(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】光学式センサ、光学式センサの制御方法及び光学式センサの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
G01B11/00 B
(21)【出願番号】P 2021040371
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】蓬郷 典大
(72)【発明者】
【氏名】都築 良介
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特許第6825087(JP,B2)
【文献】特開2018-124088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光である検出光を投光する投光素子と、
前記投光素子から投光された前記検出光の光軸を調整する光軸調整素子と、
対象物で反射した前記検出光を受光して検出信号を出力する受光素子と、
前記光軸調整素子を駆動することにより前記検出光を予め設定された複数の特定方向へ順次投光して得た前記検出信号に基づく検出結果のうち、前記検出光が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識し、認識した前記指示方向に基づいて検査対象物の検査のために投光する前記検出光の投光方向を調整する投光調整部と
を備える光学式センサ。
【請求項2】
前記投光調整部は、前記複数の特定方向に加え、その時点で設定されている前記投光方向を1サイクルとして順次投光し、前記複数の特定方向へ投光する場合と前記投光方向へ投光する場合で、投光の態様を異ならせる請求項1に記載の光学式センサ。
【請求項3】
前記複数の特定方向のそれぞれは、前記光軸調整素子によって調整可能な範囲の端に設定されている請求項1又は2に記載の光学式センサ。
【請求項4】
前記投光調整部は、予め設定された前記複数の特定方向のうち反射した前記検出信号を前記受光素子で検出できない特定方向が存在する場合には、その特定方向へ投光する前記検出光を前記検出信号が検出できる方向へ偏向させる請求項1から3のいずれか1項に記載の光学式センサ。
【請求項5】
前記投光調整部は、予め設定された前記複数の特定方向の少なくともいずれか又は前記投光方向で検出された対象物までの距離に基づいて前記複数の特定方向へそれぞれ投光する前記検出光を偏向させる請求項1から4のいずれか1項に記載の光学式センサ。
【請求項6】
前記投光調整部は、前記複数の特定方向が前記光軸調整素子によって調整可能な範囲より内側の方向である場合には、前記範囲を示すために端方向への投光を行う請求項5に記載の光学式センサ。
【請求項7】
前記投光調整部は、前記複数の特定方向のそれぞれにおいて投光した前記検出光のうち2つ以上の特定方向に対する前記検出光が連続して順次遮られたと評価される検出結果が得られた場合には、前記2つ以上の特定方向の遮られた順番に基づいて前記投光方向を調整する請求項1から6のいずれか1項に記載の光学式センサ。
【請求項8】
前記投光調整部は、遮られた順番に基づいて前記投光方向を調整した場合は、予め設定された設定時間の間、前記投光方向の調整を停止する請求項7に記載の光学式センサ。
【請求項9】
前記投光調整部は、前記複数の特定方向へ順次投光して得た検出結果のすべてが前記検出光が遮られたと評価される検出結果であった場合に、前記投光方向を確定させる請求項1から8のいずれか1項に記載の光学式センサ。
【請求項10】
前記投光調整部は、前記複数の特定方向へ順次投光して得た検出結果のうち予め設定された組み合わせの前記検出光がいずれも遮られたと評価される検出結果であった場合に、前記投光方向を確定させる請求項1から8のいずれか1項に記載の光学式センサ。
【請求項11】
前記投光調整部は、確定指示を受け付けるための確定投光として前記検出光を投光し、前記確定投光の前記検出光が遮られたと評価される検出結果であった場合に、前記投光方向を確定させる請求項1から8のいずれか1項に記載の光学式センサ。
【請求項12】
前記複数の特定方向は、前記光軸調整素子によって調整可能な範囲の少なくとも一部の範囲を覆うように規定された複数の離散点のそれぞれに対して設定され、
前記投光調整部は、前記検出光が最も至近で遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識し、前記投光方向を前記指示方向として確定する請求項1に記載の光学式センサ。
【請求項13】
検出光を投光する投光素子と、前記投光素子から投光された前記検出光の光軸を調整する光軸調整素子と、対象物で反射した前記検出光を受光して検出信号を出力する受光素子とを備える光学式センサの制御方法であって、
前記光軸調整素子を駆動することにより前記検出光を予め設定された複数の特定方向へ順次投光する投光ステップと、
前記投光ステップで前記複数の特定方向へそれぞれ投光して得た前記検出信号に基づく検出結果のうち、前記検出光が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識する認識ステップと、
前記認識ステップで認識された前記指示方向に基づいて検査対象物の検査のために投光する前記検出光の投光方向を調整する調整ステップと
を有する光学式センサの制御方法。
【請求項14】
検出光を投光する投光素子と、前記投光素子から投光された前記検出光の光軸を調整する光軸調整素子と、対象物で反射した前記検出光を受光して検出信号を出力する受光素子とを備える光学式センサの制御プログラムであって、
前記光軸調整素子を駆動することにより前記検出光を予め設定された複数の特定方向へ順次投光する投光ステップと、
前記投光ステップで前記複数の特定方向へそれぞれ投光して得た前記検出信号に基づく検出結果のうち、前記検出光が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識する認識ステップと、
前記認識ステップで認識された前記指示方向に基づいて検査対象物の検査のために投光する前記検出光の投光方向を調整する調整ステップと
