(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】端子ユニットおよび端子ユニットにおいて用いられる雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/18 20060101AFI20241211BHJP
H01R 13/04 20060101ALI20241211BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01R13/18 B
H01R13/04 E
H01R4/48 B
(21)【出願番号】P 2021201087
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 有哉
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-100685(JP,A)
【文献】国際公開第2021/145197(WO,A1)
【文献】特開2019-061743(JP,A)
【文献】国際公開第2022/124235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04
H01R 13/15
H01R 13/18
H01R 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす雄端子と、
前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、
前記雌端子は、前記雄端子が圧入されて配置される雄端子圧入隙間を隔てて対向配置される第1接触部および第2接触部と、前記第1接触部と前記第2接触部を互いに接近する方向に付勢するばね部材を有し、
前記雄端子は、前記雄端子圧入隙間への圧入方向に交差する板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、
前記雌端子の前記第1接触部は、前記雄端子の前記板厚方向の前記一方側の面に対向し、前記雄端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部を有し、各前記第1傾斜側縁部には、前記雄端子圧入隙間に向かって突出する第1接点部が設けられており、
前記雌端子の前記第2接触部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向し、前記雄端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部を有し、各前記第2傾斜側縁部には、前記雄端子圧入隙間に向かって突出する第2接点部が設けられており、
前記ばね部材は、前記板幅方向の一方側に配置されて前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第1ばね部材と、前記板幅方向の他方側に配置されて前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第2ばね部材と、を有し、
前記第1ばね部材が、前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記雄端子の前記傾斜部に押圧し、
前記第2ばね部材が、前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記雄端子の前記傾斜部に押圧する、
端子ユニット。
【請求項2】
前記雄端子が、前記板幅方向において前記一対の傾斜部の間に配置された中央平坦部を有し、
前記雌端子の前記第1接触部は、前記板幅方向において前記一対の前記第1傾斜側縁部の間に配置されて、前記雄端子の前記中央平坦部に対向して沿って広がる第1平坦部を有し、
前記雌端子の前記第2接触部は、前記板幅方向において前記一対の前記第2傾斜側縁部の間に配置されて、前記雄端子の前記中央平坦部に対向して沿って広がる第2平坦部を有している、請求項1に記載の端子ユニット。
【請求項3】
前記雌端子の前記第1接触部が当接部を有し、前記雌端子の前記第2接触部が前記当接部に当接する被当接部を有し、前記当接部と前記被当接部の当接により、前記第1接触部と前記第2接触部の前記互いに接近する方向への変位が阻止されている、請求項1または請求項2に記載の端子ユニット。
【請求項4】
前記第1接触部は、一対の前記第1傾斜側縁部にそれぞれ設けられた一対の前記当接部を有し、前記第2接触部は、一対の前記第2傾斜側縁部にそれぞれ設けられた一対の前記被当接部を有し、各前記当接部と各前記被当接部の当接により、各前記第1傾斜側縁部と各前記第2傾斜側縁部の前記互いに接近する方向への変位が阻止されている、請求項3に記載の端子ユニット。
【請求項5】
前記第1ばね部材と前記第2ばね部材が、前記第1傾斜側縁部の外面に重ね合わされる第1板部と、前記第2傾斜側縁部の外面に重ね合わされる第2板部と、前記第1板部と前記第2板部を連結する連結板部と、を有する板ばねクリップにより構成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の端子ユニット。
【請求項6】
前記雌端子の前記第1接触部と前記第2接触部は、それぞれ矩形板形状を有し、前記雌端子の基端部に長手方向の一端側が連結されて前記基端部から片持ち梁状に突出しており、
前記第1接触部と前記第2接触部の板幅方向の一方に、前記雄端子の前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、
前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の他方に、前記雄端子の前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、
前記第1接触部と前記第2接触部の対向面間に設けられた前記雄端子圧入隙間が、前記第1接触部と前記第2接触部の突出先端側に開口している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子ユニット。
【請求項7】
前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記第1板部および前記第2板部の少なくとも一方の先端部には、前記雄端子圧入隙間側に突出する係止爪が設けられ、
前記第1接触部と前記第2接触部の少なくとも一方において、前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の前記一方と前記他方にそれぞれ被係合部が設けられており、前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記係止爪が前記被係合部に係合されている、請求項5に係属する場合の請求項6に記載の端子ユニット。
【請求項8】
前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記連結板部には、貫通孔が板厚方向に貫通して設けられており、
前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の前記一方に、前記当接部と前記被当接部が前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の外方に突出して設けられて、前記第1ばね部材の前記貫通孔を挿通して配置されており、
前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の他方に、前記当接部と前記被当接部が前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の外方に突出して設けられて、前記第2ばね部材の前記貫通孔を挿通して配置されている、請求項4および請求項5に係属する場合の請求項6または請求項7に記載の端子ユニット。
【請求項9】
前記雌端子の前記第1接触部と前記第2接触部は、それぞれ矩形板形状を有し、前記雌端子の基端部に長手方向の一端側が連結されて前記基端部から片持ち梁状に突出しており、
前記第1接触部と前記第2接触部の突出先端部に、前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、
前記第1接触部と前記第2接触部の前記突出先端部よりも前記基端部側に、前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、
前記第1接触部と前記第2接触部の対向面間に設けられた前記雄端子圧入隙間が、前記第1接触部と前記第2接触部の板幅方向の一方の側面に開口している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子ユニット。
【請求項10】
前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記第1板部および前記第2板部の少なくとも一方の先端部には、前記雄端子圧入隙間側に突出する係止爪が設けられ、
前記係止爪が前記第1接触部または前記第2接触部の前記一方の側面に係合している、請求項5に係属する場合の請求項9に記載の端子ユニット。
【請求項11】
前記第1接触部と前記第2接触部の少なくとも一方の前記板幅方向の前記一方の側面には、前記長手方向において前記係止爪が係合する係合部位の両側にストッパ突部が外方に突出して設けられている、請求項10に記載の端子ユニット。
【請求項12】
前記第1傾斜側縁部に設けられた前記第1接点部が、前記雄端子の挿入方向で相互に離隔した複数箇所に設けられており、
前記第2傾斜側縁部に設けられた前記第2接点部が、前記雄端子の挿入方向で相互に離隔した複数箇所に設けられている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の端子ユニット。
【請求項13】
前記第1ばね部材と前記第2ばね部材が、前記第1傾斜側縁部への付勢力を集中的に及ぼす第1凸部と、前記第2傾斜側縁部への付勢力を集中的に及ぼす第2凸部を有しており、
前記第2凸部が、前記雄端子の挿入方向で円弧断面形状で連続して延びており、前記第1凸部が、前記第2凸部の延出方向の中間部分に向かって半球状に突出する形状を有している、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の端子ユニット。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の端子ユニットにおいて用いられる雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タブ状などと表現される板状をなす雄端子と、雄端子に接続される雌端子からなる端子ユニットが開示されている。雌端子は、雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された一対の壁部を有し、一方の壁部には雄端子を他方の壁部に押圧する弾性接触片が設けられ、他方の壁部には複数の接点が突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の端子ユニットでは、平板状の雄端子を雌端子の一対の壁部の間で挟み込む構造であるため、雄端子の板幅方向の外力に対する把持力が小さい。そのため、振動等により雌雄端子間に微摺動摩擦が生じて接触抵抗値が増大することも考えられる。それゆえ、端子ユニットの更なる改良が求められていた。
【0005】
