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特許7602208半導体ナノ粒子複合体組成物、希釈組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜、および表示素子
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  • 特許-半導体ナノ粒子複合体組成物、希釈組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜、および表示素子 図1
  • 特許-半導体ナノ粒子複合体組成物、希釈組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜、および表示素子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子複合体組成物、希釈組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜、および表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20241211BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20241211BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20241211BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20241211BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241211BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20241211BHJP
   C01B 25/08 20060101ALI20241211BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20241211BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20241211BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C09K11/08 G ZNM
C09K11/70
C09K11/02 Z
G02B5/20
G02B5/00 B
G02B5/00 Z
G02B5/02 B
C01B25/08 A
B82Y20/00
B82Y40/00
C08F2/44 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021521905
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021466
(87)【国際公開番号】W WO2020241874
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019103243
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019103244
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019103245
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019103246
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】城戸 信人
(72)【発明者】
【氏名】森山 喬史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋和
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148638(US,A1)
【文献】国際公開第2017/150297(WO,A1)
【文献】特表2015-509125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/、C08L、C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であって、
前記半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子と、前記半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドとを有し、
前記リガンドは有機基と、配位性基とを含み、
前記有機基は、ビニル基、ビニリデン基、およびビニレン基からなる群より選択されるいずれか一種以上を含む炭化水素基であり、
前記分散媒はモノマーまたはプレポリマーであり、
前記モノマーは、単官能の(メタ)アクリルモノマーであり、
前記プレポリマーは、(メタ)アクリル樹脂プレポリマー、シリコーン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、マレイン酸樹脂プレポリマー、ブチラール樹脂プレポリマー、ポリエステル樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、フェノール樹脂プレポリマー、およびポリウレタン樹脂プレポリマーからなる群より選択されるいずれか一種以上であり、
前記半導体ナノ粒子複合体組成物は、さらに多官能の架橋剤を含み、
前記リガンドの分子量は50以上、600以下であり、
前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が、0.05~0.50であり、
前記半導体ナノ粒子複合体組成物における前記半導体ナノ粒子の質量分率は30質量%以上である、
半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項2】
前記半導体ナノ粒子複合体組成物における前記半導体ナノ粒子の質量分率が40質量%以上である、
請求項1に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項3】
前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が60%以上である、
請求項1または2のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項4】
前記炭化水素基は置換基および/またはヘテロ原子を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項5】
前記リガンドは、エーテル基、エステル基およびアミド基から選ばれる1つ以上の基を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項6】
前記半導体ナノ粒子の平均粒径が10nm以下である、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項7】
前記リガンドが、1つまたはそれ以上のメルカプト基を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項8】
前記リガンドが、2以上のメルカプト基を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項9】
前記リガンドが2種類以上である、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項10】
前記半導体ナノ粒子がInおよびPを含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項11】
前記半導体ナノ粒子の表面にZnを含有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項12】
前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項13】
前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物が有機溶媒で希釈された、
希釈組成物。
【請求項15】
前記有機溶媒がグリコールエーテル類および/またはグリコールエーテルエステル類である、
請求項14に記載の希釈組成物。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物、または請求項14もしくは15に記載の希釈組成物を硬化した、
半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物、または請求項14もしくは15に記載の希釈組成物をパターン形成した、
半導体ナノ粒子複合体パターニング膜。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を含む、
表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ナノ粒子複合体組成物、希釈組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜、表示素子、および半導体ナノ粒子複合体分散液に関する。
本出願は、2019年5月31日出願の日本特許出願第2019-103243号、同日出願の日本特許出願2019-103244号、同日出願の日本特許出願2019-103245号および同日出願の日本特許出願2019-103246号に基づく優先権を主張し、前記日本特許出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
量子閉じ込め効果が発現するほど微小な半導体ナノ粒子は、粒径に依存したバンドギャップを有する。光励起、電荷注入等の手段によって半導体ナノ粒子内に形成された励起子は、再結合によりバンドギャップに応じたエネルギーの光子を放出するため、半導体ナノ粒子の組成とその粒径を適切に選択することにより、所望の波長での発光を得ることができる。
【0003】
半導体ナノ粒子は、研究初期はCdやPbを含む元素を中心に検討が行われてきたが、Cd、Pbが特定有害物質使用制限などの規制対象物質であることから近年では非Cd系、非Pb系の半導体ナノ粒子の研究がなされてきている。
【0004】
半導体ナノ粒子は、ディスプレイ用途、生体標識用途、太陽電池用途など、様々な用途への応用が試みられており、特にディスプレイ用途としては、半導体ナノ粒子をフィルム化して波長変換層として利用が始まっている。
【0005】
図2に、従来のディスプレイにおいて光源からの波長を変換するための装置構成の概略を示す。図2に示すように、光源には青色LED101が用いられており、まずは、この青色光を白色光に変換することが行われている。青色光から白色光への変換には、半導体ナノ粒子を樹脂中に分散させて厚みが100μm程度のフィルム状に形成して成るQDフィルム102が好適に用いられている。QDフィルム102のような波長変換層によって得られた白色光は、更に、カラーフィルター(R)104、カラーフィルター(G)105、およびカラーフィルター(B)106によって、それぞれ赤色光、緑色光、および青色光に変換される。なお、図2においては、偏光板は省略されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-162501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、図1に示す様に、QDフィルムを用いずにQDパターニングを波長変換層として用いるタイプのディスプレイ(偏向板は不図示)の開発が進められている。図1に示すタイプのディスプレイでは、光源である青色LED1からの青色光を白色光に変換せずに、QDパターニング(7、8)を用いて青色光から赤色光あるいは青色光から緑色光に直接変換する。QDパターニング(7、8)は、樹脂中に分散された半導体ナノ粒子をパターニングすることによって形成され、厚みはディスプレイの構造上の制限から5μm~10μm程度となる。なお、青色については、光源である青色LED1からの青色光を、拡散剤を含む拡散層9を透過させたものが利用される。