をコンピュータに実行させる光学式センサの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式センサ、光学式センサの制御方法及び光学式センサの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の有無や距離を検出する光学式センサが知られている。例えば、特許文献1には、検査対象物へ投光された検出光が反射して戻ってくるまでの時間を測定することにより距離を検出するToF(Time of Flight)センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学式センサは、製造ラインに設置され、製造ラインを流れる部品の特徴的な形状部分を測定して当該物品の品種や良否を判別することに利用されることがある。このように利用される場合に、光学式センサは製造ライン300に付随する構造物に取り付けられることが多いが、必ずしも検査対象物の近くに取り付けることができるとは限らない。そこで、近年においては検出レンジが数mにも達する広レンジタイプの光学式センサも開発されている。しかし、広レンジタイプの光学式センサは、取付け時にわずかでも角度誤差が生じると、検査対象物のターゲットとする箇所から検出光が外れてしまう。取付器具を介して光学式センサを取り付ける場合には検出光の厳密な光軸調整が難しく、作業者は検出光のスポットを確認しつつ取付器具を緩めたり締め付けたりするという煩雑な作業を行う必要があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、比較的遠くの検出対象物を検出する場合であっても、煩雑な光軸調整作業を必要としない光学式センサ等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様における光学式センサは、可視光である検出光を投光する投光素子と、投光素子から投光された検出光の光軸を調整する光軸調整素子と、対象物で反射した検出光を受光して検出信号を出力する受光素子と、光軸調整素子を駆動することにより検出光を予め設定された複数の特定方向へ順次投光して得た検出信号に基づく検出結果のうち、検出光が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識し、認識した指示方向に基づいて検査対象物の検査のために投光する検出光の投光方向を調整する投光調整部とを備える。このように構成された光学式センサによれば、ユーザは、例えば指先で特定方向への検出光を遮るだけで、検査対象物の検査のために投光する検出光の投光方向を指示できるので、光学式センサの向きを調整し直すなどの手間が省け、作業性の向上を図ることができる。
【0007】
上記の光学式センサにおいて、投光調整部は、複数の特定方向に加え、その時点で設定されている投光方向を1サイクルとして順次投光し、複数の特定方向へ投光する場合と投光方向へ投光する場合で、投光の態様を異ならせてもよい。このように投光の態様を異ならせることにより、ユーザは、一つの投光素子から投光されるそれぞれの検出光の役割を容易に認識することができる。
【0008】
上記の光学式センサにおいて、複数の特定方向のそれぞれは、光軸調整素子によって調整可能な範囲の端に設定されているとよい。このように調整可能な範囲の端に設定されることにより、ユーザは、検査対象物の検査のために投光する検出光をどの範囲で調整できるかを容易に認識することができる。
【0009】
上記の光学式センサにおいて、投光調整部は、予め設定された複数の特定方向のうち反射した検出信号を受光素子で検出できない特定方向が存在する場合には、その特定方向を検出信号が検出できる方向へ移動させるようにしてもよい。このように特定方向を移動させれば、いずれの特定方向への検出光も対象物にスポットを形成するので、ユーザは、特定方向への検出光の光軸を発見しやすく、方向指示を与えやすい。
【0010】
上記の光学式センサにおいて、投光調整部は、予め設定された複数の特定方向の少なくともいずれか又は前記投光方向で検出された対象物までの距離に基づいて複数の特定方向を移動させるようにしてもよい。このように移動させることにより、光学式センサからの距離によらず特定方向の検出光の間隔を適度に保つことができるので、ユーザは方向指示を与えやすい。このとき、投光調整部は、複数の特定方向が光軸調整素子によって調整可能な範囲の端でない場合には、範囲を示すために端方向への投光を行うようにしてもよい。このように端方向への投光を行うことにより、ユーザは、検査対象物の検査のために投光する検出光をどの範囲で調整できるかを容易に認識することができる。
【0011】
上記の光学式センサにおいて、投光調整部は、複数の特定方向のそれぞれにおいて投光した検出光のうちの2つ以上の特定方向に対する検出光が連続して順次遮られたと評価される検出結果が得られた場合には、当該2つ以上の特定方向の遮られた順番に基づいて検査対象物の検査のために投光する検出光の投光方向を調整するようにしてもよい。このような態様によっても、ユーザは、直感的かつ容易に方向指示を与えることができる。このとき、投光調整部は、遮られた順番に基づいて当該投光方向を調整した場合は、予め設定された設定時間の間、当該投光方向の調整を停止するとよい。このような停止期間を設けることにより、ユーザの手が往復することによる誤検出を防ぐことができる。
【0012】
上記の光学式センサにおいて、投光調整部は、複数の特定方向へ順次投光して得た検出結果のすべてが検出光が遮られたと評価される検出結果であった場合に、投光方向を確定させてもよい。このように方向指示に連続して確定指示を受け付けるようにすれば、ユーザは、確定指示をするために光学式センサを操作する必要がないので、作業性の向上が見込める。
【0013】
上記の光学式センサにおいて、投光調整部は、複数の特定方向へ順次投光して得た検出結果のうち予め設定された組み合わせの検出光がいずれも遮られたと評価される検出結果であった場合に、投光方向を確定させてもよい。また、投光調整部は、確定指示を受け付けるための確定投光として検出光を投光し、確定投光の検出光が遮られたと評価される検出結果であった場合に、投光方向を確定させてもよい。このような態様であっても、ユーザは、確定指示をするために光学式センサを操作する必要がないので、作業性の向上が見込める。
【0014】