そこで、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制して、雌雄端子間の微摺動摩擦による接触抵抗値の増大を抑制できる、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子ユニットは、板状をなす雄端子と、前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、前記雌端子は、前記雄端子が圧入されて配置される雄端子圧入隙間を隔てて対向配置される第1接触部および第2接触部と、前記第1接触部と前記第2接触部を互いに接近する方向に付勢するばね部材を有し、前記雄端子は、前記雄端子圧入隙間への圧入方向に交差する板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、前記雌端子の前記第1接触部は、前記雄端子の前記板厚方向の前記一方側の面に対向し、前記雄端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部を有し、各前記第1傾斜側縁部には、前記雄端子圧入隙間に向かって突出する第1接点部が設けられており、前記雌端子の前記第2接触部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向し、前記雄端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部を有し、各前記第2傾斜側縁部には、前記雄端子圧入隙間に向かって突出する第2接点部が設けられており、前記ばね部材は、前記板幅方向の一方側に配置されて前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第1ばね部材と、前記板幅方向の他方側に配置されて前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第2ばね部材と、を有し、前記第1ばね部材が、前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記雄端子の前記傾斜部に押圧し、前記第2ばね部材が、前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記雄端子の前記傾斜部に押圧する、端子ユニットである。
【0007】
本開示の雌端子は、本開示の端子ユニットにおいて用いられる雌端子である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制して、雌雄端子間の微摺動摩擦による接触抵抗値の増大を抑制できる、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る端子ユニットを雄端子と雌端子との嵌合状態で示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された端子ユニットにおける平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された端子ユニットを構成する雌端子においてばね部材を組み付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された雌端子における横断面図であって、
図4に相当する図である。
【
図7】
図7は、
図1に示された端子ユニットを構成する雌端子の斜視図であって、
図5に示された雌端子においてばね部材を組み付けた状態を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に示された雌端子における横断面図であって、
図3に相当する図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る端子ユニットを雄端子と雌端子との嵌合状態で示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9に示された端子ユニットを構成する雌端子においてばね部材を組み付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、
図9に示された端子ユニットを構成する雌端子の縦断面図であって、
図9におけるXI-XI断面に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子ユニットは、
(1)板状をなす雄端子と、前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、前記雌端子は、前記雄端子が圧入されて配置される雄端子圧入隙間を隔てて対向配置される第1接触部および第2接触部と、前記第1接触部と前記第2接触部を互いに接近する方向に付勢するばね部材を有し、前記雄端子は、前記雄端子圧入隙間への圧入方向に交差する板幅方向の両側に、前記雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、前記雌端子の前記第1接触部は、前記雄端子の前記板厚方向の前記一方側の面に対向し、前記雄端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部を有し、各前記第1傾斜側縁部には、前記雄端子圧入隙間に向かって突出する第1接点部が設けられており、前記雌端子の前記第2接触部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向し、前記雄端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部を有し、各前記第2傾斜側縁部には、前記雄端子圧入隙間に向かって突出する第2接点部が設けられており、前記ばね部材は、前記板幅方向の一方側に配置されて前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第1ばね部材と、前記板幅方向の他方側に配置されて前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第2ばね部材と、を有し、前記第1ばね部材が、前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記雄端子の前記傾斜部に押圧し、前記第2ばね部材が、前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記雄端子の前記傾斜部に押圧する、端子ユニットである。
【0012】
本開示の端子ユニットによれば、雌端子は、雄端子圧入隙間を隔てて対向配置された第1接触部と第2接触部を有し、第1接触部と第2接触部の間で雄端子圧入隙間に圧入された雄端子を挟持する構造を有している。そこにおいて、雄端子は、雄端子圧入隙間への圧入方向と交差する方向である雄端子の板幅方向の両側に、雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有している。同様に、雌端子の第1接触部は、雄端子の板厚方向の一方側の面に対向し、雄端子の一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部(第1接点部)を有し、雌端子の第2接触部は、雄端子の板厚方向の他方側の面に対向し、雄端子の一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部(第2接点部)を有している。さらに、雄端子の板幅方向の一方側に位置する雌端子の第1傾斜側縁部の第1接点部と第2傾斜側縁部の第2接点部は、第1ばね部材により、それらの間に圧入される雄端子の傾斜部に押圧され、雄端子の板幅方向の他方側に位置する雌端子の第1傾斜側縁部の第1接点部と第2傾斜側縁部の第2接点部は、第2ばね部材により、それらの間に圧入される雄端子の傾斜部に押圧されている。これにより、雄端子の板幅方向に外力が及ぼされた場合には、雄端子の板幅方向の両側において雄端子の傾斜部が、同様に傾斜した雌端子の(第1傾斜側縁部の第1接点部や)第2傾斜側縁部の第2接点部に押圧されて、板幅方向の内方に向かう分力(第1接点部や第2接点部からの反力)が発生する。その結果、従来構造に比べて、雄端子の板幅方向の外方に向かう外力に対して雄端子の変位を阻止する力を大きくすることができ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位を抑制することができる。
【0013】
加えて、雄端子の板幅方向の両側において雄端子の傾斜部を、同様に傾斜した雌端子の第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部の間に挟み込んで、各別のばね部材(第1ばね部材と第2ばね部材)により雄端子の傾斜部の板厚方向の両側から接圧を付与することができる。その結果、雌端子の第1接点部と第2接点部を雄端子の各傾斜部に押圧した状態を、安定した接圧で維持することができ、雄端子の板幅方向の外力に対する変位抑制性能の一層の向上や、雌雄端子間の微摺動摩擦の抑制を一層有利に実現することができる。さらに、雌端子の第1接点部と第2接点部が設けられた第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部が、雄端子の傾斜部に沿って傾斜していることから、雌端子の第1接点部と第2接点部の雄端子への接触面積を大きく確保することが可能となり、雌雄端子間の導通抵抗の低減を図ることも可能となる。
【0014】
ここで、一対の第1傾斜側縁部や一対の第2傾斜側縁部について、「雄端子の一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する」とは、雄端子の傾斜部に沿うように第1傾斜側縁部や第2傾斜側縁部が傾斜していればよく、必ずしも、雄端子の傾斜部と第1/第2傾斜側縁部が平行でなくてもよい。例えば、雄端子の傾斜部の傾斜角度に対して第1/第2傾斜側縁部の傾斜角度が、0~10度程度の範囲内での相違があってもよい。
【0015】
また、雄端子に対する雌端子の接点部(第1接点部と第2接点部)を一対の傾斜側縁部に分散配置して、各別のばね部材により雄端子に押圧するようにしたことから、各ばね部材を小型化しつつ、必要な押圧力を分散配置した雌雄間接点部に安定して及ぼすことができる。特に、第1/第2ばね部材が、雄端子と雌端子の第1/第2接点部の間に介在されないことから、雌雄端子間の接触抵抗を一層有利に低減することができる。
【0016】
なお、雌端子の第1接触部と第2接触部は、雄端子圧入隙間への雄端子の圧入を許容して、第1接触部と第2接触部の間に雄端子を挟持し得るものであれば、いずれの構造も採用可能である。例えば、第1接触部と第2接触部の少なくとも一方が、雄端子圧入隙間を隔てた対向方向と反対方向に変位可能であり、第1接触部と第2接触部が雄端子圧入隙間を隔てて対向方向にばね部材により付勢されていれば、任意の構造が採用可能である。
【0017】
(2)前記雄端子が、前記板幅方向において前記一対の傾斜部の間に配置された中央平坦部を有し、前記雌端子の前記第1接触部は、前記板幅方向において前記一対の前記第1傾斜側縁部の間に配置されて、前記雄端子の前記中央平坦部に対向して沿って広がる第1平坦部を有し、前記雌端子の前記第2接触部は、前記板幅方向において前記一対の前記第2傾斜側縁部の間に配置されて、前記雄端子の前記中央平坦部に対向して沿って広がる第2平坦部を有している、ことが好ましい。
【0018】
