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特許7602222人体検出装置、ベッド装置及び人体検出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】人体検出装置、ベッド装置及び人体検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20241211BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241211BHJP
   A61G 7/043 20060101ALI20241211BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20241211BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20241211BHJP
   H10N 30/60 20230101ALI20241211BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20241211BHJP
【FI】
G01L1/16 Z
A61B5/11 100
A61G7/043
G01L5/00 101Z
H10N30/30
H10N30/60
H10N30/857
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020119551
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022016198
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-05-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515225415
【氏名又は名称】株式会社Z-Works
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光伸
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 僚介
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-061338(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059573(WO,A1)
【文献】米国特許第05410297(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G01L 5/00
H10N 30/30
H10N 30/60
H10N 30/857
A61G 7/043
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体から受ける圧力の方向と交差する基準面に沿って軸方向が設けられ、かつ径方向に加えられた圧力を検出するライン状の圧電基材と、
前記圧電基材を支持するように前記基準面に対して設けられ、かつ前記軸方向から見た断面は前記基準面側の幅よりも前記圧電基材側の幅が狭くなるように形成されている緩衝体と、を備え、
前記緩衝体は、前記軸方向側の端部において前記軸方向外側に向かうにつれて前記基準面に向かう傾斜面を有し、
前記圧電基材は前記傾斜面に沿って貼り付けられており、
前記基準面側の幅広の緩衝部位及び前記圧電基材側の幅狭の緩衝部位がいずれも同一の素材で形成され、前記圧電基材が受ける圧力が上がるにつれて前記幅狭の緩衝部位から前記幅広の緩衝部位に前記素材が歪む範囲が広がる、人体検出装置。
【請求項2】
人体から受ける圧力の方向と交差する基準面に沿って軸方向が設けられ、かつ径方向に加えられた圧力を検出するライン状の圧電基材と、
前記圧電基材を支持するように前記基準面に対して設けられ、かつ前記軸方向から見た断面は前記基準面側の幅よりも前記圧電基材側の幅が狭くなるように形成されている緩衝体と、
前記基準面を構成すると共に、前記圧力を受ける保持板と、
前記圧電基材と、前記圧電基材で発生した出力信号を伝達する配線と、を接続する接続部と、
前記保持板に固定され、前記接続部を収容する金属管と、を備え、
前記金属管は、
一端に前記配線を固定する固定部と、他端に前記圧電基材を挿通可能とする挿通部と、を有し、
前記緩衝体は、前記基準面側の幅広の緩衝部位及び前記圧電基材側の幅狭の緩衝部位がいずれも同一の素材で形成され、前記圧電基材が受ける圧力が上がるにつれて前記幅狭の緩衝部位から前記幅広の緩衝部位に前記素材が歪む範囲が広がる、人体検出装置。
【請求項3】
前記圧電基材は、
長尺状の導体と、
前記導体に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の圧電体と、を備え、
前記導体と前記圧電体との間の電位差から前記圧電体に入力された圧力を検知する請求項1又は請求項2に記載の人体検出装置。
【請求項4】
前記圧電体には、有機圧電材料が用いられている請求項3に記載の人体検出装置。
【請求項5】
前記圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)である請求項4に記載の人体検出装置。
【請求項6】
前記ヘリカルキラル高分子(A)は、ポリ乳酸である請求項5に記載の人体検出装置。
【請求項7】
前記緩衝体との間で前記圧電基材を挟み込むと共に、前記緩衝体の表面に貼り付けられた被覆部材を有する請求項1~の何れか1項に記載の人体検出装置。
【請求項8】
前記緩衝体は、密度が0.05~0.5kg/m で、かつJIS K7312に規定されたアスカーC型ゴム硬度が5~60の範囲にある請求項1~の何れか1項に記載の人体検出装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の人体検出装置を備えたベッド装置
【請求項10】
請求項1~8の何れか1項に記載の人体検出装置を複数備え、
複数の前記人体検出装置は、前記基準面における複数の領域にそれぞれ設置され、
前記領域の各々に設置された各前記圧電基材の出力信号を検出可能とする検出部をさらに備える人体検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人体検出装置、ベッド装置及び人体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院や各種介護施設等に設置されるベッドとして、就床者である被介護者の在・不在や体調の変化を検出する感圧センサをベッドに設けることが考えられている。例えば、特許文献1には、圧電ケーブルを波型に配置してマットレスに組み込んで、圧電ケーブルにより就床者の人体を検知可能としたベッド装置が開示されている。また例えば、特許文献2には、ベッドの上面に長尺テープ状の圧電センサを幅方向にわたって配設し、この圧電センサによって就床者の人体を検知すると共に、就床者の血圧値や動脈硬化度を判定する生体モニタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-351781号公報
【文献】特開平10-229973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような圧電ケーブルや特許文献2のような圧電ラインをセンサとして適用した場合、体重が極めて軽い人がベッドに横たわるとセンサ感度が十分ではなく、在不在を誤検知したりする場合がある。そのため、体重が極めて軽い人でも検知する高感度な装置が求められている。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、圧電性を有する材料を用いて人体を検知する場合に、人体を高感度で検知可能な人体検出装置、ベッド装置及び人体検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は、以下の通りである。
【0007】
<1> 人体から受ける圧力の方向と交差する基準面に沿って軸方向が設けられ、かつ径方向に加えられた圧力を検出するライン状の圧電基材と、前記圧電基材を支持するように前記基準面に対して設けられ、かつ前記軸方向から見た断面は前記基準面側の幅よりも前記圧電基材側の幅が狭くなるように形成されている緩衝体と、を備え、前記緩衝体は、前記軸方向側の端部において前記軸方向外側に向かうにつれて前記基準面に向かう傾斜面を有し、前記圧電基材は前記傾斜面に沿って貼り付けられており、前記基準面側の幅広の緩衝部位及び前記圧電基材側の幅狭の緩衝部位がいずれも同一の素材で形成され、前記圧電基材が受ける圧力が上がるにつれて前記幅狭の緩衝部位から前記幅広の緩衝部位に前記素材が歪む範囲が広がる、人体検出装置。
<2> 人体から受ける圧力の方向と交差する基準面に沿って軸方向が設けられ、かつ径方向に加えられた圧力を検出するライン状の圧電基材と、前記圧電基材を支持するように前記基準面に対して設けられ、かつ前記軸方向から見た断面は前記基準面側の幅よりも前記圧電基材側の幅が狭くなるように形成されている緩衝体と、前記基準面を構成すると共に、前記圧力を受ける保持板と、前記圧電基材と、前記圧電基材で発生した出力信号を伝達する配線と、を接続する接続部と、前記保持板に固定され、前記接続部を収容する金属管と、を備え、前記金属管は、一端に前記配線を固定する固定部と、他端に前記圧電基材を挿通可能とする挿通部と、を有し、前記緩衝体は、前記基準面側の幅広の緩衝部位及び前記圧電基材側の幅狭の緩衝部位がいずれも同一の素材で形成され、前記圧電基材が受ける圧力が上がるにつれて前記幅狭の緩衝部位から前記幅広の緩衝部位に前記素材が歪む範囲が広がる、人体検出装置。
<3> 前記圧電基材は、長尺状の導体と、前記導体に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の圧電体と、を備え、前記導体と前記圧電体との間の電位差から前記圧電体に入力された圧力を検知する<1>又は<2>に記載の人体検出装置。
【0008】
<4> 前記圧電体には、有機圧電材料が用いられている<3>に記載の人体検出装置。
<5> 前記圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)である<4>に記載の人体検出装置。
<6> 前記ヘリカルキラル高分子(A)は、ポリ乳酸である<5>に記載の人体検出装置。
<7> 前記緩衝体との間で前記圧電基材を挟み込むと共に、前記緩衝体の表面に貼り付けられた被覆部材を有する<1>~<6>の何れか1に記載の人体検出装置。
【0009】
<8> 前記緩衝体は、密度が0.05~0.5kg/mで、かつJIS K7312(アスカーC型法)に基づくゴム硬度が5~60の範囲にある<1>~<7>の何れか1に記載の人体検出装置。
【0010】
<9> <1>~<8>の何れか1に記載の人体検出装置を備えたベッド装置。
