(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】発電素子、及び発電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 6/12 20060101AFI20241211BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241211BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20241211BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241211BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20241211BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20241211BHJP
H01M 50/46 20210101ALN20241211BHJP
【FI】
H01M6/12 Z
H01M4/38 Z
H01M4/06 B
H01M4/06 Q
H01M4/48
H01M50/434
H01M50/457
H01M50/46
(21)【出願番号】P 2024074569
(22)【出願日】2024-05-01
【審査請求日】2024-05-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513206164
【氏名又は名称】前山 孝仁
(73)【特許権者】
【識別番号】524168482
【氏名又は名称】エネジップフォーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(72)【発明者】
【氏名】前山 孝仁
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-513464(JP,A)
【文献】特表2022-516331(JP,A)
【文献】特許第3797729(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/165624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 6/52
H01M50/40-50/497
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含有する基材層と、
該基材層の一方の面に、二酸化ケイ素
純度が20%超である第1帯電層、及び所定の種類の金属を含
み20nm以上の厚みを有する第1金属層がこの順で積層方向に積層され、
前記基材層の他方の面に、二酸化ケイ素
純度が20%超である第2帯電層、及び前記第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含
み20nm以上の厚みを有する第2金属層がこの順で積層方向に積層された
発電素子。
【請求項2】
前記第1帯電層は、
前記基材層の一方の面に、凝灰岩または溶結凝灰岩から構成された第1凝灰岩層、及び二酸化ケイ素から構成された第1二酸化ケイ素層が積層され、
前記第2帯電層は、
前記基材層の他方の面に、凝灰岩または溶結凝灰岩から構成された第2凝灰岩層、及び二酸化ケイ素から構成された第2二酸化ケイ素層が積層された
請求項1に記載の発電素子。
【請求項3】
前記第1金属層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、クロム、鉄、ニッケル、鉛からなる群より選択される少なくとも一種の金属で構成され、
前記第2金属層は、金、銀、銅、及び白金からなる群より選択される少なくとも一種の金属で構成された
請求項1または請求項2に記載の発電素子。
【請求項4】
二酸化ケイ素を含む帯電層と、
該帯電層の一方の面に積層され、所定の種類の金属を含
み20nm以上の厚みを有する第1金属層と、
前記帯電層の他方の面に積層され、前記第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含
み20nm以上の厚みを有する第2金属層と、
前記第1金属層に積層され、水分を含有する第1保水層と、
前記第2金属層に積層され、水分を含有する第2保水層と、を備える
発電素子。
【請求項5】
前記帯電層は、
前記二酸化ケイ素の重量比1に対して重量比0.25~0.5の凝灰岩または溶結凝灰岩を含む
請求項4に記載の発電素子。
【請求項6】
水分を含有する基材層を準備する工程と、
前記基材層の一方の面に、二酸化ケイ素
純度が20%超である第1帯電層を蒸着する工程と、
前記基材層の他方の面に、二酸化ケイ素
純度が20%超である第2帯電層を蒸着する工程と、
前記第1帯電層の前記基材層と対向する面とは反対側の面に、所定の種類の金属を含
み20nm以上の厚みを有する第1金属層を蒸着する工程と、
前記第2帯電層の前記基材層と対向する面とは反対側の面に、前記第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含
み20nm以上の厚みを有する第2金属層を蒸着する工程と、を備える