【0008】
また、QDパターニング(7、8)が、青色光を十分に吸収しきれずに透過させてしまうと混色が生じてしまう。QDパターニング(7、8)中の半導体ナノ粒子の質量分率が高ければ高いほど、パターニングの吸光度を向上させることができ、混色を防ぐことができる。
【0009】
特許文献1(特開2002-162501号公報)には、半導体ナノ粒子を高質量分率で含有する薄膜状成形体の開示がなされている。特許文献1に記載の薄膜状成形体は必ずしも高分子マトリクス成分を必要としないので、半導体ナノ粒子を高質量分率で含有する薄膜状成形体の形成が可能である。しかし、特許文献1に記載の薄膜状成形体をディスプレイ等の波長変換層として利用する場合、成形体の強度、安定性、耐溶剤性の点で不十分であることが明らかになった。
【0010】
なお、半導体ナノ粒子複合体を波長変換層に用いる場合、半導体ナノ粒子のフィルム化工程、または半導体ナノ粒子含有フォトレジストのベーキング工程、あるいは半導体ナノ粒子のインクジェットパターニング後における溶媒除去および樹脂硬化工程等のプロセスにおいて、半導体ナノ粒子ならびに半導体ナノ粒子複合体は酸素の存在下で200℃程度の高温にさらされる場合がある。その際、半導体ナノ粒子との結合力が弱いリガンドは半導体ナノ粒子の表面から脱離しやすくなり、半導体ナノ粒子複合体ならびに波長変換層自体の蛍光量子効率の低下を招く。
【0011】
そこで本発明は、半導体ナノ粒子複合体が高濃度で分散しており、かつ、高い蛍光量子効率を有する半導体ナノ粒子複合体組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る半導体ナノ粒子複合体組成物は、
半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であって、
前記半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子と、前記半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドとを有し、
前記リガンドは有機基を含み、
前記分散媒はモノマーまたはプレポリマーであり、
前記半導体ナノ粒子複合体組成物は、さらに架橋剤を含み、
前記半導体ナノ粒子複合体組成物における前記半導体ナノ粒子の質量分率は30質量%以上である、
半導体ナノ粒子複合体組成物、である。
なお、本願において「~」で示す範囲は、その両端に示す数字を含んだ範囲とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体ナノ粒子複合体が高濃度で分散しており、かつ、高い蛍光量子効率を有する半導体ナノ粒子複合体組成物等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る半導体ナノ粒子複合体組成物をQDパターニングとして用いたディスプレイの一例の概略を表す図である。
図2】半導体ナノ粒子をQDフィルムとして用いたディスプレイの一例の概略を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物および半導体ナノ粒子複合体分散液は、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散してなるものである。なお、半導体ナノ粒子複合体組成物は分散媒がモノマーまたはプレポリマーであり、さらに架橋剤を含み、半導体ナノ粒子の質量分率が30質量%以上のものである。また、本発明の希釈組成物は本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物が有機溶媒で希釈されてなるものである。
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜および半導体ナノ粒子複合体パターニング膜は、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を硬化またはパターン形成してなるものである。本発明の表示素子は本発明の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を含むものである。
【0016】
(半導体ナノ粒子複合体)
本発明は、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子に配位したリガンドとからなる半導体ナノ粒子複合体ならびに前記半導体ナノ粒子複合体が分散した半導体ナノ粒子複合体組成物等に関する。本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物に分散した半導体ナノ粒子複合体は高い発光特性を有し、かつ、前記半導体ナノ粒子複合体は半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、希釈組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜および半導体ナノ粒子複合体パターニング膜中に高質量分率で含有させることができる。さらに、得られる半導体ナノ粒子複合体硬化膜および半導体ナノ粒子複合体パターニング膜は高い蛍光量子効率を有する。
【0017】
本発明において、半導体ナノ粒子複合体とは、発光特性を有する半導体のナノ粒子複合体である。本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物および半導体ナノ粒子複合体分散液に含まれる半導体ナノ粒子複合体は340nm~480nmの光を吸収し、発光ピーク波長が400nm~750nmの光を発光する粒子である。
【0018】
半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅(FWHM)は38nm以下であることが好ましく、さらには35nm以下であることがより好ましい。発光スペクトルの半値幅が前記範囲であることで、半導体ナノ粒子複合体をディスプレイ等に応用した際に混色を低減することができる。
前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率(QY)は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上であることで、より効率よく色変換ができる。本発明において、半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率は量子効率測定システムを用いて測定することができる。
【0019】
-半導体ナノ粒子-
前記半導体ナノ粒子複合体を構成する半導体ナノ粒子は、前述した蛍光量子効率、および半値幅のような発光特性を満たすものであれば特に限定されず、1種類の半導体からなる粒子でもよいし、2種類以上の異なる半導体からなる粒子であってもよい。2種類以上の異なる半導体からなる粒子の場合には、それらの半導体でコア-シェル構造を構成していてもよい。例えば、III族元素およびV族元素を含有するコアと、前記コアの少なくとも一部を覆うII族およびVI族元素を含有するシェルとを有するコア-シェル型の粒子であってもよい。ここで、前記シェルは異なる組成からなる複数のシェルを有していてもよく、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを1つ以上有していてもよい。
【0020】
III族元素としては、具体的にはIn、AlおよびGaが挙げられる。
V族元素としては、具体的にはP、NおよびAsが挙げられる。
コアを形成する組成としては、特に限定はないが、発光特性の点からはInPが好ましい。
【0021】
II族元素としては、特に限定はないが、例えばZnおよびMg等が挙げられる。
VI族元素としては例えば、S、Se、TeおよびOが挙げられる。
シェルを形成する組成として、特に限定はないが、量子閉じ込め効果の観点からは、ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTeSおよびZnTeSe等が好ましい。特に半導体ナノ粒子の表面にZn元素が存在している場合、本発明の効果をより発揮することができる。
【0022】
複数のシェルを有する場合、前述した組成のシェルが少なくとも1つ含まれていればよい。また、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを有している場合、シェルは必ずしも組成表記通りの組成である必要はない。
ここで、本発明において、シェルがコアの少なくとも一部を覆っているかどうかや、シェル内部の元素分布は例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)を用いて組成分析解析することにより確認することができる。
【0023】
前記半導体ナノ粒子複合体の平均粒径は10nm以下であることが好ましい。さらには7nm以下であることがより好ましい。
本発明において、半導体ナノ粒子複合体の平均粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察される粒子画像において、10個以上の粒子の粒径を面積円相当径(Heywood径)で算出することにより測定することができる。発光特性の点から、粒度分布は狭いことが好ましく、粒径の変動係数15%以下であることが好ましい。ここで、変動係数とは「変動係数=粒径の標準偏差/平均粒径」で定義される。変動係数が15%以下であることで、より粒度分布の狭い半導体ナノ粒子複合体が得られていることの指標になる。
【0024】
以下に半導体ナノ粒子の作製方法に関する例を開示する。
III族の前駆体、V族の前駆体、および必要に応じて添加物を溶媒中で混合し得られた前駆体混合液を加熱することで、半導体ナノ粒子のコアを形成することができる。
溶媒としては、1-オクタデセン、ヘキサデカン、スクアラン、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン、およびトリオクチルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
III族の前駆体として、前記III族を含む酢酸塩、カルボン酸塩、およびハロゲン化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
V族の前駆体として、前記V族元素を含む有機化合物やガスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前駆体がガスの場合には、前記ガス以外を含む前駆体混合液にガスを注入しながら反応させることでコアを形成することができる。
【0026】
半導体ナノ粒子は、本発明の効果を害さない限り、III族、およびV族以外の元素を1種またはそれ以上含んでいてもよく、その場合は前記元素の前駆体をコア形成時に添加すればよい。
添加物としては、例えば、分散剤としてカルボン酸、アミン類、チオール類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類、ホスフィン酸類、およびホスホン酸類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。分散剤は溶媒を兼ねることもできる。
半導体ナノ粒子のコアを形成後、必要に応じてハロゲン化物を加えることで、半導体ナノ粒子の発光特性を向上することができる。
【0027】
ある実施形態では、In前駆体、および必要に応じて分散剤を溶媒中に添加した金属前駆体溶液を真空下で混合し、一旦100℃~300℃で6時間~24時間加熱した後、さらにP前駆体を添加して200℃~400℃で3分~60分加熱後冷却する。さらにハロゲン前駆体を添加し、25℃~300℃、好ましくは100℃~300℃、より好ましくは150℃~280℃で加熱処理することで、コア粒子を含むコア粒子分散液を得ることができる。
【0028】
上記のようにして合成されたコア粒子分散液に、シェル形成前駆体を添加することにより、半導体ナノ粒子はコア-シェル構造をとり、蛍光量子効率(QY)および安定性を高めることができる。
シェルを構成する元素はコア粒子の表面で合金やヘテロ構造、またはアモルファス構造等の構造を取っていると思われるが、一部は拡散によりコア粒子の内部に移動していることも考えられる。
