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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子複合体分散液
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20241211BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20241211BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20241211BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20241211BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20241211BHJP
   C01B 25/08 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C09K11/08 G ZNM
C09K11/70
C09K11/02 Z
B82Y20/00
B82Y40/00
C01B25/08 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021521903
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021464
(87)【国際公開番号】W WO2020241872
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019103239
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019103240
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】城戸 信人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋和
(72)【発明者】
【氏名】森山 喬史
(72)【発明者】
【氏名】三津家 由子
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-86284(JP,A)
【文献】特開2019-73705(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008374(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/226654(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038487(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/224459(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/226925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した分散液であって、
前記半導体ナノ粒子複合体は、脂肪族チオールリガンドおよび極性リガンドを含む2種以上のリガンドと、前記リガンドが表面に配位した半導体ナノ粒子と、からなり、
前記リガンドは有機基と配位性基とからなり、
前記脂肪族チオールリガンドは、前記有機基が脂肪族炭化水素基であり、前記配位性基がメルカプト基であり、
前記極性リガンドは、前記有機基に親水性官能基を含み、
前記親水性官能基は、カルボニル基、エーテル結合、およびエステル結合の少なくとも一つを有し、
前記脂肪族チオールリガンドと、前記極性リガンドとの質量比(脂肪族チオールリガンド/極性リガンド)は0.05~1.00であり、
前記リガンド全体に占める前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンドの合計の質量分率が0.7以上であり、
前記有機分散媒のSP値は8.5以上である、
半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項2】
前記有機分散媒のSP値が9.0以上である、
請求項1に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項3】
前記有機分散媒が、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、およびグリコールエーテルエステル類からなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項4】
前記有機分散媒が、アセトン、PGMEA、PGME、IPA、エタノール、およびメタノールからなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項5】
前記有機分散媒が、グリコールエーテル類、およびグリコールエーテルエステル類からなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項6】
前記有機分散媒が、PGMEA、およびPGMEからなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項7】
前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項8】
前記極性リガンドの配位性基がメルカプト基である、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項9】
前記極性リガンドの分子量が600以下である、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項10】
前記脂肪族チオールリガンドの炭素数が6~14である、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項11】
前記半導体ナノ粒子の前記半導体ナノ粒子複合体分散液における質量分率が20質量%以上である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【請求項12】
前記有機分散媒が、モノマーまたはプレポリマーである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体組成物および半導体ナノ粒子複合体硬化膜に関する。
本出願は、2019年5月31日出願の日本特許出願第2019-103239号および同日出願の日本特許出願2019-103240号に基づく優先権を主張し、前記日本特許出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
量子閉じ込め効果が発現するほど微小な半導体ナノ粒子は、粒径に依存したバンドギャップを有する。光励起、電荷注入等の手段によって半導体ナノ粒子内に形成された励起子は、再結合によりバンドギャップに応じたエネルギーの光子を放出するため、半導体ナノ粒子の組成とその粒径を適切に選択することにより、所望の波長での発光を得ることができる。
【0003】
半導体ナノ粒子は、研究初期はCdやPbを含む元素を中心に検討が行われてきたが、CdやPbが特定有害物質使用制限などの規制対象物質であることから、近年では非Cd系、非Pb系の半導体ナノ粒子の研究がなされてきている。
【0004】
半導体ナノ粒子は、ディスプレイ用途、生体標識用途、太陽電池用途など、様々な用途への応用が試みられており、特にディスプレイ用途としては、半導体ナノ粒子をフィルム化して波長変換層としての利用が始まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-136498号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】神隆著、「半導体量子ドット、その合成法と生命科学への応用」、生産と技術、第63巻、第2号、p.58-63、2011年
【文献】Fabien Dubois et al, “A Versatile Strategy for Quantum Dot Ligand Exchange” J.AM.CHEM.SOC Vol.129, No.3, p.482-483, 2007
【文献】Boon-Kin Pong et al, “Modified Ligand-Exchange for Efficient Solubilization of CdSe/ZnS Quantum Dots in Water: A Procedure Guided by Computational Studies” Langmuir Vol.24, No.10, p.5270-5276, 2008
【文献】Samsulida Abd. Rahman et al, “Thiolate-Capped CdSe/ZnS Core-Shell Quantum Dots for the Sensitive Detection of Glucose” Sensors Vol.17, No.7, p.1537, 2017
【文献】Whitney Nowak Wenger et al, “Functionalization of Cadmium Selenide Quantum Dots with Poly(ethylene glycol): Ligand Exchange, Surface Coverage, and Dispersion Stability” Langmuir, Vol.33, No.33, pp8239-8245, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体ナノ粒子および半導体ナノ粒子複合体は一般に分散媒に分散させることができ、分散液として調製され、各分野に応用される。特に、実用性を付すためにはSP値が8.5以上の分散媒に分散することが望まれる。
非極性分散媒中で合成された半導体ナノ粒子および半導体ナノ粒子複合体は、疎水性が高いため、非極性分散媒への分散は容易であるが、SP値が8.5以上の極性分散媒への分散は困難であった。
【0008】
非極性分散媒中で合成される半導体ナノ粒子および半導体ナノ粒子複合体は、双極子間力や水素結合力が小さいと推定される。そのため、SP値8.5以上の極性分散媒の中でも、有機溶媒中で合成された半導体ナノ粒子同様に、双極子間力や水素結合力が小さいトルエン、クロロホルムには半導体ナノ粒子の分散が可能である。しかし、これらの極性分散媒は毒性が強いため、実用性がない。