発電素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1帯電層を前記基材層に蒸着する工程は、
前記基材層から積層方向に向けて、凝灰岩または溶結凝灰岩から構成された第1凝灰岩層、及び二酸化ケイ素から構成された第1二酸化ケイ素層を蒸着する工程を有し、
前記第2帯電層を前記基材層に蒸着する工程は、
前記基材層から積層方向に向けて、凝灰岩または溶結凝灰岩から構成された第2凝灰岩層、及び二酸化ケイ素から構成された第2二酸化ケイ素層を蒸着する工程を有する
請求項6に記載の発電素子の製造方法。
【請求項8】
二酸化ケイ素を含む帯電層を生成する工程と、
前記帯電層の一方の面に、
所定の種類の金属を含み20nm以上の厚みを有する第1金属層を積層する工程と、
前記帯電層の他方の面に、前記第1金属層よりもイオン化傾向が小さい
所定の種類の金属を含み20nm以上の厚みを有する第2金属層を積層する工程と、
前記第1金属層の前記帯電層と対向する面または前記帯電層と対向する面とは反対側の面の何れかの面に、水分を吸収可能な第1保水層を積層する工程と、
前記第2金属層の前記帯電層と対向する面または前記帯電層と対向する面とは反対側の面の何れか一方の面に、水分を吸収可能な第2保水層を積層する工程と、を備える
発電素子の製造方法。
【請求項9】
前記帯電層を生成する工程は、
前記二酸化ケイ素の重量比1に対して重量比0.25~0.5の凝灰岩または溶結凝灰岩を混合する工程を含む
請求項8に記載の発電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電素子、及び発電素子の製造方法に関する。詳しくは、外部電圧による充電を必要とせず、小型軽量でありながら発電効率を高めることができる発電素子、及び発電素子の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯情報端末に代表される電気機器の需要は急速に高まりをみせており、今後、さらに成長が期待される分野の一つとなっている。そして、このような電気機器の普及に伴い、駆動源である蓄電装置の研究開発も盛んに行われている。また、地球環境の問題や石油資源の問題への関心の高まりからハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車が注目されるなど、今後も様々な用途において蓄電装置の重要性が増している。
【0003】
一般に蓄電装置としては、これまで鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池などが用いられてきたが、環境配慮型社会の要求からこのような有害重金属を含有する蓄電池に対する規制も次第に強まりつつある。また、小型の携帯情報端末の普及によって、より利用エネルギーの高密度化、高電圧化、高出力化、長寿命化、小型軽量化、低価格化等の要求が一層高まり、新たな蓄電装置として、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、及びリチウムイオンキャパシタ等が開発され普及してきている。
【0004】
リチウムイオン電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池外装材に収納された構成となっており、例えば特許文献1には、正極19枚と負極20枚を、電解質層を介して交互に積層した積層構造のリチウムイオン電池が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、発電素子により発電した電気を二次電池に充電し、補助エネルギーとして利用する電源装置が開示されている。具体的には、圧電素子で発電した電気を二次電池やコンデンサ(キャパシタ)へ充電し、この電気エネルギーを携帯端末機の電源電池の補助エネルギーとして利用することで、携帯端末機の長時間の利用を実現している。
【0006】
ところで、リチウムイオン電池は、その動作原理が化学反応(ファラデー反応)を利用したものであるため、エネルギー密度に優れる一方で、内部抵抗が高くかつ耐久性が悪いという欠点がある。そのため、リチウムイオン電池を使用した機器においては、内部抵抗による損失が大きく、発電素子で発電した微小な電力を効率よく充電することが困難である。また、充放電の繰返しや高温使用環境に対する耐久性が低いため一定時間の経過毎の取り換え等のメンテナンスの手間が生じる。
【0007】
また、キャパシタは、動作原理が化学反応ではなく、電解液中のイオンの静電吸着により電荷を蓄えるものであるため、内部抵抗や耐久性に優れる一方で、吸着イオンの拡散による自己放電が早いために蓄積した電荷がすぐに消滅してしまう。そのため、発電素子による発電が断続的なものであり発電間隔が長くなる場合には蓄電装置からの放電が機能しない可能性がある。
【0008】
さらに、前記したリチウムイオン電池やキャパシタは、用途や使用方法により耐用年数に差があるものの、必ず寿命を迎え、例えばハイブリッド自動車や電気自動車に搭載されたリチウムイオン電池は、いずれは使用済み電池として廃棄される。この使用済みのリチウムイオン電池の廃棄処理に際しては、各部材に含まれる有価金属を回収して、資源としてリサイクルされるが、大半が環境負荷の大きい産業廃棄物として廃棄されているという実情がある。そのため、近年においては環境負荷の低い蓄電装置の開発が望まれている。
【0009】