<10> <1>~<8>の何れか1に記載の人体検出装置を複数備え、複数の前記人体検出装置は、前記基準面における複数の領域にそれぞれ設置され、前記領域の各々に設置された各前記圧電基材の出力信号を検出可能とする検出部をさらに備える人体検出システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電性を有する材料を用いて人体を検知する場合に、人体を高感度で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るベッド装置の分解斜視図である。
図2】第1の実施形態に係るベッド装置が備える人体検出装置の平面図である。
図3A】第1の実施形態の人体検出装置のセンサユニットの圧電基材に沿った断面図である。
図3B】第1の実施形態の人体検出装置のセンサユニットの断面図(図3Aの3B-3B線断面図)である。
図4】第1の実施形態における圧電基材と同軸ケーブルとの接続部の断面図である。
図5】第1の実施形態のベッド装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】解析用PCにおけるCPUの機能構成の例を示すブロック図である。
図7】圧電基材の一態様を示す側面図である。
図8】圧電基材の一態様を示す断面図(図7のX-X’線断面図)である。
図9】圧電基材の他の態様を示す側面図である。
図10A】第1の実施形態の変形例1に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図10B】第1の実施形態の変形例2に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図11A】第2の実施形態に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図11B】第2の実施形態の変形例1に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図11C】第2の実施形態の変形例2に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図12A】第3の実施形態に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図12B】第3の実施形態の変形例に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図13A】第4の実施形態に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図13B】第4の実施形態の変形例に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図14A】第5の実施形態に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図14B】第5の実施形態の変形例に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図15】第6の実施形態に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図16】第7の実施形態における圧電基材と同軸ケーブルとの接続部の断面図である。
図17】第8の実施形態に係るベッド装置の分解斜視図である。
図18A】第8の実施形態に係るベッド装置に用いられるケースの平面図である。
図18B】第8の実施形態に係るベッド装置に用いられるケースの背面図である。
図19】実施例2に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図20】比較例に係る人体検出装置のセンサユニットの断面図である。
図21】感度の測定を行う装置群の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中において、部材の「面」は、特に断りが無い限り、部材の「主面」を意味する。
本明細書において、厚さ、幅、及び長さは、通常の定義どおり、厚さ<幅<長さの関係を満たす。
本明細書において、2つの線分のなす角度は、0°以上90°以下の範囲で表す。
本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
本明細書において、「MD方向」とはフィルムの流れる方向(Machine Direction)、すなわち、延伸方向である。
本明細書において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
〔第1の実施形態〕
図1図9を基に、第1の実施形態として、人体検出システムであるベッド装置10と、ベッド装置10が備える人体検出装置30について説明する。
【0015】
(ベッド装置の構成)
図1に示すように、本実施形態のベッド装置10は、脚付きのベッド20と、人体検出装置30と、を備えている。ベッド20は、床面に設置される枠状のフレーム22と、フレーム22の中央部を覆う床板24と、床板24の上面に載置されるマットレス26と、を備えている。
加圧部としてのマットレス26は、ポリエステル製の生地で被覆された板状のウレタンフォームである。マットレス26は、床板24及び後述するセンサユニット32の上に載置されると共に、上面には臥位の就床者が横たわる。本実施形態のマットレス26は、被覆部材である絶縁部材38(図3A参照)に覆われた圧電基材100に対して接触し、かつ就床者の人体が接触することで加圧されるものである。
【0016】
なお、本実施形態のマットレス26は加圧を受ける部分がポリウレタン製(ウレタンフォーム)であるがこれに限らず、ファイバ製やラテックス製であってもよい。また、加圧部は必ずしもベッド20が備えるマットレス26である必要はなく、シーツやござであってもよい。ここで、マットレス26の厚さは、0.005~50mmの範囲にあり、マットレス26の硬さはJISK6400-2に規定されるA法に準拠して測定した場合に50~200N、好ましくは100~200N、更に好ましくは110~170Nの範囲にある。
【0017】
なお、JISK6400-2に規定されるA法に準拠すれば、本実施形態のマットレス26の硬さは次のようにして求める。すなわち、マットレス26の硬さは、マットレス26の中身のフォームを平らに置き、直径200mmの円形加圧板を乗せ、フォームの元の厚さの75%の距離まで押し込んだ後、元に戻して、再び元の厚さの40%の距離まで押し込み、30秒間静止させた時の荷重値をN(ニュートン)として求められる。
以上、本実施形態のベッド装置10は、フレーム22、床板24及びマットレス26によりベッド20として機能するが、床板24とマットレス26との間にセンサユニット32を設置することにより、床面上での人体の位置検知が可能となる。
【0018】
(人体検出装置の構成)
本実施形態の人体検出装置30は、加圧部としてのマットレス26と、7つのセンサユニット32と、情報処理ユニット40と、を備えている。センサユニット32は、床板24とマットレス26との間に設置されており、人体から受ける圧力を検知可能としている。図2に示すように、5つのセンサユニット32は、ベッド奥行方向を長手方向とするようにベッド奥行方向一方側の床板24の上に設置されている。すなわち、5つのセンサユニット32は、臥位の人体に沿って設置される。また、2つのセンサユニット32は、ベッド幅方向を長手方向とするようにベッド奥行方向他方側の床板24の上に設置されている。すなわち、2つのセンサユニット32は、臥位の人体に対する交差方向に設置される。
【0019】
センサユニット32は、後述する支持板36への設置面を基準面33として、基準面33の交差方向から加わる圧力(矢印P参照)を検知可能に形成されている(図3B参照)。
図3A及び図3Bに示すように、センサユニット32は、床板24に載置される支持板36と、支持板36に対して接着された緩衝材37と、緩衝材37の上面に設置されたケーブル状の圧電基材100と、圧電基材100を覆う絶縁部材38と、を備えている。保持板としての支持板36は、緩衝材37を支持する板状部材であって、例えば、硬質塩化ビニル製である。一例として、支持板36の寸法は、長さを850mm、幅を20mm、厚さを3mmに設定することができる。
【0020】
緩衝体としての緩衝材37は、圧電基材100に加わる張力を緩和するために設けられたスポンジシートである。また、緩衝材37は、支持板36の上部に設けられた下部緩衝部37Aと、下部緩衝部37Aの上部に設けられた上部緩衝部37Bと、を有している。本実施形態の緩衝材37は、下部緩衝部37Aと上部緩衝部37Bとが同一素材であって、密度が0.05~0.5kg/mで、かつJIS K7312に規定されたアスカーCタイプの硬度が5~60の範囲にある。緩衝材37の具体的な材料としては、発泡ゴム及び発泡した樹脂材料が好適に用いられる。発泡樹脂材料としては、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、EVA架橋発泡体、PET樹脂発泡体、フェノールフォーム、シリコーンフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、アクリルフォーム、ポリイミドフォーム、EPDMフォーム等の材料が用いられる
【0021】
下部緩衝部37Aの寸法は長さを800mm、幅を20mm、厚さを5mmとし、上部緩衝部37Bの寸法は長さを800mm、幅を5mm、厚さを5mmとしている。すなわち、上部緩衝部37Bは幅が下部緩衝部37Aの幅よりも狭く設定されており、換言すると、緩衝材37は支持板36(基準面33)側の幅よりも圧電基材100側の幅が狭くなるように形成されている。なお、下部緩衝部37Aと上部緩衝部37Bとの厚さは、必ずしも同じである必要はない。
【0022】
図3Aに示すように、緩衝材37は、同軸ケーブル110側の端部が同軸ケーブル110に向かうにつれて高さが低くなるように傾斜面SLが形成されている。なお、下部緩衝部37Aにおいては、同軸ケーブル110側の端部の幅方向中央部分に形成された溝GRの底部に傾斜面SLが形成されている。すなわち、緩衝材37の上面において同軸ケーブル110に向けて延びる圧電基材100は、緩衝材37の端部において、傾斜面SLに沿って下り、支持板36の上部に達する。
下部緩衝部37Aは、両面テープ34により支持板36に対して接着され、上部緩衝部37Bは、両面テープ34により下部緩衝部37Aに対して接着されている。なお、支持板36と下部緩衝部37Aとは、両面テープ34ではなく接着剤を用いて接着してもよい。同様に、下部緩衝部37Aと上部緩衝部37Bとは、両面テープ34ではなく接着剤を用いて接着してもよい。
【0023】
圧電基材100は緩衝材37の上面に貼り付けられた両面テープ34の上面に設置されている。この圧電基材100は圧力を受けることで電圧を発生する。圧電基材100は、配線としての同軸ケーブル110を介して情報処理ユニット40に電気的に接続されている。圧電基材100の詳細な構造については後述する。
絶縁部材38は、圧電基材100を被覆すると共に、両面テープ34を介して緩衝材37に対して接着されている。
【0024】