【0009】
半導体ナノ粒子をSP値8.5以上の極性分散媒へ分散可能にする方法としては、リガンド交換法、あるいはカプセル化法が知られている。
リガンド交換法は、半導体ナノ粒子の表面にリガンドを結合させて得た半導体ナノ粒子複合体に含まれるリガンドを、親水基を有するリガンドに置換する方法である。これによって得られる半導体ナノ粒子複合体は、極性分散媒に分散させることが可能である。しかし、非特許文献1~非特許文献5、および特許文献1で開示されている半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子の極性分散媒への分散は可能になるが、発光効率が低下するという問題がある。
カプセル化法は、半導体ナノ粒子の表面にリガンドを結合させて得た半導体ナノ粒子複合体に、さらに両親媒性ポリマーを被覆する方法である。しかし、カプセル化法を行うと、半導体ナノ粒子に対する分散剤の量が増えるため半導体ナノ粒子の高質量分率化が困難になる。
【0010】
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべく、半導体ナノ粒子が高い蛍光量子効率(QY)を保ったまま、極性を有する分散媒に高質量分率で分散した半導体ナノ粒子複合体分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体ナノ粒子複合体分散液は、
半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した分散液であって、
前記半導体ナノ粒子複合体は、脂肪族チオールリガンドおよび極性リガンドを含む2種以上のリガンドと、前記リガンドが表面に配位した半導体ナノ粒子と、からなり、
前記リガンドは有機基と配位性基とからなり、
前記極性リガンドは、前記有機基に親水性官能基を含み、
前記有機分散媒のSP値は8.5以上である、
半導体ナノ粒子複合体分散液、である。
なお、本願において「~」で示す範囲は、その両端に示す数字を含んだ範囲とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体ナノ粒子が高い蛍光量子効率(QY)を保ったまま、極性を有する分散媒に高質量分率で分散した半導体ナノ粒子複合体分散液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例における半導体ナノ粒子複合体を1H-NMRによって分析した結果を示すグラフである。
図2】実施例で使用したリガンドを1H-NMRによって分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(半導体ナノ粒子複合体)
本発明に係る半導体ナノ粒子複合体は半導体ナノ粒子の表面に2種以上のリガンドが配位している。本発明に係る半導体ナノ粒子複合体は、高い発光特性を有し、かつ、分散媒や硬化膜中に高質量分率で分散することが可能である。
本発明において、半導体ナノ粒子複合体とは、発光特性を有する半導体のナノ粒子複合体である。本発明の半導体ナノ粒子複合体は340nm~480nmの光を吸収し、発光ピーク波長が400nm~750nmの光を発光する粒子である。
【0015】
半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅(FWHM)は40nm以下であることが好ましく、さらには35nm以下であることが好ましい。発光スペクトルの半値幅が前記範囲であることで、半導体ナノ粒子複合体をディスプレイ等に応用した際に混色を低減することができる。
前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率(QY)は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上であることで、より効率よく色変換ができる。本発明において、半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率は量子効率測定システムを用いて測定することができる。
【0016】
-半導体ナノ粒子-
前記半導体ナノ粒子複合体を構成する半導体ナノ粒子は、前述した蛍光量子効率、および半値幅のような発光特性を満たすものであれば特に限定されず、1種類の半導体からなる粒子でもよいし、2種類以上の異なる半導体からなる粒子であってもよい。2種類以上の異なる半導体からなる粒子の場合には、それらの半導体でコア-シェル構造を構成していてもよい。例えば、III族元素およびV族元素を含有するコアと、前記コアの少なくとも一部を覆うII族およびVI族元素を含有するシェルとを有するコア-シェル型の粒子であってもよい。ここで、前記シェルは異なる組成からなる複数のシェルを有していてもよく、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを1つ以上有していてもよい。
【0017】
III族元素としては、具体的にはIn、AlおよびGaが挙げられる。
V族元素としては、具体的にはP、NおよびAsが挙げられる。
コアを形成する組成としては、特に限定はないが、発光特性の観点からはInPが好ましい。
【0018】
II族元素としては、特に限定はないが、例えばZnおよびMg等が挙げられる。
VI族元素としては、例えば、S、Se、TeおよびOが挙げられる。
シェルを形成する組成としては、特に限定はないが、量子閉じ込め効果の観点からは、ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTeSおよびZnTeSe等が好ましい。特に半導体ナノ粒子の表面にZn元素が存在している場合、本発明の効果をより発揮することができる。
【0019】
複数のシェルを有する場合、前述した組成のシェルが少なくとも1つ含まれていればよい。また、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを有している場合、シェルは必ずしも組成表記通りの組成である必要はない。
ここで、本発明において、シェルがコアの少なくとも一部を覆っているかどうかや、シェル内部の元素分布は、例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)を用いて組成分析解析することにより確認することができる。
【0020】
本発明において、半導体ナノ粒子の平均粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察される粒子画像において、10個以上の粒子の粒径を面積円相当径(Heywood径)で算出することにより測定することができる。発光特性の点から、粒度分布は狭いことが好ましく、粒径の変動係数が15%以下であることが好ましい。ここで、変動係数とは「変動係数=粒径の標準偏差/平均粒径」で定義される。変動係数が15%以下であることで、より粒度分布の狭い半導体ナノ粒子が得られていることの指標になる。
【0021】
以下に半導体ナノ粒子の作製方法に関する例を開示する。
III族の前駆体、V族の前駆体、および必要に応じて添加物を溶媒中で混合し得られた前駆体混合液を加熱することで、半導体ナノ粒子のコアを形成することができる。
溶媒としては配位性溶媒や非配位性溶媒が用いられる。溶媒の例としては、1-オクタデセン、ヘキサデカン、スクアラン、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン、およびトリオクチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
III族の前駆体としては、前記III族元素を含む酢酸塩、カルボン酸塩、およびハロゲン化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
V族の前駆体としては、前記V族元素を含む有機化合物やガスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前駆体がガスの場合には、前記ガス以外を含む前駆体混合液にガスを注入しながら反応させることでコアを形成することができる。
【0022】
半導体ナノ粒子は、本発明の効果を害さない限り、III族、およびV族以外の元素を1種またはそれ以上含んでいてもよく、その場合は前記元素の前駆体をコア形成時に添加すればよい。
添加物としては、例えば、分散剤としてカルボン酸、アミン類、チオール類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類、ホスフィン酸類、およびホスホン酸類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。分散剤は溶媒を兼ねることもできる。
半導体ナノ粒子のコアを形成後、必要に応じてハロゲン化物を加えることで、半導体ナノ粒子の発光特性を向上させることができる。
【0023】
ある実施形態では、In前駆体、および必要に応じて分散剤を溶媒中に添加した金属前駆体溶液を真空下で混合し、一旦100℃~300℃で6時間~24時間加熱した後、さらにP前駆体を添加して200℃~400℃で3分~60分加熱後、冷却する。さらにハロゲン前駆体を添加し、25℃~300℃、好ましくは100℃~300℃、より好ましくは150℃~280℃で加熱処理することで、コア粒子を含むコア粒子分散液を得ることができる。
【0024】
合成されたコア粒子分散液に、シェル形成前駆体を添加することにより、半導体ナノ粒子はコア-シェル構造をとり、蛍光量子効率(QY)および安定性を高めることができる。
シェルを構成する元素はコア粒子の表面で合金やヘテロ構造、またはアモルファス構造等の構造を取っていると思われるが、一部は拡散によりコア粒子の内部に移動していることも考えられる。
【0025】
添加されたシェル形成元素は、主にコア粒子の表面付近に存在し、半導体ナノ粒子を外的因子から保護する役割を持っている。半導体ナノ粒子のコア-シェル構造はシェルがコアの少なくとも一部を覆っていることが好ましく、さらに好ましくはコア粒子の表面全体を均一に覆っていることが好ましい。
【0026】
ある実施形態では、前述したコア粒子分散液にZn前駆体とSe前駆体を添加後、150℃~300℃、好ましくは180℃~250℃で加熱し、その後Zn前駆体とS前駆体を添加し、200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃で加熱する。これによりコア-シェル型の半導体ナノ粒子を得ることができる。