上記の光学式センサにおいて、複数の特定方向は、光軸調整素子によって調整可能な範囲の少なくとも一部の範囲を覆うように規定された複数の離散点のそれぞれに対して設定され、投光調整部は、検出光が最も至近で遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識し、当該投光方向を指示方向として確定してもよい。このような指示方式であれば、より直接的に投光方向を指示できる。
【0015】
本発明の第2の態様における光学式センサの制御方法は、検出光を投光する投光素子と、投光素子から投光された検出光の光軸を調整する光軸調整素子と、対象物で反射した検出光を受光して検出信号を出力する受光素子とを備える光学式センサの制御方法であって、光軸調整素子を駆動することにより検出光を予め設定された複数の特定方向へ順次投光する投光ステップと、投光ステップで複数の特定方向へそれぞれ投光して得た検出信号に基づく検出結果のうち、検出光が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識する認識ステップと、認識ステップで認識された指示方向に基づいて検査対象物の検査のために投光する検出光の投光方向を調整する調整ステップとを有する。
【0016】
また、本発明の第3の態様における光学式センサの制御プログラムは、検出光を投光する投光素子と、投光素子から投光された検出光の光軸を調整する光軸調整素子と、対象物で反射した検出光を受光して検出信号を出力する受光素子とを備える光学式センサの制御プログラムであって、光軸調整素子を駆動することにより検出光を予め設定された複数の特定方向へ順次投光する投光ステップと、投光ステップで複数の特定方向へそれぞれ投光して得た検出信号に基づく検出結果のうち、検出光が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識する認識ステップと、認識ステップで認識された指示方向に基づいて検査対象物の検査のために投光する検出光の投光方向を調整する調整ステップとをコンピュータに実行させる。
【0017】
このような第2、第3の態様であっても、第1の態様と同様に、検査対象物の検査のために投光する検出光の投光方向を容易に指示できるので、光学式センサの向きを調整し直すなどの手間が省け、作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、比較的遠くの検出対象物を検出する場合であっても、煩雑な光軸調整作業を必要としない光学式センサ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】予備ワークに対する指示投光と調整投光の投光を説明する図である。
【
図4】調整投光を右方向へ移動させる場合の調整方法を説明する図である。
【
図5】調整投光を下方向へ移動させる場合の調整方法を説明する図である。
【
図6】調整投光の投光方向を検査方向に確定する確定方法を説明する図である。
【
図8】対象物の形状に応じて指示投光の投光方向を自動調整する様子を示す図である。
【
図9】対象物の距離に応じて指示投光の投光方向を自動調整する様子を示す図である。
【
図10】指示投光に加えて境界投光を行う様子を示す図である。
【
図11】調整投光を移動させる他の指示手法を説明する図である。
【
図12】調整投光の投光方向を検査方向に確定する他の確定方法を説明する図である。
【
図13】調整投光の投光を行うことなく直接的に検査方向を確定する調整手法を説明する図である。
【
図14】制御部の処理手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、光学式センサ100の外観斜視図である。本実施形態に係る光学式センサ100は、検査対象物であるワークの部分形状の有無や特定箇所までの距離等を検出するセンサであり、例えば工場の製造ラインなどに設置されて利用される。光学式センサ100は、検出光L
1をワークへ向けて投光し、ワークで反射して戻ってくる検出光L
2を受光する。以下に説明する光学式センサ100は、特に検出光の往復時間を計測することにより距離情報を検出するToFセンサである。光学式センサ100は、検出光L
2を受光できない場合にはワークが検出されない旨の未検出情報を出力し、検出光L
2を受光できた場合には距離情報を出力する。
【0022】
検出光L1は、筐体101の一面に設けられた透過窓102を透過して投光される。詳細については後述するが、光学式センサ100は、投光素子から投光された検出光L1の投光方向を調整する光軸調整素子を備える。光軸調整素子は、所定ピッチで直交する2軸方向(図示するX軸方向とY軸方向)へ、検出光L1の光軸を偏向することができる。具体的には、図示するように偏向可能範囲R内のドットで示す任意の方向(xm,yn)へ検出光L1の光軸を一致させることができる。
【0023】
また、光学式センサ100は、検出光L1の投光方向に沿ってDnからDfの範囲で距離を検出することができる。すなわち、図の網点で示す範囲が検出可能範囲Vであり、光学式センサ100は、この範囲にワークが存在しなければ未検出情報を出力し、この範囲にワークが存在すれば検出光L1の反射点までの距離情報を出力する。
【0024】
筐体101の一面には操作ボタン150が設けられており、操作ボタン150は、ユーザからの操作を受け付ける。また、筐体101の一面には表示パネル160が設けられており、表示パネル160は、後述するように、確定した検査方向等を表示する。ケーブル103は、外部機器であるPLCやPCと接続され、出力信号をこれらの機器へ伝送する。なお、図示するようにX軸、Y軸及びZ軸を定める。以後のいくつかの図面においても
図1と同様の座標軸を併記することにより、それぞれの図面が表す構成要素の向きを示す。
【0025】
図2は、光学式センサ100のシステム構成図である。光学式センサ100の制御システムは、主に、制御部110、投光素子120、光軸調整素子130、受光素子140、操作ボタン150、表示パネル160、入出力IF170、記憶部180によって構成される。制御部110は、光学式センサ100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。制御部110は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の演算処理チップや、各種電気信号を処理する処理回路を含む構成であってもよい。制御部110は、記憶部180から読み出される、あるいは入出力IF170を介して外部機器から与えられる制御プログラムを実行して、ワークの検出処理に関する様々な処理を実行する。
