箔等の発熱抵抗体である。本実施形態では、発熱部71の発熱抵抗体として、耐インク性の高いステンレスを用いるようにした。ベースフィルムおよび保護フィルムとしては、絶縁性を有するものが好ましく、例えば、ポリイミドやポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが採用できる。なお、フィルム部材72の保護フィルムの代わりに、絶縁性を有するフィルム状のソルダーレジストを用いてもよい。また、
図8に示すように、フィルムヒーターであるヒーター70の端部には発熱部71が設けられていないので、フィルム部材72のみが存在している。
【0056】
また、ホルダー40にヒーター70が設けられているとは、ホルダー40にヒーター70が直接、接触していることを言う。例えば、ホルダー40とヒーター70との間に、熱伝導性が高い材料で形成された他の部材が設けられていてもよいが、ヒーター70による加熱効率が低下してしまうと共に、ヒーター70が設けられたホルダー40が大型化してしまい、記録ヘッド1が大型化してしまう。このため、ホルダー40とヒーター70とは直接、接触しているのが好ましい。
【0057】
本実施形態のヒーター70は、+Z方向に見た平面視において、複数の第2流路50を囲み、且つ、+Z方向に直交する方向、すなわち、±X方向及び±Y方向を含む面内方向に見て、第2流路50の少なくとも一部と重なるように設けられている。つまり、ヒーター70は、±X方向及び±Y方向を含む面内方向に見て、第2流路50を構成する第1部分51、第2部分52、第3部分53の少なくとも一つと、少なくとも一部が重なる位置に配置されていればよい。このようにヒーター70は、複数の第2流路50を囲むように配置されることで、ホルダー40の外周壁46から離れて配置された第2流路50に対しても、ヒーター70によって効果的に加熱することができる。すなわち、複数の第2流路50のうち、±Y方向の中央側の第2流路50は、ホルダー40の±Y方向の両側の外周壁46に設けられたヒーター70から離れてしまう。しかしながら、ヒーター70を複数の第2流路50を囲むように、つまり、ホルダー40の±X方向の両側の外周壁46にヒーター70を設けることで、±Y方向の両側の外周壁46から離れて配置された第2流路50を±X方向の両側の外周壁46に設けられたヒーター70によって加熱することができる。また、ヒーター70は、複数の第2流路50を囲むように配置されることで、ホルダー40からの放熱を抑制することができる。
【0058】
また、ヒーター70は、+Z方向に直交する方向、すなわち、±X方向及び±Y方向を含む面内方向に見て、「交差部分」である第2部分52と「連通部分」である第3部分53とに亘って重なって配置されているのが好ましい。つまり、ヒーター70は、第2部分52の少なくとも第3部分53に連通する側の一部と、第3部分53の少なくとも第2部分52に連通する側の一部とに跨がって重なるように配置されていればよい。
【0059】
第2流路50は、第2部分52を設けることで流路長が長くなるが、ヒーター70が、流路長を長くする第2部分52を加熱することで、第2部分52を通過するインクを効果的に加熱することができる。また、ヒーター70が、第2部分52と第3部分53とに亘って+Z方向に延在されるため、ヒーター70がインクを加熱する+Z方向の長さを長くすることができ、インクを効果的に加熱することができる。
【0060】
つまり、ヒーター70は、+Z方向に直交する方向に見て、第2部分52に重なる位置に配置されているのが好ましく、さらに+Z方向に第2流路50と重なる長さができるだけ長くなるように配置されているのが好ましい。
【0061】
本実施形態のヒーター70のホルダー40に対する+Z方向の位置は、ヒーター70がホルダー40の第2流路50の第1部分51と第2部分52と第3部分53とに亘って重なるように配置されている。つまり、本実施形態のヒーターは、±X方向及び±Y方向を含む面内方向に見て、第2部分52と完全に重なり、且つ第1部分51及び第3部分53の第2部分52と連通する側の一部に亘って重なるように配置されている。これにより、ヒーター70は、第2部分52及び第3部分53に加えて、さらに第1部分51を流れるインクを加熱することができるため、第2流路50を流れるインクを効果的に加熱することができる。
【0062】
また、フィルムヒーターからなるヒーター70は、+Z方向に見た平面視において、ホルダー40の外周壁46を覆うように巻き付けられて、外周壁46に固定されている。すなわち、ヒーター70は、ヘッドチップ10の並設方向である「第3方向」つまり、+Y方向に延在された第1部分73と、+Z方向と+Y方向とに交差する方向、本実施形態では、+Z方向と+Y方向とに直交する+X方向に延在された第2部分74と、を具備する。第1部分73は、外周壁46のうち±X方向の両側の外周壁46上に設けられている。また、第2部分74は、外周壁46のうち±Y方向の両側の外周壁46上に設けられている。このように、可撓性を有する長尺なヒーター70をホルダー40の外周壁46に巻き付けるだけで、容易にヒーター70をホルダー40に取り付けることができる。また、ヒーター70をホルダー40の外周壁46の全周に亘って巻き付けることで、ホルダー40の放熱を抑制して、ホルダー40をヒーター70によって効率的に加熱することができる。
【0063】
また、ヒーター70の外周壁46への固定方法は特に限定されず、可撓性を有する長尺なヒーター70を外周壁46に巻き付けるだけでもよく、また、ヒーター70を外周壁46に巻き付けた状態で、ヒーター70の端部同士を接着してもよい。また、ヒーター70を外周壁46に接着剤によって接着してもよく、ヒーター70の一部を外周壁46に溶着するようにしてもよい。さらに、ヒーター70を外周壁46にネジやボルト等によって固定してもよい。
【0064】
ここで、ホルダー40の外周壁46に巻き付けられたヒーター70の両端部は、
図8に示すように、互いに重なり合わないように隙間を空けて配置されている。すなわち、ヒーター70のフィルム部材72の一方の端部72aと他方の端部72bとが互いに重なり合わないように隙間を空けて配置されている。このように、ヒーター70の両端部がホルダー40の外周壁46上で互いに重なり合わないように隙間を空けて配置されることで、ヒーター70の両方の端部同士が重なり合うことによる厚みの増加を抑制し、ヒーター70が巻き付けられたホルダー40が大型化するのを抑制することができる。つまり、ヒーター70が、+Z方向に見た平面視においてホルダー40の外周壁46を覆うように巻き付けられているとは、+Z方向に見た平面視において、ヒーター70が外周壁46の全周に亘って連続して設けられているものに限定されず、ヒーター70がホルダー40の外周壁46の一部を露出するように巻き付けられているものも含む。例えば、ヒーター70がホルダー40の外周壁46を覆うように巻き付けられているとは、ヒーター70が、外周壁46の全周に対して、75%以上覆っていればよい。また、ヒーター70が複数の第2流路50を囲んでいるとは、+Z方向に見た平面視において、複数の第2流路50を囲む+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向の4つの方向のうち、3つ以上の方向で囲んでいることを言う。
【0065】
また、
図9に示すように、ホルダー40の外周壁46に巻き付けられたヒーター70の両端部において、発熱部71の一方の端部71aと他方の端部71bとが互いに重なり合うようにしてもよい。これにより、+Z方向に見た平面視した際に、発熱部71がホルダー40の外周壁46を全周に亘って覆うことができ、ホルダー40を効果的に加熱することができる。