ここで、特に限定するものではないが、Zn前駆体としては、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛およびミリスチン酸亜鉛等のカルボン酸塩や、塩化亜鉛および臭化亜鉛等のハロゲン化物、ジエチル亜鉛等の有機塩等を用いることができる。
Se前駆体としては、トリブチルホスフィンセレニド、トリオクチルホスフィンセレニドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンセレニドなどのホスフィンセレニド類、ベンゼンセレノールおよびセレノシステインなどのセレノール類、およびセレン/オクタデセン溶液などを使用することができる。
S前駆体としては、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンスルフィドなどのホスフィンスルフィド類、オクタンチオール、ドデカンチオールおよびオクタデカンチオールなどのチオール類、および硫黄/オクタデセン溶液などを使用することができる。
シェルの前駆体はあらかじめ混合し、一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよいし、それぞれ別々に一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよい。シェル前駆体を複数回に分けて添加する場合は、各シェル前駆体添加後にそれぞれ温度を変えて加熱してもよい。
【0027】
本発明において半導体ナノ粒子の作製方法は特に限定されず、上記に示した方法の他、従来行われている、ホットインジェクション法や、均一溶媒法、逆ミセル法、CVD法等による作製方法や、任意の方法を採用しても構わない。
【0028】
-リガンド-
本発明において、半導体ナノ粒子複合体は前記半導体ナノ粒子の表面にリガンドが配位したものである。ここで述べる配位とは、配位子が半導体ナノ粒子の表面に化学的に影響していることを表す。半導体ナノ粒子の表面に配位結合や他の任意の結合様式(例えば共有結合、イオン結合、水素結合等)で結合していてもよいし、あるいは半導体ナノ粒子の表面の少なくとも一部に配位子を有している場合には、必ずしも結合を形成していなくてもよい。
【0029】
本発明において、半導体ナノ粒子に配位するリガンドは、有機基と配位性基からなる。半導体ナノ粒子の表面には、脂肪族チオールリガンドおよび極性リガンドを含む2種以上のリガンドが配位している。脂肪族チオールリガンドは、有機基が脂肪族炭化水素基であり、配位性基がメルカプト基である。また、極性リガンドは、有機基に親水性官能基を含む。
【0030】
脂肪族チオールリガンドの有機基は、炭素数が6~14の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族チオールリガンドの有機基の構造は、直鎖、分岐、または非芳香環のいずれでもよく、有機基の炭素数が6~14の範囲にあることで高い蛍光量子効率が得られる。前記脂肪族チオールリガンドは、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、およびドデカンチオールからなる群より選択される1つまたは複数であることが好ましい。脂肪族チオールリガンドにこれらのリガンドを採用することで、より高い蛍光量子効率が得られる。
脂肪族チオールリガンドの配位性基はメルカプト基であるため、脂肪族チオールリガンドは半導体ナノ粒子の表面に強固に配位することができる。
【0031】
極性リガンドは有機基に親水性官能基を有する。前記親水性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合およびシロキサン結合のうち少なくとも1つが選択される。極性リガンドの有機基に親水性官能基を有することで、極性を有する分散媒への分散が可能となる。特に極性リガンドの有機基にエーテル結合を含む場合、高い蛍光量子効率が得られ、かつ幅広い極性分散媒に分散可能となる。幅広い極性分散媒に分散可能であると、リガンドが半導体ナノ粒子の表面に配位した半導体ナノ粒子複合体を樹脂に含有させる用途に用いる際、リガンドと樹脂の反応がほぼ起こらないため、樹脂の選択の幅が広がることにつながる。
【0032】
極性リガンドの配位性基は、半導体ナノ粒子への配位の強さから、メルカプト基またはカルボキシル基が好ましく、特にメルカプト基が好ましい。
【0033】
極性リガンドの分子量は50以上、600以下であることが好ましく、50以上、450以下であることがさらに好ましい。分子量が600以下のリガンドを使用することで、半導体ナノ粒子複合体のサイズならびに体積が大きくなることを抑制し、半導体ナノ粒子複合体を分散液や組成物、硬化膜等に応用する際に、これらに対する半導体ナノ粒子複合体の質量分率を高くすることが容易になる。一方、分子量が50以上であると立体障害の効果が十分に発揮され、凝集等の発生を抑制できる。
なお、半導体ナノ粒子複合体における極性リガンドの分子量を上述した範囲にすることで、前記半導体ナノ粒子複合体は、後述する有機分散媒に高質量分率で分散可能となる。
【0034】
脂肪族チオールリガンドと極性リガンドの質量比(脂肪族チオールリガンド/極性リガンド)は、0.05~1.00であればよい。前記質量比がこの範囲にあることで、高い蛍光量子効率が得られる。前記脂肪族チオールリガンドと極性リガンドが質量比(脂肪族チオールリガンド/極性リガンド)で1.00を超えると、SP値8.5以上の極性分散媒への分散が困難になりうる。前記質量比(脂肪族チオールリガンド/極性リガンド)は、0.10~1.00であることがより好ましく、0.20~0.80であることが更に好ましい。
【0035】
また、リガンドが前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンド以外のリガンドを含む場合は、全リガンドに対して前記脂肪族チオールリガンドと極性リガンドの合計の質量分率が0.7以上であることが好ましい。前記質量分率を0.7以上とすることにより、半導体ナノ粒子複合体は、極性分散媒への分散が容易になり、また、蛍光量子効率が低くならないようにすることができる。前記リガンド全体に占める前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンドの合計の質量分率は、0.8以上であることがより好ましい。
【0036】
半導体ナノ粒子の表面に配位している前記脂肪族チオールリガンドと極性リガンドの質量比は1H-NMRを用いて定量できる。得られた半導体ナノ粒子複合体を重溶媒に分散させ、磁場中で電磁波を与え1Hの核磁気共鳴を起こさせ、このとき得られる自由誘導減衰信号をフーリエ解析し、1H-NMRスペクトルを得る。1H-NMRスペクトルはリガンド種の構造に対応した位置に特徴的なシグナルを与えるため、これらのシグナルの位置と積分強度比から、各リガンドの種類を同定し、比率を算出する。重溶媒は例えばCDCl、アセトン-d6、N-ヘキサン-D14などが挙げられる。
【0037】
(半導体ナノ粒子複合体の製造方法)
以下に半導体ナノ粒子複合体の製造方法に関する例を開示する。
半導体ナノ粒子へのリガンドの配位方法に制限はないが、リガンドの配位力を利用した配位子交換法を用いることができる。具体的には、前述した半導体ナノ粒子の製造の過程で使用した有機化合物が半導体ナノ粒子の表面に配位した状態である半導体ナノ粒子を、目的とするリガンドと液相で接触させることで、目的とするリガンドが半導体ナノ粒子表面に配位した半導体ナノ粒子複合体を得ることができる。この場合、通常、後述するような溶媒を使用した液相反応とするが、使用するリガンドが反応条件において液体である場合にはリガンド自身を溶媒とし、他の溶媒を添加しない反応形式をとることも可能である。
【0038】
また、リガンドを配位させる前に後述するような精製工程と再分散工程を行うと、所望のリガンドを容易に配位させることができる。
なお、半導体ナノ粒子の合成時に非配位性溶媒を用いた場合、所望のリガンドが配位する際に半導体ナノ粒子表面の欠陥の生成を最小限に抑えることができ、蛍光量子効率の低下を防ぐことができる。
【0039】
ある実施形態では、半導体ナノ粒子製造後の半導体ナノ粒子含有分散液を精製後、再分散させた後、脂肪族チオールリガンドを含む溶媒を添加し、さらに極性リガンドを含む溶媒を添加し、窒素雰囲気下で50℃~200℃で、1分~120分間攪拌することで、所望の半導体ナノ粒子複合体を得ることができる。脂肪族チオールリガンドと極性リガンドは同時に添加しても構わない。
【0040】
半導体ナノ粒子ならびに半導体ナノ粒子複合体は下記のように精製することができる。一実施形態において、アセトン等の極性転換溶媒を添加することによって半導体ナノ粒子複合体を分散液から析出させることができる。析出した半導体ナノ粒子複合体を濾過または遠心分離により回収することができ、一方、未反応の出発物質および他の不純物を含む上澄みは廃棄または再利用することができる。次いで析出した半導体ナノ粒子複合体はさらなる分散媒で洗浄し、再び分散することができる。この精製プロセスは、例えば、2~4回、または所望の純度に到達するまで、繰り返すことができる。
本発明において、半導体ナノ粒子複合体の精製方法は特に限定されず、上記に示した方法の他、例えば、凝集、液液抽出、蒸留、電着、サイズ排除クロマトグラフィー及び/又は限外濾過や任意の方法を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0041】
(半導体ナノ粒子複合体分散液)
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液に含まれる半導体ナノ粒子複合体は、上述の本発明の半導体ナノ粒子複合体の構成を採用することができる。本発明において、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散している状態とは、半導体ナノ粒子複合体と分散媒とを混合させた場合に、半導体ナノ粒子複合体が沈殿しない状態、もしくは目視可能な濁り(曇り)として残留しない状態であることを表す。なお、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散しているものを半導体ナノ粒子複合体分散液と表す。