【0029】
添加されたシェル形成元素は、主にコア粒子の表面付近に存在し、半導体ナノ粒子を外的因子から保護する役割を持っている。半導体ナノ粒子のコア-シェル構造はシェルがコアの少なくとも一部を覆っていることが好ましく、さらに好ましくはコア粒子の表面全体を均一に覆っていることが好ましい。
【0030】
ある実施形態では、前述したコア粒子分散液にZn前駆体とSe前駆体を添加後150℃~300℃、好ましくは180℃~250℃で加熱し、その後Zn前駆体とS前駆体を添加後、200℃~400℃、好ましくは250℃~350℃で加熱する。これによりコア-シェル型の半導体ナノ粒子を得ることができる。
ここで、特に限定するものではないが、Zn前駆体としては、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛およびミリスチン酸亜鉛等のカルボン酸塩や、塩化亜鉛および臭化亜鉛等のハロゲン化物、ジエチル亜鉛等の有機塩等を用いることができる。
Se前駆体としては、トリブチルホスフィンセレニド、トリオクチルホスフィンセレニドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンセレニドなどのホスフィンセレニド類、ベンゼンセレノールおよびセレノシステインなどのセレノール類、およびセレン/オクタデセン溶液などを使用することができる。
S前駆体としては、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンスルフィドなどのホスフィンスルフィド類、オクタンチオール、ドデカンチオールおよびオクタデカンチオールなどのチオール類、および硫黄/オクタデセン溶液などを使用することができる。
シェルの前駆体はあらかじめ混合し、一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよいし、それぞれ別々に一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよい。シェル前駆体を複数回に分けて添加する場合は、各シェル前駆体添加後にそれぞれ温度を変えて加熱してもよい。
【0031】
本発明において、半導体ナノ粒子の作製方法は特に限定されず、上記に示した方法の他、従来行われている、ホットインジェクション法や、均一溶媒法、逆ミセル法、CVD法等による作製方法や、任意の方法を採用しても構わない。
【0032】
-リガンド-
本発明において、半導体ナノ粒子複合体は前記半導体ナノ粒子の表面にリガンドが配位したものである。ここで述べる配位とは、配位子が半導体ナノ粒子の表面に化学的に影響していることを表す。半導体ナノ粒子の表面に配位結合や他の任意の結合様式(例えば共有結合、イオン結合、水素結合等)で結合していてもよいし、あるいは半導体ナノ粒子の表面の少なくとも一部に配位子を有している場合には、必ずしも結合を形成していなくてもよい。
【0033】
半導体ナノ粒子複合体組成物ならびに半導体ナノ粒子複合体硬化膜、パターニング中に高質量分率で含有させることが可能な半導体ナノ粒子複合体は、以下を満たしていることが好ましい。
半導体ナノ粒子に対するリガンドの質量比は、半導体ナノ粒子を1とした時、0.05~0.50であることが好ましく、0.10~0.40であることがより好ましい。半導体ナノ粒子に対するリガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が0.50以下であることにより、半導体ナノ粒子複合体のサイズならびに体積が大きくなることを抑制し、半導体ナノ粒子複合体組成物ならびに半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に高質量分率で含有させることができる。また、前記質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が0.05以上であることにより、リガンドが半導体ナノ粒子を十分に覆うことができ、半導体ナノ粒子の発光特性の低下や、硬化膜や分散媒への分散性の低下を抑制できる。
なお、半導体ナノ粒子複合体組成物ならびに半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0034】
なお、前記リガンドは、有機基を含む有機リガンドである。また、前記リガンドは、半導体ナノ粒子に配位する配位性基と、有機基とからなることが好ましい。
有機基は、置換基やヘテロ原子を有していてもよい1価の炭化水素基であることが好ましく、さらにはビニル基にヘテロ原子を含む置換基が結合した有機基であることが好ましい。この構造をとることで、高い量子収率を保ちながら、後述の硬化膜中に高質量分率で半導体ナノ粒子複合体を分散させることができる。有機基としては特に限定はされないが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ビニレン基、ビニリデン基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、スルフィド基、およびこれらを組み合わせてなる有機基等が挙げられる。さらに有機基は、置換基としてフェニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロ基、ブロモ基、ビニル基、アクリル基、およびメタクリル基等を含むことができる。有機基は、エーテル基、エステル基およびアミド基から選ばれる1つ以上の基を有することが好ましい。この構造をとることで、SP値(溶解度パラメータ)が8.5~15.0の有機分散媒へ分散することが可能となる。また、有機基はビニル基および/またはビニレン基を有することがさらに好ましい。この構造をとることで、半導体ナノ粒子複合体と硬化性組成物を化学的に結合させることができ、膜の強度、ならびに膜中での半導体ナノ粒子の安定性が向上する。ビニル基を含む置換基としては特に限定はされないが、アクリル基、およびメタクリル基等が挙げられる。
【0035】
配位性基は半導体ナノ粒子への配位の強さから、メルカプト基またはカルボキシル基が好ましく、特にメルカプト基が好ましい。メルカプト基は1つまたはそれ以上であることが好ましい。リガンドの配位性基が半導体ナノ粒子の表面に配位することで、半導体ナノ粒子の蛍光量子効率の低下を防ぐことができる。さらに前記リガンドを有する半導体ナノ粒子複合体は、波長変換層へ用いる際に、高い処理温度にさらされる場合でも、半導体ナノ粒子にリガンドが強く配位していることから、波長変換層の蛍光量子効率の低下を防ぐことができる。
なお、リガンドは複数種を併用しても構わない。
【0036】
半導体ナノ粒子複合体の第一の形態として、前記リガンドの分子量は50以上、600以下であることが好ましく、50以上、450以下であることがより好ましい。複数種のリガンドを併用する場合、各々のリガンドの分子量が50以上、600以下であることが好ましく、50以上、450以下であることがより好ましい。
分子量が600以下の分子量をもつリガンドを使用することで、半導体ナノ粒子複合体のサイズおよび体積が大きくなることを抑制し、硬化膜中の半導体ナノ粒子の質量分率を容易に高くすることができる。一方、分子量が50以上のリガンドを使用することで、半導体ナノ粒子の表面をリガンドで十分に覆うことができるため、半導体ナノ粒子複合体の発光特性の低下を抑制することができ、また、硬化膜や分散媒への分散性を高くすることができる。
【0037】
さらに半導体ナノ粒子複合体の別の形態として、前記リガンドの配位性基が1分子あたり2つ以上であることが好ましい。リガンドの配位性基がリガンド1分子あたり2つ以上である場合、リガンド一分子で半導体ナノ粒子の表面の複数箇所に配位することができるため、半導体ナノ粒子複合体としてのサイズ、ならびに体積の増加を抑えることができ、分散媒や硬化膜への分散性を向上させることが可能となる。
リガンドの配位性基としてはメルカプト基が好ましい。リガンドのメルカプト基は半導体ナノ粒子のシェルに強く配位し、半導体ナノ粒子の欠陥部分を埋め、半導体ナノ粒子複合体の発光特性の低下を防ぐことに寄与する。特に、半導体ナノ粒子の表面にZnが存在している場合、メルカプト基とZnの結合力の強さにより、前述した効果がより得られる。
【0038】
(半導体ナノ粒子複合体の製造方法)
以下に半導体ナノ粒子複合体の製造方法に関する例を開示する。
半導体ナノ粒子へのリガンドの配位方法に制限はないが、リガンドの配位力を利用した配位子交換法を用いることができる。具体的には、前述した半導体ナノ粒子の製造の過程で使用した有機化合物が半導体ナノ粒子の表面に配位した状態である半導体ナノ粒子を、目的とするリガンドと液相で接触させることで、目的とするリガンドが半導体ナノ粒子表面に配位した半導体ナノ粒子複合体を得ることができる。この場合、通常、後述するような溶媒を使用した液相反応とするが、使用するリガンドが反応条件において液体である場合にはリガンド自身を溶媒とし、他の溶媒を添加しない反応形式をとることも可能である。
【0039】
また、リガンド交換の前に後述するような精製工程と再分散工程を行うと、リガンド交換を容易に行うことができる。
ある実施形態では、半導体ナノ粒子製造後の半導体ナノ粒子含有分散液を精製後、再分散させた後、目的のリガンドを含む溶媒を添加し、窒素雰囲気下で50℃~200℃で、1分~120分間攪拌することで、所望の半導体ナノ粒子複合体を得ることができる。
【0040】
半導体ナノ粒子ならびに半導体ナノ粒子複合体は下記のように精製することができる。一実施形態において、アセトン等の極性転換溶媒を添加することによって半導体ナノ粒子複合体を分散液から析出させることができる。析出した半導体ナノ粒子複合体を濾過または遠心分離により回収することができ、一方、未反応の出発物質および他の不純物を含む上澄みは廃棄または再利用することができる。次いで析出した半導体ナノ粒子複合体はさらなる分散媒で洗浄し、再び分散することができる。この精製プロセスは、例えば、2~4回、または所望の純度に到達するまで、繰り返すことができる。
本発明において、半導体ナノ粒子複合体の精製方法は特に限定されず、上記に示した方法の他、例えば、凝集、液液抽出、蒸留、電着、サイズ排除クロマトグラフィーおよび/または限外濾過や任意の方法を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0041】
また、半導体ナノ粒子の光学特性は量子効率測定システム(例えば、大塚電子製、QE-2100)を用いて測定できる。得られた半導体ナノ粒子を分散媒に分散させ、励起光を当て発光スペクトルを得、ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)と半値幅(FWHM)を算出する。測定に用いる分散媒は例えばノルマルヘキサン、トルエン、アセトン、PGMEAおよびオクタデセンが挙げられる。
【0042】
本発明において、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散している状態とは、半導体ナノ粒子複合体と分散媒とを混合させた場合に、半導体ナノ粒子複合体が沈殿しない状態、もしくは目視可能な濁り(曇り)として残留しない状態であることを表す。なお、半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散しているものを分散液と表す。
【0043】
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物および半導体ナノ粒子複合体分散液に含まれる半導体ナノ粒子複合体は前述した構成をとることで、分散媒としてSP値(溶解パラメータ)が8.5~15.0の分散媒へ分散し、半導体ナノ粒子複合体分散液を形成する。