【0026】
投光素子120は、可視光である波長帯域のレーザ光(例えば635nm~680nmの赤色光)を出射するレーザダイオードであり、制御部110の制御により特定の周波数(例えば12MHz)に変調された検出光L1を出射する。なお、投光素子120は、コヒーレント光を出射するレーザダイオードに限らず、LEDなどのインコヒーレント光を出射する素子を用いてもよい。
【0027】
光軸調整素子130は、上述のように、投光素子120から投光された検出光L1の光軸を調整する素子である。本実施形態においては、光軸調整素子130として、液晶セルに電圧を加えてオン/オフを制御することにより偏向を実現する液晶デバイスを利用する。液晶デバイスは、具体的には、液晶セルが配列された液晶回折格子(例えば、会誌「光学」30巻1号:「液晶光学デバイスの研究動向」第6頁)を積層し、入力された制御信号に応じて入射されたレーザ光の偏向量を制御できるように液晶セルに印加する電圧を制御する制御回路を組み込んだデバイスである。また、光軸調整素子130としては、他にも、MEMSミラー、光フェーズドアレイ、電気光学結晶などを利用することができる。
【0028】
受光素子140は、二次元状に配列された光電変換画素を有する例えばCMOSセンサであり、受光した検出光L
2を電気信号に変換して制御部110へ送信する。なお、図においてはワークへ向けて投光される検出光L
1と、受光素子140で受光する検出光L
2の光路を分けて示すが、実際には
図1に示すように同一光路であり、例えばダイクロイックミラーを用いて受光素子140へ向かう検出光L
2の光路を検出光L
1の光路から分離する。また、光軸調整素子130は、投光素子120及び受光素子140と共に筐体101内に収容されているので、筐体101の外に検出光L
1の光軸を調整する可動部を設ける必要がない。したがって、筐体101を例えば製造ラインに付随する構造物に直接的に固定できるので、光学式センサ100の設置がしやすく、また作業者による不用意な接触等の影響も受けにくい。
【0029】
操作ボタン150は、ユーザからの指定を受け付ける操作部材であり、例えば、UPボタンとDOWNボタン、十字ボタンなどが含まれていてもよい。操作ボタン150は、制御部110と協働して、光学式センサ100の各種項目の入力を受け付ける受付部としての機能を担う。なお、操作部材としては操作ボタンに限らず、タッチセンサなど他のデバイスであってもよい。
【0030】
表示パネル160は、例えば液晶パネルであり、光学式センサ100の設定状態、検出結果としての距離情報や未検出情報などが表示される。なお、光学式センサ100の設定状態を示すデバイスとしては、LEDなどが設けられていてもよい。入出力IF170は、ケーブル103を介して外部機器と情報の授受を行うためのインタフェースであり、例えばEthernet(登録商標)ユニットやLANユニットを含む。なお、入出力IF170としては、ケーブル103を介した有線接続に限らず、無線LANやBluetooth(登録商標)に対応する無線の接続ユニットを含んでもよい。
【0031】
制御部110は、外部の操作盤に対してユーザが行った操作や外部機器であるPLCが出力する制御信号を、入出力IF170を介して受け付けることもできる。例えば、ユーザが操作盤を操作してワークの検査を開始する指示を行う場合には、入出力IF170は、制御部110と協働して検査開始の指示を受け付ける受付部としての機能を担う。
【0032】
記憶部180は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばフラッシュメモリによって構成されている。記憶部180は、光学式センサ100の制御や処理を実行するプログラムの他にも、制御や演算に用いられる様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル等を記憶し得る。また、記憶部180は、調整モードの開始時に検出された初期検出距離や、検出光L1の確定された検査方向を記憶する。
【0033】
制御部110は、制御プログラムが指示する処理に応じて様々な演算を実行する機能演算部としての役割も担う。制御部110は、投光調整部111、距離演算部112として機能し得る。投光調整部111は、光軸調整素子130を駆動することにより検出光L1を予め設定された複数の特定方向へ順次投光して得た検出結果のうち、検出光L1が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識し、検査ワークの検査のために投光する検出光L1の投光方向を認識した当該指示方向に基づいて調整する。また、検査ワークの検査時には、そのように調整され確定された検査方向へ検出光L1が投光されるように光軸調整素子130を駆動する。距離演算部112は、投光した検出光L1と、受光した検出光L2の時間差を例えば両者の位相差を用いて演算し、予備ワークあるいは検査ワークまでの距離に変換する。制御部110は、距離演算部112の演算結果をデータ構造化し、距離情報として出力することができる。あるいは、受光素子140が検出光L2を受光しない場合には、規定された未検出情報を出力することができる。
【0034】
ユーザは、操作ボタン150等を介して光学式センサ100を調整モードに切り替え、検出光L1が向けられるべき検査方向を確定させるための調整作業を行う。以下にその手順を具体的に説明する。
【0035】
図3は、予備ワーク210に対する指示投光I
U、I
R、I
D、I
Lと調整投光L
Tの投光を説明する図である。光学式センサ100は、製造ライン300上の検査位置辺りに向けて、製造ラインに付随する構造物に固定されている。ユーザは、予定している検査対象物と同一種類の予備対象物である予備ワーク210を、ターゲットとする検査箇所211が検査位置辺りに位置するように、製造ライン300上に載置する。ここで、検査箇所211は検出光L
1の偏向可能範囲に含まれていればよく、ユーザは、それ程の注意を払うことなくおよその場所に予備ワーク210を製造ライン300上に載置すればよい。
【0036】