【0066】
さらに、
図10に示すように、ホルダー40の外周壁46に巻き付けられたヒーター70の両端部において、発熱部71の一方の端部71aと他方の端部71bとが互いに重なり合うことなく、フィルム部材72の一方の端部72aと他方の端部72bとが互いに重なり合うように配置されていてもよい。これにより、+Z方向から平面視した際に、発熱部71がホルダー40の外周壁46を覆う面積を広くすることができ、ホルダー40の加熱効率を向上すると共に、ヒーター70が巻き付けられたホルダー40の外周が大きくなるのを抑制することができる。
【0067】
このように第2流路50が設けられたホルダー40にヒーター70を設けることで、ヒーター70によって第2流路50を通過するインクを加熱することができる。特に、本実施形態では、ヒーター70が複数の第2流路50を囲み、且つ±X方向及び±Y方向を含む面内方向に見て、ヒーター70は、第2流路50の少なくとも一部と重なるように配置されていることで、複数の第2流路50内を通過するインクをヒーター70によって効果的に加熱することができる。
【0068】
また、ホルダー40には、+Z方向側に固定されたヘッドチップ10の配線基板23をホルダー40の-Z方向側に引き出すための第1配線挿通孔49が設けられている。第1配線挿通孔49は、配線基板23のそれぞれに独立して設けられている。つまり、第1配線挿通孔49は、一端が凹部47の底面に開口し、他端がホルダー40の+Z方向の面に開口して設けられている。このため、ホルダー40には、合計4個の第1配線挿通孔49が設けられている。
【0069】
このような外周壁46にヒーター70が巻き付けられたホルダー40は、ホルダーカバー80によって覆われている。
【0070】
ホルダーカバー80は、+Z方向側の面に開口する凹形状の収容部81を有し、この収容部内にヒーター70が巻き付けられたホルダー40が収容される。収容部81の+Z方向側の面の開口は、ヒーター70が巻き付けられたホルダー40の外形よりも若干大きく、且つ、ホルダー40の第3部材43の凸部43aよりも小さな大きさで設けられている。このため、ホルダーカバー80の収容部81にホルダー40の-Z方向側を収容した際に、ホルダーカバー80の収容部81が開口する+Z方向の面と、ホルダー40の凸部43aの-Z方向の面とが互いに当接した状態で互いに固定される。ホルダーカバー80とホルダー40との固定方法は、特に限定されず、接着剤による接着であってもよく、またネジやボルトなどによる固定であってもよい。また、特に図示しないが、ホルダーカバー80には、ヒーター70に接続された配線を外部に引き出すための開口が設けられている。この開口は、ホルダーカバー80の-Z方向側の面に開口して設けられていてもよく、+Z方向に交差する側面に開口して設けられていてもよい。もちろん、ヒーター70の配線は、収容部81の+Z方向側の開口から外部に引き出されていてもよい。
【0071】
また、ホルダーカバー80には、ホルダー40の突起部41aが挿入される第1貫通孔82が+Z方向に貫通して設けられている。すなわち、第1貫通孔82は、収容部81の底面とホルダーカバー80の+Z方向側の面とを貫通して設けられている。ホルダーカバー80の収容部81にホルダー40が収容された状態で、ホルダー40の突起部41aは、第1貫通孔82を挿通して-Z方向側に向かって突出する。
【0072】
また、ホルダーカバー80には、ホルダー40の第1配線挿通孔49に連通する第2配線挿通孔83が+Z方向に貫通して設けられている。このため、ホルダー40の+Z方向の面に固定されたヘッドチップ10の配線基板23は、ホルダー40の第1配線挿通孔49とホルダーカバー80の第2配線挿通孔83とを介してホルダーカバー80の-Z方向側に引き出されている。
【0073】
また、ホルダーカバー80の-Z方向の面には、複数の配線基板23に共通する中継基板90が保持されている。中継基板90には、ホルダーカバー80の第2配線挿通孔83に連通する第3配線挿通孔91が設けられている。このため、ヘッドチップ10の配線基板23は、ホルダー40の第1配線挿通孔49とホルダーカバー80の第2配線挿通孔83と中継基板90の第3配線挿通孔91とを介して中継基板90の-Z方向側に引き出されており、中継基板90の-Z方向側の面で中継基板90と接続されている。
【0074】
また、中継基板90には、ホルダーカバー80の第1貫通孔82に連通する第2貫通孔92が+Z方向に貫通して設けられている。このため、ホルダー40の突起部41aは、ホルダーカバー80の第1貫通孔82及び中継基板90の第2貫通孔92を介して中継基板90よりも-Z方向に突出して設けられている。この中継基板90よりも-Z方向に突出して設けられた突起部41aの第2流路50の開口、すなわち、接続部分51aの開口に外部からのインクが供給される。本実施形態における突起部41aは、内部に第2流路50の一部(接続部分51a)が形成された流路管であるが、-Z方向側の先端が尖った流路針でも構わない。
【0075】
このようなホルダーカバー80には、ホルダー40との間にヒーター70を挟むようにして配置されたヘッド外壁84を具備する。すなわち、ヘッド外壁84は、+Z方向に直交する方向において収容部81の内側面を画成する収容部81よりも外側の部分である。このヘッド外壁84は、ホルダー40よりも熱伝導率が低い材料、例えば、樹脂で構成されている。本実施形態では、ホルダーカバー80全体をホルダー40よりも熱伝導率が低い材料、例えば、樹脂で構成するようにした。もちろん、これに限定されず、ホルダーカバー80の少なくともヘッド外壁84をホルダー40よりも熱伝導率の低い材料で形成し、他の部分を違う材料で形成してもよい。なお、ホルダーカバー80のヘッド外壁84に用いられる樹脂としては、例えば、ケース13と同様の樹脂を用いることができる。このように、ヘッド外壁84をホルダー40よりも熱伝導率が低い材料で形成することで、ヒーター70の熱及びヒーター70によって加熱したホルダー40の熱がヘッド外壁84を介して放熱されるのを抑制することができる。また、本実施形態では、ホルダーカバー80の全体をホルダー40よりも熱伝導率の低い材料で形成することで、ヒーター70及びホルダー40の熱が放熱されるのをさらに抑制することができる。したがって、ヒーター70を過度に加熱する必要がなく、ヒーター70の温度制御によって第2流路50を流れるインクの温度管理を容易に行うことができる。
【0076】
これに対して、ヘッド外壁84の熱伝導率が、ホルダー40と同じか、ホルダー40よりも高い場合には、ヒーター70の熱及びヒーター70が加熱したホルダー40の熱が、ヘッド外壁84から放熱されてしまう。つまり、ヘッド外壁84の収容部81とは反対側である外側の温度、例えば、ホルダーカバー80を保持するキャリッジ等の保持部材の温度や外気温が、ヒーター70及びホルダー40に影響し易く、ヒーター70を過度に加熱することや、ヒーター70の温度制御を頻繁に行うなどの不具合が生じ易くなってしまう。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドである記録ヘッド1では、液体であるインクを「第1方向」である+Z方向に噴射する複数のノズル11を有するノズルプレート12と、複数のノズル11の少なくとも一部と連通する1つ以上の「第1流路」である導入口32及び導入液室31が形成されたケース13と、を有する複数のヘッドチップ10と、複数のヘッドチップ10が固定されると共に、金属またはセラミックスを含んで構成されたホルダー40であって、複数の導入口32及び導入液室31の少なくとも1つに連通する第2流路50を複数有するホルダー40と、ホルダー40を加熱するヒーター70と、を備える。本実施形態では、ケース13には、複数のノズル11と連通する「第1流路」である導入口32及び導入液室31が2つ形成されている。また、ホルダー40には、複数の導入口32及び導入液室31のそれぞれに連通する第2流路50が設けられている。