分散媒の例としては、特に限定されることはないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびノルマルプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチルおよび乳酸エチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルおよびテトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルおよびジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、および、エチレングリコールアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル類が挙げられる。半導体ナノ粒子複合体は上記の分散媒の中から選択されるいずれか1種以上の分散媒に分散させることができる。また、上記の例示に記載されている様に、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類などの極性を有する分散媒を選択することも可能である。
半導体ナノ粒子複合体をこれらの分散媒に分散させることで、後述する硬化膜や樹脂への分散に応用する際に、半導体ナノ粒子複合体の分散性を保ったまま使用することができる。これらの中でも、幅広い樹脂への溶解性および塗膜時の被膜均一性の観点から、グリコールエーテル類またはグリコールエーテルエステル類が好ましい。特に、フォトレジストの分野ではPGMEAおよびPGMEが希釈溶媒として一般的に用いられており、半導体ナノ粒子がPGMEAおよびPGMEへ分散可能であると、半導体ナノ粒子をフォトレジスト分野に広く応用することができる。
ここでのSP値はヒルデブランド溶解度パラメーターであり、ハンセン溶解度パラメーターから算出した値である。ハンセン溶解度パラメーターは、ハンドブック、例えば“Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook”,第2版、C. M. Hansen (2007),中の値や、HansonおよびAbbot et al.によって提供されているPractice(HSPiP)プログラム(第2版)を用いて決定することができる。
【0044】
なお、半導体ナノ粒子複合体分散液中の半導体ナノ粒子複合体の無機成分の濃度を1mg/mLとしたとき、すなわち半導体ナノ粒子複合体分散液の分散媒1mLあたりの半導体ナノ粒子複合体の無機成分の含有量を1mgとした時、半導体ナノ粒子複合体分散液の吸光度は波長450nmの光に対して、光路長1cmで0.6以上であればよく、0.7以上であることがより好ましい。分散液の吸光度が光路長1cmで0.6以上であることで、デバイス等に応用する際に、少ない液量で光をより多く吸収することが可能となる。
以上に説明した半導体ナノ粒子複合体は、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物、希釈組成物、半導体ナノ粒子複合体硬化膜、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜、表示素子、および半導体ナノ粒子複合体分散液に含まれる半導体ナノ粒子複合体として好適なものである。
【0045】
(半導体ナノ粒子複合体組成物)
本発明において、半導体ナノ粒子複合体分散液の分散媒としてモノマーまたはプレポリマーを選択することができる。さらに、架橋剤を添加することにより、本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物に含まれる半導体ナノ粒子複合体は、モノマーまたはプレポリマーと、架橋剤とで半導体ナノ粒子複合体組成物を形成することができる。
モノマーは特に限定しないが、半導体ナノ粒子の応用先が幅広く選択できる(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリルモノマーは半導体ナノ粒子複合体分散液の応用に応じて、イソボルニルアクリレート(IBOA)、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3、5、5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n≒2)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルりん酸、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イロプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、およびN-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどの(メタ)アクリルモノマーから選択される。これらは単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。プレポリマーは特に限定しないが、(メタ)アクリル樹脂プレポリマー、シリコーン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、マレイン酸樹脂プレポリマー、ブチラール樹脂プレポリマー、ポリエステル樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、フェノール樹脂プレポリマー、およびポリウレタン樹脂プレポリマー等が挙げられる。
架橋剤は半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、多官能(メタ)アクリレート、多官能シラン化合物、多官能アミン、多官能カルボン酸、多官能チオール、多官能アルコール、および多官能イソシアネートなどから選択される。
さらに、半導体ナノ粒子複合体組成物中に、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、および、ジクロロメタンおよびクロロホルム等のハロゲン化アルキルなど、硬化に影響しない各種有機溶媒をさらに含むことができる。なお、半導体ナノ粒子複合体組成物に有機溶媒が含まれる場合には、有機溶媒の含有量は、半導体ナノ粒子複合体組成物における半導体ナノ粒子の質量分率が30%以上となる程度の量にすればよい。
【0046】
また、半導体ナノ粒子複合体組成物は、半導体ナノ粒子複合体組成物中のモノマーの種類によって、適切な開始剤や散乱剤、触媒、バインダー、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、および分散剤等を含んでもよい。
さらに、半導体ナノ粒子複合体組成物、あるいは後述する半導体ナノ粒子複合体硬化膜の光学特性を向上するために、半導体ナノ粒子複合体組成物に散乱剤を含んでもよい。散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物であり、これらの粒径は100nm~500nmであることが好ましい。散乱の効果の観点から、散乱剤の粒径は200nm~400nmであることがさらに好ましい。散乱剤が含まれることで、吸光度が2倍程度向上する。散乱剤の含有量は組成物に対して2質量%~30質量%であることが好ましく、組成物のパターン性の維持の観点から5質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0047】
本発明の半導体ナノ粒子複合体の構成により、半導体ナノ粒子複合体組成物中の半導体ナノ粒子の質量分率を30質量%以上にすることができる。半導体ナノ粒子複合体組成物中の半導体ナノ粒子の質量分率を30質量%~95質量%とすることで、後述する硬化膜中にも高質量分率で半導体ナノ粒子複合体ならびに半導体ナノ粒子を分散させることができる。
【0048】
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、10μmの膜にしたとき、前記膜の法線方向からの波長450nmの光に対する吸光度が1.0以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。これにより、バックライトの光を効率的に吸収できるため、後述の硬化膜の厚みを低減することができ、適用するデバイスを小型化することができる。
【0049】
(希釈組成物)
本発明の希釈組成物は、前述の本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物が有機溶媒で希釈されてなるものである。
半導体ナノ粒子複合体組成物を希釈する有機溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、および、ジクロロメタンおよびクロロホルム等のハロゲン化アルキルなどが挙げられる。これらの中でも、幅広い樹脂への溶解性および塗膜時の被膜均一性の観点からは、グリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類が好ましい。
なお、本発明の希釈組成物に含まれている有機溶媒を乾燥等によって除去すると、半導体ナノ粒子の質量分率が30%以上の半導体ナノ粒子複合体組成物が得られる。
【0050】
(半導体ナノ粒子複合体硬化膜)
本発明において、半導体ナノ粒子複合体硬化膜とは半導体ナノ粒子複合体を含有した膜であり、硬化しているものを表す。半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、前述の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を膜状に硬化することで得ることができる。
半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドと、高分子マトリクスと架橋剤を含んでいる。
高分子マトリクスとしては特に限定はないが、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。なお、前述した半導体ナノ粒子複合体組成物を硬化させることで半導体ナノ粒子複合体硬化膜を得てもよい。
【0051】
膜を硬化させる方法は特に限定されないが、熱処理、紫外線処理など膜を構成する組成物に適した硬化方法により硬化することができる。
半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれる、半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドは、前述した半導体ナノ粒子複合体を構成していることが好ましい。本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれる半導体ナノ粒子複合体を前述したような構成にすることで、半導体ナノ粒子複合体をより高質量分率で硬化膜中に分散させることが可能である。半導体ナノ粒子複合体硬化膜中の半導体ナノ粒子の質量分率は30質量%以上であればよく、40質量%以上であることがより望ましい。ただし、70質量%以上にすると、膜を構成する組成物が少なくなり、膜を硬化形成することが困難になる。
以上に説明した半導体ナノ粒子複合体が本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜中に含まれることで、本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は波長450nmの光の吸光度が非常に高いものとなる。このため本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、半導体ナノ粒子複合体硬化膜中の半導体ナノ粒子の質量分率が70質量%未満、さらには60質量%未満であったとしても、後述する吸光度の値を十分に有することができる。
【0052】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、高い吸光度を有する半導体ナノ粒子複合体を高質量分率で含有しているため、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の吸光度を高めることができる。半導体ナノ粒子複合体硬化膜を10μmの厚さとした時、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の法線方向からの波長450nmの光に対して、吸光度は1.0以上が好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