この点、特許文献3には、静電気を多く有する火山灰により製造し、廃棄処理を必要としない発電素子が開示されている。具体的には、火山灰を加工した微粒中空球状体、他鉱石、及びマイナスイオンを含む活性化鉱水よりなる静電気生成部材に活性炭、フラーレン、ナノチューブ等よりなる導電性含水粉体を、絶縁性、気密性のある筒状の容器に充填した後、該容器の両端に電気を取り出すためのアノード電極とカソード電極を接続することで、小型でありながら大量の電気を取り出すことを実現している。
【0010】
さらに、特許文献4に示すように、本願の発明者は、火山噴出物であるシラスを略1000℃の高温下で焼成して発泡、膨張させたシラスバルーンには、多量のマイナスイオンを取り込む性質があることを見出し、係る知見に基づいて、イオン化傾向の異なる金属でシラスバルーンを挟持した積層構造体からなる発電素子を開発し、電流を長時間にわたって安定的に取り出す技術を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2009―272048号公報
【文献】特開2002―171341号公報
【文献】特表2005-502180号公報
【文献】特許第6547082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上の特許文献3、及び特許文献4に係る発明によれば、発電素子の主な材料として火山灰、及びシラスを使用してなるものであるため、特別な廃棄を必要としないことから環境負荷が低く、無公害でクリーンな発電素子を実現している。
【0013】
しかしながら、特許文献3に係る発明においては、火山灰に含まれるアロフェンのもつイオン交換性に着目し、火山灰にマイナスイオン水溶液を含浸させて静電気生成部材とし、該静電気生成部材で生成された静電気を起電力として取り出しているため、蓄積されている静電気の量が少なくなれば、その都度マイナスイオン水溶液を添加する必要がある。
【0014】
また、マイナスイオン水溶液の生成に際しては、例えば水道水を利用する場合、水道水に含まれる分子クラスタを小さくしてマイナスイオン化する必要があるが、一般的にはセラミックスチップ、あるいはトルマリン等の特殊な物質を使用する必要があり、さらにはその製造工程も複雑であることから、十分な量のマイナスイオン水溶液を確保することが困難である。
【0015】
さらに、発明者が検討した結果では、火山灰にはケイ素、アルミニウムなどの元素、ガス成分であるフッ素、塩素などのハロゲン元素や硫黄などの他に、銅、亜鉛、カドミニウム、水銀などの微量金属元素が含まれていることが知られているが、これら不純物質の存在により、一時的には大きな起電力の発生が可能であるものの持続性が短く、頻繁にマイナスイオン水溶液を添加しなければならないという課題を有している。
【0016】
この点、特許文献4に係る発明については、マイナスイオンをシラスバルーン層に形成されたバルーンホール内に取り込むために一定量の水分を必要とするが、使用する水溶液は特殊加工されている必要はなく、水道水を含むあらゆる水分を使用することができるため汎用性が広がり、さらに電流を長時間にわたって安定的に取り出すことができるものとなっている。
【0017】
一方で、本願の発明者は、さらに発電効率の高い材質について研究した結果、特許文献4に開示されたシラスバルーンに代わる素材として、二酸化ケイ素(SiO2)を使用することでより発電効率の高い発電素子を実現できることを見出した。
【0018】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、外部電圧による充電を必要とせず、小型軽量でありながら発電効率を高めることができる発電素子、及び発電素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明に係る発電素子は、水分を含有する基材層と、該基材層の一方の面に、二酸化ケイ素を含む第1帯電層、及び所定の種類の金属を含む第1金属層がこの順で積層方向に積層され、前記基材層の他方の面に、二酸化ケイ素を含む第2帯電層、及び前記第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含む第2金属層がこの順で積層方向に積層されたものである。
【0020】
ここで、基材層を備えることにより、該基材層に蒸着材料を付着させ、薄膜からなる発電素子を構成することができる。そして、基材層は水分を含有するため、後記する第1金属層から第2金属層へと電子が効率的に移動するため、発電効率を高めることができる。
【0021】
また、基材層の一方の面に、二酸化ケイ素を含む第1帯電層、及び所定の種類の金属を含む第1金属層がこの順で積層方向に積層されていることにより、例えばイオン化傾向の比較的大きい金属を第1金属層として用いるとで、該第1金属層に電子を残しつつ、第1帯電層に多くのマイナスイオンを帯電させることができる。
【0022】
このとき、第1帯電層は二酸化ケイ素を含むことにより、二酸化ケイ素は球状表面を形成するため表面積が大きく、係る表面に大量のマイナスイオンを帯電させることができるため、発電効率を高めることが可能となる。
【0023】