【0042】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は有機分散媒に分散し、半導体ナノ粒子複合体分散液を形成することができる。本発明の半導体ナノ粒子複合体はSP値が8.5以上の有機分散媒、さらにはSP値が9.0以上の有機分散媒やSP値が10.0以上の有機分散媒にも分散し、半導体ナノ粒子複合体分散液を形成する。
ここでのSP値はヒルデブランド溶解度パラメーターであり、ハンセン溶解度パラメーターから算出した値である。ハンセン溶解度パラメーターは、ハンドブック、例えば“Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook”,第2版、C. M. Hansen (2007),中の値や、HansonおよびAbbot et al.によって提供されているPractice(HSPiP)プログラム(第2版)を用いて決定することができる。
【0043】
脂肪族チオールリガンドと極性リガンドの質量比を前述した比率にすることで、有機分散媒としてヘキサン、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、イソプロピルアルコール(IPA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、エタノール、およびメタノールからなる群より選択されるいずれか1種以上の有機分散媒に半導体ナノ粒子複合体を分散させることが可能となる。特に、有機分散媒として、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類などの極性有機分散媒を選択することが可能となる。これらの有機分散媒に分散させることで、後述する硬化膜や樹脂への分散に応用する際に、半導体ナノ粒子複合体の分散性を保ったまま使用することができる。特に、フォトレジストの分野ではPGMEAおよびPGMEが希釈溶媒として一般的に用いられており、半導体ナノ粒子複合体がPGMEAおよびPGMEへ分散可能であると、半導体ナノ粒子複合体をフォトレジスト分野に広く応用することができる。
【0044】
半導体ナノ粒子複合体が上述した構成をとることで、半導体ナノ粒子複合体を高質量分率で有機分散媒に分散させることができ、その結果、半導体ナノ粒子複合体分散液中における半導体ナノ粒子の質量分率を20質量%以上、さらには25質量%以上、さらには35質量%以上とすることができる。
【0045】
さらに、本発明において、半導体ナノ粒子複合体分散液の分散媒としてモノマーを選択することができる。モノマーは特に限定しないが、半導体ナノ粒子の応用先が幅広く選択できる(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリルモノマーは半導体ナノ粒子複合体分散液の応用に応じて、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3、5、5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n≒2)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルりん酸、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イロプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、およびN-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどの(メタ)アクリルモノマーから選択される。これらは単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。特にアクリルモノマーは半導体ナノ粒子複合体分散液の応用に応じて、ラウリル(メタ)アクリレート、および1、6-ヘキサジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
なお、半導体ナノ粒子複合体分散液の分散媒として、プレポリマーを選択することができる。プレポリマーは特に限定しないが、アクリル樹脂プレポリマー、シリコーン樹脂プレポリマー、およびエポキシ樹脂プレポリマーが挙げられる。
【0046】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液は、蛍光量子効率(QY)は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。半導体ナノ粒子複合体分散液の蛍光量子効率が80%以上であることで、より効率よく色変換をすることができる。半導体ナノ粒子複合体分散液の蛍光量子効率は量子効率測定システムを用いて測定することができる。
【0047】
(半導体ナノ粒子複合体組成物)
本発明において、半導体ナノ粒子複合体分散液の分散媒としてモノマーまたはプレポリマーを選択し、半導体ナノ粒子複合体組成物を形成することができる。
モノマーまたはプレポリマーは、特に限定しないが、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性化合物、シロキサン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、およびフェノール誘導体などが挙げられる。
さらに、半導体ナノ粒子複合体組成物は架橋剤を添加してもよい。
架橋剤は半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、多官能(メタ)アクリレート、多官能シラン化合物、多官能アミン、多官能カルボン酸、多官能チオール、多官能アルコール、および多官能イソシアネートなどから選択される。
さらに、半導体ナノ粒子複合体組成物中にペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、およびジクロロメタンおよびクロロホルム等のハロゲン化アルキルなど、硬化に影響しない各種有機溶媒をさらに含むことができる。なお、上記の有機溶媒は、半導体ナノ粒子複合体組成物の希釈用としてだけでなく、有機分散媒としても用いることができる。すなわち、本発明の半導体ナノ粒子複合体を上記の有機溶媒に分散させて、半導体ナノ粒子複合体分散液とすることも可能である。
【0048】
また、半導体ナノ粒子複合体組成物は、半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、適切な開始剤や散乱剤、触媒、バインダー、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、および分散剤等を含んでもよい。
さらに、半導体ナノ粒子複合体組成物、あるいは後述する半導体ナノ粒子複合体硬化膜の光学特性を向上するために、半導体ナノ粒子複合体組成物に散乱剤を含んでもよい。散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物であり、これらの粒径は100nm~500nmであることが好ましい。散乱の効果の観点から、散乱剤の粒径は200nm~400nmであることがさらに好ましい。散乱剤が含まれることで、吸光度が2倍程度向上する。散乱剤の含有量は組成物に対して2質量%~30質量%であることが好ましく、組成物のパターン性の維持の観点から5質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0049】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の構成により、半導体ナノ粒子複合体組成物中の半導体ナノ粒子の質量分率を30質量%以上にすることができる。半導体ナノ粒子複合体組成物中の半導体ナノ粒子の質量分率を30質量%~95質量%とすることで、後述する硬化膜中にも高質量分率で半導体ナノ粒子複合体ならびに半導体ナノ粒子を分散させることができる。
【0050】
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、10μmの膜にしたとき、前記膜の法線方向からの波長450nmの光に対する吸光度が1.0以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。これにより、バックライトの光を効率的に吸収できるため、後述の硬化膜の厚みを低減することができ、適用するデバイスを小型化することができる。
【0051】
(希釈組成物)
希釈組成物は、前述の本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物が有機溶媒で希釈されてなるものである。
半導体ナノ粒子複合体組成物を希釈する有機溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、およびジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキルなどが挙げられる。これらの中でも、幅広い樹脂への溶解性および塗膜時の被膜均一性の観点からは、グリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類が好ましい。
【0052】
(半導体ナノ粒子複合体硬化膜)
本発明において、半導体ナノ粒子複合体硬化膜とは半導体ナノ粒子複合体を含有した膜であり、硬化しているものを表す。半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、前述の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を膜状に硬化することで得ることができる。
半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドと、高分子マトリクスを含んでいる。
高分子マトリクスとしては特に限定はないが、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。なお、前述した半導体ナノ粒子複合体組成物を硬化させることで半導体ナノ粒子複合体硬化膜を得てもよい。半導体ナノ粒子複合体硬化膜は架橋剤をさらに含んでもよい。
【0053】
膜を硬化させる方法は特に限定されないが、熱処理、紫外線処理など膜を構成する組成物に適した硬化方法により硬化することができる。