【0053】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜には、高い発光特性を有する半導体ナノ粒子複合体を含有しているため、発光特性が高い半導体ナノ粒子複合体硬化膜を提供できる。半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0054】
半導体ナノ粒子複合体硬化膜の厚みは、半導体ナノ粒子複合体硬化膜を適用するデバイスを小型化するために、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0055】
(半導体ナノ粒子複合体パターニング膜および表示素子)
本発明の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜は、前述の半導体ナノ粒子複合体組成物または希釈組成物を膜状にパターン形成することで得ることができる。半導体ナノ粒子複合体組成物および希釈組成物をパターン形成する方法は特に限定されず、例えば、スピンコート、バーコート、インクジェット、スクリーン印刷およびフォトリソグラフィ等が挙げられる。
本発明の表示素子は、上記の本発明の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を用いるものである。例えば、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を波長変換層として用いることで、優れた蛍光量子効率を有する表示素子を提供することができる。
【0056】
本発明の半導体ナノ粒子複合体組成物は、以下の構成を採用する。
(1)半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した半導体ナノ粒子複合体組成物であって、
前記半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子と、前記半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドとを有し、
前記リガンドは有機基を含み、
前記分散媒はモノマーまたはプレポリマーであり、
前記半導体ナノ粒子複合体組成物は、さらに架橋剤を含み、
前記半導体ナノ粒子複合体組成物における前記半導体ナノ粒子の質量分率は30質量%以上である、
半導体ナノ粒子複合体組成物。
(2)前記半導体ナノ粒子複合体組成物における前記半導体ナノ粒子の質量分率が40質量%以上である、
上記(1)に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(3)前記半導体ナノ粒子複合体組成物を10μmの膜にしたとき、前記膜の法線方向からの波長450nmの光に対する吸光度が1.0以上である、
上記(1)または(2)に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(4)前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が、0.05~0.50である、
上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(5)前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が、0.10~0.40である、
上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(6)前記リガンドが、置換基やヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基と、配位性基とを含む、
上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(7)前記リガンドは、エーテル基、エステル基およびアミド基から選ばれる1つ以上の基を有する、
上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(8)前記リガンドはさらに配位性基を含み、
前記有機基は、ビニル基および/またはビニリデン基を有する、
上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(9)前記半導体ナノ粒子の平均粒径が10nm以下である、
上記(1)~(8)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(10)前記半導体ナノ粒子の平均粒径が7nm以下である、
上記(1)~(9)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(11)前記半導体ナノ粒子複合体組成物の蛍光量子効率が60%以上である、
上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(12)前記半導体ナノ粒子複合体組成物の蛍光量子効率が70%以上である、
上記(1)~(11)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(13)前記リガンドの分子量が50以上、600以下である、
上記(1)~(12)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(14)前記リガンドの分子量が50以上、450以下である、
上記(1)~(13)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(15)前記リガンドが、1つまたはそれ以上のメルカプト基を有する、
上記(1)~(14)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(16)前記リガンドが、2以上のメルカプト基を有する、
上記(1)~(15)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(17)前記リガンドが2種類以上である、
上記(1)~(16)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(18)前記半導体ナノ粒子がInおよびPを含む、
上記(1)~(17)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(19)前記半導体ナノ粒子の表面にZnを含有する、
上記(1)~(18)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(20)前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
上記(1)~(19)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
(21)前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下である、
上記(1)~(20)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物。
【0057】
本発明の希釈組成物は、以下の構成を採用する。
(22)上記(1)~(21)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物が有機溶媒で希釈された、希釈組成物。
(23)前記有機溶媒がグリコールエーテル類および/またはグリコールエーテルエステル類である、上記(22)に記載の希釈組成物。
【0058】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、以下の構成を採用する。
(24)上記(1)~(21)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物、または上記(22)もしくは(23)に記載の希釈組成物を硬化した、半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
【0059】
本発明の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜は、以下の構成を採用する。
(25)上記(1)~(21)のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物、または上記(22)もしくは(23)に記載の希釈組成物をパターン形成した、半導体ナノ粒子複合体パターニング膜。
【0060】
本発明の表示素子は、以下の構成を採用する。
(26)上記(25)に記載の半導体ナノ粒子複合体パターニング膜を含む、表示素子。
【0061】
本発明の半導体ナノ粒子複合体分散液は、以下の構成を採用する。
<1>半導体ナノ粒子の表面にリガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体が分散媒に分散した分散液であって、
前記分散液中の前記半導体ナノ粒子複合体の無機成分の濃度を1mg/mLとしたとき波長450nmの光に対して光路長1cmでの吸光度が0.6以上であり、
前記リガンドは有機基を含む、
半導体ナノ粒子複合体分散液。
<2>前記分散媒のSP値が8.5以上である、
上記<1>に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<3>前記分散媒のSP値が9.0以上である、
上記<1>または<2>に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<4>前記分散媒が、グリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類から選択される1種または2種以上の混合分散媒である、
上記<1>~<3>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<5>前記分散媒がPGMEAまたはPGMEである、
上記<1>~<4>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<6>前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が、0.05~0.50である、
上記<1>~<5>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<7>前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が、0.10~0.40である、
上記<1>~<6>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<8>前記半導体ナノ粒子の平均粒径が10nm以下である、
上記<1>~<7>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<9>前記半導体ナノ粒子の平均粒径が7nm以下である、
上記<1>~<8>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<10>前記リガンドが、置換基やヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基と、配位性基とを含む、
上記<1>~<9>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<11>前記リガンドの分子量が50以上、600以下である、
上記<1>~<10>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<12>前記リガンドの分子量が50以上、450以下である、
上記<1>~<11>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<13>前記リガンドが、少なくとも1つ以上のメルカプト基を有する、
上記<1>~<12>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<14>前記リガンドはさらに配位性基を含み、
前記有機基はエーテル基、エステル基およびアミド基から選ばれる1つ以上の基を有する、
上記<1>~<13>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<15>前記リガンドはさらに配位性基を含み、
