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  • 特許-静電塗装ガン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】静電塗装ガン
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20241211BHJP
   B05B 5/053 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B05B5/025 A
B05B5/053
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021003407
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108427
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 将宏
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宣文
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500206(JP,A)
【文献】特開2016-007587(JP,A)
【文献】特開2011-056331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/025
B05B 5/053
B05D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を吐出するノズルを有するガン本体と、
前記ガン本体に取り付けられ、塗料に静電気を印加する高電圧発生器と、
前記ガン本体に一体的に設けられ、前記高電圧発生器に電力を供給する電源装置とを備え、
前記電源装置は、充電素子と、前記充電素子よりも放電容量の大きい主電源とを備え、
前記主電源は、前記充電素子を充電可能であり、
前記高電圧発生器のコッククロフト・ウォルトン回路と前記主電源との間に電流ループが構成され、
前記電流ループに前記充電素子が接続されている静電塗装ガン。
【請求項2】
塗料を吐出するノズルを有するガン本体と、
前記ガン本体に取り付けられ、塗料に静電気を印加する高電圧発生器と、
前記ガン本体に一体的に設けられ、前記高電圧発生器に電力を供給する電源装置とを備え、
前記電源装置は、充電素子と、前記充電素子よりも放電容量の大きい主電源を備え
前記高電圧発生器のコッククロフト・ウォルトン回路と前記主電源との間に電源ループが構成されている静電塗装ガン。
【請求項3】
前記主電源は、前記充電素子を充電可能である請求項2に記載の静電塗装ガン。
【請求項4】
前記主電源と前記高電圧発生器の制御回路との間に送電回路が構成され、
前記送電回路には、前記充電素子が前記制御回路と並列に接続されている請求項1又は請求項3に記載の静電塗装ガン。
【請求項5】
前記充電素子は、全固体電池である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の静電塗装ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電塗装ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電塗装用のスプレーガンが開示されている。スプレーガンは、被塗物ととの間に高電圧を印加するための高電圧発生器を内蔵しており、帯電した塗料を噴出して被塗物に塗着させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-136177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のスプレーガンは、スプレーガンの外部に設けた電源から、送電ケーブルを介すことによって高電圧発生器に給電するようになっている。そのため、スプレーガンを取り回す際に、送電ケーブルが邪魔になってハンドリングが良くないという問題がある。また、送電ケーブルが切断した場合は、塗装が中断することになる。発明の目的は、送電ケーブルを不要にして塗装の作業性向上を図る。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、塗装の際の作業性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
塗料を吐出するノズルを有するガン本体と、
前記ガン本体に取り付けられ、塗料に静電気を印加する高電圧発生器と、
前記ガン本体に一体的に設けられ、前記高電圧発生器に電力を供給する電源装置とを備え、
前記電源装置は、充電素子を含む。
【発明の効果】
【0007】
充電素子によって高電圧発生器に電力を供給することができるので、ガン本体の外部に設けた電源から高電圧発生器に給電するための送電ケーブルを不要にすることができる。送電ケーブルを不要とすることによって、塗装の際の作業性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の静電塗装ガンの側面図
図2】実施例1において、主電源によって高電圧発生器への送電と充電素子への充電を行っている状態をあらわす回路図
図3】実施例1において、充電素子によって高電圧発生器への送電を行っている状態をあらわす回路図
図4】実施例2において、主電源によって高電圧発生器への送電と充電素子への充電を行っている状態をあらわす回路図
図5】実施例2において、充電素子によって高電圧発生器への送電を行っている状態をあらわす回路図
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記電源装置は、前記充電素子よりも放電容量の大きい主電源を備えている。この構成によれば、充電素子を補助電源として機能させることにより、主電源と充電素子によって電源冗長化を実現することができる。
【0010】
前記主電源は、前記充電素子を充電可能である。この構成によれば、充電素子を、ガン本体から取り外さなくても充電することができる。
【0011】
前記高電圧発生器のコッククロフト・ウォルトン回路と前記主電源との間に電流ループが構成され、前記電流ループに前記充電素子が接続されている。この構成によれば、放電エネルギーを利用して充電素子を充電することができる。
【0012】
前記主電源と前記高電圧発生器の制御回路との間に送電回路が構成され、前記送電回路には、前記充電素子が前記制御回路と並列に接続されている。この構成によれば、主電源の電力によって充電素子を充電することができる。
【0013】