半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれる、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドは、前述した半導体ナノ粒子複合体を構成していることが好ましい。本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれる半導体ナノ粒子複合体を前述したような構成にすることで、半導体ナノ粒子複合体をより高質量分率で硬化膜中に分散させることが可能である。半導体ナノ粒子複合体硬化膜中の半導体ナノ粒子の質量分率は30質量%以上であることが望ましく、さらには40質量%以上であることがより望ましい。ただし、70質量%以上にすると、膜を構成する組成物が少なくなり、膜を硬化形成することが困難になる。
【0054】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、半導体ナノ粒子複合体を高質量分率で含有しているため、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の吸光度を高めることができる。半導体ナノ粒子複合体硬化膜を10μmの厚さとした時、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の法線方向からの波長450nmの光に対して、吸光度は1.0以上が好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
【0055】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜には、高い発光特性を有する半導体ナノ粒子複合体を含有しているため、発光特性が高い半導体ナノ粒子複合体硬化膜を提供できる。半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0056】
半導体ナノ粒子複合体硬化膜の厚みは、半導体ナノ粒子複合体硬化膜を適用するデバイスを小型化するために、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0057】
(半導体ナノ粒子複合体パターニング膜および表示素子)
半導体ナノ粒子複合体パターニング膜は、前述の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を膜状にパターン形成することで得ることができる。半導体ナノ粒子複合体組成物および希釈組成物をパターン形成する方法は特に限定されず、例えば、スピンコート、バーコート、インクジェット、スクリーン印刷、およびフォトリソグラフィ等が挙げられる。
表示素子は、上記の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を用いるものである。例えば、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を波長変換層として用いることで、優れた蛍光量子効率を有する表示素子を提供することができる。
【0058】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液は、以下の構成を採用する。
(1)半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した分散液であって、
前記半導体ナノ粒子複合体は、脂肪族チオールリガンドおよび極性リガンドを含む2種以上のリガンドと、前記リガンドが表面に配位した半導体ナノ粒子と、からなり、
前記リガンドは有機基と配位性基とからなり、
前記極性リガンドは、前記有機基に親水性官能基を含み、
前記有機分散媒のSP値は8.5以上である、
半導体ナノ粒子複合体分散液。
(2)前記有機分散媒のSP値が9.0以上である、
上記(1)に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(3)前記有機分散媒が、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、およびグリコールエーテルエステル類からなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
上記(1)または(2)に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(4)前記有機分散媒が、アセトン、PGMEA、PGME、IPA、エタノール、およびメタノールから選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
上記(1)または(2)に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(5)前記有機分散媒が、グリコールエーテル類、およびグリコールエーテルエステル類からなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
上記(1)または(2)に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(6)前記有機分散媒が、PGMEA、およびPGMEからなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
上記(1)または(2)に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(7)前記半導体ナノ粒子複合体分散液の蛍光量子効率が80%以上である、
上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(8)前記脂肪族チオールリガンドと、前記極性リガンドの質量比(脂肪族チオールリガンド/極性リガンド)が0.05~1.00である、
上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(9)前記脂肪族チオールリガンドの炭素数が6~14である、
上記(1)~(8)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(10)前記脂肪族チオールリガンドが、ヘキサンチオール、オクタンチオール、およびドデカンチオールのうちの1つまたは複数である、
上記(1)~(9)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(11)前記極性リガンドの分子量が600以下である、
上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(12)前記極性リガンドの分子量が450以下である、
上記(1)~(11)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(13)前記極性リガンドの有機基がヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合およびシロキサン結合のうち少なくとも一つを有する、
上記(1)~(12)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(14)前記極性リガンドの有機基がエーテル結合を有する、
上記(1)~(13)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(15)前記極性リガンドの配位性基がメルカプト基またはカルボキシル基である、
上記(1)~(14)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(16)前記極性リガンドの配位性基がメルカプト基である、
上記(1)~(15)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(17)前記表面リガンド全体に占める前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンドの合計の質量分率が0.7以上である、
上記(1)~(16)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(18)前記表面リガンド全体に占める前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンドの合計の質量分率が0.8以上である、
上記(1)~(17)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(19)前記半導体ナノ粒子の表面組成にZnを含有する、
上記(1)~(18)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(20)前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
上記(1)~(19)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(21)前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が85%以上である、
上記(1)~(20)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(22)前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が40nm以下である、
上記(1)~(21)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(23)前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が35nm以下である、
上記(1)~(22)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(24)前記半導体ナノ粒子がInおよびPを含む、
上記(1)~(23)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(25)前記半導体ナノ粒子の前記半導体ナノ粒子複合体分散液に対する質量分率が20質量%以上である、
上記(1)~(24)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(26)前記半導体ナノ粒子の前記半導体ナノ粒子複合体分散液に対する質量分率が25質量%以上である、