前記有機基は、ビニル基および/またはビニリデン基を有する、
上記<1>~<14>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<16>前記リガンドは2つ以上のメルカプト基を有する、
上記<1>~<15>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<17>前記リガンドが2種以上である、
上記<1>~<16>のいずれか一項に記載のナノ粒子複合体分散液。
<18>前記半導体ナノ粒子の表面にZnを含有する、
上記<1>~<17>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<19>前記半導体ナノ粒子が、InおよびPを含む、
上記<1>~<18>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<20>前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
上記<1>~<19>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
<21>前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下である、
上記<1>~<20>のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体分散液。
【0062】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、以下の構成を採用する。
[1]半導体ナノ粒子複合体が高分子マトリクス中に分散した半導体ナノ粒子複合体硬化膜であって、
前記半導体ナノ粒子複合体は、半導体ナノ粒子と、前記半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドとを有し、
前記リガンドは有機基を含み、
前記高分子マトリクスは架橋剤によって架橋されており、
前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜における前記半導体ナノ粒子の質量分率は30質量%以上である、
半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[2]前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜は、さらに散乱剤を含む、
上記[1]に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[3]前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜における前記半導体ナノ粒子の質量分率が40質量%以上である、
上記[1]または[2]に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[4]前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜を厚さ10μmとしたとき、前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜の法線方向からの波長450nmの光に対する吸光度が1.0以上である、
上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[5]前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜を厚さ10μmとしたとき、前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜の法線方向からの波長450nmの光に対する吸光度が1.5以上である、
上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[6]前記散乱剤が金属酸化物である、
上記[2]~[5]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[7]前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が、0.05~0.50である、
上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[8]前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が、0.10~0.40である、
上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[9]前記リガンドが、置換基やヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基である有機基と、配位性基とを含む、
上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[10]前記リガンドは、エーテル基、エステル基およびアミド基から選ばれる1つ以上の基を有する、
上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[11]前記リガンドはさらに配位性基を含み、
前記有機基は、ビニル基および/またはビニリデン基を有する、
上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[12]前記半導体ナノ粒子の平均粒径が10nm以下である、
上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[13]前記半導体ナノ粒子の平均粒径が7nm以下である、
上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[14]前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率が70%以上である、
上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[15]前記リガンドの分子量が50以上、600以下である、
上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[16]前記リガンドの分子量が50以上、450以下である、
上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[17]前記リガンドが1以上のメルカプト基を有する、
上記[1]~[16]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[18]前記リガンドが2以上のメルカプト基を有する、
上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[19]前記リガンドが2種類以上である、
上記[1]~[18]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[20]前記半導体ナノ粒子がInおよびPを含む、
上記[1]~[19]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[21]前記半導体ナノ粒子の表面にZnを含有する、
上記[1]~[20]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[22]前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
上記[1]~[21]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[23]前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下である、
上記[1]~[22]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
[24]前記半導体ナノ粒子複合体硬化膜の厚みが50μm以下である、
上記[1]~[23]のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体硬化膜。
【0063】
本発明の半導体ナノ粒子複合体は、以下の構成を採用する。
≪1≫半導体ナノ粒子の表面にリガンドが配位した半導体ナノ粒子複合体であって、
前記リガンドは有機基を含み、
前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比(リガンド/半導体ナノ粒子)が0.05~0.50である、
半導体ナノ粒子複合体。
≪2≫前記半導体ナノ粒子に対する前記リガンドの質量比が0.10~0.40である、
上記≪1≫に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪3≫前記半導体ナノ粒子の表面にZnを含有する、
上記≪1≫または≪2≫に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪4≫前記半導体ナノ粒子がInおよびPを含んでいる、
上記≪1≫~≪3≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪5≫前記半導体ナノ粒子の平均粒径が10nm以下である、
上記≪1≫~≪4≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪6≫前記半導体ナノ粒子の平均粒径が7nm以下である、
上記≪1≫~≪5≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪7≫前記半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率が80%以上である、
上記≪1≫~≪6≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪8≫前記半導体ナノ粒子複合体の発光スペクトルの半値幅が38nm以下である、
上記≪1≫~≪7≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪9≫前記リガンドが、置換基やヘテロ原子を有していてもよい1価の炭化水素基を含む、
上記≪1≫~≪8≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪10≫前記リガンドの分子量が50以上、600以下である、
上記≪1≫~≪9≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪11≫前記リガンドの分子量が50以上、450以下である、
上記≪1≫~≪10≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪12≫前記リガンドが、少なくとも1つ以上のメルカプト基を含む、
上記≪1≫~≪11≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪13≫前記リガンドはさらに配位性基を含み、
前記有機基はエーテル基、エステル基およびアミド基から選ばれる1つ以上の基を有する、
上記≪1≫~≪12≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪14≫前記リガンドはさらに配位性基を含み、
前記有機基はビニル基および/またはビニリデン基を有する、
上記≪1≫~≪13≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪15≫前記リガンドは2つ以上のメルカプト基を有する、
上記≪1≫~≪14≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
≪16≫前記リガンドが2種類以上である、
上記≪1≫~≪15≫のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子複合体。