また、基材層の他方の面に、二酸化ケイ素を含む第2帯電層、及び第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含む第2金属層がこの順で積層方向に積層されていることにより、起電力を発生させることができる。即ち、第1金属層において、マイナスイオンが第1帯電層、及び第2帯電層に吸収された分だけ電子が増える。このとき、第1金属層と第2金属層を導通させることで、第1金属層で生成された電子が第2金属層に移動し、その結果、第1金属層と第2金属層との間に電流が流れ起電力が発生する。
【0024】
また、第1帯電層、及び第2帯電層は、基材層から積層方向に向けて、凝灰岩または溶結凝灰岩から構成された凝灰岩層、及び二酸化ケイ素から構成された二酸化ケイ素層が積層して構成されている場合には、二酸化ケイ素層に加えて凝灰岩層にもマイナスイオンを帯電させることができる。そして、凝灰岩は多数の微細孔が形成されているため表面積が大きく、係る微細孔内に多くのマイナスイオンを取り込むことができる。
【0025】
また、第1金属層は、アルミニウム、チタン、亜鉛、クロム、鉄、ニッケル、鉛からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる層である場合には、比較的イオン化傾向の大きい金属類を第1金属層として配置することで、より多くのマイナスイオンが帯電層に吸収されることにより、発電効率を高めることができる。
【0026】
また、第2金属層は、金、銀、銅、及び白金からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる層である場合には、第1金属層よりもイオン化傾向が小さい金属類を第2金属層として積層することで、より大きな起電力を生成することができる。
【0027】
前記の目的を達成するために、本発明の発電素子は、二酸化ケイ素を含む帯電層と、
該帯電層の一方の面に積層され、所定の種類の金属を含む第1金属層と、前記帯電層の他方の面に積層され、前記第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含む第2金属層と、前記第1金属層に積層され、水分を含有する第1保水層と、前記第2金属層に積層され、水分を含有する第2保水層とを備える。
【0028】
ここで、二酸化ケイ素を含む帯電層を備えることにより、二酸化ケイ素は球状表面を形成するため表面積が大きく、係る表面に大量のマイナスイオンを帯電させることができるため、発電効率を高めることが可能となる。
【0029】
また、帯電層の一方側に積層され、所定の種類の金属を含む第1金属層を備えることにより、イオン化傾向の比較的大きい金属を第1金属層として用いるとで、該第1金属層に電子を残しつつ、帯電層に多くのマイナスイオンを帯電させることができる。
【0030】
また、帯電層の他方の面に積層され、第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含む第2金属層を備えることにより、第1金属層において、マイナスイオンが帯電層に吸収された分だけ電子が増える。このとき、第1金属層と第2金属層を導通させることで、第1金属層で生成された電子が第2金属層に移動し、その結果、第1金属層と第2金属層との間に電流が流れ起電力を発生させることができる。
【0031】
また、第1金属層に積層され、水分を含有する第1保水層と、第2金属層に積層され、水分を含有する第2保水層をそれぞれ備えることにより、第1保水層と第2保水層とを介して第1金属層から第2金属層へと電子が効率的に移動するため、発電効率を高めることができる。
【0032】
また、帯電層は、二酸化ケイ素の重量比1に対して重量比0.25~0.5の凝灰岩または溶結凝灰岩を含む場合には、二酸化ケイ素と凝灰岩または溶結凝灰岩との混合比率が適切となり、発電効率を高めることができる。
【0033】
前記の目的を達成するために、本発明の発電素子の製造方法は、水分を含有する基材層を準備する工程と、該基材層の一方の面に、二酸化ケイ素を含む第1帯電層を蒸着する工程と、前記基材層の他方の面に、二酸化ケイ素を含む第2帯電層を蒸着する工程と、前記第1帯電層の前記基材層と対向する面とは反対側の面に、所定の種類の金属を含む第1金属層を蒸着する工程と、前記第2帯電層の前記基材層と対向する面とは反対側の面に、前記第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含む第2金属層を蒸着する工程とを備える。
【0034】
ここで、水分を含有する基材層を準備する工程を備えることにより、基材層の両面に後記する帯電層、及び基材層を蒸着して薄膜からなる発電素子を生成することができる。
【0035】
また、基材層の一方の面に、二酸化ケイ素を含む第1帯電層を蒸着する工程、及び基材層の他方の面に、二酸化ケイ素を含む第2帯電層を蒸着する工程を備えることにより、基材層を挟んで両側に帯電層を積層することができる。そして、この帯電層は二酸化ケイ素を含むため、二酸化ケイ素の球状表面に大量のマイナスイオンを帯電させることができるため、発電効率を高めることが可能となる。
【0036】