絶縁部材38は、市販の粘着テープ、可撓性かつ絶縁性のフィルム、粘着性を有するフィルム等が挙げられる。本実施形態の絶縁部材38としては、例えば、ヤング率が2.0~10GPa、厚みが4~50μmの二軸延伸ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスルフェンサルファイドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム等を採用することができる。
以上、本実施形態のセンサユニット32では、就床者の人体による加圧方向(つまり、矢印P方向)に沿って、マットレス26、絶縁部材38、圧電基材100、緩衝材37及び支持板36の順に配置されている。
【0025】
図4は、圧電基材100と同軸ケーブル110との接続部105の断面を示す。なお、接続部105の外周を覆う樹脂R(図3A参照)は省略している。図4に示すように、圧電基材100は、内部導体12と、圧電体14と、外部導体16とを備えている。また、同軸ケーブル110は、内部導体112と、絶縁層114と、外部導体116と、保護層118とを備えている。圧電基材100の内部導体12と同軸ケーブル110の内部導体112は、はんだ125にて接続されている。また、はんだ125を含む内部導体12と内部導体112との露出部分は絶縁被覆層120により被覆されている。絶縁被覆層120は熱収縮チューブであって、内部導体12と内部導体112とをはんだ付けした後、内部導体12及び内部導体112に収縮前の熱収縮チューブを被せ、加熱することで内部導体12及び内部導体112に密着する絶縁被覆層120となる。
さらに、絶縁被覆層120の外周には、金属層130が設けられている。金属層130としては、例えば、銅箔が採用される。金属層130は、圧電基材100の外部導体16と同軸ケーブル110の外部導体116とを掛け渡すように、絶縁被覆層120の外周に巻き付けられている。金属層130と外部導体16とは、はんだ135にて接続され、金属層130と外部導体116とは、はんだ136にてそれぞれ接続されている。そして、図3Aに示されるように、金属層130の外周に樹脂Rを充填することで、金属層130は絶縁されている。
【0026】
情報処理ユニット40は、センサユニット32からの出力信号を検出する。図5に示すように、情報処理ユニット40は、圧電基材100から出力されたアナログ信号である電圧出力をデジタル信号に変換するAD変換器42と、変換された各圧電基材100のデジタル信号を検出する処理用PC50と、を備えている。AD変換器42は、アナログ信号を入力するための入力端子が複数設けられており、各入力端子に圧電基材100が電気的に接続されている。
処理用PC50は、CPU(Central Processing Unit)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、ストレージ50D、通信I/F(Inter Face)50E及び入出力I/F50Fを含んで構成されている。CPU50A、ROM50B、RAM50C、ストレージ50D、通信I/F50E及び入出力I/F50Fは、バス51を介して相互に通信可能に接続されている。
【0027】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dからプログラムを読み出し、RAM50Cを作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、ストレージ50Dに各種処理を実行するための実行プログラムが記憶されている。CPU50Aは、実行プログラムを実行することで、図6に示す検出部55、判定部56及び報知部57として機能する。
ROM50Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。RAM50Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。記憶部としてのストレージ50Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを記憶している。
【0028】
通信I/F50Eは、スマートフォン等の携帯端末と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
入出力I/F50Fは、情報処理ユニット40を構成する各装置と通信するためのインタフェースである。本実施形態の処理用PC50には、入出力I/F50Fを介してAD変換器42、モニタ44及びスピーカ46が接続されている。
【0029】
図6は、CPU50Aの機能構成の例を示すブロック図である。図6に示すように、CPU50Aは、検出部55、判定部56及び報知部57を有している。各機能構成は、CPU50Aがストレージ50Dに記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
検出部55は、通信I/F50Eを介してAD変換器42から出力された各圧電基材100に係るデジタル信号を検出する機能を有している。これにより、就床者の人体がベッド20のどこに位置しているかを検知することができる。また、検出部55により、検出されたデータが数値化される。これにより、ベッド20の各部位においてどの程度の圧力が掛かっているかを知ることができる。
【0030】
判定部56は、隣接する圧電基材100同士の出力信号を比較することで、就床者の人体の動的な位置を特定する機能を有している。例えば、判定部56は、一の圧電基材100の電圧出力が軽減し隣接する圧電基材100の電圧出力が増加した場合に、就床者が寝返りをしたと判定する。また、判定部56は、全ての圧電基材100の電圧出力が軽減した場合に、就床者がベッド装置10から起き上がったと判定する。さらに、判定部56は、ベッド幅方向両端の圧電基材100の電圧出力が大きい場合に、就床者が偏って寝ていると判定する。
報知部57は、判定部56による寝返りや起き上がり、就寝位置の偏りに係る判定結果を報知する機能を有している。例えば、報知部57は、通信I/F50Eを介して介護者の携帯電話に向けて判定結果を送信することができる。また例えば、報知部57は、通信I/F50Eを介してモニタ44に判定結果に係る文字情報を出力したり、スピーカ46に判定結果に係る音声情報を出力したりすることができる。
【0031】
(圧電基材)
本実施形態のベッド装置10において圧力検出に用いられる圧電基材100の概要について説明する。なお、圧電基材100の詳細な構造については、特許6663085号公報、及び特開2019-067969号公報等の公知文献を適宜参照できる。
上述のように、本実施形態の圧電基材100は、内部導体12と、圧電体14と、外部導体16とを含んで構成されている。
【0032】
<内部導体>
本実施形態の導体である内部導体12には、信号線導体が適用されている。信号線導体とは、圧電体14から効率的に電気的信号を検出するための導体を意味する。より具体的には、圧電基材100に張力が印加されたときに、印加された張力に応じた電圧信号(電荷信号)を検出するための導体である。
内部導体12は、芯材と、芯材の周囲を被覆する導体とを備えるコード状の物体を用いることができる。このような構成の内部導体は、錦糸線とも称される。また、内部導体12として導電性繊維を用いることもできる。
芯材の太さは特に制限されず、圧電基材100の所望の特性に応じて選択できる。例えば、線外径が0.1mm~10mmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
<圧電体>
本実施形態の圧電体14は、有機圧電材料を用いることができ、有機圧電材料としては低分子材料、高分子材料を問わず採用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、あるいはポリフッ化ビニリデン系共重合体、ポリシアン化ビニリデンあるいはシアン化ビニリデン系共重合体あるはナイロン9、ナイロン11などの奇数ナイロンや、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、あるいはポリ乳酸などのヘリカルキラル高分子や、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体、ポリウレアなどが挙げられる。
圧電体14としては、良好な圧電特性、加工性、入手容易性等の観点から、高分子の有機圧電材料、特に光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含むものが好ましい。
【0034】
本実施形態の圧電基材100において、圧電体14が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、圧電体14の長さ方向と、圧電体14に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行に沿っており、下記式(a)によって求められる圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲であることが好ましい。
配向度F=(180°-α)/180°・・(a)
(式(a)中、αはX線回折により測定される配向由来のピークの半値幅を表す。)
【0035】
ここで、圧電体14の配向度Fは、圧電体14に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の配向の度合いを示す指標であり、例えば、広角X線回折装置(リガク社製、RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV、370mA、検出器:シンチレーションカウンター)により測定されるc軸配向度である。
より詳細には、本実施形態の圧電基材100では、圧電体14がヘリカルキラル高分子(A)を含むこと、圧電体14の長さ方向にヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向が沿っていること、及び、圧電体14の配向度Fが0.5以上1.0未満であることにより圧電性が好適に発現される。
これにより、圧電基材100に例えば張力を印加した場合に、発生電荷量が増加する。
【0036】
また、本実施形態の圧電基材100において、圧電体14は、長尺状であり、内部導体12の外周面に沿って一方向に螺旋状に巻回されていることが好ましい。
ここで、「一方向」とは、本実施形態の圧電基材100を内部導体12の軸方向の一端側から見たときに、圧電体14が内部導体12の手前側から奥側に向かって巻回されている方向をいう。具体的には、右方向(右巻き、即ち時計周り)又は左方向(左巻き、即ち反時計周り)をいう。
【0037】
また、圧電体14が長尺状であることにより、内部導体12の軸方向に対して、圧電体14が螺旋角度βを保持して一方向に螺旋状に配置されやすくなる。
ここで、「螺旋角度β」とは、内部導体12の軸方向と、内部導体12の軸方向に対して圧電体14が配置される方向(圧電体14の長さ方向)とがなす角度を意味する。