【0078】
このように、ヘッドチップ10の近傍に配置された第2流路50をヒーター70によって加熱することができるため、十分に加熱されたインクをヘッドチップ10に供給することができる。また、ヒーター70が加熱するホルダー40が熱伝導率の高い金属またはセラミックスで構成されるため、ヒーター70によって複数の第2流路50を流れるインクを十分に加熱することができ、ヒーター70から離れた位置に配置されたヘッドチップ10に対しても、十分に加熱されたインクを供給することができる。したがって、ヘッドチップ10から吐出されるインクの粘度を低下させて、インクの吐出特性が低下するのを抑制することができる。さらに、ヒーター70は、ヘッドチップ10自体を加熱する構成ではないため、ヒーター70に接続される配線の引き回し及び記録ヘッド1の構成を簡略化することができる。
【0079】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、ケース13は樹脂で構成されていることが好ましい。このように、ケース13を熱伝導率の低い樹脂で構成することで、ノズル11の近傍に配置されたケース13の「第1流路」である導入口32及び導入液室31のインクの温度低下を抑制することができる。このため、導入口32及び導入液室31によって温度低下を抑制したインクをノズル11まで導くことができ、ノズル11からインクの粘度を低下させたインクを吐出させることができる。
【0080】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、ヒーター70は、「第1方向」である+Z方向に見た平面視において、複数の第2流路50を囲み、且つ、+Z方向に直交する方向である±X方向及び±Y方向を含む面内方向に見て、第2流路50の少なくとも一部と重なることが好ましい。これによれば、ヒーター70は、複数の第2流路50を囲むように配置されているため、ホルダー40の外周壁46から離れて配置された第2流路50に対してもヒーター70によって効率的に加熱することができる。また、ヒーター70が複数の第2流路50を囲むように配置されることで、ホルダー40からの放熱を抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第2流路50は、「第1方向」である+Z方向に交差する方向に延在する「交差部分」である第2部分52と、+Z方向に延在すると共に第2部分52とケース13の「第1流路」である導入口32及び導入液室31とを連通させる「連通部分」である第3部分53と、を有し、ヒーター70は、+Z方向に直交する方向に見て、第2部分52と第3部分53とに亘って重なって配置されていることが好ましい。このように第2流路50に交差部分である第2部分52を設けることで、第2流路50の流路長を長くすることができ、ヒーター70によって第2流路50を流れるインクを効果的に加熱することができる。また、ヒーター70が、「交差部分」である第2流路50と「連通部分」である第3部分53とに亘って+Z方向に延在するため、ヒーター70によって第2流路50内を流れるインクを効果的に加熱することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、複数の第2流路50のそれぞれに、「交差部分」である第2部分52および「連通部分」である第3部分53を1つずつ設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第2流路50に「交差部分」である第2部分52を複数設けるようにすることで第2流路50が2以上の「第1流路」に連通するようにしてもよい。つまり、第2流路50が2以上の「第1流路」に液体を分配するための分岐流路であってもよい。換言すれば、必ずしも本実施形態のように第2流路50の数が「第1流路」の数に対して一対一対応している必要はなく、ホルダー40が、ホルダー40に固定される複数のヘッドチップ10が有する複数の「第1流路」のうち、少なくとも1つの「第1流路」に連通する第2流路50を複数有する構成でも構わない。
【0083】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、ホルダー40は、「第1方向」である+Z方向に見た平面視において、複数の第2流路50を囲む外周壁46を有し、ヒーター70は、可撓性を有するフィルムヒーターであり、+Z方向に見た平面視において外周壁46の全周を覆うように巻き付けられて、外周壁46に固定されていることが好ましい。このように、可撓性を有する長尺なヒーター70をホルダー40の外周壁46に巻き付けるだけで、容易にヒーター70をホルダー40に取り付けることができる。また、外周壁46の全周に亘ってヒーター70が巻き付けられているため、ホルダー40の放熱を抑制して、ホルダー40をヒーター70によって効率的に加熱することができる。なお、ヒーター70は、外周壁46を+Z方向に亘って覆うように設けられていてもよく、また、外周壁46の+Z方向の一部のみを覆うように設けられていてもよい。
【0084】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、ヘッドチップ10の複数のノズル11を露出するための開口である露出開口部61を複数有し、金属で構成される固定板60を備え、ホルダー40は、複数のヘッドチップ10および前記固定板60が固定される下壁45を有し、下壁45は、ヘッドチップ10のそれぞれを収容する複数の凹部47を有することが好ましい。すなわち、ホルダー40には、複数のヘッドチップ10の各々に対応して凹部47が設けられていることで、隣り合うヘッドチップ10の間にホルダー40の隔壁48が設けられている。このため、ホルダー40の剛性を向上することができると共に、固定板60の変形を抑制することができる。また、固定板60を金属で構成することで、ヒーター70の熱を固定板60が固定された隔壁48を含む下壁45を介して伝えることができ、ホルダー40を効率よく加熱して、複数のヘッドチップ10を効率よく加熱することができる。
【0085】
このように、本実施形態では、ヘッドチップ10に供給するインクを第2流路50においてヒーター70によって加熱することができるため、記録ヘッド1に使用するインクとして、紫外線硬化型インク又は溶剤系インクを用いることができる。つまり、紫外線硬化型インクや溶剤系インクは、常温で比較的粘度が高いものであるが、粘度の高いインクをヒーター70によって加熱することで粘度を低くすることができるため、インク滴の吐出特性が低下するのを抑制することができる。
【0086】
なお、溶剤系インクとは、溶媒の主成分が有機溶剤であるインクであり、溶剤インクや非水系インクとも呼ばれる。溶剤系インクは、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、二塩基酸エステル類、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤の何れか1種以上を含有するインクである。また、紫外線硬化形インクとは、例えば、紫外線照射によって重合反応を起こして硬化するモノマーやオリゴマー等を含むUVインクである。紫外線硬化型インクの組成物は、例えば、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、N-ビニル化合物のいずれかを重合性化合物として含むインクが挙げられる。