また、第1帯電層の基材層と対向する面とは反対側の面に、所定の種類の金属を含む第1金属層を蒸着する工程、及び第2帯電層の基材層と対向する面とは反対側の面に、第1金属層に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含む第2金属層を蒸着する工程を備えることにより、第1金属層と第2金属層をそれぞれ積層することができる。そして第1金属層では、マイナスイオンが帯電層に吸収された分だけ電子が増える。このとき、第1金属層と第2金属層を導通させることで、第1金属層で生成された電子が第2金属層に移動し、その結果、第1金属層と第2金属層との間に電流が流れ起電力を発生させることができる。
【0037】
また、第1帯電層、及び第2帯電層をそれぞれ基材層に蒸着する工程は、基材層から積層方向に向けて、凝灰岩または溶結凝灰岩から構成された凝灰岩層、及び二酸化ケイ素から構成された二酸化ケイ素層を蒸着する工程を有する場合には、凝灰岩層と二酸化ケイ素層のそれぞれにマイナスイオンを帯電させることができるため、発電効率をさらに高めることができる。
【0038】
前記の目的を達成するために、本発明の発電素子の製造方法は、二酸化ケイ素を含む帯電層を生成する工程と、前記帯電層の一方の面に、第1金属層を積層する工程と、前記帯電層の他方の面に、前記第1金属層よりもイオン化傾向が小さい第2金属層を積層する工程と、前記第1金属層の前記帯電層と対向する面または前記帯電層と対向する面とは反対側の面の何れか一方の面に、水分を吸収可能な第1保水層を積層する工程と、前記第2金属層の前記帯電層と対向する面または前記帯電層と対向する面とは反対側の面の何れか一方の面に、水分を吸収可能な第2保水層を積層する工程とを備える。
【0039】
ここで、二酸化ケイ素を含む帯電層を生成する工程を備えることにより、帯電層は二酸化ケイ素を含むため、二酸化ケイ素の球状表面に大量のマイナスイオンを帯電させることができるため、発電効率を高めることが可能となる。
【0040】
また、帯電層の一方の面に、第1金属層を積層する工程、及び帯電層の他方の面に、第1金属層よりもイオン化傾向が小さい第2金属層を積層する工程を備えることにより、帯電層を挟んで第1金属層と第2金属層とをそれぞれ積層することができる。そして第1金属層では、マイナスイオンが帯電層に吸収された分だけ電子が増える。このとき、第1金属層と第2金属層とを導通させることで、第1金属層で生成された電子が第2金属層に移動し、その結果、第1金属層と第2金属層との間に電流が流れ起電力を発生させることができる。
【0041】
また、第1金属層の帯電層と対向する面または帯電層と対向する面とは反対側の面の何れか一方の面に、水分を吸収可能な第1保水層を積層する工程と、第2金属層の帯電層と対向する面または帯電層と対向する面とは反対側の面の何れか一方の面に、水分を吸収可能な第2保水層を備えることにより、第1保水層と第2保水層を介して第1金属層から第2金属層へと電子が効率的に移動するため、発電効率を高めることができる。
【0042】
また、帯電層を生成する工程は、二酸化ケイ素の重量比1に対して重量比0.25~0.5の凝灰岩または溶結凝灰岩を混合する工程を含む場合には、二酸化ケイ素と凝灰岩または溶結凝灰岩との混合比率が適切となり、発電効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る発電素子、及び発電素子の製造方法は、外部電圧による充電を必要とせず、小型軽量でありながら発電効率を高めることができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る発電素子を概略的に示した断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る発電素子を用いた応用例を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る発電素子を概略的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0046】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る発電素子1の構成について
図1に基づいて説明する。発電素子1は、
図1に示すように、基材層10の一方の面に第1帯電層20、イオン化傾向の大きい金属からなる第1金属層40が積層方向に積層され、基材層10の他方の面に第2帯電層30、イオン化傾向の小さい金属からなる第2金属層50が積層方向に積層された薄膜シート状からなるものである。
【0047】
第1帯電層20は凝灰岩または溶結凝灰岩(以下、「凝灰岩等」という。)からなり、膜厚が10nm以上の第1凝灰岩層21、及び二酸化ケイ素を主成分とする膜厚が10nm以上の第1二酸化ケイ素層22から構成されている。また、第2帯電層30は、凝灰岩等からなり、膜厚が10nm以上の第2凝灰岩層31、及び二酸化ケイ素を主成分とする膜厚が10nm以上の第2二酸化ケイ素層32から構成されている。即ち、第1帯電層20、及び第2帯電層30は、それぞれ同一の構成であり、20nm以上の膜厚から構成されている。
【0048】
なお、以下の説明では、第1帯電層20と第2帯電層30をまとめて「帯電層」、第1二酸化ケイ素層22と第2二酸化ケイ素層32をまとめて「二酸化ケイ素層」、第1凝灰岩層21と第2凝灰岩層31をまとめて「凝灰岩層」と呼ぶ場合もある。
【0049】
第1凝灰岩層21と第2凝灰岩層31とは、凝灰岩等を略1000~1500℃の高温で加熱処理して発泡させたものを、基材層10の一方と他方の面にそれぞれ薄膜に形成したものである。凝灰岩等は高温で加熱処理して発泡させることで多数の気泡が形成されることで全体の表面積が大きくなり、より多くのマイナスイオンを帯電させることが可能となる。