上記(1)~(25)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
(27)前記有機分散媒が、モノマーまたはプレポリマーである、
上記(1)~(26)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【0059】
また、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物および半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、以下の製造方法により製造することができる。
(28)半導体ナノ粒子複合体組成物の製造方法であって、
上記(1)~(27)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液に架橋剤および分散媒のいずれかあるいは両方を添加する、
半導体ナノ粒子複合体組成物の製造方法。
(29)半導体ナノ粒子複合体硬化膜の製造方法であって、
上記(28)に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物の製造方法によって得られた半導体ナノ粒子複合体組成物を硬化する、
半導体ナノ粒子複合体硬化膜の製造方法。
【0060】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、以下の構成を採用する。
<1>半導体ナノ粒子の表面に、脂肪族チオールリガンドおよび極性リガンドを含む2種以上のリガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、
前記リガンドは有機基と配位性基とからなり、
前記脂肪族チオールリガンドは、前記有機基が脂肪族炭化水素基であって、かつ前記配位性基がメルカプト基であり、
前記極性リガンドは、前記有機基に親水性官能基を含み、
前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンドとの質量比(脂肪族チオールリガンド/極性リガンド)が0.05~1.00である、
半導体ナノ粒子複合体。
<2>前記半導体ナノ粒子複合体は、SP値8.5以上の有機分散媒に分散可能である、
上記<1>に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<3>前記半導体ナノ粒子複合体は、SP値9.0以上の有機分散媒に分散可能である、
上記<1>または<2>に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<4>前記有機分散媒が、アルコール類、グリコールエーテル類、およびグリコールエーテルエステル類からなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
上記<2>または<3>に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<5>前記有機分散媒がアセトン、PGMEA、PGME、IPA、エタノール、およびメタノールからなる群より選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
上記<2>~<4>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<6>前記脂肪族チオールリガンドの炭素数が6~14である、
上記<1>~<5>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<7>前記脂肪族チオールリガンドが、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオールおよびドデカンチオールのうちの1つまたは複数である、
上記<1>~<6>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<8>前記極性リガンドの分子量が600以下である、
上記<1>~<7>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<9>前記極性リガンドの分子量が450以下である、
上記<1>~<8>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<10>前記リガンド全体に占める前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンドの合計の質量分率が0.7以上である、
上記<1>~<9>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<11>前記リガンド全体に占める前記脂肪族チオールリガンドと前記極性リガンドの合計の質量分率が0.8以上である、
上記<1>~<10>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<12>前記極性リガンドの前記有機基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合およびシロキサン結合のうち少なくとも一つを有する、
上記<1>~<11>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<13>前記極性リガンドの前記有機基がエーテル結合を含む、
上記<1>~<12>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<14>前記極性リガンドの配位性基がメルカプト基またはカルボキシル基である、
上記<1>~<13>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<15>前記極性リガンドの配位性基がメルカプト基である、
上記<1>~<14>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<16>前記半導体ナノ粒子複合体が、前記有機分散媒に分散可能であり、前記半導体ナノ粒子の質量分率で20質量%以上となるように分散可能である、
上記<2>~<15>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<17>前記半導体ナノ粒子複合体が、前記有機分散媒に分散可能であり、前記半導体ナノ粒子の質量分率で25質量%以上となるように分散可能である、
上記<2>~<16>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<18>前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
上記<1>~<17>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<19>前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が85%以上である、
上記<1>~<18>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<20>前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が40nm以下である、
上記<1>~<19>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<21>前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が35nm以下である、
上記<1>~<20>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<22>前記半導体ナノ粒子がInおよびPを含む、
上記<1>~<21>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
<23>前記半導体ナノ粒子は該半導体ナノ粒子の表面にZnを含有する、
上記<1>~<22>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
【0061】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液は、以下の構成を採用する。
<24>上記<1>~<23>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体が有機分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体分散液。
【0062】
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、以下の構成を採用する。
<25>上記<1>~<23>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であって、
前記分散媒はモノマーまたはプレポリマーである、
半導体ナノ粒子複合体組成物。
【0063】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、以下の構成を採用する。
<26>上記<1>~<23>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した、
半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
【0064】
本明細書に記載の構成および/または方法は例として示され、多数の変形形態が可能であるため、これらの具体例または実施例は限定の意味であると見なすべきではないことが理解されよう。本明細書に記載の特定の手順または方法は、多数の処理方法の1つを表しうる。したがって、説明および/または記載される種々の行為は、説明および/または記載される順序で行うことができ、または省略することもできる。同様に前述の方法の順序は変更可能である。
本開示の主題は、本明細書に開示される種々の方法、システムおよび構成、並びにほかの特徴、機能、行為、および/または性質のあらゆる新規のかつ自明でない組み合わせおよび副次的組み合わせ、並びにそれらのあらゆる均等物を含む。
【実施例
【0065】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
以下の方法に従って、InP系半導体ナノ粒子複合体の作製を行った。
(コア)