これにより、例えば、圧電基材100の長さ方向に張力が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)の分極が、圧電基材100の径方向に発生しやすくなる。この結果、効果的に張力に比例した電圧信号(電荷信号)が検出され、圧電感度が向上しやすい。
【0038】
本実施形態の圧電基材100において、圧電感度を向上する点から、圧電体14は、内部導体12の軸方向に対して、15°~75°(45°±30°)の角度(つまり螺旋角度β)を保持して巻回されていることが好ましく、35°~55°(45°±10°)の角度を保持して巻回されていることがより好ましい。
これにより、圧電基材100の長さ方向に張力(応力)が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わりやすく、圧電基材100の径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じやすい。
【0039】
また、本実施形態の圧電基材100では、圧電体14を一方向に螺旋状に配置することにより、圧電基材100の長さ方向に張力(応力)が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、圧電基材100の径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じる。その分極方向は、螺旋状に巻回された圧電体14を、その長さ方向に対して平面と見做せる程度の微小領域の集合体とみなした場合、その構成する微小領域の平面に、張力(応力)に起因したずり力がヘリカルキラル高分子に印加された場合、圧電定数d14に起因して発生する電界の方向と略一致する。
具体的には、例えばポリ乳酸においては、分子構造が左巻き螺旋構造からなるL-乳酸のホモポリマー(PLLA)の場合、PLLAの主配向方向に長さ方向が沿っている圧電体を、内部導体に対して、左巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。また、これとは逆にPLLAの主配向方向に長さ方向が沿っている圧電体を、内部導体に対して、右巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加された場合、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。
【0040】
また、例えば分子構造が右巻き螺旋構造からなるD-乳酸のホモポリマー(PDLA)の場合、PDLAの主配向方向に長さ方向が沿っている圧電体を、内部導体に対して、左巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に沿って、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。また、これとは逆にPDLAの主配向方向に長さ方向が沿っている圧電体を、内部導体に対して、右巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。
これにより、圧電基材100の長さ方向に張力が印加された際、螺旋状に配置された圧電体14の各部位において、張力に比例した電位差が位相の揃った状態で発生するため、効果的に張力に比例した電圧信号が検出されると考えられる。
【0041】
本実施形態の圧電基材100によれば、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性にも優れている。
特に、ヘリカルキラル高分子(A)として、非焦電性のポリ乳酸系高分子を用いることで、焦電性のPVDFを用いた圧電基材100に比べ、圧電感度の安定性、及び圧電出力の安定性(経時又は温度変化に対する安定性)がより向上する。
【0042】
なお、本実施形態の圧電基材100は、内部導体12に対して、圧電体14を右巻きに螺旋状に巻回し、かつ一部の圧電体14を左巻きに螺旋状に巻回した構造体を含むものであってもよい。一部の圧電体14を左巻きに螺旋状に巻回した場合、圧電感度の低下を抑制する点から、左巻きの割合は全体(右巻き及び左巻きの合計)に対して50%未満であることが好ましい。
また、本実施形態の圧電基材100は、内部導体12に対して、圧電体14を左巻きに螺旋状に巻回し、かつ一部の圧電体14を右巻きに螺旋状に巻回した構造体を含むものであってもよい。一部の圧電体14を右巻きに螺旋状に巻回した場合、圧電感度の低下を抑制する点から、右巻きの割合は全体(右巻き及び左巻きの合計)に対して50%未満であることが好ましい。
【0043】
圧電体14は、圧電感度を向上する点から、長尺平板形状又は繊維形状を有することが好ましい。特に、圧電体14として、長尺平板状圧電体を用いることにより、内部導体12に対する密着面を大きくでき、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
長尺平板状圧電体の製造方法には特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。
【0044】
<ヘリカルキラル高分子(A)>
本実施形態における圧電体14は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含むことが好ましい。
ここで、「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。
【0045】
上記ヘリカルキラル高分子(A)としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系高分子、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等を挙げることができる。
上記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ-ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ-メチル)等が挙げられる。
上記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
【0046】
ヘリカルキラル高分子(A)は、圧電体14の圧電性を向上する点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましく、96.00%ee以上であることがより好ましく、99.00%ee以上であることがさらに好ましく、99.99%ee以上であることがさらにより好ましい。望ましくは100.00%eeである。ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電性が高くなるものと考えられる。
上記ヘリカルキラル高分子(A)は、光学純度を上げ、圧電性を向上させる点から、下記式(1)で表される構造単位を含む主鎖を有する高分子であることが好ましい。
【0047】
【化1】
【0048】
上記式(1)で表される構造単位を主鎖とする高分子としては、ポリ乳酸系高分子が挙げられる。
ここで、ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L-乳酸及びD-乳酸から選ばれるモノマー由来の構造単位のみからなる高分子)」、「L-乳酸又はD-乳酸と、該L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
ポリ乳酸系高分子の中でも、ポリ乳酸が好ましく、L-乳酸のホモポリマー(PLLA、単に「L体」ともいう)又はD-乳酸のホモポリマー(PDLA、単に「D体」ともいう)が最も好ましい。
【0049】
ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子である。
ポリ乳酸は、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法;などによって製造できることが知られている。
ポリ乳酸としては、L-乳酸のホモポリマー、D-乳酸のホモポリマー、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
【0050】
上記「L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、3-ヒドロキシカプロン酸、4-ヒドロキシカプロン酸、5-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β-メチル-δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類;α-アミノ酸等のアミノカルボン酸;等を挙げることができる。
【0051】
上記「L-乳酸又はD-乳酸と、該L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーが挙げられる。
また、ヘリカルキラル高分子(A)中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。
例えば、ヘリカルキラル高分子(A)が、ポリ乳酸系高分子である場合、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20mol%以下であることが好ましい。
【0052】
さらに、ポリ乳酸系高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万~100万であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A)のMwが5万以上であることにより、圧電体の機械的強度が向上する。上記Mwは、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
【0053】
一方、ヘリカルキラル高分子(A)のMwが100万以下であることにより、成形(例えば押出成形、溶融紡糸)によって圧電体を得る際の成形性が向上する。上記Mwは、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
また、ヘリカルキラル高分子(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、圧電体の強度の点から、1.1~5であることが好ましく、1.2~4であることがより好ましい。さらに1.4~3であることが好ましい。
なお、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定された値を指す。ここで、Mnは、ヘリカルキラル高分子(A)の数平均分子量である。
ヘリカルキラル高分子(A)の例であるポリ乳酸系高分子としては、市販のポリ乳酸を用いることができる。
【0054】
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H-100、H-400)、NatureWorks LLC社製のIngeoTM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A)としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、又は直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