雄端子が中央平坦部とその両側で板厚方向で同じ側に傾斜する一対の傾斜部を有し、雌端子の第1接触部と第2接触部が、雄端子の板厚方向両側に配置されて、雄端子と相似する形状を有している。すなわち、第1接触部は、雄端子の中央平坦部に沿って広がる第1平坦部と、第1平坦部の両側に配置されて雄端子の一対の傾斜部に沿って傾斜する第1傾斜側縁部を有しており、第2接触部は、雄端子の中央平坦部に沿って広がる第2平坦部と、第2平坦部の両側に配置されて雄端子の一対の傾斜部に沿って傾斜する第2傾斜側縁部を有している。このように、雄端子と雌端子の第1/第2接触部が相互に相似形状を有して対向配置されていることから、端子ユニット自体に無駄な隙間が発生せず、端子ユニットの小型化を図ることができる。
【0019】
(3)前記雌端子の前記第1接触部が当接部を有し、前記雌端子の前記第2接触部が前記当接部に当接する被当接部を有し、前記当接部と前記被当接部の当接により、前記第1接触部と前記第2接触部の前記互いに接近する方向への変位が阻止されている、ことが好ましい。雌端子の第1接触部と第2接触部にそれぞれ設けられた当接部と被当接部が相互に当接することにより、ばね部材による第1接触部と第2接触部の過度の接近方向への変位が阻止されている。その結果、第1接触部と第2接触部の対向面間に設けられた雄端子圧入隙間が確実に確保されて、雄端子の雄端子圧入隙間への挿入時の挿入抵抗の低減を図ることができる。
【0020】
(4)前記第1接触部は、一対の前記第1傾斜側縁部にそれぞれ設けられた一対の前記当接部を有し、前記第2接触部は、一対の前記第2傾斜側縁部にそれぞれ設けられた一対の前記被当接部を有し、各前記当接部と各前記被当接部の当接により、各前記第1傾斜側縁部と各前記第2傾斜側縁部の前記互いに接近する方向への変位が阻止されている、ことが好ましい。各第1傾斜側縁部に設けられた当接部と、各第2傾斜側縁部に設けられた被当接部が直接当接して、第1ばね部材と第2ばね部材による第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部の互いに接近する方向への変位を阻止できる。そのため、雄端子の挿入抵抗が最も高くなる第1接点部と第2接点部を有する第1/第2傾斜側縁部間の雄端子圧入隙間が確実に確保されて、雄端子の挿入力の低減を有利に図ることができる。
【0021】
(5)前記第1ばね部材と前記第2ばね部材が、前記第1傾斜側縁部の外面に重ね合わされる第1板部と、前記第2傾斜側縁部の外面に重ね合わされる第2板部と、前記第1板部と前記第2板部を連結する連結板部と、を有する板ばねクリップにより構成されている、ことが好ましい。第1ばね部材と第2ばね部材を板ばねクリップで構成することで、端子ユニット自体の構造を簡素化できる。しかも、板ばねクリップの各板部を雌端子の各傾斜側縁部の外面に重ね合わせて配置することができ、端子ユニットの小型化を有利に図ることができる。
【0022】
(6)前記雌端子の前記第1接触部と前記第2接触部は、それぞれ矩形板形状を有し、前記雌端子の基端部に長手方向の一端側が連結されて前記基端部から片持ち梁状に突出しており、前記第1接触部と前記第2接触部の板幅方向の一方に、前記雄端子の前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の他方に、前記雄端子の前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、前記第1接触部と前記第2接触部の対向面間に設けられた前記雄端子圧入隙間が、前記第1接触部と前記第2接触部の突出先端側に開口している、ことが好ましい。矩形板形状の第1接触部と第2接触部の板幅方向の一方と他方にそれぞれ第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部を設けて対向配置させるだけで、雄端子圧入隙間が前方に開口する雌端子を効率よく製造できるからである。
【0023】
(7)前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記第1板部および前記第2板部の少なくとも一方の先端部には、前記雄端子圧入隙間側に突出する係止爪が設けられ、前記第1接触部と前記第2接触部の少なくとも一方において、前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の前記一方と前記他方にそれぞれ被係合部が設けられており、前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記係止爪が前記被係合部に係合されている、ことが好ましい。第1接触部と第2接触部の前方に開口する雄端子圧入隙間への雄端子の挿通を許容しつつ、第1ばね部材と第2ばね部材を第1接触部および第2接触部に対して雄端子の板幅方向に離脱不能に組み付けることができるからである。これにより、雌端子の前方からの雄端子の接続が可能で、雌雄端子の挿抜が繰り返されても安定した接圧を確保できる端子ユニットを、大型化を招くことなく安定して実現することができる。
【0024】
(8)前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記連結板部には、貫通孔が板厚方向に貫通して設けられており、前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の前記一方に、前記当接部と前記被当接部が前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の外方に突出して設けられて、前記第1ばね部材の前記貫通孔を挿通して配置されており、前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の他方に、前記当接部と前記被当接部が前記第1接触部と前記第2接触部の前記板幅方向の外方に突出して設けられて、前記第2ばね部材の前記貫通孔を挿通して配置されている、ことが好ましい。第1接触部と第2接触部の板幅方向の一方と他方に外方に突出して設けられた当接部と被当接部が、第1ばね部材と第2ばね部材のそれぞれの連結板部に設けられた貫通孔に挿通されて配置されていることから、貫通孔に対する当接部と被当接部の当接により、第1ばね部材と第2ばね部材の長手方向両側への第1/第2接触部に対する位置ずれや抜け出しが阻止される。これにより、雌端子の前方からの雄端子の接続が可能で、雌雄端子の挿抜が繰り返されても安定した接圧を確保できる端子ユニットを、大型化を招くことなく安定して実現することができる。
【0025】
(9)前記雌端子の前記第1接触部と前記第2接触部は、それぞれ矩形板形状を有し、前記雌端子の基端部に長手方向の一端側が連結されて前記基端部から片持ち梁状に突出しており、前記第1接触部と前記第2接触部の突出先端部に、前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、前記第1接触部と前記第2接触部の前記突出先端部よりも前記基端部側に、前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部が設けられ、前記第1接触部と前記第2接触部の対向面間に設けられた前記雄端子圧入隙間が、前記第1接触部と前記第2接触部の板幅方向の一方の側面に開口している、ことが好ましい。矩形板形状の第1接触部と第2接触部の突出先端部と突出先端部よりも基端側にそれぞれ第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部を設けて対向配置させるだけで、雄端子圧入隙間が側方に開口する雌端子を効率よく製造できるからである。
【0026】
(10)前記第1ばね部材と前記第2ばね部材のそれぞれの前記第1板部および前記第2板部の少なくとも一方の先端部には、前記雄端子圧入隙間側に突出する係止爪が設けられ、前記係止爪が前記第1接触部または前記第2接触部の前記一方の側面に係合している、ことが好ましい。第1接触部と第2接触部の一方の側面に開口する雄端子圧入隙間への雄端子の挿入を許容しつつ、第1ばね部材と第2ばね部材を第1接触部および第2接触部に対して板幅方向に離脱不能に組み付けることができるからである。これにより、雌端子の側方からの雄端子の接続が可能で、雌雄端子の挿抜が繰り返されても安定した接圧を確保できる端子ユニットを、大型化を招くことなく安定して実現することができる。
【0027】
(11)前記第1接触部と前記第2接触部の少なくとも一方の前記板幅方向の前記一方の側面には、前記長手方向において前記係止爪が係合する係合部位の両側にストッパ突部が外方に突出して設けられている、ことが好ましい。第1接触部と第2接触部の少なくとも一方において、第1および/または第2係止爪を間に挟んだ長手方向両側に設けられて外方に突出するストッパ突部により、第1ばね部材と第2ばね部材の長手方向の両側への位置ずれや抜け出しが、係止爪のストッパ突部への当接により阻止されるからである。これにより、雌端子の側方からの雄端子の接続が可能で、雌雄端子の挿抜が繰り返されても安定した接圧を確保できる端子ユニットを、大型化を招くことなく安定して実現することができる。
【0028】
(12)前記第1傾斜側縁部に設けられた前記第1接点部が、前記雄端子の挿入方向で相互に離隔した複数箇所に設けられており、前記第2傾斜側縁部に設けられた前記第2接点部が、前記雄端子の挿入方向で相互に離隔した複数箇所に設けられている、ことが好ましい。雄端子の傾斜部を挟んで雄端子に向かって相互に圧接される第1接点部と第2接点部が、雄端子の挿入方向で相互に離隔した複数箇所に分散して設けられている。これにより、雄端子の傾斜部を広く分散した押圧点で保持することができ、雄端子の傾斜部を第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部間で安定して挟持することが可能となり、雄端子の回転変位を有利に抑制または防止することができる。
【0029】
(13)前記第1ばね部材と前記第2ばね部材が、前記第1傾斜側縁部への付勢力を集中的に及ぼす第1凸部と、前記第2傾斜側縁部への付勢力を集中的に及ぼす第2凸部を有しており、前記第2凸部が、前記雄端子の挿入方向で円弧断面形状で連続して延びており、前記第1凸部が、前記第2凸部の延出方向の中間部分に向かって半球状に突出する形状を有している、ことが好ましい。各ばね部材の付勢力が、第1傾斜側縁部側からは第1凸部により集中的に及ぼされ、第2傾斜側縁部側からは第2凸部により雄端子の挿入方向で挿入領域の広い範囲にわたって一定の付勢力が及ぼされるようになっている。これにより、各ばね部材の付勢力を効率的且つ安定して第1/第2傾斜側縁部間に及ぼし、雄端子の傾斜部を一層安定して挟持することで、雄端子の板幅方向の変位を一層有利に抑制または防止することができる。また、第1凸部と第2凸部の一方である第1凸部が半球状とされることによって、雄端子圧入隙間に対して雄端子が圧入されて雌端子の第1接触部と第2接触部が基端部を中心に角度がつく場合にも、安定して付勢することができる。
【0030】
本開示の雌端子は、
(14)上記(1)から(13)のいずれか1つに記載の端子ユニットにおいて用いられる、ものである。
【0031】
本開示の雄端子は、
(15)上記(1)から(13)のいずれか1つに記載の端子ユニットにおいて用いられる、ものである。
【0032】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1の端子ユニット10について、
図1から