なお、予備ワーク210は、検査箇所211が良好と判定される状態の、基準品であることが望ましい。本実施例においては、製造ライン300上を順番に流されるそれぞれのワークに六角ネジが良好に締結されていることを検査する場合を想定する。この場合、検査箇所211は六角ネジのネジ頭であり、予備ワーク210においても六角ネジが正しく締結されている状態であることが望ましい。
【0037】
このように光学式センサ100と予備ワーク210が設置された状態で、ユーザは、操作ボタン150等を操作して光学式センサ100を調整モードに切り替える。光学式センサ100は、調整モードに切り替えられると、指示投光IU、IR、ID、ILと調整投光LTを順次かつ繰り返し実行する。調整投光LTは、検査対象物を検査する検出光L1の投光方向(検査方向)を確定するための、仮の検査方向へ向けて投光された調整対象光である。調整投光LTは、調整モード開始時においては、例えば偏向可能範囲Rの中心に向けられる。
【0038】
指示投光IU、IR、ID、ILは、ユーザから調整投光LTの投光方向を調整する指示を受け付けるために、それぞれ偏向可能範囲Rの四方へ向けて投光された指示検出光である。本実施例においては、図示するように、指示投光IUは偏向可能範囲Rの境界上辺の中点に、指示投光IRは偏向可能範囲Rの境界右辺の中点に、指示投光IDは偏向可能範囲Rの境界下辺の中点に、指示投光ILは偏向可能範囲Rの境界左辺の中点にそれぞれ向けて投光される。すなわち、本実施例においては、指示投光を投光する複数の特定方向として、偏向可能範囲Rの中心に対して、調整可能な範囲の端となる上下左右の4方向が設定されている。なお、複数の特定方向はこれに限らず、例えば偏向可能範囲Rの境界の四隅の方向を設定してもよいし、これに本実施例の4方向を加えた8方向を設定してもよい。
【0039】
投光調整部111は、投光素子120から発出された検出光L1を順次偏向して、指示投光IU→指示投光IR→指示投光ID→指示投光IL→調整投光LTを1サイクルとする投光を繰り返す。具体的には、それぞれの投光が例えば0.01秒継続するように、順次切り替える。検出光L1は可視光であるので、ユーザは、これらの投光が予備ワーク210上に形成するスポットSPU、SPR、SPD、SPL、SPTを視認することができる。なお、調整モードの開始時においては、スポットSPTがスポットSPU、SPR、SPD、SPLに囲まれた内部、特に囲まれた内部の中心に位置するように、調整投光LTの投光方向が調整されるとよい。このように調整されると、ユーザは、指示投光IU、IR、ID、ILと調整投光LTの役割を直感的に把握することができ、また、その後の調整によってスポットSPTが移動されても、調整投光LTの偏向量や偏向方向を容易に把握することができる。
【0040】
ここで、投光調整部111は、調整投光LTのスポットSPTと指示投光IU、IR、ID、ILのスポットSPU、SPR、SPD、SPLが区別されるように、調整投光LTと指示投光IU、IR、ID、ILの投光の態様を異ならせる。具体的には、制御部110と協働して投光素子120の投光を制御し、調整投光LTに対して発光強度を上げたり、点滅させたりすることができる。このように投光の態様を異ならせることにより、ユーザは、一つの投光素子120から投光される検出光L1でありながら、それぞれの投光の役割を容易に認識することができる。
【0041】
投光調整部111は、調整モードが開始されると、開始時に実行された指示投光IU、IR、ID、ILのそれぞれに対する距離を距離演算部112に演算させる。投光調整部111は、これらの演算結果を初期検出距離DU、DR、DD、DLとして記憶部180に記憶する。
【0042】
図4は、調整投光L
Tを右方向へ移動させる場合の調整方法を説明する図である。上述のように調整モードが開始されると、調整モードが終了するまで、投光調整部111は、指示投光I
U→指示投光I
R→指示投光I
D→指示投光I
L→調整投光L
Tの投光を繰り返す。距離演算部112は、指示投光I
U、I
R、I
D、I
Lに対する検出距離をそれぞれの投光に同期して算出する。この状態でユーザが例えば図示するように人差指を指示投光I
Rの光路中に突き出すと、スポットSP
Rはユーザの人差指上に形成され、指示投光I
Rは人差指に遮られ、それより後方(破線で示す)へは進行しない。距離演算部112は、指示投光I
Rについて、人差指までの距離D
R’を算出する。
【0043】
算出結果が投光調整部111へ引き渡されると、投光調整部111は、初期検出距離DRとの比較から、指示投光IRが遮られたと評価する。指示投光IRは偏向可能範囲Rの中心に対して右側へ向けて投光されたものなので、投光調整部111は、その評価結果から、調整投光LTをその時点における投光方向から右側へ、予め設定された偏向量だけ偏向させる。ユーザが人差指を指示投光IRの光路中にしばらくの間突き出しておくと、調整投光LTは、徐々に右側へ偏向され、やがて検査箇所211の上方まで到達する。ユーザは、タイミングを見計らって、人差指を指示投光IRの光路から退避させる。
【0044】
図5は、調整投光L
Tを下方向へ移動させる場合の調整方法を説明する図である。
図4に続いて、ユーザが例えば図示するように人差指を指示投光I
Dの光路中に突き出すと、スポットSP
Dはユーザの人差指上に形成され、距離演算部112は、指示投光I
Dについて、人差指までの距離D
D’を算出する。
【0045】
算出結果が投光調整部111へ引き渡されると、投光調整部111は、初期検出距離DDとの比較から、指示投光IDが遮られたと評価する。指示投光IDは偏向可能範囲Rの中心に対して下側へ向けて投光されたものなので、投光調整部111は、その評価結果から、調整投光LTをその時点における投光方向から下側へ、予め設定された偏向量だけ偏向させる。ユーザが人差指を指示投光IDの光路中にしばらくの間突き出しておくと、調整投光LTは、徐々に下側へ偏向され、やがて検査箇所211まで到達する。ユーザは、タイミングを見計らって、人差指を指示投光IDの光路から退避させる。
【0046】
図6は、調整投光L
Tの投光方向を検査方向に確定する確定方法を説明する図である。ユーザは、上述のように調整投光L
Tを検査箇所211まで到達させたら、その投光方向を検査方向として確定させる。具体的には、例えば図示するように操作ボタン150のうちの確定ボタンを押下して確定させる。その時点における調整投光L