本実施形態における圧電体14は、上述したヘリカルキラル高分子(A)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本実施形態における圧電体14中におけるヘリカルキラル高分子(A)の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、圧電体14の全量に対し、80質量%以上が好ましい。
【0055】
<安定化剤>
圧電体14は、更に、一分子中に、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200~60000の安定化剤(B)を含有することが好ましい。これにより、耐湿熱性をより向上させることができる。
安定化剤(B)としては、国際公開第2013/054918号の段落0039~0055に記載された「安定化剤(B)」を用いることができる。
以下、安定化剤(B)の具体例(安定化剤B-1~B-3)を示す。
【0056】
【化2】
【0057】
以下、上記安定化剤B-1~B-3について、化合物名、市販品等を示す。
・安定化剤B-1 … 化合物名は、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミドである。重量平均分子量(この例では、単なる「分子量」に等しい)は、363である。市販品としては、ラインケミー社製「Stabaxol I」、東京化成社製「B2756」が挙げられる。
・安定化剤B-2 … 化合物名は、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約2000のものとして、日清紡ケミカル社製「カルボジライトLA-1」が挙げられる。
・安定化剤B-3 … 化合物名は、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約3000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P」が挙げられる。また、重量平均分子量20000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P400」が挙げられる。
【0058】
圧電体が安定化剤(B)を含有する場合、上記圧電体は、安定化剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
圧電体14が安定化剤(B)を含む場合、安定化剤(B)の含有量は、ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対し、0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.01質量部~5質量部であることがより好ましく、0.1質量部~3質量部であることがさらに好ましく、0.5質量部~2質量部であることが特に好ましい。
上記含有量が0.01質量部以上であると、耐湿熱性がより向上する。
また、上記含有量が10質量部以下であると、透明性の低下がより抑制される。
【0059】
<その他の成分>
圧電体は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の公知の樹脂;シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の公知の無機フィラー;フタロシアニン等の公知の結晶核剤;安定化剤(B)以外の安定化剤;等が挙げられる。
【0060】
<接着層>
圧電基材100は、内部導体12と圧電体14との間に接着層を備えることが好ましい。圧電体14が接着層を備えることで、内部導体12と圧電体14との相対位置がずれにくくなる。このため、圧電体14に張力がかかりやすくなり、圧電体14に含まれるヘリカルキラル高分子にずり応力が印加されやすくなる。したがって、効果的に張力に比例した電圧出力を内部導体12(好ましくは信号線導体)から検出することが可能となる。また、接着層を備えることで、単位引張力当たりの発生電荷量の絶対値がより増加する傾向にある。
なお、本開示において「接着」は「粘着」を包含する概念である。また、「接着層」は「粘着層」を包含する概念である。
【0061】
<外部導体>
本実施形態における外部導体16には、グラウンド導体が適用されている。グラウンド導体とは、信号を検出する際、例えば、内部導体12(好ましくは信号線導体)の対となる導体を指す。
グラウンド導体は、銅箔リボンや、アルミ箔リボン、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、繊維に銅箔がスパイラルに巻回された錦糸線を用いることが可能である。
また、グラウンド導体は、有機導電材料を絶縁材料でコーティングしたものや、導電性繊維を用いることもできる。
【0062】
グラウンド導体は、内部導体12(好ましくは信号線導体)と短絡しないように、内部導体12及び圧電体14を包むように配置されていることが好ましい。
外部導体16の断面形状は、円形状、楕円形状、矩形状、異形状など様々な断面形状を適用することが可能である。特に、矩形断面は、内部導体(好ましくは信号線導体)、圧電体、必要に応じて絶縁体などに対して、平面で密着することが可能となるため、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
【0063】
図7は、外部導体16を含む圧電基材100の側面図を示す。また、図8に、図7のX-X’線断面図を示す。
図7に示すように、圧電基材100において、圧電体14は、内部導体12の外周面に沿って、螺旋角度β1で一端から他端にかけて、内部導体12が見えないように一方向に螺旋状に隙間なく巻回されている。
「螺旋角度β1」とは、内部導体12の軸方向G1と、内部導体12の軸方向に対する圧電体14の配置方向とがなす角度を意味する。また、本実施形態の圧電体14は、内部導体12に対して左巻きで巻回している。具体的には、内部導体12の軸方向の一端側(図7の場合、右端側)から見たときに、圧電体14は、内部導体12の手前側から奥側に向かって左巻きで巻回している。
また、図7中、圧電体14に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、両矢印E1で示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向に、圧電体14の配置方向(圧電体14の長さ方向)が沿っている。
【0064】
本実施形態に係る圧電基材100は、圧電体14の外周に、外部導体16が一方向に螺旋状に巻回されて配置されている。即ち、圧電基材100は、内側から順に、長尺状の内部導体12と、長尺状の圧電体14と、外部導体16と、を備えている。
以下、本実施形態に係る圧電基材100の作用について説明する。
例えば、圧電基材100の長さ方向に張力が印加されると、圧電体14に含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、ヘリカルキラル高分子(A)は分極する。このヘリカルキラル高分子(A)の分極は、図8中、矢印で示されるように、圧電基材100の径方向(圧電体14の径方向)に生じ、その分極方向は位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。
【0065】
なお、本実施形態に係る圧電基材100は上記形態に限定されない。例えば、圧電基材100では、内部導体12と圧電体14との間に接着層が配置されていてもよい。これにより、圧電基材100の長さ方向に張力が印加されても、圧電体14と内部導体12との相対位置がずれにくくなるため、圧電体14に張力がより印加されやすくなる。
また、圧電基材100においては、圧電体14の外周面に、外部導体16を一方向に螺旋状に巻回して配置したが、外部導体16の配置方法はこれに限定されない。即ち、外部導体16は圧電体14の外周の少なくとも一部に配置されていればよい。また、外部導体16の巻回方向も特に限定されない。
【0066】
なお、本実施形態の圧電基材100は、一つの圧電体14を備えていたが、これに限らず、複数の圧電体14を含んでいてもよい。例えば、図9に示すように、圧電基材100Aは、長尺状の圧電体14に加えて、長尺状の他の圧電体15を備え、圧電体14及び他の圧電体15で組紐構造を構成してもよい。
具体的には、図9に示すように、圧電基材100Aは、圧電体14が、内部導体12の軸方向G2に対し、螺旋角度β1で一端から他端にかけて左巻きで螺旋状に巻回されている。そして、他の圧電体15が螺旋角度β2で一端から他端にかけて右巻きで螺旋状に巻回され、かつ圧電体14及び他の圧電体15が交互に交差することで、組紐構造を構成することができる。
【0067】
内部導体12の外周面に沿って、圧電体14と他の圧電体15とで組紐構造を形成することにより、組紐構造を形成しない場合に比べ、圧電基材が屈曲変形させるような力が働いた際にも、しなやかに屈曲変形しやすくなる。これにより、例えば圧電基材に引張力を印加したときの発生電荷量が増加しやすくなる。したがって、圧電基材100Aによれば、圧電感度に優れたものとなる。
なお、本実施形態の圧電基材100の外部導体16に対して、樹脂被覆を施してもよい。被覆の樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系の樹脂が好適である。
【0068】
(作用)
本実施形態のベッド装置10による作用は以下のとおりである。
本実施形態のベッド装置10は、ベッド20の床板24の上に置かれた7つのセンサユニット32により、臥位の人体を検知可能に構成されている。
センサユニット32は、基準面33に沿って軸方向が設けられ、かつ径方向に加えられた圧力を検出するライン状の圧電基材100と、圧電基材100を支持するように基準面33に対して設けられた緩衝材37と、を含んでいる。本実施形態の緩衝材37は、圧電基材100の軸方向から見た断面が基準面33側の幅よりも圧電基材100側の幅が狭くなるように形成されている。詳しくは、緩衝材37は、同一素材の下部緩衝部37Aと上部緩衝部37Bとにより構成されており、上部緩衝部37Bの幅が下部緩衝部37Aの幅よりも狭くなるように構成されている。
【0069】
上述のように、本実施形態の圧電基材100は圧電感度に優れている。しかしながら、ベッド装置10に対して圧電基材100を有するセンサユニット32を配置した場合、単に断面矩形の緩衝材37を使用すると、圧電基材100の検知精度は緩衝材37の材質に依存することになる。そのため、緩衝材37を構成する材料の弾性率、ゴム硬度、密度が低すぎると、大きな圧縮荷重による歪に対して緩衝材37の空胞が潰れて圧電基材100が歪にくくなり高感度のセンシングが困難となる。一方、緩衝材37を構成する材料の弾性率、ゴム硬度、密度が高すぎると、体重が極めて軽い人がベッド20に横たわった場合に、圧電基材100が歪まず電圧出力が十分ではなく、人の在不在を誤検知する場合がある。