【0087】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、ホルダー40との間にヒーター70を挟むようにして配置されたヘッド外壁84を備え、ヘッド外壁84は、ホルダー40よりも熱伝導率が低いことが好ましい。これによれば、ヘッド外壁84をホルダー40よりも熱伝導率が低い材料で形成することで、ヒーター70の熱及びヒーター70によって加熱したホルダー40の熱がヘッド外壁84を介して放熱されるのを抑制することができる。したがって、ヒーター70を過度に加熱する必要がなく、記録ヘッド1を構成する部品の寿命の低下を抑制することができると共に、ヒーター70の温度制御によって第2流路50を流れるインクの温度管理を容易に行うことができる。
【0088】
なお、上述した実施形態1では、ヒーター70の発熱量は、外周壁46の周方向に亘って同じものを用いたが特にこれに限定されない。例えば、ヒーター70の第1部分73の単位面積当たりの発熱量を、第2部分74の単位面積当たりの発熱量よりも大きくしてもよい。なお、ヒーター70の第1部分73と第2部分74とにおける単位面積当たりの発熱量は、例えば、発熱部71の発熱抵抗体のヒーターパターン(配線)の幅や、発熱抵抗体が設けられている単位面積当たりの密度を変更することで調整することができる。具体的には、発熱部71の発熱抵抗体のヒーターパターンの幅が狭いほど単位面積当たりの発熱量が大きくなり、また、発熱抵抗体の密度が高いほど単位面積当たりの発熱量が大きくなる。
【0089】
すなわち、複数のヘッドチップ10は、「第1方向」である+Z方向に直交する「第3方向」である+Y方向に並んで配置され、ヒーター70は、+Y方向に延在する第1部分73と、+Z方向に直交すると共に+Y方向に交差する方向に延在する第2部分74と、を有し、第1部分73の単位面積当たりの発熱量は、第2部分74の単位面積当たりの発熱量よりも大きい。ここで、複数の第2流路50の並設方向は、複数のヘッドチップ10の並設方向と一致させるのが好ましい。これにより、第2流路50の取り回しを容易にして、構造を簡略化することができると共に複数の第2流路50の流路長にばらつきが生じるのを抑制して、複数のヘッドチップ10間においてインク滴の吐出特性にばらつきが生じるのを抑制することができる。このように、複数の第2流路50が+Y方向に並設されている場合、複数の第2流路50の間でホルダー40の±Y方向の両側の外周壁46からの距離にばらつきが生じてしまう。これに対して、複数の第2流路50が+Y方向に並設されている場合、ホルダー40の±X方向の両側の外周壁46からの距離のばらつきは、比較的小さくなる。つまり、複数の第2流路50は、ヒーター70の第2部分74からの+Y方向の距離のばらつきが大きく、第1部分73からの+X方向の距離のばらつきが小さい。したがって、第1部分73の発熱量を第2部分74の発熱量よりも大きくすることで、ホルダー40内の複数の第2流路50を加熱する温度にばらつきが生じるのを低減して、複数の第2流路50を流れるインクの加熱された温度ばらつきを低減することができる。つまり、ヘッドチップ10の並設方向である±Y方向において、中央側に配置されたヘッドチップ10にインクを供給する第2流路50内のインクは加熱され難いものであるが、+Y方向に延在する第1部分73の発熱量を高くすることで、中央側に配置されたヘッドチップ10にインクを供給する第2流路50内のインクを加熱し易くすることができる。したがって、ホルダー40内の複数の第2流路50を加熱する温度にばらつきが生じるのを低減することができる。
【0090】
つまり、言い換えると、複数の第2流路50は、「第1方向」である+Z方向に直交する「第3方向」である+Y方向に並んで配置され、ヒーター70は、+Y方向に延在する第1部分73と、+Z方向に直交すると共に+Y方向に交差する方向に延在する第2部分74と、を有し、第1部分73の単位面積当たりの発熱量は、第2部分74の単位面積当たりの発熱量よりも大きい。これにより、ホルダー40内の複数の第2流路50を加熱する温度にばらつきが生じるのを低減することができる。なお、本実施形態では、第2流路50は、+Y方向に4個並び、+Y方向に2個並ぶことで、合計8個設けられたものであるが、第2流路50が並んで配置される方向とは、第2流路50の数が多い並び方向、すなわち、本実施形態では、+Y方向のことである。これにより、第2流路50の並び数が多い方向に延在する第1部分73の発熱量を、第2流路50の並び数が少ない方向に延在する第2部分74の発熱量よりも高くして、複数の第2流路50を流れるインクの加熱された温度ばらつきを低減することができる。
【0091】
なお、本実施形態では、ホルダー40は、+Z方向に見た平面視において、矩形状を有するものとしたが、特にこれに限定されず、ホルダー40は、+Z方向に見た平面視において、矩形状を基本形状として、角を丸めた形状を有するものであってもよい。ここでホルダー40の変形例を
図11に示す。なお、
図11は、ホルダー40及びヒーター70の変形例を示す上面図である。
【0092】
図11に示すように、ホルダー40は、+Z方向に見た平面視において、4つの角部40a~40dのうち3つの角部40a~40cは、面取りされて曲率のついた丸まった曲面、いわゆるR面となっており、1つの角部40dは面取りされていない直角となっている。
【0093】
このようなホルダー40の外周壁46にヒーター70を巻き付けるには、ヒーター70の両端部が、面取りされていない角部40dで合わさるようにすればよい。これにより、角部40a~40cにおいて、ヒーター70は曲面に沿って湾曲されるので、折り曲げられるのを抑制して、発熱部71の断線や、ホルダー40の外周壁46からの剥離を抑制することができる。また、ヒーター70の両端部を角部40dで合わさるようにすることで、ヒーター70の外周壁46の全周に亘ってヒーター70を配置することができると共に、ヒーター70の両端部が、ホルダー40から剥離される方向に印加される応力を低減することができ、ヒーター70のホルダー40からの剥離を抑制することができる。ちなみに、ヒーター70の両端部を、外周壁46の±X方向又は±Y方向に沿った辺上で合わせるようにすると、ヒーター70の角部40a~40dによって折り曲げられた部分からヒーター70の両端部までの距離が短くなる。このため、ヒーター70の折り曲げに抗する力が、ヒーター70の両端部にホルダー40から引きはがす反力として印加されてしまい、ヒーター70の両端部がホルダー40から剥離し易くなってしまう。また、角部40dにおいて、ヒーター70の両端部を配置することで、外周壁46の±X方向又は±Y方向に沿った辺上で合わせる場合に比べて、ヒーター70の両端部を第2流路50から遠ざけることができるため、ヒーター70によって複数の第2流路50を効果的に加熱することができる。
【0094】
また、ホルダー40の角部40a~40cをR面とすることで、外周壁46に巻き付けられるヒーター70の全長を短くすることができ、コストを低減することができる。
【0095】
ここで、上述した本実施形態の記録ヘッド1は、インクジェット式記録装置Iに搭載される。本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iについて、