図8を用いて説明する。端子ユニット10は、板状をなす雄端子12と、雄端子12に接続される雌端子16とを備えている。雌端子16は、後述する雄端子圧入隙間22を構成する第1接触部28と第2接触部30とを相互に接近する方向に付勢するばね部材14(後述する第1ばね部材58および第2ばね部材60)を有している。そして、雄端子12が雌端子16に圧入状態で挿入されて相互に接触することで、雄端子12と雌端子16とが電気的に接続されるようになっている。なお、端子ユニット10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上方とは
図3中の上方、下方とは
図3中の下方、左方とは
図2中の上方、右方とは
図2中の下方、前方とは
図2中の左方、後方とは
図2中の右方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0034】
<雄端子12>
雄端子12は、全体として板状をなしており、図示しない平板金具を用いて構成されている。平板金具は全体として略矩形状を有しており、所定の板幅寸法および板厚寸法を有しており、ストレートに延びている。なお、雄端子12において、雌端子16における後述する雄端子圧入隙間22に圧入状態で挿入される挿入方向先端側(
図1中、後方側)の端部は、先細形状である(
図1参照)。雄端子12は、導電性を有しており、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属により形成される。
【0035】
そして、平板金具の板幅方向(左右方向)両端部分を板厚方向の一方側(上方)に屈曲させて傾斜させることで、雄端子12の板幅方向両端部分には、一対の傾斜部18,18が設けられている。すなわち、雄端子12において、後述する雄端子圧入隙間22への挿入方向(前方から後方に向かう方向)に対して交差する方向、実施形態1では直交する方向である板幅方向の両側に一対の傾斜部18,18が設けられている。雄端子12の板幅方向で一対の傾斜部18,18の間に位置する板幅方向の中央部分には、平坦に広がる中央平坦部20が設けられている。なお、一対の傾斜部18,18は、雄端子12の長さ方向の全長にわたって設けられてもよいし、雄端子圧入隙間22に挿入される雄端子12において先細形状とされた挿入方向先端部分にのみ設けられてもよい。実施形態1では、雄端子12の板厚寸法が略一定であり、一対の傾斜部18,18および中央平坦部20の厚さ寸法がそれぞれA(
図3参照)であるが、一対の傾斜部18,18および中央平坦部20の厚さ寸法は相互に異なっていてもよい。
【0036】
一対の傾斜部18,18の中央平坦部20に対する傾斜角度はθ1となっている(
図3参照)。なお、実施形態1では、雄端子12において、板幅方向の一方側(左側)の傾斜部18の中央平坦部20に対する傾斜角度と、板幅方向の他方側(右側)の傾斜部18の中央平坦部20に対する傾斜角度は、相互に等しい大きさ(θ1)であるが、左右両側の傾斜角度は相互に異なっていてもよい。
【0037】
一対の傾斜部18,18の中央平坦部20に対する傾斜角度θ1は限定されるものではないが、例えば5°以上45°以下とされることが好適であり、より好適には10°以上30°以下とされる。傾斜部18の傾斜角度θ1が5°以上とされることにより、雄端子12に板幅方向外方への外力が入力された際にも雄端子12の板幅方向外方への変位を抑制することができる。傾斜部18の傾斜角度θ1が45°以下とされることにより、雄端子12、ひいては端子ユニット10の上下方向寸法を小さく抑えることができる。
【0038】
雄端子12は、後述するように、雌端子16の雄端子圧入隙間22に圧入されて配置された状態において、板厚方向一方側の面(上面)が雌端子16の第1接触部28と対向配置され、板厚方向他方側の面(下面)が雌端子16の第2接触部30と対向配置される。これにより、雄端子12は、雌端子16の第1接触部28と第2接触部30によって挟持される。
【0039】
雄端子12において、先細形状とされた挿入方向先端部分よりも基端側(
図1中、前方側)はストレートに延びており、例えば一対の傾斜部18,18が設けられて
図1に示される状態で基端側に延びていてもよいし、一対の傾斜部18,18が設けられることなく、略平板形状をもって基端側に延びていてもよい。雄端子12における基端側部分は、例えば圧着や溶着等により電線が固着されたり、ボルト挿通孔が設けられて機器の端子部に固定される。
【0040】
<雌端子16>
雌端子16は、例えば
図5や
図7にも示されるように、内部に後述する第1および第2接触部28,30の突出先端側となる前側に開口する雄端子圧入隙間22を有する本体部24と、図示しない電線の芯線が固着される電線接続部26と、を含んで一体的に構成されている。より詳細には、雌端子16は、導電性を有しており、且つプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成されている。
【0041】
雄端子圧入隙間22は、上下方向で対向する第1接触部28と第2接触部30との上下方向対向面間に設けられている。要するに、第1接触部28と第2接触部30とは、雄端子圧入隙間22を隔てて対向配置されている。本体部24における後端部分では、第1接触部28と第2接触部30とが相互に連結されており、例えばかしめ固定されることにより、プレス加工後の第1接触部28と第2接触部30とが相互に離隔しないようにされている。換言すれば、雌端子16の基端部(後端部)において第1接触部28と第2接触部30の長手方向の一端側(後端側)が連結されており、当該連結された基端部から第1接触部28および第2接触部30が、片持ち梁状に前方に向かって突出している。また、第2接触部30における後端部分が、第1接触部28との連結部分よりも後方まで延び出しており、略矩形平板状の電線接続部26が構成されている。
【0042】
<第1接触部28>
第1接触部28は、全体として略矩形平板状であり、前後方向にストレートに延びている。第1接触部28において、板幅方向(左右方向)の両端部分には、板幅方向中央部分に対して板厚方向の一方側(上方)に屈曲させて傾斜させた一対の第1傾斜側縁部32,32が設けられている。すなわち、一対の第1傾斜側縁部32,32は、雄端子12の板厚方向一方側の面(上面)に対向しており、それぞれ一対の傾斜部18,18に沿って傾斜している。これら一対の第1傾斜側縁部32,32の板幅方向の間に位置する、第1接触部28の板幅方向中央部分は、雄端子12における中央平坦部20に対向して、且つ沿って平坦に広がる第1平坦部34である。
【0043】
実施形態1では、各第1傾斜側縁部32が、第1接触部28の前端から所定の長さにわたって設けられている。各第1傾斜側縁部32は、第1接触部28の前端部分において、第1平坦部34に対して所定の傾斜角度θ2(
図3参照)をもって傾斜している。なお、実施形態1では、第1接触部28において、板幅方向の一方側(左側)の第1傾斜側縁部32の第1平坦部34に対する傾斜角度と、板幅方向の他方側(右側)の第1傾斜側縁部32の第1平坦部34に対する傾斜角度は、相互に等しい大きさ(θ2)であるが、左右両側の傾斜角度は相互に異なっていてもよい。
【0044】
また、第1接触部28の左右方向両端部分における後端部分は、各第1傾斜側縁部32が設けられておらず、第1平坦部34に対して平坦に広がっており、第1平坦部34に対する傾斜角度が0である。すなわち、第1接触部28の左右方向両端部分における前後方向中間部分には、前後方向で第1平坦部34に対する傾斜角度が次第に変化する移行部36が設けられている。各移行部36の前端部分では第1平坦部34に対する傾斜角度がθ2であるとともに、各移行部36の後端部分では第1平坦部34に対する傾斜角度が0である。それゆえ、各移行部36では、第1平坦部34に対する傾斜角度が、前方から後方に向かって、θ2から0まで次第に小さくなるようになっている。要するに、第1接触部28における左右方向両端部分では、各移行部36より前方の部分が第1平坦部34に対して上方に屈曲しているが、傾斜角度がθ2で一定とされた第1接触部28の前方部分が、各第1傾斜側縁部32である。
【0045】
各第1傾斜側縁部32の内面(下面)には、下方に位置する雄端子圧入隙間22に向かって突出する第1接点部38が設けられている。これら第1接点部38は、各第1傾斜側縁部32の板厚方向に突出しており、第1平坦部34の板厚方向となる上下方向に対して傾斜して突出している。第1接点部38は、前後方向寸法よりも左右方向寸法の方が大きくされた横長の扁平形状を有しており、
図5や
図7にも示されるように、突出先端面が湾曲面とされている。実施形態1では、第1接点部38が、各第1傾斜側縁部32において雄端子12の挿入方向となる前後方向で離隔する2箇所に設けられており、第1接触部28において合計で4つの第1接点部38が設けられている。各第1傾斜側縁部32の外面(上面)において、各第1接点部38と対応する位置には、上方に開口する凹部40が形成されており、第1接触部28においてプレス加工を行うことにより各第1接点部38が形成されるようになっている。
【0046】
また、各第1傾斜側縁部32には、ばね部材14(後述する第1ばね部材58および第2ばね部材60)の組付時において、後述する被当接部56と当接する当接部42が設けられている。これら一対の当接部42,42は、各第1傾斜側縁部32の左右方向両端部(すなわち上端部)から板幅方向である左右方向の外方に突出している。実施形態1では、これら当接部42が、各第1傾斜側縁部32の前後方向中間部分に設けられており、特に、実施形態1では、前後方向で離隔する各第1接点部38の前後方向間に相当する位置に設けられている。
【0047】
<第2接触部30>
第2接触部30は、全体として略矩形平板状であり、前後方向にストレートに延びている。第2接触部30において、板幅方向(左右方向)の両端部分には、板幅方向中央部分に対して板厚方向の一方側(上方)に屈曲させて傾斜させた一対の第2傾斜側縁部44,44が設けられている。すなわち、一対の第2傾斜側縁部44,44は、雄端子12の板厚方向他方側の面(下面)に対向しており、それぞれ一対の傾斜部18,18に沿って傾斜している。これら一対の第2傾斜側縁部44,44の板幅方向の間に位置する、第2接触部30の板幅方向中央部分は、雄端子12における中央平坦部20に対向して、且つ沿って平坦に広がる第2平坦部46である。要するに、第1接触部28と第2接触部30の板幅方向の一方(左方)および他方(右方)には、上下で対向する第1傾斜側縁部32と第2傾斜側縁部44とが、それぞれ設けられている。
【0048】
実施形態1では、各第2傾斜側縁部44が、第2接触部30の前端から所定の長さにわたって設けられている。各第2傾斜側縁部44は、第2接触部30の前端部分において、第2平坦部46に対して所定の傾斜角度θ3(
図3参照)をもって傾斜している。なお、実施形態1では、第2接触部30において、板幅方向の一方側(左側)の第2傾斜側縁部44の第2平坦部46に対する傾斜角度と、板幅方向の他方側(右側)の第2傾斜側縁部44の第2平坦部46に対する傾斜角度は、相互に等しい大きさ(θ3)であるが、左右両側の傾斜角度は相互に異なっていてもよい。
【0049】
各第1傾斜側縁部32の第1平坦部34に対する傾斜角度θ2は、雄端子12における各傾斜部18の中央平坦部20に対する傾斜角度θ1に対して、同一の大きさか、異なる場合でも角度差が10°以内であることが好ましい。これにより、雄端子圧入隙間22に対して雄端子12が圧入された際に、雄端子圧入隙間22内での雄端子12のがたつきを抑えて、雄端子12と第1接点部38との接触面積を安定して確保することができる。同様に、各第2傾斜側縁部44の第2平坦部46に対する傾斜角度θ3は、雄端子12における各傾斜部18の中央平坦部20に対する傾斜角度θ1に対して、同一の大きさか、異なる場合でも角度差が10°以内であることが好ましい。これにより、雄端子圧入隙間22に対して雄端子12が圧入された際に、雄端子圧入隙間22内での雄端子12のがたつきを抑えて、雄端子12と後述する第2接点部50との接触面積を安定して確保することができる。