【0070】
これに対して、本実施形態によれば、センサユニット32に加わる荷重が低荷重の場合は主に上部緩衝部37Bにおいて荷重を吸収させ、高荷重の場合は上部緩衝部37Bに加えて下部緩衝部37Aで吸収させることができる。そのため、本実施形態によれば、幅広い荷重の範囲に対して、精度の良い検知を行うことができる。
特に緩衝材37の密度が0.05~0.5kg/mで、かつJIS K7312に規定されたアスカーC型ゴム硬度が5~60の範囲に設定することにより、幅広い荷重への対応が可能となる。
【0071】
また、本実施形態のセンサユニット32において、緩衝材37は、圧電基材100の軸方向側の端部において軸方向外側に向かうにつれて基準面33に向かう傾斜面SLを有し、圧電基材100は傾斜面SLに沿って貼り付けられている。本実施形態によれば、かさ上げされた緩衝材37の上面から基準面33にかけて圧電基材100を浮かせずに配設することができる。これにより、圧電基材100における緩衝材37の上面ではなく、浮いた部分に荷重が加えられた場合における、誤検知を抑制することができる。
【0072】
図2に示すように、本実施形態のベッド装置10では、7つのセンサユニット32が床板24の上に設置されている。したがって、マットレス26に臥位の就床者が存在すると、各センサユニット32毎に圧電基材100の径方向に就床者の人体から圧力が加えられる。その結果、圧電基材100毎に圧力に応じた電圧が出力される。各圧電基材100から電圧出力が入力されたAD変換器42では、アナログ信号である電圧出力がデジタル信号に変換され、処理用PC50に出力される。そして、処理用PC50では、検出部55がデジタル信号を検出することにより、マットレス26に就床者が存在するか否か、及びどの位置に寝ているかを検出することができる。例えば、ある圧電基材100の電圧出力Vが閾値Vtを超えた場合に、その圧電基材100のあるセンサユニット32上に就床者が寝ていると検知ができる。
【0073】
また、本実施形態のベッド装置10は、人体検出装置30の処理用PC50に判定部56を設けることで就床者の寝返りを検知可能な人体検出システムとすることができる。人体検出システムとしてのベッド装置10においては、ベッド20のベッド幅方向に沿ってセンサユニット32が配置されている。そして、判定部56では、ベッド幅方向において隣接する圧電基材100同士の電圧出力を比較することで、マットレス26上の就床者の移動を判定することができる。実際には、処理用PC50の検出部55において、各圧電基材100からの電圧出力Vが閾値Vtを超えた瞬間を記録し、判定部56では閾値Vtを超えた圧電基材100の順番から就床者が寝返りをしたことや、寝返りの方向を判定することができる。
【0074】
以上、本実施形態によれば、寝ている人の在・不在の検出は勿論、ベッド20の床面上での位置検知が可能である。そして、処理用PC50を用いて、床面上における就床者の位置の片寄りを監視し、就床者や介護者に報知することにより、ベッド20からの転落等を未然に防止することができる。
【0075】
なお、本実施形態のセンサユニット32では、ライン状の圧電基材100を直線的に配置させているがこの限りではない。例えば、基準面33に沿って波状に配置したり、渦巻状に配置することにより、圧力を検知する方向や感度を変えることができる。
また、圧電基材100は、内部導体12に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の圧電体14を備え、内部導体12と外部導体16との間の電位差から圧電体14に入力された圧力を検知することを特徴としている。本実施形態のベッド装置10によれば、圧力を検知するセンサに圧電基材100を用いることで、センサに供給する電源が不要である。これにより、例えば、圧力を検知するセンサをひずみゲージとするロードセルと比べて、待機状態において電力を消費しない。つまり、単純な回路で駆動できるので小型化に適している。さらに、圧電体に使用されるポリ乳酸はロードセルに比べて安価であるため、センサ部分の製造コストが抑制される。
【0076】
(備考)
本実施形態の人体検出装置30は、既存のベッド20に組み込むことでベッド装置10としてもよいし、絨毯、フローリング及び畳等の上に設置して使用してもよい。絨毯、フローリング及び畳等の上に設置した人体検出装置30についても、上述したベッド装置10と同様の作用効果を奏する。本実施形態の人体検出装置30によれば、既存の寝具に組み合わせることができるため、手持ちの寝具をそのまま使用でき、かつ寝心地の悪化を抑制することができる。
【0077】
本実施形態のベッド装置10では、緩衝材37である発泡ゴム又は樹脂の発泡倍率が大きくなるほど、密度やゴム硬度のバラツキが大きくなり、圧電基材100のセンサ感度のバラツキが大きくなる。また天然ゴム等の材料はゴム硬度の経時的な変化量が大きく、センサ感度のバラツキが大きくなる。経時的な変化の少ないEPDMフォーム等が好適である。
また、緩衝材37をベッド20に用いる場合は、難燃性が要求される場合が多い。その場合の緩衝材37の材料は、難燃化するため各種難燃性の添加剤を混錬した発泡プラスチックフォームの適用や、或いは樹脂自体に難燃性を有しているポリ塩化ビニルフォームや、ポリイミドフォーム等の適用が好ましい。
【0078】
また、各実施形態のベッド装置10では、支持板36は必ずしも必要ではなく、床板24の上に緩衝材37を設けてもよい。
本実施形態における被覆部材である絶縁部材38は、粘着テープや粘着性を有するフィルム等であるがこれに限らない。例えば、絶縁部材38の形態としては、ラミネート、熱収縮チューブ、絶縁材料によるカバリング(例えば、PETやフッ素のテープを圧電ラインに巻き付ける)等が挙げられる。
【0079】
なお、上記実施形態でCPU50Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した検出部55、判定部56及び報知部57に係る処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0080】
また、上記実施形態では、実行プログラムがストレージ50Dに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0081】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態のセンサユニット32では、圧電基材100が緩衝材37の上面に配置されていた。しかし、これに限らず、圧電基材100を緩衝材37の上部に埋め込んでもよい。
例えば、図10Aに示すように、変形例1の上部緩衝部37Bは、幅方向中央において、上面から下方に向けてセンサユニット32の長手方向に沿ったスリットSが形成されている。このスリットSは例えば、圧電基材100の径の2~3倍程度の深さとする。そして、スリットSに圧電基材100を配置後、スリットSの上部を接着することによりセンサユニット32を形成することができる。
【0082】
また例えば、図10Bに示すように、変形例2の上部緩衝部37Bは、変形例1と同様にスリットSを有しており、変形例2のセンサユニット32は、スリットSを覆うように緩衝材37と同素材の覆部緩衝部材39が接着されている。補足すると、上部緩衝部37Bの幅方向中央に形成されたスリットSに圧電基材100を配置後、スリットSを接着せずに、上部緩衝部37Bの上面に両面テープ34で覆部緩衝部材39を接着することによりセンサユニット32を形成することができる。
第1の実施形態の変形例1及び変形例2のように、圧電基材100を緩衝材37に埋め込んだ場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0083】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態に係るベッド装置10について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態のベッド装置10は、第1の実施形態とセンサユニット32における緩衝材37の形状が相違する。図11Aに示す本実施形態の緩衝材37は、長手方向から見た断面が台形状に形成されている。また、緩衝材37の幅方向中央において、上面から下方に向けてセンサユニット32の長手方向に沿ったスリットSが形成されている。このスリットSは例えば、圧電基材100の径の2~3倍程度の深さとする。そして、スリットSに圧電基材100を配置後、スリットSの上部を接着することによりセンサユニット32を形成することができる。
【0084】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態では、緩衝材37に形成したスリットSに圧電基材100を配置し、その後、スリットSの上部を接着していた。これに対して、図11Bに示すように、変形例1のセンサユニット32は、緩衝材37の成型時にインサート成形を行い、圧電基材100と緩衝材37とが一体に成形されている。この場合、圧電基材100は、緩衝材37の上面から圧電基材100の径の2~3倍程度の深さに配置させる。
【0085】
また例えば、図11Cに示すように、変形例2のセンサユニット32は、第2の実施形態と同様にスリットSを有する緩衝材37が設けられている。そして、変形例2のセンサユニット32は、スリットSを覆うように緩衝材37と同素材の覆部緩衝部材39が接着されている。補足すると、緩衝材37の幅方向中央に形成されたスリットSに圧電基材100を配置後、スリットSを接着せずに、緩衝材37の上面に両面テープ34で覆部緩衝部材39接着することによりセンサユニット32を形成することができる。
第2の実施形態及び、同実施形態の変形例1及び変形例2のように、圧電基材100を緩衝材37に埋め込んだ場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0086】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態に係るベッド装置10について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態のベッド装置10は、第1及び第2の実施形態とセンサユニット32における緩衝材37の形状が相違する。図12Aに示す本実施形態の緩衝材37は、長手方向から見た断面が三角形状に形成されている。また、緩衝材37の幅方向中央の頂部において、頂部から下方に向けてセンサユニット32の長手方向に沿ったスリットSが形成されている。このスリットSは例えば、圧電基材100の径の2~3倍程度の深さとする。そして、スリットSに圧電基材100を配置後、スリットSの上部を接着することによりセンサユニット32を形成することができる。
【0087】
(第3の実施形態の変形例)
第3の実施形態では、緩衝材37に形成したスリットSに圧電基材100を配置し、その後、スリットSの上部を接着していた。これに対して、図12Bに示すように、変形例のセンサユニット32は、緩衝材37の成型時にインサート成形を行い、圧電基材100と緩衝材37とが一体に成形されている。この場合、圧電基材100は、緩衝材37の上面から圧電基材100の径の2~3倍程度の深さに配置させる。