図12及び
図13を参照して説明する。なお、
図12は、インクジェット式記録装置Iの概略構成を示す図であり、
図13は、記録ヘッド1及び保持部材7の要部断面図である。
【0096】
図12に示すように、インクジェット式記録装置Iは、記録ヘッド1と、液体容器3と、媒体Sを送り出す搬送機構4と、制御手段である制御ユニット5と、移動機構6と、を具備する。
【0097】
液体容器3は、記録ヘッド1から噴射されるインクが貯留されている。液体容器3としては、例えば、インクジェット式記録装置Iに着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。本実施形態では、液体容器3として、記録ヘッド1に着脱可能に設けられたカートリッジを用いた。また、液体容器3には、色や種類の異なる複数種類のインクが個別に貯留されている。本実施形態では、液体容器3には、シアン(C)、蛍光イエロー(FY)、蛍光ピンク(FP)、ブラック(K)の4色のインクが個別に貯留されている。
【0098】
制御ユニット5は、特に図示していないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と半導体メモリー等の記憶装置とを含んで構成される。制御ユニット5は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することでインクジェット式記録装置Iの各要素、すなわち、搬送機構4、移動機構6、記録ヘッド1等を統括的に制御する。
【0099】
また、制御ユニット5は、ヒーター70を制御して、第2流路50を流れるインクの温度を制御する。また、本実施形態の制御ユニット5は、記録ヘッド1に設けられた図示しない温度センサーが測定した温度に基づいて、ヒーター70を制御している。なお、温度センサーは、特に図示していないが、第2流路50が設けられたホルダー40の温度を検出するようにホルダー40に設けるのが好ましい。例えば、温度センサーは、ホルダー40の上壁44の±X方向及び±Y方向を含む面内方向の中央部分に凹部を設け、この凹部内に配置すればよい。これにより、第2流路50を流れるインクの温度を温度センサーによって取得し易く、第2流路50を流れるインクの温度をヒーター70によって比較的高精度に制御することができる。もちろん、温度センサーは、ホルダー40の下壁45側に設けるようにしてもよいが、下壁45側にはヘッドチップ10が固定されるため、構造の複雑化や温度センサーの配線の取り回しが困難になる虞があるため、上壁44側に設けるのが好適である。また、温度センサーは、中継基板90に設けられていてもよく、ホルダーカバー80に設けられていてもよく、固定板60に設けられていてもよい。また、温度センサーは接触型に限定されず、非接触型のものであってもよい。
【0100】
なお、本実施形態では、ヒーター70の制御を、印刷の制御を行う制御ユニット5が兼ねて行うようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、ヒーター70の制御を行う制御手段を、印刷の制御を行う制御ユニット5とは別に設けるようにしてもよい。また、例えば、サーミスタ等の温度検出手段を記録ヘッド1に設けることで、対象の温度を検出すると共に対象が一定の温度となるようにヒーター70を制御ユニット5が制御するようにしてもよい
【0101】
搬送機構4は、制御ユニット5によって制御されて媒体Sを+X方向に搬送するものであり、例えば、搬送ローラー4aを有する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構4は、搬送ローラー4aに限らず、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0102】
移動機構6は、制御ユニット5によって制御されて記録ヘッド1を±Y方向に往復させる。移動機構6によって記録ヘッド1が往復する±Y方向は、媒体Sが搬送される+X方向に交差する方向である。
【0103】
具体的には、本実施形態の移動機構6は、記録ヘッド1を保持する保持部材7と搬送ベルト8とガイドレール9を具備する。保持部材7は、記録ヘッド1を収容する略箱形の構造体、所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、±Y方向に沿って架設された無端ベルトである。制御ユニット5による制御のもとで駆動モーター8aの駆動力が搬送ベルト8に伝わり、搬送ベルト8が回転することで記録ヘッド1が保持部材7と共に±Y方向に沿ってガイドレール9に沿って往復移動する。なお、液体容器3を記録ヘッド1とは別に装置本体2内に載置することも可能である。
【0104】
ここで、保持部材7は、
図13に示すように、ヒーター70との間にヘッド外壁84を挟んで配置されている。この保持部材7は、ステンレス鋼やチタンなどの金属で構成されたものであってもよく、樹脂で構成されたものであってもよい。なお、保持部材7を構成する樹脂としては、例えば、上述したケース13と同じ材料を用いることができる。
【0105】
ここで、保持部材7の材料の違いによる第2流路50、ヘッド外壁84、保持部材7の温度の関係について説明する。
【0106】
保持部材7が金属材料の場合には、樹脂材料に比べて熱伝導率が高いため、ヘッド外壁84の温度は外気温の影響を大きく受けるため低下しやすくなる。これに対して、保持部材7が樹脂材料の場合には、金属材料に比べて熱伝導率が低いため、ヘッド外壁84の温度は外気温の影響を受け難く低下しにくい。しかしながら、本実施形態では、保持部材7が何れの材料であっても、ヒーター70によって複数の第2流路50は囲まれているため、複数の第2流路50を流れるインクの温度はほぼ変わらない。ただし、金属材料は、樹脂材料の剛性に比べて高い剛性を有するため、保持部材7を金属材料で形成した方が、保持部材7の変形を抑制して、保持部材7の変形によるインク滴の吐出方向のズレ等が生じ難い。これに対して、樹脂材料は、金属材料に比べて熱伝導率が低いため、保持部材7を樹脂材料で形成した方が、ヒーター70及びホルダー40の放熱を抑制して、ヒーター70によってホルダー40を効率的に加熱することができる。また、樹脂材料は、金属材料に比べて低コストであるため、保持部材7を樹脂材料で形成した方が、コストを低減することができる。
【0107】
本実施形態では、ホルダー40内に設けられた複数の第2流路50に対して共通のヒーター70が設けられており、ヒーター70を第2流路50毎に設ける必要がないため、部品点数が増大するのを抑制してコストを低減することができると共に、構造やヒーター70に接続される配線の引き回しを簡略化することができる。また、記録ヘッド1を小型化することができる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iでは、上述した「液体噴射ヘッド」である記録ヘッド1と、記録ヘッド1を保持し、金属で構成された保持部材7と、を備え、保持部材7の一部は、ヒーター70との間にヘッド外壁84を挟むように配置されている。
【0109】