【0050】
実施形態1では、各第1傾斜側縁部32の第1平坦部34に対する傾斜角度θ2と、各第2傾斜側縁部44の第2平坦部46に対する傾斜角度θ3とが略等しくされている。それゆえ、実施形態1では、左方における第1傾斜側縁部32と第2傾斜側縁部44とが略平行に広がっているとともに、右方における第1傾斜側縁部32と第2傾斜側縁部44とが略平行に広がっている。
【0051】
また、第2接触部30の左右方向両端部分における後端部分は、第1接触部28と同様に、第2平坦部46に対して平坦に広がっており、第2接触部30の左右方向両端部分における前後方向中間部分には、前後方向で第2平坦部46に対する傾斜角度が次第に変化する移行部48が設けられている。すなわち、第2平坦部46に対する傾斜角度がθ3で一定とされた第2接触部30の前方部分が、各第2傾斜側縁部44である。
【0052】
各第2傾斜側縁部44の内面(上面)には、上方に位置する雄端子圧入隙間22に向かって突出する第2接点部50が設けられている。これら第2接点部50は、各第2傾斜側縁部44の板厚方向に突出しており、第2平坦部46の板厚方向となる上下方向に対して傾斜して突出している。第2接点部50は、第1接点部38と同じく前後方向寸法よりも左右方向寸法の方が大きくされた横長の扁平形状を有しており、
図5や
図7にも示されるように、突出先端面が湾曲面とされている。実施形態1では、第2接点部50が、各第2傾斜側縁部44において雄端子12の挿入方向となる前後方向で離隔する2箇所に設けられており、第2接触部30において合計で4つの第2接点部50が設けられている。
【0053】
特に、実施形態1では、第2接点部50が、第1接点部38に対して上下方向で対応する位置に設けられており、上下方向の投影において第1接点部38と第2接点部50とが相互に重なるようになっている。また、各第1傾斜側縁部32や各第2傾斜側縁部44の板厚方向の投影では、第1接点部38と第2接点部50とがずれて位置しており、部分的に重なるようになっている。
【0054】
そして、第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部は、左右方向内方から外方に向かうにつれて上方に傾斜する斜め方向に線状に延びており、左方における第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部が相互に平行に延びているとともに、右方における第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部が相互に平行に延びている。雌端子16の本体部24に対してばね部材14(後述する第1ばね部材58および第2ばね部材60)が組み付けられた
図7,8の状態において、第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部の離隔距離はB(
図8参照)である。この第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部の離隔距離Bは、雄端子12の板厚寸法Aよりも小さくされており(B<A)、これにより雄端子圧入隙間22に対して雄端子12が圧入され得る。
【0055】
各第2傾斜側縁部44の外面(下面)において、各第2接点部50と対応する位置には、下方に開口する凹部52が形成されており、第2接触部30においてプレス加工を行うことにより各第2接点部50が形成されるようになっている。また、第2接触部30の下面には、後述するばね部材14(第1ばね部材58および第2ばね部材60)における係止爪76が係止される被係合部54が、下方に開口して設けられている。実施形態1では、被係合部54が、第2接触部30を板厚方向で貫通する貫通孔の形状をもって形成されている。なお、この被係合部は、下方に開口する有底の穴状であってもよい。また、実施形態1では、一対の被係合部54,54が、板幅方向の両側となる左右方向両側で相互に離隔して設けられており、第2平坦部46と各第2傾斜側縁部44との接続部分に設けられている。特に、実施形態1では、各被係合部54が、前後方向で離隔する各第2接点部50の前後方向間に相当する位置に設けられている。
【0056】
また、各第2傾斜側縁部44には、板幅方向である左右方向の外方に突出して、それらの突出端部において各第1傾斜側縁部32に向かって上方に突出する被当接部56が設けられている。これら一対の被当接部56,56は、各第2傾斜側縁部44の前後方向中間部分に設けられており、実施形態1では、前後方向で離隔する各第2接点部50の前後方向間に相当する位置に設けられている。すなわち、各被当接部56は、各第1傾斜側縁部32における各当接部42と上下方向で対向して設けられており、後述するばね部材14(第1ばね部材58および第2ばね部材60)の組付時において、各被当接部56と各当接部42とが相互に当接するようになっている。
【0057】
<ばね部材14>
ばね部材14は、雌端子16における本体部24に組み付けられる。ばね部材14は、雄端子12(を構成する平板金具の)板幅方向である左右方向の一方側(左側)に配置される第1ばね部材58と、左右方向の他方側(右側)に配置される第2ばね部材60とを有している。なお、実施形態1では、第1ばね部材58と第2ばね部材60とは同じ形状を有しており、左右反転した状態で用いられる。それゆえ、以下の説明では、第1ばね部材58について説明するとともに、第2ばね部材60については、図中に、第1ばね部材58と同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0058】
<第1ばね部材58(第2ばね部材60)>
第1ばね部材58は、第1傾斜側縁部32の外面(上面)に重ね合わされる第1板部62と、第2傾斜側縁部44の外面(下面)に重ね合わされる第2板部64と、これら第1板部62と第2板部64とを連結する連結板部66とを有する板ばねクリップにより構成されている。第1ばね部材58は、例えばプレス加工が可能な金属により形成されており、金属平板を所定の形状に折り曲げること等により第1ばね部材58が形成され得る。
【0059】
第1板部62と第2板部64とはそれぞれ、連結板部66の上端および下端から、連結板部66の板厚方向の一方側に延び出しており、第1板部62と第2板部64とが所定距離を隔てて上下方向で相互に対向している。これら第1板部62および第2板部64は、連結板部66との接続部分を基点として、相互に離隔または接近する方向で弾性変形可能である。
【0060】
図5,6等にも示されているように、第1板部62は略矩形または略五角形の平板状であり、第1板部62の略中央部分には、第2板部64との対向方向内方(下方)に突出する第1凸部68が設けられている。実施形態1では、第1凸部68が半球状であり、第1板部62の上面において第1凸部68と対応する位置には、上方に開口する凹部70が形成されている。これにより、第1凸部68をプレス加工により形成することが可能である。そして、第1凸部68が半球状とされることで、第1板部62が第1傾斜側縁部32の外面に重ね合わされた際に、第1凸部68の頂部が第1傾斜側縁部32の外面に対して点状に接触して、第1傾斜側縁部32への付勢力を集中的に及ぼすようになっている。
【0061】
また、第2板部64は略矩形の平板状であり、第2板部64の長さ方向(左右方向)中間部分には、第1板部62側に凸となる円弧状断面をもって第2板部64の幅方向(すなわち、雄端子12の挿入方向である前後方向)に連続して延びる第2凸部72が設けられている。実施形態1では、第2凸部72が、第2板部64の幅方向全長にわたって設けられており、第1凸部68が、第2凸部72の延出方向の中間部分に向かって突出している。第2板部64の下面において第2凸部72と対応する位置には、下方に開口する凹部74が形成されている。これにより、第2凸部72をプレス加工により形成することが可能である。そして、第2凸部72が円弧状断面をもって直線状に延びる形状とされることで、第2板部64が第2傾斜側縁部44の外面に重ね合わされた際に、第2凸部72の頂部が第2傾斜側縁部44の外面に対して線状に接触して、第2傾斜側縁部44への付勢力を集中的に及ぼすようになっている。なお、第2板部64の突出先端部における前後方向中央部分には、対向する第1板部62や雌端子16における雄端子圧入隙間22側(上側)に向かって突出する係止爪76が設けられている。
【0062】
第1ばね部材58を雌端子16の本体部24に組み付ける前の第1ばね部材58の単品状態(自然状態)において、これら第1凸部68の頂部と第2凸部72の頂部との離隔距離はC(
図6参照)である。なお、ここで示す第1凸部68の頂部と第2凸部72の頂部との離隔距離Cとは、第1凸部68の頂部と第2凸部72の頂部とを直線的に繋いだ距離ではなく、第1傾斜側縁部32および第2傾斜側縁部44の板厚方向での離隔距離である。また、第1ばね部材58を雌端子16の本体部24に組み付ける前において、第1傾斜側縁部32の外面(上面)と第2傾斜側縁部44の外面(下面)との離隔距離はD(
図6参照)である。そして、第1ばね部材58を雌端子16の本体部24に組み付ける前の状態において、第1凸部68の頂部と第2凸部72の頂部との離隔距離Cは、第1傾斜側縁部32の外面と第2傾斜側縁部44の外面との離隔距離Dよりも小さくされている(C<D)。
【0063】
これにより、後述するように第1ばね部材58を本体部24に組み付けた際には、第1ばね部材58による付勢力が、第1傾斜側縁部32および第2傾斜側縁部44に及ぼされて、第1ばね部材58により第1傾斜側縁部32および第2傾斜側縁部44が相互に接近する方向に付勢されるようになっている。なお、前述のように、第1および第2ばね部材58,60は、それぞれ本体部24の左右両側に組み付けられることから、第1ばね部材58が、板幅方向一方側(左側)の第1傾斜側縁部32と第2傾斜側縁部44とを相互に接近する方向に付勢するとともに、第2ばね部材60が、板幅方向他方側(右側)の第1傾斜側縁部32と第2傾斜側縁部44とを相互に接近する方向に付勢するようになっている。
【0064】
また、連結板部66の前後方向中央部分には、板厚方向に貫通する貫通孔78が形成されている。実施形態1では、貫通孔78が連結板部66の長さ方向(第1板部62と第2板部64の対向方向)の全長にわたっているとともに、所定の幅寸法(前後方向寸法)をもって形成されている。この貫通孔78は、第1および第2接触部28,30における当接部42および被当接部56と対応する位置に形成されており、第1ばね部材58が雌端子16の本体部24に組み付けられた際に、当接部42および被当接部56が、貫通孔78に挿通されて、連結板部66の板厚方向外方に突出するようになっている。前述のように、第1および第2ばね部材58,60は、それぞれ本体部24の左右両側に組み付けられることから、第1および第2接触部28,30の板幅方向の一方(左方)の当接部42および被当接部56が、第1ばね部材58の貫通孔78に挿通されているとともに、第1および第2接触部28,30の板幅方向の他方(右方)の当接部42および被当接部56が、第2ばね部材60の貫通孔78に挿通されている。
【0065】
<端子ユニット10の組み付け工程>