Tの投光方向が検査方向として確定されると、投光調整部111は、その検査方向示す方向座標(x
T,y
T)を記憶部180に記憶する。投光調整部111は、調整投光L
Tの投光の態様とは異なる態様で確定された検査投光L
Cを一定時間行う。具体的には、制御部110と協働して投光素子120の投光を制御し、調整投光L
Tに対して発光強度を上げたり、点滅させたりすることができる。これにより、検査箇所211には視認性の高いスポットSP
Cが形成され、ユーザは検査が実行される箇所を確認することができる。このように検査方向が確定されると、ユーザは、光学式センサ100から比較的遠くの検出対象物を検出する場合であっても、検出光のスポットを確認しつつ取付器具を繰り返し緩めたり締め付けたりするといった煩雑な作業を省くことができる。
【0047】
図7は、検査対象物である検査ワーク290を検査する様子を示す図である。上述のように検査方向が確定すると、ユーザは、予備ワーク210を取り除き、対象となる検査ワーク290が順次流れるように製造ライン300を稼働する。投光調整部111は、検査開始の指示を受け付けると、記憶部180に記憶された方向座標(x
T,y
T)を読み出して検査投光L
Cの投光方向をその方向へ固定する。制御部110は、検査ワーク290が製造ライン300上の規定位置に到達するたびに検査投光L
Cを行って検出処理を実行させ、その検出結果を外部機器へ出力する。
【0048】
ここでは、単純に検査箇所221の検出距離を検出結果として出力する場合について説明する。図示するように、ある検査ワーク290aにおいて六角ネジは正しく締結されており、光学式センサ100は、検査箇所291aにおける検出距離として距離Daを外部機器へ出力する。外部機器は、距離Daが許容範囲に含まれることを確認して「合格」と判定する。一方、次の検査ワーク290bにおいて六角ネジは締結が不十分で浮いており、光学式センサ100は、検査箇所291bにおける検出距離として距離Dbを外部機器へ出力する。外部機器は、距離Dbが許容範囲に含まれないことを確認して「不合格」と判定する。このようにして、光学式センサ100を用いて検査ワーク290の良/不良を判定することができる。なお、合格/不合格の判定を光学式センサ100が行い、その結果を外部機器へ出力するようにしてもよい。
【0049】
次に、いくつかの変形例について説明する。
図8は、1つ目の変形例として、対象物である予備ワーク220の形状に応じて指示投光の投光方向が自動調整される様子を示す図である。
【0050】
図3から
図6を用いて説明した実施例においては、指示投光I
U、I
R、I
D、I
Lの投光方向は、偏向可能範囲Rの端(境界)に設定されていた。しかし、対象物の形状によっては指示投光が投光された箇所に反射面が存在せず、スポットを形成できない場合がある。そのような場合は、受光素子140は反射光である検出光L
2を検出できず、距離演算部112は距離不算出の結果を出力する。また、ユーザはいずれの方向へ指示投光が行われているのか視認することができず、そのような指示投光を遮ることも難しい。
【0051】
そこで、投光調整部111は、距離不算出の結果であった指示投光に対して、その投光方向を偏向可能範囲Rの内側へ徐々に移動させる調整を実行する。具体的には、例えば図示するように初期の指示投光IUに対して距離不算出の結果を得た場合には、投光調整部111は、指示投光IUを予め設定された偏向量だけ下方へ偏向させる。この場合、指示投光IUにとっての下方は、偏向可能範囲Rの中心方向である。偏向させた後も再び距離不算出の結果を得た場合には、更に指示投光IUを予め設定された偏向量だけ下方へ偏向させる。このような処理を繰り返し、予備ワーク210上にスポットSPUが形成され、距離検出に成功した時点で、指示投光IUの投光方向の調整を終了する。
【0052】
このようにスポットSPUが予備ワーク210上に形成されれば、距離演算部112は初期検出距離DUを算出することができ、ユーザは指示投光IUの光路を認識することができる。指示投光IR、ID、ILについても同様に、距離不算出の結果を得た場合には、その投光方向を偏向可能範囲Rの中心方向へ向かって徐々に偏向することにより自動調整を実行する。
【0053】
なお、偏向させる方向は偏向可能範囲Rの中心方向でなくてもよい。また、それぞれの指示投光が上下左右の相対関係を保って予備ワーク210上にスポットを形成するように、距離不算出の結果を得た指示投光以外の指示投光も併せて偏向させてもよい。このように自動調整を実行すれば、いずれの指示投光も予備ワーク210上にスポットを形成することができるので、ユーザは、それぞれの指示投光の光路を発見しやすく、方向指示を与えやすい。
【0054】
図9は、2つ目の変形例として、対象物である予備ワーク210の距離に応じて指示投光の投光方向が自動調整される様子を示す図である。
図1に示すように、偏向可能範囲Rは、光学式センサ100から遠ざかるにつれて大きくなる。したがって、製造ライン300が光学式センサ100から遠い場合には、対象物に対して偏向可能範囲Rが大きくなり、指示投光の投光方向を偏向可能範囲Rの端(境界)に設定すると、距離不算出となることが多くなる。また、距離が算出できる場合でもそれぞれが形成するスポットの間隔が拡がってしまい、ユーザはそれぞれの光路を遮る動作を行いにくくなってしまう。
【0055】
そこで、投光調整部111は、指示投光IU、IR、ID、ILの少なくともいずれか又は調整投光LTで検出された予備ワーク210までの距離に基づいてそれぞれの投光方向を調整する。例えば、図示するように調整投光LTが形成するスポットSPTにより距離DPが検出された場合、距離DPに対して予め規定されている大きさに合わせて指示投光枠Sを決定し、指示投光IU、IR、ID、ILのそれぞれの投光方向をこの指示投光枠Sの上下左右の方向に合わせるように調整する。
【0056】
このように予備ワーク210の距離に応じて指示投光枠Sを偏向可能範囲Rの内側に設定して指示投光の投光方向を調整すれば、予備ワーク210上にそれぞれのスポットが互いに適度な間隔で形成されることが期待できる。ユーザは、それぞれの光路を遮る動作を行いやすくなる。なお、このように指示投光の投光方向を調整しても距離不算出の結果を得る指示投光が存在する場合には、その指示投光に対して