このように、保持部材7を金属で構成することで、樹脂で構成する場合に比べて保持部材7の剛性を向上して、保持部材7の変形を抑制することができる。したがって、保持部材7の変形によるインク滴の吐出方向のズレ等が生じるのを抑制することができる。また、保持部材7を熱伝導率の高い金属で構成したとしても、ヒーター70によって保持部材7とは反対側に設けられたホルダー40の第2流路50を加熱することができるため、第2流路50を流れるインクの加熱不足等が生じるのを抑制することができると共に、複数の第2流路50を流れるインクの温度にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iでは、上述した「液体噴射ヘッド」である記録ヘッド1と、記録ヘッド1を保持し、樹脂で構成された保持部材7と、を備え、保持部材7の一部は、ヒーター70との間にヘッド外壁84を挟むように配置してもよい。
【0111】
このように、保持部材7を樹脂で構成することで、金属で構成する場合に比べて保持部材7の熱伝導率を低くすることができるため、ヒーター70及びホルダー40の放熱を抑制して、ヒーター70によってホルダー40を効率的に加熱することができる。また、保持部材7を樹脂で構成することで、金属で構成する場合に比べてコストを低減することができる。
【0112】
また、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、上述した「液体噴射ヘッド」である記録ヘッド1と、ヒーター70を制御する制御手段である制御ユニット5と、を具備する。制御ユニット5によって、ヒーター70の加熱温度を制御することで、ヒーター70による第2流路50内のインクの温度を制御することができ、最適な温度のインクをヘッドチップ10に供給することができる。
【0113】
また、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、上述した「液体噴射ヘッド」である記録ヘッド1と、記録ヘッド1から噴射される液体であるインクを貯留する液体容器3と、を具備する。液体容器3から供給された液体であるインクを記録ヘッド1から噴射させて媒体Sに印刷することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、保持部材7は、ヒーター70との間にヘッド外壁84を挟むように配置するようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、保持部材7の変形例を
図14に示す。なお、
図14は、記録ヘッド1と保持部材7Aとの要部を示す断面図である。
【0115】
図14に示すように、保持部材7Aは、樹脂で構成され、保持部材7Aの一部は、ホルダー40との間にヒーター70を挟むようにして配置されている。なお、保持部材7Aを構成する樹脂としては、例えば、上述したケース13と同じ材料を用いることができる。
【0116】
このように、保持部材7Aを樹脂で構成し、保持部材7Aの一部をホルダー40との間にヒーター70を挟むように配置することで、熱伝導率の低い保持部材7Aでヒーター70を覆うことができ、ヒーター70及びホルダー40の放熱を抑制して、ヒーター70によってホルダー40を効率的に加熱することができる。また、保持部材7Aを樹脂で構成することで、金属で構成する場合に比べてコストを低減することができる。
【0117】
(実施形態2)
図15は、本発明の実施形態2に係る「液体噴射ヘッド」の一例であるインクジェット式記録ヘッド1のB-B′線に準ずる断面図である。
図16は、実施形態2に係るホルダー40及びヒーター70の斜視図である。
図17は、記録ヘッド1のC-C′線に準ずる断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0118】
図15に示すように、本実施形態の記録ヘッド1は、ヘッドチップ10と、ホルダー40と、固定板60と、ヒーター70と、ホルダーカバー80と、中継基板90とを具備する。
【0119】
ホルダー40には、第2流路50が設けられている。第2流路50は、上述した実施形態1と同様に、第1部分51、第2部分52及び第3部分53を具備する。
【0120】
また、本実施形態では、第2部分52は、ヘッドチップ10よりも上壁44の近くに配置されている。ここで第2部分52が、ヘッドチップ10よりも上壁44近くに配置されているとは、
図17に示すように、+Z方向において、第2部分52の中心C1が、ヘッドチップ10が固定された凹部47の底面と上壁44の-Z方向側の面との間の中心C2よりも上壁44側に配置されていることをいう。また、第1部材41の上壁44の第2部分52を画定している部分における±Z方向における最小の厚みh1が、第2部分52の±Z方向における最大の高さh2よりも小さいことがより好ましい。
【0121】
ヒーター70は、+Z方向に見た平面視において、複数の第2部分52に重なる位置に配置されている。また、ヒーター70は、ホルダー40の上壁44に配置されている。すなわち、ヒーター70は、ホルダー40の上壁44である-Z方向側の面上に、+Z方向に見た平面視において第2部分52に重なる位置に配置されている。
【0122】
本実施形態では、ヒーター70は、ホルダー40の上壁44の-Z方向側の面の略全てを覆うように配置されている。
【0123】
このようなヒーター70は、可撓性を有するフィルムヒーターであってもよく、また、可撓性を有さないヒーターであってもよい。
【0124】
なお、ヒーター70には、ホルダー40の突起部41a、すなわち、第2流路50の接続部分51aが挿通される開口部75が設けられている。接続部分51aは、開口部75を介してヒーター70よりも-Z方向側に引き出されている。
【0125】
また、ヒーター70には、第1配線挿通孔49に連通する連通孔76が設けられている。ヘッドチップ10の配線基板23は、ヒーター70の連通孔76を介して-Z側に引き出されている。
【0126】
このように、ヒーター70をホルダー40の上壁44に設けることによっても、ヘッドチップ10の近傍に配置された第2流路50をヒーター70によって加熱することができるため、十分に加熱されたインクをヘッドチップ10に供給することができる。また、ヒーター70が加熱するホルダー40が熱伝導率の高い金属またはセラミックスで構成されるため、ヒーター70によって複数の第2流路50を流れるインクを十分に加熱することができ、ヒーター70から離れた位置に配置されたヘッドチップ10に対しても、十分に加熱されたインクを供給することができる。したがって、ヘッドチップ10から吐出されるインクの粘度を低下させて、インクの吐出特性が低下するのを抑制することができる。さらに、ヒーター70は、ヘッドチップ10自体を加熱する構成ではないため、ヒーター70の構成及び記録ヘッド1の構成を簡略化することができる。
【0127】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、複数の第2流路50のそれぞれは、第1方向である+Z方向に交差する方向に延在する「交差部分」である第2部分52を有し、ヒーター70は、+Z方向に見た平面視において複数の第2部分52と重なる位置に配置されている。
【0128】
このように、ヒーター70が、複数の第2部分52と重なる位置に配置されることで、ヒーター70が加熱する流路の長さを長くすることができ、第2流路50を流れるインクを効果的に加熱することができる。
【0129】
なお、本実施形態では、「交差部分」である第2部分52は、第1部材41と第2部材42との間に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第2部材42と第3部材43との間に交差部分を設けるようにしてもよい。
【0130】