続いて、端子ユニット10の組み付け工程の具体的な一例について説明する。なお、端子ユニット10の組み付け工程は、以下の記載に限定されない。
【0066】
先ず、雌端子16の本体部24を構成する金属平板を準備して、所定の形状にプレス加工等を行うことにより、電線接続部26を一体的に備える本体部24を形成する。なお、第1および第2ばね部材58,60が組み付けられる前の状態では、本体部24において当接部42と被当接部56は当接する必要はなく、僅かなまたは所定の離隔距離をもって上下方向で対向していてもよい。前述のように、第1傾斜側縁部32の外面と第2傾斜側縁部44の外面との離隔距離Dが、第1凸部68の頂部と第2凸部72の頂部との離隔距離Cよりも大きくされていればよい。また、第1ばね部材58を構成する金属平板を準備して、所定の形状にプレス加工等を行うことにより、第1ばね部材58を形成する。なお、第1ばね部材58と第2ばね部材60は同形状であることから、第1ばね部材58と同時に第2ばね部材60が形成される。
【0067】
そして、雌端子16の本体部24と第1および第2ばね部材58,60とを
図5,6に示されるように配置した後、第1および第2ばね部材58,60を拡開変形させて、第1傾斜側縁部32の外面に第1板部62を重ね合わせるとともに、第2傾斜側縁部44の外面に第2板部64を重ね合わせる。その後、これら第1および第2ばね部材58,60を、それぞれ左右方向内方にスライド変位させて、第1および第2ばね部材58,60における各第2板部64に設けられた各係止爪76を、第2接触部30の下方に開口する各被係合部54に係止させる。その際、本体部24における当接部42および被当接部56を、第1および第2ばね部材58,60における各連結板部66の各貫通孔78に挿通させて、各連結板部66の板厚方向外方まで突出させる。これにより、雌端子16の本体部24に第1および第2ばね部材58,60を板幅方向である左右方向で離脱不能に組み付けて、雌端子16が完成する。
【0068】
雌端子16の完成状態では、第1および第2ばね部材58,60の各第1板部62における各第1凸部68が、第1傾斜側縁部32の外面において前後方向で離隔する凹部40,40間に対して点状に接触する。また、
図8に示されるように、第1および第2ばね部材58,60の各第2板部64における各第2凸部72が、第2傾斜側縁部44の外面において各凹部52の形成位置と対応する位置に配置される。これにより、各第2凸部72が、第2傾斜側縁部44の外面において前後方向で離隔する凹部52,52間や、各凹部52の前後方向外方の部分において線状に接触する。
【0069】
ここにおいて、第1傾斜側縁部32の外面と第2傾斜側縁部44の外面との離隔距離Dは、自然状態における第1および第2ばね部材58,60における第1凸部68の頂部と第2凸部72の頂部との離隔距離Cよりも大きくされていることから、第1および第2ばね部材58,60は、自然状態よりも第1および第2板部62,64が拡開した状態で本体部24に組み付けられる。これにより、第1および第2板部62,64の弾性的な復元力が、第1および第2傾斜側縁部32,44に対して相互に接近する方向への付勢力として及ぼされる。この結果、各第1接触部28における当接部42と各第2接触部30における被当接部56とが当接して、第1および第2傾斜側縁部32,44におけるこれ以上の接近方向への変位が制限されるようになっている。
【0070】
特に、当接部42と被当接部56とが当接して第1接触部28と第2接触部30との接近変位が制限された状態において、各第1傾斜側縁部32および各第2傾斜側縁部44には、第1および第2板部62,64の弾性的な復元力が及ぼされている。これにより、完成状態の雌端子16において、第1および第2傾斜側縁部32,44に対して第1および第2ばね部材58,60により常時接近方向への付勢力が及ぼされている。そして、雌端子16の完成状態では、前述のように、第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部の離隔距離がBとされる。
【0071】
次に、完成状態の雌端子16の雄端子圧入隙間22に対して、別途準備した雄端子12を前方から挿入する。ここで、雌端子16における第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部の離隔距離Bは、雄端子12の板厚寸法Aよりも小さくされている。雄端子圧入隙間22への雄端子12のよりスムーズな挿入を可能にするために、雌端子16の第1接触部28と第2接触部30の対向面間距離が前方に向かって次第に大きくなる誘い込みテーパ79,79が、それぞれ第1接触部28と第2接触部の板幅方向全長にわたって設けられている(
図5参照)。これにより、雄端子圧入隙間22に対して雄端子12は、圧入状態で挿入される。すなわち、第1接触部28における各第1接点部38が雄端子12における各傾斜部18に対して上方から接触するとともに、第2接触部30における各第2接点部50が各傾斜部18に対して下方から接触する。そして、雄端子12により、第1および第2ばね部材58,60の付勢力に抗して各第1接点部38と各第2接点部50との間を押し広げて、第1接触部28と第2接触部30とを相互に離隔する方向に変位させる。これにより、雄端子圧入隙間22への雄端子12の圧入が可能となり、
図1から
図4に示されるように、雄端子12と雌端子16とが嵌合状態とされた端子ユニット10が完成する。
【0072】
雄端子12と雌端子16とが嵌合状態とされた端子ユニット10では、第1および第2ばね部材58,60における各第1板部62と各第2板部64とが自然状態よりも押し広げられており、各第1板部62と各第2板部64の弾性的な復元力が、各第1および第2傾斜側縁部32,44に対して相互に接近する方向への付勢力として及ぼされている。これにより、各第1傾斜側縁部32における各第1接点部38が、雄端子12における各傾斜部18に対して上方から押圧されるとともに、各第2傾斜側縁部44における各第2接点部50が、各傾斜部18に対して下方から押圧される。特に、雄端子12の挿入前の雌端子16において、第1および第2ばね部材58,60による付勢力が各第1傾斜側縁部32および各第2傾斜側縁部44に予め及ぼされており、この付勢力に加えて、各第1傾斜側縁部32および各第2傾斜側縁部44には、雄端子12が第1接触部28と第2接触部30とを相互に離隔する方向に押し広げることに伴って発生する付勢力が及ぼされることから、各第1接点部38および各第2接点部50による各傾斜部18の押圧がより確実に達成される。
【0073】
すなわち、端子ユニット10の左方側(板幅方向の一方側)においては、第1ばね部材58による付勢力により、第1傾斜側縁部32の第1接点部38と第2傾斜側縁部44の第2接点部50が、それらの間に圧入された雄端子12の傾斜部18に押圧されている。また、端子ユニット10の右方側(板幅方向の他方側)においては、第2ばね部材60による付勢力により、第1傾斜側縁部32の第1接点部38と第2傾斜側縁部44の第2接点部50が、それらの間に圧入された雄端子12の傾斜部18に押圧されている。
【0074】
実施形態1では、第1接点部38による押圧力F1(
図3参照)と第2接点部50による押圧力F2(
図3参照)とが何れも、各傾斜部18における板厚方向と同方向に作用することから、第1および第2接点部38,50により各傾斜部18が安定して挟持されて、雄端子12と雌端子16とをより確実に導通させることができる。特に、実施形態1では、第1接点部38による押圧力F1の作用する方向と第2接点部50による押圧力F2の作用する方向とは、各傾斜部18の板厚方向で対向しておらず、具体的には、第1接点部38による押圧力F1は、各傾斜部18の左右方向両端部分に作用しているが、第2接点部50による押圧力F2は、押圧力F1が作用する部分よりも左右方向内方で作用している。これにより、上下両側からの押圧力F1,F2が各傾斜部18における同じ位置に作用することが回避される。この結果、雄端子12における各傾斜部18が複数の位置で第1接点部38と第2接点部50との間を押し広げることから、挿入抵抗の低減を図ることもできる。
【0075】
また、
図3に示されるように、第1接点部38による押圧力F1は、下方への分力F1aおよび左右方向外方への分力F1bとして作用するとともに、第2接点部50による押圧力F2は、上方への分力F2aおよび左右方向内方への分力F2bとして作用する。ここで、例えば雄端子12に対して左右方向において一方から他方へ(例えば右方から左方)向かう外力が及ぼされた場合にも、反対方向の分力(例えば左方から右方へ向かう分力F1b)や左右方向内方への分力F2bにより入力された外力に伴う雄端子12の変位が抑制される。特に、第1接点部38による下方への分力F1aと第2接点部50による上方への分力F2aとは上下方向で相互に対向していることから、雄端子12における上下方向の変位もより確実に抑制される。この結果、雌端子16に対する雄端子12の変位が抑制されて、雄端子12と雌端子16との導通状態を安定して維持することができる。
【0076】
特に、これらの押圧力F1,F2を付与するばね部材14が、左方に配置される第1ばね部材58と右方に配置される第2ばね部材60とに分割されている。これにより、左方における押圧力F1,F2は第1ばね部材58により得ることができるとともに、右方における押圧力F1,F2は第2ばね部材60により得ることができる。それゆえ、ばね部材14(第1ばね部材58および第2ばね部材60)の小型化を達成しつつ、異なる方向に作用する押圧力F1,F2を左右各別に得ることができる。
【0077】
また、各第1傾斜側縁部32および各第2傾斜側縁部44が各傾斜部18に沿って設けられていることから、各第1および第2傾斜側縁部32,44に設けられる各第1および第2接点部38,50と各傾斜部18との接触面積を安定して確保することができて、雌雄端子16,12間の導通抵抗の低減が図られる。
【0078】
雄端子12は、左右方向中央の中央平坦部20と、左右両側の一対の傾斜部18,18を有している。同様に、第1接触部28は、左右方向中央の第1平坦部34と、左右両側の一対の第1傾斜側縁部32,32を有しているとともに、第2接触部30は、左右方向中央の第2平坦部46と、左右両側の一対の第2傾斜側縁部44,44を有している。すなわち、実施形態1では、雄端子12と第1および第2接触部28,30とが何れも相似形状であり、第1および第2接触部28,30間に設けられる雄端子圧入隙間22に対してスペース効率良く雄端子12を挿入することができる。
【0079】
雌端子16の本体部24に対して第1および第2ばね部材58,60が組み付けられた状態において、当接部42と被当接部56とが当接することで第1接触部28と第2接触部30との接近方向への変位が阻止されている。これにより、雄端子圧入隙間22において、第1接点部38の頂部と第2接点部50の頂部との離隔距離がBより小さくなることが回避されて、雄端子圧入隙間22へ雄端子12を挿入する際において挿入抵抗が大きくなり過ぎることが抑制される。特に、実施形態1では、当接部42と被当接部56とが、左右両側でそれぞれ一対設けられていることから、第1接触部28と第2接触部30との接近方向への変位阻止効果がより確実に発揮される。
【0080】
第1ばね部材58と第2ばね部材60とが、何れも板ばねクリップにより構成されていることから、第1および第2ばね部材58,60、ひいては端子ユニット10の構造を簡単なものとすることができる。特に、第1および第2ばね部材58,60における各第1板部62および各第2板部64は、それぞれ各第1傾斜側縁部32および各第2傾斜側縁部44に重ね合わされることから、端子ユニット10の小型化も図られる。