【0050】
また、発電素子1を薄膜に成膜する際には、スパッタリングによる蒸着が一般的に行われるが、このとき基材層10に蒸着する被蒸着物は、比較的硬い物質である必要があり、この点において加熱処理された凝灰岩等は一定の硬度を有しており、スパッタリングによる蒸着に最適な物質である。
【0051】
第1二酸化ケイ素層22と第2二酸化ケイ素層32とは、二酸化ケイ素(純度が50%以上)を主成分として構成されている。二酸化ケイ素はその表面が球状体からなるため表面積が大きく、より多くのマイナスイオンを帯電させることが可能となる。二酸化ケイ素層も凝灰岩層と同じく、スパッタリングにより凝灰岩層に蒸着して薄膜に成膜したものである。
【0052】
ここで、必ずしも、帯電層は凝灰岩層と二酸化ケイ素層の二層から構成されている必要はない。発明者が検討した結果では、凝灰岩層に比べて二酸化ケイ素層の方がマイナスイオンを帯電させる能力が高いため、帯電層として二酸化ケイ素層のみから構成されていてもよい。なお、帯電層として二酸化ケイ素層のみで構成する場合には、基材層10の一方の面に二酸化ケイ素を膜厚が20nm以上となるように蒸着して第1二酸化ケイ素層22を形成し、基材層10の他方の面に、同じく二酸化ケイ素を膜厚が20nm以上となるように蒸着して第2二酸化ケイ素層32を形成する。
【0053】
また、必ずしも、帯電層は、凝灰岩層と二酸化ケイ素層とがこの順に積層方向に積層されている必要はなく、例えば基材層10を起点として二酸化ケイ素層、凝灰岩層の順で積層してもよい。ただし、前記した通り、基材層10にスパッタリングより基材層10に薄膜を形成する場合、基材層10にはできるだけ硬度の高い素材を蒸着することが好ましい。そのため、基材層10に蒸着する素材としては、より硬度の高い素材である凝灰岩層を蒸着することが好ましい。
【0054】
また、第1帯電層20と第2帯電層30の膜厚はそれぞれ20nm以上に限定されるものではない。但し、発明者が検討を繰り返した結果では、帯電層の全体の膜厚が40nm未満の場合には表面積が相対的に小さくなり、第1金属層40から放出されるマイナスイオンの全てを吸収することができないため、安定した起電力を生成することができない虞がある。
【0055】
一方、帯電層の全体の膜厚として40nm以上とすると、安定して起電力が生成されるとともに、例えば、40nm以上の範囲において膜厚を変更したとしても、生成される起電力に大きな違いはないことが確認できた。そのため第1帯電層20、及び第2帯電層30のそれぞれの膜厚の下限値としては20nmであることが好ましく、第1帯電層20、及び第2帯電層30のそれぞれの膜厚の上限値としては小型軽量化という観点では700nm程度であることが好ましい。
【0056】
第1金属層40は、例えば水素のイオン化エネルギーよりも高く、水、又は酸に容易に浸される金属として、本発明の実施形態においてはアルミニウムが選択される。そして、第1金属層40は、アルミニウムをスパッタリングにより第1帯電層20上に蒸着して20nm以上の薄膜に形成されたものである。
【0057】
ここで、必ずしも、第1金属層40の種類としてアルミニウムである必要がない。前記の通り、水素のイオン化エネルギーよりも高く、水、又は酸に容易に侵される金属であれば、どのような種類の金属であってもよく、例えば、チタン、亜鉛、クロム、鉄、ニッケル、鉛等から選ばれる少なくとも1種の金属であってもよい。
【0058】
また、必ずしも、第1金属層40は、その膜厚が略20nm程度である必要はないが、発明者が検討を繰り返した結果では、第1金属層40の膜厚として、20nm未満の場合、安定した起電力の生成ができなかった。これは、第1金属層40を20nm未満の薄膜状とすると、第1金属層40で生成されるマイナスイオンが少なくなることに起因するものと考えられる。
【0059】
一方、第1金属層40の厚みを20nm以上とした場合、安定して起電力が生成されるとともに、例えば20nm以上の範囲において第1金属層40の膜厚を変更したとしても、生成される起電力の量に大きな違いはないことが確認できた。そのため、第1金属層40の膜厚の下限としては20nmであることが好ましく、第1金属層40の膜厚の上限値としては小型軽量化という観点では700nm程度であることが好ましい。
【0060】
第2金属層50は、水素のイオン化エネルギーよりも低い金属(即ち、第1金属層40で選択される金属材料よりもイオン化傾向が低い金属)として、本発明の実施形態においては銅が選択される。そして、第2金属層50は、銅をパッタリングにより第2帯電層30上に蒸着して20nm以上の薄膜に構成されたものである。
【0061】
ここで、必ずしも、第2金属層50の種類として銅である必要がない。前記の通り、水素のイオン化エネルギーよりも低い金属であれば、どのような種類の金属であってもよく、例えば、銅の他にも金、銀、銅、及び白金等から選ばれる少なくとも1種の金属であってもよい。
【0062】
また、必ずしも、第2金属層50は、その厚みが略20nm程度である必要はないが、発明者が検討を繰り返した結果では、第2金属層50の膜厚として、20nm未満の場合、安定した起電力の生成ができなかった。これは、第2金属層50を20nm未満の薄膜状とすると、第1金属層40から受け取る電子の量が減少することに起因するものと考えられる。