前記充電素子は、全固体電池である。全固体電池からなる充電素子は、放電容量の大容量化が可能なので、主電源として用いることができる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1における左方を前方と定義する。本実施例1の静電塗装ガンは、ガン本体10と、高電圧発生器15と、電源装置20とを備えたハンドガンである。図1に示すように、ガン本体10は、前後方向に細長いガンボディ11と、ガンボディ11の下端部から下方へ延出した形態のグリップ12とを有する。ガンボディ11の前端部には、塗料を吐出するためのノズル13が設けられている。グリップ12に設けたトリガ14を操作すると、ノズル13から塗料が吐出されるようになっている。
【0015】
高電圧発生器15は、ガンボディ11に内蔵されている。図2,3に示すように、高電圧発生器15は、コッククロフト・ウォルトン回路16と、制御回路17と、トランス18とを備えている。トランス18の一次側には制御回路17が接続され、トランス18の二次側にはコッククロフト・ウォルトン回路16が接続されている。制御回路17に供給された電流は、トランス18で昇圧され、更にコッククロフト・ウォルトン回路16において昇圧及び整流される。コッククロフト・ウォルトン回路16には、出力抵抗19を介すことにより、ガンボディ11の前端部の電極(図示省略)が接続されている。
【0016】
電源装置20は、ガン本体10に内蔵されている。図2,3に示すように、電源装置20は、送電回路21と、充電回路22と、主電源23と、充電素子24とを備えている。送電回路21と充電回路22は、例えばガンボディ11の後端部に収容され、高電圧発生器15の制御回路17に接続されている。送電回路21には、グリップ12内に収容された主電源23が接続されている。主電源23は、放電容量が充電素子24よりも大きく、充電可能なバッテリーからなる。送電回路21には、電流の流れが主電源23側から制御回路17側への一方向となるように整流するダイオード25が接続されている。送電回路21において主電源23と制御回路17とを繋ぐ第1経路26と第2経路27のうち、ダイオード25が接続された第1経路26には、ダイオード25と制御回路17との間で第1経路26を開閉するスイッチ28が接続されている。
【0017】
ダイオード25とスイッチ28が接続されていない第2経路27と、コッククロフト・ウォルトン回路16のアース相当部16Eとの間には、充電回路22が接続されている。コッククロフト・ウォルトン回路16が昇圧及び整流を行っている状態では、図2に示すように、コッククロフト・ウォルトン回路16と、充電回路22と、主電源23と、送電回路21の第1経路26とを通過する電流ループRが構成される。
【0018】
電流ループRを構成する充電回路22には、充電素子24が接続されている。充電回路22と充電素子24との間には、電流の流れが充電回路22側から充電素子24側への一方向となるように整流するダイオード25が接続されている。充電素子24と制御回路17の第1経路26は、第3経路29を介して接続されている。
【0019】
主電源23が充分に充電されている場合には、図2に示すように、スイッチ28が閉成状態であり、送電回路21によって主電源23から高電圧発生器15の制御回路17へ電力が供給され、コッククロフト・ウォルトン回路16において昇圧及び整流される。この状態でトリガ14を操作すると、塗料が、高電圧発生器15によって帯電した状態でノズル13から吐出され、被塗物(図示省略)に静電作用によって塗着する。塗装が行われている間、コッククロフト・ウォルトン回路16と、充電回路22と、主電源23と、送電回路21の第1経路26とを通過する電流ループRが構成され、充電回路22に接続されている充電素子24が充電される。
【0020】
主電源23が消耗すると、図3に示すように、スイッチ28が開成し、送電回路21における主電源23から高電圧発生器15への給電が停止し、高電圧発生器15への給電が主電源23から充電素子24へ切り替わる。充電素子24から高電圧発生器15への給電は、図3に鎖線で示すように、第3経路29と第1経路26と制御回路17を通る回路において行われる。
【0021】
本実施例1の静電塗装ガンは、ガン本体10と、高電圧発生器15と、電源装置20とを備えている。ガン本体10は、塗料を吐出するノズル13を有する。高電圧発生器15は、ガン本体10に取り付けられ、塗料に静電気を印加する。電源装置20は、ガン本体10に一体的に設けられ、高電圧発生器15に電力を供給する。電源装置20は、充電素子24を含んでいる。充電素子24によって高電圧発生器15に電力を供給することができるので、ガン本体10の外部に設けた電源から高電圧発生器15に給電するための送電ケーブルを不要にすることができる。送電ケーブルを不要とすることによって、塗装の際の作業性向上を図ることができる。
【0022】
電源装置20は、充電素子24よりも放電容量の大きい主電源23を備えている。充電素子24を補助電源として機能させることにより、主電源23と充電素子24によって電源冗長化を実現することができる。充電素子24は、全固体電池である。全固体電池からなる充電素子24は、放電容量の大容量化が可能なので、主電源23として用いることも可能である。
【0023】
主電源23は、充電素子24を充電可能である。これにより、充電素子24を、ガン本体10から取り外さなくても充電することができる。塗装中は、放電エネルギーによって、コッククロフト・ウォルトン回路16と主電源23との間を電流が循環する。この循環する電流によって、コッククロフト・ウォルトン回路16と主電源23との間に電流ループRが構成される。電流ループRの途中には充電素子24が接続されている。これにより、塗装中は、電流ループRの放電エネルギーを利用して、常に、充電素子24を充電することができる。
【0024】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1、2において、主電源をエアタービン発電機としてもよい。
実施例1,2において、充電素子への充電は、主電源の電力を利用せず、ガン本体から取り外した充電素子を充電器に接続して充電してもよい。
実施例1,2において、充電素子を回路基板に実装したキャパシタとしてもよい。また、充電素子として、全固体電池とキャパシタの両方をガン本体に並設してもよい。
本発明によれば、電源装置を充電素子だけで構成してもよい。
本発明は、ハンドガンに限らず、自動ガンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10…ガン本体
13…ノズル
15…高電圧発生器
16…コッククロフト・ウォルトン回路
17…制御回路
20、30…電源装置
21、31…送電回路
23…主電源
24…充電素子
R…電流ループ
図1
図2
図3
図4
図5