【0081】
実施形態1では、雌端子16における第1接触部28の左右両側に一対の第1傾斜側縁部32,32が設けられているとともに、第2接触部30の左右両側に一対の第2傾斜側縁部44,44が設けられており、これら第1接触部28と第2接触部30の対向間が前方に開口する雄端子圧入隙間22とされている。これにより、比較的簡単な形状をもって雌端子16および端子ユニット10が構成され得る。
【0082】
第1および第2ばね部材58,60にはそれぞれ係止爪76が設けられており、第2接触部30における各被係合部54へ係止されるようになっている。これにより、第1および第2ばね部材58,60が、本体部24に対して左右方向外方へ変位することが防止される。また、第1および第2ばね部材58,60にはそれぞれ貫通孔78が設けられており、第1および第2接触部28,30における当接部42および被当接部56が挿通されるようになっている。これにより、第1および第2ばね部材58,60が、本体部24に対して前後方向で変位することが防止される。この結果、雌端子16から意図せず第1および第2ばね部材58,60が脱落することが防止されて、雌雄端子16,12の挿抜が繰り返される場合にも、第1および第2ばね部材58,60による所期の押圧力F1,F2を安定して得ることができる。
【0083】
各第1傾斜側縁部32において複数の第1接点部38が前後方向で離隔して設けられているとともに、各第2傾斜側縁部44において複数の第2接点部50が前後方向で離隔して設けられている。これにより、雄端子12が第1および第2接点部38,50間に圧入される際のめっきの摩耗等を抑制しつつ、雄端子12と第1および第2接点部38,50との接触面積を安定して確保することができる。また、各第1および第2傾斜側縁部32,44における複数の箇所で雄端子12が保持されることから、雌端子16に対する雄端子12の変位をより安定して抑制することができる。特に、複数の第1および第2接点部38,50を前後方向で離隔して設けることにより、雌端子16に対して板幅方向だけでなく回転方向においても雄端子12の変位を抑制することができる。
【0084】
第1および第2ばね部材58,60における第1および第2板部62,64には、それぞれ半球状の第1凸部68と円弧状断面をもって直線状に延びる第2凸部72が設けられている。これにより、各第1凸部68と各第1傾斜側縁部32との接触を点接触としつつ、各第2凸部72と各第2傾斜側縁部44との接触を線接触とすることも可能である。この結果、第1および第2ばね部材58,60を雌端子16の本体部24へ組み付ける際の組み付け易さの向上効果と、第1および第2板部62,64による第1および第2傾斜側縁部32,44の付勢効果とを、両立して達成することができる。また、実施形態1のように、各第2凸部72を各第2傾斜側縁部44における各凹部52上に配置することで、前後方向の複数の箇所で各第2凸部72を各第2傾斜側縁部44に当接させることも可能であり、雌端子16の本体部24に対する第1および第2ばね部材58,60の変位抑制効果の向上を図ることもできる。さらに、第1凸部68が半球状であることによって、雄端子圧入隙間22に対して雄端子12が圧入されて雌端子16の第1接触部28と第2接触部30が基端部を中心に角度がつく場合にも、安定して付勢することができる。
【0085】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2の端子ユニット80について、
図9から
図11を用いて説明する。実施形態1では、雄端子12が雌端子16に対して長手方向となる前後方向(前方から後方へ向かう方向)で圧入されていたが、実施形態2では、雄端子12が雌端子82に対して長手方向と直交する方向である左右方向(左方から右方へ向かう方向)で圧入されている。なお、
図9では、見易さのために、左右方向に延びる雄端子12の先端部分のみが示されている。また、以下の説明において、実施形態1と実質的に同一の部材および部位には、図中に、実施形態1と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0086】
雄端子12は、実施形態1と同様の構造であり、圧入方向と交差する方向である板幅方向(前後方向)両端部分に一対の傾斜部18,18が設けられているとともに、板幅方向中央部分には、平坦に広がる中央平坦部20が設けられている。すなわち、一対の傾斜部18,18が、中央平坦部20に対して板厚方向の一方となる上方に向かって傾斜している。
【0087】
<雌端子82>
雌端子82が、内部に雄端子圧入隙間84を有する本体部24と、本体部24の後方に電線接続部26とを備えている構成は実施形態1と同様であるが、実施形態2では、本体部24に対して後述するばね部材114(第1ばね部材116および第2ばね部材118)が板幅方向(左右方向)の他方(右方)から組み付けられることで、雄端子圧入隙間84が雌端子82における左右方向の一方(左方)の側面に開口している。実施形態2の雄端子圧入隙間84も、上下方向で対向する第1接触部86と第2接触部88との上下方向対向面間に設けられている。これら第1接触部86と第2接触部88は、雌端子82の基端部(後端部)においてそれぞれの長手方向の一端側(後端側)が連結されており、当該連結された基端部から第1接触部86および第2接触部88が、片持ち梁状に突出している。そして、自由端とされる第1接触部86と第2接触部88の長手方向の他端側(前端側)において、雄端子圧入隙間84が設けられている。
【0088】
<第1接触部86>
第1接触部86は、全体として略矩形平板状であり、前後方向にストレートに延びている。第1接触部86において、突出方向(後方から前方に向かう方向)の先端部(前端部)には、雄端子12における板幅方向の一方側(前方側)の傾斜部18に沿って傾斜する第1傾斜側縁部90が設けられている。また、第1接触部86において、突出先端部よりも基端側(後端側)には、雄端子12における板幅方向の他方側(後方側)の傾斜部18に沿って傾斜する第1傾斜側縁部90が設けられている。これら一対の第1傾斜側縁部90,90は、前後方向で相互に離隔しており、一対の第1傾斜側縁部90,90間には雄端子12における中央平坦部20に沿って広がる第1平坦部92が設けられている。すなわち、一対の第1傾斜側縁部90,90は、第1平坦部92に対して板厚方向の一方側となる上方に傾斜している。なお、第1接触部86において、後方側の第1傾斜側縁部90よりも後方は前後方向で平坦に広がっており、基端部(後端部)において第2接触部88と連結しているとともに、当該第2接触部88と連結する基端部よりも後方に延び出して、電線接続部26を構成している。また、前方側の第1傾斜側縁部90の前端部には、前方に突出する当接部94が設けられている。
【0089】
各第1傾斜側縁部90の内面(下面)には、下方に位置する雄端子圧入隙間84に向かって突出する第1接点部96が設けられている。これら第1接点部96は、各第1傾斜側縁部90の板厚方向に突出している。第1接点部96は、実施形態1の第1接点部38と同様の形状であるが、左右方向寸法よりも前後方向寸法が大きくされており、突出先端面が湾曲面とされている。実施形態2では、第1接点部96が、各第1傾斜側縁部90において左右方向で離隔する2箇所に設けられており、第1接触部86において合計で4つの第1接点部96が設けられている。各第1傾斜側縁部90の外面(上面)において、各第1接点部96と対応する位置には、上方に開口する凹部98が形成されている。
【0090】
<第2接触部88>
第2接触部88は、全体として略矩形平板状であり、前後方向にストレートに延びている。第2接触部88において、突出方向(後方から前方に向かう方向)の先端部(前端部)には、雄端子12における板幅方向の一方側(前方側)の傾斜部18に沿って傾斜する第2傾斜側縁部100が設けられている。また、第2接触部88において、突出先端部よりも基端側(後端側)には、雄端子12における板幅方向の他方側(後方側)の傾斜部18に沿って傾斜する第2傾斜側縁部100が設けられている。これら一対の第2傾斜側縁部100,100は、前後方向で相互に離隔しており、一対の第2傾斜側縁部100,100間には雄端子12における中央平坦部20に沿って広がる第2平坦部102が設けられている。すなわち、一対の第2傾斜側縁部100,100は、第2平坦部102に対して板厚方向の一方側となる上方に傾斜している。なお、第2接触部88において、後方側の第2傾斜側縁部100よりも後方は前後方向で平坦に広がっており、基端部(後端部)において第1接触部86と連結している。また、前方側の第2傾斜側縁部100の前端部において左右方向中央部分には、上方に突出する被当接部104が設けられている。
【0091】
各第2傾斜側縁部100の内面(上面)には、上方に位置する雄端子圧入隙間84に向かって突出する第2接点部106が設けられている。これら第2接点部106は、各第2傾斜側縁部100の板厚方向に突出している。第2接点部106は、第1傾斜側縁部90における第1接点部96と同様の形状である。これら第2接点部106は、各第2傾斜側縁部100において左右方向で離隔する2箇所に設けられており、第2接触部88において合計で4つの第2接点部106が設けられている。各第2傾斜側縁部100の外面(下面)において、各第2接点部106と対応する位置には、下方に開口する凹部108が形成されている。
【0092】
実施形態2において、第1接点部96の頂部と第2接点部106の頂部は、前後方向内方から外方に向かうにつれて上方に傾斜する斜め方向に線状に延びており、前方における第1接点部96の頂部と第2接点部106の頂部が相互に平行に延びているとともに、後方における第1接点部96の頂部と第2接点部106の頂部が相互に平行に延びている。雌端子82の本体部24に対して後述するばね部材114(第1ばね部材116および第2ばね部材118)が組み付けられた
図11の状態において、第1接点部96の頂部と第2接点部106の頂部の離隔距離はB’である。この第1接点部96の頂部と第2接点部106の頂部の離隔距離B’は、雄端子12の板厚寸法A’(
図9参照)よりも小さくされており(B’<A’)、これにより雄端子圧入隙間84に対して雄端子12が圧入され得る。
【0093】
また、第2接触部88における板幅方向(左右方向)の一方の側面(左端面)には、後述するばね部材114(第1ばね部材116および第2ばね部材118)における係止爪136が係止される被係合部110が設けられている。実施形態2では、第2接触部88における被係合部110において、前後方向(第1接触部86および第2接触部88の長手方向)で相互に離隔する一対のストッパ突部112,112が、左右方向外方(実施形態2では左方)に突出して設けられている。すなわち、第2接触部88における左端面には、被係合部110において一対のストッパ突部112,112が設けられることで相対的に凹となる部分が設けられており、当該凹部において第1ばね部材116および第2ばね部材118における係止爪136が挿し入れられて、第2接触部88の一方の側面である左端面に係合するようになっている。なお、この被係合部は、例えば上述の各ストッパ突部112が設けられることなく、第2接触部88の左端面に直接凹部が設けられてもよいし、第2接触部88における下面に設けられてもよい。また、実施形態2では、一対の被係合部110,110が、前後方向で相互に離隔して設けられており、具体的には、前後方向で相互に離隔する一対の第2傾斜側縁部100,100のそれぞれに設けられている。