また、本実施形態では、複数の第2流路50のそれぞれに、「交差部分」である第2部分52および「連通部分」である第3部分53を1つずつ設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第2流路50に「交差部分」である第2部分52を複数設けるようにすることで第2流路50が2以上の「第1流路」に連通するようにしてもよく、つまり、第2流路50が2以上の「第1流路」に液体を分配するための分岐流路であってもよい。換言すれば、必ずしも本実施形態のように第2流路50の数が「第1流路」の数に対して一対一対応している必要はなく、ホルダー40が、ホルダー40に固定される複数のヘッドチップ10が有する複数の「第1流路」のうち、少なくとも1つの「第1流路」に連通する第2流路50を複数有する構成でも構わない。
【0131】
さらに、ヒーター70が、+Z方向に見た平面視において、第2部分52に重なる位置に配置されているとは、ヒーター70がホルダー40の上壁44上に設けられたものに限定されず、ヒーター70が、ホルダー40を構成する第1部材41と第2部材42との間、又は、第2部材42と第3部材43との間に設けられていてもよい。ヒーター70が、第1部材41と第2部材42と第3部材43との何れの間に設けられた場合であっても、+Z方向に見た平面視において、ヒーター70が第2部分52に重なる位置に配置されていれば、ヒーター70によって第2部分52を流れるインクを効果的に加熱することができる。ただし、ヒーター70を上壁44上に設けた方が、ヒーター70を第1部材41と第2部材42との間や、第2部材42と第3部材43との間に設ける場合に比べて、ホルダー40の組み立て時にヒーター70をホルダー40を構成する積層部材の間に組み込む必要がない。したがって、ヒーター70を上壁44上に設けた方が、ホルダー40の製造や、ホルダー40へのヒーター70の取り付けを容易に行うことができると共にヒーター70の配線の取り回しを容易に行うことができる。
【0132】
また、本実施形態では、ホルダー40は、当該ホルダー40の第1方向である+Z方向とは反対方向である第2方向である-Z方向側に設けられた上壁44を有し、ヒーター70は、上壁44に配置されている。ヒーター70を上壁44に配置することで、ヒーター70が下壁45に配置されている場合に比べて、ヒーター70を設置する構造を簡略化して、ヒーター70の配線の引き回しを容易に行うことができる。
【0133】
さらに、本実施形態では、「交差部分」である第2部分52は、ヘッドチップ10よりも上壁44の近くに配置されている。このように、ヒーター70が設けられている上壁44の近くに「交差部分」である第2部分52が設けられているため、ヒーター70によって第2部分52を流れるインクを効率よく加熱することができる。
なお、第1部材41の上壁44の第2部分52を画定している部分における±Z方向における最小の厚みh1が、第2部分52の±Z方向における最大の高さh2よりも小さいことがより好ましい。このように第1部材41の上壁44の第2部分52を画定している部分における±Z方向における最小の厚みh1を、第2部分52の±Z方向における最大の高さh2よりも小さくすることで、第2部分52をより上壁44の-Z方向側の面に設けられたヒーター70に近づけることができ、第2部分52を流れるインクをヒーター70によって加熱し易くすることができる。
【0134】
なお、本実施形態では、ヒーター70を上壁44のみに設けるようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、ヒーター70の変形例を
図18及び
図19を参照して説明する。なお、
図18は、記録ヘッド1の断面図である。
図19は、ホルダー40及びヒーター70の斜視図である。
【0135】
図18及び
図19に示すように、ホルダー40は、側壁を有する。側壁は、外周壁46のうちの一辺のことを言う。
【0136】
ヒーター70は、可撓性を有するフィルムヒーターからなる。ヒーター70は、上壁44に設けられた本体部77と、±X方向の両側の側壁に設けられた折曲部78と、±Y方向の両側の側壁に設けられた折曲部79とを具備する。折曲部78、79は、本体部77に対して上壁44の端部で折り曲げられたものであり、本体部77と折曲部78、79とは一体的に設けられている。
【0137】
このように、ホルダー40の上壁44と側壁とにヒーター70を一体的に設けることで、ヒーター70によってホルダー40全体の温度にばらつきが生じるのを抑制して加熱することができる。したがって、ヒーター70によって加熱された複数の第2流路50を流れるインクの温度にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0138】
なお、本実施形態では、±X方向の両側面に折曲部78を設け、±Y方向の両側面に折曲部78を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、折曲部78及び折曲部79の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。また、±X方向の両側の側壁に設けられた折曲部78のうち、+X方向の側壁に設けられた折曲部78及び-X方向の側壁に設けられた折曲部78の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。また、±Y方向の両側の側壁に設けられた折曲部79のうち、+Y方向の側壁に設けられた折曲部79及び-Y方向の側壁に設けられた折曲部79の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0139】
以上説明したように、本実施形態の記録ヘッド1では、ホルダー40は、側壁を有し、ヒーター70は、可撓性を有するフィルムヒーターであり、上壁44に固定された本体部77と、本体部77に対して上壁44の端部で折り曲げられ、側壁に固定された折曲部78、79と、を有する。
【0140】
このようにホルダー40の上壁44と側壁とにヒーター70を一体的に設けることで、ヒーター70によってホルダー40全体の温度にばらつきが生じるのを抑制して加熱することができる。したがって、ヒーター70によって加熱された複数の第2流路50を流れるインクの温度にばらつきが生じるのを抑制することができる。また、ヒーター70の本体部77に対して上壁44の端部で折り曲げるだけで、側壁に固定される折曲部78、79を形成することができるので、簡易なフィルムヒーター構成で第2流路50を効率的に加温することができる。
【0141】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、複数の第2流路50のそれぞれは、ホルダー40の上壁44から+Z方向とは反対方向である「第2方向」である-Z方向に突出する接続部分51aを有し、ヒーター70は、複数の接続部分51aのそれぞれが挿通される複数の開口である開口部75を有することが好ましい。これによれば、接続部分51aがホルダー40の上壁44から-Z方向に突出する構成であっても、ヒーター70に接続部分51aに対応する開口部75が設けられているので、ヒーター70をホルダー40に簡単に取り付けることができる。また、ヒーター70に開口部75を設けることで、接続部分51a及び接続部分51aに連通する第2流路50、例えば、第1部分51や第2部分52近傍にヒーター70を配置することができるため、ヒーター70による加熱を効率よく行うことができる。ちなみに、ヒーター70に開口部75を設けずに、接続部分51aを避けるようにしてヒーター70を複数に分割して上壁44に配置する構成も考えられるが、その場合、ヒーター70等の部品数が増加して構成が複雑化してしまう虞がある。。