第3の実施形態及び、同実施形態の変形例のように、圧電基材100を緩衝材37に埋め込んだ場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0088】
〔第4の実施形態〕
次に、第4の実施形態に係るベッド装置10について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態のベッド装置10は、第1~第3の実施形態とセンサユニット32における緩衝材37の形状が相違する。図13Aに示す本実施形態の緩衝材37は、長手方向から見た断面が放物線状の山型に形成されている。また、緩衝材37の幅方向中央の頂部において、頂部から下方に向けてセンサユニット32の長手方向に沿ったスリットSが形成されている。このスリットSは例えば、圧電基材100の径の2~3倍程度の深さとする。そして、スリットSに圧電基材100を配置後、スリットSの上部を接着することによりセンサユニット32を形成することができる。
【0089】
(第4の実施形態の変形例)
第4の実施形態では、緩衝材37に形成したスリットSに圧電基材100を配置し、その後、スリットSの上部を接着していた。これに対して、図13Bに示すように、変形例のセンサユニット32は、緩衝材37の成型時にインサート成形を行い、圧電基材100と緩衝材37とが一体に成形されている。この場合、圧電基材100は、緩衝材37の上面から圧電基材100の径の2~3倍程度の深さに配置させる。
第4の実施形態及び、同実施形態の変形例のように、圧電基材100を緩衝材37に埋め込んだ場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0090】
〔第5の実施形態〕
次に、第5の実施形態に係るベッド装置10について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態のベッド装置10は、第1~第4の実施形態とセンサユニット32における緩衝材37の形状が相違する。図14Aに示す本実施形態の緩衝材37は、長手方向から見た断面がガウシアンカーブ型に形成されている。また、緩衝材37の幅方向中央の頂部において、頂部から下方に向けてセンサユニット32の長手方向に沿ったスリットSが形成されている。このスリットSは例えば、圧電基材100の径の2~3倍程度の深さとする。そして、スリットSに圧電基材100を配置後、スリットSの上部を接着することによりセンサユニット32を形成することができる。
【0091】
(第5の実施形態の変形例)
第5の実施形態では、緩衝材37に形成したスリットSに圧電基材100を配置し、その後、スリットSの上部を接着していた。これに対して、図14Bに示すように、変形例のセンサユニット32は、緩衝材37の成型時にインサート成形を行い、圧電基材100と緩衝材37とが一体に成形されている。この場合、圧電基材100は、緩衝材37の上面から圧電基材100の径の2~3倍程度の深さに配置させる。
第5の実施形態及び、同実施形態の変形例のように、圧電基材100を緩衝材37に埋め込んだ場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0092】
〔第6の実施形態〕
次に、第6の実施形態に係るベッド装置10について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態のベッド装置10は、第1の実施形態とセンサユニット32における圧電基材100の設置方法が相違する。図15に示すように、本実施形態のセンサユニット32では一対の絶縁部材38により挟持された圧電基材100が、両面テープ34を介して緩衝材37の上面に接着されている。なお、本実施形態では予め両面テープ34が貼られた絶縁部材38を相互に貼り合わせて圧電基材100を被覆しているがこの限りではない。例えば、接着剤を使用して、向かい合う絶縁部材38を圧電基材100が挟まれるように貼り合わせてもよい。
第6の実施形態のように圧電基材100を、緩衝材37に埋め込んだ場合であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0093】
〔第7の実施形態〕
次に、第7の実施形態に係るベッド装置10について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態のベッド装置10は、第1の実施形態と圧電基材100と同軸ケーブル110との接続部105の構造が相違する。図16図4に対応する圧電基材100と同軸ケーブル110との接続部105の断面図である。なお、接続部105の外周を覆う樹脂R(図3A参照)は省略している。第1の実施形態では、圧電基材100の外部導体16と同軸ケーブル110の外部導体116とが、銅箔である金属層130により接続されていた。これに対して、本実施形態では、圧電基材100の外部導体16と同軸ケーブル110の外部導体116とが、金属管150及び短絡線160により接続されている。また、金属管150は支持板36に対して接着剤等で固定されている。
【0094】
具体的に、同軸ケーブル110側では、金属管150の嵌入部150Aに対して外部導体116が嵌入されており、金属管150の表面と外部導体116とがはんだ155にて接続されている。嵌入部150Aは固定部の一例である。また、圧電基材100側では、金属管150の挿入部150Bに対して圧電基材100が挿入されており、金属管150と圧電基材の外部導体16とは、短絡線160を介して電気的に接続されている。挿入部150Bは挿通部の一例である。短絡線160は、一端が金属管150にはんだ165にて接続され、他端が外部導体16にはんだ166にて接続されている。
【0095】
本実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果の他、圧電基材100と同軸ケーブル110との接続部105において次の効果を奏する。すなわち、本実施形態では、固定により支持板36と一体化された金属管150において、同軸ケーブル110は嵌入部150Aで固定され、圧電基材100は挿入部150Bにて固定されずに挿入されている。そのため、人が触れるなどして同軸ケーブル110に対して加えられた張力が圧電基材100に波及することを抑制し、かつ同軸ケーブル110が圧電基材100から抜けることを抑制することができる。また、圧電基材100は、金属管150に対して摺動可能に固定されているため、受圧時の緩衝材37の変形に伴い、圧電基材100が軸方向にずれたとしても、接続部105における張力を緩和することができる。圧電基材100のずれに伴う張力を抑制することで、圧電基材100における検知誤差を抑制することができる。
さらに、接続部105が金属管150に覆われているため、外部のノイズをシールドすることができる。
【0096】
〔第8の実施形態〕
次に、第8の実施形態に係るベッド装置10について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態のベッド装置10は、第1の実施形態とセンサユニット32の配置が相違する。具体的に、第1の実施形態のベッド装置10では、床板24の上に7つのセンサユニット32が設置されているが、本実施形態のベッド装置10では、図17に示されるように、1つのセンサユニット32しか設置されていない。本実施形態のセンサユニット32は、ベッド幅方向を長手方向とするように、かつ臥位の人体の胸部付近に位置するように設置されている。
【0097】
また、本実施形態のセンサユニット32は、長尺袋状のケース60に収納されている。図18A及び図18Bに示されるように、ケース60は、表地62、裏地64、囲み部63、短冊部66、及び面ファスナー68を含んで構成されている。表地62は、マットレス26に面する生地であって、荷重を受ける側の面を覆う布地である。表地62は、薄くて柔らかい織物や編物の生地が好ましい。また、裏地64は、床板24に面する生地であって、防滑性を付与するために、ゴムシートや、ポリウレタンシート、ポリウレタン繊維を含む織物、編物などを用いることが好ましい。囲み部63は、ケース60において、1つの短辺を除く周囲を囲むように設けられ、表地62及び裏地64に対してそれぞれ縫い合わされている。そして、表地62、裏地64及び囲み部63により、開口65Aを有する袋状の収容部65が形成される。
【0098】
短冊部66は、開口65A付近の裏地64に縫い合わされた短冊状の生地である。短冊部66は、ケース60の幅方向に対して対に設けられており、ケース60の長手方向外側に向けて延出している。面ファスナー68は、フック状に起毛されたフック部68A、及びループ状に密集して起毛されたループ部68Bを含む。フック部68Aは、短冊部66の先端付近に対で設けられ、ループ部68Bは、開口65A付近の表地62に対して設けられている。なお、フック部68A及びループ部68Bの配置は逆でもよい。
開口65Aから収容部65にセンサユニット32を挿入し、短冊部66を折り返して、フック部68A及びループ部68Bを面接触させて係合させることにより、開口65Aが塞がれる。このとき、一対の短冊部66の間から同軸ケーブル110を通すことができる。
【0099】
本実施形態によれば、既設のベッド20に対して1つのセンサユニット32を設置するだけで、容易にベッド装置10を構成することができる。また、本実施形態は、寝返りの検知はできないものの、ベッド20における人の在不在判定を行うことができ、心拍数及び呼吸数の測定を高精度で行うことができる。
また、本実施形態のケース60によれば、ベッド20に対する位置ずれを抑制することができ、圧電基材100により圧力の検知精度を向上させることができる。特に、本実施形態によれば、ベッド20を部分的にリクライニングした場合にセンサユニット32が滑り落ちない。
なお、第8の実施形態において、ケース60は必須の構成ではない。また、他の実施形態において、センサユニット32をケース60に収容させてもよい。
【実施例
【0100】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
(1)緩衝材の形状による感度の確認
まず、緩衝材37の形状を変化させた場合におけるセンサ感度について確認する。
(実施例1、2及び比較例の製造)
<圧電基材の製造>
ヘリカルキラル高分子(A)としてのNatureWorks LLC社製ポリ乳酸(品名:IngeoTM biopolymer、銘柄:4032D)100質量部に対して、安定化剤〔ラインケミー社製Stabaxol P400(10質量部、重量平均分子量20000)、ラインケミー社製Stabaxol I(70質量部、重量平均分子量363)、及び日清紡ケミカル社製カルボジライトLA-1(20質量部、重量平均分子量2000)の混合物〕1.0質量部を添加し、ドライブレンドして原料を作製した。
【0102】
作製した原料を押出成形機ホッパーに入れて、210℃に加熱しながらTダイから押し出し、50℃のキャストロールに0.3分間接触させて、厚さ150μmの予備結晶化シートを製膜した(予備結晶化工程)。得られた予備結晶化シートを70℃に加熱しながらロールツーロールで、延伸速度10m/分で延伸を開始し、3.5倍までMD方向に一軸延伸した(延伸工程)。