【0094】
<ばね部材114>
雌端子82における本体部24に組み付けられるばね部材114は、前後方向の一方側(前側)に配置される第1ばね部材116と、前後方向の他方側(後側)に配置される第2ばね部材118とを有している。なお、第1ばね部材116と第2ばね部材118は同じ形状であることから、以下の説明では、第1ばね部材116について説明するとともに、第2ばね部材118については、図中に、第1ばね部材116と同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0095】
<第1ばね部材116(第2ばね部材118)>
第1ばね部材116は、第1傾斜側縁部90の外面(上面)に重ね合わされる第1板部120と、第2傾斜側縁部100の外面(下面)に重ね合わされる第2板部122と、これら第1板部120と第2板部122とを連結する連結板部124とを有する板ばねクリップにより構成されている。第1板部120と第2板部122とはそれぞれ、連結板部124の上端および下端から、連結板部124の板厚方向の一方側に延び出しており、第1板部120と第2板部122とが所定距離を隔てて上下方向で相互に対向している。これら第1板部120と第2板部122は、相互に離隔または接近する方向で弾性変形可能である。
【0096】
図9,10にも示されているように、第1板部120は略矩形または略五角形の平板状であり、第1板部120において連結板部124と接続されている側と反対側の端部付近には、下方に突出する第1凸部126が設けられている。この第1凸部126は半球状であり、第1板部120の上面において第1凸部126と対応する位置には、上方に開口する凹部128が形成されている。
【0097】
また、第2板部122は略矩形の平板状であり、第2板部122において連結板部124と接続されている側と反対側の端部付近には、第1板部120側に凸となる円弧状断面をもって第2板部122の幅方向(前後方向)に延びる第2凸部130が設けられている。この第2凸部130は、第2板部122の幅方向全長にわたって設けられており、第2板部122の下面において第2凸部130と対応する位置には、下方に開口する凹部132が形成されている。
【0098】
そして、これら第1板部120と第2板部122において、連結板部124と接続されている側と反対側の端部には、連結板部124からの延出方向に更に延び出す延出部134が設けられている。第1ばね部材116と第2ばね部材118において、上下で対向する各延出部134の延出端部(先端部)には、それぞれ対向方向内方側、すなわち雄端子圧入隙間84側に突出する係止爪136が設けられている。
【0099】
図示は省略するが、実施形態1と同様に、第1および第2ばね部材116,118を雌端子82の本体部24に組み付ける前において、第1凸部126の頂部と第2凸部130の頂部との離隔距離は、第1傾斜側縁部90の外面(上面)と第2傾斜側縁部100の外面(下面)との離隔距離よりも小さくされている。これにより、第1および第2ばね部材116,118を本体部24に組み付けた際に、第1および第2ばね部材116,118による付勢力が、各第1傾斜側縁部90および各第2傾斜側縁部100に及ぼされて、第1および第2ばね部材116,118により第1傾斜側縁部90および第2傾斜側縁部100が相互に接近する方向に付勢されるようになっている。
【0100】
実施形態2の端子ユニット80は、実施形態1の端子ユニット10と同様の組み付け工程をもって組み付けられ得る。すなわち、プレス加工等により形成された雌端子82の本体部24に対して、第1および第2ばね部材116,118を右方から組み付ける。これにより、各第1傾斜側縁部90の外面に各第1板部120が重ね合わされるとともに、各第2傾斜側縁部100の外面に各第2板部122が重ね合わされる。また、第1および第2ばね部材116,118に設けられた各係止爪136は、第1および第2接触部86,88における一方の側面である左端面に係止される。特に、第1および第2ばね部材116,118における各第2板部122に設けられた各係止爪136は、第2接触部88における各被係合部110において、両ストッパ突部112,112間に挿し入れられて、第2接触部88における左端面に係止されるようになっている。これにより、雌端子82の本体部24に対して第1および第2ばね部材116,118が組み付けられて、雌端子82が完成する。
【0101】
雌端子82の完成状態では、第1および第2ばね部材116,118の各第1板部120における各第1凸部126が、第1傾斜側縁部90の外面において左右方向で離隔する凹部98,98間に対して点状に接触する。また、第1および第2ばね部材116,118の各第2板部122における各第2凸部130が、第2傾斜側縁部100の外面において左右方向で離隔する凹部108,108間に対して線状に接触する。これにより、第1および第2板部120,122の弾性的な復元力が、第1および第2傾斜側縁部90,100に対して相互に接近する方向への付勢力として及ぼされる。この結果、第1接触部86における当接部94と第2接触部88における被当接部104とが当接して、第1および第2傾斜側縁部90,100におけるこれ以上の接近方向への変位が制限される。
【0102】
完成状態の雌端子82の雄端子圧入隙間84に対して、雄端子12を左方から挿入する。雄端子12は雄端子圧入隙間84に対して圧入状態で挿入される。すなわち、雄端子12により第1および第2ばね部材116,118の付勢力に抗して各第1接点部96と各第2接点部106との間が押し広げられて、第1接触部86と第2接触部88とが相互に離隔する方向に変位させられる。これにより、雄端子圧入隙間84へ雄端子12が圧入されて、
図9に示されるように、雄端子12と雌端子82とが嵌合状態とされた端子ユニット80が完成する。
【0103】
実施形態2の端子ユニット80においても、第1および第2ばね部材116,118により付勢された各第1傾斜側縁部90と各第2傾斜側縁部100との間に雄端子12の各傾斜部18が配置されており、各第1接点部96と各第2接点部106とが雄端子12の各傾斜部18に押圧されることから、実施形態1の端子ユニット10と同様の効果が発揮される。
【0104】
特に、実施形態2では、第1接触部86の前端部において、一対の第1傾斜側縁部90,90が前後方向で離隔して設けられているとともに、第2接触部88の前端部において、一対の第2傾斜側縁部100,100が前後方向で離隔して設けられており、これら第1接触部86と第2接触部88の対向間が側方に開口する雄端子圧入隙間84とされている。これにより、比較的簡単な形状をもって雌端子82および端子ユニット80が構成され得る。
【0105】
また、第1および第2ばね部材116,118にはそれぞれ係止爪136が設けられており、雌端子82の本体部24に対して右方から装着された第1および第2ばね部材116,118の各係止爪136が、第1および第2接触部86,88の側面(左端面)へ係止されるようになっている。これにより、第1および第2ばね部材116,118が、本体部24に対して右方へ変位して脱落することが防止される。特に、第2接触部88の左端面には、被係合部110を構成する一対のストッパ突部112,112が前後方向で離隔して設けられており、これらストッパ突部112,112間に各第2板部122に設けられた各係止爪136が挿入されることから、第1および第2ばね部材116,118が本体部24に対して前後方向で変位することも防止される。この結果、雌端子82から意図せず第1および第2ばね部材116,118が脱落することが防止されて、雌雄端子82,12の挿抜が繰り返される場合にも、第1および第2ばね部材116,118による所期の押圧力を安定して得ることができる。
【0106】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1,2について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0107】
(1)前記実施形態では、雄端子12における中央平坦部20に対する傾斜部18の傾斜角度θ1と、第1接触部28,86における第1平坦部34,92に対する第1傾斜側縁部32,90の傾斜角度θ2と、第2接触部30,88における第2平坦部46,102に対する第2傾斜側縁部44,100の傾斜角度θ3とが略等しくされており、傾斜部18と第1傾斜側縁部32,90と第2傾斜側縁部44,100とが略平行であったが、この態様に限定されない。例えば、上記傾斜角度θ1に対して、傾斜角度θ2やθ3を異ならせてもよい。その場合、例えば第1傾斜側縁部や第2傾斜側縁部から突出する第1接点部や第2接点部の突出方向が、雄端子の傾斜部の板厚方向と平行になるように、第1接点部や第2接点部の形成位置や形状等を調節するなどしてもよい。
【0108】
(2)前記実施形態では、雄端子12、第1接触部28,86、第2接触部30,88が、それぞれ中央平坦部20、第1平坦部34,92、第2平坦部46,102を有していたが、例えば中央平坦部と第1平坦部と第2平坦部との少なくとも1つは設けられなくてもよく、一対の傾斜部や一対の第1傾斜側縁部、一対の第2傾斜側縁部は、中央平坦部や第1平坦部、第2平坦部を介することなく相互に直接接続されていてもよい。
【0109】
(3)前記実施形態では、第1ばね部材58,116と第2ばね部材60,118が何れもばねクリップにより構成されていたが、例えばコイルスプリング等、従来公知のばね部材が採用されてもよい。
【0110】
(4)第1接点部と第2接点部の数や形状等は、前記実施形態に記載の態様に限定されるものではない。例えば、第1接点部や第2接点部は何れも半球状であってもよいし、雄端子の圧入方向で1つまたは3つ以上設けられてもよい。また、第1接点部と第2接点部の数や形状等は相互に異なっていてもよい。
【0111】
(5)第1ばね部材および第2ばね部材に設けられる第1凸部や第2凸部の数や形状等は限定されるものではない。例えば、第1凸部と第2凸部は何れも半球状とされてもよく、それぞれ1つまたは複数個設けられてもよい。あるいは、第1凸部と第2凸部は、何れも断面が円弧状とされて直線状に延びる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0112】
10 端子ユニット(実施形態1)
12 雄端子
14 ばね部材
16 雌端子
18 傾斜部
20 中央平坦部
22 雄端子圧入隙間
24 本体部
26 電線接続部
28 第1接触部
30 第2接触部
32 第1傾斜側縁部
34 第1平坦部
36 移行部
38 第1接点部
40 凹部
42 当接部
44 第2傾斜側縁部
46 第2平坦部
48 移行部
50 第2接点部
52 凹部
54 被係合部
56 被当接部
58 第1ばね部材
60 第2ばね部材
62 第1板部
64 第2板部
66 連結板部
68 第1凸部
70 凹部
72 第2凸部
74 凹部
76 係止爪
78 貫通孔
79 誘い込みテーパ
80 端子ユニット(実施形態2)
82 雌端子
84 雄端子圧入隙間
86 第1接触部
88 第2接触部
90 第1傾斜側縁部
92 第1平坦部
94 当接部
96 第1接点部
98 凹部
100 第2傾斜側縁部
102 第2平坦部
104 被当接部
106 第2接点部
108 凹部
110 被係合部
112 ストッパ突部
114 ばね部材
116 第1ばね部材
118 第2ばね部材
120 第1板部
122 第2板部
124 連結板部
126 第1凸部
128 凹部
130 第2凸部
132 凹部
134 延出部
136 係止爪