図8の例を適用し、更に投光方向の調整を行ってもよい。
【0057】
図10は、3つ目の変形例として、指示投光I
U、I
R、I
D、I
Lに加えて境界投光P
a、P
b、P
c、P
dを行う様子を示す図である。
図9の例のように予備ワーク210の距離に応じて指示投光枠Sを偏向可能範囲Rの内側に設定すると、ユーザは、調整投光L
Tをどの範囲で移動できるか認識しづらくなる。そこで、投光調整部111は、調整投光L
Tの移動指示を受け付けるための指示投光I
U、I
R、I
D、I
Lとは別に、調整可能範囲を示すための指示投光境界投光P
a、P
b、P
c、P
dをさらに実行する。
【0058】
図示するように、予備ワーク230が比較的大きければ、偏向可能範囲Rの四隅に対して投光される境界投光Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ予備ワーク230の表面にスポットSPa、SPb、SPc、SPdを形成することができる。ユーザは、このように形成されたスポットSPa、SPb、SPc、SPdを視認することにより、調整投光LTをどの範囲で移動できるかを認識することができる。
【0059】
投光調整部111は、投光素子120から発出された検出光L1を順次偏向して、例えば、指示投光IU→指示投光IR→指示投光ID→指示投光IL→調整投光LT→境界投光Pa→境界投光Pb→境界投光Pc→境界投光Pdを1サイクルとする投光を繰り返す。あるいは、境界投光の頻度を指示投光の頻度の半分にするなど、境界投光の頻度を下げてもよい。また、指示投光に対して、境界投光の発光強度を下げたり点灯時間を短くしたりしてもよい。
【0060】
このように境界投光を行うと、ユーザは、特に指示投光枠Sを超えて調整投光LTを移動させる場合に調整を行いやすい。例えば図示するように、指示投光枠Sの外側に存在する検査箇所231まで調整投光LTを移動させる場合に都合が良い。
【0061】
図11は、4つ目の変形例として、調整投光L
Tを移動させる他の指示手法を説明する図である。これまで説明した各実施例においては、ユーザは、指示投光のいずれかを遮ることにより指示方向を認識させたが、4つ目の変形例では、それぞれの指示投光を連続的に遮り、その遮った順番により方向指示を認識させる。
図11(A)から
図11(C)は、時間の経過に伴って順番にいずれかの指示投光が遮られる様子を示す図である。
【0062】
具体的には、ユーザが手のひらを上から下へ振る様子を示し、
図11(A)はその初期の段階において指示投光I
Uを遮っている様子を示す。その後
図11(B)に示すように、手のひらは指示投光I
Uに加えて指示投光I
R、I
Lも遮り、やがて
図11(C)に示すように、手のひらは指示投光I
Dを遮る。なお、
図11(C)ではI
Rも同時に遮られている様子を示す。投光調整部111は、距離演算部112からそのような経時に沿って順次遮られたと評価し得る算出結果を受け取ると、手のひらが上から下へ振られたと認識し、調整投光L
Tをその時点における投光方向から下側へ、予め設定された偏向量だけ偏向させる。同様に、手のひらが下から上へ振られたと認識した場合には調整投光L
Tを上側へ、右から左へ振られたと認識した場合には調整投光L
Tを左側へ、左から右へ振られたと認識した場合には調整投光L
Tを右側へ予め設定された偏向量だけ偏向させる。
【0063】
なお、例えば連続して手のひらを上から下へ振ろうとすると、併せて連続して下から上へ振ることになるので、誤認識を回避するために、投光調整部111は、指示方向の認識を一度行ったら、予め設定された設定時間(例えば1秒)の間、指示方向の認識を停止する。ユーザは、一度手のひらを振って指示方向を認識させたら、指示方向の認識が停止されている間に手のひらを初期位置へ戻す。
【0064】
図12は、5つ目の変形例として、調整投光L
Tの投光方向を検査方向に確定する他の確定方法を説明する図である。本変形例は、4つ目の変形例と相性が良いが、これに限らず、これまでの実施例のいずれにも組み合わせることができる。
【0065】
上述の
図6の例では、調整投光L
Tを検査箇所211まで到達させたら、ユーザは、その投光方向を検査方向として確定させるために操作ボタン150を操作した。本変形例においては、ユーザは、調整投光L
Tを検査箇所211まで到達させた後に、図示するように、指示投光I
U、I
R、I
D、I
Lのすべてを同時に遮ることにより、その投光方向を検査方向として確定させる。
【0066】
投光調整部111は、指示投光IU、IR、ID、ILのすべてが遮られたと評価される算出結果を距離演算部112から受け取った場合に、その時点における調整投光LTの投光方向を検査方向に確定する。すなわち、その検査方向示す方向座標(xT,yT)を記憶部180に記憶する。このように方向指示に連続して確定指示を受け付けるようにすれば、ユーザは、確定指示をするために光学式センサ100の操作ボタン150を操作する必要がないので、作業性の向上が期待できる。
【0067】
なお、確定指示を検出する手法は、指示投光IU、IR、ID、ILのすべてが同時に遮られたことを検出する手法に限らず、他にも様々な手法を採用し得る。例えば、指示投光IU、IR、ID、ILのうち予め設定された組み合わせの指示投光がいずれも遮られたと検出された場合に、その時点における調整投光LTの投光方向を検査方向に確定してもよい。例えば指示投光IUとIDの組み合わせにおいては、同時に遮られることが偶発的に発生することは稀と考えられるので、このような組み合わせの指示投光が同時に遮られた場合には確定指示と認識してもよい。また、指示投光とは別に、確定指示を受け付けるための確定投光を行うようにしてもよい。確定投光が遮られた場合には、その時点における調整投光LTの投光方向を検査方向に確定する。確定投光は、指示投光の投光方向とは離れた方向へ行うとよい。
【0068】
図13は、6つ目の変形例として、調整投光L
Tの投光を行うことなく直接的に検査方向を確定する調整手法を説明する図である。これまでに説明した実施例はいずれも、調整投光L
Tの移動指示を受け付けるために指示投光I
U、I
R、I
D、I
Lを4方向(あるいはそれ以上)へ向けて投光し、いずれかが遮られたことを検出してその方向へ段階的に偏向させた。本変形例においては、指示投光I