酢酸インジウム(0.3mmol)とオレイン酸亜鉛(0.6mmol)を、オレイン酸(0.9mmol)と1-ドデカンチオール(0.1mmol)とオクタデセン(10mL)の混合物に加え、真空下(<20Pa)で約120℃に加熱し、1時間反応させた。真空下で反応させた混合物を25℃、窒素雰囲気下にして、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(0.2mmol)を加えたのち、約300℃に加熱し、10分間反応させた。反応液を25℃に冷却し、オクタン酸クロリド(0.45mmol)を注入し、約250℃で30分間加熱後、25℃に冷却して、InP系半導体ナノ粒子の分散液を得た。
このInP系半導体ナノ粒子をコアとして使用し、コア表面に以下のようにシェルを形成してコア-シェル型半導体ナノ粒子を作製し、光学特性の測定を行った。
【0067】
(シェル前駆体)
シェルの作製にあたって、まずは以下の前駆体の調製を行った。
<Zn前駆体溶液の調製>
40mmolのオレイン酸亜鉛と75mLのオクタデセンを混合し、真空化で110℃にて1時間加熱し、[Zn]=0.4MのZn前駆体を調製した。
<Se前駆体(セレン化トリオクチルホスフィン)の調製>
22mmolのセレン粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[Se]=2.2Mのセレン化トリオクチルホスフィンを得た。
<S前駆体(硫化トリオクチルホスフィン)の調製>
22mmolの硫黄粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[S]=2.2Mの硫化トリオクチルホスフィンを得た。
上記のようにして得られた各前駆体を用いて、前記InP系半導体ナノ粒子(コア)の表面に次のようにしてシェルの形成を行った。
【0068】
(シェル)
コアの分散液を200℃まで加熱した。200℃において0.75mLのZn前駆体溶液、セレン化トリオクチルホスフィン(Se前駆体)を同時に添加し、30分間反応させInP系半導体ナノ粒子の表面にZnSeシェルを形成した。
さらに、1.5mLのZn前駆体溶液と0.6mmolの硫化トリオクチルホスフィン(S前駆体)を添加し、250℃に昇温して1時間反応させZnSシェルを形成した。
合成で得られた半導体ナノ粒子の反応溶液をアセトンに加え、良く混合したのち遠心分離した。遠心加速度は4000Gとした。沈殿物を回収し、沈殿物にノルマルヘキサンを加え、分散液を作製した。この操作を数回繰り返し、精製した半導体ナノ粒子を得た。
【0069】
(リガンド)
-リガンド単体の作製-
<PEG-SHの調製方法>
フラスコに210gのメトキシPEG-OH(分子量400)および93gのトリエチルアミンを収め、420mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた。溶液を0℃に冷却し、反応熱で反応溶液の温度が5℃を超えないよう注意しながら、窒素雰囲気下で51gのメタンスルホン酸クロリドを徐々に滴下した。その後、反応溶液を室温に昇温し2時間撹拌した。この溶液をクロロホルム-水系で抽出し、有機相を回収した。得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾過で取り除いたのち、濾液をエバポレーションにより濃縮して、オイル状の中間体を得た。これを別のフラスコに移し、窒素雰囲気下で400mLの1.3Mのチオ尿素水溶液を加えた。溶液を2時間還流したのち、21gのNaOHを加え、さらに1.5時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、1M HCl水溶液をpH=7になるまで加え、中和した。得られた溶液をクロロホルム-水系で抽出し、目的とするリガンド(PEG-SH、分子量400)を得た。
【0070】
<N-アセチルN-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドの調製方法>
1.2g(10mmol)のN-(2-sulfanylethyl)acetamideおよび1.7mL(12mmol)のトリエチルアミンを100mLの丸底フラスコに収め、30mLの脱水ジクロロメタンに溶解させた。溶液を0℃に冷却し、窒素雰囲気下で0.87mL(10mmol)のプロパノイルクロリドを、溶液の温度が5℃以上にならないよう注意しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温まで昇温し、2時間撹拌した。反応溶液を濾過し、濾液をクロロホルムで希釈した。溶液を10%HCl水溶液、10%NaCO水溶液、飽和NaCl水溶液の順に抽出し有機相を回収した。有機相をエバポレーションで濃縮したのち、ヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を得た。
【0071】
<PEG-COOHの調製方法>
メトキシPEG-OH(分子量350、15g)をトルエン(100mL)に60℃で溶解し、4.2gのカリウムtert-ブトキシドを加え、6時間反応させた。その後、5.5gのエチルブロモアセテートを混合物に添加し、PEG中のヒドロキシル基は酢酸エチル基によって保護した。混合物を濾過し、濾液をジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿を1M NaOH溶液(40mL)に溶解し、NaCl(10g)を加え、室温で1時間撹拌してPEGの末端のエチル基を除外した。この溶液を6M HClの添加によりpH3.0に調整した。得られた溶液をクロロホルム-水系で抽出し、分子量400のPEG-COOHを得た。
【0072】
メトキシPEG-OH(分子量350、15g)をメトキシPEG-OH(分子量550、21g)に変え、上記と同様に調製を行うことで、分子量600のPEG-COOHを得た。
メトキシPEG-OH(分子量350、15g)をメトキシPEG-OH(分子量700、26g)に変え、上記と同様に調製を行うことで、分子量700のPEG-COOHを得た。
メトキシPEG-OH(分子量350、15g)をメトキシPEG-OH(分子量950、36g)に変え、上記と同様に調製を行うことで、分子量1000のPEG-COOHを得た。
【0073】
<TBP-Sの調製方法>
窒素雰囲気下でフラスコに3.2gの硫黄を収め、25mLのトリブチルホスフィンを加え、終夜撹拌してTBP-Sを得た。
【0074】
<TOP-Sの調製方法>
窒素雰囲気下でフラスコに3.2gの硫黄を収め、50mLのトリオクチルホスフィンを加え、終夜撹拌してTOP-Sを得た。
【0075】
(半導体ナノ粒子複合体の作製)
フラスコに、精製した半導体ナノ粒子を質量比で10質量%となるように1-オクタデセンに分散させた半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液を調製した。調製した半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液10.0gをフラスコに収め、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオール(DDT)を0.2g添加し、さらに極性リガンドとしてPEG-SHを4g添加し、窒素雰囲気下で110℃、60分間攪拌し、25℃まで冷却することで、半導体ナノ粒子複合体を得た。前記半導体ナノ粒子複合体を含む反応溶液を遠沈管に移し、4000Gで20分間遠心分離すると、透明な1-オクタデセン相と半導体ナノ粒子複合体相に分離した。1-オクタデセン相を取り除き、残った半導体ナノ粒子複合体相を回収した。
得られた半導体ナノ粒子複合体相にアセトン5.0mLを加え、分散液を作製した。得られた分散液に50mLのノルマルヘキサンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を数回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0076】
(半導体ナノ粒子複合体の光学特性測定)
半導体ナノ粒子複合体の光学特性は蛍光量子効率測定システム(大塚電子製、QE-2100)を用いて測定した。得られた半導体ナノ粒子複合体を分散媒に分散させ、450nmの単一光を当て発光スペクトルを得、ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)と半値幅(FWHM)を算出した。分散媒にはPGMEAを用いた。
【0077】
(半導体ナノ粒子複合体の分散性試験)
精製された半導体ナノ粒子複合体を示差熱重量分析(DTA-TG)で550℃まで加熱後、10分保持し、降温した。分析後の残留質量を半導体ナノ粒子の質量とし、この値から半導体ナノ粒子複合体中に対する半導体ナノ粒子の質量比を確認した。
前記質量比を参考に、半導体ナノ粒子の質量分率が20質量%となるように、半導体ナノ粒子複合体に有機分散媒を添加し、その時の分散状態を確認した。分散していたものには○を、沈殿、および濁りが観察されたものには×を表1-1~表1-7に記載した。
表2には有機分散媒にPGMEAを用いて、半導体ナノ粒子の質量分率を20質量%~35質量%にした際の分散状態を、分散したものには〇を、沈殿、および濁りが観察されたものには×を記載した。
なお、分散媒として2種類の有機分散媒を用いる場合は、1:1の体積比で混合した混合分散媒を用いた。
【0078】
精製された半導体ナノ粒子複合体について、半導体ナノ粒子に配位しているリガンドを、核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子株式会社製JNM-LA400)を用いて測定した。すべての測定において溶媒には重クロロホルムを、化学シフトの内標準物質にはテトラメチルシランを使用した。
図1は、実施例1で作製した半導体ナノ粒子複合体を1H-NMRで測定した結果である。0.8ppm~2.5ppm付近と3.5ppm~4.0ppm、5.4ppm付近にシグナルが観察された。なお、図2は、ドデカンチオール、オレイン酸およびPEG-SHの1H-NMRスペクトルを示す。
図1、および図2より、0.8ppm~2.5ppm付近と5.4ppm付近のシグナルは脂肪族チオールリガンドのアルキル基と炭素-炭素二重結合にそれぞれ起因することがわかり、3.5ppm~4.0ppm付近のシグナルは極性リガンドのエーテル結合に起因することが分かった。すなわち、ドデカンチオール、オレイン酸およびPEG-SHのシグナルを足し合わせることで、実施例1のNMRスペクトルで得られたシグナルを全て矛盾なく説明することができ、このことから、実施例1の半導体ナノ粒子複合体はリガンドとしてドデカンチオール、オレイン酸およびPEG-SHを含むことがわかる。