【0064】
本明細書に記載の構成および/または方法は例として示され、多数の変形形態が可能であるため、これらの具体例または実施例は限定の意味であると見なすべきではないことが理解されよう。本明細書に記載の特定の手順または方法は、多数の処理方法の1つを表しうる。したがって、説明および/または記載される種々の行為は、説明および/または記載される順序で行うことができ、または省略することもできる。同様に前述の方法の順序は変更可能である。
本開示の主題は、本明細書に開示される種々の方法、システムおよび構成、並びにほかの特徴、機能、行為、および/または性質のあらゆる新規のかつ自明でない組み合わせおよび副次的組み合わせ、並びにそれらのあらゆる均等物を含む。
【実施例
【0065】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
[例1]
(半導体ナノ粒子の合成)
以下の方法に従って、半導体ナノ粒子の合成を行った。
-前駆体の作製-
--Zn前駆体溶液の調製--
40mmolのオレイン酸亜鉛と75mLのオクタデセンを混合し、真空化で110℃にて1時間加熱し、[Zn]=0.4MのZn前駆体を調製した。
--Se前駆体(セレン化トリオクチルホスフィン)の調製--
22mmolのセレン粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[Se]=2.2Mのセレン化トリオクチルホスフィンを得た。
--S前駆体(硫化トリオクチルホスフィン)の調製--
22mmolの硫黄粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[S]=2.2Mの硫化トリオクチルホスフィンを得た。
-コアの形成-
酢酸インジウム(0.3mmol)とオレイン酸亜鉛(0.6mmol)を、オレイン酸(0.9mmol)と1-ドデカンチオール(0.1mmol)とオクタデセン(10mL)の混合物に加え、真空下(<20Pa)で約120℃に加熱し、1時間反応させた。真空で反応させた混合物を25℃、窒素雰囲気下にして、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(0.2mmol)を加えたのち、約300℃に加熱し、10分間反応させた。反応液を25℃に冷却し、オクタン酸クロリド(0.45mmol)を注入し、約250℃で30分間加熱後、25℃に冷却した。
-シェルの形成-
その後、200℃まで加熱し、0.75mLのZn前駆体溶液、0.3mmolのセレン化トリオクチルホスフィンを同時に添加し、30分間反応させInP系半導体ナノ粒子の表面にZnSeシェルを形成した。さらに、1.5mLのZn前駆体溶液と0.6mmolの硫化トリオクチルホスフィンを添加し、250℃に昇温して1時間反応させZnSシェルを形成した。
-半導体ナノ粒子の精製-
上記のように合成して得られた半導体ナノ粒子の反応溶液をアセトンに加え、良く混合したのち遠心分離した。遠心加速度は4000Gとした。沈殿物を回収し、沈殿物にノルマルヘキサンを加え、分散液を作製した。この操作を数回繰り返し、精製した半導体ナノ粒子を得た。
(半導体ナノ粒子複合体の作製)
フラスコに精製した半導体ナノ粒子を質量比で10質量%となるように1-オクタデセンで分散させた半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液を調製した。調製した半導体ナノ粒子1-オクタデセン分散液10.0gをフラスコに収め、トリエチレングリコールモノメチルチオール(TEG-SH)を3.5g、ドデカンチオールを0.5g添加し、窒素雰囲気下で110℃、60分間攪拌し、25℃まで冷却することで、半導体ナノ粒子複合体を得た。
前記反応溶液を遠沈管に移し、4000Gで20分間遠心分離すると、透明な1-オクタデセン相と半導体ナノ粒子複合体相に分離した。1-オクタデセン相を取り除き、残った半導体ナノ粒子複合体相を回収した。
-半導体ナノ粒子複合体の精製-
得られた半導体ナノ粒子複合体相にアセトン5.0mLを加え、分散液を作製した。得られた分散液に50mLのノルマルヘキサンを加え、4000Gで20分間遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを取り除き、沈殿物を回収した。この操作を数回繰り返し、精製された半導体ナノ粒子複合体を得た。
【0067】
(測定)
得られた半導体ナノ粒子複合体についての光学特性を測定した。
光学特性は前述したとおり、量子効率測定システム(大塚電子製、QE-2100)を用いて測定した。得られた半導体ナノ粒子複合体をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に分散させ、450nmの単一光を励起光として当て発光スペクトルを得、ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトルより蛍光量子効率(QY)と半値幅(FWHM)を算出した。
【0068】
(半導体ナノ粒子複合体分散液)
精製された半導体ナノ粒子複合体を示唆熱重量分析(DTA-TG)で550℃まで加熱後、10分保持し、降温した。分析後の残留質量を半導体ナノ粒子の質量とし、この値から半導体ナノ粒子複合体に対する半導体ナノ粒子の質量比を確認した。
前記質量比を参考に、半導体ナノ粒子複合体分散液中の半導体ナノ粒子の質量分率が、1mg/mLになるように半導体ナノ粒子複合体にPGMEA(SP値9.41)を加え、半導体ナノ粒子複合体分散液を得た。この半導体ナノ粒子複合体分散液を光路長1cmの光学セルに入れ、可視紫外分光光度計(日本分光社製V670)を用いて450nmでの吸光度を測定し、これをOD450とした。
【0069】
(半導体ナノ粒子複合体組成物)
イソボルニルアクリレート89質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン1質量部を混合し、紫外線硬化樹脂を得た。紫外線硬化樹脂と半導体ナノ粒子複合体を混合し半導体ナノ粒子複合体組成物を得た。この時、半導体ナノ粒子複合体組成物中の半導体ナノ粒子の質量分率は40質量%であった。
【0070】
(半導体ナノ粒子複合体硬化膜)
前述した半導体ナノ粒子複合体組成物をスピンコートによりガラス上に製膜し、90℃で3分間加熱して溶媒を揮発させた。大気中で紫外線を照射し光硬化させた後、200℃で20分間ベーキングし、半導体ナノ粒子複合体硬化膜を得た。
得られた半導体ナノ粒子複合体硬化膜について、半導体ナノ粒子複合体分散液と同様に可視紫外分光光度計(日本分光社製V670)を用いて半導体ナノ粒子複合体硬化膜の法線方向から波長450nmの光を入射し、半導体ナノ粒子複合体硬化膜5μmあたりの吸光度を測定した。この時の吸光度を表に示す。
さらに、半導体ナノ粒子複合体と同様に、量子効率測定システム(大塚電子製、QE-2100)を用いて、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率を測定した。半導体ナノ粒子複合体硬化膜の蛍光量子効率を表1~表3に示す。
【0071】
[例2]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに3-メルカプトプロピオン酸メチル(MPA-Me)を4.0g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0072】
[例3]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに2-メルカプトエタノールを4.0g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0073】
[例4]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに後述する方法で作製したジヒドロリポ酸メチルを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
- ジヒドロリポ酸メチルの調製 -
2.1g(10mmol)のジヒドロリポ酸をメタノール20mL(49mmol)に溶解し、0.2mLの濃硫酸を加えた。溶液を窒素雰囲気下で1時間還流した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、溶液を10%HCl水溶液、10%NaCO水溶液、飽和NaCl水溶液で順に抽出して有機相を回収した。有機相をエバポレーションで濃縮し、ヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、ジヒドロリポ酸メチルを得た。
【0074】
[例5]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに後述する方法で作製した6-メルカプトヘキシルアクリレートを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
- 6-メルカプトヘキシルアクリレートの調製 -
1.34g(10mmol)の2-アミノエタンチオールおよび1.7mL(12mmol)のトリエチルアミンを100mLの丸底フラスコに収め、30mLの脱水ジクロロメタンに溶解させた。溶液を0℃に冷却し、窒素雰囲気下で0.81mL(10mmol)の塩化アクリロイルを、溶液の温度が5℃以上にならないよう注意しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温まで昇温し、1時間撹拌した。反応溶液を濾過し、濾液をクロロホルムで希釈した。濾液を10%HCl水溶液、10%NaCO水溶液、飽和NaCl水溶液の順に抽出し有機相を回収した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後濾過し、エバポレーションで濃縮して目的とする6-メルカプトヘキシルアクリレートを得た。メルカプト基とアクリル基の分子内反応を防ぐため、精製後直ちに半導体ナノ粒子複合体の調製に用いた。
【0075】
[例6]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに後述する方法で作製したN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
さらに、例1に記載の半導体ナノ粒子複合体組成物の製造において、モノマーをメタクリル酸、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の混合物にし、架橋剤を、グリシジルメタクリレート、PETA-SA(ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸変性物)にそれぞれ変更し、半導体ナノ粒子複合体組成物を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
- N-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドの調製-
1.2g(10mmol)のN-(2-sulfanylethyl)acetamideおよび1.7mL(12mmol)のトリエチルアミンを100mLの丸底フラスコに収め、30mLの脱水ジクロロメタンに溶解させた。溶液を0℃に冷却し、窒素雰囲気下で0.87mL(10mmol)のプロパノイルクロリドを、溶液の温度が5℃以上にならないよう注意しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温まで昇温し、2時間撹拌した。反応溶液を濾過し、濾液をクロロホルムで希釈した。溶液を10%HCl水溶液、10%NaCO水溶液、飽和NaCl水溶液の順に抽出し有機相を回収した。有機相をエバポレーションで濃縮したのち、ヘキサン-酢酸エチル混合溶媒を展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにて精製し、N-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを得た。
【0076】
[例7]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