【0063】
一方、第2金属層50の厚みを20nm以上とした場合、安定して起電力が生成されるとともに、例えば20nm以上の範囲において第2金属層50の膜厚を変更したとしても、生成される起電力の量に大きな違いはないことが確認できた。そのため、第2金属層50の膜厚の下限としては20nmであることが好ましく、第2金属層50の膜厚の上限値としては小型軽量化という観点では700nm程度であることが好ましい。
【0064】
基材層10は略20nm程度の薄厚であり、大気中の水分を吸収可能なペーパー素材から構成され、各層をスパッタリングにより蒸着させる際の基材となるものである。基材層10は大気中の水分を吸収可能な素材であることにより、基材層10には常に一定量の水分が含有されることになる。そして、基材層10に吸収された水分子を媒介として、第1金属層40から発生したマイナスイオンを帯電層に帯電させることが可能となる。
【0065】
ここで、基材層10の膜厚についても20nmである必要はないが、膜厚が20nm未満の場合には基材層10に吸収される水分量が少なくなるため、第1金属層40から帯電層に帯電するマイナスイオンが相対的に減少し、発電能力が低下する虞がある。従って、基材層10の膜厚としては20nm以上を確保することが好ましく、また膜厚の上限値としては小型軽量化という観点では700nm程度であることが好ましい。
【0066】
さらに、前記の通り基材層10は、大気中の水分を吸収可能であるが、スポイト等により所定の水溶液を供給してもよい。なお、基材層10に一定の水分量が含有できればよいため、水溶液の種類としては水道水をはじめとして、あらゆる水溶液を使用することができる。
【0067】
以上のように、基材層10を基材として、各層をスパッタリングにより蒸着して薄膜に形成することで、小型軽量でありながら発電能力に優れた発電素子1とすることができるため、例えばモバイル用の薄型バッテリーとして利用できる。
【0068】
図2は、第1の実施形態に係る発電素子1を用いた応用例を示す図である。2つの発電素子1a、1bを準備し、絶縁層60を介してそれぞれの発電素子1a、1bを直列的に接続することで、大容量化が可能なものとなる。
【0069】
即ち、発電素子1aの正極である第2金属層50aと、発電素子1bの負極である第1金属層40bを導線Wで接続する。また、発電素子1aの負極である第1金属層40aと、発電素子1bの正極である第2金属層50bには、それぞれ電気取出し用の端子Tを接続したものである。これにより、単体の発電素子1に比べて2倍の発電性能を発揮することが可能となる。なお、さらなる発電性能の向上を図る場合には、発電素子を3個以上直列に接続することも可能である。
【0070】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る発電素子100について説明する。なお、第1の実施形態と重複する説明については省略する。第2の実施形態に係る発電素子100は、発電素子100を構成する各層が接着積層等により成形されているため、スパッタリングによる蒸着で薄膜を成形する第1の実施形態に比べて製造が容易なものとなる。
【0071】
図3に示すように、第2の実施形態に係る発電素子100は帯電層110、帯電層110の一方の面に積層された第1金属層120、帯電層110の他方の面に積層された第2金属層130、第1金属層120の帯電層110と対向する面とは反対側の面に積層された第1保水層140、第2金属層130の帯電層110と対向する面とは反対側の面に積層された第2保水層150とから構成されている。
【0072】
帯電層110の素材は粉末状の二酸化ケイ素を主成分として、必要に応じて略1000~1500℃の高温で加熱処理して発泡させた粉末状の凝灰岩等を混合してもよい。なお、二酸化ケイ素と凝灰岩等との混合比率は、二酸化ケイ素の重量比1に対して凝灰岩等を0.25~0.5の重量比で混合することで、発電効率が最適なものとなる。
【0073】
また、発明者が検討した結果、帯電層110を構成する粉末状の二酸化ケイ素、及び凝灰岩等の粒径は500μm程度を上限とすることが好ましい。即ち、帯電層110を構成する二酸化ケイ素や凝灰岩等の粒径が500μmよりも大きくなると、隣接する粒子間の隙間が大きくなり、帯電層110に帯電するマイナスイオンの量が減少するため発電素子100の発電効率が悪化する可能性がある。
【0074】
帯電層110の一方の面と他方の面には、それぞれ第1金属層120、及び第2金属層130が接着積層されている。第1金属層120は、例えば水素のイオン化エネルギーよりも高く、水、又は酸に容易に浸される金属として、本発明の実施形態においてはアルミニウムが選択される。
【0075】
ここで、必ずしも、第1金属層120の種類としてアルミニウムである必要がない。前記の通り、水素のイオン化エネルギーよりも高く、水、又は酸に容易に侵される金属であれば、どのような種類の金属であってもよく、例えば、アルミニウムの他にも、マグネシウム、チタン、亜鉛、クロム、鉄、ニッケル、鉛等から選ばれる少なくとも1種の金属であってもよい。
【0076】
第2金属層130は、水素のイオン化エネルギーよりも低い金属(即ち、第1金属層120で選択される金属材料よりもイオン化傾向が低い金属)として、本発明の実施形態においては銅が選択される。