さらに、図1図2の比較から、0.8ppm~2.5ppm付近のシグナルはドデカンチオールおよびオレイン酸に、3.5ppm~4.0ppmのシグナルはPEG-SHに、5.4ppm付近のシグナルはオレイン酸にそれぞれ帰属することがわかる。これらのシグナルの面積比から、各リガンドの存在比をドデカンチオール:オレイン酸:PEG-SH=8:3:89と計算した。このように、1H-NMRスペクトルより各シグナルの位置とピーク面積から、リガンドの種類と存在比を決定することができる。
【0079】
(実施例2)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.5g、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0080】
(実施例3)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを1.0g、極性リガンドとしてPEG-SHを1.5g用いて、さらにオレイン酸を0.5g加えた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0081】
(実施例4)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを1.0g、極性リガンドとしてN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを1.5g用いて、さらにオレイン酸を0.5g加えた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0082】
(実施例5)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.3gと、ヘキサンチオールを0.2g使用し、さらに、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0083】
(実施例6)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.2g、極性リガンドとしてトリエチレングリコールモノメチルチオール(TEG-SH)を1.5g用いて、さらにオレイン酸を0.5g加えた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0084】
(実施例7)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてオクタンチオールを0.5g、極性リガンドとしてN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを4.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0085】
(実施例8)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてヘキサンチオールを0.5g、極性リガンドとしてN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを4.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0086】
(実施例9)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてヘキサンチオールを0.5g、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0087】
(実施例10)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてデカンチオールを1.0g、極性リガンドとしてN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを4.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0088】
(実施例11)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.2g、極性リガンドとしてPEG-COOH(分子量400)を6.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0089】
(実施例12)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.5g、極性リガンドとして3-メルカプトプロピオン酸メチルを2.0g用いて、さらにオレイン酸を0.5g加えた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0090】
(実施例13)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.5g、極性リガンドとしてPEG-COOH(分子量600)を6.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0091】
(実施例14)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.5g、極性リガンドとしてPEG-COOH(分子量750)を7.5g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0092】
(実施例15)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.5g、極性リガンドとしてPEG-COOH(分子量1000)を10.0g用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0093】
(実施例16)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを0.5g、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g用いて、さらにオレイン酸を1.5g添加した以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0094】
(比較例1)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドを加えずに、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g用いて、さらにトリブチルホスフィン(TBP)を4.0g添加した以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0095】
(比較例2)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドを加えずに、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g用いて、さらにトリオクチルホスフィン(TOP)を4.0g添加した以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0096】
(比較例3)
フラスコに、実施例1と同様の方法で精製した半導体ナノ粒子複合体1.0g、イソプロパノール10mLおよびPEG-SH4.0gを収めた。この溶液を窒素雰囲気下80℃で180分間撹拌し、25℃まで冷却した。反応溶液に50mLのノルマルヘキサンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。沈殿物に5.0mLのアセトンを加え、分散液を作製した。得られた分散に50mLのノルマルヘキサンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を数回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0097】
(比較例4)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールリガンドとしてドデカンチオールを2.0g、極性リガンドとしてN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを1.0g用いて、さらにオレイン酸を1.0g添加した。その後、窒素雰囲気下で110℃で、60分間攪拌し、25℃まで冷却した。前記反応溶液にノルマルヘキサン5.0mLを加え、分散液を作製した。得られた分散液に50mLのアセトンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を数回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。
比較例4の半導体ナノ粒子複合体はPGMEAへ分散しなかったため、光学特性はノルマルヘキサンに分散させて測定を行った。
【0098】
(比較例5)
半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、脂肪族チオールを添加せず、さらに、半導体ナノ粒子複合体を作製する工程で、極性リガンドとしてPEG-SHを4.0g用いて、さらにオレイン酸を1.0g添加した以外は実施例1と同様の方法で半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0099】
得られた半導体ナノ粒子複合体の発光特性と、リガンド質量比、分散媒への分散状態を表1-1~表1-7に記載した。
【0100】
なお、表1-1~表1-7に示されている略号の意味は次の通りである。
QY :蛍光量子効率
FWHM :発光スペクトルの半値幅
QD :半導体ナノ粒子(量子ドット)
DDT :ドデカンチオール
Hex-SH:ヘキサンチオール
Oct-SH:オクタンチオール
Dec-SH:デカンチオール
OA :オレイン酸
【0101】
【表1-1】
【0102】
【表1-2】
【0103】
【表1-3】
【0104】
【表1-4】
【0105】
【表1-5】
【0106】
【表1-6】
【0107】
【表1-7】
【0108】
【表2】
図1
図2