【0142】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0143】
上述した各実施形態では、ヘッドケース13に設けられた「第1流路」として、ヘッドチップ10内にインクを供給する導入口32及び導入液室31を例示したが、特にこれに限定されず、ヘッドチップ10は、「第1流路」として、ヘッドチップ10から外部にインクを排出する排出路や、ヘッドチップ10と液体容器3との間でインクを循環させる循環路等を含んでいてもよい。同様に、上述した各実施形態では、ホルダー40の第2流路50として、ヘッドチップ10にインクを供給するものを例示したが、特にこれに限定されず、ホルダー40は、第2流路50として、ヘッドチップ10から排出されたインクをさらに外部に排出する排出路やヘッドチップ10と液体容器3との間でインクを循環させる循環路等を含んでいてもよい。
【0144】
例えば、上述した各実施形態では、ホルダー40は、第1部材41と第2部材42と第3部材43との3つの部材によって構成されたものを例示したが、特にこれに限定されず、ホルダー40は、単一の部材で構成されたものであってもよく、2以上の複数の部材で構成されたものであってもよい。また、ホルダー40を構成する複数の部材の積層方向は、+Z方向に限定されず、+X方向や+Y方向などに積層されたものであってもよい。ただし、第2流路50に、「交差部分」である第2部分52を設ける場合には、複数の部材を+Z方向に積層する方が第2部分52を形成し易いため好適である。
【0145】
また、ヘッドチップ10のエネルギー発生素子としては、圧電アクチュエーター18に限定されず、周知の種々の構成のものを採用することができる。例えば、圧力室19内のインクに圧力変動を生じさせるエネルギー発生素子としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって流路の容積を変化させて流路内のインクに圧力変化を生じさせてノズル11からインク滴を吐出させるものを用いることができる。また、エネルギー発生素子としては、流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル11からインク滴を吐出させるものを用いることができる。さらに、エネルギー発生素子としては、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル11からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0146】
また、上述した各実施形態では、ノズル11の並設方向が、媒体Sの搬送方向と同じ+X方向となる構成を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、
図20に示すように、ノズル11の並設方向が、媒体Sの搬送方向である+X方向に対して、傾斜して設けられていてもよい。
【0147】
また、上述した各実施形態では、複数のヘッドチップ10が、+X方向の位置が同じ位置となるように+Y方向に配置される構成を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、
図21に示すように、複数のヘッドチップ10が、+X方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。ここで、複数のヘッドチップ10を+X方向に沿って千鳥状に配置するとは、+X方向に並設されたヘッドチップ10を交互にY方向にずらして配置することである。すなわち、+X方向に並設されたヘッドチップ10の列が、+Y方向に2列並設され、2列のヘッドチップ10の列を+X方向に半ピッチずらして配置することである。このようにヘッドチップ10を+X方向に沿って千鳥状に配置することで、2つのヘッドチップ10のノズル11を部分的に重複させて、+X方向に亘って連続したノズル11の列を形成することができる。
【0148】
なお、例えば、上述した実施形態1及び2においてヒーター70が設けられていない複数の記録ヘッド1と、複数の記録ヘッド1を保持すると共に複数の記録ヘッドにインクを供給する流路、例えば、分岐流路が設けられた保持部材と、を有するヘッドモジュールにおいて、記録ヘッド1をヘッドチップと読み替え、保持部材をホルダーと読み替えれば、ヘッドモジュールに対しても本発明を適用することができる。すなわち、ヘッドモジュールでは、ホルダーに相当する保持部材にヒーターを設けるようにすればよい。
【0149】
また、上述した各実施形態では、突起部41aは、上壁44から突出するようにして設けられていたが、側壁から突出するように設けられる構成でも構わない。
【0150】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1が保持部材7に搭載されて主走査方向である±Y方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、複数の記録ヘッド1が媒体Sの搬送方向に直交する方向に並べられてユニットベースに固定されて、媒体Sを搬送方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。この場合も、記録ヘッド1をヘッドチップに読み替え、複数の記録ヘッド1に液体を分配する流路構造体をホルダーに読み替え、ユニットベースを保持部材に読み替えれば、ホルダーに相当する流路構造体にヒーターを設けることで、本発明を適用することができる。もちろん、記録ヘッド1のそれぞれが複数のヘッドチップを有する構成であれば、記録ヘッド1のそれぞれ対して本発明を適用するようにしてもよい。
【0151】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0152】
I…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、1…インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…装置本体、3…液体容器、4…搬送機構、4a…搬送ローラー、5…制御ユニット、6…移動機構、7…保持部材、8…搬送ベルト、8a…駆動モーター、9…ガイドレール、10…ヘッドチップ、11…ノズル、12…ノズルプレート、13…ケース、14…連通板、15…圧力室形成基板、16…振動板、17…コンプライアンス基板、17a…封止膜、17b…固定基板、17c…固定基板用開口部、17d…コンプライアンス部、18…圧電アクチュエーター、19…圧力室、20…第1電極、21…圧電体層、22…第2電極、23…配線基板、24…配線、25…駆動回路、26…ノズル連通口、27…共通液室、28…個別連通口、29…保護基板、30…保持部、31…導入液室、32…導入口、33…配線挿通孔、40…ホルダー、40a~40d…角部、41…第1部材、41a…突起部、42…第2部材、43…第3部材、43a…凸部、44…上壁、45…下壁、46…外周壁、47…凹部、48…隔壁、49…第1配線挿通孔、50…第2流路、51…第1部分、51a…接続部分、52…第2部分、53…第3部分、60…固定板、61…露出開口部、70…ヒーター、71…発熱部、72…フィルム部材、73…第1部分、74…第2部分、75…開口部、76…連通孔、77…本体部、78、79…折曲部、80…ホルダーカバー、81…収容部、82…第1貫通孔、83…第2配線挿通孔、84…ヘッド外壁、90…中継基板、91…第3配線挿通孔、92…第2貫通孔、S…媒体