【0077】
ここで、必ずしも、第2金属層130の種類として銅である必要がない。前記の通り、水素のイオン化エネルギーよりも低い金属であれば、どのような種類の金属であってもよく、例えば、銅の他にも金、銀、銅、及び白金等から選ばれる少なくとも1種の金属であってもよい。
【0078】
第1保水層140と第2保水層150は、それぞれ水分を吸収可能なペーパー素材から構成されており、これらは大気中の水分を吸収可能な素材であることにより、発電素子100は常に一定量の水分が含有されることになる。そして、第1保水層140、及び第2保水層150で吸収された水分子を媒介として、第1金属層120から発生したマイナスイオンを帯電層110に帯電させることが可能となる。
【0079】
また、発電素子100の水分が減少したとしても、第1保水層140、及び第2保水層150は発電素子100の周囲に接着積層されているため、スポイト等により所定の水溶液を、適宜供給することも容易である。
【0080】
ここで、必ずしも、第1保水層140、及び第2保水層150は前記した配置に限定されるものではなく、第1保水層140は第1金属層120の何れか一方の面に積層されていればよく、第2保水層150は第2金属層130の何れか一方の面に積層されていればよい。
【0081】
以上のように、各層を接着積層により構成することで、発電能力に優れた発電素子1を容易に製造することができる。そして、発電素子100は第1の実施形態に係る発電素子1に比べて大型となるため、例えば自動車用のバッテリー等、大容量のバッテリーとして使用することができる。
【0082】
[実施例]
次に、本発明の発電素子の実施例について説明する。実施例で使用した発電素子は本発明の第1の実施形態の発電素子1に示すように、スパッタリングによる蒸着で薄膜状に形成したものであり、20nmの厚みで所定量の水分(スポイトで2~5滴程度)を含有した基材層10の一方の面に第1凝灰岩層21、及び第1二酸化ケイ素層22をそれぞれ蒸着させて第1帯電層20を成膜した。第1凝灰岩層21と第1二酸化ケイ素層22の膜厚は各10nmで成膜した。基材層10の他方の面に第2凝灰岩層31、及び第2二酸化ケイ素層32をそれぞれ蒸着させて第2帯電層30を成膜した。第2凝灰岩層31と第2二酸化ケイ素層32の膜厚は各10nmで成膜した。
【0083】
なお、第1凝灰岩層21と第2凝灰岩層31は凝灰岩を略1300℃で加熱処理して発泡させた粉末を使用している。また、第1二酸化ケイ素層22と第2二酸化ケイ素層32からなる二酸化ケイ素層は、二酸化ケイ素の純度に応じて実施例1(純度100%)、実施例2(純度50%)、比較例(純度20%)とした。
【0084】
また、第1二酸化ケイ素層22の第1凝灰岩層21と対向する面とは反対の面には、アルミニウムからなる第1金属層40を膜厚20nmで積層し、第2二酸化ケイ素層32の第2凝灰岩層31と対向する面とは反対の面には、銅からなる第2金属層50を膜厚20nmで積層した。
【0085】
以上の実施例1、実施例2、及び比較例に係る発電素子1について、第1金属層40と第2金属層50との間に所定の大きさの抵抗器を接続して電圧を測定した。表1は、計測開始から20日間の電圧(V)の測定結果の時系列データである。
【0086】
【0087】
表1に示すように、二酸化ケイ素の純度が高いほど長期的に安定した発電ができることが確認できた。特に実施例1(二酸化ケイ素の純度100%)では、計測開始から20日間経過しても発電能力が大きく劣化することはなかった。一方、比較例(二酸化ケイ素の純度が20%未満)の場合には、計測開始から5日経過後に発電能力が約半分となり、発電素子の劣化が早まることが確認できる。以上の実施例、及び比較例から、本発明に係る発電素子1の優位性を確認することができる。
【0088】
以上、本発明に係る発電素子、及び発電素子の製造方法は、外部電圧による充電を必要とせず、小型軽量でありながら発電効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0089】
1、100 発電素子
10 基材層
20 第1帯電層
21 第1凝灰岩層
22 第1二酸化ケイ素層
30 第2帯電層
31 第2凝灰岩層
32 第2二酸化ケイ素層
40、120 第1金属層
50、130 第2金属層
60 絶縁層
110 帯電層
140 第1保水層
150 第2保水層
W 導電線
T 端子
【要約】
【課題】外部電圧による充電を必要とせず、小型軽量でありながら発電効率を高めることができる発電素子、及び発電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】発電素子1は、水分を含有する基材層10と、基材層10の一方の面に、二酸化ケイ素を含む第1帯電層20、及び所定の種類の金属を含む第1金属層40がこの順で積層方向に積層され、基材層10の他方の面に、二酸化ケイ素を含む第2帯電層30、及び第1金属層40に含まれる金属よりもイオン化傾向が小さい所定の種類の金属を含む第2金属層50がこの順で積層方向に積層されている。そして、第1金属層40から放出されたマイナスイオンは、第1帯電層20、第2帯電層30に取り込まれるとともに、第1金属層40から第2金属層50への電子移動に伴い電流を取り出すことができる。
【選択図】
図1