Mの投光方向を偏向可能範囲Rに規定された格子点のそれぞれに対して設定する。そして、投光調整部111は、それらのうち最も至近で遮られたと評価される検出結果が得られた指示投光I
Mの投光方向を指示方向と認識し、その指示方向を直ちに検査方向として確定する。
【0069】
具体的には
図13(A)に示すように、投光調整部111は、光軸調整素子130を駆動して、偏向可能範囲Rに設定された格子点の左上から右下まで一筆書きの要領で、検出光L
1を順次偏向して投光する。格子点に対するそれぞれの投光を指示投光I
Mとする。ユーザは、例えば検査箇所211である六角ネジのネジ頭を検査方向にしたい場合には、当該ネジ頭を照射する指示投光I
Mの一つを他の指示投光I
Mと比べて最も光学式センサ100に近い場所で遮るように、人差指を突き出す。すると、投光調整部111は、その指示投光I
Mを指示方向と認識し、検査対象物を検査する検査方向として確定する。
【0070】
図13(B)は、指示投光I
Mの投光の態様とは異なる態様で、確定された検査投光L
Cを一定時間行う様子を示す。具体的には、制御部110と協働して投光素子120の投光を制御し、調整投光L
Tに対して発光強度を上げたり、点滅させたりすることができる。このような調整手法によれば、複数回の指示工程を経て調整投光L
Tの投光方向を追い込む作業を省くことができるので、より直接的に、かつ短時間に検査方向を確定することができる。
【0071】
なお、図の例では指示投光IMの投光方向を偏向可能範囲Rに規定された格子点のそれぞれに対して設定したが、指示投光IMの投光方向の設定はこれに限らない。指示投光IMの投光方向は、偏向可能範囲Rの少なくとも一部の範囲を覆うように規定された複数の離散点のそれぞれに対して設定されればよい。
【0072】
次に、
図3から
図7を用いて説明した実施例を代表例として、制御部110の処理手順について説明する。
図14は、制御部110の処理手順を説明するフロー図である。フローは、光学式センサ100が製造ライン300に付随する構造物に固定され、予備ワーク210が製造ライン300上に載置された状態で、調整モードが選択された時点から開始する。
【0073】
投光調整部111は、ステップS101で、偏向可能範囲Rの境界上辺へ向けた指示投光IU→境界右辺へ向けた指示投光IR→境界下辺へ向けた指示投光ID→境界左辺へ向けた指示投光ILを順次投光し、それぞれに対する距離を距離演算部112に演算させる。投光調整部111は、これらの演算結果を初期検出距離DU、DR、DD、DLとして記憶部180に記憶する。
【0074】
続いてステップS102へ進み、投光調整部111は、指示投光IU→指示投光IR→指示投光ID→指示投光ILを順に実行する。そして、ステップS103で、いずれかの指示投光が遮られたか否かを判断する。具体的には、それぞれの投光に対して算出された検出距離DU’、DR’、DD’、DL’が、初期検出距離DU、DR、DD、DLより閾値を超えて短くなったか否かによって、遮られたか否かを判断する。
【0075】
いずれも遮られていないと判断したら、ステップS104へ進み、投光調整部111は、調整投光LTを前回と同じ方向へ投光し、ステップS106へ進む。いずれかが遮られたと判断したら、投光調整部111は、調整投光LTを当該遮られた指示投光が示す方向へ向きを更新して投光し、ステップS106へ進む。
【0076】
投光調整部111は、ステップS106へ進むと、操作ボタン150を介して確定指示を受け付けたか否かを確認する。確定指示を受け付けていなければ、ステップS102へ戻って調整モードを続行する。確定指示を受け付けていれば、その時点における調整投光LTの投光方向を検査方向として確定させ、その検査方向示す方向座標(xT,yT)を記憶部180に記憶し、調整モードを終了してステップS107へ進む。
【0077】
制御部110は、ステップS107で検査開始の指示を受け付けると、記憶部180に記憶された方向座標(xT,yT)を読み出して検査投光LCの投光方向をその方向へ固定する。そして、ステップS108へ進み、検査ワーク290が製造ライン300上の規定位置に到達するたびに検査投光LCを行って検出処理を実行させ、その検出結果を外部機器へ出力する。製造ライン300上を流れる予定数のワークの検査が終了したら、一連の処理を終える。
【0078】
以上説明した光学式センサ100は、検出光の往復時間を計測することにより距離情報を検出するToFセンサに限らず、検出対象物の距離に応じて変化する反射光の到達位置を計測することにより距離情報を検出する三角測距センサを用いてもよい。三角測距センサで光軸調整素子を採用する場合には、例えば、検出光L1の投光方向と検出光L2の受光位置に対して測定距離を対応付けるルックアップテーブルを予め準備しておけば、検出結果としての距離情報を生成できる。また、以上説明した実施形態においては、検査対象物の良否を判定するための距離情報の検出について説明したが、出力された距離情報の利用態様は良否判定に限らない。例えば、特徴的な部分形状を検査対象として距離を検出することにより、検査対象物の品種を判定する利用態様等も想定し得る。
【0079】
[付記]
可視光である検出光(L1)を投光する投光素子(120)と、
前記投光素子(120)から投光された前記検出光(L1)の光軸を調整する光軸調整素子(130)と、
対象物で反射した前記検出光(L2)を受光して検出信号を出力する受光素子(140)と、
前記光軸調整素子(130)を駆動することにより前記検出光(L1)を予め設定された複数の特定方向へ順次投光して得た前記検出信号に基づく検出結果のうち、前記検出光(L1)が遮られたと評価される検出結果が得られた特定方向を指示方向と認識し、検査対象物(290)の検査のために投光する前記検出光(L1)の投光方向を認識した前記指示方向に基づいて調整する投光調整部(111)と
を備える光学式センサ(100)。
【符号の説明】
【0080】
100…光学式センサ、101…筐体、102…透過窓、103…ケーブル、110…制御部、111…投光調整部、112…距離演算部、120…投光素子、130…光軸調整素子、140…受光素子、150…操作ボタン、160…表示パネル、170…入出力IF、180…記憶部、210、220、230…予備ワーク、211、231…検査箇所、290、290a、290b…検査ワーク、291a、291b…検査箇所、300…製造ライン