さらに、半導体ナノ粒子複合体組成物の製造において、モノマーと架橋剤を熱硬化性付加反応型シリコーンレジンである、フォトデバイス用透明封止樹脂(型式「SCR-1011(A/B)」、信越シリコーン社製)のA液およびB液を50:50(質量比)で混合したものに変更し、半導体ナノ粒子複合体組成物を得た。
また、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の製造において、半導体ナノ粒子複合体組成物をスピンコートによりガラス上に塗膜し、150℃、5時間加熱することにより加熱し、半導体ナノ粒子複合体硬化膜を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0077】
[例8]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子の作製方法において、ZnSシェルを形成するときに用いるZn前駆体溶液の量を1.0mLに、硫化トリオクチルホスフィンの量を0.4mmоlにそれぞれ変更した。これにより得られた半導体ナノ粒子の平均粒径(前述のHeywood径)をTEMで測定したところ、3nmであった。
また、例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにジヒドロ酸メチルを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0078】
[例9]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子の作製方法において、ZnSシェルを形成するときに用いるZn前駆体溶液の量を1.75mLに、硫化トリオクチルホスフィンの量を0.7mmоlにそれぞれ変更した。これにより得られた半導体ナノ粒子の平均粒径(前述のHeywood径)をTEMで測定したところ、6nmであった。
また、例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに後述した方法で作製したPEG-SH(ポリエチレングリコールモノメチルエーテルチオール)を3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
- PEG-SHの調製 -
フラスコに210gのメトキシPEG-OH(分子量400)および93gのトリエチルアミンを収め、420mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた。溶液を0℃に冷却し、反応熱で反応溶液の温度が5℃を超えないよう注意しながら、窒素雰囲気下で51gのメタンスルホン酸クロリドを徐々に滴下した。その後、反応溶液を室温に昇温し2時間撹拌した。この溶液をクロロホルム-水系で抽出し、有機相を回収した。得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾過で取り除いたのち、濾液をエバポレーションにより濃縮して、オイル状の中間体を得た。これを別のフラスコに移し、窒素雰囲気下で400mLの1.3Mのチオ尿素水溶液を加えた。溶液を2時間還流したのち、21gのNaOHを加え、さらに1.5時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、1M HCl水溶液をpH=7になるまで加え、中和した。得られた溶液をクロロホルム-水系で抽出し、目的とするリガンド(PEG-SH、分子量400)を得た。
【0079】
[例10]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにPEG-SHを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0080】
[例11]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子の作製方法において、ZnSシェルを形成するときに用いるZn前駆体溶液の量を2.0mLに、硫化トリオクチルホスフィンの量を0.9mmоlにそれぞれ変更した。これにより得られた半導体ナノ粒子の平均粒径(前述のHeywood径)をTEMで測定したところ、7nmであった。
さらに、例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0081】
[例12]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子の作製方法において、ZnSシェルを形成するときに用いるZn前駆体溶液の量を3.75mLに、硫化トリオクチルホスフィンの量を1.5mmоlにそれぞれ変更した。これにより得られた半導体ナノ粒子の平均粒径(前述のHeywood径)をTEMで測定したところ、10nmであった。
さらに、例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0082】
[例13]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子の作製方法において、ZnSシェルを形成するときに用いるZn前駆体溶液の量を3.75mLに、硫化トリオクチルホスフィンの量を1.5mmоlにそれぞれ変更した。これにより得られた半導体ナノ粒子の平均粒径(前述のHeywood径)をTEMで測定したところ、13nmであった。
さらに、例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにPEG-SHを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0083】
[例14]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子の作製方法において、ZnSeシェルを形成するときに用いるZn前駆体溶液の量を1.5mLに、セレン化トリオクチルホスフィンの量を0.6mmоlにそれぞれ変更した。さらに、ZnSシェルを形成するときに用いるZn前駆体溶液の量を4.5mLに、硫化トリオクチルホスフィンの量を1.8mmоlにそれぞれ変更した。これにより得られた半導体ナノ粒子の平均粒径(前述のHeywood径)をTEMで測定したところ、13nmであった。
さらに、例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにPEG-SHを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
【0084】
[例15]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに後述する方法で作製したPEG-COOH(分子量750)を6.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
なお、例1と同様に半導体ナノ粒子複合体硬化膜の作製を行ったところ、膜は硬化しなかった。
- PEG-COOH(分子量750)の調製 -
メトキシPEG-OH(分子量700、26g)をトルエン(100mL)に60℃で溶解し、4.2gのカリウムtert-ブトキシドを加え、6時間反応させた。その後、5.5gのエチルブロモアセテートを混合物に添加し、PEG中のヒドロキシル基は酢酸エチル基によって保護した。混合物を濾過し、濾液をジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿を1M NaOH溶液(40mL)に溶解し、NaCl(10g)を加え、室温で1時間撹拌してPEGの末端のエチル基を除外した。この溶液を6M HClの添加によりpH3.0に調整した。得られた溶液をクロロホルム-水系で抽出し、分子量750のPEG-COOHを得た。
【0085】
[例16]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりに後述する方法で作製したPEG-COOH(分子量1000)を8.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
なお、例1と同様に半導体ナノ粒子複合体硬化膜の作製を行ったところ、膜は硬化しなかった。
- PEG-COOH(分子量1000)の調製 -
メトキシPEG-OH((分子量950、36g)をトルエン(100mL)に60℃で溶解し、4.2gのカリウムtert-ブトキシドを加え、6時間反応させた。その後、5.5gのエチルブロモアセテートを混合物に添加し、PEG中のヒドロキシル基は酢酸エチル基によって保護した。混合物を濾過し、濾液をジエチルエーテル中で沈殿させた。沈殿を1M NaOH溶液(40mL)に溶解し、NaCl(10g)を加え、室温で1時間撹拌してPEGの末端のエチル基を除外した。この溶液を6M HClの添加によりpH3.0に調整した。得られた溶液をクロロホルム-水系で抽出し、分子量1000のPEG-COOHを得た。
【0086】
[例17]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにPEG-COOH(750)を6.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜を作製し、各物性を評価した。
なお、半導体ナノ粒子複合体組成物、および半導体ナノ粒子複合体硬化膜中の半導体ナノ粒子の質量分率は25%が上限であった。
【0087】
[例18]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、TEG-SHの代わりにN-アセチル-N-(2-メルカプトエチル)プロパンアミドを3.5g添加し、半導体ナノ粒子複合体を得た。
それ以外は例1と同様の方法で、半導体ナノ粒子複合体、半導体ナノ粒子複合体分散液、および半導体ナノ粒子複合体組成物を作製し各物性を評価した。なお、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の作製には架橋剤を添加せず、例1と同様に硬化膜の作製を試みたが、膜は硬化しなかった。
【0088】
[例19]
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の作製方法において、操作を以下のように変更した。
フラスコに精製した半導体ナノ粒子を質量比で10質量%となるようにヘキサンで分散させた半導体ナノ粒子ヘキサン分散液10.0gをフラスコに収め、ホルムアミドを10mL、0.5質量%硫化アンモニウム水溶液を10mL添加し、窒素雰囲気下で室温、10分間撹拌し、半導体ナノ粒子複合体を含む反応液を得た。前記反応溶液を遠沈管に移し、アセトン40mLを添加し、4000Gで20分間遠心分離すると、透明な溶液層と半導体ナノ粒子複合体相に分離した。透明な溶液相を取り除き、残った半導体ナノ粒子複合体相を回収した。
上記の例1に記載の半導体ナノ粒子複合体の精製方法において、アセトンをクロロホルムに、ノルマルヘキサンをアセトンにそれぞれ変更した。得られた半導体ナノ粒子複合体の蛍光量子効率は15%、半値幅は45nmであった。
得られた半導体ナノ粒子複合体はPGMEAに分散しなかった。さらに、半導体ナノ粒子複合体はイソボルニルアクリレートに分散しなかった。
【0089】
上記の各例の半導体ナノ粒子複合体に対して、半導体ナノ粒子複合体組成物の作製方法においてモノマーと半導体ナノ粒子複合体を混合する際に、酸化チタン(径300nm)を10質量%混合した半導体ナノ粒子複合体組成物を得、さらに前記半導体ナノ粒子複合体組成物を硬化して散乱剤含有半導体ナノ粒子複合体硬化膜を得た。前記散乱剤含有半導体ナノ粒子複合体硬化膜に関して、前述した方法で吸光度の測定を行った。結果を表1~表3に示す。
【0090】
なお、表1に示されている略号の意味は次の通りである。
DDT:ドデカンチオール
OA :オレイン酸
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【符号の説明】
【0094】
1 青色LED
3 液晶
7 QDパターニング(R)
8 QDパターニング(G)
9 拡散層
101 青色LED
102 QDフィルム
103 液晶
104 カラーフィルター(R)
105 カラーフィルター(G)
106 カラーフィルター(B)
図1
図2