その後、前記一軸延伸フィルムを、ロールツーロールで、145℃に加熱したロール上に15秒間接触させアニール処理し、その後急冷を行って、圧電フィルムを作製した(アニール処理工程)。
次いで、スリット加工機を用いて、圧電フィルムをスリットする方向と圧電フィルムの延伸方向とが略平行となるようにスリットして圧電体を得た。
【0103】
内部導体として半径が0.135mm、長さ100mmの錦糸線を準備した。この錦糸線に、上記のようにして得た幅0.6mm、平均厚さ50μmのスリットリボン(圧電体)を左巻きに、錦糸線の長軸方向に対して45°の角度(螺旋角度)で、錦糸線が見えないよう(露出しないよう)隙間なく、螺旋状に巻回し、錦糸線を包接した。これにより、錦糸線及びスリットリボンからなる同軸線構造体を得た。このときの錦糸線へのスリットリボンの巻回数は17回/cmである。
次に、外部導体として幅0.6mm、厚さ100mmにスリットカットした銅箔リボンを準備した。この銅箔リボンを、前記スリットリボンと同様の方法により、同軸線構造体のスリットリボンの周りに、スリットリボンが見えないよう隙間なく巻回し包接した。
以上のようにして、実施例1、2及び比較例で用いる圧電基材100を得た。
なお、圧電基材100を用いて、錦糸線の平均半径a及びスリットリボンの平均厚さTを既述の方法で測定したところ、平均半径aは0.000135mであり、平均厚さTは0.00005mであった。
【0104】
<センサユニットの製造>
(実施例1)
図3Bに示すように、まず、塩化ビニル製で、長さ850mm、幅20mm、厚さ3mmの支持板36の上面に、両面テープ34が貼り付けられた長さ800mm、幅20mm、厚さ5mmの下部緩衝部37Aとなる発泡樹脂を貼り付けた。また、上面及び下面の両面に両面テープが貼り付けられた長さ800mm、幅5mm、厚さ5mmの上部緩衝部37Bとなる発泡樹脂を下部緩衝部37Aとしての発泡樹脂に貼り付けた。また、上部緩衝部37Bとしての発泡樹脂の上面の幅方向中央に、圧電基材100を貼り付けた。さらに、圧電基材100を含む上部緩衝部37Bの上部に絶縁部材38となる厚さ25μmのポリイミドテープを貼り付け、圧電基材100を緩衝材37及び絶縁部材38で挟み込んだ。
【0105】
一方、圧電基材100とジャックコネクタ付きの2mの同軸ケーブル110との電気的接続は次の方法に従い行った。まず、圧電基材100の内部導体12と、同軸ケーブル110の内部導体112同士を対向させ、はんだ付けにより接続した。次に、内部導体12及び内部導体112を絶縁被覆層120となる熱収縮チューブで覆い、加熱してはんだ125の周囲を密着させた。さらに、絶縁被覆層120の周りを金属層130となる銅箔テープで覆い、金属層130と同軸ケーブル110の外部導体116と、及び金属層130と圧電基材100の外部導体16と、をそれぞれはんだ付けにより接続した。さらに、同軸ケーブル110及び圧電基材100の接続部105全体を覆うように樹脂Rであるホットメルトを充填し、センサユニット32を完成させた。
図2及び図5に示すように、センサユニット32は、同軸ケーブル110を情報処理ユニット40に接続した。
【0106】
(実施例2)
図19に示すように、実施例2のセンサユニット32における緩衝材37は、支持板36に接着された下部緩衝部37Aと、下部緩衝部37Aの上面に接着された上部緩衝部37Cとを有している。実施例2のセンサユニット32は、上部緩衝部37Cを構成する発泡樹脂を幅10mmとした以外は実施例1と同様に構成されている。
(比較例)
図20に示すように、比較例のセンサユニット232における緩衝材37は、支持板36に接着された下部緩衝部37Aと、下部緩衝部37Aの上面に接着された上部緩衝部37Dとを有している。比較例のセンサユニット232は、上部緩衝部37Dを構成する発泡樹脂を下部緩衝部37Aと同じ幅の20mmとした以外は実施例1と同様に構成されている。
【0107】
<ベッド装置の製造>
実施例1、2及び比較例のベッド装置10は、図1に示すように、フレーム22、床板24及びマットレス26により構成されるシングルサイズのベッド20を含む。そして、床板24とマットレス26との間にセンサユニット32、232を配置してベッド装置10を製造した。センサユニット32の配置は図2に示すとおりである。
センサユニット32を配置する際、センサユニット32に防汚性、防水性、及び防滑性等を付与する目的のために、センサユニット32を袋状のケース60に収納してもよい。ケース60の材質は塩ビシートや、布ケース等適宜目的に応じて使い分ける。例えば、センサユニット32の荷重印加時の歪変形を抑制しないように、荷重を受ける側の面を覆う表地62は、薄くて柔らかい織物や編物の生地が好ましい。また、床板24に接触する裏地64は、防滑性を付与するために、ゴムシートや、ポリウレタンシート、ポリウレタン繊維を含む織物、編物などを用いることが好ましい。
実施例1、2及び比較例のマットレス26は、ポリウレタン製であって、幅Wが970mm、長さLが2000mm、厚さdaが40mmである。また、マットレス26の硬さは、JIS K 6400-2(軟質発泡材料―物理特性―第2部:硬さ及び圧縮応力―ひずみ特性の求め方)の6.4「A法(四十%定圧縮して三十秒後の力を求める方法)」によれば、150Nとされている。
【0108】
<センサ感度の測定>
上述のように製造したセンサユニット32の感度の測定を行った。図21に示すように、感度の測定は、引張試験機410(エーアンドディ社製引張試験機テンシロンRTG1250)と、エレクトロメータ450(ケースレー社製エレクトロメータ6514)と、AD変換器452と、解析用PC454とを使用した。引張試験機410はさらに、上下に移動するクロスヘッド415と、クロスヘッド415に固定されたロードセル420と、ロードセル420の先端に装着された金属ロッド425と、測定物を設置する架台440と、を含む。また、金属ロッド425の先端には押圧治具430が固定されている。この押圧治具430は、アクリル樹脂であって、厚さが10mm、高さが55mm、長さが700mmであり、下面の接触面の曲率半径が12.3mに設定されている。
【0109】
ここで、圧電基材100で発生した電荷は、エレクトロメータ450において検出される。一方、AD変換器452では、エレクトロメータ450で検出された電荷と、ロードセル420で検出された荷重と、がそれぞれ入力される。そして、AD変換器452でデジタル化された情報が解析用PC454に出力され、解析用PC454においてセンサ感度が解析される。
【0110】
図21に示すように、引張試験機410の架台440上にセンサユニット32をセットし、センサユニット32に対して押圧治具430で繰り返し押圧することで、感度を測定する。クロスヘッド415の速度を100mm/min、センサユニット32に対する印加荷重を1Nから150Nの範囲で繰り返し印加した場合に、印加荷重をロードセル420で測定し、圧電基材100の発生電荷量をエレクトロメータ450で測定した。次に解析用PC454において、散布図に対して測定データを印加荷重が横軸に電荷量Qが縦軸となるようにプロットし、最小二乗法で直線近似した場合の直線の傾きの値をセンサ感度(pC/N)として得た。
以下、実施例1、2及び比較例のセンサ感度を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示すように、下部緩衝部37Aに対する上部緩衝部37B、37C、37Dの幅が狭くなるほど、センサ感度が大きくなることが分かる。
【0113】
(2)緩衝材の材質の違いによる感度の確認
次に、緩衝材37の材質を変えた場合におけるセンサ感度について確認する。
(実施例3~7の製造)
<センサユニットの製造>
実施例3~7のセンサユニット32については、まず、硬質塩化ビニル製で、長さ640mm、幅30mm、厚さ5mmの支持板36の上面に、両面テープ34が貼り付けられた長さ570mm、幅20mm、厚さ5mmの下部緩衝部37Aとなる発泡樹脂を貼り付けた。また、上面及び下面の両面に両面テープが貼り付けられた長さ570mm、幅5mm、厚さ5mmの上部緩衝部37Bとなる発泡樹脂を下部緩衝部37Aとしての発泡樹脂に貼り付けた。
【0114】
ここで、緩衝材37の材質は、実施例3が天然ゴム、実施例4及び実施例5がクロロプレンゴム、実施例6及び実施例7がEPDM系ゴムである。各実施例に係る緩衝材37の密度及びJIS K7312に準拠するアスカーゴム硬度計C型によるゴム硬度は表2に示すとおりである。
そして、上部緩衝部37Bとしての発泡樹脂の上面の幅方向中央に、絶縁部材38となる厚さ25μmのポリイミドテープに被覆された圧電基材100を貼り付けた。なお、被覆方法について、実施例3、5、7のセンサユニット32については、図15に示すように、圧電基材100の両側から絶縁部材38を挟み込んだ上で、上部緩衝部37Bに対して貼り付けた。また、実施例4及び6のセンサユニット32については、図3Bに示すように、圧電基材100を含む上部緩衝部37Bの上部に絶縁部材38を貼り付けた。
その余の製造工程については、上述の実施例1及び2と同様である。
【0115】
<センサ感度の測定>
実施例1及び2と同様に、図21に示す装置を使用して実施例3~7のセンサ感度を測定した。なお、実施例3~7の測定に係る押圧治具430は、アクリル樹脂であって、厚さが10mm、高さが50mm、長さが600mmであり、下面の接触面の曲率半径が9mに設定されている。また、クロスヘッド415の速度を10mm/min、センサユニット32に対する印加荷重を10Nから50Nの範囲で繰り返し印加した場合に、印加荷重をロードセル420で測定し、圧電基材100の発生電荷量をエレクトロメータ450で測定した。次に解析用PC454において、散布図に対して測定データを印加荷重が横軸に電荷量Qが縦軸となるようにプロットし、最小二乗法で直線近似した場合の直線の傾きの値をセンサ感度(pC/N)として得た。さらに、圧電基材100の長さと発生電荷量は比例するので、圧電基材100の長さが1m当たりの出力電荷量に規格化して、圧電基材100のセンサ感度とした。
以下、実施例3~7のセンサ感度を表2に示す。表2における感度比は、実施例3に対する比率を示す。
【0116】
【表2】
【0117】
表2に示すように、緩衝材37の材質を柔らかいものに変更した場合に感度が向上する。また、及び圧電基材100に対する絶縁部材38の被覆を両面から片面にした場合に感度が向上する。
【符号の説明】
【0118】
10 ベッド装置(人体検出システム)
12 内部導体(導体)
14 圧電体
30 人体検出装置
33 基準面
36 支持板(保持板)
37 緩衝材(緩衝体)
38 絶縁部材(被覆部材)
55 検出部
100 圧電基材
105 接続部
110 同軸ケーブル(配線)
150 金属管
150A 嵌入部(固定部)
150B 挿入部(挿通部)
SL 傾斜面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21